説明

画像形成装置

【課題】中間転写体に現像剤像を転写するときの現像剤の飛び散りを抑制すると共に記録媒体に対する現像剤像の転写性を向上させる画像形成装置を提供すること。
【解決手段】感光体ドラム16L上に形成したクリアトナー像を中間転写ベルト24に転写する画像形成ユニット14Lと、感光体ドラム16Y〜16K上に形成した各有色トナー像を中間転写ベルト24上のクリアトナー像に重なるように転写する画像形成ユニット14Y〜14Kと、各色トナー像を記録用紙Pに転写する二次転写ロール36と、記録用紙P上のトナー像を定着させる定着装置40と、記録用紙Pの種類に応じてベタ画像濃度の90%を上限値として各画像形成ユニット14Y〜14Kに各有色トナー像を形成させる制御部30と、を画像形成装置10が備えたことで中間転写ベルト24にトナー像を転写するときのトナーの飛び散りが抑制され、記録用紙Pに対するトナー像の転写性が向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
感光体ドラムから中間転写ベルトへトナー像を一次転写する中間転写方式を採用したフルカラーの画像形成装置において、中間転写ベルトへ複数色のトナー像を多重転写する場合に上層に重ねられたトナー像(後から転写されたトナー像)のトナーが飛び散ることがある。このトナーの飛び散り(以下、ブラー)は多重転写によって単位面積当たりのトナーの量(各色トナーの量の総和)が増加するほど発生しやすいため、単位面積当たりのトナーの量を規定する技術が従来に開示されている(例えば、特許文献1〜3参照)。
【0003】
また、特許文献2では、中間転写体ベルトに無色(透明)トナー像を形成し、その上に各有色トナー像を多重転写することで、各色トナー像を記録媒体へ転写するときの有色トナー像の転写性を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−344851号公報
【特許文献2】特開2007−155963号公報
【特許文献3】特開2007−049338号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、中間転写体に現像剤像を転写するときの現像剤の飛び散りを抑制すると共に、記録媒体に対する現像剤像の転写性を向上させる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1に記載の画像形成装置は、入力された画像情報に基づいて第1像保持体上に透明現像剤像を形成し、前記透明現像剤像を中間転写体に転写する透明現像剤像形成手段と、前記透明現像剤像形成手段よりも前記中間転写体の移動方向下流側に設けられ、前記画像情報に基づいて第2像保持体上に有色現像剤像を形成し、前記中間転写体に転写された前記透明現像剤像に重なるように前記有色現像剤像を前記中間転写体に転写する有色現像剤像形成手段と、前記中間転写体に転写された前記透明現像剤像及び前記有色現像剤像を記録媒体に転写する転写手段と、前記転写手段によって前記記録媒体に転写された前記透明現像剤像及び前記有色現像剤像を定着させる定着手段と、前記記録媒体の種類に応じて、ベタ画像濃度の予め決められた閾値を上限値として前記有色現像剤像形成手段に前記有色現像剤像を形成させる制御手段と、を有する。
【0007】
本発明の請求項2に記載の画像形成装置は、前記記録媒体の種類を判定し、判定した前記記録媒体の種類が表面に凹凸が形成された凹凸記録媒体の場合に、前記制御手段はベタ画像濃度の前記閾値を上限値として前記有色現像剤像形成手段に前記有色現像剤像を形成させる。
【0008】
本発明の請求項3に記載の画像形成装置は、前記制御手段は、前記画像情報の画像濃度がベタ画像濃度の前記閾値を超える場合、前記画像情報の画像濃度をベタ画像濃度の前記閾値に制限し、前記画像情報の画像濃度がベタ画像濃度の前記閾値を以下の場合、前記画像情報の画像濃度を制限せずに前記有色現像剤像形成手段に前記有色現像剤像を形成させる。
【0009】
本発明の請求項4に記載の画像形成装置は、前記制御手段は、前記画像情報の画像濃度にベタ画像濃度の前記閾値が上限値となるように予め決定した値を乗じて前記有色現像剤像形成手段に前記有色現像剤像を形成させる。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明は、本構成を有していない場合と比較して、中間転写体に現像剤像を転写するときの現像剤の飛び散りを抑制できると共に、記録媒体に対する現像剤像の転写性を向上させられる。
