説明

画像形成装置

【課題】転写材の搬送を搬送手段に吸着して行う装置で、転写材を搬送する方向が上方または下方であっても、たるみを生じさせることなく転写材を搬送させ、さらに、モノクロ時に転写部の押圧を解除した時も転写材の搬送が搬送手段に吸着して行われるように、各転写手段に所定の電圧を印加して吸着搬送する転写搬送装置を提供する。
【解決手段】垂直方向に配設された複数の像担持体100BK、100C、100M、100Yと、各像担持体に転写材を搬送する搬送手段210と、搬送手段に配置され、各像担持体上に形成されたトナー像を転写材に転写する転写手段300BK、300C、300M、300Yとを有し、転写手段の押圧画解除されたときも、各転写手段は、所定の電圧が印加され、転写材を搬送手段210側に吸着することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多色のトナーを転写材に転写する画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
多色のトナーを転写材に転写する画像形成装置の構成として、特許文献1がある。特許文献1の構成は、図1に示すように、転写材を垂直方向に搬送する搬送転写ベルト8と、搬送ベルト8に沿ってイエロー、マゼンダ、シアン、ブラックの順に垂直に配置された画像形成部と、転写材を搬送転写ベルトに吸着させる吸着部材11とからなる。
【0003】
この構成のもと、転写材は、任意の画像形成部に形成されたトナー像が転写され、転写材に画像が形成される。この時、転写材は、吸着部材11により搬送転写ベルト8に吸着しながら、搬送されている。
【0004】
特許文献1は、使用しない色がある場合、その色に対応した画像形成部の像担持体に接触して転写材が搬送される構成となるため、使用しない色の像担持体が摩耗したり、転写材に転写されたトナー像が、トナー像が形成されない画像形成部の像担持体に転写したりしてしまうという問題がある。
【0005】
このため、特許文献2の図4に示すように、使用しない色の画像形成部を搬送転写ベルトから離間させて、使用しない色の像担持体に転写材を接しないようにすることにより、問題を解決している。
【0006】
【特許文献1】特開2001−188419号公報
【特許文献2】特開平5−323781号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1の構成に特許文献2の構成を採用した構成は、使用する色が一色である場合、長尺や幅広の転写材に適用した場合、転写材の自重によって、先端が下に落ちてしまったり、または搬送転写ベルトと使用しない色の画像形成部との空間に転写材が入り込んでしまったりしてしまう。
【0008】
この結果、画像形成部に摺った状態で転写材が搬送され、転写材に形成されたトナー像が壊れてしまうという問題が生じてしまう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記問題を解決するために、本発明は、請求項1の発明では、垂直方向に配設された複数の像担持体と、該各像担持体に転写材を搬送する搬送手段と、各該像担持体上に形成されたトナー像を該転写材に転写する転写手段とからなり、転写手段は、所定の電圧が印加され、転写材を搬送手段側に吸着することを特徴とする。
【0010】
請求項2の発明は、転写材を、長尺または所定の長さにカットされたものとし、請求項3の発明は、転写手段を、搬送手段内に配置されたローラからなること特徴とする。さらに、請求項4の発明は、各転写手段に、転写材の搬送方向に、順次、高い電圧を印加することを特徴とする。
【0011】
請求項5記載の発明は、各前記像担持体に、任意の色のみのトナー像を転写材に転写する作動手段が設けられていることを特徴等する。また、請求項6記載の発明は、前記搬送手段は、二つ以上のローラで架け渡されたループ状のベルトからなり、像担持体は、転写材の搬送方向に、イエロー、マゼンダ、シアン、ブラックの順に配置され、作動手段は、ベルトに接した状態且つ所定圧で、ブラックの像担持体に対応した転写手段を該像担持体に押圧または押圧の解除を行う第一作動手段と、ベルトに接した状態且つ所定圧で、イエロー、マゼンダ、シアンの各像担持体に対応した転写手段を各該像担持体に押圧または押圧の解除を行う第二作動手段とからなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、上記構成により、転写材の搬送が搬送手段に吸着して行われるため、転写材を搬送する方向が上方または下方であっても、たるみを生じさせることなく転写材を搬送することができる。さらに、ユニット部と解除部とからなる作動手段を備えることにより、先に述べた効果を得ながら、転写材に転写されたトナー像を壊すことなく次の工程に搬送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の概略図。
