説明

画像形成装置

【課題】中間転写方式の一次転写部における転写部材としてシート部材を用いたカラー画像形成装置において、一次転写部のシート部材の位置関係を各ステーションにおいて適正に配置することで新たな部材を追加することなく装置の長寿命化を達成する。
【解決手段】シート部材32a〜32dは、中間転写ベルト13を介して感光体1a〜1dと中間転写ベルト13とシート部材32a〜32dとが接触して形成される第1領域と、該第1領域よりも中間転写ベルト13の回転方向下流側でシート部材32a〜32dが中間転写ベルト13に接触し、且つ感光体1a〜1dと中間転写ベルト13とが離間する第2領域とを有し、複数のシート部材32a〜32dのうち中間転写ベルト13の回転方向において最下流側に配置されるシート部材32dの第2領域の中間転写ベルト13の回転方向の長さが最も長いことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機あるいはプリンタなどの電子写真方式の画像形成装置に関し、特に、像担持体、帯電手段、および現像手段などを含む画像形成ユニットを複数個有し、多色画像を形成する画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば電子写真方式を用いる画像形成装置では、像担持体としての電子写真感光体(以下、「感光体」という)上にトナー画像を形成する。そして、トナーの正規の帯電極性とは逆極性の電界を転写手段に与え、転写ベルトに担持されている転写材又は中間転写ベルトの表面に、感光体に担持されているトナー画像を静電的に転移させる転写工程が行われる。
【0003】
そのため、転写ベルトや中間転写ベルトなどの移動可能なベルト体を備えた画像形成装置では、転写手段に対して転写工程に必要な電圧を印加する電圧印加手段が設けられる。
【0004】
この一例として、画像形成部を複数備え、画像形成部内の感光体上に形成されたトナー画像をそれぞれ中間転写ベルトに転写した後、ベルト回転方向下流側で転写材へ一括して転写をおこなう、いわゆる中間転写方式の画像形成装置が普及している。感光体から中間転写ベルトへの転写を一次転写、その後の転写材への一括転写を二次転写と呼ぶ。
【0005】
中間転写ベルトを用いた画像形成装置では、一次転写部材として、中間転写ベルトを挟んで感光体の対向位置(ベルト体の裏面側)に、電圧印加手段としての高圧電源に接続された転写ローラなどの接触転写部材を配置している。ここで、一次転写部材を含む画像形成部をステーションと呼び、ベルト回転方向の上流側から順に第1ステーション、第2ステーション、第3ステーション、第4ステーションのように呼ぶ。
【0006】
ところが、転写ローラを用いた画像形成装置では、ベルト体と転写ローラとの接触領域が転写ローラの撓みの影響などにより長手方向で不均一となることがある。従って、転写工程に必要な電流がベルト体と転写ローラとの接触領域の長手方向で不均一となり、転写不良などの画像不良を引き起こす場合がある。
【0007】
このような問題に対して、特許文献1には、一次転写部材として、シート部材を用いた構成が提案されている。より具体的には、シート部材の裏面に弾性部材を配置し、ベルト体に対してシート部材を加圧配置することで、ベルト体に均一な転写ニップ部を得るようにした転写部材が提案されている。このようなシート部材を用いた転写部材は、各ステーションにおいて、感光体、ベルト体、およびシート部材の位置関係が同じになるように配置されており、装置の小型化と簡略化を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−310060号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1のように、シート部材を各ステーションにおいて感光体とベルト体、およびシート部材の位置関係が同じになるように配置した画像形成装置では、次のような問題があった。
【0010】
ベルト体とシート部材が接触するベルト体の回転方向の長さが何れのステーションでも比較的短いと、ベルト体へ過剰に供給された電荷が中和されない。これにより、ベルト体の回転方向下流側のステーションやベルト体を張架する張架部材の位置で剥離放電による画像不良が発生する。
【0011】
これは、高抵抗のベルト体が接触している感光体や張架部材等の対向部材から分離する際に、それらの離間過程で急激に増加するエアーギャップにかかる電圧が放電閾値を超えるためであり、剥離放電と呼ばれる現象である。
【0012】
この剥離放電によりトナー画像が乱され、「放電跡」が発生する。「放電跡」を防止する方法として、各ステーションの転写ニップ部のベルト体の回転方向下流側において、ベルト体に近接した位置に除電針などの除電器を配置し、ベルト体上の電荷を除去することが考えられるが、装置が大型化する上にコストアップを招いてしまう。
【0013】
逆に、ベルト体とシート部材とが接触するベルト体の回転方向の長さが、何れのステーションでも比較的長いと、各ステーション通過後のベルト体上の電荷が不足し、ベルト体上にトナーを保持することができず、いわゆる「トナーの飛び散り」が発生してしまう。
【0014】
また、シート部材とベルト体との接触面積が増加するために、長期間使用後の装置の駆動トルクが増大し、異なる色を重ねて転写する際に発生する「色ムラ」が顕著になったり、最終的に安定したベルト体の搬送が出来なくなる。特に、長期使用によってベルト体の抵抗値が変動する場合には、上記「放電跡」や「トナーの飛び散り」といった画像不良の改善を両立させるのは困難であり、装置寿命が短くなっていた。
【0015】
ベルト体を含む部材をユニット化し、交換可能とすることで高画質を長期にわたり維持することはできるが、ユーザがユニットを交換する手間と頻度が増えてしまうという問題がある。