【0011】
請求項2の発明は、本構成を有していない場合と比較して、凹凸記録媒体に対する現像剤像の転写性を効果的に向上させることができる。
【0012】
請求項3の発明は、本構成を有していない場合と比較して、色再現性を確保しつつ、中間転写体に現像剤像を転写するときの現像剤の飛び散りを抑制できる。
【0013】
請求項4の発明は、本構成を有していない場合と比較して、中間転写体に現像剤像を転写するときの現像剤の飛び散りを効果的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1実施形態の画像形成装置の構成を示す概略構成図である。
【図2】本発明の第1実施形態の制御部の補正部における補正処理を示す説明図である。
【図3】試験例におけるエンボスグレードとクリアトナーLtのTMAとの関係を示すグラフである。
【図4】試験例におけるブラーグレードと総和TMAとの関係を示すグラフである。
【図5】試験例における総和TMAと画像濃度Cinとの関係を示すグラフである。
【図6】試験例における画像濃度CinとL*との関係を示すグラフである。
【図7】試験例におけるエンボス紙転写性とエンボス紙ブラーの結果を示す表である。
【図8】本発明の第2実施形態の制御部の補正部における補正処理を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1実施形態)
以下、本発明の一実施形態について、図に基づいて詳細に説明する。なお、記録媒体としては記録用紙Pを例に採る。また、透明現像剤としては、透明トナー(以下「クリアトナー」という)Ltを例に採る。このクリアトナーLtは、後述する定着装置40によって記録用紙Pに定着された後に透明となるトナーであり、有色現像剤としての有色トナーに対して色の変化に影響を与え難いトナーである。また、各色毎に共通する部位については、符号の後に各色を示す英字を付して説明する。
【0016】
まず、本実施形態に係る画像形成装置10の構成について簡単に説明する。図1に示すように、画像形成装置10は、入力された画像情報に基づく各色のトナー像を、後述する無端ベルト状の中間転写ベルト24に転写してフルカラーの画像を形成する5連タンデム方式の画像形成手段12を有している。
【0017】
画像形成手段12は、記録用紙Pの搬送方向上流側から順にクリア(L)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色の画像を出力する電子写真方式の画像形成ユニット14L、14Y、14M、14C、14Kを有しており、クリア(L)の画像形成ユニット14Lが、本発明の現像剤像形成手段に対応し、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各画像形成ユニット14Y〜14Kが、本発明の有色現像剤像形成手段に対応している。
【0018】
また、各画像形成ユニット14L〜14Kは、中間転写ベルト24の移動方向(矢印Bで示す)に沿って、互いに所定距離離隔して並設されている。そして、各画像形成ユニット14L〜14Kは、像保持体としての感光体ドラム16L〜16Kを有しており、この感光体ドラム16L〜16Kは、導電性の金属製円筒体の表面(周面)に、有機光導電体等からなる感光層が積層されて構成され、図示の矢印A方向(時計回り方向)へ所定のプロセススピードで回転駆動するようになっている。
【0019】
なお、感光体ドラム16Lが、本発明の第1像保持体に対応し、感光体ドラム16Y〜16Kが、本発明の第2像保持体に対応している。また、感光層は、電荷発生層と電荷輸送層が順次積層された機能分離型であり、通常は高抵抗であるが、レーザー光線が照射されると、レーザー光線が照射された部分の比抵抗が変化する性質を有している。
【0020】
