説明

画像形成装置

【課題】シートの整列積載性を確保すると共に湯気を目立たなくすることのできる画像形成装置を提供する。
【解決手段】排紙口53に設けられ、シートPの幅方向の長さよりも長い幅方向の長さを有し、かつ複数の穴10aを備えた回動自在な排紙押さえ12により、積載ガイド部材8に積載されるシートPを上方より押える。そして、排紙口53に設けられ、シートの幅方向の長さよりも長い幅方向の長さを有し、かつ複数の穴10aを備えた回動部材10を、排紙押さえ12に上方から当接させ、排紙押さえ12との間に、回動部材10に設けられた複数の穴10aと排紙押さえ12に設けられた複数の穴12aを介して外部と連通する隙間Sを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関し、特にシートを加熱してトナー像を定着させる際、シートから発生し、シート排出口から出てくる水蒸気の湯気を目立たなくするための構成に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プリンタ、ファクシミリ、複写機、マルチファンクションプリンタ等の画像形成装置では、シートに画像を形成する場合は、まず感光体ドラム上にトナー画像を形成した後、シートにトナー像を転写する。次に、トナー像が転写されたシートを定着手段に搬送し、シートを加熱及び加圧することによりトナー像をシート上に定着する。そして、トナー像が定着されたシートを、排紙ローラ対によってシート排出口からシート積載部に排出するようにしている。
【0003】
ところで、最近の画像形成装置では、最初の一枚目の出力時間(ファーストプリントアウトタイム)を短縮する目的で、給紙手段から転写手段、定着手段及び排紙手段に至るシート搬送路を垂直に形成してシート搬送路の短縮化を図るようにしたものがある。そして、このような画像形成装置としては、特に定着手段から排紙手段に至るシート搬送路を短くするようにしたものがある(特許文献1参照)。
【0004】
一方、従来の画像形成装置では、水分を多く含んだシートが定着手段で加熱される際、シートの表面から水蒸気が発生してシートの水分が多く失われるため、シートがカールした状態でシート積載部に積載される場合がある。そして、このようにシートがカールした場合、シートの積載性が低下すると共に、シート積載部に積載されたシートが、次に排出されるシートにより押し出されてシート積載部から落下する場合がある。
【0005】
このため、従来は、例えば図7に示すように押さえ部材110を回動自在に設けるようにしたものがある。そして、押さえ部材110により、排紙ローラ111によりシート排出口112から排出され、シート積載部113に積載される不図示のシートの後端の、シート排出方向と直交する幅方向の両端部を押さえることにより、シートを整列積載させるようにしている。
【0006】
なお、このような押さえ部材としては、シートの幅方向の位置及びシート排出方向の位置を調整自在なものがある(特許文献2参照)。また、押さえ部材の他の構成としては、使用環境やシートの種類に応じて押さえ部材の押圧力を調整するため、押さえ部材に錘を取り付け、錘の取り付け位置を調整できるように構成されたものがある(特許文献3参照)。
【0007】
【特許文献1】特開2004−264840号公報
【特許文献2】特開2004−307157号公報
【特許文献3】特開2004−115254号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、従来の画像形成装置において、水分を多く含んだシートが定着手段を通過すると、シートから水蒸気が発生する。ここで、このようにシートから水蒸気が発生すると、既述した特許文献1に示すような構成の画像形成装置の場合、定着手段から排紙手段に至るシート搬送路近傍の雰囲気温度が低い時には、水蒸気が冷やされて湯気になる。
【0009】
そして、この湯気が多量にシート排出口から一気に出て来ると、ユーザーは間違えて装置に異常が生じたと判断してしまうことがある。特に、画像形成速度の速い画像形成装置では、単位時間あたりの湯気の量が多いので、より湯気が目立ちやすい。
【0010】
また、定着手段から排紙手段に至るシート搬送路が短い場合には、定着手段で加熱されて水蒸気が発生したシートがすぐに機外に排出されるため、カールを起こしやすい。このため、既述した特許文献2及び3に示すように、シートのカールを押さえて整列積載させる押さえ部材を設ける必要がある。特に、画像形成速度の速い画像形成装置ではカールが大きくなりやすく、整列積載性が低下する可能性があるため押さえ部材は必須である。
【0011】
