画像形成装置
【課題】DC帯電方式を採用した画像形成装置において、ニップ前露光が適切に上流側ギャップに対応する感光体の表面に照射されているか否かを判別して、それを適切に調整することのできる画像形成装置を提供する。
【解決手段】画像形成装置10は、上流側のギャップA1に対応する感光体1の表面に光を照射する照射手段8の感光体1の表面に向けて光を出射する部分の感光体1の表面に対する相対位置を変更して照射手段8による感光体1の表面への光の照射状態を調整する照射状態調整手段14と、照射手段により光を照射した感光体1の表面に放電が生じることで直流電流検知手段12によって検知される直流電流値を用いて、照射状態調整手段14による照射状態の調整を制御する制御手段13と、を有する構成とする。
【解決手段】画像形成装置10は、上流側のギャップA1に対応する感光体1の表面に光を照射する照射手段8の感光体1の表面に向けて光を出射する部分の感光体1の表面に対する相対位置を変更して照射手段8による感光体1の表面への光の照射状態を調整する照射状態調整手段14と、照射手段により光を照射した感光体1の表面に放電が生じることで直流電流検知手段12によって検知される直流電流値を用いて、照射状態調整手段14による照射状態の調整を制御する制御手段13と、を有する構成とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式を用いた複写機、プリンタ、ファクシミリ装置などの画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真方式の画像形成装置において、電子写真感光体(感光体)の表面を帯電させる方法としては、細いコロナ放電ワイヤに高電圧を印加して、それにより発生するコロナを感光体の表面に作用させて帯電を行なうコロナ帯電方式が一般的であった。
【0003】
近年は、低圧プロセス、低オゾン発生量、低コストなどの点から、感光体の表面を帯電させる方法として、次のような方式が主流となりつつある。即ち、ローラ型又はブレード型などの帯電部材を感光体の表面に近接又は接触させ、この帯電部材に電圧を印加することにより、感光体と帯電部材との間の微小空隙における放電によって感光体の表面を帯電させる方式(以下「接触帯電方式」という。)である。特に、ローラ型の帯電部材は、長期にわたって安定した帯電を行うことが可能である。
【0004】
接触帯電方式には、帯電部材に直流電圧のみを印加する「DC帯電方式」と、帯電部材に直流電圧と交流電圧との重畳電圧を印加する「AC帯電方式」とがある。
【0005】
AC帯電方式には、振動電圧を印加し、プラス側、マイナス側への放電を交互に起こすことで、感光体の表面を均一に帯電させることができるというメリットがある。しかし、AC帯電方式は、DC帯電方式と比べて、感光体への放電量が増えるため、感光体の削れなどの感光体の劣化を促進しやすく、感光体の寿命は短くなりやすい。又、AC帯電方式では、交流電圧を直流電圧に重畳させるためにAC電源が必要である。そのため、AC帯電方式は、感光体の寿命が短くなることで、例えば感光体を含むプロセスカートリッジの交換のためにかかるランニングコストが高くなったり、AC電源が必要であることにより画像形成装置のイニシャルコストが高くなったりすることがある。
【0006】
一方、DC帯電方式は、AC帯電方式と比べて、感光体への放電量が少ないために、感光体の長寿命化を図ることができ、例えば感光体を含むプロセスカートリッジの交換のためにかかるランニングコストを抑えることができる。又、AC電源を必要としないので、画像形成装置のイニシャルコストを抑えることができる。
【0007】
しかしながら、DC帯電方式は、AC帯電方式と比べて、感光体の表面電位の均一性(帯電均一性)が劣る。そのため、DC帯電方式では、例えばハーフトーン画像を形成する際に、感光体の表面電位の不均一性に起因する画像濃度ムラの問題が発生しやすい。
【0008】
ドラム型の感光体である感光ドラムと、これに接触して接触部を形成する帯電部材である帯電ローラと、を有する系を例に更に説明すると、DC帯電方式では、感光ドラムの長手方向(周方向に直交する方向)のスジ状の画像濃度ムラが問題となりやすい。
【0009】
ここで、上述のようなスジ状の画像濃度ムラを、「帯電横スジ」と呼ぶ。又、感光体と帯電部材との間の微小空隙を「帯電ギャップ」と呼ぶ。そして、帯電ギャップのうち感光体と帯電部材との最近接部(感光体と帯電部材とが接触する場合は接触部)よりも感光体の表面(被帯電面)の移動方向の上流側のものを「上流側ギャップ」と呼ぶ。又、帯電ギャップのうち感光体と帯電部材との最近接部(感光体と帯電部材とが接触する場合は接触部)よりも感光体の表面(被帯電面)の移動方向の下流側のものを「下流側ギャップ」と呼ぶ。
【0010】
上述のような帯電横スジは、下流側ギャップにおいて、上流側ギャップで帯電された感光ドラムと帯電ローラとの間で不安定な微小放電(剥離放電など)が発生することに起因するものと考えられる。特に、上流側ギャップで感光ドラムの表面の均一な帯電が完了していない場合に、下流側ギャップで不安定な微小放電が発生して、感光ドラムの表面電位にムラが生じるものと考えられる。
【0011】
特許文献1には、上流側ギャップにおいて感光ドラムの表面に光を照射して感光ドラムの表面を除電することにより、下流側ギャップにおいて感光ドラムの表面を均一に帯電させる構成が開示されている。斯かる構成によれば、上述のような帯電横スジなどの感光ドラムの表面電位の不均一性に起因する画像欠陥を抑制することができる。
【0012】
即ち、上流側ギャップに対応する感光ドラムの表面に光を照射することで、上流側ギャップにおいて感光ドラム上の電荷を打ち消して、帯電ローラにより感光ドラムの表面を帯電させる作用を下流側ギャップに偏らせることができる。このように上流側ギャップに対応する感光体の表面に光を照射することを「ニップ前露光」と呼ぶ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平5−341626号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、ニップ前露光を行うニップ前露光装置の光量を同じにしていても、ニップ前露光により帯電横スジを抑制する効果にばらつきが生じる場合があることがわかった。
【0015】
即ち、ニップ前露光装置の光量が同じであっても、ニップ前露光が上流側ギャップの奥(感光体の表面の移動方向において感光体と帯電部材との最近接部側)まで到達しない状態となる場合がある。このような場合、上流側ギャップにおいて感光ドラム上の電荷を打ち消しきれないことにより、帯電ローラにより感光ドラムの表面を帯電させる作用を下流側ギャップに偏らせきれず、帯電横スジが発生してしまうことがある。
【0016】
上流側ギャップは、感光ドラムと帯電ローラとの間の微小な空間であり、そこに適切に光を当てるには精度が必要である。しかし、この微小な空間に効果的にニップ前露光が当たっているかどうかを正確に判別する手段がなかった。
【0017】
特に、感光ドラム、帯電ローラ、又はこれらの両方を含むプロセスカートリッジを新品に交換する際に、ニップ前露光が適切に照射される状態からずれることが発生しやすい。そのため、プロセスカートリッジの交換後に、帯電横スジが画像上に発生する問題が発生しやすい。感光ドラム、帯電ローラ、又はこれらの両方がそれぞれ単体で交換可能である場合にも、その交換後に同様の問題が発生しやすい。
【0018】
ところで、このニップ前露光の照射精度を補うために、ニップ前露光装置の光量を極端に上げて、感光ドラム上の広範囲に光を照射する方法が考えられる。しかしながら、このような方法によると、ニップ前露光が適切に照射されている場合には、上流側ギャップにおいて除電と放電とを繰り返す量が増えてしまう。そのため、感光ドラムと帯電ローラとの間での放電量が増え過ぎてしまい、感光ドラムの外層が放電によって劣化しやすくなり、クリーナなどの接触部材によって摺擦されて磨耗する量、所謂、感光体の削れ量が増える問題が生じるおそれがある。
【0019】
従って、本発明の目的は、DC帯電方式を採用した画像形成装置において、ニップ前露光が適切に上流側ギャップに対応する感光体の表面に照射されているか否かを判別して、それを適切に調整することのできる画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記目的は本発明に係る画像形成装置にて達成される。要約すれば、本発明は、移動可能な感光体と、前記感光体に接触又は近接して前記感光体を帯電させる帯電部材であって、前記感光体の移動方向において、前記感光体と前記帯電部材との接触部又は最近接位置の上流側に該接触部又は最近接位置に向けて前記感光体との間の距離が徐々に狭くなるギャップを形成し、前記接触部又は前記最近接位置の下流側に該接触部又は最近接位置から遠ざかるにつれて前記感光体との間の距離が徐々に広くなるギャップを形成し、直流電圧が印加されることで前記感光体の表面との間で生じる放電により前記感光体を帯電させる帯電部材と、前記帯電部材に直流電圧を印加する電源と、前記上流側のギャップに対応する前記感光体の表面に光を照射する照射手段と、前記電源から前記帯電部材に直流電圧を印加している際に前記帯電部材と前記感光体との間に流れる直流電流を検知する直流電流検知手段と、前記照射手段の前記感光体の表面に向けて光を出射する部分の該感光体の表面に対する相対位置を変更して前記照射手段による前記感光体の表面への光の照射状態を調整する照射状態調整手段と、前記照射手段により光を照射した前記感光体の表面に前記放電が生じることで前記直流電流検知手段によって検知される直流電流値を用いて、前記照射状態調整手段による前記照射状態の調整を制御する制御手段と、を有することを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、DC帯電方式を採用した画像形成装置において、ニップ前露光が適切に上流側ギャップに対応する感光体の表面に照射されているか否かを判別して、それを適切に調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施例に係る画像形成装置の要部の模式的な断面図である。
【図2】本発明の一実施例に係る画像形成装置の感光ドラムと帯電ローラの層構成を示す模式的な断面図である。
【図3】本発明の一実施例に係る画像形成装置の動作シーケンス図である。
【図4】本発明の一実施例に係る画像形成装置における帯電バイアス印加系のブロック図である。
【図5】本発明の一実施例に係る画像形成装置の照射状態調整手段の構成を説明するための模式図である。
【図6】画像形成装置のニップ前露光の位置と除電効果との関係を説明するためのモデル図である。
【図7】ニップ前露光装置の光量と、帯電ローラから感光ドラムに流れ込むDC電流値及び感光ドラムの削れ量との関係を示したグラフ図である。
【図8】本発明の一実施例に係る画像形成装置における帯電前露光調整工程の実施制御のフローチャート図である。
【図9】本発明の一実施例に係る画像形成装置におけるニップ前露光調整工程のフローチャート図である。
【図10】本発明の他の実施例に係る画像形成装置における帯電バイアス印加系のブロック図である。
【図11】本発明の他の実施例に係る画像形成装置におけるニップ前露光調整工程の実施制御のフローチャート図である。
【図12】本発明の更に他の実施例に係る画像形成装置における帯電バイアス印加系のブロック図である。
【図13】本発明の更に他の実施例に係る画像形成装置におけるニップ前露光装置の模式図である。
【図14】本発明の更に他の実施例に係る画像形成装置におけるニップ前露光調整工程のフローチャート図である。
【図15】帯電横スジの発生メカニズムを説明するための説明図である。
【図16】ニップ前露光の効果の発生メカニズムを説明するための説明図である。
【図17】ニップ前露光装置の位置と除電効果との関係を説明するためのモデル図である。
【図18】帯電部材の他の例を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る画像形成装置を図面に則して更に詳しく説明する。
【0024】
実施例1
1.画像形成装置の全体的な構成及び動作
先ず、本発明の一実施例に係る画像形成装置の全体的な構成及び動作について説明する。図1は、本実施例の画像形成装置10の全体構成を模式的に示す断面図である。
【0025】
本実施例の画像形成装置10は、接触帯電方式、反転現像方式を採用した電子写真方式のレーザビームプリンタである。又、本実施例の画像形成装置10は、最大A3サイズの転写材Pに画像を形成して出力することができる。
【0026】
画像形成装置10は、像担持体としてのドラム型の電子写真感光体である感光ドラム1を有する。感光ドラム1は、図示矢印R1方向に回転駆動される。感光ドラム1の周囲には、その回転方向(表面の移動方向)に沿って、次の各手段が配置されている。先ず、帯電手段としてのローラ型の接触帯電部材である帯電ローラ(ローラ帯電器)2である。次に、現像手段としての現像装置4である。次に、転写手段としてのローラ型の接触転写部材である転写ローラ5である。次に、クリーニング手段としてのクリーニング装置7である。又、感光ドラム1の回転方向において帯電ローラ2と現像装置4との間の図中上方には、露光手段(画像書き込み手段)としての露光装置3が設置されている。又、転写材Pの搬送方向において感光ドラム1と転写ローラ5との接触部よりも下流側には、定着手段としての定着装置6が設置されている。更に、画像形成装置10には、図示しない転写材Pの収容部、該収容部から感光ドラム1と転写ローラ5との接触部に転写材Pを供給する供給部、定着装置6を通過した後の転写材Pを画像形成装置10の外部へと排出する排出部などが設けられている。
【0027】
帯電ローラ2と感光ドラム1との接触部を帯電ニップaと呼ぶ。露光装置3による感光ドラム1の露光位置を露光部bと呼ぶ。現像装置4の後述する現像スリーブ4bと感光ドラム1との対向位置を現像部cと呼ぶ。転写ローラ5と感光ドラム1との接触部を転写ニップdと呼ぶ。又、クリーニング装置7の後述するクリーニングブレード7aと感光ドラム1との接触部をクリーニング部eと呼ぶ。これら帯電ニップa、露光部b、現像部c、転写ニップd、クリーニング部eは、感光ドラム1の回転方向において、この順番に配置されている。
【0028】
画像形成工程においては、先ず、回転する感光ドラム1の表面(被帯電面)が、帯電ローラ2によって一様に帯電させられる。その後、帯電した感光ドラム1の表面は、画像情報に応じて露光装置3によって走査露光される。これにより、感光ドラム1上に画像情報に応じた静電潜像(静電像)が形成される。感光ドラム1上に形成された静電潜像は、現像装置4によって現像剤のトナーによりトナー像として現像される。感光ドラム1上に形成されたトナー像は、転写ニップdにおいて、別途転写ニップdまで搬送されてきた転写材P上に、転写ローラ5の作用によって静電的に転写される。トナー像が転写された転写材Pは、感光ドラム1から分離されて定着装置6へと搬送される。定着装置6は、転写材Pを加熱及び加圧することによって、その上にトナー像を定着させる。その後、転写材Pは、印刷物(画像形成物)として画像形成装置10から排出される。
【0029】
本実施例では、感光ドラム1は、外径30mmの負帯電性の有機感光体(OPC)である。感光ドラム1は、駆動装置(駆動手段)としての駆動モータ(図示せず)によって、通常210mm/sのプロセススピード(周速度)で図示矢印R1方向に回転駆動される。図2に示すように、感光ドラム1は、アルミニウム製のシリンダ(導電性ドラム基体)1aの表面に、光の干渉を抑えてその上の層の接着性を向上させる下引き層1bと、光電荷発生層1cと、電荷輸送層1dとの3層を下から順に塗布して構成されている。
【0030】
帯電ローラ2は、図2に示すように、芯金2aの長手方向(回転軸線方向)の両端部をそれぞれ軸受け部材(図示せず)により回転自在に保持されると共に、付勢手段としての付勢部材である押圧ばね2eによって感光ドラム1の回転中心方向に付勢されている。これにより、帯電ローラ2は、感光ドラム1の表面に対して所定の押圧力で圧接されている。又、帯電ローラ2は、感光ドラム1の回転に対して従動して図示矢印R2方向に回転する。
【0031】
帯電ローラ2には、帯電電圧印加手段としての帯電電源T1が接続されている。帯電工程においては、所定の条件の帯電電圧(帯電バイアス)が帯電電源T1から帯電ローラ2の芯金2aに印加されることにより、感光ドラム1の表面は、DC帯電方式によって、所定の極性(本実施例では負極性)の所定の電位に帯電させられる。感光ドラム1の回転方向において、帯電ニップaの上流側では、感光ドラム1と帯電ローラ2との間の距離は帯電ニップaに向けて徐々に狭くなっていく。本実施例では、この感光ドラム1の回転方向における帯電ニップaの上流側の微小空隙を上流側ギャップA1と呼ぶ。又、感光ドラム1の回転方向において、帯電ニップaの下流側では、感光ドラム1と帯電ローラ2との間の距離は帯電ニップaから遠ざかるにつれて徐々に広がっていく。本実施例では、この感光ドラム1の回転方向における帯電ニップaの下流側の微小な空隙を下流側ギャップA2と呼ぶ。感光ドラム1の表面は、感光ドラム1の回転方向において、帯電ニップaを中心とした上流側ギャップA1及び下流側ギャップA2を含む領域(帯電部)を通過することによって帯電処理される。特に、本実施例では、後述するように、主に下流側ギャップA2において感光ドラム1の表面を所望の表面電位に均一に帯電させるようにする。
【0032】
帯電ローラ2による感光ドラム1の表面の帯電処理は、帯電ローラ2から感光ドラム1への放電によって行われる。そのため、感光ドラム1の表面の帯電処理を開始するためには、ある閾値電圧以上の電圧を帯電ローラ2に印加する必要がある。本実施例では、約−600V以上の電圧を帯電ローラ2に印加すれば、感光ドラム1の表面電位が上昇を始め、それ以降は印加電圧に対して傾き1で線形に感光ドラム1の表面電位が上昇する。例えば、本実施例では、−300Vの表面電位を得るためには−900V、−500Vの表面電位を得るためには、−1100Vの電圧を印加すればよい。この閾値電圧を放電開始電圧(帯電開始電圧)Vthと呼ぶ。つまり、画像形成工程において必要とされる感光ドラム1の表面電位(暗部電位)Vdを得るためには、帯電ローラ2には、Vd+Vthという、暗部電位Vd以上の直流電圧(DC電圧)を印加することが必要となる。
【0033】
本実施例では、帯電工程においては、感光ドラム1の表面を−500Vの暗部電位Vdに一様に帯電させるために、帯電ローラ2の芯金2aには、帯電電源T1より、帯電電圧(帯電バイアス)として、−1100Vの直流電圧が印加される。
【0034】
