説明

画像形成装置

【課題】廃棄シートを発生させることなく記録シートSの記録面に層を形成し、且つ、プリント生産性を向上させることができる画像形成装置を提供する。
【解決手段】ロール状に巻かれたラップフィルムFをロールから引き出す帯電ローラ(不図示)と、帯電ローラによって引き出された後、現像によって表面にトナー像が形成されたラップフィルムFを記録シートSの記録面に密着させる転写ローラ7や搬送ローラ対71等からなる密着手段と、同記録面に密着した後のラップフィルムFにおける、シート先端に対応する位置と連続シート送り時紙の紙間領域の後端との境界を切断する第1ロータリーカッター90aと、同記録面に密着した後のラップフィルムF部材における、シート後端に対応する位置と連続シート送り時の紙間領域の先端との境界を切断する第2ロータリーカッター90bとを設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真プロセスユニットやインクジェットヘッドなどの記録手段によって用紙等の記録シートに画像を記録する複写機、ファクシミリ、プリンタ等の画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、画像の光沢性を向上させるなどの目的から、用紙の画像記録面に透明層などの層を形成する画像形成装置が知られている。特許文献1に記載の画像形成装置もその1つである。この画像形成装置は、電子写真プロセスによって用紙にトナー像を形成する手段や、ロール状に巻かれたシート部材をロールから引き出しながら巻き取り部材に巻き取る巻き取り手段などを有している。シート部材は、基層とこれの表面に積層された透明の感熱性粘着層とからなり、ロールから巻き取り部材に至る途中で、加熱ローラと加圧ローラとの当接による加熱ニップを通過する。この加熱ニップには、トナー像を形成した用紙が所定のタイミングで送り込まれて、シート部材の感熱性粘着層に密着せしめられる。そして、加熱ニップ内でシート部材とともに加熱されながら加圧されることで、透明の感熱性粘着層がシート部材からトナー像記録面に転移する。これにより、用紙のトナー像記録面に感熱性粘着層からなる透明層を形成することで、画像の光沢性を高めることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、この画像形成装置では、加熱性粘着層を転移させた後の基層だけからなる不要な廃棄シートを発生させてしまうので、環境保護の観点から好ましくないという不具合があった。
【0004】
一方、本発明者らは、このような不具合を引き起こすことなく、用紙の記録面に層を形成する新規な画像形成装置を開発中である。この画像形成装置は、ロール状に巻かれたフィルム部材をロールから引き出して用紙の記録面に密着させた状態で、フィルム部材を用紙の先端位置や後端位置で切断するカッターを備えている。そして、用紙の長さに切ったフィルム部材を用紙の記録面に貼り付けることで、記録面上にフィルム部材からなる層を形成する。フィルム部材を全て層として用紙に貼り付けることで、感熱性粘着層を記録紙に転移させた後の基層だけからなる廃棄シートを発生させることなく用紙の記録面に層を形成することができる。
【0005】
ところが、この開発中の画像形成装置では、プリント生産性を向上させることが困難であるという問題があった。具体的には、用紙に密着させたフィルム部材を用紙に合わせて切断する際に、用紙やフィルム部材の搬送を一時停止させると、プリント生産性を低下させてしまう。ロータリーカッターなど、回転軸を中心にして回転しながら所定の回転角度範囲でフィルム部材を搬送方向に送りながら切断する回転切断手段を用いれば、搬送中のフィルム部材を切断することは可能である。しかし、回転切断手段では、フィルム部材に対する切断処理を開始してから完了するまでの間に、フィルム部材を搬送方向に送り続ける必要があることから、フィルム部材の切断間隔を小さくするのに限界がある。具体的には、回転切断手段は、回転する回転刃を搬送中のフィルム部材に接触させ始めてから、回転刃によってフィルム部材を切断しつつ搬送方向に送る工程を経て、回転する回転刃を搬送中のフィルム部材から離間させるまでの切断処理中に、回転刃をフィルム部材に接触させ続ける。このような切断処理においては、切断処理の間における回転刃の回転移動量と同じ量だけフィルム部材を搬送方向に移動させる必要がある。このため、フィルム部材の切断間隔を、前述の回転移動量よりも小さくすることができない(切断可能最低間隔)。複数の用紙に対して画像を連続して形成する連続プリントモードでは、画像形成装置の用紙搬送路内で、先行する用紙と後続の用紙との間に、所定の間隔をあけてそれら用紙をそれぞれ搬送方向に搬送するのが一般的である。このため、用紙に密着せしめられるフィルム部材には、先行する用紙に密着させる領域と、後続の用紙に密着させる領域との間に、何れの用紙にも密着させない紙間領域を設ける必要がある。連続プリント中には、順次発生するその紙間領域を切り取っていく必要があるが、紙間領域の長さは前述の切断可能最低間隔よりも短くなることが一般的である。このため、連続プリントモードでは、搬送中のフィルム部材の紙間領域先端を切断した後、フィルム部材を少しだけ逆方向にバックさせてから紙間領域後端を切断する処理が必要になる。このような処理を実施すると、回転切断手段を用いているにもかかわらず、プリント生産性を向上させることができなかったり、却って悪化させたりしてしまう。
【0006】
本発明は、以上の背景に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、感熱性粘着層を記録紙に転移させた後の基層だけからなる廃棄シートを発生させることなく記録シートの記録面に層を形成し、且つ、プリント生産性を向上させることができる画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、記録シートに画像を記録する記録手段を備える画像形成装置において、ロール状に巻かれたフィルム部材をロールから引き出す引き出し手段と、前記引き出し手段によって引き出されたフィルム部材を記録シートの記録面に密着させる密着手段と、回転軸を中心にして所定の回転角度範囲で回転するのに伴って、前記記録面に密着した後のフィルム部材における、記録シート先端に対応する位置と連続シート送り時のシート間領域の後端との境界を切断する第1回転切断手段と、該第1回転切断手段とは別の回転切断手段であり、前記記録面に密着した後のフィルム部材における、記録シート後端に対応する位置と連続シート送り時のシート間領域の先端との境界を切断する第2回転切断手段とを設けたことを特徴とするものである。
