説明

画像形成装置

【課題】静電像へのキャリアを介した電荷注入を抑制した、良好な現像性を有する画像形成装置を提供する。
【解決手段】画像形成装置において、キャリアとして下記(I)に示す特性を有するキャリアを備え、像担持体として下記(II)に示す特性を有するa−Si感光体を備えることを特徴とする画像形成装置。
(I)キャリアの抵抗率は印加される電界強度に応じて変化し、引き戻し電界強度Edよりも小さい電界強度及び現像電界強度Ebより大きな電界強度における抵抗率の変化の傾きの各々をK1、K2としたとき、|K1|<|K2|の関係が成りたつ。(II)a−Si感光体の表面層における水素原子の濃度が30atm%以上70atm%以下、炭素原子の濃度が、60atm%以上、90atm%以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、像担持体の上に形成された静電像をトナーにより可視化して画像を得る複写機、プリンターなどの画像形成装置に関する。より詳細には、現像剤としてトナーとキャリアとを備える2成分現像剤を用いる画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真方式を用いた複写機、プリンターなどの画像形成装置では、像担持体としての電子写真感光体(以下、単に「感光体」とも記す)の表面を一様に帯電させた後、その表面を画像情報に応じて露光する。これによって、感光体の表面に静電像を形成する。感光体に形成した静電像は、現像器が現像剤を用いてトナー像として現像する。
【0003】
感光体上のトナー像は、直接又は中間転写体を介して転写材に転写される。その後、転写材にトナー像を定着させることによって記録画像を得る。
【0004】
現像剤としては、実質的にトナーのみから成る1成分現像剤と、トナーとキャリアとを備えた2成分現像剤とがある。2成分現像剤を用いた現像方式は、一般に、より高精細で色味の良好な画像を形成できる点などにおいて有利である。
【0005】
2成分現像剤は、一般的に、粒径が5μm〜100μm程度のキャリアと、粒径が1μm〜10μm程度のトナーが所定の混合比で混合されたものである。又、トナーはキャリアと混合されることにより、摩擦帯電により所定の極性の所定の帯電量に帯電される。
【0006】
ところで、近年、電子写真方式の複写機、プリンターなどの画像形成装置のデジタル化、フルカラー化、高速化が進むにつれ、その出力画像がオリジナルの出力物としての価値を持ち、更には、印刷市場への参入も非常に期待されている。従って、より高精細で安定した画質の画像を出力できることが求められている。このような、高精細な画質を得るための取り組みの1つとして、2成分現像剤中のキャリアの電気抵抗を高抵抗化する手法が提案されている(特許文献1参照。)。
【0007】
つまり、通常、2成分現像剤を用いた現像方式では、現像器が備える現像剤担持体上に担持された2成分現像剤が、感光体上の静電像と対向する現像部まで搬送される。その後、現像剤担持体と感光体との間に印加された所定の現像バイアスによって、トナーのみが感光体上に移行される。これにより、感光体上に静電像に応じたトナー像が形成される。この際、トナーを担持して搬送するキャリアの電気抵抗が低いと、現像剤担持体よりキャリアを通じて静電像に電荷が注入され、静電像が乱される場合がある。
【0008】
尚、現像バイアスとしては、直流電圧成分と交流電圧成分とが重畳された矩形波の現像バイアスが広く用いられている。
【0009】
近年、上述のような印刷市場への参入などのために、高解像度での静電像の形成がなされるようになってきている。例えば、2400dpiの場合、1dpiのドット形成幅は約20μmと、極めて微小である。例えば、このような高解像度での静電像の形成がなされる場合には、上述のような現像剤担持体からのキャリアを介した電荷注入で静電像は大きく影響を受けやすくなる。従って、このような微小な静電像を壊すことなく、現像工程を終了させることが求められている。
【0010】
従来、感光体としては、金属基体の上に有機材料から成る電荷発生層、電荷輸送層、表面保護層が積層された有機光導電体感光体(以下「OPC感光体」とも記す)が広く用いられている。
【0011】
一方、上述のような高解像度の静電像を形成するには、感光体に、アモルファスシリコン感光体(以下「a−Si感光体」とも記す)等の単層系の感光体を用いるのが有効であることがわかっている。その理由の1つは、次のように考えられる。即ち、OPC感光体では、感光体の内部の電荷発生機構が感光体の基体付近に存在する。これに対し、a−Si感光体では、感光体の電荷発生機構が感光体の表面にある。そのため、a−Si感光体では、内部で発生した電荷が感光体の表面に至るまでに拡散する必要がなく、極めて高精細な静電像が得られる。
【0012】
しかしながら、a−Si感光体は、OPC感光体と比べてその表面抵抗が低く、上述のような現像剤担持体からのキャリアを介した電荷注入の影響がOPC感光体より非常に大きくなる。従って、a−Si感光体を用いる場合には、形成された静電像が容易に乱されることになるので、キャリアの電気抵抗を高く設定するか、矩形波の現像バイアスのピーク間電圧Vppを小さくして、電荷の移動量を抑えることが一層求められていた。
【0013】
ここで、現像バイアスのピーク間電圧Vppを小さくすると、現像剤担持体からのキャリアを介した電荷注入は低減されるが、現像剤にかかる電界が弱まる。そのため、キャリアからトナーを引き離す力が低減し、現像性が低下することになる。従って、高画質な画像形成を行うためには、上述のようにキャリアの電気抵抗をより高く設定することが有効である。
【0014】
しかしながら、キャリアの電気抵抗を高抵抗化すると、現像性、即ち、トナーがキャリアから引き離される能力が低下し易くなることが分かっている。
【0015】
前述したように、2成分現像剤のキャリアは、トナーを現像部へ搬送する役割と共に、摩擦帯電によりトナーに対し電荷付与を行う役割を担っている。そのため、キャリアはトナーの帯電極性とは逆極性の電荷が与えられ、帯電することになる。例えば、トナーが負極性に帯電するときには、キャリアには正極性の電荷が付与される。
【0016】
この際、キャリアの電気抵抗が高いとキャリアに蓄積された電荷が移動し難くなるため、このキャリアの電荷とトナーの電荷が引き合って大きな付着力となり、トナーがキャリアから引き離され難くなる。このような現像性の低下は、キャリアの電気抵抗が大きくなればなるほど顕著になる。
【0017】
一方、キャリアの電気抵抗が低ければ、キャリア内の電荷がキャリアの表面で拡散し易くなるため、トナーとキャリアとの付着力も小さくなり、トナーはキャリアから引き離され易くなる。しかしながら、前述したようにキャリアの電気抵抗が低いとキャリアを介した電荷注入が発生してしまう。
【0018】
つまり、高精細で安定した画質の画像を出力するためにトナーとキャリアとを備える2成分現像剤及びa−Si感光体を用いた画像形成装置において、現像時における静電像への電荷注入を防止しつつ、現像性を低下させないことが望まれる。
【特許文献1】特開2004−077568号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
従って、本発明の目的は、トナーとキャリアとを備える2成分現像剤及びa−Si感光体を用いた画像形成装置において、静電像へのキャリアを介した電荷注入を抑制しながら、良好な現像性を得ることを可能とする画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明者らは、上述の問題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、以下のような特性をもつキャリアを用いることで良好な現像性を確保し、以下のような像担持体を用いることで静電像への電荷注入を更に効果的に抑制できることを見出し本発明を完成するに至った。
【0021】
すなわち、本発明は
静電像を担持する像担持体と、トナーとキャリアとを備える現像剤を担持して該像担持体と対向する現像部へと該現像剤を搬送する現像剤担持体を備えた現像器とを有し、該像担持体と該現像剤担持体との間に矩形波の現像バイアスを印加して、該像担持体の上の静電像を該現像剤によって現像する画像形成装置において、
前記キャリアとして、下記(I)に示す特性を有するキヤリアを備え、前記像担持体として、下記(II)に示す特性を有する像担持体を備えることを特徴とする画像形成装置である。
(I)前記キャリアの抵抗率が、印加される電界強度に応じて変化し、且つ、該電界強度の変化に対する該抵抗率の変化の傾きが、下記式(1)及び(2)、
Eb=|(Vp1−VL)/D| (1)
Ed=|(Vp2−VL)/D| (2)
(式中、VLは、最高濃度を得るための静電像の電位(V)を表す。Vp1は、該矩形波の現像バイアスにおけるピーク電位のうち、該VL電位に対しトナーを該像担持体に向けて移動させる側の電位差を設けるピーク電位(V)を表す。Vp2は、該矩形波の現像バイアスにおけるピーク電位のうち、該VL電位に対しトナーを該現像剤担持体に向けて移動させる側の電位差を設けるピーク電位(V)を表す。Dは、該像担持体と該現像剤担持体との間の最近接距離(m)を表す。)
で表される電界強度Eb(V/m)及びEd(V/m)との間にEd<Ep<Ebの関係が成り立つ電界強度Ep(V/m)で変化し、X<Edの関係が成り立つ電界強度Xにおける該抵抗率の変化の傾きをK1とし、Y>Ebの関係が成り立つ電界強度Yにおける該抵抗率の変化の傾きをK2とした場合、下記式(3)の関係が成り立つ
|K1|<|K2| (3)
(II)前記像担持体は、導電性支持体と、シリコン原子を母体として水素原子及び/またはハロゲン原子を含有するアモルファス材料から成る光導電層と、シリコン原子、炭素原子及び水素原子を含有するアモルファス材料から成る表面層とを有し、該表面層における水素原子及び炭素原子の濃度(atm%)が、下記式(4)及び(5)の関係を満たす
30atm%≦100×(H/(Si+C+H))≦70atm% (4)
60atm%≦100×(C/(Si+C))≦90atm% (5)