しかし、このように押さえ部材を設けた場合、シートの整列積載性を確保することはできるが、押さえ部材では、湯気を分散させることはできず、湯気を目立たなくすることはできない。
【0012】
そこで本発明は、このような現状に鑑みてなされたものであり、シートの整列積載性を確保すると共に湯気を目立たなくすることのできる画像形成装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、トナー像が定着されたシートをシート排出手段によりシート積載部に排出する画像形成装置において、シート排出方向と直交する幅方向に延びる軸によって前記シート排出手段の上方に軸支され、前記シート積載部に排出されたシートを押えるシート押さえ部材と、前記シート押さえ部材に上方から当接する回動自在な回動部材と、を備え、前記シート押さえ部材は前記シート積載部に排出されたシートと対向する面に開口部を有し、前記シート押さえ部材と前記回動部材との間に、前記シート押さえ部材の開口部を介して外気と連通する隙間を形成することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明のように、シート押さえ部材に回動部材を当接させ、シート押さえ部材に設けられた開口部を介して外気と連通する隙間を形成することにより、シートの整列積載性を確保すると共に二重に湯気を分散させることができ、湯気を目立たなくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を用いて詳細に説明する。
【0016】
図1は、本発明の実施の形態に係る画像形成装置の一例であるプリンタの概略構成を示す図である。
【0017】
図1において、50はプリンタ、51は装置本体であるプリンタ本体、52はプリンタ本体51に設けられ、電子写真方式により画像形成を行う画像形成部、3は画像形成部52にシートPを給送するシート給送装置である。
【0018】
ここで、画像形成部52はレーザー露光装置1、トナー像を形成する感光体ドラム7、感光体ドラム7に形成されたトナー像をシートPに転写する転写ローラ4aなどを備えている。なお、Cは感光体ドラム7、不図示の帯電ローラ、現像手段等を備えたプロセスカートリッジであり、このプロセスカートリッジCは、プリンタ本体51に着脱自在に装着されている。
【0019】
そして、このような構成の画像形成部52において、画像形成動作が開始されると、まずレーザー露光装置1から画像信号に応じた光が、表面が帯電処理されると共に、矢印方向に回転駆動されている感光体ドラム7に照射される。そして、このような画像信号に応じた光が照射されることにより、感光体ドラム上に潜像が形成される。次に、この感光体ドラム上の潜像は、現像手段により供給されたトナーにより現像され、トナー像として可視化される。
【0020】
シート給送装置3は、プリンタ本体51に開閉自在に設けられた給紙トレイ2と、給紙トレイ2に収納されたシートPを給送する給紙ローラ3aを備えている。ここで、給紙トレイ2は、シートPを積載する上下方向に回動可能な積載台2aと、シートPのシート搬送方向に対して直交する方向(以下、幅方向という)にスライド可能に設けられ、シートPの幅方向の両端位置を規制するマルチスライダ2bを備えている。そして、このマルチスライダ2bにより、A4サイズやレターサイズ等の定型サイズのシートだけでなく、葉書や封筒といった不定形サイズのシートPの両端位置を揃えることができる。
【0021】
また、給紙トレイ2のシート給送方向下流側には、給紙ローラ3aに圧接する分離パッド3bが設けられており、この分離パッド3bは分離パッドばね3cにより給紙ローラ3aに圧接するようになっている。そして、このようなシート給送装置3においては、画像形成の際には給紙ローラ3aにより給紙トレイ2からシートPを送り出し、この後、シートPを給紙ローラ3aに圧接している分離パッド3bにより1枚ずつ分離するようにしている。
【0022】
次に、このような構成のプリンタ50における画像形成動作について説明する。
【0023】
プリント開始信号が入力されると、給紙トレイ2にセットされたシートPが、給紙ローラ3aとの摩擦により送り出され、この後、このシートPは分離パッドばね3cにより付勢された分離パッド3bによって1枚ずつ分離され、給送される。
【0024】
次に、シートPは、搬送ローラ9により搬送され、このシートPの通過を不図示のフォトセンサが検知すると、レーザー露光装置1は感光体ドラム7にレーザー光を照射する。これにより、感光体ドラム上には静電潜像が形成され、この静電潜像をトナーによって現像することにより、静電潜像を可視化する。この後、可視化された感光体ドラム上のトナー像は転写部4において、転写ローラ4aに感光体ドラム7に形成されたトナー像と逆極性の電圧を印加することにより、シートPに転写される。
