説明

画像形成装置

【課題】印刷データを画像データに変換する時間と、画像データを記録用紙100に画像形成する時間とを可能な限り近づけることによって、消耗品である画像形成部20の感光ドラム23等の空転を防ぎ、よって消耗品の寿命を延長させる。
【解決手段】画像形成装置10は、通信部71を介して、ホストコンピュータ200から複数の印刷ページに係る印刷データを受信する。受信した印刷データは、データ解析部72によって画像データに変換する。更に、最大処理時間算出部87によって、印刷ページごとに画像データに変換する処理時間を計測すると共に、処理時間の最大値である最大処理時間を算出する。この最大処理時間に応じて印刷速度切替部83は、画像形成部20の画像形成速度を切替える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置における消耗品の寿命を延長する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、画像形成装置では、次の印刷ページに係る印刷データを画像データに変換する処理時間が画像形成時間より長いと予測されたならば、印刷ページ毎の画像データへの変換処理時間に応じて、記録媒体への画像形成速度を制御し、画像形成部を構成するローラや感光体等のトータル回転数を減らすという技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−178138号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の画像形成装置では、印刷ページ毎に画像形成速度を切り替えるには定着温度の調整が必要という課題があった。更に、この定着温度調整によりパフォーマンスが悪化し、画像形成部を構成するローラや感光体等のトータル回転数が増加してしまうという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の画像形成装置は、ホストコンピュータから、複数の印刷ページに係る印刷データを受信する通信部と、前記印刷データを画像データに変換するデータ解析部と、前記印刷ページごとに前記画像データに変換する処理時間を計測すると共に前記処理時間の最大値である最大処理時間を算出する最大処理時間算出部と、前記最大処理時間に応じて印刷速度を切替える速度切替部とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の画像形成装置によれば、印刷ジョブにおける複数の印刷ページの画像データ変換時間の最大値に応じて画像形成速度を設定する。これにより、画像形成部の空転時間を減らし、消耗品の寿命を伸ばす効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図1は、本発明の実施例1における制御部を示す概略の構成図である。
【図2】図2は、本発明の実施例1における画像形成装置を示す概略の構成図である。
【図3】図3は、図1の制御部による印刷概要動作を示すフローチャートである。
【図4】図4は、図3における消耗品延命モード設定の動作を示すフローチャートである。
【図5】図5は、図3における消耗品簡易延命モード設定の動作を示すフローチャートである。
【図6】図6は、図3における各ページの印刷動作を示すフローチャートである。
【図7】図7は、本発明の実施例1の印刷動作におけるタイムチャートである。
【図8】図8は、本発明の実施例1における画像処理時間と印刷速度の関係を示す図である。
【図9】図9は、サンプルデータ時における各モードの印刷時間と画像形成部の感光ドラム回転数を示す図である。
【図10】図10は、本発明の実施例2における制御部を示す概略の構成図である。
【図11】図11は、本発明の実施例2における各ページの印刷動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明を実施するための形態は、以下の好ましい実施例の説明を添付図面と照らし合わせて読むと、明らかになるであろう。但し、図面はもっぱら解説のためのものであって、本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例1】
【0009】
(実施例1の構成)
図2は、本発明の実施例1における画像形成装置を示す概略の構成図である。
【0010】