また、請求項2の発明は、請求項1の画像形成装置において、少なくとも、移動する表面に潜像を担持する潜像担持体と、前記潜像をトナーによって現像する現像手段と、前記潜像担持体と前記現像手段とが対向する現像位置にて、前記潜像担持体の表面に密着したフィルム部材上にトナーを付着させる現像が可能になるように、前記潜像担持体の表面の全領域のうち、前記現像手段に対向する現像位置に進入する前の領域である現像前領域に対してフィルム部材を密着させる密着手段と、前記現像位置を通過したフィルム部材の表面上のトナー像を記録シートに転写する転写手段と、前記現像位置を通過したフィルム部材を前記潜像担持体の表面から剥離する剥離手段とで、前記記録手段を構成したことを特徴とするものである。
また、請求項3の発明は、請求項2の画像形成装置において、前記転写手段を通過した記録シート及びフィルム部材を加熱する加熱手段を設けるとともに、前記転写手段を通過した後、前記加熱手段に進入する前のフィルム部材を切断する位置に前記第1回転切断手段及び第2回転切断手段を配設したことを特徴とするものである。
また、請求項4の発明は、請求項2の画像形成装置において、前記転写手段を通過した記録シート及びフィルム部材を加熱する加熱手段を設けるとともに、前記加熱手段を通過した後のフィルム部材を切断する位置に前記第1回転切断手段及び第2回転切断手段を配設したことを特徴とするものである。
また、請求項5の発明は、請求項1乃至4の何れかの画像形成装置において、前記第2回転切断手段よりもフィルム部材移動方向の上流側の位置で前記第1回転切断手段に対してフィルム切断処理を実施させるように、前記第1回転切断手段及び第2回転切断手段を配設したことを特徴とするものである。
また、請求項6の発明は、請求項1乃至5の何れかの画像形成装置において、前記第1回転切断手段と前記第2回転切断手段との間隔を前記シート間領域のフィルム移動方向の長さよりも大きくしたことを特徴とするものである。
また、請求項7の発明は、請求項1乃至7の何れかの画像形成装置において、前記第1回転切断手段及び第2回転切断手段による切断処理で切り取られた前記シート間領域を収容する収容手段を設けたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
これらの発明においては、フィルム部材を記録シートの記録面に密着させた記録シートを切断手段によってシートの長さに合わせて切断することで、記録面上にフィルム部材からなる層を形成する。かかる構成では、フィルム部材の全てを記録面上の層の材料として使用することで、感熱性粘着層を記録紙に転移させた後の基層だけからなる廃棄シートを発生させることなく用紙の記録面に層を形成することができる。
また、これらの発明においては、回転切断手段として、互いに別体である第1回転切断手段と第2回転切断手段とが、それぞれフィルム部材の切断処理を個別に行うことで、1[mm]以下などといった狭小間隔であっても、搬送中のフィルム部材をその狭小間隔で切り取っていくことが可能である。かかる構成では、フィルム部材の搬送を停止させることなく、フィルム部材からシート間領域を切り取ることで、プリント生産性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施形態に係る複写機を示す概略構成図。
【図2】同複写機における画像形成部を示す拡大構成図。
【図3】同複写機の画像形成部とフィルム供給装置とを示す拡大構成図。
【図4】ラップフィルムFとこれに密着する記録シートSとを示す断面図。
【図5】ロータリーカッターを示す斜視図。
【図6】同複写機における転写ニップ、定着ニップ及び両者間の間の構成を示す拡大構成図。
【図7】連続プリント動作開始初期におけるラップフィルムFの状態を説明する説明図。
【図8】連続プリント動作で1枚目の記録シートを転写ニップに進入させた直後のラップフィルムFの状態を説明する説明図。
【図9】連続プリント動作で1枚目の記録シートの先端に対応するフィルム位置を切断するときのラップフィルムFの状態を説明する説明図。
【図10】連続プリント動作で1枚目の記録シートを定着ニップに進入させた直後のラップフィルムFの状態を説明する説明図。
【図11】連続プリント動作で2枚目の記録シートを第1ロータリーカッターによる切断位置に進入させたときのラップフィルムFの状態を説明する説明図。
【図12】図11の状態から少し時間が経過した後のラップフィルムFの状態を説明する説明図。
【図13】変形例に係る複写機を示す概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を適用した画像形成装置として、電子写真プロセスによって画像を形成する電子写真複写機(以下、単に複写機という)の一実施形態について説明する。なお、本発明の実施形態は、以下述べるものに限定されず、その趣旨を逸脱しない範囲において種々変更が可能である。
【0011】
図1は、実施形態に係る複写機を示す概略構成図である。同図において、複写機500は、画像形成を行う複写機本体部100を給紙装置としてのシートバンク300の上に載置しており、複写機本体部100の上部に画像読取装置200が取り付けられている。また、画像読取装置200の上には、背面側を支点に上下に開閉自在の自動原稿搬送装置400が取り付けられている。複写機本体部100の内部には、潜像担持体としてのドラム状の感光体10が設けられている。
【0012】
図2は、実施形態に係る複写機における、複写機本体部100の感光体10やその近傍部である画像形成部を示す拡大構成図である。同図において、図中矢印A方向に回転駆動される感光体10の周囲には、感光体10に当接する帯電ローラ8、現像装置12、及び転写ローラ7が配置されている。なお、複写機500は、感光体10をクリーニングするクリーニング装置を備えていない。
【0013】
現像装置12は、現像ローラ4の周面上に担持したトナーにより、感光体10上の静電潜像を現像してトナー像を得る。
【0014】