【0016】
以上のように、各ステーションにおいて感光体とベルト体、およびシート部材の位置関係が同じになるように配置した従来の画像形成装置では装置の長寿命化が困難であった。
【0017】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、長期間にわたって使用しても画像不良を防止できる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成するため本発明に係る代表的な構成は、トナー画像を担持する複数の像担持体と、回転可能なベルト体と、前記複数の像担持体上のトナー画像を前記ベルト体の表面に転写する複数の転写部材と、を有し、前記ベルト体の移動中に前記複数の転写部材は回転せずに前記ベルト体の裏面に接触する画像形成装置において、前記転写部材には画像形成中にトナーと逆極性のバイアス電圧が印加されており、前記転写部材は、前記ベルト体を介して前記像担持体と前記ベルト体と前記転写部材とが接触して形成される第1領域と、前記第1領域よりも前記ベルト体の回転方向下流側で前記転写部材が前記ベルト体に接触し、且つ前記像担持体と前記ベルト体とが離間する第2領域とを有し、前記複数の転写部材のうち前記ベルト体の回転方向において最下流側に配置される転写部材の前記第2領域の前記ベルト体の回転方向の長さが最も長いことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
上記構成によれば、複数の転写部材のうちベルト体の回転方向において最下流側に配置される転写部材の第2領域のベルト体の回転方向の長さが最も長い。これにより、ベルト体が最下流側に配置される転写部材に接触する時間が最も長くなる。これにより該転写部材に印加されるバイアス電圧によりベルト体上の電荷量の減少が最も大きくなる。これにより該ベルト体と該ベルト体を張架する張架部材との間で剥離放電が発生しない。これにより、トナー画像に「放電跡」と呼ばれる画像不良が発生することを防止できる。これにより、早期に発生していた画像不良を遅延でき、装置の長寿命化が達成できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る画像形成装置の構成を示す断面説明図である。
【図2】本発明に係る画像形成装置の第1実施形態における一次転写部材の近傍の構成を示す断面説明図である。
【図3】第1実施形態における一次転写部材の作用を説明する図である。
【図4】第1実施形態における中間転写ベルト上の電荷量と画像不良との関係を説明する図である。
【図5】第1実施形態で長期使用状態における中間転写ベルト上の電荷量と画像不良との関係を説明する図である。
【図6】第1実施形態において転写部材の第2領域のベルト体の回転方向の長さを変更した場合の画像評価結果を説明する図である。
【図7】本発明に係る画像形成装置の第2実施形態における中間転写ベルト上の電荷量と画像不良との関係を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図を用いて本発明に係る画像形成装置について説明する。
【実施例1】
【0022】
まず、図1〜図6を用いて本発明に係る画像形成装置の第1実施形態の構成について説明する。尚、本実施形態では、第1ステーション6aをイエロー(Y)、第2ステーション6bをマゼンタ(M)、第3ステーション6cをシアン(C)、第4ステーション6dをブラック(Bk)としている。以下、記述の煩雑化を防ぐために、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4つのステーション6a〜6dをステーション6で代表させて説明するものとし、関連する次の各プロセス手段についても同様とする。
【0023】
各ステーション6では、トナー画像を担持する複数の像担持体となる電子写真感光体(以下、単に「感光体」という)1と、帯電手段としての帯電ローラ2を有する。更に、感光体1上の転写残トナーをクリーニングするクリーニングユニット3と、現像手段としての現像ユニット8を有する。現像ユニット8は、現像スリーブ4、現像剤となるトナー5、現像剤塗布ブレード7からなり、これらは、一体型のプロセスカートリッジ9として構成される。11は露光手段であり、レーザー光からなる走査ビーム12を多面鏡によって走査させるスキャナユニットまたはLED(発光ダイオード)アレイから構成され、画像信号に基づいて変調された走査ビーム12を感光体1上に照射する。
【0024】
また、各感光体1に対向して張架部材となる駆動ローラ14、テンションローラ15及び二次転写対向ローラ24により回転可能に張架されたベルト体となる中間転写ベルト13が配置されている。そして、複数の感光体1上(像担持体上)のトナー画像を中間転写ベルト13の表面に転写する複数の転写手段となる一次転写部材30が設けられている。複数の一次転写部材30は中間転写ベルト13の移動中に回転せずに該中間転写ベルト13の裏面に接触する複数の転写部材となるシート部材32を有する。
【0025】
帯電ローラ2には、該帯電ローラ2への電圧供給手段である帯電バイアス電源20が接続されている。現像スリーブ4には、該現像スリーブ4への電圧供給手段である現像バイアス電源21が接続されている。一次転写部材30には、該一次転写部材30への電圧供給手段として画像形成中にトナーと逆極性のバイアス電圧を印加する一次転写電源22が接続されている。中間転写ベルト13を介して二次転写対向ローラ24に対向する二次転写ローラ25には、該二次転写ローラ25への電圧供給手段である二次転写電源26が接続されている。
【0026】
