説明

画像形成装置

【課題】ヒートパイプの冷却効率の低下を抑えて画像剥がれが発生するのを抑制できる画像形成装置を提供する。
【解決手段】像担持体と、像担持体上に潜像を形成する潜像形成手段と、熱可塑性エラストマーを含有する樹脂及び樹脂を軟化させる常温で固体状の可塑剤を内包したカプセルを少なくとも含有したトナーを用いて潜像を現像しトナー像を形成する現像手段と、トナー像を像担持体上から記録媒体上に転写する転写手段と、トナー像を記録媒体に定着させる定着手段と、定着手段でトナー像が定着された記録媒体を排出部に排出する排出手段と、定着手段と排出手段との間に設けられ、記録媒体と接触し記録媒体やトナーなどから熱を吸熱する吸熱部と、吸熱部で吸熱された熱を排熱する排熱部とを有し、記録媒体上のトナーを可塑剤の凝固点以下に冷却するヒートパイプとを備えた画像形成装置において、ヒートパイプの排熱部を冷却するペルチェ素子を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンタ、ファクシミリ、複写機などの画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、ファクシミリ及び複写装置のような画像形成装置は、紙、布、及びOHP用シートのような記録媒体に、画像情報に基づいて文字や記号を含む画像を形成する装置である。画像形成装置には種々の方式があるが、電子写真方式の画像形成装置は、普通紙に高精細な画像を高速で形成することができるため、広くオフィスで使用されている。このような電子写真方式の画像形成装置としては、被定着媒体である記録媒体上のトナーを120[℃]〜160[℃]で加熱して軟化あるいは溶融させ、軟化等させたトナーを加圧することによって、トナーを記録媒体上に定着させる熱定着方式が広く普及している(特許文献1など)。このような熱定着方式を採用した電子写真方式の画像形成装置における消費電力の半分以上は、熱定着方式の定着装置においてトナーを加熱処理のために消費されている。一方、近年における環境問題対策の観点からは、消費電力を抑えて省エネルギー化を図れる画像形成装置が望まれている。このため、従来の画像形成装置における消費電力の半分以上を消費する定着装置での省エネルギー化が求められている。従来の熱定着方式の定着装置では加熱処理に多くの電力を消費していたため、トナーを定着するためにトナーを加熱する温度を今までよりも極端に低下させる定着方式が望まれている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本出願人は、特願2011−179199号(以下、先願という)において、熱可塑性エラストマーを含有する樹脂、及び、前記樹脂を軟化する常温で固体の可塑剤を内包したカプセルを少なくとも含有したトナーを用いて、記録媒体上にトナー像を形成する画像形成装置を提案している。この先願の画像形成装置では、定着装置に搬送された記録媒体上のトナー像が、内部に加熱手段であるヒータが設けられた加熱ローラと加圧ローラとで形成される圧接部であるニップ部を通過したときに加熱されつつ加圧される。このとき、ニップ部でのトナー像の加熱温度は、カプセルに内包された可塑剤の融点温度以上であり、省エネルギー化の観点から40[℃]〜50[℃]としている。前記カプセルに内包した可塑剤は、ヒータによって融点温度まで加熱され溶解し、加圧されることにより破壊されたカプセルからカプセル近傍の樹脂に拡散していく。このように可塑剤が樹脂に拡散することで、可塑剤の軟化作用により樹脂に含有された熱可塑性エラストマーの物理的架橋が崩れて樹脂が一気に軟化し、それに伴ってトナーが軟化する。そして、このように軟化したトナーがニップ部で加圧されることにより、記録媒体にトナー像が定着される。これにより、熱だけで樹脂を軟化させる場合よりも定着装置で記録媒体にトナー像を定着するためにトナーを加熱する温度を今までよりも極端に低下させることができ、省エネルギー化を図ることができる。
【0004】
また、記録媒体上の軟化したトナーが自然冷却されて、トナー中の可塑剤が凝固点以下まで冷やされて流動性を失うと、樹脂に含有された熱可塑性エラストマーと可塑剤とが相分離する。これにより、軟化していた樹脂は熱可塑性エラストマーが物理的架橋を形成して硬化し、それに伴ってトナーが硬化することで記録媒体にトナー像を固定させることができる。ところが、定着装置から排出ローラ対に記録媒体が搬送されたときに、記録媒体上のトナーが可塑剤の凝固点以下まで冷却されていないとトナーが硬化せず、記録媒体に対するトナー像の固定が不十分となる。そのため、記録媒体上から排出ローラ対にトナーが付着して画像剥がれが発生してしまう。
【0005】
前記先願に記載の画像形成装置においては、定着装置と排出ローラ対との間に記録媒体上のトナーを可塑剤の凝固点以下にする冷却する冷却手段としてヒートパイプを備えた冷却装置が設けられている。ヒートパイプは、記録媒体と接触し記録媒体やトナーなどから熱を吸熱する吸熱部と、吸熱部で吸熱された熱を排熱する排熱部とを有している。これにより、記録媒体上のトナーが定着装置から排出ローラ対に到達する前に、冷却装置のヒートパイプの吸熱部に記録媒体を接触させて記録媒体上のトナーを可塑剤の凝固点以下まで冷却することができる。よって、記録媒体に対するトナー像の固定が不十分で排出ローラ対にトナーが付着してしまい、画像剥がれが発生するのを抑制することができる。また、ヒートパイプの吸熱部で吸熱された記録媒体やトナーなどから熱は、ヒートパイプの排熱部に冷却ファンの空気を当てて積極的に排熱部を冷却することにより効率良く排熱され、ヒートパイプの冷却効率ひいては記録媒体上のトナーの冷却効率を向上させている。
【0006】
しかしながら、生産性の向上を図るために高速で連続プリントが行われると、冷却ファンによって前記排熱部を空冷しても、前記吸熱部での吸熱に対して前記排熱部からの排熱が間に合わず、ヒートパイプの冷却効率が低下してしまう。そのため、ヒートパイプによる記録媒体上のトナーの冷却効率が低下してしまい、記録媒体上のトナーを可塑剤の凝固点以下まで冷却することができなくなって、前記画像剥がれが発生するといった問題が生じる。
【0007】
本発明は以上の問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、ヒートパイプの冷却効率の低下を抑えて画像剥がれが発生するのを抑制できる画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、像担持体と、像担持体上に潜像を形成する潜像形成手段と、熱可塑性エラストマーを含有する樹脂、及び、該樹脂を軟化させる常温で固体状の可塑剤を内包したカプセルを少なくとも含有したトナーを用いて前記潜像を現像しトナー像を形成する現像手段と、前記トナー像を前記像担持体上から記録媒体上に転写する転写手段と、前記記録媒体上に転写されたトナー像を該記録媒体に定着させる定着手段と、前記定着手段でトナー像が定着された前記記録媒体を排出部に排出する排出手段と、前記定着手段と前記排出手段との間に設けられ、前記記録媒体と接触し該記録媒体や前記トナーなどから熱を吸熱する吸熱部と、該吸熱部で吸熱された熱を排熱する排熱部とを有し、記録媒体上の前記トナーを前記可塑剤の凝固点以下に冷却するヒートパイプとを備えた画像形成装置において、前記ヒートパイプの前記排熱部を冷却するペルチェ素子を設けたことを特徴とするものである。