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、トナーとキャリアとを備える2成分現像剤及びa−Si感光体を用いた画像形成装置において、静電像へのキャリアを介した電荷注入を抑制しながら、良好な現像性を得ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、図面を参照して本発明を詳細に説明する。
【0024】
[画像形成装置]
図1に、本発明の画像形成装置の実施形態の一例の概略断面構成図を示す。
【0025】
画像形成装置100は、像担持体として、上記(II)に示す特性を有する円筒状の感光体101を有する。感光体101の周囲には、帯電手段としての帯電器102、露光手段としての露光器103、現像手段としての現像器104、転写手段としての転写帯電器105、クリーニング手段としてのクリーナー106、前露光手段としての前露光器107が配置されている。又、転写材108の搬送方向において、感光体101と転写帯電器105とが対向する転写部よりも下流には、定着手段としての定着器109が配置されている。
【0026】
このような画像形成装置100を用いて、画像の形成は、例えば、次のように行われる。
感光体101は、図示矢印方向に所定の周速度で回転駆動される。回転する感光体101の表面は、帯電器102により一様に帯電される。そして、露光器103に対向する位置では、画像信号に対応して発光されるレーザーが露光器103から照射され、感光体101上に原稿画像に対応した静電像が形成される。
【0027】
感光体101に形成された静電像は、感光体101の回転により現像器104に対向する位置まで到達すると、現像器104内のトナー111とキャリア110とを備える2成分現像剤によりトナー像として現像される。キャリア110は、上記(I)に示す特性を有する。静電像は、2成分現像剤のうち実質的にトナー111のみで形成される。
【0028】
現像器104は、現像剤担持体としての現像スリーブ112を有する。現像スリーブ112は、トナー111とキャリア110とを備える現像剤を担持して感光体101と対向する現像部114へと該現像剤を搬送する。現像スリーブ112は、現像器104の開口部に回転可能に配置され、且つ、内部に磁界発生手段としてのマグネット113を内包している。図1に示した画像形成装置100では、現像スリーブ112は、その表面が、感光体101と対向する現像部114において感光体101の表面移動方向と同方向に移動するように回転駆動される。2成分現像剤は、現像スリーブ112の表面上に担持された後、規制部材115によって量がコントロールされ、感光体101と対向する現像部114まで搬送される。キャリア110は、帯電したトナー111を担持して現像部114まで搬送する働きをする。又、トナー111は、キャリア110と混合されることにより、摩擦帯電により所定の極性の所定の帯電量に帯電される。現像スリーブ112上の2成分現像剤は、現像部114において、マグネット113の発生する磁界により穂立ちして磁気ブラシを形成する。そして、図1に示した画像形成装置では、この磁気ブラシを感光体101の表面に接触させ、又現像スリーブ112に所定の現像バイアスを印加することにより、2成分現像剤からトナー111のみを感光体101上の静電像に転移させる。
【0029】
感光体101上に形成されたトナー像は、転写帯電器105によって転写材108上に静電的に転写される。その後、転写材108は、定着器109に搬送され、ここで加熱、加圧されることにより、その表面にトナー像が定着される。その後、転写材108は、出力画像として装置外に排出される。
【0030】
尚、転写工程後に感光体101上に残留したトナーはクリーナー106によって除去される。その後、クリーナー106によって清掃された感光体101は、前露光器107からの光照射により電気的に初期化され、上記の画像形成動作が繰り返される。
【0031】
[キャリアの電気抵抗]
現像バイアス下におけるキャリアの電気抵抗の電界強度依存性を以下に詳しく説明する。
【0032】
図2は、電気的な抵抗特性の異なる従来の一般的な2種類のキャリア(低抵抗キャリアA、高抵抗キャリアB)における抵抗率ρ[Ω・m]の電界強度依存性を示す。図2の横軸は電界強度[V/m]を示し、縦軸は抵抗率ρ[Ω・m]を示す。(但し、縦軸は対数表示。以下、抵抗率ρのグラフはその数値を対数で記述する。)
キャリアの抵抗率は、図3に示すような装置を用いて計測することができる。即ち、所定の周速で回転するアルミニウム製の円筒体ドラム(以下、「アルミドラム」とも記す。)301に、キャリアのみを内包した現像器302の現像スリーブ303を所定の距離をあけて対向させる。そして、所定の周速で現像スリーブ303を回転させながら、アルミドラム301と現像スリーブ303との間にDC電圧を印加して、回路の途中に設置された抵抗rの両端電圧を測定する。その測定値からキャリアの抵抗率を求める。
【0033】
尚、図2の横軸の電界強度[V/m]は、アルミドラム301と現像スリーブ303間の最近接距離Dにおける電界強度Eである。この電界強度Eは、アルミドラム301と現像スリーブ303との間の印加電圧を距離Dで割ったものである。
【0034】
図2中に実線で示すラインが低抵抗キャリアA(Aキャリアとも記す)の抵抗率の電界強度依存性を、破線で示すラインが高抵抗キャリアB(Bキャリアとも記す)の抵抗率の電界強度依存性を示している。尚、各キャリアは、約100Vのバイアス印加時の抵抗率が約9.0×106[Ω・m](Aキャリア)及び約1.0×108[Ω・m](Bキャリア)程度のものである。
【0035】
図2から、どちらのキャリアも抵抗率に電界強度依存性を持つが、低抵抗キャリアAの方が、高抵抗キャリアBよりも、その電界強度依存性の傾きが大きいことが分かる。低抵抗キャリアA、高抵抗キャリアBの両方とも、上記傾きは、キャリアに印加される電界の強度変化に対して実質的に一定である。
【0036】
尚、図2に示したキャリアの抵抗率は、キャリアのみでの測定結果であり、トナーと混合された2成分現像剤の状態になると、キャリア間に電気的に高抵抗なトナーが存在するため、上述したキャリアのみの抵抗率より若干大きいものとなる。しかしながら、現像動作中では、トナーがキャリアから引き離され、キャリアのみの状態に近くなることから、上述のようにして計測された抵抗率が実際に近い状態を示している。従って、本発明においては、上述のようにして計測されたキャリアのみの抵抗率を用いて説明する。
【0037】
図4は、図1に示した画像形成装置を用いて画像形成を行う場合の現像動作時における感光体101上の静電像の電位及び現像スリーブ112に印加される現像バイアスを示している。図4の横軸は時間を示し、縦軸は電位を示す。
【0038】
本発明においては、現像バイアスとしては、一般的な矩形波の現像バイアスが用いられる。この現像バイアスは、ACバイアスに、Vdcで示されるDCバイアス成分が重畳された現像バイアスである。この現像バイアスが、感光体101の静電像と現像スリーブ112との間に印加される。
【0039】
尚、本発明においては、静電像は、画像部に露光を行うことによって静電像を形成するイメージ露光方式にて形成されるものとして説明する。又、本発明においては、感光体101は、負極性に帯電されるものとして説明する。更に、本発明においては、トナー111はキャリア110との摩擦帯電により負極性に帯電され、現像方式としては、感光体101と同極性に帯電したトナー111を用いる反転現像方式を用いるものとして説明する。
【0040】
図4中、VDは、感光体101の帯電電位であり、本発明においては、帯電器102により負極性に帯電されている。図4中、VLは、露光器103により露光された画像部の領域であり、最高濃度を得るための電位となっている。即ち、VL電位部は、トナーの付着量がもっとも大きくなる領域である。
【0041】
現像スリーブ112には、上述のように矩形波の現像バイアスが印加されている。そのため、現像スリーブ112にピーク電位のうちVp1電位が付与された時には、VL電位に対して最も大きな負電位差が形成され、この電位差による電界(以下、「現像電界」とも記す。)によって、トナー111が感光体101に転移される。又、逆に、現像スリーブ112にVp2電位が付与された時には、VL電位に対し、現像電界が形成される時とは逆方向の最も大きな正電位差が形成される。これにより、VL電位部よりトナー111が現像スリーブ112側に引き戻される電界(以下「引き戻し電界」とも記す。)が形成される。
【0042】
ここで、図5を参照して、現像バイアスのVL電位に対する時間的変化を考えると、図5中に示すb、d、a、c、eの各点での電界強度Eb、Ed、Ea、Ec、Eeは、それぞれ下記式で表される。
【0043】
Eb=|(Vp1−VL)/D| (1)
Ed=|(Vp2−VL)/D| (2)
Ea=Ec=Ee=|(Vdc−VL)/D| (10)
(式中、VLは、最高濃度を得るための静電像の電位を表す。Vp1は、矩形波の現像バイアスにおけるピーク電位のうち、VL電位に対しトナーを感光体101に向けて移動させる側の電位差を設けるピーク電位を表す。Vp2は、矩形波の現像バイアスにおけるピーク電位のうち、VL電位に対しトナーを現像スリーブ112に向けて移動させる側の電位差を設けるピーク電位を表す。Dは、感光体101と現像スリーブ112との間の最近接距離を表す。)
尚、Vp1、Vp2は、トナーの帯電極性に応じて、下記式で表される。
トナーが負極性の場合:
Vp1=Vdc−|Vpp/2| (11)
トナーが正極性の場合:
Vp1=Vdc+|Vpp/2| (12)
トナーが負極性の場合:
Vp2=Vdc+|Vpp/2| (13)
トナーが正極性の場合:
Vp2=Vdc−|Vpp/2| (14)
(式中、Vppは、矩形波の現像バイアスにおけるピーク間電圧を、Vdcは、現像バイアスのDCバイアス成分を表す。)
