説明

画像形成装置

【課題】簡易な処理で色再現性のよい多色刷り版画用の下絵を形成する。
【解決手段】入力したRGBの画像データをプリンターが有するLUTを用いてCMYKの印刷データに変換し(S110)、変換した印刷データの左右を反転してCMYKの多色下絵データを生成して(S140)、生成したCMYKの多色下絵データから各インク色の値をそれぞれ抽出すると共に抽出したインク色以外のインク色を一律にドットなしの値とすることによりCMYKのインク色毎に単色データをそれぞれ生成する(S170)。そして、生成した単色データのうちCMYの単色データにおいて各インク色をそれぞれKと入れ替えた単色データとKの単色データDとに基づいて単色の下絵画像をそれぞれ印刷するから(S220)、簡易な処理で再現性のよい下絵を印刷することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数色のインクを吐出して画像を形成する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の画像形成装置としては、多色刷りの木版画を行なうために、その木版画の対象となる画像の左右を反転させて作成した下絵を多色刷りの色毎に用紙に印刷する装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この装置では、木版画の対象となる画像のうちぼかしや滲みなどの複雑な技術が必要な部分については、和紙などのシートに装置から直接印刷し、それ以外の部分については、多色刷りの色毎に単色の下絵画像を作成して版木を用いた多色刷りを行なうものとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−246910号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した装置では、多色刷りの色毎に単色の下絵画像を印刷することは記載されてれているものの、木版画の対象となる画像から単色の下絵画像にデータを変換するための具体的な手法は開示されていない。ここで、そのような手法としては、通常は、特殊な画像処理ソフトを用いたり、画像の色から多色刷りに対応した色に変換させる専用のテーブルを予めメモリに記憶したりしておくことが考えられるが、これらは新たな機能の追加やメモリ容量の追加などが必要となってしまい、コスト面でも不利となる。
【0005】
本発明の画像形成装置は、カラー画像から簡易な処理で色再現性のよい単色画像を形成することを主目的とする。
【0006】
本発明の画像形成装置は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の画像形成装置は、
複数色のインクを吐出して画像を形成する画像形成装置であって、
カラー画像を入力するカラー画像入力手段と、
前記入力されたカラー画像の左右を反転させた画像に対応する前記複数色のインクのデータのうち、各インク色の値をそれぞれ抽出した単色データをインク色毎に生成する単色データ生成手段と、
前記生成されたインク色毎の単色データに基づいて媒体に単色画像をそれぞれ形成する単色画像形成手段と
を備えることを要旨とする。
【0008】
この本発明の画像形成装置では、入力されたカラー画像の左右を反転させた画像に対応する複数色のインクのデータのうち、各インク色の値をそれぞれ抽出した単色データをインク色毎に生成し、生成したインク色毎の単色データに基づいて媒体に単色画像をそれぞれ形成する。このように、カラー画像から画像形成装置が有するインク色に対応する単色データを生成して単色画像を形成するから、簡易な処理で単色データを生成して色再現性のよい単色画像を形成することができる。
【0009】
前記複数色のインクとして黒インクを含む本発明の画像形成装置であって、前記単色データ生成手段は、前記インク色毎の単色データにおける各インク色をそれぞれ黒インクと入れ替えた単色データをインク色毎に生成する手段であり、前記単色画像形成手段は、前記インク色毎の単色データとして前記入れ替え後の単色データを用いて単色画像を形成する手段であるものとすることもできる。こうすれば、カラー画像をインク色毎の単色データとしても、黒インクによりコントラストを強調した単色画像を形成することができる。
【0010】
