説明

画像形成装置

【課題】エラーが発生したジョブによって後続のジョブも含め画像形成装置としての印刷動作が止まったままになってしまうことを抑止する。
【解決手段】ジョブ開始時にジョブ全体についての印刷条件を解釈してエラー発生を予見できるか否か判断し、エラー発生が予見できると判断された場合にジョブのデータを記憶領域に蓄積してジョブを終了する手段と、ジョブに含まれる各ページの印刷前に1ページ分のデータを解釈してエラー発生を予見できるか否か判断し、エラー発生が予見できると判断された場合に以降のページの印刷をキャンセルしてジョブのデータを記憶領域に蓄積してジョブを終了する手段と、ジョブに含まれる各ページの印刷中にエラーが発生したか否か判断し、エラーが発生したと判断した場合に以降のページの印刷をキャンセルし、ジョブのデータを記憶領域に蓄積してジョブを終了する手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MFP(Multi Function Printer)、LP(Laser Printer)等の画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
PC(Personal Computer)等のホスト装置からMFP、LP等の画像形成装置にジョブを投入(印刷データを送信)した場合に、例えば、A4サイズの用紙を用いる印刷であるのに、指定したトレイにはA3サイズの用紙しか装填されていない場合、印刷が継続できなくなる。また、ステープル指定をしたのにステープル針がない場合にも同様に印刷が継続できなくなる。
【0003】
このような場合、画像形成装置はエラーを検知して印刷を止めていることをユーザに通知し、ユーザの指示により別のトレイから印刷を継続させたり、ステープル指定を解除させて印刷を継続したりするようにしている。
【0004】
図1は従来の画像形成装置における処理例を示すフローチャートである。
【0005】
図1において、データを受信すると(ステップS1)、ジョブ全体についての印刷条件を解釈し(ステップS2)、1ページ分のデータを解釈して描画する(ステップS3)。
【0006】
次いで、最終ページまで描画したか否か判断し(ステップS4)、描画していない場合は1ページ分のデータ解釈・描画(ステップS3)に戻る。
【0007】
また、1ページ分のデータ解釈・描画(ステップS3)の後、描画したページの印刷を開始し(ステップS5)、印刷中にエラーが発生したかどうか判断する(ステップS6)。
【0008】
印刷中にエラーが発生した場合、エラーの発生をユーザに通知して印刷を停止する(ステップS7)。
【0009】
次いで、ユーザの指示を受け付け(ステップS8)、ユーザからジョブリセットが指示された場合は、それ以降の印刷をキャンセルし、機器にジョブを蓄積してジョブを終了する(ステップS9)。
【0010】
ユーザによりエラー原因の解除(例えば、紙無しエラーであれば紙の補給等)が行われ、あるいはエラーの発生しない条件に変更(例えば、紙無しエラーであれば、エラーの発生したトレイとは別の、用紙のあるトレイから給紙するような条件を指示する等)が行われて、印刷継続が指示された場合は、印刷を再開し(ステップS10)、印刷中のエラー監視(ステップS6)に戻る。
【0011】
印刷中にエラーが発生しなかった場合、用紙を排紙し(ステップS11)、全ページの印刷(排紙)をもってジョブを終了する(ステップS12)。
【0012】
一方、特許文献1には、転写紙枚数の過不足の判断を的確に行なって高生産性を確保するようにした画像形成装置が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上述したように、従来の画像形成装置はエラーを検知して印刷を止めていることをユーザに通知するものであるため、ユーザは画像形成装置の前までやってきて何らかの操作を行わないと、エラーを起こしたジョブだけでなく、後続のジョブも含めてずっと印刷停止したままになってしまうという問題があった。
【0014】
一方、特許文献1は用紙なしには対応できるものの他のエラーには対応できないものであった。
【0015】
本発明は上記の従来の問題点に鑑み提案されたものであり、その目的とするところは、エラーが発生したジョブによって後続のジョブも含め画像形成装置としての印刷動作が止まったままになってしまうことを抑止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記の課題を解決するため、本発明にあっては、ジョブ開始時にジョブ全体についての印刷条件を解釈してエラー発生を予見できるか否か判断し、エラー発生が予見できると判断された場合にジョブのデータを記憶領域に蓄積してジョブを終了する手段と、ジョブに含まれる各ページの印刷前に1ページ分のデータを解釈してエラー発生を予見できるか否か判断し、エラー発生が予見できると判断された場合に以降のページの印刷をキャンセルしてジョブのデータを記憶領域に蓄積してジョブを終了する手段と、ジョブに含まれる各ページの印刷中にエラーが発生したか否か判断し、エラーが発生したと判断した場合に以降のページの印刷をキャンセルし、ジョブのデータを記憶領域に蓄積してジョブを終了する手段とを備えている。
