画像形成装置
【課題】感光体ドラムの長寿命化を達成できる画像形成装置を提供する。
【解決手段】感光体ドラム(18)の表面に帯電や露光を経て形成された潜像をトナーで現像してトナー像を形成し、このトナー像を転写材に転写する画像形成装置(1)であって、感光体ドラムの表面に接触して帯電させる帯電ローラ(21)を有した帯電器(20)と、この帯電に至る前に感光体ドラムの表面に除電光を照射し、転写を経た後のこの感光体ドラムの表面に残された電荷を除去する除電ユニット(19)とを具備し、帯電ローラは、感光体ドラムの回転軸線方向でみた現像幅の外側領域が通紙幅から離れるに連れて縮径されており(86,88)、除電ユニットは、通紙幅の外側領域に対する除電光の光量をこの通紙幅の内側領域に比して弱くする(74)。
【解決手段】感光体ドラム(18)の表面に帯電や露光を経て形成された潜像をトナーで現像してトナー像を形成し、このトナー像を転写材に転写する画像形成装置(1)であって、感光体ドラムの表面に接触して帯電させる帯電ローラ(21)を有した帯電器(20)と、この帯電に至る前に感光体ドラムの表面に除電光を照射し、転写を経た後のこの感光体ドラムの表面に残された電荷を除去する除電ユニット(19)とを具備し、帯電ローラは、感光体ドラムの回転軸線方向でみた現像幅の外側領域が通紙幅から離れるに連れて縮径されており(86,88)、除電ユニットは、通紙幅の外側領域に対する除電光の光量をこの通紙幅の内側領域に比して弱くする(74)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接触帯電式の帯電器で帯電される感光体ドラムを有した画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の画像形成装置では電子写真方式が用いられており、帯電器が感光体ドラムを予め帯電し、露光部が感光体ドラムの表面に光を照射すると、この感光体ドラム表面には静電潜像が形成される。また、現像器はトナーを担持しており、このトナーが静電潜像に付着して感光体ドラム表面にはトナー像が現像される。そして、この可視化されたトナー像が用紙に転写及び定着される。
【0003】
ここで、感光体ドラムの表面に除電光を照射する構造が知られている(例えば、特許文献1,2参照)。感光体ドラムの露光履歴を解消しておかなければ、メモリー画像が発生するからである。そこで、除電ユニットが帯電に至る前に除電光を照射し、転写後の感光体ドラムの表面に残された電荷(残留電荷)を除去する。
【0004】
なお、感光体ドラムの表面には、微量のトナーが用紙に転写されずに残ることがあり、次回の画像形成までに除去する必要がある。このため、当該文献1,2には、この感光体ドラムの表面をクリーニングブレードで清掃する旨も開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−34129号公報
【特許文献2】特開2006−234882号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、感光体ドラムの表面において、この感光体ドラムの回転軸線方向でみた通紙幅の外側領域は画像を形成させない範囲であるが、現像幅は通紙幅よりも広く設定されるため、現像バイアス電圧の印加によって、通紙幅の外側領域にもトナー(外添剤を含む)が向かう。一方、帯電幅は現像幅よりも広く設定されるので、このトナー自体は感光体ドラム表面に付着せず、現像器に戻るものの、外添剤自体はトナーから脱離して当該領域に取り残される。その後、この外添剤のみが感光体ドラムの表面から中間転写体の転写面に転写されたり、上記クリーニングブレードのエッジに堆積する。
【0007】
前者の転写面に転写された外添剤のみの状態は、中間転写体のクリーニング装置では清掃困難である。そして、僅かながらではあるが中間転写体と感光体ドラムとの線速差も相俟って、この中間転写体が接触する感光体ドラムの表面のうち、上述した通紙幅の外側領域は外添剤で研磨される。また、後者のクリーニングブレードで当該領域が外添剤で研磨され、この領域の感光体ドラムの磨耗量が感光体ドラムの寿命を短くするとの問題がある。
【0008】
さらに、例えば有機材料を用いた比較的削れ易い感光体ドラムにおいては、接触帯電式の帯電ローラに直接に接触すると、この帯電ローラのエッジ部分近傍では放電によって劣化し易くなる。
具体的には、帯電ローラの形状をそのエッジの際立った単なる円筒状に形成すると、帯電ローラから感光体ドラム表面への押圧力が帯電ローラのエッジ部分に集中し、このエッジ部分のやや内側が感光体ドラム表面から離れる歪みを生じさせる。
【0009】
そして、これでは、当該エッジ部分から感光体ドラム表面への流れ込み電流が通紙幅の内側領域に比して増え、帯電時の放電量(放電エネルギー)による感光体ドラムの表面劣化が促進されるし、特に、このエッジ部分のやや内側では過剰な放電現象が起こり、放電エネルギーによる感光体ドラムの表面劣化の促進が顕著になり、この領域の感光体ドラムの劣化がやはり感光体ドラムの寿命を短くするという問題がある。
【0010】
この問題の解決にあたり、仮に上述した従来の技術を適用しても、通紙幅の外側領域に対する除電光の光量がこの通紙幅の内側領域に比して強められるだけであることから、これでは帯電時の放電量が多くなって感光体ドラムの表面が劣化し、通紙幅の外側領域の磨耗がより促進されてしまう。
そこで、本発明の目的は、上記課題を解消し、感光体ドラムの長寿命化を達成できる画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するための第1の発明は、感光体ドラムの表面に帯電や露光を経て形成された潜像をトナーで現像してトナー像を形成し、このトナー像を転写材に転写する画像形成装置であって、感光体ドラムの表面に接触して帯電させる帯電ローラを有した帯電器と、この帯電に至る前に感光体ドラムの表面に除電光を照射し、転写を経た後のこの感光体ドラムの表面に残された電荷を除去する除電ユニットとを具備し、帯電ローラは、感光体ドラムの回転軸線方向でみた現像幅の外側領域が通紙幅から離れるに連れて縮径されており、除電ユニットは、通紙幅の外側領域に対する除電光の光量をこの通紙幅の内側領域に比して弱くする。
【0012】
第1の発明によれば、感光体ドラムの回転駆動によって感光体ドラム表面には、その潜像をトナーで現像したトナー像が形成され、このトナー像が転写材に転写される。
接触帯電式の帯電器は、帯電ローラが感光体ドラム表面を押圧して帯電しており、コロナ放電式の帯電器による場合に比してオゾンや窒素酸化物が生じないため、画像品質の向上を図ることができる。
【0013】
また、除電ユニットは、帯電に至る前に感光体ドラム表面に除電光を照射し、転写後の感光体ドラム表面に残された電荷(残留電荷)を除去する。
ここで、帯電ローラからの電圧が感光体ドラム表面に直接に接触して印加されると、感光体ドラムの寿命が短くなる。これら帯電ローラと感光体ドラムとのニップ部分、特に帯電ローラの端部にて帯電ローラから感光体ドラムへの流れ込み電流がコロナ放電式の場合に比して増え、帯電時の放電量(放電エネルギー)による感光体ドラムの表面劣化が促進するからである。
【0014】
しかしながら、本発明によれば、帯電ローラは、感光体ドラムの回転軸線方向でみた現像幅の外側領域が通紙幅から離れるに連れて縮径する形状で構成されており、帯電ローラのうち上記現像幅の外側領域に相当する端部は、感光体ドラム表面に接触する接触端部と、帯電ローラが感光体ドラムを押圧しても感光体ドラム表面に接触し難い縮径端部とを有し、従来のような帯電ローラのエッジ部分への応力集中、及びこの応力集中の生じたエッジ部分のやや内側の歪みを緩和している。
【0015】
これにより、帯電ローラの端部では感光体ドラムへの過剰な流れ込み電流が減り、帯電時の放電量(放電エネルギー)による感光体ドラムの表面劣化を抑制できる。
同時に、除電ユニットは、感光体ドラムの表面のうち、この通紙幅の外側領域に対する除電光の光量をこの通紙幅の内側領域に比して弱めているので、この通紙幅の外側領域では、次の画像形成時に必要な表面電位に高める際に帯電から感光体ドラムへの流れ込み電流が少なくて済むため、この放電エネルギーの発生による感光体ドラムの表面劣化が抑えられる。
これらの結果、従来に比して感光体ドラムの磨耗を抑制でき、感光体ドラムの長寿命化を達成できる。
【0016】
第2の発明は、第1の発明の構成において、除電ユニットは、通紙幅の外側領域に対して除電光を照射することを特徴とする。
第2の発明によれば、第1の発明の作用に加えてさらに、除電ユニットは、感光体ドラムの表面のうち通紙幅の外側領域に対し、除電光を全く照射しないのではなく、通紙幅の内側領域に対する光量に比して弱めつつも照射している。したがって、この通紙幅の内側領域に必要な光量を確保可能になり、画像品質は損なわれない。
【0017】