即ち、電界強度Ea、Ec及びEeは、現像バイアスのDCバイアスと感光体101上の静電像の最高濃度部の電位であるVL電位との間の電位差を、感光体101と現像スリーブ112との最近接位置における距離Dで割ったものである。電界強度Eb(現像電界強度と表すことがある)は、感光体101上のVL電位との間に、トナー111を感光体101に向けて移動させる側の電界を形成する電位差を設けるピーク電位と、感光体101上のVL電位との間の電位差を、感光体101と現像スリーブ112との最近接距離Dで割ったものである。又、電界強度Ed(引き戻し電界強度と表すことがある)は、感光体101上のVL電位との間に、トナー111を現像スリーブ112に向けて移動させる側の電界を形成する電位差を設けるピーク電位と、VL電位との間の電位差を、感光体101と現像スリーブ112との最近接距離Dで割ったものである。
【0044】
一方、図2を参照して説明したように、キャリアの抵抗率は電界強度依存性を持つ。そのため、図5中矢印で示すように、現像バイアス下では、電界強度がEa→Eb→Ec→Ed→Eeと変化するのに応じて、キャリアの抵抗率が変化することになる。従って、例えば、低抵抗キャリAの場合は、図6に示したように、その抵抗率はR1→R3→R1→R2→R1と変化し、高抵抗キャリアBの場合は、その抵抗率はR4→R6→R4→R5→R4と変化することになる。
【0045】
この抵抗率の変化を時間に対してプロットすると図7に示すようになる。
【0046】
即ち、低抵抗キャリアAの場合は、現像電界がかかる時のキャリアの抵抗率は、より低い抵抗率R3となる。これに対し、高抵抗キャリアBの場合では、現像電界がかかる時のキャリアの抵抗率の低下率は、低抵抗キャリアAと比較して小さい。この差が、キャリア内の電荷移動に影響を及ぼし、現像性の差となる。
【0047】
ここで図8に、本発明における前記(I)に示す特性を有するキャリアCの抵抗率の電界強度依存性を示す。図8から分かるように、低抵抗キャリアA、高抵抗キャリアBの場合と同様に、キャリアCの抵抗率は電界依存性を持つが、キャリアCの場合は、所定の電界強度Epでその抵抗率の電界強度依存性の傾きが急峻となる特性を有する。
【0048】
即ちキャリアCは、その抵抗率ρが、現像スリーブ112の電位と感光体101上の静電像の電位との電位差ΔVを、感光体101と現像スリーブ112との最近接距離Dで割った値である電界強度差ΔE(=ΔV/D)に対して傾きK(=Δρ/ΔE)を有する。そして、キャリアCは、Ed<Ep<Ebの関係が成り立つ電界強度Epで抵抗率ρの電界依存性の傾きK(=Δρ/ΔE)が変化する。
【0049】
そして、キャリアCはX<Edの関係が成り立つ電界強度Xにおける抵抗率ρの電界強度依存性の傾きK(=Δρ/ΔE)をK1とし、Y>Ebの関係が成り立つ電界強度Yにおける抵抗率ρの電界強度依存性の傾きK(=Δρ/ΔE)をK2とした場合、下記式(3)の関係が成り立つ。
【0050】
|K1|<|K2| (3)
従って、図8に示すように、キャリアCが上述のような現像バイアスを受けると、電界強度がEa→Eb→Ec→Ed→Eeと変化するのに応じて、キャリアの抵抗率はR7→R9→R7→R8→R7と変化する。
【0051】
このキャリアCの抵抗率の変化を時間に対してプロットすれば、図9(b)に示すようになる。尚、図9(a)はキャリアA及びキャリアBにおける抵抗率の変化を示す図7と同様のものを示している。
【0052】
即ち、キャリアCの抵抗率は、強度Ebの現像電界が印加されている間は、より低い抵抗率R9となり、逆に、強度Edの引き戻し電界が印加されている間は、より高い抵抗R8が維持されていることになる。
【0053】
キャリアCは、強度Ebの現像電界が形成された時のみ、その抵抗率が急激に低下し、キャリア110に蓄えられた逆電荷が拡散し易くなり、トナー111とキャリア110との付着力が低減する。従って、高抵抗キャリアBより、トナー111がキャリア110から引き離され易くなる。
【0054】
一方、強度Edの引き戻し電界が形成された時は、キャリアの抵抗率が高くなるので、電荷の移動は鈍いものとなり、現像スリーブ112側からキャリア110に逆極性の電荷が流れにくい状態になる。よって、キャリアには逆極性の電荷があまり存在しないことになる。従って、引き戻し電界が印加された場合、感光体101からトナー111が再度キャリアに引き戻され、拘束される機会も少なくなる。
【0055】
このように、キャリアCでは、強度Ebの現像電界が印加される時のみ電気抵抗が低くなり、低抵抗キャリアAのように現像性が確保され、逆に、強度Edの引き戻し電界が印加される時には、高い電気抵抗が維持され、引き戻し力が弱くなる。その結果、低抵抗キャリアA及び高抵抗キャリアBよりトータルで現像性が高くなる。
【0056】
キャリアCでは上記式(3)が成り立てば、実用上問題はない。ただし、|K2|-|K1|の値が2.10より大きくなると強度Ebの現像電界が形成された時にキャリアCの抵抗率が低くなり、静電像への電荷注入が発生してしまう場合があるため現像性が低下してしまう可能性がある。逆に|K2|-|K1|の値が1.50より小さくなるとキャリアAやキャリアBに近づいてしまうために現像性が低下してしまう場合がある。
そのため、1.50≦|K2|―|K1|≦2.10であることがより好ましい。
【0057】
[電荷注入]
次に、感光体101上の静電像の電位を乱す電荷注入についてキャリアCの作用を説明する。
【0058】
図10に、キャリアA、B、CにおけるVL電位に対する電荷注入量を示す。図10の横軸は、現像スリーブ112の電位と感光体101上のVL電位との間で形成される電界の電界強度Eを示し、縦軸は、VL電位と、そのVL電位部の電荷注入後の電位VL’との差、即ち、|VL−VL’|を示している。
【0059】
ここで、VL’とVLは、図11に示すように、感光体1101の表面移動方向において現像部1102よりも下流において表面電位計1103にて計測されたものである。現像器1104が無い状態で測定された電位をVL電位とし、現像器1104が設置され、所定の現像バイアスが印加された場合のVL電位をVL’と定義している。
【0060】
即ち、図10は、VL電位が、現像部1102を通過する際に、そのVL電位部に接触しているキャリアからの電荷注入により、どれだけ変化するかを模式的に示したものである。図10から、低抵抗キャリアAでは、電界強度Efにて電荷注入が始まり、キャリアCでは電界強度Egにて電荷注入が始まることを意味している。
【0061】
この電界強度EfにおけるキャリアAの低抵率及び電界強度EgにおけるキャリアCの抵抗率を、それぞれ、図8のグラフより求める。そうすると、図12に示すように電界強度EfにおけるキャリアAの抵抗率及び電界強度EgにおけるキャリアCの抵抗率はそれぞれρAf、ρCgとなる。
【0062】
また、現像電界時のキャリアA、Cの抵抗率をそれぞれρAb、ρCbとすると、キャリアAはρAb<ρAfの時、キャリアCはρCb<ρCgである時、電荷注入が発生してしまう。
【0063】
さらに引き戻し電界時のキャリアA、Cの抵抗率をρAd、ρCdとするとキャリアAはρAd<ρAfの時、キャリアCはρCd<ρCgである時、引き戻し電界時においても電荷注入が発生してしまう。
【0064】
つまり、現像電界時のキャリアの抵抗率(ρAb、ρCb)や引き戻し電界時のキャリアの抵抗率(ρAd、ρCd)が電荷注入が始まる電界(Ef、Eg)におけるキャリアの抵抗率(ρAf、ρCg)を下回らなければ、現像電界時においても引き戻し電界時においても電荷注入は発生しないことになる。
【0065】
図12からわかるように、キャリアCは、従来の低抵抗キャリアを用いる場合の課題であるキャリアを介した静電像への電荷注入を防止しつつ、従来の高抵抗キャリアを用いる場合と比較して現像時のキャリアの抵抗率を低くできる。したがって、現像性を飛躍的に高めることが可能となる。さらに、引き戻し電界時においてもキャリアCは高抵抗であるため、低抵抗キャリアAよりも優位である。
【0066】
また、強度Ebの現像電界が印加されているときの本発明における前記(I)に示す特性を有するキャリアの抵抗率は、好ましくは1.0×107Ω・m以下とする。強度Ebの現像電界が印加されているときの抵抗率がこれより大きい場合には、トナーとキャリアとの付着力を低減させることができずに、良好な現像性を得ることが出来ない場合がある。
【0067】
ここでキャリアCを使用した場合の電荷注入が始まる電界強度が図13に示すように大きくなりEg2になった場合を考えてみる。電荷注入が始まる電界が大きくなったことにより、上記と同様電界強度Eg2におけるキャリアCの抵抗を求めると、図14に示すように、キャリアCの抵抗率はρCg2となる。
【0068】
このことは現像電界時のキャリアの抵抗率(ρCb)をρCg2まで下げても電荷注入は発生しないことを示している。つまり図14に示すキャリアDのようなもの、すなわち、強度Ebの現像電界が印加されているときの抵抗率がρCgより小さく、ρCg2より大きいものが使用できるようになることを示している。キャリアDのようなものは現像電界時の抵抗率がキャリアCの現像電界時の抵抗率よりも低いため、現像性をさらに高めることが可能となる。
【0069】
詳しくは後述するが、電荷注入が始まる電界強度を大きくするためには、例えば、前記(II)に示す特性を有する像担持体を用いその表面層中の水素原子の濃度を大きくしてやればよい。
【0070】
一方、電荷注入が始まる電界強度を大きくしなくても、上述したキャリアDのようなものは使用することは可能である。それは現像電界強度Ebの値を小さくしてやればよい。現像電界強度Ebは現像バイアスのDCバイアス成分Vdc=−350V、最高濃度を得るための静電像の電位VL=−100Vとすると、トナーが負極性の場合、以下の式で表される。
【0071】
Eb=(|Vpp/2|+250)/D
(式中、Vppは、矩形波の現像バイアスにおけるピーク間電圧を、Dは、感光体と現像スリーブとの間の最近接距離を表す。)
すなわち|Vpp|を下げるか感光体と現像スリーブとの間の最近接距離Dを大きくしてやればよい。このようにすることで、現像電界強度Ebが小さくなり、それにより現像電界時のキャリアの抵抗率が大きくなり、キャリアDのようなものを使用しても電荷注入を発生させなくすることが可能である。
【0072】