帯電ローラ8の図中の左側には、少なくとも現像位置において感光体10の表面を被覆するフィルム部材としてのラップフィルムFを感光体10の表面に供給するフィルム供給装置20が配置されている。ロール状に巻かれたラップフィルムFは、フィルム供給装置20によりロールから送り出されて、帯電ローラ8と感光体10との間の帯電ニップ内に挟み込まれる。
【0015】
また、複写機本体部100の内部には、シートバンク300内の、後述するシートカセット61から送り出した記録部材としての記録シートSを、レジストローラ対21、転写ローラ7、定着装置22、排紙ローラ35を順次経由する経路で搬送するシート搬送装置Cが配設されている。このシート搬送装置Cは、供給路R1、手差し供給路R2、および、シート搬送路Rを形成している。
【0016】
シート搬送路Rにおける、感光体10に対して記録シートSの搬送方向上流側の位置には、レジストローラ対21が配設されている。また、感光体10の搬送方向下流側の位置には、定着装置22が配設されている。この定着装置22は、加熱部材としての加熱ローラ30と加圧部材としての加圧ローラ32とを具備している。
【0017】
定着装置22よりもシート搬送方向下流側の位置には、記録シートSを機外に排出する排出ローラ35が配設され、さらにその先に、画像形成済みのシートをスタックする排出スタック部39が設けられている。
【0018】
現像装置12の図中左側には、レーザ書込装置47が配設されている。レーザ書込装置47は、不図示のレーザ光源、その他、走査用の回転多面鏡48、ポリゴンモータ49、fθレンズ等の走査光学系50などを具備している。
【0019】
画像読取装置200には、光源53、複数のミラー54、結像用光学レンズ55、CCD等のイメージセンサ56などが設けられている。また、その上面にはコンタクトガラス57が設けられている。
【0020】
このコンタクトガラス57の上の自動原稿搬送装置400には、原稿の載置位置に不図示の原稿セット台とが設けられているとともに、排出位置には不図示の原稿スタック台が設けられている。また、原稿シートを、原稿セット台から画像読取装置200のコンタクトガラス57上の読取位置を経て原稿スタック台まで搬送する不図示の原稿搬送路を有するシート搬送装置が設けられている。このシート搬送装置は、原稿シートを搬送する不図示のシート搬送ローラを複数備えている。
【0021】
シートバンク300の内部には、記録媒体である転写紙やOHPフィルム等の記録シートSを収納するシートカセット61が多段に設けられている。また、各シートカセット61には、それぞれ対応して呼出ローラ62と、供給ローラ63と、分離ローラ64とが設けられている。シートカセット61の図中右側には、複写機本体部100のシート搬送路Rへと通じる供給路R1が形成されている。供給路R1にも、回転することにより記録シートSに搬送力を付与し、記録シートSを搬送する複数のシート搬送ローラ66が設けられている。
【0022】
複写機本体部100の図中右側面には、手差し給紙部68が配設されている。この手差し給紙部68は、開閉自在な手差しトレイ67と、その上にセットされた手差しの記録シートSをシート搬送路Rへと導く手差し供給路R2とを具備している。また、手差しトレイ67は、呼出ローラ62と供給ローラ63と分離ローラ64とを具備している。
【0023】
このような構成の複写機500を用いてコピーを行うときには、まず、不図示のメインスイッチをオンするとともに、自動原稿搬送装置400の原稿セット台に原稿をセットする。ブック原稿のような場合には、自動原稿搬送装置400を開いて画像読取装置200のコンタクトガラス57上に直接原稿をセットし、自動原稿搬送装置400を閉じて原稿を押える。
【0024】
そして、不図示のスタートスイッチを押すと、自動原稿搬送装置400に原稿をセットしたときには、原稿をシート搬送ローラにより原稿搬送路を通して、コンタクトガラス57上へと移動してから画像読取装置200が駆動し、原稿内容を読み取って原稿スタック台上に排出する。一方、コンタクトガラス57上に直接原稿をセットしたときには、直ちに画像読取装置200が駆動して原稿内容を読み取る。
【0025】
画像読取装置200が駆動すると、画像読取装置200は、光源53をコンタクトガラス57に沿って移動させるとともに、光源53からの光をコンタクトガラス57上の原稿面で反射し、その反射光を複数のミラー54で反射し、結像用光学レンズ55を経て、イメージセンサ56に入れ、そのイメージセンサ56で原稿内容を読み取る。
【0026】
また、このとき同時に、静電潜像形成工程として不図示の感光体駆動モータで感光体10を回転し、帯電ローラ8により、感光体10の表面をフィルム供給装置20から供給されたラップフィルムFを介して一様に帯電する。次いで、画像読取装置200によって読み取った原稿内容に応じてレーザ光をレーザ書込装置47から照射して書き込み工程を実行する。次に、現像装置12を用いて感光体10表面上を被覆するラップフィルムF上にラップフィルムFの下の感光体10上に形成された潜像に応じてトナーを付着し、静電潜像の可視像化(現像)がなされる。
【0027】
現像によってトナー像が形成されたラップフィルムFは、感光体10に向けて押圧される転写ローラ7と、感光体10とがラップフィルムFを介して当接する転写ニップ内に進入する。この転写ニップ内においては、図示しない電源によって転写電圧が印加される転写ローラ7を感光体10との間に転写電界が形成される。
【0028】
一方、スタートスイッチを押したと同時に、シートバンク300中の多段のシートカセット61のうち、選択されたサイズの記録シートSを収容するシートカセット61内から呼出ローラ62により記録シートSが送り出される。呼出ローラ62によって送り出された記録シートSは、呼出ローラ62に続く、供給ローラ63と分離ローラ64とによって1枚ずつ分離して搬送され、供給路R1に送られる。供給路R1に送られた記録シートSは、シート搬送ローラ66で搬送されてシート搬送路Rへと導かれ、レジストローラ対21に突き当てて止められる。レジストローラ対21は、記録シートSを感光体10表面のラップフィルムF上で現像されたトナー像に同期させるタイミングで転写ニップに向けて送り出す。
【0029】
また、手差しトレイ67上にセットされた手差しの記録シートSに画像を形成する場合は、手差し給紙部68の手差しトレイ67上にセットされた手差しの記録シートSが手差し供給路R2に送られて、レジストローラ対21に至る。そして、レジストローラ対21は、記録シートSを感光体10表面のラップフィルムF上で現像されたトナー像に同期させるタイミングで転写ニップに向けて送り出す。