また、除電光を全く照射しないと、逆チャージトナーが現像される懸念もあるが、上述のように照射は低光量ながらも行われることから、当該領域の表面電位は過度に高くならず、逆チャージトナーの現像による機内汚染も防止できる。さらに、除電光の光量を弱める箇所は、通紙幅の外側領域であるので、メモリー画像の発生の懸念もない。
【0018】
第3の発明は、第1や第2の発明の構成において、感光体ドラムは、その表面に有機系の感光層を有した感光体ドラムであることを特徴とする。
第3の発明によれば、第1や第2の発明の作用に加えてさらに、有機系の感光層を有した感光体ドラムの表面は特に削られ易く、放電による劣化は当該感光体ドラムに大きな影響を及ぼす懸念があるが、上記帯電ローラの形状と除電ユニットの光量制御とを組み合わせれば、この感光体ドラムの特性を長期間に亘って維持可能になり、特に顕著な効果を奏する。
【0019】
第4の発明は、第1から第3の発明の構成において、トナー像は、外添剤を含むトナーで現像して形成されていることを特徴とする。
第4の発明によれば、第1から第3の発明の作用に加えてさらに、仮に感光体ドラムの表面劣化が進行すると、この感光体ドラムの表面に接触する接触部材によって感光体ドラムの表面が研磨され易くなるが、上記帯電ローラの形状及び除電ユニットの光量制御の組み合わせにより、帯電ローラのエッジ部分への応力集中や歪みを緩和するとともに、トナー像の形成範囲以外に対する除電光の光量を弱め、感光体ドラムの表面劣化を抑えており、上述した放電エネルギーの発生に伴う感光体ドラムの磨耗抑制の他、外添剤の研磨による感光体ドラムの磨耗抑制も図ることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、帯電ローラの端部にて放電エネルギーの発生による感光体ドラムの表面劣化を抑えており、感光体ドラムの長寿命化を達成できる画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本実施例のプリンタの概略構成図である。
【図2】図1の画像形成ユニット周辺の断面図である。
【図3】図2の感光体ドラム、帯電ローラ、現像ローラの幅の説明図である。
【図4】図3の帯電ローラの端部の拡大図である。
【図5】図2のイレーサの平面図である。
【図6】(a)は第2実施例のイレーサの平面図であり、(b)は第3実施例のイレーサの平面図である。
【図7】比較例の帯電ローラの端部の拡大図である。
【図8】図7の比較例による感光体ドラム軸方向の帯電電流分布を説明した図である。
【図9】図3の帯電ローラの形状変更のみによる感光体ドラム軸方向の帯電電流分布を説明した図である。
【図10】本実施例による感光体ドラム軸方向の帯電電流分布を説明した図である。
【図11】耐久実験結果の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の好適な実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1には、画像形成装置の一例であるカラー印刷可能なプリンタ1の構造が概略的に示されている。同図に示された断面はプリンタ1の左側面からみたものである。このため、プリンタ1の前面は同図中の右側に、背面は左側にそれぞれ位置する。
【0023】
同図に示されるように、プリンタ1の装置本体2の上方には排紙トレイ36が設けられ、この排紙トレイ36の近傍には、使用者の各種操作に供される複数の操作キーや、各種情報を表示する画面を配置したフロントカバー5が設けられている。
また、この装置本体2の下方には給紙カセット4が配置され、その収容部40には、枚葉の用紙が積層された状態で収納されている。同図でみて収容部40の右上方には給紙ローラ46が設けられる。
【0024】
そして、用紙は、同図において給紙カセット4の右上方に向けて送出され、この送出された用紙は、装置本体2の内部でプリンタ1の前面に沿って上方に向けて搬送される。
また、給紙カセット4は、プリンタ1の前面側、つまり、図1において右方向に向けて引き出し可能に構成されており、この引き出した状態にて、収容部40に新たな用紙を補充したり、用紙を別の種類の用紙に入れ替え可能となる。
【0025】
装置本体2の内部には、給紙カセット4からの用紙搬送方向でみて下流側に搬送ローラ10、レジストローラ14、画像形成部16及び2次転写部30が順番に配置されている。
画像形成部16には4個の画像形成ユニット17が並設され、各画像形成ユニット17には感光体ドラム18がそれぞれ設けられている(図1及び図2)。この感光体ドラム18は回転自在に設置され、図示しない駆動モータによって図1及び図2の時計回りにそれぞれ駆動する。
【0026】
本実施例の感光体ドラム18は、例えばφ30mmの直径で形成され、その表面に有機系の感光層を有した単層OPCドラムである(OPC:Organic Photoconductor)。
また、この感光体ドラム18と給紙カセット4との間には露光部15が備えられており(図1)、この露光部15からは、レーザ光が各感光体ドラム18に向けてそれぞれ照射される。そして、これら図1及び図2に示されるように、各感光体ドラム18の周囲の適宜位置には、帯電器20、現像器24、中間転写ローラ13、クリーニング部50やイレーサ(除電ユニット)19がそれぞれ設けられている。
【0027】
この帯電器20は、図2にも示される如く画像形成ユニット17の下部に位置し、上方に向けて開口したケーシング70の内部に、感光体ドラム18に接する帯電ローラ21、及び帯電ローラ21の表面を研磨摺擦にて清掃するブラシを備えた摺擦ローラ22を有し、感光体ドラム18の表面を帯電させる。なお、帯電ローラ21は、例えばエピクロルヒドリンゴム製であり、φ12mmの直径で形成されている。
【0028】
また、現像器24は図1及び図2において画像形成ユニット17の左方に配置され、感光体ドラム18に対峙する現像ローラ25を有する。この現像ローラ25は図示しない駆動モータによって同図の反時計回りに駆動する。
なお、この図2の参照符号26はギャップ規制コロである。当該ギャップ規制コロ26は、現像ローラ25の両端に設けられており、感光体ドラム18に連れ回って現像ローラ25と感光体ドラム18とのギャップを設定する。
【0029】
画像形成部16はゴム製の中間転写ベルト(転写材)12を有し、当該中間転写ベルト12は各感光体ドラム18の上方に配置され、この中間転写ベルト12と排紙トレイ36との間には4個のトナーコンテナ23が配設されている(図1)。これら各トナーコンテナ23は、プリンタ1の背面側から前面側に向けて、マゼンタ用、シアン用、イエロー用、そして、ブラック用の順に配設され、このブラック用のトナーコンテナの容量が最も大きく構成される。
【0030】
2次転写部30には2次転写ローラ31が備えられ、この2次転写ローラ31は中間転写ベルト12に対して斜め下方から圧接可能に構成されている。これら中間転写ベルト12と2次転写ローラ31とは、トナー像を用紙に転写するためのニップ部を形成する。
また、用紙搬送方向でみて2次転写部30の下流側には、定着部32、排出分岐部34及び排紙トレイ36が順番に配置されている。
【0031】
本実施例では、2次転写部30と手差しトレイ3との間に両面印刷搬送路38が形成されている。この両面印刷搬送路38は、排出分岐部34から装置本体2の前面側で分岐して下方に向けて延び、レジストローラ14の上流側に連結している。
ここで、本実施例のトナーには、微量の外添剤(酸化チタン、シリカ、アルミナなど)が添加されている。上記のクリーニング部50は、図2に示されるように、感光体ドラム18の回転方向でみて中間転写ローラ(1次転写ローラ)13との転写位置の下流側にて、この感光体ドラム18に向けて開口したハウジング51を備えており、このハウジング51の適宜位置に、クリーニングブレード52やトナー回収部80を有している。
【0032】
具体的には、クリーニングブレード52は、ハウジング51の下端に固定される亜鉛鋼板の本体や、この本体に溶着されたポリウレタンゴム製のブレード部からなり、このブレード部のエッジが感光体ドラム18の回転軸線に沿って延びている。そして、当該エッジが感光体ドラム18の回転軸線よりも低い位置にてカウンタ方向で接し、感光体ドラム18の表面に付着した外添剤を含む残留トナーや放電生成物などを掻き取っている。
【0033】
このクリーニングブレード52によって感光体ドラム18の表面から掻き取られた残留トナー等は、トナー回収部80から回収される。
詳しくは、トナー回収部80は、ハウジング51の底面近傍にスクリュー88を有する。このスクリュー88は、図2でみてクリーニングブレード52の右側に設置されており、感光体ドラム18の回転軸線方向に沿って延び、その先端が図示しない駆動モータに連結されている。そして、この駆動モータが駆動すると、ハウジング51内の残留トナー等は、スクリュー88を経由して回収容器に集められる。
【0034】
