説明

画像形成装置

【課題】複数の画像形成手段を備えた画像形成装置において、画像形成手段での画像形成以外のメンテナンス用のインクの空吐出やクリーニングを必要最小限に抑え、生産性の向上と廃液の低減を実現する。
【解決手段】記録媒体を収納した給紙部と、該給紙部から供給された該記録媒体に液滴を吐出して画像を形成する複数の画像形成手段と、該複数の画像形成手段により画像形成された該記録媒体を排紙する排紙部を有する画像形成装置において、当初設定された所定画像面数を超えるまで、前記複数の画像形成手段から初めに選択されたいずれか一つのみにより画像形成を行うことにより解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャリッジに搭載された記録ヘッドからインクを吐出して用紙に画像を形成するインクジェット方式の画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、ファクシミリ、複写装置、プロッタ、これらの複合機などの画像形成装置として、例えばインク液滴を吐出する記録ヘッドを用いた液体吐出記録方式の画像形成装置が知られている。この液体吐出記録方式の画像形成装置は、記録ヘッドからインク滴を、搬送される用紙(紙に限定するものではなく、OHPなどを含み、インク滴、その他の液体などが付着可能なものの意味であり、被記録媒体あるいは記録媒体、記録紙、記録用紙などとも称される。)に対して吐出して、画像形成(記録、印字、印写、印刷も同義語で使用する。)を行なうものであり、記録ヘッドが主走査方向に移動しながら液滴を吐出して画像を形成するシリアル型画像形成装置と、記録ヘッドが移動しない状態で液滴を吐出して画像を形成するライン型ヘッドを用いるライン型画像形成装置がある。
【0003】
なお、本願において、液体吐出方式の「画像形成装置」は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックスなどの媒体に液体を吐出して画像形成を行う装置を意味し、また、「画像形成」とは、文字や図形などの意味を持つ画像を媒体に対して付与することだけでなく、パターンなどの意味を持たない画像を媒体に付与すること(単に液滴を媒体に着弾させること)をも意味する。また、「インク」とは、インクと称されるものに限るものではなく、吐出されるときに液体となるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、DNA試料、レジスト、パターン材料なども含まれる。また、「画像」とは平面的なものに限らず、立体的に形成されたものに付与された画像、また立体自体を3次元的に造形して形成された像も含まれる。
【0004】
ところで、例えば、このような液体を用いる画像形成装置においては、複数の画像形成部を有し、複数の画像形成部により画像を形成することで生産性の向上を図るものが知られている。
【0005】
特許文献1は、低コストで、排出経路上での用紙の衝突が無く、頁順に用紙を排紙できる並列処理プリンタを提供することを目的として、用紙に画像を印字する複数の印字手段と、印字手段毎に設けられて印字手段を制御する印字制御手段と、印字手段で印字された印刷頁が排紙される排紙部と、各印字制御手段に印字データを割り振るメイン制御手段とを備え、各印字制御手段は、メイン制御部から印字データが割り振られると、割り振られた印字データと印字手段の状態とに基いて印字時間を求め、メイン制御手段に通知し、メイン制御手段は、通知された印字時間に基づき、印字開始タイミング又は調整印字時間を設定して各印字制御手段に入力し、各印字制御手段は、入力された印字開始タイミングまたは印字時間で印字を行うように印字手段を制御する並列処理プリンタを開示している。
【0006】
しかしながら、生産性を向上させるため、複数の画像形成部により画像を形成すると、インクを正常に吐出するための画像形成以外のメンテナンス用のインクの空吐出やクリーニングが複数の画像形成部のそれぞれで必要となり、廃液も増えてしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、複数の画像形成手段を備えた画像形成装置において、画像形成手段での画像形成以外のメンテナンス用のインクの空吐出やクリーニングを必要最小限に抑え、生産性の向上と廃液の低減を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題は、本発明によれば、記録媒体を収納した給紙部と、該給紙部から供給された該記録媒体に液滴を吐出して画像を形成する複数の画像形成手段と、該画像形成手段により画像形成された該記録媒体を排紙する排紙部を有する画像形成装置において、当初設定された所定画像面数を超えるまで、前記複数の画像形成手段から初めに選択されたいずれか一つのみにより画像形成を行うことにより解決される。
