説明

画像形成装置

【課題】多色トナー像を構成する複数のトナー像の面積比率が変動することに起因する転写不良の発生を抑える。
【解決手段】2次転写電源82から2次転写対向ローラ24に出力する2次転写電流の出力目標値を画像面積率に基づいて決定する画像形成装置において、Y,M,C,Kという順で中間転写ベルト21に転写される4色のトナーのうち、少なくとも2つについて、中間転写ベルト21に対する転写の順番が先になる方のトナー像の2次転写ニップにおける単位面積あたりの必要転写電流量を、転写の順番が後になる方のトナー像の2次転写ニップにおける単位面積あたりの必要転写電流量よりも多く見積もって、出力目標値を決定するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中間転写体とこれに当接するニップ形成部材とによって形成した転写ニップに流す転写電流を、画像面積率に応じて変化させる構成を具備する複写機、ファクシミリ、プリンタ等の画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、画像形成装置として、中間転写方式を採用したものが広く知られている。中間転写方式は、感光体等の像担持体の表面に形成したトナー像を中間転写体に転写した後、中間転写体から記録シートに転写する方式である。中間転写体として、弾性体で構成された柔軟性に優れたものを用いることで、記録シートとトナー像との密着性を高めて転写性を向上させることができる。
【0003】
中間転写方式の画像形成装置としては、例えば特許文献1に記載のものが知られている。この画像形成装置は、像担持体として、Y(イエロー),M(マゼンタ),C(シアン),K(黒)トナー像をそれぞれ個別に形成するためのY,M,C,K感光体を有している。そして、無端状の中間転写ベルトに対してドラム上のY,M,C,K感光体をそれぞれ当接させてY,M,C,K用の1次転写ニップを形成している。無端移動に伴ってY,M,C,K用の1次転写ニップを順次通過していく中間転写ベルトの表面には、Y,M,C,K用の感光体上のY,M,C,Kトナー像が重ね合わせて転写される。この重ね合わせの転写によって中間転写ベルトの表面に形成された多色トナー像は、中間転写ベルトと転写ローラとの当接による2次転写ニップにおいて、タイミングを合わせてニップ内に挟み込まれた記録シートに2次転写される。
【0004】
かかる構成においては、重ね合わせの中間転写によって多色トナー像のトナー量が比較的多くなっていることから、2次転写ニップに対して比較的大きな値の2次転写電流を付与しないと、転写不良による画像濃度不足を引き起こしてしまう。この一方で、多色トナー像のトナー量に見合わないほどの大きな値の2次転写電流を付与すると、2次転写ニップ内で記録シートと中間転写ベルトとの間でトナーを介した放電を引き起こす。そして、その放電によってトナーを逆極性に帯電させてしまうことで、転写不良による画像濃度不足を引き起こしてしまう。
【0005】
かかる転写不良の発生を抑え得る画像形成装置としては、特許文献2に記載のものが知られている。この画像形成装置は、Y,M,C,Kトナー像についてそれぞれ、2次転写ニップに進入する中間転写ベルトの画像面積率(印字率や出力画素数)が高くなるほど、2次転写ニップにおける必要転写電流量を大きく見積もって、定電流制御における出力目標値を決定する。かかる構成によれば、2次転写ニップ内に進入する多色トナー像のトナー量に応じた2次転写電流を供給して、転写不良の発生を抑えることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、かかる構成においても、出力する画像によっては、画像全体のうち、特定の色の部分で転写不良を発生させることがあった。そこで、本発明者は、その原因について鋭意研究を行ったところ、次のようなことを見出した。即ち、多色トナー像を2次転写ニップで中間転写ベルトから記録シートに良好に2次転写するための適切な2次転写電流量の値は、各色トナー像の画像面積率の他、各色トナー像の単位面積あたりの帯電量にも影響を受ける。各色についてそれぞれ、トナー像の単位面積たりの帯電量が多くなるほど、そのトナー像を2次転写ニップで2次転写するための必要転写電流量が多くなる。但し、一般に、画像形成装置においては、現像装置内の現像剤のトナー濃度を調整したり、現像条件を調整したりして、トナーの単位重量あたりの帯電量(Q/M)を所定の範囲にした条件で静電潜像を現像するようになっている。このため、現像された直後のトナー像では、単位面積あたりの帯電量が所定の範囲になることから、トナー像の帯電量を考慮しなくても、トナー像の画像面積率だけを考慮すれば、2次転写電流量の適正値を正しく求め得ると考えられてきた。ところが、本発明者は、2次転写ニップに進入する直前のY,M,C,Kトナー像において、単位面積あたりの帯電量が互いに大きく異なってしまうことを実験によって見出した。
【0007】
このように帯電量が異なるのは、次に説明する理由による。即ち、現像された直後のY,M,C,Kトナー像では、単位面積あたりの帯電量が互いにほぼ同じ値になっている。ところが、Y,M,C,Kトナー像のうち、重ね合わせの1次転写の順番が最後でないものは、その後に、他色のトナー像を1次転写するための1次転写ニップを通過する。この際、1次転写電流の影響を受けて帯電量を上昇させる。Y,M,C,Kの各色トナー像は互いに1次転写ニップを通過する回数が異なることから、2次転写ニップに進入する直前では、単位面積あたりの帯電量が互いに異なってくるのである。すると、同じ面積の多色トナー像であっても、その多色トナー像に含まれるY,M,C,Kトナー像の面積比率が異なると、多色トナー像の全体における単位面積あたりの帯電量が異なってくる。にもかかわらず、各色トナー像の画像比率を考慮せずに、画像面積率だけを考慮して2次転写電流の出力目標値を決定していたため、各色トナー像の画像比率によっては、出力目標値を適正値から大きくずらして、転写不良を引き起こしていたのである。
【0008】
