説明

画像形成装置

【課題】定着装置の複数の発熱部のいずれかが故障した場合でも、定着装置の温度低下を補償することで画像形成を続行することができるようにした画像形成装置を提供する。
【解決手段】複数の発熱部を有する定着装置を用いた画像形成装置において、複数の発熱部のいずれかが故障した場合、使用可能な発熱部を用いた定着前の用紙通過時における定着装置の表面の温度下降率から定着装置の表面の低下温度を予測し、定着装置の表面温度が画像定着下限値以下にならないように定着装置に対する前記用紙の搬送速度を変更するとともに、使用可能な発熱部を用いた用紙が定着装置に供給される前の定着装置の表面の温度上昇率から、用紙が定着装置に供給された際に定着装置の表面温度が予め設定した画像定着可能温度になるように、定着装置に供給する用紙の間隔を設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザプリンタ等の画像形成装置は、一様に帯電された感光体上に形成画像に対応したレーザ光を照射して静電潜像を形成し、この静電潜像をトナーで現像し、この現像したトナー像を用紙に転写して定着装置に供給することにより、用紙にトナー像を熱定着させて画像形成を行う。
【0003】
従来、この種の定着装置は、ヒータを内蔵するが、このヒータが断線すると定着に必要な熱量が得られないため、故障状態としてヒータ交換が完了するまで、画像形成ができない。
【0004】
そこで、特許文献1には、定着装置に複数のヒータを内蔵し、1つのヒータが断線しても、断線していないヒータを用いて画像形成することができるようにした画像形成装置が提案されている。
【0005】
この特許文献1においては、断線していないヒータを用いた熱量の不足を、画像形成処理の動作間隔を調整することで補っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−194966号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、定着装置の複数の発熱部のいずれかが故障した場合でも、用紙通過時の定着装置の温度低下を補償することで画像形成を続行することができるようにした画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1の発明の画像形成装置は、定着前の画像が形成された用紙の通過により、該画像を用紙に熱定着する複数の発熱部を有する定着手段と、前記複数の発熱部の組合せに対応して、前記用紙の通過に際しての前記定着手段の表面の温度下降率を予め測定して記憶する記憶手段と、前記複数の発熱部のいずれかが故障した場合に、使用可能な発熱部の組合せに対応して前記記憶手段に記憶された前記温度下降率に基づき前記定着手段の表面温度が予め設定した画像定着下限値以下にならないように、前記定着手段に対する前記用紙の搬送速度を変更する搬送速度変更手段とを具備する。
【0009】
請求項2の発明の画像形成装置は、定着前の画像が形成された用紙の通過により、該画像を用紙に熱定着する複数の発熱部を有する定着手段と、前記複数の発熱部の組合せに対応して、前記定着手段に前記用紙が供給される前の前記定着手段の表面の温度上昇率および前記用紙の通過に際しての前記定着手段の表面の温度下降率を予め測定して記憶する記憶手段と、前記複数の発熱部のいずれかが故障した場合に、使用可能な発熱部の組合せに対応して前記記憶手段に記憶された前記温度下降率に基づき前記定着手段の表面温度が予め設定した画像定着下限値以下にならないように、前記定着手段に対する前記用紙の搬送速度を変更するとともに、前記使用可能な発熱部の組合せに対応して前記記憶手段に記憶された前記温度上昇率に基づき、前記用紙が前記定着手段に供給された際に、前記定着手段の表面温度が予め設定した画像定着可能温度になるように、前記定着手段に供給する前記用紙の間隔を設定するように制御する制御手段とを具備する。
【0010】
請求項3の発明の画像形成装置は、定着前の画像が形成された用紙の通過により、該画像を用紙に熱定着する複数の発熱部を有する定着手段と、前記複数の発熱部の組合せに対応して、前記用紙の通過に際しての前記定着手段の表面の温度下降率を予め測定して記憶する記憶手段と、前記複数の発熱部のいずれかが故障した場合に、使用可能な発熱部の組合せに対応して前記記憶手段に記憶された前記温度下降率および前記用紙の大きさに基づき前記定着手段の低下表面温度を予測する予測手段と、前記予測手段により予測した前記定着手段の低下表面温度が予め設定した画像定着下限値以下になる場合は、前記定着手段の表面温度が前記画像定着下限値以下にならないように、前記定着手段に対する前記用紙の搬送速度を変更する搬送速度変更手段とを具備する。
