説明

画像形成装置

【課題】レジストローラの帯電によって引き起こされる転写材への不要な帯電を抑えることにより、転写不良を防ぐことができる画像形成装置。
【解決手段】ベルト状の像担持体100に接触して回転する転写ローラ102と、この転写ローラ102とベルト状像担持体100の接触する領域に転写材104を搬送する1対のレジストローラ22,23とを有し、転写ローラ102に電流又は電圧を印加することによって、ベルト状の像担持体100上に形成されたトナー像を転写材104に転写を行う画像形成装置において、レジストローラ22,23を絶縁体で構成し、レジストローラ22,23に接離可能な除電部材24を備え、転写材104がレジストローラ22,23と接触しているときは、除電部材をレジストローラ22,23から離し、転写材がレジストローラ22,23と接触していないときは、除電部材24をレジストローラ22,23と接するようにしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複写機、ファクシミリ、プリンタ等の画像形成装置に係り、無端ベルト状の像担持体に担持されたトナー像を、転写ベルトを用いて転写材に転写を行う方式の画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
前記転写方式の画像形成装置において、適切な転写を行うには、トナーに適切な転写電流を付与する必要がある。転写電流が不足している場合には、トナーを転写材に転写できず転写不良を起こし、逆に転写電流が過剰な場合には、トナーが本来の帯電極性とは逆の極性に帯電し、そのためトナーが転写材に転写できず転写不良を起こす。
【0003】
そこで、適切な転写電流をトナーに付与しようとするが、環境等の変動によって、転写材の抵抗値は大きく変動をする。特に、高湿下においては、転写材の抵抗値は低下する。このため転写材を介して転写材を搬送するレジストローラの方に転写電流が流れ込み、適切な転写電流がトナーに付与できず、転写不良を起こすという問題があった。
【0004】
この問題を解決するために、転写する際の印加電圧に対する印加電流を検知する手段を有し、印加電圧/印加電流の値が一定の値以下のときには、トナーに適切な転写電流が付与するように印加電圧の調節を行う方式が提案されている(例えば、特許文献1)。
【0005】
また、リークすると思われる箇所に200MΩ以上の抵抗を介して接地を行うことにより、転写材を通してリークする電流を抑え、リークによる転写不良を防ぐ方式が提案されている(例えば、特許文献2)。また、用紙搬送方向に対しレジストローラ対の下流側に設けられた除電ブラシで、用紙裏面と下側レジストローラの両方に接触して、帯電電荷を除去する構成がある(例えば、特許文献3)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の技術では以下のような問題点が考えられる。すなわち、特許文献1のように転写を行う前に転写電圧と転写電流を検知してから、転写電圧を制御する方式は、高速印刷において、制御を行うだけの時間が得られないとか、これらの検出装置及び制御を行うために構成が複雑化し、コストがかかる。
【0007】
また、特許文献2のように直接レジストローラを接地せずに、抵抗を介して接地する方式では、転写材が通過する際、転写材とレジストローラが接触する度に摩擦帯電を起こし、レジストローラに電荷が蓄積される。そのため次の転写材を帯電させてしまい、転写不良を起こす。
【0008】
さらに、特許文献3のように除電ブラシをレジストローラに常時接触させていると、転写電流が転写材を通してレジストローラへリークするおそれがある。
【特許文献1】特開平5−40418号公報
【特許文献2】特開平7−129000公報
【特許文献3】特開2002−372874号公報
【0009】
そこでこの発明は、前記のような従来の問題を解決し、レジストローラに流れ込む転写電流を抑え、かつレジストローラの帯電によって引き起こされる転写材への不要な帯電を抑えることにより、転写不良を防ぐことができる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、無端ベルト状の像担持体と、この無端ベルト状の像担持体を巻き付けて回転する対向ローラと、この対向ローラに巻き付けられた前記ベルト状の像担持体に接触して対向ローラと同方向に回転する転写ローラと、この転写ローラと前記ベルト状像担持体の接触する領域に転写材を搬送するために前記転写材の搬送方向上流に配置された1対のレジストローラとを有し、前記転写ローラから対向ローラに電流又は電圧を印加することによって、前記ベルト状の像担持体上に形成されたトナー像を転写材に転写を行う画像形成装置において、前記レジストローラを絶縁体で構成し、前記レジストローラに接離可能な除電部材を備え、前記転写材がレジストローラと接触しているときは、前記除電部材をレジストローラから離し、前記転写材がレジストローラと接触していないときは、前記除電部材をレジストローラと接するようにしていることを特徴とする。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1記載の画像形成装置において、前記除電部材が除電ブラシ又は除電ローラであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