【0030】
転写ニップ内では、転写電界やニップ圧の影響により、ラップフィルムF上のトナー像が記録シートS上に転写される。転写ニップを通過したラップフィルムFは、後述する転写後搬送ローラ対によって引っ張られながら鉛直方向上方に移動して、感光体10の表面から剥離される。ラップフィルムFが剥離した後の感光体10の表面は、図示しない除電装置によって除電された後、帯電ローラ8によって再び一様帯電せしめられる。なお、ラップフィルムFは透明である。また、本複写機では、ラップフィルムFを記録シートSに重ねた状態で感光体10から引き剥がす。
【0031】
ラップフィルムFとしては、食品用ラップフィルムとして一般に使用されている食材や料理を包む為の厚さが十数[μm]程度の透明・軽量で柔軟な膜状素材のフィルムを使用することが出来る。これらのフィルムは耐熱性・耐水性に富み、摂氏マイナス60[℃]からプラス150[℃]前後までの温度に適応できるとされている。ラップフィルム材料としては、セロハン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、延伸ポリプロピレン(OPP)、ナイロン(NY)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリメチルペンテン(PMP)が上げられる。さらに複合材からなるラップフィルムのポリエチレン+ポリプロピレン(PE+PP)、ナイロン+ポリエチレン(NY+PE)なども使用することが可能である。
【0032】
ラップフィルムFには、光を透過すること、静電気を保持出来ることなどの特性が求められる。また、ある程度の応力に耐えることができ、引っ張られてもフィルム状態を維持できること、ある程度は熱に熔けずにフィルム状態を維持できること、ある程度は水に溶けずにフィルム状態を維持できること、といった特性も求められる。これらの特性を備えているものであれば、本複写機に使用するラップフィルムFとしては、先に述べた食品用ラップフィルムの例に限らないことは言うまでもない。
【0033】
次に、ラップフィルムFの供給動作について、図2及び図3を用いて説明する。図3は、本複写機の画像形成部とフィルム供給装置20とを示す拡大構成図である。
【0034】
フィルム供給装置20から繰り出されたラップフィルムFは、帯電ローラ8の表面を経て感光体10表面に供給される。帯電ローラ8と感光体10とが対向する位置がラップフィルム供給位置となる。ラップフィルムFは、帯電ローラ8による押圧力と、感光体帯電のために印加されるバイアス電荷とにより、感光体10に張り付いてそのまま下流へと搬送される。このとき感光体10の表面が一様帯電される。感光体10の回転に伴い、フィルム供給装置20に巻き付いているラップフィルムFが順次送り出される。次いでレーザ書込装置47から発せられた書き込み光Lにより、一様帯電後の感光体10上に光像が書き込まれて静電潜像が形成される。この静電潜像は現像装置12により現像されて感光体10の表面を覆っているラップフィルムFの上にトナー像がもたらされる。その後、ラップフィルムFは、感光体10から剥離された後、上述した転写ニップに挟み込まれる。そして、転写ニップ内で記録シートSと重ね合わされながら、その表面上のトナー像を記録シートSに転移させる。
【0035】
図4は、このようにして得られた表面にラップフィルムFを有する記録シートSの断面形状を示すものである。トナー像はラップフィルムF側に形成され、ラップフィルムFの表面にトナー像Tが密着している。
【0036】
複写機500は、感光体と現像装置とをそれぞれ一つずつ備えるモノクロの画像形成装置であるが、一つの感光体に4つの現像装置を配置したフルカラーの画像形成装置であってもよい。
【0037】
次に、感光体10の表面に形成された静電潜像の現像を行う現像装置12について説明する。
先に示した図2において、現像装置12は磁性キャリアとトナーからなる二成分現像装置である。本複写機は現像装置12で使用するトナーを収容する不図示のトナーボトルを備え、トナーボトル内のトナーは不図示のトナー補給装置によって現像装置12に供給される。トナー補給装置によって不図示のトナー補給口から供給されたトナーは、現像装置12のケーシングである現像容器12a内の磁性キャリアとトナーとからなる現像剤の上に供給される。供給されたトナーは、現像剤とともに螺旋形状の第二搬送スクリュウ2で攪拌されながら図2中の紙面奥方向に搬送される。第二搬送スクリュウ2を備える搬送路と第一搬送スクリュウ1を備える搬送路とは、図2中の紙面奥方向端部と紙面手前方向端部とで連通している。そして、第二搬送スクリュウ2によって図2中の紙面奥方向端部まで到達した現像剤は、第一搬送スクリュウ1が配置された搬送路に移動し、第一搬送スクリュウ1によって図2中の紙面奥方向から手前方向への搬送される。そして、第一搬送スクリュウ1によって図1中の紙面手前方向端部まで到達した現像剤は、第二搬送スクリュウ2が配置された搬送路に移動する。このように、現像装置12内では現像剤が循環している。
【0038】
供給されたトナーが攪拌された現像剤は、第一搬送スクリュウ1によって搬送される搬送路内で、磁石が内蔵されている現像ローラ4の磁力によって、現像ローラ4の表面に汲み上げられる。図中矢印Dで示すように、図中時計回りに回転している現像ローラ4の表面に磁力で吸着した現像剤は、現像ドクタ70で一定量に規制されるとともにトナーと磁性キャリアとが摩擦帯電される。
【0039】
帯電した磁性キャリアとトナーとからなる現像剤は現像ローラ4の最大磁力強度の主極で穂立ちして感光体10の表面を被覆するラップフィルムFに接触する。現像ローラ4にはバイアス電圧が印加されており、感光体10上の静電潜像により選択的にトナーが付着して現像される。なお、現像容器12a内の現像剤のトナー濃度は、トナー濃度センサ5によって監視している。トナー濃度が低い場合は、不図示のトナー補給装置を駆動して、不図示のトナーボトルからトナーを補給して、トナー濃度を一定に保つように制御する。
【0040】
また、感光体10表面を覆うラップフィルムF上にはトナーで基準パターンが形成され、この基準パターンの反射濃度をパターン濃度センサ6が測定している。そしてこのパターン濃度センサ6の測定結果を基に、トナー濃度センサ5がどのような出力値の時にトナー補給動作を開始させれば良いかが自動的に選ばれるようになっている。