上述のイレーサ19は、感光体ドラム18の回転方向でみてクリーニング部50の下流側であって帯電器20の上流側に配置されており、転写を経てクリーニング部50によるクリーニング工程の後に、その除電光を感光体ドラム18の表面に照射し、次の帯電に対して感光体ドラム18の表面に残された電荷(残留電荷)を除去する。
【0035】
ところで、本実施例の画像形成ユニット17では、各回転軸線を並べてみると、現像ローラ25、帯電ローラ21、並びに感光体ドラム18などの各幅は同じではない。
詳しくは、これら各構成の幅の関係を説明した図3に示される如く、この図に破線で示された感光体ドラム18の感光層の幅(ドラム幅)は、同図に2点鎖線で示された帯電幅よりも広く設定される。なお、上述した転写ベルト12の幅は、感光層幅と帯電幅の間、或いはこの帯電幅と同等に設定される。
【0036】
また、この帯電幅は、図3に実線で示された現像幅よりも広く設定される。仮に帯電幅が現像幅よりも狭いと、この帯電幅の外側領域にトナーが付着し続けるからである。
さらに、この現像幅は、図3に1点鎖線で示された通紙幅よりも常に広く設定される。用紙の左右両端にもトナー像を形成可能にするためである。
【0037】
すなわち、感光体ドラム18の表面において、この感光体ドラム18の回転軸線方向でみた通紙幅の外側領域は、転写ベルト12の転写面でも用紙に接触しないため、画像を形成させない範囲になる。
そして、図3に実線で示された現像幅の外側領域であって、図3に2点鎖線で示された帯電幅の内側領域は、帯電ローラ21の端部に対峙し、帯電ローラ21から感光体ドラム18の表面への流れ込み電流が通紙幅の内側領域に比して増える。
【0038】
特に、感光体ドラム18のうち、帯電ローラ21のエッジ近傍、換言すれば、図3に2点鎖線で示された帯電幅の境界位置の周辺には、帯電ローラ21からの押圧力が集中し易い。一方、そのやや内側領域、換言すれば、図3の斜線で示された領域76Aに対峙する帯電ローラ21には、感光体ドラム18の表面から離れる歪みが生じ、これら応力集中及び歪みが起因となって、感光体ドラム18の領域76Aには過剰な放電現象が起こり易くなる。
【0039】
さらに、本実施例の如く外添剤を含むトナーは、現像バイアス電圧の印加によって、当該領域76Aの内側部分、つまり、図3に1点鎖線で示された通紙幅の外側領域であって、同図に実線で示された現像幅の内側領域76Bの周辺にも向かう。
このトナー自体は感光体ドラム18の表面に付着せず、現像器24に戻る。当該領域76Bは帯電幅の内側領域に該当するからである。
【0040】
一方、外添剤自体はトナーから脱離して当該領域76Bに取り残され、その後、この外添剤のみが感光体ドラム18から転写ベルト12の転写面に転写されると、次回に接触する感光体ドラム18の当該領域76Bが外添剤で研磨されることになる。そして、この領域76Bは、マゼンタ用、シアン用、イエロー用、及びブラック用の総ての感光体ドラム18に形成されてしまう。
【0041】
そこで、本実施例では、帯電ローラ21の端部形状の変更、かつ、イレーサ19による除電光量の調整で対応している。
まず、帯電ローラ21については、その端部、つまり、上記現像幅の外側領域に相当する部分が通紙幅の内側領域から離れるに連れて縮径されている。
より詳しくは、本実施例の帯電ローラ21は、上記図3の一部分をより拡大した図4に示されるように、感光体ドラム18に接触する接触端部86と、その外径が小さくされており、感光体ドラム18との距離を徐々に広げる縮径端部88とを有している。
【0042】
この帯電ローラ21の端部のうち、前者の接触端部86は上記領域76Aに対峙して後者の縮径端部88に連なる。そして、この縮径端部88は、感光体ドラム18の表面から帯電ローラ21の回転軸線に向けて逃げる形状、例えばC面取りの如くエッジ部分が斜めに削られており、帯電ローラ21が感光体ドラム18を押圧しない場合には感光体ドラム18の表面に接触しないし、さらに、仮に感光体ドラム18を押圧しても感光体ドラム18の表面に接触し難くなる。
【0043】
次に、イレーサ19による除電光量の調整については、図3に1点鎖線で示された通紙幅の外側領域に対する除電光の光量をこの通紙幅の内側領域に比して弱めている。
具体的には、本実施例のイレーサ19は、図2の他、感光体ドラム18の回転軸線からみた図5に示される如く、この感光体ドラム18の回転軸線に沿って延びたホルダ60と、このホルダ60の長手方向に沿って埋設されたLEDチップ62,64とを有する。
【0044】
LEDチップ62は感光体ドラム18のうち、上述した通紙幅の内側領域を照射するようにホルダ60に配置される。LEDチップ64は両端側に配置され、上記領域76A,76Bの照射を担っている。
ただし、本実施例のLEDチップ62,64は、いずれも略同等の発光特性を有している。それは、本実施例におけるLEDチップ64からの光量は、領域76A,76Bに到達するまでの間に弱められているからである。
【0045】
より詳しくは、これら図2及び図5に示されるように、帯電器20のケーシング70のうち、イレーサ19側に配置された側壁72はLEDチップ62,64の除電光を帯電域に回り込ませないように機能するが、この側壁72には遮光部材74が立設されている。
この遮光部材74は、感光体ドラム18からみてLEDチップ64の一部分を覆うように、側壁72に取り付けられている。これにより、LEDチップ64が担う上記領域76A,76Bへの光量は、LEDチップ62が担う上述の通紙幅の内側領域への光量に比して弱められつつも照射される。
【0046】
再び図1に戻り、上記プリンタ1が印刷を行う際は、給紙ローラ46によって給紙カセット4から用紙が1枚ずつ分離して送出される。送出された用紙はレジストローラ14に到達する。このレジストローラ14は、用紙の斜め送りを矯正しつつ、画像形成部16で形成されるトナー像との画像転写タイミングを計りながら、用紙を所定の給紙タイミングにて2次転写部30へと送出する。
【0047】
一方、図示しないコントローラには、印刷の元になる画像データが外部から受信可能に構成されている。この画像データは、文字や符号、図形、記号、線図、模様等の各種の画像がデータ化されたものである。そして、このデータに基づき、このコントローラでは光の照射などを制御する。
詳しくは、各感光体ドラム18に対し、その領域に応じて強弱を設けつつ、イレーサ19がそれぞれ点灯して除電し、次いで、帯電器20が感光体ドラム18の表面をそれぞれ帯電する。
【0048】
次いで、露光部15が感光体ドラム18の表面にレーザ光をそれぞれ照射すると、各感光体ドラム18の表面には静電潜像が作られ、現像バイアス電圧の印加によりこの静電潜像から各色のトナー像が形成される。
各トナー像は中間転写ベルト12に重ね合わされ(1次転写)、2次転写部30にて用紙に2次転写される。なお、感光体ドラム18の表面に残留したトナーはクリーニング部50で除去される。
【0049】
続いて、用紙は未定着トナー像を担持した状態で定着部32に向けて送られ、この定着部32にて加熱及び加圧され、トナー像が定着される。その後、定着部32から送出された用紙は排出ローラ35を介して排紙トレイ36に排出され、高さ方向に積層される。
この片面印刷に対し、両面印刷を行う場合には、定着部32から排出された用紙は、排出分岐部34でその搬送方向が切り替えられる。つまり、片面に印刷された用紙は装置本体2内に引き戻され、両面印刷搬送路38に搬送される。続いて、この用紙はレジストローラ14の上流側に向けて送出され、2次転写部30に向けて再び送られる。これにより、用紙の未だ印刷がされていない面にトナー像が転写される。
【0050】
ところで、上述の実施例では、遮光部材74を用いてLEDチップ64の光量を弱めているが、領域76A,76Bに到達する光量を弱める構成は遮光部材74に限定されない。
詳しくは、図6(a)に示されたイレーサ19Aもまた、上記実施例と同様に、いずれも略同等の発光特性を有するLEDチップ62,64を用い、LEDチップ62が通紙幅の内側領域を、LEDチップ64が領域76A,76Bをそれぞれ担っている。
【0051】
しかしながら、この図6(a)のイレーサ19Aでは、ホルダ60Aが、LEDチップ64と隣接するLEDチップ62との間隔を、他のLEDチップ62,62の間隔に比して広げて配置しており、この場合にも、このLEDチップ64が担う領域76A,76Bへの光量は、LEDチップ62が担う上述の通紙幅の内側領域への光量に比して弱められつつ照射される。
【0052】
一方、図6(b)に示されたイレーサ19Bでは、LEDチップ62やLEDチップ64Bがホルダ60に略等間隔で埋設され、LEDチップ62が通紙幅の内側領域を、LEDチップ64Bが領域76A,76Bをそれぞれ担う。しかし、このLEDチップ64Bは、LEDチップ62よりも光量の少ないランクのチップが選択されている。よって、この場合にも、このLEDチップ64Bが担う領域76A,76Bへの光量は、LEDチップ62が担う上述の通紙幅の内側領域への光量に比して弱められつつ照射されることになる。
