説明

画像形成装置

【課題】両面印刷を行うペーパーの印刷面にインクリボンのインクが付着してしまうのを防止する。
【解決手段】駆動モータ69の回転駆動により、駆動カム68aをカムフォロア91に押圧させて本体部66を支持軸90b周りに回動させることで、印字ヘッド62の位置を印字位置から退避位置に変更する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、ペーパーの印刷面に画像印刷を行うとともに、ペーパーの裏面にコマ番号、撮影日、写真店で行った色や濃度の補正データ等の付帯情報を印字するようにした画像形成装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1では、ドットインパクト式の裏面印字装置を用いた付帯情報の印字が行われる。この裏面印字装置は、インクリボンを内蔵するインクリボンカセットと、そのインクリボンを押圧する印字ヘッドとを備えている。印字ヘッドは、複数のニードルピンを備えており、ニードルピンをその軸方向に往復動させることで、インクリボンをペーパーの裏面に押圧してインクを転写するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−271459号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の画像形成装置では、印字ヘッドをペーパーの搬送経路に近接させて配置しているため、ペーパー搬送時にペーパーの裏面にインクリボンのインクが付着して汚れてしまうことがある。具体的に、インクリボンカセット内でインクリボンに巻き癖がついていると、このインクリボンは、インクリボンカセットの開口部からペーパーの搬送経路側に露出するように撓んでしまい、インクリボンの撓み部分とペーパーとが接触してインクが付着してしまう。
【0006】
ここで、特許文献1の画像形成装置のように、現像処理工程を有する装置構成であれば、仮にペーパーの裏面にインクが付着したとしても、インクリボンとペーパーとが接触して付着した程度のインクであれば、現像処理液内へ浸漬搬送する間に洗い流されてしまうため、特に問題とはならない。
【0007】
しかしながら、現像処理液に浸漬処理しない画像形成装置では、特に、ペーパーの両面に印刷を行う場合には、インクリボンのインクがペーパーの印刷面に付着して汚れてしまうこととなり、印刷品質が低下してしまうため、好ましくない。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、両面印刷を行うペーパーの印刷面にインクリボンのインクが付着してしまうのを防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した目的を達成するため、本発明では、ペーパーに両面印刷を行う時等、裏面印字を行う必要がないときには、印字ヘッドを搬送経路から退避できるようにした。
【0010】
具体的に、本発明は、インクが担持されたインクリボンをペーパーの印刷面の裏面に押圧してインクを転写する裏面印字手段を備えた画像形成装置を対象とし、次のような解決手段を講じた。
【0011】
すなわち、第1の発明は、前記裏面印字手段は、
前記インクリボンを押圧する印字ヘッドと、
前記印字ヘッドの位置を、前記ペーパーの搬送経路に近接させて該ペーパーの裏面に印字可能な印字位置と、該ペーパーの搬送経路から退避させた退避位置とに変更する位置変更手段とを備えていることを特徴とするものである。
【0012】
第1の発明では、裏面印字手段は、インクリボンを押圧する印字ヘッドと、印字ヘッドの位置を変更する位置変更手段とを備える。位置変更手段により、ペーパーの搬送経路に近接させてペーパーの裏面に印字可能な印字位置と、ペーパーの搬送経路から退避させた退避位置とに、印字ヘッドの位置を変更させる。
【0013】
このような構成とすれば、ペーパーの両面に印刷を行う場合に、ペーパーの印刷面にインクリボンのインクが付着してしまうのを防止することができる。具体的に、ドットインパクト式の裏面印字装置では、印字ヘッドがペーパーの搬送経路に近接するように配置されているため、インクリボンカセット内でインクリボンに巻き癖がついてペーパーの搬送経路側に露出するように撓んでいた場合に、ペーパーの搬送時にインクリボンのインクがペーパーの裏面に付着するおそれがある。特に、ペーパーの両面に印刷を行う場合には、印刷面にインクが付着して汚れてしまい印刷品質が低下してしまうという問題がある。
【0014】
これに対し、本発明では、印字ヘッドの位置を、ペーパーの搬送経路に近接させてペーパーの裏面に印字可能な印字位置と、ペーパーの搬送経路から退避させた退避位置との間で変更できるようにしたから、両面印刷を行うペーパーのように、ペーパーの裏面に付帯情報を印字する必要がないときには印字ヘッドを退避位置に退避させることで、ペーパーの裏面にインクリボンのインクが付着してしまうことを防止することができる。
【0015】
第2の発明は、第1の発明において、
前記位置変更手段は、前記ペーパーに両面印刷を行うことを示す両面印刷情報に基づいて、前記印字ヘッドの位置を前記印字位置から前記退避位置に変更するように構成されていることを特徴とするものである。
【0016】
第2の発明では、ペーパーに両面印刷を行うことを示す両面印刷情報に基づいて、位置変更手段により、印字ヘッドの位置が印字位置から退避位置に変更される。このような構成とすれば、ペーパーの両面に印刷を行うことを示す両面印刷情報を、オペレータが装置に入力するか又は装置側で自動的に判別することで、印字ヘッドを印字位置から退避位置に移動させることができる。これにより、両面印刷を行うペーパーの印刷面にインクリボンのインクが付着してしまうことを確実に防止することができる。
【0017】
第3の発明は、第1又は第2の発明において、
前記ペーパーの幅方向に延びる支持軸と、
前記支持軸の下方に配設されたカムフォロアと、
前記印字ヘッドを収容するとともに前記支持軸に対して回動自在に支持された本体部とを備え、
前記位置変更手段は、前記カムフォロアに対応するように前記本体部に設けられた駆動カムと、該駆動カムを回転駆動する駆動モータとを有し、該駆動モータの回転駆動により該駆動カムを該カムフォロアに押圧させて該本体部を前記支持軸周りに回動させることで、前記印字ヘッドの位置を前記印字位置から前記退避位置に変更するように構成されていることを特徴とするものである。
【0018】
第3の発明では、ペーパーの幅方向に延びる支持軸と、支持軸の下方に配設されたカムフォロアと、支持軸に対して回動自在に支持された本体部とを備える。本体部には、印字ヘッドが収容される。位置変更手段は、カムフォロアに対応するように本体部に設けられた駆動カムと、駆動カムを回転駆動する駆動モータとを有する。駆動モータの回転駆動により駆動カムがカムフォロアに押圧される。これにより、本体部が支持軸周りに回動されて、印字ヘッドの位置が印字位置から退避位置に変更される。