【0009】
また、前記所定画像面数を超えた後は、他の画像形成手段においても画像形成を行うと好ましい。
また、前記複数の画像形成手段の停止時間情報を記憶する停止時間記憶手段を備え、該停止時間情報に基づいて、前記複数の画像形成手段から初めに使用する画像形成手段を選択すると好ましい。
【0010】
また、前記複数の画像形成手段の稼働時間情報を記憶する稼働時間記憶手段を備え、該稼働時間情報に基づいて、前記複数の画像形成手段から初めに使用する画像形成手段を選択すると好ましい。
また、稼働時間がより短い画像形成手段を初めに使用する画像形成手段として選択すると好ましい。
【0011】
また、稼働時間にかかわらず、連続停止時間がより長く、所定の連続停止時間を超えて停止している画像形成手段を初めに使用する画像形成手段として選択すると好ましい。
また、選択すべき画像形成手段の当初設定された所定画像面数をより少ない画像面数に変更すると好ましい。
【0012】
また、前記稼働時間記憶手段に代えて又は加えて、前記複数の画像形成手段のインク消費量情報を記憶するインク消費量記憶手段を備え、前記稼働時間情報に代えて又は加えてインク消費量情報に基づいて、前記複数の画像形成手段から初めに使用する画像形成手段を選択すると好ましい。
また、初めに選択された画像形成手段での画像面数が所定画像面数に達していない場合でも、印刷データバッファ部に所定画像面数以上の印刷データが溜まったときに、他の画像形成手段によっても画像形成を行うと好ましい。
【0013】
また、初めに選択された画像形成手段での画像面数が所定画像面数を超えても、印刷すべき残りの画像面数に依存して、他の画像形成手段を使用せずに初めに選択された画像形成手段により画像形成を続行すると好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、当初設定された所定画像面数を超えるまで、複数の画像形成手段から初めに選択されたいずれか一つのみにより画像形成を行うことにより、複数の画像形成手段が均等に使用され、画像形成手段での画像形成以外のメンテナンス用のインクの空吐出やクリーニングを必要最小限に抑えて廃液を低減させ、長期間放置による記録ヘッド内部のインクの増粘を防止し、生産性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】複数の記録ヘッドユニットを備えた本発明に係る画像形成装置の一例を示す概略図である。
【図2】本発明に係る画像形成装置での記録ヘッドユニットの制御を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
先ず、図1を用いて、複数の記録ヘッドユニットを備えた本発明に係る画像形成装置10の一例について説明する。図1は同画像形成装置10の全体構成図である。
この画像形成装置10は、記録媒体である用紙100に液滴を吐出して画像を形成する画像形成手段としての記録ヘッドユニット(画像形成部)101、102と、用紙100を搬送する搬送ベルト106、112と、用紙100を収容する給紙トレイ103と、記録ヘッドユニット101よりも用紙搬送方向上流側で被塗布部材である用紙100に処理液201を塗布する塗布手段でもある処理液塗布装置200と、画像形成された用紙100を排出する排紙トレイ104を備えている。
【0017】
記録ヘッドユニット101は、液滴を吐出する複数のノズルを用紙幅相当分の長さに配列したノズル列を有するライン型液体吐出ヘッドから構成され、それぞれイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色のインク滴を吐出する記録ヘッド101y、101m、101c、101kを備えている。なお、シリアル型画像形成装置として記録ヘッドを搬送方向と直行方向に往復動作可能なキャリッジに搭載する構成とすることもできる。シリアル型の場合、キャリッジは不図示の往復動作機構により、用紙の搬送方向と直行する方向に移動しながらインク滴を吐出し、搬送ベルト106、112により用紙の改行(所定の搬送距離移動して停止)を繰り返し、画像を形成する。
