説明

画像形成装置

【課題】コストのアップ及び画像形成装置本体の大型化を伴うことがなく、積載トレイに対するシートの貼り付き、積載トレイ上でのシート同士の貼り付きという現象が抑制される画像形成装置を提供する。
【解決手段】画像を形成する画像形成部と、シートSに画像を定着させる定着装置20と、定着されたシートSを積載する積載トレイ24と、を備える画像形成装置100において、画像形成されたシートSの通過により定着装置20で発生した水分を含む空気を積載トレイ24に向かって噴出するファン33、送風口24hを備える画像形成装置100を構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積載トレイに排出されたシートを除電する除電機構を備える画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真技術が用いられた画像形成装置では、画像形成部が作成したトナー像がシートの表面に転写され、定着装置がトナー像をシートの表面に定着させる。トナー像が定着されたシートは、搬送ローラ及び排出ローラを介して、画像形成装置本体の外部の積載トレイへと排出されて順次積載されていく。この間に、シートは電子写真プロセスを経て帯電することがある。シートが帯電すると、シート同士が静電吸着して排出不良になって詰りが発生し、積載トレイの上でシートの整列性が乱され、シートが積載トレイから落下する等の問題が生じ得る。このようなシートの帯電、及び、帯電したシートが積載される積載トレイの帯電を抑制する発明として、特許文献1及び2に記載の発明が開示されている。
【0003】
特許文献1に記載の発明は、積載トレイの上方にイオン発生装置が配置され、イオン発生装置から発生したマイナスイオンを送風ファンによって積載トレイ及び積載トレイの上に積載されたシートに対して運ぶ構成がとられている。こうした構成によれば、積載トレイ及びシートは除電される。
【0004】
特許文献2に記載の発明は、積載トレイからシートを取り出すシート取出口の近傍に、イオン発生装置が配置され、イオン発生装置から発生したイオンがシート取出口の近傍に吹き付けられる。または、特許文献2に記載の発明は、積載トレイの上方に、イオン発生装置が配置され、イオン発生装置から発生したイオンが積載トレイの表面に向かって吹き付けられる。こうした構成によれば、積載トレイ及びシートは除電される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−343491号公報
【特許文献2】特開昭61−243745号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1及び2に記載の画像形成装置では、イオン発生装置、及び、イオン発生装置の電源部品その他の関連部品を必要とし、複雑な機構となる。また、積載トレイの上方にイオン発生装置が設置されると、画像形成装置本体の構成が大型化及び高コスト化する。
【0007】
本発明は、上記実情に鑑み、コストのアップ及び画像形成装置本体の大型化を伴うことがなく、積載トレイに対するシートの貼り付き、積載トレイ上でのシート同士の貼り付きという現象が抑制される画像形成装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の画像形成装置は、画像を形成する画像形成部と、シートに画像を定着させる定着装置と、定着されたシートを積載する積載トレイと、を備える画像形成装置であって、画像形成されたシートの通過により前記定着装置で発生した水分を含む空気を前記積載トレイに向かって噴出する噴出し手段を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、イオン発生装置のような複雑な機構を設ける必要がなく、積載トレイまたは積載トレイ上のシートを効率的に除電することができる。その結果、コストのアップ及び画像形成装置本体の大型化を伴うことがなく、積載トレイに対するシートの貼り付き、積載トレイ上でのシート同士の貼り付きという現象が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施例1に係る画像形成装置の構成を示す断面図である。
【図2】画像形成装置の装置本体の上部の構成を示す拡大断面図等である。
【図3】実施例2に係る画像形成装置の装置本体の上部の構成を示す拡大断面図等である。
【図4】実施例3に係る画像形成装置の装置本体の上部の構成を示す拡大断面図等である。
【図5】実施例4に係る画像形成装置の装置本体の上部の構成を示す拡大断面図等である。
【図6】シート排出部の除電機構の駆動を制御するコントローラの制御工程を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、この発明を実施するための形態を実施例に基づいて例示的に詳しく説明する。ただし、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対位置等は、発明が適用される装置の構成や各種条件により適宜変更されるから、特に特定的な記載が無い限りは、発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【実施例1】
