説明

画像形成装置

【課題】ローラ形状の現像剤規制部材を用いた場合、その現像剤規制部材と現像剤担持体との接触ニップ部における凝集した現像剤によるベタ画像のカスレを抑制するとともに、接触ニップ部の低圧力により生じる地汚れを抑制して、良好な画像を維持することができる画像形成装置を提供する。
【解決手段】体積平均粒径が6μm以下の一成分現像剤を用い、現像ローラ31に当接して現像ローラ表面に現像剤を供給する供給ローラ33と、現像ローラ31に担持された現像剤の層厚を規制する回転可能な規制ローラ32と、規制ローラ32にDC電圧とAC電圧とを含む規制バイアスを印加する規制バイアス電源37と備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンタ、FAXなどの電子写真方式の画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真方式の画像形成装置では、まず、帯電ローラによって感光体ドラム上を均一に帯電した後、レーザビーム走査光により静電潜像を感光体ドラム上に形成する。そして、静電潜像に応じて現像装置中のトナーにより可視像化する。感光体ドラム上のトナー画像は、感光体ドラムと転写ローラとが対向する転写ニップ部で記録媒体としての転写紙に転写され、転写紙上のトナー画像は定着装置で溶融定着される。ここで、現像装置は、例えば、現像剤担持体としての現像ローラと、現像ローラに非磁性一成分トナー(負極性)を供給する供給ローラと、供給ローラ近傍に容器中のトナーを搬送する撹拌部材と、現像ローラ上のトナー量を規制する現像剤規制部材としての規制ブレードとを有する。現像ローラは感光体ドラムと当接するため、弾性体で形成される場合が多い。また、規制ブレードは、金属薄板のバネ弾性を利用して圧接触されることが多い。現像時には、トナーを現像ローラから感光体ドラム側へ転移させるために、現像バイアス電源により現像ローラに所定電位が供給される。また、現像装置の規制ブレードには、トナーの帯電量を安定化させるために、ブレードバイアス電源が接続される。ブレードバイアス電源は、現像バイアス電源と同電位のもの、各々異なる電位を供給するもの等、各種存在する(特許文献1参照)。例えば、現像ローラには現像バイアス電源から−300Vの電圧が常時供給され、一方の規制現像ブレードにはブレードバイアス電源から−400Vが供給されることで、現像ローラと規制現像ブレード間に約100Vの電位差を生じさせる場合もある。これによって、トナー帯電量の安定化が図られるとともに、感光体ドラムに対向する現像装置開口部からのトナー漏れが改善される。また、規制ブレードに常時ACバイアスを印加する例もある。
【0003】
このような画像形成装置において、例えば、現像ローラとして金属又は樹脂にて構成されたいわゆるハードローラを用いる場合には、上記規制ブレードとしてウレタンゴム等の弾性を有するものが用いられる。一方、現像ローラとして少なくとも表面部がゴムのような弾性を有するいわゆるソフトローラを用いる場合には、規制ブレードとして金属ブレード等が用いられる。
【0004】
しかしながら、いずれの規制ブレードにおいても現像ローラに対して接触押圧させているため、経時で表面が摩耗してしまい、規制ブレードの長寿命化が困難である。また、現像ローラと規制ブレードとの接触部で滞留したトナーが、規制ブレードと回転する現像ローラとの間で発生する摩擦熱により溶融し、接触部にトナー固着を発生させやすい。上記接触部でトナー固着が生ずると、現像ローラ表面に担持したトナーにスジ状の跡が付き、ベタ部を現像したときに白スジが発生してしまうという問題がある。
【0005】
そこで、現像剤規制部材として規制ブレードを用いることによって生じる上記問題点を解決するために、規制ブレードに代えて規制ローラを用いる現像装置が提案されている(特許文献2参照)。規制ローラを現像ローラに接触させることにより、規制ブレードを用いる場合と同等の規制力を発揮させて現像ローラ上に所定層厚のトナー層を形成するものである。この規制ローラは回転させることにより、トナー固着が発生する前に規制ローラ表面の同じ部分が現像ローラに接触押圧されないようにすることができ、規制ローラ表面の偏った摩耗を防止することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、現像剤規制部材として規制ローラを用いた場合、規制ローラの曲率を持った表面が現像ローラ表面に近づいて接触する形状のため、接触ニップ前の空間で粉圧が徐々に上昇する。この粉圧の上昇により、トナーの劣化などで流動状態の低下やトナー間付着力の上昇が発生すると、接触ニップ前にトナー凝集が起こりやすく、そのトナー凝集がトナーの通過を妨げることで、濃度の濃い画像に対してはトナー供給が追いつかず、ベタ画像の後半で徐々にかすれる画像が発生するという問題がある。特に、近年の高画質化、環境負荷を低減させるための低温定着等の流れから、小径化、形状の球形化及び低温定着の可能な重合トナーの採用が増えており、トナーは球形化、小径化の流れとなっている。このため、トナーの流動性は増加する傾向にあるが、同時にトナーが高密に存在できるため、しまりやすくなり、トナー凝集が生じやすい傾向になってきている。
【0007】
また、現像剤規制部材として規制ローラを用いた構成の場合、規制ブレードを用いた構成に比べ、現像ローラとの間のニップ部が広く、両構成で同圧の場合、規制ローラの方が面積あたりの圧力が低くなり、地汚れが発生しやすいという問題もある。
【0008】
本発明は以上の問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、ローラ形状の現像剤規制部材を用いた場合、その現像剤規制部材と現像剤担持体との接触ニップ部における凝集した現像剤によるベタ画像のカスレを抑制するとともに、接触ニップ部の低圧力により生じる地汚れを抑制して、良好な画像を維持することができる画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、像担持体と、前記像担持体に潜像を形成する潜像形成手段と、現像剤担持体に担持された現像剤により前記像担持体上の潜像を現像して顕像化する現像装置と、を備えた画像形成装置であって、前記現像剤として体積平均粒径が6μm以下の一成分現像剤を用い、前記現像剤担持体に当接して該現像剤担持体表面に前記現像剤を供給する現像剤供給部材と、前記現像剤担持体に担持された前記現像剤の層厚を規制する回転可能なローラ形状の現像剤規制部材と、前記現像剤規制部材にDC電圧とAC電圧とを含む規制バイアスを印加する規制バイアス印加手段と、を更に備えたことを特徴とするものである。