次に感光体1上の画像形成動作について説明する。画像形成動作がスタートすると、感光体1a〜1dや中間転写ベルト13等は所定の画像形成プロセススピード(例えば100mm/sec)で図1の矢印方向にそれぞれ回転を始める。感光体1は帯電ローラ2によって一様に負極性に帯電され、続いて露光手段11からの走査ビーム12によって画像情報に従った静電潜像が形成される。非露光部の感光体1上の電位を暗部電位、露光部の感光体1上の電位を明部電位という。
【0027】
現像ユニット8内のトナー5は、現像剤塗布ブレード7によって負極性に帯電されて現像スリーブ4に塗布される。そして、現像スリーブ4には、現像バイアス電源21よりバイアス電圧が印加される。感光体1が回転して該感光体1上に形成された静電潜像が現像スリーブ4に到達すると、静電潜像は負極性のトナー5によって可視像化される。そして、感光体1a上には第1色目(本実施形態では、イエロー(Y))のトナー画像が形成される。尚、感光体1上の画像形成動作については、第2〜第4ステーション6b〜6cについても第1ステーション6aと同様の構成としているので説明は省略する。
【0028】
トナー画像担持体である中間転写ベルト13は、4つの感光体1a〜1dの全てに対して当接するように配置される。中間転写ベルト13は、その張架部材として二次転写対向ローラ24、駆動ローラ14、テンションローラ15の3本のローラにより支持されており、所定のテンションが維持されるようになっている。また、中間転写ベルト13は駆動ローラ14を図1の矢印方向に回転駆動させることにより図1の矢印方向に回転する感光体1a〜1dに対して順方向に略等速度で移動する。一次転写部材30は、中間転写ベルト13を挟んで感光体1と反対側に配置されている。
【0029】
各一次転写部材30は、図2に示すように、弾性部材31と可撓性を有するシート部材32からなり、該シート部材32は中間転写ベルト13と弾性部材31との間に挟持されている。一次転写部材30は中間転写ベルト13を介して感光体1と該中間転写ベルト13とシート部材32とが接触して形成される第1領域Aを有する。
【0030】
そして、該第1領域Aよりも中間転写ベルト13の回転方向下流側(図2の右側)でシート部材32が中間転写ベルト13に接触し、且つ感光体1と中間転写ベルト13とが離間する第2領域Bを有している。
【0031】
本実施形態では、複数のシート部材32のうちの中間転写ベルト13の回転方向において第4ステーション6dのシート部材32dが最下流側に配置される。第4ステーション6dのシート部材32dの第2領域Bの中間転写ベルト13の回転方向の長さ(以下、単に、「第2領域Bの長さ」という)Lを他の各ステーション6a〜6cのシート部材32a〜32cの第2領域Bの長さL〜Lよりも長く構成している。
【0032】
即ち、最下流側に配置される第4ステーション6dのシート部材32dの第2領域Bの長さLが最も長くなるように設定されている。その理由については、後で詳細に説明する。
【0033】
各色の感光体1上に形成されたトナー画像は、それぞれのシート部材32a〜32dにトナーと逆極性の電圧を印加することで、順に中間転写ベルト13にトナー画像を転写していき、中間転写ベルト13上に多重画像が形成される。
【0034】
その後、露光による静電潜像の作像に合わせて、給送カセット16に積載されている転写材Pは、給送ローラ17により給送され、図示しない搬送ローラによりレジストローラ18まで搬送される。そして、転写材Pは中間転写ベルト13上のトナー画像に同期してレジストローラ18によって、中間転写ベルト13と二次転写ローラ25とで形成される当接ニップ部Nへ搬送される。その後、二次転写ローラ25には二次転写電源26により、トナーと逆極性の電圧印加を行い、転写材P上に中間転写ベルト13上に担持された4色の多重トナー画像が一括して二次転写される。
【0035】
尚、本実施形態では、二次転写ローラ25は外径直径8mmのニッケルメッキ鋼棒に抵抗値を10Ω、厚み5mmに調整したNBR(ニトリルブタジエンゴム)の発泡スポンジ体で覆った外径直径18mmのものを用いた。また、二次転写ローラ25は、中間転写ベルト13に対して、5g/cm〜15g/cm程度の線圧で当接させ、且つ中間転写ベルト13の移動方向に対して順方向に略等速度で回転するように配置した。
【0036】
一方、二次転写を終えた後、中間転写ベルト13上に残留した転写残トナーは、中間転写ベルト13に当接配置されたベルトクリーニング手段27により、その表面から除去・回収される。本実施形態の画像形成装置ではベルトクリーニング手段27としてウレタンゴム等で形成された弾性を有するクリーニングブレードを用いた。
【0037】
二次転写終了後の転写材Pは定着装置19へと搬送され、転写材P上にトナー画像が固着されて画像形成物として画像形成装置外へと排出される。中間転写ベルト13の構成としては、厚さ100μm、体積抵抗率1010Ω・cmのポリイミド樹脂を用いている。
【0038】
また、張架部材としての駆動ローラ14は、アルミニウム芯金にカーボンを導電剤として分散した抵抗10Ω、肉厚が1.0mmのEPDM(エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体)ゴムを被覆した外径直径25mmのものを用いている。張架部材としてのテンションローラ15は、外径直径25mmのアルミニウムの金属棒を用いており、テンションは片側19.6N、総圧39.2Nとしている。張架部材としての二次転写対向ローラ24は、アルミニウム芯金にカーボンを導電剤として分散した抵抗10Ω、肉厚0.5mmのEPDMゴムを被覆した外径直径25mmのものを用いている。
【0039】