【図2】本発明の主要部の動作を示す図。
【図3】本発明の主要部の動作を示す図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1に、本発明の概略図を示す。この装置は、複数の像担持体(100Y、100M、100C、100Bk)と、各像担持体(100Y、100M、100C、100Bk)に転写材Pを搬送する搬送手段200と、各該像担持体(100Y、100M、100C、100Bk)上に形成されたトナー像を該転写材Pに転写する転写手段(300Y、300M、300C、300Bk)とからなる。
【0015】
搬送手段200は、ループ状のベルト210(無端ベルト)と駆動ユニット220従動ローラ230とからなり、垂直方向に配置されている。駆動ユニット220と従動ローラ230とによって、ベルト210は、張力がかかった状態で掛け渡されている。駆動ユニット220は、二つのローラ(221、222)からなり、一方のローラ211には、ベルト210の蛇行の矯正を行う矯正手段500が設けられている。
【0016】
また、ベルト210は、後に述べる作動手段400による転写手段(300Y、300M、300C、300Bk)の押圧が解除された時に、一定の張力が作用するように図示しない付勢手段による付勢されている。さらに、搬送手段200の上流には、図示しない給紙手段から転写材Pを搬送手段200側に繰り出す案内ローラ700が配置されるとともに、搬送手段200の下流には、転写材Pに転写されたトナー像を定着する定着手段800が配置されている。
【0017】
転写材Pの搬送経路は、案内ローラから転写材Pを像担持体(100Y、100M、100C、100Bk)側に送る第一搬送経路S1と、転写材Pにトナー像を形成する搬送手段200となる第二搬送経路S2と、トナー像が形成された転写材Pを搬送手段200から次工程に送る第三搬送経路S3とからなる。転写材Pは、案内ローラ700と定着手段800とにより保持されている。転写材Pは、図示しない給紙手段から案内ローラにより、順次繰り出され、第二搬送経路S2側に送られていく。
【0018】
像担持体(100Y、100M、100C、100Bk)は、転写材Pに転写するトナー像を形成するものであり、転写材Pの搬送方向の順に、垂直に、イエローY、マゼンタM、シアンC、ブラックBKが並列に転写ベルト210に配置されている。さらに、各像担持体(100Y、100M、100C、100Bk)の周辺には、除電装置10と帯電装置20と露光装置30と現像装置40とクリーニング装置50が配置されている。
【0019】
なお、この実施の形態では、各色の混色が生じたとしても、余り目立たないようにするために、転写材Pの搬送方向の順に、垂直に、イエローY、マゼンタM、シアンC、ブラックBK順に配置されているが、これに限定されることはなく、ブラックBK、シアンC、マゼンタM、イエローYとしてもよい。
【0020】
転写手段300は、先に述べたように、像担持体100に形成されたトナー像を転写するものであり、各色の像担持体(100Y、100M、100C、100Bk)毎に搬送手段200内に配置されている。各転写手段(300Y、300M、300C、300Bk)は、所定の電圧が印加されるように、図示しない電源に接続されている。また、各転写手段(300Y、300M、300C、300Bk)は、ローラからなり、作動手段400により、ベルト210を介して所定圧で像担持体(100Y、100M、100C、100Bk)に押圧するように構成されている。
【0021】
各転写手段(300Y、300M、300C、300Bk)に印加する電圧は略均一に設定されているが、転写材Pの搬送方向に、順次、高い電圧を印加してもよい。この設定は、例えば、印加する電圧が略均一に設定されている状態で、転写材Pに転写されたトナー上に新たなトナーが転写された場合、重なったトナー分だけ新しく転写されたトナーの付着力が弱くなってしまう。このため、転写材Pの搬送方向に、順次、高い電圧を印加することにより、重なったトナー分だけの付着力が補填される。
【0022】
作動手段400は、ベルト210を介して、任意の転写手段300を所定圧で像担持体100に押圧するものである。作動手段400は、Bk色の像担持体100Bkに対応した転写手段300Bkを所定圧で像担持体100Bkに押圧または解除する第一作動手段410と、YMCの各色の像担持体(100Y、100M、100C)に対応した転写手段(300Y、300M、300C)を同時に所定圧で像担持体(100Y、100M、100C)に押圧または解除する第二作動手段420とを備える。
【0023】
第一作動手段410は、駆動源(図示せず)とカム411と連結部材430aと連接部材440aと押圧部材450Bkとからなる。駆動源(図示せず)は、駆動力を発生させるものである。この駆動力は、像担持体100Bkに対して転写手段300Bkを所定圧に押圧させる。駆動源(図示せず)には駆動軸600が設けられ、この駆動軸600にはカム411が圧入されている。
