説明

画像形成装置

【課題】移動体の変位に伴うハーネスの破損を防止するとともに、装置本体の小型化を図ることができる画像形成装置を提供することを目的とする。
【解決手段】画像形成装置(複合機1)は、画像を形成する画像形成部と、画像形成部を収容する装置本体2と、装置本体2に対して相対的に変位可能に配される移動体(原稿搬送装置90)と、装置本体2と移動体とを電気的に接続するとともに、移動体の変位を吸収するための屈曲部113が形成されたハーネス110とを備えている。そして、この屈曲部113は、移動体に配されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装置本体と、装置本体に対して移動可能となる移動体(原稿読取部等)とを繋ぐハーネスを備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、用紙に画像を形成する画像形成部を収容した装置本体と、装置本体の上側に揺動可能に設けられ、原稿に形成された画像を読み取る原稿読取装置とを備えた画像形成装置が知られている(特許文献1参照)。具体的に、この技術では、原稿読取装置で読み取った画像を装置本体内の制御基板に出力したり、装置本体から原稿読取装置内のモータ等に電力を供給するために、装置本体と原稿読取装置とがハーネスで繋がっている。
【0003】
そして、この技術では、ハーネスの一部をU字状に折り曲げ、このU字状の屈曲部分を装置本体(詳しくは、原稿読取装置の揺動軸付近)に配置することで、原稿読取装置を装置本体から離すように揺動させたときには、U字状の屈曲部分がL字状に開いて、ハーネスに余分な張力が加わらないようにしてハーネスが破損するのを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−58947号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、一般に、装置本体に原稿読取装置を取り付けた複合機は、モデルの種類に応じて原稿読取装置を設けることなく装置本体単体にて販売されるものがある。装置本体のみをプリンタとして使用する場合には、自宅の部屋などの狭いスペースに配置して個人的に使用される場合が多いので、制御基板等を装置本体内に密集して配置して装置本体を小型化する必要がある。しかしながら、従来技術の構造であると、装置本体内にハーネスのU字状の屈曲部分を配置しているので、この屈曲部分と制御基板等が干渉しないように、制御基板等を別の空間に密集させなければならず、小型化することが困難となるといった問題があった。このような問題は、装置本体に原稿読取装置を揺動可能に配する構成だけでなく、装置本体に移動体が移動可能に取り付けられた構成の画像形成装置においても同様に生じる可能性がある。
【0006】
そこで、本発明は、原稿読取装置等の移動体の変位に伴うハーネスの破損を防止するとともに、装置本体の小型化を図ることができる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明に係る画像形成装置は、画像を形成する画像形成部と、画像形成部を収容する装置本体と、装置本体に対して相対的に変位可能に配される移動体と、装置本体と移動体とを電気的に接続するとともに、移動体の変位を吸収するための屈曲部が形成されたハーネスとを備え、前記屈曲部が前記移動体に配されていることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、ハーネスの屈曲部によって移動体の変位が吸収されるので、ハーネスの破損を防止することができる。また、ハーネスの屈曲部を移動体に配することで、装置本体内にハーネスの屈曲部を収容するためのスペースを設ける必要がなくなるので、装置本体を小型化することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、移動体の変位に伴うハーネスの破損を防止するとともに、装置本体の小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態に係る複合機を示す説明図である。
【図2】(a)〜(c)は、フラットベッドスキャナに対する原稿搬送装置の変位状態を示す説明図である。
【図3】フラットベッドスキャナ上に原稿搬送装置を載置させているときのハーネスの屈曲部周りの構造を示す説明図(a)と、原稿搬送装置を上方に移動させたときのハーネスの屈曲部周りの構造を示す説明図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明の一実施形態に係る画像形成装置の一例としての複合機1について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の説明においては、複合機の使用時におけるユーザを基準にした方向で説明することとする。すなわち、図1においては、右側を「前側(手前側)」、左側を「後側(奥側)」、紙面垂直方向のうち奥側を「右側」、紙面垂直方向のうち手前側を「左側」とする。また、紙面に向かって上下方向を「上下方向」とする。