画像形成装置10は、タンデム方式のプリンタ装置であり、記録媒体(例えば、記録用紙)100を供給する給紙部11と、記録用紙100にトナー像を形成する画像形成部20と、記録用紙100にトナー像を定着させる定着部40と、記録用紙100を排紙する用紙排出部50と、排紙された記録用紙100を収納するスタッカ部53とを有している。更に画像形成装置10は、各ローラ類を回すための図示しないモータと、搬送路101のローラへの動力伝達のオン/オフするクラッチと、画像形成ユニット22の帯電ローラ24や転写ローラ21等に200V〜5000Vの高電圧を供給する高圧電源と、回路やモータに5V直流や24V直流を供給する低圧電源を有している。
【0011】
用紙カセット110は、記録用紙100を格納する格納手段である。定着部40は、記録用紙100に熱を供給する定着手段である。給紙機構は、記録用紙100を定着手段まで搬送する媒体搬送手段である。
【0012】
給紙部11は、この画像形成装置10の下部に装着された用紙カセット110と、用紙カセット110に格納されている記録用紙100と、用紙カセット110内から分離用舌辺等を併用して1枚ずつ記録用紙100を分離して取り出すためのピックアップローラ12と、給紙ローラ13a及びリタードローラ13bと、給紙センサ14と、一対のレジストローラ15a,15bと、書き出し位置センサ16とを有している。
【0013】
用紙カセット110は、複数の記録用紙100を格納するカセットであり、画像形成装置10の下部に装抜可能に取り付けられている。記録用紙100は、モノクロ又はカラーの画像を記録するための所定の大きさの上質紙、再生紙、光沢紙、マット紙、又はOHP(OverHead Projector)フィルム等である。
【0014】
ピックアップローラ12は、記録用紙100に圧接して回転し、搬送路101の下流側には、給紙ローラ13a及びリタードローラ13bが記録用紙100を挟むように対向して配設され、その下流側には給紙センサ14が設けられている。
【0015】
レジストローラ15a,15bは、給紙ローラ13a及びリタードローラ13bとの搬送路101の下流側に記録用紙100を挟むように対向して配設され、その下流側には書き出し位置センサ16が設けられている。
【0016】
レジストローラ15aは、図示しないレジストモータによって駆動される。
画像形成部20は、図の右側からブラック(K)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の順に4台配設されている画像形成ユニット22(=22−1〜22−4)と、これら画像形成ユニット22の下にそれぞれ配設されている転写ローラ21(=21−1〜21−4)と、ローラ31,32と、このローラ31,32とに張架されている転写ベルト30とを有している。ブラック(K)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)4色に対応した各画像形成ユニット22は、画像情報にもとづく静電潜像を担持する感光ドラム23、感光ドラム23を帯電させる帯電ローラ24、画像情報に対応した光を感光ドラム23の表面に照射する発光ダイオード(以下「LED」という。)ヘッド25、感光ドラム23表面の静電潜像をトナーにより現像する現像ローラ26、トナーを現像ローラ26に供給する供給ローラ27、分離可能なトナーカートリッジ28、図示しないトナー規制部材、及び、感光ドラム23に残留したトナーを書き落とす図示しないクリーニング装置を有している。転写ベルト30は、記録用紙100を搬送すると共に、感光ドラム23に形成されたトナー像を記録用紙100へ転写させる転写体である。転写ベルト30を介して、感光ドラム23と転写ローラ21とは当接されている。画像形成部20は、例えばトナー像である現像剤像を記録用紙100上に現像する現像手段である。
【0017】
感光ドラム23は、アルミニウム等から成る導電性基層の上に光導電層と電荷輸送層からなる感光層を備え、形状は円筒であり、回転可能に支持されて配設されている。感光ドラム23は、帯電ローラ24と、転写ローラ21と、現像ローラ26とが当接し、図示しないクリーニング装置の先端部が接触するよう配設されている。感光ドラム23は、表面に電荷を蓄えることによって、トナー像を担持する像担持体として機能し、図の時計回りの方向に回転する。以下、画像形成ユニット22の構成について感光ドラム23の回転方向順に説明する。
【0018】