【0009】
本発明においては、ヒートパイプの排熱部をペルチェ素子によって冷却するので、冷却ファンによって前記排熱部を空冷する場合よりも前記排熱部から効率良く排熱させることができる。これにより、ヒートパイプの排熱部を冷却ファンによって空冷する場合よりも、ヒートパイプの冷却効率が低下する抑制することができる。よって、生産性の向上を図るために高速で連続プリントが行われた場合でも、ヒートパイプによる記録媒体上のトナーの冷却効率が低下するのを抑えて、記録媒体に対するトナー像の固定が不十分で排出手段にトナーが付着してしまい、画像剥がれが発生するのを抑制することができる。
【発明の効果】
【0010】
以上、本発明によれば、ヒートパイプの冷却効率の低下を抑えて画像剥がれが発生するのを抑制できるという優れた効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】画像形成装置の定着装置から排出ローラ対までのペルチェモジュールと扁平ヒートパイプの模式図。
【図2】実施形態に係る画像形成装置の概略構成図。
【図3】物理的刺激として熱と圧力を与えた場合の本発明のトナー状態を表すグラフ。
【図4】カプセルに内包された可塑剤をトナーに添加した場合における定着工程から排紙におけるトナーの状態変化を表すグラフ。
【図5】(a)トナー保存時におけるトナー中の熱可塑性エラストマーと可塑剤の状態を示す概念図、(b)定着時におけるトナー中の熱可塑性エラストマーと可塑剤の状態を示す概念図、(c)排紙時におけるトナー中の熱可塑性エラストマーと可塑剤の状態を示す概念図。
【図6】カプセルを含有したトナーの概略断面図。
【図7】定着から排紙に至るトナーの状態変化のグラフ。
【図8】画像形成装置の定着装置から排出ローラ対までの要部の模式図。
【図9】画像形成装置の定着装置から排出ローラ対までの冷却ユニットの扁平ヒートパイプ冷却の模式図。
【図10】画像形成装置の定着装置から排出ローラ対までのペルチェモジュールと扁平ヒートパイプの模式図。
【図11】定着装置を離れた後の経過時間とトナーの貯蔵弾性率との関係を示したグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を適用した画像形成装置の実施形態について説明する。
図2に示すタンデム型画像形成装置は、タンデム型カラー画像形成装置である。このタンデム型カラー画像形成装置は、複写機本体150と、給紙テーブル200と、スキャナ300と、原稿自動搬送装置(ADF)400とを備えている。
【0013】
複写機本体150には、無端ベルト状の中間転写ベルト50が中央部に設けられている。そして、中間転写ベルト50は、支持ローラ14,15,16に張架され、図2中、時計回りに回転可能とされている。支持ローラ15の近傍には、中間転写ベルト50上の残留トナーを除去するための中間転写ベルトクリーニング手段である中間転写ベルトクリーニング装置17が配置されている。支持ローラ14と支持ローラ15とにより張架された中間転写ベルト50には、その搬送方向に沿って、イエロー、シアン、マゼンタ、及びブラックの4つの画像形成ユニット18が対向して並置されたタンデム型画像形成部120が配置されている。
【0014】
タンデム型画像形成部120の近傍には、露光装置21が配置されている。中間転写ベルト50における、タンデム型画像形成部120が配置された側とは反対側には、二次転写装置22が配置されている。二次転写装置22においては、無端ベルトである二次転写ベルト24が一対のローラ23に張架されており、二次転写ベルト24上を搬送される記録媒体5と中間転写ベルト50とは互いに接触可能である。二次転写装置22の近傍には定着装置25が配置されている。定着装置25は、内部に加熱手段である不図示のヒータが設けられた加熱ローラ26と、図示しないバネによって加圧されて加熱ローラ26と圧接し圧接部であるニップ部を形成する加圧ローラ27を有している。
【0015】
なお、二次転写装置22及び定着装置25の近傍に、記録媒体5の両面に画像形成を行うために記録媒体5を反転させるための反転装置28が配置されている。
【0016】
次に、タンデム型画像形成部120を用いたフルカラー画像の形成(カラーコピー)について説明する。即ち、先ず、原稿自動搬送装置(ADF)400の原稿台130上に原稿をセットするか、あるいは原稿自動搬送装置400を開いてスキャナ300のコンタクトガラス32上に原稿をセットし、原稿自動搬送装置400を閉じる。
【0017】
スタートスイッチ(不図示)を押すと、原稿自動搬送装置400に原稿をセットした時は、原稿が搬送されてコンタクトガラス32上へと移動された後で、一方、コンタクトガラス32上に原稿をセットした時は直ちに、スキャナ300が駆動し、第一走行体33及び第二走行体34が走行する。このとき、第一走行体33により、光源からの光が照射されると共に原稿面からの反射光を第二走行体34におけるミラーで反射し、結像レンズ35を通して読み取りセンサ36で受光されてカラー原稿(カラー画像)が読み取られ、ブラック、イエロー、マゼンタ、及びシアンの画像情報とされる。
【0018】
そして、ブラック、イエロー、マゼンタ、及びシアンの各画像情報は、タンデム型画像形成部120における各画像形成ユニット18(ブラック用画像形成ユニット、イエロー用画像形成ユニット、マゼンタ用画像形成ユニット、及びシアン用画像形成ユニット)にそれぞれ伝達され、各画像形成ユニットにおいて、ブラック、イエロー、マゼンタ、及びシアンの各トナー画像が形成される。
【0019】
すなわち、タンデム型画像形成部120における各画像形成ユニット18(ブラック用画像形成ユニット、イエロー用画像形成ユニット、マゼンタ用画像形成ユニット及びシアン用画像形成ユニット)は、図2に示すように、それぞれ、感光体ドラム10(ブラック用感光体ドラム10K、イエロー用感光体ドラム10Y、マゼンタ用感光体ドラム10M、及びシアン用感光体ドラム10C)と、感光体ドラム10を一様に帯電させる帯電装置160と、各カラー画像情報に基づいて各感光体ドラム10の表面を露光光Lで露光し、各感光体ドラム10上に各カラー画像に対応する静電潜像を形成する露光装置と、静電潜像を各カラートナー(ブラックトナー、イエロートナー、マゼンタトナー、及びシアントナー)を用いて現像して各カラートナーによるトナー画像を形成する現像装置61と、トナー画像を中間転写ベルト50上に転写させるための転写帯電器62と、クリーニング装置63と、除電装置64とを備えており、それぞれのカラーの画像情報に基づいて各単色の画像(ブラック画像、イエロー画像、マゼンタ画像、及びシアン画像)を形成可能である。
