説明

画像形成装置

【課題】装置を大型化させることなく、白点現象を抑制し、画像の品質を高める。
【解決手段】2次転写ローラ35の両端側に、2次転写ローラ35の中間転写ベルト14への押付を規制するための押付規制部材38を設け、押付規制部材38を導電材料により形成すると共に、転写電圧を2次転写ローラ35だけでなく押付規制部材38にも印加する。これにより、転写電流の一部を、押付規制部材38を介して中間転写ベルト14側に流し、転写電圧を下げ、白点現象を抑制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンタ、ファクシミリ等として用いることができる電子写真方式の画像形成装置に関し、より詳しくは、像担持体上のトナー像を記録用紙等の記録媒体に転写する機構を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機やプリンタ等の電子写真方式の画像形成装置においては、像担持体として感光体ドラムが広く用いられている。感光体ドラムを用いた一般的な画像形成動作は以下の通りである。
【0003】
すなわち、帯電装置により感光体ドラムの表面を所定電位で一様に帯電せしめ、そこに露光装置からレーザ光またはLED光等を照射する。これにより、感光体ドラム表面の電位が部分的に光減衰し、感光体ドラム上に原稿画像の静電潜像が形成される。その後、感光体ドラムの表面が現像装置を通過する際に、感光体ドラム上に形成された静電潜像の表面電位、トナーの帯電、および現像装置に印加されたバイアス電圧の関係により現像が行われ、感光体ドラム上にトナー像が形成される。このトナー像は、互いに接触または接近した感光体ドラムと転写部材(例えば転写ローラ)との間を、記録媒体(例えば記録用紙)が通過するときに、転写部材に印加されるバイアス電圧(転写電圧)により静電的に記録媒体に転写される。
【0004】
ここで、転写部材は例えばばね等の付勢部材により感光体ドラムに押し付けられ、これにより、転写部材の外周部が弾性変形し、転写部材と感光体ドラムとの間にニップ部が形成される。転写の際には、記録媒体が転写部材と感光体ドラムとの間のニップ部を通過することによって転写が実現する。トナー像の記録媒体への適切な転写を実現するためには、転写部材の感光体ドラムに向けての押付を適切に規制してニップ部の面積を適正な面積に維持することが望ましい。このため、転写部材の両端側であって、記録用紙上に画像を印刷可能な領域から外れた位置に押付規制部材が設けられている。例えば、押付規制部材は転写部材の径寸法よりもわずかに小さい径寸法を有する硬質な材料により形成され、転写部材と共に同一の軸に取り付けられている。転写部材を感光体ドラムに押し付けると、転写部材は感光体ドラムに押されて変形するも、その変形量は、押付規制部材が感光体ドラムの両端部に接触することによって規制される。これにより、ニップ部の面積が適正な面積に維持される(特許文献1または2参照)。
【0005】
以上の画像形成動作は、像担持体である感光体ドラムから記録媒体にトナー像を直接転写する方式によるものであり、この方式はモノクロ印刷用画像形成装置で一般的に採用されている。
【0006】
一方、所謂タンデム型のカラー印刷用画像形成装置では、トナー像を中間転写体に一旦担持させた後、中間転写体から記録媒体に転写する方式を採用している。
【0007】
すなわち、複数色のトナーにそれぞれ対応した複数の画像形成部を一列に並べて配置し、各画像形成部が有する感光体ドラム上にトナー像を形成する。続いて、各感光体ドラムと対向した位置に配置された1次転写用の転写部材にバイアス電圧を印加し、各感光体ドラム上に形成したトナー像を中間転写体上に順次重ねて1次転写する。続いて、2次転写用の転写部材にバイアス電圧(転写電圧)を印加し、中間転写体上に1次転写したトナー像を一括して記録媒体に2次転写する。
【0008】
タンデム型のカラー印刷用画像形成装置においても、転写部材の中間転写体に向けての押付を適切に規制してニップ部の面積を適正な面積に維持するために、転写部材の両端側であって、記録用紙上に画像を印刷可能な領域から外れた位置に押付規制部材を設ける構成が採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平1−316774号公報