また、この態様の本発明の画像形成装置において、前記単色データ生成手段は、前記黒インクと入れ替えた単色データを生成する際に、入れ替え前のインク色をユーザーが識別可能な識別マークを付す手段であるものとすることもできる。こうすれば、各単色画像をすべて黒インクで形成した場合に、各単色画像の混同を防止することができる。さらに、この態様の本発明の画像形成装置において、前記単色データ生成手段は、前記識別マークの形成に必要とされる領域を前記単色データ上の全範囲に亘ってシフトさせると共に該シフトさせる度に前記領域内に含まれるインク色の値に基づいてインクの吐出量を算出し、該算出したインクの吐出量が最小となる箇所に前記識別マークを付す手段であるものとすることもできる。こうすれば、識別マークが単色画像に重なるのを防止することができる。そして、この態様の本発明の画像形成装置において、前記単色データ生成手段は、前記インクの吐出量を算出する度に所定量と比較して、該所定量以下となる箇所を検出した場合には、前記単色データ上の全範囲に亘るシフトを終了させて前記検出した箇所に前記識別マークを付す手段であるものとすることもできる。こうすれば、識別マークを形成する箇所を迅速に決定することができる。
【0011】
そして、これらの態様の本発明の画像形成装置において、前記単色画像形成手段は、前記複数色のインク毎に、前記単色データに基づく単色画像と、前記入れ替え後の単色データに基づく単色画像とをそれぞれ形成する手段であるものとすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】マルチファンクションプリンター20の構成の概略を示す構成図。
【図2】下絵印刷処理ルーチンの一例を示すフローチャート。
【図3】完成イメージと多色下絵イメージと単色下絵イメージの一例を示す説明図。
【図4】インク色識別マークの印字領域設定処理の一例を示すフローチャート。
【図5】インク色識別マークを付して印刷された単色下絵の一例を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。図1は、本発明の一実施形態であるマルチファンクションプリンター20の構成の概略を示す構成図である。本実施形態のマルチファンクションプリンター20は、図1に示すように、筐体21と、筐体21の上面を開閉可能な筐体カバー22とにより構成されている。このマルチファンクションプリンター20は、カセット23内にセットされている用紙を給紙し印刷して排紙トレイ24に排紙するプリンターユニット40と、原稿を光学的に読み取ってイメージデータを生成するスキャナーユニット50と、メモリーカードスロット44aに挿入されたメモリーカードMCとの間でデータの入出力を司るメモリーカードコントローラー44と、ユーザーによる各種操作が可能な操作パネル60と、装置全体の制御を司るメインコントローラー90とを備える。
【0014】
プリンターユニット40は、プリンターASIC41とプリンター機構42とを備える。プリンターASIC41は、プリンター機構42を制御する集積回路であり、メインコントローラー90から印刷指令を受けると、印刷指令の対象となる画像データに基づいて用紙に画像を印刷するようプリンター機構42を制御する。また、プリンター機構42は、印刷ヘッドから用紙Sへシアン(C),マゼンタ(M),イエロー(Y),ブラック(K)の各色のインクを吐出することにより印刷を行なう周知のインクジェット方式のカラープリンター機構として構成されている。
【0015】
スキャナーユニット50は、スキャナーASIC51と、スキャナー機構52とを備える。スキャナーASIC51は、スキャナー機構52を制御する集積回路であり、メインコントローラー90からのスキャン指令を受けると、図示しない原稿台に載置された原稿をイメージデータとして読み取るようスキャナー機構52を制御する。また、スキャナー機構52は、周知のイメージスキャナーとして構成され、原稿に向かって発光した後の反射光をレッド(R)、グリーン(G)、ブルー(B)の各色に分解して画像データとする周知のカラーイメージセンサーを備えている。
【0016】
メモリーカードコントローラー44は、筐体21の図1中右下に配置されたメモリーカードスロット44aに挿入されたメモリーカードMCとの間でデータの入出力を行なうものである。このメモリカードコントローラー44は、メモリカードスロット44aにメモリーカードMCが挿入されているときに、メモリーカードMCに保存されている画像データを読み出してメインコントローラー90に送信したりメインコントローラー90からの命令を入力し該命令に基づいてメモリーカードMCにデータを書き込んだりする。
【0017】