本発明は、以上の背景に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、多色トナー像を構成する複数のトナー像の面積比率が変動することに起因する転写不良の発生を抑えることができる画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は、自らの無端移動する表面に像担持体上のトナー像が中間転写せしめられる中間転写体と、前記中間転写体に当接して転写ニップを形成するニップ形成部材と、前記転写ニップに挟み込まれた記録シートを介して前記ニップ形成部材と前記中間転写体との間に流す転写電流を出力し、且つ所定のアルゴリズムと画像面積率とに基づいて前記転写ニップにおける必要転写電流量を算出した結果に基づいて転写電流の出力目標値を決定する転写電流出力手段とを備え、複数の像担持体から前記中間転写体に対して互いに異なる1次色のトナー像を所定の順序で重ね合わせて中間転写して多色トナー像を得るか、あるいは、前記中間転写体を周回移動させる毎に、異なる1次色のトナー像を所定の順序で像担持体から前記中間転写体に重ね合わせて中間転写して多色トナー像を得るかした後、前記転写ニップで前記中間転写体上の多色トナー像を記録シートに転写する画像形成装置において、互いに異なる順序で前記中間転写体に中間転写される複数のトナー像のうち、少なくとも2つについて、前記中間転写体に対する中間転写の順番が先になる方のトナー像の前記転写ニップにおける単位面積あたりの必要転写電流量を、中間転写の順番が後になる方のトナー像の前記転写ニップにおける単位面積あたりの必要転写電流量よりも多く見積もるように、前記転写電流出力手段を構成したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明においては、中間転写体に対する中間転写の順番が先になるトナー像の必要転写電流量を、順番が後になるトナー像の必要転写電流量よりも多く見積もって転写ニップに対する転写電流の出力目標値を決定することで、順番による必要転写電流量の違いを考慮しないで出力目標値を決定していた従来に比べて、出力目標値をより適正値に近づける。これにより、多色トナー像を構成する複数のトナー像の面積比率が変動することに起因する転写不良の発生を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施形態に係るプリンタを示す概略構成図。
【図2】同プリンタにおける電気回路の一部を示すブロック図。
【図3】シェブロンパッチを示す拡大模式図。
【図4】10ライン区画を説明するための模式図。
【図5】記録シートとこれに形成された画像との第1例を示す模式図。
【図6】記録シートとこれに形成された画像との第2例を示す模式図。
【図7】記録シートとこれに形成された画像との第3例を示す模式図。
【図8】1次転写電流と画像面積率との関係を示すグラフ。
【図9】同関係の変形例を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を画像形成装置としてのタンデム型の画像形成部によってカラー画像を形成するカラープリンタ(以下、単にプリンタという)に適用した実施形態について説明する。
まず、実施形態に係るプリンタの基本的な構成について説明する。図1は、実施形態に係るプリンタを示す概略構成図である。このプリンタは、図示しない光書込ユニット、タンデム画像形成部10、転写ユニット20、定着装置40、再送装置50などを備えている。タンデム画像形成部10は、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(黒)の各色トナー像を形成するための4つの画像形成ユニット1Y,M,C,Kを有している。
【0013】
転写ユニット20は、無端状の中間転写ベルト21、駆動ローラ22、従動ローラ23、2次転写対向ローラ24、4つの1次転写ローラ25Y,M,C,K、2次転写ローラ26などを有している。像担持体としての無端状の中間転写ベルト21は、側方からの眺めが逆三角形状の形状になる姿勢で、駆動ローラ22、従動ローラ23及び2次転写対向ローラ24に掛け回されている。そして、駆動ローラ22の回転駆動によって図中時計回り方向に無端移動せしめられる。感光体2Y,M,C,Kや、中間転写ベルト21は、120[mm/s]のプロセス線速で表面移動するように駆動される。
【0014】
中間転写ベルト20のループ内側には、駆動ローラ22、従動ローラ23、及び2次転写対向ローラ24の他に、4つの1次転写ローラ25Y,M,C,Kも配設されている。なお、1次転写ローラ25Y,M,C,Kや2次転写ローラ26の役割については後述する。
【0015】
タンデム画像形成部10は、4つの画像形成ユニット1Y,M,C,Kを中間転写ベルト21の上張架面に沿って水平方向に並べる姿勢で、転写ユニット20の上方に配設されている。画像形成ユニット1Y,M,C,Kは、図中反時計回り方向に回転駆動されるドラム状の感光体2Y,M,C,Kと、現像ユニット3Y,M,C,Kと、帯電手段4Y,M,C,Kとを有している。また、図示しないY,M,C,K用のドラムクリーニング装置も有している。
【0016】
感光体2Y,M,C,Kは、それぞれ中間転写ベルト21の上張架面に当接してY,M,C,K用の1次転写ニップを形成しながら、図示しない駆動手段によって図中反時計回り方向に回転駆動せしめられる。現像ユニット3Y,M,C,Kは、感光体2Y,M,C,Kに形成された静電潜像をY,M,C,Kトナーによって現像するものである。また、帯電手段4Y,M,C,Kは、感光体2Y,M,C,Kの表面をトナーの帯電極性と同じ極性に一様に帯電せしめるものである。実施形態に係るプリンタでは、感光体2Y,M,C,Kの表面が約−500[V]に帯電せしめられる。
【0017】
Y,M,C,K用の1次転写ニップの下方では、中間転写ベルト21のループ内で、1次転写ローラ25Y,M,C,Kが中間転写ベルト21を感光体2Y,M,C,Kに向けて押圧している。これら1次転写ローラ25Y,M,C,Kには、1次転写電源81Y,M,C,Kによって1次転写バイアスが印加される。
【0018】
1次転写ローラ25Y,M,C,Kは、それぞれ芯金とこれの表面上に被覆された弾性層とを有するローラである。弾性層は、イオン導電剤が分散された樹脂を発泡させた導電性スポンジからなり、三菱化学製ハイレスターUP(MCP−HT450)を用いて印加電圧100[V]の条件で測定した体積抵抗率が次のようになっている。即ち、温度25[℃]、湿度40[%]の環境(以下、「実験室環境」という)下で約4E8[Ω・cm]であり、且つ、温度27[℃]、湿度80%の環境(以下、「HH環境」という)下で約1E8[Ω・cm]である。感光体2Y,M,C,Kの回転軸心に対し、1次転写ローラ25Y,M,C,Kの回転軸心を、約3[mm]ほどベルト移動方向下流側にずらしたレイアウトになっている。
【0019】
カーボンが分散されたポリアミドイミド樹脂からなる厚さ80[μm]の中間転写ベルト21は、弾性率が3.5[GPa]よりも大きい値になっている。また、三菱化学製ハイレスターUP(MCP−HT450)を用いて印加電圧100[V]の条件で測定した体積抵抗率が次のようになっている。即ち、実験室環境下で約3E11[Ω・cm]、温度27[℃]であり、且つ、HH環境下で約2E9[Ω・cm]である。
【0020】
タンデム画像形成部10の上方には、図示しない光書込ユニットが配設されている。この光書込ユニットは、帯電手段4Y,M,C,Kによって一様帯電せしめられた感光体2Y,M,C,Kの表面に対し、走査光Lによる光走査を行って、露光部の電位を約−30[V]まで減衰させる。露光部が周囲の地肌部(−500V]よりも低電位である静電潜像となる。感光体2Y,M,C,Kに形成された静電潜像は、現像ユニット3Y,M,C,Kによって現像されてY,M,C,Kトナー像になる。現像ユニット3Y,M,C,Kは、感光体2Y,M,C,K上に全ベタ状の静電潜像が形成された場合、それを約0.45[mg/cm]のトナー付着量で現像した全ベタY,M,C,Kトナー像を得るようになっている。