【特許文献2】特開平5−134565号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述した画像形成装置において、低温低湿環境下で、抵抗が高い記録媒体に、像担持体上のトナー像を転写させると、白点現象が発生する場合がある。例えば両面印刷で記録用紙の第2面にトナー像を転写させる場合などのように、1度定着部を通過した記録媒体にトナー像を転写させる場合に、白点現象が発生し易くなる傾向がある。
【0011】
白点現象とは、トナーの一部が記録媒体に転写されないことにより記録媒体に転写された画像に微小な白点が生じる現象である。この白点現象は次のような原因により起こるものと考えられる。
【0012】
すなわち、転写部材への転写電圧の印加は定電流制御により行われ、この定電流制御における印加電流(転写電流)の値は、適切な転写を実現するために所定の値に設定されている。このため、記録媒体の抵抗が高い場合には、像担持体と転写部材との間を記録媒体が通過する直前または通過中に、転写電圧の絶対値が通常よりも大きくなる。これにより、転写部材または記録媒体が放電を起こしてしまい、その放電を受けたトナーが未帯電となり、あるいは当該トナーの帯電極性が逆極性となってしまい、当該トナーが像担持体から記録媒体に転写されなくなってしまう。この結果、白色の記録用紙等の記録媒体に転写を行った場合には、未転写の微小な部分において白色の記録用紙が露出するため、その部分が微小な白点となって顕在化する。
【0013】
白点現象を抑えるために、転写部材の長さを記録媒体の幅よりも大きくし、通紙領域外に転写電流の一部を流すことにより転写電圧の絶対値を小さくすることが考えられる。しかし、この方法を採用した場合には、転写部材を長くする必要があるため、画像形成装置が大型化してしまうという問題がある。
【0014】
また、感光体ドラムとしてアモルファスシリコンを用いる場合、静電容量が有機感光体(OPC)に比べて大きいため、転写部材に印加する転写電圧の絶対値を大きな値に設定する。この結果、白点現象がいっそう発生し易くなる。
【0015】
また、タンデム型のカラー印刷用画像形成装置の場合、中間転写体上のトナーが複数の感光体ドラムと複数の1次転写用転写部材との間(例えば4箇所)を通過する際に、より帯電してしまうため、2次転写用転写部材に印加する転写電圧の絶対値を大きな値に設定する。この結果、白点現象がいっそう発生し易くなる。
【0016】
本発明は例えば上述したような問題に鑑みなされたものであり、本発明の課題は、装置を大型化させることなく、白点現象を抑制し、画像の品質を高めることができる画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するために、本発明の第1の画像形成装置は、静電気力によりトナー像を担持する像担持体と、前記像担持体に向けて押し付けられることにより前記像担持体との間にニップ部を形成し、前記ニップ部を通過する記録媒体に前記トナー像を転写する転写部材と、前記トナー像を前記像担持体から前記記録媒体に転写するために前記転写部材に転写電圧を印加する転写電圧印加手段と、前記像担持体に接触することにより前記転写部材の前記像担持体への押付を規制する押付規制部材とを備えた画像形成装置であって、前記押付規制部材を導電材料により形成し、前記転写電圧印加手段による転写電圧を前記転写部材だけでなく前記押付規制部材にも印加することを特徴とする。
【0018】
上記課題を解決するために、本発明の第2の画像形成装置は、上述した本発明の第1の画像形成装置において、前記押付規制部材は、回転軸を有する回転体である前記転写部材の軸方向端側に設けられ、かつ前記記録媒体に画像を印刷可能な領域外に位置することを特徴とする。
【0019】
上記課題を解決するために、本発明の第3の画像形成装置は、上述した本発明の第2の画像形成装置において、前記押付規制部材は前記転写部材の軸方向端部に接触していることを特徴とする。
【0020】
