説明

画像形成装置

【課題】 像担持体の線速によらず、帯電電位の制御性に優れ小型化や低コスト化を可能にする。長期に安定した帯電機能を維持する。
【解決手段】 像担持体40;ケーシング71,グリッド75,複数の放電電極73,74、および、個別に高圧を出力/停止する複数の高圧電源76,77を含み、前記複数の放電電極のそれぞれが前記複数の高圧電源のそれぞれに接続された、前記像担持体を帯電する帯電装置70,76,77;前記像担持体の帯電面に光を照射し静電潜像を形成する露光手段21;前記静電潜像を現像してトナー像を形成する現像手段60;前記トナー像を用紙に転写する転写手段10,11,22;および、前記複数の高圧電源のそれぞれの、放電電極への高圧の出力/停止を制御して、像担持体の移動速度が高いと多い数に、低いと少ない数に、前記像坦持体の帯電に使用する放電電極の数を切替える、制御手段90;を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、像担持体に静電潜像を形成し、これを現像してトナー像とし、そして直接に又は中間転写体を介して間接に、用紙に転写する、いわゆる電子写真方式の画像形成装置に関し、プリンタ,ファクシミリ,複写機等に用いることができる。
【背景技術】
【0002】
【特許文献1】特開2001−222149号公報
【特許文献2】特開2007− 79378号公報。
【0003】
ケーシングとグリッドと放電電極を備えた帯電器は広く用いられており、高速の画像形成装置では必要な放電電流を確保するために複数の放電電極を備えた帯電装置も用いられている。また、厚紙の定着性能を確保するためや、高解像度の出力を可能とするために、複数の画像形成速度(線速:像担持体の移動速度)を備えた画像形成装置も実用化されている。ワイヤとグリッド電極を備えた帯電器であるスコロトロンは、グリッド電極に印加するグリッドバイアスで像担持体である感光体の帯電電荷を制御することができるので、帯電電位の制御性に優れており広く用いられている。また、高線速に対応可能な放電電流を得るために、2本以上のワイヤを備えたスコロトロンも実用化されている。
【0004】
特許文献1では、長手方向の電位偏差を補正しやすくするために2本のワイヤの電圧を個別に設定可能にする帯電装置が開示されている。特許文献2には、感光体の帯電立ち上がりの遅れを補うために2つの帯電器を配置する帯電装置が開示されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来は複数のワイヤに1つの高圧電源から給電していたために、各ワイヤの放電を個別に制御することができず、複数の線速(感光体の移動速度)を持つ画像形成装置では、同じグリッドバイアスを印加しても、線速により帯電電位が異なってしまう問題があった。
【0006】
特許文献2のように二つの帯電器を備えた画像形成装置では、それぞれの帯電器を個別に動作させることも可能であるが、ワイヤ用とグリッド用の高圧電源がそれぞれ2つずつ必要となり高コストになる、2つの帯電器間に絶縁性の仕切り板が必要なため装置の小型化が困難である等の課題がある。
【0007】
本発明はこのような状況をふまえ、像担持体の線速によらず帯電電位の制御性に優れ、小型化や低コスト化が可能な画像形成装置を提供することを第1の目的とし、長期に安定した帯電機能を維持することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)像担持体(40);
ケーシング(71),グリッド(75),複数の放電電極(73,74)、および、個別に高圧を出力/停止する複数の高圧電源(76,77)を含み、前記複数の放電電極のそれぞれが前記複数の高圧電源のそれぞれに接続された、前記像担持体を帯電する帯電装置(図3;70,76,77);
前記像担持体の帯電面に光を照射し静電潜像を形成する露光手段(21);
前記静電潜像を現像してトナー像を形成する現像手段(60);
前記トナー像を用紙に転写する転写手段(10,11,22);および、