【0041】
トナー濃度センサ5は、現像剤を搬送する第二搬送スクリュウ2の下に設置されており、現像剤の透磁率から現像剤のトナー濃度を測定している。トナー濃度が低くなると磁性体キャリアが密集してくるので透磁率が高くなる。このトナー濃度センサ5が検知した透磁率の値がある所定値(閾値)を超えれば、トナー濃度が低くなったと判断されて、所定のトナー濃度になるまで不図示の制御部からトナー補給装置へトナー補給動作のための信号が送られる。
【0042】
このような補給制御によって、ラップフィルムFを介して感光体10上に形成される基準パターンの濃度を一定に保つように制御しているが、トナーボトル内のトナーがなくなった場合には、不図示の判断機構を用いて基準パターンの濃度を検知するパターン濃度センサ6とトナー濃度センサ5との両方の出力から、トナーがなくなったことを判断する。
【0043】
供給用のトナーは例えばトナーボトルに収容されている。トナーは、ポリエステル樹脂を含有するトナーを好適に使用する事が出来るが、これに限定されるものではない。
【0044】
ポリエステル樹脂を含有するトナーのポリエステルは、多価アルコールと多価酸(大多数がジオール基を有する化合物と二酸(−(COOH))またはジエステル(−(COOR))を有する2酸化合物またはジエステル化合物)とを脱水(あるいは脱アルコール)縮合反応によってポリエステル化合物(未変性ポリエステル)とした未変性ポリエステル樹脂を用いる。また、ジイソシアネート(−NCO基を2個有する化合物)と活性水素化合物(特にジオール、ジオイックアシドまたはOH基とCOOH基の両方の基を有する化合物)との縮合反応によって得られる多価イソシアネート化合物とをさらに含む変性ポリエステル樹脂を含んでいてもよい。
【0045】
多価イソシアネート化合物の比率は、イソシアネート基[NCO]と、水酸基を有するポリエステルの水酸基[OH]の当量比[NCO]/[OH]として、通常5/1〜1/1、好ましくは4/1〜1.2/1、さらに好ましくは2.5/1〜1.5/1である。
【0046】
未変性ポリエステルとウレア変性ポリエステルとを併用することで、低温定着性およびフルカラー画像形成装置に用いた場合の光沢性が向上するので、ウレア変性ポリエステルを単独で使用するよりも好ましい。なお、未変性ポリエステルは、ウレア結合以外の化学結合で変性されたポリエステルを含んでも良い。
【0047】
未変性ポリエステルとウレア変性ポリエステルとは、少なくとも一部が相溶していることが低温定着性、耐ホットオフセット性の面で好ましい。従って、未変性ポリエステルとウレア変性ポリエステルとは類似の組成であることが好ましい。
また、未変性ポリエステルとウレア変性ポリエステルとの重量比は、通常20/80〜95/5程度である。
プレポリマーとして用いるウレア変性ポリエステル中には、ウレア結合と共にウレタン結合を含有していてもよい。ウレア結合含有量とウレタン結合含有量のモル比は、通常100/0〜10/90である。
【0048】
表面にトナー像が形成され、且つ感光体10から剥離されたラップフィルムFは、回転切断手段としてのロータリーカッターにより、記録シートSの長さに合わせて切断される。
【0049】
図5は、本複写機に設けられたロータリーカッター90を示す斜視図である。同図において、ロータリーカッター90は、回転軸95を中心に回転する回転刃92と、回転刃92に対向するように配置された固定刃93と、固定刃93を保持する固定刃保持部材94とを備える。回転刃92が回転し、その刃先が固定刃93と対向する所定の回転角度範囲内で移動することにより、固定刃93と回転刃92との間のラップフィルムFが切断される。
【0050】
なお、本発明を適用した画像形成装置の回転切断手段は、ロータリーカッターに限定されるものではなく、記録シートの搬送を中断することなくシート切断を行えるものであればよい。また、本複写機では、同図に示す構成のロータリーカッターとして、後述する第1ロータリーカッター、及び第2ロータリーカッターの2つを設けている。
【0051】
図6は、転写ニップ、定着ニップ及び両者間の間の構成を示す拡大構成図である。図示のように、本複写機においては、転写ニップと定着ニップとの間におけるフィルムやシートの搬送路内に、転写後搬送ローラ対71、第1ロータリーカッター90a、第2ロータリーカッター90bを設けている。
【0052】
第2ロータリーカッター90bと定着装置22の定着ニップとの間の搬送路には、定着装置22のケーシングによるガイド部23が存在している。このガイド部23は、第2ロータリーカッター90bによる切断処理位置を通過した図示しないラップフィルムや記録シートを定着装置22の定着ニップに向けて案内するものであるが、同切断処理位置を通過した直後から案内するわけではない。本複写機では、第2ロータリーカッター90bとガイド部23との間に、ガイドの存在しない無ガイド領域81が存在している。
【0053】
転写ニップを通過した図示しないラップフィルムは、図示しない記録シートと重ね合わされた状態で感光体10から剥離された後、ガイド板に案内されながら、転写後搬送ローラ対71の2つのローラの当接部である搬送ニップ内に進入する。なお、搬送ローラ対71における2つのローラのうち、少なくとも一方は、図示しない駆動手段によって回転駆動される駆動ローラになっている。
【0054】
図7は、連続プリント動作開始初期におけるラップフィルムFの状態を説明する説明図である。複数の記録シートに対する画像形成動作が連続的に行われる連続プリント動作における動作開始初期では、図示のように、転写ニップ内にはまだ記録シートが送り込まれていない。ラップフィルムFの先端は、第2ロータリーカッター90bによる切断処理位置を通過した状態になっているが、上述したガイド部23には到達していない。同切断処理位置からガイド部23までは、斜め上方に向かう搬送路になっているが、ラップフィルムFは超薄厚でほとんど腰がないことから、その斜め上方に向かう搬送路を真っ直ぐに進むことができず、鉛直方向下方に向けて撓む。このため、ガイド部23には到達せず、第2ロータリーカッター90bの側方に設けられたフィルム収容トレイ81内に回収される。
【0055】