【0021】
感光体2Y,M,C,K上に形成されたY,M,C,Kトナー像は、上述したY,M,C,K用の1次転写ニップにて、中間転写ベルト21のおもて面に重ね合わせて1次転写される。これにより、中間転写ベルト21のおもて面には、多色トナー像が形成される。
【0022】
本プリンタにおいては、帯電手段4Y,M,C,Kとして、帯電バイアス電源80Y,M,C,Kによって帯電バイアスが印加される帯電部材を感光体2Y,M,C,Kに当接又は近接せしめた状態で、帯電部材と感光体2Y,M,C,Kとの間に放電を生じせしめて感光体2Y,M,C,Kを一様帯電させるものを採用している。このような帯電手段4Y,M,C,Kに代えて、スコロトロン帯電器などを採用してもよい。
【0023】
転写ユニット20は、中間転写ベルト21の下方に2次転写ローラ26を有している。ニップ形成部材としての2次転写ローラ26は、接地された状態で、中間転写ベルト21における2次転写対向ローラ24に対する掛け回し箇所にベルトおもて面側から当接して2次転写ニップを形成している。これに対し、2次転写ニップの上方にて、中間転写ベルト21を掛け回している2次転写対向ローラ24には、2次転写電源82により、トナーの帯電極性と同極性の2次転写バイアスが印加される。これにより、2次転写対向ローラ24と2次転写ローラ26との間の2次転写ニップには、トナーを2次転写対向ローラ24側から2次転写ローラ26側に静電移動させる2次転写電界が形成される。
【0024】
ベルトループ内側に配設された2次転写対向ローラ24の直径は16[mm]である。また、その体積抵抗率は約1E4[Ω・cm]である。一方、ベルトループ外側に配設された2次転写ローラ26は、直径12[mm]の芯金とこれの表面上に被覆された弾性層とを有する直径24[mm]ローラである。弾性層は、イオン導電剤が分散された樹脂を発泡させた導電性スポンジからなり、三菱化学製ハイレスターUP(MCP−HT450)を用いて印加電圧100[V]の条件で測定した体積抵抗率が次のようになっている。即ち、実験室環境で約5E8[Ω・cm]、HH環境で約2E8[Ω・cm]である。
【0025】
2次転写ニップには、記録シートが所定のタイミングで送り込まれる。そして、中間転写ベルト21上の多色トナー像が、ニップ圧や2次転写電界の作用によって記録シートに一括2次転写される。
【0026】
2次転写ニップで多色トナー像が2次転写された記録シートは、2次転写ニップを出た後、図中反時計回り方向に無端移動せしめられる用紙搬送ベルト39の上張架面に吸着されて定着装置40内に送り込まれる。そして、定着装置40内において、ハロゲンランプ等の発熱源を内包する加熱定着ローラ41と、これに向けて押圧される加圧ローラ42との当接による定着ニップに挟み込まれ、加圧や加熱処理によるトナー像の定着処理が施される。このようにしてトナー像が定着せしめられた記録シートは、図示しない排出ローラ対を経由して機外へと排出される。
【0027】
定着装置40から排出された記録シートについては、そのまま排紙ローラ対に送る場合と、排紙ローラ対に送らずに、再送装置50に送る場合とがある。具体的には、記録シートの第1面だけに画像を形成する片面モードのプリントジョブを実施する際には、定着装置40から排出された記録シートを例外なく排紙ローラ対に送る。これに対し、記録シートの両面に画像を形成する両面モードのプリントジョブを実施する際において、定着装置40から排出された記録シートが第1面だけにトナー像を担持するものである場合には、それを排紙ローラ対に送らずに、再送装置50に送る。但し、両面モードであっても、定着装置40から排出された記録シートが両面にトナー像を担持するものである場合には、それを排紙ローラ対に送る。定着装置40を通過した後の記録シートを排紙ローラ対に送るのか、再送装置50に送るのかの切り換えは、図示しない切り換え爪によるシート搬送先の切り換えによって行われる。
【0028】
再送装置50は、定着装置40から送られてくる記録シートをスイッチバック路51でスイッチバック搬送することで、その上下を反転させる。その後、記録シートをスイッチバック路52に送る。スイッチバック路52を通過した記録シートは、記録シートを図示しない給紙カセットから2次転写ニップに搬送するための給紙路の途中に送り込まれる。これにより、上下を反転させた状態で、2次転写ニップに再送される。
【0029】
なお、給紙路の後半領域では、記録シートは、後述する抵抗測定ローラ対31とレジストローラ対32とを順次通過する。再送装置50は、記録シートを給紙路における抵抗測定ローラ対31よりも上流側の位置に送り込む。よって、記録シートは、給紙カセットから送り出された直後のものであるか、再送値50によって再送されたものであるかにかかわらず、給紙路内において、抵抗測定ローラ対31とレジストローラ対32とを必ず経由することになる。
【0030】
レジストローラ対32は、2つのローラの回転を停止させた状態で、記録シートの先端が突き当てられることで、記録シートのスキューを矯正する。その後、2つのローラを回転させて記録シートの先端部をレジストニップ内にくわえ込むが、その後すぐにローラの回転を停止させる。そして、記録シートを2次転写ニップでベルト上のトナー像に同期させ得るタイミングで、ローラの回転を再開する。
【0031】
図2は、本プリンタにおける電気回路の一部を示すブロック図である。同図において、制御手段たる制御部200は,演算手段たるCPU200a(Central Processing Unit)、不揮発性メモリたるRAM200c(Random Access Memory)、一時記憶手段たるROM200b(Read Only Memory)等を有している。制御部200は,装置全体の制御を司るものであり、様々な機器やセンサが接続されているが、同図では、それら機器の一部だけを示している。制御部200は、RAM200cやROM200b内に記憶している制御プログラムに基づいて、各機器の駆動を制御する。また、外部のパーソナルコンピューター等から送られてくる画像データ(露光時の書き込み信号)に基づいて、Y,M,C,Kの一次転写電流値を決定し、決定した一次転写電流値となるように、Y,M,C,K用の一次転写電源81Y,M,C,Kを制御する。かかる制御部200は、一次転写電源81Y,M,C,Kとともに1次転写電流出力手段として機能している。なお、一次転写電源81Y,M,C,Kからの1次転写電流の出力の目標値は、制御部200からPWM信号として出力されて、一次転写電源81Y,M,C,Kに入力される。
【0032】