上記課題を解決するために、本発明の第4の画像形成装置は、上述した本発明の第1ないし第3のいずれかの画像形成装置において、前記像担持体はアモルファスシリコンを含む材料により形成された感光体を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、装置を大型化させることなく、転写電圧の絶対値を効果的に小さくすることができ、白点現象を抑制して画像の品質を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1の実施形態による画像形成装置を示す説明図である。
【図2】図1中の画像形成装置の一部を拡大して示す説明図である。
【図3】本発明の第1の実施形態において、サイドユニットを引き出した状態で、サイドユニットに配置された2次転写ローラ、押付規制部材等を示す斜視図である。
【図4】図3中の2次転写ローラ、押付規制部材等の一部を拡大して示す斜視図である。
【図5】本発明の第1の実施形態において、駆動ローラ、中間転写ベルト、2次転写ローラ、押付規制部材等を示す説明図である。
【図6】比較例による画像形成装置および本発明の第1の実施形態による画像形成装置について、2次転写における転写電流の電流密度と転写電圧との関係を示す特性線図である。
【図7】本発明の第2の実施形態において、駆動ローラ、中間転写ベルト、2次転写ローラ、押付規制部材等を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照しながら説明する。まず、本発明の第1の実施形態について説明する。図1は本発明の第1の実施形態による画像形成装置を示している。図2は図1中の画像形成装置の一部を拡大して示している。
【0024】
図1において、画像形成装置1は、例えば複写機、プリンタ、ファクシミリ等として用いることができる電子写真方式の画像形成装置であり、具体的には、タンデム型のカラー印刷用画像形成装置である。
【0025】
画像形成装置1の上部には、原稿を載置する原稿載置ガラス、原稿載置ガラスに載置された原稿から画像を光学的に読み取る原稿読取装置(いずれも図示せず)、原稿載置ガラスに載置された原稿を押さえる原稿押さえ2、原稿載置ガラス上に原稿を自動的に搬送する原稿搬送装置3、ユーザが画像形成装置1を操作するための操作パネル4、および、後述するように画像の印刷処理が行われてハウジング6内から排出された記録用紙Pを載置する排紙トレイ5等が設けられている。
【0026】
また、画像形成装置1のハウジング6内には、原稿読取装置により読み取られた原稿画像等を記録用紙Pに印刷する印刷機構が設けられており、この印刷機構は、後述する画像形成ユニット11、複数の搬送ローラ対31、33、2次転写ローラ35、押付規制部材38(図3ないし図5参照)、分離電極41、定着装置43等を備えている。さらに、ハウジング6の下部には、記録用紙Pを収容する給紙カセット7が取り付けられている。
【0027】
画像形成ユニット11は、中間転写ベルト14の表面にトナー像を担持させる機構であり、駆動ローラ12、従動ローラ13、中間転写ベルト14、複数の支持ローラ15、複数の画像形成部16および複数の1次転写ローラ17等を備えている。
【0028】
駆動ローラ12および従動ローラ13は互いに離間して配置され、駆動ローラ12は、外径が30mm程度であり、例えば金属軸およびEPDMゴム(エチレンプロピレンゴム)から構成されている。
【0029】
中間転写ベルト14は、例えば、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)樹脂により形成された基材上に、NBRゴム(ニトリルゴム)により形成された弾性層とPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)により形成されたコート層とを順次積層した三層構造の無端状ベルトであり、駆動ローラ12と従動ローラ13との間に架けられると共に、複数の支持ローラ15により支持されている。なお、2次転写に着目した場合には、中間転写ベルト14が像担持体に相当する。
【0030】
画像形成部16は、中間転写ベルト14の下側に設けられ、例えばマゼンタ、シアン、イエロー、ブラックのトナー像を中間転写ベルト14の表面にそれぞれ形成する。これら4個の画像形成部16は、中間転写ベルト14の上流側から下流側にかけてマゼンタ、シアン、イエロー、ブラックの順序で並べて配置されている。