【0019】
このような構成とすれば、駆動カムを回転駆動するだけで、印字ヘッドを印字位置から退避位置に移動させることができ、両面印刷を行うペーパーの印刷面にインクリボンのインクが付着してしまうことを防止することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、印字ヘッドの位置を、ペーパーの搬送経路に近接させてペーパーの裏面に印字可能な印字位置と、ペーパーの搬送経路から退避させた退避位置との間で変更できるようにしたから、両面印刷を行うペーパーのように、ペーパーの裏面に付帯情報を印字する必要がないときには印字ヘッドを退避位置に退避させることで、ペーパーの裏面にインクリボンのインクが付着してしまうことを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態に係るインクジェットプリンタの外観を示す斜視図である。
【図2】インクジェットプリンタの内部の構成を示す、側方から見た概略図である。
【図3】マガジンの開口部が閉じられた状態を示す側面図である。
【図4】マガジンの開口部が開かれた状態を示す側面図である。
【図5】印刷部のプラテンの構成を示す平面図である。
【図6】印刷部及びキャップ部の構成を示す側面図である。
【図7】スイッチバック部のスイッチバックローラ対が、搬送ローラ対より搬送されてきたペーパーを受け取っている状態を示す概略図である。
【図8】スイッチバックローラ対の従動ローラが第2の位置に切り換えられた状態を示す図7相当図である。
【図9】裏面印字装置の構成を示す斜視図である。
【図10】裏面印字装置を筐体内に取り付ける前の状態を示す側面図である。
【図11】裏面印字装置を印字位置に位置付けた状態を示す図10相当図である。
【図12】裏面印字装置を退避位置に位置付けた状態を示す図10相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0023】
図1は、本発明の実施形態に係る画像形成装置としてのインクジェットプリンタの外観を示す斜視図、図2は、インクジェットプリンタの内部の構成を示す、側方から見た概略図である。
【0024】
図1及び図2に示すように、このインクジェットプリンタAは、写真プリントシステムに用いられるものであって、例えば、画像データを取得して必要な補正処理等を行う受付ブロック(図示省略)から通信ケーブルを介して伝送される画像データに基づいてペーパーPに印刷を行うものである。
【0025】
前記インクジェットプリンタAは、下面にキャスター3が設けられた筐体2を有するプリンタ本体部1を備えている。このプリンタ本体部1の筐体2内の下部には、ロール状に巻かれた長尺のペーパーPを収容可能な2つのマガジンMが、上下方向に並んで収容されている。このペーパーPは、マガジンM内部の収容室Sに収容されて、ロール状に巻かれた状態にあるときに径方向外側を向く面が印刷面とされている。
【0026】
なお、本実施形態では、前記プリンタ本体部1において手差トレイ7が取り付けられる側(図2の左側)をプリンタ前側といい、その反対側(図2の右側)をプリンタ後側という。また、図2の紙面と垂直な方向は、プリンタ左右方向であって、プリンタ本体部1において搬送されるペーパーPの幅方向と一致している。
【0027】
前記マガジンMは、持ち運び可能に構成された略密閉状の箱型容器である。マガジンM内部の収容室Sには、巻芯5を中心にロール状に巻かれたペーパーPがそれぞれ収容されている。マガジンMの上面における前側の端部には、マガジンM内に収容されたペーパーPをマガジンM外へと引き出すための開口部11が形成されている。開口部11は、巻芯5と同方向に延びる略矩形状をなしている。
【0028】
前記マガジンMには、ペーパーPを開口部11を介して収容室Sから送り出すマガジンローラ12が設けられている。マガジンローラ12により送り出されたペーパーPは、後述する供給ローラ24に受け渡しされる。
【0029】
また、前記マガジンMには、開口部11とマガジンローラ12との間に、巻芯5から引き出されたペーパーPをマガジンM内で保持する保持ローラ対13が設けられている。この保持ローラ対13は、マガジンM内でペーパーPの先端部を挟持するものである。これにより、ペーパーPの先端部がマガジンM内で自由に動いてしまうことを規制して、ペーパーPの巻きが緩くなったり印刷面がマガジンM内の底面と擦れてしまうことを防止している。
【0030】
図3は、マガジンの開口部が閉じられた状態を示す側面図である。図3に示すように、マガジンMの開口部11には、この開口部11を開閉するための開閉シャッタ機構20が設けられている。開閉シャッタ機構20は、巻芯5から引き出されたペーパーPを開口部11まで導くガイド板14と、ガイド板14に対して圧着された状態と圧着が解除された状態とを切り換えることが可能なシャッタローラ15と、シャッタローラ15を駆動するためのカム機構16とを有している。
【0031】
前記シャッタローラ15は、開口部11を開閉してマガジンM内の空気の流通を遮断又は許可するものであり、マガジンMの開口部11に沿って延びる軸部15aと、軸部15aの外周部分に設けられガイド板14に圧着するローラ部15bとを備えている。シャッタローラ15は、マガジンMの開口部11近傍の左右両側壁に形成された長孔20aに摺動自在に支持されている。そして、シャッタローラ15の軸部15aが付勢バネ(図示省略)によってガイド板14側に常時付勢され、カム機構16の一部を構成するスライドプレート17の前端部に当接している。
【0032】
前記カム機構16は、スライドプレート17と、モータ(図示省略)によって駆動される偏心カム18とを備えている。スライドプレート17には、マガジン前後方向に延びる2つの長孔17aが形成されている。スライドプレート17の長孔17aには、マガジンMの左右両側壁から外方に突出する2本のガイド軸17bがそれぞれ挿通され、ガイド軸17bによりスライドプレート17が支持される。これにより、スライドプレート17は、ガイド軸17bに支持された状態でマガジン前後方向にスライド移動可能となっている。
【0033】
前記スライドプレート17のマガジン後側の端部には、略矩形状のカム孔17cが形成されている。そして、このカム孔17cの内周面が、偏心カム18のカム面と当接する当接面を構成している。偏心カム18は、モータの出力軸18aに対して偏心して取り付けられている。また、モータの出力軸18aには検出片18bが設けられており、マガジンMの左右両側壁に取り付けられた検出センサ19により、モータの原点位置が検出される。
【0034】
次に、前記開閉シャッタ機構20の動作について具体的に説明する。まず、図3に示す圧着状態(開口部11が閉じた状態)では、偏心カム18の偏心部分がモータの出力軸18aに対してマガジンM後側に位置している。そして、偏心カム18を図3で時計回り方向に回転させると、偏心カム18の偏心部分がモータの出力軸18aに対してマガジンM前側に位置する(図4参照)。このとき、スライドプレート17のカム孔17cが、偏心カム18によってマガジン前側に押圧され、スライドプレート17がガイド軸17bに沿ってマガジン前側に移動する。