また、制御部200は、図示しないメイン電源スイッチがONされた直後や、所定枚数のプリントを実施する毎に、位置ズレ量補正処理を実施するようになっている。そして、この位置ズレ量補正処理において、中間転写ベルト21に、図3に示されるシェブロンパッチPVと呼ばれる複数のトナー像からなる位置ズレ検知用画像を形成する。図2に示した光学センサユニット86は、その発光手段から発した光を集光レンズに通した後、中間転写ベルト21の表面で反射させ、その反射光を自らの受光手段で受光して受光量に応じた電圧を出力する。中間転写ベルト21に形成されたシェブロンパッチPV内のトナー像が光学センサユニット86の直下を通過する際には、光学センサユニット86の受光手段による受光量が大きく変化する。これにより、制御部200は,中間転写ベルト21に形成されたシェブロンパッチPV内における各トナー像を検知することができる。このように、光学センサユニット86は、制御部200との組合せによって像検知手段として機能している。なお、発光手段としては、トナー像を検出するために必要な反射光を作り得る光量をもつLED等が用いられている。また、受光手段としては,多数の受光素子が直線状に配列されたCCDなどが用いられている。
【0033】
制御部200は、中間転写ベルト21に形成したシェブロンパッチPV内の各トナー像を検知することで、各トナー像における副走査方向(ベルト移動方向)の位置を検出する。シェブロンパッチPVは、図3に示すように、Y,M,C,Kの各色のトナー像を主走査方向(レーザー光が感光体表面上で走査する方向)から約45[°]傾けた姿勢で、副走査方向であるベルト移動方向に所定ピッチで並べたラインパターン群である。このようなシェブロンパッチPV内のY,C,Mトナー像について,Kトナー像との検知時間差を読み取っていく。同図では、図紙面上下方向が主走査方向に相当し、左から順に、Y,M,C,Kトナー像が並んだ後、これらとは姿勢が90[°]異なっているK,C,M,Yトナー像が更に並んでいる。基準色となるKとの検出時間差tky,tkc,tkmについての実測値と理論値との差に基づいて、各色トナー像の副走査方向のズレ量、即ち位置ズレ量を求める。そして、その位置ズレ量に基づいて、不図示の光書込ユニットの感光体に対する光書込開始タイミングを補正して、感光体や中間転写ベルト21の速度変動に起因する各色トナー像の位置ズレを低減する。
【0034】
次に、本プリンタの特徴的な構成について説明する。
中間転写ベルト21に対して、Y,M,C,K用の1次転写ローラ25Y,M,C,Kを介して1次転写バイアスを印加する1次転写電源81Y,M,C,Kは、それぞれ所定の目標値と同じ値の転写電流を出力する定電流制御、あるいは目標値と同じ値の電圧を出力する定電圧制御を実施する。定電流制御又は定電圧制御における目標値は、それぞれ、1次転写ニップ出口及びその近傍における感光体上のトナー像の主走査方向(感光体軸線方向)における画像面積率に基づいて決定される。具体的には、感光体の表面は、副走査方向(感光体表面移動方向)において、ページの先頭を基準にして、図4に示されるように、10画素分ずつの領域毎に理論上の区分けがなされる。そして、区分けによる各区画(以下、「10ライン区画」という)には、それぞれ主走査方向に一直線上に並ぶ画素の集合からなる画素ラインが10ラインずつ含まれている。それぞれの画素ラインについては、全画素数に対する画像部の画素数の割合が画像面積率として求められる。そして、10個の画素ラインの画像面積率の平均値が、「10ライン区画」における平均画像面積率として求められる。1次転写電流又は1次転写電圧の目標値は、複数の「10ライン区画」のうち、1次転写ニップ出口を通過中の「10ライン区画」の平均画像面積率に応じたものが決定される。そして、その「10ライン区画」が1次転写ニップ出口を通過している最中には、その目標値と同じ出力値になるように1次転写電源(81Y,M,C,K)からの出力が調整される。その「10ライン区画」における最下流側の画素ラインが1次転写ニップ出口を通過すると、1次転写電源からの出力目標値が、次の「10ライン区画」の平均画像面積率に応じたものに変更される。
【0035】
1次転写ニップ出口の付近における平均画像面積率に基づいて1次転写電流又は1次転写電圧の目標値を決定するのは、次に説明する理由からである。即ち、感光体と中間転写ベルト21との間で流れる電流の殆どは、感光体と中間転写ベルト21とが離間する1次転写ニップ出口における両者間での剥離放電によるものである。1次転写ニップ出口において、1次転写電源(81Y,M,C,K)からの電流供給量が比較的少ないにもかかわらず、感光体の画像面積率が比較的低いと、1次転写電源から供給される電流の殆どが感光体の非画像部とベルトとの間の剥離放電に使われてしまう。そして、感光体の画像部には殆ど電流が流れないことによって転写不良が発生してしまう。1次転写ニップ出口の付近における平均画像面積率に応じた転写電流を流すことで、感光体の画像部に適度な電流を流すとともに、感光体の画像部とベルトとの電位差を放電開始電圧よりも小さくすることが可能になる。
【0036】
図1において、2次転写対向ローラ24に2次転写バイアスを印加する2次転写電源82は、所定の出力目標値と同じ値の2次転写電流を出力する定電流制御を実施する。その出力目標値は、2次転写ニップ出口及びその近傍における中間転写ベルト21上のトナー像の主走査方向(ベルト幅方向)における画像面積率に基づいて決定される。具体的には、中間転写ベルト21の表面は、感光体の表面と同様に、副走査方向(ベルト表面移動方向)において、ページの先頭を基準にして、10ライン区画毎に区分けされる。10ライン区画における10本の画素ラインについては、全画素数に対する画像部の画素数の割合が画像面積率として求められる。そして、10個の画素ラインの画像面積率の平均値が、「10ライン区画」における平均画像面積率として求められる。2次転写電流の目標値は、複数の「10ライン区画」のうち、2次転写ニップ出口を通過中の「10ライン区画」の平均画像面積率に応じたものが決定される。そして、その「10ライン区画」が2次転写ニップ出口を通過している最中には、その目標値と同じ出力値になるように2次転写電源82からの出力が調整される。その「10ライン区画」における最下流側の画素ラインが2次転写ニップ出口を通過すると、2次転写電源82からの出力目標値が、次の「10ライン区画」の平均画像面積率に応じたものに変更される。
【0037】
図5は、記録シートとこれに形成された画像との第1例を示す模式図である。図示の記録シートは、A3サイズの普通紙であり、プリンタ内において図中矢印A方向に搬送される。1次転写ニップ内では、この矢印A方向が副走査方向と同じ方向になる。記録シートには、副走査方向に延在する帯状の画像が形成されており、この画像の主走査方向(図中左右方向)における長さは29.7[mm]である。A3サイズの記録シートの幅は297[mm]である。画像は記録シートにおける副走査方向の全域に渡って延在しているので、副走査方向の位置にかかわらず、画像面積率は10[%]のまま一定である。つまり、図示の画像を出力する際には、1次転写ニップ出口に進入している「10ライン区画」における平均画像面積率が何れも10[%]となる。よって、この画像を出力する際には、図4の電流波形とは異なり、一定の2次転写電流が画像先端から後端まで出力され続ける。