記録ヘッドユニット102もこれと同様の構成を有しており、それぞれイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色のインク滴を吐出する記録ヘッド102y、102m、102c、102kを備えている。
【0018】
搬送ベルト106は、無端状ベルトであり、搬送ローラ121とテンションローラ122との間に掛け渡されて周回するように構成されている。この搬送ベルト106に対する用紙100の保持は、例えば静電吸着、空気の吸引による吸着などを行う構成とすることやその他の公知の搬送手段を用いることができる。また、ローラ対による搬送手段を用いることもできる。
搬送ベルト112、搬送ローラ123、テンションローラ124もこれと同様の構成を有しており、搬送ベルト112は、無端状ベルトであって、搬送ローラ124とテンションローラ123との間に掛け渡されて周回するように構成されている。
【0019】
給紙部20は、装置本体10の前面側から抜き差し可能で、多数枚の用紙100を積載して収納する給紙カセット103と、給紙カセット103内の用紙100を1枚ずつ分離して送り出すためのピックアップローラ131と搬送ローラ対132を備えている。
【0020】
また、画像形成装置10は、別な給紙部として、用紙100を手差しで使用するストレート手差しトレイ105と、ストレート手差しトレイ105から1枚ずつ用紙100を給紙するためのピックアップローラ141と搬送ローラ対142を備えている。
【0021】
処理液塗布装置200は、処理液201を収容した変形可能な例えばPETフィルムを袋状にした処理液容器(不図示)と、この処理液容器から供給された処理液201を圧送するポンプ(不図示)と、処理液201を記録媒体である用紙100に塗布する塗布部210などを備えている。処理液容器(不図示)内の処理液201はポンプ(不図示)によって吸上げられ、供給経路(不図示)を通じて塗布部210内の液室202へと供給され、塗布の準備がなされる。
【0022】
液室202へ供給された処理液201は、液室202に設けた液面検知センサ(不図示)で液面高さと液面角度が所定内であることを確認する。液面検知センサは例えば、電極ピン方式を用いる。電極ピン方式は、公知技術なのでここでは詳しく説明しないが、電極ピンに電気を通電させ電極ピン間で液体を介して電気が導通することにより液面を検知する。この方法により処理液201の供給不足や液室202へ所定量以上の供給を防止することが出来る。
【0023】
塗布部210は、用紙100を搬送する搬送ローラ234と、搬送ローラ234に対向して用紙100に処理液201を塗布する塗布ローラ232と、塗布ローラ232に処理液201を供給して液膜を薄くするスクイーズローラ233を有している。
【0024】
これらのローラは、搬送ローラ234に塗布ローラ232が接し、塗布ローラ232にスクイーズローラ233が接するように配置されている。そして、スクイーズローラ233と塗布ローラ232とによって供給された処理液201の液膜層が形成されて、塗布ローラ232の回転によって搬送ローラ234側に移送され、記録媒体としての用紙100に塗布される。
【0025】
なお、ここで処理液201は、用紙100の表面に塗布されることで用紙100の表面を改質する改質材である。例えば、処理液201は、予め用紙100(前述したように材質としての紙に限定されない。)にムラなく塗布しておくことで、インクの水分を速やかに用紙100に浸透させると共に色成分を増粘させ、更には乾燥も早めることによって滲み(フェザリング、ブリーディングなど)や裏抜けを防止し、生産性(単位時間当たりの画像出力枚数)をあげることを可能にする定着剤(セット剤)である。
【0026】
この処理液201の組成としては、例えば界面活性剤(アニオン系、カチオン系、ノニオン系のいずれか、又はこれらを2種類以上混合させたもの)に対して、水分の浸透を促進するセルロース類(ヒドロキシプロピルセルロースなど)とタルク微粉体の様な基剤を加えた溶液などを挙げることができる。更に処理液201に微粒子を含有させることもできる。
【0027】
給紙トレイ103に収容された用紙100は、ピックアップローラ131で1枚ずつ分離給紙されて搬送ローラ対132によってレジストローラ対133に送られ、レジストローラ対133から所定のタイミングで搬送ローラ対134によって搬送路300を介して処理液塗布装置200に送られ、処理液塗布装置200で処理液201を塗布される。
【0028】