帯電ローラ24は、導電性の金属シャフトがシリコーン等の半導電性ゴムによって被覆され、形状は円筒であり、感光ドラム23に圧接して回転可能に支持されて配設されている。帯電ローラ24は、図示しない電源によって帯電し、感光ドラム23に圧接して回転することにより、感光ドラム23に所定の電圧を印加し、よって表面に一様に電荷を蓄える。
【0019】
LEDヘッド25は、複数のLEDと、レンズアレイと、LED駆動素子とで構成され、感光ドラム23の上方に配設されている。LEDヘッド25は、画像情報に対応した光を感光ドラム23の表面に照射し、感光ドラム23の表面に静電潜像を形成する。
【0020】
供給ローラ27は、導電性を有する金属シャフトがゴムによって被覆されて作られ、形状は円筒であり、現像ローラ26に当接するよう配設されている。供給ローラ27は、図示しない電源によって帯電し、現像ローラ26に圧接することにより、現像ローラ26にトナーを供給する。
【0021】
現像ローラ26は、導電性を有する金属シャフトが半導電ウレタンゴム材等によって被覆されて作られ、形状は円筒であり、供給ローラ27と感光ドラム23とに当接し、図示しないトナー規制部材の先端部が接触するよう配設されている。現像ローラ26は、図示しない電源によって耐電し、供給ローラ27と圧接することによりトナーが供給される。
【0022】
図示しないトナー規制部材は、ステンレス等で作られ、形状は板状であり、先端部が現像ローラ26の表面に接触するよう配設されている。図示しないトナー規制部材は、現像ローラ26の表面の一定量を越えたトナーを掻き取ることで、現像ローラ26の表面に形成されるトナーの厚みを、常に均一となるように規制する。
【0023】
図示しないクリーニング装置は、ゴム材等で作られ、形状は板状であり、先端部が感光ドラム23の表面に接触するよう配設されている。図示しないクリーニング装置は、感光ドラム23上に形成されたトナー像を記録用紙100に転写した後において、感光ドラム23に残留したトナーを掻き取ってクリーニングする。
【0024】
定着部40は、定着ローラ41と、バックアップローラ42と、温度検出センサ43と、ハロゲンヒータ44とを備えている。定着ローラ41内部には、ハロゲンランプに代表されるハロゲンヒータ44が配設されている。定着ローラ41の上側には、サーミスタによって構成されている温度検出センサ43が配置され、この定着ローラ41の表面温度を検出する。定着部40は、記録用紙100を加圧加熱することによって、トナー像を定着させる定着手段である。
【0025】
用紙排出部50は、用紙走行路センサ51と、排出ローラ52a,52bとを備えている。排出ローラ52a,52bは、定着部40の搬送路101の下流側に記録用紙100を挟むように、それぞれ対向して配設されており、それぞれ図示しないモータによって駆動される。
【0026】
図1は、本発明の実施例1における制御部を示す概略の構成図である。
本実施例1の画像形成装置10は、通信部71と、データ解析部72と、データバッファ73と、制御部80とを有している。制御部80は、定着制御部81と、搬送制御部82と、印刷速度切換部83と、データ転送部84と、処理時間計測部85と、タイマ86と、最大処理時間算出部87と、処理時間記憶部88とを有している。
【0027】
画像形成装置10は、外部のホストコンピュータ200と通信可能に接続されており、通信部71を介して、ホストコンピュータ200から複数の印刷ページに係る印刷データを受信する。
【0028】
通信部71の出力側は、データ解析部72に接続されている。データ解析部72は、通信部71を介して受信した印刷データを、印刷ページごとに画像データに変換する。データ解析部72の出力側は、制御部80とデータバッファ73に接続されている。データバッファ73の出力側は、データ転送部84を介して画像形成部20に接続されている。
【0029】
テータ転送部の出力側は、画像形成部20に接続されていると共に、処理時間計測部85に接続されている。タイマ86の出力側は、処理時間計測部85に接続されている。処理時間計測部85は、データ転送部84とタイマ86とに基づいて、印刷ページごとに画像処理時間を計測する。
【0030】
処理時間計測部85の出力側は、最大処理時間算出部87に接続されている。最大処理時間算出部87は、印刷ページごとの画像処理時間をもとに、印刷ジョブにおける最大処理時間を算出する。最大処理時間算出部87は、処理時間記憶部88を読み書き可能に接続されている。処理時間記憶部88は、最大処理時間算出部87が算出した値を記憶する最大処理時間記憶部である。