また、請求項2の発明は、請求項1の画像形成装置において、前記現像剤担持体へ現像バイアスを印加する現像バイアス印加手段を更に備え、前記現像剤の帯電極性が負極性であり、前記規制バイアスのDC電圧をVdc[V]とし、前記現像バイアスのDC電圧をVb[V]とした場合に、−200[V]≦Vdc−Vb≦−100[V]を満たすことを特徴とするものである。
また、請求項3の発明は、請求項1又は2の画像形成装置において、前記規制バイアスのAC電圧のピーク間電圧をVp−p[V]とした場合に、200[V]≦Vp−p≦400[V]を満たすことを特徴とするものである。
また、請求項4の発明は、請求項1乃至3のいずれかの画像形成装置において、前記規制バイアスのAC電圧の周波数をf[Hz]とした場合に、200[Hz]≦f≦1000[Hz]を満たすことを特徴とするものである。
また、請求項5の発明は、請求項1乃至4のいずれかの画像形成装置において、前記現像剤規制部材は、前記現像剤担持体との対向部において、該現像剤担持体の表面移動方向と反対方向に表面移動するカウンター回転が可能なことを特徴とするものである。
また、請求項6の発明は、請求項5の画像形成装置において、前記現像剤規制部材は、前記対向部に現像剤固着が生じる前の所定のタイミングで前記カウンター回転を行うように駆動されることを特徴とするものである。
また、請求項7の発明は、請求項1乃至6のいずれかの画像形成装置において、前記現像剤規制部材を清掃する現像剤規制部材クリーニング手段を更に備えたことを特徴とするものである。
また、請求項8の発明は、請求項1乃至7のいずれかの画像形成装置において、少なくとも前記像担持体と前記現像装置とが一体に支持されて、当該画像形成装置本体に着脱可能なプロセスカートリッジを備えることを特徴とするものである。
また、請求項9の発明は、請求項6の画像形成装置において、前記現像装置に初期に内封された前記現像剤の量が、100gより多いことを特徴とするものである。
また、請求項10の発明は、請求項6又は9の画像形成装置において、前記現像装置内の現像剤の量が所定量よりも少量になったときに、現像剤を該現像装置に補給する現像剤補給手段を更に備えたことを特徴とするものである。
また、請求項11の発明は、請求項6の画像形成装置において、前記現像剤規制部材は、現像動作時に常時、前記カウンター回転を行うように駆動され、前記現像装置に初期に内封された前記現像剤の量が、100g以下であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ローラ形状の現像剤規制部材にAC電圧を印加することにより、現像剤担持体と現像剤規制部材との接触ニップ部の近傍であって、現像剤担持体と現像剤規制部材との表面移動方向上流側に存在する荷電された現像剤を振動させ、現像剤の凝集を防ぎ、現像剤の凝集によるベタ画像のカスレを抑制することができる。また、現像剤規制部材にDC電圧を印加することにより、その現像剤規制部材と現像剤担持体との間に現像剤が現像剤担持体側に移動するような電圧差を形成して、地汚れの発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施形態に係る画像形成装置の概略構成図。
【図2】プロセスカートリッジの概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るフルカラー画像形成装置(以下、「画像形成装置」という。)の全体概略図である。画像形成装置1は、4つの作像ユニットが並列配置されて、トナー像が転写される中間転写体としての中間転写ベルト61を備えている。画像形成装置1は、上方から、置かれた原稿を自動的に搬送する自動原稿搬送装置(ADF)5、原稿を読み取るスキャナ(読取装置)4、トナー画像を形成する画像形成部3、そして、その下に記録紙等の記録部材9を備え、供給する給紙部2が配置されている。
【0013】
画像形成装置1は、その中央部に画像形成部3が配置されている。画像形成部3では、その内部の略中央に、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の各色トナーに対応した4つの作像ユニット10を水平な横方向に並列に並べたタンデム型に配列している。4つの作像ユニット10Y、10C、10M、10Kの上方には、帯電した各感光体11の表面に各色の画像データに基づいて露光をし、潜像を形成する潜像形成手段としての露光装置12が備えられている。また、4つの作像ユニット10Y、10C、10M、10Kの下方には、ポリイミドやポリアミド等の耐熱性材料からなり、中抵抗に調整された基体からなる無端状ベルトをローラ651〜653に掛け回して支持し、回転駆動する中間転写ベルト61を備える転写装置60を配置している。
【0014】
いずれの作像ユニット10でも同様の構成であるので、この図においては、色の区別に関係ない場合はY、C、M、Kの表示を省略する。各作像ユニット10Y、10C、10M、10Kは、感光体11Y、11C、11M、11Kを有し、各感光体11の周りには、感光体11表面に電荷を与える帯電装置20、感光体11表面に形成された潜像を各色トナーで現像してトナー像とする現像装置30、感光体11表面に、潤滑剤を塗布する図示しない潤滑剤塗布装置、トナー像転写後の感光体11表面のクリーニングをするクリーニングブレードを備えるクリーニング装置40がそれぞれ配置されている。これで、一つの作像ユニット10を形成している。
【0015】
なお、上記作像ユニット10は、プロセスカートリッジとしても機能する。図1に示すように、このプロセスカートリッジ10は、感光体11の周囲に、帯電装置20、現像装置30、クリーニング装置40を配置している。プロセスカートリッジ10は、少なくとも感光体11とその他のプロセス装置を備えていればよく、ここで例示した構成に限定されるものではない。
【0016】
感光体11は、アモロファスシリコーン、セレン等の金属、または、有機感光体であり、ここでは、有機感光体で説明する。有機感光体11としては、導電性支持体上に、フィラー分散した樹脂層、電荷発生層及び電荷輸送層を有する感光層、その表面にフィラーを分散させた保護層を有する。
【0017】
感光層は電荷発生物質と電荷輸送物質とを含む単層構成の感光層でも構わないが、電荷発生層と電荷輸送層で構成される積層型が感度、耐久性において優れている。