前記複数の高圧電源のそれぞれの、放電電極への高圧の出力/停止を制御して、像担持体の移動速度が高いと多い数に、低いと少ない数に、前記像坦持体の帯電に使用する放電電極の数を切替える、制御手段(90,図4);
を備える画像形成装置。
【0009】
なお、理解を容易にするために括弧内には、図面に示し後述する実施例の対応要素または対応事項の符号を、例示として参考までに付記した。以下も同様である。
【発明の効果】
【0010】
像担持体の移動速度すなわち画像形成速度により使用する放電電極の数を切替えるので、画像形成速度に影響されることなく像担持体を適正な帯電電位に帯電させることができ、また不必要な放電生成物の発生を防止することもできる。
【0011】
(2)前記制御手段は、前記複数の放電電極の、前記像坦持体の帯電に使用する頻度を均等化する;上記(1)に記載の画像形成装置。複数の放電電極の使用頻度がほぼ等しくなるように制御することで、特定の放電電極のみ劣化が進行してしまうことを防止することができる。
【0012】
(3)前記ケーシングは、隣り合う放電電極間を遮蔽する遮蔽壁(72)を持つ;上記(1)又は(2)に記載の画像形成装置。隣り合う放電電極間を遮蔽することで、放電電極間の干渉を防止することができ、また一部の放電電極のみを使用する場合に放電を安定させることができる。
【0013】
(4)前記像担持体はローラ形状であって、前記グリッドは、前記像担持体と同心の円周の一部をなす曲面形状であって、開口率が75〜85%である;上記(1)乃至(3)のいずれか1つに記載の画像形成装置。グリッドを像担持体と同心の曲面とし、その開口率を75〜85%に設定することで、帯電電位の制御性が向上する。
【0014】
(5)前記放電電極は、直径が25〜55μmのワイヤである:上記(1)乃至(4)のいずれか1つに記載の画像形成装置。ワイヤ径をφ25〜55μmと細くすることで放電生成物の発生量を低減することができる。
【0015】
(6)前記ワイヤは、厚さ1〜4μmの貴金属の表面被覆を持つ;上記(5)に記載の画像形成装置。ワイヤ表面を貴金属で被覆することで、ワイヤを汚れにくくすることができ、長期にわたって良好な帯電特性を維持することができる。
【0016】
(7)前記高圧電源は、前記ワイヤの長さあたり9〜18μA/cmの放電電流を給電する;上記(5)又は(6)に記載の画像形成装置。ワイヤの長さあたりの放電電流を上記の範囲に設定することで、放電状態が良好であり、過剰な放電生成物の発生を防止することができる。
【0017】
(8)画像形成装置本体に対して容易に着脱可能なプロセスカートリッジ(18)に、前記像担持体ならびに前記帯電装置のケーシング,グリッドおよび複数の放電電極を装備した;上記(1)乃至(7)のいずれか1つに記載の画像形成装置。ケーシング,グリッドおよび複数の放電電極でなる帯電器(70)をプロセスカートリッジに一体化することで、像担持体とグリッド間の距離を良好に維持することができるので、像担持体を均一に帯電することが可能となる。
【0018】
(9)前記現像手段および前記転写を終えた像担持体の表面をクリーニングする手段も、前記プロセスカートリッジに装備した;上記(8)に記載の画像形成装置。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の他の目的および特徴は、図面を参照した以下の実施例の説明より明らかになろう。
【実施例1】
【0020】
図1に、本発明の一実施例を装備した複写機の機構概要を示す。この複写機は、プリンタ100と給紙部200とからなる画像形成機構と、スキャナ300と、ADF(自動原稿供給装置)400とを備えている。スキャナ300はプリンタ100上に取り付けられ、スキャナ300の上にADF400が取り付けられている。スキャナ300は、コンタクトガラス32上に載置された原稿の画像情報を読取センサ(本例ではCCD)36で読み取り、読み取った画像情報をエンジン制御(図示略)の(Image Processing Processor;以下では単にIPPと記述)に送る。エンジン制御は、スキャナ300から受け取った画像情報に基づき、プリンタ100の露光装置21内に配設された図示しないレーザやLED等を制御してドラム状の4つの、像担持体である感光体40(K,Y,M,C)に向けてレーザ書き込み光を照射させる。この照射により、感光体40(K,Y,M,C)の表面には静電潜像が形成され、この潜像は、プロセスカートリッジ18(K,Y,M,C)の作像機構による所定の現像プロセスを経由してトナー像に現像される。なお、符号の後に付されたK,Y,M,Cという添字は、ブラック,イエロー,マゼンタ,シアン用の仕様であることを示している。