しかしながら、|Vpp|を下げる、または最近接距離Dを大きくしてやるとトナーを現像するための電界強度が弱まり、さらに現像電界時のキャリアの抵抗率も大きくなるため、現像性を低下させる場合がある(図15中の(1))。
【0073】
図15中の(2)のように傾きK2の値が異なるキャリアを用いて、現像電界時のキャリアの抵抗率を保ったまま、現像電界強度Ebを小さくした場合もトナーを現像するための電界強度が弱まるために現像性を低下させる場合がある。
【0074】
先ほどと同様に電荷注入が始まる電界強度EgがEg2になった場合は、図15中(3)のようにキャリアの抵抗率を下げられるため、現像電界強度Ebの低下により現像性が低下した場合でも現像性をカバーすることが可能となる。しかしながら、現像電界強度Ebを際限なく低下させていくことは望ましくない。
【0075】
一方、電荷注入が始まる電界強度がEg2になった状態でキャリアCを使用する場合も現像電界時の電界強度をさらに大きくすることでキャリアDと同様、現像性をさらに高めることが可能となる。現像電界時の電界強度を大きくするためには、Vppを大きくするか感光体と現像スリーブとの間の最近接距離Dを小さくしてやればよい。
【0076】
しかしながら、現像電界時の電界を大きくした時に、感光体と対向した現像部に導電性の異物などが混入すると、異物を導電パスとして、現像スリーブから感光体へ向けてスパークが発生してしまうことがある。
【0077】
上記のような理由により、現像電界強度Ebは適正な値を選んでやる必要がある。
現像電界強度Ebを3.9×106[V/m]以下にすることで、異物を導電パスとして、現像スリーブから感光体へ向けてスパークが発生するのを抑制することができる。
【0078】
また、現像電界強度Ebを際限なく小さくすることは好ましくない。現像電界強度Ebは、通常、1.6×106[V/m]以上にすることが好ましい。現像電界強度Ebを、1.6×106[V/m]以上とすると、良好な現像性を得ることが可能となる。
【0079】
よって、現像電界強度Ebは、下記式(8)の関係を満たすことが好ましい。
【0080】
1.6×106V/m≦Eb≦3.9×106V/m (8)
[キャリアの製造方法]
(本発明におけるキャリア)
本発明におけるキャリアとしては、例えば、ポーラス状のコアにシリコーン樹脂等の樹脂を流し込み、コア内の空隙を樹脂で充填したポーラス状樹脂充填キャリアを挙げることができる。
【0081】
斯かるキャリアの製造方法としては、次のような方法を挙げることができる。
【0082】
最初に、金属酸化物、酸化鉄(Fe23)及び添加物を所定量秤量し、混合する。次に、得られた混合物を700〜1000℃の範囲で1〜5時間仮焼きし、その後、0.1〜3μm程度の粒径に粉砕する。得られた粉砕物に、必要に応じて、結着剤、更には発泡剤を加え、100〜200℃の加熱雰囲気下で噴霧乾燥し、20〜50μm程度の大きさに造粒する。その後、酸素濃度5%以下の不活性ガス(例えば、N2ガス等)の雰囲気下で焼結温度1000〜1400℃で4〜12時間焼成する。これによりポーラス状のコアが得られる。次いで、樹脂、例えば、シリコーン樹脂を浸漬法により、キャリアの質量に対して8〜15質量%充填し、180〜220℃不活性ガス雰囲気下でそのシリコーン樹脂を硬化させる。
【0083】
金属酸化物としては、例えば、下記化学式(i)又は(ii)で表される磁性を有するマグネタイト及びフェライトを挙げることができる。
MO・Fe23 (i)
M・Fe24 (ii)
(式中、Mは3価、2価又は1価の金属元素を示す。)
上記の金属元素Mとしては、Be、Mg、Ca、Rb、Sr、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、Cd、Pb及びLiが挙げられ、これらは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0084】
上記の磁性を有する金属酸化物の具体例としては、例えば、Cu−Zn−Fe系フェライト、Mn−Mg−Fe系フェライト、Mn−Mg−Sr−Fe系フェライト及びLi−Fe系フェライトの如き鉄系酸化物が挙げられる。
【0085】
また、上記結着剤として、例えば、分子量500〜5000、好ましくは分子量1000のポリビニルアルコールなどを用いることができる。また、上記発泡剤は、例えば、60〜180℃で気化又は分解し、その際に気体を発生する物質であって、キャリア用として利用できるものであれば特に限定はされない。例えば、以下のものが挙げられる。アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリルの如き発泡性のアゾ系重合開始剤;ナトリウム、カリウム、カルシウムの如き金属の炭酸水素塩;炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウム、炭酸カルシウム、硝酸アンモニウム塩、アジド化合物、4,4’−オキシビス(ベンゼンスルホヒドラジド)、アリルビス(スルホヒドラジド)、ジアミノベンゼン。
【0086】
また、上記樹脂としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等を挙げることができる。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリスチレン;ポリメチルメタクリレートやスチレン−アクリル酸共重合体などのアクリル樹脂;スチレン−ブタジエン共重合体;エチレン−酢酸ビニル共重合体;ポリ塩化ビニル;ポリ酢酸ビニル;ポリフッ化ビニリデン樹脂;フルオロカーボン樹脂;パーフルオロカーボン樹脂;溶剤可溶性パーフルオロカーボン樹脂;ポリビニルピロリドン;石油樹脂;ノボラック樹脂;飽和アルキルポリエステル樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアリーレートなどの芳香族ポリエステル樹脂;ポリアミド樹脂;ポリアセタール樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリエーテルスルホン樹脂;ポリスルホン樹脂;ポリフェニレンサルファイド樹脂;ポリエーテルケトン樹脂を挙げることができる。また、熱硬化性樹脂としては、例えば、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、変性フェノール樹脂、マレイン樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、無水マレイン酸とテレフタル酸と多価アルコールとの重縮合によって得られる不飽和ポリエステル、尿素樹脂、メラミン樹脂、尿素−メラミン樹脂、キシレン樹脂、トルエン樹脂、グアナミン樹脂、メラミン−グアナミン樹脂、アセトグアナミン樹脂、グリプタール樹脂、フラン樹脂、ポリイミド、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリウレタン樹脂を挙げることができる。
【0087】
その他、例えば、コアに樹脂を充填する際には溶剤を用いることができる。コア粒子内部に樹脂成分を含有させる方法としては、例えば、樹脂成分を溶剤に溶解または希釈し、得られた樹脂溶液をコア粒子に添加する方法が一般的である。ここに用いられる溶剤は、各樹脂成分を溶解できるものであればよい。有機溶剤に可溶な樹脂である場合は、有機溶剤として、トルエン、キシレン、セルソルブブチルアセテート、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メタノールを用いればよい。水溶性の樹脂成分またはエマルジョンタイプの樹脂成分である場合には、水を用いればよい。
【0088】
上述した製法において、キャリアの抵抗率の電界依存性、例えば、Eb、Ep、Ed、傾き|K1|、|K2|、電界強度Eb、Ed印加時の抵抗率等は、コアのポーラス度、コア自身の抵抗率を制御することで制御することができる。更には、充填するシリコーン樹脂等の樹脂量を制御することで制御することができる。
【0089】
具体的には、たとえば、コアのポーラス度は、ポアの体積をコアの体積に対し20〜75体積%とすることが好ましく、40〜75体積%とすることがより好ましい。このようなポーラス度は、例えば、焼結温度をコントロールすることや発泡剤の使用量をコントロールすることによって得ることができる。
【0090】
また、コア自身の抵抗率は、1.0×103〜5.0×107Ω・mであることが好ましく、1.0×105〜1.0×107Ω・mであることが更に好ましい。このような抵抗率は、磁性材料の種類を選択することにより得ることができる。あるいは、磁性粒子を不活性ガス中で熱処理し、磁性粒子表面を還元することによってもかかる抵抗率を得ることができる。また、これらの方法を併用してもよい。
【0091】
また、樹脂量は、キャリアの質量に対し、通常、5〜15質量%とすることが好ましい。樹脂としてシリコーン樹脂を用いる場合には、上述したように、キャリアの質量に対し8〜15質量%とすることが好ましい。
【0092】
上記を制御することにより、キャリアの内部において、絶縁部と導電部を所望の状態に混在させることが可能となり、キャリアを流れる電荷量を制御することが可能となる。
【0093】
例えば、上記キャリアの内部は、ポーラス状コアの空隙に、樹脂が充填されている為、この樹脂部において電荷の流れがある程度食い止められる構成となっていると考えられる。よって、現像バイアスが印加された際、急激な抵抗低下が生じず、引き戻し電界強度Edを超え現像電界強度Ebより低い所望の電界強度Epにおいて、抵抗率を低下させ、下記式(3)の関係が成り立つようにすることが可能となる。
【0094】
|K1|<|K2| (3)
[感光体]
次に、本発明における感光体について説明する。
【0095】
図16に本発明における感光体の一例の層構成の模式図を示す。図16(a)に示す感光体1601は、導電性支持体1602の上に光導電層1603と表面層1604が堆積された構造を有する。光導電層1603は、光導電性を示す。また、導電性支持体1602側からの電荷を阻止するために、下部阻止層1605が設けられている。
【0096】