【0018】
電荷発生層は、電荷発生能を有する顔料を必要に応じてバインダー樹脂とともに適当な溶剤中にボールミル、アトライター、サンドミル、超音波などを用いて分散し、これを導電性支持体上に塗布し、乾燥することにより形成される。結着樹脂としてはポリアミド、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリケトン、ポリカーボネート、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルケトン、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリアクリルアミド、ポリビニルベンザール、ポリエステル、フェノキシ樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリフェニレンオキシド、ポリイミド、ポリビニルピリジン、セルロース系樹脂、カゼイン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等があげられる。結着樹脂の量は、電荷発生物質100質量部に対し0〜500質量部、好ましくは10〜300質量部が適当である。
【0019】
また、電荷輸送層は、電荷輸送物質及び結着樹脂を適当な溶剤に溶解ないし分散し、これを電荷発生層上に塗布、乾燥することにより形成できる。電荷輸送物質には、正孔輸送物質と電子輸送物質とがある。結着樹脂としてはポリスチレン、スチレン−アクリルニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアレート、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート、酢酸セルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルトルエン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂等の熱可塑性または熱硬化性樹脂が挙げられる。
【0020】
また、保護層が感光層の上に設けられることもある。保護層を設け、耐久性を向上させることによって、本発明の高感度で異常欠陥のない感光体11を有用に用いることができる。
保護層に使用される材料としてはABS樹脂、ACS樹脂、オレフィン−ビニルモノマー共重合体、塩素化ポリエーテル、アリル樹脂、フェノール樹脂、ポリアセタール、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアクリレート、ポリアリルスルホン、ポリブチレン、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエーテルスルホン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、アクリル樹脂、ポリメチルベンテン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニリデン、エポキシ樹脂等の樹脂が挙げられる。中でも、ポリカーボネートもしくはポリアリレートが最も良好に使用できる。保護層にはその他、耐摩耗性を向上する目的でポリテトラフルオロエチレンのような弗素樹脂、シリコーン樹脂、及びこれらの樹脂に酸化チタン、酸化錫、チタン酸カリウム、シリカ等の無機フィラー、また有機フィラーを分散したもの等を添加することができる。保護層中のフィラー濃度は使用するフィラー種により、また感光体11を使用する電子写真プロセス条件によっても異なるが、保護層の最表層側において全固形分に対するフィラーの比で5質量%以上、好ましくは10質量%以上、50質量%以下、好ましくは30質量%以下程度が良好である。
【0021】
帯電装置20は、帯電部材として導電性芯金の外側に中抵抗の弾性層を被覆して構成される帯電ローラ21を備える(図2参照)。帯電ローラ21は、図示しない電源に接続されており、所定の直流電圧(DC)及び/又は交流電圧(AC)が印加される。このイオンを放電する帯電ローラ21は、材質としては弾性樹脂ローラを用いている。また、帯電ローラ21は電気抵抗の調整のために、カーボンブラック等の無機導電材、イオン導電材を含有することがある。
【0022】
また、帯電ローラ21は、感光体11に対して微小な間隙をもって配設される。この微小な間隙は、例えば、帯電ローラ21の両端部の非画像形成領域に一定の厚みを有するスペーサ部材を巻き付けるなどして、スペーサ部材の表面を感光体11表面に当接させることで、設定することができる。また、帯電ローラ21は、感光体11に近接させずに、接触させても良い。ローラ形状であり、感光体11に近接している部分で、放電して、感光体11を帯電させることができる。また、近接させて非接触にすることで、帯電ローラ21の転写残トナーによる汚れの発生を抑えることができる。また、帯電ローラ21には、帯電ローラ21表面に接触してクリーニングする図示しない帯電クリーナローラが設けられている。
【0023】
現像装置30は、感光体11と対向する位置に配置されている。なお、現像装置30に関しては、後述する。
【0024】
クリーニング装置40は、クリーニングブレード41が感光体11と当接・離間する機構を備え、画像形成装置本体の制御部にて、任意に当接・離間させることができる。クリーニングブレード41をカウンター方式で、感光体11に当接し、これによって、感光体11上に残留するトナー、汚れとして付着している記録部材のタルク、カオリン、炭酸カルシウム等の添剤を感光体11から除去してクリーニングする。除去したトナー等は、廃トナー回収コイル22で、図示しない廃トナー容器に搬送し、貯留する。
【0025】
転写装置60は、トナー像が積層される中間転写ベルト61、感光体11上のトナー像を中間転写ベルト61に転写・積層させる一次転写ローラ62、積層されたトナー像を記録部材9に転写する二次転写ローラ63等を備えている。さらに、転写装置60は、二次転写ローラ63に対向する部分で、中間転写ベルト61の内側には、対向部材としての支持ローラ653を設けている。
【0026】