操作パネル60は、筐体21の中央に配置された表示部61と、この表示部61の左隣に配置された電源ボタン62とを備える。表示部61は、タッチパネル式の液晶ディスプレイとして構成されており、モードを選択するモードボタンや各種項目の選択・設定を行なう選択・設定ボタン,コピーや印刷を開始するスタートボタンなどを表示して、タッチ操作を受付可能となっている。ここで、モード選択ボタンにより選択可能なモードとしては、原稿をスキャンしてコピーするコピーモードや原稿をスキャンしデータ化してメモリーカードMCに保存するスキャンモード,メモリーカードMCに記憶された画像を用いて用紙に印刷する印刷モードの他、写真やイラストなどをスキャンした画像やメモリーカードMCに記憶された画像から塗り絵用に輪郭だけを抜き出して用紙に印刷する塗り絵印刷モード,写真やイラストなどをスキャンした画像やメモリーカードMCに記憶された画像から版画用に画像の左右を反転させた下絵を転写シートに印刷する版画下絵印刷モードなどがある。
【0018】
メインコントローラー90は、CPU92を中心とするマイクロプロセッサーとして構成されており、各種処理プログラムや各種データ、各種テーブルなどを記憶したROM94と、一時的にスキャンデータや印刷データを記憶するRAM96と、操作パネル60との通信を可能とするインターフェース(I/F)98とを備える。このメインコントローラー90は、プリンターユニット40やスキャナーユニット50からの各種動作信号や各種検出信号を入力したり、操作パネル60のタッチ操作などに応じて発生する操作信号を入力したりする。また、メモリーカードMCから画像ファイルを読み出してメインコントローラー90へ出力する指令をメモリーカードコントローラー44に出力したり、画像データの印刷を実行するようプリンターユニット40に指令を出力したり、操作パネル60からのスキャン指令に基づいて図示しない原稿台に載置された原稿を画像データとして読み取るようスキャナーユニット50に指令を出力したり、操作パネル60に表示部61の制御指令を出力したりする。なお、本実施例における画像データは、縦横のマトリックス状に画素が配置され、画素の各値が濃淡に応じて8ビット(256階調)で表されたRGBデータとする。
【0019】
次に、こうして構成された本実施形態のマルチファンクションプリンター20の動作、特に、版画下絵印刷モードが選択された際の動作について説明する。図2は、メインコントローラー90により実行される下絵印刷処理ルーチンの一例を示すフローチャートであり、図3は、下絵印刷処理ルーチンで印刷される完成イメージと多色下絵イメージと単色下絵イメージの一例を示す説明図である。ここで、下絵印刷処理ルーチンは、例えば、モード選択ボタンにより版画下絵印刷モードが選択され、下絵対象の画像の入力元としてスキャン(スキャナーユニット50)が指定されたときかメモリーカードMCが指定されて画像が選択されたときに実行される。なお、実施例の版画下絵印刷モードでは、複数の色毎に作成した版木に各色をそれぞれ塗布して複数の版の刷り重ねにより版画を製作する、いわゆる多版多色刷りの版画に用いられる下絵を印刷するものとして説明する。
【0020】
この下絵印刷処理ルーチンが実行されると、メインコントローラー90のCPU92は、まず、画像データ(上述したように、8ビットのRGBデータ)を入力する(ステップS100)。ここで、画像データの入力は、入力元としてスキャンが指定されているときにはスキャナーユニット50によりスキャンされた画像データを入力し、入力元としてメモリーカードMCが指定されて画像が選択されているときには選択された画像データをメモリーカードコントローラー44を介して入力する。次に、入力した画像データをCMYKデータへの色変換処理やハーフトーン処理などを行なって印刷データに変換する(ステップS110)。なお、色変換処理は、入力した8ビットのRGBデータを予めROM94に記憶され通常の印刷に用いられる図示しない色変換ルックアップテーブル(LUT)を参照して8ビットのCMYKデータに変換することにより行なわれる。また、こうして変換された8ビット(256階調)のCMYKデータをディザ法などを用いたハーフトーン処理によりドットを形成するための2ビット(4階調)のCMYKデータに変換することで印刷データを生成する。この2ビットのCMYKデータは、CMYKの各色について、大ドット,中ドット,小ドット,ドットなしの計4段階のデータとして設定される。なお、これらの処理は、通常の印刷時と同様な処理である。こうして印刷データに変換すると、完成イメージの印刷指示があるか否かを判定する(ステップS120)。ここで、完成イメージは、実際に多色刷りを行なったときに形成される版画のイメージを示すものであり、表示部61に表示される図示しない設定画面に対してユーザーがタッチ操作を行なうことにより完成イメージの印刷指示を設定できるものとした。ステップS120で完成イメージの印刷指示があるときには、生成した印刷データに基づいて完成イメージを用紙に印刷する(ステップS130)。ここで、完成イメージの一例を図3(a)に示す。