【0017】
また、ジョブ開始時にジョブ全体についての印刷条件を解釈してエラー発生を予見できるか否か判断し、エラー発生が予見できると判断された場合にジョブのデータを記憶領域に蓄積してジョブを終了する手段と、ジョブに含まれる各ページの印刷前に1ページ分のデータを解釈してエラー発生を予見できるか否か判断し、エラー発生が予見できると判断された場合にジョブに含まれるページを1ページでも既に給紙したか否か判断し、既に給紙していないと判断した場合に以降のページの印刷をキャンセルしてジョブのデータを記憶領域に蓄積してジョブを終了する手段と、ジョブに含まれる各ページの印刷中にエラーが発生したか否か判断し、エラーが発生したと判断した場合にジョブに含まれるページを1ページでも既に給紙したか否か判断し、既に給紙していないと判断した場合に以降のページの印刷をキャンセルしてジョブのデータを記憶領域に蓄積してジョブを終了し、既に給紙していると判断した場合にユーザへの通知および印刷停止を行ってユーザ指示に従った処理を行う手段とを備えるようにすることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の画像形成装置にあっては、ジョブ実行時の印刷動作が始まる前に予めそのジョブでエラーが発生しそうかどうかを判定し、エラーが発生することがわかっている場合には印刷をキャンセルし、画像形成装置内にそのジョブを蓄積することで、エラーの発生しない後続のジョブを印刷することができるため、エラーが発生したジョブによって後続のジョブも含め画像形成装置としての印刷動作が止まったままになってしまうことを抑止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】従来の画像形成装置における処理例を示すフローチャートである。
【図2】本発明の一実施形態にかかるシステムの構成例を示す図である。
【図3】第1の処理例を示すフローチャートである。
【図4】第2の処理例を示すフローチャートである。
【図5】第3の処理例を示すフローチャートである。
【図6】第4の処理例を示すフローチャートである。
【図7】第4の処理例で用いられるテーブルのデータ構造例を示す図である。
【図8】第5の処理例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の好適な実施形態につき説明する。
【0021】
<システム構成>
図2は本発明の一実施形態にかかるシステムの構成例を示す図である。
【0022】
図2において、MFP、LP等の画像形成装置1には、LAN(Local Area Network)等のネットワーク2を介してPC、サーバ(Server)等のホスト装置3が接続されている。ホスト装置3は、画像形成装置1に対して印刷のジョブを投入して印刷を指示する。
【0023】
画像形成装置1は、コンピュータハードウェア上で動作するソフトウェア(コンピュータプログラム)によって実現される機能部として、データ受信制御部101とプリンタ制御部103と画像描画部108とメモリ制御部109とエンジン制御部110とを備えている。
【0024】
データ受信制御部101はデータ受信部102を備えている。
【0025】
プリンタ制御部103はジョブ制御部104とページ制御部105とデータ管理部106とデータ解釈部107とを備えている。
【0026】
また、画像形成装置1は、ユーザインタフェース111と、記憶領域112と、エンジン115とを備えている。
【0027】
記憶領域112には、受信データ格納領域113とデータ蓄積領域114とが設けられている。
【0028】
データ受信制御部101は、ホスト装置3からのデータ受信を制御する機能を有している。
【0029】
データ受信部102は、データ受信の処理を行う機能を有している。
【0030】
プリンタ制御部103は、エンジン115による印刷を制御する機能を有している。
【0031】
ジョブ制御部104は、1ページないしは複数ページからなる文書の印刷の単位であるジョブの処理を制御する機能を有している。
【0032】
ページ制御部105は、ジョブに含まれる各ページの処理を制御する機能を有している。
【0033】
データ管理部106は、印刷にかかるデータを管理する機能を有している。
