説明

画像形成装置

【課題】適切なタイミングでの回復動作の実行、回復動作回数の削減によるスループットの向上の点で十分ではない。
【解決手段】印刷開始時にすべてのヘッド部11、12の累積印刷枚数が第2設定値未満である場合には、印刷指示に基づいて印刷を実行し、印刷動作が終了するまでに、ヘッド部11、12のいずれかの累積印刷枚数が第1設定値以上になったときには、ヘッド部11、12のいずれに対しても回復動作を行って、累積印刷枚数のカウント値をリセットする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像形成装置に関し、特に液滴を吐出する記録ヘッドを備える画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、ファクシミリ、複写装置、プロッタ、これらの複合機等の画像形成装置として、例えばインク液滴を吐出する液体吐出ヘッド(液滴吐出ヘッド)からなる記録ヘッドを用いた液体吐出記録方式の画像形成装置としてインクジェット記録装置などが知られている。この液体吐出記録方式の画像形成装置は、記録ヘッドからインク滴を、搬送される用紙(紙に限定するものではなく、OHPなどを含み、インク滴、その他の液体などが付着可能なものの意味であり、被記録媒体あるいは記録媒体、記録紙、記録用紙などとも称される。)に対して吐出して、画像形成(記録、印字、印写、印刷も同義語で使用する。)を行なうものであり、記録ヘッドが主走査方向に移動しながら液滴を吐出して画像を形成するシリアル型画像形成装置と、記録ヘッドが移動しない状態で液滴を吐出して画像を形成するライン型ヘッドを用いるライン型画像形成装置がある。
【0003】
なお、本願において、液体吐出記録方式の「画像形成装置」は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス等の媒体に液体を吐出して画像形成を行う装置を意味し、また、「画像形成」とは、文字や図形等の意味を持つ画像を媒体に対して付与することだけでなく、パターン等の意味を持たない画像を媒体に付与すること(単に液滴を媒体に着弾させること)をも意味する。また、「インク」とは、インクと称されるものに限らず、記録液、定着処理液、液体などと称されるものなど、画像形成を行うことができるすべての液体の総称として用い、例えば、DNA試料、レジスト、パターン材料、樹脂なども含まれる。また、「画像」とは平面的なものに限らず、立体的に形成されたものに付与された画像、また立体自体を3次元的に造形して形成された像も含まれる。
【0004】
ところで、液体吐出方式の画像形成装置において、記録ヘッドのノズルの吐出安定性を維持し、ノズル内のインク乾燥、ノズル内への埃混入防止のため、記録ヘッドのノズル面をキャッピングするキャップと、記録ヘッドのノズル面を払拭して清浄化するワイパ部材(ワイパブレード、ワイピングブレード、ブレードなどとも称される。)などを含む維持回復手段(回復手段)を備え、例えばノズルから増粘インクをキャップ内に排出した後、ノズル面をワイパ部材で払拭してノズルメニスカスを形成する回復動作(メンテナンス動作)などを行なう。
【0005】
ここで、回復動作を行うタイミングに関しては、異なる色の液滴を吐出する第1ノズル列群と第2ノズル列群とを備える記録ヘッドを用い、第1ノズル列群および第2ノズル列群それぞれのインク吐出状態を良好に保つための回復処理を個別に実行可能な回復処理手段と、第1及び第2ノズル列群のうち、少なくとも1つのノズル列群について回復処理を実行する条件が成立したときに、該ノズル列群の回復処理を実行するとともに、他のノズル列群について回復処理を実行する条件が成立する前の所定条件が成立していたときには他のノズル列群の回復処理を実行するよう制御する回復制御手段とを有するものが知られている(特許文献1)。
【0006】
なお、装置の放置時間が所定時間に達したときや連続印刷時間や連続印刷枚数が所定値に達したときにすべての記録ヘッドに対する回復動作を行うことも知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−238711号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、例えばライン型画像形成装置のように大量の印刷を行う装置において、ブラック用記録ヘッドとカラー用記録ヘッドを備え、各ヘッドについてそれぞれ独立して回復動作を行う回復手段を備える場合、例えば、予め定めた累積印刷枚数が所定枚数に達したときに回復動作を実行するようにすると、例えばブラック用記録ヘッドの回復動作を行った後、短時間でカラー用記録ヘッドの回復動作を行う事態が生じる。
【0009】
そこで、前記特許文献1に開示されている技術を適用して、いずれかの記録ヘッドについて累積印刷枚数が所定枚数に達したときには、他の記録ヘッドについて累積印刷枚数が所定枚数に達していないが、所定条件が成立していたときに、ブラック用記録ヘッド及びカラー用記録ヘッドのいずれについても回復動作を行うことが考えられる。
【0010】
しかしながら、このような構成にあっては、少なくともいずれかの記録ヘッドについて累積印刷枚数が所定枚数に達しない限り回復動作が行われないことになり、適切なタイミングでの回復動作の実行に十分ではなく、また、回復動作回数の削減によるスループットの向上の点でも十分ではない。
【0011】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、適切なタイミングで回復動作を行いつつ回復動作回数を低減してスループットを向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するために、本発明に係る画像形成装置は、
異なる色の液滴を吐出する少なくとも2つの独立した記録ヘッドと、
前記記録ヘッドの回復動作をそれぞれ行う回復手段と、
前記記録ヘッドを使用して印刷した前記回復動作からの累積印刷枚数をそれぞれカウントするカウント手段と、