処理液201が塗布された用紙100は、実線で示された分離爪400により搬送路301へ分離され、搬送路を切換えられる。搬送路301へ分離された用紙100は、搬送ローラ対135によって搬送路301を介して搬送ベルト106上に送り込まれて保持される。そして、搬送ベルト106の周回移動で搬送されて記録ヘッドユニット101から各色の液滴が吐出され画像が形成される。
【0029】
画像が形成された用紙100は、搬送ベルト106の周回移動で搬送されて、搬送ローラ対136、150、143、144によって搬送路302、309を介して排紙部としての排紙ユニット30へ搬送される。
【0030】
また、もう一つの画像形成部である記録ヘッドユニット102での画像形成方法を説明する。
処理液201が塗布された用紙100は、破線で示された分離爪400により搬送路305へ分離され、搬送路を切換えられる。搬送路305へ分離された用紙100は、搬送ローラ141によって搬送路305を介して搬送ベルト112上に送り込まれて保持される。そして、搬送ベルト112の周回移動で搬送されてヘッドユニット102から各色の液滴が吐出されて画像が形成される。
【0031】
画像が形成された用紙100は、搬送ベルト112の周回移動で搬送されて、搬送ローラ対142、143によって搬送路306を介して排紙ユニット30へ搬送される。
尚、搬送ローラ対143より下流側は、記録ヘッドユニット102と101で画像を形成された用紙の共通な排出経路である。
【0032】
画像面を上向きにして用紙100を排出する場合、排紙ユニット30へ搬送された用紙100は、分離爪403により搬送路を切換えられて搬送路309へ送られ、排紙ローラ対156で排紙トレイ104に排紙される。
【0033】
排紙トレイ104には排紙用紙の先端を突き当てて排紙用紙の先端を揃えるための排紙エンドフェンス107が設けられている。排紙エンドフェンス107は不図示の移動手段により用紙サイズにあわせて矢印方向に移動可能に設けられている。排紙エンドフェンス107により複数枚重なって搬送された用紙が排紙トレイ上で乱れることなくスタックできる。
【0034】
画像面を下向きにして用紙100を排出する場合、排紙ユニット30へ搬送された用紙100は、分離爪403により搬送路を切換えられてスイッチバック搬送路307へ送られる。スイッチバック搬送路307へ送られた用紙100はリバースローラ対155により搬送される。リバースローラ対155の下側には、用紙の少なくとも全面がリバースローラ対155より下に行かない様に不図示の移動手段により矢印方向に移動可能なリバースエンドフェンス310が設けられている。このリバースエンドフェンス310により複数の用紙が重なってリバースローラ対155により搬送されても、先に搬送された用紙の全面がリバースローラ対155から抜けて用紙が下方向へ落下するのを防止することができる。
【0035】
最下流の用紙100の後端が分離爪404を通過すると、用紙100は、リバースローラ対155によりスイッチバックされ、分離爪404により搬送路308へ分離され、排紙ローラ対156で排紙トレイ104に排紙される。
【0036】
なお、ストレート手差しトレイ105から用紙100が給紙された場合、用紙100は、ピックアップローラ141と搬送ローラ対142によって搬送路311内を記録ヘッドユニット102に向かって搬送され、用紙上に画像が形成され、排紙ユニット30を通ってそれに設けられた排紙トレイ104に排出される。
【0037】
次に、用紙の両面に画像を形成する場合について説明する。
給紙トレイ103に収容された用紙100は、ピックアップローラ131で1枚ずつ分離給紙されて搬送ローラ対132によってレジストローラ対133に送られ、レジストローラ対133から所定のタイミングで搬送ローラ対134によって搬送路300を介して処理液塗布装置200に送られ、処理液塗布装置200で処理液201を塗布される。
【0038】
処理液201が塗布された用紙100は、実線で示された分離爪400により搬送路301へ分離され、搬送路を切換えられる。搬送路301へ分離された用紙100は、搬送ローラ対135によって搬送路301を介して搬送ベルト106上に送り込まれて保持される。そして、搬送ベルト106の周回移動で搬送されて記録ヘッドユニット101から各色の液滴が吐出され第1面目の画像が形成される。
【0039】