【0025】
次に、トナー像が転写されたシートPは駆動回転する駆動ローラ5aと、不図示のヒータを備えた定着ローラ5bとからなる定着手段である定着部5に搬送され、駆動ローラ5aと定着ローラ5bの間を通過する際に加圧及び加熱される。これにより、トナー像がシート上に永久定着される。そして、トナー像が定着されたシートPは排紙部6に設けられたシート排出手段である排紙ローラ対6aより、シート排出口である排紙口53から画像面が下向きのフェイスダウン状態でシート積載部を構成する積載ガイド部材8の上面にページ順に積載される。
【0026】
ところで、本実施の形態において、図1に示すように、定着部5が排紙口近傍に設けられている。このため、水分を多く含んだシートPが定着部5を通過した際に、その水分が蒸発して水蒸気となり、排紙口付近の雰囲気温度が低い場合には、この水蒸気が冷やされて湯気となって排紙口53から出てくる場合がある。そして、既述したように、それを見るとユーザーは間違えてプリンタ50に異常が生じたと判断してしまうことがある。
【0027】
そこで、本実施の形態においては、湯気を目立たなくするため、図2に示すように、回動自在な回動部材10を、排紙口53の上方からシート排出方向下流側に一端を突出させるようにしている。なお、図2において、11はプリンタ本体51の上面、即ち定着部5の上方に設けられ、排紙口53を有するカバー部材である。そして、回動部材10の他端は、シート排出方向と直交する方向に延びる軸10bを介してカバー部材11に回動可能に軸支される。なお、この回動部材10は、カバー部材11の排紙口内側の不図示の側壁面に隙間が無いように、かつ排紙ローラ対6aの上方に取り付けられている。
【0028】
また、水分が蒸発したシートPは、積載ガイド部材8においてカールしやすい。そして、シートPのカールが大きくなると、整列性が低下したり、積載可能な枚数が減ったり、積載ガイド部材8に積載されたシートが排紙部6から排出されるシートによって押し出されて落下するという問題があった。
【0029】
そこで、回動部材10の下方には、シートの積載整列性を確保するため、シート押さえ部材である排紙押さえ12が排出されるシートに押されて回動可能に、かつ排紙口53の上方からシート排出方向下流側に一端を突出してカバー部材11に設けられている。なお、この排紙押さえ12の他端は、シート排出方向と直交する幅方向に延びる軸12bを介してカバー部材11の排紙口内側の側壁面に隙間が無いように、かつ排紙ローラ対6aの上方に取り付けられている。さらに、この排紙押さえ12は、通常、自重で垂れ下がっており、不図示のストッパにより所定の回動位置に保持されている。
【0030】
ここで、排紙押さえ12の一端(回動端)である下端部12cは、幅方向全域に渡って上方に湾曲しており、排紙押さえ12が所定の回動位置にあるとき、上方に湾曲した下端部12cが回動部材10の底面に当接する。また、この排紙押さえ12は、幅方向の長さが排出されるシートの幅方向の長さよりも少し長くなっており、幅方向のシート排出領域(搬送領域)を超えて設けられている。
【0031】
そして、排紙押さえ12の排出されるシートと対向する面には図3に示すように、開口部としての穴12aが多数設けられている。一方、回動部材10も、排紙押さえ12の幅とほぼ同じ長さの幅を有しており、図3に示すように、排紙押さえ12と同様に開口部としての穴10aが多数設けられている。
【0032】
ここで、回動部材10は、自重で回動するようになっているため、下方に位置する排紙押さえ12が所定の回動位置にあるとき、排紙押さえ12の下端部12cに隙間無く当接しながら排紙押さえ12により支えられている。
【0033】
そして、このような排紙押さえ12と回動部材10は、図2に示すようにシートPが排紙部6から排出されると、シートPにより押圧されて図4に示すように一体的に持ち上げられる。また、このように排紙押さえ12に上方から回動部材10を当接させることにより、回動部材10と排紙押さえ12との間には、回動部材10の複数の穴10a及び排紙押さえ12の複数の穴12aを介して外気と連通する隙間Sが形成される。
【0034】
ここで、シートPが水分を多く含んでいる場合、定着部5で加熱されることにより、水蒸気が多量に発生し、水蒸気の温度と周囲の温度差が大きい場合、この水蒸気が冷やされて非常に細かい水滴となって湯気になる。特に、プリンタ本体51が冷え切っている状態では、画像形成動作を開始したとしても排紙部6近傍の温度が上がるまでにある程度時間が掛かるため、湯気が排紙部6近傍で発生しやすい。