【0024】
カム411は、駆動源(図示せず)の作用を揺動動作に変換するものであり、回転部411aとリンク部411bとからなる。回転部411aとリンク部411bとの間に軸受が介在されている。回転部411aは駆動軸600に圧入されている。リンク部411bは、レバーの形状を成し、連結部材430aに連結されている。
【0025】
連結部材430aは、カム411の動作を伝達するものであり、一端が連接部材440aに接続されて軸支されている。連接部材440aは、連結部材430aを介して、カム411の揺動動作を直線運動に変換するものであり、板状の部材からなる。
【0026】
押圧部材450Bkは、転写手段300Bkを押圧する部材であり、L字状に形成され、押圧部材450Bkの中心は搬送手段200のフレーム(図示せず)に軸支されている。さらに、押圧部材450Bkの一端は転写手段300Bkを軸支している。
【0027】
一方、押圧部材450Bkの他端は、連接部材440aの他端にバネ等からなる第一付勢手段460により連結されている。第一付勢手段460は、駆動源(図示せず)の駆動力を解除し、搬送手段200が像担持体100Bkから離れた時に、転写手段300Bkが搬送手段200に所定圧(ベルト210を介して、像担持体100Bkと転写手段300Bk)が圧接した力よりも弱い)で接した状態となるように付勢するものである。図2に示すように、具体的に、第一付勢手段460は、駆動源(図示せず)の駆動力とは反対(矢印A)方向に付勢されている。
【0028】
さらに、第二作動手段420は、第一作動手段410と同様に、駆動源(図示せず)とカム411と連結部材430bと連接部材440bと押圧部材(450Y、450M、450C)とからなる。なお、駆動源(図示せず)とカム411と押圧部材(450Y、450M、450C)は同じ構成なので説明を省略する。
【0029】
連結部材430bは、第一連結部材430b1と第二連結部材430b2との二つからなり、これら部材は、第一作動手段410で述べた連結部材430aと同じ形状となっている。
【0030】
第一連結部材430b1は、第一作動手段410の連結部材430aと同様に、搬送手段200のフレーム(図示せず)に軸支され、一端がリンク部411bに連結され、他端が連接部材440bに連結されている。さらに、第二連結部材430b2は、搬送手段200のフレームに軸支され、一端が連接部材440aの端部Aに連結されている。
【0031】
連接部材440bは、ベルト210の移動方向に沿って延びた板状の部材からなり、前に述べたように、第一連結部材430b1と第二連結部材430b2とにより、揺動可能に軸支されている。さらに、連接部材440aには、押圧部材(450Y、450M、450C)を取り付ける取付部480が設けられている。なお、この取付部は、Bkの押圧部材450Bkにも設けられている。
【0032】
取付部480は、押圧部材(450Y、450M、450C、450Bk)の他端の両側をバネ等からなる第二付勢手段470に連結されるように形成されている。具体的には、図2、3に示すように、各第二付勢手段470の先端が引っ掛かるようにフック状になっている。
【0033】
第二付勢手段470は、シートの搬送方向上流側に配置される第一バネ部470aと、シートの搬送方向下流側に配置される第二バネ部470bとからなる。第一バネ部470aと第二バネ部470bは、互いが押圧部材(450Y、450M、450C)を引っ張り合うように付勢(矢印B)されている。
【0034】
また、この付勢力は、駆動源(図示せず)の駆動力を解除し、搬送手段200(搬送手段も含む)が像担持体(100Y、100M、100C)から離れた時に、転写手段(300Y、300M、300C)が搬送手段200のベルト210に所定圧で接した状態となるようにするため、第一バネ部470aの付勢力が第二バネ部470bの付勢力よりも大きくなるように設定されている。
【0035】
以上の構成のもと、本発明の画像形成装置の動作を説明する。先ず、フルカラーの画像を転写材Pに形成する場合には、図示しない各駆動源を作動させて、第一連結部材430b1および第二連結部材430b2を各々、矢印方向Cに揺動させる。
【0036】
この動作により、各色に対応した転写手段(300Y、300M、300C、300Bk)は、ベルト210を介して、所定圧で各像担持体(100Y、100M、100C、100Bk)に押圧し、搬送された転写材Pに各色のトナー像が転写される。
【0037】
次に、転写材Pに黒色のトナー像のみを転写する場合には、駆動源(図示せず)を切り、第二作動手段420の作動を停止して、黒色以外の像担持体(100Y、100M、100C)に作用する黒色以外の各転写手段(300Y、300M、300C)への押圧力を解除する。