【0021】
プリンタ100は、露光手段である露光装置21の他、転写手段である1次転写ローラ11(K,Y,M,C)および2次転写装置22,定着装置25,排紙装置,図示しないトナー供給装置,トナー廃棄装置等も備えている。給紙部200は、プリンタ100の下方に配設された自動給紙部と、プリンタ100の側面に配設された手差し部とを有している。そして、自動給紙部は、ペーパーバンク43内に多段に配設された3つの給紙カセット44,給紙カセットから用紙である転写紙を繰り出す給紙ローラ42,繰り出した転写紙を分離して給紙路46に送り出す分離ローラ45等を有している。また、プリンタ100の給紙路48に転写紙を搬送する搬送ローラ47等も有している。一方、手差し部は、手差しトレイ51,手差しトレイ51上の転写紙を手差し給紙路53に向けて一枚ずつ分離する分離ローラ52等を有している。
【0022】
プリンタ100の給紙路48の末端付近には、レジストローラ対49が配設されている。このレジストローラ対49は、給紙カセット44や手差しトレイ51から送られてくる転写紙を受け入れた後、所定のタイミングで中間転写体たる中間転写ベルト10と2次転写装置22との間に形成される2次転写ニップに送る。
【0023】
本複写機において、操作者は、カラー画像のコピーをとるときに、ADF400の原稿台30上に原稿をセットする。あるいは、ADF400を開いてスキャナ300のコンタクトガラス32上に原稿をセットした後、ADF400を閉じて原稿を押える。そして、図示しないスタートスイッチを押す。すると、ADF400に原稿がセットされている場合には原稿がコンタクトガラス32上に搬送された後に、コンタクトガラス32上に原稿がセットされている場合には直ちに、スキャナ300が駆動を開始する。そして、第1キャリッジ33及び第2キャリッジ34が走行し、第1キャリッジ33の光源から発せられる光が原稿面で反射した後、第2キャリッジ34に向かう。更に、第2キャリッジ34のミラーで反射してから結像レンズ35を経由して読取りセンサ36に至り、画像情報として読み取られる。
【0024】
このようにして画像情報が読み取られると、プリンタ100は、図示しない駆動モータで支持ローラ14,15,16の1つを回転駆動させながら他の2つの支持ローラを従動回転させる。そして、これらローラに張架される、中間転写体である中間転写ベルト10を無端移動させる。更に、上述のようなレーザ書き込みや、後述する現像プロセスを実施する。そして、感光体40(K,Y,M,C)を回転させながら、それらに、ブラック,イエロー,マゼンタ,シアンの単色画像を形成する。これらは、感光体40(K,Y,M,C)と、中間転写ベルト10とが当接するK,Y,M,C用の1次転写ニップで順次重ね合わせて静電転写されて4色重ね合わせトナー像になる。感光体40(K,Y,M,C)上にトナー像を形成する。
【0025】
一方、給紙部200は、画像情報に応じたサイズの転写紙を給紙すべく、3つの給紙ローラのうちの何れか1つを作動させて、転写紙をプリンタ100の給紙路48に導く。給紙路48内に進入した、用紙である転写紙は、レジストローラ対49に挟み込まれて一旦停止した後、タイミングを合わせて、中間転写ベルト10と2次転写装置22の2次転写ローラ23との当接部である2次転写ニップに送り込まれる。すると、2次転写ニップにおいて、中間転写ベルト10上の4色重ね合わせトナー像と、転写紙とが同期して密着する。そして、ニップに形成されている転写用電界やニップ圧などの影響によって4色重ね合わせトナー像が転写紙上に2次転写され、紙の白色と相まってフルカラー画像となる。