【0035】
しかし、このように排紙部6近傍で湯気が発生した場合でも、排紙押さえ12が排紙口53から紙幅全域にわたってシート排出方向下流側に突出して設けられているので、水蒸気は排紙押さえ12により分散される。このため、大量の水蒸気が排紙口53から装置外部へ湯気となって一気に出てくることはない。
【0036】
さらに、湯気は排紙押さえ12によって分散されつつ、一部が排紙押さえ12の穴12aを通って上方に逃げるようになる。さらに、排紙押さえ12の穴12aを通過した湯気は、図4で示すように排紙押さえ12と回動部材10との間で形成される隙間Sでさらに分散されて勢力を弱められ、湯気の一部が隙間Sの幅方向両端から、さらに一部が回動部材10の穴10aから抜ける。このように、分散を繰り返すうちに、湯気は少量ずつ外気に放出されるため目立たなくなる。
【0037】
この際、排紙押さえ12の下端部12cは、回動部材10との間に湯気を分散させるための適度の隙間Sを形成するとともに、排紙押さえ12の穴12aを通過した湯気が排紙方向に漏れるのを防いでいる。
【0038】
なお、図5に示すように、排紙押さえ12に設けられた開口部としての穴12aと、回動部材10に設けられた開口部である穴10aとの位置をずらして設けている。このため、排紙押さえ12の穴12aから隙間Sに進入した湯気が、そのまま直進して回動部材10の穴10aから漏れ出ないようにすることができ、これにより湯気を目立たないようにすることができる。本実施の形態では幅方向にずらしているが、これに限らず、例えば、排紙方向にずらしてもよい。
【0039】
更に、本実施の形態では、例えば排紙押さえ12の穴12aの直径をφ5とすると共に、回動部材10の穴10aの径の方が小さくなるよう、例えば回動部材10の穴10aの直径をφ3にしている。これにより、湯気は排紙押さえ12の穴12aから隙間Sに進入し易くなり、大量の湯気を排紙押さえ12から隙間Sに入り込ませることができる。また、回動部材10の穴10aを小さくすることにより、回動部材10から出てくる湯気の量を減少させることができ、湯気を目立たないようにすることができる。
【0040】
なお、本実施の形態において、開口部としての穴を排紙押さえ12と回動部材10の両方に設けているが、湯気の勢力が弱い場合等は、少なくとも排紙押さえ12に穴が設けられていればよい。隙間Sの幅方向両端の開口面積が十分に確保されれば、排紙押さえ12の穴12aから隙間Sに入り込んだ湯気を隙間Sの幅方向両端の開口から分散して外気に放出でき、十分に湯気を目立たないようにすることができる。ただし、回動部材10の下面に水滴が溜まりにくくするためには、回動部材10にも穴を設けて湯気をより確実に分散させて外気中に放出するほうがよい。
【0041】
さらに、湯気の勢力が弱い場合は、回動部材10がなくとも、排紙押さえ12のみで湯気を分散させて目立たないようにすることができるが、湯気の勢力が強い場合は、排紙押さえ12だけでは湯気が目立たないようになるまで分散できない場合がある。特に、画像形成速度の速いプリンタの場合は、単位時間あたりの水蒸気の発生量が増えるため、湯気が大量に出易い。
【0042】
しかし、本実施の形態のように、排紙押さえ12と回動部材10を、隙間Sを形成しながら当接させることにより、二重に湯気を分散させることができ、湯気を目立たないようにすることができる。
【0043】
一方、トナー像が定着されたシートPは、既述したように排紙部6に設けられた排紙ローラ対6aよって、排紙口53から積載ガイド部材8に積載される。ここで、定着部5で加熱される際、シートPの表面、特に上面から水蒸気が発生してシートPの上面の水分が多く失われるため、積載ガイド部材8に載置されたシートPは端部が上方に反ること、すなわち上方にカールすることが多い。また、シートPの抄き目が縦方向であることが多いため、シートPは、その幅方向の両端部が上方に反りあがること、すなわちシートPの両端部が上方にカールすることが多い。
【0044】
そして、シートPの反り量が大きい場合には、シートPの端部が排紙ローラ対6aの高さまで達するようになる。この結果、反り上がったシートPが次に排紙部6から排出されるシートPに押し出されて整列性が損なわれたり、積載ガイド部材8から押し出されてしまう場合がある。
【0045】
しかし、本実施の形態のように排紙押さえ12を設けることにより、積載ガイド部材8に積載されたシートPが反り上がってしまうのを押さえることができ、シートPの端部が排紙ローラ対6aの高さより高くなるのを防ぐことができる。これにより、積載ガイド部材8に積載されたシートPが排紙部6から排出されるシートPにより押し出されるのを防ぐことができ、整列積載性を確保することができる。