【0020】
こうして形成されたブラック画像、イエロー画像、マゼンタ画像及びシアン画像は、支持ローラ14、支持ローラ15及び支持ローラ16により回転移動される中間転写ベルト50上にそれぞれ、ブラック用感光体ドラム10K上に形成されたブラック画像、イエロー用感光体ドラム10Y上に形成されたイエロー画像、マゼンタ用感光体ドラム10M上に形成されたマゼンタ画像及びシアン用感光体ドラム10C上に形成されたシアン画像が、順次転写(一次転写)される。
【0021】
そして、中間転写ベルト50上に前記ブラック画像、前記イエロー画像、マゼンタ画像、及びシアン画像が重ね合わされて合成カラー画像(カラー転写像)が形成される。
【0022】
一方、給紙テーブル200においては、給紙ローラ142の1つを選択的に回転させ、ペーパーバンク143に多段に備える給紙カセット144の1つから記録媒体5を繰り出し、分離ローラ145で1枚ずつ分離して給紙路146に送出し、搬送ローラ147で搬送して複写機本体150内の給紙路148に導き、レジストローラ49に突き当てて止める。あるいは、給紙ローラ142を回転して手差しトレイ54上の記録媒体5を繰り出し、分離ローラ52で1枚ずつ分離して手差し給紙路53に入れ、同じくレジストローラ49に突き当てて止める。
【0023】
なお、レジストローラ49は、一般には接地されて使用されるが、記録媒体5の紙粉除去のためにバイアスが印加された状態で使用されてもよい。
【0024】
そして、中間転写ベルト50上に合成された合成カラー画像(カラー転写像)にタイミングを合わせてレジストローラ49を回転させ、中間転写ベルト50と二次転写装置22との間に記録媒体5を送出させ、二次転写装置22により合成カラー画像(カラー転写像)を記録媒体5上に転写(二次転写)することにより、記録媒体5上にカラー画像が転写され形成される。なお、画像転写後の中間転写ベルト50上の残留トナーは、中間転写ベルトクリーニング装置17によりクリーニングされる。
【0025】
カラー画像が転写され形成された記録媒体5は、二次転写装置22により搬送されて、定着装置25へと送出され、この定着装置25において、加熱ローラ26と加圧ローラ27とによって形成されるニップ部で、熱と圧力とにより前記合成カラー画像(カラー転写像)が記録媒体5上に定着される。
【0026】
その後、記録媒体5は、切換爪55で切り換えて排出ローラ対56により排出され、排紙トレイ57上にスタックされ、あるいは、切換爪55で切り換えて反転装置28により反転されて再び転写位置へと導き、裏面にも画像を記録した後、排出ローラ対56により排出され、排紙トレイ57上にスタックされる。
【0027】
[定着工程及び定着装置]
定着工程は、記録媒体5に転写された可視像を定着させる工程であり、各色のトナーに対して記録媒体5に転写する毎に行っても良いし、各色のトナーに対してこれを積層した状態で一度に同時で行っても良い。
【0028】
定着工程は、定着装置25により行うことができる。定着装置25としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、定着部材とその定着部材を加熱する熱源とを有する定着装置が好ましい。
【0029】
定着部材としては、加圧力を受けつつ互いに接触してニップ部を形成可能であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0030】
例えば、無端状ベルトとローラとの組合せ、ローラとローラとの組合せなどが挙げられる。中でも、加熱手段としてい用いる場合はウォームアップ時間を短縮することができ、省エネルギー化の実現の点で、無端状ベルトとローラとの組合せや誘導加熱などによる定着部材の表面からの加熱方法を用いるのが好ましい。
【0031】
前記定着部材が無端状ベルトである場合、無端状ベルトは、熱容量の小さい材料で形成されるのが好ましく、例えば、基体上にオフセット防止層が設けられてなる態様などが挙げられる。
【0032】
前記基体を形成する材料としては、例えば、ニッケル、ポリイミドなどが挙げられる。前記オフセット防止層を形成する材料としては、例えば、シリコーンゴム、フッ素系樹脂などが挙げられる。
【0033】
一方、前記定着部材がローラである場合、そのローラの芯金は、高い圧力による変形(たわみ)を防止するため非弾性部材で形成されるのが好ましい。前記非弾性部材としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、アルミニウム、鉄、ステンレス、真鍮等の高熱伝導率体が好ましい。
【0034】
また、前記ローラは、その表面がオフセット防止層で被覆されていることが好ましい。前記オフセット防止層を形成する材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、RTV(Room Temperature Vulcanization)シリコーンゴム、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル(PFA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などが挙げられる。
【0035】
ニップ部は、少なくとも2つの定着部材の構成要素(例えば、無端状ベルトとローラ、ローラとローラ)が互いに当接して形成される。
【0036】
ニップ部の面圧としては、トナーに含有されるカプセルを破壊可能な面圧であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5[MPa]以下が好ましく、1[MPa]以下がより好ましい。ニップ部の面圧を高くするほどローラの耐久性を高める必要があるため、定着装置25が重量化及び大型化してしまう。
【0037】
ニップ部でのトナー(記録媒体5に形成されたトナー画像)の加熱温度は、カプセルに内包された可塑剤の融点温度以上が好ましく、消費エネルギーの観点から40[℃]〜50[℃]となる温度が好ましい。このようなトナーの加熱温度を得るためには、紙等の記録媒体5への熱損失や伝熱ロスなどを考慮し、定着部材の表面温度として100[℃]以下が好ましく、50[℃]〜70[℃]がより好ましい。
【0038】
トナー画像を加熱する加熱手段としては、非接触加熱方式や接触加熱方式がある。非接触加熱方式では、記録媒体5の搬送経路中に加熱手段を構成する。例えば、ハロゲンランプ、フラッシュ等による加熱方式、または超音波やマイクロ波、温風等が挙げられるが、トナー温度を可塑剤の融点まで加熱することが可能であれば特に限定はしない。
【0039】
接触加熱方式としては、ローラや無端状ベルトなどの定着部材の外周面を加熱手段で加熱して、定着部材の外周面と記録媒体5上のトナーとをニップ部で接触させることにより、定着部材の熱をトナーへ伝熱してトナーを加熱する。
【0040】
また、接触加熱方式は、定着部材の内部や内周面側から定着部材の外周面を加熱する内部加熱方式と、定着部材の外部から定着部材の外周面を直接加熱する外部加熱方式とに大別される。なお、内部加熱方式と外部加熱方式とを組み合わせたものを用いることも可能である。