【0031】
図2に示すように、各画像形成部16は、アモルファスシリコンにより形成され、中間転写ベルト14の表面に対向するように配置された感光体ドラム21、感光体ドラム21を帯電させる帯電装置22、感光体ドラム21上に静電潜像を形成する露光装置23、感光体ドラム21上にトナー像を形成する現像装置24、転写後に感光体ドラム21上に残留したトナーを除去するクリーニング装置25等を備えている。
【0032】
1次転写ローラ17は、中間転写ベルト14を挟み、4個の画像形成部16の感光体ドラム21と対向するようにそれぞれ設けられている。各1次転写ローラ17は、外径が20mm程度であり、軸方向長さが305mm程度であり、例えば金属軸およびEPDM発泡体から構成され、6.5logΩ程度の抵抗を有する。
【0033】
各搬送ローラ対31は、給紙カセット7に収容された記録用紙P等を、搬送通路32を介し、駆動ローラ12に架けられた中間転写ベルト14と2次転写ローラ35との間および定着装置43へ順次搬送し、排紙トレイ5に排出するローラ対である。一方、各搬送ローラ対33は、両面印刷時に両面印刷用の搬送通路34を介して記録用紙Pを搬送するローラ対である。
【0034】
2次転写ローラ35は、中間転写ベルト14に担持されたトナー像を記録用紙Pに転写する転写部材であり、中間転写ベルト14を挟んで駆動ローラ12と対向するように設けられている。2次転写ローラ35は、外径が22mm程度であり、例えば、金属材料等の導電材料により形成されたローラ軸35Aの周囲に、導電性を有するエピクロロヒドリン発泡体から形成されたローラ部35Bを設けることにより、回転軸を有する回転体として構成され、抵抗は7logΩ程度である。
【0035】
また、2次転写ローラ35の軸方向長さは、画像形成装置1により画像を印刷することが可能な記録用紙Pのうち最大の幅を有するものの幅寸法である最大用紙幅以上であればよいが、最大用紙幅よりもわずかに大きい程度であることが好ましい。本実施形態では、画像形成装置1における最大用紙幅は例えば297mm(A4横)であるので、2次転写ローラ35の軸方向長さは例えば306mm程度である。
【0036】
また、2次転写ローラ35は、ばね等の付勢部材36(図5参照)により、駆動ローラ12に架けられた中間転写ベルト14に押し付けられることによりその外周部が弾性変形し、これにより中間転写ベルト14との間にニップ部35Cを形成する。記録用紙Pは、ニップ部35Cを通過することによりトナー像が転写される。
【0037】
さらに、2次転写ローラ35のローラ軸35Aには転写電圧印加回路37が電気的に接続されている。転写電圧印加回路37は、中間転写ベルト14に担持されたトナー像を記録用紙Pに2次転写するためのバイアス電圧である転写電圧を2次転写ローラ35に印加するための定電流制御回路であり、例えばハウジング6の背面側に取り付けられている。
【0038】
ここで、転写電圧印加回路37による定電流制御における印加電流(転写電流)の値は、適切な2次転写を実現するために所定の値に設定されている。具体的には、2次転写ローラ35に転写電圧を印加したとき、駆動ローラ12側の中間転写ベルト14と2次転写ローラ35との間を記録用紙Pが通過する通紙領域における電流密度が所定の範囲内となるように、転写電流の値が設定されている。
【0039】
また、2次転写ローラ35の両端側には一対の押付規制部材38が設けられている。押付規制部材38については後述する。
【0040】
分離電極41は、記録用紙Pの搬送方向(図2中の矢示参照)において2次転写ローラ35の下流側に設けられている。分離電極41は、トナー像が転写された記録用紙Pを除電し、当該記録用紙Pを中間転写ベルト14から分離させるための電極であり、複数の針状電極41Aを2次転写ローラ35の軸方向に沿うように配列することにより形成されている(図3または図4参照)。また、分離電極41には、分離電圧を印加するための分離電圧印加回路(図示せず)が電気的に接続されている。さらに、分離電極41と2次転写ローラ35との間には、転写電圧と分離電圧との干渉を規制するための仕切板42が設けられている。仕切板42は、2次転写ローラ35の軸方向と平行に伸びる長板状に形成されている(図4参照)。