【0038】
図6は、記録シートとこれに形成された画像との第2例を示す模式図である。記録シートには、副走査方向に延在する帯状の画像部が2つが形成されており、これら画像部の主走査方向における長さはそれぞれ29.7[mm]である。2つの画像部は記録シートにおける副走査方向の全域に渡って延在しているので、副走査方向の位置にかかわらず、画像面積率は20[%]のまま一定である。
【0039】
図7は、記録シートとこれに形成された画像との第3例を示す模式図である。この画像は、主走査方向の長さが一定ではなく、その長さは副走査方向の位置によって様々である。図示している画像領域では、10個の画素ラインのうち、副走査方向の先頭から5個分の画素ラインでは画像面積率がそれぞれA[%]になっている。これに対し、後端側の5個分の画素ラインでは画像面積率がそれぞれB[%]になっている。このような「10ライン区画」においては、平均画像面積率が(A×5+B×5)/10[%]になる。
【0040】
現像ユニット3Y,M,C,K内におけるY,M,C,Kトナー像の単位重量あたりの帯電量が互いに同じであったとする。そして、感光体2Y,M,C,K上で現像されたY,M,C,Kトナー像が、互いに独立した状態で1次転写されたとする。すると、それらY,M,C,Kトナー像は、1次転写された直後には、単位面積あたりの帯電量が互いにほぼ同じである。しかしながら、2次転写ニップの直前まで移動した時点では、それらY,M,C,Kトナー像の単位面積あたりの帯電量が異なってくる。これは、Y,M,C,Kトナー像の1次転写ニップ通過回数が互いに異なるからである。具体的には、トナー像は1次転写ニップ内において1次転写電流の影響を受けて、現像直後よりも帯電量を少し上昇させる。Y,M,C,Kトナー像のうち、1次転写工程が最後になるKトナー像は、K用の1次転写ニップしか通過しない。よって、1次転写ニップを通過することによるチャージアップを1回しか起こさない。ところが、Cトナー像は、C,K用の1次転写ニップを通過するので、ニップ通過に伴うチャージアップを2回引き起こす。また、Mトナー像は、M,C,K用の1次転写ニップを通過することから、ニップ通過に伴うチャージアップを3回引き起こす。また、Yトナー像は、Y,M,C,K用の1次転写ニップを通過することから、ニップ通過に伴うチャージアップを4回引き起こす。このように、チャージアップ回数が互いに異なることから、2次転写ニップに進入する直前における帯電量が互いに異なるのである。
【0041】
一般に、Y,M,C,Kトナー像の2次転写ニップ直前における単位面積あたりの帯電量をQY,QM,QC,QKで表すと、「|QY|≧|QM|≧|QC|>|QK|」という関係になる。なお、1次転写ローラ25Y,M,C,Kの軸心を感光体2Y,M,C,Kの軸心よりもベルト移動方向下流側にずらして配設している場合には、前述のような関係になる傾向がより強くなる。1次転写ニップ出口での放電量が多くなるからである。
【0042】
また、実施形態に係るプリンタでは、上流側の1次転写ニップで中間転写ベルト21上に1次転写されたトナー像が下流側の1次転写ニップで感光体に逆転写してしまうことを抑える目的で、図8に示されるような特性で1次転写電流の出力目標値を決定するように、1次転写電源81Y,M,C,Kを構成している。図示のように、1次転写ニップの位置がベルト移動方向下流側になるほど、1次転写電流の出力目標値を小さくするのである。このため、Y,M,C,Kトナーの帯電量が2次転写ニップの直前で前述のような関係になる傾向がより一層強くなる。
【0043】
本発明者は、実施形態に係るプリンタと同様の構成のプリント試験機を用意した。そして、このプリント試験機を用いて、株式会社リコー社製のNBSリコーマイペーパー(A3サイズ)に対して、互いに独立したY,M,C,Kトナー像を具備するテスト画像を出力した。2次転写電流の出力目標値については、次の表1における実験番号1〜4のように計算するように、2次転写電源82を構成した。何れの実験番号においても、Y,M,C,Kトナー像について、平均画像面積率ηy,ηm,ηc,ηkに対して同じ係数を乗じて2次転写電流の適正値を算出し、それらの合計を出力目標値としている。例えば、実験番号1において、互いに独立した平均画像面積率ηy=5[%]のYトナー像と、平均画像面積率ηm=10[%]のMトナー像と、平均画像面積率ηc=15[%]のCトナー像と、平均画像面積率ηk=20[%]のKトナー像とを具備するテスト画像を出力する場合、2次転写電流の出力目標値は、「−15−10.5×(0.05+0.1+0.15+0.2)=−20.25[μA]になる。
【表1】

【0044】
表1に示されるように、実験番号1、2においては、C,Kトナー像の画像濃度が薄くなっている。また、実験番号3,4においては、Y,M,Cトナー像の画像濃度が薄くなっている。これらは、表2のように、Y,M,C,Kトナー像の帯電量が互いに異なることにより、4色全体としての2次転写電流量が適正値からずれているからだと考えられる。なお、トナーの帯電量については、トレック吸引式小型帯電量測定装置Model 201HSを用いて測定した。
【表2】

【0045】
次に、本発明者らは、各色のトナー像についてそれぞれ、2次転写ニップに進入する直前の帯電量に応じた係数を用いるアルゴリズムで、2次転写電流の適正値を求めるように2次転写電源82を構成して、プリントテストを実施した。2次転写電流については、次の表3のようにして計算させるようにした。すると、Y,M,C,Kトナー像の何れにおいても、良好な画像濃度で記録シート(NBSリコーマイペーパー)に2次転写することができた。
【表3】

【0046】
そこで、実施形態に係るプリンタにおいては、Y,M,C,Kトナー像の中で成立し得る、互いに連続した順番で中間転写される2つのトナー像の組み合わせの全て、即ち、Yトナー像及びMトナー像、Mトナー像及びCトナー像、Cトナー像及びKトナー像についてそれぞれ、次のようにして必要転写電流量(−15+(−係数×平均画像面積率η))を見積もる。即ち、1次転写の順番が小さい方のトナー像の必要転写電流量を、順番が大きい方のトナー像の前記必要転写電流量と同じか、あるいはより大きく見積もる。そして、各色トナー像の必要転写電流量の合計を、2次転写電流の出力目標値として決定する処理を実施するように、2次転写電源82を構成している。かかる構成では、Y,M,C,Kトナー像について、1次転写の順番による必要転写電流量の違いを考慮しないで2次転写電流の出力目標値を決定していた従来に比べて、出力目標値をより適正値に近づける。これにより、多色トナー像を構成する複数のトナー像の面積比率が変動することに起因する転写不良の発生を抑えることができる。
【0047】