図8は、連続プリント動作で1枚目の記録シートを転写ニップに進入させた直後のラップフィルムFの状態を説明する説明図である。連続プリント動作において、1枚目の記録シートSが転写ニップに通されると、ラップフィルムFには、記録シートSに重ね合わされたシート重ね合わせ部(以下、フィルム−シート重ね合わせ部という)が発生する。このフィルム−シート重ね合わせ部は、図9に示すように、転写後搬送ローラ対71の搬送ニップを通過した後、第1ロータリーカッター90aの切断処理位置に進入する。そして、第1ロータリーカッター90aの回転刃は、フィルムやシートの送り速度と同じ線速で回転する切断動作を行う。これにより、ラップフィルムFにおけるフィルムだけの箇所と、フィルム−シート重ね合わせ部の先端との境界で、ラップフィルムFを切断する。すると、ラップフィルムFは、先端側のフィルムだけの箇所が、それより後のフィルム−シート重ね合わせ部から切断・分離される。そして、先端側のフィルムだけの箇所は、フィルム収容トレイ81に回収される。
【0056】
これに対し、フィルムーシート重ね合わせ部は、記録シートSの腰の強さが発揮されるため、第2ロータリーカッター90bを通過後の無ガイド領域において、ガイド部23に向かう斜め上方への経路を真っ直ぐに進む。そして、図10に示すように、ガイド部23に到達した後、定着装置22の定着ニップに進入する。加熱ローラ30と加圧ローラ32とによって形成される定着ニップ内では、記録シートS上のトナー像が熱と圧力との作用によって記録シートSの記録面に定着せしめられる。このとき同時に、記録シートSの記録面には、ラップフィルムFが貼り付いて透明層を形成する。
【0057】
定着ニップを通過した記録シートS及び記録面上の透明層は、加熱ローラ30や加圧ローラ32から離間した後、排紙ローラ35と第1加圧ローラとの当接による排紙ニップに送られる。その後、腰付けローラと第2加圧ローラとの当接による腰付けニップで腰の強さを高められた後、排出スタック部39上にスタックされる。
【0058】
連続プリント動作で2枚目の記録シートを第1ロータリーカッターによる切断位置に進入させたときのラップフィルムFの状態を説明する説明図である。同図において、ラップフィルムFは、1枚目の記録シートSとの重ね合わせ部と、これに続く紙間領域Fs(シート間領域)と、これに続く、2枚目の記録シートSとの重ね合わせ部とが、切れ目のない連続した状態になっている。
【0059】
2枚目の記録シートSとラップフィルムFとの重ね合わせによるフィルム−シート重ね合わせ部が転写ニップを通過した後、第1ロータリーカッター90aに進入すると、第1ロータリーカッター90aの回転刃がフィルムやシートの送り速度と同じ線速で回転して切断動作を行う。この切断動作により、ラップフィルムFは、紙間領域Fsの後端と、2枚目の記録シートSとの重ね合わせによるフィルム−シート重ね合わせ部の先端との境界が切断される。
【0060】
このような第1ロータリーカッター90aの切断処理と前後して、第2ロータリーカッター90bがフィルムやシートの送り速度と同じ線速で回転する切断動作を行う。この切断動作により、ラップフィルムFは、1枚目の記録シートSとの重ね合わせによるフィルム−シート重ね合わせ部の後端と、紙間領域の先端との境界が切断される。
【0061】
図11に示したような状態で、第1ロータリーカッター90a、第2ロータリーカッター90bがそれぞれ切断動作を行うと、1枚目と2枚目との間に存在する紙間領域Fsが、1枚目のフィルム−シート重ね合わせ部や2枚目のフィルム−シート重ね合わせ部から切断・分離される。この紙間領域Fsは、記録シートSとは重なっておらず、腰が非常に弱いことから、図12に示すように、無ガイド領域81で重力方向に向けて撓んでフィルム収容トレイ81に回収される。
【0062】
一方、紙間領域Fsに続く、2枚目のフィルム−シート重ね合わせ部は、記録シートSの腰により、斜め上方に向けて真っ直ぐに進んで、ガイド部23に到達する。そして、定着装置22内で定着処理が施される。
【0063】
3枚目のプリントも行われる場合には、同様にして、ラップフィルムにおける2枚目と3枚目との間の紙間領域が切り取られる。
【0064】
これまで、転写ニップと定着ニップとの間の搬送路に2つのロータリーカッターを設けた例について説明したが、定着ニップよりも下流側の搬送路内に2つのロータリーカッターを設けてもよい。例えば、図13は、変形例に係る複写機を示すものであるが、この変形例では、排紙ローラ対を通過した後、スタック部39にスタックされる前のフィルム−シート重ね合わせ部の先端や後端を切断するように、第1ロータリーカッター90aや第2ロータリーカッター90bを配設している。
【0065】
次に、感光体の表面を潜像担持体ラップフィルムで被覆した状態で現像ができることを確認した実験について説明する。
〔実験1〕
実験1では、画像形成装置の試験機として、imagio MP 5000(リコー製)を用いて以下に述べる実験を行った。
潜像担持体ラップフィルムとして厚さ10[μm]のPVDCフィルム、商品名:クレラップ(登録商標)を用意した。予め感光体ドラムにこのフィルムを巻きつけておく。そして画像形成装置に装着して画像形成させた。用紙の供給は行わないで感光体ドラムの1周分にトナー像が形成されるタイミングを見計らって、画像形成装置を停止させた。感光体ドラムを取り外し、観察したところ、画像が形成されていることを認めた。感光体ドラム表面からフィルムを引き剥がしてトナー面を用紙に合わせて貼り付けたところ、鮮明な画像であることが確認できた。
【0066】
〔実験2〕
試験機において、転写ニップと定着ニップとの間に、第1ロータリーカッター90a、第2ロータリーカッター90b及びフィルム収容トレイ81を設けた。そして、PVDC製ラップフィルムを感光体に巻きつけてコピー動作前の初期状態を作った後、A4サイズの用紙を給紙トレイにセットし、通常のコピー動作を実行した。排出スタック部39上には画像が定着されたA4サイズのラップフィルムで覆われたシートSがスタックされた(搬送方向は横方向)。画像も鮮明であり問題はなかった。
【0067】
〔実験3〕
試験機において、定着ニップよりも搬送方向の下流側に、第1ロータリーカッター90a、第2ロータリーカッター90b及びフィルム収容トレイ81を設けた。そして、PVDC製ラップフィルムを感光体に巻きつけてコピー動作前の初期状態を作った後、A4サイズの用紙を給紙トレイにセットし、通常のコピー動作を実行した。排出スタック部39上には画像が定着されたA4サイズのラップフィルムで覆われたシートSがスタックされた(搬送方向は横方向)。画像も鮮明であり問題はなかった。
【0068】