【0021】
こうして完成イメージを印刷したとき、あるいは、ステップS120で完成イメージの印刷指示がないときには、版画用の下絵を印刷するために、印刷データ(画像)の左右を反転してCMYKデータの多色下絵データを生成する(ステップS140)。多色下絵データを生成すると、多色下絵イメージの印刷指示があるか否かを判定する(ステップS150)。この多色下絵イメージの印刷指示は、上述した完成イメージの印刷指示と同様に、ユーザーの表示部61へのタッチ操作によりなされるものとした。多色下絵イメージの印刷指示があるときには、左右を反転した多色下絵データに基づいて多色下絵イメージを印刷する(ステップS160)。ここで、多色下絵イメージの一例を図3(b)に示す。図示するように、完成イメージの左右を反転させた画像が印刷される。
【0022】
こうして多色下絵イメージを印刷したとき、あるいは、ステップS150で多色下絵イメージの印刷指示がないときには、CMYKデータとしての多色下絵データからシアン(C),マゼンタ(M),イエロー(Y),ブラック(K)の各インク色のデータをそれぞれ抽出して各インク色の単色データD(シアン(C)の単色データD(C),マゼンタ(M)の単色データD(M),イエロー(Y)の単色データD(Y),ブラック(K)の単色データD(K))をそれぞれ生成する(ステップS170)。例えば、単色データD(C)を生成する際には、多色下絵データから該当するインク色であるシアン(C)の値のみが抽出される。上述したように、多色下絵データは、2ビットのCMYKデータであるから、抽出されるシアン(C)の値は、シアン(C)についての大ドット,中ドット,小ドット,ドットなしを示すものとなる。そして、残りのインク色であるマゼンタ(M),イエロー(Y),ブラック(K)に一律にドットなしの値を定めることにより、単色データD(C)を生成することができる。同様に、単色データD(M),D(Y),D(K)についても、それぞれ該当するインク色の値のみを多色下絵データから抽出すると共に残りのインク色の値を一律にドットなしとすることにより生成することができる。即ち、各インク色の単色データDは、それぞれ通常のCMYKデータと同様に扱うことができるものであることがわかる。こうして、各インク色の単色データDを生成すると、単色下絵イメージの印刷指示があるか否かを判定する(ステップS180)。この単色下絵イメージの印刷指示は、上述した完成イメージの印刷指示や多色下絵イメージの印刷指示と同様になされるものとした。単色下絵イメージの印刷指示があるときには、単色データD(C),D(M),D(Y),D(K)に基づいて各インク色の単色下絵イメージをそれぞれ印刷する(ステップS190)。ここで、単色下絵イメージの一例を図3(c)に示す。図示するように、各インク色毎の下絵イメージが計4枚印刷されることになる。なお、単色データは、上述したように、各インク色の単色データDは通常のCMYKデータと同様に扱うことができるものであるから、単色下絵イメージの印刷は完成イメージの印刷などの通常の印刷と同様に処理することができる。
【0023】
こうして単色下絵イメージを印刷したとき、あるいは、ステップS180で単色下絵イメージの印刷指示がないときには、各単色データDのインク色をそれぞれブラック(K)と入れ替えた単色データD(K←C),D(K←M),D(K←Y)をそれぞれ生成する(ステップS200)。ここで、単色データD(C)に対しては、ブラック(K)の値をシアン(C)の値にすると共にシアン(C)の値をブラック(K)の値であるドットなしにすることにより、シアン(C)とブラック(K)とを入れ替えた単色データD(K←C)を生成する。同様に、単色データD(M)におけるマゼンタ(M)とブラック(K)とを入れ替えて単色データD(K←M)を生成し、単色データD(Y)におけるイエロー(Y)とブラック(K)とを入れ替えて単色データD(K←Y)を生成する。そして、各インク色とブラック(K)とを入れ替えた単色データを生成すると、入れ替え後の単色データにおいて元のインク色を識別するためのインク色識別マークを印字するための印字領域設定処理を行なって(ステップS210)、各単色データに対してそれぞれ設定された印字領域にインク色識別マークを付して単色下絵の印刷を行なって(ステップS220)、本処理を終了する。これにより、マルチファンクションプリンター20が有するインク色(CMYK)毎に下絵を印刷することができる。