【0053】
以上のように、本実施例によれば、感光体ドラム18の回転駆動によって感光体ドラム18の表面には、その潜像をトナーで現像したトナー像が形成され、このトナー像が中間転写ベルト12に転写される。
接触帯電式の帯電器20は、帯電ローラ21が感光体ドラム18の表面を押圧して帯電しており、コロナ放電式の帯電器による場合に比してオゾンや窒素酸化物が生じないため、画像品質の向上を図ることができる。また、イレーサ19(19A,19B)は、帯電に至る前に感光体ドラム18の表面に除電光を照射し、転写後の感光体ドラム18の表面に残された電荷(残留電荷)を除去する。
【0054】
ここで、帯電ローラ21は、感光体ドラム18の回転軸線方向でみた現像幅の外側領域が通紙幅から離れるに連れて縮径する形状で構成されており、従来のような帯電ローラのエッジ部分への応力集中、及びこの応力集中の生じたエッジ部分のやや内側の歪みを緩和している。
これにより、帯電ローラの端部では感光体ドラムへの過剰な流れ込み電流が減り、帯電時の放電量(放電エネルギー)による感光体ドラム18の表面劣化を抑制できる。
【0055】
同時に、イレーサ19(19A,19B)では、感光体ドラム18の表面のうち、この通紙幅の外側領域に対する除電光量がこの通紙幅の内側領域に対する除電光量に比して弱められているので、この通紙幅の外側領域では、次の画像形成時に必要な表面電位に高める際に帯電から感光体ドラム18への流れ込み電流が少なくて済むため、この放電エネルギーの発生による感光体ドラム18の表面劣化が抑えられる。
【0056】
また、本実施例の如くトナーが外添剤を含む場合には、感光体ドラム18の表面劣化が進行すると、この感光体ドラム18の表面が転写ベルト12やクリーニングブレード52で研磨され易くなり、この磨耗量が感光体ドラム18の寿命を特に短くする懸念がある。しかし、本実施例の如く上記帯電ローラ21の形状変更及びイレーサ19(19A,19B)の光量制御の組み合わせによれば、上述した放電エネルギーの発生に伴う感光体ドラム18の磨耗抑制の他、外添剤の研磨による感光体ドラム18の磨耗抑制も図ることができる。
【0057】
これらの点について詳述する。
比較例として、帯電ローラ21の形状をそのエッジの際立った単なる円筒状に形成すると、帯電ローラ21から感光体ドラム18の表面への押圧力が帯電ローラ21のエッジ部分108に集中し(図7)、このエッジ部分108のやや内側には感光体ドラム18の表面から離れる歪み部分106が生ずる。
【0058】
そして、これでは、図8に示される如く、当該エッジ部分108から感光体ドラム18の表面への流れ込み電流が極端に上昇し、このエッジ部分108のやや内側の歪み部分106では過剰な放電現象が起こり、放電エネルギーによる感光体ドラム18の表面劣化の促進が顕著になる。
つまり、図7の比較例では、図11の◆印で示されるように、上記領域76Aに相当する箇所が非常に大きく削れてしまうため、この領域76Aでは電圧に耐えられずに感光膜を貫通するリークが生じ、電流は外方向に向けて逃げて感光体ドラム18の表面の中央部分が帯電されず、横黒筋などの異常画像を招く。
【0059】
これに対し、本実施例では、まず、帯電ローラ21のうち現像幅の外側領域に相当する端部は、上記領域76Aに接触する接触端部86を有するが、当該領域76Aの外側に縮径端部88を有しており、この縮径端部88は、帯電ローラ21が感光体ドラム18を押圧すると、その押圧力によって感光体ドラム18の表面に向けて拡がるものの、この感光体ドラム18の表面には接触しない。
【0060】
これにより、接触端部86は領域76Aから離れず、従来のような帯電ローラの押圧力によるエッジ部分108への応力集中、及びこのエッジ108のやや内側の歪み部分106を緩和できるため、帯電ローラ21の端部では、感光体ドラム18への過剰な流れ込み電流が減り(図9)、放電エネルギーによる感光体ドラムの表面劣化を抑制できることが分かる。
【0061】
しかも、イレーサ19(19A,19B)による通紙幅の外側領域に対する除電光量が弱められており、この通紙幅の外側領域では、感光体ドラム18の感光膜中に発生するキャリアが減少して帯電工程時の帯電阻害効果が抑制されるため、この放電エネルギーの発生による感光体ドラムの表面劣化が抑えられる。
【0062】
すなわち、本実施例の如く上記帯電ローラ21の形状変更及びイレーサ19(19A,19B)の光量制御の組み合わせによれば、図10に示されるように、感光体ドラム18への過剰な流れ込み電流を大幅に減らすことができる。
これらの結果、本実施例によれば、図11の●印で示されるように、上記領域76A,76Bに相当する箇所の磨耗量を抑制でき、感光体ドラム18の耐圧性が維持可能な膜厚さを確保できる。この結果、良好な画像形成が長期間に亘って行われ、プリンタ1の信頼性が向上する。
【0063】
次に、イレーサ19(19A,19B)では、感光体ドラム18の表面のうち通紙幅の外側領域に対し、除電光を全く照射しないのではなく、通紙幅の内側領域に対する光量に比して弱めつつも照射している。したがって、この通紙幅の内側領域に必要な光量は一定に維持可能になり、画像品質は損なわれない。
また、除電光を全く照射しないと、逆チャージトナーが現像される懸念もあるが、上述のように照射は低光量ながらも行われることから、当該領域の表面電位は過度に高くならず、逆チャージトナーの現像による機内汚染も防止できる。さらに、除電光の光量を弱める箇所は、通紙幅の外側領域であるので、メモリー画像の発生の懸念もない。
【0064】
さらに、OPCドラム18の表面は特に削られ易く、放電による劣化や外添剤による研磨はOPCドラム18に大きな影響を及ぼす懸念があるが、上記帯電ローラ21の形状変更とイレーサ19(19A,19B)の光量制御とを組み合わせれば、このOPCドラム18の特性を長期間に亘って維持可能になり、特に顕著な効果を奏する。
【0065】
さらに、図2,5の実施例で示されるように、遮光部材74が領域76A,76Bに到達する除電光の光量を遮蔽によって弱めており、放電エネルギーの発生を確実に減らすことができる。
さらにまた、図6(a)の実施例で示される如く、領域76A,76Bを担うLED64の間隔をLED62の間隔よりも広げ、感光体ドラム18の単位面積当たりの個数を減らして領域76A,76Bに到達する除電光の光量を弱めており、この場合にも放電エネルギーの発生を確実に減らすことができる。
【0066】
また、図6(b)の実施例で示されるように、領域76A,76Bを担うLED64Bの発光特性をLED62の発光特性よりも下げ、同じ電流を与えても低光量にして領域76A,76Bに到達する除電光の光量を弱めており、この場合にも放電エネルギーの発生を確実に減らすことができる。
本発明は、上記実施例に限定されず、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で種々の変更を行うことができる。
【0067】
例えば、上記実施例では、トナー像が感光体ドラムの上方で中間転写ベルトに転写しているが、この感光体ドラムの下方でベルトに転写しても良い。
また、上記実施例では、中間転写ベルトを採用したプリンタ1で説明されている。しかし、本発明は、感光体ドラム18のトナー像を用紙に直接に転写する場合にも適用可能であり、本発明の転写材は用紙であっても良い。
【0068】
さらに、この実施例では画像形成装置としてプリンタに具現化した例を示しているものの、本発明の画像形成装置は、複合機、複写機やファクシミリ等にも当然に適用可能である。
そして、これらいずれの場合にも上記と同様に、感光体ドラムの長寿命化を達成できるとの効果を奏する。
【符号の説明】
【0069】
1 プリンタ(画像形成装置)
12 中間転写ベルト(転写材)
18 感光体ドラム
19,19A,19B イレーサ(除電ユニット)
20 帯電器
21 帯電ローラ
86 接触端部
88 縮径端部
【技術分野】
【0001】
本発明は、接触帯電式の帯電器で帯電される感光体ドラムを有した画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の画像形成装置では電子写真方式が用いられており、帯電器が感光体ドラムを予め帯電し、露光部が感光体ドラムの表面に光を照射すると、この感光体ドラム表面には静電潜像が形成される。また、現像器はトナーを担持しており、このトナーが静電潜像に付着して感光体ドラム表面にはトナー像が現像される。そして、この可視化されたトナー像が用紙に転写及び定着される。
【0003】
ここで、感光体ドラムの表面に除電光を照射する構造が知られている(例えば、特許文献1,2参照)。感光体ドラムの露光履歴を解消しておかなければ、メモリー画像が発生するからである。そこで、除電ユニットが帯電に至る前に除電光を照射し、転写後の感光体ドラムの表面に残された電荷(残留電荷)を除去する。
【0004】
