説明

画像形成装置

【課題】装置本体内における画像形成部の下方且つセットする操作者の立位状態での腰の高さより低い位置に配置され、用紙サイズに応じて用紙幅方向に移動可能なロール紙セット部を備えたコンパクト且つ簡素で安価な構成の画像形成装置において、操作者がフランジ方式のロール紙を上方からセットする場合に、重量と幅のある広幅ロール紙であっても適切な位置に容易に載置・セット可能な、視認性および操作性が向上した画像形成装置を提供する。
【解決手段】床面36に設置された画像形成装置の装置本体1において、上下2段のフランジ受け台5A,5Bにフランジ6a,6bを介してセットされた上・下段ロール紙4a,4bの床面36から中心位置4a1,4b1までの高さHa,Hbが、装置本体1内における画像形成部の下方且つセットする操作者34の立位状態での腰34bの高さより低い位置に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロール紙(シートロール)から用紙を繰り出しこれに画像形成を行う画像形成装置に関し、詳しくは、インクジェット記録、電子写真方式、印刷等による画像形成等またはそれら複数の機能の組み合わせを含んで構成される画像形成部の下方に配置され、ロール紙の用紙幅方向の両端部に装着される一対のフランジ(フランジ部材)が載置・セットされる一対のロール紙支持部(シートロール支持部)にロール紙をセットする際の視認性および操作性を向上した技術に関する。
【背景技術】
【0002】
長尺の用紙(シート)が巻回されてなるロール紙から用紙を繰り出し画像形成部に向けて搬送して画像形成を行う画像形成装置が周知である(例えば、特許文献1〜3参照)。この種の画像形成装置としては、例えば大型の図面用の、複写機やプリンタ、プロッタ、インクジェット記録装置などが挙げられる。
前記画像形成装置に用いられるロール紙の保持方法、給紙方式に関しては、大別して、ロール紙に長い軸を通すスプール方式(タイプ)と、ロール紙の両端部にフランジを挿入・装着するフランジ方式とがある。
ロール紙をロール紙支持部にセットする場合、長尺軸をロール紙に通すスプール方式は、フランジ方式と比べそのセット・操作性に劣るとされている(この詳細な内容は後述の実施形態でも述べる)。
【0003】
(装置に対するロール紙支持部の配置と構成について)
ロール紙は巻かれている用紙(シート)の種類や用紙幅、巻き数にもよるが、10kgを超えるものもあり、通常の流通形態で梱包されているカット用紙・枚葉紙束と比べて、一般的に重い。このように重いロール紙は、上方向からセットしたほうが作業者・操作者・使用者等(以下、代表して「操作者」という)の負担を軽減できる。このため、1ロール式の装置では、ロール紙支持部であるロール紙セット部をマシン(装置)外部に出っ張らせて配置するか、上方や前方、後方に出っ張らせることで対処し、これによりロール紙セット時の操作性や視認性を向上させている。
【0004】
ところが、複数のロール紙をセットする多段ロール機では、複数のロール紙をセットするために上下方向に多段のロール紙セット部を積み重ねた配置となる場合が多く、下段のロール紙セット部への上方からのロール紙セット時の操作性、視認性の確保が困難となる。
この不具合の一つの解決手段として、図17(a)に示すように、上下段のロール紙セット部105a,105bを装置本体の外部に配置し、且つ前後にずらし段差をつけた配置とすればよいが、この場合多段ロール機ないしは画像形成装置100の装置全体が大型化してしまう。
【0005】
すなわち、多段ロール機ないしは多段ロール紙セット部を備えた画像形成装置においては、マシン(装置)内部にロール紙を格納して装置全体を小型化することが望ましいが、ロール紙の上方セットと視認性確保のため、図17(b)に示すようにロール紙セット部105a,105bを外部に引き出す引き出し部構成にするか、または図17(c)に示すように筐体をなす引き出し式トレイ106a,106bを採用することで対応しているのが現状である。ただし、この場合も装置の設置面積が大きくなるとともに、引き出し部や引き出し式トレイの構造が複雑となったり、機構が大掛かりとなったりして、コストアップを招いていた。
このような観点から装置構成をコンパクトにするには、ロール紙セット部は装置に固定したほうがよいと言える。
【0006】
(装置へのロール紙セット性について)
スプール方式はロール紙サイズによっても、スプール長さを変更する必要がなく、常に同じ位置の装置内側板間に橋渡ししてセットすればよく、また、セット位置に載置するスプールの軸の両端がロール紙両端から大きく突出しているため、視認性の点でもあまり問題とはならない。
これと比べて、フランジ方式ではロール紙両端にフランジを挿入・装着するので、ロール紙サイズに応じてロール紙セット部(具体的には載置台やフランジ受け台等を指す)位置も移動する必要がある。さらに、用紙送りが中央基準の場合、ロール紙サイズに応じて両方のフランジセット位置がずれることになり、操作者はロール紙セット部のセット位置を確認しながらロール紙をセットする必要がある。このとき、操作者の視線の角度によっては、フランジがロール紙によって隠れてしまうため、セット位置へフランジを合わせることが難しい。
【0007】
ロール紙セット部が装置に固定され、いわゆる「フロントオペレーション」ないし「フロントローディング」とも呼ばれる装置前面(装置正面)方向から装置内部にロール紙をセットする画像形成装置において、装置正面からロール紙をセットするタイプの特許文献1および3記載のものと、装置上に一旦ロール紙を置いた後セットするタイプの特許文献2記載のもの(一時載置タイプ)とがあることは既に知られている。
特許文献3には、フランジ方式の簡単な構成で給紙時のスキューやジャム等の発生を防止する目的で、引き出されたロール紙をその紙幅に合わせて誘導するマニュアル式の方法が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献3記載の技術を含め、従来の画像形成装置では、特に装置本体内における画像形成部の下方で、一般的な操作者の腰の高さより低い位置にフランジ方式のロール紙セット部があるもの程、セット位置が見えづらくセットしにくいという問題があった。
これは、フランジ方式のロール紙セット部がセットすべきロール紙を下方から支持する構造となっているためであり、操作者の目視確認によってロール紙セット部へのロール紙のセットを可能に指示するロール紙セット基準、すなわち載置位置ターゲットは操作者が持っているロール紙の下側になることに起因する。
【0009】
操作者は、腕を広げ、両手でロール紙を下方向に下げ持つ姿勢で、装置前面(正面)に歩み寄り、斜め上方から左右のセット位置を交互に目視確認しながら、ロール紙をセットしようとする。この際、ロール紙、フランジおよび操作者自身の手が邪魔となり視線を遮ってしまうので、正しい位置にセットしにくいという問題点があった。ロール紙サイズがより広幅となり、操作者の視線がより鈍角となるほど、この視認性の悪さが顕著となる。