なお、Y,M,C,Kの1次転写電流の出力目標値を決定する条件によっては、互いに隣り合う1次転写ニップで1次転写される連続した2色間で、2次転写ニップに進入する直前の帯電量(単位面積あたり又は単位重量あたり)の差が殆どなかったり、Y,M,Cトナー像の帯電量の絶対値に比べて、Kトナー像の帯電量の絶対値が非常に小さかったりする。このような場合には、例えば、次の表4〜表6のようにして2次転写電流の出力目標値を決定させるようにすればよい。
【表4】

【表5】

【表6】

【0048】
また、2次転写ニップの直前において、Kトナー像の単位面積あたりの帯電量がYトナー像の単位面積あたりの帯電量よりも大きくなることはないため、同じ平均画像面積率であれば、Yトナー像についての2次転写電流の適正値として、Kトナー像についての2次転写電流の適正値よりも大きな絶対値のものを算出させるようにする。
【0049】
次に、実施形態に係るプリンタに、より特徴的な構成を付加した各実施例のプリンタについて説明する。
[第1実施例]
実施形態に係るプリンタのように、各色トナー像についてそれぞれ、その全体の面積に基づいて2次転写電流の適正値を求めることで、2次転写ニップに進入する4色トナー像の2次転写電流の適正値をある程度の精度で算出することができる。しかし、より望ましくは、各色トナー像の重ね合わせ部の面積を考慮して、2次転写電流の適正値を求めるとよい。重ね合わせ部では1次転写ニップでの放電の状態が非重ね合わせ部と異なるからである。
【0050】
本発明者の実験によれば、2次転写ニップの直前における各色の画像部の帯電量は、次の表7のようになった。
【表7】

そこで、第1実施例に係るプリンタにおいては、Y,M,C,Kトナー像についてそれぞれ、中間転写ベルト21体上で他のトナー像に重ね合わされずに1次色のままになる領域である1次転写領域(Y,M,C,K領域)についてのみ、次のような処理を行うように、2次転写電源82を構成している。即ち、Y,M,C,Kの中で成立し得る、互いに連続した順序でトナー像が中間転写される2つの1次色の組み合わせの全て、即ち、Y及びM、M及びC、C及びKについて、1次転写の順番が小さい方の1次色領域の必要転写電流量を、1次転写の順番が大きい方の1次色領域の必要転写電流量と同じか、あるいはより大きく見積もる処理である。より詳しくは、Yの必要転写電流量(−α+(−β×ηy))を、Mの必要転写電流量(−α+(−β×ηm))と同等以上に見積もる。また、Mの必要転写電流量(−α+(−β×ηm))を、Cの必要転写電流量(−α+(−β×ηc))と同等以上に見積もる。また、Cの必要転写電流量(−α+(−β×ηc))を、kの必要転写電流量(−α+(−β×ηk))と同等以上に見積もる。
【0051】
また、第1実施例に係るプリンタにおいては、Y,M,C,Kのうち、少なくとも何れか2色の重ね合わせによる多次色領域(表7のR、G、B、3C、4C)については、重ね合わせの1次色の組み合わせに応じた必要転写電流量を見積もる処理を実施するように、2次転写電源82を構成している。
かかる構成では、実施形態に係るプリンタよりも更に精度良く、多色トナー像の2次転写電流の適正値を求めて、転写不良の発生をより確実に抑えることができる。
【0052】
本発明者は、表7のようにして2次転写電流の出力目標値を決定させるように構成した2次転写電源82を用いてプリントテストを行ったところ、表3のようにして出力目標値を決定させる場合に比べて、各色の画像部の濃度を均一にすることができた。
【0053】
Y,M,C,K用の1次転写電源81Y,M,C,Kは、それぞれ、感光体の「10ライン区画」における平均画像面積率が高くなるにつれて、1次転写電流の出力目標値の絶対値を小さくする内容の定電流制御を行うように構成されている。かかる構成では、平均画像面積率にかかわらず、1次転写直後のY,M,C,Kトナー像の単位面積あたりの帯電量を一定にすることができる。
【0054】
[第2実施例]
第2実施例に係るプリンタは、以下に特筆する点の他が、第1実施例に係るプリンタと同様の構成になっている。
Y,M,C,K用の1次転写電源81は、1次転写バイアスを定電圧制御するようになっている。そして、1次転写ニップにおける「10ライン区画」の平均画像面積率が高くなるにつれて1次転写電源からの電圧の出力目標値の絶対値を小さな値にするようになっている。かかる構成においても、平均画像面積率にかかわらず、1次転写直後のY,M,C,Kトナー像の単位面積あたりの帯電量を一定にすることができる。
【0055】
また、Y,M,C,K用の1次転写電源81Y,M,C,Kは、それぞれ、互いに連続した順序で中間転写ベルト21にトナー像が1次転写される2つの色のうち、トナー像が後にベルトに転写される色に対応する1次転写電圧の出力目標値を、トナー像が先にベルトに転写される色に対応する1次転写電圧の出力目標値よりも小さくする(絶対値)。かかる構成では、上流側の1次転写ニップで中間転写ベルト21上に転写した1次色トナー像の下流側の1次転写ニップにおける感光体への逆転写を抑えることができる。
【0056】
次に、第1実施例又は第2実施例に係るプリンタに、より特徴的な構成を付加した具体例のプリンタについて説明する。
平均画像面積率の低い画像を長時間に渡って連続出力していくと、現像ユニット3Y,M,C,K内において、Y,M,C,Kトナーがそれほど消費されないにもかかわらず、Y,M,C,Kが強制的に撹拌され続ける。すると、Y,M,C,Kトナーの単位重量あたりの帯電量が過剰になって、2次転写電流の適正値を精度良く求めることが困難になる。そこで、具体例に係るプリンタは、平均画像面積率が所定の閾値を下回る画像を連続出力する場合には、感光体2Y,M,C,K表面におけるシート間対応領域に、Y,M,C,Kトナーを強制消費するためのY,M,C,Kベタトナー像を形成する。そのY,M,C,Kベタトナー像を現像することで、Y,M,C,Kトナーを強制消費する。これにより、平均画像面積率が所定の閾値を下回る画像を連続出力する場合であっても、現像ユニット3Y,M,C,K内のY,M,C,Kトナーの帯電量を所定の範囲に維持して、2次転写電流の適正値を精度良く求めることができる。
【0057】
これまで、「10ライン区画」の平均画像面積率を求めて、2次転写電流の出力目標値を「10ライン区画」毎に変更するようにした構成のプリンタについて説明してきたが、平気画像面積率の求め方や、出力目標値の変更タイミングは、実施形態に係るプリンタのものに限定されない。例えば、1画素単位や100画素単位といったように、様々な画素数で平均画像面積率を計算してもよい。区画の変わり目で出力目標値を急激に変化させずに、徐々に変化させていく方法を採用してもよい。また、1次転写電流や2次転写電流の出力目標値を求めるためのアルゴリズムは、上述したものに限定されない。平均画像面積率の変化に従って出力目標値を変化させるアルゴリズムであれば、どのようなものでもよく、例えば図9のように変曲点や特異点を有するアルゴリズムを用いてもよい。
【0058】