次に、一次転写部材30が設けられた一次転写部の構成について図2を用いてさらに詳しく説明する。図2は、各ステーション6の一次転写部材30の近傍を拡大した断面説明図である。弾性部材31は、絶縁性のウレタンスポンジであり、肉厚3mm、幅6mm、長さ230mmの略直方体形状に構成したものを用いている。硬度はアスカーC 硬度計(4.9N(500gf)荷重)で30°である。ただし、必ずしも上記のような弾性部材31である必要はなく、シート部材32をバックアップできる部材であれば、さらに硬度の高い部材を用いても良い。
【0040】
シート部材32は、体積抵抗率が10Ω・cm(導電率:10−4S/m)であり、厚み150μmの樹脂性シートを用いている。本実施形態では、シート部材32として酢酸ビニルシートを用いている。他に、ポリカーボネイト(PC)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリイミド(PI)、ポリエチレン(PE)、ポリアミド(PA)などのシートを用いても良い。シート部材32には、一次転写電源22が接続され、画像形成動作中は500Vの電圧が印加されている。
【0041】
また、図2において一点鎖線mは、感光体1の中心Cから下ろした垂線である。弾性部材31は、感光体1の中心C位置よりも中間転写ベルト13の回転方向下流側(図2の右側)に1mmずれた位置で、図示しない加圧バネにより感光体1側に総圧が9.8Nで加圧されている。中間転写ベルト13を介して弾性部材31を感光体1に圧接する位置を感光体1の中心C位置よりも中間転写ベルト13の回転方向下流側にずらす。これにより、感光体1の回転方向上流側では不要な電界の影響は少なくなり、感光体1上のトナー画像の画質を比較的忠実に保ちながらトナー画像が転写可能となる。
【0042】
ここで、図2に示すように、中間転写ベルト13の回転方向上流側(図2の左側)から、中間転写ベルト13とシート部材32との接触点のうち最上流側の接触点を境界位置aとする。感光体1と中間転写ベルト13との接触点のうち最下流側の接触点を境界位置bとする。中間転写ベルト13とシート部材32の端部33との接触点を境界位置cとする。そして、境界位置aと境界位置bとで挟まれるニップ領域を第1領域Aとする。即ち、感光体1と中間転写ベルト13とシート部材32とが全て接触しているニップ領域を第1領域Aとする。そして、境界位置bと境界位置cとで挟まれるニップ領域を第2領域Bと定義する。
【0043】
次に、一次転写部材30が設けられる一次転写部におけるニップ部の第1領域Aおよび第2領域Bの機能について図3を用いてより詳しく説明する。図3は中間転写ベルト13とシート部材32とが接触する第1領域Aおよび第2領域Bの断面を拡大した図である。
【0044】
画像形成動作中はシート部材32に電圧が印加されており、感光体1上のトナー画像は第1領域Aの中間転写ベルト13の回転方向上流側(図3の左側)の空隙において中間転写ベルト13へ飛翔する。
【0045】
また、感光体1と中間転写ベルト13とシート部材32が全て3層に接する第1領域Aは最も電界が強いため、シート部材32から中間転写ベルト13へトナーと逆極性の電荷が移動する(図3のh)。この第1領域Aでは、トナー総電荷量に勝る電荷が中間転写ベルト13へ供給され、この電荷により、トナーは中間転写ベルト13の表面に保持される。
【0046】
次に、中間転写ベルト13が回転方向下流側(図3の右側)へ搬送されるに伴い、供給された電荷も下流側へ移動する(図3のi)。そして、第2領域Bまで移動すると、中間転写ベルト13と感光体1との離間距離が次第に大きくなるため、中間転写ベルト13の電位は該中間転写ベルト13の回転方向下流側(図3の右側)ほど上昇する。
【0047】
その結果、第2領域Bの下流側領域では中間転写ベルト13とシート部材32の電位は逆転し、中間転写ベルト13の電荷の一部はシート部材32へ逆流する(図3のj)。逆流した電荷は、電界の作用で中間転写ベルト13の回転方向上流側(図3の左側)へ還流する(図3のk)。
【0048】
また、中間転写ベルト13に残留した電荷は、さらに該中間転写ベルト13の回転方向下流側(図3の右側)へ搬送される(図3のl)。このような現象がおきるのは、シート部材32の体積抵抗率が中間転写ベルト13の体積抵抗率に比べて十分小さいためである。
【0049】
第2領域Bではシート部材32へ電荷が逆流するため、中間転写ベルト13上の電荷量Qは該中間転写ベルト13の回転方向下流側(図3の右側)に進むにつれて以下の数1式のように減少する。尚、以下の数1式において、Qは図3に示す境界位置bにおける中間転写ベルト13上の電荷量であり、τは該中間転写ベルト13の電気的な時定数である。
【0050】
[数1]
Q=Q exp(−t/τ)
【0051】
図4は、中間転写ベルト13上の電荷量の時間推移を示している。図4はシート部材32の第2領域Bが中間転写ベルト13の回転方向下流側(図3の右側)方向に十分長いとした場合の電荷量の減少カーブである。実際にはシート部材32の第2領域Bの長さLによって中間転写ベルト13上の電荷量Qの減少は停止する。即ち、第2領域の長さをL(mm)、画像形成プロセススピードをVp(mm/sec)とすると、中間転写ベルト13が境界位置b通過後にシート部材32に接触している時間{L/Vp}(sec)で中間転写ベルト13上の電荷量Qの減少は停止する。その後、第2領域Bを通過した後の中間転写ベルト13上の電荷量Qは殆んど変化しない。
【0052】
シート部材32の第2領域Bの長さLが比較的短い(中間転写ベルト13が境界位置b通過後にシート部材32に接触している時間が短い)場合には、中間転写ベルト13上の電荷量Qの減少は小さい。該中間転写ベルト13がシート部材32の第2領域Bを通過すると、中間転写ベルト13と感光体1との間の静電容量が小さくなる。
【0053】
このために中間転写ベルト13の電位が上昇し、該中間転写ベルト13と感光体1との間で剥離放電が発生する。この場合、トナー画像に「放電跡」と呼ばれる画像不良が発生してしまう。図4中の一点鎖線dはトナー画像に「感光体における放電跡」が発生する中間転写ベルト13上の電荷量Qを示し、d´はその時の中間転写ベルト13が境界位置b通過後の経過時間を示している。