【0035】
この結果、前記シャッタローラ15は、スライドプレート17の先端部で押圧されながら付勢バネの付勢力に抗してマガジン前側へと移動する。これにより、シャッタローラ15のローラ部15bとガイド板14との間に隙間が生じて開口部11が開かれることとなる。
【0036】
このような構成とすれば、インクジェットプリンタAの運転動作時にのみ、開閉シャッタ機構20の偏心カム18を回転させてシャッタローラ15を移動させることで、開口部11を強制的に開くことができる。したがって、マガジンMの開口部11が開いた状態で長期間放置されることによりマガジンM内の空気が乾燥するのを防止して、マガジンM内のペーパーPをヒビ割れ等から保護することができる。
【0037】
図2に示すように、前記マガジンMは、筐体2の前後方向にスライド自在なスライド台10に載置されている。このスライド台10は、筐体2内の左右両側に設けられて装置前後方向に延びる図示しないリニアガイド等により、装置前後方向にスライド自在に構成されており、スライド台10をスライド移動させることで、マガジンMを筐体2内から出し入れできるようになっている。このスライド台10の前面は、筐体2の一部を構成するとともに開閉可能な扉部材10aによって覆われており、この扉部材10aを開放状態にすることで、ペーパーPの取り替え作業を行うことができるようになっている。
【0038】
前記筐体2内の上部(上側のマガジンMよりも上方)には、マガジンMの収容室Sから引き出されたペーパーPの印刷面、又は手差トレイ7から供給された単票状のペーパー(図示省略)の印刷面に対して、画像データに基づいて印刷を行う印刷部21が設けられている。
【0039】
ここで、前記マガジンMと印刷部21との間には、ペーパーPを印刷部21まで導くガイド部材28が配設されている。このガイド部材28は、ペーパーPの先端部が、搬送経路を通って印刷部21の供給ローラ24へ向かう際に搬送経路からずれないようにするためのものである。ガイド部材28の上流側には、2つに分岐した第1分岐通路28a及び第2分岐通路28bが設けられている。第1分岐通路28aには下側のマガジンMから引き出されたペーパーPが挿通され、第2分岐通路28bには上側のマガジンMから引き出されたペーパーPが挿通される。これにより、上下に並ぶように収容されたマガジンMのペーパーPがそれぞれ別々の搬送経路を通りつつ、最終的に合流して供給ローラ24に導かれるようになっている。
【0040】
また、前記ガイド部材28とマガジンMとの間には、ペーパーPの先端がマガジンMから引き出されたことを検出する反射型の第1センサ40及び第2センサ41がそれぞれ配設されている。
【0041】
前記プリンタ本体部1の前側上部には、オペレータが単票状のペーパーを手差し供給するための手差トレイ7が設けられている。この手差トレイ7は、非使用時には、図1に示すように、筐体2内に折り畳んだ状態で収容できるようになっている。
【0042】
前記手差トレイ7よりもプリンタ後側には、手差ローラ対9が配設されている。この手差ローラ対9は、ペーパーにおける印刷部21による印刷面に接触する駆動ローラ9aと、印刷面とは反対側の面に接触する従動ローラ9bとで構成されている。駆動ローラ9aはモータ(図示省略)により駆動される。そして、手差トレイ7に供給されたペーパーは、手差ローラ対9の回転により供給ローラ24に向かって送り出される。
【0043】
本実施形態に係るインクジェットプリンタAでは、マガジンMの収容室Sに収容されたペーパーP、及びオペレータが手差トレイ7に手差し供給した単票状のペーパーを用いてそれぞれ印刷を行うことができる構成となっているが、印刷部21に供給された後のそれぞれのペーパーに対する処理については同様である。そのため、以下では、マガジンMに収容されたペーパーPを搬送して印刷を行う場合について主に説明する。
【0044】
図2に示すように、前記マガジンローラ12によりマガジン外部に送り出されたペーパーPは、供給ローラ24によって印刷部21へ供給される。具体的に、ペーパーPは、供給ローラ24と、供給ローラ24に対向配置された2つの圧着ローラ24aとの間に挟持されて、駆動モータ(図示省略)によって供給ローラ24が時計回り方向に回転駆動されることで印刷部21まで搬送される。
【0045】
前記供給ローラ24は、駆動モータによって、ペーパーPをマガジンMの収容室Sから引き出して印刷部21側へ搬送する正方向の回転と、ペーパーPを収容室S内へ戻す逆方向の回転とが可能なように構成されている。これにより、例えば、ペーパーPへの印刷を中断して、手差トレイ7に差し込んだ単票状のペーパーや、他方のマガジンM内のペーパーPを印刷部21に供給して印刷を行う際に、搬送経路上に存在するペーパーPをマガジンM内に戻すことができる。また、ペーパーPを新たなものに交換する際にも、プリンタ本体部1内に引き出されているペーパーPをマガジンM内に戻すことができる。
【0046】
前記供給ローラ24の下流側には、画像データに基づいて印刷を行う印刷部21が設けられている。この印刷部21は、ペーパーPの印刷面に印刷するプリントヘッドHと、供給ローラ24より搬送されるペーパーPを支持するプラテン23とを備えている。
【0047】
前記プリントヘッドHの下流側には、搬送経路よりも下側に配置された駆動ローラ25aと、その上側に位置する従動ローラ25bとからなる圧着型の下流側ローラ対25が配設されている。駆動ローラ25aは、モータ(図示省略)で駆動されるようになっている。
【0048】
前記供給ローラ24の下流側には、供給ローラ24より送り出されたペーパーPの先端を検出する第3センサ42(投光部と受光部とからなる)が配設されている。この第3センサ42によるペーパーP先端の検出から、ペーパーPの印刷開始部分がプリントヘッドHの下側位置に達するような量だけ供給ローラ24によりペーパーPを搬送したときに、当該ペーパーPへの印刷を開始する。また、第3センサ42によるペーパーPの先端の検出から、ペーパーPの先端が下流側ローラ対25のところに達するような量だけ供給ローラ24によりペーパーPを搬送したときに、供給ローラ24を圧着状態から圧着解除状態にし且つ下流側ローラ対25を圧着解除状態から圧着状態にして、今度は下流側ローラ対25でペーパーPを搬送する。
【0049】