図16(b)に本発明における感光体の他の一例の層構成の模式図を示す。図16(b)に示す感光体には、上部からの電荷を保持し、帯電性を向上させる目的で上部阻止層1606が設けられている。このような構成は負帯電用感光体に特に好適である。光導電性を示す光導電層1603、表面層1604、下部阻止層1605などは、図16(a)に示した感光体と同様である。
【0097】
以下、本発明における感光体について各層ごとに詳細に説明する。
【0098】
[導電性支持体]
導電性支持体1602の材質としてはAlやステンレスの如き導電性材料が一般的である。しかしながら、例えば各種のプラスチックやガラス、セラミックス等、特には導電性を有しないものに下記導電性材料を少なくとも光導電層を形成する側の表面に蒸着するなどして導電性を付与したものも用いることができる。
【0099】
光導電層を形成する側の表面に蒸着する上記導電性材料としては上記の他、Cr、Mo、Au、In、Nb、Te、V、Ti、Pt、Pd、Fe等の金属及びこれらの合金が挙げられる。
【0100】
上記プラスチックとしてはポリエステル、ポリエチレン、ポリカーボネート、セルロースアセテート、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリアミド等が挙げられる。
【0101】
[下部阻止層]
下部阻止層1605は、シリコン原子を母材とし、通常、導電性を制御する不純物元素を含有させる。正帯電用感光体の場合、下部阻止層に含有させる不純物元素として、周期表第13族元素を用いることが出来る。また、負帯電用感光体の場合、下部阻止層に含有させる不純物元素として、周期表第15族元素を用いることが出来る。
【0102】
なお、負帯電用感光体の場合には、窒素原子、酸素原子または炭素原子を最適に含有させることで、不純物元素をドープしなくとも、優れた電荷阻止能を有する下部阻止層とすることができる
また更に下部阻止層は水素原子またはハロゲン原子を含んでいてもよい。
【0103】
下部阻止層は、プラズマCVD法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等によって作製することができる。プラズマCVD法を用いると特に高品質の下部阻止層が得られ好ましい。プラズマCVD法においては、原料としてSiH4、Si26、Si38、Si410等のガス状態のもの、またはガス化し得る水素化珪素を用いることができる。これらの原料を、高周波電力によって分解することによって下部阻止層を作製することができる。更に下部阻止層作製時の取り扱い易さ、Si供給効率の良さ等の点でSiH4、Si26が好ましい。
【0104】
このとき、導電性支持体は、200℃〜450℃、より好ましくは250℃〜350℃の温度に保つことが特性上好ましい。
【0105】
反応容器内の圧力は、下部阻止層の設計にしたがって最適範囲が適宜選択される。通常の場合、反応容器内の圧力は、1×10-2〜1×103Paとすることが好ましく、5×10-2〜5×102Paがより好ましく、1×10-1〜1×102Paとすると更に好ましい。
【0106】
また、下部阻止層を作製する際のプラズマCVD法に用いる高周波電源としては、如何なる周波数のものも用いることができ、例えば、1〜450MHz程度の周波数のものが好ましく、13.56MHzの周波数のものを好適に用いることができる。
【0107】
また、下部阻止層に含有される周期表第13族元素としては、具体的には、硼素(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、タリウム(Tl)等を挙げることができる。特に硼素(B)が好適である。周期表第15族元素としては、具体的には、リン(P)、砒素(As)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)等を挙げることができる。特にリン(P)、砒素(As)が好適である。
【0108】
[光導電層]
本発明における感光体の光導電層1603は、シリコン原子を母体とし、更に水素原子またはハロゲン原子を含有するアモルファス材料から構成される。
【0109】
光導電層は、プラズマCVD法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等によって作製することができる。プラズマCVD法を用いると特に高品質の光導電層が得られ好ましい。プラズマCVD法においては、原料として、SiH4、Si26、Si38、Si410等のガス状態のもの、またはガス化し得る水素化珪素を用いることができる。これら原料を、高周波電力によって分解することによって光導電層を作製することができる。更に光導電層作製時の取り扱い易さ、Si供給効率の良さ等の点でSiH4、Si26が好ましい。
【0110】
このとき、導電性支持体を、200℃〜450℃、より好ましくは250℃〜350℃の温度に保つことが特性上好ましい。
【0111】
反応容器内の圧力は、光導電層の設計にしたがって最適範囲が適宜選択される。通常の場合、反応容器内の圧力は、1×10-2〜1×103Paとすることが好ましく、5×10-2〜5×102Paがより好ましく、1×10-1〜1×102Paとすると更に好ましい。
また、光導電層を作製する際のプラズマCVD法に用いる電周波電源としては、如何なる周波数のものも用いることができ、例えば、1〜450MHz程度の高周波のものが好ましく、13.56MHzの周波数のものを好適に用いることができる。
【0112】
また、上述したガスに更にH2又はハロゲン原子を含むガスを混合して光導電層を形成することも特性向上の上で好ましい。ハロゲン原子を含むガスとしては、フッ素ガス(F2)や、ハロゲン間化合物、例えば、BrF、ClF、ClF3、BrF3、BrF5、IF5、IF7等を挙げることができる。ハロゲン原子を含む珪素化合物、いわゆるハロゲン原子で置換されたシラン誘導体としては、例えば、SiF4、Si26等の弗化珪素を好ましいものとして挙げることができる。
【0113】
また、これらの原料ガスは、必要に応じて、H2、He、Ar、Ne等のガスにより希釈して使用してもよい。
【0114】
光導電層の層厚としては、特に限定はないが、製造コストなどを考慮すると15〜50μm程度とすることが好ましい。
【0115】
[上部阻止層]
上部阻止層1606は、シリコン原子を母材とし導電性を制御する不純物元素を含有させる。負帯電用感光体の場合、上部阻止層に含有される不純物元素として、周期表第13族元素を用いることが出来る。
【0116】
上部阻止層はプラズマCVD法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等によって作製することができる。プラズマCVD法を用いると特に高品質の上部阻止層が得られ好ましい。プラズマCVD法においては、原料としてSiH4、Si26、Si38、Si410等のガス状態のもの、またはガス化し得る水素化珪素を用いることができる。これらの原料を、高周波電力によって分解することによって上部阻止層を作製することができる。更に上部阻止層作製時の取り扱い易さ、Si供給効率の良さ等の点でSiH4、Si26が好ましい。
【0117】
また、上部阻止層は、シリコン原子を母材としたアモルファス材料であれば良いが、電気的特性を考慮すると炭化珪素層であることが好ましい。炭化珪素層を作製する際の炭素供給源としては、CH4、C22、C24、C26、C38、C410、等が用られる。C供給効率の良さ等の点でCH4、C22、C26が好ましい。
【0118】
上部阻止層に含有される周期表第13族元素としては、具体的には、硼素(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、タリウム(Tl)等を挙げることができる。特に硼素(B)が好適である。
【0119】
[表面層]
表面層1605は、シリコン原子、炭素原子及び水素原子を含有するアモルファス材料から構成される。
【0120】
表面層は、プラズマCVD法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等によって作製することができる。プラズマCVD法を用いると特に高品質の表面層が得られ好ましい。シリコン原子供給源としてはSiH4、Si26、Si38、Si410等のガス状態のもの、またはガス化し得る水素化珪素が有効に使用されるものとして挙げられる。更に表面層作製時の取り扱い易さ、シリコン原子供給効率の良さ等の点でSiH4、Si26が好ましい。また、これらのSi供給用の原料ガスは、必要に応じてH2、He、Ar、Ne等のガスにより希釈して使用してもよい。
【0121】
炭素供給源としては、CH4、C22、C24、C26、C38、C410等のガス状態のもの、またはガス化し得る化合物が有効に使用されるものとして挙げられる。中でも、炭素供給源としてはCH4が好ましい。
【0122】
水素原子供給源としてはH2が挙げられる。
【0123】
表面層はこれらのガスを高周波電力によって分解することによって作製することができる。このとき、導電性支持体は、150℃〜350℃、好ましくは200℃〜300℃の温度に保つことが特性上好ましい。
【0124】
反応容器内の圧力は、表面層の設計にしたがって最適範囲が適宜選択される。通常の場合、反応容器内の圧力は、1×10-2〜1×103Paとすることが好ましく、5×10-2〜5×102Paがより好ましく、1×10-1〜1×102Paとすると更に好ましい。
【0125】
また、表面層を作製する際のプラズマCVD法に用いる電周波電源としては、如何なる周波数のものも用いることができ、例えば、1〜450MHz程度の周波数のものが好ましく、13.56MHzの周波数のものを好適に用いることができる。
【0126】
表面層中の炭素濃度や水素濃度はガス流量、導電性支持体の温度、放電パワー、反応容器内のガスの圧力等によって制御することができる。
【0127】
表面層における炭素原子の濃度(atm%)は、下記式(5)の関係を満たすことが好ましい。
【0128】
60atm%≦100×(C/(Si+C))≦90atm% (5)
表面層における炭素原子の濃度(atm%)が、上記式(5)の関係を満たすと、前述した電荷注入が始まる電界強度Egを大きくすることができる。