【0041】
内部加熱方式の加熱手段として、例えば、定着部材の内部に熱源を設けるものが挙げられる。前記熱源としては、例えばヒータやハロゲンランプ等の熱源が挙げられる。
【0042】
外部加熱方式の加熱手段としては、例えば、定着部材のトナーと接触する外周面の少なくとも一部と対向する位置に熱源を設けるものが挙げられる。前記熱源としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ハロゲンランプや電磁誘導加熱装置などが挙げられる。
【0043】
電磁誘導加熱装置としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、磁場を発生する手段と、電磁誘導により発熱する手段とを有するものなどが好ましい。
【0044】
電磁誘導加熱装置としては、例えば、定着部材である加熱ローラなどへ近接するように配置される誘導コイルと、この誘導コイルが設けられている遮蔽層と、この遮蔽層の誘導コイルが設けられている面の反対側に設けられている絶縁層とからなるものが好ましい。
【0045】
このとき、加熱ローラとしては、磁性体からなるものやヒートパイプであるものなどが好ましい。
【0046】
誘導コイルは、加熱ローラの、加熱ローラと前記定着部材(例えば、加圧ローラや無端状ベルトなど)との接触部位との反対側において、少なくとも半円筒部分を包む状態にて配置されるのが好ましい。
【0047】
[本実施形態で用いるトナーについて]
(トナー)
本実施形態で用いるトナーは、樹脂、着色剤、及びカプセルを少なくとも含有し、更に必要に応じて、その他の成分を含有する。前記樹脂は、熱可塑性エラストマーを少なくとも含み、更に必要に応じて、その他の成分を含む。前記カプセルは、前記熱可塑性エラストマーを軟化する可塑剤を内包し、所定の圧力により破壊されるカプセルである。
【0048】
従来のトナーを用いた画像形成装置では、一般に、定着装置のニップ部で、トナーを軟化させる温度以上に加熱しながら圧力をかけて紙などの記録媒体5にトナーを定着させる。その加熱温度は、一般には、120[℃]〜160[℃]である。この定着方式における加熱に要する消費電力は、画像形成装置の消費電力の多くを占める。そのため、常温に近い加熱温度(トナーの温度として、概ね40[℃]〜50[℃])で紙などの記録媒体5にトナーを定着できれば、従来の画像形成装置に比べ、消費電力を50[%]以上削減することができる。
【0049】
一方で、トナースペント及びトナーフィミングは、画像形成装置機内でトナー同士又はトナーと機械類との摩擦による摩擦熱でトナー温度が上がり、トナーが軟化することで発生する。その摩擦熱によるトナーの温度上昇は、印刷速度により異なるが、概ね50[℃]前後と考えられる。
【0050】
消費電力を大幅に削減するために定着温度を常温に近づけると、定着温度と画像形成装置機内でのトナーの摩擦熱による温度とが重なり、従来のトナーでは、常温に近い定着(低温定着;例えば、60[℃]以下)とトナースペント防止及びトナーフィミング防止とを両立することができない。
【0051】
そこで、本願発明者らは、トナーへ2つの物理的刺激を与え、それらの2つの物理的刺激がある閾値を超えて初めてトナーの軟化が起こるようにトナーに工夫をすることで、上記の両立、即ち常温に近い定着とトナースペント防止及びトナーフィミング防止とを図ることにたどり着いた。前記2つの物理的刺激は、1つは熱で、もう1つは圧力である。
【0052】
図3に、物理的刺激として熱と圧力を与えた場合の本発明のトナー状態を表すグラフを示す。図3に示すように、刺激1を熱(温度)、刺激2を圧力(加圧力)とすると、現像部でトナーにかかる圧力(刺激2、加圧力1)が閾値以下であれば、加熱温度が、例えば、50[℃]になっても、トナースペント及びトナーフィルミングが発生するほどにトナーは、軟化しない。一方、加熱温度が50[℃]で、定着部でトナーにかかる圧力(刺激2、加圧力2)が、閾値を超えていれば、トナーは、定着部において定着に必要な程度に軟化する。このように、現像部と定着部が同じ温度になっていても、もう1つの物理的刺激である圧力により、定着部でのみ軟化するようにトナーに工夫ができれば、常温に近い定着(低温定着)とトナースペント防止及びトナーフィミング防止とを両立することができる。
【0053】
そこで、本願発明者らは、定着部での圧力に閾値を設ける方法として、トナー中に分散された、樹脂を軟化させる可塑剤を閉じ込めたカプセルを破壊する圧力を閾値とすることに思い至った。定着部において、前記閾値を超えた圧力が、樹脂を軟化させる可塑剤を閉じ込めたカプセルに付与されると、前記カプセルが破壊され、前記カプセルから漏出した可塑剤がトナー中に浸透拡散して樹脂が軟化される。従来は、熱でトナー中の樹脂を軟化させるのに対して、この技術的思想は、トナー中に含まれる、可塑剤を内包するカプセルを、圧力で破壊し、その可塑剤により樹脂を軟化させる点において、従来と考え方が大きく異なる。
【0054】
ただし、単にトナー中に結着樹脂とカプセルに内包された可塑剤とを含有させ、その可塑剤によりトナーを軟化させるだけでは、新たな問題点がある。それは、以下のとおりである。
【0055】
図4は、カプセルに内包された可塑剤をトナーに添加した場合における定着工程から排紙におけるトナーの状態変化を表すグラフである。
【0056】
図4に示すように、例えば、定着部においては、0.1秒間以内に定着部の加圧手段によりトナーが軟化及び変形した後、0.3秒間程度で、印刷紙(記録媒体5)は、機内の排紙手段を通過する。排紙手段を通過する時点では、トナーはある程度硬化しておく必要がある。なぜなら、排紙手段に軟化したトナーが固着するためである。しかし、通常、可塑剤で軟化したトナーは、可塑剤が除去されない限りは、軟化状態を維持し、硬化することがない。このため、排紙手段に軟化したトナーが固着し、紙ジャム及び画像はがれを発生させる恐れがあり、装置として信頼性が悪くなりかねない。
【0057】
そこで、本願発明者らは、樹脂に熱可塑性エラストマーを含有させ、熱可塑性エラストマーを軟化させることに思い至った。
【0058】
図5(a)、図5(b)、図5(c)に、トナー中の熱可塑性エラストマーと可塑剤の状態を示す。
【0059】
図5(a)は、トナー保存時におけるトナー中の熱可塑性エラストマーと可塑剤の状態を示す概念図である。図5(b)は、定着時におけるトナー中の熱可塑性エラストマーと可塑剤の状態を示す概念図である。図5(c)は、排紙時におけるトナー中の熱可塑性エラストマーと可塑剤の状態を示す概念図である。
【0060】
図5(a)、図5(b)、図5(c)における熱可塑性エラストマーは、硬いハードセグメントとゴム状弾性を示すソフトセグメントとを有するブロック共重合体である。熱可塑性エラストマーは、ハードセグメント同士が分子間力により物理的架橋を形成することで流動性がなく、ソフトセグメントの弾性によりゴム状特性を示す。