図5は、印刷部のプラテンの構成を示す平面図、図6は、印刷部及びキャップ部の構成を示す側面図である。図5及び図6に示すように、前記プリントヘッドHは、ペーパーPの上側位置においてペーパーPの幅方向(プリンタ左右方向)と一致する主走査方向Xに延びる2本のガイドレール31に沿って移動可能に構成されている。また、プリントヘッドHは、主走査方向Xと垂直であってペーパーPの移動方向(プリンタ前後方向)と一致する副走査方向Yに並ぶ2つのヘッドユニット32,32を有しており、これら2つのヘッドユニット32,32の下面に設けられている多数のインク吐出ノズル(図示省略)から複数色のインクを下側へ向けて吐出することで、ペーパーPの印刷面に対して所定の画像を印刷できるようになっている。なお、本実施形態では、ヘッドユニット32が副走査方向Yに2段に並んで配設されているが、ヘッドユニット32は2段である必要はなく、1段や3段以上であってもよい。
【0050】
前記両ヘッドユニット32は同一構成であり、各々、主走査方向Xに配設された、各色のインクを吐出するための複数のノズルアレイを有している。この各ノズルアレイにおいて、インク吐出ノズルが副走査方向Yに列状に配設されている。これにより、各ヘッドユニット32は、単体でカラー画像を形成可能な構成とされている。そして、ペーパーPは、供給ローラ24又は下流側ローラ対25により一定の単位搬送量で間欠的に(ステップ状に)副走査方向Yに搬送され、この間欠搬送時におけるペーパーPの各停止時に、プリントヘッドHが主走査方向Xに一走査(一往動作又は一復動作)されて、この走査時に、主走査方向Xの各位置で、各ヘッドユニット32の各色のインク吐出ノズルからインクがペーパーPの印刷面に対して同時に吐出される。つまり、プリントヘッドHの一走査後に、ペーパーPが単位搬送量だけ搬送され、その後、再びプリントヘッドHが一走査され、この動作が繰り返し行われて、所望の画像が印刷されることになる。
【0051】
ここで、本実施形態におけるプリントヘッドHのインク吐出のための構成としては、インクが充填された圧力室内の容積がピエゾ素子によって変化することで、圧力室に連通するインク吐出ノズルからインクを吐出する一般的なピエゾ方式のものを採用している。
【0052】
前記プラテン23は、板状の部材からなり、その上面がペーパーPを支持する支持面23aとされている。このプラテン23には、厚み方向(上下方向)に貫通して支持面23aに開口する多数の吸引用孔23bが設けられている。プラテン23の下側には、プラテン23とともに空間を形成するケース体35(図2参照)が配設され、このケース体35の下側に、ファン等を含む吸引装置36(図2参照)が配設されている。そして、吸引用孔23bは、ケース体35内の空間と連通し、この空間は、吸引装置36の吸込み口と連通しており、吸引装置36の作動により吸引用孔23bを介してプラテン23の支持面23a側に負圧が生じ、このことで、ペーパーPがプラテン23の支持面23a上に吸着保持されることになる。これにより、印刷時のペーパーPの平面性を確保して印刷品質を向上させることが可能になる。
【0053】
前記プラテン23の支持面23aには、副走査方向Yに延びる凹部23cが形成されている。この凹部23cには、インク吸収材38が収容されている。このインク吸収材38は、ペーパーP全体に画像を印刷する縁なし印刷を行う際に、プリントヘッドH(ヘッドユニット32)より吐出したインクの一部が支持面23a上のペーパーPの幅方向の端縁から外側に外れてはみ出したとしても、その外側に外れたインクによりプラテン23の支持面23aが汚れるのを防止するために設けられたものである。このため、凹部23cは、支持面23aにおいて支持面23a上のペーパーPの幅方向の端縁に対応する位置で且つ副走査方向YにおけるプリントヘッドHに対応する位置において、該端縁に沿って延びる(つまり副走査方向Yに延びる)ように形成されている。図5の例では、合計14個の凹部23cが設けられている。
【0054】
前記プラテン23の左側端部には、ヘッドユニット32,32に対応する位置にフラッシング孔23dが形成されている。このフラッシング孔23dは、インクの増粘を防止するために印刷開始時にプリントヘッドHのノズルから吐出される少量のインクを受け止めるためのものである。
【0055】
また、前記プリントヘッドHの主走査方向Xのプリント領域外の位置には、印刷を行っていない場合にプリントヘッドHが待機するための待機位置が設定されており、この待機位置には、キャップ部26が設けられている。このキャップ部26は、プリントヘッドHを使用しないときに、インクの増粘を防止すべくプリントヘッドHのヘッドユニット32,32に密着させるものであり、ヘッドユニット32,32に対応して副走査方向Yに並ぶ2つの吸引キャップ26aを備えている。キャップ部26は、プリントヘッドHの底面に密着する位置と、プリントヘッドHの底面から離れた位置との間で昇降する。
【0056】
前記プリントヘッドHの後側(図5で右側)には、後側のガイドレール31を挿通させる軸受ホルダ21aが設けられている。すなわち、プリントヘッドHは、後側のガイドレール31に対して回動自在に支持されている。一方、プリントヘッドHの前側(図5で左側)には、前方に突出するヘッドガイド21bが設けられている。このヘッドガイド21bは、前側のガイドレール31上に摺動自在に載置され、軸受ホルダ21aとともにプリントヘッドHが水平となるように支持している。これにより、プリントヘッドHとプラテン23との間に紙詰まりが発生した場合に、プリントヘッドHの前側を持ち上げて後側のガイドレール31を中心に回動させることができ、メンテナンス性が向上する。また、プリントヘッドHの待機位置には、前側のガイドレール31の上方位置に挟持ローラ27が設けられている。
【0057】
前記プリントヘッドHが待機位置に移動すると、プリントヘッドHのヘッドガイド21bが挟持ローラ27と前側のガイドレール31との間に狭持される。これにより、待機位置において、キャップ部26が上昇してプリントヘッドHの底面に密着する際のプリントヘッドHの浮き上がりを防止することができる。キャップ部26は、その密着位置においてはプリントヘッドHの底面との間で負圧の空間を形成し、それによってノズルからインクを吸引するように構成されている。吸引されたインクは、廃液タンク(図示省略)に回収される。
【0058】
前記インクジェットプリンタAの右側下部には、互いに色相の異なるインクが封入された4つのインクカートリッジ(図示省略)が着脱可能に収容されている。従って、これらのインクカートリッジを着脱することにより、使用中又は使用済みのものを新しいものに交換できるようになっている。なお、これらのインクカートリッジにはそれぞれ、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各インクが封入されている。
【0059】
図2に示すように、前記下流側ローラ対25よりもプリンタ後側には、印刷後のペーパーPを所定のサイズに切断したり、縁なし印刷を行う場合においてペーパーPの先端及び後端における余白を切断するカッター50が配設されている。
【0060】
前記カッター50は、ペーパーPの搬送経路の下側に配置された固定刃50aと、ペーパーPの搬送経路の上側に配置され、モータ(図示省略)により固定刃50aに対して上下方向に移動する可動刃50bとで構成され、可動刃50bがペーパーPの上側から下側に移動することでペーパーPを切断する。この切断による切り屑は、筐体2の下部に配設された屑箱(図示省略)に落下して収容される。