【0011】
請求項4の発明の画像形成装置は、定着前の画像が形成された用紙の通過により、該画像を用紙に熱定着する複数の発熱部を有する定着手段と、前記複数の発熱部の組合せに対応して、前記定着手段に前記用紙が供給される前の前記定着手段の表面の温度上昇率および前記用紙の通過に際しての前記定着手段の表面の温度下降率を予め測定して記憶する記憶手段と、前記複数の発熱部のいずれかが故障した場合に、使用可能な発熱部の組合せに対応して前記記憶手段に記憶された前記温度下降率および前記用紙の大きさに基づき前記定着手段の低下表面温度を予測する予測手段と、前記予測手段により予測した前記定着手段の低下表面温度が予め設定した画像定着下限値以下になる場合は、前記定着手段の表面温度が前記画像定着下限値以下にならないように、前記定着手段に対する前記用紙の搬送速度を調整するとともに、前記使用可能な発熱部の組合せに対応して前記記憶手段に記憶された前記温度上昇率に基づき、前記用紙が前記定着手段に供給された際に、前記定着手段の表面温度が予め設定した画像定着可能温度になるように、前記定着手段に供給する前記用紙の間隔を設定するように制御する制御手段とを具備する。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明によれば、定着手段の複数の発熱部のいずれかが故障した場合でも、定着不良発生が生じないように用紙通過速度を変更することで画像形成を続行することができる。
【0013】
請求項2の発明によれば、定着手段の複数の発熱部のいずれかが故障した場合でも、用紙通過速度および用紙間隔を制御して定着不良発生が生じないようにすることで画像形成を続行することができる。
【0014】
請求項3の発明によれば、定着手段の複数の発熱部のいずれかが故障した場合、使用可能な発熱部による用紙通過時の温度下降率から定着手段の表面の下降温度を予測して、定着不良発生が生じないように用紙通過速度を変更することで画像形成を続行することができる。
【0015】
請求項4の発明によれば、定着手段の複数の発熱部のいずれかが故障した場合、使用可能な発熱部による用紙通過時の温度下降率から定着手段の表面の下降温度を予測して用紙通過速度を変更するとともに、使用可能な発熱部による用紙通過前の温度上昇率から定着不良発生が生じないように用紙間隔を設定することで画像形成を続行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本発明に係わる画像形成装置で用いる定着装置の概略構成を示す側面図および断面図である。
【図2】図2は、本発明に係わる定着装置で発熱部(ヒータ)の一部が故障した場合の温度上昇率および温度下降率を説明する図である。
【図3】図3は、本発明に係わる定着装置で発熱部(ヒータ)の一部が故障した場合の温度上昇率および温度下降率の一例を示す図である。
【図4】図4は、本発明の実施例1に係わる画像形成装置における画像形成動作を説明するフローチャートである。
【図5】図5は、本発明の実施例2に係わる画像形成装置における画像形成動作を説明するフローチャートである。
【図6】図6は、熱容量が小さい定着装置を用いた場合の本発明の画像形成動作を説明する図である。
【図7】図7は、熱容量が大きい定着装置を用いた場合の従来の画像形成動作を説明する図である。
【図8】図8は、熱容量が小さい定着装置を用いた場合の従来の画像形成動作の不都合を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施例を添付図面を参照して詳細に説明する。
【0018】
本発明は、複数の発熱部を有する定着装置を用いた画像形成装置において、複数の発熱部のいずれかが故障した場合、使用可能な発熱部を用いた定着前の用紙通過時における定着装置の表面の温度下降率から定着装置の表面の低下温度を予測し、定着装置の表面温度が画像定着下限値以下にならないように定着装置に対する前記用紙の搬送速度を変更するとともに、使用可能な発熱部を用いた用紙が定着装置に供給される前の定着装置の表面の温度上昇率から、用紙が定着装置に供給された際に定着装置の表面温度が予め設定した画像定着可能温度になるように、定着装置に供給する用紙の間隔を設定する。