本実施例では、帯電ローラ2の長手方向(回転軸線方向)の長さは320mmである。図2に示すように、帯電ローラ2は、芯金(支持部材)2aの外回りに、下層2bと、中間層2cと、表層2dとを下から順次に積層した3層構成を有する。下層2bは帯電音を低減するための発泡スポンジ層である。又、表層2dは、感光ドラム1上にピンホールなどの欠陥があったとしても、電流のリークが発生するのを防止するために設けられている保護層である。
【0035】
より具体的には、本実施例における帯電ローラ2の仕様は、次の通りである。
芯金2a:直径6mmのステンレス丸棒
下層2b:カーボン分散の発泡EPDM、比重0.5g/cm3、体積抵抗値102〜109Ωcm、層厚3.0mm
中間層2c:カーボン分散のNBR系ゴム、体積抵抗値102〜105Ωcm、層厚700μm
表層2d:フッ素化合物のトレジン樹脂に酸化錫とカーボンを分散、体積抵抗値107〜1010Ωcm、表面粗さ(JIS規格10点平均表面粗さRa)1.5μm、層厚10μm
本実施例では、露光装置3として、半導体レーザを用いたレーザビームスキャナを用いた。露光装置3は、画像読み取り装置(図示せず)などから入力される画像信号に対応して変調されたレーザ光Lを出力する。そして、露光装置3は、感光ドラム1の一様に帯電処理された面を、露光部bにおいて、上記レーザ光Lによって走査露光(イメージ露光)する。これにより、感光ドラム1の表面のレーザ光で照射された部分の電位の絶対値が低下して、感光ドラム1の表面には、走査露光した画像情報に対応した静電潜像(静電像)が形成される。
【0036】
本実施例では、現像装置4は、現像剤として非磁性トナー粒子(トナー)と磁性キャリア粒子(キャリア)とを含む二成分現像剤を用いる二成分磁気ブラシ現像方式を採用している。又、本実施例では、現像装置4は反転現像方式により静電潜像を現像する。即ち、一様に帯電させられた後に露光されることによって電位の絶対値が低下した感光ドラム1の表面の露光部分(明部)に、感光ドラム1の帯電極性と同極性に帯電したトナーを付着させることで、感光ドラム1上の静電潜像を現像する。
【0037】
現像装置4は、二成分現像剤4eを収容した現像容器4aを有する。現像容器4aの感光ドラム1に対向する位置に設けられた開口部から一部が外部に露出するようにして、現像剤担持体としての現像スリーブ4bが回転可能に現像容器4aに設けられている。現像スリーブ4bは、非磁性材料で形成されている。現像スリーブ4bは、感光ドラム1との最近接距離を300μmに保持するようにして、感光ドラム1に対向して配設される。現像スリーブ4bは、現像スリーブ4bと感光ドラム1との対向部である現像部cにおいて、その表面の移動方向が感光ドラム1の表面の移動方向とは逆方向になるように、図示矢印R4方向に回転駆動される。現像スリーブ4bは、その内部に磁界発生手段としてのマグネットローラ4cを収容しており、このマグネットローラ4cは現像容器4aに対して回転不可能なように固定して配置されている。又、現像スリーブ4aに対向して、現像スリーブ4bに担持させる二成分現像剤4eの量を規制する規制部材としての規制ブレード4dが設けられている。更に、現像容器4a内には、現像剤攪拌部材としての2つの攪拌スクリュー4f、4fが配置されている。現像容器4a内のトナーとキャリアとの混合物である二成分現像剤4eは、攪拌スクリュー4f、4fの回転によって攪拌されながら現像容器4a内を循環搬送される。
【0038】
攪拌スクリュー4f、4fによって現像スリーブ4b側に搬送された現像容器4a内の二成分現像剤4eは、マグネットローラ4cの作用により現像スリーブ4上に担持され、規制ブレード4dの作用により所定の厚さの薄層状にコーティングされる。その後、現像スリーブ4上にコーティングされた二成分現像剤4eは、感光ドラム1と対向する現像部cへと搬送される。現像部cにおいて現像スリーブ4b上の二成分現像剤4eは、マグネットローラ4cの作用により穂立ちして、磁気ブラシを形成する。現像スリーブ4bは、この磁気ブラシを感光ドラム1の表面に近接又は接触(本実施例では接触)させるようにして回転する。そして、現像部cにおいて、後述する現像電圧によって形成される電界の作用によって感光ドラム1上の静電潜像に応じて磁気ブラシからトナーが感光ドラム1に転移して、感光ドラム1上にトナー像が形成される。その後、現像部cを通過した、磁気ブラシを形成する二成分現像剤4eは、現像スリーブ4bの回転によって現像容器4a内に戻される。
【0039】
現像スリーブ4bには、現像電圧印加手段としての現像電源T2が接続されている。現像工程においては、現像スリーブ4bには、現像電源T2から、所定の現像電圧(現像バイアス)が印加される。本実施例では、現像電圧は、直流電圧(Vdc)と交流電圧(Vac)とを重畳した振動電圧である。より具体的には、本実施例では、−320Vの直流電圧と、周波数8kHz、ピーク間電圧1800Vppの交流電圧とを重畳した振動電圧である。
【0040】
尚、本実施例では、キャリアの抵抗は約1013Ωcm、キャリアの粒径は40μmである。又、トナーは、キャリアとの摺擦により負極性に摩擦帯電される。又、現像容器4a内の現像剤のトナー濃度(二成分現像剤に含まれるトナーの量)は、濃度センサ(図示せず)によって検知される。そして、この検知情報に基づいて、トナーホッパー4gから適正量のトナーが現像容器4aに適宜補給され、現像容器4a内の現像剤のトナー濃度が一定になるように調整される。
【0041】
転写ローラ5は、感光ドラム1に所定の押圧力で圧接されている。転写ローラ5には、転写電圧印加手段としての転写電源T3が接続されている。転写工程においては、転写ローラ5には、転写電源T3から、所定の転写電圧(転写バイアス)が印加される。本実施例では、転写電圧として、トナーの正規の帯電極性(本実施例では負極性)とは逆極性(本実施例では正極性)である+500Vの直流電圧が印加される。この転写電圧によって形成される電界の作用により、感光ドラム1上のトナー像は、感光ドラム1と転写ローラ5との接触部である転写ニップdにおいて用紙などの転写材Pに転写される。
【0042】
定着装置6は、加熱手段を備えた定着部材としての定着ローラ6aと、定着ローラ6bに圧接された加圧部材としての加圧ローラ6bとを有しており、定着ローラ6aと加圧ローラ6bは回転駆動される。定着装置6は、定着ローラ6aと加圧ローラ6bとの間の接触部(定着ニップ)において転写材Pを挟持して搬送しながら、転写材Pの表面に転写されたトナー像を加熱及び加圧する。これにより、転写材P上のトナー像は転写材P上に定着される。本実施例では、転写材Pの材質、厚さ、坪量に応じて、定着ローラ6aと加圧ローラ6bの回転速度が可変制御される。
【0043】
クリーニング装置7は、クリーニング部材としてのクリーニングブレード7aと、クリーニング容器7bとを有する。回転する感光ドラム1の表面は、クリーニングブレード7aと感光ドラム1との接触部であるクリーニング部eにおいて、クリーニングブレード7aにより摺擦される。これにより、転写材Pへのトナー像の転写後に感光ドラム1の表面に残留したトナー(転写残トナー)は、感光ドラム1の表面から除去されて、クリーニング容器7bに回収される。こうして、感光ドラム1の表面は清浄化され、繰り返し画像形成に供される。
【0044】
本実施例では、感光ドラム1と、感光ドラム1に作用するプロセス手段としての帯電ローラ2とは、枠体(図示せず)によって一体的にカートリッジ化されて、画像形成装置10の本体(装置本体)に対して着脱可能なプロセスカートリッジとされている。尚、プロセスカートリッジは、本実施例の態様に限定されるものではい。プロセスカートリッジは、感光体と、感光体に作用するプロセス手段としての帯電手段、現像手段及びクリーニング手段のうちの少なくとも一つとを一体的にカートリッジ化して、装置本体に対して着脱可能としたものである。
【0045】
図3は、本実施例の画像形成装置10の動作シーケンス図である。
【0046】
a.初期回転動作(前多回転工程)
初期回転動作期間は、画像形成装置10の起動時の始動動作期間(起動動作期間、ウォーミング期間)である。初期回転動作期間では、画像形成装置10の電源スイッチがオンとされることにより、感光ドラム1の回転駆動が開始されると共に、定着装置6の温度を所定温度への立ち上げるなどの各種プロセス機器の所定の準備動作が実行される。
【0047】
b.印字準備回転動作(前回転工程)
印字準備回転動作期間は、プリント信号(画像形成開始指示)が入力されてから実際に印字工程が実行されるまでの間の準備回転動作期間である。初期回転動作中にプリント信号が入力されたときには、初期回転動作に引き続いて印字準備回転動作が実行される。初期回転動作中にプリント信号の入力がないときには、初期回転動作の終了後にメインモータの駆動が一旦停止されて、感光ドラム1の回転駆動が停止され、画像形成装置10はプリント信号が入力されるまでスタンバイ(待機)状態に保たれる。そして、プリント信号が入力されると、印字準備回転動作が実行される。
【0048】
本実施例では、この印字準備回転動作期間において、印字工程中にニップ前露光を適切に行うための、ニップ前露光調整工程が行われる。このニップ前露光調整工程については、後述して詳しく説明する。
【0049】
c.印字工程(画像形成工程、作像工程)
所定の印字準備回転動作が終了すると、感光ドラム1は引き続いて回転駆動されて、印字工程が開始される。印字工程では、回転する感光ドラム1にトナー像を形成し、感光ドラム1上のトナー像を転写材Pへの転写し、転写材P上のトナー像を転写材Pに定着させる処理が行われて、画像形成物が画像形成装置10から出力(プリントアウト)される。
【0050】
連続印字(連続プリント)モードの場合は、上述の印字工程が、所定の設定プリント枚数分繰り返して実行される。
【0051】
d.紙間工程
紙間とは、連続印字モードにおいて、一の転写材Pの後端部が転写ニップdを通過した後、次の転写材Pの先端部が転写ニップdに到達するまでの間の、転写ニップdに転写材Pが存在しない間の期間である。
【0052】
e.後回転動作
後回転動作期間は、最後の転写材Pに対する印字工程が終了した後もしばらくの間メインモータの駆動を継続させて感光ドラム1の回転駆動を継続させ、所定の整理(準備)動作を実行する期間である。
【0053】
f.スタンバイ
所定の後回転動作が終了すると、メインモータの駆動が停止されて感光ドラム1の回転駆動が停止され、画像形成装置10は次のプリント信号が入力するまでスタンバイ状態に保たれる。1枚だけのプリントの場合は、そのプリント終了後、画像形成装置10は後回転動作を経てスタンバイ状態になる。スタンバイ状態において、プリント信号が入力されると、印字準備回転動作が実行される。
【0054】
上記cの印字工程時が画像形成時であり、上記aの初期回転動作、上記bの印字準備回転動作、dの紙間工程、eの後回転動作が非画像形成時である。
【0055】
2.帯電横スジ
本実施例では、感光ドラム1の帯電方式としてDC帯電方式を採用した。DC帯電方式では、前述のように、帯電横スジという画像不良が発生しやすい。
【0056】
ここで、帯電横スジが発生するメカニズムについて更に説明する。図15は帯電横スジが発生するメカニズムを説明するための模式図である。
【0057】
感光ドラム1と帯電ローラ2は接触部におけるそれぞれの表面の移動方向が同方向となるようにそれぞれ回転している。上流側ギャップA1において、感光ドラム1と帯電ローラ2との間の電位差がPaschen則による放電開始閾値を超えると、感光ドラム1と帯電ローラ2との間で放電が行われ、感光ドラム1上に電荷が載って、感光ドラム1の表面は帯電電位Vdに帯電される。図15(a)に示すように、この上流側ギャップA1において放電が均一に行われれば、前述のような帯電横スジのような画像不良は発生しない。しかし、帯電ローラ2の一部の電気抵抗が高くなったり、感光ドラム1の膜厚が厚かったりすることで、上流側ギャップA1で感光ドラム1の表面の均一な帯電が完了しない場合がある。その場合、図15(b)に示すように、下流側ギャップA2で不安定な微小放電が発生し、その部分で感光ドラム1の表面電位にムラが生じ、前述のような帯電横スジが発生する。
【0058】
この帯電横スジは、前述のようにニップ前露光を行うことによって抑制することができる。図16は、上流側ギャップA1に対応する感光ドラム1の表面に光を照射するニップ前露光を行った場合の帯電横スジを抑制するメカニズムを説明するための模式図である。
【0059】
図16(a)に示すように、上流側ギャップA1で一度感光ドラム1上に載った電荷を、ニップ前露光Iにより打ち消して、図16(b)に示すように帯電ローラ2により感光ドラム1の表面を帯電させる作用を下流側ギャップA2に偏らせる。これにより、帯電横スジの発生原因である、下流側ギャップA2による不安定な微小放電が発生しにくくなり、帯電横スジを抑制することができる。
【0060】
3.ニップ前露光装置
本実施例の画像形成装置100は、帯電横スジを抑制するためにニップ前露光を行う照射手段としてのニップ前露光装置8を有する。ニップ前露光装置8は、上流側ギャップA1に対応する感光ドラム1の表面の、少なくとも感光ドラム1の長手方向(回転軸線方向)における画像形成領域に光を照射してその部分を除電するように設けられている。
【0061】
本実施例では、最大通紙幅がA3サイズであり、感光ドラム1の長手方向の画像形成領域の最大幅が297mmである。従って、本実施例では、ニップ前露光装置8は、上流側ギャップA1に対応する感光ドラム1の表面の、感光ドラム1の長手方向における297mmの領域に光を照射するように設けた。
【0062】
本実施例では、ニップ前露光装置8として、光源としてピーク波長が660nmのLEDを有し、光量を5〜15(lx・s)に調整可能なLEDランプを使用した。ニップ前露光装置8の照度は、ニップ前露光装置8に電力を供給する電力供給手段としてのニップ前露光電源T4からの印加バイアスを変化させることで調整できる。
【0063】
尚、上流側ギャップA1は、帯電ローラ2と感光ドラム1との間で放電が行われるわずかな領域である。本実施例では、上流側ギャップA1は、帯電ニップaの感光ドラム1の回転方向上流側の端部から同方向上流側に1mm離れた位置までの領域であった。同様に、下流側ギャップA2は、帯電ローラ2と感光ドラム1との間で放電が行われるわずかな領域である。本実施例では、下流側ギャップA2は、帯電ニップaの感光ドラム1の回転方向下流側の端部から同方向下流側に1mm離れた位置までの領域であった。
【0064】
4.制御態様
図4は、本実施例に係る画像形成装置10の概略制御態様を説明するためのブロック回路図である。画像形成装置10は、帯電ローラ2に対する電圧印加手段である帯電電源T1を有する。帯電電源T1は、直流(DC)電源11を有する。帯電電源T1から直流電圧が芯金2aを介して帯電ローラ2に印加されることで、回転する感光ドラム1の周面が所定の電位に帯電処理される。又、画像形成装置10は、感光ドラム1を介して帯電ローラ2に流れる直流電流値を測定する直流電流検知手段としての直流電流検知回路12を有する。この直流電流検知回路12によって測定された直流電流値の情報が、直流電圧検知回路12から制御手段としての制御回路13に入力される。又、本実施例では、画像形成装置10には、感光ドラム1及び帯電ローラ2の少なくとも一方が交換されたことを検知するための交換検知手段として、プロセスカートリッジが新品に交換されたことを検知するための新品検知手段16が設けられている。新品検知手段16としては、例えば、プッシュスイッチやフォトインタラプタなど、装置本体側の認識手段とプロセスカートリッジ側の指示手段とで構成され、これらの間の相互作用の有無や変化により交換を検知するものが挙げられる。或いは、新品検知手段16としては、プロセスカートリッジ側に設けられた記憶手段としてのメモリと、装置本体側の読み取り手段(又は読み取り書き込み手段)とを有して構成され、メモリ内の特定の情報の有無や変化によって交換を検知するものが挙げられる。本実施例では、新品検知手段16として、上記メモリと読み取り手段とを有して構成されたものを用いた。プロセスカートリッジが装置本体に装着されると、制御回路13は、装置本体側の読み取り手段によってプロセスカートリッジ側のメモリに記憶された情報を読み取ることができ、当該プロセスカートリッジが新品であるか否かを判断することができる。
【0065】
制御回路13は、演算制御手段であるCPU、記憶手段であるROMやRAMなどを有し、画像形成装置10の各部を統括的に制御する。特に、本実施例との関連において、制御回路13は、詳しくは後述するニップ前露光調整工程を前回転工程時に行うか否かを判断する。又、制御回路13は、ニップ前露光調整工程における、電源T1、T3、T4の駆動の制御、直流電流検知回路12による測定結果に基づくニップ前露光の照射状態調整手段の制御などを行う。
【0066】
5.ニップ前露光の効果のばらつき
次に、図17を参照して、ニップ前露光装置8の光量(発光量)が同じであっても帯電横スジに対する効果が低下する現象について説明する。
【0067】
図17(a)は、ニップ前露光が適切に照射されて帯電横スジの発生が効果的に抑制されている状態を示す。この場合、上流側ギャップA1においてニップ前露光Iにより感光ドラム1上の電荷を除電して、帯電ローラ2により感光ドラム1の表面を帯電させる作用を下流側ギャップA2に偏らせることができている。そのため、下流側ギャップA2における不安定な微小放電によって発生する帯電横スジの発生を抑制することができる。
【0068】
これに対して、図17(b)は、図17(a)の場合とニップ前露光装置8の光量が同じであるが、ニップ前露光Iが上流側ギャップA1の奥(感光ドラム1の回転方向において帯電ニップa側)まで到達していない角度にある状態を示す。この場合、上流側ギャップA1においてニップ前露光Iにより感光ドラム1上の電荷をキャンセルしきれず、帯電ローラ2により感光ドラム1の表面を帯電させる作用を下流側ギャップA2に偏らせきれずに、帯電横スジがわずかに発生してしまう。
【0069】
即ち、ニップ前露光装置8の光量が同じである実質的に同一の構成の複数の画像形成装置10において画像を比較したところ、ニップ前露光により帯電横スジを抑制する効果にばらつきが生じる場合があることがわかった。
【0070】
表1は、本実施例に従って構成された3つの被試験画像形成装置A、B、Cにおいて、ニップ前露光装置8の光量を5〜15(lx・s)に変更したときに発生した帯電横スジのレベルを示す。
【0071】