【0061】
図5(a)、図5(b)、図5(c)における可塑剤は、常温で固体であり、熱可塑性エラストマーの少なくともハードセグメントに対して可塑性を有する。ここで、物理的架橋とは、ハードセグメント同士が分子間力により集まって分子運動を拘束する状態を意味する。
【0062】
トナー保存時には、図5(a)に示すように、トナー中の熱可塑性エラストマーは、弾性変形をするが、ハードセグメントによる物理的架橋により、流動性がなく、塑性変形はしない。また、カプセルは、破壊されず、可塑剤の漏出はない。現像部においても同様である。
【0063】
定着時には、トナーは、加熱されると共に、閾値を超えた圧力が付与される。そうすると、図5(b)に示すように、カプセルが破壊されて可塑剤が漏出し、漏出した可塑剤の軟化作用により熱可塑性エラストマーのハードセグメント同士の物理的架橋が崩れ、熱可塑性エラストマーは、一気に軟化する。それに伴ってトナーが軟化する。
【0064】
通常の熱可塑性樹脂は、樹脂分子同士のいたるところで分子間力により相互作用しており、その相互作用を緩めるために、可塑剤が多めに必要で、かつ軟化応答が遅い。
【0065】
一方、熱可塑性エラストマーは、ハードセグメントのみで物理的架橋を形成し、ソフトセグメントは、もともと柔らかい状態にある。そのため可塑剤は、ハードセグメント部のみ物理的架橋を緩めればよい。したがって、熱可塑性エラストマーを用いると、可塑剤濃度低減が可能で、かつ軟化応答を速めることができる。
【0066】
このため、本実施形態のような応答時間を確保する定着方式であれば熱可塑性樹脂でも定着可能ではあるが、ハードセグメントとソフトセグメントとを有する熱可塑性エラストマーを使用することでより安定した軟化、定着を確保するのにさらに好適である。
【0067】
定着部で軟化されたトナーは、排紙時には、自然冷却される。その際、図5(c)に示すように、トナー中の常温で固体の可塑剤は、流動性を失い、ハードセグメントから外れる。そうすると、可塑剤と熱可塑性エラストマーは、相分離する。この現象により、軟化していた可塑性エラストマーは、物理的架橋を形成し、トナーは、再び硬化する。
【0068】
本願発明者らは、熱可塑性エラストマーは、通常の熱可塑性樹脂と異なり、ハードセグメント同士が物理的架橋を形成しやすい性質があることが特徴で、可塑剤が固化するにつれて、ハードセグメント同士が再結合しやすく、硬化が一般的な樹脂よりも促進することを見出した。
【0069】
また、可塑剤が常温で固体の場合、可塑剤を含有する前の樹脂の硬さか、それ以上の硬さになる利点がある。
【0070】
<樹脂>
前記樹脂は、熱可塑性エラストマーを少なくとも含み、更に必要に応じて、その他の樹脂を含む。
【0071】
[熱可塑性エラストマー]
熱可塑性エラストマーは、常温ではゴム弾性体としての挙動をとり、温度上昇によって塑性変形をする樹脂である。ここで、常温とは、熱したり冷やしたりせずに達成される温度であり、JIS Z8703にて定義されている、5[℃]〜35[℃]であることが好ましい。
【0072】
熱可塑性エラストマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ハードセグメントとソフトセグメントとを有することが好ましい。熱可塑性エラストマーとしては、ハードセグメントとソフトセグメントとを有するブロック共重合体が好ましく、A−B−Aトリブロック共重合体(ただし、Aは、ハードセグメントを表し、Bは、ソフトセグメントを表す。)がより好ましい。
【0073】
ここで、ハードセグメントとは、加硫ゴムの架橋点に相当して塑性変形を防止する分子運動拘束成分を意味し、ソフトセグメントとは、ゴム弾性を示す柔軟性成分を意味する。
【0074】
熱可塑性エラストマーにおけるハードセグメントとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレートなど)、ポリアクリレート、ポリウレタン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリ塩化ビニルなどが挙げられる。
【0075】
熱可塑性エラストマーにおけるソフトセグメントとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリブタジエン、水添ポリブタジエン、水添ポリイソプレン、ポエーテル、ポリエステル、ポリアルキルアクリレート、ポリ酢酸ビニルなどが挙げられる。
【0076】
なお、ポリエステル及びポリ塩化ビニルは、その具体的組成により、ハードセグメントにもなるし、ソフトセグメントにもなる。
【0077】
ハードセグメントとソフトセグメントとの質量比としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ハードセグメント:ソフトセグメントが、1:9〜6:4が好ましい。前記質量比が、1:9よりもハードセグメントの割合が低いと、常時、トナーに粘着性が出ることがあり、6:4よりもハードセグメントの割合が高いと、硬くなりすぎて、定着に必要な軟化が確保できなくなることがある。
【0078】
熱可塑性エラストマーの具体例としては、例えば、ハードセグメントがポリスチレンでソフトセグメントがポリブタジエンであるSBS(スチレン−ブタジエン−スチレン)や、ハードセグメントがポリスチレンでソフトセグメントが水添ポリブタジエンであるSEBS(スチレン−水添ブタジエン−スチレン)、ハードセグメントがポリスチレンでソフトセグメントがポリイソプレンであるSEPS(スチレン−イソプレン−スチレン)、ハードセグメントがポリウレタンでソフトセグメントがポリエーテルであるTPU(ポリウレタン−ポリエーテル−ポリウレタン)、ハードセグメントがポリエチレンでソフトセグメントがポリ酢酸ビニルであるEVA(エチレン−酢酸ビニル−エチレン)、ハードセグメントがポリ塩化ビニルでソフトセグメントがポリ塩化ビニルであるTPVCなどが挙げられる。
【0079】
熱可塑性エラストマーの含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、樹脂に対して50[質量%]〜95[質量%]が好ましく、50[質量%]〜80[質量%]がより好ましい。前記含有量が、50[質量%]未満であると、定着後のトナー層にタック感が発生し、印刷紙などの記録媒体5を重ねたときにブロッキングを生じることがあり、95[質量%]を超えると、定着時に、印刷紙のパルプ繊維に樹脂がからみつきにくくなり、紙へのアンカリングが弱くなり、定着不良を生じることがある。前記含有量が、前記好ましい範囲内であると、ブロッキング及び定着不良を生じることなく、画像形成ができる点で有利である。
【0080】
[その他の樹脂]
その他の樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記可塑剤により軟化される樹脂が好ましい。前記その他の樹脂が、前記可塑剤により軟化されることにより、印刷紙のパルプ繊維に樹脂がからみつきやすくなり、紙へのアンカリングが強くなり、定着性に優れる。