【0061】
前記カッター50よりもプリンタ後側には、カッター50で切断されたペーパーPを挟持してさらにプリンタ後側へ搬送する圧着型の搬送ローラ対46が3つ配設されている。
【0062】
前記搬送ローラ対46において、下側に位置する駆動ローラ46aは、モータ(図示省略)により駆動され、その回転速度、つまり搬送ローラ対46によるペーパーPの搬送速度は可変に構成されている。また、上側に位置する従動ローラ46bは、下側の駆動ローラ46aに対してそれぞれ圧着された状態と圧着が解除された状態とを切り換えることが可能になっている。
【0063】
具体的に、前記搬送ローラ対46は、カッター50で切断されたペーパーPの先端部がローラ間に挟持される前に、その圧着が解除されるようになっている。このようにすれば、搬送ローラ対46が圧着された状態でペーパーPの先端部が搬送ローラ対46に引っ掛かってしまい折れ曲がる等の不具合を解消することができる。なお、これら3つの搬送ローラ対46の従動ローラ46bの圧着解除は同時に行われる。
【0064】
前記搬送ローラ対46により搬送されてきたペーパーPは、スイッチバック部72に搬送される。スイッチバック部72は、ペーパーPをスイッチバックさせて、コンベア装置100の搬送ベルト101上でペーパーPの印刷面が上面を向くように、ペーパーPの後端側から搬送ベルト101に排出させるものである。
【0065】
図7は、スイッチバック部のスイッチバックローラ対が、搬送ローラ対より搬送されてきたペーパーを受け取っている状態を示す概略図、図8は、スイッチバックローラ対の従動ローラが第2の位置に切り換えられた状態を示す図7相当図である。
【0066】
図7及び図8に示すように、前記スイッチバック部72には、下側の駆動ローラ73aと上側の従動ローラ73bとからなる圧着型のスイッチバックローラ対73と、このスイッチバックローラ対73の上流側において搬送路を挟むように設けられ、搬送ローラ対46より搬送されてきたペーパーPをスイッチバックローラ対73へ導く一対の第1ガイド部材74と、スイッチバックしたペーパーPを後述する裏面印字装置60へ供給する圧着型の供給ローラ対75と、スイッチバックローラ対73と供給ローラ対75との間において搬送路を挟むように設けられ、スイッチバックしたペーパーPを供給ローラ対75へ導く一対の第2ガイド部材76とが設けられている。
【0067】
前記スイッチバックローラ対73の駆動ローラ73aは、モータ(図示省略)により、ペーパーPを挟持してプリンタ前側へ搬送する正回転と、ペーパーPを挟持してプリンタ後側へ搬送する逆回転とが可能に構成されている。
【0068】
前記スイッチバックローラ対73及び第1ガイド部材74は、モータ(図示省略)により、スイッチバックローラ対73の駆動ローラ73aの回転軸周りに一体的に移動可能になっており、これにより、スイッチバックローラ対73の駆動ローラ73aに対する従動ローラ73bの相対位置が、図7に示すように駆動ローラ73aに対してほぼ真上に位置して、ペーパーPをプリンタ後側へ搬送する第1の位置と、図8に示すように駆動ローラ73aに対してプリンタ後側に位置して、スイッチバックされたペーパーPを後端側から裏面印字装置60へ供給する第2の位置とに切り換えられるようになっている。
【0069】
ここで、前記搬送ローラ対46より搬送されてきたペーパーPをスイッチバックさせるスイッチバック動作について説明する。スイッチバックローラ対73が、搬送ローラ対46より搬送されてきたペーパーPを受け取る際には、駆動ローラ73aは正回転しており、従動ローラ73bは第1の位置にある。そして、ペーパーPの後端が第1ガイド部材74に位置するような量だけスイッチバックローラ対73によりペーパーPをプリンタ後側へ搬送したところで(図7参照)、駆動ローラ73aの正回転を停止する。
【0070】
このとき、前記ペーパーPの先端部は、ペーパーPの自重により下方に湾曲して撓んでいる。なお、ペーパーPにコシがあって自重で撓まない場合には、搬送方向の下流側に設けられた湾曲ガイド板77にその先端部が当接することで、湾曲ガイド板77に沿って下方に折り曲げられるようになっている。
【0071】
続いて、前記スイッチバックローラ対73及び第1ガイド部材74を、図7で時計回り方向に回動させて従動ローラ73bを第1の位置から第2の位置へ切り換える。これにより、ペーパーPの後端側(プリンタ前側)が持ち上げられる。
【0072】
その後、前記駆動ローラ73aを逆回転させて、ペーパーPをその後端側からプリンタ上側に配置された供給ローラ対75の側へ向けて搬送する。スイッチバックローラ対73によりスイッチバックするペーパーPは、第1ガイド部材74及び第2ガイド部材76を通って、供給ローラ対75のところに達する。
【0073】
なお、本実施形態では、スイッチバックローラ対73の駆動ローラ73aの周りに従動ローラ73bを移動させることで、スイッチバックローラ対73の位置を第1の位置と第2の位置とに切り換えるようにしたが、この形態に限定するものではなく、例えば、駆動ローラ73aと従動ローラ73bとを両方とも移動可能な構成として、スイッチバックローラ対73全体の位置を変更することで第1の位置と第2の位置とを切り換えるようにしても良い。
【0074】
また、本実施形態では、スイッチバックローラ対73を、ペーパーPを搬送する駆動ローラ73aと、駆動ローラ73aに従動して回転する従動ローラ73bとで構成したが、従動ローラ73bを駆動可能とすることで、スイッチバックローラ対73をなすローラを両方とも駆動ローラ73aで構成するようにしても良い。
【0075】
図2に示すように、前記供給ローラ対75の上流側には、スイッチバックローラ対73より送り出されたペーパーPの先端を検出する第4センサ43(投光部と受光部とからなる)が配設されている。
【0076】
前記供給ローラ対75は、モータ(図示省略)により駆動される駆動ローラ75aと、この駆動ローラ75aに対して圧着される従動ローラ75bとからなる。この従動ローラ75bの駆動ローラ75aに対する圧着状態は、解除することが可能になっている。
【0077】
前記供給ローラ対75の下流側には、ペーパーPの裏面に整理番号を印字するための裏面印字装置60が設けられている。裏面印字装置60の下流側には、搬送経路よりも左側に配置された駆動ローラ78aと、その右側に位置する従動ローラ78bとからなる圧着型の下流側ローラ対78が4つ配設されている。駆動ローラ78aは、モータ(図示省略)で駆動されるようになっている。
【0078】
次に、本発明の特徴部分である、裏面印字装置60の構成について説明する。図9は、裏面印字装置の構成を示す斜視図である。図2及び図9に示すように、裏面印字装置60は、ドットインパクト式の印字装置で構成されており、インクリボン65を内蔵するインクリボンカセット61と、そのインクリボン65を押圧する印字ヘッド62とを備えている。