帯電横スジは、ハーフトーン画像(一例として画像形成領域の全域に形成した256階調の128レベルの画像)上に、印字方向(転写材Pの搬送方向、感光ドラム1の表面の移動方向)に対して垂直なスジ状の画像が発生する不良画像である。帯電横スジのレベルの評価基準は次の通りである。◎は得られた画像が非常に良い、○は良い、△はハーフトーン画像にやや濃度ムラあり、×はハーフトーン画像に濃度ムラ、ガサツキがあることを示す。
【0072】
【表1】
【0073】
表1より、画像形成装置Aでは、光量を7(lx・s)にすることで帯電横スジのレベルは◎になるのに対し、画像形成装置Bでは光量を13(lx・s)、画像形成装置Cでは光量を15(lx・s)にしないと、それぞれ帯電横スジのレベルは◎にならなかった。
【0074】
図6は、上記3つの画像形成装置A、B、Cにおいてニップ前露光装置8の光量を9(lx・s)にした場合の、ニップ前露光Iの照射状態と感光ドラム1の表面の除電効果との関係のモデルを模式的に示す。
【0075】
図6(a)の画像形成装置Aは、帯電横スジが良好に抑制されているモデルである。この場合、上流側ギャップA1の奥までニップ前露光Iが照射されて、上流側ギャップA1で感光ドラム1上のほぼ全ての電荷が除電されている。そのため、帯電ローラ2により感光ドラム1の表面を帯電させる作用を下流側ギャップA2に十分に偏らすことができている。
【0076】
図6(b)の画像形成装置Bは、上流側ギャップA1において、ニップ前露光Iが帯電ローラ2よりもやや感光ドラム1よりに照射されているモデルである。この場合、上流側ギャップA1の奥までニップ前露光Iが照射されておらず、上流側ギャップA1で感光ドラム1上の電荷を除電しきれていない。そのため、帯電ローラ2により感光ドラム1の表面を帯電させる作用を下流側ギャップA2に十分に偏らすことができず、帯電横スジが発生しやすくなっている。
【0077】
図6(c)の画像形成装置Cは、上流側ギャップA1において、ニップ前露光Iが感光ドラム1よりもやや帯電ローラ2よりに照射されているモデルである。この場合も、上流側ギャップA1の奥までニップ前露光Iが照射されておらず、上流側ギャップA1で感光ドラム1上の電荷を除電しきれていない。そのため、帯電ローラ2により感光ドラム1の表面を帯電させる作用を下流側ギャップA2に十分に偏らすことができず、帯電横スジが発生しやすくなっている。
【0078】
このように、帯電横スジを抑制するためには、上流側ギャップA1の奥までニップ前露光Iを照射することが重要であり、ニップ前露光装置8の位置決め精度が要求される。
【0079】
ここで、ニップ前露光装置8の位置がずれている場合でも帯電横スジを抑制できるように、ニップ前露光装置8の光量を大きくして、上流側ギャップA1において感光ドラム1の表面のより広範囲にニップ前露光Iを照射する方法が考えられる。
【0080】
しかしながら、このような方法では、感光ドラム1と帯電ローラ2との間での放電量が増え過ぎてしまい、感光ドラム1の削れ量が増える問題が生じるおそれがある。
【0081】
図7は、ニップ前露光装置8の光量と、帯電ローラ2から感光ドラム1に流れ込むDC電流値との関係、及び、ニップ前露光装置8の光量と、通紙枚数10K(10000枚)あたりの感光ドラム1の削れ量との関係を示すグラフである。図7に示すデータは、本実施例に従って構成された被試験画像形成装置において、プロセススピードを210mm/s、感光ドラム1の帯電電位(暗部電位)Vdを−500V、画像濃度をベタ白(256階調の0レベル)に設定して得た。DC電流値は、感光ドラム1とアースとの間に電流計を設置して測定した。又、光量0のデータは、ニップ前露光装置8をOFFにして測定した。
【0082】
図7から、ニップ前露光装置8の光量を大きくすると、それに応じて感光ドラム1の削れ量が増大することがわかる。又、ニップ前露光装置8の光量を大きくすると、帯電ローラ2から感光ドラム1に流れ込むDC電流値も大きくなる。このようにDC電流値が大きくなるのは、ニップ前露光装置8の光量が大きくなると、上流側ギャップA1における感光ドラム1上の電荷の除電量、又は除電する感光ドラム1の表面の面積が増大し、それに応じて再放電量が増えるためである。そして、このように放電量が増えることによって、感光ドラム1の削れ量も増大する。
【0083】
つまり、上述のようにニップ前露光装置8の位置がずれている場合でも帯電横スジを抑制できるようにニップ前露光装置8の光量を大きくすると、適切にニップ前露光Iが照射されている場合には、必要以上に感光ドラム1の削れ量が増大してしまう。そのため、感光ドラム1の寿命が短くなる。
【0084】
従って、本実施例の目的の一つは、DC帯電方式を採用した画像形成装置において、ニップ前露光が適切に上流側ギャップに対応する感光体の表面に照射されているか否かを判別して、それを適切に調整することである。又、それによって、DC帯電方式を採用した画像形成装置において、特に感光体や帯電部材の交換後に発生しやすい、感光体の帯電処理に起因するスジ状の画像ムラを抑制することも本実施例の目的の一つである。
【0085】
6.ニップ前露光調整
本実施例では、図4に示すように、画像形成装置10に、ニップ前露光装置8から上流側ギャップA1に対応する感光ドラム1の表面に照射するニップ前露光Iの照射状態を調整する照射状態調整手段14を設けた。照射状態調整手段14は、上記照射状態としてニップ前露光Iを上流側ギャップA1に対応する感光ドラム1の表面に照射する角度や位置を調整することが可能である。即ち、照射状態調整手段14は、少なくともニップ前露光装置8における上流側ギャップA1に対応する感光ドラム1の表面に向けて光を出射する部分の該感光ドラム1の表面に対する相対位置を変更して調整することができる。
【0086】
本実施例では、一例として、照射状態調整手段14は、ニップ前露光装置8を、その長手方向(感光ドラム1の長手方向と略平行)に沿う回動軸の周りで回動させる。そして、ニップ前露光Iの照射方向を、感光ドラム1の長手方向と略直交する平面に沿って、上記回動軸の周りで変更する。これにより、上流側ギャップA1における感光ドラム1上の電荷の除電量(露光量)又は除電する感光ドラム1の表面の面積(露光位置、露光範囲)を変更することができる。具体的には、照射状態調整手段14は、ニップ前露光装置8を、感光ドラム1の長手方向と略直交する平面に沿って、上記回動軸の回りで時計回り方向(図中(i))、又は反時計回り方向(図中ii))に回動させることが可能である。図中(i)方向に回動させると、ニップ前露光Iの照射方向を、上流側ギャップA1において感光ドラム1よりに変更することができる。又、図中(ii)方向に回動させると、ニップ前露光Iの照射方向を、上流側ギャップA2において帯電ローラ2よりに変更することができる。照射状態調整手段14の動作は、制御回路13が制御する。
【0087】
本実施例では、図5に示すように、照射状態調整手段14は、ニップ前露光装置8の回動軸に固定された駆動受けギア14aと、駆動受けギア14aと噛み合う駆動ギア14bと、駆動ギア14bに駆動力を伝達する駆動源であるモータMと、を有して構成される。そして、モータMの回転を制御することで、駆動ギア14bを介して駆動受けギア14aを回転させることで、ニップ露光装置8を回動軸の周りで回動させる。駆動受けギア14aは、ニップ前露光装置8の回動軸と結合されており、ほぼ駆動受けギア14aがその歯の1つ分だけ回転するごとに、ニップ前露光装置8の先端が上記回動軸の周りで2°回転する。尚、ニップ前露光装置8の先端とは、ニップ前露光装置8において上流側ギャップA1に向けて光が最終的に出射される部分である。
【0088】
ここで、ニップ前露光装置8の光量を7(lx・s)として完全に帯電横スジが消えたときのニップ前露光装置8の角度を0°とする。この光量7(lx・s)は、帯電横スジが完全に消える最小のニップ前露光装置8の光量である。そして、ニップ前露光装置8は、上記0°の位置を基準として感光ドラム1より(図中(i))又は帯電ローラ2より(図中(i))に回動させることができる。
【0089】
表2は、本実施例に従って構成された被試験画像形成装置において、照射状態調整手段14によってニップ前露光装置8の角度を変更した場合の帯電横スジのレベルと、直流電流検知回路12で測定された直流電流値との関係を示す。ニップ前露光装置8の角度は、上記0°の位置を基準として感光ドラム1より(図中(i))に回動させた場合の角度を+、帯電ローラ2より(図中(ii)に回動させた場合の角度を−として示す。ニップ前露光装置8の角度は2°ずつ変更した。又、帯電横スジのレベルの評価方法は上述したものと同じである。
【0090】
【表2】
【0091】
表2より、ニップ前露光装置8の光量が同じ場合において、帯電横スジのレベルは、直流電流検知回路12で測定された直流電流値が最大値を示すときに非常に良好であることがわかる。これは、上流側ギャップA1の奥までニップ前露光Iが照射され、上流側ギャップA1で照射されている感光ドラム1の面積が広くなることにより、除電と再放電が行われる面積が広くなるため、直流電流値が大きくなることを示している。つまり、直流電流値が大きくなるほど、上流側ギャップA1におけるニップ前露光Iの照射が適切に行われていることを示す。そのため、この直流電流値から、ニップ前露光Iの照射状態が適切であるか否かを判別できる。
【0092】
次に、図8及び図9を参照して、本実施例におけるニップ前露光調整工程の実施制御及びニップ前露光調整工程の動作制御について説明する。
【0093】
図8は、本実施例におけるニップ前露光調整工程の実施制御のフローチャートを示す。本実施例では、感光ドラム1及び帯電ローラ2の少なくとも一方を画像形成装置10の本体(装置本体)に対して新しく設置した際に、ニップ前露光調整工程を実行した。即ち、本実施例では、制御手段13は、感光体1又は帯電部材2の少なくとも一方が新品であると判断した場合に、照射状態調整手段14による照射状態の調整を実行させる。尚、本実施例では、上述のように、感光ドラム1と帯電ローラ2とはプロセスカートリッジとして一体的に構成されている。又、本実施例では、上述のように、前回転工程においてニップ前露光調整工程を実行する。従って、本実施例では、プロセスカートリッジが交換された際に、前回転工程において、ニップ前露光調整工程を実行する。
【0094】
図8を参照して、制御回路13は、プリント信号が入力されると(S101)、新品検知手段16によってプロセスカートリッジが新品であるか否かを判断する(S102)。そして、制御回路13は、S102においてプロセスカートリッジが新品であると判断した場合には、前回転工程時にニップ前露光調整工程を実行させ(S103)、前回転工程が終了した後に画像形成工程を実行させる(S104)。一方、制御回路13は、S102においてプロセスカートリッジが新品ではないと判断した場合には、ニップ前露光調整工程を行わない前回転工程を実行し(S105)、前回転工程が終了した後に画像形成工程を実行させる(S104)。
【0095】
図9は、本実施例におけるニップ前露光調整工程のフローチャートを示す。本実施例では、概略、電流検知回路12により直流電流値Iaを測定しながら、ニップ前露光装置8の角度を照射状態調整手段14により変化させ、直竜電流値Iaの絶対値が最大値になる角度を探す。
【0096】
図9を参照して、ニップ前露光調整工程が開始されると、制御回路13は、先ず、ニップ前露光装置8の位置を初期位置に設定する(S201)。この初期位置は、限定されるものではないが、ニップ前露光工程においてニップ前露光装置8の角度を変化させる範囲の最大値又は最小値とすることができる。例えば、本実施例では、装置設計に従うニップ前露光装置8の適正位置である上記0°の位置を基準に±12°の範囲で変化させる。この場合、初期位置は+12°又は−12°の位置とする。
【0097】
次に、制御回路13は、所定の帯電バイアス、転写バイアス及びニップ前露光をそれぞれONにする(S202)。本実施例では、ニップ前露光調整工程において、帯電処理後(転写ニップに到達する前)の感光ドラム1の表面電位を通常の画像形成時と同じ−500Vとするために、−1100Vの帯電バイアスを印加した。又、ニップ前露光調整工程において、転写バイアスは+500Vとした。又、ニップ前露光調整工程において、ニップ前露光装置8の光量は7(lx・s)とした。次に、制御回路13は、電流検知回路12によって直流電流値Iaを検出する(S203)。次に、制御回路13は、ニップ前露光装置8の角度変更範囲内の可変位置の全てについて電流検知回路12による直流電流値Iaの測定が終了したか否かを判断する(S204)。S204において可変位置の全てについて測定が終了していないと判断した場合には、制御回路13は、照射状態調整手段14に信号を送り、ニップ前露光装置8の角度を変更させる(S205)。本実施例では、ニップ前露光装置8の角度を2°ずつ変更させる。その後、制御回路13は、S204において可変位置の全てについて直流電圧値Iaの測定が終了したと判断するまで、ニップ前露光装置8の角度の変更と、電流検知回路12による直流電流値Iaの測定を繰り返す。
【0098】
尚、ニップ前露光装置8のそれぞれの角度に対応して測定された直流電圧値Iaはそれぞれ、ニップ前露光装置8の角度と関係づけられて、制御回路13が備える記憶手段に記憶される。このニップ前露光装置8のそれぞれの角度に対応する直流電流値Iaは、角度変更後のニップ前露光装置8からの光が照射された感光ドラム1の表面に対して放電が生じている間に測定する。
【0099】
次に、制御回路13は、S204において可変位置の全てについて測定を終了したと判断した場合には、測定された直流電流値Iaの絶対値が最大値のときのニップ前露光装置8の角度を決定する(S206)。このとき、必要に応じて、制御回路13は、照射状態調整手段14によりニップ前露光装置8の角度を、その決定された角度に変更させる。本実施例では、直流電流値Iaの絶対値が最大値である場合、当該直流電流値は−60μAになる。直流電流値Iaの絶対値が最大値を示すニップ前露光装置8の角度が複数ある場合は、いずれかの任意の角度を選択すればよい。
【0100】
その後、制御回路13は、ニップ前露光調整工程を含む前回転工程が終了し、画像形成動作に移行する(図8のS104)。
【0101】
尚、本実施例では、測定された直流電圧値Iaが最大値となるニップ前露光装置8の角度を探すようにしたが、この態様に限定されるものではない。例えば、装置設計に従ってニップ前露光装置8の角度が適切である場合に測定される、直流電流値Iaの絶対値の最大値を予め基準値として設定しておくことができる。ニップ前露光調整工程においては、直流電流値Iaを測定しながら、ニップ前露光装置8の角度を変更していく。そして、測定された直流電圧値Iaとその基準値とを比較して、測定された直流電流値Iaが基準値と同じ値となるか又は基準値に対して所定範囲内の値となるニップ前露光装置8の角度を探す。
【0102】
このように、本実施例では、画像形成装置10は、移動可能な感光体1と、感光体1に接触して感光体1を帯電させる帯電部材2と、帯電部材2に直流電圧を印加する電源T1と、を有する。帯電部材2は、感光体1の移動方向において、感光体1と帯電部材2との接触部aの上流側に該接触部aに向けて感光体1との間の距離が徐々に狭くなるギャップA1を形成する。又、帯電部材2は、接触部aの下流側に該接触部aから遠ざかるにつれて感光体1との間の距離が徐々に広くなるギャップA2を形成する。この帯電部材2は、直流電圧が印加されることで感光体1の表面との間で生じる放電により感光体1を帯電させる。又、画像形成装置10は、上流側のギャップA1に対応する感光体1の表面に光を照射する照射手段8と、電源T1から帯電部材2に直流電圧を印加している際に帯電部材2と感光体1との間に流れる直流電流を検知する直流電流検知手段12と、を有する。又、画像形成装置10は、照射手段8の感光体1の表面に向けて光を出射する部分の該感光体1の表面に対する相対位置を変更して照射手段8による感光体1の表面への光の照射状態を調整する照射状態調整手段14を有する。更に、画像形成装置10は、照射手段8により光を照射した感光体1の表面に放電が生じることで直流電流検知手段12によって検知される直流電流値を用いて、照射状態調整手段14による照射状態の調整を制御する制御手段13を有する。本実施例では、制御手段13は、検知される直流電流値が最大値になるように、照射状態調整手段14による照射状態の調整を制御する。
【0103】
以上、本実施例では、感光ドラム1と帯電ローラ2との間に流れる直流電流値Iaの絶対値が最大値を示すように、上流側ギャップA1に対するニップ前露光Iの照射状態を調整する。これにより、例えば、感光ドラム1や帯電ローラ2の交換などのニップ前露光Iの照射状態が適切な状態からずれやすい状況になった場合でも、ニップ前露光Iの照射状態を適切な状態に調整することができる。従って、AC帯電方式よりもコスト的に有利なDC帯電方式を採用する場合でも、例えば、感光ドラムや帯電ローラ2の交換などによって帯電横スジが発生するようになることを防止して、良好な画像を維持することができる。
【0104】
実施例2
次に、本発明の他の実施例について説明する。本実施例の画像形成装置の基本的な構成及び動作は、実施例1のものと同じである。従って、実施例1のものと同一又はそれに相当する機能、構成を有する要素には同一符号を付して、詳しい説明は省略する。
【0105】
実施例1では、感光ドラム1及び帯電ローラ2の少なくとも一方を画像形成装置10の本体(装置本体)に新しく設置した際に、ニップ前露光調整工程を実行した。
【0106】
実施例1のような感光ドラム1や帯電ローラ2の設置後の初期状態以外にも、例えば、画像形成装置10の使用中に、感光ドラム1、帯電ローラ2又はその他の駆動する部材による振動が続くことで、ニップ前露光Iの照射状態が変化することがある。例えば、上記振動によってニップ前露光装置8の位置が少しずつずれるなどして、ニップ前露光Iの照射状態が変化する場合がある。
【0107】
そこで、本実施例では、実施例1のような感光ドラム1や帯電ローラ2の設置後の初期状態以外の所定のタイミングで、ニップ前露光調整工程を実行する。尚、実施例1のように感光ドラム1や帯電ローラ2の設置後の初期状態においてニップ前露光調整工程を実行することに加えて、本実施例における所定タイミングに、ニップ前露光調整工程を実行することができる。
【0108】
図10は、本実施例に係る画像形成装置10の概略制御態様を説明するためのブロック回路図である。本実施例における制御態様は図4に示す実施例1のものと同様であるが、本実施例では、画像形成装置10には、装置使用量検知手段として、感光ドラム1の回転数検知手段17が設けられている。回転数検知手段17によって感光ドラム1の回転数が測定され、その測定結果は制御回路13に入力されて、制御回路13が備える記憶手段に記憶される。
【0109】