【0081】
また、前記その他の樹脂としては、熱可塑性エラストマーと相溶性の良い樹脂が好ましい。熱可塑性エラストマーと相溶性の良い樹脂としては、例えば、熱可塑性エラストマーがハードセグメントとソフトセグメントとを有する場合、ハードセグメントと類似の構造を有する樹脂などが挙げられる。
【0082】
前記その他の樹脂としては、例えば、スチレン系単量体、アクリル系単量体、メタクリ、ポリウレタン樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、キシレン樹脂、テルペン樹脂、クマロンインデン樹脂、ポリカーボネート樹脂、石油系樹脂などが挙げられる。
【0083】
前記重合体としては、例えば、ポリスチレン、ポリブチルアクリレートなどが挙げられる。
【0084】
また、前記その他の樹脂としては、変性ポリエステル樹脂が挙げられる。前記変性ポリエステル樹脂とは、樹脂中に酸、アルコールのモノマーユニットに含まれる官能基とエステル結合以外の結合基が存在したり、また樹脂中に構成の異なる樹脂成分が共有結合、イオン結合などで結合したりしたポリエステル樹脂をいう。
【0085】
前記変性ポリエステル樹脂としては、例えば、活性水素基含有化合物と、化合物の活性水素基と反応可能な官能基を有するポリエステル樹脂とを反応させ前記ポリエステル樹脂を伸長反応、架橋反応等させたもの(ウレア変性ポリエステル樹脂、ウレタン変性ポリエステル樹脂など)が挙げられる。
【0086】
前記活性水素基含有化合物としては、例えば、アミン類などが挙げられる。前記アミン類としては、例えば、ジアミン、3価以上のポリアミン、アミノアルコール、アミノメルカプタン、アミノ酸、これらのアミノ基をブロックしたものなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0087】
<着色剤>
着色剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜、公知の染料及び顔料を選択することができ、例えば、カーボンブラック、ニグロシン染料、鉄黒、ナフトールイエローS、ハンザイエロー(10G、5G、G)、カドミュウムイエロー、黄色酸化鉄、黄土、黄鉛、チタン黄、ポリアゾイエロー、オイルイエロー、ハンザイエロー(GR、A、RN、R)、ピグメントイエローL、ベンジジンイエロー(G、GR)、パーマネントイエロー(NCG)、バルカンファストイエロー(5G、R)、タートラジンレーキ、キノリンイエローレーキ、アンスラザンイエローBGL、イソインドリノンイエロー、ベンガラ、鉛丹、鉛朱、カドミュウムレッド、カドミュウムマーキュリレッド、アンチモン朱、パーマネントレッド4R、パラレッド、ファイセーレッド、パラクロルオルトニトロアニリンレッド、リソールファストスカーレットG、ブリリアントファストスカーレット、ブリリアントカーンミンBS、パーマネントレッド(F2R、F4R、FRL、FRLL、F4RH)、ファストスカーレットVD、ベルカンファストルビンB、ブリリアントスカーレットG、リソールルビンGX、パーマネントレッドF5R、ブリリアントカーミン6B、ポグメントスカーレット3B、ボルドー5B、トルイジンマルーン、パーマネントボルドーF2K、ヘリオボルドーBL、ボルドー10B、ボンマルーンライト、ボンマルーンメジアム、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、ローダミンレーキY、アリザリンレーキ、チオインジゴレッドB、チオインジゴマルーン、オイルレッド、キナクリドンレッド、ピラゾロンレッド、ポリアゾレッド、クロームバーミリオン、ベンジジンオレンジ、ペリノンオレンジ、オイルオレンジ、コバルトブルー、セルリアンブルー、アルカリブルーレーキ、ピーコックブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー、ファストスカイブルー、インダンスレンブルー(RS、BC)、インジゴ、群青、紺青、アントラキノンブルー、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ、コバルト紫、マンガン紫、ジオキサンバイオレット、アントラキノンバイオレット、クロムグリーン、ジンクグリーン、酸化クロム、ピリジアン、エメラルドグリーン、ピグメントグリーンB、ナフトールグリーンB、グリーンゴールド、アシッドグリーンレーキ、マラカイトグリーンレーキ、フタロシアニングリーン、アントラキノングリーン、酸化チタン、亜鉛華、リトボンなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0088】
着色剤は、樹脂と複合化されたマスターバッチとして用いることもできる。前記マスターバッチと共に混練される樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0089】
<カプセル>
カプセルは、熱可塑性エラストマーを軟化する可塑剤を内包している。カプセルは、所定の圧力により破壊されるカプセルである。前記所定の圧力とは、定着時の圧力であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.5[MPa]を超えることが好まし好ましい。前記圧力の上限としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、3[MPa]以下が好ましく、1[MPa]以下がより好ましい。前記所定の圧力とは、画像形成装置の定着装置25のニップ部における設定圧力である。
【0090】
定着装置25のニップ部での圧力(ニップ圧)と現像部等の機内でトナーにかかる圧力に差があればあるほど、トナーの耐久性は上がる。しかしながら、定着部の圧力を高くしすぎる(例えば、5[MPa]以上)と定着部の機械構成を堅牢にする必要があり、定着部が大型化及び重量化してしまう。一般的なオフィス内で使用するデスクトップタイプ及びフロアタイプの複写機やプリンタを想定した場合の定着部の大きさ及び重さを重視すると、定着部にかけられる圧力は、通常5[MPa]以下であり、1[MPa]以下が好ましい。一方、画像形成装置機内でトナーに摩擦が生じる場合の圧力は、0.3[MPa]以下と推定される。したがって、前記カプセルは、0.3[MPa]程度では破壊されず、1[MPa]以下の圧力で破壊されるカプセルが好ましい。
【0091】
カプセルは、シェル(外殻)を有する。カプセルの粒径とシェルの厚みは、カプセルの破壊強度に大きな影響を与える。本願発明者らは、シェルが樹脂部材である場合、カプセルの粒径が1[mm]以下の範囲では、カプセルの粒径とシェルの厚みの比率が、カプセルの破壊に影響を与えることを見出した。定着部におけるカプセルの破壊に必要な圧力を1[MPa]程度とした場合、カプセルの粒径とシェルの厚みの比率(カプセルの粒径:シェルの厚み)は、20:1〜5:1が好ましい。
【0092】