【0129】
この理由は定かではないが次のように考えられる。
【0130】
表面層における炭素原子の濃度を60atm%≦100×(C/(Si+C))≦90atm%の範囲とし、水素原子の濃度100×(H/(Si+C+H))を増加させていくと、表面層の光学的バンドギャップが大きくなっていく。一般的に光学的バンドギャップと導電率とは反比例の関係にあり、表面層における水素原子の濃度を増加させていくと表面層の導電率は小さくなっていくと考えられる。表面層の導電率が小さくなるにしたがい、キャリアを介した電荷注入を阻止する能力が大きくなり、結果として電荷注入が始まる電界強度Egが大きくなるものと考えられる。それ故、水素原子の濃度100×(H/(Si+C+H))は、30atm%以上とすることが好ましく、40atm%以上とすることがより好ましい。
【0131】
一方、表面層における炭素原子の濃度を60atm%≦100×(C/(Si+C))≦90atm%の範囲とし、水素原子の濃度100×(H/(Si+C+H))を70atm%以下とすると、表面層の硬度がさらに向上する。より好ましくは60atm%以下とする。このことにより、超高速マシンなどの繰り返し使用に耐えうるため、より望ましい。
【0132】
また、表面層における炭素原子の濃度に関しては、炭素原子の濃度100×(C/(Si+C))を90atm%以下にすると、より好ましくは80atm%以下にすると、表面層の硬度がさらに向上するので望ましい。また、炭素原子の濃度100×(C/(Si+C))を60atm%以上にすると、より好ましくは65atm%以上とすると、表面層中の欠陥を低減することができる。これにより残留電位などの特性が向上するために望ましい。
【0133】
よって、表面層における水素原子の濃度100×(H/(Si+C+H))(atm%)及び炭素原子の濃度100×(C/(Si+C))(atm%)は、下記式(4)及び(5)の関係を満たすように制御することが好ましい。
30atm%≦100×(H/(Si+C+H))≦70atm% (4)
60atm%≦100×(C/(Si+C))≦90atm% (5)
さらに、表面層における水素原子の濃度100×(H/(Si+C+H))(atm%)及び炭素原子の濃度100×(C/(Si+C))(atm%)を、下記式(6)及び(7)の関係を満たすように制御することがより好ましい。
40atm%≦100×(H/(Si+C+H))≦60atm% (6)
65atm%≦100×(C/(Si+C))≦80atm% (7)
以上をまとめると以下の通りである。
【0134】
本発明におけるキャリアは、現像性確保の為、現像電界時の抵抗率を低下させるとともに、引き戻し電界時の抵抗率は高くなければならない。このために、本発明では前記(I)に示す特性を有する、抵抗率が引き戻し電界時には高く、現像電界時には低いキャリアを使用する。
【0135】
また、現像電界時のキャリアの抵抗率に関しては、高いと高画質に対応する為の現像性が不十分であるため、現像電界時に低抵抗率であるキャリアを使用したいが、抵抗率が低すぎると静電像への電荷注入が発生してしまうという課題があった。そこで、本発明における感光体は、前記(II)に示す特性を有する感光体を採用した。この感光体は、シリコン原子を母体として、水素原子またはハロゲン原子を含有するアモルファス材料からなる表面層を有している。この表面層の炭素原子濃度[100×(C/(Si+C))]を60atm%以上、90atm%以下とし、水素原子濃度[100×(H/(Si+C+H))]を30atm%以上、70atm%以下とした。これにより、電荷注入を抑制する事が可能になった。更に、現像電界時に低抵抗率であるキャリアを使用することが可能になった。
【0136】
[感光体製造装置]
図17に、本発明における感光体の製造装置の一例を模式的に示す。図17に示した製造装置は、高周波電源を用いたRFプラズマCVD法による感光体製造装置である。
【0137】
この感光体製造装置1700は大別すると、成膜装置1701、原料ガス供給手段1750、成膜炉内を減圧する為の排気装置(図示せず)から構成されている。成膜装置1701は真空気密可能な円筒状の反応容器1702からなり、この円筒状反応容器1702の周囲壁を兼ねるカソード電極1703が設けられている。カソード電極1703とアース面である下プレート1704とはセラミックからなる下碍子1705により絶縁されている。また、円筒状反応容器1702の上部には導電性支持体搬出入用のゲートバルブ1706が取り付けられている。カソード電極1703とゲートバルブ1706とはセラミックスからなる上碍子1707により絶縁されている。また全体をアース電位である不図示の金属シールド壁で被っている。円筒状反応容器1702内には導電性支持体1708、導電性支持体加熱用ヒーター1709、ガス導入管1710が設置されている。導電性支持体1708は導電性支持体ホルダー1711を介して、下プレート1704に取り付けられ接地された不図示の受け台に着脱されるようになっている。これにより、導電性支持体1708は接地され、アノード電極として作用する。カソード電極1703は、不図示のマッチングボックスを介して、他端が接地された高周波電源1712の一端に接続されている。これにより、アノード電極として作用する導電性支持体1708と円筒状反応容器1702の周囲壁を兼ねるカソード電極1703との間に高周波電圧を印加することができる。ガス導入管1710はガス供給配管1713を介して、原料ガス供給手段1750に接続されている。また、円筒状反応容器1702の下プレート1704には、排気配管1714を介して不図示の排気手段(例えば真空ポンプ)が接続されている。
【0138】
このような感光体製造装置1700を用いて、上記の光導電層、表面層、下部阻止層、上部阻止層として機能する堆積膜の各々の形成は例えば次のように行われる。
【0139】
まず、ゲートバルブ1706から導電性支持体ホルダー1711に設置された導電性支持体1708を真空雰囲気下で搬送して円筒状反応容器1702内の受け台に装着し、ゲートバルブ1706を閉鎖する。そして、不図示の排気装置(例えば真空ポンプ)により円筒状反応容器1702内を排気する。続いて導電性支持体加熱用ヒーター1709により導電性支持体1708の温度を所望の温度に制御する。
【0140】
上記堆積膜形成用の原料ガスを円筒状反応容器1702内に流入させるにはガスボンベバルブ(1761〜1766)、流入バルブ(1771〜1776)、流出バルブ(1781〜1786)、補助バルブ1715が開かれている事を確認する。そして、メインバルブ1716を開いて円筒状反応容器1702及びガス供給配管1713を排気する。
【0141】
その後、真空計1717の読みが約0.1Pa以下になった時点で補助バルブ1715、流出バルブ(1781〜1786)を閉じる。その後ガスボンベ(1791〜1796)より各ガスをバルブ(1761〜1766)を開いて導入し、圧力調整器(1801〜1806)により各ガス圧を0.2MPaに調整する。次に流入バルブ(1771〜1776)を徐々に開けて各ガスをマスフローコントローラー(1811〜1816)内に導入する。
【0142】
その後、ガス導入管1710から円筒状反応容器1702内に原料ガスを導入し、マッチングボックスを介して、高周波電源1712によってカソード電極1703に電圧を印加し、カソード電極1703と導電性支持体1708の間でプラズマ放電を発生させる。この放電エネルギーによって、円筒状反応容器1702内に導入された原料ガスが分解され、導電性支持体1708上に堆積膜が形成される。この堆積膜の上に更に他の堆積膜を形成する場合は、上記操作により所望の原料ガスを流入させ所望の堆積膜を形成すればよい。
【実施例】
【0143】
以下、実施例、比較例を挙げて本発明を詳細に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(a−Si感光体の製造)
図17の堆積膜形成装置を用いて、図16(b)に示す層構成を有する負帯電用a−Si感光体を製造した。導電性支持体として、アルミニウムよりなる長さ381mm、外径φ84mm、肉厚3mmの鏡面加工を施した基体を用いた。感光体1〜18の下部阻止層、光導電層及び上部阻止層は表1に示す条件で形成した。また感光体1〜18の表面層は、表1に示す条件にて形成した。なお、表面層形成時の基体温度及び高周波電力については表2に示した。
【0144】
【表1】

【0145】
【表2】

【0146】
このようにして作製したa−Si感光体の表面層中における炭素原子及び水素原子濃度をRBS−HFS(Rutherford Back Scattering-Hydrogen Forward Scattering)分析器(日新ハイボルテージ社製AN−2500、商品名)により分析した。得られた結果を表2に示す。
【0147】
(磁性キャリアの製造)
〔コア粒子の製造方法〕
<コア粒子1>
1.秤量・混合工程
Fe23 69.0質量%
ZnO 16.0質量%
CuO 15.0質量%
となるように秤量し、上記フェライト原材料に水を加えて、ボールミルで湿式混合した。
【0148】
2.仮焼成工程
得られた混合物を乾燥し、粉砕した後、850℃で2時間焼成し、フェライトを作製した。
【0149】
3.粉砕工程
上記フェライトをクラッシャーで0.1〜1.0mm程度に粉砕し、これに、水を加え更に湿式ボールミルで0.1〜0.5μmに微粉砕し、フェライトスラリーを得た。
【0150】
4.造粒工程
上記フェライトスラリーに、ポリビニルアルコール2%を添加し、スプレードライヤー(製造元:大川原化工機)で球状粒子に造粒した。
【0151】
5.焼成工程
上記球状粒子を電気炉にて、大気下、1250℃で8時間焼成した。
【0152】
6.選別工程1
焼成物を目開き250μmの篩で篩分して粗大粒子を除去した。
【0153】
7.選別工程2
更に、風力分級機(エルボジェットラボEJ−L3(商品名)、日鉄鉱業社製)で分級し、コア粒子1を得た。コア粒子1は、表面がスムースなフェライトコア粒子であった。
【0154】
<コア粒子2>
1.秤量・混合工程
Fe23 76.6質量%
MnCO3 20.0質量%