図11は、本実施例におけるニップ前露光調整工程の実施制御のフローチャートを示す。尚、本実施例では、実施例1と同様に、感光ドラム1と帯電ローラ2とはプロセスカートリッジとして一体的に構成されている。
【0110】
図11を参照して、制御回路13は、プリント信号が入力されると(S301)、前回ニップ前露光調整工程を実行してから感光ドラム1の回転数が所定の回転数に達したか否かを判断する(S301)。本実施例では、この所定の回転数は10000とした。そして、制御回路13は、S301において所定の回転数に達したと判断した場合には、前回転工程時にニップ前露光調整工程を実行させ(S303)、前回転工程が終了した後に画像形成工程を実行させる(S304)。一方、制御回路13は、S302において所定の回転数に達していないと判断した場合には、ニップ前露光調整工程を行わない前回転工程を実行し(S305)、前回転工程が終了した後に画像形成工程を実行させる(S304)。
【0111】
本実施例では、ニップ前露光調整工程自体の動作は、図9を参照して説明した実施例1のものと同じである。
【0112】
以上、本実施例では、装置使用量を指標として所定のタイミングで、感光ドラム1と帯電ローラ2との間に流れる直流電流値Iaの絶対値が最大値を示すように、上流側ギャップA1に対するニップ前露光Iの照射状態を調整する。これにより、長期にわたりニップ前露光Iの照射状態を適切な状態に維持することができる。従って、AC帯電方式よりもコスト的に有利なDC帯電方式を採用する場合でも、長期にわたり帯電横スジが発生することを防止して、良好な画像を維持することができる。
【0113】
実施例3
次に、本発明の他の実施例について説明する。本実施例の画像形成装置の基本的な構成及び動作は、実施例1のものと同じである。従って、実施例1のものと同一又はそれに相当する機能、構成を有する要素には同一符号を付して、詳しい説明は省略する。
【0114】
実施例1、2では、照射状態調整手段14は、ニップ前露光装置8を、その長手方向(感光ドラム1の長手方向と略平行)に沿う回動軸の周りで回動させた。そして、ニップ前露光Iの照射方向を、感光ドラム1の長手方向と略直交する平面に沿って、上記回動軸の周りで変更した。
【0115】
これに対して、本実施例では、照射状態調整手段14は、ニップ前露光装置8を、感光ドラム1の長手方向と略平行な平面に沿って移動させる。本実施例では、ニップ前露光装置8は、該平面に沿って回動又はスライド移動させることができるようになっている。本実施例では、特に、該平面は、感光ドラム1の長手方向と略平行であり、且つ、ニップ前露光装置8から上流側ギャップA1に向かう光の方向と交差する方向に沿う。これにより、上流側ギャップA1における感光ドラム1上の電荷の除電量(露光量)又は除電する感光ドラム1の表面の面積(露光位置、露光範囲)を変更することができる。
【0116】
ここで、本実施例では、感光ドラム1の長手方向における一方の端部側を手前側といい、他方の端部側を奥側という。
【0117】
本実施例では、ニップ前露光装置8は、その長手方向が上流側ギャップA1の長手方向(感光ドラム1の長手方向と略平行)と略平行であるときに、該長手方向の前述の除電可能領域の電荷を略均一に除電して帯電横スジを良好に防止できる適正な位置である。上流側ギャップA1とニップ前露光装置8の長手方向が平行からずれてくると、ニップ前露光装置8の手前側端部又は奥側端部においてニップ前露光Iが感光ドラム1又は帯電ローラ2よりに偏って照射されるようになる。そのため、ニップ前露光装置8の手前側端部又は奥側端部において、上流側ギャップA1の奥までニップ前露光Iが照射されにくくなり、上流側ギャップA1で感光ドラム1上の電荷を除電しきれずに、帯電横スジが発生しやすくなる。
【0118】
図12は、本実施例に係る画像形成装置10の概略制御態様を説明するためのブロック回路図である。本実施例における制御態様は図4に示す実施例1のものと同様であるが、照射状態調整手段14の構成が実施例1とは異なる。
【0119】
図12に示すように、本実施例では、照射状態調整手段14は、ニップ前露光装置8の手前側端部を移動させる手前側アクチュエータ14Fと、ニップ前露光装置8の奥側の端部を移動させる奥側アクチュエータ14Rとを有する。より具体的には、本実施例では、手前側アクチュエータ14F、奥側アクチュエータ14Rはそれぞれ、ニップ前露光装置8の長手方向の手前側端部、奥側端部の位置を、感光ドラム1に対して、垂直に上下する方向に移動させる。これにより、本実施例では、ニップ前露光装置8を感光ドラム1の長手方向と略平行な上記平面に沿って回動(揺動)させる。尚、上述のようにニップ前露光装置8は、該平面に沿ってスライド移動させることもできる。手前側アクチュエータ14F、奥側アクチュエータ14Rの動作は、制御回路13が制御する。
【0120】
又、図13に示すように、本実施例では、ニップ前露光装置8として、その長手方向(感光ドラム1の長手方向と略平行)に複数に分割された領域ごとに発光できるLEDランプを使用した。特に、本実施例では、ニップ前露光装置8は、その長手方向に3つに分割された領域ごとに発光できる。この3つ領域を、手前側から奥側にそれぞれ、第1領域8F、第2領域8C、第3領域8Rとする。尚、画像形成時には、ニップ前露光装置8は、第1、第2、第3の領域8F、8C、8Rの全てが点灯する。
【0121】
次に、本実施例におけるニップ前露光調整工程の実施制御及びニップ前露光調整工程の動作制御について説明する。
【0122】
本実施例では、ニップ前露光調整工程の実施制御は、図8を参照して説明した実施例1のものと同じである。即ち、本実施例では、本実施例では、感光ドラム1及び帯電ローラ2の少なくとも一方を画像形成装置10の本体(装置本体)に対して新しく設置した際に、ニップ前露光調整工程を実行した。尚、実施例2と同様に、所定のタイミングでニップ前露光調整工程を実行するようにしてもよい。
【0123】
図14は、本実施例におけるニップ前露光調整工程のフローチャートを示す。
【0124】
図14を参照して、ニップ前露光調整工程が開始されると、制御回路13は、先ず、ニップ前露光装置8の位置を初期位置に設定する(S401)。この初期位置は、限定されるものではないが、ニップ前露光工程においてニップ前露光装置8の角度を変化させる範囲の最大値又は最小値とすることができる。例えば、本実施例では、手前側アクチュエータ14Fが最下位まで下がった位置、奥側アクチュエータ14Rが最上位に上がった位置とする。
【0125】
次に、制御回路13は、所定の帯電バイアス、転写バイアス及びニップ前露光装置8の3つの発光領域のうち第1領域8FのみをONにする(S402)。本実施例では、ニップ前露光調整工程において、帯電処理後(転写ニップに到達する前)の感光ドラム1の表面電位を通常の画像形成時と同じ−500Vとするために、−1100Vの帯電バイアスを印加した。又、ニップ前露光工程において、転写バイアスは+500Vとした。又、ニップ前露光調整工程において、ニップ前露光装置8の光量は7(lx・s)とした。そして、制御回路13は、電流検知回路12によって直流電流値Ifを検出する(S403)。次に、制御回路13は、上記と同じバイアス値の設定で帯電バイアス及び転写バイアスをONとした状態で、ニップ前露光装置8の発光領域を切り替えて、3つの発光領域のうち第2領域8Cのみを上記と同じ発光量の設定でONにする(S404)。そして、制御回路13は、電流検知回路12によって直流電流値Icを検出する(S405)。次に、制御回路13は、上記と同じバイアス値の設定で帯電バイアス及び転写バイアスをONとした状態で、ニップ前露光装置8の発光領域を切り替えて、3つの発光領域のうち第3領域8Rのみを上記と同じ発光量の設定でONにする(S406)。そして、制御回路13は、電流検知回路12によって直流電流値Irを検出する(S407)。
【0126】
尚、ニップ前露光装置8の各発光領域に対応して測定された直流電圧値If、Ic、Irはそれぞれ、制御回路13が備える記憶手段に記憶される。この各発光領域のそれぞれに対応する直流電流値If、Ic、Irは、各発光領域からの光が照射された感光ドラム1の表面に対して放電が生じている間に測定する。
【0127】
次に、制御回路13は、測定された直流電流値If、Ic、Irの標準偏差σが所定値として1.6以内か否かを判断する(S408)。これは、本発明者の鋭意研究の結果、本実施例の画像形成装置10では、上記標準偏差σが1.6以内であれば、上流側ギャップA1とニップ前露光装置8の長手方向の位置精度は良好であることが判明しているからである。但し、この標準偏差の値は、それぞれの画像形成装置の構成などによって適宜設定し得るものである。例えば、If=−59μA、Ic=−60μA、Ir=−58μAの場合、平均値は−59μAとなり、偏差は第1領域8Fでは0、第2領域8Cでは1、第3領域8Rでは−1となり、偏差の二乗の合計は2なる。そして、分散σ2=2/3となり、σ≒0.8となる。この場合は、上流側ギャップA1とニップ前露光装置8の長手方向での位置の差(平行からのずれ)は少ないと判断することができる。
【0128】
次に、制御回路13は、S408において標準偏差σが1.6以内であると判断した場合には、ニップ前露光装置8の位置をその位置に決定する(S409)。その後、制御回路13は、ニップ前露光調整工程を含む前回転工程を終了し、画像形成動作に移行する(図8のS104)。
【0129】
一方、制御回路13は、S408において標準偏差σが1.6より大きいと判断した場合には、照射状態調整手段14の手前側アクチュエータ14F、奥側アクチュエータ14Rによってニップ前露光装置8の位置調整をする(S410)。上流側ギャップA1とニップ前露光装置8の長手方向での位置の差が大きい(平行よりも著しく外れている)と判断できるからである。このとき、本実施例では、手前側アクチュエータ14Fを所定の移動量だけ上方に移動させ、奥側アクチュエータ14Rを所定の移動量だけ下方に移動させる。その後、S408において標準偏差σが1.6以内となるまで、ニップ前露光装置8の位置の変更と、電流検知回路12による直流電流値If、Ic、Irの測定を繰り返す。
【0130】
このように、本実施例では、照射手段8は、感光体1の移動方向と略直交する方向に複数に分割された領域毎に感光体1の表面に光を照射することができる。そして、制御手段13は、分割された領域毎に光を照射した感光体1の表面に放電が生じることで直流電流検知手段12によって検知される各直流電流値の標準偏差が所定の範囲内の値となるように、照射状態調整手段14による照射状態の調整を制御する。
【0131】
以上、本実施例では、ニップ前露光装置8の長手方向の位置のズレを調整し、ニップ前露光Iの照射状態を適切な状態に調整することができる。
【0132】
その他の実施例
以上、本発明を具体的な実施例に則して説明したが、本発明は上述の実施例に限定されるものではない。
【0133】
例えば、実施例1、2では、感光ドラム1の長手方向と略直交する平面に沿う回動方向のニップ前露光装置8の位置ずれ(角度ずれ)を調整し、実施例3では、上流側ギャップとニップ前露光装置8の長手方向の位置ずれ(平行からのずれ)を調整した。この他、実施例1、2と実施例3とを組み合わせて、上記両方向の位置ずれを調整して、ニップ前露光Iの露光状態をより適切に調整できるようにしてもよい。又、実施例3では、照射状態調整手段14は、感光ドラム1の長手方向と略平行であり、且つ、ニップ前露光装置8から上流側ギャップA1に向かう光の方向と交差する方向に沿う平面に沿ってニップ前露光装置8を移動させた。これに換えて又は加えて、照射状態調整手段14が、感光ドラム1の長手方向と略平行であり、且つ、ニップ前露光装置8から上流側ギャップA1に向かう光の方向と略平行な方向に沿う平面に沿ってニップ前露光装置8を移動させるようにしてもよい。
【0134】
又、実施例1、2では、ニップ前露光装置自身の角度を調整していたが、鏡など反射板を用いて、上流側ギャップに対応する感光ドラムの表面に対するニップ前露光の照射角度を調整してもよい。例えば、プロセスカートリッジ内に照射状態調整手段によって角度を調整できる鏡を設置し、プロセスカートリッジ外にLEDランプを設置する。そして、LEDランプからの光を鏡によって反射させて上流側ギャップに照射する構成とする。斯かる構成によれば、プロセスカートリッジの交換の際にLEDランプを交換せずに済み、ランニングコストの低減に有利である。
【0135】
又、実施例2では、ニップ前露光調整工程を実行する所定タイミングを感光ドラムの回転数を指標に設定したが、これに限定されるものではない。感光ドラム以外にも、画像形成枚数、帯電ローラの回転回数、帯電ローラへの帯電バイアスの印加時間など、装置の使用量と相関する任意のパラメータを指標としてニップ前露光調整工程を実行する所定のタイミングを設定することができる。即ち、制御手段13は、照射状態調整手段14による照射状態の調整を前回実行してから所定期間経過したと判断した場合に、照射状態調整手段14による照射状態の調整を実行させることができる。又、画像上に帯電横スジが発生した場合などに、ユーザやサービスマンが任意にニップ前露光調整工程を実行させることができるようにすることも可能である。
【0136】
又、上述の実施例では、ニップ前露光装置、前露光装置にLEDランプを採用したが、これに限定されるものではなく、ヒューズランプからなる光照射装置などの他の露光装置を用いてもよい。又、感光体を透明にして、ニップ前露光装置を感光体の内部に配置して、感光体の内部から上流側ギャップを露光してもよい。
【0137】
又、上述の実施例では、可撓性の接触帯電部材としての帯電ローラを例に挙げて説明した。しかし、上流側ギャップの感光体と帯電部材との間の距離が感光体の移動方向において接触部に近づくに従って徐々に減少し、下流側帯電ギャップの該距離が同方向において接触部から離れるに従って徐々に増加するものであれば本発明を同様に適用できる。このようなものであれば、帯電部材と感光体との間の距離が線形的に減少(又は増加)しても、非線形的に減少(又は増加)しても、上述の実施例と同様の効果が期待できる。例えば、帯電部材として導電性の帯電ベルト21(図18(a)参照)、エッジ部で感光体に当接して感光体を帯電させる導電性のゴムブレード22(図18(b)参照)などを用いてもよい。
【0138】
又、上述の実施例では、帯電部材としての帯電ローラと感光体としての感光ドラムとは接触していたが、微小のギャップを形成して近接させても良い。このような構成においては、感光体と帯電部材との距離は、感光体の移動方向において帯電部材と感光体との最近接位置(最近接部)に向かって徐々に減少し、該最近接位置から遠ざかるにつれて徐々に増加する。
【0139】
又、上述の実施例では、回転可能なドラム形状の感光体を用いたが、感光体としては、移動可能なベルト状の感光ベルトを用いてもよい。このとき、感光ドラムの回転方向上流及び下流と感光ベルトの移動方向上流及び下流はそれぞれ対応するものとする。
【0140】
又、上述の実施例では、画像上に現れる帯電横スジを抑制するために、上流側帯電ギャップにおいて感光ドラムの長手方向の画像形成領域をニップ前露光装置で露光した。しかし、感光ドラムの長手方向の全域を露光してもよい。これにより、小サイズの転写材と大サイズの転写材に対して画像を形成する装置において、小サイズの転写材に画像を形成し続けた時に、感光ドラムの長手方向の削れ量にむらが生じることを抑制することができる。例えば、小サイズの転写材と大サイズの転写材に対して画像を形成する場合、小サイズの転写材に画像を形成するときには大サイズの転写材に画像を形成するときに比べて、短い範囲でニップ前露光を感光体に照射すれば、帯電横スジは抑制できる。しかし、長期にわたり小サイズの画像形成を行った場合、感光体の長手方向においてニップ前露光を照射した部分と照射していない部分では、感光体の削れ量にムラができることがある。このような場合は、感光体の長手方向の全域にニップ前露光を照射する方が良い。
【0141】
又、本発明は、現像装置を用いて現像と同時にクリーニングを行う、所謂クリーナレス構成の画像形成装置における帯電制御回路にも同様の効果を発揮することができる。
【符号の説明】
【0142】
1 感光ドラム(感光体)
2 帯電ローラ(帯電部材)
8 ニップ前露光装置(照射手段)
12 直流電流検知回路
13 制御回路(制御手段)
14 照射状態調整手段
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式を用いた複写機、プリンタ、ファクシミリ装置などの画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真方式の画像形成装置において、電子写真感光体(感光体)の表面を帯電させる方法としては、細いコロナ放電ワイヤに高電圧を印加して、それにより発生するコロナを感光体の表面に作用させて帯電を行なうコロナ帯電方式が一般的であった。
【0003】
近年は、低圧プロセス、低オゾン発生量、低コストなどの点から、感光体の表面を帯電させる方法として、次のような方式が主流となりつつある。即ち、ローラ型又はブレード型などの帯電部材を感光体の表面に近接又は接触させ、この帯電部材に電圧を印加することにより、感光体と帯電部材との間の微小空隙における放電によって感光体の表面を帯電させる方式(以下「接触帯電方式」という。)である。特に、ローラ型の帯電部材は、長期にわたって安定した帯電を行うことが可能である。
【0004】
接触帯電方式には、帯電部材に直流電圧のみを印加する「DC帯電方式」と、帯電部材に直流電圧と交流電圧との重畳電圧を印加する「AC帯電方式」とがある。
【0005】
AC帯電方式には、振動電圧を印加し、プラス側、マイナス側への放電を交互に起こすことで、感光体の表面を均一に帯電させることができるというメリットがある。しかし、AC帯電方式は、DC帯電方式と比べて、感光体への放電量が増えるため、感光体の削れなどの感光体の劣化を促進しやすく、感光体の寿命は短くなりやすい。又、AC帯電方式では、交流電圧を直流電圧に重畳させるためにAC電源が必要である。そのため、AC帯電方式は、感光体の寿命が短くなることで、例えば感光体を含むプロセスカートリッジの交換のためにかかるランニングコストが高くなったり、AC電源が必要であることにより画像形成装置のイニシャルコストが高くなったりすることがある。
【0006】
一方、DC帯電方式は、AC帯電方式と比べて、感光体への放電量が少ないために、感光体の長寿命化を図ることができ、例えば感光体を含むプロセスカートリッジの交換のためにかかるランニングコストを抑えることができる。又、AC電源を必要としないので、画像形成装置のイニシャルコストを抑えることができる。
【0007】