【0034】
データ解釈部107は、データの内容を解釈する機能を有している。
【0035】
画像描画部108は、印刷対象の文書を画像データに展開する機能を有している。
【0036】
メモリ制御部109は、印刷の処理に使用されるメモリの確保・開放等を制御する機能を有している。
【0037】
エンジン制御部110は、エンジン115を制御する機能を有している。
【0038】
ユーザインタフェース111は、コントロールパネル等の入出力デバイスであり、ユーザからの操作入力を受け付け、また、ユーザに情報を通知する機能を有している。
【0039】
記憶領域112は、メモリ、HDD(Hard Disk Drive)等の記憶デバイスである。
【0040】
受信データ格納領域113は、ホスト装置3から受信したデータを格納する領域である。
【0041】
データ蓄積領域114は、印刷を中止したジョブ等のデータを蓄積する領域である。
【0042】
エンジン115は、電子写真印刷等の機構部である。
【0043】
<第1の処理例>
図3は第1の処理例を示すフローチャートであり、エラー検知時に印刷をキャンセルし、ジョブの蓄積を行なうようにしたものである。
【0044】
図3において、データ受信部102がデータを受信すると(ステップS101)、ジョブ制御部104はデータ解釈部107によりジョブ全体についての印刷条件を解釈し(ステップS102)、ジョブ全体についての印刷条件の解釈結果からエラー発生を予見したか否か判断する(ステップS103)。
【0045】
エラー発生を予見した場合、ジョブ制御部104は印刷を行わずにジョブを機器(データ蓄積領域114)に蓄積してジョブを終了する(ステップS104)。当該ジョブの終了により後続のジョブがあればその処理が開始される。
【0046】
また、エラー発生を予見しなかった場合、ジョブ制御部104の制御のもと、ページ制御部105はデータ解釈部107により1ページ分のデータを解釈して画像描画部108により描画し(ステップS105)、1ページ分のデータの解釈・描画結果からエラー発生を予見したか否か判断する(ステップS106)。
【0047】
エラー発生を予見した場合、ジョブ制御部104は当該ジョブのそれ以降の印刷をキャンセルし、ジョブを機器に蓄積してジョブを終了する(ステップS107)。当該ジョブの終了により後続のジョブがあればその処理が開始される。
【0048】
また、エラー発生を予見しなかった場合、ジョブ制御部104は最終ページまで描画したか否か判断し(ステップS108)、最終ページまで描画していない場合は1ページ分のデータ解釈・描画(ステップS105)に戻る。描画されたページ数はプリンタ制御部103内で保持・管理されている。最終ページまで描画した場合は、全ページの印刷を待機する。
【0049】
また、エラー発生を予見しなかった場合、ジョブ制御部104の制御のもと、ページ制御部105は描画したページの印刷を開始し(ステップS109)、印刷中にエラーが発生したかどうか判断する(ステップS110)。
【0050】
印刷中にエラーが発生した場合、ジョブ制御部104は当該ジョブのそれ以降の印刷をキャンセルし、ジョブを機器に蓄積してジョブを終了する(ステップS107)。
【0051】
印刷中にエラーが発生しなかった場合、エンジン115は用紙を排紙し(ステップS111)、全ページの印刷(排紙)をもってジョブ制御部104はジョブを終了する(ステップS112)。当該ジョブの終了により後続のジョブがあればその処理が開始される。
【0052】
なお、ステップS103におけるジョブ全体についての印刷条件を解釈した時点で予見できるエラーとしては、ステープル指定のジョブなのに、画像形成装置がステープル機構を備えていない場合等がある。この例では、印刷条件の中にステープル指定の情報が含まれ、かつ、機器の構成管理情報の中にステープル機能が有効である旨の情報が含まれていない場合はエラーが発生すると判断する。
【0053】
ステップS106における1ページ分のデータを解釈・描画した時点で予見できるエラーとしては、そのページの用紙サイズが給紙トレイに指定されたトレイに格納されている用紙のサイズと異なる場合等がある。この例では、そのページの用紙サイズを指定する情報およびトレイを指定する情報と、機器の管理情報に含まれる指定されたトレイに装填されている用紙サイズの情報とに基づき、指定された用紙のサイズが指定されたトレイに装填されている用紙サイズと一致するか否か判断し、一致しない場合はエラーが発生すると判断する。
【0054】
ステップS110における印刷中のエラーとしては、印刷している途中で用紙の残量が0になる場合等がある。この例では、機器の管理情報が指定されたトレイの用紙の残量が0を示した場合にエラーと判断する。