また、ロール紙サイズが広幅となる程、ロール紙重量が増大するため、セット時に操作者の腰に負担をかけるという問題点もあった。
【0010】
そこで、本発明は、上述した事情に鑑みてなされてものであり、特に装置本体内における画像形成部の下方且つセットする操作者の立位状態での腰の高さより低い位置に配置され、用紙(シート)サイズに応じてシート幅方向に移動可能なロール紙セット部(シートロール支持部)を備えたコンパクト且つ簡素で安価な構成の画像形成装置であって、操作者がフランジ方式のロール紙を上方からセットする場合に、重量と幅のある広幅ロール紙であっても適切な位置に容易に載置・セット可能な、視認性および操作性が向上した画像形成装置を実現し提供することを、主な目的とする。
なお、本願発明者の知る限りでは、装置本体内における画像形成部の下方且つセットする操作者の立位状態での腰の高さより低い位置に配置され、用紙(シート)サイズに応じてシート幅方向に移動可能なロール紙セット部を備えたコンパクトな構成の画像形成装置の本格的な提案はなされていない知見であることを付記しておく。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決するとともに上述した目的を達成するために、請求項ごとの発明では、以下のような特徴ある手段・発明特定事項(以下、「構成」という)を採っている。
請求項1記載の発明は、搬送されてくるシートに画像形成を行う画像形成部と、長尺のシートが巻回されてなるシートロールから該シートを前記画像形成部に向けて繰り出す繰り出し方向と直交するシート幅方向における該シートロールの両端部に装着される一対のフランジ部材と、装置本体内における前記画像形成部の下方且つセットする操作者の立位状態での腰の高さより低い位置に配置され、前記各フランジ部材を支持することにより前記シートロールから該シートを繰り出し可能に支持する繰出支持部を備えるとともに、シートサイズに応じて前記シート幅方向に移動可能な一対のシートロール支持部と、前記各シートロール支持部に設けられ、前記フランジ部材装着済みのシートロールを一時載置するための突出ガイド部と、前記突出ガイド部の載置位置を目視可能に指示する載置位置ガイド部と、前記装置本体の前面から前記各突出ガイド部が突出するように設けられ、前記フランジ部材装着済みのシートロールを前記前面側から前記各載置位置ガイド部に載置してから前記繰出支持部へセット可能とする開口部とを有することを特徴とする画像形成装置である。
【0012】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の画像形成装置において、前記突出ガイド部の配置位置を表す表示マークを、前記フランジ部材装着済みのシートロールが前記各シートロール支持部にセットされた状態の該フランジ部材の高さ位置よりも上方に設けられた前記載置位置ガイド部に設けたことを特徴とする。
【0013】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の画像形成装置において、前記突出ガイド部の前記開口部からの突出量部分を前記装置本体内に格納可能にしたことを特徴とする。
【0014】
請求項4記載の発明は、請求項1ないし3の何れか一つに記載の画像形成装置において、前記突出ガイド部は、前記フランジ部材装着済みのシートロールの該各フランジ部材を挿入可能な外開きの第1の傾斜壁を前記装置本体の前記前面側に、第1の傾斜壁の上部に外開きの第2の傾斜壁をそれぞれ備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、前記課題を解決して新規な画像形成装置を実現し提供することができる。請求項ごとの効果を挙げれば次のとおりである。
請求項1記載の発明によれば、前記構成により、コンパクト且つ簡素で安価な構成の画像形成装置において、操作者は、重量と幅のある広幅シートロールのセット時であっても、載置位置ガイド部を目視確認してフランジ部材装着済みのシートロールを突出ガイド部に一時載置することで繰出支持部へ容易にセットすることができ、視認性および操作性向上が図れる。また、フランジ部材装着済みのシートロールを突出ガイド部に一時載置できることで、重量のあるシートロールセット時でも操作者の腰にかかる負担を軽減することができる。
【0016】
請求項2記載の発明によれば、突出ガイド部の配置位置を表す表示マークを、フランジ部材装着済みのシートロールが各シートロール支持部にセットされた状態の該フランジ部材の高さ位置よりも上方に設けられた載置位置ガイド部に設けたことにより、さらに視認性が向上するので、フランジ部材装着済みのシートロールの突出ガイド部への載置・セットが容易となり、さらに操作性が向上する。
【0017】
請求項3記載の発明によれば、突出ガイド部の開口部からの突出量部分を装置本体内に格納可能にしたことにより、装置本体の前面から出っ張りが生じず、シートロール装着性を損ねることなく装置全体をさらにコンパクトにできる。また、シートロールセット以外の操作時、例えば、操作パネルの操作、出力紙の取り出し、記録ヘッド交換、インク補充時等に操作者の邪魔にならない。
【0018】
請求項4記載の発明によれば、前記構成により、突出ガイド部は、フランジ部材装着済みのシートロールの該各フランジ部材を挿入可能な外開きの第1の傾斜壁を装置本体の前面側に、第1の傾斜壁の上部に外開きの第2の傾斜壁をそれぞれ備えていることにより、突出ガイド部が前方向、上方向へ末広がりとなり、内側から外側方向へもセットし易い形状となっているのでラフセットしても、突出ガイド部の所定の位置に収まりやすいので、シートロールセット時の視認性および操作性がより一層向上する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】第1の実施形態を示す画像形成装置全体の簡略的な断面図である。
【図2】図1における画像形成部、開口部、上下段のフランジ受け台の外観斜視図である。
【図3】上段ロール紙がフランジを介して上段フランジ受け台にセットされた状態を示す外観斜視図である。
【図4】フランジの外観斜視図である。
【図5】装置本体の前面から見て左側のフランジとフランジ受け台との関係を示す簡略的な斜視図である。
【図6】上段ロール紙に装着されたフランジがフランジ受け台に装着・セットされた状態において、図5における主走査方向から見た側面図である。
【図7】(a)は上段フランジ受け台の外観斜視図、(b)は上段ロール紙に装着されたフランジがフランジ受け台に装着・セットされた状態の外観斜視図である。
【図8】(a)、(b)は第1の実施形態の特徴部分を説明する画像形成装置の簡略的な断面図である。
【図9】(a)、(b)は第1の実施形態の特徴部分を説明する画像形成装置の簡略的な正面図である。
【図10】(a)、(b)、(c)は要部を破断して示す図9の平面図である。