Mg(OH)2 3.0質量%
SrCO3 0.4質量%
となるように秤量し、上記フェライト原材料に水を加えて、ボールミルで湿式混合した。
【0155】
2.仮焼成工程
得られた混合物を乾燥し、粉砕した後、900℃で2時間焼成し、フェライトを作製した。
【0156】
3.粉砕工程
上記フェライトをクラッシャーで1〜5mmに粉砕し、更にスーパーミクロンミルを用い5〜30μmに粉砕した。得られた粉砕物を、更に、湿式ボールミルで0.1〜0.5μmに微粉砕し、フェライトスラリーを得た。
【0157】
4.造粒工程
フェライトスラリーにコア粒子1の製造において用いたと同様のポリビニルアルコール2%を添加し、さらにポリエステル微粒子を5%添加し、スプレードライヤー(製造元:大川原化工機)で球状粒子に造粒した。
【0158】
5.焼成工程
電気炉にて、酸素ガス濃度1.0%の窒素ガス雰囲気下、1200℃で4時間焼成した。
【0159】
6.選別工程1、2
焼成物を、前記コア粒子1の選別工程1、2と同様にして篩分し、分級してコア粒子2を得た。
【0160】
<コア粒子3>
造粒工程において添加するポリエステル微粒子を3.0%とし、焼成工程における酸素ガス濃度を0.5%とし、焼成温度を1250℃としたこと以外はコア粒子2の製造方法と同様にして、コア粒子3を得た。
【0161】
〔磁性キャリアの製造方法〕
<低抵抗キャリア1>
1.樹脂液の調製工程
シリコーン樹脂(信越化学社製KR255) 10.0質量%
γ−アミノプロピルトリエトキシシラン 0.5質量%
トルエン 89.5質量%
以上を混合し、樹脂液1を得た。
【0162】
2.樹脂コート工程
万能混合攪拌機NDMV(商品名、不二パウダル株式会社)を用い、コア粒子1に対して、上記シリコーン樹脂の質量が0.3質量%となるように、上記樹脂液を3回に分けて投入した。そして、真空度50kPaにて、70℃に加熱し、1時間混合して上記シリコーン樹脂をコートした。
【0163】
3.硬化工程
オーブンを用い、窒素流通雰囲気下で200℃で2時間加熱しシリコーン樹脂を硬化させた。
【0164】
4.篩工程
篩振とう機(300MM−2型、筒井理化学機械 75μm開口)で篩い、低抵抗キャリア1を得た。
【0165】
<高抵抗キャリア2>
コア粒子1に対し、投入したシリコーン樹脂の質量が3.0質量%となるようにしたこと以外は、低抵抗キャリア1と同様にして、高抵抗キャリア2を得た。
【0166】
〔キャリア3の製造方法〕
1.樹脂液
樹脂液1を用いた。
【0167】
2.樹脂含有工程
万能混合攪拌機NDMV(商品名、不二パウダル株式会社)を用い、コア粒子2に対して上記シリコーン樹脂の質量が12質量%となるように、0分、10分、20分の3回に分けて上記樹脂液2を投入し、真空度50kPaにて、70℃に加熱し1時間攪拌した。さらに、真空度を5kPaにし、100℃で5時間加熱してトルエンを除去し上記シリコーン樹脂をコア粒子2に充填した。
【0168】
3.硬化、篩工程
さらに、前記低抵抗キャリアAと同様にしてシリコーン樹脂を硬化し、篩い、キャリア3を得た。尚、得られたキャリア3は、多孔質磁性コア粒子の表面が、空孔に充填された樹脂によって覆われていた。
【0169】
〔キャリア4の製造方法〕
コア粒子としてコア粒子3を使用したこと及び樹脂含有工程で充填するシリコーン樹脂の質量8%としたこと以外はキャリア3の製造方法と同様にして、キャリア4を得た。
【0170】
(磁性キャリアのEd及びEbの値、並びに、Ep、|K1|及び|K2|の測定方法)
上記低抵抗キャリア1、高抵抗キャリア2、キャリア3及びキャリア4のEd及びEbの値は、それぞれ表3に示す値に設定した。
【0171】
これらの各磁性キャリアのEp、|K1|及び|K2|の値は以下の方法により求めた。
【0172】
それぞれのキャリアの抵抗率ρは、図3に示す装置を用いて計測することができる。300mm/secの周速(表面移動速度)で回転するアルミドラム301に、キャリアのみを充填した現像器302の現像スリーブ303を300μmの距離(最近接距離)をあけて対向させる。そして、現像スリーブ303を540mm/secの周速で回転させながら、アルミドラム301と現像スリーブ302との間に電圧を印加して、抵抗rにかかる電圧Vを計測する。電圧Vからキャリアに流れる電流Iを計算した後、キャリアの抵抗値Rを求め、アルミドラム301とキャリアの接触している面積Sを計測する。そして、下記式より、キャリアの抵抗率ρを求めた。
R=(V/I)
R=ρ(D/S)
上記より、求めた電界Vとキャリアの抵抗率ρの関係から、低抵抗キャリア1、高抵抗キャリア2、キャリア3及びキャリア4のEp及び、|K1|、|K2|、|K2|−|K1|を算出した。得られた値を表3に示す。
【0173】
これらの結果から、上記低抵抗キャリア1及び高抵抗キャリア2は、それぞれ、図6に示す低抵抗キャリアA及び高抵抗キャリアBのような抵抗率変化を示すものであることがわかる。そして、本発明におけるキャリアが有すべき前記(I)に示す特性を備えたキャリアではないことがわかる。一方、キャリア3及びキャリア4は、それぞれ、図15に示すキャリアC及びDのような抵抗率変化を示すものであり、本発明におけるキャリアが有すべき前記(I)に示す特性を備えたキャリアである。
【0174】
(実施例1〜23、比較例1〜6)
電子写真装置(キヤノン製電子写真装置iR C6800、商品名)を以下のように改造した。
【0175】
まず、実験用に負帯電用に、さらに像露光光源の光量を調整できるように改造した。また、2成分現像バイアスの条件を調整できるように、さらには感光体と現像スリーブの距離を調整できるように改造した。そして、マゼンタトナー用の2成分現像器内を空にし、上記キャリア1〜4のいずれか一つと電子写真装置(キヤノン製電子写真装置iR C6800、商品名)で用いられているトナーとを混合して2成分現像剤とし、現像器内に充填した。
【0176】
次に上記a−Si感光体1〜18のいずれか一つをこの改造した電子写真装置に設置し、磨耗性、現像性、耐絶縁破壊能力の各項目について下記の手法で評価を行った。得られた結果を表3に示した。
【0177】
表3にはさらに表2で示した感光体1〜18の表面層中における炭素原子及び水素原子の濃度についても記載した。
【0178】
《磨耗性》
上記改造した電子写真装置でA4コピー用紙50万枚の画像形成を繰り返す通紙耐久試験を行った。
【0179】
そして、耐久前後の表面層膜厚を、マルチチャンネル分光光度計(大塚電子製 MCPD−2000、商品名)を用いて反射スペクトルを測定し、表面層材料の屈折率から表面層膜厚を算出し、耐久前後の膜厚差を計算した。
【0180】
得られた結果に基き、実施例1の値をリファレンス(100%)とし、以下に示す評価基準によってランク判定を行った。
A:リファレンスに比べて90%未満であり、非常に良好なレベル
B:リファレンスに比べて90%以上、110%未満で、リファレンスと同等レベル
C:リファレンスに比べて110%以上で、実用上問題ないレベル
《現像性》
パソコンで、感光体の周方向に相当する方向に線幅1mmの線が引いてあるA3の画像パターンを作成した。この画像パターンをプリントアウトして得たテスト原稿を上記改造した電子写真装置で複写し現像性の評価を行った。具体的には、まず、上記改造した電子写真装置で上記テスト原稿を複写し複写画像を作成した。テスト原稿と複写画像とを光学顕微鏡を用いて比較した。複写画像の線のテスト原稿の線からのズレ部分(太り、細り)の面積を算出し、その数値によって上記改造した電子写真装置の現像性の評価を行った。得られた結果に基き、実施例1の値をリファレンス(100%)とし、以下に示す判断基準によってランク判定を行った。
【0181】
現像性の評価においては、Vdc=−350V、交流成分周波数f=12kHzの矩形波の現像バイアスを用いた。また、マゼンタ現像器位置における表面電位がVD=−450V(暗電位)になるように帯電器を調整し、最高濃度を得るための電位VLは−100Vに設定した。そして、感光体と現像スリーブとの間の最近接距離Dを295μmとして、現像電界強度Eb=|(Vp1−VL)/D|=(|Vpp/2|+|Vdc−VL|)/Dは現像バイアスにおけるピーク間電圧Vppを制御することで表3に示す通りに変化させた。
A:リファレンスに比べて90%未満で、良好なレベル
B:リファレンスに比べて90%以上、105%未満で、リファレンスと同等レベル
C:リファレンスに比べて105%以上、115%未満で、実用上問題ないレベル
D:リファレンスに比べて115%以上、125%未満で、実用上問題とはならないが、悪化している
E:リファレンスに比べて125%以上で、実用上問題となる場合がある。
【0182】
《耐絶縁破壊能力》
上記改造した電子写真装置の2成分現像剤にさらに鉄粉を極微量(現像剤に対して1重量%)混入させたものを用いた。プロセス条件としては、Vdc=−350V、交流成分周波数f=12kHzの矩形波の現像バイアスを用いた。また、マゼンタ現像器位置における表面電位がVD=−450V(暗電位)になるように帯電器を調整し、最高濃度を得るための電位VLは−100Vに設定した。そして、感光体と現像スリーブとの間の最近接距離Dを295μmとして、現像電界強度Eb=|(Vp1−VL)/D|=(|Vpp/2|+|Vdc−VL|)/Dは現像バイアスにおけるピーク間電圧Vppを制御することで表3に示す通りに変化させた。
この条件のもとで画素密度0%の画像を出力した。この際、2成分現像剤に混入させた鉄粉を導電パスとして、感光体の一部に電荷が集中するという現象が発生し、その発生した個所でマゼンタトナーが異常現像されて、画素密度0%の画像上に点として現れた。この点を目視にてカウントした。
【0183】
得られた結果に基き、実施例1の値をリファレンスとし、以下に示す判断基準によってランク判定を行った。
A:リファレンスに比べて10%以上減少し、良好なレベル
B:リファレンスに比べて±10%未満以内の増減であり、リファレンスと同等レベル
Cリファレンスに比べて10%以上、50%未満の増加であり、実用上問題ないレベル
《総合評価》