【0012】
図1は、本発明の実施例1に係る画像形成装置100の構成を示す断面図である。画像形成装置100は、電子写真画像形成プロセスを利用したレーザビームプリンタである。図1に示されるように、画像形成装置100は画像形成装置本体(以下、単に『装置本体』という)100Aを有し、この装置本体100Aの内部には、シートSに画像を形成する画像形成部51(51a、51b、51c、51d)が設けられる。画像形成部は、『像担持体』である感光体ドラム1(1a、1b、1c、1d)、『転写装置』である転写ローラ12(12a、12b、12c、12d)等を含む。少なくとも感光体ドラム1については、プロセスカートリッジ(以下、「カートリッジ7」という)に含まれ、カートリッジ7として装置本体100Aに組み込まれる構成となっている。前述又は以下において、感光体ドラム、帯電装置、スキャナユニット、現像装置、静電転写装置、クリーニング装置、ポリゴンミラーは、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックに用いられるものがある。これらに関しては、色彩に拘らずに説明できる場合には、適宜a、b、c、dといった添え字を用いずに説明していく。なお、画像形成部は、中間転写ベルト等の中間転写体が用いられる場合には、中間転写体にトナー画像を形成する画像形成部が相当することになる。
【0013】
画像形成装置100は、鉛直方向に並設された4個の感光体ドラム1(1a、1b、1c、1d)を備えている。感光体ドラム1は、駆動手段(不図示)によって、同図中、反時計回りに回転駆動する。感光体ドラム1の周囲には、その回転方向に従って順に、以下のものが配置されている。まず、感光体ドラム1の表面を均一に帯電する帯電装置2(2a、2b、2c、2d)、画像情報に基づいてレーザビームを照射し感光体ドラム1上の静電潜像を形成するスキャナユニット3(3a、3b、3c、3d)が配置されている。次に、静電潜像にトナーを付着させてトナー像として現像する現像装置4(4a、4b、4c、4d)、感光体ドラム1上のトナー像をシートSに転写させる静電転写装置5が配置されている。次に、転写後の感光体ドラム1の表面に残った転写残トナーを除去するクリーニング装置6(6a、6b、6c、6d)等が配設されている。
【0014】
スキャナユニット3は、感光体ドラム1の図中左側に配置され、レーザダイオード(不図示)によって画像信号に対応する画像光が、スキャナモータ(不図示)によって高速回転されるポリゴンミラー9(9a、9b、9c、9d)に照射される。現像装置4a、4b、4c、4dは、それぞれイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色のトナーを夫々収納している。
【0015】
全ての感光体ドラム1a〜1dに対向し、接するように循環移動する静電転写ベルト11が配設される。この静電転写ベルト11は、鉛直方向に4軸でローラに支持され、図中左側の外周面にシートSを静電吸着して感光体ドラム1にシートSを接触させるべく循環移動する。これにより、シートSは静電転写ベルト11により転写位置まで搬送され、感光体ドラム1の表面のトナー像が転写される。
【0016】
給送部16は、画像形成部にシートSを給送するものであり、複数枚のシートSが給送カセット17に収納されている。給送カセット17の内部のシートSを1枚毎に分離給送するとともに、静電転写ベルト11の回転と画像書出し位置の同期をとって、レジストローラ対19によって静電転写ベルト11へと給送されていく。静電転写ベルト11により搬送されながら順次各色トナー像が転写されたシートSは、その後に定着装置20にて加熱及び加圧されることにより定着される。
【0017】
画像形成の動作としては、カートリッジ7a、7b、7c、7dが、印字タイミングに合わせて順次駆動し、その駆動に応じて感光体ドラム1a、1b、1c、1dが、反時計回り方向に回転駆動する。そして、各々のカートリッジ7に対応するスキャナユニット3が順次駆動する。この駆動により、帯電装置2の帯電ローラは感光体ドラム1の周面に一様な電荷を付与し、スキャナユニット3は、その感光体ドラム1の表面に画像信号に応じて露光して、感光体ドラム1の表面に静電潜像を形成する。現像装置4の内部の現像ローラは、静電潜像の低電位部にトナーを転移させて感光体ドラム1の表面にトナー像を形成(現像)する。
【0018】
給送部16より給送されたシートSは、静電吸着ローラ15と静電転写ベルト11とによって挟み込むようにして静電転写ベルト11の外周に圧接する。また、静電転写ベルト11と静電吸着ローラ15との間に電圧を印加することで、誘電体であるシートSと静電転写ベルト11の誘電体層に電荷を誘起し、シートSを静電転写ベルト11の外周に静電吸着する。これにより、シートSは静電転写ベルト11に安定して吸着され、最下流の転写部まで搬送される。このように搬送されながらシートSは、各感光体ドラム1と転写ローラ12との間に形成される電界によって、各感光体ドラム1のトナー像を順次転写される。