中間転写ベルト61を挟んで、各感光体11と対向する位置には、感光体11上に形成されたトナー像を中間転写ベルト61上に一次転写する一次転写ローラ62がそれぞれ配置されている。一次転写ローラ62は、図示しない電源に接続されており、所定の直流電圧(DC)及び/又は交流電圧(AC)が印加される。印加する電圧の極性としては、トナーの電荷の極性とは逆の極性で、感光体11から中間転写ベルト61側に引き寄せ移行させることで、一次転写する。また、この一次転写ローラ62は電気抵抗の調整のために、カーボンブラック等の無機導電材、イオン導電材を含有させ、半導電性にすることが好ましい。一次転写ローラ62の抵抗値が異なっていても転写効率はほとんど変わらないが、画像面積比が異なると転写効率は大きく異なってくるため、安定して転写効率を維持できない。これは、転写ニップ部においてトナーが介在しない部分に電流が優先的に流れてしまう結果、画像面積比が小さい場合には転写電圧値が低くなって転写に必要な電界が十分得られなくなるためである。特に、一次転写ローラ62の抵抗値が低い場合には転写部に介在するトナーの抵抗値の影響が大きくなるため、一次転写ローラ62の抵抗値が低い場合ほど顕著になる。このように定電流制御を採用する場合には一次転写ローラ62として抵抗値の高いものを使用することが望まれる。
【0027】
また、中間転写ベルト61に積層されたトナー像は、二次転写ローラ63で記録部材9に二次転写される。二次転写ローラ63には、一次転写ローラ62と同様に、図示しない電源に接続されており、所定の直流電圧(DC)及び/又は交流電圧(AC)が印加される。印加する電圧の極性としては、トナーの電荷の極性とは逆の極性で、中間転写ベルト61から、搬送されてきた記録部材側に引き寄せ移行させることで、二次転写する。
【0028】
また、中間転写ベルト61には、二次転写後の中間転写ベルト61の表面をクリーニングする中間転写ベルトクリーニング装置64が設けられている。中間転写ベルトクリーニング装置64は、クリーニングローラ等の回転部材642と、この回転部材642を中間転写ベルト61と当接・離間する機構とを備え、画像形成装置1本体の制御部にて、任意に当接・離間させることができる。回転部材642を中間転写ベルト61に当接し、これによって、中間転写ベルト61上に残留するトナー、汚れとして付着している記録部材9の添剤を中間転写ベルト61から除去してクリーニングする。除去したトナー等は、図示しない容器に貯留する。
【0029】
さらに、この画像形成装置1には、中間転写ベルト61に潤滑剤を塗布する図示しない潤滑剤塗布装置が設けられている。潤滑剤塗布装置は、回転しながら削り取った潤滑剤を中間転写ベルト61表面に塗布する。なお、同様の機能を有する潤滑剤塗布装置を感光体11に対して配設してもよい。
【0030】
本実施形態においては、固形潤滑剤としては、乾燥した固体疎水性潤滑剤を用いることが可能であり、ステアリン酸亜鉛の他にも、ステアリン酸、オレイン酸、パルチミン酸等の脂肪酸基を有する金属化合物なども使用できる。さらに、キャンデリラワックス、カルナウバワックス、ライスワックス、木ろう、オオバ油、みつろう、ラノリンなどのワックス等も使用できる。
【0031】
転写装置60の下方には、記録部材9上のトナー像を記録部材9に半永久的に定着させる定着装置70が備えられている。定着装置70は、図示しないが、主に、内部にハロゲンヒータを有する定着ローラと、これに対向し、圧接して配置される加圧ローラとから構成されている。定着装置70は、フルカラーとモノクロ画像、あるいは片面か両面かにより定着条件を制御したり、用紙の種類に応じて最適な定着条件となるよう、不図示の制御手段により制御される。
【0032】
画像形成動作は、まず、負荷電極性の感光体11に対し、露光装置12のレーザビームにより各感光体11の表面に形成された色毎の静電潜像が形成される。次に、現像装置30で、感光体11の帯電極性と同極性(負極性)の所定の色のトナーで現像され、顕像となる反転現像がおこなわれる。このときに、無端状の中間転写ベルト61が、複数のローラ651〜653により支持されて、感光体11Y、11C、11M、11Kの下部に設けられて、各感光体11Y、11C、11M、11Kの現像工程後の一部が接触するように張架、配置されて、走行している。また、中間転写ベルト61には、各感光体11Y、11C、11M、11Kに形成されたトナー画像を1次転写ローラ62Y、62C、62M、62Kで、中間転写ベルト61上に転写され、トナー画像が重ねられて、未定着の画像が形成される。中間転写ベルト61の外周部には、クリーニングバックアップローラを兼ねるローラ652に対向する位置にベルトクリーニング装置64が設けられている。このベルトクリーニング装置64は、中間転写ベルト61の表面に残留する不要なトナーや、紙粉などの異物を拭い去る。さらに、中間転写ベルト61の外周で、支持ローラ653の対向する位置には、二次転写ローラ63が設けてある。中間転写ベルト61と2次転写ローラ63との間に記録部材9を通過させながら、二次転写ローラ63にバイアスを印加することで中間転写ベルト61が担持するトナー画像が記録部材9に転写される。二次転写ローラ63に印加される転写電圧の極性は、トナーの極性と逆のプラス極性である。これらの中間転写ベルト61に関連する部材は、中間転写ベルト61とともに転写装置60として一体的に構成してあり、画像形成装置1に対し着脱が可能となっている。
【0033】
画像形成装置1の下側には記録部材9を供給可能に収納した給紙カセット81を備える給紙装置80が配備されている。この給紙カセット81から、確実に記録部材9の一枚だけが搬送ローラ82によりレジストローラ84に送られる。さらに、二次転写ローラ63を通過した記録部材9は、搬送方向下流に備えられた定着装置70まで搬送される。定着後の記録部材9は、排紙ローラ85により、画像形成装置1の外に設けた排紙トレイ86に排紙、スタックさせる。
【0034】
図2は、本実施形態の画像形成装置1に用いるプロセスカートリッジ10の構成を示した概略図である。このプロセスカートリッジ10は、感光体11の周囲に、帯電装置20、現像装置30、クリーニング装置40を配置している。プロセスカートリッジ10は、少なくとも感光体11とその他のプロセス装置を備えていればよい。上部に配置される露光装置12から照射されたレーザ光Lによって、感光体11上に潜像が形成される。帯電装置20及びクリーニング装置40については、上述したので説明を省略する。なお、このほかに、フッ素樹脂、シリコーン樹脂等の樹脂、及びステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム等のステアリン酸金属化合物を潤滑剤として感光体11上に塗布する潤滑剤塗布装置を併せて設けても良い
【0035】
