説明

画像形成装置

【課題】地震等において過大な衝撃や振動等の外力を受けても、装置本体の転倒を防止するとともに、ワイヤー等の固定具を装置本体に簡単に取り付けられ、また、外観を損なうことがない画像形成装置を提供する。
【解決手段】画像形成装置100は、壁面101または床面に固定されたアンカー55と、アンカー55に係止され張力が掛かることによって装置本体2の転倒を防止する線状のワイヤー51と、装置本体2から外部に突出し装置本体2を搬送するために使用者が保持することが可能である前側及び後側取手部材32、33と、を備える。ワイヤー51は、一端部がアンカー55に係止される一方、他端部が後側取手部材33に係止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンター、ファクシミリ、それらの複合機等の画像形成装置を地震等における過大な衝撃や振動等の外力に対して保護するための固定具を備えた画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、画像形成装置は、事務所等に搬送するために装置本体の底面にキャスターが設けられ、キャスターによって所定の位置に搬送され所定の位置にてキャスターをロックすることで床面に固定されていた。しかし、地震等によって過大な衝撃あるいは振動等の外力が画像形成装置の装置本体に作用すると、キャスターのロック部への衝撃力は過大となり、この大きな衝撃力を受ける部分が破損、または破壊されてしまうことがある。また、装置本体が嵩高くて重心位置が上方にある複写機等では、キャスターをロックしていても、装置本体の転倒が免れない場合があった。
【0003】
そこで、特許文献1では、ワイヤーを用いて画像形成装置の転倒を防止している。即ち、ワイヤーの一端部が事務所等の床面に固定した固定部材に係止される。そして、ワイヤーが装置本体の下部に固定された固定ブラケットに通されるとともにキャスターに当接した状態で緩みなく装置本体の下部の周囲を外側から囲むように張設される。さらに、ワイヤーの他端部がワイヤーの長さ調整機能を有するロック部材を介して床面に係止されている。地震等によって過大な衝撃や振動が発生した場合、ロック部材を介してワイヤーを係止することによって、装置本体が過大な外力を受けて、ロック部材の部分でワイヤーが伸びるため、このワイヤーの伸びによって過大な外力が吸収され、画像形成装置が転倒することを防いでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−280288号公報(段落[0029]〜[0033]、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した特許文献1では、ワイヤーは装置本体の下部にてキャスターの周りを外側から囲むように張設される構成である。この構成では、ワイヤーを装置本体に取り付ける作業が煩雑であり、またワイヤーが装置本体の前面部側に露出して外観を損なうという不都合があった。
【0006】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、地震等において過大な衝撃や振動等の外力を受けても、装置本体の転倒を防止するとともに、ワイヤー等の固定具を装置本体に簡単に取り付けられ、また、外観を損なうことがない画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために第1の発明は、装置本体の転倒を防止するための固定具を備える画像形成装置であって、床面または壁面に固定された固定部材と、該固定部材に係止され張力が掛かることによって前記装置本体の転倒を防止する線状の固定具と、装置本体から外部に突出する複数の取手部材と、を備え、前記固定具は、一端部が前記固定部材に係止される一方、他端部が前記複数の取手部材の一つに係止されることを特徴としている。
【0008】
また、第2の発明では、上記の画像形成装置において、前記取手部材は、前記固定具が係止された状態で装置本体内に収納可能であることを特徴としている。
【0009】
また、第3の発明では、上記の画像形成装置において、前記固定具が複数設けられることを特徴としている。
【0010】
また、第4の発明では、上記の画像形成装置において、前記複数の取手部材は装置本体の左右の側面部に夫々二つ設けられ、前記各固定具は、各側面部の後面部側に配置される取手部材に係止されることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