【0054】
逆に、シート部材32の第2領域Bの長さLが比較的長い(中間転写ベルト13が境界位置b通過後にシート部材32に接触している時間が長い)場合には、中間転写ベルト上の電荷量Qの減少は大きい。
【0055】
すると該中間転写ベルト13上の電荷量Qが単位面積当たりのトナー総電荷量よりも少なくなる。するとトナーを中間転写ベルト13の表面に保持することが困難になる。この場合、中間転写ベルト13上で「トナーの飛び散り」と呼ばれる画像不良が発生する。
【0056】
図4中の一点鎖線eはシート部材32の第2領域Bの中間転写ベルト13の回転方向下流側(図3の右側)の該中間転写ベルト13上で「トナーの飛び散り」が発生する中間転写ベルト13上の電荷量Qを示す。e´はその時の中間転写ベルト13が境界位置b通過後の経過時間を示す。
【0057】
従って、図4から感光体1への剥離放電が無く、且つ中間転写ベルト13上のトナーの飛び散りが無い場合の各ステーション6のシート部材32の第2領域Bの長さLは以下の条件となる。即ち、中間転写ベルト13が境界位置b通過後にシート部材32に接触している時間{L/Vp}が、{d´<L/Vp<e´}の範囲内に収まるようにすれば良い。
【0058】
中間転写ベルト13の回転方向最下流側(図1の右側)に第4ステーション6dがある。この場合には、該第4ステーション6dよりも更に中間転写ベルト13の回転方向下流側(図1の右側)に該中間転写ベルト13を回転可能に張架するための駆動ローラ14が配置されている。このため他のステーション6a,6b,6cとは事情が異なる。
【0059】
即ち、第4ステーション6dを通過した中間転写ベルト13が高電位であると、該中間転写ベルト13と駆動ローラ14との間で剥離放電を起こし、トナーを担持する中間転写ベルト13の表面に急激な電界ムラを生じる。その結果、トナー画像が乱される。
【0060】
この現象は、他のステーション6a,6b,6cで中間転写ベルト13と感光体1との間で発生する剥離放電によりトナー画像が乱される「感光体における放電跡」よりも早期に見られる現象であり、「駆動ローラにおける放電跡」と呼ぶ。駆動ローラ14と中間転写ベルト13との間で発生する剥離放電が、感光体1と中間転写ベルト13との間で発生する剥離放電よりも早期におこる理由は以下の通りである。
【0061】
中間転写ベルト13上の電荷量Qが同じであっても該中間転写ベルト13と感光体1とのニップ部近傍における感光体1は表層樹脂層の分圧が大きく、感光体1と中間転写ベルト13との電位差が比較的小さい。図4中の一点鎖線fはトナー画像に「駆動ローラにおける放電跡」が発生する中間転写ベルト13上の電荷量Qを示し、f´はその時の中間転写ベルト13が境界位置b通過後の経過時間を示している。
【0062】
従って、図4から駆動ローラ14への剥離放電が無く、且つ感光体1への剥離放電も無く、且つ中間転写ベルト13上のトナーの飛び散りも無い場合の第4ステーション6dのシート部材32dの第2領域Bの長さLは以下の条件となる。中間転写ベルト13が境界位置b通過後にシート部材32dに接触している時間{L/Vp}が、{f´<L/Vp<e´}の範囲内に収まるようにすれば良い。
【0063】
以後同様に、第1ステーション6aのシート部材32aの第2領域Bの長さをLとする。第2ステーション6bのシート部材32bの第2領域Bの長さをLとする。第3ステーション6cのシート部材32cの第2領域Bの長さをLとする。第4ステーション6dのシート部材32dの第2領域Bの長さをLとする。
【0064】
また、各ステーション6のシート部材32の第2領域Bの適切な長さLを決める際には、以下の2点を考慮する必要がある。一つは、シート部材32が中間転写ベルト13の駆動トルクへ与える影響である。
【0065】
シート部材32と中間転写ベルト13との接触面積が増加すると、該中間転写ベルト13の駆動トルクが変動するためトナー画像に「色ムラ」と呼ばれる画像不良が発生する。「色ムラ」とは、感光体1と中間転写ベルト13との周速度差が変動し、その周速度差が大きいときにトナー画像が引き伸ばされ、周速度差が小さいときにはトナー画像の引き伸ばしが小さいために画像ムラが生じる現象である。
【0066】
よって、シート部材32と中間転写ベルト13とが接触する該シート部材32の第2領域Bの長さLは,できるだけ短く設定する必要がある。
【0067】
もう一つは、長期使用にともなう中間転写ベルト13の抵抗値変動を考慮する必要がある。例えば、ポリイミド樹脂にカーボンブラック、グラファイト、または金属酸化物といった電子導電剤を分散させて中抵抗となるように調整した中間転写ベルト13は、転写工程における通電状態が長時間継続すると、通電劣化により抵抗値が上昇する傾向がある。
【0068】
図5に転写材Pとして、A4サイズの普通紙を100×10枚通紙した後の中間転写ベルト13上の電荷量Qの時間推移(図5の破線カーブ)を図4のグラフに重ねて示す。図5のように中間転写ベルト13の抵抗値上昇によって中間転写ベルト13の電気的な時定数τが長くなる。このため該中間転写ベルト13が境界位置b通過後に「感光体における放電跡」、「駆動ローラにおける放電跡」が発生する経過時間は、使用初期に比べてそれぞれd´→d″と長くなり、f´→f″と長くなる。また、「トナーの飛び散り」は何れのステーション6においても使用初期のほうが電荷が速く減少するので経過時間e´よりも短い時間とする必要がある。
【0069】
従って、図5から第1〜第3ステーション6a〜6cにおける「感光体における放電跡」を防止するためには、中間転写ベルト13が境界位置b通過後にシート部材32aに接触している時間{L/Vp}が、{d″<L/Vp<e´}の範囲内に収まること。