現像装置30は、現像剤を収納するトナー収納部36と、感光体11に対向し現像剤により感光体11上の潜像を現像する現像ローラ31とを有している。また、トナー収納部36には、現像剤を現像剤担持体である現像ローラ31に供給する現像剤供給部材である供給ローラ33と、トナー収容部36内に設けられた現像剤攪拌部材である攪拌ローラ34とが設けられている。さらに、現像剤規制部材としての規制ローラ32と、現像剤規制部材クリーニング手段としてのクリーニングブレード39と、入り口シール321とが設けられている。なお、トナー収納部36にトナーを補給する現像剤補給手段としてのトナーボトルやトナー搬送機構等を設けて、トナー収納部36内のトナーが所定量を下回ったときに新たなトナーを補給するように構成してもよい。
【0036】
上記現像ローラ31は、直径φ6mmの芯金に直径φ12mmの導電ウレタンで構成されており、体積抵抗5×10Ω・cm以上のやや高抵抗の弾性体を用いた現像ローラ31を使用している。上記供給ローラ33は、直径φ10mmのカーボンにより導電化された発泡ウレタン材で構成されている。上記規制ローラ32は、直径φ6mmの芯金に直径φ12mmのSUS304で構成させており、圧力をかけて現像ローラ31に接触し、規制バイアス印加手段としての規制バイアス電源37により、現像ローラ31からみてマイナスの電圧のDC電圧とAC電圧とを印加している。上記入り口シール321は、1×10Ω・cm〜1×10Ω・cmの体積抵抗の導電性のPTFEで構成されており、現像ローラ31に対して同電位となっており、現像ローラ31上のトナーを除電して現像槽に戻す役割をしている。
【0037】
画像形成装置1の画像形成速度は20ppmであり、感光体ドラム11の感光体線速は120mm/sである。また、現像ローラ31は、感光体ドラム11に対して線速比1.4で、現像ニップ部において同方向に表面移動するように回転している。さらに、供給ローラ33は、現像ローラ31に対して線速比1.0で、接触ニップ部において互いに反対方向に表面移動するようにカウンター回転している。
【0038】
なお、本実施形態の現像装置30では一成分現像剤を用いている。一成分現像剤としては、磁性トナー、非磁性トナーのどちらを用いてもよい。カラー画像を形成する本実施形態の画像形成装置1では、非磁性トナーが好ましい。なお、本実施形態では、負極性に帯電されるトナーを用いているが、正極性に帯電されるトナーを用いてもよい。正極性に帯電されるトナーを用いる場合は、それに応じて、感光体11の帯電極性、現像ローラ31に印加する現像バイアスの極性、規制ローラ32に印加する規制バイアスの極性等が変更設定される。
【0039】
また、本実施形態では、トナーは体積平均粒径が6μmで、結着樹脂としてポリエステル樹脂による粉砕トナーを用いている。
【0040】
上記粉砕トナーは、例えば次の組成のトナー材料で製造した。
ポリエステル樹脂A(軟化点131℃、AV値25)・・・68部
ポリエステル樹脂B(軟化点116℃、AV値1.9)・・・32部
シアンのマスターバッチ(Pigment Blue15:3を50部含有)・・・8部
カルナウバワックス・・・8部
【0041】
上記トナー材料をヘンシェルミキサーで十分混合した後、二軸押出し混練機(PCM−30:株式会社池貝製)の排出部を取り外したものを使用して、溶融混練し、得られた混合物を冷却プレスローラで厚さ2mmに圧延し、冷却ベルトで冷却した後、フェザーミルで粗粉砕した。その後、機械式粉砕機(KTM:川崎重工業株式会社製)で平均粒径10〜12μmまで粉砕し、さらに、ジェット粉砕機(IDS:日本ニューマチック工業株式会社製)で粗粉分級しながら粉砕した後、微粉分級をロータ型分級機(ティープレックス型分級機タイプ100ATP:ホソカワミクロン株式会社製)を使用して分級を行い、体積平均粒径7.9μm、平均円形度0.910のトナー母体Aを得た。このトナー母体A100部に対して、シリカ(RX200)1部を添加し、ヘンシェルミキサーで周速40m/sec、5分間混合処理して、トナーを作成した。
【0042】
上記粉砕トナーのほかに、重合法により生成される重合トナーを用いてもよい。
略球形の形状を持つトナーを用いると、粉砕トナーを用いたときよりも駆動トルクがかなり低下することがわかったので、トナーの球形度合いと駆動トルクの相関を測定することを試みた。
トナーの球形度合いを円形度という数値で表す。円形度の定義は、トナーの個々の粒子を平面に投影したときの(投影面積の等しい相当円の周囲長/個々の粒子の周囲長)の値である。円形度が1.0であれば真の円形となる。円形度は次のような方法で測定を行なう。
【0043】
粒子を含む懸濁液を平板上の撮像部検知帯に通過させ、CCDカメラで光学的に粒子画像を検知し、解析する光学的検知帯の手法が適当である。この円形度の値はフロー式粒子像分析装置FPIA-1000(東亜医用電子株式会社製)により平均円形度として計測できる。具体的な測定方法としては、容器中の予め不純固形物を除去した水100〜150ml中に分散剤として界面活性剤、好ましくはアルキルベンゼンスフォン酸塩を0.1〜0.5ml加え、更に測定試料を0.1〜0.5g程度加える。試料を分散した懸濁液は超音波分散器で約1〜3分間分散処理を行ない、分散液濃度を3000〜1万個/μlとして前記装置によりトナーの形状及び分布を測定することによって得られる。なお、トナーは8〜9μmの粉砕トナーと、重合法で作られる、円形度0.98、粒径6μ、ポリエステル表面、スチレンアクリル表面の重合トナーを使用した。
【0044】
次に、上記画像形成装置1により、現像装置30の規制ローラ32への規制バイアスの大きさ等を異ならせて画像形成を行った画像評価実験について説明する。
【0045】
まず、規制ローラ32に印加するAC電圧の周波数変更によるトナー供給不良の改善性についての実験を行った。
【0046】
表1は、規制バイアスについて、印加するAC電圧を固定し、周波数を異ならせた実験条件と判断基準とを示す表であり、表2は、この実験結果を示す表である。
【表1】

【表2】

【0047】
上記表1に示す実験条件、すなわち、トナー収容部36にトナーを100g充填し、規制バイアスのAC電圧(ピーク間電圧Vp−p)を200V固定で、その周波数fを異ならせた場合について、NN環境(常温常湿(25℃,50%RH)環境)で1%チャート、1枚間欠で耐久1000枚の画像形成を行った後に、ベタ画像を形成して、その画像を評価した。
【0048】
なお、規制ローラ32に印加するDC電圧をVdc[V]とした場合、
−200[V]≦Vdc≦−100[V]