【0079】
前記インクリボンカセット61は、インクが担持されたインクリボン65を内蔵している。このインクリボン65は、インクリボンカセット61内に折り畳まれて収納されており、インクリボンカセット61内に設けられたリボン搬送ローラ対63により挟持されている。インクリボンカセット61の先端部には、インクリボン65が通行可能な開口部が形成されている。インクリボン65は、ループ状に形成されており、リボン搬送ローラ対63に挟持されながら搬送されることで、その一部が開口部から露出するようになっている。
【0080】
前記印字ヘッド62は、複数のニードルピン64を備え、ニードルピン64はその軸方向に往復動可能に構成されている。印字ヘッド62は、開口部から露出しているインクリボン65の一部をニードルピン64で押圧する。ニードルピン64で押圧されたインクリボン65は、ペーパーPの裏面に圧接され、その担持するインクが転写することで印字が行われる。
【0081】
ところで、前記裏面印字装置60では、印字ヘッド62をペーパーPの搬送経路に近接させて配置しているため、ペーパー搬送時にペーパーPの裏面にインクリボン65のインクが付着して汚れてしまうおそれがある。特に、ペーパーPの両面に印刷を行う場合には、インクリボン65のインクがペーパーPの印刷面に付着することとなり、印刷品質が低下してしまうため、好ましくない。そこで、本発明では、両面印刷を行うペーパーPのように、裏面印字を行う必要がない場合には、印字ヘッド62を搬送経路から退避させるようにした。
【0082】
図10は、裏面印字装置を筐体内に取り付ける前の状態を示す側面図、図11は、裏面印字装置を印字位置に位置付けた状態を示す図10相当図である。
【0083】
図9〜図11に示すように、前記裏面印字装置60は、プリンタ左右方向に2列に並ぶように配設されて本体部66に収容されている。この本体部66は、筐体2内に設けられた印字装置収容部90に対して着脱自在となっている。
【0084】
前記本体部66は、裏面印字装置60の印字ヘッド62側が開口した箱状に形成されている。本体部66における開口側と反対側で且つプリンタ左右方向の両側には、オペレータが本体部66を持ち運びしやすいように取っ手66cが設けられている。
【0085】
前記本体部66の左右両側に立設する本体側壁66aの上端部には、後述する支持軸90bに回動自在に係合支持するための切欠孔66bがそれぞれ形成されている。この切欠孔66bを支持軸90bに係合支持させることで、本体部66が支持軸90b周りに回動自在となっている。また、プリンタ左右両側の本体側壁66aの図10の左側下部には、外方に突出するロックピン67がそれぞれ設けられ、本体側壁66aの図10の右側中央部には、外方に突出する位置決めピン66dがそれぞれ設けられている。
【0086】
前記本体部66の右側下部には、プリンタ左右両側の本体側壁66aに跨って回転自在に両端支持されたカム軸68が設けられている。カム軸68の左右両端部は、本体側壁66aを貫通しており、その先端部には、位置変更手段としての駆動カム68aがそれぞれ接続されている。
【0087】
図9において左側の本体側壁66aの内側には、位置変更手段としての駆動モータ69が設けられている。駆動モータ69は、その駆動軸が本体側壁66aを貫通して本体部66外方に突出しており、その先端部には駆動ギア69aが接続されている。駆動ギア69aは、図9の左側に配置された駆動カム68aに連結されており、駆動モータ69を回転駆動することで、駆動ギア69aを介して駆動カム68aを回転駆動することができるようになっている。
【0088】
前記印字装置収容部90は、プリンタ左右方向に配設された収容側壁90aを備えている。収容側壁90aは、その下端部が図10の左側に延びる逆L字状に形成されている。収容側壁90aには、ペーパーPの幅方向(プリンタ左右方向)に延びる支持軸90bが両端支持されている。また、逆L字状をなす収容側壁90aのコーナー部分には、本体部66の位置決めピン66dを受け止めるピン受け止め部90cが形成されている。
【0089】
前記支持軸90bの下方で且つ収容側壁90aの内面側には、それぞれカムフォロア91が設けられている。このカムフォロア91は、駆動モータ69の回転駆動により、駆動カム68aとの圧着又は圧着解除が行われるようになっている。
【0090】
前記収容側壁90aのカムフォロア91よりも前側(図10の左側)には、外方に突出するアーム軸92がそれぞれ設けられている。このアーム軸92には、ロックアーム93が回動自在に取り付けられている。
【0091】
前記ロックアーム93は、内部にバネ収容室93aを有する直方体状に形成されている。バネ収容室93aには、圧縮バネ94と、バネ収容室93a内で摺動可能で且つ圧縮バネ94を押圧するバネ押圧部93bとが収容されている。また、ロックアーム93には、アーム軸92を挿通させる長孔93cが形成されている。
【0092】
前記アーム軸92の先端部には、バネ押圧部93bが連結されている。これにより、ロックアーム93は、圧縮バネ94の付勢力によって図10において長孔93cの左端にアーム軸92が位置するように付勢される。
【0093】
前記ロックアーム93の前端部(図10の左端部)には、レバー軸95aを介してロックレバー95が回動自在に取り付けられている。このロックレバー95は、レバー軸95aを中心に本体部66のロックピン67側に回動させることで、ロックアーム93との間でロックピン67を挟持するようになっている。ここで、ロックアーム93及びロックレバー95におけるロックピン67の挟持位置には、ロックピン67を嵌め込んで挟持するための凹部96がそれぞれ形成されている。
【0094】
そして、前記ロックアーム93及びロックレバー95でロックピン67を狭持すると、図11に示すように、ロックアーム93は、長孔93cの左端にアーム軸92が位置するように付勢されていた状態から、圧縮バネ94の付勢力に抗して左側に移動して、長孔93cの中央寄りにアーム軸92が位置するように付勢される。このとき、本体部66の本体側壁66aに設けられた位置決めピン66dが、収容側壁90aのピン受け止め部90cに受け止められて、印字装置収容部90に対する本体部66の位置決めが行われる。これにより、裏面印字装置60が、印字ヘッド62をペーパーPの搬送経路に近接させてペーパーPの裏面に印字可能な印字位置に位置付けられる。なお、駆動カム68aとカムフォロア91とのカム面は、圧着解除された状態となっている。
【0095】
前記印字装置収容部90の収容側壁90a間には、供給ローラ対75と、下流側ローラ対78とが配設されている。供給ローラ対75と下流側ローラ対78との間には、ペーパーPをガイドする左右一対のガイド板97が設けられている。裏面印字装置60の印字ヘッド62は、左側のガイド板97に形成された孔を介して搬送経路上に露出される。また、印字ヘッド62によるインクリボン65の押圧動作時にペーパーPの浮き上がりを防止する対向ヘッド98が、印字ヘッド62に対向するように配設され、右側のガイド板97に形成された孔を介して搬送経路上に露出されている。