【0055】
なお、これらのエラーはあくまでも例であり、これらに限定されるものではない。印刷動作を継続できず、印刷を停止せざるをえないようなエラーはすべて対象である。
【0056】
また、エラーの予見または検知によって蓄積されたジョブは、ユーザが能動的に蓄積を指示したジョブと同様に、ユーザインタフェース111を通じて再度印刷を指示することが可能となる。
【0057】
<第2の処理例>
図4は第2の処理例を示すフローチャートであり、原則としてエラー時にジョブを蓄積するが、1ページでも給紙の始まったジョブについては蓄積の対象とせずにエラーで停止するようにしたものである。単純にエラー予見時もしくはエラー検知時にジョブを蓄積してしまう場合、例えば、5ページもののジョブで3ページ分は既に印刷していたときにエラーが発生したような場合、印刷をキャンセルして蓄積を行なうと、不完全な印刷物である3ページ分の用紙だけが残る。この場合、後続のジョブとそれらの3ページが混じってしまい、取り違い等の問題がおこる恐れがあるとともに、蓄積されたジョブを再度実行することで先に印刷された用紙が無駄になることになる。そのため、給紙が始まってしまったジョブについては、エラー時に蓄積を行なわないことで、そのような問題の発生を防止している。
【0058】
図4において、データ受信部102がデータを受信すると(ステップS201)、ジョブ制御部104はデータ解釈部107によりジョブ全体についての印刷条件を解釈し(ステップS202)、ジョブ全体についての印刷条件の解釈結果からエラー発生を予見したか否か判断する(ステップS203)。
【0059】
エラー発生を予見した場合、ジョブ制御部104は印刷を行わずにジョブを機器に蓄積してジョブを終了する(ステップS204)。
【0060】
また、エラー発生を予見しなかった場合、ジョブ制御部104の制御のもと、ページ制御部105はデータ解釈部107により1ページ分のデータを解釈して画像描画部108により描画し(ステップS205)、1ページ分のデータの解釈・描画結果からエラー発生を予見したか否か判断する(ステップS206)。
【0061】
エラー発生を予見した場合、ジョブ制御部104は当該ジョブにつき1ページでも既に給紙したか否か判断する(ステップS207)。給紙されたページ数はプリンタ制御部103もしくはエンジン制御部110内で保持・管理されている。
【0062】
1ページも給紙していない場合、ジョブ制御部104は当該ジョブのそれ以降の印刷をキャンセルし、ジョブを機器に蓄積してジョブを終了する(ステップS208)。
【0063】
また、エラー発生を予見しなかった場合もしくは1ページでも既に給紙している場合、ジョブ制御部104は最終ページまで描画したか否か判断し(ステップS209)、最終ページまで描画していない場合は1ページ分のデータ解釈・描画(ステップS205)に戻る。最終ページまで描画した場合は、全ページの印刷を待機する。
【0064】
また、エラー発生を予見しなかった場合もしくは1ページでも既に給紙している場合、ジョブ制御部104の制御のもと、ページ制御部105は描画したページの印刷を開始し(ステップS210)、印刷中にエラーが発生したかどうか判断する(ステップS211)。
【0065】
印刷中にエラーが発生した場合、ジョブ制御部104は当該ジョブにつき1ページでも既に給紙したか否か判断する(ステップS212)。
【0066】
1ページも給紙していない場合、ジョブ制御部104は当該ジョブのそれ以降の印刷をキャンセルし、ジョブを機器に蓄積してジョブを終了する(ステップS208)。
【0067】
1ページでも既に給紙している場合、ジョブ制御部104はエラーの発生をユーザに通知して印刷を停止する(ステップS213)。
【0068】
次いで、ジョブ制御部104はユーザの指示を受け付け(ステップS214)、ユーザからジョブリセットが指示された場合は、当該ジョブのそれ以降の印刷をキャンセルし、ジョブを機器に蓄積してジョブを終了する(ステップS208)。
【0069】
ユーザによりエラー原因の解除が行われ、あるいはエラーの発生しない条件に変更が行われて、印刷継続が指示された場合は、印刷を再開し(ステップS215)、印刷中のエラー監視(ステップS211)に戻る。
【0070】
印刷中にエラーが発生しなかった場合、エンジン115は用紙を排紙し(ステップS216)、全ページの印刷(排紙)をもってジョブ制御部104はジョブを終了する(ステップS217)。
【0071】
<第3の処理例>
図5は第3の処理例を示すフローチャートであり、全てのページの描画が終わるまで、印刷を開始しないようにしたものである。図4に示した第2の処理例では、1ページでも給紙したジョブについては蓄積を行なわずに印刷を停止している。この第3の処理例では、印刷が停止する可能性をさらに低くするため、予め全てのページの描画が終わるまで印刷を行なわないようにしている。