【0012】
図1に示すように、複合機1は、プリンタとして機能する装置本体2と、原稿読取装置100とを備えている。
【0013】
装置本体2は、用紙Pを給紙するためのフィーダ部3や、用紙Pに画像を形成するための画像形成部4などを備えている。
【0014】
フィーダ部3は、装置本体2内の底部に着脱可能に装着される給紙トレイ31と、用紙Pの搬送を行う用紙搬送機構32を主に備えている。そして、フィーダ部3では、給紙トレイ31内の用紙Pが、用紙搬送機構32によって画像形成部4に一枚ずつ搬送される。
【0015】
画像形成部4は、装置本体2内に収容されており、主に、スキャナユニット5、プロセスカートリッジ6、定着器7などを備えている。
【0016】
スキャナユニット5は、装置本体2内の上部に設けられ、図示しないレーザ発光部、ポリゴンミラー、レンズおよび反射鏡などを備えている。このスキャナユニット5では、レーザビームを、感光ドラム65の表面上に高速走査にて照射する。
【0017】
プロセスカートリッジ6は、装置本体2の手前側に設けられたフロントカバー2Aを適宜開放することで、装置本体2に対して着脱可能となっている。プロセスカートリッジ6内には、主に、現像ローラ61、層厚規制ブレード62、供給ローラ63、トナー収容室64、アジテータ64A、感光ドラム65、スコロトロン型帯電器66および転写ローラ67が主に設けられている。
【0018】
そして、このプロセスカートリッジ6では、トナー収容室64内のトナーが、アジテータ64Aで撹拌された後、供給ローラ63により現像ローラ61に供給され、このとき、供給ローラ63と現像ローラ61との間で正に摩擦帯電される。現像ローラ61上に供給されたトナーは、現像ローラ61の回転に伴って、層厚規制ブレード62と現像ローラ61との間に進入し、さらに摩擦帯電されつつ、一定厚さの薄層として現像ローラ61上に担持される。
【0019】
一方、回転する感光ドラム65の表面は、スコロトロン型帯電器66により一様に正帯電された後、スキャナユニット5からのレーザビームの高速走査により露光される。これにより、露光された部分の電位が下がって、画像データに基づく静電潜像が形成される。
【0020】
次いで、現像ローラ61の回転により、現像ローラ61上に担持されているトナーが、感光ドラム65の表面上に形成される静電潜像に供給されて、感光ドラム65の表面上にトナー像が形成される。その後、感光ドラム65と転写ローラ67の間で用紙Pが搬送されることで、感光ドラム65の表面に担持されているトナー像が用紙P上に転写される。
【0021】
定着器7は、加熱ローラ71と、加熱ローラ71と対向して配置され加熱ローラ71を加圧する加圧ローラ72とを備えている。そして、このように構成される定着器7では、用紙P上に転写されたトナーを、用紙Pが加熱ローラ71と加圧ローラ72との間を通過する間に熱定着させている。なお、定着器7で熱定着された用紙Pは、定着器7の下流側に配設される排紙ローラRに搬送され、この排紙ローラRから排紙トレイ21上に送り出される。
【0022】
ここで、排紙トレイ21は、装置本体2の上面2Bから一段凹みつつ、前方に開口するように形成されている。そして、装置本体2の上面2Bには、原稿読取装置100がオプションとして選択的に装着可能となっている。
【0023】
<原稿読取装置>
原稿読取装置100は、装置本体2の後側にある最上部(上面2B)から前方に張り出すように上面2Bに固定されており、原稿読取部の一例としてのフラットベッドスキャナ80と、移動体の一例としての原稿搬送装置90とを備えて構成されている。
【0024】
フラットベッドスキャナ80は、原稿を静置(載置)する原稿台となるプラテンガラス81と、イメージセンサ82とを主に備えている。このフラットベッドスキャナ80では、前後に移動するイメージセンサ82によって、プラテンガラス81に静置された原稿を走査しながら読み取ることが可能となっている。また、このフラットベッドスキャナ80では、原稿搬送装置90で搬送している原稿Mも、イメージセンサ82によって読み取ることが可能となっている。
【0025】
原稿搬送装置90は、待機位置にあるイメージセンサ82を通るように原稿Mを搬送することで、原稿Mを搬送しながらイメージセンサ82で読み取らせる装置であり、フラットベッドスキャナ80(装置本体2)に対して移動可能(相対的に変位可能)に設けられている。具体的に、原稿搬送装置90の後側下部には、回動軸91が設けられ、この回動軸91が、フラットベッドスキャナ80の後側上部に設けられる軸受部83の長孔83Aによって回動可能かつ上下動可能に支持されている。
【0026】