本実施形態では、そのような下絵を印刷するための単色データを、専用の色変換LUTや特殊なソフトウェアを用意することなく、マルチファンクションプリンター20が通常の印刷に用いる色変換LUTを用いて作成するから、簡易な処理で再現性のよい下絵を印刷することができる。また、このような版画の下絵をすべてブラック(K)のインクで印刷するのはコントラストを強調するためであるが、すべてブラック(K)のインクで印刷した場合の各色の下絵を混同を防ぐためにインク色識別マークを付すのである。なお、単色データD(K)については、他のインク色の単色データD(C),D(M),D(Y)とは異なり、ブラック(K)との入れ替えが行なわれることはないが、混同を防ぐためインク色識別マークを付すものとした。次に、インク色識別マークの印字領域設定処理について説明する。図4は、インク色識別マークの印字領域設定処理の一例を示すフローチャートである。なお、本実施例では、インク色識別マークとして、各インク色を示す「C」,「M」,「Y」,「K」を用いるものとした。
【0024】
インク色識別マークの印字領域設定処理が実行されると、まず、処理対象の単色データDを読み込む(ステップS300)。この処理では、単色データD(K←C),D(K←M),D(K←Y),D(K)が処理対象とされ、各単色データを一つずつ順に読み込んで処理を行なうものとした。また、単色データDの左上隅を原点とするXY座標系を定めて、読み込まれる単色データDの画像サイズを幅(X方向)Dw×高さ(Y方向)Dhとする。次に、処理対象の位置を定める処理位置C(Cx,Cy)とインク吐出量Fの最小値である最小吐出量Fminとをそれぞれ初期化する(ステップS310)。ここで、処理位置Cの初期化は、XY座標系の原点位置から処理が開始されるよう処理位置CのX座標値Cx,Y座標値Cyをいずれも値0(原点)にすることにより行なわれる。また、インク吐出量Fについては後述するが、最小吐出量Fminの初期化はインク吐出量Fが取り得る値のうちの最大値とすることにより行なわれる。
【0025】
次に、処理位置C(Cx,Cy)を左上隅の位置とする領域A(幅Aw×高さAh)内のインク吐出量Fを算出する(ステップS320)。ここで、領域Aは、インク色識別マークの印字に必要なサイズとして予め定められた領域であり、インク吐出量Fは、領域A内の画像を印刷した際のインクの吐出量である。上述したように、各単色データDはドットサイズを示すものであるため、領域A内に含まれる大ドット,中ドット,小ドットの数をそれぞれカウントし、カウントした各ドットの数と予め定められた各ドットのインクの吐出量とをそれぞれ乗じた和として、インク吐出量Fを算出するものとした。こうして領域A内のインク吐出量Fを算出すると、算出したインク吐出量Fが所定の閾値Fref以上であるか否かを判定する(ステップS330)。ここで、ここで、所定の閾値Frefとしては、該当するインク色を用いた印刷がほとんどなされない余白相当部分に領域Aがある場合のインクの吐出量を予め算出して設定しておくものとした。ステップS330でインク吐出量Fが所定の閾値Fref以上のときには、今回の処理で算出したインク吐出量Fが最小吐出量Fmin以上であるか否かを判定する(ステップS340)。ここで、上述したように、最小吐出量Fminは、初期化によりその取り得る値の最大値が設定されており、最大値としては領域A内にすべて大ドットを吐出した場合のインクの吐出量が定められるものとした。ステップS340でインク吐出量Fが最小吐出量Fmin以上でないとき即ち今回算出したインク吐出量Fが最小吐出量Fminよりも小さいときには、今回算出したインク吐出量Fを最小吐出量Fminに設定し(ステップS350)、今回の処理位置Cを保持して(ステップS360)、次の処理に進む。これにより、インク吐出量Fが最小吐出量Fminとなる領域Aの基準位置である処理位置C(Cx,Cy)が保持されることになる。
【0026】