第1の発明によれば、地震等によって画像形成装置に過大な衝撃や振動が作用した場合、固定具に張力が掛かり、固定具に掛かる張力によって装置本体と床面或いは壁面とが係止されるために、固定具を介して装置本体が床面或いは壁面に支持され、装置本体の転倒が防止される。また、装置本体を搬送する取手部材に固定具を取り付ける構成であるために、固定具を装置本体に簡単に取り付けられ、また、外観を損なうことがない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態である画像形成装置の内部構成の概略断面図
【図2】実施形態である取手部材を備える画像形成装置の外観を示す斜視図
【図3】実施形態である固定具を取り付けた取手部材を示す斜視図
【図4】実施形態である取手部材を収納した画像形成装置の外観を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明の実施形態について図面を参照して説明するが、本発明はこの実施形態に限定されない。また発明の用途やここで示す用語等はこれに限定されるものではない。
【0014】
図1は、胴内排紙方式の画像形成装置の内部構成を示す概略断面図である。画像形成装置100の下部には、カセットタイプの用紙給紙部10が配設されている。用紙給紙部10は上下2段の給紙カセット10a、10bを有し、給紙カセット10a、10bには印刷前の用紙が積載して収容されている。給紙カセット10a、10bに収容された用紙は、選択された給紙カセット10a(10b)から用紙ピックアップローラー10d(10e)により1枚ずつ繰り出され、繰り出された用紙は用紙搬送路11へと送り出される。
【0015】
画像形成装置100の右側面には、手差しトレー10cが配設されている。手差しトレー10cは、給紙カセット10a、10bと異なるサイズの用紙が載置可能である。手差しトレー10cに載置された用紙は用紙搬送路11へと送り出される。
【0016】
用紙搬送路11は、用紙給紙部10の左方にて装置本体2の上下方向に延設される。用紙給紙部10から送り出された用紙が、用紙搬送路11上方のレジストローラー対12に搬送される。レジストローラー対12は、用紙にトナー像を転写するタイミングと同期をとって、画像形成部3に向けて用紙を送り出す。
【0017】
画像形成装置100の上部には原稿読取装置6が配設され、原稿読取装置6の上面には、プラテン(原稿押さえ)24が開閉可能に設けられ、さらに、プラテン24上には原稿搬送装置27が付設されている。原稿のコピーを行う場合、原稿搬送装置27に載置された原稿が1枚ずつ分離されて原稿読取部に送り出され、原稿読取装置6によって原稿の画像データが読み取られる。
【0018】
画像形成装置100の略中央部には、画像形成部3が配設されている。画像形成部3は、像担持体である感光体5を備え、さらに感光体5の周辺にその回転方向(図中のA方向)に沿って順に、帯電部4と、露光ユニット7と、現像部8と、転写ローラー13、及びクリーニング部18を備える。現像部8へのトナーの供給はトナーコンテナ9から行われる。クリーニング部18は、ブレードやブラシ或いは研磨ローラー等のクリーニング部材を有し、クリーニング部材によって感光体5の表面に残留するトナーを剥ぎ取り、回収する。
【0019】
感光体5の表面が帯電部4によって所定の極性および電位で一様に帯電されると、 露光ユニット7は、原稿読取装置6によって読み取られた原稿の画像データに基づいて、感光体5上に原稿画像の静電潜像を形成する。
【0020】
現像部8は、帯電したトナーを感光体5の表面に供給し、感光体5上の静電潜像を現像してトナー像を形成する。トナー像は転写ローラー13によって用紙上に転写される。トナー像が転写された用紙は、用紙搬送路11の上方に配設される定着部14へと搬送される。用紙にトナー像が転写された後、感光体5の表面に残留するトナーがクリーニング部18によってクリーニングされて回収され、さらに図示しない除電装置によって感光体5の表面の残留電荷が除去される。
【0021】
定着部14は、熱源を内蔵する定着ローラー14aと加圧ローラー14bとを有し、トナー像が転写された用紙を定着ローラー14a及び加圧ローラー14bによって加圧加熱し、用紙上のトナー像を溶融定着させる。トナー像が定着された用紙は、用紙搬送路11において右上方に搬送され排出ローラー対20によって排出部である胴内排紙部17に排出される。
【0022】
定着部14と排出ローラー対20との間の用紙搬送路11から分岐して反転搬送路16が設けられる。反転搬送路16は、用紙の一方の面にトナー像が定着された後、必要に応じて用紙の他方の面にもトナー像を形成するときに用いられるものであり、定着部14の上方から定着部14の周りを覆い、さらに装置本体2の下方に延設され、レジストローラー対12の近傍の用紙搬送路11に合流している。