前記回復手段による前記記録ヘッドの回復動作を制御する回復制御手段と、
前記回復動作を行う閾値となる前記累積印刷枚数の第1設定値と、前記第1設定値より少ない第2設定値とを格納する格納手段と、を備え、
前記回復制御手段は、
印刷を開始するとき、すべての記録ヘッドの前記累積印刷枚数が前記第2設定値未満であるときには、いずれかの記録ヘッドの前記累積印刷枚数が前記第1設定値以上になったときにすべての記録ヘッドに対する前記回復動作を行なう
構成とした。
【0013】
本発明に係る画像形成装置は、
異なる色の液滴を吐出する少なくとも2つの独立した記録ヘッドと、
前記記録ヘッドの回復動作をそれぞれ行う回復手段と、
前記記録ヘッドを使用して印刷した前記回復動作からの累積印刷枚数をそれぞれカウントするカウント手段と、
前記回復手段による前記記録ヘッドの回復動作を制御する回復制御手段と、
前記回復動作を行う閾値となる前記累積印刷枚数の第1設定値と、前記第1設定値より少ない第2設定値とを格納する格納手段と、を備え、
前記回復制御手段は、
印刷を開始するとき、すべての記録ヘッドの累積印刷枚数が前記第2設定値以上であるときには、印刷動作を開始する前に、前記第1設定値に達することを待たないで、すべての記録ヘッドに対する前記回復動作を行なう
構成とした。
【0014】
本発明に係る画像形成装置は、
異なる色の液滴を吐出する少なくとも2つの独立した記録ヘッドと、
前記記録ヘッドの回復動作をそれぞれ行う回復手段と、
前記記録ヘッドを使用して印刷した前記回復動作からの累積印刷枚数をそれぞれカウントするカウント手段と、
前記回復手段による前記記録ヘッドの回復動作を制御する回復制御手段と、
前記回復動作を行う閾値となる前記累積印刷枚数の第1設定値と、前記第1設定値より少ない第2設定値とを格納する格納手段と、を備え、
前記回復制御手段は、
印刷を開始するとき、前記累積印刷枚数が前記第2設定値以上である前記記録ヘッドと、前記累積印刷枚数が前記第2設定値未満である前記記録ヘッドとがあるときには、前記累積印刷枚数が前記第2設定値以上である前記記録ヘッドに対する前記回復動作を行ない、前記累積印刷枚数が前記第2設定値未満である前記記録ヘッドが前記第1設定値以上になったときに、いずれの記録ヘッドに対しても前記回復動作を行なう
構成とした。
【0015】
本発明に係る画像形成装置は、
異なる色の液滴を吐出する少なくとも2つの独立した記録ヘッドと、
前記記録ヘッドの回復動作をそれぞれ行う回復手段と、
前記記録ヘッドを使用して印刷した前記回復動作からの累積印刷時間をそれぞれカウントするカウント手段と、
前記回復手段による前記記録ヘッドの回復動作を制御する回復制御手段と、
前記回復動作を行う閾値となる前記累積印刷時間の第1設定値と、前記第1設定値より少ない第2設定値とを格納する格納手段と、を備え、
前記回復制御手段は、
印刷を開始するとき、すべての記録ヘッドの前記累積印刷時間が前記第2設定値未満であるときには、いずれかの記録ヘッドの前記累積印刷時間が前記第1設定値以上になったときにすべての記録ヘッドに対する前記回復動作を行なう
構成とした。
【0016】
本発明に係る画像形成装置は、
異なる色の液滴を吐出する少なくとも2つの独立した記録ヘッドと、
前記記録ヘッドの回復動作をそれぞれ行う回復手段と、
前記記録ヘッドを使用して印刷した前記回復動作からの累積印刷時間をそれぞれカウントするカウント手段と、
前記回復手段による前記記録ヘッドの回復動作を制御する回復制御手段と、
前記回復動作を行う閾値となる前記累積印刷時間の第1設定値と、前記第1設定値より少ない第2設定値とを格納する格納手段と、を備え、
前記回復制御手段は、
印刷を開始するとき、すべての記録ヘッドの累積印刷時間が前記第2設定値以上であるときには、印刷動作を開始する前に、前記第1設定値に達することを待たないで、すべての記録ヘッドに対する前記回復動作を行なう
構成とした。
【0017】
本発明に係る画像形成装置は、
異なる色の液滴を吐出する少なくとも2つの独立した記録ヘッドと、
前記記録ヘッドの回復動作をそれぞれ行う回復手段と、
前記記録ヘッドを使用して印刷した前記回復動作からの累積印刷時間をそれぞれカウントするカウント手段と、
前記回復手段による前記記録ヘッドの回復動作を制御する回復制御手段と、
前記回復動作を行う閾値となる前記累積印刷時間の第1設定値と、前記第1設定値より少ない第2設定値とを格納する格納手段と、を備え、
前記回復制御手段は、
印刷を開始するとき、前記累積印刷時間が前記第2設定値以上である前記記録ヘッドと、前記累積印刷時間が前記第2設定値未満である前記記録ヘッドとがあるときには、前記累積印刷時間が前記第2設定値以上である前記記録ヘッドに対する前記回復動作を行ない、前記累積印刷時間が前記第2設定値未満である前記記録ヘッドが前記第1設定値以上になったときに、いずれの記録ヘッドに対しても前記回復動作を行なう
構成とした。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る画像形成装置によれば、印刷を開始するとき、すべての記録ヘッドの累積印刷枚数又は累積印刷時間が第2設定値未満であるときには、いずれかの記録ヘッドの累積印刷枚数又は累積印刷時間が第1設定値(第1設定値>第2設定値)以上になったときにすべての記録ヘッドに対する回復動作を行なう構成としたので、適切なタイミングで回復動作を行いつつ回復動作回数を低減してスループットを向上することができる。
【0019】
本発明に係る画像形成装置によれば、印刷を開始するとき、すべての記録ヘッドの累積印刷枚数が第2設定値以上であるときには、印刷動作を開始する前に、第1設定値(第1設定値>第2設定値)に達することを待たないで、すべての記録ヘッドに対する回復動作を行なう構成としたので、適切なタイミングで回復動作を行いつつ回復動作回数を低減してスループットを向上することができる。
【0020】