【0031】
処理時間記憶部88の出力側は、印刷速度切換部83に接続されている。印刷速度切換部83は、処理時間記憶部88に記憶された値をもとに、搬送制御部82に印刷速度を指示する。印刷速度切換部83の出力側は、搬送制御部82に接続されている。
【0032】
搬送制御部82の出力側は、定着制御部81を介して定着部40に接続され、更に媒体搬送部60及び画像形成部20に接続されている。
【0033】
(実施例1の動作)
図2を元に、画像形成装置10の印刷動作について説明する。
【0034】
記録用紙100は、搬送路101に沿って上流側から下流側に搬送される。用紙カセット110が最も上流側で、スタッカ部53が最も下流側である。
【0035】
画像形成装置10は、ケーブル或いは無線を通じて上位装置に接続されている。この上位装置から印刷データの転送を受け印刷の指示を受けると、図示しないピックアップモータがピックアップローラ12を回転させ、複数の記録用紙100を1枚ずつ分離して、搬送路101の下流側に送る。図の右側からブラック(K)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の順に4台配設されている各画像形成ユニット22(=22−1〜22−4)は、給紙開始とほぼ同時にローラ類の回転を開始し,感光ドラム23に記録用紙100が到達するまでに、この感光ドラム23を1周以上回転させる。
【0036】
図示しないモータが給紙ローラ13aを回転させると、給紙ローラ13aに接触しているリタードローラ13bは連れ回りする。ピックアップローラ12から搬送されてきた記録用紙100は、給紙ローラ13aとリタードローラ13bに挟持搬送され、給紙センサ14をオンする。そののち、搬送路101の下流側のレジストローラ15a,15bに搬送される。記録用紙100は、書き出し位置センサ16をオンする。書き出し位置センサ16がオンしたあと一定時間後にブラック(K)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)4色の各画像形成ユニット22のLEDヘッド25が露光を開始し、それぞれの色に対応した静電潜像を感光ドラム23上に形成する。
【0037】
図示しないレジストモータがレジストローラ15aを回転させると、レジストローラ15bは接触して連れ回りすると共に、記録用紙100を、搬送路101の下流側の転写ベルト30に搬送する。ローラ31が回転すると、ローラ31,32に張架されている転写ベルト30は搬送路101に沿って駆動される。記録用紙100は、転写ベルト30の駆動によって、ブラック(K)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の順に4台配設されている画像形成ユニット22に順に搬送される。
【0038】
ブラック(K)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の4台の各画像形成ユニット22の感光ドラム23は、時計方向に回転すると共に、最初に帯電ローラ24によって表面が一様に帯電する。一様に帯電した感光ドラム23は、LEDヘッド25によって上位装置から受信した画像情報に基づく光を照射され、静電潜像を形成する。静電潜像を形成した感光ドラム23は、供給ローラ27と現像ローラ26によってトナー像を現像する。トナー像を現像した感光ドラム23は、転写ローラ21と共に転写ベルト30と記録用紙100を挟持搬送すると共に、転写ローラ21に印加された約+3000Vの電圧により、感光ドラム23上のトナーを記録用紙100側に引き寄せ、トナー像の記録用紙100へ転写する。トナー像が転写された記録用紙100は、定着部40に送られてトナー像を定着する。感光ドラム23上に残留したトナーは、図示しないクリーニング装置によって掻き取られ、新たなトナー像の形成に備えられる。
【0039】
ブラック(K)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)4色の各トナー像が転写された記録用紙100は、定着部40において定着ローラ41とバックアップローラ42によって形成されたニップ領域を挟持搬送される。記録用紙100は、ニップ領域において定着ローラ41の熱と、バックアップローラ42の付勢力による圧力が加えられ、トナーが溶融することによってトナー像が定着する。