これにより、図2(a)に示すように、原稿搬送装置90を単に回動させると、フラットベッドスキャナ80の上面が開放されて、プラテンガラス81上に原稿を載せることが可能となっている。また、図2(b)に示すように、原稿搬送装置90を回動させつつ上方に持ち上げると、原稿搬送装置90とフラットベッドスキャナ80との隙間が大きく空くこととなる。
【0027】
そのため、図2(c)に示すように、本Bを開いた状態でプラテンガラス81上に載せても、本Bの全体を原稿搬送装置90で上方から押さえ込んで、良好に読取を行うことが可能となっている。
【0028】
そして、図3(a)に示すように、移動可能となる原稿搬送装置90と、移動不能な装置本体2とは、ハーネス110によって電気的に接続されている。具体的には、ハーネス110は、原稿搬送装置90内の搬送ローラ等を駆動させるためのモータ92と、モータ92に制御信号を送る装置本体2内の制御基板22とを電気的に接続させている。より具体的には、ハーネス110の一端111が、第1接続部の一例としてのモータ92の接続端子92Aに接続され、他端112が、第2接続部の一例としての制御基板22の接続端子22Aに接続されている。
【0029】
そして、ハーネス110には、原稿搬送装置90の変位を吸収するためのU字状の屈曲部113が形成されている。この屈曲部113は、原稿搬送装置90内に配され、原稿搬送装置90内のたるみ吸収機構93によってたるみが吸収されている。たるみ吸収機構93は、屈曲部113が掛け回される滑車93Aと、滑車93Aを付勢する付勢部材の一例としてのコイルバネ93Bとを備えている。
【0030】
具体的に、コイルバネ93Bは、滑車93Aを吊り下げるように支持しており、図3(a)のような原稿搬送装置90が閉じた状態においては、滑車93Aに対して上方へ向かう付勢力を加えることで、ハーネス110に適度なテンションを与えて、たるまないようにしている。また、図3(b)に示すように、原稿搬送装置90を上方に移動させた際には、コイルバネ93Bが伸びることで、装置本体2に対する滑車93Aの位置がほとんど変わらず、ハーネス110に大きなテンションがかかり過ぎることが防止されている。
【0031】
また、原稿搬送装置90には、ハーネス110の向きを変えるための案内滑車94と、ハーネス110を原稿搬送装置90に固定するための第1固定部95とが設けられている。第1固定部95は、ハーネス110の一端111と屈曲部113との間の部位を原稿搬送装置90に固定している。これにより、原稿搬送装置90を移動させる際にハーネス110の屈曲部113付近にかかるテンションの影響が、モータ92の接続端子92Aに及ばないので、接続端子92Aとハーネス110の接続を確実に維持することが可能となっている。
【0032】
また、フラットベッドスキャナ80には、ハーネス110の他端112と屈曲部113との間の部位をフラットベッドスキャナ80(装置本体2に固定される部材)に固定する第2固定部84が設けられている。これにより、原稿搬送装置90を移動させる際にハーネス110の屈曲部113付近にかかるテンションの影響が、制御基板22の接続端子22Aに及ばないので、接続端子22Aとハーネス110の接続を確実に維持することが可能となっている。
【0033】
以上によれば、本実施形態において以下のような効果を得ることができる。
ハーネス110の屈曲部113を原稿搬送装置90に配することで、制御基板等が密集する装置本体内にハーネスの屈曲部を収容するためのスペースを設ける必要がなくなるので、装置本体2を小型化することができる。そして、このように装置本体2を小型化することで、原稿読取装置100とは別に装置本体2のみをプリンタとして販売するときには、小型のプリンタとしてユーザに提供することができる。
【0034】
ハーネス110の屈曲部113のたるみを吸収するたるみ吸収機構93を設けたので、屈曲部113を単に空間に配置する構造に比べ、屈曲部113がたるむことによって他の部位と干渉してハーネス110が断線してしまうのを抑えることができる。
【0035】
たるみ吸収機構93のコイルバネ93Bによって屈曲部113に常に張力を与えることができるので、ハーネス110のいずれかの部位がたるんで他の部位と干渉することを防止することができる。また、従来のように屈曲部をU字状からL字状に屈曲することで変位を吸収する構造では、屈曲部が疲労して断線するおそれがあるが、本実施形態のように滑車93Aとコイルバネ93Bを用いた構造では、U字状の屈曲部113の形状を変えずに直線移動させるだけなので、屈曲部113の疲労(へたり)を防止することができる。
【0036】
ハーネス110の一端111と屈曲部113との間の部位を第1固定部95で原稿搬送装置90に固定したので、原稿搬送装置90を移動させる際にハーネス110の屈曲部113付近にかかるテンションの影響がモータ92の接続端子92Aに及ぶのを抑えることができる。
【0037】
ハーネス110の他端112と屈曲部113との間の部位を第2固定部84でフラットベッドスキャナ80に固定したので、原稿搬送装置90を移動させる際にハーネス110の屈曲部113付近にかかるテンションの影響が制御基板22の接続端子22Aに及ぶのを抑えることができる。