本発明に係る画像形成装置によれば、印刷を開始するとき、累積印刷枚数が第2設定値以上である記録ヘッドと、累積印刷枚数が第2設定値未満である記録ヘッドとがあるときには、累積印刷枚数が第2設定値以上である記録ヘッドに対する回復動作を行ない、累積印刷枚数が第2設定値未満である記録ヘッドが第1設定値(第1設定値>第2設定値)以上になったときに、いずれの記録ヘッドに対しても回復動作を行なう構成としたので、適切なタイミングで回復動作を行いつつ回復動作回数を低減してスループットを向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る画像形成装置の全体構成を説明する概略構成図である。
【図2】同じく模式的平面説明図である。
【図3】記録ヘッド部を示す説明図である。
【図4】各記録ヘッド部と各メンテナンス装置の動作の説明に供する説明図である。
【図5】第1メンテナンス装置の移動手段の説明に供する説明図である。
【図6】第2メンテナンス装置の移動手段の説明に供する説明図である。
【図7】同装置の制御部の概要の説明に供するブロック説明図である。
【図8】同制御部による回復動作制御(メンテナンス処理)の説明に供するフロー図である。
【図9】図8に続く処理の説明に供するフロー図である。
【図10】図8に続く処理の説明に供するフロー図である。
【図11】図8に続く処理の説明に供するフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。まず、本発明に係る画像形成装置ついて図1ないし図3を参照して説明する。なお、図1は同画像形成装置の全体構成を説明する概略構成図、図2は同じく要部平面説明図、図3は同装置の記録ヘッド部の平面説明図(透過状態で示している)である。
【0023】
この画像形成装置は、ライン型画像形成装置であり、装置本体1と、用紙Pを積載し給紙する給紙トレイ2と、印刷された用紙Pを排紙積載する排紙トレイ3と、用紙Pを給紙トレイ2から排紙トレイ3まで搬送する搬送部4と、搬送部4によって搬送される用紙Pに液滴を吐出し印字する、単色の液滴を吐出する第1記録ヘッド部であるブラックヘッド部11及び複数色の液滴を吐出する第2記録ヘッド部であるカラーヘッド部12(両者を併せて「記録ヘッド部10」という。)と、ブラックヘッド部11の各ヘッドの維持回復(回復動作)を行う維持回復機構である第1メンテナンス装置51と、カラーヘッド部12の各ヘッドの維持回復を行う第2メンテナンス装置52を備えている。
【0024】
装置本体1は、図示しない前後側板及びステーなどで構成されており、給紙トレイ2上に積載されている用紙Pは、分離ローラ21及び給紙ローラ22によって1枚ずつ搬送部4に給紙される。
【0025】
搬送部4は、搬送駆動ローラ41Aと搬送従動ローラ41Bと、これらのローラ41A、41B間に掛け回された無端状の搬送ベルト43とを備えている。この搬送ベルト43の表面には幅方向に連続しない開口である複数の吸引孔が形成されており、搬送ベルト43の下部には用紙Pを吸引する吸引ファン44が配置されている。また、搬送駆動ローラ41A、搬送従動ローラ41B上部には、それぞれ搬送ガイドローラ42A、42Bが図示しないガイドに保持されて、自重にてベルト43に当接している。さらに、搬送ベルト43の裏面側にはプラテン部材45が配設されている。
【0026】
搬送ベルト43は、搬送駆動ローラ41Aが図示しないモータにより回転されることで周回移動し、用紙Pは搬送ベルト43上に吸引ファン44により吸い付けられ、搬送ベルト43の周回移動によって搬送される。なお、搬送従動ローラ41B、搬送ガイドローラ42A、42Bは搬送ベルト43に従動して回転する。
【0027】
ブラックヘッド部11は、図3に示すように、液滴を吐出する複数のノズル102を配列したノズル列を2列有するヘッド101を5個ずつノズル配列方向に千鳥状に2列配置した計10個のヘッド101で1ライン分のノズル列幅を形成した記録ヘッドユニット(ヘッドアレイ)である。このブラックヘッド部11は前述したように黒色(ブラック;K)の液滴を吐出する。
【0028】
カラーヘッド部12は、図3に示すように、液滴を吐出する複数のノズル102を配列したノズル列を2列有するヘッド101を5個ずつノズル配列方向に千鳥状に2列配置した計10個のヘッド101で1ライン分のノズル列幅を形成するヘッド列群12A、12B、12Cを有している。このカラーヘッド部12のヘッド列群12A、12B、12Cは、それぞれ、例えばシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の各色の液滴を吐出する。
【0029】
各色のライン構成は、上記に限るものではなく、各色の配置についても特に限定されない。ここでは、黒色の液滴を吐出するブラックヘッド部11をカラーヘッド部12よりも搬送方向の上流側に配置している。
【0030】
また、ブラックヘッド部11及びカラーヘッド部12は、それぞれ独立して、図示しない上下方向移動手段(ヘッド部移動手段)によって昇降される。
【0031】
また、図示しないが、ブラックヘッド部11、カラーヘッド部12には、各ヘッドに所要の色をインクを分配する分配部材がヘッド列(又はヘッド列群)に対応して設けられ、分岐部材の上流側には図示しないサブタンクが配置され、サブタンクとヘッド101との水頭差によって負圧を形成し、さらにサブタンク上流側にはインクを貯蔵する図示しないメインタンクが配置されている。
【0032】
第1メンテナンス装置51は、ブラックヘッド部11の各ヘッド101のノズル面103をキャッピングするキャップ手段501、ノズル面103を払拭するワイパ手段502などを備えている。また、第2メンテナンス装置52は、カラーヘッド部12の各ヘッド101のノズル面103をキャッピングするキャップ手段501を備えている。
【0033】