【0019】
4色のトナー像を転写されたシートSは、シートSに画像を定着させる定着装置20に搬入され、定着装置20でトナー像を熱定着された後、ローラ対23及び排出ローラ対30によって搬送される。そして排出ローラ対30から排出された直後に、除電部材31にて一部除電をされた後、積載トレイ24に排出される。
【0020】
また、両面印刷の場合には、排出ローラ対30にて搬送しつつシートSを画像形成装置100の外へ露出させる。シートSの後端が排出ローラ対30のニップ近くまで搬送されたところで、排出ローラ対30を停止した後に反転させ、シートSを再び装置本体100Aの内部の両面搬送経路へ搬送する。両面搬送路を搬送されたシートはUターン部を通りレジストローラ対19に至り、斜行取りをしつつ転写部へ再給送される。以後は片面印刷時と同様に、転写部にてトナー像を転写されたシートSは定着装置20に搬送された後に、定着されたシートSを積載する積載トレイ24に排出される。
【0021】
なお、装置本体100Aには、給送カセット17に収納されたシートSの吸湿状態を判断するため画像形成装置100の雰囲気温度及び湿度を検知する環境検出手段である環境検知センサ52が設けられている。また、装置本体100Aの内部には、制御手段であるコントローラ50が設けられ、コントローラ50は、装置本体100Aの内部機器の駆動を制御する。さらに、コントローラ50は、後述するが、積載トレイ24にシートSが排出されてからの経過時間を記録する記録部50aを有している。
【0022】
図2(a)は、画像形成装置100の装置本体100Aの上部の構成を示す拡大断面図である。図2(a)に示されるように、定着装置20は加熱ローラ21及び加圧ローラ22を備える。そして、シートSが加熱ローラ21及び加圧ローラ22の定着ニップを通過することで、シートS上のトナー像が加圧及び加熱されてシートSに定着されていく。
【0023】
定着装置20のシート搬送方向の下流には、ローラ対23が配置される。定着ニップを通過したシートSは、ローラ対23で挟持されて定着装置20の外部へと排出される。ローラ対23のシート搬送方向の下流には、排出ローラ対30が配置される。ローラ対23を通過したシートSは、排出ローラ対30で挟持されて積載トレイ24へと排出される。
【0024】
排出ローラ対30のシート搬送方向の下流には、除電部材31が配置される。除電部材31の先端部は導電性部材で構成され、除電部材31の他端部は本体フレーム等を介して接地されている。
【0025】
装置本体100Aの内部には、『噴出し手段』であるファン33、吸入口100c、送風口24hが設けられている。ファン33、吸入口100c、送風口24hは、定着装置20の内部で発生した水分を含む空気(以下、「水分含有空気」という)を積載トレイ24に向かって噴出するものである。水分含有空気は、湿り空気とも表現でき、湿り空気は、乾き空気と蒸気とを足し合わせたものとも言える。また、ファン33は、装置本体100Aの内部で、定着装置20及び積載トレイ24の間に配置されて、積載トレイ24の方向に水分含有空気を送風する。
【0026】
前述の吸入口100cは、ファン33よりも空気流動方向の上流側で、定着装置20及び装置本体100Aの間の隙間で形成される。吸入口100cは、定着装置20で発生した水分含有空気、及び、定着装置20の内部で熱を含んで出てきたシートSから発散される水分含有空気を通し、ファン33へと吸い込む開口である。
【0027】
『開口』である前述の送風口24hは、ファン33よりも空気流動方向の下流側(積載トレイ24の側)で装置本体100Aに形成される。送風口24hは、定着装置20で発生した水分含有空気、及び、定着装置20の内部で熱を含んで出てきたシートSから発散される水分含有空気を通し、ファン33から積載トレイ24の表面へと誘導する開口である。こうした構成によれば、積載トレイ24の表面に向けて送風された水分含有空気によって、積載トレイ24及びシートSは除電される。
【0028】
次に、シートSの排出時の除電工程について説明する。定着装置20により定着工程を経たシートSは、ローラ対23により定着装置20から排出ローラ対30へ搬送される。シートSは、給送工程から排出ローラ対30へ到るまでに、電子写真プロセスにより帯電している。この帯電した状態で搬送されてきたシートSは、排出ローラ対30により排出される過程で除電部材31によって上面から接触され、その接触部分が除電される。ところで、給送されるシートS及びトナーには、雰囲気中の水分が吸収されており、トナー像が形成されたシートSが定着工程において加熱される際に、吸収されていた水分の蒸発が生じる。ファン33は、この水分含有空気を、吸入口100cから吸入して、送風口24hから送風して、積載トレイ24の方向へと吹き付けるように送り込む構成となっている。