【図11】(a)は変形例1の特徴部分を説明する簡略的な断面図、(b)は要部を破断して示す(a)の平面図である。
【図12】(a)、(b)は一部を破断して変形例1の特徴部分を説明する簡略的な平面図である。
【図13】(a)は変形例2を示す画像形成装置の簡略的な正面図、(b)は(a)の要部の拡大斜視図である。
【図14】(a)、(b)は変形例3における要部の簡略的な断面図である。
【図15】(a)変形例4の特徴部分を説明する平面図、(b)は(a)の正面図である。
【図16】変形例4における画像形成装置の特徴部分を説明する外観斜視図である。
【図17】(a),(b),(c)は、従来の画像形成装置におけるロール紙セット部の配置・構成を説明する模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図を参照して実施例を含む本発明の実施形態を詳細に説明する。各実施形態等に亘り、同一の機能および形状等を有する構成要素(部材や構成部品)等については、混同の虞がない限り一度説明した後では同一符号を付すことによりその説明を省略する。図および説明の簡明化を図るため、図に表されるべき構成要素であっても、その図において特別に説明する必要がない構成要素は適宜断わりなく省略することがある。
【0021】
(第1の実施形態)
図1〜図10を参照して、本発明の第1の実施形態を説明する。まず、図1および図2を参照して、第1の実施形態に係る画像形成装置全体の構成とともに要部の動作を説明する。図1に示す画像形成装置は、装置本体1の上部から下部に向けて、画像読取部2と、画像形成部3と、フランジ受け台5A,5Bとがこの順に配置されている。
画像読取部2は、原稿(図示せず)の画像を読み取る機能・構成を、画像形成部3は、搬送されてくるシートとしての用紙10に画像形成を行う機能・構成を有する。フランジ受け台5A,5Bは、長尺の用紙が巻回されてなるシートロールとしてのロール紙4a,4bから用紙10をそれぞれ繰り出し可能に支持するシートロール支持部としての機能・構成を有し、装置本体1の鉛直方向でもある上下方向Zに隣る上下2段に配置されている。
【0022】
上下方向Zに直交する前後方向Xにおいて、図1における装置本体1の右側が前面1F(正面)側であり、左側が後(奥)側である。上下方向Zおよび前後方向Xに直交するとともに図1の紙面を貫通する方向が主走査方向Y(図2参照)であり、シート幅方向(用紙幅方向)に相当する。
以下、図において上段に位置するフランジ受け台5Aを「上段フランジ受け台5A」と、図において下段に位置するフランジ受け台5Bを「フランジ受け台5B」ともいう。同様に、上段フランジ受け台5Aにセットされるロール紙4aを「上段ロール紙4a」と、フランジ受け台5Bにセットされるロール紙4bを「下段ロール紙4b」ともいう。
【0023】
画像読取部2は、装置本体1の前面から後側に向けて画像読取位置へ原稿を搬送すべく原稿をセットする原稿載置台としての原稿台11と、画像読取位置へ原稿を搬送する原稿搬送手段としての原稿給送ローラ12と、画像読取位置に配置され原稿の画像を読み取る画像読取手段としての密着イメージセンサ14と、画像読み取り終了後の原稿を排出する原稿排出手段としての原稿排出ローラ15と、排出された原稿を積載する原稿排出台16とを有する。
【0024】
原稿台11上に載置された原稿(図示せず)は原稿給送ローラ12により1枚ずつ原稿搬送路13に給送される。原稿給送ローラ12により給送されてきた原稿(図示せず)は原稿搬送路13の画像読取位置に配置された密着イメージセンサ14によりその画像が読み取られ、この画像の読み取り終了後に、原稿排出ローラ15により原稿排出台16に排出される。
密着イメージセンサ14は、全体として主走査方向Y(図2参照)に長い形状をしており、原稿を照明する光源およびイメージセンサを有している。密着イメージセンサ14の上記光源で原稿搬送路13において原稿を照明し、該原稿からの反射光をレンズアレイなどを通して上記イメージセンサ上に結像させて、光電変換を行うことにより画像信号を出力する。また、密着イメージセンサ14の上方近傍に設けられたコンタクトガラス(図示せず)に対向して、原稿を押圧する白色基準板を兼ねる圧板17が設けられている。
【0025】
画像形成部3は、本実施形態例ではインクジェット記録方式で画像形成を行う構成である。図2に示すように、本インクジェット記録装置は、シリアル型インクジェット記録装置である。
画像形成部3に対応した装置本体1の内部には、ガイドロッド18およびガイドレール19が図示しない側板に掛け渡され、これらのガイドロッド18およびガイドレール19にキャリッジ20が主走査方向Yに摺動可能に保持されている。キャリッジ20には、ブラック(K)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の各色のインク滴を吐出する液体吐出ヘッドである液体記録ヘッド(図示せず)が搭載されている。各液体記録ヘッドには、図示しないが、各液体記録ヘッドにインクを供給するサブタンクが一体的に備えられている。
【0026】
キャリッジ20を主走査方向Yに移動走査する主走査機構は、主走査方向Yの一方側(図において左斜め上方)に配置された駆動モータ21と、この駆動モータ21の出力軸に連結され駆動モータ21によって回転駆動される駆動プーリ22と、主走査方向Yの他方側(図において右斜め下方)に配置された従動プーリ23と、駆動プーリ22と従動プーリ23との間に巻き掛けられたベルト部材24とを備えている。従動プーリ23は、図示しないテンションスプリングによって外方、すなわち駆動プーリ22から離れる方向にテンションが掛けられている。
ベルト部材24は、キャリッジ20背面側に設けられたベルト固定部にその一部分が固定保持されていることで、キャリッジ20を主走査方向Yに牽引するようになっている。
【0027】
キャリッジ20の主走査方向Yに沿ってキャリッジ20の主走査位置を検知するためのエンコーダシート(図示せず)が配置され、キャリッジ20に設けられたエンコーダセンサ(図示せず)によって、上記エンコーダシートが読み取られる。このキャリッジ20における主走査領域のうち、記録領域では上段ロール紙4aまたは下段ロール紙4bから後述するように繰り出され搬送されてきた用紙10が図示しない紙送り機構によって、キャリッジ20の移動方向である主走査方向Yと直交する副走査方向(図1の前後方向Xのうちの前方向Xaである)に間欠的に搬送される。
また、主走査領域のうちの一方の端部側領域(図において右斜め下方側)には、キャリッジ20内の各液体記録ヘッドの維持回復を行う維持回復機構25が配置され、さらに、各液体記録ヘッドのサブタンクに供給する各色のインクを収容したメインカートリッジ26が装置本体1に対して着脱自在に装着される。
【0028】