第1面目の画像が形成された用紙100は、搬送ベルト106の周回移動で搬送されて、搬送ローラ対136によって搬送路302を介して搬送される。搬送路302を介して搬送された用紙100は、実線で示された分離爪402により分離されてスイッチバック搬送路303へ分離される。次いで、用紙100は、スイッチバック搬送路303へ分離された用紙100を反転して再給紙するためのリバースローラ対137より搬送され、実線で示された分離爪401により再給紙路304へ搬送路を切換えられ、搬送ローラ対138、139、140により再給紙路304介してレジストローラ対133へ再び搬送される。
【0040】
レジストローラ対133に送られた用紙100は、レジストローラ対133から所定のタイミングで搬送ローラ134によって搬送路300を介して処理液塗布装置200に送られ、用紙100の第2面目に処理液塗布装置200で処理液201が塗布される。
【0041】
第2面目に処理液201が塗布された用紙100は、破線で示された分離爪400により搬送路305へ分離され、搬送路を切換えられる。搬送路305へ分離された用紙100は、搬送ローラ141によって搬送路305を介して搬送ベルト112上に送り込まれて保持される。そして、搬送ベルト112の周回移動で搬送されてヘッドユニット102から各色の液滴が吐出されて第2面目の画像が形成される。
【0042】
第2面目の画像が形成された用紙100は、搬送ベルト112の周回移動で搬送されて、搬送ローラ対142、143によって搬送路306を介して排紙ユニット30へ搬送される。
排紙ユニット30へ搬送された用紙100は、分離爪403により搬送路を切換えられて搬送路309へ送られ、排紙ローラ対156で排紙トレイ104に排紙される。
【0043】
次に、本発明の画像形成装置での記録ヘッドユニットの制御について説明する。
この画像形成装置10は、記録ヘッドユニット101、102で形成する画像データ(印刷データ)の入力系として機能する、外部のパーソナルコンピュータなどの情報処理装置、イメージスキャナなどの画像読取り装置、デジタルカメラなどの撮像装置などのホスト側から、画像データを含む印刷データなどをケーブル又はネットワークを介して受信可能であり、受信した印刷データを処理して印刷することができる。
【0044】
画像形成装置10に画像形成入力信号が入ると、給紙モータ(不図示)と給紙クラッチ(不図示)を駆動して給紙カセット103から用紙100を1枚ずつ分離して給紙部20から任意の記録ヘッドユニット101又は102に給紙搬送する。そして、次頁の印写がある場合には、用紙端部検知センサ(不図示)と用紙の搬送距離を演算して前頁の後端位置を検出し、前頁との紙間距離が所定の距離(例えば60mm)であるか否かを判別し、所定の紙間距離になったときに給紙を行って記録ヘッドユニット101又は102の印写開始位置に搬送することで、所定の紙間距離で連続的に印写開始位置への給紙を行い、最終頁まで給紙が繰り返されるようになっている。
【0045】
このとき、本発明の特徴的な制御として、用紙100を所定の画像面数までは初めに選択された記録ヘッドユニット101、102の一方に連続的に搬送して、初めに選択された記録ヘッドユニットのみにより画像形成を行う。この記録ヘッドユニットは画像形成に備え、不図示の空吐出口に向けてメンテナンス用の空吐出を行う。そして、所定画像面数又は所定枚数を超えると生産性を上げるため、他方の記録ヘッドユニットも同様に画像形成に備え、不図示の空吐出口に向けてメンテナンス用の空吐出を行う。所定画像面数以降は、両方の記録ヘッドユニット101、102により同時に画像を形成する。
【0046】
ここで、所定画像面数とはインクを節約するための1つの指標であり、ユーザーが所定画像面数を画像形成装置10の表示部(不図示)から設定してもよいし、画像形成装置10にネットワーク接続されたパーソナルコンピュータから設定してもよい。
【0047】
また、画像形成装置は、複数の記録ヘッドユニットの停止時間情報を記憶する停止時間記憶手段を備えており、停止時間情報に基づいて、複数の記録ヘッドユニットから初めに使用する画像形成手段を選択する。例えば1週間連続停止している場合は、記録ヘッドユニットの稼働時間にかかわらず、連続停止時間のより長い一方のユニットを初めに使用する画像形成手段として選択し、このユニットの所定画像面数を1に設定変更する。従って、2画像面数以上の場合には、他方のユニットも、すなわち記録ヘッドユニット101、102共に画像形成に備え、不図示の空吐出口に向けてメンテナンス用のインクの空吐出を行い、両方の記録ヘッドユニットにより画像を形成するようにしている。これにより、両方の記録ヘッドユニットが長期間放置用の空吐出メンテナンスを行うことが可能となる。