なお、感光体ドラムの表面には、微量のトナーが用紙に転写されずに残ることがあり、次回の画像形成までに除去する必要がある。このため、当該文献1,2には、この感光体ドラムの表面をクリーニングブレードで清掃する旨も開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−34129号公報
【特許文献2】特開2006−234882号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、感光体ドラムの表面において、この感光体ドラムの回転軸線方向でみた通紙幅の外側領域は画像を形成させない範囲であるが、現像幅は通紙幅よりも広く設定されるため、現像バイアス電圧の印加によって、通紙幅の外側領域にもトナー(外添剤を含む)が向かう。一方、帯電幅は現像幅よりも広く設定されるので、このトナー自体は感光体ドラム表面に付着せず、現像器に戻るものの、外添剤自体はトナーから脱離して当該領域に取り残される。その後、この外添剤のみが感光体ドラムの表面から中間転写体の転写面に転写されたり、上記クリーニングブレードのエッジに堆積する。
【0007】
前者の転写面に転写された外添剤のみの状態は、中間転写体のクリーニング装置では清掃困難である。そして、僅かながらではあるが中間転写体と感光体ドラムとの線速差も相俟って、この中間転写体が接触する感光体ドラムの表面のうち、上述した通紙幅の外側領域は外添剤で研磨される。また、後者のクリーニングブレードで当該領域が外添剤で研磨され、この領域の感光体ドラムの磨耗量が感光体ドラムの寿命を短くするとの問題がある。
【0008】
さらに、例えば有機材料を用いた比較的削れ易い感光体ドラムにおいては、接触帯電式の帯電ローラに直接に接触すると、この帯電ローラのエッジ部分近傍では放電によって劣化し易くなる。
具体的には、帯電ローラの形状をそのエッジの際立った単なる円筒状に形成すると、帯電ローラから感光体ドラム表面への押圧力が帯電ローラのエッジ部分に集中し、このエッジ部分のやや内側が感光体ドラム表面から離れる歪みを生じさせる。
【0009】
そして、これでは、当該エッジ部分から感光体ドラム表面への流れ込み電流が通紙幅の内側領域に比して増え、帯電時の放電量(放電エネルギー)による感光体ドラムの表面劣化が促進されるし、特に、このエッジ部分のやや内側では過剰な放電現象が起こり、放電エネルギーによる感光体ドラムの表面劣化の促進が顕著になり、この領域の感光体ドラムの劣化がやはり感光体ドラムの寿命を短くするという問題がある。
【0010】
この問題の解決にあたり、仮に上述した従来の技術を適用しても、通紙幅の外側領域に対する除電光の光量がこの通紙幅の内側領域に比して強められるだけであることから、これでは帯電時の放電量が多くなって感光体ドラムの表面が劣化し、通紙幅の外側領域の磨耗がより促進されてしまう。
そこで、本発明の目的は、上記課題を解消し、感光体ドラムの長寿命化を達成できる画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するための第1の発明は、感光体ドラムの表面に帯電や露光を経て形成された潜像をトナーで現像してトナー像を形成し、このトナー像を転写材に転写する画像形成装置であって、感光体ドラムの表面に接触して帯電させる帯電ローラを有した帯電器と、この帯電に至る前に感光体ドラムの表面に除電光を照射し、転写を経た後のこの感光体ドラムの表面に残された電荷を除去する除電ユニットとを具備し、帯電ローラは、感光体ドラムの回転軸線方向でみた現像幅の外側領域が通紙幅から離れるに連れて縮径されており、除電ユニットは、通紙幅の外側領域に対する除電光の光量をこの通紙幅の内側領域に比して弱くする。
【0012】
第1の発明によれば、感光体ドラムの回転駆動によって感光体ドラム表面には、その潜像をトナーで現像したトナー像が形成され、このトナー像が転写材に転写される。
接触帯電式の帯電器は、帯電ローラが感光体ドラム表面を押圧して帯電しており、コロナ放電式の帯電器による場合に比してオゾンや窒素酸化物が生じないため、画像品質の向上を図ることができる。
【0013】
また、除電ユニットは、帯電に至る前に感光体ドラム表面に除電光を照射し、転写後の感光体ドラム表面に残された電荷(残留電荷)を除去する。
ここで、帯電ローラからの電圧が感光体ドラム表面に直接に接触して印加されると、感光体ドラムの寿命が短くなる。これら帯電ローラと感光体ドラムとのニップ部分、特に帯電ローラの端部にて帯電ローラから感光体ドラムへの流れ込み電流がコロナ放電式の場合に比して増え、帯電時の放電量(放電エネルギー)による感光体ドラムの表面劣化が促進するからである。
【0014】
しかしながら、本発明によれば、帯電ローラは、感光体ドラムの回転軸線方向でみた現像幅の外側領域が通紙幅から離れるに連れて縮径する形状で構成されており、帯電ローラのうち上記現像幅の外側領域に相当する端部は、感光体ドラム表面に接触する接触端部と、帯電ローラが感光体ドラムを押圧しても感光体ドラム表面に接触し難い縮径端部とを有し、従来のような帯電ローラのエッジ部分への応力集中、及びこの応力集中の生じたエッジ部分のやや内側の歪みを緩和している。
【0015】
これにより、帯電ローラの端部では感光体ドラムへの過剰な流れ込み電流が減り、帯電時の放電量(放電エネルギー)による感光体ドラムの表面劣化を抑制できる。
同時に、除電ユニットは、感光体ドラムの表面のうち、この通紙幅の外側領域に対する除電光の光量をこの通紙幅の内側領域に比して弱めているので、この通紙幅の外側領域では、次の画像形成時に必要な表面電位に高める際に帯電から感光体ドラムへの流れ込み電流が少なくて済むため、この放電エネルギーの発生による感光体ドラムの表面劣化が抑えられる。
これらの結果、従来に比して感光体ドラムの磨耗を抑制でき、感光体ドラムの長寿命化を達成できる。
【0016】
第2の発明は、第1の発明の構成において、除電ユニットは、通紙幅の外側領域に対して除電光を照射することを特徴とする。
第2の発明によれば、第1の発明の作用に加えてさらに、除電ユニットは、感光体ドラムの表面のうち通紙幅の外側領域に対し、除電光を全く照射しないのではなく、通紙幅の内側領域に対する光量に比して弱めつつも照射している。したがって、この通紙幅の内側領域に必要な光量を確保可能になり、画像品質は損なわれない。
【0017】
また、除電光を全く照射しないと、逆チャージトナーが現像される懸念もあるが、上述のように照射は低光量ながらも行われることから、当該領域の表面電位は過度に高くならず、逆チャージトナーの現像による機内汚染も防止できる。さらに、除電光の光量を弱める箇所は、通紙幅の外側領域であるので、メモリー画像の発生の懸念もない。
【0018】
第3の発明は、第1や第2の発明の構成において、感光体ドラムは、その表面に有機系の感光層を有した感光体ドラムであることを特徴とする。
第3の発明によれば、第1や第2の発明の作用に加えてさらに、有機系の感光層を有した感光体ドラムの表面は特に削られ易く、放電による劣化は当該感光体ドラムに大きな影響を及ぼす懸念があるが、上記帯電ローラの形状と除電ユニットの光量制御とを組み合わせれば、この感光体ドラムの特性を長期間に亘って維持可能になり、特に顕著な効果を奏する。
【0019】
第4の発明は、第1から第3の発明の構成において、トナー像は、外添剤を含むトナーで現像して形成されていることを特徴とする。
第4の発明によれば、第1から第3の発明の作用に加えてさらに、仮に感光体ドラムの表面劣化が進行すると、この感光体ドラムの表面に接触する接触部材によって感光体ドラムの表面が研磨され易くなるが、上記帯電ローラの形状及び除電ユニットの光量制御の組み合わせにより、帯電ローラのエッジ部分への応力集中や歪みを緩和するとともに、トナー像の形成範囲以外に対する除電光の光量を弱め、感光体ドラムの表面劣化を抑えており、上述した放電エネルギーの発生に伴う感光体ドラムの磨耗抑制の他、外添剤の研磨による感光体ドラムの磨耗抑制も図ることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、帯電ローラの端部にて放電エネルギーの発生による感光体ドラムの表面劣化を抑えており、感光体ドラムの長寿命化を達成できる画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本実施例のプリンタの概略構成図である。
【図2】図1の画像形成ユニット周辺の断面図である。
【図3】図2の感光体ドラム、帯電ローラ、現像ローラの幅の説明図である。
【図4】図3の帯電ローラの端部の拡大図である。
【図5】図2のイレーサの平面図である。
【図6】(a)は第2実施例のイレーサの平面図であり、(b)は第3実施例のイレーサの平面図である。
【図7】比較例の帯電ローラの端部の拡大図である。
【図8】図7の比較例による感光体ドラム軸方向の帯電電流分布を説明した図である。