【0041】
また、図1中の定着装置43は、分離電極41の下流側に設けられ、2次転写により記録用紙Pに転写されたトナー像を記録用紙Pに定着させる装置である。
【0042】
各搬送ローラ対33、搬送通路34の一部、2次転写ローラ35、各押付規制部材38、分離電極41、仕切板42等は、図1に示すようにサイドユニット45に組み込まれている。サイドユニット45は、その基端側がハウジングの側面に回動可能に固定されており、ユーザは、メンテナンス、ジャム処理等を行うために、サイドユニット45の先端側をハウジング2から外側に引き出すことができる。2次転写ローラ35はサイドユニット45を閉じた状態で、駆動ローラ12側の中間転写ベルト14に押し付けられる。
【0043】
図3および図4は、サイドユニット45を引き出した状態で、サイドユニット45に組み込まれた2次転写ローラ35、押付規制部材38等を示している。図5は、駆動ローラ12、中間転写ベルト14、2次転写ローラ35、付勢部材36、押付規制部材38等を示している。これより、図3ないし図5を参照しながら、押付規制部材38について説明する。
【0044】
一対の押付規制部材38は、駆動ローラ12側の中間転写ベルト14に接触することにより2次転写ローラ35の中間転写ベルト14への押付を規制する部材である。各押付規制部材38は、図5に示すように、2次転写ローラ35の両端側に設けられ、かつ、最大用紙幅を有する記録用紙Pに画像を印刷可能な領域である印刷可能領域Rから外れた位置に配置されている。具体的には、各押付規制部材38は、図3または図4に示すように、ローラ軸35Aの端部に装着されている。
【0045】
各押付規制部材38は、例えばポリアセタール等の硬質な導電性を有する樹脂材料、または金属材料等の硬質導電材料により環状に形成され、その抵抗は例えば、転写電圧として1000Vを印加した場合において、およそ5ないし9log10Ωであり、より具体的には7.5log10Ωである。また、各押付規制部材38の外径は2次転写ローラ35の外径よりもわずかに小さく、例えば21mmである。
【0046】
サイドユニット45が閉じられたとき、2次転写ローラ35は、駆動ローラ12側の中間転写ベルト14に接触し、付勢部材36により中間転写ベルト14に押し付けられる。これと同時に、各押付規制部材38は、中間転写ベルト14の両端部に接触する。2次転写ローラ35は付勢部材36による押圧力により中間転写ベルト14に押し付けられて変形するが、その変形量は、各押付規制部材38が中間転写ベルト14の両端部に接触することによって規制される。これにより、ニップ部35Cの面積が適正な面積に維持される。
【0047】
また、各押付規制部材38は、ローラ軸35Aに接触しており、ローラ軸35Aに電気的に接続されている。これにより、転写電圧印加回路37により印加される転写電圧は、2次転写ローラ35だけでなく、各押付規制部材38にも印加される。
【0048】
以上のような構成を有する画像形成装置1は次のように動作する。すなわち、各画像形成部16において、帯電装置22により、感光体ドラム21の表面を帯電させ、続いて、露光装置23により、感光体ドラム21の表面に、原稿読取装置により読み取られた原稿画像等に対応する画像の静電潜像を形成する。続いて、現像装置24により、トナーを帯電させつつ、感光体ドラム21表面の静電潜像が形成された部分に静電気力によりトナーを付着させ、感光体ドラム21上にトナー像を形成する。
【0049】
続いて、各画像形成部16の感光体ドラム21に形成されたトナー像を、各感光体ドラム21と各1次転写ローラ17との間を通過する中間転写ベルト14の表面に静電気力により順次重ねて転写する(1次転写)。これにより、中間転写ベルト14はカラーのトナー像を担持した状態となる。
【0050】
続いて、中間転写ベルト14に担持されたトナー像を、搬送ローラ対31により給紙カセット7から搬送通路32を介して駆動ローラ12側の中間転写ベルト14と2次転写ローラ35との間(ニップ部35C)に搬送された記録用紙P等に転写する(2次転写)。