【0048】
この場合の1週間連続停止とは、記録ヘッド中のインクが乾燥により増粘して吐出できなくなるなどして、通常の空吐出でのメンテナンスでは回復不可能となる手前の時間であって、1週間連続停止に限定されるものではなく、通常の空吐出のみで回復できる連続停止時間であればよい。この連続停止時間をある程度過ぎると、吸引キャップ(不図示)による吸引でのメンテナンスが必要となり、これは通常の空吐出と比較してより多くの廃液を生じさせてしまう。これを回避するため、長期間放置された場合は所定画像面数を1に設定して、両方の記録ヘッドユニットにおいて空吐出メンテナンスを行い、両方の記録ヘッドユニットで画像形成するようにするのが望ましい。
【0049】
また、画像形成装置は、複数の記録ヘッドユニットの稼働時間情報を記憶する稼働時間記憶手段を備えており、稼働時間情報に基づいて、稼動時間のより短い記録ヘッドユニットを選択し又は複数の記録ヘッドユニットが略同一の稼動時間を有するように初めに使用する一つの記録ヘッドユニットを選択してもよい。これにより、記録ヘッドユニットの一方のみが使用されて劣化することを防止し、その寿命を延ばすことができる。
【0050】
次に、図2を用いて、記録ヘッドユニットの停止時間情報と稼働時間情報に基づいて記録ヘッドユニット101、102の一方を選択し、選択したユニットによって所定画像面数まで印字を行い、所定画像面数以降は他のユニットにおいても印字を行う、本発明の画像形成装置における一連のシーケンス制御について説明する。
【0051】
前述の通り、画像形成装置は、複数の記録ヘッドユニットの停止時間情報を記憶する停止時間記憶手段と稼働時間情報を記憶する稼働時間記憶手段を備えており、これら記憶手段からの情報によって記録ヘッドユニット101、102のどちらで初めに画像形成するかを選択する。
【0052】
先ず、画像形成装置10に画像形成入力信号が入ると(S1)、記録ヘッドユニット101、102の停止時間記憶手段の停止時間情報から、記録ヘッドユニット101の連続停止時間が記録ヘッドユニット102のそれよりも長いか判断する(S2)。Yesの場合(長かった場合)、停止時間記憶手段の停止時間情報から、記録ヘッドユニット101の停止時間が所定の連続停止時間以上であるか判断する(S3)。ここでNoの場合、稼働時間記憶手段に記憶された稼働時間情報から、記録ヘッドユニット101の稼働時間が記録ヘッドユニット102のそれよりも短いか判断する(S5)。ここでYesの場合、記録ヘッドユニット101を初めに使用する画像形成手段として選択し、稼働時間がより長い他の記録ヘッドユニット102を使用せずに、記録ヘッドユニット101により印字を行う(S6)。次いで、記録ヘッドユニット101において所定画像面数を印字したか判断する(S7)。ここでNoの場合、記録ヘッドユニット101のみにより印字を続行する。その後、S7において所定画像面数を超えたとき、印字が終了するまで他の記録ヘッドユニット102においても印字を行い、すなわち記録ヘッドユニット101、102において同時に印字を行う(S8、S9、S10)。
【0053】
一方、S3からS5のフローで、S5においてNoの場合、稼働時間がより短い記録ヘッドユニット102を初めに使用する画像形成手段として選択し、稼働時間がより長い記録ヘッドユニット101を使用せずに、記録ヘッドユニット102により印字を行う(S13)。その後所定画像面数を印字するまで記録ヘッドユニット102により印字を行う。
【0054】
また、S3においてYesの場合、連続停止時間以上停止している記録ヘッドユニット101を稼働させる必要があるため、稼働時間の長短の判断(S5)による初めに使用する画像形成手段の選択をせずに、記録ヘッドユニット101の所定画像面数を1に設定し(S4)、空吐出メンテナンスを行った後記録ヘッドユニット101により印字を行う(S6)。その後S7からS10までのシーケンス制御を行う。
【0055】
また、S2においてNoの場合(短かった場合)、停止時間記憶手段の停止時間情報から、記録ヘッドユニット102の停止時間が所定の連続停止時間以上であるか判断する(S11)。ここでNoの場合、稼働時間記憶手段に記憶された稼働時間情報から、記録ヘッドユニット101の稼働時間が記録ヘッドユニット102のそれよりも短いか判断する(S5)。ここでNoの場合、記録ヘッドユニット102を初めに使用する画像形成手段として選択し、稼働時間がより長い記録ヘッドユニット101を使用せずに、記録ヘッドユニット102により印字を行う(S13)。次いで、記録ヘッドユニット102において所定画像面数を印字したか判断する(S14)。ここでNoの場合、記録ヘッドユニット102により印字を続行する。その後、S14において所定画像面数を超えたとき、印字が終了するまで記録ヘッドユニット101においても印字を行い、すなわち記録ヘッドユニット101、102において同時に印字を行う(S15、S16、S17)。