【0070】
且つ、中間転写ベルト13が境界位置b通過後にシート部材32bに接触している時間{L/Vp}が、{d″<L/Vp<e´}の範囲内に収まること。且つ、中間転写ベルト13が境界位置b通過後にシート部材32cに接触している時間{L/Vp}が、{d″<L/Vp<e´}の範囲内に収まるようにすれば良い。
【0071】
同様に、図5から第4ステーション6dにおける「駆動ローラにおける放電跡」を防止するためには中間転写ベルト13が境界位置b通過後にシート部材32dに接触している時間{L/Vp}が、{f″<L/Vp<e´}の範囲内に収まるようにすれば良い。
【0072】
その他、中間転写ベルト13上の電荷量Qを左右する因子として各ステーション6間の離間距離ならびに第4ステーション6dと駆動ローラ14との離間距離がある。図1に示すように、各ステーション6間の離間距離ならびに第4ステーション6dと駆動ローラ14との離間距離が略同程度の離間距離であれば中間転写ベルト13上の電荷量Qには関係しない。
【0073】
以上のことを考慮して、本実施形態では各ステーション6のシート部材32の第2領域Bの長さLを以下の条件とした。中間転写ベルト13の回転方向最下流側(図1の右側)の第4ステーション6dのシート部材32dの第2領域Bの長さLが、他のステーション6a〜6cのシート部材32a〜32cの第2領域Bの長さL〜Lと比べて最も長くなるようにした。
【0074】
具体的な各ステーション6のシート部材32の第2領域Bの長さLは、実際の画像形成装置においてシート部材32の長さLを変えて画像評価をおこなって決定した。以下に評価方法について説明する。
【0075】
<評価方法>
画像形成プロセススピードが100mm/secの画像形成装置を用いて、初期とA4サイズの普通紙を100×10枚通紙後の「トナーの飛び散り」、「感光体における放電跡」、「駆動ローラにおける放電跡」、「色ムラ」について評価をおこなった。
【0076】
評価は次のような手順でおこなった。まず、図6に示すように、第2ステーション6b以外の第1、第3、第4ステーション6a,6c,6dのシート部材32a,32c,32dの第2領域Bの長さL=L=L=1.8mmで固定した。
【0077】
第2ステーション6bのシート部材32bの第2領域Bの長さLを変えて「感光体における放電跡」と「トナーの飛び散り」を初期と通紙後において評価した。そして、第1〜第3ステーション6a〜6cのシート部材32a〜32cのそれぞれの第2領域Bの長さL〜Lを決定した(ステップS1)。
【0078】
次に、第1〜第3ステーション6a〜6cのシート部材32a〜32cのそれぞれの第2領域Bの長さL〜Lを前記ステップS1で決定したそれぞれの第2領域Bの長さL=L=L=2.0mmで固定した。第4ステーション6dのシート部材32dの第2領域Bの長さLを変えて「駆動ローラにおける放電跡」と「色ムラ」を初期と通紙後において評価した。そして、第4ステーション6dのシート部材32dの第2領域Bの長さLを決定した(ステップS2)。
【0079】
通紙テストは、15℃/10%Rh(相対湿度)の低温、低湿環境において、ゼロックス社製4204(坪量75g)の普通紙を通紙することによりおこない、所定の間隔で画像サンプルを取得して画像良好を「○」とし、画像不良を「×」として判定した。「トナーの飛び散り」は、印字サンプルを拡大観察して評価した。「感光体における放電跡」、「駆動ローラにおける放電跡」は、単色のハーフトーン画像上に放電模様が発生しているか否かを目視で評価をおこなった。「色ムラ」は、レッド色など複数色のトナーを混色させたライン画像を目視により評価しておこなった。
【0080】
<評価結果>
図6に評価結果を一覧で示す。まず、ステップS1において、第2ステーション6bのシート部材32bの第2領域Bの長さLを変えたテストからL=2.0mmとした。即ち、通紙後に「感光体における放電跡」が見られない第2ステーション6bのシート部材32bの第2領域Bの長さLとして評価項目の全てが画像良好「○」であったL=2.0mmとした。
【0081】
次に、ステップS2において、第1〜第3ステーション6a〜6cのシート部材32a〜32cのそれぞれの第2領域Bの長さL=L=L=2.0mmとした。第4ステーション6dのシート部材32dの第2領域Bの長さLを変えたテストからL=2.5mmとした。即ち、通紙後に「駆動ローラにおける放電跡」が見られない第4ステーション6dのシート部材32dの第2領域Bの長さLは評価結果が画像良好「○」であった2.4mm以上である。
【0082】
同じく「色ムラ」が見られない第4ステーション6dのシート部材32dの第2領域Bの長さLは評価結果が画像良好「○」であった2.6mm以下であった。このことから、2.4mmと2.6mmとの間をとって第4ステーション6dのシート部材32dの第2領域Bの長さL=2.5mmとした。
【0083】
また、ステップS3において、第1〜第3ステーション6a〜6cのシート部材32a〜32cのそれぞれの第2領域Bの長さL=L=L=2.2mmとした。第4ステーション6dのシート部材32dの第2領域Bの長さLの長さを変えたテストから第4ステーション6dのシート部材32dの第2領域Bの長さLは2.2mm以上で「色ムラ」が見られた。
【0084】
このため、全てのステーション6でシート部材32の第2領域Bの長さLを2.2mmとすることはできなかった。これにより、本実施形態では、第1〜第3ステーション6a〜6cのシート部材32a〜32cのそれぞれの第2領域Bの長さL=L=L=2.0mmに設定した。第4ステーション6dのシート部材32dの第2領域Bの長さL=2.5mmに設定することでA4サイズの普通紙を100×10枚通紙をおこなっても画像不良の発生を防止することができた。
【0085】