【0023】
両面印刷を行う場合には、一方の面にトナー像が定着された用紙は、胴内排紙部17に排出させる途中において、用紙搬送路11と反転搬送路16との分岐部を用紙の後端が通過したタイミングで排出ローラー対20を逆回転させる。これによって、用紙がスイッチバックされ、用紙の印刷面が表裏逆向きにされた状態で反転搬送路16に送られ、反転搬送路16から再び用紙搬送路11のレジストローラー対12に搬送される。その後、画像形成部3にて用紙の他方の面にもトナー像が転写されると、用紙は定着部14によって定着処理され胴内排紙部17に排出される。
【0024】
図2は、取手部材を備える画像形成装置の外観を示す斜視図であり、図3は、固定具を取り付けた取手部材を示す斜視図である。また、図4は、取手部材を収納した画像形成装置の外観を示す斜視図である。
【0025】
図2に示すように、画像形成装置100は、前面部2aと、両側の側面部2bと、後面部2cによって装置本体2の外郭を縦長の直方体状に形成される。前面部2aには、操作パネル21が配設される。操作パネル21は、液晶素子からなる操作部及び表示部を有し、操作部からの印刷枚数や用紙サイズの指令に基づいて、表示部では印刷モード等が表示される。画像形成装置100の底面の四隅には、キャスター2dが設けられ、画像形成装置100がキャスター2dによって搬送され、所定の位置にてロック板2eを装置本体2に取り付けることで事務所等の床面に固定される。ロック板2eは、側面部2bと後面部2cに夫々二つも設けられる。ロック板2eに替えて、キャスター2dにロック部を設ける構成であってもよい。また、本実施形態の画像形成装置100は、使用者のニーズに応じてペーパーフィーダー57をオプションユニットとして増設することができるものである。図2では、キャスター2dを備えたペーパーフィーダー57が床面上に設置され、ペーパーフィーダー57上に装置本体2を重ねて連結している。なお、ペーパーフィーダー57を連結しない画像形成装置100では、装置本体2の底面の四隅にキャスター2dを設けることもできる。
【0026】
装置本体2の各側面部2bには、前側取手部材32と後側取手部材33とが配設される。前側取手部材32と後側取手部材33とは、床面から同じ高さの位置に設けられ、前側取手部材32は装置本体2の前面部2a側に配置される一方、後側取手部材33は装置本体2の後面部2c側に配置される。
【0027】
前側及び後側取手部材32、33は、画像形成装置100を所定の位置に搬送するときに使用者が保持するものであり、画像形成装置100にペーパーフィーダー57が連結されている場合、前側或いは後側取手部材32、33を把持し装置本体2を押し引き操作する。この操作によってキャスター2dが床面を転がり、画像形成装置100を所定の位置に搬送することができる。画像形成装置100にペーパーフィーダー57を連結していない場合、前側及び後側取手部材32、33を把持して装置本体2を持ち上げ、画像形成装置100を所定の位置に搬送することができる。画像形成装置100を搬送後、前側及び後側取手部材32、33は装置本体2内に収納可能である。
【0028】
図3に示すように、装置本体2の各側面部2bには収納部2fが設けられる。収納部2fは、装置本体2の後面部2c側に細長く延びる溝にて形成され、後側取手部材33を収納することができる。前側取手部材32も後側取手部材33と同様に収納部に収納することができる。
【0029】
後側取手部材33は、装置本体2内に設けられる図示しないフレームに図3の矢印方向に回動可能に支持される。従って、後側取手部材33を把持可能である状態(図3の状態)から、後側取手部材33を左側に回動すると、後側取手部材33は収納部2fにされる。
【0030】
後側取手部材33は、装置本体2を持ち上げて保持することが可能な剛性を備えて棒状に形成される。後側取手部材33の一端部は前述のように装置本体2のフレームに回動可能に支持され、後側取手部材33の他端部は取り付け孔33aを有する。
【0031】
取り付け孔33aには、固定具であるワイヤー51が取り付けられる。ワイヤー51は、その一端部を取り付け孔33aに締結されることで、後側取手部材33に係止される。ワイヤー51は、その他端部を固定部材であるアンカー55に締結すされることで係止される。アンカー55は、事務所等の壁面101に圧入或いはねじ込みによって固定される。後側取手部材33が装置本体2の収納部2fに収納された状態にて、ワイヤー51が適切に弛設し、或いは所定以下の張力によって張設されるように、使用者は長さ調整してワイヤー51をアンカー55に取り付ける。尚、アンカー55は床面に設けてもよい。また、固定具は、可撓性を備えるとともに所定の衝撃や振動に耐え得る引張強度を有する各種の線状部材を用いることができ、例えばステンレス鋼製のワイヤー51、ポリアミド樹脂等の樹脂繊維状のロープ、針金、チェーンやベルト等を用いることができる。