【図9】図3の帯電ローラの形状変更のみによる感光体ドラム軸方向の帯電電流分布を説明した図である。
【図10】本実施例による感光体ドラム軸方向の帯電電流分布を説明した図である。
【図11】耐久実験結果の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の好適な実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1には、画像形成装置の一例であるカラー印刷可能なプリンタ1の構造が概略的に示されている。同図に示された断面はプリンタ1の左側面からみたものである。このため、プリンタ1の前面は同図中の右側に、背面は左側にそれぞれ位置する。
【0023】
同図に示されるように、プリンタ1の装置本体2の上方には排紙トレイ36が設けられ、この排紙トレイ36の近傍には、使用者の各種操作に供される複数の操作キーや、各種情報を表示する画面を配置したフロントカバー5が設けられている。
また、この装置本体2の下方には給紙カセット4が配置され、その収容部40には、枚葉の用紙が積層された状態で収納されている。同図でみて収容部40の右上方には給紙ローラ46が設けられる。
【0024】
そして、用紙は、同図において給紙カセット4の右上方に向けて送出され、この送出された用紙は、装置本体2の内部でプリンタ1の前面に沿って上方に向けて搬送される。
また、給紙カセット4は、プリンタ1の前面側、つまり、図1において右方向に向けて引き出し可能に構成されており、この引き出した状態にて、収容部40に新たな用紙を補充したり、用紙を別の種類の用紙に入れ替え可能となる。
【0025】
装置本体2の内部には、給紙カセット4からの用紙搬送方向でみて下流側に搬送ローラ10、レジストローラ14、画像形成部16及び2次転写部30が順番に配置されている。
画像形成部16には4個の画像形成ユニット17が並設され、各画像形成ユニット17には感光体ドラム18がそれぞれ設けられている(図1及び図2)。この感光体ドラム18は回転自在に設置され、図示しない駆動モータによって図1及び図2の時計回りにそれぞれ駆動する。
【0026】
本実施例の感光体ドラム18は、例えばφ30mmの直径で形成され、その表面に有機系の感光層を有した単層OPCドラムである(OPC:Organic Photoconductor)。
また、この感光体ドラム18と給紙カセット4との間には露光部15が備えられており(図1)、この露光部15からは、レーザ光が各感光体ドラム18に向けてそれぞれ照射される。そして、これら図1及び図2に示されるように、各感光体ドラム18の周囲の適宜位置には、帯電器20、現像器24、中間転写ローラ13、クリーニング部50やイレーサ(除電ユニット)19がそれぞれ設けられている。
【0027】
この帯電器20は、図2にも示される如く画像形成ユニット17の下部に位置し、上方に向けて開口したケーシング70の内部に、感光体ドラム18に接する帯電ローラ21、及び帯電ローラ21の表面を研磨摺擦にて清掃するブラシを備えた摺擦ローラ22を有し、感光体ドラム18の表面を帯電させる。なお、帯電ローラ21は、例えばエピクロルヒドリンゴム製であり、φ12mmの直径で形成されている。
【0028】
また、現像器24は図1及び図2において画像形成ユニット17の左方に配置され、感光体ドラム18に対峙する現像ローラ25を有する。この現像ローラ25は図示しない駆動モータによって同図の反時計回りに駆動する。
なお、この図2の参照符号26はギャップ規制コロである。当該ギャップ規制コロ26は、現像ローラ25の両端に設けられており、感光体ドラム18に連れ回って現像ローラ25と感光体ドラム18とのギャップを設定する。
【0029】
画像形成部16はゴム製の中間転写ベルト(転写材)12を有し、当該中間転写ベルト12は各感光体ドラム18の上方に配置され、この中間転写ベルト12と排紙トレイ36との間には4個のトナーコンテナ23が配設されている(図1)。これら各トナーコンテナ23は、プリンタ1の背面側から前面側に向けて、マゼンタ用、シアン用、イエロー用、そして、ブラック用の順に配設され、このブラック用のトナーコンテナの容量が最も大きく構成される。
【0030】
2次転写部30には2次転写ローラ31が備えられ、この2次転写ローラ31は中間転写ベルト12に対して斜め下方から圧接可能に構成されている。これら中間転写ベルト12と2次転写ローラ31とは、トナー像を用紙に転写するためのニップ部を形成する。
また、用紙搬送方向でみて2次転写部30の下流側には、定着部32、排出分岐部34及び排紙トレイ36が順番に配置されている。
【0031】
本実施例では、2次転写部30と手差しトレイ3との間に両面印刷搬送路38が形成されている。この両面印刷搬送路38は、排出分岐部34から装置本体2の前面側で分岐して下方に向けて延び、レジストローラ14の上流側に連結している。
ここで、本実施例のトナーには、微量の外添剤(酸化チタン、シリカ、アルミナなど)が添加されている。上記のクリーニング部50は、図2に示されるように、感光体ドラム18の回転方向でみて中間転写ローラ(1次転写ローラ)13との転写位置の下流側にて、この感光体ドラム18に向けて開口したハウジング51を備えており、このハウジング51の適宜位置に、クリーニングブレード52やトナー回収部80を有している。
【0032】
具体的には、クリーニングブレード52は、ハウジング51の下端に固定される亜鉛鋼板の本体や、この本体に溶着されたポリウレタンゴム製のブレード部からなり、このブレード部のエッジが感光体ドラム18の回転軸線に沿って延びている。そして、当該エッジが感光体ドラム18の回転軸線よりも低い位置にてカウンタ方向で接し、感光体ドラム18の表面に付着した外添剤を含む残留トナーや放電生成物などを掻き取っている。
【0033】
このクリーニングブレード52によって感光体ドラム18の表面から掻き取られた残留トナー等は、トナー回収部80から回収される。
詳しくは、トナー回収部80は、ハウジング51の底面近傍にスクリュー88を有する。このスクリュー88は、図2でみてクリーニングブレード52の右側に設置されており、感光体ドラム18の回転軸線方向に沿って延び、その先端が図示しない駆動モータに連結されている。そして、この駆動モータが駆動すると、ハウジング51内の残留トナー等は、スクリュー88を経由して回収容器に集められる。
【0034】
上述のイレーサ19は、感光体ドラム18の回転方向でみてクリーニング部50の下流側であって帯電器20の上流側に配置されており、転写を経てクリーニング部50によるクリーニング工程の後に、その除電光を感光体ドラム18の表面に照射し、次の帯電に対して感光体ドラム18の表面に残された電荷(残留電荷)を除去する。
【0035】
ところで、本実施例の画像形成ユニット17では、各回転軸線を並べてみると、現像ローラ25、帯電ローラ21、並びに感光体ドラム18などの各幅は同じではない。
詳しくは、これら各構成の幅の関係を説明した図3に示される如く、この図に破線で示された感光体ドラム18の感光層の幅(ドラム幅)は、同図に2点鎖線で示された帯電幅よりも広く設定される。なお、上述した転写ベルト12の幅は、感光層幅と帯電幅の間、或いはこの帯電幅と同等に設定される。
【0036】
また、この帯電幅は、図3に実線で示された現像幅よりも広く設定される。仮に帯電幅が現像幅よりも狭いと、この帯電幅の外側領域にトナーが付着し続けるからである。
さらに、この現像幅は、図3に1点鎖線で示された通紙幅よりも常に広く設定される。用紙の左右両端にもトナー像を形成可能にするためである。
【0037】
すなわち、感光体ドラム18の表面において、この感光体ドラム18の回転軸線方向でみた通紙幅の外側領域は、転写ベルト12の転写面でも用紙に接触しないため、画像を形成させない範囲になる。
そして、図3に実線で示された現像幅の外側領域であって、図3に2点鎖線で示された帯電幅の内側領域は、帯電ローラ21の端部に対峙し、帯電ローラ21から感光体ドラム18の表面への流れ込み電流が通紙幅の内側領域に比して増える。
【0038】
特に、感光体ドラム18のうち、帯電ローラ21のエッジ近傍、換言すれば、図3に2点鎖線で示された帯電幅の境界位置の周辺には、帯電ローラ21からの押圧力が集中し易い。一方、そのやや内側領域、換言すれば、図3の斜線で示された領域76Aに対峙する帯電ローラ21には、感光体ドラム18の表面から離れる歪みが生じ、これら応力集中及び歪みが起因となって、感光体ドラム18の領域76Aには過剰な放電現象が起こり易くなる。
【0039】
さらに、本実施例の如く外添剤を含むトナーは、現像バイアス電圧の印加によって、当該領域76Aの内側部分、つまり、図3に1点鎖線で示された通紙幅の外側領域であって、同図に実線で示された現像幅の内側領域76Bの周辺にも向かう。
このトナー自体は感光体ドラム18の表面に付着せず、現像器24に戻る。当該領域76Bは帯電幅の内側領域に該当するからである。
【0040】