【0046】
ここで、一般的にシートPは、その幅方向の両端部が上方に反り上がる事が多いが、シートPの種類や環境条件などによって、さまざまな反り上がり方がある。しかし、実施の形態のように、排紙押さえ12によりシートPの幅方向全域にわたってシートPの反りを押さえるようにすることにより、さまざまな反り上がり方に対応できる。
【0047】
なお、本実施の形態において、例えば図2に示すように、排紙押さえ12の上端に設けられた回動軸である軸12bは、排紙口内部の、回動部材10の上端に設けられた回動軸である軸10bよりもシート排出方向上流側にずらして設けられている。また、排紙押さえ12には、排紙押さえ12の上方に位置する回動部材10の自重が掛かるようになっている。
【0048】
図6は、排紙押さえ12に掛かる回動部材10の自重の掛かり方を説明する図である。
【0049】
図6の(a)は、シートPの反りが小さく、排紙押さえ12があまり押し上げられていない状態を表し、図6の(b)は、シートPの反りが大きく、排紙押さえ12が押し上げられた状態を表す。
【0050】
図6に示すように、回動部材10の軸10bは排紙押さえ12の軸12bよりもΔlだけシート排出方向にずらして設けられている。また、回動部材10の自重Wは、軸10bから距離a離れた位置に垂直に掛かっている。なお、θは回動部材10の水平方向に対する角度を示しており、lは回動部材10の軸10bから排紙押さえ12の下端部12cが回動部材10に当接する位置までの距離である。
【0051】
この場合、回動部材10に掛かる回転モーメントは、a・W・cosθなので、排紙押さえ12の下端部12cにかかる力Pは、以下のように表すことができる。
【0052】
P=a・W・cosθ/l・・(1)
【0053】
ここで、図6から分かるように、排紙押さえ12が持ち上げられると、図6の(b)の場合における回動部材10の水平方向に対する角度θ2は、図6の(a)の場合における回動部材10の水平方向に対する角度θ1より小さくなる(θ1>θ2)。
【0054】
また、回動部材10の軸10bは排紙押さえ12の軸12bよりもΔlだけ排紙方向にずらして設けられている。このため、排紙押さえ12が持ち上げられると、図6の(b)の場合における回動部材10の軸10bから排紙押さえ12の下端部12cが回動部材10に圧接する位置までの距離l2は、図6の(a)の場合の距離l1より短くなる(l1>l2)。
【0055】
ここで、上記式(1)から、θが小さくなるとcosθは大きくなるため、Pは大きくなる。また、lが小さくなるとPは大きくなる。したがって、排紙押さえ12が持ち上げられると、θが小さくなると共にlが小さくなるため、排紙押さえ12に掛かる力が大きくなる。
【0056】
つまり、シートPの反りが大きくなるほど、θが小さくなると共にlが小さくなるため、排紙押さえ12に掛かる力、すなわち反りを押さえる力が大きくなる。なお、シートPの大きな反りを押さえるためには、排紙押さえ12に錘を載せたり、バネで付勢する方法もあるが、この場合は、排紙押さえ12が持ち上がる量に関係なくシートPを押さえる力が増えてしまう。このため、薄紙などの腰の弱いシートが排紙部6から押し出された時には、シートが排紙押さえ12の力に負けてジャムを起こしてしまう。
【0057】
これに対し、本実施の形態では、排紙押さえ12が下がった状態のとき、排紙押さえ12のシートPを押さえる力は弱くなるため、シートが薄紙の場合でもジャムすること無くシートSを排出することができる。また、シートが厚紙等の剛性の大きなシートの場合には、排紙押さえ12はシートに押圧されて回動部材10と一体的に上方回動するので、ジャムすること無くシートSを排出することができる。さらに、剛性の大きなシートが積載ガイド部材8に積載され、このシートの反りが大きくなって、排紙押さえ12が持ち上げられてくると回動部材10により排紙押さえ12に掛かる力が大きくなり、反りを押さえることができる。
【0058】
以上説明したように、排紙押さえ12に回動部材10を当接させて隙間Sを形成することにより、シートPの整列積載性を確保すると共に二重に湯気を分散させることができ、湯気を目立たなくすることができる。
【0059】
なお、本実施の形態では、排紙押さえ12の下端部12cを上方に湾曲させて回動部材10とシート押さえ12との間に隙間Sを形成するようにしたが、回動部材10に下方に延びたリブを形成し、このリブにより隙間を形成するようにしても良い。但し、排紙押さえ12の回動角度にかかわらずシートPの通過をよりスムーズに行うことができることから排紙押さえ12の下端部12cを湾曲させるほうが好ましい。