ここで、第1メンテナンス装置51は、搬送方向に沿って移動可能であり、ブラックヘッド部11よりも搬送方上流側を退避位置とする。第2メンテナンス装置52は、搬送方向に沿って移動可能であり、カラーヘッド部12より搬送方下流側を退避位置とする。これらの第1、第2メンテナンス装置51、52は、キャップ手段501等を媒体搬送方向に移動する後述するスライド移動手段及び各ヘッド部51、52のノズル面103に対して進退させる進退移動手段とを有し、独立して搬送方向及び進退方向に移動可能である。
【0034】
第1メンテナンス装置51のキャップ手段501にてヘッド101のノズル面103を密閉した状態で図示しない吸引手段においてヘッド101内のインクを吸引することで、ヘッド10の吐出性能を回復させる。また、メンテナンスにおける手段としてここでは吸引手段で説明しているが、ブラックヘッド部11の上流側から加圧手段によってインクを加圧することでノズル102から排出させることもできる。
【0035】
排紙トレイ3は、用紙Pの幅方向を規制する一対のサイドフェンス31と用紙Pの先端を規制するエンドフェンス32を備えている。
【0036】
次に、各記録ヘッド部と各メンテナンス装置の動作について図4を参照して説明する。
まず、待機状態にあるときには、図4(a)に示すように、第1メンテナンス装置51がブラックヘッド部11をキャッピングし、第2メンテナンス装置52がカラーヘッド部12をキャッピングして、各ヘッド101を保湿状態に保つ。また、この状態で、第1、カラーヘッド部11、12に対して吸引や加圧によるメンテナンス動作や、キャップ手段501に対する空吐出を行うことができる。
【0037】
また、モノクロ画像を形成するときには、図4(b)に示すように、第2メンテナンス装置52がカラーヘッド部12をキャッピングした位置(保湿位置)になり、第1メンテナンス装置51がブラックヘッド部11の上流側に退避し、第1記録ヘッド11のみが用紙搬送面に対して所定のギャップ(例えば1mm)が形成される高さ位置まで下降した状態にあり、搬送ベルト43で搬送される用紙Pに対して黒色の液滴を吐出してモノクロ画像を形成する。
【0038】
また、フルカラー画像を形成するときには、図4(c)に示すように、第1メンテナンス装置51がブラックヘッド部11の上流側に、第2メンテナンス装置52がカラーヘッド部12の下流側に退避し、第1、第2記録ヘッド11、12は用紙搬送面に対して所定のギャップ(例えば1mm)が形成される高さ位置まで下降した状態にあり、搬送ベルト43で搬送される用紙Pに対して所要の色の液滴を吐出してフルカラー画像を形成する。
【0039】
次に、第1メンテナンス装置51を移動する手段について図5を参照して説明する。
第1メンテナンス装置51は、スライダ510上に前述したキャップ手段501及びワイパ手段502が搭載されている。キャップ手段501には例えば図示しない吸引手段が接続されている。
【0040】
そして、第1メンテナンス装置51を用紙搬送方向に移動させるスライド移動手段60Aは、プーリ612,613と、プーリ612,613に巻き掛けられたベルト620と、ベルト620の一部にベース510を固定するための固定部材616と、プーリ612,613を回転自在に支持するとともに、スライダ510を支持するベース部材611と、プーリ612を回転駆動する駆動手段となるメンテナンス移動モータ617Aとを備えている。
【0041】
第1メンテナンス装置51のスライダ510は、メンテナンス移動モータ617Aが作動してプーリ612が回転駆動されてベルト620が周回移動すると、ベルト移動方向に移動するように構成されている。ベルト620は用紙搬送方向Xにおいて退避位置からブラックヘッド部51を経てカラーヘッド部52までスライダ510を移動可能に配設されている。
【0042】
第1メンテナンス装置51の移動位置は、固定部材616の移動軌道上に配置された検知センサS1〜S5により検知される。検知センサS1はカラーヘッド部52のヘッド列群12Cと対向する第1の対向位置を、検知センサS2はヘッド列群12Bと対向する第2の対向位置を、検知センサS3はヘッド列群12Aと対向する第3の対向位置を、検知センサS4はブラックヘッド部51と対向する第4の対向位置を、検知センサS5はカラーヘッド部52及びブラックヘッド部51とも対向しない退避位置をそれぞれ検知する。
【0043】
ベース部材611の一方の端部611a側には、図中上下方向に延在する駆動軸となるねじ付きシャフト619の一端619Aが螺合している。シャフト619の他端619Bには、ステッピングモータからなるメンテナンス移動モータ617Bによって回転駆動される駆動歯車627と噛み合う歯車618が固定されている。これら駆動歯車627、歯車618、シャフト619及びメンテナンス移動モータ617Bで進退移動手段70Aが構成されている。
【0044】
進退移動手段70Aは、メンテナンス移動モータ617Bが作動して駆動歯車627が回転すると、歯車618を介してシャフト619が回転してベース部材611が図中上下方向に移動する。移動方向に関してはメンテナンス移動モータ617Bの回転方向を正逆回転することで行える。スライダ510は、メンテナンス移動モータ617Bが例えば正転すると対向位置へ、逆回転すると対向位置からヘッド部51、52のノズル面103に当接してキャッピングするキャッピング位置へと移動可能とされている。対向位置とキャッピング位置の検知は、メンテナンス移動モータ617Bをステッピングモータで構成した場合には、パルス数によって制御してもよいし、ステッピングモータを用いない場合には、別途センサ等を設けて検知するようにしてもよい。
【0045】
そして、回復動作として加圧メンテナンスを行う場合には、第1メンテナンス装置51が回復実行を指示されたブラックヘッド部11又はカラーヘッド部12のヘッド列群12A〜12Cの下方に移動する。その後、図示しないサブタンクが加圧されることによりヘッドからインクが加圧排出され、その加圧排出されたインクはキャップ手段501内に排出される。キャップ手段501は図示しない吸引ポンプによりインクを吸引し図示しない廃液タンクへと排出する。その後、ワイパ手段502がヘッド101のノズル面103をワイピングし余剰インクの払拭とノズルメニスカスの形成を行う。