【0026】
2次転写ニップを通過した転写紙は、2次転写装置22の搬送ベルト24の無端移動によって定着装置25に送り込まれる。そして、定着装置25の加圧ローラ27による加圧力と、加熱ベルトによる加熱との作用によってフルカラー画像が定着せしめられた後、排出ローラ56を経てプリンタ100の側面に設けられた排紙トレイ57上に排出される。
【0027】
この複写機は、複数の感光体線速を持っており、普通紙を通紙する場合には352mm/sec、厚紙を通紙する場合には176mm/secで動作する。
【0028】
図2に、図1に示すプロセスカートリッジ18の1つの構成を示す。他の3個の構成も同一又は同様な構成である。プロセスカートリッジ18のケースには、レーザ露光装置21から、像担持体である感光体40への露光光76を通過させるための開口が設けられている。プロセスカートリッジ18の内部の感光体40の周りには、感光体40を均一に帯電するスコロトロン帯電器70、感光体40の電位を検知する電位センサ81、感光体40に形成された静電潜像を現像する現像装置60、トナー像が転写された後の感光体40の表面を除電する除電ランプ72、転写残トナーをクリーニングするためのクリーニング装置としてブラシローラ83とクリーニングブレード85、が配置されている。ブラシローラ83や、ポリウレタンゴムからなるクリーニングブレード85により感光体40から掻き取られたトナーは、トナー搬送コイル89により回収され、図示しない廃トナー収納部に搬送するように構成されている。
【0029】
この例では転写後に除電された感光体40をクリーニングするように構成されているが、転写後にクリーニングされた感光体を除電するように構成してもよい。
【0030】
ブラシローラ84,固形潤滑剤88および潤滑剤供給ブレード80から構成される潤滑剤供給装置が、クリーニング装置(83,85)の下流に配置されている。ブラシローラ84は、固形潤滑剤88を削って感光体40に供給し、感光体40に供給された潤滑剤は、潤滑剤供給ブレード80により感光体40上に均一に引き伸ばされる。固形潤滑剤88の例としては、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸鉄、ステアリン酸ニッケル、ステアリン酸コバルト、ステアリン酸銅、ステアリン酸ストロンチウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、オレイン酸亜鉛、オレイン酸コバルト、オレイン酸マグネシウム、パルチミン酸亜鉛のような脂肪酸金属塩や、カルナウバワックスのような天然ワックスや、ポリテトラフルオロエチレンのようなフッ素系の樹脂を用いることができる。図2のようにクリーニング装置(83,85)の下流に専用の潤滑剤供給装置を配置することで、形成される画像面積により転写残トナーや逆転写トナーの入力量の変化に影響されずに像担持体である感光体40に潤滑剤を安定に供給することができる。
【0031】
各プロセスカートリッジ18の現像装置60は構成が同一のものであり、それらは使用するトナーの色のみが異なる二成分現像方式の現像装置であり、各色の現像装置60内にはトナーとキャリアからなる二成分現像剤が収容されている。現像装置60は、感光体40に対向した現像ローラ61、現像剤を搬送・撹拌するスクリュー62,63、トナー濃度センサ64、等から構成される。現像ローラ61は、外側の回転自在のスリーブと内側に固定された磁石から構成されている。トナー濃度センサ64の出力に応じて、図示しないトナー補給装置より必要量のトナーが補給される。
【0032】
トナーは、結着樹脂,着色剤および電荷制御剤を主成分とし、必要に応じて、他の添加剤が加えられて構成されている。結着樹脂の具体例としては、ポリスチレン、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、ポリエステル樹脂、等を用いることができる。トナーに使用される着色材(例えばイエロー、マゼンタ、シアン及びブラック)としては、トナー用として公知のものが使用される。