各感光体ドラム16L〜16Kの周囲には、その回転方向上流側から順に、感光体ドラム16の表面(周面)を所定の電位に一様に帯電する帯電手段としての帯電器18L〜18Kと、一様に帯電された感光体ドラム16L〜16Kの表面(周面)に、色分解された画像データ(画像信号)に基づくレーザー光線(像光)を照射し、露光によって静電潜像を形成する露光手段としての露光装置20L〜20Kと、帯電したトナー(現像剤)を静電潜像に転移させて(現像して)トナー像とする現像手段としての現像装置22L〜22Kと、感光体ドラム16L〜16Kに接触する経路で周回可能に張架された無端ベルト状の中間転写体としての中間転写ベルト24と、感光体ドラム16L〜16K上に形成されたトナー像を中間転写ベルト24へ転写する一次転写手段としての一次転写ロール26L〜26Kと、一次転写後に感光体ドラム16L〜16Kの表面に残留した転写残トナーを除去する清掃手段としてのクリーニング装置28L〜28Kと、が配置されている。
【0021】
各クリーニング装置28L〜28Kには、感光体ドラム16L〜16Kの表面(周面)に圧接し、感光体ドラム16L〜16Kの回転方向(矢印A方向)と反対方向に回転駆動して、感光体ドラム16L〜16Kから転写残トナーを擦り取るブラシロール29L〜29Kが設けられている。
【0022】
また、各一次転写ロール26L〜26Kは、中間転写ベルト24の内側に配置され、各感光体ドラム16L〜16Kにそれぞれ対向した位置に設けられている。そして、一次転写ロール26L〜26Kによる感光体ドラム16L〜16Kと中間転写ベルト24との接触部が一次転写部(一次転写位置)T1とされている。
【0023】
また、各一次転写ロール26L〜26Kには、一次転写バイアスを印加するバイアス電源(図示省略)がそれぞれ接続されている。更に、各バイアス電源は、制御手段としての制御部30に制御されて、各一次転写ロール26L〜26Kに印加する一次転写バイアスが変更可能になっている。また、図示の帯電器18L〜18Kは、ロール形状の接触帯電器とされているが、スコロトロンや固体放電器等の非接触帯電器を用いることも可能である。
【0024】
一方、中間転写ベルト24は、一次転写ロール26L〜26Kと、図示しない駆動源により回転駆動される駆動ロール32と、中間転写ベルト24の張力を調整するテンションロール33と、後述する二次転写部(二次転写位置)T2に配置されたバックアップロール34と、従動ロール35と、に巻き掛けられており、感光体ドラム16の回転に同期して矢印B方向に回転移動(周動)するようになっている。
【0025】
なお、この中間転写ベルト24は、例えば、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、フッ素系樹脂などの樹脂材料に、カーボンやイオン導電物質などの導電性付与のための物質を分散させて形成されている。
【0026】
また、中間転写ベルト24を挟んでバックアップロール34と対向する位置には、後述する搬送手段としての搬送機構42によって搬送される記録用紙P上に、中間転写ベルト24上のトナー像を転写する転写手段としての二次転写ロール36が設けられている。この二次転写ロール36には、後述する第1搬送ベルト50が巻き掛けられており、この第1搬送ベルト50を介して二次転写ロール36と中間転写ベルト24との接触部が二次転写部(二次転写位置)T2とされている。
【0027】
また、この画像形成装置10は、二次転写ロール36によって記録用紙P上にトナー像を転写した後に、中間転写ベルト24上に残留する転写残トナーを除去するトナー除去装置38と、二次転写ロール36によって記録用紙P上に転写されたトナー像を定着する定着手段としての定着装置40と、を備えている。
【0028】
搬送機構42は、用紙トレイ44に収容された記録用紙Pを1枚ずつ搬送するピックアップロール46と、記録用紙Pの搬送経路に複数(図示のものは4個)設けられた一対の搬送ロール47と、二次転写部(二次転写位置)T2へ記録用紙Pを供給するためのガイド部材48と、二次転写ロール36とガイドロール52とに巻き掛けられた第1搬送ベルト50と、第1搬送ベルト50よりも記録用紙Pの搬送経路の下流側に配置され、ガイドロール54、56に巻き掛けられた第2搬送ベルト58と、定着装置40の下流側に設けられた排紙トレイ(図示省略)等から構成されている。
【0029】
この搬送機構42により、用紙トレイ44に収容された記録用紙Pが、二次転写ロール36(第1搬送ベルト50)とバックアップロール34とが中間転写ベルト24を挟んで対向する二次転写部(二次転写位置)T2へ搬送され、二次転写部(二次転写位置)T2から定着装置40へ搬送され、定着装置40から排紙トレイへ搬送される構成である。