この発明は、前記のようであって、レジストローラを絶縁体で構成し、レジストローラに接離可能な除電部材を備え、転写材がレジストローラと接触しているときは、除電部材をレジストローラから離し、転写材がレジストローラと接触していないときは、除電部材をレジストローラと接するようにしたことにより、レジストローラに転写電流が流れ込まず、かつレジストローラの帯電によって引き起こされる転写不良を抑えることができる。すなわち、従来のように転写前に転写電圧、転写電流の検知を行い、転写電圧を制御するプロセスを行うことなく、高湿下における転写材を介してレジストローラに流れ込む電流を抑えることができ、トナーに適切な転写電流を印加することを可能にし、かつ転写材が通過することによって、摩擦帯電によるレジストローラの帯電、それによって引き起こされる転写材への不要な帯電を抑え、転写材への不要な帯電から引き起こされる転写不良も防ぐことができる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、この発明を画像形成装置であるカラー複写機に適用した一実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0014】
図2は、カラー複写機の全体の概略構成図である。まず、図2を用いて、カラー複写機の主要部である画像形成部と転写部の構成と動作について説明を行う。
【0015】
画像形成部及び1次転写部は、帯電器10a〜10d、露光器11a〜11d、現像器12a〜12d、除電器13a〜13d、クリーナー14a〜14d、感光体ドラム15a〜15d、1次転写ローラ16a〜16d、無端ベルト状の像担持体である中間転写ベルト100から構成されている。
【0016】
感光体ドラム15a〜15dは、矢印の方向に回転する。また、中間転写ベルト100は、ローラ30,31等によって張架され、感光体ドラム15a〜15dと接触している。画像形成部を構成する各部材は、中間転写ベルト100と接している点から感光体ドラム15の回転方向に対し、感光体ドラム15a〜15dの周りに、除電器13a〜13d、クリーナー14a〜14d、帯電器10a〜10d、露光器11a〜11d、現像器12a〜12dの順に配置されている。1次転写部を構成する1次転写ローラ16a〜16dは、感光体ドラム15a〜15dと中間転写ベルト100が接している領域の裏側から押し付けるように配置されている。また、本実施の形態では、ベルトを駆動するローラはローラ30であり、このローラ30によって中間転写ベルト100は、矢印の方向に回転移動を行う。
【0017】
次に、画像形成方法及び1次転写方法について説明する。感光体ドラム15は帯電器10により帯電させられる。その後、スキャナ及びPCからの画像データに基づいて、露光器11から、レーザービームを照射することによって、帯電している感光体ドラム15上に静電潜像を生成する。その後、現像器12で帯電したトナーを感光体ドラム15上に現像を行う。感光体ドラム15上に形成されたトナー像は、1次転写ローラ16に定電流又は定電圧により制御された電流又は電圧による転写電界を印加することによって、中間転写ベルト100上に転写される。
【0018】
中間転写ベルト100上にトナー像を転写した後、感光体ドラム15は、感光体ドラム15上に残っている余電荷を除電器13によって取り除き、クリーナー14によって感光体15上に残っているトナーを除去し、帯電器10に戻るプロセスを繰り返す。
【0019】
本実施の形態では、シアン、マゼンタ、イエロ、ブラックの各4色に対し、それぞれ画像形成部を配置し、感光体ドラム15aで形成されたトナー像を中間転写ベルト100上に1次転写を行った後、中間転写ベルト100は、感光体ドラム15bに移動し、感光体ドラム15aで転写したトナー像の上に、感光体ドラム15bで形成されたトナー像の転写を行う。以下、順に感光体ドラム15c,15dとトナー像を重ねて転写を行う。
【0020】
中間転写ベルト100上に転写されたトナー像は、中間転写ベルト100を保持する2次対向ローラ103と2次転写ローラ102で形成される2次転写部においてレジストローラ22,23によって搬送された転写材104に転写される。レジストローラ22,23は、図示しない給紙部から搬送された転写材104を一旦停止させ、中間転写ベルト100上のトナー像が転写材104の転写位置にくるタイミングで回転駆動される。また、レジストローラ22,23より転写材104の搬送方向の下流側には、図示しない転写材検知センサが設けられ、転写材104の先端及び後端の通過を検知する。
【0021】
2次転写部では、2次転写ローラ102に電流を付与し、その転写電流が、2次対向ローラ103に流れこむことにより、中間転写ベルト100上のトナーを転写材104に転写を行う。2次転写された転写材104は、その後、定着ローラ20,21により定着される。
【0022】
しかし、高湿環境下の場合、転写材104の抵抗値は低下するため、図3のように転写電流が対向ローラ103に流れ込まず、破線で示すように転写材104を介して、レジストローラ22,23に流れ込む場合が生じる。この場合、中間転写ベルト100上のトナーに転写電流が付与されず、転写材104にトナーが転写されない転写不良を起こす。
【0023】
そこで、本実施の形態では、図1に示すように、レジストローラ22,23を絶縁体で構成し、転写電流がレジストローラ22,23に流れ込まないようにする。しかし、レジストローラ22,23を絶縁体にしたために、転写材104が、レジストローラ22,23を通過するたびに、摩擦帯電によって、レジストローラ22,23に電荷が帯電し、次の転写材104に前レジストローラに溜まった電荷が転写材104に移り、帯電した状態の転写材104が、2次転写部に搬送されることになる。したがって、帯電した状態の転写材104は、中間転写ベルト100に吸着又は中間転写ベルト100上のトナーを転写点前に引き付けるなどの転写不良を引き起こす。