【0019】
さて、熱容量の大きい、例えば、ロール式の定着装置を用いた場合は、定着装置の複数の発熱部(ヒータ)のいずれかが断線等により故障した場合でも、定着装置に供給する用紙の間隔を設定することで画像形成の続行が可能である。
【0020】
図7は、熱容量の大きい、例えば、ロール式のメインヒータとサブヒータの2本のヒータを内蔵した定着装置を用いた場合の従来の画像形成装置の動作を示すものである。図7において、実線は、メインヒータおよびサブヒータの2本のヒータがいずれも正常な場合の画像形成動作を示し、破線は、メインヒータおよびサブヒータのうちのいずれかが故障して1本のヒータになった場合の画像形成動作を示す。
【0021】
図7に示すように、熱容量の大きい定着装置を用いた場合、メインヒータおよびサブヒータのうちのいずれかが故障しても用紙通過時の定着装置の表面の温度下降率は大きな熱容量のために小さいので、定着装置の表面の温度は、一枚目の用紙の通過に際して画像の熱定着が不可になる下限温度までは下がらない。そこで、一枚目の用紙と2枚目の用紙の供給紙間隔をメインヒータおよびサブヒータがいずれも正常の場合より長く設定することで、画像形成を続行することができる。
【0022】
しかし、最近使用されているクイック定着装置のような、例えば、熱容量の小さいベルト式の定着装置を用いた画像形成装置においては、小さな熱容量のために用紙通過時の定着装置の表面の温度下降率は大きくなり、一枚目の用紙と2枚目の用紙の供給紙間隔を長くしただけでは画像の定着不良が発生する。
【0023】
図8は、熱容量の小さい、例えば、ベルト式のメインヒータとサブヒータの2本のヒータを内蔵した定着装置を用いた画像形成装置を用いた場合の従来の画像形成装置の動作を示す。図8においても、実線は、メインヒータおよびサブヒータの2本のヒータがいずれも正常な場合の画像形成動作を示し、破線は、メインヒータおよびサブヒータのうちのいずれかが故障して1本のヒータになった場合の画像形成動作を示す。
【0024】
図8に示すように、熱容量の小さい定着装置を用いた場合、メインヒータおよびサブヒータのうちのいずれかが故障すると、用紙通過時の定着装置の表面の温度下降率は大きくなるので、定着装置の表面の温度は、一枚目の用紙の通過に際して画像の熱定着が不可になる下限温度を超えて下降する。これにより一枚目の用紙に対して画像の定着不良が発生する。
【0025】
そこで、本発明の実施例1においては、熱容量の小さい、例えば、ベルト式のメインヒータとサブヒータの2本のヒータを内蔵した定着装置を用いた画像形成装置において、メインヒータとサブヒータのいずれかが故障した場合でも、定着装置に対する前記用紙の搬送速度を変更することで、画像の定着不良が発生しないようにすることで、画像形成動作を続行することができるようにする。
【0026】
また、上記構成に加えて、用紙が定着装置に供給される前の使用可能なヒータを用いた定着装置の表面の温度上昇率から、用紙が定着装置に供給された際に定着装置の表面温度が予め設定した画像定着可能温度になるように、定着装置に供給する用紙の間隔を設定して画像形成動作を続行することができるようにする。
【実施例1】
【0027】
図1は、本発明に係わる画像形成装置で用いるベルト式の定着装置を側面図および断面図で示したものである。
【0028】
図1(A)は、本発明に係わる画像形成装置で用いるベルト式の定着装置10の加熱ロール11の側面図を示す。加熱ロール11は、メインヒータ12とサブヒータ13とを内蔵する。
【0029】
メインヒータ12は、この画像形成装置で画像形成可能な最大用紙幅(最大通紙域)より僅かに大きい長さを有し、サブヒータ13は、このメインヒータ12の長さより短く、この画像形成装置で画像形成可能な通常の用紙幅より僅かに大きい長さを有する。
【0030】
この定着装置は、通常は、メインヒータ12とサブヒータ13との両者の発熱により画像定着を行う。
【0031】
加熱ロール11の中央には、この加熱ロール11の中央部の温度を非接触で測定する非接触型温度センサ14が設けられ、加熱ロール11の端部には、この加熱ロール11の端部の温度を測定する接触型温度センサ15が設けられている。