[比較例]
比較例として、各ステーション6で感光体1と中間転写ベルト13とシート部材23との位置関係が同一になるように配置した。そして、第1〜第4ステーション6a〜6dのシート部材32a〜32dのそれぞれの第2領域Bの長さL=L=L=L=2.0mmとした。この場合には、初期の画像は良好であったが、A4サイズの普通紙を50×10枚通紙後に「駆動ローラにおける放電跡」が発生した。
【0086】
<シート部材の第2領域Bの長さの判別方法>
各ステーション6におけるシート部材32の第2領域Bの長さLは以下の方法によって判別できる。同じ長さのシート部材32を用いている場合、各ステーション6におけるシート部材32の第2領域Bの長さLがどれだけ異なるかは以下のようにして求める。シート部材32にバイアス電圧を印加した状態で中間転写ベルト13を回転させた時に中間転写ベルト13がシート部材32に摺動して形成される摺擦跡の長さを測定する。これにより、シート部材32の第2領域Bの長さLの相対的な違いがわかる。また、同じ長さのシート部材32を用いているか不明な場合でも、各ステーション6の断面観察をおこなうことで、シート部材32の第2領域Bの長さLを比較することができる。
【0087】
以上、本実施形態では、第1〜第3ステーション6a〜6cのシート部材32a〜32cのそれぞれの第2領域Bの長さLを同一としたが、必ずしも同じである必要はない。また、中間転写ベルト13としてベース樹脂中に電子導電剤を分散させた中間転写ベルト13について説明をおこなったが、導電剤としてアルカリ金属塩等のイオン導電剤を使用した中間転写ベルト13に対しても有効である。
【実施例2】
【0088】
次に、本発明に係る画像形成装置の第2実施形態について図7を用いて説明する。尚、前記第1実施形態で説明した同一機能を有する部材には同一符号を付して説明は省略する。本実施形態では、前記第1実施形態に比べて画像形成プロセススピードがより高速(画像形成プロセススピード:200mm/sec)とされる画像形成装置に適用した一例について説明する。
【0089】
画像形成プロセススピードが高速であっても中間転写ベルト13へ供給する電荷量を前記第1実施形態と略同じにするため、本実施形態の中間転写ベルト13は電子導電剤の量を増やして抵抗値を小さくしている。その結果、転写部材となるシート部材32の中間転写ベルト13への接触面積は略同程度のままで高速化に対応できる。また、シート部材32へ印加するバイアス電圧も大きくする必要がない。しかし、中間転写ベルト13の電気的な時定数τが短くなるため、前記第1実施形態よりも、さらに適正にシート部材32の第2領域Bの長さLを設定する必要がある。
【0090】
本実施形態のような画像形成装置の一次転写では、中間転写ベルト13の抵抗値変動があっても均一な転写を行えるようにするために、画像形成前などの非画像形成時に、シート部材32に定電流バイアス電圧を印加してインピーダンス検知をおこなう。そして、画像形成中に所定の定電圧を印加するように制御したATVC(Active Transfer Voltage Control)制御が各ステーション6毎におこなわれる。
【0091】
中間転写ベルト13の回転方向最上流側(図1の左側)に配置された第1ステーション6aと、それよりも下流側に配置された第2ステーション6b以降とで画像形成中に同じように定電圧制御をおこなう。第1ステーション6aは、その上流側に電圧印加部材がない。このために、図3に示す感光体1と中間転写ベルト13とシート部材32とが全て3層で接触している第1領域Aを通過した後における中間転写ベルト13上に担持される電荷量Qが他の第2〜第4ステーション6b〜6dよりも僅かに少ない。
【0092】
各ステーション6に設けられる複数の転写部材となるシート部材32のうち中間転写ベルト13の回転方向において最上流側(図1の左側)に配置される第1ステーション6aのシート部材32aの第2領域Bの長さLを以下の条件とする。
【0093】
第1ステーション6aよりも下流側(図1の右側)に配置される他のステーション6b〜6dの各シート部材32b〜32dの第2領域Bの長さL〜Lよりも第1ステーション6aのシート部材32aの第2領域Bの長さLを短くする。
【0094】
即ち、最上流側(図1の左側)に配置される第1ステーション6aのシート部材32aの第2領域Bの中間転写ベルト13の回転方向(図3の左右方向)の長さLを最も短くする。
【0095】
これにより、最上流側(図1の左側)に配置される第1ステーション6aにおける画像不良の発生タイミングを、それよりも下流側(図1の右側)に配置される他のステーション6b,6c,6dにおける画像不良の発生タイミングと同等とすることが出来る。
【0096】
以後、第1ステーション6aと,第2ステーション6bとを例にとり、上記のように設定した理由を説明する。図7は前述した図4及び図5と同じように、一次転写部材30が設けられた一次転写部における各シート部材32の第2領域Bが中間転写ベルト13の回転方向下流側(図2の右側)方向に十分長いと仮定した。その場合における中間転写ベルト13上の電荷量Qの時間推移を示したグラフである。
【0097】
図7における電荷量Qは、第1ステーション6aの境界位置bにおける中間転写ベルト13上に担持された電荷量Qであり、図7に示す実線の曲線は第1ステーション6aにおける中間転写ベルト13上に担持される電荷量Qが減衰する様子を表している。
【0098】
また、図7における電荷量Qは、第2ステーション6bの境界位置bにおける中間転写ベルト13上に担持された電荷量Qであり、図7に示す破線の曲線は第2ステーション6bにおける中間転写ベルト13上に担持される電荷量Qが減衰する様子を表している。
【0099】