【0030】
なお、透明トナーとしては、有色トナーよりも低融点、低粘度の、色素を含有しない透明な熱可塑性樹脂を用いている。
【0031】
次に本発明の制御手段としての制御部30について詳細に説明する。
制御部30は、記録用紙Pの種類を判定するCPUと、後述する操作部64で入力された記録用紙の固有情報(サイズ、種類、坪量など)を記憶する不揮発性のメモリと、後述する入力画像情報Dを補正する補正部31と、を備えている。
【0032】
また、画像形成装置10の外部には、ユーザが本装置の画像形成条件を設定するための操作部64が設けられており、この操作部64は制御部30のCPUに接続されている。操作部64で設定された画像形成条件は、CPUを介してメモリに記憶されるようになっている。この画像形成条件の一つである記録用紙の種類は、操作部64の操作パネル上で各種項目を選択して入力できるようになっており、CPUは、操作部64で入力された記録用紙Pの種類が表面に凹凸を機械的に加工(形成)した本発明の凹凸記録媒体としてのエンボス紙に該当すると判定した場合、入力画像情報Dを補正部31で補正するようになっている。なお、本実施形態では、エンボス紙に対しては画像濃度が100%となるようにクリアトナー像を形成するようになっている。
【0033】
また、制御部30のCPUは、外部端末(画像形成装置10に入力画像情報を送信可能なPC)や装置に組み込まれた光学読取装置(スキャナ)などから入力画像情報Dを受け取るようになっている。ここで、CPUが記録用紙Pの種類をエンボス紙と判定している場合には、入力画像情報Dは補正部31で入力画像情報D’に補正される。そして、CPUは入力画像情報D’を各色毎に色分解した画像情報D’(L)〜(K)に変換して各画像形成ユニット14L〜14Kに送信している。なお、CPUが記録用紙Pの種類をエンボス紙よりも表面の凹凸が小さい非凹凸記録媒体としての例えば普通紙と判定している場合には、入力画像情報Dは補正されずに各色毎に色分解した画像情報に変換して各画像形成ユニット14L〜14Kに送信するようになっている。
【0034】
次に補正部31における補正について説明する。
図2に示すように、補正部31では、入力画像情報Dの画像濃度Cinをベタ画像の画像濃度(以下、ベタ画像濃度)を100%としたときの90%が上限値となるように補正している。具体的に説明すると、補正部31における画像濃度Cinの補正は、入力画像情報Dの画像濃度Cinのベタ画像濃度の90%を超える部分を一律ベタ画像濃度の90%に補正している。なお、図2中では、画像濃度Cinを補正したものを画像濃度C’inとして示している。このようにして、入力画像情報Dは、画像濃度Cinの上限値がベタ画像濃度の90%に補正されて入力画像情報D’に補正される。そして、この入力画像情報D’に基づいた画像が記録用紙Pに形成される。また、図2中では、制御部30のCPUが記録用紙Pをエンボス紙と判定して入力画像情報Dが補正されるモードを第2モード、記録用紙Pが普通紙と判定されて入力画像情報Dを補正しないモードを第1モードとして示している。
【0035】
以上のような構成の画像形成装置10は、次のように動作してフルカラー画像を形成する。なお、各色の画像形成ユニット14L〜14Kは、略同一の構成を有しているため、ここでは画像形成ユニット14Yにより、イエロートナー像を形成する動作について説明する。また、イエロートナー像を中間転写ベルト24に転写する前に、既に画像形成ユニット14Lにより、クリアトナー像が中間転写ベルト24に転写されている。なお、この中間転写ベルト24上に転写されたクリアトナー像は、各有色トナー像を重ね合わせたフルカラートナー像よりも若干大きく形成されている。
【0036】
まず、帯電器18Yによって感光体ドラム16Yの表面がマイナスの電位に一様に帯電される。一様に帯電された感光体ドラム16Yの表面には、制御部30から送られて来るイエロー用の画像情報に従って、露光装置20Yによりレーザー光線が照射される。すなわち、感光体ドラム16Yの感光層にイエロー印字パターンの静電潜像が形成される。
【0037】