【0029】
ファン33により送り込まれた空気に含まれる微細な水分は、積載トレイ24の表面に吸着することで、電荷が流れ易い状態になり、積載トレイ24上の表面抵抗が下がるため積載トレイ24の表面の帯電状態を解消することができる。また、積載トレイ24に向けて吹き付けられた空気の一部は、排出ローラ対30から排出されるシートSの裏面に当たってから表面にもまわり込み、積載トレイ24と同様にシートSが除電される。よって、積載トレイ24が除電されると共に、排出されるシートSが除電される。そのために、何も積載されていない積載トレイ24へのシートSの貼り付きや、積載されたシートSと排出されるシートSとの貼り付きによる排出及び積載不良が抑制される。
【0030】
なお、送風口24hの下側に積載トレイ24が配置され、送風口24hの上側に排出ローラ対30が配置され、積載トレイ24、及び、排出されるシートSは、送風口24hから噴出される水分含有空気を囲むことになる。このことから、水分含有空気は、積載トレイ24や積載トレイ24上のシートSを表面から除電しつつ、排出ローラ対30から排出されるシートSを裏面から除電することにもなる。
【0031】
図2(b)は、実施例1の変形例に係る画像形成装置101の装置本体101Aの上部の構成を示す拡大断面図である。実施例1では、装置本体100Aの内部の水分含有空気を積載トレイ24の方向へ送る手段として、ファン33が使用されていたが、この実施例に限定されなくても良い。すなわち、図2(b)に示されるように、ファン33が配置されなくても、装置本体101Aの内部で自然対流が生じる構成であっても良い。例えば、定着装置20から積載トレイ24へと向かう『噴出し手段』である送風路(特に、吸入口100cから送風口24hに至る送風路)を形成する。そして、この送風路を通して、定着装置20の内部で発生した水分含有空気が押し出されて積載トレイ24に導かれるようにする(自然対流)。なお、この送風路は、定着装置20から積載トレイ24へと向かうに従って次第に高くなるように形成されていても良く、その場合には、水分含有空気の噴出し効率が上昇する。
【0032】
以下に、水分含有空気の移動状況を説明する。前述の送風路の途中つまり吸入口100c及び送風口24hの間には、水分含有空気が充満可能な充満空間Mが設けられている。定着装置20のローラ対23から排出された水分含有空気、及び、定着装置20から排出されたシートSから発生した水分含有空気は、この充満空間Mに入る。定着装置20がトナー像をシートSに定着している間に、吸入口100cから次々と水分含有空気が発生しているから、先に充満空間Mに入った水分含有空気は押し出されてくる。そして、充満空間Mの内部の水分含有空気は、送風口24hから積載トレイ24の表面へと漏れ出てくる。
【実施例2】
【0033】
図3(a)は、実施例2に係る画像形成装置200の装置本体200Aの上部の構成を示す拡大断面図である。実施例2の構成のうち実施例1と同一の構成及び効果に関しては、同一の符号を用いて説明を適宜省略する。実施例2の画像形成装置200が実施例1の画像形成装置100と異なる点は、実施例2の画像形成装置200では、積載トレイ24の裏面に沿って水分含有空気を流動させる点である。このために、『噴出し手段』である『送風路』としての空間150が設けられる構成となっている。空間150は、積載トレイ24の裏面側に設けられており、また、ファン33よりも空気流動方向の下流側に配置されている。この空間150によって、水分含有空気を積載トレイ24の裏面へと誘導するのである。なお、ファン33よりも空気流動方向の上流側に装置本体100A及び定着装置20で形成される吸入口100cを有する点については、実施例1と同様である。
【0034】
図3(a)に示されるように、シートSは、積載トレイ24との摺擦、シートSの排出中に除電部材31で除電しきれずに残ったシートS上の電荷の影響等により帯電する。特に、シートSは、連続して排出された場合に、積載されたシートSの量に伴って帯電量を増す。そして、積載されたシートSが積載トレイ24から取り除かれても、積載トレイ24の帯電状態は継続する。そのため、例えば連続して排出された後に積載トレイ24上から全て積載されたシートSをユーザが除去した時には、その後に排出される1枚目のシートSが積載トレイ24に貼り付きやすい状態になっている。
【0035】
図3(b)は、積載トレイ24の上にカールしたシートSが積載されている状態を示す拡大断面図である。水分含有空気を定着装置20から積載トレイ24の表面へと誘導する場合、前述の積載トレイ24の帯電状態や積載されたシートSの帯電状態によって、図3(b)に示されるように、シートSがカールした積載状態となることが特に懸念される。カールしたシートSにより、積載トレイ24の送風口24hが早期に塞がれてしまうと、それ以降に排出されるシートSへ水分含有空気を送り込むことができない。
【0036】