の範囲内でVdcを設定し、本実験及び以下の各実験を行った。
【0049】
表2に示す実験結果より、周波数が100Hzの低周波数ではトナーの振動が足りないため、ベタ画像後端で抜けがうっすら確認された。また、周波数が1100Hzの高周波数ではトナーの振動に対する応答速度を超えてしまうため、100Hzのときと同様に、ベタ画像後端で抜けがうっすら確認された。AC電圧を印加しない場合についても実験を行ったが、ベタ画像でカスレが確認された。一方、周波数が200Hz,500Hz,1000Hzでは、ベタ画像全面に濃度変化がなく良好であった。
【0050】
上記実験結果によれば、規制ローラ32に印加するAC電圧の周波数が200Hz〜1000Hzの範囲であれば、トナーの凝集緩和に適切であり、トナー供給不足が改善することがわかった。
なお、表1および表2には示されていないが、規制ローラ32に印加するAC電圧の波形を正弦波から短形波に変化させたところ、正弦波よりも短形波により近い方がトナーの振動がよくトナーの凝集緩和に良好であることもわかった。
【0051】
次に、規制ローラ32に印加するAC電圧のピーク間電圧値の変更によるトナー供給不良の改善性についての実験を行った。
【0052】
表3は、規制ローラ32に印加する規制バイアスについて、そのAC電圧の周波数を固定し、ピーク間電圧を異ならせた実験条件と判断基準とを示す表であり、表4は、この実験結果を示す表である。
【表3】

【表4】

【0053】
上記表3に示す実験条件、すなわち、トナー収容部36にトナーを100g充填し、規制バイアスのAC電圧の周波数を500Hz固定で、AC電圧のピーク間電圧Vp−pを異ならせた場合について、NN環境で1%チャート、1枚間欠で耐久1000枚の画像形成を行った後に、ベタ画像を形成して、その画像を評価した。
【0054】
表4に示す実験結果より、AC電圧(ピーク間電圧Vp−p)が100Vではトナーの振動が足りず、ベタ画像でカスレが確認された。また、AC電圧(ピーク間電圧Vp−p)が500Vではトナー薄層が壊れてしまうため、100Vのときと同様に、ベタ画像でカスレが確認された。AC電圧を印加しない場合についても実験を行ったが、ベタ画像でカスレが確認された。一方、AC電圧(ピーク間電圧Vp−p)が200V,300V,400Vでは、ベタ画像全面に濃度変化がなく良好であった。
【0055】
上記実験結果によれば、規制ローラ32に印加するAC電圧(ピーク間電圧Vp−p)が200V〜400Vの範囲であれば、トナーの凝集緩和に適切であり、トナー供給不足が改善することがわかった。
【0056】
さらに、規制ローラ32と現像ローラ31との電圧差による地汚れの改善性についての実験を行った。
【0057】
表5は、印加するAC電圧の電圧と周波数とを固定し、規制ローラ32に対する現像ローラの電圧差を異ならせた実験条件と判断基準とを示す表であり、表6は、この実験結果を示す表である。ここで、規制ローラ32に印加するDC電圧をVdc[V]とし、現像ローラ32に印加する現像バイアスをVb[V]とした場合、上記規制ローラ32に対する現像ローラ32の電圧差は、Vdc−Vbで表される。
【表5】

【表6】

【0058】
上記表5に示す実験条件、すなわち、トナー収容部36にトナーを100g充填し、規制バイアスのAC電圧(ピーク間電圧Vp−p)が200Vで、その周波数が500Hzで、規制ローラ32に対する現像ローラの電圧差(Vdc−Vb)を異ならせた場合について、NN環境で1%チャート、1枚間欠で耐久1000枚の画像形成を行った後に、ベタ画像を形成して、その画像を評価した。
【0059】
上記表6に示す実験結果より、規制ローラ32に対する現像ローラ31の電圧差(Vdc−Vb)が0Vの場合には、感光体ドラム11上の地汚れトナーが目視で確認された。また、規制ローラ32に対する現像ローラ31の電圧差が−300Vの場合にも、感光体ドラム11上の地汚れトナーが目視で確認できた。一方、規制ローラ32に対する現像ローラ31の電圧差(Vdc−Vb)が−100Vと、−200Vとの場合には感光体ドラム11上の地汚れトナーを目視で確認できなかった。
【0060】
上記実験結果によれば、規制ローラ32に対する現像ローラ31の電圧差(Vdc−Vb)が−100V〜−200Vの範囲であれば、地汚れが改善されることがわかった。
【0061】
上記3つの実験結果から、現像ローラ31に印加するDC電圧をVb[V]、規制ローラ32に印加するDC電圧をVdc[V]、ACバイアスのピーク間電圧をVp−p[V]、AC電圧の周波数をf[Hz]とした場合、
−200[V]≦Vdc−Vb≦−100[V]
200[V]≦Vp−p≦400[V]
200[Hz]≦f≦1000[Hz]
と設定することにより、トナーの供給不良や地汚れが抑制され、良好な画像を得ることができる。
【0062】
なお、上記規制バイアスのAC電圧の最大電圧値をVmax[V]、最小電圧値をVmin[V]とした場合、
200[V]≦Vmax−Vdc≦400[V]
−400[V]≦Vmin−Vdc≦−200[V]
と設定してもよい。
【0063】
なお、上記3つの実験では、規制ローラ32を現像ローラ31に対して常時カウンター回転させて実験を行ったが、規制ローラ32の回転を停止させておき、規制ローラ32へのトナー固着が発生する前の所定のタイミングで規制ローラ32を回転させる構成としてもよい。この構成では、トナー固着による白スジ画像を回避できるが、トナー消費が多い画像が印字された場合、トナーの入れ代わりが大きく、WAXなどの固着発生物質を含む微粉などが多く通過し、トナー固着が発生しやすくなる。このため印字画像に応じて、規制ローラ32の回転タイミングを制御してもよい。規制ローラ32の回転方向は、現像ローラ31との接触ニップ部で表面移動方向が互いに反対方向となるカウンター回転する。この回転方向であればトナーの規制ニップ通過によるトナー噴出しを防止できる。
【0064】
規制ローラ32を常時カウンター回転させておく構成では、回転のオンオフ制御をせずにトナー固着を確実に防ぐことができる。しかし、規制ローラ32を常時カウンター回転させる場合、現像ローラ31と規制ローラ32との間で常にトナーに高いストレスをかけることとなる。このように高いストレスがかかった状態で、トナーが繰返し使用されるため、トナーが劣化して割れてしまい、固着発生原因物質としての微粉を生み出し、固着の発生しやすい状態となり逆効果となってしまう。
【0065】