〔実験4〕
ラップフィルムFとして、厚さ10マイクロメートルのポリ塩化ビニル (PVC)フィルム、商品名リケンラップを用意した。実験2と同様にしてテストプリントを行ったところ、排出スタック部39上には画像が定着されたA4サイズのラップフィルムで覆われた記録シートSが、実験2と同様にスタックされた。画像も鮮明であり問題はなかった。
【0069】
なお、本発明を適用した画像形成装置に使用できるフィルム部材としては、光が透過すること、潜像担持体上の静電電荷に感応して静電潜像をその表面に保持出来ること、ある程度の応力に耐えることが出来て、引っ張られてもフィルム状態を維持できること、ある程度は熱に熔けずにフィルム状態を維持できること、ある程度は水に溶けずにフィルム状態を維持できることが出来れば、上に挙げた食品用ラップフィルムの例に限らない事は言うまでもない。また、上述した半透明の第二原図用紙はこの条件の光が透過すること、潜像担持体上の静電電荷に感応することが出来たため、画像形成が可能になったものと言える。
【0070】
以上、感光体、レーザー書込装置、現像装置等からなる記録手段を備える、実施形態に係る複写機においては、ロール状に巻かれたラップフィルムFをロールから引き出す引き出し手段たる帯電ローラ8と、これによって引き出されたラップフィルムFを記録シートSの記録面に密着させる転写ローラ7や転写後搬送ローラ対71等からなる密着手段とを設けている。また、回転軸を中心にして所定の回転角度範囲で回転するのに伴って、シート記録面に密着した後のラップフィルムFにおける、記録シート先端に対応する位置と連続シート送り時の紙間領域Fsの後端との境界を切断する第1回転切断手段たる第1ロータリーカッター90aと、これとは別の回転切断手段であり、シート記録面に密着した後のラップフィルムFにおける、記録シート後端に対応する位置と連続シート送り時の紙間領域Fsの先端との境界を切断する第2回転切断手段たる第2ロータリーカッター90bを設けている。かかる構成では、フィルム部材を記録シートの記録面に密着させた記録シートを切断手段によってシートの長さに合わせて切断することで、記録面上にフィルム部材からなる層を形成する。かかる構成では、ラップフィルムFの全てを記録シートSにおける記録面上の層の材料として使用することで、廃棄シートを発生させることなく記録シートSの記録面に層を形成することができる。また、回転切断手段として、互いに別体である2つのロータリーカッター(90a、90b)が、それぞれラップフィルムFの切断処理を個別に行うことで、1[mm]以下などといった狭小間隔であっても、搬送中のラップフィルムをその狭小間隔で切り取っていくことが可能である。よって、ラップフィルムFの搬送を停止させることなく、ラップフィルムFから紙間領域Fsを切り取ってプリント生産性を向上させることができる。
【0071】
ところで、近年、例えば特開2008−032851号公報に記載のように、クリーニング工程を省略したいわゆるクリーナーレス方式を実施する画像形成装置が提案されている。この種の画像形成装置では、転写工程を経た後の感光体表面をクリーニングせずに帯電、露光、現像の工程に順次進めていく。そして、現像工程にて、感光体表面上の転写残トナーを現像装置内に回収する。かかる構成では、クリーニング部材の設置が不要になる他、転写残トナーを現像に再利用することが可能になるというメリットがある。しかしながら、クリーニング部材の代わりに、極性制御部材やトナー散らし部材などを感光体表面に摺擦させる必要があるため、部材との摺擦による感光体の劣化を解消するという観点からすると、十分な効果を得ることができなかった。具体的には、感光体表面に付着している転写残トナー粒子の大半は、正規帯電極性とは逆極性に帯電してしまった逆帯電トナー粒子であり、そのままでは、現像装置と感光体とが対向する現像位置において感光体表面の地肌部に静電移動してしまうため、現像装置内に回収することができない。このため、正規極性のバイアスを印加した極性制御部材を潜像担持体表面に当接させ、その当接部で転写残トナーに正規極性の電荷を付与することが一般的に行われる。また、ベタ画像を転写した後の転写残トナー付着箇所など、転写残トナーを多量に付着させた箇所では、帯電や露光が不十分になり易いので、ブラシ部材など転写残トナーを散らすためのトナー散らし部材を潜像担持体に当接させることもある。それら極性制御部材やトナー散らし部材を摺擦させてしまうので、部材との摺擦による潜像担持体の表面の劣化を解消することができないのである。
【0072】
そこで、実施形態に係る複写機においては、少なくとも、移動する表面に潜像を担持する潜像担持体たる感光体10と、同潜像をトナーによって現像する現像手段たる現像装置12と、両者が対向する現像位置にて、感光体10の表面に密着したラップフィルムF上にトナーを付着させる現像が可能になるように、感光体10の表面の全領域のうち、潜像を担持した後、現像位置に進入する前の領域である現像前領域に対してラップフィルムを密着させる密着手段たる帯電ローラ8と、現像位置を通過したラップフィルムFの表面上のトナー像を記録シートFに転写する転写手段たる転写ローラ7と、現像位置を通過したラップフィルムFを感光体10の表面から剥離する剥離手段たる転写後搬送ローラ対71とで、記録手段を構成している。かかる構成では、感光体10に密着させたラップフィルムF上でトナー像の現像や転写を実施することで、感光体10の無垢の表面に転写残トナーを付着させることがなくなるので、クリーニング部材、極性制御部材、及びトナー散らし部材を何れも不要にして、それら部材との摺擦による潜像担持体の劣化を解消することができる。
【0073】
また、実施形態に係る複写機においては、転写ローラ7を通過した記録シートS及びラップフィルムFを加熱する加熱手段たる加熱ローラ30を設けるとともに、転写ローラ7を通過した後、加熱ローラ30に進入する前のラップフィルムFを切断する位置に第1ロータリーカッター90a及び第2ロータリーカッター90bを配設している。かかる構成では、トナー像を記録シートSに定着させるのに先立って、ラップフィルムFを記録シートSの長さに合わせて切断することができる。
【0074】
また、変形例に係る複写機においては、転写ローラ7を通過した記録シートS及びラップフィルムFを加熱する加熱ローラ30を設けるとともに、加熱ローラ30を通過した後のラップフィルムFを切断する位置に第1ロータリーカッター90a及び第2ロータリーカッター90bを配設している。かかる構成では、トナー像を記録シートSに定着させた後にラップフィルムFを切断するので、フィルム切断時に未定着のトナー像を乱してしまうことがなくなる。