そこで、図3(a)に示されるように、装置本体100Aの内部で発生した水分含有空気を、積載トレイ24の裏側へ送り込む構成がとられている。なお、この構成に基づいた実験では、積載トレイ24の表面が帯電した状態においては、積載トレイ24の裏面も同程度の帯電状態になっていることが確認できた。そして、帯電している積載トレイ24の裏面の除電をすることで、積載トレイ24の表面の除電も可能なことが確認されている。
【0037】
送風部材であるファン33は、定着装置20の近傍に設置され、装置本体200Aの内部の空気を積載トレイ24の方向へ送風できる位置に配置される。これと共に、ファン33よりも定着装置20の側には、装置本体100Aの内部の空気を吸い込む吸入口100cが装置本体100A及び定着装置20の間に形成されている。
【0038】
一方、積載トレイ24の下側には、トレイ下部材27が配置されている。積載トレイ24及びトレイ下部材27は、積載トレイ24の下側で送風路としての空間150を形成する。ファン33は、空間150に対して、ファン33によって取り込んだ空気を吹き込めるようになっている。ここで、トレイ下部材27の材質に関しては、送り込んだ空気中の水分がトレイ下部材27に結露することを防止するという観点から、少なくとも積載トレイ24よりも表面に水分が付着しにくい材料で形成することが望ましい。
【0039】
次に、シートSの排出時の除電工程について説明する。ファン33は、定着装置20がシートSにトナー像を定着させる際に発生する水分を、積載トレイ24の裏側へ送り込む。積載トレイ24上のシートSの積載状態にかかわらず、装置本体200Aにて発生した水分含有空気が積載トレイ24の裏側へ送り込まれることが可能である。送り込まれた空気中の水分は、積載トレイ24の裏側に吸着し、積載トレイ24の表面抵抗が下がることで帯電状態が解消する。
【0040】
その結果、前述の通り、積載トレイ24の裏面の除電により積載トレイ24の表面が除電されるために、連続排出後に積載トレイ24上のシートSを一度に取り除かれた直後でも、次に排出されるシートSが積載トレイ24に貼り付くことが防止される。
【0041】
図3(c)は、実施例2の変形例に係る画像形成装置201の装置本体201Aの上部の構成を示す拡大断面図である。実施例2では、装置本体200Aの内部の水分含有空気を積載トレイ24の裏面の方向へ送る手段として、ファン33が使用されていたが、この実施例に限定されなくても良い。すなわち、図3(c)に示されるように、ファン33が配置されなくても、装置本体100Aの内部に自然対流が生じる構成であっても良い。例えば、定着装置20から積載トレイ24へと向かう『噴出し手段』である送風路(特に、吸入口100cから空間150に至る送風路)を形成する。そして、この送風路を通して、定着装置20の内部で発生した水分含有空気が押し出されて積載トレイ24に導かれるようにする(自然対流)。なお、この送風路は、定着装置20から積載トレイ24へと向かうに従って次第に高くなるように形成されているので、水分含有空気の噴出し効率が良くなっている。また、図3(c)中では、水分含有空気を排出する排出口24dが記載されているのに対して、このような排出口は図3(c)以外の図1〜図4中の画像形成装置では、省略されているが、同様に形成されているものとする。
【0042】
特に、図3(c)に示されるように、ここでは、送風口24hは設けられていなくて、吸入口100cが直接に空間150と連通している。また、空間150の配置は、全領域に亘って定着装置20の配置よりも高く設定されている。こうした配置関係によって、水分含有空気は、ファン33がなくても、空間150へと順次効率良く送り込まれる。
【実施例3】
【0043】
図4(a)は、実施例3に係る画像形成装置300の装置本体300Aの上部の構成を示す拡大断面図である。実施例3の構成のうち実施例1又は2と同一の構成及び効果に関しては、同一の符号を用いて説明を適宜省略する。実施例3の画像形成装置300が実施例1又は2の画像形成装置100等と異なる点は、実施例3の画像形成装置300では、積載トレイ24の表面及び裏面に沿って水分含有空気を流動させる点である。『噴出し手段』は、実施例1及び2で前述した吸入口100c、送風口24h、及び、空間150を全て備える。そして、画像形成装置300では、空気含有空気は、吸入口100cから送風口24h及び空間150に分岐して誘導されるようになっている。そして、積載トレイ24に積載されるシートSの積載量が送風口24hを閉塞させる量未満である場合には、ファン33から送風される水分含有空気は送風口24h及び空間150の両方に誘導される。積載トレイ24に積載されるシートSの積載量が送風口24hを閉塞させる量以上である場合には、ファン33から送風される水分含有空気は空間150に集中的に誘導される。
【0044】
図4(a)に示されるように、装置本体300Aの内部で発生した水分含有空気は、ファン33で取り込まれた後に、積載トレイ24の上部と下部の両側へ送り込まれる構成となっている。なお、積載トレイ24の下側の構成は、前述の実施例2と同様に構成されている。