【0072】
図5において、データ受信部102がデータを受信すると(ステップS301)、ジョブ制御部104はデータ解釈部107によりジョブ全体についての印刷条件を解釈し(ステップS302)、ジョブ全体についての印刷条件の解釈結果からエラー発生を予見したか否か判断する(ステップS303)。
【0073】
エラー発生を予見した場合、ジョブ制御部104は印刷を行わずにジョブを機器に蓄積してジョブを終了する(ステップS304)。
【0074】
また、エラー発生を予見しなかった場合、ジョブ制御部104の制御のもと、ページ制御部105はデータ解釈部107により1ページ分のデータを解釈して画像描画部108により描画し(ステップS305)、1ページ分のデータの解釈・描画結果からエラー発生を予見したか否か判断する(ステップS306)。
【0075】
エラー発生を予見した場合、ジョブ制御部104は当該ジョブのそれ以降の印刷をキャンセルし、ジョブを機器に蓄積してジョブを終了する(ステップS307)。
【0076】
また、エラー発生を予見しなかった場合、ジョブ制御部104は最終ページまで描画したか否か判断し(ステップS308)、最終ページまで描画していない場合は1ページ分のデータ解釈・描画(ステップS305)に戻る。最終ページまで描画した場合は、全ページの印刷を待機する。
【0077】
また、最終ページまで描画した場合、ジョブ制御部104の制御のもと、ページ制御部105は描画したページの印刷を開始し(ステップS309)、印刷中にエラーが発生したかどうか判断する(ステップS310)。
【0078】
印刷中にエラーが発生した場合、ジョブ制御部104は当該ジョブのそれ以降の印刷をキャンセルし、ジョブを機器に蓄積してジョブを終了する(ステップS307)。
【0079】
印刷中にエラーが発生しなかった場合、エンジン115は用紙を排紙し(ステップS311)、全ページの印刷(排紙)をもってジョブ制御部104はジョブを終了する(ステップS312)。
【0080】
なお、本処理例では印刷開始後のエラー発生時は印刷をキャンセルして機器にジョブを蓄積しているが、図4に示した第2の処理例のように、1ページでも給紙後は印刷を停止してユーザの指示を待ってもよい。いずれかの動作に制限するものではない。
【0081】
<第4の処理例>
図6は第4の処理例を示すフローチャートであり、エラーを予見するページ数を全ページではなく、機器に設定された値を用いるようにしたものである。図5に示した第3の処理例では最終ページまで描画が終わるまで印刷を開始せずに待っていたが、この第4の処理例では、全ページの描画だけではなく、予め機器に設定されたページ数に達した場合に印刷を開始するようにしている。図5に示した第3の処理例では全てのページの描画が終わるまで印刷を開始しないため、印刷が停止する可能性を低めることが可能であるが、その分ファーストプリント(ジョブ投入から1ページ目が印刷されるまで)の時間がのびてしまうという短所があった。この第4の処理例では、予め複数のページのエラーを予見するが、全ページではなく、ある程度のページ数に抑えることで、印刷の停止可能性の低減と、ファーストプリント性能の劣化の低減の両立を図っている。
【0082】
図7は第4の処理例で用いられるテーブルのデータ構造例を示す図である。テーブルは、印刷のプロトコルと、そのプロトコルに応じて、エラーを予見するページ数を紐付けたものとなっている。エラーを予見するページ数については、画像形成装置1が固定で持ってもよいし、ユーザがインタフェースを介して任意に設定できてもよいし、あるいは印刷プロトコルに応じて画像形成装置1が自動的に変更してもよい。その指定方法を制限するものではない。また、印刷条件についても同様に、各印刷条件(設定項目と設定値の組み合わせ)と、エラーを予見するページ数を紐付けたテーブルを画像形成装置1内に保持し、印刷時に参照するようにしてもよい。この場合も、エラーを予見するページ数については、画像形成装置1が固定で持ってもよいし、ユーザがインタフェースを介して任意に設定できてもよいし、あるいは印刷条件に応じて画像形成装置1が自動的に変更してもよい。
【0083】
画像形成装置1は、画像形成装置1内に上記のようなテーブルを保持し、印刷を指示された際に、上記テーブルを参照し、自動的にエラーを予見するページ数を切り替える。これにより、印刷順の保証が求められるようなプロトコルでは、ページ数を判断する機能を無効にするが、不特定多数が同時にジョブを画像形成装置1に送るようなオフィス環境で用いられるプロトコルでは、エラーによる印刷の停止の可能性を低減するように、エラーを予見するページ数を大きくするといった制御が可能となる。