【0075】
また、実施形態に係る複写機においては、第2ロータリーカッター90bよりもフィルム部材移動方向の上流側の位置で第1ロータリーカッター90aに対してフィルム切断処理を実施させるように、第1ロータリーカッター90a及び第2ロータリーカッター90bを配設している。かかる構成では、第1ロータリーカッター90aよりも搬送方向下流側において、小さなサイズの紙間領域Fsを、それに先行するフィルムーシート重ね合わせ部に繋げた状態で、そのフィルム−シート重ね合わせ部によって引っ張るようにして搬送しながら、紙間領域Fs先端を第2ロータリーカッター90bによって切断し、切断による小片化で搬送が困難になった紙間領域Fsをスムーズにフィルム収容トレイ81内に回収することができる。
【0076】
また、実施形態に係る複写機では、第1ロータリーカッター90aと第2ロータリーカッター90bとの設置間隔を紙間領域Fsよりも大きくしている。かかる構成では、設置間隔を紙間領域Fsよりも大きくした第1ロータリーカッター90a及び第2ロータリーカッター90bによるそれぞれの切断処理で、紙間領域FsをラップフィルムFから切り取ることができる。
【0077】
また、実施形態に係る複写機においては、第1回ロータリーカッター90a及び第2回ロータリーカッター90bによる切断処理で切り取られた紙間領域Fsを収容する収容手段たるフィルム収容トレイ81を設けている。かかる構成では、ラップフィルムFから切り取った紙間領域Fsを機内のフィルム収容トレイ81に回収することで、紙間領域Fsを機外のスタック部でプリント紙と混在させてしまうといった事態を回避することができる。
【符号の説明】
【0078】
7:転写ローラ(転写手段、密着手段)
8:帯電ローラ(引き出し手段)
10:感光体(潜像担持体)
12:現像装置(現像手段)
22:定着装置(定着手段)
71:転写後搬送ローラ対(剥離手段)
90a:第1ロータリーカッター(第1回転切断手段)
90b:第2ロータリーカッター(第2回転切断手段)
F:ラップフィルム(フィルム部材)
Fs:紙間領域(シート間領域)
S:記録シート(記録部材)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0079】
【特許文献1】特開2008−107609号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録シートに画像を記録する記録手段を備える画像形成装置において、
ロール状に巻かれたフィルム部材をロールから引き出す引き出し手段と、
前記引き出し手段によって引き出されたフィルム部材を記録シートの記録面に密着させる密着手段と、
回転軸を中心にして所定の回転角度範囲で回転するのに伴って、前記記録面に密着した後のフィルム部材における、記録シート先端に対応する位置と連続シート送り時のシート間領域の後端との境界を切断する第1回転切断手段と、
該第1回転切断手段とは別の回転切断手段であり、前記記録面に密着した後のフィルム部材における、記録シート後端に対応する位置と連続シート送り時のシート間領域の先端との境界を切断する第2回転切断手段とを設けたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1の画像形成装置において、
少なくとも、移動する表面に潜像を担持する潜像担持体と、前記潜像をトナーによって現像する現像手段と、前記潜像担持体と前記現像手段とが対向する現像位置にて、前記潜像担持体の表面に密着したフィルム部材上にトナーを付着させる現像が可能になるように、前記潜像担持体の表面の全領域のうち、前記現像手段に対向する現像位置に進入する前の領域である現像前領域に対してフィルム部材を密着させる密着手段と、前記現像位置を通過したフィルム部材の表面上のトナー像を記録シートに転写する転写手段と、前記現像位置を通過したフィルム部材を前記潜像担持体の表面から剥離する剥離手段とで、前記記録手段を構成したことを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項2の画像形成装置において、
前記転写手段を通過した記録シート及びフィルム部材を加熱する加熱手段を設けるとともに、前記転写手段を通過した後、前記加熱手段に進入する前のフィルム部材を切断する位置に前記第1回転切断手段及び第2回転切断手段を配設したことを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項2の画像形成装置において、
前記転写手段を通過した記録シート及びフィルム部材を加熱する加熱手段を設けるとともに、前記加熱手段を通過した後のフィルム部材を切断する位置に前記第1回転切断手段及び第2回転切断手段を配設したことを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れかの画像形成装置において、
前記第2回転切断手段よりもフィルム部材移動方向の上流側の位置で前記第1回転切断手段に対してフィルム切断処理を実施させるように、前記第1回転切断手段及び第2回転切断手段を配設したことを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れかの画像形成装置において、
前記第1回転切断手段と前記第2回転切断手段との間隔を前記シート間領域のフィルム移動方向の長さよりも大きくしたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
請求項1乃至7の何れかの画像形成装置において、
前記第1回転切断手段及び第2回転切断手段による切断処理で切り取られた前記シート間領域を収容する収容手段を設けたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−286553(P2010−286553A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−138391(P2009−138391)
【出願日】平成21年6月9日(2009.6.9)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】