【0051】
続いて、記録用紙Pに2次転写されたトナー像を定着装置43により記録用紙Pに定着させ、トナー像が定着した記録用紙Pを排紙トレイ5に排出する。
【0052】
また、両面印刷を行う場合には、一度、定着装置43により定着処理が行われた記録用紙Pを、搬送通路34等を通過させることにより、印刷面(転写面)を反転させた後、再び、駆動ローラ12側の中間転写ベルト14と2次転写ローラ35との間(ニップ部35C)に搬送して2次転写を行い、その後、定着装置43により定着処理を行い、それから排紙トレイ5に排出する。
【0053】
このような画像形成装置1の動作において、2次転写を行うときには、転写電圧印加回路37により2次転写ローラ35に、トナーの帯電電圧と逆極性の転写電圧を印加する。これにより、中間転写ベルト14の表面に形成されたトナーが記録用紙Pに付着し、2次転写が実現する。
【0054】
ここで、2次転写時において、転写電圧印加回路37からの転写電圧は2次転写ローラ35だけでなく各押付規制部材38にも印加される。このため、転写電圧の印加時に転写電圧印加回路37により供給された転写電流は、2次転写ローラ35だけでなく各押付規制部材38にも流れる。各押付規制部材38は導電性を有し、駆動ローラ12に架けられた中間転写ベルト14に接触しているため、転写電圧印加回路37により供給された転写電流の一部は、各押付規制部材38を介して中間転写ベルト14(駆動ローラ12)側に流れる(図5中の破線の矢示参照)。
【0055】
このため、通紙領域において上記所定の範囲内の電流密度を確保するためには、押付規制部材38を介して中間転写ベルト14に流れ込む電流分を考慮して転写電流の絶対値を増加させなければならないが、このように転写電流の絶対値を増加させても、転写電圧の絶対値を小さくすることができる。したがって、駆動ローラ12側の中間転写ベルト14と2次転写ローラ35との間を通過する記録用紙Pの抵抗が高い場合でも、転写電圧の絶対値の増加を抑えることができ、転写電圧の絶対値の増加により発生するおそれがある2次転写ローラ35または記録用紙Pの放電を防ぐことができ、これにより、上述した白点現象を効果的に抑制することができる。
【0056】
特に、両面印刷時において、一度定着処理を行った後の記録用紙Pの第2面に2次転写を行う場合には、定着処理における加熱等により当該記録用紙Pの抵抗が大幅に高くなることがあり、それゆえ白点現象の発生が特に心配されるが、本実施形態による画像形成装置1によれば、転写電流の一部を、各押圧規制部材38を介して中間転写ベルト14側に流すことによって転写電圧の絶対値を下げ、この白点現象の発生を効果的に抑制することができる。
【0057】
以上説明した通り、本実施形態による画像形成装置1によれば、適切な2次転写を実現するための通紙領域における所定範囲内の電流密度を確保しながら2次転写における転写電圧の絶対値を小さくすることができ、記録用紙Pの抵抗が高い場合でも、白点現象の発生を効果的に抑制することができ、印刷画像の品質を高めることができる。
【0058】
特に、両面印刷時における記録用紙Pの第2面に対して2次転写を行う場合に、当該記録用紙Pの抵抗が、片面印刷時において2次転写を行うときの記録用紙Pの抵抗、あるいは両面印刷時において第1面に対して2次転写を行うときの記録用紙Pの抵抗よりも高いときでも、通紙領域において上記適切な電流密度を確保しながら転写電圧の絶対値を小さくでき、白点現象の発生を効果的に抑制して印刷画像の品質を高めることができる。
【0059】
この点について、比較例による画像形成装置と本発明の第1の実施形態による画像形成装置1と比較し、図6中のグラフを参照しながら、さらに具体的に説明する。比較例による画像形成装置は、各押付規制部材に転写電圧が印加されない構成を採用している。
【0060】
比較例による画像形成装置の場合、A4横サイズの第2面に2次転写を行うときに、通紙領域における上記所定の範囲内の電流密度(例えば−1.2〜−1.3μA/cm)を確保するため、転写電流を例えば−37.5μAに設定する必要がある(このときの通紙領域における電流密度は−1.26μA/cmである)。この結果、転写電圧が−1.67kVとその絶対値が大きくなり、白点現象の発生が見られた(図6中のハッチング上の△印参照)。