こうして今回の処理位置C(Cx,Cy)を保持したとき、あるいは、ステップS340でインク吐出量Fが最小吐出量Fmin以上のときには、現在の処理位置CのX座標値Cxが画像幅Dwから領域Aの幅Awを減じたものに一致するか否かを判定する(ステップS370)。一致しないときには、現在のX座標値Cxに所定値aを加えることにより新たなX座標値Cxに更新する(ステップS380)。ここで、所定値aとしては、例えば、領域Aの幅Awずつ処理位置Cが右側にシフトするように値Awを用いるものなどとすればよい。次に、更新したX座標値Cxに領域Aの幅Awを加えたものが画像幅Dwを超えるか否かを判定し(ステップS390)、超えないときには、ステップS320に戻り処理を繰り返す。こうした処理を繰り返す度に処理位置Cが右側にシフトされ、ステップS390でX座標値Cxに領域Aの幅Awを加えたものが画像幅Dwを超えると判定したときには、X座標値Cxが画像幅Dwから領域Aの幅Awを減じたものになるようX座標値Cxを調整して(ステップS400)、ステップS320に戻り処理を繰り返す。即ち、X座標値Cxに領域Aの幅Awを加えると画像幅Dwを超える場合には、領域Aの右端が画像の右端に一致するようX座標値Cxを調整するのである。こうしてX座標値Cxを調整したとき、あるいは、調整することなく領域Aの右端が画像の右端に一致しているときには、次にステップS370の処理が行なわれたときにX座標値Cxは画像幅Dwから領域Aの幅Awを減じたものに一致すると判定して、X座標値Cxを値0に初期化する(ステップS410)。
【0027】
こうしてX座標Cxを初期化すると、現在の処理位置CのY座標値Cyが画像高さDhから領域Aの高さAhを減じたものに一致するか否かを判定する(ステップS420)。一致しないときには、現在のY座標値Cyに所定値bを加えることにより新たなY座標値Cyに更新する(ステップS430)。ここで、所定値bとしては、領域Aの高さAhずつ処理位置Cが下側にシフトするように値Ahを用いるものなどとすればよい。Y座標値Cyを更新すると、更新したY座標値Cyに領域Aの高さAhを加えたものが画像高さDhを超えるか否かを判定し(ステップS440)、超えないときには、ステップS320に戻り処理を繰り返す。一方、超えるときには、Y座標値Cyが画像高さDhから領域Aの高さAhを減じたものになるようY座標値Cyを調整して(ステップS450)、ステップS320に戻り処理を繰り返す。即ち、Y座標値Cyに領域Aの高さAhを加えると画像高さDhを超える場合には、領域Aの下端が画像の下端に一致するようY座標値Cyを調整するのである。こうしてY座標値Cyを調整したとき、あるいは、調整することなく領域Aの下端が画像の下端に一致しているときには、次にステップS410でX座標値Cxが初期化されたときには続くステップS420でY座標値Cyが画像高さDhから領域Aの高さAhを減じたものに一致すると判定する。この場合には、処理対象の単色データDのすべての領域に対する処理が完了しており、最小吐出量Fminに対応して保持されている処理位置C(Cx,Cy)を基準とする領域Aが処理対象の単色データDにおいて最もインク吐出量Fが少ない箇所と判断することができ、保持されている処理位置C(Cx,Cy)を基準とする領域Aを処理対象の単色データDについてのインク色識別マークの印字領域に設定して(ステップS460)、次の処理に進む。
【0028】
一方、ステップS330で、インク吐出量Fが所定の閾値Fref未満のときには、現在の処理位置C(Cx,Cy)を基準とする領域Aを処理対象の単色データDについてのインク色識別マークの印字領域に設定して(ステップS470)、次の処理に進む。これにより、インク色識別マークの印字領域を、該当するインク色の余白相当部分に設定することができるから、インク色識別マークを印刷した場合に下絵に重なるのを防止することができる。また、対象となる処理対象の単色データDの全範囲に亘ってインク吐出量Fを算出しなくてもインク色識別マークの印字領域に設定できる場合があるから、インク色識別マークの印字領域を迅速に決定することができる。
【0029】
このようにして、保持されている処理位置Cを基準とする領域Aを印字領域に設定したとき、あるいは、インク吐出量Fが所定の閾値Fref未満となったときの処理位置Cを基準とする領域Aを印字領域に設定したときには、すべてのインク色についてインク色識別マークの印字領域の設定が完了しているか否かを判定する(ステップS480)。そして、完了していないインク色があるときには、ステップS300に戻り処理を繰り返し、すべてのインク色についての設定が完了しているときには、そのまま本処理を終了する。これにより、上述した下絵印刷処理ルーチンにおいて、下絵の余白相当部分あるいは最もインク吐出量Fの少ない部分にインク色識別マークを付して単色下絵を印刷することができる。ここで、図5は、インク色識別マークを付して印刷された単色下絵の一例を示す説明図である。図示するように、インク色識別マークを付して各色の下絵画像が印刷されているため、各インク色をブラック(K)と入れ替えた単色データDに基づいて下絵を印刷した場合であっても下絵が混同するのを防止することができる。これにより、下絵の混同を防止しつつ下絵のコントラストを強調させることができるから、下絵を用いて版木を製作する際に作業性が低下するのを防止することができる。もとより、本実施形態では、マルチファンクションプリンター20が有するCMYKの各インク色に対象画像を分解した下絵を印刷するものであり、特にイエロー(Y)などは視認性が低下するおそれがあるが、ブラック(K)と入れ替えることによって、そのような視認性の低下を防止して版木を製作する際の作業性を向上させることができるのである。また、インク色識別マークは、下絵の余白相当部分あるいは最もインク吐出量Fの少ない部分に付すものとしたから、下絵にインク色識別マークが重なるのを抑制することができ、下絵の確認や版木の製作に支障が出るのを防止することができる。