なお、静電潜像とは、帯電により感光体ドラム16Yの表面(感光層)に形成される像であり、感光層において、レーザー光線が照射された部分の比抵抗が低下し、感光体ドラム16Yの表面に帯電した電荷が流れる一方、レーザー光線が照射されなかった部分の電荷が残留することによって形成される、いわゆるネガ潜像である。
【0038】
こうして、感光体ドラム16Y上に形成された静電潜像は、感光体ドラム16Yの回転により所定の現像位置まで搬送される。そして、この現像位置で、感光体ドラム16Y上の静電潜像が、現像装置22Yによって可視像(トナー像)化される。現像装置22Y内には、例えば、少なくともイエロー着色剤と結着樹脂とを含む体積平均粒子径が3μm〜6μmの範囲のイエロートナーが収容されている。
【0039】
イエロートナーは、現像装置22Yの内部で撹拌されることで摩擦帯電し、感光体ドラム16Yの表面の帯電荷と同極性(−)の電荷を有している。したがって、感光体ドラム16Yの表面が現像装置22Yを通過して行くことにより、感光体ドラム16Yの表面の除電された潜像部にのみイエロートナーが静電的に付着し、潜像がイエロートナーによって現像される。その後、感光体ドラム16Yは、引き続き回転し、その表面に現像されたトナー像が、一次転写部(一次転写位置)T1へ搬送される。
【0040】
感光体ドラム16Yの表面のイエロートナー像が一次転写部(一次転写位置)T1へ搬送されると、一次転写ロール26Yに所定の一次転写バイアスが印加され、感光体ドラム16Yから一次転写ロール26Yに向かう静電気力がトナー像に作用し、感光体ドラム16Yの表面のトナー像が中間転写ベルト24の表面に転写される。このとき印加される一次転写バイアスは、トナーの極性(−)と逆の極性(+)であり、例えば、画像形成ユニット14Yでは、制御部30によって定電流制御されている。
【0041】
感光体ドラム16Yの表面の転写残トナーは、クリーニング装置28Yによりクリーニングされる。また、画像形成ユニット14L、14M〜14Kの一次転写ロール26L、26M〜26Kに印加される一次転写バイアスも上記と同様に制御されている。こうして、画像形成ユニット14Yにてイエロートナー像が転写された中間転写ベルト24は、残りの色の画像形成ユニット14M〜14Kへ順次搬送され、各色のトナー像が重ねられるようにして転写(多重転写)される。このようにして中間転写ベルト24上にフルカラートナー像が形成される。このとき、フルカラートナー像はクリアトナー像の上に重ねられる。
【0042】
各画像形成ユニット14L〜14Kを通過してフルカラートナー像が形成された中間転写ベルト24は、図示の矢印B方向に周動搬送され、中間転写ベルト24の内面(裏面)に接するバックアップロール34と、中間転写ベルト24の像保持面側に配置された二次転写ロール36(第1搬送ベルト50)とで構成された二次転写部(二次転写位置)T2へ至る。
【0043】
一方、記録用紙Pが、搬送機構42によって二次転写ロール36(第1搬送ベルト50)と中間転写ベルト24との間に所定のタイミングで給紙され、所定の二次転写バイアスが二次転写ロール36に印加される。このとき印加される二次転写バイアスは、トナーの極性(−)と逆の極性(+)であり、中間転写ベルト24から記録用紙Pに向かう静電気力がトナー像に作用し、中間転写ベルト24の表面のトナー像が記録用紙Pの表面に転写される。
【0044】
また、このときの二次転写バイアスは、二次転写部(二次転写位置)T2の抵抗を検出する抵抗検出手段(図示省略)により検出された抵抗に応じて決定され、定電圧で制御されている。その後、記録用紙Pは定着装置40へと送り込まれ、トナー像が加熱・加圧され、色重ねされた(多重転写された)トナー像が溶融されて、記録用紙Pの表面へ永久定着される。こうして、フルカラートナー像の定着が完了し、フルカラー画像が記録された記録用紙Pは、排紙トレイへ向けて搬出され、一連のフルカラー画像形成動作が終了する。
【0045】
ここで、画像形成装置10では、中間転写ベルト24に転写されたクリアトナー像の上に各有色トナー像が重ねられるように転写(多重転写)されるため、二次転写部T2でトナー像を記録用紙Pへ転写する際の転写性が向上する。具体的には、二次転写部T2で中間転写ベルト24上のトナー像に静電気力が作用した場合に、中間転写ベルト24に接触しているクリアトナーLtが中間転写ベルト24から剥離できずに若干残っても中間転写ベルト24に接触していない有色トナー像は中間転写ベルト24から剥離できないクリアトナーLtから剥がれて記録用紙Pに転写される。このため、記録用紙Pに形成された画像は少なくとも有色トナーが十分に転写されているため入力画像情報と比較して十分な色再現性が確保される。