【0038】
この時、第二付勢手段470により、矢印Bに付勢して、各色に対応した転写手段(300Y、300M、300C、300Bk)が搬送手段200のベルト210に接した状態で、搬送手段200のベルト210は黒色以外の像担持体(100Y、100M、100C、100Bk)から離れる。これにより、黒色以外の色に対応する像担持体(100Y、100M、100C、100Bk)が所定圧でベルト210に接することなく、転写材Pに黒色のトナー像のみを転写することができる。
【0039】
また、これとは、逆に、転写材Pに黒色のトナー像以外の色のトナー像を転写する場合には、駆動源(図示せず)を切り、第一作動手段410の作動を停止する。この作動の停止により、黒色の像担持体(100Y、100M、100C、100Bk)に作用する転写手段(300Y、300M、300C、300Bk)への押圧力が解除される。
【0040】
この時、第一付勢手段460により、矢印Cに付勢して、黒色に対応した転写手段(300Y、300M、300C、300Bk)が搬送手段200のベルト210に接した状態で、搬送手段200のベルト210は黒色に対応した像担持体(100Y、100M、100C、100Bk)から離れる。この結果、転写材Pに黒色に対応する像担持体(100Y、100M、100C、100Bk)が所定圧でベルト210に接することなく、黒色以外の色のトナー像のみを転写することができる。
【0041】
また、給紙部分や定着部分でジャムが発生し、これに対応したジャム処理を行う場合、図3に示すように、図示しない操作部により、駆動ユニット220を矢印E方向に揺動させて、ベルト210から各像担持体(100Y、100M、100C、100Bk)から離れるようとする。
【0042】
この時、第一付勢手段470および第二付勢手段470の付勢力により、転写手段(300Y、300M、300C、300Bk)がベルト210に常に接する。さらに、これに加えて、転写材Pがベルト210に吸着した状態となるため、転写材Pを落下させることなくジャム処理を行うことができる。
【符号の説明】
【0043】
100 像担持体
200 搬送手段
300 転写手段
310 ベルト
400 作動手段
410 第一作動手段
420 第二作動手段
P 転写材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
垂直方向に配設された複数の像担持体と、該各像担持体に転写材を搬送する搬送手段と、前記搬送手段内に配置され、各該像担持体上に形成されたトナー像を該転写材に転写する転写手段と有し、
前記転写手段は各前記像担持体毎に設けられ、各前記転写手段は、所定の電圧が印加され、前記転写材を前記搬送手段側に吸着することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記転写材は、長尺または所定の長さにカットされたものであることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記転写手段は、ローラからなることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項4】
各前記転写手段は、前記転写材の搬送方向に、順次、高い電圧が印加されていることを特徴とする請求項1または3記載の画像形成装置。
【請求項5】
各前記転写手段には、前記搬送手段を介して、該転写手段を各々に対応した前記像担持体に押圧して、任意の色のみのトナー像を前記転写材に転写する作動手段が設けられていることを特徴等する請求項1乃至4いずれか記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記搬送手段は、二つ以上のローラで架け渡されたループ状のベルトからなり、
前記像担持体は、前記転写材の搬送方向に、イエロー、マゼンダ、シアン、ブラックの順に配置され、
前記作動手段は、
前記ベルトに接した状態且つ所定圧で、ブラックの前記像担持体に対応した前記転写手段を該像担持体に押圧または押圧の解除を行う第一作動手段と、前記ベルトに接した状態且つ所定圧で、イエロー、マゼンダ、シアンの各前記像担持体に対応した前記転写手段を各該像担持体に押圧または押圧の解除を行う第二作動手段とからなることを特徴とする請求項1乃至5いずれか記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−101263(P2013−101263A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−245694(P2011−245694)
【出願日】平成23年11月9日(2011.11.9)
【出願人】(000165136)桂川電機株式会社 (66)
【Fターム(参考)】