【0056】
一方、S11からS5のフローで、S5においてYesの場合、稼働時間がより短い記録ヘッドユニット101を初めに使用する画像形成手段として選択し、稼働時間がより長い記録ヘッドユニット102を使用せずに、記録ヘッドユニット101により印字を行う(S6)。その後所定画像面数を印字するまで記録ヘッドユニット101により印字を行う。
【0057】
また、S11においてYesの場合、連続停止時間以上停止している記録ヘッドユニット102を稼働させる必要があるため、稼働時間の長短の判断(S5)による初めに使用する画像形成手段の選択をせずに、記録ヘッドユニット102の所定画像面数を1に設定し(S12)、空吐出メンテナンスを行った後記録ヘッドユニット102により印字を行う(S13)。その後S14からS17までのシーケンス制御を行う。
【0058】
ここで、画像形成装置が、稼働時間記憶手段に代えて又は加えて、記録ヘッドユニットのインク消費量に関する情報を記憶するインク消費量記憶手段を備え、稼働時間に代えて又は加えて、インク消費量を指標にしてもよい。この場合、S5に代えて又は加えて、インク消費量の少ない記録ヘッドユニットで印字を行うように制御すればよい。
【0059】
以上のように、画像入力信号の受信後、記録ヘッドユニットの停止時間情報と稼働時間情報に基づいて、初めに使用する記録ヘッドユニットを選択し、選択した記録ヘッドユニットにより所定画像面数又は所定枚数を超えるまで印字を行う。そして、所定画像面数又は所定枚数以降は他の記録ヘッドユニットも同時に使用する。これにより、複数の記録ヘッドユニットを均等に使用することができ、長時間放置による記録ヘッド内部のインクの増粘を防止し、生産性の向上と廃液の低減も可能となる。
【0060】
また、一つの記録ヘッドユニットにおいて、印刷が終了している画像面数が所定画像面数に達していない場合でも、画像形成装置10の印刷データバッファ部(不図示)に所定画像面数以上の印刷データが蓄積されたときに、他の記録ヘッドユニットをも使用するように設定してもよい。これにより、印刷時間の短縮が図られる。
【0061】
また、所定画像面数にある程度の幅(例えば5〜10枚)を持たせ、すなわち選択された一つの記録ヘッドユニットの画像面数が所定画像面数を超えても、残りの画像面数が少ない場合、他のユニットを使用せずに選択された画像形成手段により画像形成を続行してもよい。
例えば所定画像面数(5枚)を超えても、印刷する残りの枚数が所定枚数(5枚)より少なければ、他の記録ヘッドユニットを使用せずに一つの記録ヘッドユニットのみを使用してもよい。他の記録ヘッドユニットを印刷可能状態にしても、印刷枚数が少ない場合は生産性向上の効果が少ないためである。
【0062】
また、節約モード、標準モード、高速モードなどのユーザーによる印刷モード選択によって所定画像面数を設定してもよい。節約モードでは、例えば複数の記録ヘッドユニットの内のある一つの記録ヘッドユニットのみを使用する。標準モードでは、例えば30の画像面数まではある一つの記録ヘッドユニットのみを使用し、31〜60の画像面数は他の記録ヘッドユニットも同時に使用する。高速モードでは、例えば4の画像面数まではある一つの記録ヘッドユニットのみを使用し、5〜8の画像面数は他の記録ヘッドユニットも同時に使用する。
【0063】
また、複数の記録ヘッドユニットを使用する切り替えのタイミングとして、所定画像面数に代えてトータルの印刷時間を採用してもよい。例えば、一つの記録ヘッドユニットにおいて画像データの全ての印刷が終わるまでに1分以上かかる場合は、複数の記録ヘッドユニットを使用してもよい。このとき、印刷から実際に1分経過後に他の記録ヘッドユニットを使用してもよいし、画像形成装置に印刷時間演算装置を設け、印刷時間演算装置が印刷データバッファ部に蓄積されたデータから所定の印刷時間以上かかると判断したときに複数の記録ヘッドユニットを使用してもよい。
【0064】
また、両面印字と片面印字の場合で異なる所定画像面数を使用してもよい。具体的には、両面印字の場合は画像形成に比較的時間がかかるため、片面印字と比較して所定画像面数を少なく設定してもよい。