また、これまで、いわゆるタンデム方式によって4色トナー像を形成するプリンタについて説明してきたが、次のようにして多色トナー像を形成する構成にも、本発明の適用が可能である。即ち、感光体の周囲に潜像を互いに異なる1次色で現像する複数の現像装置を有し、感光体の表面上で順次現像した複数の1次色トナー像を、周回移動する中間転写体の表面に重ね合わせて転写する構成である。
【0059】
以上に説明したものは一例であり、本発明は、次の態様毎に特有の効果を奏する。
[態様A]
態様Aは、自らの無端移動する表面に像担持体上のトナー像が中間転写せしめられる中間転写体(例えば中間転写ベルト21)と、中間転写体に当接して転写ニップを形成するニップ形成部材(例えば従動ローラ26)と、転写ニップに挟み込まれた記録シートを介してニップ形成部材と中間転写体との間に流す転写電流を出力し、且つ所定のアルゴリズムと画像面積率とに基づいて転写電流の出力目標値を決定する転写電流出力手段(例えば2次転写電源82)とを備え、複数の像担持体(例えば感光体)から中間転写体に対して互いに異なる1次色のトナー像を所定の順序で重ね合わせて中間転写して多色トナー像を得るか、あるいは、中間転写体を周回移動させる毎に、異なる1次色のトナー像を所定の順序で像担持体から中間転写体に重ね合わせて中間転写して多色トナー像を得るかした後、転写ニップで中間転写体上の多色トナー像を記録シートに転写する画像形成装置において、互いに異なる順序で中間転写体に中間転写される複数のトナー像のうち、少なくとも2つについて、中間転写体に対する中間転写の順番が先になる方のトナー像の転写ニップにおける単位面積あたりの必要転写電流量を、中間転写の順番が後になる方のトナー像の転写ニップにおける単位面積あたりの必要転写電流量よりも多く見積もるように、転写電流出力手段を構成したことを特徴とするものである。
【0060】
[態様B]
態様Bは、態様Aにおいて、互いに異なる順序で前記中間転写体に中間転写される複数のトナー像(例えばY,M,C,Kトナー像)の中で成立し得る、互いに連続した順番で中間転写される2つのトナー像の組み合わせの全てについて(例えばYトナー像及びMトナー像、Mトナー像及びCトナー像、並びに、Cトナー像及びKトナー像)、前記順番が小さい方のトナー像の必要転写電流量を、前記順番が大きい方のトナー像の必要転写電流量と同じか、あるいはより大きく見積もるように、転写電流出力手段を構成したことを特徴とするものである。かかる構成では、全ての1次色のトナー像についてそれぞれ、1次転写位置(例えば1次転写ニップ)を通過する回数に応じたチャージアップ量を反映させて必要転写電流量を算出することができる。
【0061】
[態様C]
態様Cは、態様Bにおいて、互いに異なる順序で前記中間転写体に中間転写される複数のトナー像についてそれぞれ、中間転写体上で他のトナー像に重ね合わされずに1次色のままになる領域である1次転写領域についてのみ、複数の1次色の中で成立し得る、互いに連続した順序でトナー像が中間転写される2つの1次色の組み合わせの全てについて、前記順番が小さい方の1次色領域の前記必要転写電流量を、前記順番が大きい方の1次色領域の前記必要転写電流量と同じか、あるいはより大きく見積もるように、転写電流出力手段を構成したことを特徴とするものである。かかる構成では、1次色のトナー像の全域のうち、1次色領域のチャージアップ量と、重ね合わせによる多次色領域のチャージアップ量とを個別に見積もることで、転写電流の出力目標値をより適正値に近づけることができる。
【0062】
[態様D]
態様Dは、態様Cにおいて、多色トナー像の全域のうち、複数の1次色の重ね合わせによる多次色領域については、重ね合わせの1次色の組み合わせに応じた必要転写電流量を見積もるように、転写電流出力手段を構成したことを特徴とするものである。かかる構成においては、重ね合わせの1次色の組み合わせに応じた必要転写電流量を見積もることで、多次色領域の必要転写電流量を正確に求めることができる。
【0063】
[態様E]
態様Eは、態様A〜Dの何れかにおいて、画像面積率が高くなるほど、出力目標値の絶対値を大きくするように、転写電流出力手段を構成したことを特徴とするものである。かかる構成では、多色トナー像のトナー量が多くなるにつれて、転写電流の出力目標値の絶対値を大きくすることで、転写電流量の不足を抑えることができる。
【0064】
[態様F]
態様Fは、態様A〜Eの何れかにおいて、複数の像担持体をそれぞれ中間転写体に当接させて複数の1次転写ニップを形成して、それら像担持体から前記中間転写体に対して互いに異なる1次色のトナー像を所定の順序で重ね合わせて転写して多色トナー像を得るようにするとともに、複数の1次転写ニップについてそれぞれ、像担持体と中間転写体との間に流す1次転写電流を個別に出力し且つ像担持体に担持されたトナー像の画像面積率が高くなるにつれて1次転写電流の出力目標値の絶対値を小さな値にする複数の1次転写電流出力手段(例えば1次転写電源81)を設けたことを特徴とするものである。かかる構成では、複数の1次色のトナー像についてそれぞれ、画像面積率に応じた適切な1次転写電流量で1次転写を行って、1次転写不良の発生を抑えることができる。
【0065】
[態様G]
態様Gは、態様A〜Eの何れかにおいて、複数の像担持体をそれぞれ中間転写体に当接させて複数の1次転写ニップを形成して、それら像担持体から前記中間転写体に対して互いに異なる1次色のトナー像を所定の順序で重ね合わせて転写して多色トナー像を得るようにするとともに、複数の1次転写ニップについてそれぞれ、像担持体と中間転写体との間に流す1次転写電流を定電圧制御で個別に出力し且つ像担持体に担持されたトナー像の画像面積率が高くなるにつれて定電圧制御における電圧の出力目標値の絶対値を小さな値にする複数の1次転写電流出力手段を設けたことを特徴とするものである。かかる構成では、、複数の1次色のトナー像についてそれぞれ、画像面積率に応じた適切な1次転写電圧で1次転写を行って、1次転写不良の発生を抑えることができる。
【0066】
[態様H]
態様Hは、態様F又はGにおいて、互いに連続した順序で中間転写体に中間転写される2つのトナー像のうち、後に中間転写体に中間転写されるトナー像に対応する1次転写電流出力手段の出力目標値を、先に中間転写体に中間転写されるトナー像に対応する1次転写電流出力手段の出力目標値よりも小さな値にするように、複数の1次転写電流出力手段の組み合わせを構成したことを特徴とするものである。かかる構成では、既に説明したように、上流側の1次転写位置で中間転写体に中間転写した1次色のトナー像の下流側の1次転写位置における像担持体への逆転写の発生を抑えることができる。
【0067】
[態様I]
態様Iは、態様D〜態様Hの何れかにおいて、中間転写体として、無端状の中間転写ベルトを用い、複数の1次転写ニップの近傍でそれぞれ中間転写ベルトの裏面に対して個別の1次転写ローラを像担持体よりもベルト移動方向下流側で当接させ、且つ、1次転写電流出力手段をそれら1次転写ローラに接続したことを特徴とするものである。かかる構成では、各1次転写ニップ入口の像担持体と中間転写体との間の微小空間で放電の発生を抑えて、放電に起因する転写チリの発生を抑えることができる。