【0030】
ここで、本実施形態の構成要素と本発明の構成要素との対応関係を明らかにする。本実施形態のRGBの画像データを入力する図2の下絵印刷処理ルーチンのステップS100の処理を実行するメインコントローラー90が本発明の「カラー画像入力手段」に相当し、図2の下絵印刷処理ルーチンのステップS110,S140,S170の処理を実行するメインコントローラー90が「単色データ生成手段」に相当し、図2の下絵処理ルーチンのステップS220の処理を実行するメインコントローラー90が「単色画像形成手段」に相当する。
【0031】
以上説明した本実施形態のマルチファンクションプリンター20によれば、入力したRGBの画像データをCMYKの印刷データに変換し、変換した印刷データの左右を反転してCMYKの多色下絵データを生成して、生成したCMYKの多色下絵データから各インク色の値を抽出すると共に抽出したインク色以外のインク色を一律にドットなしの値とすることによりCMYKのインク色毎に単色データDをそれぞれ生成する。そして、生成した単色データのうちCMYの単色データにおいて各インク色の値をそれぞれブラック(K)と入れ替えた単色データDを生成し、各インク色の値をそれぞれブラック(K)と入れ替えた単色データD(K←C),D(K←M),D(K←Y)と単色データD(K)とに基づいて単色の下絵画像をそれぞれ印刷するから、マルチファンクションプリンター20が通常用いる色変換LUTを用いて単色データDを生成して単色画像を印刷することができ、簡易な処理で再現性のよい下絵を印刷することができる。また、CMYの単色データにおいて各インク色の値をそれぞれブラック(K)と入れ替えることにより下絵のコントラストを強調させることができる。さらに、各インク色の値をそれぞれブラック(K)と入れ替えた単色データDにはインク色識別マークを付すから、下絵が混同するのを防止することができる。また、インク色識別マークは、下絵の余白相当部分あるいは最もインク吐出量Fの少ない部分に付すものとしたから、下絵にインク色識別マークが重なるのを防止することができる。
【0032】
なお、本発明は上述した実施態様に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0033】
上述した実施形態では、完成イメージや多色下絵イメージ,単色下絵イメージを印刷するか否かのユーザーによる設定を受け付けるものとしたが、これに限られず、ユーザーの設定を受け付けることなく完成イメージや多色下絵イメージ,単色下絵イメージのすべてあるいは一部を印刷するものとしてもよい。
【0034】
上述した実施形態では、シアン(C),マゼンタ(M),イエロー(Y)の単色データD(C),D(M),D(Y)をブラック(K)と入れ替えた単色データD(K←C),D(K←M),D(K←Y)を単色下絵として印刷するものとしたが、これに限られず、単色データD(C),D(M),D(Y)をそのまま用いて単色下絵を印刷するものとしてもよい。
【0035】
上述した実施形態では、単色データの混同を防止するためインク色識別マークを印刷するものとしたが、これに限られず、インク色識別マークを印刷しないものとしてもよいし、印刷するか否かのユーザーによる設定を受け付けるものとしてもよい。また、インク色識別マークの印字領域を自動で設定するものとしたが、これに限られず、ユーザーによる印字領域の設定を受け付けるものとしてもよいし、予め定められた印字領域を用いるものとしてもよい。
【0036】
上述した実施形態では、算出したインク吐出量Fを閾値Frefと比較して閾値Fref未満のときには現在の処理位置Cを基準とする領域Aをインク色識別マークの印字領域に設定するものとしたが、これに限られず、算出したインク吐出量Fを閾値Frefと比較を行なわないものとしてもよい。
【0037】