【0046】
次に、記録用紙Pの種類がエンボス紙の場合の作用について説明する。エンボス紙は、表面に凹凸が機械的に加工(形成)されているため、二次転写部T2において、中間転写ベルト24上からトナー像を転写する際にトナー(トナー像)を引き付ける静電気力が凹部と凸部とで異なる。凹部と凸部で静電気力が異なるのは、二次転写部T2において、エンボス紙の凹部は、中間転写ベルト24までの距離が凸部よりも長いため、二次転写ロール36によって形成される転写電界の強さが凸部よりも弱くなるためである。このため、転写後のエンボス紙の凹部には、中抜け(白抜け)や低濃度(薄い)などの転写不良が生じることがある。しかし、画像形成装置10では、中間転写ベルト24に転写されたクリアトナー像の上に各有色トナー像が重ねられるように転写されるため、二次転写部T2でトナー像をエンボス紙に転写する際の転写性が向上する。このため、エンボス紙に形成された画像は入力画像情報と比較して十分な色再現性が確保される。
【0047】
また、記録用紙Pの種類を制御部30がエンボス紙と判定した場合、入力画像情報Dは入力画像情報D’に補正され、この入力画像情報D’が各色毎に色分解した画像情報D’(L)〜(K)に変換されて各画像形成ユニット14L〜14Kに送信され、各色トナー像形成、転写、定着工程を経てエンボス紙に画像が形成される。ここで、制御部30では、入力画像情報Dの画像濃度Cinのベタ画像濃度の90%を超えた部分を一律ベタ画像濃度の90%となるように補正されるため、入力画像情報Dのベタ画像濃度の90%を超えた部分の単位面積あたりのトナー量(以下、適宜TMAと記載する。なお単位はg/m)がベタ画像濃度100%のときよりも少なくなる。なお、クリアトナーLtは、画像の濃淡に影響を与えないため、画像濃度に比例して少なくなるのは有色トナーのTMAとなる。つまり、入力画像情報Dの画像濃度Cinが補正されることで、一次転写部T1において有色トナー像を中間転写ベルト24上のクリアトナー像に多重転写する際の各有色トナーの飛び散りが抑制される。
【0048】
また、後述するが、クリアトナーLtのTMAと各有色トナーのTMAの合計値との総和TMAは10.5g/m以下に設定することが好ましい。これは、総和TMAが14g/mを超えると、単位面積あたりのトナー量が多すぎて良好な転写性が得られなくなるためである。さらに、後述するが、クリアトナーLtのTMAは、3.5g/m以上に設定することが好ましい。これは、クリアトナーLtのTMAは3.5g/m以上ないとエンボス紙の凹部に有色トナーを効果的に転写できないためである。
【0049】
そして、後述するが、図6に示すように、入力画像情報Dの画像濃度Cinはベタ画像濃度の90%に補正しても色空間L*にはほぼ変化がないため、記録用紙Pに形成された画像(入力画像情報D’によって形成された画像)は、入力画像情報Dに基づいて形成された画像と比較して十分な色再現性が確保される。
【0050】
(第2実施形態)
次に、本発明の画像形成装置の第2実施形態について図に基づいて説明する。第2実施形態の画像形成装置は、制御部130の補正部131による入力画像情報Dに対して行う補正が異なっている。なお、第1実施形態と同一部材については、同一符号を付して説明を省略する。
【0051】
図8に示すように、制御部130の補正部131では、第1実施形態の制御部30と同様に入力画像情報Dの画像濃度Cinの上限値をベタ画像濃度の90%に補正している。具体的には、CPUに入力された入力画像情報Dの画像濃度Cinに0.9を乗じた値を画像濃度C’inとする補正をしている。この制御部130の補正部131では、入力画像情報Dの画像濃度Cin全てに0.9を乗じるため、エンボス紙に形成された画像の濃淡が滑らかになる。
【0052】
なお、第2実施形態では、入力画像情報Dの画像濃度Cinに0.9を乗じる補正を行ったが、本発明はこの構成に限定されず、0.9以外を乗じてもよい。
【0053】