【0046】
また、吸引メンテナンスを行う場合には、第1メンテナンス装置51が回復実行を指示されたブラックヘッド部11又はカラーヘッド部12のヘッド列群12A〜12Cの下方に移動する。その後、第1メンテナンス装置51が上昇してキャップ手段501がヘッド101のノズル面103に密着し、図示しない吸引ポンプによりキャップ手段501内に負圧を形成してヘッド101からインクを吸引し、廃液タンクに排出する。その後、ワイパ手段502がヘッド101のノズル面103をワイピングし余剰インクの払拭とノズルメニスカスの形成を行う。
【0047】
なお、ワイピング条件は第1メンテナンス装置11の上昇によりワイパ押圧力を変えることが可能であるし、ワイピングの回数を変更することも可能である。
【0048】
次に、第2メンテナンス装置52を移動する手段について図6を参照して説明する。
第2メンテナンス装置52は、スライダ520上に前述したキャップ手段501が搭載されている。
【0049】
そして、第2メンテナンス装置52のスライダ520を移動するキャップ移動手段60Bは、プーリ602,603と、プーリ602,603に巻き掛けられたベルト630と、ベルト630の一部にカラーキャップ6bを固定するための固定部材601と、プーリ602,603を回転自在に支持するとともに、カラー用キャップ6bを支持するベース部材600と、プーリ603を回転駆動する駆動手段となるメンテナンス移動モータ617Cとを備えている。
【0050】
スライダ520は、メンテナンス移動モータ617Cの作動によりプーリ603が回転駆動してベルト630が周回移動すると、ベルト移動方向に移動される。ベルト630はカラーヘッド部52と退避位置との間で、図中左右方向にスライダ520をスライド移動させる。
【0051】
第2メンテナンス装置52の移動範囲は、カラーヘッド部12のヘッド列群12A〜12Cと対向しない退避位置からカラーヘッド部12の全てのヘッド列群12A〜12Cと対向する対向位置までの範囲とされている。この第2メンテナンス装置52の移動位置は、固定部材601の移動軌道上に配置された検知センサS6〜S10により検知される。
【0052】
検知センサS6はカラーヘッド部12の何れのヘッド列群12A〜12Cとも対向しない退避位置を、検知センサS7位置はヘッド列群12Cと対向する第5の対向位置を、検知センサS8はヘッド列群12Bと対向する第6の対向位置を、検知センサS9はヘッド列群12Aと対向する第7の対向位置をそれぞれ検知する。
【0053】
ベース部材600の一方の端部600a側には、図中上下方向に延在する駆動軸となるねじ付きシャフト610の一端610Aが螺合している。シャフト610の他端610Bには、ステッピングモータからなるメンテナンス移動モータ617Dによって回転駆動される駆動歯車608と噛み合う歯車609が固定されている。これら駆動歯車608、歯車609、シャフト610及びメンテナンス移動モータ617Dで進退移動手段70Bが構成されている。
【0054】
進退移動手段70Bは、メンテナンス移動モータ617Dが起動して駆動歯車608が回転すると、歯車609を介してシャフト610が回転することで、ベース部材600が図中上下方向に移動する。移動方向に関してはメンテナンス移動モータ617Dの回転方向を正逆回転することで行える。第2メンテナンス装置52は、メンテナンス移動モータ617Dが例えば正転すると対向位置からキャップ手段501がヘッド101のノズル面103に当接してキャッピングするキャップ位置へと移動可能とされている。対向位置とキャップ位置の位置検知は、メンテナンス移動モータ617Dをステッピングモータで構成した場合にはパルス数によって制御してもよいし、ステッピングモータを用いない場合には、別途センサ等を設けて検知するようにしてもよい。
【0055】
次に、この画像形成装置の制御部の概要について図7のブロック説明図を参照して説明する。
制御部800は、この画像形成装置全体の制御を司るCPU801と、このCPU801が実行する本発明に係る累積印刷枚数や累積印刷時間をカウントするカウント手段を兼ねるプログラム、回復動作の制御を行う回復制御手段を兼ねるプログラムを含む各種プログラム、その他の固定データを格納する本発明における格納手段を兼ねるROM802と、画像データ等を一時的に格納するRAM803と、装置の電源が遮断されている間もデータを保持するための不揮発性メモリ(NVRAM)804と、その他装置全体を制御するための入出力を処理するASIC805と、ホスト側とのデータ、信号の受信を行うためのホストI/F806と、I/O807と、ブラックヘッド部11及びカラーヘッド部12の各ヘッド101を駆動制御するためのヘッド駆動制御部808及びヘッドドライバ809を備えている。
【0056】
また、制御部800は、ブラックヘッド部11及びカラーヘッド部12を昇降させるヘッド部移動モータ810を駆動するヘッド部移動駆動部811と、搬送ベルト43を移動させる搬送ベルト駆動モータ812を駆動する搬送ベルト駆動部813と、吸引ファン44を駆動する吸引ファンモータ814を駆動する吸引ファン駆動部815と、第1メンテナンス装置51及び第2メンテナンス装置52を移動させるモータ群617(モータ617A〜617D)を駆動するメンテナンス手段移動駆動部816とを備えている。
【0057】
また、制御部800のI/O807には、前述したセンサS1〜S9、用紙Pに対する前処理液を塗布する図示しない処理液塗布装置の接続の有無を検知する用紙前処理検知センサ823、装置の環境温度及び環境湿度を検出する環境センサ824、用紙Pの種類を検知する用紙種類検知センサ825などの各種センサからの検出信号が入力されている。
【0058】
また、制御部800は操作パネル822との間で所要の情報の出力及び入力を行なう。
【0059】