【0038】
なお、本発明は前記実施形態に限定されることなく、以下に例示するように様々な形態で利用できる。
前記実施形態では、移動体としてフラットベッドスキャナ80に対して変位する原稿搬送装置90を採用したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、排紙トレイ21に排紙した用紙Pを手で取りやすいようにフラットベッドスキャナ80を装置本体2に対して回動可能とした場合には、移動体であるフラットベッドスキャナ80に、ハーネス110の屈曲部113を配してもよい。
【0039】
前記実施形態では、たるみ吸収機構として滑車93Aとコイルバネ93Bを有する機構を採用したが、本発明はこれに限定されず、例えばハーネスを巻き取るリールを有する機構を採用してもよい。また、付勢部材としては、コイルバネ93Bに限らず、トーションバネや板バネなどであってもよい。
【0040】
前記実施形態では、フラットベッドスキャナ80にハーネス110を固定したが、本発明はこれに限定されず、装置本体2にハーネス110を固定してもよい。
前記実施形態では、画像形成部として、レーザを用いたものを採用したが、本発明はこれに限定されず、例えばLEDを用いたものを採用してもよい。
【0041】
前記実施形態では、原稿読取装置100を備える複合機1に本発明を適用したが、本発明はこれに限定されず、その他の画像形成装置、例えば複写機やフラットベットスキャナのみを有する複合機などに本発明を適用してもよい。
前記実施形態においては、原稿搬送装置90の原稿搬送方向と装置本体2の排紙トレイ21への排紙方向が略平行(略前後方向)となる複合機に対して本発明を適用したが、原稿搬送方向と排紙方向が左右前後に直交するように原稿読取装置を配した構成にも本発明を適用することができる。その場合、原稿読取装置の装置本体に対する回動軸は、装置本体の左右端や後端に適宜配置できるが、回動軸をどのように配置した場合であっても、回動軸側にたるみ吸収機構を設けることで、ハーネスの長さを最短とすることができるので好ましい。
【符号の説明】
【0042】
1 複合機
2 装置本体
4 画像形成部
22 制御基板
22A 接続端子
80 フラットベッドスキャナ
83 軸受部
83A 長孔
84 第2固定部
90 原稿搬送装置
91 回動軸
92 モータ
92A 接続端子
93 たるみ吸収機構
93A 滑車
93B コイルバネ
95 第1固定部
100 原稿読取装置
110 ハーネス
111 一端
112 他端
113 屈曲部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を形成する画像形成部と、
画像形成部を収容する装置本体と、
装置本体に対して相対的に変位可能に配される移動体と、
装置本体と移動体とを電気的に接続するとともに、移動体の変位を吸収するための屈曲部が形成されたハーネスとを備え、
前記屈曲部が前記移動体に配されていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記移動体には、前記屈曲部のたるみを吸収するたるみ吸収機構が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記たるみ吸収機構は、
前記屈曲部が掛け回される滑車と、
前記滑車を付勢する付勢部材とを備えていることを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記移動体には、
前記ハーネスの端部が接続される第1接続部と、
前記ハーネスの端部と前記屈曲部の間の部位を前記移動体に固定する第1固定部とが設けられていることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記装置本体には、
前記ハーネスの端部が接続される第2接続部と、
前記ハーネスの端部と前記屈曲部の間の部位を前記装置本体または当該装置本体に固定される部材に固定する第2固定部とが設けられていることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
載置された原稿を読み取り可能な原稿読取部と、
前記原稿読取部に対して移動可能に設けられ、原稿を搬送しながら前記原稿読取部で読み取らせる原稿搬送装置とを備え、
前記移動体は、前記原稿搬送装置であることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−7891(P2011−7891A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−149301(P2009−149301)
【出願日】平成21年6月24日(2009.6.24)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】