【0032】
この非接触型温度センサ14と接触型温度センサ15の検出温度から加熱ロール11の表面の温度勾配を求めて、加熱ロール11の表面温度を測定する。
【0033】
図1(B)は、図1(A)に示した加熱ロール11を含む定着装置10の全体の断面図を示したものである。
【0034】
加熱ロール11は、メインヒータ12とサブヒータ13とを内蔵し、その表面は、加熱部材16で覆われている。この加熱ロール11の加熱部材12に密着してベルト部20が設けられており、このベルト部20には、周囲に設けられたベルト21と、加熱ロール11の加熱部材16に弾性的に密着する弾性体22、非接触型温度センサ14が設けられている。
【0035】
トナー像31が形成された定着前の用紙30は、加熱ロール11とベルト部20との間に供給され、加熱ロール11の回転に伴って、ベルト部20のベルト21は従動し、これにより、用紙30上のトナー像31が加熱されて、用紙30にトナー像31が熱定着される。
【0036】
図2は、図1に示した定着装置10において、メインヒータ12とサブヒータ13との両者に通電された場合、サブヒータ13が故障してメインヒータ12のみに通電された場合、メインヒータ12が故障してサブヒータ13のみに通電された場合のそれぞれにおける、用紙供給前の「紙なし通電のみ」における定着装置10の加熱ロール11の表面の温度上昇率、用紙供給状態である「通紙状態」における定着装置10の加熱ロール11表面の温度下降率の測定結果をグラフで示したものである。
【0037】
図2において、縦軸は、非接触型温度センサ14と接触型温度センサ15とで求めた加熱ロール11の表面温度、横軸は時間を示す。図2から明らかなように、メインヒータ12とサブヒータ13との両者に通電された場合の「紙なし通電のみ」における加熱ロール11表面の温度上昇率はu1、「通紙状態」における加熱ロール11表面の温度下降率はd1である。
【0038】
また、サブヒータ13が故障してメインヒータ12のみに通電された場合の「紙なし通電のみ」における加熱ロール11表面の温度上昇率はu2、「通紙状態」における加熱ロール11表面の温度下降率はd2である。
【0039】
また、メインヒータ12が故障してサブヒータ13のみに通電された場合の「紙なし通電のみ」における加熱ロール11表面の温度上昇率はu3、「通紙状態」における加熱ロール11表面の温度下降率はd3である。
【0040】
ここで、「紙なし通電のみ」における加熱ロール11表面の温度上昇率は、u1>u2>u3の関係になる。
【0041】
また、「通紙状態」における加熱ロール11表面の温度下降率は、d1<d2<d3の関係になる。
【0042】
この実施例1では、「紙なし通電のみ」における加熱ロール11表面の温度上昇率u1、u2、u3および「通紙状態」における加熱ロール11表面の温度下降率d1、d2、d3を予め測定して、これらの値を画像形成装置の図示しない制御部の記憶部に、図3に示す表として記憶し、メインヒータ12若しくはサブヒータ13のいずれかが故障した場合は、図3に示す表の「通紙状態」における加熱ロール11表面の温度下降率d2、d3および用紙サイズに基づき加熱ロール11表面の低下温度を予測し、加熱ロール11表面温度が予め設定した下限温度より低くならないように定着装置10に対する用紙30の供給速度、すなわち、この画像形成装置のプロセススピードを変更する。
【0043】
また、図3に示す表の「紙なし通電のみ」における加熱ロール11表面の温度上昇率u2、u3に基づき定着装置10に対する用紙30の供給時の加熱ロール11表面の温度が予め設定した画像定着可能温度(上限温度)になるように、定着装置10に供給する用紙30の間隔を設定する。
【0044】
なお、図3においては、「紙なし通電のみ」における加熱ロール11表面の温度上昇率u1、u2、u3および「通紙状態」における加熱ロール11表面の温度下降率d1、d2、d3を記憶するようにしたが、「紙なし通電のみ」における加熱ロール11表面の温度上昇率u2、u3および「通紙状態」における加熱ロール11表面の温度下降率d2、d3のみを記憶するようにしてもよい。
【0045】
図4は、本発明の実施例1に係わる画像形成装置における画像形成動作を説明するフローチャートである。この処理は、この画像形成装置の図示しない制御部により制御される。
【0046】