この制御部800は、パーソナルコンピュータ(以下PCと称す)等の情報処理装置、イメージスキャナなどの画像読み取り装置、デジタルカメラなどの撮像装置などのホスト側からの画像データを含む印刷データ等をケーブル或いはネットを介してホストI/F806で受信する。
【0060】
CPU801は、ホストI/F806に含まれる受信バッファ内の印刷データを読み出して解析し、ASIC805にてデータの並び替え処理を行ってヘッド駆動制御部608に画像データを転送する。なお、画像出力するための印刷データのビットマップデータ(印刷ラスタデータ)への変換は、例えばROMにフォントデータを格納して行っても良いし、ホスト側のプリンタドライバで画像データをビットマップデータに展開し印刷データのビットマップデータ(印刷ラスタデータ)を作成した上で、該印刷ラスタデータをこの装置に転送するようにしても良い。
【0061】
ヘッド駆動制御部808は、印刷ラスタデータを受け取ると、このドットパターンデータ(印刷ラスタデータ)を、クロック信号に同期して、ヘッドドライバ809にシリアルデータで送出し、また所定のタイミングでラッチ信号をヘッドドライバに送出する。このヘッド駆動制御部808は、駆動波形(駆動信号)のパターンデータを格納したROM(ROM802で構成することもできる)と、このROMから読出される駆動波形のデータをD/A変換するD/A変換器を含む波形生成回路及びアンプ等で構成される駆動波形発生回路を含む。
【0062】
また、ヘッドドライバ809は、ヘッド駆動制御部808からのクロック信号及び画像データであるシリアルデータを入力するシフトレジスタと、シフトレジスタのレジスト値をヘッド駆動制御部からのラッチ信号でラッチするラッチ回路と、ラッチ回路の出力値をレベル変化するレベル変換回路(レベルシフタ)と、このレベルシフタでオン/オフが制御されるアナログスイッチアレイ(スイッチ手段)等を含み、アナログスイッチアレイのオン/オフを制御することで駆動波形に含まれる所要の駆動波形を選択的に記録ヘッド部10の各ヘッド101のアクチュエータ手段に印加してヘッドを駆動し、画像データを印刷してドットパターンラインを形成する。
【0063】
ここで、回復動作を行う閾値となるブラックヘッド部51、カラーヘッド部52による累積印刷枚数の第1設定値と、第1設定値より少ない第2設定値とが格納されている。累積印刷枚数が第1設定値以上になったときに実行する回復動作を「定期メンテナンス」と称する。なお、第1設定値、第2設定値は操作パネル822やホスト側の情報処理装置から可変することができるようにしてもよい。
【0064】
次に、制御部による本発明に係る回復動作(メンテナンス処理)の制御について図8ないし図11のフロー図を参照して説明する。
まず、図8を参照して、印刷実行(印刷開始)が指示されたとき、累積印刷枚数が第2設定値以上のヘッド部(ブラックヘッド部11、カラーヘッド部12の意味)があるか否かを判別する(ステップS1、以下、単に「S1」というように表記する。)。累積印刷枚数は、回復動作が行われたことを条件としてリセットスタートされる印刷枚数のカウント値である。
【0065】
ここで、累積印刷枚数が第2設定値以上のヘッド部がない、つまり、ブラックヘッド部11及びカラーヘッド部12のいずれも累積印刷枚数が第2設定値未満であるときには、図9に示す処理に移行する。これに対し、累積印刷枚数が第2設定値以上のヘッド部があるときには、累積印刷枚数が第2設定値以上のヘッド部がブラックヘッド部11及びカラーヘッド部12のいずれか一方であるか否かを判別する(S2)。
【0066】
そして、ブラックヘッド部11及びカラーヘッド部12のいずれか一方でないとき、すなわち、ブラックヘッド部11及びカラーヘッド部12のいずれも累積印刷枚数が第2設定値以上であるときには、図10に示す処理に移行する。これに対し、ブラックヘッド部11及びカラーヘッド部12のいずれか一方の累積印刷枚数が第2設定値以上であるときには、図11に示す処理に移行する。
【0067】
次に、図9を参照して、印刷開始時にすべてのヘッド部11、12の累積印刷枚数が第2設定値未満である場合には、印刷指示に基づいて印刷を実行する(S3)。このとき、印刷枚数は累積印刷枚数カウント手段にてカウントされる。
【0068】
そして、累積印刷枚数がヘッド部11、12の少なくともいずれかで第1設定値以上になったか否かを判別する(S4)。このとき、ヘッド部11、12のいずれも累積印刷枚数が第1設定値以上になっていなければ、指定された印刷枚数の印刷が終了したか否かを判別し(S5)、指定された印刷枚数の印刷が終了するまでステップS3に戻る。これにより、指定された印刷枚数の印刷が終了するまでヘッド部11、12のいずれも累積印刷枚数が第1設定値以上に達しなければ印刷動作が終了する。
【0069】
これに対し、印刷動作が終了するまでに、ヘッド部11、12のいずれかの累積印刷枚数が第1設定値以上になったときには、ヘッド部11、12のいずれに対しても回復動作を行う(S6)。その後、累積印刷枚数のカウント値をリセットする(S7)。そして、指定された印刷枚数の印刷が終了したか否かを判別し(S8)、指定された印刷枚数の印刷が終了するまでステップS3に戻る。
【0070】
つまり、印刷を開始する時にすべての記録ヘッドの累積印刷枚数が第2設定値未満であるときには、いずれかの記録ヘッドの累積印刷枚数が第1設定値以上になったときにすべての記録ヘッドに対する回復動作を行なう。これにより、すべての記録ヘッドについて定期メンテナンスを行う第1設定値までの累積印刷枚数を揃えることができ、以降の定期メンテナンス間隔を共通化することで、印刷中に定期メンテナンスが実行される回数を減らすことができ、印刷時間の短縮を行うことができる。
【0071】
例えば、定期メンテナンスを行う第1設定値を5000枚、第1設定値より少ない第2設定値を2500枚としたとき、印刷開始時にブラックヘッド部11及びカラーヘッド部12のいずれの累積印刷枚数も2500枚未満であるときには、その後の印刷動作でブラックヘッド部11及びカラーヘッド部12のいずれから第1設定値である5000枚に達したときに、ブラックヘッド部11及びカラーヘッド部12のいずれも回復動作を行う。これにより、それまでの累積印刷枚数はリセットされ、ブラックヘッド部11及びカラーヘッド部12のいずれも累積印刷枚数のカウントが開始されることになり、定期メンテナンス実行までの残存印刷枚数を揃えることができる。