【0033】
キャリアは芯材それ自体、又は、芯材上に被覆層を設けたものである。樹脂被覆キャリアの芯材としては、フェライト又はマグネタイトである。この芯物質の粒径は20〜60μm程度である。キャリア被覆層形成に使用される材料としては、ビニリデンフルオライド、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロアルキルビニルエーテル、フッ素原子を置換してなるビニルエーテル、フッ素原子を置換してなるビニルケトンがある。被覆層は、キャリア芯材粒子の表面に噴霧法又は浸漬法で樹脂を塗布したものである。
【0034】
図2に示す帯電器70は、ダブルワイヤのスコロトロンであり、ケーシング71はステンレス製で2本のワイヤ73,74間を遮蔽する遮蔽壁72を持つ。グリッド75は、ステンレス製でエッチングにより作製され、開口率は82%であり、φ60mmの感光体40の表面より2mmの距離に、感光体と同心で配置されている。グリッド75は、感光体40と同心の円筒面の曲面形状である。
【0035】
ワイヤ73,74は、直径40μmのタングステンワイヤ上に厚さ1.5μmの金メッキが施されたものであり、感光体表面より6mmの距離に配置されている。2本のワイヤ73および74はそれぞれ別個の高圧電源(図3の76,77)に接続されている。グリッド75は、グリッド用高圧電源(図3の78)に接続されており、ケーシング71は、電源回路(図3の79)で、グリッド75と同電位に接続されている。
【0036】
ケーシング71には、2本のワイヤ73,74間を遮蔽する遮蔽壁72を備えているので、2本のワイヤ73,74とも使用する場合にワイヤ間の電界の干渉を防止することができ、1本のワイヤしか使用しない場合でも電界が乱れず安定したコロナ放電を発生させることができる。
【0037】
ワイヤ電流が小さいと放電状態が安定せずに帯電ムラが発生しやすく、ワイヤ電流が大きすぎるとケーシングへのリークが発生しやすくなる、オゾン等の放電生成物の発生量が増大する等の不具合があるため、ワイヤ73,74の、単位長さあたりの放電電流を9〜18μA/cmの範囲に設定するのが望ましい。使用するワイヤは、直径が細いほど低い電圧でコロナ放電が発生し、オゾン等の放電生成物の発生も少ないことが知られている。ワイヤの強度や取り扱い易さも考慮すると、ワイヤ73,74の直径としては25〜55μmとするのが望ましい。ワイヤの材料としては機械的強度からタングステンを用いている。
【0038】
ワイヤ表面をメッキ等の処理により金や白金等の貴金属で被覆することで、酸化等の劣化が起こりにくく、ワイヤの汚れ除去しやすくすることができる。貴金属被覆の厚さは薄すぎると耐久性に劣り、厚すぎるとコストアップとなることから、1〜4μmとするのが望ましい。
【0039】
さらに、グリッド75を感光体40と同心の円周の曲面とすることで、グリッド75による感光体電位の制御性を向上させている。グリッド75の開口率は低いほうが電位の制御性は向上するが、低すぎると必要な帯電電位をえるためのワイヤ電流が大きくなってしまうため、グリッド75の開口率としては75〜85%が望ましい。
【0040】
スコロトロンではグリッドと感光体表面との距離に長手方向の偏差があると感光体の帯電電位にも偏差が発生してしまうため、この距離を精度よく維持することが必要である。感光体と帯電器70を一体のプロセスカートリッジ18として、プロセスカートリッジ内で感光体表面とグリッドとの距離を維持できるように構成している。これにより、ユーザでも、プロセスカートリッジ18の単位で交換が容易であり、帯電電位の偏差も生じにくい。
【0041】
上記実施例は、2本のワイヤを用いているが、ワイヤが3本以上の場合でも同様に本発明を適用することができる。また、放電電極がワイヤの場合について説明したが、ワイヤの替わりに鋸歯状の金属電極を複数備えた帯電器を用いても、本発明を実施することができる。
【0042】