【符号の説明】
【0068】
2Y,M,C,K:感光体
3Y,M,C,K:現像ユニット
21:中間転写ベルト(中間転写体)
26:2次転写ローラ(ニップ形成部材)
81:1次転写電源(1次転写電流出力手段)
82:2次転写電源(転写電流出力手段)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0069】
【特許文献1】特開2010−191088号公報
【特許文献2】特開2003−186284号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自らの無端移動する表面に像担持体上のトナー像が中間転写せしめられる中間転写体と、前記中間転写体に当接して転写ニップを形成するニップ形成部材と、前記転写ニップに挟み込まれた記録シートを介して前記ニップ形成部材と前記中間転写体との間に流す転写電流を出力し、且つ所定のアルゴリズムと画像面積率とに基づいて前記転写ニップにおける必要転写電流量を算出した結果に基づいて転写電流の出力目標値を決定する転写電流出力手段とを備え、複数の像担持体から前記中間転写体に対して互いに異なる1次色のトナー像を所定の順序で重ね合わせて中間転写して多色トナー像を得るか、あるいは、前記中間転写体を周回移動させる毎に、異なる1次色のトナー像を所定の順序で像担持体から前記中間転写体に重ね合わせて中間転写して多色トナー像を得るかした後、前記転写ニップで前記中間転写体上の多色トナー像を記録シートに転写する画像形成装置において、
互いに異なる順序で前記中間転写体に中間転写される複数のトナー像のうち、少なくとも2つについて、前記中間転写体に対する中間転写の順番が先になる方のトナー像の前記転写ニップにおける単位面積あたりの必要転写電流量を、中間転写の順番が後になる方のトナー像の前記転写ニップにおける単位面積あたりの必要転写電流量よりも多く見積もるように、前記転写電流出力手段を構成したことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1の画像形成装置において、
互いに異なる順序で前記中間転写体に中間転写される複数のトナー像の中で成立し得る、互いに連続した順番で中間転写される2つのトナー像の組み合わせの全てについて、前記順番が小さい方のトナー像の前記必要転写電流量を、前記順番が大きい方のトナー像の前記必要転写電流量と同じか、あるいはより大きく見積もるように、前記転写電流出力手段を構成したことを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項2の画像形成装置において、
互いに異なる順序で前記中間転写体に中間転写される複数のトナー像についてそれぞれ、中間転写体上で他のトナー像に重ね合わされずに1次色のままになる領域である1次転写領域についてのみ、複数の1次色の中で成立し得る、互いに連続した順序でトナー像が中間転写される2つの1次色の組み合わせの全てについて、前記順番が小さい方の1次色領域の前記必要転写電流量を、前記順番が大きい方の1次色領域の前記必要転写電流量と同じか、あるいはより大きく見積もるように、前記転写電流出力手段を構成したことを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項3の画像形成装置において、
前記多色トナー像の全域のうち、複数の1次色の重ね合わせによる多次色領域については、重ね合わせの1次色の組み合わせに応じた必要転写電流量を見積もるように、前記転写電流出力手段を構成したことを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れかの画像形成装置において、
前記画像面積率が高くなるほど、前記出力目標値の絶対値を大きくするように、前記転写電流出力手段を構成したことを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れかの画像形成装置において、
複数の像担持体をそれぞれ前記中間転写体に当接させて複数の1次転写ニップを形成して、それら像担持体から前記中間転写体に対して互いに異なる1次色のトナー像を所定の順序で重ね合わせて転写して多色トナー像を得るようにするとともに、
複数の1次転写ニップについてそれぞれ、像担持体と前記中間転写体との間に流す1次転写電流を個別に出力し且つ前記像担持体に担持されたトナー像の画像面積率が高くなるにつれて前記1次転写電流の出力目標値の絶対値を小さな値にする複数の1次転写電流出力手段を設けたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
請求項1乃至5の何れかの画像形成装置において、
複数の像担持体をそれぞれ前記中間転写体に当接させて複数の1次転写ニップを形成して、それら像担持体から前記中間転写体に対して互いに異なる1次色のトナー像を所定の順序で重ね合わせて転写して多色トナー像を得るようにするとともに、
複数の1次転写ニップについてそれぞれ、像担持体と前記中間転写体との間に流す1次転写電流を定電圧制御で個別に出力し且つ前記像担持体に担持されたトナー像の画像面積率が高くなるにつれて前記定電圧制御における電圧の出力目標値の絶対値を小さな値にする複数の1次転写電流出力手段を設けたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
請求項6の画像形成装置において、
互いに連続した順序で前記中間転写体に中間転写される2つのトナー像のうち、後に前記中間転写体に中間転写されるトナー像に対応する前記1次転写電流出力手段の出力目標値を、先に前記中間転写体に中間転写されるトナー像に対応する前記1次転写電流出力手段の出力目標値よりも小さな値にするように、複数の前記1次転写電流出力手段の組み合わせを構成したことを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
請求項4乃至8の何れかの画像形成装置において、
前記中間転写体として、無端状の中間転写ベルトを用い、
複数の1次転写ニップの近傍でそれぞれ前記中間転写ベルトの裏面に対して個別の1次転写ローラを像担持体よりもベルト移動方向下流側で当接させ、
且つ、前記1次転写電流出力手段をそれら1次転写ローラに接続したことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−105028(P2013−105028A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−248732(P2011−248732)
【出願日】平成23年11月14日(2011.11.14)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】