【0061】
これに対し、本実施形態による画像形成装置1の場合、A4横サイズの第2面に2次転写を行うときに、通紙領域における上記適切な電流密度(例えば−1.26μA/cm)を確保するためには、転写電流の一部(2.5μA)が各押付規制部材38を介して中間転写ベルト14側に流れることを考慮すると、転写電流を−40.0μAに設定する必要がある。実際にこの値の転写電流を印加したところ、転写電圧が−1.56kVとその絶対値が小さくなり、白点現象の発生は見られなかった(図6中のハッチング上の●印参照)。
【0062】
気温10度かつ湿度15%ないし気温32.5度かつ湿度80%の環境下で、実験を重ねた結果、図6において二点鎖線で示すように、転写電圧の絶対値が1.6kVを超えると白点現象が発生することが判明した。本発明の第1の実施形態による画像形成装置1では、通紙領域における電流密度が上記所定の範囲(例えば−1.2〜−1.3μA/cm)内であるときに、転写電圧の絶対値が1.6kVよりも小さい。このことから、画像形成装置1によれば白点現象の発生を効果的に抑制できることがわかる。
【0063】
さらに、本発明の第1の実施形態による画像形成装置1では、次のような効果を得ることができる。すなわち、転写電流の一部を、各押付規制部材38を介して中間転写ベルト14側に流すことによって白点現象の抑制を実現しているため、当該効果を実現するために2次転写ローラ35の長さを最大用紙幅よりも大幅に長くしなくてもよい。したがって、画像形成装置1の大型化を防止することができる。
【0064】
さらに、本実施形態による画像形成装置1では、各感光体ドラム21の材料が有機感光体に比べて静電容量の大きいアモルファスシリコンであり、しかも、タンデム型のカラー印刷用画像形成ユニット11を採用している。これらの前提的構造に着目すると、先に発明が解決しようとする課題としてとり上げたように、2次転写ローラ35に印加する転写電圧の絶対値を大きくする必要性が高く、それゆえ白点現象が発生し易い。しかし、本実施形態による画像形成装置1によれば、このような構造の下でも、転写電流の一部を、各押付規制部材38を介して中間転写ベルト14側に流すことにより転写電圧の絶対値を小さくすることができ、白点現象の発生を効果的に抑制することができる。
【0065】
また、転写電圧の絶対値を小さくすることにより、2次転写ローラ35の耐久性を高めることができ、画像形成装置1の寿命を延ばすことができる。
【0066】
また、各押付規制部材38に転写電圧を印加するため、各押付規制部材38の表面に付着したトナーを中間転写ベルト14側に戻し、各押付規制部材38の表面に付着したトナーを除去することが可能になる。これにより、各押付規制部材38の中間転写ベルト14への接触状態を良好に保つことができる。したがって、各押付規制部材38により、2次転写ローラ35の中間転写ベルト14への押付を高精度に規制することができ、2次転写ローラ35の中間転写ベルト14に対する押付力を安定させることができる。
【0067】
さらに、各押付規制部材38に転写電圧を印加することにより、各押付規制部材38と中間転写ベルト14(駆動ローラ12)との間に吸着力が生じる。これにより、各押付規制部材38と中間転写ベルト14とを安定的にかつ確実に接触させることができ、2次転写ローラ35の中間転写ベルト14に対する押付力の安定化を図ることができる。
【0068】
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。図7は、本発明の第2の実施形態による画像形成装置における駆動ローラ、中間転写ベルト、2次転写ローラ、押付規制部材等を示している。
【0069】
上述した本発明の第1の実施形態による画像形成装置1では、図5に示すように、各押付規制部材38と2次転写ローラ35との間に空間があり、両者が直接接触していない。これに対し、本発明の第2の実施形態による画像形成装置では、図7に示すように、各押付規制部材51が2次転写ローラ35の端部と直接接触している。すなわち、各押付規制部材51と2次転写ローラ35との互いに向かい合う端面同士が当接しており、両者は電気的に接続された状態となっている。