【0045】
次に、シートSの排出時の除電工程について説明する。最初のシートSに対してトナー像が定着装置20で定着される際に、トナー、シートSから蒸発する水分を含む空気が、定着装置20の近傍に設置されたファン33にて取り込まれ、積載トレイ24へ向けて送り込まれる。
【0046】
送り込まれる空気の一部は、積載トレイ24に設けられた送風口24hから積載トレイ24の表面へ向けて送り込まれ、積載トレイ24の表面が除電される。そして、積載トレイ24の表面へ送り込まれた水分含有空気の一部は、更に排出されるシートSへ向けて送られ、シートSを除電する。その結果、1枚目に排出されるシートSは、積載トレイ24に貼り付くことなく排出される。
【0047】
次に、2枚目以降のシートSの排出が続くが、1枚目と同様にファン33から送り込まれた水分含有空気は、1枚目に積載されたシートSおよび排出される2枚目のシートSの両方に当たるように送り込まれる。よって、2枚目に排出されるシートSと積載されている1枚目のシートSは排出過程で摺擦するものの、水分含有空気を送り込まれることで、摺擦時の帯電を抑えることができ、両方のシートSの貼りつきによる整列性の低化、排出不良を防止することができる。
【0048】
図4(b)は、カールしたシートSが積載された積載トレイ24の構成を示す拡大断面図である。3枚目以降のシートSの排出も同様に進むが、もしシートSの後端部のカールが大きい場合、図4(b)に示されるように、少量のシートSの積載にて、積載トレイ24の送風口24hがシートSにて塞がれた状態になる。この場合、以降に排出されるシートSへ装置本体100Aの内部からの水分含有空気を送り込むことができなくなり、排出され続けるシートS同士の摺擦により、積載トレイ24の表面側の帯電量は大きくなってしまう可能性がある。そのため、積載トレイ24の送風口24hが塞がれた後には、ファン33にて送り込まれる水分含有空気が全て積載トレイ24の裏側へ送り込まれるようになっている。このように実施例2の場合と同様に積載トレイ24の裏面を除電することで、積載トレイ24の表面側も除電することができる。よって、もしカールが大きいなどシートSのカールした後端部によって、積載早期に送風口24hを塞いでしまうような場合においても、積載トレイ24の除電が可能である。よって、連続して排出された後に積載トレイ24上のシートSを一度に取り除いた直後でも、次に排出されるシートSが積載トレイ24に貼り付くことを防止することができる。
【実施例4】
【0049】
図5(a)は、実施例4に係る画像形成装置400の装置本体400Aの上部の構成を示す拡大断面図である。実施例4の構成のうち実施例1〜3と同一の構成及び効果に関しては、同一の符号を用いて説明を適宜省略する。実施例4の画像形成装置400が実施例1〜3の画像形成装置100等と異なる点は、実施例4の画像形成装置400では、積載トレイ24の表面及び裏面へと水分含有空気を誘導する切替え部材25a、25bを備える点である。すなわち、画像形成装置400は、ファン33から送風される水分含有空気の誘導方向を『開口』である送風口24h及び『送風路』である空間150のいずれかに切替え自在な切替え部材25a、25bを備える。また、画像形成装置400は、切替え部材25a、25bの駆動を制御するコントローラ50(図1参照)を備える。
【0050】
画像形成装置400は、『記録手段』である記録部50a(図1参照)を備える。記録部50aは、コントローラ50に設けられ、積載トレイ24に対するシートSの排出後の経過時間を記録する。また、画像形成装置400は、給送カセット17に収容されたシートSの吸湿状態を判断するために装置内の雰囲気温度及び湿度を検知する『環境検出手段』である環境検知センサ52(図1参照)を備える。さらに、画像形成装置400は、積載トレイ24の表面温度の判断の基となる定着装置20の内部の温度情報を検知する『温度検知手段』である温度検知センサ26を備える。そして、コントローラ50は、記録部50aの記録結果、環境検知センサ52の検知結果、及び、温度検知センサ26のいずれか1つの検知結果又は組み合わせの情報に基づいて、切替え部材25a、25bの駆動を制御する。
【0051】
図5(a)に示されるように、画像形成装置400では、ファン33の左方(定着装置20から見て後方)に、送風口24h及び空間150が配置されている。また、ファン33には送風方向を切り替え可能な切替え部材25a、25bが設けられている。切替え部材25a、25bは、装置本体400Aからの信号により、積載トレイ24の表面側へ送風する方向と、積載トレイ24の裏面側へ送風する方向との2つの姿勢をとることが可能となるように駆動源(不図示)に接続されている。装置本体400Aの内部の定着装置20で発生した水分含有空気は、切替え部材25a、25bの切替え方向が上向きに設定されている場合には、ファン33に取り込まれた後に、送風口24hを介して積載トレイ24の表面へと送風される。