図1において、画像形成部3の図中矢印で示す出口前方には排紙ガイド板(図示せず)が配設されており、該排紙ガイド板の手前には用紙10を所定の長さに切断するシート切断手段としてのカッタ27が配置されている。このカッタ27は、複数のプーリ(そのうちの1つのプーリは駆動モータに連結されている)間に掛け渡されたワイヤに固定され、駆動モータによりプーリを介してワイヤが主走査方向Yに移動することで用紙を所定の長さに切断する公知のものからなる。
【0029】
次に、ロール紙4a,4bおよびフランジ受け台5A,5Bについて説明する。
図2に示すように、フランジ受け台5Aにはフランジ部材6aを介してロール紙4aが、フランジ受け台5Bにはフランジ部材6bを介してロール紙4bがそれぞれセットされているが、幅方向のサイズや紙種(シート種類)が異なるロール紙をセット可能である。幅方向のサイズとしては、例えばA0やA1に対応した大きいサイズやその他様々なサイズが、紙種としては光沢紙等の大変高価なもの(現状価格で数万円もする)から普通紙等も用いられる。
ロール紙は、通常、長尺の用紙が、厚紙などを材料として構成された紙管等の芯管に巻き付けられて形成されている。本実施形態では、未使用時のロール紙4a,4bの最大外径として、例えば大体180mm程度までを用いることを想定しているが、この数値に限定されるものではない。
なお、図1を始めとして後述する図8等を含め、図面の簡明化を図るため、ロール紙4a,4b部分を省略してフランジ部材(以下、単に「フランジ」ともいう)6a,6bを誇張して図示し、これにロール紙の符号「4a」、「4b」を付する場合のあることを付記しておく。
【0030】
図1および図2に示すように、装置本体1の前面1Fは、フランジ6a,6bを介してロール紙4a,4bを前面1F側からフランジ受け台5A,5Bへセット可能とする、各フランジ受け台5A,5Bに対応した複数(本実施形態例では2つ)の開口部7,8を有する。
各開口部7,8には、傾斜部7a,8aが設けられている。これは、各ロール紙4a,4bのフランジ受け台5A,5Bへのセット挿入時あるいは交換離脱時等に懸念されるロール紙4a,4bへの汚染や打痕などのダメージを防止するためである。
【0031】
図3および図4等に示すように、上段ロール紙4aをマシンである装置本体1へセットする際は、ガイド部材である上段ロール紙4a用のフランジ6aを、上段ロール紙4aにおける前記紙管両端の内部に挿し込み、上段ロール紙4aの両端に固定されたフランジ6aを上段フランジ受け台5Aに落とし込んでセットする。同様に、下段ロール紙4bを装置本体1へセットする際は、下段ロール紙4b用のフランジ6bを、下段ロール紙4bにおける前記紙管両端の内部に挿し込み、下段ロール紙4bの両端に固定されたフランジ6bをフランジ受け台5Bに落とし込んでセットする。
上記のとおり、フランジ6a,6bは、上段ロール紙4a(または下段ロール紙4b)の前記紙管(巻き芯)の軸方向に沿って両端にそれぞれ同軸上に固定される。フランジ6a,6bの外径は、ロール紙4a,4bの最大外径(未使用時)よりも小さく形成されている。図3において、31は、主走査方向Yの両端に位置する上段フランジ受け台5Aを保持する「受け台位置決めステー」を示す。
【0032】
図4を参照して、ロール紙給紙方式の一つであるフランジ方式の一例を説明する。フランジ6a,6bは、ロール紙の端面に突き当たる大径円盤部6cと、紙管内部に差し込まれる小径円筒部6dとから主に構成される。同図に示すフランジの例では、上段ロール紙4a用のフランジ6aと下段ロール紙4b用のフランジ6bとの差異は、例えば2インチ、3インチ等のロール紙の前記紙管の内径に対して圧着ないし嵌合固定される小径円筒部6dの外径などの大きさであるため、以下、上段ロール紙4a用のフランジ6aを代表して詳しく説明する。当然のことながら、上・下段ロール紙用のフランジは、上記差異がある例に限定されず、例えば上段ロール紙用と下段ロール紙用とで小径円筒部の外径等の大きさが同じで共通使用されてもよいことは無論である。
フランジ6a,6bの大径円盤部6cは、後述する図5に示す中継コロ28および支持コロ29と当接して回転可能に支持される当接部6eと、図5に二点鎖線で示す上段ロール紙4aの端面に突き当たる突き当て部6fと、後述する図4に示す被載置部6gとから形成されている。
ロール紙とフランジとの固定は、大径円盤部にレバー(図示せず)が備えられており、このレバーを操作することで小径円筒部から爪(図示せず)が突出し、紙管に食い込んで嵌合する構成や、小径円筒部がテーパ形状となっており、小径円筒部を紙管に強く挿し込んでテーパ部を紙管に食い込み・嵌合させるものなどが一般的に知られている。
【0033】
ロール紙給紙方式には、一部前述したが大別して上記フランジ方式とスプール方式とがある。フランジ方式は、スプール方式と比べて、フランジ自体が軽いためその操作・作業性はよいが、一般的にその駆動機構が複雑になる。これに対し、スプール方式は、金属製のスプールもしくはマンドリルシャフト(特許文献2の段落「0002」、図6等参照)と呼ばれる、重くて扱いにくい長尺シャフトをロール紙の紙管に差込・装着固定するため、フランジ方式と比べて、操作・作業性は悪いが、被駆動部材であるギヤ等をシャフト端部に固設できるため、駆動機構は簡単になる。
本実施形態では、ロール紙セットの操作・作業性向上が大きな目的の一つであるため、ロール紙給紙方式としてフランジ方式を採用している。
【0034】
図5および図6を参照して、フランジ6a,6bおよびフランジ受け台5A,5Bについて、さらに詳しく説明する。図5は、装置本体1の前面(正面)から見て左側のフランジ6aとフランジ受け台5Aとの関係を示す斜視図である。図6は、上段ロール紙4aの両端部に装着されたフランジ6aがフランジ受け台5Aに装着・セットされた状態において、図5における主走査方向Yから見た側面図を示す。両図において、上段ロール紙4aを二点鎖線で示す。
上段ロール紙4aの両端部に装着されたフランジ6aを上段フランジ受け台5Aに装着・セットするときの図と、下段ロール紙4bの両端部に装着されたフランジ6bをフランジ受け台5Bに装着・セットするときの図とは、図3、図5および図6に示すように上下段の位置等が異なるだけで他は共通であるため、これを表すため図3では下段ロール紙4b、フランジ受け台5B、フランジ6bの各符号に括弧を付して区別している(図5および図6のフランジ受け台5Bも同様)。以下、上段ロール紙4aの両端部に装着されたフランジ6aを上段フランジ受け台5Aに装着・セットする場合を代表して説明する。
【0035】
フランジ受け台5Aは、主走査方向Yに延在する受け台位置決めステー31にスライド移動可能に取り付けられている。説明が前後するが、図3のみに示すように、両端の各フランジ受け台5Aは、受け台位置決めステー31の裏面側に設けられたラックアンドピニオン機構(図示せず)によって、受け台位置決めステー31に主走査方向Yと平行に形成された案内溝31a,31bに沿って主走査方向Yにスライド移動可能、且つ、ロール紙4aの用紙サイズ(ロール紙4aのサイズ)に合わせた任意の位置でロック可能に構成されている。