【0070】
このような構成を有する第2の実施形態の画像形成装置によれば、各押付規制部材51と2次転写ローラ35の端部との直接接触により、転写電圧印加回路37から2次転写ローラ35に供給された転写電流の一部が各押付形成部材51側に流れる。これにより、転写電圧印加回路37から供給された転写電流が各押付規制部材51に直接的に供給されて中間転写ベルト14側に向けて流れる経路に加え、転写電圧印加回路37から2次転写ローラ35に供給された転写電流が、2次転写ローラ35から各押付規制部材51を介して中間転写ベルト14側に向けて流れる経路が形成される(図7中の破線の矢示参照)。この結果、各押付規制部材51を介して中間転写ベルト14側に流れる転写電流の量が多くなる。これにより、転写電圧の絶対値をより一層小さくすることができ、白点現象の発生をより一層効果的に抑制することができる。
【0071】
なお、上述した各実施形態では、各感光体ドラム21をアモルファスシリコンから形成する場合を例にあげたが、有機感光体(OPC)からなる感光体ドラムを採用することも可能である。
【0072】
また、上述した各実施形態では、本発明をタンデム型のカラー印刷用画像形成装置に適用した場合を例にあげたが、本発明はモノクロ印刷用画像形成装置のように、感光体ドラムに形成されたトナー像を記録用紙に直接転写するタイプの画像形成装置にも適用することができる。
【0073】
また、本発明は、請求の範囲および明細書全体から読み取ることのできる発明の要旨または思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う画像形成装置もまた本発明の技術思想に含まれる。
【符号の説明】
【0074】
1 画像形成装置
11 タンデム型画像形成ユニット
12 駆動ローラ
14 中間転写ベルト(像担持体)
16 画像形成部
17 1次転写ローラ
21 感光体ドラム
22 帯電装置
23 露光装置
24 現像装置
25 クリーニング装置
35 2次転写ローラ(転写部材)
35A ローラ部
35C ニップ部
37 転写電圧印加回路(転写電圧印加手段)
38、51 押付規制部材
P 記録用紙(記録媒体)
R 印刷可能領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電気力によりトナー像を担持する像担持体と、
前記像担持体に向けて押し付けられることにより前記像担持体との間にニップ部を形成し、前記ニップ部を通過する記録媒体に前記トナー像を転写する転写部材と、
前記トナー像を前記像担持体から前記記録媒体に転写するために前記転写部材に転写電圧を印加する転写電圧印加手段と、
前記像担持体に接触することにより前記転写部材の前記像担持体への押付を規制する押付規制部材とを備えた画像形成装置であって、
前記押付規制部材を導電材料により形成し、前記転写電圧印加手段による転写電圧を前記転写部材だけでなく前記押付規制部材にも印加することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記押付規制部材は、回転軸を有する回転体である前記転写部材の軸方向端側に設けられ、かつ前記記録媒体に画像を印刷可能な領域外に位置することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記押付規制部材は前記転写部材の軸方向端部に接触していることを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記像担持体はアモルファスシリコンを含む材料により形成された感光体を備えていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−95581(P2011−95581A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−250503(P2009−250503)
【出願日】平成21年10月30日(2009.10.30)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】