しかしながら、DC帯電方式は、AC帯電方式と比べて、感光体の表面電位の均一性(帯電均一性)が劣る。そのため、DC帯電方式では、例えばハーフトーン画像を形成する際に、感光体の表面電位の不均一性に起因する画像濃度ムラの問題が発生しやすい。
【0008】
ドラム型の感光体である感光ドラムと、これに接触して接触部を形成する帯電部材である帯電ローラと、を有する系を例に更に説明すると、DC帯電方式では、感光ドラムの長手方向(周方向に直交する方向)のスジ状の画像濃度ムラが問題となりやすい。
【0009】
ここで、上述のようなスジ状の画像濃度ムラを、「帯電横スジ」と呼ぶ。又、感光体と帯電部材との間の微小空隙を「帯電ギャップ」と呼ぶ。そして、帯電ギャップのうち感光体と帯電部材との最近接部(感光体と帯電部材とが接触する場合は接触部)よりも感光体の表面(被帯電面)の移動方向の上流側のものを「上流側ギャップ」と呼ぶ。又、帯電ギャップのうち感光体と帯電部材との最近接部(感光体と帯電部材とが接触する場合は接触部)よりも感光体の表面(被帯電面)の移動方向の下流側のものを「下流側ギャップ」と呼ぶ。
【0010】
上述のような帯電横スジは、下流側ギャップにおいて、上流側ギャップで帯電された感光ドラムと帯電ローラとの間で不安定な微小放電(剥離放電など)が発生することに起因するものと考えられる。特に、上流側ギャップで感光ドラムの表面の均一な帯電が完了していない場合に、下流側ギャップで不安定な微小放電が発生して、感光ドラムの表面電位にムラが生じるものと考えられる。
【0011】
特許文献1には、上流側ギャップにおいて感光ドラムの表面に光を照射して感光ドラムの表面を除電することにより、下流側ギャップにおいて感光ドラムの表面を均一に帯電させる構成が開示されている。斯かる構成によれば、上述のような帯電横スジなどの感光ドラムの表面電位の不均一性に起因する画像欠陥を抑制することができる。
【0012】
即ち、上流側ギャップに対応する感光ドラムの表面に光を照射することで、上流側ギャップにおいて感光ドラム上の電荷を打ち消して、帯電ローラにより感光ドラムの表面を帯電させる作用を下流側ギャップに偏らせることができる。このように上流側ギャップに対応する感光体の表面に光を照射することを「ニップ前露光」と呼ぶ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平5−341626号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、ニップ前露光を行うニップ前露光装置の光量を同じにしていても、ニップ前露光により帯電横スジを抑制する効果にばらつきが生じる場合があることがわかった。
【0015】
即ち、ニップ前露光装置の光量が同じであっても、ニップ前露光が上流側ギャップの奥(感光体の表面の移動方向において感光体と帯電部材との最近接部側)まで到達しない状態となる場合がある。このような場合、上流側ギャップにおいて感光ドラム上の電荷を打ち消しきれないことにより、帯電ローラにより感光ドラムの表面を帯電させる作用を下流側ギャップに偏らせきれず、帯電横スジが発生してしまうことがある。
【0016】
上流側ギャップは、感光ドラムと帯電ローラとの間の微小な空間であり、そこに適切に光を当てるには精度が必要である。しかし、この微小な空間に効果的にニップ前露光が当たっているかどうかを正確に判別する手段がなかった。
【0017】
特に、感光ドラム、帯電ローラ、又はこれらの両方を含むプロセスカートリッジを新品に交換する際に、ニップ前露光が適切に照射される状態からずれることが発生しやすい。そのため、プロセスカートリッジの交換後に、帯電横スジが画像上に発生する問題が発生しやすい。感光ドラム、帯電ローラ、又はこれらの両方がそれぞれ単体で交換可能である場合にも、その交換後に同様の問題が発生しやすい。
【0018】
ところで、このニップ前露光の照射精度を補うために、ニップ前露光装置の光量を極端に上げて、感光ドラム上の広範囲に光を照射する方法が考えられる。しかしながら、このような方法によると、ニップ前露光が適切に照射されている場合には、上流側ギャップにおいて除電と放電とを繰り返す量が増えてしまう。そのため、感光ドラムと帯電ローラとの間での放電量が増え過ぎてしまい、感光ドラムの外層が放電によって劣化しやすくなり、クリーナなどの接触部材によって摺擦されて磨耗する量、所謂、感光体の削れ量が増える問題が生じるおそれがある。
【0019】
従って、本発明の目的は、DC帯電方式を採用した画像形成装置において、ニップ前露光が適切に上流側ギャップに対応する感光体の表面に照射されているか否かを判別して、それを適切に調整することのできる画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記目的は本発明に係る画像形成装置にて達成される。要約すれば、本発明は、移動可能な感光体と、前記感光体に接触又は近接して前記感光体を帯電させる帯電部材であって、前記感光体の移動方向において、前記感光体と前記帯電部材との接触部又は最近接位置の上流側に該接触部又は最近接位置に向けて前記感光体との間の距離が徐々に狭くなるギャップを形成し、前記接触部又は前記最近接位置の下流側に該接触部又は最近接位置から遠ざかるにつれて前記感光体との間の距離が徐々に広くなるギャップを形成し、直流電圧が印加されることで前記感光体の表面との間で生じる放電により前記感光体を帯電させる帯電部材と、前記帯電部材に直流電圧を印加する電源と、前記上流側のギャップに対応する前記感光体の表面に光を照射する照射手段と、前記電源から前記帯電部材に直流電圧を印加している際に前記帯電部材と前記感光体との間に流れる直流電流を検知する直流電流検知手段と、前記照射手段の前記感光体の表面に向けて光を出射する部分の該感光体の表面に対する相対位置を変更して前記照射手段による前記感光体の表面への光の照射状態を調整する照射状態調整手段と、前記照射手段により光を照射した前記感光体の表面に前記放電が生じることで前記直流電流検知手段によって検知される直流電流値を用いて、前記照射状態調整手段による前記照射状態の調整を制御する制御手段と、を有することを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、DC帯電方式を採用した画像形成装置において、ニップ前露光が適切に上流側ギャップに対応する感光体の表面に照射されているか否かを判別して、それを適切に調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施例に係る画像形成装置の要部の模式的な断面図である。
【図2】本発明の一実施例に係る画像形成装置の感光ドラムと帯電ローラの層構成を示す模式的な断面図である。
【図3】本発明の一実施例に係る画像形成装置の動作シーケンス図である。
【図4】本発明の一実施例に係る画像形成装置における帯電バイアス印加系のブロック図である。
【図5】本発明の一実施例に係る画像形成装置の照射状態調整手段の構成を説明するための模式図である。
【図6】画像形成装置のニップ前露光の位置と除電効果との関係を説明するためのモデル図である。
【図7】ニップ前露光装置の光量と、帯電ローラから感光ドラムに流れ込むDC電流値及び感光ドラムの削れ量との関係を示したグラフ図である。
【図8】本発明の一実施例に係る画像形成装置における帯電前露光調整工程の実施制御のフローチャート図である。
【図9】本発明の一実施例に係る画像形成装置におけるニップ前露光調整工程のフローチャート図である。
【図10】本発明の他の実施例に係る画像形成装置における帯電バイアス印加系のブロック図である。
【図11】本発明の他の実施例に係る画像形成装置におけるニップ前露光調整工程の実施制御のフローチャート図である。
【図12】本発明の更に他の実施例に係る画像形成装置における帯電バイアス印加系のブロック図である。
【図13】本発明の更に他の実施例に係る画像形成装置におけるニップ前露光装置の模式図である。
【図14】本発明の更に他の実施例に係る画像形成装置におけるニップ前露光調整工程のフローチャート図である。
【図15】帯電横スジの発生メカニズムを説明するための説明図である。
【図16】ニップ前露光の効果の発生メカニズムを説明するための説明図である。
【図17】ニップ前露光装置の位置と除電効果との関係を説明するためのモデル図である。
【図18】帯電部材の他の例を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る画像形成装置を図面に則して更に詳しく説明する。
【0024】
実施例1
1.画像形成装置の全体的な構成及び動作
先ず、本発明の一実施例に係る画像形成装置の全体的な構成及び動作について説明する。図1は、本実施例の画像形成装置10の全体構成を模式的に示す断面図である。
【0025】
本実施例の画像形成装置10は、接触帯電方式、反転現像方式を採用した電子写真方式のレーザビームプリンタである。又、本実施例の画像形成装置10は、最大A3サイズの転写材Pに画像を形成して出力することができる。
【0026】
画像形成装置10は、像担持体としてのドラム型の電子写真感光体である感光ドラム1を有する。感光ドラム1は、図示矢印R1方向に回転駆動される。感光ドラム1の周囲には、その回転方向(表面の移動方向)に沿って、次の各手段が配置されている。先ず、帯電手段としてのローラ型の接触帯電部材である帯電ローラ(ローラ帯電器)2である。次に、現像手段としての現像装置4である。次に、転写手段としてのローラ型の接触転写部材である転写ローラ5である。次に、クリーニング手段としてのクリーニング装置7である。又、感光ドラム1の回転方向において帯電ローラ2と現像装置4との間の図中上方には、露光手段(画像書き込み手段)としての露光装置3が設置されている。又、転写材Pの搬送方向において感光ドラム1と転写ローラ5との接触部よりも下流側には、定着手段としての定着装置6が設置されている。更に、画像形成装置10には、図示しない転写材Pの収容部、該収容部から感光ドラム1と転写ローラ5との接触部に転写材Pを供給する供給部、定着装置6を通過した後の転写材Pを画像形成装置10の外部へと排出する排出部などが設けられている。
【0027】
帯電ローラ2と感光ドラム1との接触部を帯電ニップaと呼ぶ。露光装置3による感光ドラム1の露光位置を露光部bと呼ぶ。現像装置4の後述する現像スリーブ4bと感光ドラム1との対向位置を現像部cと呼ぶ。転写ローラ5と感光ドラム1との接触部を転写ニップdと呼ぶ。又、クリーニング装置7の後述するクリーニングブレード7aと感光ドラム1との接触部をクリーニング部eと呼ぶ。これら帯電ニップa、露光部b、現像部c、転写ニップd、クリーニング部eは、感光ドラム1の回転方向において、この順番に配置されている。
【0028】
画像形成工程においては、先ず、回転する感光ドラム1の表面(被帯電面)が、帯電ローラ2によって一様に帯電させられる。その後、帯電した感光ドラム1の表面は、画像情報に応じて露光装置3によって走査露光される。これにより、感光ドラム1上に画像情報に応じた静電潜像(静電像)が形成される。感光ドラム1上に形成された静電潜像は、現像装置4によって現像剤のトナーによりトナー像として現像される。感光ドラム1上に形成されたトナー像は、転写ニップdにおいて、別途転写ニップdまで搬送されてきた転写材P上に、転写ローラ5の作用によって静電的に転写される。トナー像が転写された転写材Pは、感光ドラム1から分離されて定着装置6へと搬送される。定着装置6は、転写材Pを加熱及び加圧することによって、その上にトナー像を定着させる。その後、転写材Pは、印刷物(画像形成物)として画像形成装置10から排出される。
【0029】
本実施例では、感光ドラム1は、外径30mmの負帯電性の有機感光体(OPC)である。感光ドラム1は、駆動装置(駆動手段)としての駆動モータ(図示せず)によって、通常210mm/sのプロセススピード(周速度)で図示矢印R1方向に回転駆動される。図2に示すように、感光ドラム1は、アルミニウム製のシリンダ(導電性ドラム基体)1aの表面に、光の干渉を抑えてその上の層の接着性を向上させる下引き層1bと、光電荷発生層1cと、電荷輸送層1dとの3層を下から順に塗布して構成されている。
【0030】
帯電ローラ2は、図2に示すように、芯金2aの長手方向(回転軸線方向)の両端部をそれぞれ軸受け部材(図示せず)により回転自在に保持されると共に、付勢手段としての付勢部材である押圧ばね2eによって感光ドラム1の回転中心方向に付勢されている。これにより、帯電ローラ2は、感光ドラム1の表面に対して所定の押圧力で圧接されている。又、帯電ローラ2は、感光ドラム1の回転に対して従動して図示矢印R2方向に回転する。
【0031】
帯電ローラ2には、帯電電圧印加手段としての帯電電源T1が接続されている。帯電工程においては、所定の条件の帯電電圧(帯電バイアス)が帯電電源T1から帯電ローラ2の芯金2aに印加されることにより、感光ドラム1の表面は、DC帯電方式によって、所定の極性(本実施例では負極性)の所定の電位に帯電させられる。感光ドラム1の回転方向において、帯電ニップaの上流側では、感光ドラム1と帯電ローラ2との間の距離は帯電ニップaに向けて徐々に狭くなっていく。本実施例では、この感光ドラム1の回転方向における帯電ニップaの上流側の微小空隙を上流側ギャップA1と呼ぶ。又、感光ドラム1の回転方向において、帯電ニップaの下流側では、感光ドラム1と帯電ローラ2との間の距離は帯電ニップaから遠ざかるにつれて徐々に広がっていく。本実施例では、この感光ドラム1の回転方向における帯電ニップaの下流側の微小な空隙を下流側ギャップA2と呼ぶ。感光ドラム1の表面は、感光ドラム1の回転方向において、帯電ニップaを中心とした上流側ギャップA1及び下流側ギャップA2を含む領域(帯電部)を通過することによって帯電処理される。特に、本実施例では、後述するように、主に下流側ギャップA2において感光ドラム1の表面を所望の表面電位に均一に帯電させるようにする。
【0032】
帯電ローラ2による感光ドラム1の表面の帯電処理は、帯電ローラ2から感光ドラム1への放電によって行われる。そのため、感光ドラム1の表面の帯電処理を開始するためには、ある閾値電圧以上の電圧を帯電ローラ2に印加する必要がある。本実施例では、約−600V以上の電圧を帯電ローラ2に印加すれば、感光ドラム1の表面電位が上昇を始め、それ以降は印加電圧に対して傾き1で線形に感光ドラム1の表面電位が上昇する。例えば、本実施例では、−300Vの表面電位を得るためには−900V、−500Vの表面電位を得るためには、−1100Vの電圧を印加すればよい。この閾値電圧を放電開始電圧(帯電開始電圧)Vthと呼ぶ。つまり、画像形成工程において必要とされる感光ドラム1の表面電位(暗部電位)Vdを得るためには、帯電ローラ2には、Vd+Vthという、暗部電位Vd以上の直流電圧(DC電圧)を印加することが必要となる。
【0033】
本実施例では、帯電工程においては、感光ドラム1の表面を−500Vの暗部電位Vdに一様に帯電させるために、帯電ローラ2の芯金2aには、帯電電源T1より、帯電電圧(帯電バイアス)として、−1100Vの直流電圧が印加される。
【0034】
本実施例では、帯電ローラ2の長手方向(回転軸線方向)の長さは320mmである。図2に示すように、帯電ローラ2は、芯金(支持部材)2aの外回りに、下層2bと、中間層2cと、表層2dとを下から順次に積層した3層構成を有する。下層2bは帯電音を低減するための発泡スポンジ層である。又、表層2dは、感光ドラム1上にピンホールなどの欠陥があったとしても、電流のリークが発生するのを防止するために設けられている保護層である。
【0035】
より具体的には、本実施例における帯電ローラ2の仕様は、次の通りである。
芯金2a:直径6mmのステンレス丸棒
下層2b:カーボン分散の発泡EPDM、比重0.5g/cm3、体積抵抗値102〜109Ωcm、層厚3.0mm
中間層2c:カーボン分散のNBR系ゴム、体積抵抗値102〜105Ωcm、層厚700μm
表層2d:フッ素化合物のトレジン樹脂に酸化錫とカーボンを分散、体積抵抗値107〜1010Ωcm、表面粗さ(JIS規格10点平均表面粗さRa)1.5μm、層厚10μm
本実施例では、露光装置3として、半導体レーザを用いたレーザビームスキャナを用いた。露光装置3は、画像読み取り装置(図示せず)などから入力される画像信号に対応して変調されたレーザ光Lを出力する。そして、露光装置3は、感光ドラム1の一様に帯電処理された面を、露光部bにおいて、上記レーザ光Lによって走査露光(イメージ露光)する。これにより、感光ドラム1の表面のレーザ光で照射された部分の電位の絶対値が低下して、感光ドラム1の表面には、走査露光した画像情報に対応した静電潜像(静電像)が形成される。
【0036】
本実施例では、現像装置4は、現像剤として非磁性トナー粒子(トナー)と磁性キャリア粒子(キャリア)とを含む二成分現像剤を用いる二成分磁気ブラシ現像方式を採用している。又、本実施例では、現像装置4は反転現像方式により静電潜像を現像する。即ち、一様に帯電させられた後に露光されることによって電位の絶対値が低下した感光ドラム1の表面の露光部分(明部)に、感光ドラム1の帯電極性と同極性に帯電したトナーを付着させることで、感光ドラム1上の静電潜像を現像する。
【0037】
現像装置4は、二成分現像剤4eを収容した現像容器4aを有する。現像容器4aの感光ドラム1に対向する位置に設けられた開口部から一部が外部に露出するようにして、現像剤担持体としての現像スリーブ4bが回転可能に現像容器4aに設けられている。現像スリーブ4bは、非磁性材料で形成されている。現像スリーブ4bは、感光ドラム1との最近接距離を300μmに保持するようにして、感光ドラム1に対向して配設される。現像スリーブ4bは、現像スリーブ4bと感光ドラム1との対向部である現像部cにおいて、その表面の移動方向が感光ドラム1の表面の移動方向とは逆方向になるように、図示矢印R4方向に回転駆動される。現像スリーブ4bは、その内部に磁界発生手段としてのマグネットローラ4cを収容しており、このマグネットローラ4cは現像容器4aに対して回転不可能なように固定して配置されている。又、現像スリーブ4aに対向して、現像スリーブ4bに担持させる二成分現像剤4eの量を規制する規制部材としての規制ブレード4dが設けられている。更に、現像容器4a内には、現像剤攪拌部材としての2つの攪拌スクリュー4f、4fが配置されている。現像容器4a内のトナーとキャリアとの混合物である二成分現像剤4eは、攪拌スクリュー4f、4fの回転によって攪拌されながら現像容器4a内を循環搬送される。
【0038】