【0024】
そのため、絶縁体にしたレジストローラ23に除電部材である除電ブラシ24を接離可能に取り付けることにより、転写材104とレジストローラ22,23との間の摩擦帯電によって、レジストローラ22,23に溜まった電荷を除去し、転写不良を抑えるようにしている。本実施の形態では除電部材として除電ブラシ24を採用したが、除電部材はブラシ状に限定されず、除電ローラなどローラ状等であってもよい。また、転写電流が転写材104を介してレジストローラ22,23に流れ込まないようにするため、転写材104が2次転写点とレジストローラ22,23に同時に接触しているときは、除電ブラシ24をレジストローラ23から離し、接触していないときには、除電ブラシ24をレジストローラ23に接するようにして、レジストローラ22,23を除電する。
【0025】
除電ブラシ24の接離機構は、例えば除電ブラシ24の両端に図示しないソレノイドの可動部を接続し、ソレノイドの可動部が移動して、除電ブラシ24をレジストローラ23に対し接離させる機構が考えられる。さらには、除電ブラシ24の両端に図示しない偏心カムを受けるカム受部を設け、偏心カムをステッピングモータ等の駆動手段によって回転させ、カム受部が偏心カムの大径部に当接するときは、除電ブラシ24がレジストローラ23に接し、カム受部が偏心カムの小径部に当接するときは、除電ブラシ24がレジストローラ23から離れるようにしてもよい。
【0026】
すなわち、転写材104が2次転写部に突入する前に除電ブラシ24をレジストローラ23から離し、転写材104がレジストローラ対22,23を抜けた後に除電ブラシ24をレジストローラ23に接するようにさせればよい。具体的に、除電ブラシ24の離間動作は、レジストローラ22、23の駆動タイミング、2次転写バイアスの印加タイミングと同期させて行うことが考えられる。また、除電ブラシ24の接触動作は、前記転写材検知センサによって転写材104の後端の通過を検知したタイミングから所定時間経過後に行うことが考えられる。
【0027】
前記のように、レジストローラ22,23を絶縁体で構成し、レジストローラ23に除電ブラシ24を接離可能に取り付けることにより、転写前に転写電圧、転写電流の検知を行い、転写電圧を制御するプロセスを行うことなく、高湿下における転写材104を介してレジストローラ22,23に流れ込む電流を抑えることができ、トナーに適切な転写電流を付与することを可能にし、かつ転写材104が通過することによって、摩擦帯電によるレジストローラ22,23の帯電、それによって引き起こされる転写材104への不要な帯電を抑えることを可能にした。
【0028】
前記実施の形態で示した画像形成部の構成は好ましい一例を挙げたにすぎず、これ以外のものを排除するものではない。特許請求の範囲の請求項1に記載の発明特定事項の範囲内で、多少の構成の変更は許容される。また、中間転写ベルト100も無端ベルトの一例にすぎず、これ以外のベルトとしてもよい。さらに、2次転写部に対するレジストローラ対の配置や、レジストローラ対に対する除電ブラシの配置、等も実施に対してそれぞれ適宜に変更、修正することができることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】この発明の一実施の形態であるカラー複写機の2次転写部とレジストローラ対を示す拡大図である。
【図2】同上のカラー複写機の全体の概略構成図である。
【図3】高湿環境下における2次転写部の作用説明用拡大図である。
【符号の説明】
【0030】
10a〜10d 帯電器
11a〜11d 露光器
12a〜12d 現像器
13a〜13d 除電器
14a〜14d クリーナー
15a〜15d 感光体ドラム
16a〜16d 1次転写ローラ
20,21 定着ローラ
22,23 レジストローラ
24 除電ブラシ(除電部材)
30,31 張架ローラ
100 中間転写ベルト
102 2次転写ローラ
103 2次対向ローラ
104 転写材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無端ベルト状の像担持体と、この無端ベルト状の像担持体を巻き付けて回転する対向ローラと、この対向ローラに巻き付けられた前記ベルト状の像担持体に接触して対向ローラと同方向に回転する転写ローラと、この転写ローラと前記ベルト状像担持体の接触する領域に転写材を搬送するために前記転写材の搬送方向上流に配置された1対のレジストローラとを有し、前記転写ローラから対向ローラに電流又は電圧を印加することによって、前記ベルト状の像担持体上に形成されたトナー像を転写材に転写を行う画像形成装置において、前記レジストローラを絶縁体で構成し、前記レジストローラに接離可能な除電部材を備え、前記転写材がレジストローラと接触しているときは、前記除電部材をレジストローラから離し、前記転写材がレジストローラと接触していないときは、前記除電部材をレジストローラと接するようにしていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1記載の画像形成装置において、前記除電部材が除電ブラシ又は除電ローラであることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−3019(P2009−3019A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−161622(P2007−161622)
【出願日】平成19年6月19日(2007.6.19)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】