図3に、図2に示す帯電器70に帯電電圧を与える電源回路の概要を示す。帯電器70は金属製のケーシング71,金属細線からなる第1ワイヤ73,第2ワイヤ74および金属製のグリッド75から構成されるスコロトロンであり、第1ワイヤ73は第1高圧電源回路76に、第2ワイヤ74は第2高圧電源回路に、そしてグリッド75はグリッド電源回路78に接続されている。ケーシング71は、ケーシング電源回路79によって、接地、あるいはグリッドと同電位、とされている。図示しないエンジン制御のプロセスコントローラ90が、電源回路76〜79の出力のオン/オフ,グリッド電圧およびワイヤ電流を、制御又は設定する。すなわちプロセスコントローラ90が、電源回路76〜79を制御して、帯電器70のワイヤ73および又は74に高電圧を印加してコロナ放電を発生させ、グリッド75に印加する電圧すなわちグリッドバイアスによって、感光体40の帯電電位を制御する。
【0043】
図3に示すプロセスコントローラ90は、入出力インターフェース,MPU(マイクロコンピュータ)および作像プロセス制御ASICを主要要素とし、図示しないシステムコントローラから、ユーザが指定した画像処理ジョブを実行するための作像コマンドを受けて、作像プロセスを設定し実行する。
【0044】
スコロトロンである帯電器70では、感光体線速すなわち感光体表面の移動速度が大きくなるほど、感光体40を十分に帯電させるためにワイヤ電流も大きくする必要があるが、1本のワイヤに流す電流が大きすぎるとワイヤへの印加電圧が高くなりすぎて、ケーシング71へのリークが発生する恐れがある。そのため、高速の画像形成装置では2本以上の複数のワイヤを備えてワイヤ1本あたりの放電電流を低減している。従来は複数のワイヤをまとめて1つの高圧電源に接続していたため、低速モードでもワイヤ電流を下げることができず低速モードでも通常モードと同様のワイヤ電流に設定していた。これはワイヤ電流を下げすぎると安定なコロナ放電を維持することができず帯電ムラが発生してしまうためである。低速モードでは過剰なワイヤ電流の設定となっているため、通常モードである高速モードと低速モードで帯電電位の制御性に差が生じてしまい、グリッドバイアスの設定が同じでも感光体の帯電電位が異なってしまうという不具合があった。
【0045】
本実施例では、複数のワイヤ73,74のそれぞれを、個別に高圧を出力/停止する複数の高圧電源76,77のそれぞれに接続して、線速に応じて使用するワイヤの本数を切替える。そうすると、高速モードと低速モードのいずれでも、適正なワイヤ電流に設定することが可能であり、グリッドバイアスが同じであれば、高速/低速モードによらず帯電電位も同じにすることができる。
【0046】
図4に、プロセスコントローラ90による、ワイヤ本数の切替え機能の概要を示す。図示しないシステムコントローラが、ユーザのスタート指示に応じて、複写又は印刷(以下では、両者を総称して、作像又は画像形成という)のコマンドをプロセスコントローラ90に与えると、プロセスコントローラ90は、作像機構に対する作像条件を設定し、設定した作像条件での作像を、該作像条件に含まれる設定枚数分実行する。
【0047】
上記作像条件の設定において、プロセスコントローラ90は、図4に示す「使用するチャージャワイヤの決定」WSPを実行する。そこではまず、システムコントローラから高速/低速指定データ(線側データ)を読み込み、不揮発性メモリからワイヤ指示データWfを読み込む(S1)。
【0048】
次に、該高速/低速指定データとワイヤ指示データWfの内容に対応して、低速(本実施例では176mm/sec)指定である場合は、ワイヤ指示データWfが「0」であるときには、チャージャワイヤ73のみを今回の設定枚数の作像のための帯電行程での使用に定めて(S2,S3)、次回の指定はワイヤ74とするために、ワイヤ指示データWfを「1」に変更する(S4)。しかし、ワイヤ指示データWfが「1」であるときには、チャージャワイヤ74のみを今回の設定枚数の作像のための帯電行程での使用に定めて(S2,S5)、次回の指定はワイヤ73とするために、ワイヤ指示データWfを「0」に変更する(S6)。
【0049】