一方、外添剤自体はトナーから脱離して当該領域76Bに取り残され、その後、この外添剤のみが感光体ドラム18から転写ベルト12の転写面に転写されると、次回に接触する感光体ドラム18の当該領域76Bが外添剤で研磨されることになる。そして、この領域76Bは、マゼンタ用、シアン用、イエロー用、及びブラック用の総ての感光体ドラム18に形成されてしまう。
【0041】
そこで、本実施例では、帯電ローラ21の端部形状の変更、かつ、イレーサ19による除電光量の調整で対応している。
まず、帯電ローラ21については、その端部、つまり、上記現像幅の外側領域に相当する部分が通紙幅の内側領域から離れるに連れて縮径されている。
より詳しくは、本実施例の帯電ローラ21は、上記図3の一部分をより拡大した図4に示されるように、感光体ドラム18に接触する接触端部86と、その外径が小さくされており、感光体ドラム18との距離を徐々に広げる縮径端部88とを有している。
【0042】
この帯電ローラ21の端部のうち、前者の接触端部86は上記領域76Aに対峙して後者の縮径端部88に連なる。そして、この縮径端部88は、感光体ドラム18の表面から帯電ローラ21の回転軸線に向けて逃げる形状、例えばC面取りの如くエッジ部分が斜めに削られており、帯電ローラ21が感光体ドラム18を押圧しない場合には感光体ドラム18の表面に接触しないし、さらに、仮に感光体ドラム18を押圧しても感光体ドラム18の表面に接触し難くなる。
【0043】
次に、イレーサ19による除電光量の調整については、図3に1点鎖線で示された通紙幅の外側領域に対する除電光の光量をこの通紙幅の内側領域に比して弱めている。
具体的には、本実施例のイレーサ19は、図2の他、感光体ドラム18の回転軸線からみた図5に示される如く、この感光体ドラム18の回転軸線に沿って延びたホルダ60と、このホルダ60の長手方向に沿って埋設されたLEDチップ62,64とを有する。
【0044】
LEDチップ62は感光体ドラム18のうち、上述した通紙幅の内側領域を照射するようにホルダ60に配置される。LEDチップ64は両端側に配置され、上記領域76A,76Bの照射を担っている。
ただし、本実施例のLEDチップ62,64は、いずれも略同等の発光特性を有している。それは、本実施例におけるLEDチップ64からの光量は、領域76A,76Bに到達するまでの間に弱められているからである。
【0045】
より詳しくは、これら図2及び図5に示されるように、帯電器20のケーシング70のうち、イレーサ19側に配置された側壁72はLEDチップ62,64の除電光を帯電域に回り込ませないように機能するが、この側壁72には遮光部材74が立設されている。
この遮光部材74は、感光体ドラム18からみてLEDチップ64の一部分を覆うように、側壁72に取り付けられている。これにより、LEDチップ64が担う上記領域76A,76Bへの光量は、LEDチップ62が担う上述の通紙幅の内側領域への光量に比して弱められつつも照射される。
【0046】
再び図1に戻り、上記プリンタ1が印刷を行う際は、給紙ローラ46によって給紙カセット4から用紙が1枚ずつ分離して送出される。送出された用紙はレジストローラ14に到達する。このレジストローラ14は、用紙の斜め送りを矯正しつつ、画像形成部16で形成されるトナー像との画像転写タイミングを計りながら、用紙を所定の給紙タイミングにて2次転写部30へと送出する。
【0047】
一方、図示しないコントローラには、印刷の元になる画像データが外部から受信可能に構成されている。この画像データは、文字や符号、図形、記号、線図、模様等の各種の画像がデータ化されたものである。そして、このデータに基づき、このコントローラでは光の照射などを制御する。
詳しくは、各感光体ドラム18に対し、その領域に応じて強弱を設けつつ、イレーサ19がそれぞれ点灯して除電し、次いで、帯電器20が感光体ドラム18の表面をそれぞれ帯電する。
【0048】
次いで、露光部15が感光体ドラム18の表面にレーザ光をそれぞれ照射すると、各感光体ドラム18の表面には静電潜像が作られ、現像バイアス電圧の印加によりこの静電潜像から各色のトナー像が形成される。
各トナー像は中間転写ベルト12に重ね合わされ(1次転写)、2次転写部30にて用紙に2次転写される。なお、感光体ドラム18の表面に残留したトナーはクリーニング部50で除去される。
【0049】
続いて、用紙は未定着トナー像を担持した状態で定着部32に向けて送られ、この定着部32にて加熱及び加圧され、トナー像が定着される。その後、定着部32から送出された用紙は排出ローラ35を介して排紙トレイ36に排出され、高さ方向に積層される。
この片面印刷に対し、両面印刷を行う場合には、定着部32から排出された用紙は、排出分岐部34でその搬送方向が切り替えられる。つまり、片面に印刷された用紙は装置本体2内に引き戻され、両面印刷搬送路38に搬送される。続いて、この用紙はレジストローラ14の上流側に向けて送出され、2次転写部30に向けて再び送られる。これにより、用紙の未だ印刷がされていない面にトナー像が転写される。
【0050】
ところで、上述の実施例では、遮光部材74を用いてLEDチップ64の光量を弱めているが、領域76A,76Bに到達する光量を弱める構成は遮光部材74に限定されない。
詳しくは、図6(a)に示されたイレーサ19Aもまた、上記実施例と同様に、いずれも略同等の発光特性を有するLEDチップ62,64を用い、LEDチップ62が通紙幅の内側領域を、LEDチップ64が領域76A,76Bをそれぞれ担っている。
【0051】
しかしながら、この図6(a)のイレーサ19Aでは、ホルダ60Aが、LEDチップ64と隣接するLEDチップ62との間隔を、他のLEDチップ62,62の間隔に比して広げて配置しており、この場合にも、このLEDチップ64が担う領域76A,76Bへの光量は、LEDチップ62が担う上述の通紙幅の内側領域への光量に比して弱められつつ照射される。
【0052】
一方、図6(b)に示されたイレーサ19Bでは、LEDチップ62やLEDチップ64Bがホルダ60に略等間隔で埋設され、LEDチップ62が通紙幅の内側領域を、LEDチップ64Bが領域76A,76Bをそれぞれ担う。しかし、このLEDチップ64Bは、LEDチップ62よりも光量の少ないランクのチップが選択されている。よって、この場合にも、このLEDチップ64Bが担う領域76A,76Bへの光量は、LEDチップ62が担う上述の通紙幅の内側領域への光量に比して弱められつつ照射されることになる。
【0053】
以上のように、本実施例によれば、感光体ドラム18の回転駆動によって感光体ドラム18の表面には、その潜像をトナーで現像したトナー像が形成され、このトナー像が中間転写ベルト12に転写される。
接触帯電式の帯電器20は、帯電ローラ21が感光体ドラム18の表面を押圧して帯電しており、コロナ放電式の帯電器による場合に比してオゾンや窒素酸化物が生じないため、画像品質の向上を図ることができる。また、イレーサ19(19A,19B)は、帯電に至る前に感光体ドラム18の表面に除電光を照射し、転写後の感光体ドラム18の表面に残された電荷(残留電荷)を除去する。
【0054】
ここで、帯電ローラ21は、感光体ドラム18の回転軸線方向でみた現像幅の外側領域が通紙幅から離れるに連れて縮径する形状で構成されており、従来のような帯電ローラのエッジ部分への応力集中、及びこの応力集中の生じたエッジ部分のやや内側の歪みを緩和している。
これにより、帯電ローラの端部では感光体ドラムへの過剰な流れ込み電流が減り、帯電時の放電量(放電エネルギー)による感光体ドラム18の表面劣化を抑制できる。
【0055】
同時に、イレーサ19(19A,19B)では、感光体ドラム18の表面のうち、この通紙幅の外側領域に対する除電光量がこの通紙幅の内側領域に対する除電光量に比して弱められているので、この通紙幅の外側領域では、次の画像形成時に必要な表面電位に高める際に帯電から感光体ドラム18への流れ込み電流が少なくて済むため、この放電エネルギーの発生による感光体ドラム18の表面劣化が抑えられる。
【0056】
また、本実施例の如くトナーが外添剤を含む場合には、感光体ドラム18の表面劣化が進行すると、この感光体ドラム18の表面が転写ベルト12やクリーニングブレード52で研磨され易くなり、この磨耗量が感光体ドラム18の寿命を特に短くする懸念がある。しかし、本実施例の如く上記帯電ローラ21の形状変更及びイレーサ19(19A,19B)の光量制御の組み合わせによれば、上述した放電エネルギーの発生に伴う感光体ドラム18の磨耗抑制の他、外添剤の研磨による感光体ドラム18の磨耗抑制も図ることができる。
【0057】
これらの点について詳述する。
比較例として、帯電ローラ21の形状をそのエッジの際立った単なる円筒状に形成すると、帯電ローラ21から感光体ドラム18の表面への押圧力が帯電ローラ21のエッジ部分108に集中し(図7)、このエッジ部分108のやや内側には感光体ドラム18の表面から離れる歪み部分106が生ずる。