【0060】
また、本実施の形態では、開口部としての排紙押さえ12の穴12a及び回動部材10の穴10aの形状を円形にしているが、穴の形状は、長丸穴、四角などの形状にしても構わない。あるいは穴形状ではなく、一端を開放した切り欠き形状の開口部を設けてもよい。
【0061】
また、本実施の形態では排紙押さえ12及び回動部材10をシートPの幅方向全域にわたって連続して設けているが、各々の回動軸を中心に一体的に回動するようにすれば連続している必要はない。例えば、排紙押さえ12及び回動部材10を幅方向で分割し、その間に開口部としてのスリット状の隙間を設けても良い。そして、排紙押さえ12及び回動部材10に各々設けたスリットを幅方向にずらすよう配置することで穴の代わりに湯気を分散することができる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の実施の形態に係る画像形成装置の一例であるプリンタの概略構成を示す図。
【図2】上記プリンタの排紙部の構成を説明する断面図。
【図3】上記排紙部の構成を説明する斜視図。
【図4】上記排紙部のシートが排出されるときの状態を示す図。
【図5】上記排紙部に設けられた排紙押さえ及び回動部材に形成された穴の位置を説明する図。
【図6】上記排紙押さえに掛かる回動部材の自重の掛かり方を説明する図。
【図7】従来の画像形成装置の排紙部の構成を説明する斜視図。
【符号の説明】
【0063】
6 排紙部
6a 排紙ローラ対
8 積載ガイド部材
10 回動部材
10a 回動部材の穴
10b 回動部材の軸
11 カバー部材
12 排紙押さえ
12a 排紙押さえの穴
12b 排紙押さえの軸
12c 排紙押さえの下端部
50 プリンタ
52 画像形成部
53 排紙口
P シート
S 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー像が定着されたシートをシート排出手段によりシート積載部に排出する画像形成装置において、
シート排出方向と直交する幅方向に延びる軸によって前記シート排出手段の上方に軸支され、前記シート積載部に排出されたシートを押えるシート押さえ部材と、
前記シート押さえ部材に上方から当接する回動自在な回動部材と、を備え、
前記シート押さえ部材は前記シート積載部に排出されたシートと対向する面に開口部を有し、前記シート押さえ部材と前記回動部材との間に、前記シート押さえ部材の開口部を介して外気と連通する隙間を形成することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記シート押さえ部材の下端部を、前記回動部材との間で前記隙間を形成するため前記回動部材の方向に湾曲させたことを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記回動部材は開口部を備え、前記回動部材の開口部と前記シート押さえ部材の開口部とを、位置をずらして形成したことを特徴とする請求項1又は2記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記回動部材に形成された開口部の大きさを、前記シート押さえ部材に形成された開口部よりも小さくしたことを特徴とする請求項3記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記回動部材は自重により前記シート押さえ部材に当接し、
前記シート押さえ部材は、シートにより押圧された際、前記回動部材と一体的に上方回動することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記回動部材の上端を前記シート押さえ部材の上端よりもシート排出方向下流側に設けることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記シート押さえ部材は、前記幅方向において、前記シート排出手段により排出されるシートの幅方向の搬送領域を超えて設けられることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−85834(P2010−85834A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−256333(P2008−256333)
【出願日】平成20年10月1日(2008.10.1)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】