高速(本実施例では352mm/sec)指定であった場合は、チャージャワイヤ73および74を、帯電行程での使用に定める(S2,S7)。ワイヤ指示データWfは操作しない。
【0050】
プロセスコントローラ60はその後、上記設定枚数の作像を開始し、各頁の作像のための帯電行程で、上記S3,S5又はS7で使用に設定したチャージャワイヤ73,74又は73と74に給電する高圧電源回路76,77又は76と77を、高圧出力オン(帯電電圧出力オン)を行わせる。
【0051】
低速指定であった場合には、スタート指示に応答する設定枚数の作像を行うたびに、ワイヤ指示データWfが「0」(ワイヤ73指定)から「1」(ワイヤ74指定)に、又はその逆に変更されるので(S4,S6)、長期間を通してみれば、低速指定であった場合の、チャージャワイヤ73と74の使用頻度は略同等となる。すなわち使用頻度が均等化される。これにより、1つのワイヤのみ劣化が進行してしまい早期に作像品質が低下してしまうということはなくなる。すなわち高品質作像の安定性が高い。
【0052】
なお、チャージャワイヤ73と74のそれぞれの使用頻度を均等化する態様には、上述の他に、不揮発メモリに、ワイヤ73用と74用のカウントレジスタを定めて、各カウントレジスタのデータを、それが割り当てられたワイヤ(73又は74)を1回(1回の作像の設定枚数分)使用する度に1カウントアップして、カウント値が小さいレジスタが割り当てられたワイヤ(73又は74)を帯電行程での使用に定める態様もある。また、1頁画像の作像のたびにカウントアップする態様もある。
【0053】
比較例
図1の複写機を、従来と同じく、帯電器70の2本のワイヤ73,74には、従来の1つの高圧電源回路から同時に帯電電圧を印加する構成として、比較例とした。この比較例も、複数の感光体線速を持っており、普通紙を通紙する場合には352mm/sec、厚紙を通紙する場合には176mm/secで動作する。それぞれの線速でグリッドバイアスVgとワイヤ電流Icを変化させたときの感光体帯電電位の測定結果を表1に示した。表1のVg=−700Vのときの測定結果をグラフにしたものが図6である。線速により、同じグリッドバイアスVgでも帯電電位に差が生じてしまい、適正な放電が維持できる範囲内でワイヤ電流を変化させてもこの差を無くすことができない。
【0054】
【表1】

【0055】
本願発明の実施例
図3に示すように、帯電器70の2本のワイヤ73および74のそれぞれに、別個の高圧電源回路76および77のそれぞれを接続し、各電源回路から各ワイヤへの高圧出力を個別にオン,オフするようにした、図1の複写機を、本願発明の実施例とした。その他は、比較例と同じ構成である。感光体線速が352mm/secと176mm/secでグリッドバイアスVgとワイヤ電流Icを変化させたときの感光体帯電電位の測定結果を、表2に示した。表2のVg=−700Vのときの測定結果をグラフにしたものが図5である。ここで線速352mm/secでのワイヤ電流はワイヤ1本あたりの電流値であり、2本のワイヤはそれぞれ同じ電流に設定されている。したがってスコロトロン(帯電器)全体のワイヤ電流は、図5の2倍となっている。線速176mm/secでは感光体回転方向の上流に位置するワイヤ73のみを放電させており、下流側のワイヤ74には高圧を印加していない。線速によりワイヤ本数を切替えることで、グリッドバイアスが同じであれば帯電電位をほぼ同じにすることができる。
【0056】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の1実施例の複写機の縦断面図である。
【図2】図1に示す複写機のプロセスカートリッジ18の1つの拡大図である。
【図3】図2に示す帯電器70とそれに給電する電源回路との組合せを示すブロック図である。
【図4】図4に示すプロセスコントローラ90の、帯電行程で使用するワイヤを決定するロジックを示すフローチャートである。
【図5】図3に示す帯電器70の一本のワイヤ73のみに帯電電圧を印加した場合の、感光体40の帯電電位を示すグラフである。