【0040】
トナー像が定着した記録用紙100は、用紙走行路センサ51によって記録用紙100の先端が検出され、排出ローラ52a,52bの回転によって搬送される。搬送された記録用紙100は、スタッカ部53に排出される。
【0041】
図3は、図1の制御部による印刷概要動作を示すフローチャートである。
処理が開始すると、制御部80は、ステップS1において、通信部71とデータ解析部72とを介してホストコンピュータ200から印刷データを受信し、ステップS2において印刷モードを判断する。印刷モードが消耗品延命モードであればステップS3の処理を行い、消耗品延命モードであればステップS4の処理を行い、印刷速度優先モードであればステップS5の処理を行う。
【0042】
ステップS3において、後述する図4に示す消耗品延命モードの設定を行い、ステップS6において、後述する図6に示す印刷動作を行い、図3の処理を終了する。
【0043】
ステップS4において、後述する図5に示す消耗品簡易延命モードの設定を行い、ステップS6において、後述する図6に示す印刷動作を行い、図3の処理を終了する。
【0044】
ステップS5において標準印刷速度に設定し、ステップS6において、後述する図6に示す印刷動作を行い、図3の処理を終了する。
【0045】
図4は、図3における消耗品延命モード設定の動作を示すフローチャートである。
【0046】
処理が開始すると、制御部80は、ステップS10において、処理時間記憶部88に0を記憶させる。ステップS11〜S18において、印刷データの第1ページから最終ページまで処理を繰り返す。この繰り返し処理において、現在処理中の印刷データを第nページとする。
【0047】
ステップS12において、処理時間計測部85は、処理時間を計測開始する。例えば、タイマ86を初期化するか、又はタイマ86の数値を記憶する等の方法である。
【0048】
ステップS13において、データ解析部72は、処理対象である第nページの印刷データの画像データ化の処理を開始する。ステップS14において、処理時間計測部85は、画像データ化の処理が終了するまで待ち、ステップS15においてタイマ86を介して処理時間を読み取る。
【0049】
ステップS16において、最大処理時間算出部87は、今回の処理時間と、処理時間記憶部88に記憶されている時間を比較する。今回の処理時間の方が処理時間記憶部88の時間よりも大きいならば、ステップS17において、処理時間記憶部88に今回の処理時間を記憶させる。
【0050】
ステップS18において、印刷データの最終ページの処理が終了していたならば、ステップS19の処理を行う。
【0051】
ステップS19において、処理時間記憶部88の時間が、N〔秒〕よりも小さいならばステップS20の処理を行い、N〔秒〕以上ならばステップS21の処理を行う。ここでN〔秒〕とは、標準印刷速度において連続印刷可能な画像処理時間のことである。本実施例1の標準印刷速度は190.4〔mm/SEC〕で、連続印刷可能な画像処理時間は、1.8225〔秒〕である。
【0052】
ステップS20において、印刷速度切換部83は、印刷を標準速度に設定し、図4の処理を終了する。
【0053】
ステップS21において、印刷速度切換部83は、処理時間記憶部88の値に応じて後述する図8に示す関係に基づき、印刷を低速度に設定し、図4の処理を終了する。
【0054】
図5は、図3における消耗品簡易延命モード設定の動作を示すフローチャートである。
【0055】
処理が開始すると、搬送制御部82は、処理時間記憶部88に記憶されている時間を読み取る。処理時間記憶部88には、前回の印刷ジョブにおける各印刷ページの画像処理時間のうち、最大の処理時間が記憶されている。
【0056】
ステップS19において、処理時間記憶部88の時間が、N〔秒〕よりも小さいならばステップS20の処理を行い、N〔秒〕以上ならばステップS21の処理を行う。
【0057】
ステップS20において、印刷速度切換部83は、印刷を標準速度に設定し、図5の処理を終了する。
【0058】
ステップS21において、印刷速度切換部83は、処理時間記憶部88の値に応じて後述する図8に示す関係に基づき、印刷を低速度に設定し、図5の処理を終了する。
【0059】
図6は、図3における各ページの印刷動作を示すフローチャートである。