【0084】
図6において、データ受信部102がデータを受信すると(ステップS401)、ジョブ制御部104はデータ解釈部107によりジョブ全体についての印刷条件を解釈し(ステップS402)、ジョブ全体についての印刷条件の解釈結果からエラー発生を予見したか否か判断する(ステップS403)。
【0085】
エラー発生を予見した場合、ジョブ制御部104は印刷を行わずにジョブを機器に蓄積してジョブを終了する(ステップS404)。
【0086】
また、エラー発生を予見しなかった場合、ジョブ制御部104の制御のもと、ページ制御部105はデータ解釈部107により1ページ分のデータを解釈して画像描画部108により描画し(ステップS405)、1ページ分のデータの解釈・描画結果からエラー発生を予見したか否か判断する(ステップS406)。
【0087】
エラー発生を予見した場合、ジョブ制御部104は当該ジョブにつき1ページでも既に給紙したか否か判断する(ステップS407)。
【0088】
1ページも給紙していない場合、ジョブ制御部104は当該ジョブのそれ以降の印刷をキャンセルし、ジョブを機器に蓄積してジョブを終了する(ステップS408)。
【0089】
また、エラー発生を予見しなかった場合もしくは1ページでも既に給紙している場合、ジョブ制御部104は図7のテーブルを参照し、エラー発生を予見するページ数分か最終ページまで描画したか否か判断する(ステップS409)。
【0090】
エラー発生を予見するページ数分まで描画しておらず、かつ最終ページまで描画していない場合、1ページ分のデータ解釈・描画(ステップS405)に戻る。
【0091】
エラー発生を予見するページ数分か最終ページまで描画した場合、ジョブ制御部104は最終ページまで描画したか否か判断し(ステップS410)、最終ページまで描画していない場合は1ページ分のデータ解釈・描画(ステップS405)に戻る。最終ページまで描画した場合は、全ページの印刷を待機する。
【0092】
また、エラー発生を予見するページ数分か最終ページまで描画した場合、ジョブ制御部104の制御のもと、ページ制御部105は描画したページの印刷を開始し(ステップS411)、印刷中にエラーが発生したかどうか判断する(ステップS412)。
【0093】
印刷中にエラーが発生した場合、ジョブ制御部104は当該ジョブのそれ以降の印刷をキャンセルし、ジョブを機器に蓄積してジョブを終了する(ステップS408)。
【0094】
印刷中にエラーが発生しなかった場合、エンジン115は用紙を排紙し(ステップS413)、全ページの印刷(排紙)をもってジョブ制御部104はジョブを終了する(ステップS414)。
【0095】
なお、本処理例では印刷開始後のエラー発生時は印刷をキャンセルして機器にジョブを蓄積しているが、図4に示した第2の処理例のように、1ページでも給紙後は印刷を停止してユーザの指示を待ってもよい。いずれかの動作に制限するものではない。
【0096】
<第5の処理例>
図8は第5の処理例を示すフローチャートであり、エラー発生時に画像形成装置1内にジョブを蓄積する際に、[自動で再印刷する時刻]を自動で設定し、時刻経過により自動で印刷するようにしたものである。
【0097】
図8において、ジョブ制御部104はエラーの発生を予見、または印刷中にエラー発生を検知すると(ステップS501)、[自動で再印刷する時刻]を自動的に設定し(ステップS502)、当該ジョブのそれ以降の印刷をキャンセルし、ジョブを機器に蓄積してジョブを終了する(ステップS503)。
【0098】
その後の処理においては、ジョブ制御部104は、システムの時刻情報を参照することで、[自動で再印刷する時刻]を経過したか否か判断し(ステップS511)、[自動で再印刷する時刻]を経過した場合は、蓄積されたジョブの文書(画像データ)を自動的に印刷する(ステップS512)。ここで、自動的な印刷中にエラーが発生した場合は、これまで示した前述した第1〜4の処理例のように、再度印刷をキャンセルして蓄積してもよいし、エラーをユーザに通知して印刷をとめてもよい。
【0099】
なお、本処理例では、[自動で再印刷する時刻]を画像形成装置1が自動的に付与しているが、ユーザが予め機器に[自動で再印刷する時刻]を設定できて、その設定を参照するようにしてもよい。例えば、予め[エラー発生による蓄積から5分後に自動で印刷]や[エラー発生による蓄積から2時間経過で自動で印刷]のように設定することができる。
【0100】
<第6の処理例>