そこで、最適な規制ローラ回転条件を得るために次の表7及び8に示すように、規制ローラ回転頻度による固着発生確認実験を行った。
【表7】

【表8】

【0066】
上記表7に示す実験条件、すなわち、トナー収容部36にトナーを100g充填し、規制バイアスのAC電圧が200V(ピーク間電圧Vp−p)及び周波数が500Hzで、規制ローラ32に対する現像ローラ31の電圧差が−200Vで、規制ローラ32を常時カウンタ回転させた場合について、NN環境で1%チャート、1枚間欠で耐久1000枚の画像形成を行った後に、ベタ画像を形成して、その画像を評価した。
また、表8に示す実験条件、すなわち、トナー収容部36にトナーを200g充填し、規制バイアスのAC電圧が200V(ピーク間電圧Vp−p)及び周波数が500Hzで、規制ローラ32に対する現像ローラ31の電圧差(Vdc−Vb)が−200Vで、規制ローラ32を75枚印字毎に15°カウンタ回転させた場合について、NN環境で1%チャート、1枚間欠で耐久1000枚の画像形成を行った後に、ベタ画像を形成して、その画像を評価した。
【0067】
上記実験条件による結果、現像装置内のトナーが初期100g以下であるものについて常時カウンター回転を行った場合、トナーの劣化より先にトナー残量の減少により画像印字が不可能になることが判明した。また、現像装置内のトナーが初期100gより多いもの(表8では200g)についても、規制ローラ32を50〜75枚(表8では75枚)の画像印字毎に15°カウンタ回転させることによりトナーの劣化を抑制しつつ固着発生を抑制できることが判明した。上記実験は体積平均粒径6μmの重合トナーを使用したが、粒径5μmの重合トナーや、粒径6μmの粉砕トナーでも同様の傾向が得られた。
【0068】
以上、本実施形態によれば、画像形成装置1は、像担持体としての感光体11と、感光体11に潜像を形成する潜像形成手段としての露光装置12と、現像剤担持体としての現像ローラ31に担持された現像剤としてのトナーにより感光体11上の潜像を現像して顕像化する現像装置30と、を備えている。また、画像形成装置1は、前記トナーとして体積平均粒径が6μm以下の一成分現像剤を用い、現像ローラ31に当接して現像ローラ30表面に前記トナーを供給する現像剤供給部材としての供給ローラ33と、現像ローラ31に担持された前記トナーの層厚を規制する回転可能なローラ形状の現像剤規制部材としての規制ローラ32と、規制ローラ32にDC電圧とAC電圧とを含む規制バイアスを印加する規制バイアス印加手段としての規制バイアス電源37と、を更に備えている。この画像形成装置1では、規制バイアス電源37により規制ローラ32にAC電圧を印加することにより、現像ローラ31と規制ローラ32との接触ニップ部の近傍であって、現像ローラ31と規制ローラ32との表面移動方向上流側に存在する荷電されたトナーを振動させ、トナーの凝集を防ぎ、トナーの凝集によるベタ画像のカスレを抑制することができる。また、規制ローラ32にDC電圧を印加することにより、その規制ローラ32と現像ローラ31との間にトナーが現像ローラ31側に移動するような電圧差を形成して、地汚れの発生を抑制することができる。
また、本実施形態によれば、現像ローラ31へ現像バイアスを印加する現像バイアス印加手段としての現像バイアス電源38を更に備えており、前記規制バイアスのDC電圧をVdc[V]とし、前記現像バイアスのDC電圧をVb[V]とした場合に、−200[V]≦Vdc−Vb≦−100[V]を満たす。本実施形態の実験結果によれば、規制ローラ32に対する現像ローラ31の電圧差(Vdc−Vb)が0Vの場合には、感光体ドラム11上の地汚れトナーが目視で確認された。また、上記電圧差が−300Vの場合にも、感光体ドラム11上の地汚れトナーが目視で確認できた。これに対して、規制ローラ32に対する現像ローラ31の電圧差(Vdc−Vb)が−100V及び−200Vそれぞれの場合には感光体ドラム11上の地汚れトナーを目視で確認できなかった。よって、規制ローラ32に対する現像ローラ31の電圧差(Vdc−Vb)が−100V〜−200Vの範囲であれば、地汚れが改善される。
また、本実施形態によれば、規制バイアス電源37のAC電圧のピーク間電圧をVp−pとした場合に、200[V]≦Vp−p≦400[V]を満たす。本実施形態の実験結果によれば、AC電圧が100V(ピーク間電圧Vp−p)ではトナーの振動が足りず、ベタ画像でカスレが確認された。また、AC電圧が500V(ピーク間電圧Vp−p)ではトナー薄層が壊れてしまうため、ベタ画像でカスレが確認された。一方、AC電圧が200V〜400V(ピーク間電圧Vp−p)であれば、ベタ画像のカスレが確認されなかった。よって、規制ローラ32に印加されるAC電圧のピーク間電圧Vp−p[V]が200V〜400Vの範囲であれば、トナーの凝集緩和に適切であり、トナー供給不足が改善する。
また、本実施形態によれば、規制バイアス電源37のAC電圧の周波数をf[Hz]とした場合に、200[Hz]≦f≦1000[Hz]を満たす。本実施形態の実験結果によれば、規制ローラ32に印加するAC電圧の周波数が100Hzの低周波数ではトナーの振動が足りないため、ベタ画像後端で抜けがうっすら確認された。また、周波数が1100Hzの高周波数ではトナーの振動に対する応答速度を超えてしまうため、ベタ画像後端で抜けがうっすら確認された。一方、周波数が200Hz〜1000Hzの範囲では、ベタ画像全面に濃度変化がなく良好であった。よって、規制ローラ32に印加するAC電圧の周波数が200Hz〜1000Hzの範囲であれば、トナーの凝集緩和に適切である。
また、本実施形態によれば、規制ローラ32は、現像ローラ31との対向部において、現像ローラ31の表面移動方向と反対方向に表面移動するカウンター回転が可能である。現像ローラ31表面に担持したトナーを反対方向に表面移動する規制部材31で規制してトナー薄層を形成する。このとき、規制ローラ32表面のトナーを規制する部分が回転移動するので、仮にトナーが固着したとしても、固着したトナーが上記対向部に留まることがない。
また、本実施形態によれば、規制ローラ32は、前記対向部にトナー固着が生じる前の所定のタイミングでカウンター回転する。規制ローラ32の回転を停止しておくと上記対向部でトナーが固着するおそれがあるが、トナーの固着が生じる前の所定のタイミングで規制ローラ32を回転させることにより、トナー固着を防止することができる。また、規制ローラ32を常時回転させておく場合に比べ、トナーへのストレスを低減でき、トナー寿命を延ばすことが可能になる。