処理が開始すると、制御部80は、ステップS30において、処理時間記憶部88に0を記憶させる。ステップS31〜S43において、印刷データの第1ページから最終ページまで処理を繰り返す。この繰り返し処理において、現在処理中の印刷データを第nページとする。
【0060】
ステップS32において、処理時間計測部85は、処理時間を計測開始する。例えば、タイマ86を初期化するか、又はタイマ86の数値を記憶する等の方法である。
【0061】
ステップS33において、データ解析部72は、処理対象である第nページの印刷データの画像データ化の処理を開始し、ステップS34において、画像データをデータバッファ73に格納し始め、先頭アドレスを通知する。
【0062】
ステップS35において、処理時間計測部85は、画像データ化の処理が終了するまで待ち、ステップS36においてタイマ86を介して処理時間を読み取る。
【0063】
ステップS37において、最大処理時間算出部87は、今回の処理時間と、処理時間記憶部88に記憶されている時間を比較する。今回の処理時間の方が処理時間記憶部88の時間よりも大きいならば、ステップS38において、処理時間記憶部88に今回の処理時間を記憶させる。
【0064】
ステップS39において、制御部80は、搬送制御部82に搬送開始を指示すると共に搬送制御が開始可能かを判断し、搬送可能になるまで待つ。
【0065】
搬送可能と判断された場合は、ステップS40において記録用紙100の搬送を開始し、ステップS41において画像形成部20に画像データ形成を指示し、ステップS42において定着部40に定着を指示する。ステップS43において、印刷データの最終ページの処理が終了していたならば、図6の処理を終了する。
【0066】
図7(a)〜(c)は、本発明の実施例1の印刷動作におけるタイムチャートであり、横軸は時間を示し、数字は印刷ページを示している。
【0067】
図7(a)は、印刷速度優先モードにおけるタイムチャートである。第1ページと第2ページからなる受信データであったならば、それぞれのページの受信が完了したときに、それぞれのページの画像データ変換処理を行う。それぞれのページの画像データ変換処理が完了したとき、画像形成部20を駆動する。
【0068】
図7(a)に示す例では、第2ページの画像データ変換処理は、1ページあたりの画像形成部20の駆動時間よりも長いので、第1ページの画像形成が完了したのちに、第2ページの画像形成が開始するまでの間、画像形成部20は空転する。
【0069】
図7(b)は、消耗品延命モードにおけるタイムチャートである。第1ページと第2ページからなる受信データであったならば、それぞれのページの受信が完了したときに、それぞれのページの画像データ変換処理を行い、最大の処理時間を計測する。
【0070】
再度、同一のデータを受信して、それぞれのページの画像データ変換処理を行い、最大の処理時間に合わせて画像形成部20を駆動し、画像形成部20の空転を抑止する。この場合には、画像形成部20の空転を抑止できる効果があるが、印刷時間が長くなってしまうという課題がある。
【0071】
図7(c)は、消耗品簡易延命モードにおけるタイムチャートである。第1ページと第2ページからなる受信データであったならば、それぞれのページの受信が完了したときに、それぞれのページの画像データ変換処理を行う。更に、前回の印刷ジョブで測定した最大の処理時間に合わせて画像形成部20を駆動し、画像形成部20の空転を抑止する。この場合には、前回の印刷ジョブが今回の印刷ジョブと類似していたならば、おおよそ画像形成部20の空転を抑えることができ、且つ全体の印刷時間は印刷速度優先モードと変わらないという効果がある。
【0072】
図8は、本発明の実施例1における画像処理時間と印刷速度の関係を示す図である。
【0073】
図8は、最大の画像処理時間が1822.5〔mSEC〕以下であったならば、標準印刷速度の190.4[mm/SEC]が選択されることを示している。最大の画像処理時間が1822.5〔mSEC〕〜1944.0〔mSEC〕であったならば、低速印刷速度1の178.5[mm/SEC]が選択されることを示している。最大の画像処理時間が1944.0mSEC〜2082.8mSECであったならば、低速印刷速度2の166.6[mm/SEC]が選択されることを示している。以下同様に、最大の画像処理時間が大きくなることに応じて、低い印刷速度が選択される。
【0074】
図9は、サンプルデータ時における各モードの印刷時間と画像形成部の感光ドラム回転数を示す図である。