ユーザが画像形成装置の前(近傍)にいることが想定されるジョブについては、エラー無しに印刷可能かどうかの判断を行わず、また、印刷中にエラーが発生した場合には、印刷を停止してユーザに通知するようにすることができる。この場合、ユーザが画像形成装置の側にいる場合にはエラーが起こったとしてもすぐに対応可能である。一方、ユーザが画像形成装置の前にいるのに自動で蓄積してしまうと、ユーザはそのジョブを印刷するためにUIからの指示など、余計な作業が発生する。そのため、ユーザが側にいる場合には自動で蓄積させないことで、余計な作業の発生を防止できる。
【0101】
ユーザが装置の前にいることが想定されるジョブとしては、
・蓄積された画像データの印刷である場合
・メディアに差し込まれたファイルを印刷している場合
・機器の設定情報などを指示している場合
等がある。なお、これらはあくまでも例であり、これらに限定されるものではない。ユーザが画像形成装置の前にいることが容易に推測可能なものについては全て対象とすることができる。
【0102】
上記のジョブであることをジョブ制御部104が検出した場合、エラー予見を行わないモードとし、図1に示した従来と同様の処理を行う。
【0103】
<総括>
以上説明したように、本実施形態によれば、ジョブ実行時の印刷動作が始まる前に予めそのジョブでエラーが発生しそうかどうかを判定し、エラーが発生することがわかっている場合には印刷をキャンセルし、画像形成装置内にそのジョブを蓄積することで、エラーの発生しない後続のジョブを印刷することができるため、エラーが発生したジョブによって後続のジョブも含め画像形成装置としての印刷動作が止まったままになってしまうことを抑止することができる。
【0104】
以上、本発明の好適な実施の形態により本発明を説明した。ここでは特定の具体例を示して本発明を説明したが、特許請求の範囲に定義された本発明の広範な趣旨および範囲から逸脱することなく、これら具体例に様々な修正および変更を加えることができることは明らかである。すなわち、具体例の詳細および添付の図面により本発明が限定されるものと解釈してはならない。
【符号の説明】
【0105】
1 画像形成装置
101 データ受信制御部
102 データ受信部
103 プリンタ制御部
104 ジョブ制御部
105 ページ制御部
106 データ管理部
107 データ解釈部
108 画像描画部
109 メモリ制御部
110 エンジン制御部
111 ユーザインタフェース
112 記憶領域
113 受信データ格納領域
114 データ蓄積領域
115 エンジン
2 ネットワーク
3 ホスト装置
【先行技術文献】
【特許文献】
【0106】
【特許文献1】特開平11−231730号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジョブ開始時にジョブ全体についての印刷条件を解釈してエラー発生を予見できるか否か判断し、エラー発生が予見できると判断された場合にジョブのデータを記憶領域に蓄積してジョブを終了する手段と、
ジョブに含まれる各ページの印刷前に1ページ分のデータを解釈してエラー発生を予見できるか否か判断し、エラー発生が予見できると判断された場合に以降のページの印刷をキャンセルしてジョブのデータを記憶領域に蓄積してジョブを終了する手段と、
ジョブに含まれる各ページの印刷中にエラーが発生したか否か判断し、エラーが発生したと判断した場合に以降のページの印刷をキャンセルし、ジョブのデータを記憶領域に蓄積してジョブを終了する手段と
を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
ジョブ開始時にジョブ全体についての印刷条件を解釈してエラー発生を予見できるか否か判断し、エラー発生が予見できると判断された場合にジョブのデータを記憶領域に蓄積してジョブを終了する手段と、
ジョブに含まれる各ページの印刷前に1ページ分のデータを解釈してエラー発生を予見できるか否か判断し、エラー発生が予見できると判断された場合にジョブに含まれるページを1ページでも既に給紙したか否か判断し、既に給紙していないと判断した場合に以降のページの印刷をキャンセルしてジョブのデータを記憶領域に蓄積してジョブを終了する手段と、
ジョブに含まれる各ページの印刷中にエラーが発生したか否か判断し、エラーが発生したと判断した場合にジョブに含まれるページを1ページでも既に給紙したか否か判断し、既に給紙していないと判断した場合に以降のページの印刷をキャンセルしてジョブのデータを記憶領域に蓄積してジョブを終了し、既に給紙していると判断した場合にユーザへの通知および印刷停止を行ってユーザ指示に従った処理を行う手段と
を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項1または2のいずれか一項に記載の画像形成装置において、
ジョブに含まれる全ページの描画が完了するまで印刷の開始を抑制する手段