【0032】
図4に示すように、ワイヤー51は二本配設される。各ワイヤー51の一端部は、装置本体2の両側の側面部2bに設けた各後側取手部材33に取り付けられる。各ワイヤー51の他端部は、アンカー55(図3参照)に取り付けられる。アンカー55は各ワイヤー51に対応させて二つ設け、各ワイヤー51を各アンカー55に係止してもよく、また、二本のワイヤー51を一つのアンカー55に纏めて係止するようにしてもよい。
【0033】
地震等によって画像形成装置100に過大な衝撃や振動が作用した場合、二本のワイヤー51に所定の張力が掛かり、各ワイヤー51に掛かる張力によって画像形成装置100と壁面101或いは床面とが係止されるために、各ワイヤー51を介して画像形成装置100が壁面101或いは床面に支持され、画像形成装置100の転倒が防止される。
【0034】
また、装置本体2を搬送する後側取手部材33にワイヤー51を取り付ける構成であるために、ワイヤー51を装置本体2に簡単に取り付けられ、また、外観を損なうことがない。
【0035】
また、ワイヤー51は収納状態にある後側取手部材33に係止されるために、外観を損なうことがない。
【0036】
尚、上記実施形態では、各ワイヤー51を後側取手部材33に係止する構成を示したが、本発明はこれに限らず、例えば一方の側面部2bが壁面101に対向するように画像形成装置100を設置する場合、各ワイヤー51は、一方の側面部2bの前側及び後側取手部材32、33に係止される構成にしてもよい。また、ワイヤー51は1本であっても良い。この場合も上記実施形態と同様の効果を奏する。
【0037】
また、上記実施形態では、前側及び後側取手部材32、33を水平方向に回動させて、装置本体2に収納する構成を示したが、本発明はこれに限らず、前側及び後側取手部材32、33を収納する場合、前側及び後側取手部材32、33が上下方向に回動する構成でもよく、また、前側及び後側取手部材32、33が長手方向に沿って装置本体2内に挿入または引き出され構成であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、複写機、プリンター、ファクシミリ、それらの複合機等の画像形成装置を地震等における過大な衝撃や振動等の外力に対して保護するための固定具を備えた画像形成装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0039】
2 装置本体
2a 前面部
2b 側面部
2c 後面部
2f 収納部
32 前側取手部材
33 後側取手部材(取手部材)
33a 取り付け孔
51 ワイヤー(固定具)
55 アンカー(固定部材)
100 画像形成装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置本体の転倒を防止するための固定具を備える画像形成装置であって、
床面または壁面に固定された固定部材と、
該固定部材に係止され張力が掛かることによって前記装置本体の転倒を防止する線状の固定具と、
装置本体から外部に突出する複数の取手部材と、を備え、
前記固定具は、一端部が前記固定部材に係止される一方、他端部が前記複数の取手部材の一つに係止されることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記取手部材は、前記固定具が係止された状態で装置本体内に収納可能であることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記固定具が複数設けられることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記複数の取手部材は装置本体の左右の側面部に夫々二つ設けられ、前記各固定具は、各側面部の後面部側に配置される取手部材に係止されることを特徴とする請求項3に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−242629(P2012−242629A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−113040(P2011−113040)
【出願日】平成23年5月20日(2011.5.20)
【出願人】(000006150)京セラドキュメントソリューションズ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】