【図6】図3に示す帯電器70の2本のワイヤ73,74に1つの高圧電源から同時に給電した場合の、感光体40の帯電電位を示すグラフである。
【符号の説明】
【0058】
10:中間転写ベルト 11:1次転写ローラ
14〜16:支持ローラ
17:中間転写体クリーニング装置
18:プロセスカートリッジ
20:作像装置
21:レーザ露光装置 22:2次転写ローラ
23:ローラ 24:搬送ベルト
25:定着装置 26:定着ベルト
27:加圧ローラ 28:シート反転装置
32:コンタクトガラス
33:第1キャリッジ 34:第2キャリッジ
35:結像レンズ 36:CCD
40:感光体ドラム 42:給紙ローラ
43:ペーパーバンク 44:給紙カセット
45:分離ローラ 46:給紙路
47:搬送ローラ 48:給紙路
49:レジストローラ 50:給紙ローラ
51:手差しトレイ 55:切換爪
56:排出ローラ 57:排紙トレイ
60:現像装置 61:現像ローラ
62,63:スクリュー
70:スコロトロン帯電器
71:ケーシング 72:遮蔽壁
73,74:ワイヤ 75:グリッド
80:潤滑剤供給ブレード
81:電位センサ 82:除電ランプ
83,84:ブラシローラ
85:クリーニングブレード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
像担持体;
ケーシング,グリッド,複数の放電電極、および、個別に高圧を出力/停止する複数の高圧電源を含み、前記複数の放電電極のそれぞれが前記複数の高圧電源のそれぞれに接続された、前記像担持体を帯電する帯電装置;
前記像担持体の帯電面に光を照射し静電潜像を形成する露光手段;
前記静電潜像を現像してトナー像を形成する現像手段;
前記トナー像を用紙に転写する転写手段;および、
前記複数の高圧電源のそれぞれの、放電電極への高圧の出力/停止を制御して、像担持体の移動速度が高いと多い数に、低いと少ない数に、前記像坦持体の帯電に使用する放電電極の数を切替える、制御手段;
を備える画像形成装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記複数の放電電極の、前記像坦持体の帯電に使用する頻度を均等化する;請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記ケーシングは、隣り合う放電電極間を遮蔽する遮蔽壁を持つ;請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記像担持体はローラ形状であって、前記グリッドは、前記像担持体と同心の円周の一部をなす曲面形状であって、開口率が75〜85%である;請求項1乃至3のいずれか1つに記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記放電電極は、直径が25〜55μmのワイヤである:請求項1乃至4のいずれか1つに記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記ワイヤは、厚さ1〜4μmの貴金属の表面被覆を持つ;請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記高圧電源は、前記ワイヤの長さあたり9〜18μA/cmの放電電流を給電する;請求項5又は6に記載の画像形成装置。
【請求項8】
画像形成装置本体に対して容易に着脱可能なプロセスカートリッジに、前記像担持体ならびに前記帯電装置のケーシング,グリッドおよび複数の放電電極を装備した;請求項1乃至7のいずれか1つに記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−44127(P2010−44127A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−206484(P2008−206484)
【出願日】平成20年8月10日(2008.8.10)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】