を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項1または2のいずれか一項に記載の画像形成装置において、
ジョブに含まれる全ページの描画が完了するまで、もしくは描画が完了したページ数が所定のページ数に達するまで、印刷の開始を抑制する手段
を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項4に記載の画像形成装置において、
前記所定のページ数をユーザに設定させるユーザインタフェース
を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項4に記載の画像形成装置において、
前記所定のページ数をジョブ送信時の印刷プロトコルに応じて決定する、印刷プロトコルとページ数を対応付けたテーブル
を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
請求項4に記載の画像形成装置において、
前記所定のページ数をジョブの印刷条件に応じて決定する、印刷条件とページ数を対応付けたテーブル
を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の画像形成装置において、
ジョブのデータを記憶領域に蓄積してジョブを終了するのに先だって、再印刷する時刻を設定する手段と、
現在時刻が前記再印刷する時刻を経過したか否か判断し、経過したと判断した場合に再印刷を開始する手段と
を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
請求項8に記載の画像形成装置において、
前記再印刷する時刻を予めユーザに設定させるユーザインタフェース
を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか一項に記載の画像形成装置において、
ユーザが当該画像形成装置の近傍に居ることが想定されるジョブである場合に、エラー発生の予見の機能を停止する手段
を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項11】
画像形成装置を構成するコンピュータを、
ジョブ開始時にジョブ全体についての印刷条件を解釈してエラー発生を予見できるか否か判断し、エラー発生が予見できると判断された場合にジョブのデータを記憶領域に蓄積してジョブを終了する手段、
ジョブに含まれる各ページの印刷前に1ページ分のデータを解釈してエラー発生を予見できるか否か判断し、エラー発生が予見できると判断された場合に以降のページの印刷をキャンセルしてジョブのデータを記憶領域に蓄積してジョブを終了する手段、
ジョブに含まれる各ページの印刷中にエラーが発生したか否か判断し、エラーが発生したと判断した場合に以降のページの印刷をキャンセルし、ジョブのデータを記憶領域に蓄積してジョブを終了する手段
として機能させる画像形成制御プログラム。
【請求項12】
画像形成装置を構成するコンピュータを、
ジョブ開始時にジョブ全体についての印刷条件を解釈してエラー発生を予見できるか否か判断し、エラー発生が予見できると判断された場合にジョブのデータを記憶領域に蓄積してジョブを終了する手段、
ジョブに含まれる各ページの印刷前に1ページ分のデータを解釈してエラー発生を予見できるか否か判断し、エラー発生が予見できると判断された場合にジョブに含まれるページを1ページでも既に給紙したか否か判断し、既に給紙していないと判断した場合に以降のページの印刷をキャンセルしてジョブのデータを記憶領域に蓄積してジョブを終了する手段、
ジョブに含まれる各ページの印刷中にエラーが発生したか否か判断し、エラーが発生したと判断した場合にジョブに含まれるページを1ページでも既に給紙したか否か判断し、既に給紙していないと判断した場合に以降のページの印刷をキャンセルしてジョブのデータを記憶領域に蓄積してジョブを終了し、既に給紙していると判断した場合にユーザへの通知および印刷停止を行ってユーザ指示に従った処理を行う手段
として機能させる画像形成制御プログラム。
【請求項13】
請求項11に記載の画像形成制御プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【請求項14】
請求項12に記載の画像形成制御プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−187745(P2012−187745A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−51276(P2011−51276)
【出願日】平成23年3月9日(2011.3.9)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】