【0052】
図5(b)は、切替え部材25a、25bの向きが切替えられた装置本体400Aの上部の構成を示す拡大断面図である。図5(b)に示されるように、装置本体400Aの内部の定着装置20で発生した水分含有空気は、切替え部材25a、25bの切替え方向が下向きに設定されている場合には、直接的に積載トレイ24の裏面の側の空間150へと送風される。コントローラ50は、各種検出情報により積載トレイ24に結露が生じないと判断した場合には、切替え部材25a、25bの姿勢を変更することで、実施例3と同様に積載トレイ24及びシートSを除電することができる。
【0053】
また、画像形成装置100には、シートSが排出ローラ対30から排出されるのを検知する排出検知センサ(不図示)が設けられている。また、コントローラ50は、排出検知センサの検知結果に基づいて、シートSが排出ローラ対30から積載トレイ24へと排出されてからカウントされた所定時間(シート通過履歴)を記録する記録手段である記録部50a(記録手段)(図1参照)を有する。
【0054】
さらに、画像形成装置100には、装置内の雰囲気温度と湿度を検出する環境検知センサ52(図1参照)が設けられている。加えて、画像形成装置100には、定着装置20の定着部品の温度を検知する温度検知センサ26が設けられる。
【0055】
図6は、シート排出部の除電機構の駆動を制御するコントローラ50の制御工程を示すフローチャートである。コントローラ50がシート通過履歴情報、シートSの吸湿情報、積載トレイ24の温度情報を判断するのは、シートSの乾燥度合を判断するためのものである。
【0056】
制御部であるコントローラ50は、画像形成装置に印字命令を発信する(S1)。コントローラ50は、前回のシート通過履歴情報を確認し、前回のシートSの通過から所定の時間が経過しているかを確認する(S2)。コントローラ50は、S2の確認の結果、YES(所定時間が経過)の場合には、次に環境検知センサ52の記録情報と環境検知センサ52より検出した現状の環境情報を比較し、給送カセット17にセットされているシートSの吸湿情報を判断する(S3)。コントローラ50は、S3の判断の結果、YES(シートSが吸湿していると判断)の場合には、温度検知手段である温度検知センサ26で、定着装置20の内部の温度を判断する(S4)。そして、コントローラ50は、記録部50aに記憶された所定の判断基準に照合して積載トレイ24の表面温度を判断する(S4)。
【0057】
画像形成装置100の電源がOFFからONになると、定着装置20の加熱ローラ21のヒータに通電され、定着装置20の内部の温度が上昇する。加熱ローラ21の表面がシートS上のトナーを溶融するのに必要な所定温度まで上昇した後、その温度を保つよう加熱ローラ21のヒータへの通電が制御される。つまり、定着装置20の内部の温度が所定温度に達していない場合は、画像形成動作は開始しておらず、定着直後のシートSが積載トレイ24に積載されていないため、積載トレイ24の表面温度が低いと判断される。また、シートSが定着装置20を通過した直後は、除電機構部から送風される空気中の水分が多く、積載トレイ24の表面温度が低い場合には排出・積載に支障が生じるような結露の可能性がある。
【0058】
コントローラ50は、S4の判断の結果、YESの場合(積載トレイ24の表面温度が低いと判断した場合)には、駆動源に制御信号を送り、切替え部材25a、25bを積載トレイ24の下側に向け(S5、図5(b)参照)、印字動作を開始する(S6)。コントローラ50は、S2、S3,S4の判断の結果、NOの場合には、切替え部材25a、25bを積載トレイ24の上側に向け(S7)、印字動作を開始する(S6)。
【0059】
なお、実施例4では、積載トレイ24の表面の温度判断手段として、近傍に配置されている定着装置20の内部の温度検知センサ26の情報を用いるものとしたが、積載トレイ24の表面温度を直接検出できる温度センサ等を別途設けても良い。
【0060】
以上の構成により、除電機構部から送風される空気中の水分が多く、排出・積載に支障が生じるような結露の可能性がある場合に、積載トレイ24の表面およびシートSが濡れることを防止できる。加えて、積載トレイ24に積載されるシートSまたは積載トレイ24を効率的に除電し、シートSの積載トレイ24への貼りつきを防止することができる。
【0061】
実施例1〜4の構成によれば、イオン発生装置のような複雑な機構を設ける必要がなく、積載トレイ24または積載トレイ24の上のシートSを効率的に除電することができる。その結果、コストのアップ及び装置本体100Aの大型化を伴うことがなく、積載トレイ24に対するシートSの貼り付き、積載トレイ24の上でのシートS同士の貼り付きという現象が抑制される。
【0062】
実施例2の構成によれば、積載トレイ24の上にシートSが積載されて吸入口100cが閉塞されつつあった場合であって、積載トレイ24の裏面側から積載トレイ24及びシートSを除電することができる。
【0063】