また、図7中の一点鎖線dはトナー画像に「感光体における放電跡」が発生する中間転写ベルト13上の電荷量Qを示し、d´,d″はその時の各第1、第2ステーション6a,6bにおいて中間転写ベルト13が境界位置b通過後の経過時間をそれぞれ示している。
【0100】
図7中の一点鎖線eはシート部材32の第2領域Bの中間転写ベルト13の回転方向下流側(図3の右側)の該中間転写ベルト13上で「トナーの飛び散り」が発生する中間転写ベルト13上の電荷量Qを示す。e´,e″はその時の各第1、第2ステーション6a,6bにおいて中間転写ベルト13が境界位置b通過後の経過時間をそれぞれ示す。
【0101】
図7に示すように、中間転写ベルト13の回転方向において最上流側(図1の左側)に第1ステーション6aが配置される。第1ステーション6aの境界位置bにおける中間転写ベルト13上に担持される電荷量Qが、それよりも下流側に配置される第2ステーション6bの境界位置bにおける中間転写ベルト13上に担持される電荷量Qよりも僅かに小さい。
【0102】
このため、第1ステーション6aで画像不良が発生しない適正な範囲は図7の横軸で示される時間軸の時間の短い側(図7の左側)に寄る。従って、長期使用において最上流側(図1の左側)に配置される第1ステーション6aにおける画像不良の発生タイミングを、それよりも下流側(図1の右側)に配置される他のステーション6b,6c,6dにおける画像不良の発生タイミングと同等とする。
【0103】
そのために、本実施形態では第1ステーション6aのシート部材32aの第2領域Bの長さLを、第2ステーション6bのシート部材32bの第2領域Bの長さLよりも短くしている。
【0104】
即ち、本実施形態では、以下の関係が成り立つように各ステーション6のシート部材32の第2領域Bの長さLを設定している。最下流側(図1の右側)に第4ステーション6dが配置される。第4ステーション6dのシート部材32dの第2領域Bの長さLを、それよりも上流側に配置される他の第1〜第3ステーション6a〜6cの各シート部材32a〜32cの第2領域Bの長さL〜Lよりも長く設定する。その理由は、前記第1実施形態で説明しているので、その説明は省略する。
【0105】
本実施形態では、最上流側(図1の左側)に配置される第1ステーション6aのシート部材32aの第2領域Bの長さL=1.9mmに設定する。その下流側(図1の右側)に配置される第2ステーション6bのシート部材32bの第2領域Bの長さL=2.0mmに設定する。
【0106】
更にその下流側(図1の右側)に配置される第3ステーション6cのシート部材32cの第2領域Bの長さL=2.1mmに設定する。更にその下流側で最下流側(図1の右側)に配置される第4ステーション6dのシート部材32dの第2領域Bの長さL=2.5mmに設定する。
【0107】
そして、前記第1実施形態と同様にA4サイズの普通紙を200×10枚以上通紙をおこなって同様な評価をおこなった結果、良好な画像を維持できることが判明した。
【0108】
以上のように、各ステーション6におけるシート部材32の第2領域Bの長さLを適正にすることで、従来のように除電針などの部材をシート部材32の第2領域Bの下流側に設ける必要もなく、従来よりも良好な画像を長期間にわたって維持することが可能になる。
【符号の説明】
【0109】
1,1a〜1d …感光体(像担持体)
13 …中間転写ベルト(ベルト体)
32,32a〜32d …シート部材(転写部材)
A …第1領域
B …第2領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー画像を担持する複数の像担持体と、回転可能なベルト体と、前記複数の像担持体上のトナー画像を前記ベルト体の表面に転写する複数の転写部材と、を有し、前記ベルト体の移動中に前記複数の転写部材は回転せずに前記ベルト体の裏面に接触する画像形成装置において、
前記転写部材には画像形成中にトナーと逆極性のバイアス電圧が印加されており、
前記転写部材は、
前記ベルト体を介して前記像担持体と前記ベルト体と前記転写部材とが接触して形成される第1領域と、
前記第1領域よりも前記ベルト体の回転方向下流側で前記転写部材が前記ベルト体に接触し、且つ前記像担持体と前記ベルト体とが離間する第2領域と、
を有し、
前記複数の転写部材のうち前記ベルト体の回転方向において最下流側に配置される転写部材の前記第2領域の前記ベルト体の回転方向の長さが最も長いことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
トナー画像を担持する複数の像担持体と、回転可能なベルト体と、前記複数の像担持体上のトナー画像を前記ベルト体の表面に転写する複数の転写部材と、を有し、前記ベルト体の移動中に前記複数の転写部材は回転せずに前記ベルト体の裏面に接触する画像形成装置において、
前記転写部材には画像形成中にトナーと逆極性のバイアス電圧が印加されており、
前記転写部材は、
前記ベルト体を介して前記像担持体と前記ベルト体と前記転写部材とが接触して形成される第1領域と、
前記第1領域よりも前記ベルト体の回転方向下流側で前記転写部材が前記ベルト体に接触し、且つ前記像担持体と前記ベルト体とが離間する第2領域と、
を有し、
前記複数の転写部材のうち前記ベルト体の回転方向において最上流側に配置される転写部材の前記第2領域の前記ベルト体の回転方向の長さが最も短いことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−103300(P2012−103300A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−249311(P2010−249311)
【出願日】平成22年11月8日(2010.11.8)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】