【0096】
図12は、裏面印字装置を退避位置に位置付けた状態を示す図10相当図である。図12に示すように、裏面印字装置60の印字ヘッド62をペーパーPの搬送経路から退避させた退避位置に位置付けるために、駆動モータ69を回転駆動させて駆動カム68aのカム面をカムフォロア91に押圧させる。
【0097】
このとき、前記ロックアーム93は、長孔93cの中央寄りにアーム軸92が位置するように付勢されていた状態から、圧縮バネ94の付勢力に抗して左側に移動して、長孔93cの右端にアーム軸92が位置するように付勢される。また、本体部66は、支持軸90bを中心に時計回り方向に回動する。
【0098】
このようにすれば、前記駆動モータ69を回転駆動させるだけで、印字ヘッド62を、ペーパーPの搬送経路に近接させた印字位置から、ペーパーPの搬送経路から退避させた退避位置に移動させることができ、両面印刷を行うペーパーPの印刷面にインクリボン65のインクが付着してしまうことを防止することができる。
【0099】
なお、前記印字ヘッド62の位置を印字位置と退避位置との間で変更する変更動作は、両面印刷を行うペーパーPが搬送されたことを示す両面印刷情報に基づいて行われる。この両面印刷情報の入力は、オペレータが直接入力するか、又はインクジェットプリンタA側で自動的に判別するようにすればよい。
【0100】
また、前記印字ヘッド62を退避位置から印字位置に移動させる際には、以下のタイミングで行うことが好ましい。具体的に、搬送経路上を連続的に搬送されるペーパーPのうち先行するペーパーPが両面印刷のオーダー、後続のペーパーPが片面印刷のオーダーである場合、先行するペーパーPが裏面印字装置60を通過したことを第4センサ43で検知した後、後続のペーパーPが裏面印字装置60の印字ヘッド62の印字開始位置に到達するまでの間に、その検知信号等に基づいて印字ヘッド62を退避位置から印字位置に移動させるようにすればよい。
【0101】
また、前記印字ヘッド62の移動タイミングとしては、裏面印字するペーパーPにおける印字開始位置(ペーパーPの長さ、印字情報等に基づいて設定される位置)が、印字ヘッド62における印字開始位置に到達したときに、印字ヘッド62を退避位置から印字位置に移動させるようにすればよい。これにより、裏面印字する印刷オーダーのペーパーPに対して印刷面にインクが付着して汚れてしまうおそれをより一層軽減することができる。なお、印字ヘッド62の移動タイミングは、第4センサ43の検知信号に基づいて制御される。
【0102】
なお、本実施形態では、両面印刷情報に基づいて、印字ヘッド62の位置を印字位置と退避位置との間で変更するようにしたが、印刷オーダー毎に裏面印字の要否を設定するようにしてもよい。
【0103】
具体的に、裏面印字を行う場合には、オペレータの入力等により、「裏面印字要」であると設定して、上述したように、両面印字情報を取得した場合に印字ヘッド62を印字位置から退避位置に移動させる一方、両面印字情報を取得しなかった場合に印字ヘッド62を印字位置に位置付ける。また、裏面印字を行わない場合には、「裏面印字否」と設定して、片面印刷のオーダー又は両面印刷のオーダーにかかわらず、そのオーダーの印刷処理を行っている間は、印字ヘッド62を退避位置に位置付ける。
【0104】
図2に示すように、前記下流側ローラ対78の搬送経路よりも右側には、印刷部21においてペーパーPの印刷面に付着したインクを乾燥させるための乾燥風をペーパーPの印刷面に吹き付ける乾燥装置56が配設されている。この乾燥装置56は、乾燥装置56内に空気を取り込むための吸入ファン57と、この吸入ファン57で取り込んだ空気を加熱する加熱ヒータ58と、乾燥装置56の前側に開口して、加熱ヒータ58で加熱された空気を乾燥風としてペーパーPの印刷面に吹き付ける排気ノズル部59とがそれぞれ上下2列に設けられている。
【0105】
ここで、前記乾燥装置56によるインクの乾燥度合いは、インクジェットプリンタAが設置された環境条件(温度や湿度等)に応じて変化するため、下流側ローラ対78の回転速度が変更されて、ペーパーPの搬送速度が変更されるようになっている。乾燥装置56によって乾燥されたペーパーPは、排出ローラ対80に搬送される。なお、乾燥装置56の下流側には、下流側ローラ対78より送り出されたペーパーPの先端を検出する第5センサ44(投光部と受光部とからなる)が配設されている。
【0106】
前記排出ローラ対80は、印刷後のペーパーPを排出口85を介してコンベア装置100の搬送ベルト101上に排出するものである。ここで、マガジンM内でロール状に巻かれていたペーパーPは、巻き癖が付いてカールしているためにデカール処理を行う必要がある。そこで、排出ローラ対80は、ペーパーPのカールを矯正するデカール処理を行うことができるようになっている。具体的に、排出ローラ対80は、ペーパーPをコンベア装置100に搬送する搬送ローラ81と、搬送ローラ81とともにペーパーPを挟持するデカールローラ82とを備えている。また、搬送ローラ81の上流側には、搬送されるペーパーPの動きに連動して回転するフリーローラ83が配設されている。
【0107】
ここで、前記搬送ローラ81に対するデカールローラ82の相対位置を変更することで、ペーパーPをデカールしないで搬送する搬送位置と、ペーパーPをデカールしながら搬送するデカール位置とを切り換えることができる。このように、デカールローラ82によってデカールされたペーパーPは、排出口85を介してコンベア装置100の搬送ベルト101上に排出される。
【0108】
図1に示すように、前記コンベア装置100は、筐体2の排出口85から排出されたペーパーPを載置させるものであり、載置されたペーパーPをベルトコンベア式に搬送する搬送ベルト101と、搬送ベルト101を駆動する駆動ローラ102と、駆動ローラ102を回転可能に支持する搬送本体部103と、搬送本体部103に取り付けられ搬送ベルト101の搬送方向の上流側(図1において左側)に配設された大判トレイ104とを備えている。
【0109】
前記搬送ベルト101における筐体2の排出口85に対応する位置は、排出口85を介して排出された直後のペーパーPを受け止める載置領域とされている。そして、このコンベア装置100は、筐体2の排出口85を介して次に排出されるペーパーPが載置領域に載置される前に、既に載置されているペーパーPを載置領域から退避させるように搬送ベルト101を駆動制御するようになっている。
【0110】
これにより、前記搬送ベルト101上でペーパーPが重なり合うことがないため、ペーパーP上のインクが均一に乾燥しないことで生じるプリント画像の色ムラ等を抑制することができる。
【0111】
なお、次のペーパーPが搬送される際に既に載置されているペーパーPを一気に載置領域外に搬送する間欠送りをするのではなく、搬送ベルト101を一定速度で駆動し続けるようにしてもよい。