この処理が開始されると、まず、定着装置10のヒータが故障かを調べる(ステップ401)。この定着装置10のヒータの故障は、例えば、メインヒータ12、サブヒータ13の断線をそれぞれ検出する周知の断線検知センサを用いて行うことができる。
【0047】
ステップ401で、定着装置10のヒータが故障していないと判断されると(ステップ401でNO)、この場合は、通常の印字動作(画像形成動作)を行って(ステップ402)、この処理を終了する。
【0048】
ステップ401で、定着装置10のヒータの故障と判断されると(ステップ401でYES)、次に、故障したヒータの判定を行う(ステップ403)。ここで、故障したヒータは、メインヒータ12、サブヒータ13の両方であると判定されると(ステップ403で両方)、定着装置10による定着はできないので印字不可能として故障表示を行い(ステップ404)、この処理を終了する。
【0049】
ステップ403で、故障したヒータは、サブヒータ13であり、メインヒータ12は正常であると判定されると(ステップ403でサブ)、用紙サイズより求めた通紙時間と、図3に示す表の温度下降率d2に基づき加熱ロール11の表面の低下温度を予測する(ステップ405)。そして、この予測した加熱ロール11の表面の低下温度が予め設定した下限温度より低いかを判断する(ステップ406)。
【0050】
ここで、予測した加熱ロール11の表面の低下温度が予め設定した下限温度より低くないと判断された場合は(ステップ406でNO)、画像の定着不良は発生しないと判断して、通常の印字動作を実行して(ステップ407)、この処理を終了する。
【0051】
ステップ406で、予測した加熱ロール11の表面の低下温度が予め設定した下限温度より低いと判断した場合は(ステップ406でYES)、定着装置10における用紙の搬送速度、すなわち、プロセススピードを加熱ロール11の表面の低下温度が予め設定した下限温度にならないように、プロセススピードの変更(プロセススピードを遅くする変更)を行うとともに(ステップ408)、図3に示す表の温度上昇率u2に基づき、定着装置10に供給する用紙(紙)の紙間隔を次の紙の通過開始時に加熱ロール11の表面の温度が予め設定した画像定着可能温度(上限値)になる紙間隔に設定する(ステップ409)。
【0052】
そして、ステップ408で変更したプロセススピードおよびステップ409で設定した紙間隔で印字動作を行い(ステップ410)、この処理を終了する。
【0053】
また、ステップ403で、故障したヒータは、メインヒータ12であり、サブヒータ13は正常であると判定されると(ステップ403でメイン)、用紙サイズより求めた通紙時間と、図3に示す表の温度下降率d3に基づき加熱ロール11の表面の低下温度を予測する(ステップ411)。そして、この予測した加熱ロール11の表面の低下温度が予め設定した下限温度より低いかを判断する(ステップ412)。
【0054】
ここで、予測した加熱ロール11の表面の低下温度が予め設定した下限温度より低くないと判断された場合は(ステップ412でNO)、画像の定着不良は発生しないと判断して、通常の印字動作を実行して(ステップ413)、この処理を終了する。
【0055】
ステップ412で、予測した加熱ロール11の表面の低下温度が予め設定した下限温度より低いと判断した場合は(ステップ412でYES)、定着装置10における用紙の搬送速度、すなわち、プロセススピードを加熱ロール11の表面の低下温度が予め設定した下限温度にならないように、プロセススピードの変更(プロセススピードを遅くする変更)を行うとともに(ステップ414)、図3に示す表の温度上昇率u3に基づき、定着装置10に供給する用紙(紙)の紙間隔を次の紙の通過開始時に加熱ロール11の表面の温度が予め設定した画像定着可能温度(上限値)になる紙間隔に設定する(ステップ415)。
【0056】
そして、ステップ414で変更したプロセススピードおよびステップ415で設定した紙間隔で印字動作を行い(ステップ416)、この処理を終了する。
【実施例2】
【0057】