フランジ受け台5Aは、ロール紙4aから用紙が繰り出し可能に、すなわち回転可能に支持されるロール紙4aの両端に対応し、受け台位置決めステー31の2箇所に設けられている。また、中継コロ28、支持コロ29は、支持されるロール紙(図5および図6の例では上段ロール紙4a、以下同じ)の回転軸に垂直な同一の面内に設けられている。また、巻戻しローラ30は、ロール紙4aの両端に位置している2つのフランジ受け台5Aの中継コロ28と接触するように長尺に形成されている。
【0036】
フランジ受け台5Aには、支持されるロール紙の回転軸に沿う手前側の収容壁32と、支持されるロール紙4aの回転中心軸線に沿う手前側と反対側である外側の収容壁33とが一体的に形成されており、収容壁32と収容壁33とのそれぞれに、フランジ6aに一体的に形成された当接部6eの形状に対応して略半円形の切欠き部32aが設けられている。
図6に示すように、フランジ6aの当接部6eは、中継コロ28および支持コロ29と当接して回転可能に支持される。テーパ部35は、フランジ受け台5Aに装着・セットされたロール紙4aの回転中心軸に沿う手前側に隣接して、ロール紙4aから用紙先端をセットする際のガイドとして機能する。
【0037】
このように構成されたフランジ受け台5Aは、ロール紙4aの両端にフランジ6aが取り付けられるのに対応し、ロール紙4aの回転中心軸方向に沿って両端から等距離にある中心点を通り、回転軸に垂直な面を中心として略面対称になるように、さらにもう一つがロール紙4aの他端に対応して設けられる。すなわち、フランジ受け台5Aは、左右一対になるように設けられる。
【0038】
フランジ受け台5Aに装着・セットされたフランジ6aは、フランジ受け台5Aの中継コロ28および支持コロ29によって、ロール紙4aに取り付けられたフランジ6aが回転可能に支持されるとともに、フランジ受け台5Aの収容壁32、33によって、フランジ6aが取り付けられたロール紙4aが回転中心軸に沿う方向、すなわち主走査方向Yに移動しないように拘束されている。
【0039】
巻戻しローラ30は、ロール紙4aの両端に位置している2つのフランジ受け台5Aの中継コロ28と接触するように長尺に形成されている。巻戻しローラ30は、図示しない駆動装置により駆動され、ロール紙4aに用紙を巻戻すよう機能する。巻戻しローラ30によるロール紙4aへの用紙の巻戻しは、ロール紙4aから用紙を繰り出し・順送りするときの撓み除去や、上段ロール紙4aから下段ロール紙4bまたはこの逆のときの用紙搬送位置制御のために行われる。具体的には、巻戻しローラ30−中継コロ28−フランジ6aへの摩擦接触によって、駆動装置からの駆動力が巻戻しローラ30に伝達され、フランジ6aを逆回転させる。すなわち、中継コロ28は、巻戻しローラ30からの駆動力をフランジ6aに中継伝達するものである。
【0040】
巻戻しローラ30の軸部には、クラッチ機構として、図示しないワンウェイクラッチが介装されている。この巻き戻しローラ4に設けられたワンウェイクラッチは、駆動装置からの駆動力を、巻き戻し回転の際には伝達し、順送り回転の際には遮断する。
駆動装置は、例えばモータ等で構成され、ロール紙4aからの用紙を順方向へ搬送するための駆動力を図1に示す給紙ローラ9a,9bに、またロール紙4aに用紙を巻き戻すための駆動力を巻戻しローラ30に与える。
【0041】
上述のとおり、上段ロール紙4aがフランジ6aを介して上段フランジ受け台5Aに載置・セットされた際には、中継コロ28および支持コロ29によって回転可能に、すなわち上段ロール紙4aからの用紙が繰り出し可能となり、この際、上段ロール紙4aの回転中心位置である中心位置4a1の芯出しが自動的に行われることとなる。下段ロール紙4bがフランジ6bを介してフランジ受け台5Bセットされた際にも、上記同様に下段ロール紙4bの回転中心位置である中心位置4b1の芯出しが自動的に行われる。
なお、本実施形態例においては、説明の簡明化のため上段ロール紙4aと下段ロール紙4bとの各紙管の内径および用紙幅が同じものを用い、これに対応してフランジ6a,6bおよび上・下段フランジ受け台5A,5Bも同じものを用いているものとして説明する。
ロール紙には、上述したように紙種が異なるものがある他、紙管(芯管)の径が異なる複数のサイズ、例えば一般的なサイズである2インチや3インチのものがあり、その場合には上記した支持コロの配置位置や数を変えて対応できるように構成されるが、これ以上の説明は省略する。
【0042】
図1および図2を参照して、上述した構成を有する画像形成装置全体の動作を説明する。図1および図2において、上述したように、ロール紙に対するフランジの装着・セット操作等によって、上段フランジ受け台5Aにはフランジ6aを介して上段ロール紙4aが、フランジ受け台5Bにはフランジ6bを介して下段ロール紙4bがそれぞれセットされ、また図1に示す給紙ローラ9aからは上段ロール紙4aの用紙10の先端が、給紙ローラ9bからは下段ロール紙4bの用紙10の先端がそれぞれ給紙可能状態にセットされているものとする。
操作者によって、画像読取部2の原稿台11に画像形成すべき原稿(図示せず)がセットされるとともに、画像読取部2近傍の装置本体1に配設された図示しない操作部のキー操作などが行われることで、各種の画像形成条件、例えば上下段のロール紙の選択や、カラー色の選択、画像形成枚数などが設定される。これらの信号が画像形成装置の制御部(図示せず)に入力されると、画像形成装置が作動する。すなわち、画像読取部2では上述した原稿画像の読み取りが行われて、密着イメージセンサ14から画像信号が出力される。
【0043】
そして、前記キー操作により、例えば上段ロール紙4aが選択されたときには、前記モータの回転駆動により給紙ローラ9aが回転されることで、フランジ受け台5A上に載置されたフランジ6aが用紙繰り出し方向に回転し、上段ロール紙4aから用紙10が給送される。給紙ローラ9aから給送された用紙10は、装置後方から前方に向けて、図示しない搬送ローラなどの搬送手段により用紙(シート)搬送路を搬送されて画像形成部3のインクジェット記録領域へ搬送される。すると、図2において、キャリッジ20が主走査方向Yに移動し、用紙10を間欠的に送りながら、液体記録ヘッドを画像情報に応じて駆動して液滴を吐出させることによって、用紙10上に所要の画像が形成される。さらに、画像形成後の用紙10は、前記図示しない排紙ガイド板の手前に配設されたカッタ27が主走査方向Yに移動することにより、所定の長さにカットされ、装置正面側に配置される図示しない排紙トレイへ排出される。
画像情報(画像データ)としては、画像読取部2で読み取られる原稿画像によるものに限らず、画像形成装置に通信可能に接続されたパソコン等のコンピュータから送信されるものであってよいことは無論である。
【0044】
図1〜図10を参照して、本実施形態の特徴部分を説明する。