【0112】
ここで、前記コンベア装置100は、搬送ベルト101上にL版等の写真サイズのペーパーPが載置された場合には、搬送方向の下流側(図1において右側)に配置された集積装置110に搬送するように駆動制御される一方、B5サイズやA4サイズ等の大判のペーパーPが載置された場合には、搬送方向の上流側の大判トレイ104に搬送するように駆動制御される。このように、ペーパーPのサイズに応じて搬送方向を切り替えるようにすれば、ペーパーサイズ毎に適切な収容位置にペーパーPを搬送することができる。
【0113】
前記集積装置110は、コンベア装置100の搬送方向の下流側に配置され、コンベア装置100から搬送されたペーパーPを集積するためのものであり、前側が開口した箱型の集積本体部111と、集積本体部111内の上下両端に配設されたローラ対(図示省略)に適当なテンションを有した状態で巻き掛けられた無端状の集積ベルト113と、集積ベルト113の外周面に略等間隔に設けられた集積プレート112とを備えている。前記ローラ対は、集積ベルト113を回転させて集積プレート112を搬送方向に移動させるための駆動モータ(図示省略)に接続されている。
【0114】
前記複数枚の集積プレート112のうち、集積本体部111外部に露出している集積プレート112は、集積ベルト113の回転動作に追従して下方に移動する一方、集積本体部111内部に収容されている集積プレート112は、集積ベルト113の回転動作に追従して上方に移動するように構成されている。すなわち、集積プレート112は、集積ベルト113とともに、ローラ対の周囲を連続して回転可能に構成されている。
【0115】
前記集積プレート112は、搬送ベルト101の下流側のペーパーPの受け渡し位置において、プレート表面が水平で且つ搬送ベルト101のベルト面と略面一になるように待機しており、所定の印刷オーダーに対応した枚数が集積された後、次のオーダーのペーパーPが搬送される前に、集積ベルト113により下方に搬送される。
【0116】
具体的に、まず、ペーパーPが、集積待機位置(ペーパーPを集積するために集積プレート112が水平に待機している位置)に位置する集積プレート112に集積される。例えば、1オーダー分のペーパーPが集積プレート112上に集積される。
【0117】
次に、前記集積ベルト113を駆動させることで、集積プレート112を1つ分だけ下方に移動させる。すなわち、1オーダー分のペーパーPが集積された集積プレート112が下方に移動することによって、新たな集積プレート112が集積待機位置に位置することになる。
【0118】
そして、このようなオーダー毎の集積及び搬送を繰り返すことで、隣り合う集積プレート112間にオーダー毎のペーパーPを集積して搬送することが可能となる。そして、各集積プレート112がペーパーPで満杯になる前に、各集積プレート112に集積されているペーパーPをオペレータが取り出して回収するようにしている。
【0119】
また、前記集積本体部111のペーパーPの受け渡し位置には、垂直方向に立設する案内板115が設けられている。この案内板115は、コンベア装置100から集積装置110側に受け渡されたペーパーPが集積プレート112上に右端縁を揃えて積載されるように案内するためのものである。
【0120】
前記集積装置110には、L版等の写真サイズのペーパーPが収容される一方、大判トレイ104には、B5サイズやA4サイズ等の大判のペーパーPが収容される。しかしながら、例えば、大判トレイ104に載置可能なペーパーサイズを超える長尺のペーパーPに対して印刷を行う場合には、そのペーパーPの長さは、コンベア装置100の搬送ベルト101の幅よりも大きいため、搬送ベルト101を幅方向に通過して筐体2上部からペーパーPが落下してしまうこととなる。
【0121】
そこで、本実施形態に係るインクジェットプリンタAでは、搬送ベルト101を挟んで筐体2の排出口85の反対側に立設するように排出トレイ87を設けるようにしている。また、排出トレイ87に載置された片面印刷後のペーパーPをオペレータが回収して、画像印刷された面を下向きにして手差トレイ7に差し込んで再度印刷処理を行うことで、ペーパーPの両面に印刷を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0122】
以上説明したように、本発明は、両面印刷を行うペーパーの印刷面にインクリボンのインクが付着してしまうのを防止することができるという実用性の高い効果が得られることから、きわめて有用で産業上の利用可能性は高い。
【符号の説明】
【0123】
60 裏面印字装置(裏面印字手段)
62 印字ヘッド
65 インクリボン
66 本体部
68 駆動モータ(位置変更手段)
68a 駆動カム(位置変更手段)
90b 支持軸
91 カムフォロア
A インクジェットプリンタ(画像形成装置)
P ペーパー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクが担持されたインクリボンをペーパーの印刷面の裏面に押圧してインクを転写する裏面印字手段を備えた画像形成装置であって、
前記裏面印字手段は、
前記インクリボンを押圧する印字ヘッドと、
前記印字ヘッドの位置を、前記ペーパーの搬送経路に近接させて該ペーパーの裏面に印字可能な印字位置と、該ペーパーの搬送経路から退避させた退避位置とに変更する位置変更手段とを備えていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記位置変更手段は、前記ペーパーに両面印刷を行うことを示す両面印刷情報に基づいて、前記印字ヘッドの位置を前記印字位置から前記退避位置に変更するように構成されていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記ペーパーの幅方向に延びる支持軸と、
前記支持軸の下方に配設されたカムフォロアと、
前記印字ヘッドを収容するとともに前記支持軸に対して回動自在に支持された本体部とを備え、
前記位置変更手段は、前記カムフォロアに対応するように前記本体部に設けられた駆動カムと、該駆動カムを回転駆動する駆動モータとを有し、該駆動モータの回転駆動により該駆動カムを該カムフォロアに押圧させて該本体部を前記支持軸周りに回動させることで、前記印字ヘッドの位置を前記印字位置から前記退避位置に変更するように構成されていることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−84021(P2011−84021A)
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−240101(P2009−240101)
【出願日】平成21年10月19日(2009.10.19)
【出願人】(000135313)ノーリツ鋼機株式会社 (1,824)
【Fターム(参考)】