上述の実施形態では、記録用紙Pの種類がエンボス紙の場合に所定の補正を行う構成としたが、本発明はこの構成に限定される必要はなく、普通紙の場合にも所定の補正を行う構成としてもよい。
【0054】
以上、実施形態を挙げて本発明の実施の形態を説明したが、これらの実施形態は一例であり、要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施できる。また、本発明の権利範囲がこれらの実施形態に限定されないことは言うまでもない。
【0055】
(試験例)
本発明による改善効果を明確にするために以下の実験を行った。
【0056】
まず、クリアトナーLtのTMAとエンボス紙への転写性との関係について第1実施形態の画像形成装置10を用いて試験を行った。試験には、3種類のエンボス紙(レザック66:151gsm、204gsm、及び250gsm)を用い、これらのエンボス紙に25×25mmのベタ画像を形成し、各エンボス紙に対する転写性(凹部における中抜け、及び濃度を測定して評価)について評価した。結果を図3に示す。表中のエンボスグレード(G0〜8)は、数値が低いほど転写性が良好であることを示している。なお、エンボスグレードG3以下が許容できる画像である。
【0057】
図3に示すように、クリアトナーLtのTMAが多いほどエンボスグレードが低くなる。つまり、クリアトナーLtのTMAを多くすることで、良好な転写性が得られることが分かる。特に、クリアトナーLtのTMAを3.5g/m以上にすることで、3種類のエンボス紙全てがエンボスグレードG3以下となる。以上のことから、クリアトナーのTMAは3.5g/m以上に設定することが好ましいことが分かる。
【0058】
次に、エンボス紙に発生するブラーと、クリアトナーLtのTMA及び各有色トナー(本試験では各有色トナーによってブルーを表現している。)のTMAの合計値の総和TMAとの関係について第1実施形態の画像形成装置10を用いて試験を行った。試験には、エンボス紙(レザック66:151gsm)を用い、このエンボス紙にクリアトナーLtとブルーを重ねたライン画像を形成してブラーの発生状況について評価した。ブラーの評価は、予め5段階に定量化されている限度見本と比較し、最も近いものをその画質サンプルのグレードとする方法により評価した。結果は図4に示す。表中のブラーグレード(G0〜4)は、数値が低いほどブラーの発生量が少ないことを示している。
【0059】
図4に示すように、総和TMAが10.5g/mよりも多くなるほどブラーグレードが徐々に悪化する。つまり、総和TMAが10.5g/m以下になるとブラーの発生を効果的に抑制することができ、10.5g/mを超えるとブラーが発生し始めることが分かる。
【0060】
また、図5では、イエロー、マゼンダ、シアン、及びクリア(透明)の各色トナーを表現する際の画像濃度Cinと各色トナーのTMAの関係について示している。クリアトナーLtのTMAは入力画像情報の画像濃度Cinに関係なく一定(略4.5g/cm)となっている。イエロートナーYt、マゼンダトナーMt及びシアントナーCtについては画像濃度Cinがベタ画像濃度の100%のときに各TMAが略5g/mとなっている。また、ブルーの画像濃度Cinがベタ画像濃度の100%のときのTMAは14g/mとなっている。この図5に前述のエンボス紙ブラー評価試験で得たクリアトナーLtのTMAと有色トナー(ブルーを表現)のTMAの合計値の総和TMAの10.5g/mに対応する値を求めると画像濃度Cinのベタ画像濃度の90%が得られる。つまり、この画像濃度Cinがベタ画像濃度の90%を超えるとブラーの発生が抑制し難くなることが分かる。従って、画像濃度Cinはベタ画像濃度の90%以下に設定することでブラーの発生を抑制することができる。
【0061】
また、図6では、画像濃度CinとシアントナーCtのL*(色空間)の関係について示している。この図6では、画像濃度Cinをベタ画像濃度の0〜100%に変化させて画像を形成したときのL*の変化について示している。この図6において、画像濃度Cinがベタ画像濃度の90%と100%のとき、L*にほぼ変化がないことが分かる。つまり、画像濃度Cinのベタ画像濃度(画像濃度100%)から90%に補正しても色再現性がほぼ変化しないことがわかる。