図1において、上述したように、上段ロール紙4aはフランジ6a(図1では省略、図2等参照)を介して上段フランジ受け台5Aに、下段ロール紙4bはフランジ6b(図1では省略、図2等参照)を介してフランジ受け台5Bにそれぞれセットされ、上段ロール紙4aと下段ロール紙4bとは、装置本体1の前面1F側の下端部に配置されている。装置本体1の前面1Fは、装置本体1の前面1Fから上段ロール紙4aの交換を行うための開口部7と下段ロール紙4bの交換を行うための開口部8とを備えている。
【0045】
本実施形態では、図1および図8に示すように、床面36に設置された画像形成装置の装置本体1において、上下2段の各フランジ受け台5A,5Bにセットされた上・下段ロール紙4a,4bの床面36から中心位置4a1,4b1までの高さHa,Hbが、装置本体1内における画像形成部3の下方且つセットする操作者34の立位状態での腰34bの高さより低い位置に配置されていることを一つの特徴としている。
ここで、「操作者34の立位状態での腰34bの高さ」とは、画像形成装置を操作する標準的な操作者の腰の高さ位置を意味し、人間工学的・設計上の観点から一例を挙げれば、日本人の場合には身長が男1686.8mm、 女1557.9mmで、腰の高さが男845.9mm、 女768.8mmに設定される。また、外国人(例えば米国人)の場合には身長が男1760.4mm、 女1626.7mmで、腰の高さが男934.3mm、 女829.9mmに設定される(1998年度成人平均データによる)。
操作者34が日本人の条件において、一例を挙げればHa=520mm、Hb=250mm程度に設定されるが、これに限定するものではない。
【0046】
フランジ受け台5A,5Bは、主として高さ位置が異なるのみで略同様の構成であるため、以下、フランジ受け台5Aを代表して説明する。図1、図2、図6〜図8等に示すように、フランジ受け台5Aには、フランジ6a装着済みのロール紙4aの該フランジ6a(以下、単に「ロール紙4aのフランジ6a」ともいう)を支持することによりロール紙4aから用紙を繰り出し可能に支持する繰出支持部としての中継コロ28および支持コロ29と、ロール紙4aのフランジ6aに形成された被載置部6gを一時載置するための略平坦部5cを備えた突出ガイド部としての挿入ガイド5aと、挿入ガイド5aの載置位置を目視可能に指示する載置位置ガイド部としての載置位置ターゲット5bとが一体的に形成されている。フランジ受け台5Aは、例えば適宜の樹脂で一体形成されている。
【0047】
繰出支持部としての中継コロ28および支持コロ29は、ロール紙4aのフランジ6aを最終的に載置支持することにより、最終的な載置位置ターゲットとなるものである。
載置位置ガイド部としての載置位置ターゲット5bは、上記したように挿入ガイド5aへのロール紙4aのフランジ6aの載置位置を目視可能に指示する機能があればよい。本実施形態では、図1および図8等に示すように、操作者34が目視可能な挿入ガイド5aの先端部がこれに相当するが、例えば矢印マークやLED(発光ダイオード)等での点灯・点滅表示なども含まれる。
【0048】
また、本実施形態では、図1、図2、図6〜図8等に示すように、開口部7,8は、装置本体1の前面1Fから各挿入ガイド5aを突出するように設けられ、ロール紙4a,4bのフランジ6a,6bを前面1F側から各載置位置ターゲット5bに載置してから前記繰出支持部へセット可能とする機能を有している。
【0049】
また、本発明の必須の構成ではないが、本実施形態のように多段ロール機にあってはさらに視認性および操作性を向上すべく、図1に示すように、上下2段の各フランジ受け台5A,5Bにセットされた上・下段ロール紙4a,4bの中心位置4a1,4b1が、装置本体1の前後方向Xにオフセットし、且つ、下段ロール紙4bの中心位置4b1が、上段ロール紙4aの中心位置4a1よりも装置本体1の前面1F寄りに偏倚していることが好ましい。
換言すれば、上・下段ロール紙4a,4bをセットする上・下段フランジ受け台5A,5Bが、装置本体1の前後方向Xにずらして配置されており、これと同様に、上段フランジ受け台5Aを支持する受け台位置決めステー31(図1では省略、図3、図5および図6等参照)の中心位置が、フランジ受け台5Bを支持する受け台位置決めステー(図示せず)の中心位置よりも装置本体1の後側寄りにαmmだけ偏倚して配置されているとも言える。
【0050】
ここで、上段ロール紙4aの中心位置4a1とは、フランジ6aを介して上段フランジ受け台5Aにセットされた際の、フランジ6aの回転中心と同義であり、同様に、下段ロール紙4bの中心位置4b1とは、フランジ6bを介してフランジ受け台5Bにセットされた際の、フランジ6bの回転中心と同義である。
偏倚量αmmは、本実施形態に対応した効果を奏するように、すなわち上・下段フランジ受け台5A,5Bに対する上・下段ロール紙4a,4bの視認性および操作性(交換作業性)の向上、操作者34の腰34bの高さより低く抑えること、用いる上・下段ロール紙4a,4bの最大外径(未使用時)などを考慮して具体的に決める事項である。
【0051】
次に、図8〜図10を参照して、本実施形態のロール紙セット時の操作を含む動作について補説する。図9(a)、図10(a)に示すように、操作者34は腕を広げ、両方の手34aでロール紙4aのフランジ6aを下げ持つ姿勢で、装置本体1の前面(正面)1Fに歩み寄り、斜め上方から左右のセット位置を交互に目視確認しながら、ロール紙4aをセットしようとする。この際例えば、先ず図9(a)の(1)、図10(b)の(1)に示すように装置本体1の前面1Fの開口部7から突出している右側の挿入ガイド5aの先端部に位置する載置位置ターゲット5bを斜め上方から目視確認(太い実線矢印で示す)しつつ、右側の挿入ガイド5aにロール紙4aの右側のフランジ6aを上方向から挿入・載置するとともに、右側のフランジ受け台5Aをスライド移動させて主走査方向Yの位置を確定・ロックし(図9(a)の(2)、図10(b)の(2)参照)、次いで、図9(a)の(3)、図10(b)の(3)に示すように左側の載置位置ターゲット5bを斜め上方から目視確認(太い破線矢印で示す)しつつ、左側のフランジ受け台5Aをスライド移動させて主走査方向Yの位置を確定・ロックし(図9(a)の(4)、図10(b)の(4)参照)、同図における左側の挿入ガイド5aにロール紙4aの左側のフランジ6aを上方向から挿入・載置する(図9(b)、図10(b)参照)。
【0052】
この後、図8(a)、図9(b)、図10(b)に示すように、操作者34は挿入ガイド5aに設けられた略平坦部5c(図7(a)参照)に一旦、ロール紙4aの各フランジ6aを載置する状態でセットした後、図10(c)に示すように装置本体1の奥側の前記繰出支持部に矢印方向に転がして、ロール紙4aの各フランジ6aが前記繰出支持部(中継コロ28、支持コロ29)に載置・セットされるとセットが完了する。
【0053】