攪拌スクリュー4f、4fによって現像スリーブ4b側に搬送された現像容器4a内の二成分現像剤4eは、マグネットローラ4cの作用により現像スリーブ4上に担持され、規制ブレード4dの作用により所定の厚さの薄層状にコーティングされる。その後、現像スリーブ4上にコーティングされた二成分現像剤4eは、感光ドラム1と対向する現像部cへと搬送される。現像部cにおいて現像スリーブ4b上の二成分現像剤4eは、マグネットローラ4cの作用により穂立ちして、磁気ブラシを形成する。現像スリーブ4bは、この磁気ブラシを感光ドラム1の表面に近接又は接触(本実施例では接触)させるようにして回転する。そして、現像部cにおいて、後述する現像電圧によって形成される電界の作用によって感光ドラム1上の静電潜像に応じて磁気ブラシからトナーが感光ドラム1に転移して、感光ドラム1上にトナー像が形成される。その後、現像部cを通過した、磁気ブラシを形成する二成分現像剤4eは、現像スリーブ4bの回転によって現像容器4a内に戻される。
【0039】
現像スリーブ4bには、現像電圧印加手段としての現像電源T2が接続されている。現像工程においては、現像スリーブ4bには、現像電源T2から、所定の現像電圧(現像バイアス)が印加される。本実施例では、現像電圧は、直流電圧(Vdc)と交流電圧(Vac)とを重畳した振動電圧である。より具体的には、本実施例では、−320Vの直流電圧と、周波数8kHz、ピーク間電圧1800Vppの交流電圧とを重畳した振動電圧である。
【0040】
尚、本実施例では、キャリアの抵抗は約1013Ωcm、キャリアの粒径は40μmである。又、トナーは、キャリアとの摺擦により負極性に摩擦帯電される。又、現像容器4a内の現像剤のトナー濃度(二成分現像剤に含まれるトナーの量)は、濃度センサ(図示せず)によって検知される。そして、この検知情報に基づいて、トナーホッパー4gから適正量のトナーが現像容器4aに適宜補給され、現像容器4a内の現像剤のトナー濃度が一定になるように調整される。
【0041】
転写ローラ5は、感光ドラム1に所定の押圧力で圧接されている。転写ローラ5には、転写電圧印加手段としての転写電源T3が接続されている。転写工程においては、転写ローラ5には、転写電源T3から、所定の転写電圧(転写バイアス)が印加される。本実施例では、転写電圧として、トナーの正規の帯電極性(本実施例では負極性)とは逆極性(本実施例では正極性)である+500Vの直流電圧が印加される。この転写電圧によって形成される電界の作用により、感光ドラム1上のトナー像は、感光ドラム1と転写ローラ5との接触部である転写ニップdにおいて用紙などの転写材Pに転写される。
【0042】
定着装置6は、加熱手段を備えた定着部材としての定着ローラ6aと、定着ローラ6bに圧接された加圧部材としての加圧ローラ6bとを有しており、定着ローラ6aと加圧ローラ6bは回転駆動される。定着装置6は、定着ローラ6aと加圧ローラ6bとの間の接触部(定着ニップ)において転写材Pを挟持して搬送しながら、転写材Pの表面に転写されたトナー像を加熱及び加圧する。これにより、転写材P上のトナー像は転写材P上に定着される。本実施例では、転写材Pの材質、厚さ、坪量に応じて、定着ローラ6aと加圧ローラ6bの回転速度が可変制御される。
【0043】
クリーニング装置7は、クリーニング部材としてのクリーニングブレード7aと、クリーニング容器7bとを有する。回転する感光ドラム1の表面は、クリーニングブレード7aと感光ドラム1との接触部であるクリーニング部eにおいて、クリーニングブレード7aにより摺擦される。これにより、転写材Pへのトナー像の転写後に感光ドラム1の表面に残留したトナー(転写残トナー)は、感光ドラム1の表面から除去されて、クリーニング容器7bに回収される。こうして、感光ドラム1の表面は清浄化され、繰り返し画像形成に供される。
【0044】
本実施例では、感光ドラム1と、感光ドラム1に作用するプロセス手段としての帯電ローラ2とは、枠体(図示せず)によって一体的にカートリッジ化されて、画像形成装置10の本体(装置本体)に対して着脱可能なプロセスカートリッジとされている。尚、プロセスカートリッジは、本実施例の態様に限定されるものではい。プロセスカートリッジは、感光体と、感光体に作用するプロセス手段としての帯電手段、現像手段及びクリーニング手段のうちの少なくとも一つとを一体的にカートリッジ化して、装置本体に対して着脱可能としたものである。
【0045】
図3は、本実施例の画像形成装置10の動作シーケンス図である。
【0046】
a.初期回転動作(前多回転工程)
初期回転動作期間は、画像形成装置10の起動時の始動動作期間(起動動作期間、ウォーミング期間)である。初期回転動作期間では、画像形成装置10の電源スイッチがオンとされることにより、感光ドラム1の回転駆動が開始されると共に、定着装置6の温度を所定温度への立ち上げるなどの各種プロセス機器の所定の準備動作が実行される。
【0047】
b.印字準備回転動作(前回転工程)
印字準備回転動作期間は、プリント信号(画像形成開始指示)が入力されてから実際に印字工程が実行されるまでの間の準備回転動作期間である。初期回転動作中にプリント信号が入力されたときには、初期回転動作に引き続いて印字準備回転動作が実行される。初期回転動作中にプリント信号の入力がないときには、初期回転動作の終了後にメインモータの駆動が一旦停止されて、感光ドラム1の回転駆動が停止され、画像形成装置10はプリント信号が入力されるまでスタンバイ(待機)状態に保たれる。そして、プリント信号が入力されると、印字準備回転動作が実行される。
【0048】
本実施例では、この印字準備回転動作期間において、印字工程中にニップ前露光を適切に行うための、ニップ前露光調整工程が行われる。このニップ前露光調整工程については、後述して詳しく説明する。
【0049】
c.印字工程(画像形成工程、作像工程)
所定の印字準備回転動作が終了すると、感光ドラム1は引き続いて回転駆動されて、印字工程が開始される。印字工程では、回転する感光ドラム1にトナー像を形成し、感光ドラム1上のトナー像を転写材Pへの転写し、転写材P上のトナー像を転写材Pに定着させる処理が行われて、画像形成物が画像形成装置10から出力(プリントアウト)される。
【0050】
連続印字(連続プリント)モードの場合は、上述の印字工程が、所定の設定プリント枚数分繰り返して実行される。
【0051】
d.紙間工程
紙間とは、連続印字モードにおいて、一の転写材Pの後端部が転写ニップdを通過した後、次の転写材Pの先端部が転写ニップdに到達するまでの間の、転写ニップdに転写材Pが存在しない間の期間である。
【0052】
e.後回転動作
後回転動作期間は、最後の転写材Pに対する印字工程が終了した後もしばらくの間メインモータの駆動を継続させて感光ドラム1の回転駆動を継続させ、所定の整理(準備)動作を実行する期間である。
【0053】
f.スタンバイ
所定の後回転動作が終了すると、メインモータの駆動が停止されて感光ドラム1の回転駆動が停止され、画像形成装置10は次のプリント信号が入力するまでスタンバイ状態に保たれる。1枚だけのプリントの場合は、そのプリント終了後、画像形成装置10は後回転動作を経てスタンバイ状態になる。スタンバイ状態において、プリント信号が入力されると、印字準備回転動作が実行される。
【0054】
上記cの印字工程時が画像形成時であり、上記aの初期回転動作、上記bの印字準備回転動作、dの紙間工程、eの後回転動作が非画像形成時である。
【0055】
2.帯電横スジ
本実施例では、感光ドラム1の帯電方式としてDC帯電方式を採用した。DC帯電方式では、前述のように、帯電横スジという画像不良が発生しやすい。
【0056】
ここで、帯電横スジが発生するメカニズムについて更に説明する。図15は帯電横スジが発生するメカニズムを説明するための模式図である。
【0057】
感光ドラム1と帯電ローラ2は接触部におけるそれぞれの表面の移動方向が同方向となるようにそれぞれ回転している。上流側ギャップA1において、感光ドラム1と帯電ローラ2との間の電位差がPaschen則による放電開始閾値を超えると、感光ドラム1と帯電ローラ2との間で放電が行われ、感光ドラム1上に電荷が載って、感光ドラム1の表面は帯電電位Vdに帯電される。図15(a)に示すように、この上流側ギャップA1において放電が均一に行われれば、前述のような帯電横スジのような画像不良は発生しない。しかし、帯電ローラ2の一部の電気抵抗が高くなったり、感光ドラム1の膜厚が厚かったりすることで、上流側ギャップA1で感光ドラム1の表面の均一な帯電が完了しない場合がある。その場合、図15(b)に示すように、下流側ギャップA2で不安定な微小放電が発生し、その部分で感光ドラム1の表面電位にムラが生じ、前述のような帯電横スジが発生する。
【0058】
この帯電横スジは、前述のようにニップ前露光を行うことによって抑制することができる。図16は、上流側ギャップA1に対応する感光ドラム1の表面に光を照射するニップ前露光を行った場合の帯電横スジを抑制するメカニズムを説明するための模式図である。
【0059】
図16(a)に示すように、上流側ギャップA1で一度感光ドラム1上に載った電荷を、ニップ前露光Iにより打ち消して、図16(b)に示すように帯電ローラ2により感光ドラム1の表面を帯電させる作用を下流側ギャップA2に偏らせる。これにより、帯電横スジの発生原因である、下流側ギャップA2による不安定な微小放電が発生しにくくなり、帯電横スジを抑制することができる。
【0060】
3.ニップ前露光装置
本実施例の画像形成装置100は、帯電横スジを抑制するためにニップ前露光を行う照射手段としてのニップ前露光装置8を有する。ニップ前露光装置8は、上流側ギャップA1に対応する感光ドラム1の表面の、少なくとも感光ドラム1の長手方向(回転軸線方向)における画像形成領域に光を照射してその部分を除電するように設けられている。
【0061】
本実施例では、最大通紙幅がA3サイズであり、感光ドラム1の長手方向の画像形成領域の最大幅が297mmである。従って、本実施例では、ニップ前露光装置8は、上流側ギャップA1に対応する感光ドラム1の表面の、感光ドラム1の長手方向における297mmの領域に光を照射するように設けた。
【0062】
本実施例では、ニップ前露光装置8として、光源としてピーク波長が660nmのLEDを有し、光量を5〜15(lx・s)に調整可能なLEDランプを使用した。ニップ前露光装置8の照度は、ニップ前露光装置8に電力を供給する電力供給手段としてのニップ前露光電源T4からの印加バイアスを変化させることで調整できる。
【0063】
尚、上流側ギャップA1は、帯電ローラ2と感光ドラム1との間で放電が行われるわずかな領域である。本実施例では、上流側ギャップA1は、帯電ニップaの感光ドラム1の回転方向上流側の端部から同方向上流側に1mm離れた位置までの領域であった。同様に、下流側ギャップA2は、帯電ローラ2と感光ドラム1との間で放電が行われるわずかな領域である。本実施例では、下流側ギャップA2は、帯電ニップaの感光ドラム1の回転方向下流側の端部から同方向下流側に1mm離れた位置までの領域であった。
【0064】
4.制御態様
図4は、本実施例に係る画像形成装置10の概略制御態様を説明するためのブロック回路図である。画像形成装置10は、帯電ローラ2に対する電圧印加手段である帯電電源T1を有する。帯電電源T1は、直流(DC)電源11を有する。帯電電源T1から直流電圧が芯金2aを介して帯電ローラ2に印加されることで、回転する感光ドラム1の周面が所定の電位に帯電処理される。又、画像形成装置10は、感光ドラム1を介して帯電ローラ2に流れる直流電流値を測定する直流電流検知手段としての直流電流検知回路12を有する。この直流電流検知回路12によって測定された直流電流値の情報が、直流電圧検知回路12から制御手段としての制御回路13に入力される。又、本実施例では、画像形成装置10には、感光ドラム1及び帯電ローラ2の少なくとも一方が交換されたことを検知するための交換検知手段として、プロセスカートリッジが新品に交換されたことを検知するための新品検知手段16が設けられている。新品検知手段16としては、例えば、プッシュスイッチやフォトインタラプタなど、装置本体側の認識手段とプロセスカートリッジ側の指示手段とで構成され、これらの間の相互作用の有無や変化により交換を検知するものが挙げられる。或いは、新品検知手段16としては、プロセスカートリッジ側に設けられた記憶手段としてのメモリと、装置本体側の読み取り手段(又は読み取り書き込み手段)とを有して構成され、メモリ内の特定の情報の有無や変化によって交換を検知するものが挙げられる。本実施例では、新品検知手段16として、上記メモリと読み取り手段とを有して構成されたものを用いた。プロセスカートリッジが装置本体に装着されると、制御回路13は、装置本体側の読み取り手段によってプロセスカートリッジ側のメモリに記憶された情報を読み取ることができ、当該プロセスカートリッジが新品であるか否かを判断することができる。
【0065】
制御回路13は、演算制御手段であるCPU、記憶手段であるROMやRAMなどを有し、画像形成装置10の各部を統括的に制御する。特に、本実施例との関連において、制御回路13は、詳しくは後述するニップ前露光調整工程を前回転工程時に行うか否かを判断する。又、制御回路13は、ニップ前露光調整工程における、電源T1、T3、T4の駆動の制御、直流電流検知回路12による測定結果に基づくニップ前露光の照射状態調整手段の制御などを行う。
【0066】
5.ニップ前露光の効果のばらつき
次に、図17を参照して、ニップ前露光装置8の光量(発光量)が同じであっても帯電横スジに対する効果が低下する現象について説明する。
【0067】
図17(a)は、ニップ前露光が適切に照射されて帯電横スジの発生が効果的に抑制されている状態を示す。この場合、上流側ギャップA1においてニップ前露光Iにより感光ドラム1上の電荷を除電して、帯電ローラ2により感光ドラム1の表面を帯電させる作用を下流側ギャップA2に偏らせることができている。そのため、下流側ギャップA2における不安定な微小放電によって発生する帯電横スジの発生を抑制することができる。
【0068】
これに対して、図17(b)は、図17(a)の場合とニップ前露光装置8の光量が同じであるが、ニップ前露光Iが上流側ギャップA1の奥(感光ドラム1の回転方向において帯電ニップa側)まで到達していない角度にある状態を示す。この場合、上流側ギャップA1においてニップ前露光Iにより感光ドラム1上の電荷をキャンセルしきれず、帯電ローラ2により感光ドラム1の表面を帯電させる作用を下流側ギャップA2に偏らせきれずに、帯電横スジがわずかに発生してしまう。
【0069】
即ち、ニップ前露光装置8の光量が同じである実質的に同一の構成の複数の画像形成装置10において画像を比較したところ、ニップ前露光により帯電横スジを抑制する効果にばらつきが生じる場合があることがわかった。
【0070】
表1は、本実施例に従って構成された3つの被試験画像形成装置A、B、Cにおいて、ニップ前露光装置8の光量を5〜15(lx・s)に変更したときに発生した帯電横スジのレベルを示す。
【0071】
帯電横スジは、ハーフトーン画像(一例として画像形成領域の全域に形成した256階調の128レベルの画像)上に、印字方向(転写材Pの搬送方向、感光ドラム1の表面の移動方向)に対して垂直なスジ状の画像が発生する不良画像である。帯電横スジのレベルの評価基準は次の通りである。◎は得られた画像が非常に良い、○は良い、△はハーフトーン画像にやや濃度ムラあり、×はハーフトーン画像に濃度ムラ、ガサツキがあることを示す。
【0072】
【表1】
【0073】
表1より、画像形成装置Aでは、光量を7(lx・s)にすることで帯電横スジのレベルは◎になるのに対し、画像形成装置Bでは光量を13(lx・s)、画像形成装置Cでは光量を15(lx・s)にしないと、それぞれ帯電横スジのレベルは◎にならなかった。
【0074】
図6は、上記3つの画像形成装置A、B、Cにおいてニップ前露光装置8の光量を9(lx・s)にした場合の、ニップ前露光Iの照射状態と感光ドラム1の表面の除電効果との関係のモデルを模式的に示す。
【0075】
図6(a)の画像形成装置Aは、帯電横スジが良好に抑制されているモデルである。この場合、上流側ギャップA1の奥までニップ前露光Iが照射されて、上流側ギャップA1で感光ドラム1上のほぼ全ての電荷が除電されている。そのため、帯電ローラ2により感光ドラム1の表面を帯電させる作用を下流側ギャップA2に十分に偏らすことができている。
【0076】
図6(b)の画像形成装置Bは、上流側ギャップA1において、ニップ前露光Iが帯電ローラ2よりもやや感光ドラム1よりに照射されているモデルである。この場合、上流側ギャップA1の奥までニップ前露光Iが照射されておらず、上流側ギャップA1で感光ドラム1上の電荷を除電しきれていない。そのため、帯電ローラ2により感光ドラム1の表面を帯電させる作用を下流側ギャップA2に十分に偏らすことができず、帯電横スジが発生しやすくなっている。
【0077】
図6(c)の画像形成装置Cは、上流側ギャップA1において、ニップ前露光Iが感光ドラム1よりもやや帯電ローラ2よりに照射されているモデルである。この場合も、上流側ギャップA1の奥までニップ前露光Iが照射されておらず、上流側ギャップA1で感光ドラム1上の電荷を除電しきれていない。そのため、帯電ローラ2により感光ドラム1の表面を帯電させる作用を下流側ギャップA2に十分に偏らすことができず、帯電横スジが発生しやすくなっている。
【0078】
このように、帯電横スジを抑制するためには、上流側ギャップA1の奥までニップ前露光Iを照射することが重要であり、ニップ前露光装置8の位置決め精度が要求される。
【0079】
ここで、ニップ前露光装置8の位置がずれている場合でも帯電横スジを抑制できるように、ニップ前露光装置8の光量を大きくして、上流側ギャップA1において感光ドラム1の表面のより広範囲にニップ前露光Iを照射する方法が考えられる。
【0080】
しかしながら、このような方法では、感光ドラム1と帯電ローラ2との間での放電量が増え過ぎてしまい、感光ドラム1の削れ量が増える問題が生じるおそれがある。
【0081】
図7は、ニップ前露光装置8の光量と、帯電ローラ2から感光ドラム1に流れ込むDC電流値との関係、及び、ニップ前露光装置8の光量と、通紙枚数10K(10000枚)あたりの感光ドラム1の削れ量との関係を示すグラフである。図7に示すデータは、本実施例に従って構成された被試験画像形成装置において、プロセススピードを210mm/s、感光ドラム1の帯電電位(暗部電位)Vdを−500V、画像濃度をベタ白(256階調の0レベル)に設定して得た。DC電流値は、感光ドラム1とアースとの間に電流計を設置して測定した。又、光量0のデータは、ニップ前露光装置8をOFFにして測定した。
【0082】