カプセルの粒径の下限は、シェルの厚みの強度限界に影響を与える。カプセルのシェルの厚みが数分子鎖オーダーの場合、カプセルの強度が保てず、分子鎖間距離を0.3[nm]程度と仮定すると10分子鎖以上は必要と考えられる。そうすると、シェルの厚みとの比率の関係から、1[MPa]の圧力で前記カプセルを破壊するためのカプセルの粒径は、60[nm]以上が好ましい。
【0093】
また、カプセルの粒径の上限は、定着に必要なトナー中の前記熱可塑性エラストマーに対する前記可塑剤の濃度と前記カプセル破壊後の前記可塑剤の樹脂中への浸透性に影響する。
【0094】
前記可塑剤の含有量は、前記熱可塑性エラストマー100質量部に対して、5質量部〜30質量部が好ましく、10質量部〜20質量部がより好ましい。なお、前記カプセルのシェルが薄い場合には、前記カプセルの質量と前記可塑剤の質量を同一視できる。
【0095】
定着部のニップ部での加圧時間は、印刷速度及び加圧ニップ幅により異なるが、従来の一つのニップ構成では10[ms]〜40[ms]程度である。
【0096】
この短時間でトナーを軟化するにはカプセル破壊後に前記可塑剤が前記樹脂中に均一拡散する必要がある。したがって、トナー中の樹脂内部での前記カプセル同士が離れすぎていると、前記可塑剤が前記樹脂中に浸透しきれず、トナーが十分な軟化状態とならず定着不良となる。
【0097】
前記可塑剤の前記樹脂への浸透は、拡散係数で決まり、おおよそ拡散係数が1×10−12〜1×10−13程度であると、ニップ時間が10[ms]〜40[ms]の範囲内に浸透可能な距離は100[nm]〜300[nm]程度である。即ちトナー樹脂中で可塑剤カプセル同士は100[nm]〜300[nm]の距離となるように分散させることが好ましい。
【0098】
以上のことから、前記可塑剤が前記熱可塑性エラストマー100質量部に対して、10質量部〜20質量部の範囲で、前記カプセル同士が100[nm]〜300[nm]の距離となるようするには、前記カプセルの粒径は、400[nm]が上限となる。即ち、カプセルの粒径は、60[nm]〜400[nm]が好ましい。
【0099】
しかし、カプセルをトナー内で均一分散した場合であり、よりトナーを軟化状態で確実に加圧するには浸透拡散の時間を確保する本実施例の定着構成が好ましく、トナー作成や可塑剤の選択範囲が広がり安価な材料を選択できる効果がある。
【0100】
カプセルの粒径は、例えば、TEM(透過型電子顕微鏡)又はSEM(走査型電子顕微鏡)により観察し、その平均値により求めることができる。また、カプセルを分散した液を、濃厚系粒径アナライザーFPAR−1000(大塚電子社製)を用いた動的光散乱法により測定することができる。
【0101】
カプセルのシェル(外殻)は、前記所定の圧力により破壊されるシェルであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0102】
シェルの材質としては、例えば、無機物、樹脂などが挙げられる。前記樹脂としては、例えば、PVA(ポリビニルアルコール)、メラミン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレン樹脂、ナイロン樹脂、アクリル樹脂などが挙げられる。また、シェルは、トナーの製造時に用いる溶剤に対して溶解しないことが好ましい。
【0103】
[可塑剤]
可塑剤は、熱可塑性エラストマーを軟化する可塑剤であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。可塑剤は、前記熱可塑性エラストマーの前記ハードセグメントに対して相溶性を示す可塑剤が好ましい。
【0104】
ここでの「相溶性を示す」とは、液体状態の前記可塑剤と前記熱可塑性エラストマーを接触した状態で接触面が膨潤する又は粘着性が発現する状態である、又は前記熱可塑性エラストマー100質量部に対して前記可塑剤を30質量部混練した場合に、貯蔵弾性率が1×10[Pa]以下となる状態である。
【0105】
可塑剤は、常温で固体の可塑剤であることが好ましい。可塑剤の融点としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、30[℃]〜60[℃]が好ましい。融点が、前記好ましい範囲内であると、融解に必要な熱量が少なくなり、省エネルギー化の点で有利である。
【0106】
可塑剤としては、具体的には、例えば、n−アルカン類、二塩基酸ジアルキル類、脂肪酸ジアルコキシアルキル類、脂肪酸ジアルコキシアルコキシアルキル類、長鎖有機酸、フタル酸ジシクロヘキシル、4−ブトキシフタロニトリル、塩素化パラフィン、リン酸トリフェニルなどが挙げられる。
【0107】
これらの可塑剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、常温で液体の可塑剤と固体の可塑剤を混合し、常温でベースト状となる程度の可塑剤も好ましい。
【0108】
常温で液体の前記n−アルカン類としては、例えば、n−デカン、n−ドデカン、n−トリデカン、n−テトラデカンなどが挙げられる。常温で固体の前記n−アルカン類としては、例えば、n−オクタデカン、n−ヘプタデカン、n−ノナデカン、融点が40[℃]〜50[℃]のパラフィンなどが挙げられる。常温で液体の前記二塩基酸ジアルキル類としては、例えば、アジピン酸ジエチル、アジピン酸ジイソブチル、セバシン酸ジメチル、フタル酸ジオクチルなどが挙げられる。常温で液体の前記脂肪酸ジアルコキシアルキル類としては、例えば、コハク酸ジエトキシエチル、アジピン酸ジエトキシエチル、アジピン酸ジメトキシエチルなどが挙げられる。常温で液体の前記脂肪酸ジアルコキシアルコキシアルキル類としては、例えば、コハク酸ジエトキシエトキシエチル、アジピン酸ジエトキシエトキシエチルなどが挙げられる。常温で固体の前記長鎖有機酸としては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、これらの混合物などが挙げられる。
【0109】
前記n−アルカン類は、ハードセグメントであるエチレンに構造が類似していることから、前記熱可塑性エラストマーとしてのEVAの可塑剤に適している。前記二塩基酸ジアルキル類、前記脂肪酸ジアルコキシアルキル類、前記脂肪酸ジアルコキシアルコキシアルキル類、前記長鎖有機酸、前記フタル酸ジシクロヘキシル、前記4−ブトキシフタロニトリル、前記塩素化パラフィン、及び前記リン酸トリフェニルは、ハードセグメントがスチレンであるSBS、SEBS、SEPBなどの熱可塑性エラストマーの可塑剤に適している。
【0110】
可塑剤として、常温で固体の可塑剤を用いることで、カプセルの強度を高くすることができる効果がある。
【0111】
一般的に、樹脂のような可とう性を有するシェルにより形成されるカプセルは、破壊に強く、内部が気体のように圧縮性をもつ部材の場合には、20[MPa]程度の高加圧でも破壊できない。
【0112】