上記したとおり、本実施形態では画像形成装置全体のコンパクト化を図るべく画像形成部3の下方に、シートロール支持部としてのフランジ受け台5A,5Bを図1に示すように配置している。このようなレイアウト・配置は、従来技術の別の観点からの問題点に鑑みてなされているものである。すなわち、前述したように従来の引出し式トレイなどを用いず、単に上下方向にロール紙を配置するレイアウトとした場合、ロール紙は、一般的に、その幅が広く、重量が最大で10kgを超えるものの交換作業は容易ではない。また紙種として光沢紙を用いたロール紙などは、現状価格で数万円もするものもあり、打痕や傷を付けぬようにその交換作業は非常に気を遣う。
従来例ではシートロール支持部がマシン(装置本体)の上部に配置されている例(特にロール紙一本対応の機種に多く見られるが)もあるが、最大で10kgを超えるロール紙を自分の胸の高さ近くまで持ち上げる作業は、負荷が余りにも大きく、特に女性操作者にはとても辛い作業となることから支持されないものと思われる。
【0054】
本実施形態によれば、上記した構成および動作により、コンパクト且つ簡素で安価な構成の図1に示した画像形成装置において、操作者34は、重量と幅のある広幅ロール紙のセット時であっても、載置位置ターゲット5b(載置位置ガイド部)を目視確認してロール紙4a,4bのフランジ6a,6bを挿入ガイド5a,5a(突出ガイド部)の略平坦部5cに一時載置することで前記繰出支持部(中継コロ28、支持コロ29)へ容易にセットすることができ、視認性および操作性向上が図れる。また、ロール紙4a,4bのフランジ6a,6bを挿入ガイド5a,5aの略平坦部5cに一時載置できることで、重量のあるロール紙セット時でも操作者34の腰34bにかかる負担を軽減することができる。
【0055】
(変形例1)
図11および図12を参照して、第1の実施形態の変形例1を説明する。本変形例は、図1〜図10に示した第1の実施形態例と比較して、フランジ受け台5A,5Bに代えて、図11に示すフランジ受け台5A1,5B1を用いる点のみ相違する。フランジ受け台5A1,5B1は、フランジ受け台5A,5Bと比較して、挿入ガイド5aに代えて、ロール紙4a,4bのフランジ6a,6bを略平坦部5cに一時載置した状態でもその位置が確認できる長さまで装置本体1の前面1Fから突出させた挿入ガイド5a1を用いる点、および載置位置ターゲット5bに代えて、さらに目視可能な矢印マークを設けた載置位置ターゲット5b1を用いる点のみ相違する。以下、第1の実施形態と同様に、上段ロール紙4aおよび上段フランジ受け台5A1を代表して説明する。本変形例は、上記相違点以外は第1の実施形態と同様である。
【0056】
本変形例の場合、図11(a)および図12(a)に示すように、操作者34が上段ロール紙4aのフランジ6aを略平坦部5cの奥側に置くようにすれば、挿入ガイド5a1の先端が載置位置ターゲット5b1となる。
また、図11(b)〜図12(b)に示すように、操作者34が上段ロール紙4aのフランジ6aを略平坦部5cの手前側に置くようにして、実際にフランジ6aが置かれる位置が目視確認できるようにしてやれば、略平坦部5cの奥側が載置位置ターゲット5b1となる。本変形例では、より判りやすくするため、ロール挿入ガイド5aに矢印等を設けて、これを載置位置ターゲット5b1としている。
本変形例は、第1の実施形態に適用できることは無論である。
【0057】
(変形例2)
図13を参照して、第1の実施形態の変形例2を説明する。本変形例は、図1〜図10に示した第1の実施形態例と比較して、フランジ受け台5A,5Bに代えて、図13に示すフランジ受け台5A2,5B2を用いる点のみ相違する。フランジ受け台5A2,5B2は、フランジ受け台5A,5Bと比較して、挿入ガイド5a,5a(突出ガイド部)の配置位置を表す表示マークとしての矢印を、ロール紙4a,4bのフランジ6a,6bがフランジ受け台5A2,5B2にセットされた状態のフランジ6a,6bの高さ位置よりも上方に設けられた載置位置ガイド部としての載置位置ターゲット5b2,5b2に設けた点が相違する。本変形例は、上記相違点以外は第1の実施形態と同様である。
【0058】
本変形例によれば、第1の実施形態よりもロール紙4a,4bのフランジ6a,6bを挿入ガイド5aへセットする際の視認性が向上するので、挿入ガイド5aへの載置・セットが容易となり、さらに操作性が向上する。
ロール紙を手前上方よりセットする場合、フランジの直下に載置位置ターゲットが来るようにセットする必要がある。ただし、操作者は図9に示す斜め視線となるため、載置位置ターゲットに対応するフランジの下側面はブラインド状態となり位置合わせが難しい。本変形例のように載置位置ターゲットを上にすることで、フランジ上部と載置位置ターゲットの両方を見ながら位置合わせすればよいので、セットが容易になるという利点もある。
本変形例は、第1の実施形態や変形例1に適用できることは無論である。
【0059】
(変形例3)
図14を参照して、第1の実施形態の変形例3を説明する。本変形例は、図1〜図10に示した第1の実施形態例と比較して、フランジ受け台5A,5Bに代えて、図14に示すフランジ受け台5A3,5B3を用いる点のみ相違する。フランジ受け台5A3,5B3は、フランジ受け台5A,5Bと比較して、フランジ受け台5A,5Bに一体的に固設された挿入ガイド5a,5a(突出ガイド部)に代えて、開口部7,8からの突出量部分を装置本体1内に格納可能に構成した挿入ガイド5a3,5a3を用いる点が相違する。以下、第1の実施形態と同様に、上段ロール紙4aおよび上段フランジ受け台5A3を代表して説明する。本変形例は、上記相違点以外は第1の実施形態と同様である。
【0060】
挿入ガイド5a3の構成例としては、以下のような周知の機構が挙げられる。すなわち、図14(a)に示すように、操作者34は挿入ガイド5a3に設けられた略平坦部5c3にロール紙4aのフランジ6aを上方向からセットした(同図の(1)参照)後、装置本体1内のフランジ受け台5A3の前記繰出支持部に転がしてセットを完了する(同図の(2)参照)。このロール紙4aのフランジ6aセットの直後に、図14(b)の(3)に示すように、ロール紙4aのフランジ6a全体の自重で押圧されるのに連動して作動するレバーとリンクとバネを用いた機構などにより装置本体1内に格納する例が挙げられる。また、挿入ガイド5a3は、ヒンジなどを用いて折り畳み可能にすればよい。
本変形例は、変形例1や2にも適用できることは無論である。
【0061】
本変形例によれば、前記構成により、装置本体1の前面1Fから挿入ガイド5a3,5a3の出っ張りが生じず、ロール紙4a,4bの装着性を損ねることなく装置全体をさらにコンパクトにできる(請求項3の効果参照)。
【0062】
(変形例4)