【0075】
このサンプルデータの前提は、処理時間記憶部88には、4400〔mSEC〕が格納され、第1ページの受信データは、2000〔mSEC〕であり、第2ページの受信データは、4000〔mSEC〕である。第1ページの画像データ変換時間は、3800〔mSEC〕であり、第2ページの画像データ変換時間は、5000〔mSEC〕である。給紙トレイから排出口までの距離476.44〔mm〕で、用紙長は297〔mm〕である。連続印刷可能間隔は347〔mm〕で、感光ドラム23の一周距離94.2〔mm〕である。
【0076】
印刷速度優先モードで当該サンプルデータを印刷したときには印刷時間は15124〔mSEC〕で、画像形成ユニット22の感光ドラム23回転数は18.8であった。消耗品延命モードで当該サンプルデータを印刷したときには印刷時間は33719〔mSEC〕で、画像形成ユニット22の感光ドラム23回転数は11.8であった。消耗品簡易延命モードで当該サンプルデータを印刷したときには印刷時間は20799〔mSEC〕で、画像形成ユニット22の感光ドラム23回転数は12.3であった。
【0077】
消耗品簡易延命モードでは、印刷速度優先モードよりもやや印刷時間は長いが、消耗品延命モードとほぼ同等に画像形成ユニット22の感光ドラム23回転数を抑え、よって画像形成部20の空転を抑えることができる。
【0078】
(実施例1の効果)
本実施例1の画像形成装置10によれば、次の(A),(B)のような効果がある。
【0079】
(A) 印刷ジョブにおける複数の印刷ページの画像データ変換時間の最大値に応じて画像形成速度を設定する。これにより、画像形成部20の空転時間を減らし、消耗品の寿命を伸ばす。
【0080】
(B) 前回の印刷ジョブにおける複数の印刷ページの画像データ変換時間の最大値に応じて画像形成速度を設定する。これにより、画像形成部20の空転時間を減らし、消耗品の寿命を伸ばすと共に、比較的短時間に印刷を終了できる。
【実施例2】
【0081】
(実施例2の構成)
図10は、本発明の実施例2における制御部を示す概略の構成図であり、実施例1を示す図1中の要素と共通の要素には共通の符号が付されている。
【0082】
本実施例2の画像形成装置10Aは、図10に示す制御部80Aを有している。
本実施例2の制御部80Aは、実施例1の制御部80に加えて、平均処理時間算出部89と処理時間配列記憶部90を有し、最大処理時間算出部87の出力側は平均処理時間算出部89を介して処理時間記憶部88に接続されている。更に、処理時間配列記憶部90は、平均処理時間算出部89と読み書き可能に接続されている。その他は、実施例1の制御部80と同一の構成である。
【0083】
処理時間配列記憶部90は、値がM個記憶可能な配列構造を有しており、直近M回分の印刷ジョブに於ける最大処理時間が記憶可能な最大処理時間配列記憶部である。
【0084】
(実施例2の動作)
図11は、本発明の実施例2における各ページの印刷動作を示すフローチャートであり、実施例1を示す図6中の要素と共通の要素には共通の符号が付されている。
【0085】
処理が開始すると、制御部80Aは、ステップS30Aにおいて、図示しない一時記憶部に0を記憶させる。ステップS31〜S43において、印刷データの第1ページから最終ページまで処理を繰り返す。この繰り返し処理において、現在処理中の印刷データを第nページとする。
【0086】
ステップS32〜S36の処理は、図6に示す実施例1の処理と同様である。
ステップS37Aにおいて、最大処理時間算出部87は、今回の処理時間と、一時記憶部に記憶されている時間を比較する。今回の処理時間の方が一時記憶部の時間よりも大きいならば、ステップS38において、一時記憶部に今回の処理時間を記憶させる。
【0087】
ステップS39〜ステップS43の処理は、図6に示す実施例1の処理と同様である。
【0088】
ステップS50において、平均処理時間算出部89は、図示しない一時記憶部の値を処理時間配列記憶部90に記憶させる。ステップS51において、平均処理時間算出部89は、処理時間配列記憶部90に記憶されている直近M回の印刷ジョブに於ける最大処理時間の平均値を算出し、処理時間記憶部88に記憶させて、図11の処理を終了する。
【0089】
(実施例2の効果)