【0072】
次に、図10を参照して、印刷開始時にすべてのヘッド部11、12の累積印刷枚数が第2設定値以上である場合には、印刷動作を開始する前に、ヘッド部11、12のいずれに対しても回復動作を行う(全ヘッド部メンテナンス、S9)。その後、累積印刷枚数のカウント値をリセットする(S10)。
【0073】
そして、印刷動作を行い(S11)、指定された印刷枚数の印刷が終了したか否かを判別し(S12)、累積印刷枚数が第1設定値に達したか否かを判別し(S13)、指定された印刷枚数の印刷が終了するまでに累積印刷枚数が第1設定値を達したときには、ステップS3に戻って、すべてのヘッド部11、12について回復動作を行い、指定された印刷枚数の印刷が終了したときに、この処理を終了する。
【0074】
このように印刷を開始する前にすべてのヘッド部の累積印刷枚数が第2設定値以上であるときには、印刷開始前にすべてのヘッド部の回復動作を行うことで、第1設定値までの残存印刷枚数が統一されるので、印刷中に定期メンテナンスが実行される回数を減らすことができ、印刷時間の短縮を行うことができる。
【0075】
次に、図11を参照して、印刷開始時にヘッド部11及び12のいずれかが累積印刷枚数が第2設定値以上である場合には、定期メンテナンスの実行時期の延長条件を満たしているか否かを判別する(S14)。
【0076】
定期メンテナンス条件を延長可能な条件との一つ例として、用紙にインクの定着性を高める処理液を塗布する用紙前処理手段を備える場合がある。用紙前処理装置は、普通紙に対して前処理液を塗布することで印刷用紙表面をコーティングし、印刷ドットの滲みを防止し、画像品質を向上させることができる。さらに、用紙表面に液体を塗布するので用紙から発生する紙粉の飛散を防止することもできる。そのため、連続印刷において用紙に前処理を行なうことで、ノズル面に紙粉が付着することを防止でき、定期メンテナンス間隔を増加することができる。
【0077】
また、別の例として環境湿度が高い場合があげられる。雰囲気湿度が上昇すれば紙粉の飛散が減少するためノズル面に紙粉が付着することを防止でき、定期メンテナンス間隔を増加することができる。
【0078】
また、別の例として、紙粉の発生しない用紙を使用する場合が挙げられる。紙粉の発生しない用紙とは、表面をコートされた用紙や、樹脂からなるフィルムやシートを用いる場合である。
【0079】
このとき、定期メンテナンスを延長可能な条件が満足されていないときには、印刷開始前に第2設定値を超えているヘッド部11又は12の回復動作を行なう(S15)。その後印刷を行い(S16)、指定された印刷枚数の印刷が終了したか否かを判別し(S17)、第1設定値に到達するまでに指定印刷枚数印刷終了したときには印刷動作を終了する。
【0080】
また、指定された印刷枚数の印刷が終了していない間は、第2設定値未満であったヘッド部による累積印刷枚数が第1設定値に達したか否かを判別し(S18)、第2設定値未満であったヘッド部による累積印刷枚数が第1設定値に達したときには、すべてのヘッド部11、12の回復動作を行い(S19)、累積印刷枚数をリセットして(S20)、ステップ19の印刷動作に戻る。
【0081】
このように、印刷開始時にヘッド部11及び12のいずれかが累積印刷枚数が第2設定値以上である場合には、当該第2設定値以上であるヘッド部について回復動作を行ない、その後、印刷開始時に累積印刷枚数が第2設定値未満であったヘッド部について第1設定値以上になったときに回復動作を行なうことで、以降の定期メンテナンス間隔が共通化され、印刷中に定期メンテナンスが実行される回数を減らすことができ、印刷時間の短縮を図れる。
【0082】
上述したように、本実施形態では、メンテナンス間隔を統一するために本来のメンテナンス設定値(第1設定値)よりも早めに回復動作(メンテナンス動作)が実行されるヘッド部が生じることがある。この場合、他のヘッド部はまだ連続印刷可能な状態にあるにもかかわらず、定期メンテナンスが行われることになるので、メンテナンスによってインクが無駄に使用されることになる。またワイピングによりヘッド面を擦ることになるためヘッドノズル面の表面処理も早めに劣化することが予想される。
【0083】
そこで、定期メンテナンス設定値到達以前にメンテナンスを行う場合、即ち、第1設定値に達するまでに行なう回復動作では、インク使用量を減らす回復動作(メンテナンス)を行うことが好ましい。加圧、吸引いずれのメンテナンス方式の場合も、本来の圧力値よりも低い圧力でメンテナンスを行うことで排出インク量を減らすことが可能となる。また、ワイピングに関しても、必要ワイピング回数や、ワイパ手段の押圧力を低めに設定することで、ヘッドのノズル面への負荷を軽減することができる。
【0084】
これらの累積印刷枚数カウント値と必要排出インク量及びワイピング条件はテーブルとしてROM802などの格納手段に予め格納しておき、それぞれのメンテナンス時にテーブルを参照して最適条件となるメンテナンスを実行すればよい。
【0085】
なお、上記実施形態では、累積印刷枚数を使用して回復動作のタイミングを制御しているが、累積印刷時間を使用しても同様な制御を行なうことができる。また、ライン型画像形成装置に適用した例で説明しているが、シリアル型画像形成装置にも同様に適用することができる。
【符号の説明】
【0086】
1 装置本体
3 搬送部
4 給紙部
10 記録ヘッド部
11 ブラックヘッド部
12 カラーヘッド部
12A、12B、12C ヘッド列群
51 第1メンテナンス装置
52 第2メンテナンス装置
101 ヘッド
102 ノズル
103 ノズル面
501 キャップ手段
502 ワイパ手段