従って、図5及び図6から画像濃度Cinをベタ画像濃度の90%に補正しても十分な色再現性が得られ、さらには有色トナーのTMAがベタ画像濃度の100%のときよりも減少するためブラーの発生が抑制されることが分かる。
【0062】
上述の実験結果などを踏まえ、第1実施形態の画像形成装置10を第1モードにした場合と、第2モードにした場合とで夫々エンボス紙に画像を形成して色再現性及びブラーについての評価を行った。なお、使用したエンボス紙は、上述のレザック66の151gsm、204gsm、及び250gsmである。結果を図7中に示す。なお、図中の○は良好な結果を示し、×は良好でない結果を示している。なお、画像形成装置10のクリアトナーLtのTMAは3.5g/mに設定した。
【0063】
試験の結果、第1モードよりも第2モード(補正有り)でブラーの発生が抑制されることが分かる。つまり、エンボス紙に対して画像を形成する際に、入力画像情報Dの画像濃度Cinの上限値をベタ画像濃度の90%に補正することで、ブラーの発生を抑制できることが分かる。なお、クリアトナーLtのTMAは3.5g/mに設定しているため良好な転写性、色再現性が得られる。
【0064】
なお、上記90%に設定される閾値は、各画像形成装置に応じて、85%から95%に適宜設定してもよい。上記範囲であれば、画像濃度の階調性が維持されやすい。
【符号の説明】
【0065】
10 画像形成装置
14L 画像形成ユニット(透明現像剤像形成手段)
14Y〜K 画像形成ユニット(有色現像剤像形成手段)
16L 感光体ドラム(第1像保持体)
16Y〜K 感光体ドラム(第2像保持体)
24 中間転写ベルト(中間転写体)
30 制御部(制御手段)
31 補正部(補正手段)
36 二次転写ロール(転写手段)
40 定着装置(定着手段)
130 制御部(制御手段)
131 補正部(補正手段)
P 記録用紙(記録媒体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力された画像情報に基づいて第1像保持体上に透明現像剤像を形成し、前記透明現像剤像を中間転写体に転写する透明現像剤像形成手段と、
前記透明現像剤像形成手段よりも前記中間転写体の移動方向下流側に設けられ、前記画像情報に基づいて第2像保持体上に有色現像剤像を形成し、前記中間転写体に転写された前記透明現像剤像に重なるように前記有色現像剤像を前記中間転写体に転写する有色現像剤像形成手段と、
前記中間転写体に転写された前記透明現像剤像及び前記有色現像剤像を記録媒体に転写する転写手段と、
前記転写手段によって前記記録媒体に転写された前記透明現像剤像及び前記有色現像剤像を定着させる定着手段と、
前記記録媒体の種類に応じて、ベタ画像濃度の予め決められた閾値を上限値として前記有色現像剤像形成手段に前記有色現像剤像を形成させる制御手段と、
を有する画像形成装置。
【請求項2】
前記記録媒体の種類を判定し、判定した前記記録媒体の種類が表面に凹凸が形成された凹凸記録媒体の場合に、前記制御手段はベタ画像濃度の前記閾値を上限値として前記有色現像剤像形成手段に前記有色現像剤像を形成させる請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記画像情報の画像濃度がベタ画像濃度の前記閾値を超える場合、前記画像情報の画像濃度をベタ画像濃度の前記閾値に制限し、前記画像情報の画像濃度がベタ画像濃度の前記閾値以下の場合、前記画像情報の画像濃度を制限せずに前記有色現像剤像形成手段に前記有色現像剤像を形成させる請求項1又は請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記画像情報の画像濃度にベタ画像濃度の前記閾値が上限値となるように予め決定した値を乗じて前記有色現像剤像形成手段に前記有色現像剤像を形成させる請求項1又は請求項2に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−224126(P2010−224126A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−70018(P2009−70018)
【出願日】平成21年3月23日(2009.3.23)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】