図7から、ニップ前露光装置8の光量を大きくすると、それに応じて感光ドラム1の削れ量が増大することがわかる。又、ニップ前露光装置8の光量を大きくすると、帯電ローラ2から感光ドラム1に流れ込むDC電流値も大きくなる。このようにDC電流値が大きくなるのは、ニップ前露光装置8の光量が大きくなると、上流側ギャップA1における感光ドラム1上の電荷の除電量、又は除電する感光ドラム1の表面の面積が増大し、それに応じて再放電量が増えるためである。そして、このように放電量が増えることによって、感光ドラム1の削れ量も増大する。
【0083】
つまり、上述のようにニップ前露光装置8の位置がずれている場合でも帯電横スジを抑制できるようにニップ前露光装置8の光量を大きくすると、適切にニップ前露光Iが照射されている場合には、必要以上に感光ドラム1の削れ量が増大してしまう。そのため、感光ドラム1の寿命が短くなる。
【0084】
従って、本実施例の目的の一つは、DC帯電方式を採用した画像形成装置において、ニップ前露光が適切に上流側ギャップに対応する感光体の表面に照射されているか否かを判別して、それを適切に調整することである。又、それによって、DC帯電方式を採用した画像形成装置において、特に感光体や帯電部材の交換後に発生しやすい、感光体の帯電処理に起因するスジ状の画像ムラを抑制することも本実施例の目的の一つである。
【0085】
6.ニップ前露光調整
本実施例では、図4に示すように、画像形成装置10に、ニップ前露光装置8から上流側ギャップA1に対応する感光ドラム1の表面に照射するニップ前露光Iの照射状態を調整する照射状態調整手段14を設けた。照射状態調整手段14は、上記照射状態としてニップ前露光Iを上流側ギャップA1に対応する感光ドラム1の表面に照射する角度や位置を調整することが可能である。即ち、照射状態調整手段14は、少なくともニップ前露光装置8における上流側ギャップA1に対応する感光ドラム1の表面に向けて光を出射する部分の該感光ドラム1の表面に対する相対位置を変更して調整することができる。
【0086】
本実施例では、一例として、照射状態調整手段14は、ニップ前露光装置8を、その長手方向(感光ドラム1の長手方向と略平行)に沿う回動軸の周りで回動させる。そして、ニップ前露光Iの照射方向を、感光ドラム1の長手方向と略直交する平面に沿って、上記回動軸の周りで変更する。これにより、上流側ギャップA1における感光ドラム1上の電荷の除電量(露光量)又は除電する感光ドラム1の表面の面積(露光位置、露光範囲)を変更することができる。具体的には、照射状態調整手段14は、ニップ前露光装置8を、感光ドラム1の長手方向と略直交する平面に沿って、上記回動軸の回りで時計回り方向(図中(i))、又は反時計回り方向(図中ii))に回動させることが可能である。図中(i)方向に回動させると、ニップ前露光Iの照射方向を、上流側ギャップA1において感光ドラム1よりに変更することができる。又、図中(ii)方向に回動させると、ニップ前露光Iの照射方向を、上流側ギャップA2において帯電ローラ2よりに変更することができる。照射状態調整手段14の動作は、制御回路13が制御する。
【0087】
本実施例では、図5に示すように、照射状態調整手段14は、ニップ前露光装置8の回動軸に固定された駆動受けギア14aと、駆動受けギア14aと噛み合う駆動ギア14bと、駆動ギア14bに駆動力を伝達する駆動源であるモータMと、を有して構成される。そして、モータMの回転を制御することで、駆動ギア14bを介して駆動受けギア14aを回転させることで、ニップ露光装置8を回動軸の周りで回動させる。駆動受けギア14aは、ニップ前露光装置8の回動軸と結合されており、ほぼ駆動受けギア14aがその歯の1つ分だけ回転するごとに、ニップ前露光装置8の先端が上記回動軸の周りで2°回転する。尚、ニップ前露光装置8の先端とは、ニップ前露光装置8において上流側ギャップA1に向けて光が最終的に出射される部分である。
【0088】
ここで、ニップ前露光装置8の光量を7(lx・s)として完全に帯電横スジが消えたときのニップ前露光装置8の角度を0°とする。この光量7(lx・s)は、帯電横スジが完全に消える最小のニップ前露光装置8の光量である。そして、ニップ前露光装置8は、上記0°の位置を基準として感光ドラム1より(図中(i))又は帯電ローラ2より(図中(i))に回動させることができる。
【0089】
表2は、本実施例に従って構成された被試験画像形成装置において、照射状態調整手段14によってニップ前露光装置8の角度を変更した場合の帯電横スジのレベルと、直流電流検知回路12で測定された直流電流値との関係を示す。ニップ前露光装置8の角度は、上記0°の位置を基準として感光ドラム1より(図中(i))に回動させた場合の角度を+、帯電ローラ2より(図中(ii)に回動させた場合の角度を−として示す。ニップ前露光装置8の角度は2°ずつ変更した。又、帯電横スジのレベルの評価方法は上述したものと同じである。
【0090】
【表2】
【0091】
表2より、ニップ前露光装置8の光量が同じ場合において、帯電横スジのレベルは、直流電流検知回路12で測定された直流電流値が最大値を示すときに非常に良好であることがわかる。これは、上流側ギャップA1の奥までニップ前露光Iが照射され、上流側ギャップA1で照射されている感光ドラム1の面積が広くなることにより、除電と再放電が行われる面積が広くなるため、直流電流値が大きくなることを示している。つまり、直流電流値が大きくなるほど、上流側ギャップA1におけるニップ前露光Iの照射が適切に行われていることを示す。そのため、この直流電流値から、ニップ前露光Iの照射状態が適切であるか否かを判別できる。
【0092】
次に、図8及び図9を参照して、本実施例におけるニップ前露光調整工程の実施制御及びニップ前露光調整工程の動作制御について説明する。
【0093】
図8は、本実施例におけるニップ前露光調整工程の実施制御のフローチャートを示す。本実施例では、感光ドラム1及び帯電ローラ2の少なくとも一方を画像形成装置10の本体(装置本体)に対して新しく設置した際に、ニップ前露光調整工程を実行した。即ち、本実施例では、制御手段13は、感光体1又は帯電部材2の少なくとも一方が新品であると判断した場合に、照射状態調整手段14による照射状態の調整を実行させる。尚、本実施例では、上述のように、感光ドラム1と帯電ローラ2とはプロセスカートリッジとして一体的に構成されている。又、本実施例では、上述のように、前回転工程においてニップ前露光調整工程を実行する。従って、本実施例では、プロセスカートリッジが交換された際に、前回転工程において、ニップ前露光調整工程を実行する。
【0094】
図8を参照して、制御回路13は、プリント信号が入力されると(S101)、新品検知手段16によってプロセスカートリッジが新品であるか否かを判断する(S102)。そして、制御回路13は、S102においてプロセスカートリッジが新品であると判断した場合には、前回転工程時にニップ前露光調整工程を実行させ(S103)、前回転工程が終了した後に画像形成工程を実行させる(S104)。一方、制御回路13は、S102においてプロセスカートリッジが新品ではないと判断した場合には、ニップ前露光調整工程を行わない前回転工程を実行し(S105)、前回転工程が終了した後に画像形成工程を実行させる(S104)。
【0095】
図9は、本実施例におけるニップ前露光調整工程のフローチャートを示す。本実施例では、概略、電流検知回路12により直流電流値Iaを測定しながら、ニップ前露光装置8の角度を照射状態調整手段14により変化させ、直竜電流値Iaの絶対値が最大値になる角度を探す。
【0096】
図9を参照して、ニップ前露光調整工程が開始されると、制御回路13は、先ず、ニップ前露光装置8の位置を初期位置に設定する(S201)。この初期位置は、限定されるものではないが、ニップ前露光工程においてニップ前露光装置8の角度を変化させる範囲の最大値又は最小値とすることができる。例えば、本実施例では、装置設計に従うニップ前露光装置8の適正位置である上記0°の位置を基準に±12°の範囲で変化させる。この場合、初期位置は+12°又は−12°の位置とする。
【0097】
次に、制御回路13は、所定の帯電バイアス、転写バイアス及びニップ前露光をそれぞれONにする(S202)。本実施例では、ニップ前露光調整工程において、帯電処理後(転写ニップに到達する前)の感光ドラム1の表面電位を通常の画像形成時と同じ−500Vとするために、−1100Vの帯電バイアスを印加した。又、ニップ前露光調整工程において、転写バイアスは+500Vとした。又、ニップ前露光調整工程において、ニップ前露光装置8の光量は7(lx・s)とした。次に、制御回路13は、電流検知回路12によって直流電流値Iaを検出する(S203)。次に、制御回路13は、ニップ前露光装置8の角度変更範囲内の可変位置の全てについて電流検知回路12による直流電流値Iaの測定が終了したか否かを判断する(S204)。S204において可変位置の全てについて測定が終了していないと判断した場合には、制御回路13は、照射状態調整手段14に信号を送り、ニップ前露光装置8の角度を変更させる(S205)。本実施例では、ニップ前露光装置8の角度を2°ずつ変更させる。その後、制御回路13は、S204において可変位置の全てについて直流電圧値Iaの測定が終了したと判断するまで、ニップ前露光装置8の角度の変更と、電流検知回路12による直流電流値Iaの測定を繰り返す。
【0098】
尚、ニップ前露光装置8のそれぞれの角度に対応して測定された直流電圧値Iaはそれぞれ、ニップ前露光装置8の角度と関係づけられて、制御回路13が備える記憶手段に記憶される。このニップ前露光装置8のそれぞれの角度に対応する直流電流値Iaは、角度変更後のニップ前露光装置8からの光が照射された感光ドラム1の表面に対して放電が生じている間に測定する。
【0099】
次に、制御回路13は、S204において可変位置の全てについて測定を終了したと判断した場合には、測定された直流電流値Iaの絶対値が最大値のときのニップ前露光装置8の角度を決定する(S206)。このとき、必要に応じて、制御回路13は、照射状態調整手段14によりニップ前露光装置8の角度を、その決定された角度に変更させる。本実施例では、直流電流値Iaの絶対値が最大値である場合、当該直流電流値は−60μAになる。直流電流値Iaの絶対値が最大値を示すニップ前露光装置8の角度が複数ある場合は、いずれかの任意の角度を選択すればよい。
【0100】
その後、制御回路13は、ニップ前露光調整工程を含む前回転工程が終了し、画像形成動作に移行する(図8のS104)。
【0101】
尚、本実施例では、測定された直流電圧値Iaが最大値となるニップ前露光装置8の角度を探すようにしたが、この態様に限定されるものではない。例えば、装置設計に従ってニップ前露光装置8の角度が適切である場合に測定される、直流電流値Iaの絶対値の最大値を予め基準値として設定しておくことができる。ニップ前露光調整工程においては、直流電流値Iaを測定しながら、ニップ前露光装置8の角度を変更していく。そして、測定された直流電圧値Iaとその基準値とを比較して、測定された直流電流値Iaが基準値と同じ値となるか又は基準値に対して所定範囲内の値となるニップ前露光装置8の角度を探す。
【0102】
このように、本実施例では、画像形成装置10は、移動可能な感光体1と、感光体1に接触して感光体1を帯電させる帯電部材2と、帯電部材2に直流電圧を印加する電源T1と、を有する。帯電部材2は、感光体1の移動方向において、感光体1と帯電部材2との接触部aの上流側に該接触部aに向けて感光体1との間の距離が徐々に狭くなるギャップA1を形成する。又、帯電部材2は、接触部aの下流側に該接触部aから遠ざかるにつれて感光体1との間の距離が徐々に広くなるギャップA2を形成する。この帯電部材2は、直流電圧が印加されることで感光体1の表面との間で生じる放電により感光体1を帯電させる。又、画像形成装置10は、上流側のギャップA1に対応する感光体1の表面に光を照射する照射手段8と、電源T1から帯電部材2に直流電圧を印加している際に帯電部材2と感光体1との間に流れる直流電流を検知する直流電流検知手段12と、を有する。又、画像形成装置10は、照射手段8の感光体1の表面に向けて光を出射する部分の該感光体1の表面に対する相対位置を変更して照射手段8による感光体1の表面への光の照射状態を調整する照射状態調整手段14を有する。更に、画像形成装置10は、照射手段8により光を照射した感光体1の表面に放電が生じることで直流電流検知手段12によって検知される直流電流値を用いて、照射状態調整手段14による照射状態の調整を制御する制御手段13を有する。本実施例では、制御手段13は、検知される直流電流値が最大値になるように、照射状態調整手段14による照射状態の調整を制御する。
【0103】
以上、本実施例では、感光ドラム1と帯電ローラ2との間に流れる直流電流値Iaの絶対値が最大値を示すように、上流側ギャップA1に対するニップ前露光Iの照射状態を調整する。これにより、例えば、感光ドラム1や帯電ローラ2の交換などのニップ前露光Iの照射状態が適切な状態からずれやすい状況になった場合でも、ニップ前露光Iの照射状態を適切な状態に調整することができる。従って、AC帯電方式よりもコスト的に有利なDC帯電方式を採用する場合でも、例えば、感光ドラムや帯電ローラ2の交換などによって帯電横スジが発生するようになることを防止して、良好な画像を維持することができる。
【0104】
実施例2
次に、本発明の他の実施例について説明する。本実施例の画像形成装置の基本的な構成及び動作は、実施例1のものと同じである。従って、実施例1のものと同一又はそれに相当する機能、構成を有する要素には同一符号を付して、詳しい説明は省略する。
【0105】
実施例1では、感光ドラム1及び帯電ローラ2の少なくとも一方を画像形成装置10の本体(装置本体)に新しく設置した際に、ニップ前露光調整工程を実行した。
【0106】
実施例1のような感光ドラム1や帯電ローラ2の設置後の初期状態以外にも、例えば、画像形成装置10の使用中に、感光ドラム1、帯電ローラ2又はその他の駆動する部材による振動が続くことで、ニップ前露光Iの照射状態が変化することがある。例えば、上記振動によってニップ前露光装置8の位置が少しずつずれるなどして、ニップ前露光Iの照射状態が変化する場合がある。
【0107】
そこで、本実施例では、実施例1のような感光ドラム1や帯電ローラ2の設置後の初期状態以外の所定のタイミングで、ニップ前露光調整工程を実行する。尚、実施例1のように感光ドラム1や帯電ローラ2の設置後の初期状態においてニップ前露光調整工程を実行することに加えて、本実施例における所定タイミングに、ニップ前露光調整工程を実行することができる。
【0108】
図10は、本実施例に係る画像形成装置10の概略制御態様を説明するためのブロック回路図である。本実施例における制御態様は図4に示す実施例1のものと同様であるが、本実施例では、画像形成装置10には、装置使用量検知手段として、感光ドラム1の回転数検知手段17が設けられている。回転数検知手段17によって感光ドラム1の回転数が測定され、その測定結果は制御回路13に入力されて、制御回路13が備える記憶手段に記憶される。
【0109】
図11は、本実施例におけるニップ前露光調整工程の実施制御のフローチャートを示す。尚、本実施例では、実施例1と同様に、感光ドラム1と帯電ローラ2とはプロセスカートリッジとして一体的に構成されている。
【0110】
図11を参照して、制御回路13は、プリント信号が入力されると(S301)、前回ニップ前露光調整工程を実行してから感光ドラム1の回転数が所定の回転数に達したか否かを判断する(S301)。本実施例では、この所定の回転数は10000とした。そして、制御回路13は、S301において所定の回転数に達したと判断した場合には、前回転工程時にニップ前露光調整工程を実行させ(S303)、前回転工程が終了した後に画像形成工程を実行させる(S304)。一方、制御回路13は、S302において所定の回転数に達していないと判断した場合には、ニップ前露光調整工程を行わない前回転工程を実行し(S305)、前回転工程が終了した後に画像形成工程を実行させる(S304)。
【0111】
本実施例では、ニップ前露光調整工程自体の動作は、図9を参照して説明した実施例1のものと同じである。
【0112】
以上、本実施例では、装置使用量を指標として所定のタイミングで、感光ドラム1と帯電ローラ2との間に流れる直流電流値Iaの絶対値が最大値を示すように、上流側ギャップA1に対するニップ前露光Iの照射状態を調整する。これにより、長期にわたりニップ前露光Iの照射状態を適切な状態に維持することができる。従って、AC帯電方式よりもコスト的に有利なDC帯電方式を採用する場合でも、長期にわたり帯電横スジが発生することを防止して、良好な画像を維持することができる。
【0113】
実施例3
次に、本発明の他の実施例について説明する。本実施例の画像形成装置の基本的な構成及び動作は、実施例1のものと同じである。従って、実施例1のものと同一又はそれに相当する機能、構成を有する要素には同一符号を付して、詳しい説明は省略する。
【0114】
実施例1、2では、照射状態調整手段14は、ニップ前露光装置8を、その長手方向(感光ドラム1の長手方向と略平行)に沿う回動軸の周りで回動させた。そして、ニップ前露光Iの照射方向を、感光ドラム1の長手方向と略直交する平面に沿って、上記回動軸の周りで変更した。
【0115】
これに対して、本実施例では、照射状態調整手段14は、ニップ前露光装置8を、感光ドラム1の長手方向と略平行な平面に沿って移動させる。本実施例では、ニップ前露光装置8は、該平面に沿って回動又はスライド移動させることができるようになっている。本実施例では、特に、該平面は、感光ドラム1の長手方向と略平行であり、且つ、ニップ前露光装置8から上流側ギャップA1に向かう光の方向と交差する方向に沿う。これにより、上流側ギャップA1における感光ドラム1上の電荷の除電量(露光量)又は除電する感光ドラム1の表面の面積(露光位置、露光範囲)を変更することができる。
【0116】
ここで、本実施例では、感光ドラム1の長手方向における一方の端部側を手前側といい、他方の端部側を奥側という。
【0117】
本実施例では、ニップ前露光装置8は、その長手方向が上流側ギャップA1の長手方向(感光ドラム1の長手方向と略平行)と略平行であるときに、該長手方向の前述の除電可能領域の電荷を略均一に除電して帯電横スジを良好に防止できる適正な位置である。上流側ギャップA1とニップ前露光装置8の長手方向が平行からずれてくると、ニップ前露光装置8の手前側端部又は奥側端部においてニップ前露光Iが感光ドラム1又は帯電ローラ2よりに偏って照射されるようになる。そのため、ニップ前露光装置8の手前側端部又は奥側端部において、上流側ギャップA1の奥までニップ前露光Iが照射されにくくなり、上流側ギャップA1で感光ドラム1上の電荷を除電しきれずに、帯電横スジが発生しやすくなる。
【0118】