また、本実施形態によれば、規制ローラ32を清掃する現像剤規制部材クリーニング手段としてのクリーニングブレード39を更に備えた。これにより、規制ローラ32表面に付着したトナー等を除去してその性能を維持することができる。
また、本実施形態によれば、少なくとも感光体11と現像装置30とが一体に支持されて、画像形成装置本体1に着脱可能なプロセスカートリッジ10を備える。よって、プロセスカートリッジ10の交換によって、容易にメンテナンスを行うことができる。
また、本実施形態によれば、現像装置30に初期に内封されたトナーの量が、100gより多い。規制ローラ32によるトナーに対するストレスが小さいので、トナーが劣化して割れることを防ぐことができる。
また、本実施形態によれば、現像装置30内のトナーの量が所定量よりも少量になったときに、トナーを現像装置30に補給する現像剤補給手段としてのトナーボトルやトナー搬送機構等を更に備えた。よって、トナーボトルやトナー搬送機構等を設けない場合に比べて、画像形成装置1へのトナーの補給頻度を低減させることができる。
また、本実施形態によれば、現像装置30に初期に内封されたトナーの量が、100g以下である。規制ローラ32を常時回転させておくとトナーにストレスがかかり劣化して割れるおそれがあるが、実験により、現像装置30内のトナー量が100g以下であれば、劣化して割れる前に画像形成で消費されるので、画像のかすれ等の異常画像を防ぐことができる。
【符号の説明】
【0069】
1 画像形成装置
2 給紙装置
3 画像形成部
4 スキャナ部
5 原稿自動搬送装置(ADF)
9 記録部材
10 作像ユニット(プロセスカートリッジ)
11 感光体
12 露光装置
20 帯電装置
23 2次転写ローラ
24 搬送ベルト
30 現像装置
31 現像ローラ
32 規制ローラ
33 供給ローラ
34 攪拌ローラ
36 トナー収納部
37 規制バイアス電源
38 現像バイアス電源
39 クリーニングブレード
40 (感光体)クリーニング装置
60 転写装置
61 中間転写ベルト
62 1次転写ローラ
63 2次転写ローラ
64 ベルトクリーニング装置
70 定着装置
80 給紙装置
【先行技術文献】
【特許文献】
【0070】
【特許文献1】特開2010−20168号公報
【特許文献2】特開2006−259469号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
像担持体と、
前記像担持体に潜像を形成する潜像形成手段と、
現像剤担持体に担持された現像剤により前記像担持体上の潜像を現像して顕像化する現像装置と、を備えた画像形成装置であって、
前記現像剤として体積平均粒径が6μm以下の一成分現像剤を用い、
前記現像剤担持体に当接して該現像剤担持体表面に前記現像剤を供給する現像剤供給部材と、
前記現像剤担持体に担持された前記現像剤の層厚を規制する回転可能なローラ形状の現像剤規制部材と、
前記現像剤規制部材にDC電圧とAC電圧とを含む規制バイアスを印加する規制バイアス印加手段と、を更に備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1の画像形成装置において、
前記現像剤担持体へ現像バイアスを印加する現像バイアス印加手段を更に備え、
前記現像剤の帯電極性が負極性であり、
前記規制バイアスのDC電圧をVdc[V]とし、
前記現像バイアスのDC電圧をVb[V]とした場合に、
−200[V]≦Vdc−Vb≦−100[V]
満たすことを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項1又は2の画像形成装置において、
前記規制バイアスのAC電圧のピーク間電圧をVp−p[V]とした場合に、
200[V]≦Vp−p≦400[V]
を満たすことを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかの画像形成装置において、
前記規制バイアスのAC電圧の周波数をf[Hz]とした場合に、
200[Hz]≦f≦1000[Hz]
を満たすことを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかの画像形成装置において、
前記現像剤規制部材は、前記現像剤担持体との対向部において、該現像剤担持体の表面移動方向と反対方向に表面移動するカウンター回転が可能なことを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項5の画像形成装置において、
前記現像剤規制部材は、前記対向部に現像剤固着が生じる前の所定のタイミングで前記カウンター回転を行うように駆動されることを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかの画像形成装置において、
前記現像剤規制部材を清掃する現像剤規制部材クリーニング手段を更に備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかの画像形成装置において、
少なくとも前記像担持体と前記現像装置とが一体に支持されて、当該画像形成装置本体に着脱可能なプロセスカートリッジを備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
請求項6の画像形成装置において、
前記現像装置に初期に内封された前記現像剤の量が、100gより多いことを特徴とする画像形成装置。
【請求項10】
請求項6又は9の画像形成装置において、
前記現像装置内の現像剤の量が所定量よりも少量になったときに、現像剤を該現像装置に補給する現像剤補給手段を更に備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項11】
請求項6の画像形成装置において、
前記現像剤規制部材は、現像動作時に常時、前記カウンター回転を行うように駆動され、
前記現像装置に初期に内封された前記現像剤の量が、100g以下であることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−194205(P2012−194205A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−55939(P2011−55939)
【出願日】平成23年3月14日(2011.3.14)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】