本実施例2の画像形成装置10Aによれば、直近の複数の印刷ジョブにおいて、複数の印刷ページの画像データ変換時間の最大値を算出し、これらの複数の最大値の平均値を算出する。この画像データ変換時間の最大値の平均値に応じて画像形成速度を設定する。これにより、画像形成部20の空転時間が平均化され、消耗品の寿命を伸ばす効果がある。
【0090】
(変形例)
本発明は、上記実施例に限定されず、種々の利用形態や変形が可能である。この利用形態や変形例としては、例えば、次の(a),(b)のようなものがある。
【0091】
(a) 実施例1,2は、画像形成装置10に適用した例であったが、ファックス機能、複写機能、又はコピー機能のいずれかを有する複合機に適用しても良い。
【0092】
(b) 実施例1,2は、最大の画像処理時間と、図8に示す連続印刷可能時間と印刷速度の対応関係に基づいて印刷速度を決定したが、最大の画像処理時間と、印刷速度との関係を示す数式に基づいて印刷速度を決定しても良い。これにより、更に正確に空転時間を減らせるという効果を奏する。
【符号の説明】
【0093】
10,10A 画像形成装置
11 給紙部
20 画像形成部
22 画像形成ユニット
23 感光ドラム
40 定着部
50 用紙排出部
60 媒体搬送部
71 通信部
72 データ解析部
73 データバッファ
80,80A 制御部
81 定着制御部
82 搬送制御部
83 印刷速度切換部
84 データ転送部
85 処理時間計測部
86 タイマ
87 最大処理時間算出部
88 処理時間記憶部
89 平均処理時間算出部
90 処理時間配列記憶部
100 記録用紙
200 ホストコンピュータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホストコンピュータから、複数の印刷ページに係る印刷データを受信する通信部と、
前記印刷データを画像データに変換するデータ解析部と、
前記印刷ページごとに前記画像データに変換する処理時間を計測すると共に前記処理時間の最大値である最大処理時間を算出する最大処理時間算出部と、
前記最大処理時間に応じて印刷速度を切替える速度切替部と、
を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記データ解析部が受信した前記印刷データを前記画像データに変換し、前記最大処理時間算出部が前記最大処理時間を計測したのち、前記データ解析部が前記印刷データをふたたび前記画像データに変換することを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
請求項1の画像形成装置は、更に、
前記データ解析部が前記印刷データを全て変換したとき、前記印刷データに係る前記処理時間の最大を算出して前記最大処理時間として記憶する最大処理時間記憶部を有し、
前記速度切替部は、前記最大処理時間記憶部に記憶されている直近の前記印刷データに係る前記最大処理時間に応じて印刷速度を切替えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
前記速度切替部は、前記最大処理時間が所定の処理時間よりも大きいときに、所定の印刷速度に切替えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
請求項3記載の画像形成装置は、更に、
前記データ解析部が前記印刷データを全て変換したとき、前記印刷データに係る前記処理時間の最大を算出して前記最大処理時間として記憶する最大処理時間配列記憶部と、
前記最大処理時間配列記憶部に記憶されている複数の前記印刷データに係る前記最大処理時間の平均である平均最大処理時間を算出する平均処理時間算出部とを有し、
前記速度切替部は、前記平均最大処理時間に応じて印刷速度を切替えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
前記速度切替部は、前記平均最大処理時間が所定の処理時間よりも大きいときに、所定の印刷速度に切替えることを特徴とする請求項5記載の画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2012−101419(P2012−101419A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−250932(P2010−250932)
【出願日】平成22年11月9日(2010.11.9)
【出願人】(591044164)株式会社沖データ (2,444)
【Fターム(参考)】