実施例1では、定着装置10の故障したヒータがメインヒータ12であるかサブヒータ13であるかにより、また、画像形成する用紙のサイズに応じて、画像の定着不良が発生したりしなかったりする場合を考慮して、加熱ロール11の表面の低下温度を予測して、この予測した加熱ロール11の表面の低下温度が予め設定した下限温度より低いかを判断し(ステップ406、412)、予測した加熱ロール11の表面の低下温度が予め設定した下限温度より低いと判断した場合に限り、プロセススピードの変更および紙間隔の設定を行うように構成したが、画像形成する用紙のサイズを考慮して、メインヒータ12若しくはサブヒータ13のいずれが故障した場合も画像の定着不良が発生する可能性がある場合は、図4に示したステップ406、412の判断を省略して、メインヒータ12若しくはサブヒータ13のいずれが故障した場合は、プロセススピードの変更および紙間隔の設定を行うように構成してもよい。
【0058】
図5は、このように構成した場合の本発明の実施例2に係わる画像形成装置における画像形成動作を説明するフローチャートである。
【0059】
この図5のフローチャートは、図4のフローチャートからステップ406、412の判断を省略しただけで、その他の処理は、図4と同様である。
【0060】
すなわち、この処理が開始されると、まず、定着装置10のヒータが故障かを調べる(ステップ501)。ここで、定着装置10のヒータが故障していないと判断されると(ステップ501でNO)、通常の印字動作(画像形成動作)を行って(ステップ502)、この処理を終了する。
【0061】
ステップ501で、定着装置10のヒータの故障と判断されると(ステップ501でYES)、次に、故障したヒータの判定を行い(ステップ503)。ここで、故障したヒータは、メインヒータ12、サブヒータ13の両方であると判定されると(ステップ503で両方)、印字不可能として故障表示を行い(ステップ504)、この処理を終了する。
【0062】
ステップ503で、故障したヒータは、サブヒータ13であると判定されると(ステップ503でサブ)、通紙時間と、温度下降率d2に基づき加熱ロール11の表面の低下温度を予測し(ステップ505)、プロセススピードを加熱ロール11の表面の低下温度が下限温度にならないように変更するとともに(ステップ506)、温度上昇率u2に基づき、次の紙の通過開始時に加熱ロール11の表面の温度が予め設定した画像定着可能温度(上限値)になる紙間隔に設定し(ステップ507)、この変更したプロセススピードおよび設定した紙間隔で印字動作を行い(ステップ508)、この処理を終了する。
【0063】
また、ステップ503で、故障したヒータは、メインヒータ12であると判定されると(ステップ503でメイン)、通紙時間と、温度下降率d3に基づき加熱ロール11の表面の低下温度を予測し(ステップ509)、プロセススピードを加熱ロール11の表面の低下温度が下限温度にならないように変更するとともに(ステップ510)、温度上昇率u3に基づき、次の紙の通過開始時に加熱ロール11の表面の温度が予め設定した画像定着可能温度(上限値)になる紙間隔に設定し(ステップ512)、この変更したプロセススピードおよび設定した紙間隔で印字動作を行い(ステップ513)、この処理を終了する。
【0064】
図6は、実施例1および2における本発明に係わる画像形成装置の動作を示したものである。図6において、実線は、メインヒータおよびサブヒータの2本のヒータがいずれも正常な場合の画像形成動作を示し、破線は、メインヒータおよびサブヒータのうちのいずれかが故障して1本のヒータになった場合の画像形成動作を示す。
【0065】
実施例1および2において、メインヒータおよびサブヒータのうちのいずれかが故障した場合で、画像の定着不良が発生する虞のある場合は、図3に示す表の「通紙状態」における加熱ロール11表面の温度下降率d2、d3および用紙サイズに基づき加熱ロール11表面の低下温度を予測し、加熱ロール11表面温度が予め設定した下限温度より低くならないように定着装置10に対する用紙30の搬送速度を変更する。
【0066】
また、図3に示す表の「紙なし通電のみ」における加熱ロール11表面の温度上昇率u2、u3に基づき、次の紙が定着装置10に供給される際に、加熱ロール11表面の温度が予め設定した画像定着可能温度(上限温度)になるように、定着装置10に供給する用紙30の間隔を設定する。
【0067】
これにより、図6に示すように、メインヒータおよびサブヒータのうちのいずれかが故障してヒータが1本の場合は、メインヒータおよびサブヒータが正常でヒータが2本の場合に比較して、紙通過時間(プロセススピード)は、長くなり、また、紙間隔も、長くなって、この結果、図8で説明したような画像の定着不良は発生することなく画像形成を続行することができる。