このようにして、所定画像面数までは一つの記録ヘッドユニットのみを使用することで、メンテナンス用のインクの空吐出の量を低減することができ、廃液を低減することができる。
【0065】
以上、本発明を図示例により説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、画像形成装置の各部構成も任意であり、3以上の記録ヘッドユニットを適用することもできる。
【符号の説明】
【0066】
10 画像形成装置
20 給紙部
30 排紙ユニット(排紙部)
100 用紙(記録媒体)
101、102 記録ヘッドユニット(画像形成手段)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0067】
【特許文献1】特開2005−153261号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体を収納した給紙部と、該給紙部から供給された該記録媒体に液滴を吐出して画像を形成する複数の画像形成手段と、該複数の画像形成手段により画像形成された該記録媒体を排紙する排紙部を有する画像形成装置において、
当初設定された所定画像面数を超えるまで、前記複数の画像形成手段から初めに選択されたいずれか一つのみにより画像形成を行うことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記所定画像面数を超えた後は、他の画像形成手段においても画像形成を行うことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記複数の画像形成手段の停止時間情報を記憶する停止時間記憶手段を備え、該停止時間情報に基づいて、前記複数の画像形成手段から初めに使用する画像形成手段を選択することを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記複数の画像形成手段の稼働時間情報を記憶する稼働時間記憶手段を備え、該稼働時間情報に基づいて、前記複数の画像形成手段から初めに使用する画像形成手段を選択することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
稼働時間がより短い画像形成手段を初めに使用する画像形成手段として選択することを特徴とする請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
稼働時間にかかわらず、連続停止時間がより長く、所定の連続停止時間を超えて停止している画像形成手段を初めに使用する画像形成手段として選択することを特徴とする請求項3〜5のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
選択すべき画像形成手段の当初設定された所定画像面数をより少ない画像面数に変更することを特徴とする請求項6に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記稼働時間記憶手段に代えて又は加えて、前記複数の画像形成手段のインク消費量情報を記憶するインク消費量記憶手段を備え、前記稼働時間情報に代えて又は加えてインク消費量情報に基づいて、前記複数の画像形成手段から初めに使用する画像形成手段を選択することを特徴とする請求項4又は5に記載の画像形成装置。
【請求項9】
初めに選択された画像形成手段での画像面数が所定画像面数に達していない場合でも、印刷データバッファ部に所定画像面数以上の印刷データが蓄積されたときに、他の画像形成手段によっても画像形成を行うことを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項10】
初めに選択された画像形成手段での画像面数が所定画像面数を超えても、印刷すべき残りの画像面数に依存して、他の画像形成手段を使用せずに初めに選択された画像形成手段により画像形成を続行することを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−240394(P2012−240394A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−115626(P2011−115626)
【出願日】平成23年5月24日(2011.5.24)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】