図15および図16を参照して、第1の実施形態の変形例4を説明する。本変形例は、図1〜図10に示した第1の実施形態例と比較して、フランジ受け台5A,5Bに代えて、図15および図16に示すフランジ受け台5A4,5B4を用いる点のみ相違する。フランジ受け台5A4,5B4は、フランジ受け台5A,5Bと比較して、図7に示した収容壁32と収容壁33を備えて形成された挿入ガイド5aに代えて、ロール紙4a,4bのフランジ6a,6b(図15には図示せず、図7等参照)を挿入可能な外開きの傾斜角β4をなす第1の傾斜壁33bを装置本体1の前面1F側に、第1の傾斜壁33bの上部に外開きの傾斜角α4をなす第2の傾斜壁33cをそれぞれ備えている突出ガイド部としての挿入ガイド5a4を用いる点が相違する。以下、第1の実施形態と同様に、上段ロール紙4aおよび上段フランジ受け台5A4を代表して説明する。本変形例は、上記相違点以外は第1の実施形態と同様である。
図16は、変形例4を適用した画像形成装置を、装置本体1における最上面の前面1F上方手前から見たときの挿入ガイド5a4の形状を示している。同図を見て分かるように、挿入ガイド5a4の視認性が向上していることがうかがえる。
【0063】
本変形例によれば、前記構成により、挿入ガイド5a4が前方向、上方向へ末広がりとなり、内側から外側方向へもロール紙のフランジをセットし易い形状となっているのでラフセットしても、挿入ガイド5a4の所定の位置に収まりやすいので、ロール紙セット時の視認性および操作性がより一層向上する。
本変形例は、第1の実施形態や変形例1、2、3に適用できることは無論である。
【0064】
以上説明したとおり、本発明を特定の実施形態や変形例等について説明したが、本発明が開示する技術的範囲は、上述した実施形態や変形例等に例示されているものに限定されるものではなく、それらを適宜組み合わせて構成してもよく、本発明の範囲内において、その必要性および用途等に応じて種々の実施形態や変形例あるいは実施例を構成し得ることは当業者ならば明らかである。
例えば、図1に示した画像読取部2、画像形成部3、装置本体1の上下方向Zに隣る上下2段のフランジ受け台5A,5B、これらの構成部品や部材は、上述したものに限らず、それらと均等な全ての公知のものに置き換えてもよい。一例を挙げると、画像形成部3は、シリアル型インクジェット記録装置に限定されず、ライン型インクジェット記録装置や電子写真方式による画像形成装置等またはそれら複数の機能を組み合わせた装置でもよい。
図1に示した画像形成装置に限らず、画像読取部2に加えて、装置本体の上部の正面側に操作部としての操作パネルを設けたものであってもよい。また、画像読取部2が配設されていない、例えば専らコンピュータ等の外部入力データやコンパクトディスク等の各種記憶媒体に記録されているデータに基づいて画像形成を行う画像形成装置であってもよい。
また、ロール紙およびこれから用紙を繰り出し可能に支持するフランジ受け台は、図1等に示したように、上下方向に隣る上下2段の構成に限らず、上下方向に3段以上の構成、すなわち装置本体の上下方向に隣る少なくとも上下2段のシートロール支持部を配置したものでもよいし、上下方向に1段のシートロール支持部を配置したものでもよい。
【符号の説明】
【0065】
1 装置本体
1F 装置本体の前面
1Fa 装置本体前面端
2 画像読取部
3 画像形成部
4a 上段ロール紙(上段のシートロール)
4a1 上段ロール紙の中心位置(上段のシートロールの中心位置)
4b 下段ロール紙(下段のシートロール)
4b1 下段ロール紙の中心位置(下段のシートロールの中心位置)
5A、5A1〜5A4 上段フランジ受け台(上段のシートロール支持部)
5B、5B1〜5B4 下段フランジ受け台(下段のシートロール支持部)
5a、5a1、5a4 挿入ガイド(突出ガイド部)
5b、5b1、5b2 載置位置ターゲット(載置位置ガイド部)
5c 略平坦部
6a、6b フランジ(フランジ部材)
7 開口部
8 開口部
10 用紙(シート)
11 原稿台(原稿載置台)
20 キャリッジ
28 中継コロ(繰出支持部の構成要素)
29 支持コロ(繰出支持部の構成要素)
30 巻き戻しローラ
31 受け台位置決めステー
32 収容壁
33 収容壁
33b 第1の傾斜壁
33c 第2の傾斜壁
34 操作者
34a 操作者の手
34b 操作者の腰
36 床面
X 前後方向
Y 主走査方向、シート幅方向
Z 上下方向
【先行技術文献】
【特許文献】
【0066】
【特許文献1】特開平11−139632号公報
【特許文献2】特許第3498626号公報
【特許文献3】特開2006−44900号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送されてくるシートに画像形成を行う画像形成部と、
長尺のシートが巻回されてなるシートロールから該シートを前記画像形成部に向けて繰り出す繰り出し方向と直交するシート幅方向における該シートロールの両端部に装着される一対のフランジ部材と、
装置本体内における前記画像形成部の下方且つセットする操作者の立位状態での腰の高さより低い位置に配置され、前記各フランジ部材を支持することにより前記シートロールから該シートを繰り出し可能に支持する繰出支持部を備えるとともに、シートサイズに応じて前記シート幅方向に移動可能な一対のシートロール支持部と、
前記各シートロール支持部に設けられ、前記フランジ部材装着済みのシートロールを一時載置するための突出ガイド部と、
前記突出ガイド部の載置位置を目視可能に指示する載置位置ガイド部と、
前記装置本体の前面から前記各突出ガイド部が突出するように設けられ、前記フランジ部材装着済みのシートロールを前記前面側から前記各載置位置ガイド部に載置してから前記繰出支持部へセット可能とする開口部と、
を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記突出ガイド部の配置位置を表す表示マークを、前記フランジ部材装着済みのシートロールが前記各シートロール支持部にセットされた状態の該フランジ部材の高さ位置よりも上方に設けられた前記載置位置ガイド部に設けたことを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記突出ガイド部の前記開口部からの突出量部分を前記装置本体内に格納可能にしたことを特徴とする請求項1または2記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記突出ガイド部は、前記フランジ部材装着済みのシートロールの該各フランジ部材を挿入可能な外開きの第1の傾斜壁を前記装置本体の前記前面側に、第1の傾斜壁の上部に外開きの第2の傾斜壁をそれぞれ備えていることを特徴とする請求項1ないし3の何れか一つに記載の画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate


【公開番号】特開2011−131434(P2011−131434A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−291241(P2009−291241)
【出願日】平成21年12月22日(2009.12.22)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】