図12は、本実施例に係る画像形成装置10の概略制御態様を説明するためのブロック回路図である。本実施例における制御態様は図4に示す実施例1のものと同様であるが、照射状態調整手段14の構成が実施例1とは異なる。
【0119】
図12に示すように、本実施例では、照射状態調整手段14は、ニップ前露光装置8の手前側端部を移動させる手前側アクチュエータ14Fと、ニップ前露光装置8の奥側の端部を移動させる奥側アクチュエータ14Rとを有する。より具体的には、本実施例では、手前側アクチュエータ14F、奥側アクチュエータ14Rはそれぞれ、ニップ前露光装置8の長手方向の手前側端部、奥側端部の位置を、感光ドラム1に対して、垂直に上下する方向に移動させる。これにより、本実施例では、ニップ前露光装置8を感光ドラム1の長手方向と略平行な上記平面に沿って回動(揺動)させる。尚、上述のようにニップ前露光装置8は、該平面に沿ってスライド移動させることもできる。手前側アクチュエータ14F、奥側アクチュエータ14Rの動作は、制御回路13が制御する。
【0120】
又、図13に示すように、本実施例では、ニップ前露光装置8として、その長手方向(感光ドラム1の長手方向と略平行)に複数に分割された領域ごとに発光できるLEDランプを使用した。特に、本実施例では、ニップ前露光装置8は、その長手方向に3つに分割された領域ごとに発光できる。この3つ領域を、手前側から奥側にそれぞれ、第1領域8F、第2領域8C、第3領域8Rとする。尚、画像形成時には、ニップ前露光装置8は、第1、第2、第3の領域8F、8C、8Rの全てが点灯する。
【0121】
次に、本実施例におけるニップ前露光調整工程の実施制御及びニップ前露光調整工程の動作制御について説明する。
【0122】
本実施例では、ニップ前露光調整工程の実施制御は、図8を参照して説明した実施例1のものと同じである。即ち、本実施例では、本実施例では、感光ドラム1及び帯電ローラ2の少なくとも一方を画像形成装置10の本体(装置本体)に対して新しく設置した際に、ニップ前露光調整工程を実行した。尚、実施例2と同様に、所定のタイミングでニップ前露光調整工程を実行するようにしてもよい。
【0123】
図14は、本実施例におけるニップ前露光調整工程のフローチャートを示す。
【0124】
図14を参照して、ニップ前露光調整工程が開始されると、制御回路13は、先ず、ニップ前露光装置8の位置を初期位置に設定する(S401)。この初期位置は、限定されるものではないが、ニップ前露光工程においてニップ前露光装置8の角度を変化させる範囲の最大値又は最小値とすることができる。例えば、本実施例では、手前側アクチュエータ14Fが最下位まで下がった位置、奥側アクチュエータ14Rが最上位に上がった位置とする。
【0125】
次に、制御回路13は、所定の帯電バイアス、転写バイアス及びニップ前露光装置8の3つの発光領域のうち第1領域8FのみをONにする(S402)。本実施例では、ニップ前露光調整工程において、帯電処理後(転写ニップに到達する前)の感光ドラム1の表面電位を通常の画像形成時と同じ−500Vとするために、−1100Vの帯電バイアスを印加した。又、ニップ前露光工程において、転写バイアスは+500Vとした。又、ニップ前露光調整工程において、ニップ前露光装置8の光量は7(lx・s)とした。そして、制御回路13は、電流検知回路12によって直流電流値Ifを検出する(S403)。次に、制御回路13は、上記と同じバイアス値の設定で帯電バイアス及び転写バイアスをONとした状態で、ニップ前露光装置8の発光領域を切り替えて、3つの発光領域のうち第2領域8Cのみを上記と同じ発光量の設定でONにする(S404)。そして、制御回路13は、電流検知回路12によって直流電流値Icを検出する(S405)。次に、制御回路13は、上記と同じバイアス値の設定で帯電バイアス及び転写バイアスをONとした状態で、ニップ前露光装置8の発光領域を切り替えて、3つの発光領域のうち第3領域8Rのみを上記と同じ発光量の設定でONにする(S406)。そして、制御回路13は、電流検知回路12によって直流電流値Irを検出する(S407)。
【0126】
尚、ニップ前露光装置8の各発光領域に対応して測定された直流電圧値If、Ic、Irはそれぞれ、制御回路13が備える記憶手段に記憶される。この各発光領域のそれぞれに対応する直流電流値If、Ic、Irは、各発光領域からの光が照射された感光ドラム1の表面に対して放電が生じている間に測定する。
【0127】
次に、制御回路13は、測定された直流電流値If、Ic、Irの標準偏差σが所定値として1.6以内か否かを判断する(S408)。これは、本発明者の鋭意研究の結果、本実施例の画像形成装置10では、上記標準偏差σが1.6以内であれば、上流側ギャップA1とニップ前露光装置8の長手方向の位置精度は良好であることが判明しているからである。但し、この標準偏差の値は、それぞれの画像形成装置の構成などによって適宜設定し得るものである。例えば、If=−59μA、Ic=−60μA、Ir=−58μAの場合、平均値は−59μAとなり、偏差は第1領域8Fでは0、第2領域8Cでは1、第3領域8Rでは−1となり、偏差の二乗の合計は2なる。そして、分散σ2=2/3となり、σ≒0.8となる。この場合は、上流側ギャップA1とニップ前露光装置8の長手方向での位置の差(平行からのずれ)は少ないと判断することができる。
【0128】
次に、制御回路13は、S408において標準偏差σが1.6以内であると判断した場合には、ニップ前露光装置8の位置をその位置に決定する(S409)。その後、制御回路13は、ニップ前露光調整工程を含む前回転工程を終了し、画像形成動作に移行する(図8のS104)。
【0129】
一方、制御回路13は、S408において標準偏差σが1.6より大きいと判断した場合には、照射状態調整手段14の手前側アクチュエータ14F、奥側アクチュエータ14Rによってニップ前露光装置8の位置調整をする(S410)。上流側ギャップA1とニップ前露光装置8の長手方向での位置の差が大きい(平行よりも著しく外れている)と判断できるからである。このとき、本実施例では、手前側アクチュエータ14Fを所定の移動量だけ上方に移動させ、奥側アクチュエータ14Rを所定の移動量だけ下方に移動させる。その後、S408において標準偏差σが1.6以内となるまで、ニップ前露光装置8の位置の変更と、電流検知回路12による直流電流値If、Ic、Irの測定を繰り返す。
【0130】
このように、本実施例では、照射手段8は、感光体1の移動方向と略直交する方向に複数に分割された領域毎に感光体1の表面に光を照射することができる。そして、制御手段13は、分割された領域毎に光を照射した感光体1の表面に放電が生じることで直流電流検知手段12によって検知される各直流電流値の標準偏差が所定の範囲内の値となるように、照射状態調整手段14による照射状態の調整を制御する。
【0131】
以上、本実施例では、ニップ前露光装置8の長手方向の位置のズレを調整し、ニップ前露光Iの照射状態を適切な状態に調整することができる。
【0132】
その他の実施例
以上、本発明を具体的な実施例に則して説明したが、本発明は上述の実施例に限定されるものではない。
【0133】
例えば、実施例1、2では、感光ドラム1の長手方向と略直交する平面に沿う回動方向のニップ前露光装置8の位置ずれ(角度ずれ)を調整し、実施例3では、上流側ギャップとニップ前露光装置8の長手方向の位置ずれ(平行からのずれ)を調整した。この他、実施例1、2と実施例3とを組み合わせて、上記両方向の位置ずれを調整して、ニップ前露光Iの露光状態をより適切に調整できるようにしてもよい。又、実施例3では、照射状態調整手段14は、感光ドラム1の長手方向と略平行であり、且つ、ニップ前露光装置8から上流側ギャップA1に向かう光の方向と交差する方向に沿う平面に沿ってニップ前露光装置8を移動させた。これに換えて又は加えて、照射状態調整手段14が、感光ドラム1の長手方向と略平行であり、且つ、ニップ前露光装置8から上流側ギャップA1に向かう光の方向と略平行な方向に沿う平面に沿ってニップ前露光装置8を移動させるようにしてもよい。
【0134】
又、実施例1、2では、ニップ前露光装置自身の角度を調整していたが、鏡など反射板を用いて、上流側ギャップに対応する感光ドラムの表面に対するニップ前露光の照射角度を調整してもよい。例えば、プロセスカートリッジ内に照射状態調整手段によって角度を調整できる鏡を設置し、プロセスカートリッジ外にLEDランプを設置する。そして、LEDランプからの光を鏡によって反射させて上流側ギャップに照射する構成とする。斯かる構成によれば、プロセスカートリッジの交換の際にLEDランプを交換せずに済み、ランニングコストの低減に有利である。
【0135】
又、実施例2では、ニップ前露光調整工程を実行する所定タイミングを感光ドラムの回転数を指標に設定したが、これに限定されるものではない。感光ドラム以外にも、画像形成枚数、帯電ローラの回転回数、帯電ローラへの帯電バイアスの印加時間など、装置の使用量と相関する任意のパラメータを指標としてニップ前露光調整工程を実行する所定のタイミングを設定することができる。即ち、制御手段13は、照射状態調整手段14による照射状態の調整を前回実行してから所定期間経過したと判断した場合に、照射状態調整手段14による照射状態の調整を実行させることができる。又、画像上に帯電横スジが発生した場合などに、ユーザやサービスマンが任意にニップ前露光調整工程を実行させることができるようにすることも可能である。
【0136】
又、上述の実施例では、ニップ前露光装置、前露光装置にLEDランプを採用したが、これに限定されるものではなく、ヒューズランプからなる光照射装置などの他の露光装置を用いてもよい。又、感光体を透明にして、ニップ前露光装置を感光体の内部に配置して、感光体の内部から上流側ギャップを露光してもよい。
【0137】
又、上述の実施例では、可撓性の接触帯電部材としての帯電ローラを例に挙げて説明した。しかし、上流側ギャップの感光体と帯電部材との間の距離が感光体の移動方向において接触部に近づくに従って徐々に減少し、下流側帯電ギャップの該距離が同方向において接触部から離れるに従って徐々に増加するものであれば本発明を同様に適用できる。このようなものであれば、帯電部材と感光体との間の距離が線形的に減少(又は増加)しても、非線形的に減少(又は増加)しても、上述の実施例と同様の効果が期待できる。例えば、帯電部材として導電性の帯電ベルト21(図18(a)参照)、エッジ部で感光体に当接して感光体を帯電させる導電性のゴムブレード22(図18(b)参照)などを用いてもよい。
【0138】
又、上述の実施例では、帯電部材としての帯電ローラと感光体としての感光ドラムとは接触していたが、微小のギャップを形成して近接させても良い。このような構成においては、感光体と帯電部材との距離は、感光体の移動方向において帯電部材と感光体との最近接位置(最近接部)に向かって徐々に減少し、該最近接位置から遠ざかるにつれて徐々に増加する。
【0139】
又、上述の実施例では、回転可能なドラム形状の感光体を用いたが、感光体としては、移動可能なベルト状の感光ベルトを用いてもよい。このとき、感光ドラムの回転方向上流及び下流と感光ベルトの移動方向上流及び下流はそれぞれ対応するものとする。
【0140】
又、上述の実施例では、画像上に現れる帯電横スジを抑制するために、上流側帯電ギャップにおいて感光ドラムの長手方向の画像形成領域をニップ前露光装置で露光した。しかし、感光ドラムの長手方向の全域を露光してもよい。これにより、小サイズの転写材と大サイズの転写材に対して画像を形成する装置において、小サイズの転写材に画像を形成し続けた時に、感光ドラムの長手方向の削れ量にむらが生じることを抑制することができる。例えば、小サイズの転写材と大サイズの転写材に対して画像を形成する場合、小サイズの転写材に画像を形成するときには大サイズの転写材に画像を形成するときに比べて、短い範囲でニップ前露光を感光体に照射すれば、帯電横スジは抑制できる。しかし、長期にわたり小サイズの画像形成を行った場合、感光体の長手方向においてニップ前露光を照射した部分と照射していない部分では、感光体の削れ量にムラができることがある。このような場合は、感光体の長手方向の全域にニップ前露光を照射する方が良い。
【0141】
又、本発明は、現像装置を用いて現像と同時にクリーニングを行う、所謂クリーナレス構成の画像形成装置における帯電制御回路にも同様の効果を発揮することができる。
【符号の説明】
【0142】
1 感光ドラム(感光体)
2 帯電ローラ(帯電部材)
8 ニップ前露光装置(照射手段)
12 直流電流検知回路
13 制御回路(制御手段)
14 照射状態調整手段
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動可能な感光体と、
前記感光体に接触又は近接して前記感光体を帯電させる帯電部材であって、前記感光体の移動方向において、前記感光体と前記帯電部材との接触部又は最近接位置の上流側に該接触部又は最近接位置に向けて前記感光体との間の距離が徐々に狭くなるギャップを形成し、前記接触部又は前記最近接位置の下流側に該接触部又は最近接位置から遠ざかるにつれて前記感光体との間の距離が徐々に広くなるギャップを形成し、直流電圧が印加されることで前記感光体の表面との間で生じる放電により前記感光体を帯電させる帯電部材と、
前記帯電部材に直流電圧を印加する電源と、
前記上流側のギャップに対応する前記感光体の表面に光を照射する照射手段と、
前記電源から前記帯電部材に直流電圧を印加している際に前記帯電部材と前記感光体との間に流れる直流電流を検知する直流電流検知手段と、
前記照射手段の前記感光体の表面に向けて光を出射する部分の該感光体の表面に対する相対位置を変更して前記照射手段による前記感光体の表面への光の照射状態を調整する照射状態調整手段と、
前記照射手段により光を照射した前記感光体の表面に前記放電が生じることで前記直流電流検知手段によって検知される直流電流値を用いて、前記照射状態調整手段による前記照射状態の調整を制御する制御手段と、
を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記検知される直流電流値が最大値になるように、前記照射状態調整手段による前記照射状態の調整を制御することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記感光体又は前記帯電部材の少なくとも一方が新品であると判断した場合に、前記照射状態調整手段による前記照射状態の調整を実行させることを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記照射状態調整手段による前記照射状態の調整を前回実行してから所定期間経過したと判断した場合に、前記照射状態調整手段による前記照射状態の調整を実行させることを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記照射手段は、前記感光体の移動方向と略直交する方向に複数に分割された領域毎に前記感光体の表面に光を照射することができ、前記制御手段は、前記分割された領域毎に光を照射した前記感光体の表面に前記放電が生じることで前記直流電流検知手段によって検知される各直流電流値の標準偏差が所定の範囲内の値となるように、前記照射状態調整手段による前記照射状態の調整を制御することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項1】
移動可能な感光体と、
前記感光体に接触又は近接して前記感光体を帯電させる帯電部材であって、前記感光体の移動方向において、前記感光体と前記帯電部材との接触部又は最近接位置の上流側に該接触部又は最近接位置に向けて前記感光体との間の距離が徐々に狭くなるギャップを形成し、前記接触部又は前記最近接位置の下流側に該接触部又は最近接位置から遠ざかるにつれて前記感光体との間の距離が徐々に広くなるギャップを形成し、直流電圧が印加されることで前記感光体の表面との間で生じる放電により前記感光体を帯電させる帯電部材と、
前記帯電部材に直流電圧を印加する電源と、
前記上流側のギャップに対応する前記感光体の表面に光を照射する照射手段と、
前記電源から前記帯電部材に直流電圧を印加している際に前記帯電部材と前記感光体との間に流れる直流電流を検知する直流電流検知手段と、
前記照射手段の前記感光体の表面に向けて光を出射する部分の該感光体の表面に対する相対位置を変更して前記照射手段による前記感光体の表面への光の照射状態を調整する照射状態調整手段と、
前記照射手段により光を照射した前記感光体の表面に前記放電が生じることで前記直流電流検知手段によって検知される直流電流値を用いて、前記照射状態調整手段による前記照射状態の調整を制御する制御手段と、
を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記検知される直流電流値が最大値になるように、前記照射状態調整手段による前記照射状態の調整を制御することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記感光体又は前記帯電部材の少なくとも一方が新品であると判断した場合に、前記照射状態調整手段による前記照射状態の調整を実行させることを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記照射状態調整手段による前記照射状態の調整を前回実行してから所定期間経過したと判断した場合に、前記照射状態調整手段による前記照射状態の調整を実行させることを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記照射手段は、前記感光体の移動方向と略直交する方向に複数に分割された領域毎に前記感光体の表面に光を照射することができ、前記制御手段は、前記分割された領域毎に光を照射した前記感光体の表面に前記放電が生じることで前記直流電流検知手段によって検知される各直流電流値の標準偏差が所定の範囲内の値となるように、前記照射状態調整手段による前記照射状態の調整を制御することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2012−163864(P2012−163864A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−25463(P2011−25463)
【出願日】平成23年2月8日(2011.2.8)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月8日(2011.2.8)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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