画像形成装置としては磨耗性、現像性、耐絶縁破壊能力のうちどれか1つでもランクが低いと総合力で劣ってしまうため、各評価項目のうちで最もランクの低いものを総合評価とした。
A:優れている
B:良好
C:実用上問題なし
D:実用上問題ないが、悪化している
E:実用上問題となる場合がある
【0184】
【表3】

【0185】
表3の比較例1、2及び実施例4における現像性の評価から明らかなように、比較例1では低抵抗のキャリア1の抵抗率が低すぎるために、前述のような理由により現像性が不十分である。比較例2では高抵抗のキャリア2の抵抗が高すぎるため、実用上問題ないが、高画質が要求される場合には現像性が不十分である。
【0186】
実施例4では比較例2に比べて現像時のキャリアの抵抗率を低くできるので現像性を高めることができる。
【0187】
感光体の表面層の炭素原子濃度100×(C/(Si+C))に関しては表3の比較例5,6実施例4及び実施例11〜13における磨耗性及び現像性の評価から明らかなように電子写真感光体の表面層の炭素原子濃度100×(C/(Si+C))を60atm%以上にすることで、さらには100×(C/(Si+C))を65atm%以上にすることで良好な現像性を得ることが可能となる。この理由は定かではないが、残留電位の発生を抑制できたためであると思われる。一方、表面層の炭素原子濃度100×(C/(Si+C))を90atm%以下にすることで表面層の硬度を向上させることができる。さらには表面層の炭素原子濃度100×(C/(Si+C))を80atm%以下にすることで表面層の硬度をいっそう向上させることができるので磨耗性に優れた感光体となり、優れた画像形成装置を提供できる。
【0188】
上記のような炭素原子濃度が60atm%≦100×(C/(Si+C))≦90atm%の範囲において、感光体の表面層の水素原子濃度100×(H/(Si+C+H))に関しては実施例2〜9及び比較例3、4における磨耗性及び現像性の評価より水素原子濃度100×(H/(Si+C+H))を30atm%以上にすることで、さらには水素原子濃度100×(H/(Si+C+H))を40atm%以上にすることで良好な現像性を得ることが可能となる。一方、水素原子濃度100×(H/(Si+C+H))を70atm%以下にすることで磨耗性に優れた感光体となり、優れた画像形成装置を提供できる。さらには水素原子濃度100×(H/(Si+C+H))を60atm%以下にすることで更に磨耗性に優れた感光体となり、高寿命の優れた画像形成装置を提供できる。
【0189】
また、実施例14、15を見れば明らかなように感光体の表面層の水素原子濃度100×(H/(Si+C+H))が本発明における感光体が有すべき前記(II)に示す特性で
あれば、前述のように電荷注入を抑制することができるのでより抵抗率が小さいキャリアを使用できる。
【0190】
現像電界強度Ebに関しては、例えば、実施例5、20における耐絶縁破壊能力の評価を見れば明らかなように3.9×106[V/m]以下にすることで異物を導電パスとして現像スリーブから感光体へ向けてスパークが発生するのを一層抑制することができる。
【0191】
|K2|-|K1|の値に関しては本実施例において、1.50≦|K2|―|K1|≦2.10の範囲であれば、良好な現像性が得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0192】
【図1】本発明の画像形成装置の実施形態の一例の概略断面構成図である。
【図2】現像バイアス印加中の電界強度に対するキャリアの抵抗率の変動を示す図である。
【図3】キャリアの抵抗率の測定方法を説明するための模式図である。
【図4】現像バイアスと静電像の電位の関係を説明するための説明図である。
【図5】現像バイアスと静電像の電位の関係においてそれぞれの電界強度を表す式を説明するための説明図である。
【図6】現像バイアス印加中の電界強度に対するキャリアの抵抗率の変動を示す図である。
【図7】現像バイアス下における時間の経過に伴うキャリアの抵抗率の変動を説明するための図である。
【図8】現像バイアス印加中の電界強度に対するキャリアの抵抗率の変動を示す図である。
【図9】現像バイアス下における時間の経過に伴うキャリアの抵抗率の変動を説明するための図である。
【図10】感光体への現像時の電荷注入量を示す図である。
【図11】電荷注入量の測定方法を説明するための模式図である。
【図12】現像バイアス印加中の電界強度に対するキャリアの抵抗率の変動と電荷注入開始電圧時のキャリアの抵抗率値を説明するための図である。
【図13】感光体への現像時の電荷注入量を示す図である。
【図14】現像バイアス印加中の本発明における2種類のキャリアの電界強度に対する抵抗率変動と電荷注入開始電圧時のキャリアの抵抗率値を説明するための図である。
【図15】現像バイアス印加中の本発明における3種類のキャリアの抵抗率変動を説明するための図である。
【図16】本発明における感光体の層構成の一例を模式的に示す断面図である。
【図17】本発明における感光体の形成に用いる堆積膜形成装置の一例を模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
【0193】
100 画像形成装置
101 感光体
102 帯電器
103 露光器
104 現像器
105 転写帯電器
106 クリーナー
107 前露光器
108 転写材
109 定着器
110 キャリア
111 トナー
112 現像スリーブ
113 マグネット
114 現像部
115 規制部材
301 アルミドラム
302 現像器
303 現像スリーブ
1101 感光体
1102 現像部
1103 表面電位計
1104 現像器
1601 感光体
1602 導電性支持体
1603 光導電層
1604 表面層
1605 下部阻止層
1606 上部阻止層
1700 堆積膜形成装置
1701 成膜装置
1750 原料ガス供給手段
1750 堆積膜形成装置
1702 円筒状反応容器
1703 カソード電極
1704 下プレート
1705 下碍子
1706 ゲートバルブ
1707 上碍子
1708 導電性支持体
1709 導電性支持体加熱用ヒーター
1710 ガス導入管
1711 導電性支持体ホルダー
1712 高周波電源
1713 ガス供給配管
1714 排気配管
1715 補助バルブ
1716 メインバルブ
1717 真空計
1761〜1766 ガスボンベバルブ
1771〜1776 流入バルブ
1781〜1786 流出バルブ
1791〜1796 ガスボンベ
1801〜1806 圧力調整器
1811〜1816 マスフローコントローラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電像を担持する像担持体と、トナーとキャリアとを備える現像剤を担持して該像担持体と対向する現像部へと該現像剤を搬送する現像剤担持体を備えた現像器とを有し、該像担持体と該現像剤担持体との間に矩形波の現像バイアスを印加して、該像担持体の上の静電像を該現像剤によって現像する画像形成装置において、
前記キャリアとして、下記(I)に示す特性を有するキャリアを備え、前記像担持体として、下記(II)に示す特性を有する像担持体を備えることを特徴とする画像形成装置。
(I)前記キャリアの抵抗率が、印加される電界強度に応じて変化し、且つ、該電界強度の変化に対する該抵抗率の変化の傾きが、下記式(1)及び(2)、
Eb=|(Vp1−VL)/D| (1)
Ed=|(Vp2−VL)/D| (2)
(式中、VLは、最高濃度を得るための静電像の電位(V)を表す。Vp1は、該矩形波の現像バイアスにおけるピーク電位のうち、該VL電位に対しトナーを該像担持体に向けて移動させる側の電位差を設けるピーク電位(V)を表す。Vp2は、該矩形波の現像バイアスにおけるピーク電位のうち、該VL電位に対しトナーを該現像剤担持体に向けて移動させる側の電位差を設けるピーク電位(V)を表す。Dは、該像担持体と該現像剤担持体との間の最近接距離(m)を表す。)
で表される電界強度Eb(V/m)及びEd(V/m)との間にEd<Ep<Ebの関係が成り立つ電界強度Ep(V/m)で変化し、X<Edの関係が成り立つ電界強度Xにおける該抵抗率の変化の傾きをK1とし、Y>Ebの関係が成り立つ電界強度Yにおける該抵抗率の変化の傾きをK2とした場合、下記式(3)の関係が成り立つ
|K1|<|K2| (3)
(II)前記像担持体は、導電性支持体と、シリコン原子を母体として水素原子及び/またはハロゲン原子を含有するアモルファス材料から成る光導電層と、シリコン原子、炭素原子及び水素原子を含有するアモルファス材料から成る表面層とを有し、該表面層における水素原子及び炭素原子の濃度(atm%)が、下記式(4)及び(5)の関係を満たす
30atm%≦100×(H/(Si+C+H))≦70atm% (4)
60atm%≦100×(C/(Si+C))≦90atm% (5)
【請求項2】
前記表面層における水素原子及び炭素原子の濃度(atm%)が、下記式(6)及び(7)の関係を満たすことを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
40atm%≦100×(H/(Si+C+H))≦60atm% (6)
65atm%≦100×(C/(Si+C))≦80atm% (7)
【請求項3】
前記電界強度Ebが、下記式(8)の関係を満たすことを特徴とする請求項1または2記載の画像形成装置。
1.6×106V/m≦Eb≦3.9×106V/m (8)
【請求項4】
前記|K1|、|K2|が、下記式(9)の関係を満たすことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の画像形成装置。
1.50≦|K2|―|K1|≦2.10 (9)

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2009−162925(P2009−162925A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−340898(P2007−340898)
【出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】