【0058】
そして、これでは、図8に示される如く、当該エッジ部分108から感光体ドラム18の表面への流れ込み電流が極端に上昇し、このエッジ部分108のやや内側の歪み部分106では過剰な放電現象が起こり、放電エネルギーによる感光体ドラム18の表面劣化の促進が顕著になる。
つまり、図7の比較例では、図11の◆印で示されるように、上記領域76Aに相当する箇所が非常に大きく削れてしまうため、この領域76Aでは電圧に耐えられずに感光膜を貫通するリークが生じ、電流は外方向に向けて逃げて感光体ドラム18の表面の中央部分が帯電されず、横黒筋などの異常画像を招く。
【0059】
これに対し、本実施例では、まず、帯電ローラ21のうち現像幅の外側領域に相当する端部は、上記領域76Aに接触する接触端部86を有するが、当該領域76Aの外側に縮径端部88を有しており、この縮径端部88は、帯電ローラ21が感光体ドラム18を押圧すると、その押圧力によって感光体ドラム18の表面に向けて拡がるものの、この感光体ドラム18の表面には接触しない。
【0060】
これにより、接触端部86は領域76Aから離れず、従来のような帯電ローラの押圧力によるエッジ部分108への応力集中、及びこのエッジ108のやや内側の歪み部分106を緩和できるため、帯電ローラ21の端部では、感光体ドラム18への過剰な流れ込み電流が減り(図9)、放電エネルギーによる感光体ドラムの表面劣化を抑制できることが分かる。
【0061】
しかも、イレーサ19(19A,19B)による通紙幅の外側領域に対する除電光量が弱められており、この通紙幅の外側領域では、感光体ドラム18の感光膜中に発生するキャリアが減少して帯電工程時の帯電阻害効果が抑制されるため、この放電エネルギーの発生による感光体ドラムの表面劣化が抑えられる。
【0062】
すなわち、本実施例の如く上記帯電ローラ21の形状変更及びイレーサ19(19A,19B)の光量制御の組み合わせによれば、図10に示されるように、感光体ドラム18への過剰な流れ込み電流を大幅に減らすことができる。
これらの結果、本実施例によれば、図11の●印で示されるように、上記領域76A,76Bに相当する箇所の磨耗量を抑制でき、感光体ドラム18の耐圧性が維持可能な膜厚さを確保できる。この結果、良好な画像形成が長期間に亘って行われ、プリンタ1の信頼性が向上する。
【0063】
次に、イレーサ19(19A,19B)では、感光体ドラム18の表面のうち通紙幅の外側領域に対し、除電光を全く照射しないのではなく、通紙幅の内側領域に対する光量に比して弱めつつも照射している。したがって、この通紙幅の内側領域に必要な光量は一定に維持可能になり、画像品質は損なわれない。
また、除電光を全く照射しないと、逆チャージトナーが現像される懸念もあるが、上述のように照射は低光量ながらも行われることから、当該領域の表面電位は過度に高くならず、逆チャージトナーの現像による機内汚染も防止できる。さらに、除電光の光量を弱める箇所は、通紙幅の外側領域であるので、メモリー画像の発生の懸念もない。
【0064】
さらに、OPCドラム18の表面は特に削られ易く、放電による劣化や外添剤による研磨はOPCドラム18に大きな影響を及ぼす懸念があるが、上記帯電ローラ21の形状変更とイレーサ19(19A,19B)の光量制御とを組み合わせれば、このOPCドラム18の特性を長期間に亘って維持可能になり、特に顕著な効果を奏する。
【0065】
さらに、図2,5の実施例で示されるように、遮光部材74が領域76A,76Bに到達する除電光の光量を遮蔽によって弱めており、放電エネルギーの発生を確実に減らすことができる。
さらにまた、図6(a)の実施例で示される如く、領域76A,76Bを担うLED64の間隔をLED62の間隔よりも広げ、感光体ドラム18の単位面積当たりの個数を減らして領域76A,76Bに到達する除電光の光量を弱めており、この場合にも放電エネルギーの発生を確実に減らすことができる。
【0066】
また、図6(b)の実施例で示されるように、領域76A,76Bを担うLED64Bの発光特性をLED62の発光特性よりも下げ、同じ電流を与えても低光量にして領域76A,76Bに到達する除電光の光量を弱めており、この場合にも放電エネルギーの発生を確実に減らすことができる。
本発明は、上記実施例に限定されず、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で種々の変更を行うことができる。
【0067】
例えば、上記実施例では、トナー像が感光体ドラムの上方で中間転写ベルトに転写しているが、この感光体ドラムの下方でベルトに転写しても良い。
また、上記実施例では、中間転写ベルトを採用したプリンタ1で説明されている。しかし、本発明は、感光体ドラム18のトナー像を用紙に直接に転写する場合にも適用可能であり、本発明の転写材は用紙であっても良い。
【0068】
さらに、この実施例では画像形成装置としてプリンタに具現化した例を示しているものの、本発明の画像形成装置は、複合機、複写機やファクシミリ等にも当然に適用可能である。
そして、これらいずれの場合にも上記と同様に、感光体ドラムの長寿命化を達成できるとの効果を奏する。
【符号の説明】
【0069】
1 プリンタ(画像形成装置)
12 中間転写ベルト(転写材)
18 感光体ドラム
19,19A,19B イレーサ(除電ユニット)
20 帯電器
21 帯電ローラ
86 接触端部
88 縮径端部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
感光体ドラムの表面に帯電や露光を経て形成された潜像をトナーで現像してトナー像を形成し、このトナー像を転写材に転写する画像形成装置であって、
前記感光体ドラムの表面に接触して帯電させる帯電ローラを有した帯電器と、
この帯電に至る前に前記感光体ドラムの表面に除電光を照射し、前記転写を経た後のこの感光体ドラムの表面に残された電荷を除去する除電ユニットとを具備し、
前記帯電ローラは、前記感光体ドラムの回転軸線方向でみた現像幅の外側領域が通紙幅から離れるに連れて縮径されており、
前記除電ユニットは、前記通紙幅の外側領域に対する除電光の光量をこの通紙幅の内側領域に比して弱くすることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像形成装置であって、
前記除電ユニットは、前記通紙幅の外側領域に対して除電光を照射することを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の画像形成装置であって、
前記感光体ドラムは、その表面に有機系の感光層を有した感光体ドラムであることを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の画像形成装置であって、
前記トナー像は、外添剤を含むトナーで現像して形成されていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項1】
感光体ドラムの表面に帯電や露光を経て形成された潜像をトナーで現像してトナー像を形成し、このトナー像を転写材に転写する画像形成装置であって、
前記感光体ドラムの表面に接触して帯電させる帯電ローラを有した帯電器と、
この帯電に至る前に前記感光体ドラムの表面に除電光を照射し、前記転写を経た後のこの感光体ドラムの表面に残された電荷を除去する除電ユニットとを具備し、
前記帯電ローラは、前記感光体ドラムの回転軸線方向でみた現像幅の外側領域が通紙幅から離れるに連れて縮径されており、
前記除電ユニットは、前記通紙幅の外側領域に対する除電光の光量をこの通紙幅の内側領域に比して弱くすることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像形成装置であって、
前記除電ユニットは、前記通紙幅の外側領域に対して除電光を照射することを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の画像形成装置であって、
前記感光体ドラムは、その表面に有機系の感光層を有した感光体ドラムであることを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の画像形成装置であって、
前記トナー像は、外添剤を含むトナーで現像して形成されていることを特徴とする画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−175142(P2011−175142A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−39820(P2010−39820)
【出願日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】
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