800 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる色の液滴を吐出する少なくとも2つの独立した記録ヘッドと、
前記記録ヘッドの回復動作をそれぞれ行う回復手段と、
前記記録ヘッドを使用して印刷した前記回復動作からの累積印刷枚数をそれぞれカウントするカウント手段と、
前記回復手段による前記記録ヘッドの回復動作を制御する回復制御手段と、
前記回復動作を行う閾値となる前記累積印刷枚数の第1設定値と、前記第1設定値より少ない第2設定値とを格納する格納手段と、を備え、
前記回復制御手段は、
印刷を開始するとき、すべての記録ヘッドの前記累積印刷枚数が前記第2設定値未満であるときには、いずれかの記録ヘッドの前記累積印刷枚数が前記第1設定値以上になったときにすべての記録ヘッドに対する前記回復動作を行なう
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
異なる色の液滴を吐出する少なくとも2つの独立した記録ヘッドと、
前記記録ヘッドの回復動作をそれぞれ行う回復手段と、
前記記録ヘッドを使用して印刷した前記回復動作からの累積印刷枚数をそれぞれカウントするカウント手段と、
前記回復手段による前記記録ヘッドの回復動作を制御する回復制御手段と、
前記回復動作を行う閾値となる前記累積印刷枚数の第1設定値と、前記第1設定値より少ない第2設定値とを格納する格納手段と、を備え、
前記回復制御手段は、
印刷を開始するとき、すべての記録ヘッドの累積印刷枚数が前記第2設定値以上であるときには、印刷動作を開始する前に、前記第1設定値に達することを待たないで、すべての記録ヘッドに対する前記回復動作を行なう
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
異なる色の液滴を吐出する少なくとも2つの独立した記録ヘッドと、
前記記録ヘッドの回復動作をそれぞれ行う回復手段と、
前記記録ヘッドを使用して印刷した前記回復動作からの累積印刷枚数をそれぞれカウントするカウント手段と、
前記回復手段による前記記録ヘッドの回復動作を制御する回復制御手段と、
前記回復動作を行う閾値となる前記累積印刷枚数の第1設定値と、前記第1設定値より少ない第2設定値とを格納する格納手段と、を備え、
前記回復制御手段は、
印刷を開始するとき、前記累積印刷枚数が前記第2設定値以上である前記記録ヘッドと、前記累積印刷枚数が前記第2設定値未満である前記記録ヘッドとがあるときには、前記累積印刷枚数が前記第2設定値以上である前記記録ヘッドに対する前記回復動作を行ない、前記累積印刷枚数が前記第2設定値未満である前記記録ヘッドが前記第1設定値以上になったときに、いずれの記録ヘッドに対しても前記回復動作を行なう
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
異なる色の液滴を吐出する少なくとも2つの独立した記録ヘッドと、
前記記録ヘッドの回復動作をそれぞれ行う回復手段と、
前記記録ヘッドを使用して印刷した前記回復動作からの累積印刷時間をそれぞれカウントするカウント手段と、
前記回復手段による前記記録ヘッドの回復動作を制御する回復制御手段と、
前記回復動作を行う閾値となる前記累積印刷時間の第1設定値と、前記第1設定値より少ない第2設定値とを格納する格納手段と、を備え、
前記回復制御手段は、
印刷を開始するとき、すべての記録ヘッドの前記累積印刷時間が前記第2設定値未満であるときには、いずれかの記録ヘッドの前記累積印刷時間が前記第1設定値以上になったときにすべての記録ヘッドに対する前記回復動作を行なう
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
異なる色の液滴を吐出する少なくとも2つの独立した記録ヘッドと、
前記記録ヘッドの回復動作をそれぞれ行う回復手段と、
前記記録ヘッドを使用して印刷した前記回復動作からの累積印刷時間をそれぞれカウントするカウント手段と、
前記回復手段による前記記録ヘッドの回復動作を制御する回復制御手段と、
前記回復動作を行う閾値となる前記累積印刷時間の第1設定値と、前記第1設定値より少ない第2設定値とを格納する格納手段と、を備え、
前記回復制御手段は、
印刷を開始するとき、すべての記録ヘッドの累積印刷時間が前記第2設定値以上であるときには、印刷動作を開始する前に、前記第1設定値に達することを待たないで、すべての記録ヘッドに対する前記回復動作を行なう
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
異なる色の液滴を吐出する少なくとも2つの独立した記録ヘッドと、
前記記録ヘッドの回復動作をそれぞれ行う回復手段と、
前記記録ヘッドを使用して印刷した前記回復動作からの累積印刷時間をそれぞれカウントするカウント手段と、
前記回復手段による前記記録ヘッドの回復動作を制御する回復制御手段と、
前記回復動作を行う閾値となる前記累積印刷時間の第1設定値と、前記第1設定値より少ない第2設定値とを格納する格納手段と、を備え、
前記回復制御手段は、
印刷を開始するとき、前記累積印刷時間が前記第2設定値以上である前記記録ヘッドと、前記累積印刷時間が前記第2設定値未満である前記記録ヘッドとがあるときには、前記累積印刷時間が前記第2設定値以上である前記記録ヘッドに対する前記回復動作を行ない、前記累積印刷時間が前記第2設定値未満である前記記録ヘッドが前記第1設定値以上になったときに、いずれの記録ヘッドに対しても前記回復動作を行なう
ことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−61647(P2012−61647A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−206253(P2010−206253)
【出願日】平成22年9月15日(2010.9.15)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】