上述した実施形態では、処理位置CのX座標値Cxを更新するための所定値aとして領域Aの幅Awを用いるものとしたが、これに限られず、1画素分の値や領域Aの幅Awの半分の値,領域Aの幅Awを超える値などを用いるものなどとしてもよい。また、処理位置CのY座標値Cyを更新するための所定値bとして領域Aの高さAhを用いるものとしたが、これに限られず、1画素分の値や領域Aの高さAhの半分の値,領域Aの高さAhを超える値などを用いるものなどとしてもよい。
【0038】
上述した実施形態では、インク色はシアン(C),マゼンタ(M),イエロー(Y),ブラック(K)の4色としたが、これに限られず、ライトシアン(LC)やライトマゼンタ(LM)などを含んで5色や6色としたり、ライトブラック(LK)やライトライトブラック(LLK)などを含んで7色や8色としたり、それ以上の複数色としたりしてもよい。
【0039】
上述した実施形態では、本発明をマルチファンクションプリンター20に適用して説明したが、これに限られず、複数色のインクを吐出して画像を形成するものであればよく、例えばスキャナー機能を備えないプリンターに適用するものなどとしてもよい。
【符号の説明】
【0040】
20 マルチファンクションプリンター、21 筐体、22 筐体カバー、23 カセット、24 排紙トレイ、40 プリンターユニット、41 プリンターASIC、42 プリンター機構、44 メモリーカードコントローラー、44a メモリーカードスロット、50 スキャナーユニット、51 スキャナーASIC、52 スキャナー機構、60 操作パネル、61 表示部、62 電源ボタン、90 メインコントローラー、92 CPU、94 ROM、96 RAM、98 インターフェース(I/F)、MC メモリーカード。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数色のインクを吐出して画像を形成する画像形成装置であって、
カラー画像を入力するカラー画像入力手段と、
前記入力されたカラー画像の左右を反転させた画像に対応する前記複数色のインクのデータのうち、各インク色の値をそれぞれ抽出した単色データをインク色毎に生成する単色データ生成手段と、
前記生成されたインク色毎の単色データに基づいて媒体に単色画像をそれぞれ形成する単色画像形成手段と
を備える画像形成装置。
【請求項2】
前記複数色のインクとして黒インクを含む請求項1記載の画像形成装置であって、
前記単色データ生成手段は、前記インク色毎の単色データにおける各インク色をそれぞれ黒インクと入れ替えた単色データをインク色毎に生成する手段であり、
前記単色画像形成手段は、前記インク色毎の単色データとして前記入れ替え後の単色データを用いて単色画像を形成する手段である
画像形成装置。
【請求項3】
前記単色データ生成手段は、前記黒インクと入れ替えた単色データを生成する際に、入れ替え前のインク色をユーザーが識別可能な識別マークを付す手段である請求項2記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記単色データ生成手段は、前記識別マークの形成に必要とされる領域を前記単色データ上の全範囲に亘ってシフトさせると共に該シフトさせる度に前記領域内に含まれるインク色の値に基づいてインクの吐出量を算出し、該算出したインクの吐出量が最小となる箇所に前記識別マークを付す手段である請求項3記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記単色データ生成手段は、前記インクの吐出量を算出する度に所定量と比較して、該所定量以下となる箇所を検出した場合には、前記単色データ上の全範囲に亘るシフトを終了させて前記検出した箇所に前記識別マークを付す手段である請求項4記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記単色画像形成手段は、前記複数色のインク毎に、前記単色データに基づく単色画像と、前記入れ替え後の単色データに基づく単色画像とをそれぞれ形成する手段である請求項2ないし5いずれか1項に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図3】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−195727(P2012−195727A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−57671(P2011−57671)
【出願日】平成23年3月16日(2011.3.16)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】