【0068】
以上が本発明の代表的な実施形態の一例であるが、本発明は、上記実施例及び図面に示す実施例に限定することなく、その要旨を変更しない範囲内で適宜変形して実施できるものである。
【符号の説明】
【0069】
10 定着装置
11 加熱ロール
12 メインヒータ
13 サブヒータ
14 非接触型温度センサ
15 接触型温度センサ
16 加熱部材
20 ベルト部
21 ベルト
22 弾性体
30 用紙
31 トナー像

【特許請求の範囲】
【請求項1】
定着前の画像が形成された用紙の通過により、該画像を用紙に熱定着する複数の発熱部を有する定着手段と、
前記複数の発熱部の組合せに対応して、前記用紙の通過に際しての前記定着手段の表面の温度下降率を予め測定して記憶する記憶手段と、
前記複数の発熱部のいずれかが故障した場合に、使用可能な発熱部の組合せに対応して前記記憶手段に記憶された前記温度下降率に基づき前記定着手段の表面温度が予め設定した画像定着下限値以下にならないように、前記定着手段に対する前記用紙の搬送速度を変更する搬送速度変更手段と
を具備する画像形成装置。
【請求項2】
定着前の画像が形成された用紙の通過により、該画像を用紙に熱定着する複数の発熱部を有する定着手段と、
前記複数の発熱部の組合せに対応して、前記定着手段に前記用紙が供給される前の前記定着手段の表面の温度上昇率および前記用紙の通過に際しての前記定着手段の表面の温度下降率を予め測定して記憶する記憶手段と、
前記複数の発熱部のいずれかが故障した場合に、使用可能な発熱部の組合せに対応して前記記憶手段に記憶された前記温度下降率に基づき前記定着手段の表面温度が予め設定した画像定着下限値以下にならないように、前記定着手段に対する前記用紙の搬送速度を変更するとともに、前記使用可能な発熱部の組合せに対応して前記記憶手段に記憶された前記温度上昇率に基づき、前記用紙が前記定着手段に供給された際に、前記定着手段の表面温度が予め設定した画像定着可能温度になるように、前記定着手段に供給する前記用紙の間隔を設定するように制御する制御手段と
を具備する画像形成装置。
【請求項3】
定着前の画像が形成された用紙の通過により、該画像を用紙に熱定着する複数の発熱部を有する定着手段と、
前記複数の発熱部の組合せに対応して、前記用紙の通過に際しての前記定着手段の表面の温度下降率を予め測定して記憶する記憶手段と、
前記複数の発熱部のいずれかが故障した場合に、使用可能な発熱部の組合せに対応して前記記憶手段に記憶された前記温度下降率および前記用紙の大きさに基づき前記定着手段の低下表面温度を予測する予測手段と、
前記予測手段により予測した前記定着手段の低下表面温度が予め設定した画像定着下限値以下になる場合は、前記定着手段の表面温度が前記画像定着下限値以下にならないように、前記定着手段に対する前記用紙の搬送速度を変更する搬送速度変更手段と
を具備する画像形成装置。
【請求項4】
定着前の画像が形成された用紙の通過により、該画像を用紙に熱定着する複数の発熱部を有する定着手段と、
前記複数の発熱部の組合せに対応して、前記定着手段に前記用紙が供給される前の前記定着手段の表面の温度上昇率および前記用紙の通過に際しての前記定着手段の表面の温度下降率を予め測定して記憶する記憶手段と、
前記複数の発熱部のいずれかが故障した場合に、使用可能な発熱部の組合せに対応して前記記憶手段に記憶された前記温度下降率および前記用紙の大きさに基づき前記定着手段の低下表面温度を予測する予測手段と、
前記予測手段により予測した前記定着手段の低下表面温度が予め設定した画像定着下限値以下になる場合は、前記定着手段の表面温度が前記画像定着下限値以下にならないように、前記定着手段に対する前記用紙の搬送速度を変更するとともに、前記使用可能な発熱部の組合せに対応して前記記憶手段に記憶された前記温度上昇率に基づき、前記用紙が前記定着手段に供給された際に、前記定着手段の表面温度が予め設定した画像定着可能温度になるように、前記定着手段に供給する前記用紙の間隔を設定するように制御する制御手段と
を具備する画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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