実施例3の構成によれば、積載トレイ24に積載されるシートSの積載量が所定の値未満である場合には、ファン33から送風される水分含有空気は送風口24h及び空間150の両方に誘導される。積載トレイ24に積載されるシートSの積載量が所定の値以上である場合には、ファン33から送風される水分含有空気は空間150に集中的に誘導される。シートSの積載量が多いと、積載されたシートSが送風口24hを閉塞してしまい、空気含有空気が送風口24hから送風されないからである。その結果、積載トレイ24にシートSが多く積載されるまでは、水分含有空気は、送風口24h及び空間150に誘導されて積載トレイ24及びシートSを除電することができる。積載トレイ24にシートSが多く積載されてからは、水分含有空気は、空間150に集中的に誘導されて積載トレイ24及びシートSを除電することができる。
【0064】
実施例4の構成によれば、切替え部材25a、25bは、ファン33から送風される水分含有空気の誘導方向を送風口24h及び空間150のいずれかに切替え自在である。その結果、積載トレイ24に積載されるシートSの量によって水分含有空気の送風経路が変更される。
【0065】
実施例4の構成によれば、コントローラ50は、記録部50aの記録結果、環境検知センサ52の検知結果、及び、温度検知センサ26の検知結果の少なくとも1つ又は組み合わせに基づいて、切替え部材25a、25bの駆動を制御する。その結果、排出後のシートSの乾燥状態に基づいて、積載トレイ24に対して最適な送風が可能である。積載トレイ24及び積載トレイ24に積載されるシートSが効率的に除電され、かつ、積載トレイ24の表面およびシートSが濡れることが抑制される。
【符号の説明】
【0066】
20 定着装置
24 積載トレイ
24h 送風口(噴出し手段)
33 ファン(噴出し手段)
51 画像形成部
100 画像形成装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を形成する画像形成部と、シートに画像を定着させる定着装置と、定着されたシートを積載する積載トレイと、を備える画像形成装置であって、
画像形成されたシートの通過により前記定着装置で発生した水分を含む空気を前記積載トレイに向かって噴出する噴出し手段を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記噴出し手段は、前記定着手段から前記積載手段へと向かうに従って次第に高くなるように形成された送風路であることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記噴出し手段は、前記定着装置と前記積載トレイの間に配置されて前記積載トレイの方向に前記定着装置で発生した水分を含む空気を送風するファンを有することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記噴出し手段は、前記ファンからの空気を前記積載トレイの表面へと誘導する開口を有することを特徴とする請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記噴出し手段は、前記ファンからの空気を前記積載トレイの裏面へと誘導する送風路を有することを特徴とする請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記噴出し手段は、
前記ファンからの空気を前記積載トレイの表面へと誘導する開口と、
前記ファンからの空気を前記積載トレイの裏面へと誘導する送風路と、
を備えることを特徴とする請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記ファンから送風される空気の誘導方向を前記開口及び前記送風路のいずれかに切替え自在な切替え部材と、
前記切替え部材の駆動を制御するコントローラと、
を備えることを特徴とする請求項6に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記コントローラに設けられ、前記積載トレイに対するシートの排出後の経過時間を記録する記録手段と、
シートの吸湿状態の判断の基となる温度及び湿度を検知する環境検知手段と、
前記積載トレイの表面温度の判断の基となる温度を検知する温度検知手段と、を備え、
前記コントローラは、前記記録手段の記録結果、前記環境検知手段の検知結果、及び、前記温度検知手段の検知結果の少なくとも1つ又は組み合わせに基づいて、前記切替え部材の駆動を制御することを特徴とする請求項7に記載の画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−13882(P2012−13882A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−149376(P2010−149376)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】