しかし、内部に液体が充填されており、非圧縮性であると、加圧によりカプセルが変形するに従い、内圧が一気に上昇し、カプセル内部から液体が押し出ようとする力が働き1PMa以下の圧力で簡単にカプセルが破壊することがある。このように液体を閉じ込めたカプセルは、比較的弱い圧力で破壊されやすい。
【0113】
一方、カプセル内が固体であれば、加圧による変形そのものを抑えるため内圧が上昇せずカプセルが割れにくくなる。即ち、画像形成装置機内で、現像部等で固体可塑剤の融点よりも低い温度条件下で、トナーに圧力がかかっても内包する可塑剤カプセルの破壊を防止でき保存安定性を高くすることができる。
【0114】
可塑剤の含有量は、前述のとおり、熱可塑性エラストマー100質量部に対して、5質量部〜30質量部が好ましく、10質量部〜20質量部がより好ましい。
【0115】
[カプセルの製造方法]
カプセルの製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、いわゆる一般的に知られているマイクロカプセル製法により製造できる。前記マイクロカプセル製法としては、例えば、界面重合法、in−situ重合法などの油相と水相のエマルジョン系で2相間の界面でシェルを形成する方法;液中乾燥法、コアセベーション法などのように油相と水相のエマルジョンにおける蒸発及び凝集を利用してシェルを形成する方法;光硬化性樹脂、熱硬化性樹脂などによりシェルを形成する方法;マイクロ流路を用いて直接連続相に分散相を注ぎ込み微粒子化する方法など挙げられる。
【0116】
<その他の成分>
その他の成分としては、例えば、無機微粒子、磁性体、帯電制御剤、外添剤、流動性向上剤、クリーニング性向上剤、金属石鹸などが挙げられる。
【0117】
[無機微粒子]
無機微粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化スズ、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、酸化クロム、酸化セリウム、ペンガラ、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素などが挙げられる。また、これらの表面に疎水化処理を施すことにより、結着樹脂への分散性が向上する効果があり好ましい。
【0118】
トナーの内部に適切な特性の無機微粒子が存在することで、トナー成分である前記結着樹脂、前記着色剤、ワックスの微分散を達成できる。これは、前記無機微粒子が存在することにより、これらトナー成分にフィラー効果による混合シェアがかかり、均一混合できるためである。
【0119】
無機微粒子の平均一次粒径(以下、平均粒径という)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10[nm]〜1000[nm]が好ましく、50[nm]〜600[nm]がより好ましい。前記平均一次粒径が、10[nm]未満であると、無機微粒子の凝集が生じやすく、トナーの体積固有抵抗値の低下、及びトナー成分の分散悪化が生じることがある。一方、前記平均一次粒径が、1000[nm]を超えると、フィラー効果による分散効果が得られないことがある。また、前記無機微粒子は、外添剤として用いることもできる。
【0120】
[磁性体]
磁性体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、例えば、マグネタイト、マグヘマイト、フェライトの如き磁性酸化鉄、及び他の金属酸化物を含む酸化鉄;鉄、コバルト、ニッケル等の金属、又は、これらの金属とアルミニウム、コバルト、銅、鉛、マグネシウム、スズ、亜鉛、アンチモン、ベリリウム、ビスマス、カドミウム、カルシウム、マンガン、セレン、チタン、タングステン、バナジウム等の金属との合金;これらの混合物などが挙げられる。
【0121】
磁性体の具体例としては、例えば、Fe、γ−Fe、ZnFe、YFe12、CdFe、GdFe12、CuFe、PbFe12O、NiFe、NdFeO、BaFe1219、MgFe、MnFe、LaFeO、鉄粉、コバルト粉、ニッケル粉などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの中でも特に、Fe、γ−Feの微粉末が好ましい。
【0122】
また、異種元素を含有するマグネタイト、マグヘマイト、フェライト等の磁性酸化鉄、又はその混合物も使用できる。
【0123】
異種元素としては、例えば、リチウム、ベリリウム、ホウ素、マグネシウム、アルミニウム、ケイ素、リン、ゲルマニウム、ジルコニウム、スズ、イオウ、カルシウム、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウムなどが挙げられる。これらの中でも、マグネシウム、アルミニウム、ケイ素、リン、ジルコニウムが好ましい。
【0124】
異種元素は、酸化鉄結晶格子の中に取り込まれていてもよいし、酸化物として酸化鉄中に取り込まれていてもよいし、表面に酸化物又は水酸化物として存在していてもよいが、酸化物として含有されているのが好ましい。
【0125】
異種元素は、磁性体生成時にそれぞれの異種元素の塩を混在させ、pH調整により、粒子中に取り込むことができる。また、磁性体粒子生成後にpH調整、または各々の元素の塩を添加しpH調整することにより、粒子表面に析出することができる。
【0126】
磁性体の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記結着樹脂100質量部に対して、磁性体10質量部〜200質量部が好ましく、20質量部〜150質量部がより好ましい。
【0127】
磁性体の個数平均粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.1[μm]〜2[μm]が好ましく、0.1[μm]〜0.5[μm]がより好ましい。
【0128】
個数平均径は、透過電子顕微鏡により拡大撮影した写真をデジタイザーなどで測定することにより求めることができる。
【0129】
磁性体の磁気特性としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10Kエルステッド印加での磁気特性がそれぞれ、抗磁力20エルステッド〜150エルステッド、飽和磁化50[emu/g]〜200[emu/g]、残留磁化2[emu/g]〜20[emu/g]のものが好ましい。磁性体は、着色剤としても使用することができる。
【0130】
[帯電制御剤]
帯電制御剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜、公知のものを選択することができ、例えば、ニグロシン系染料、トリフェニルメタン系染料、クロム含有金属錯体染料、モリブデン酸キレート顔料、ローダミン系染料、アルコキシ系アミン、四級アンモニウム塩(フッ素変性四級アンモニウム塩を含む)、アルキルアミド、燐の単体又は化合物、タングステンの単体又は化合物、フッ素系活性剤、サリチル酸金属塩、サリチル酸誘導体の金属塩などが挙げられる。
【0131】
帯電制御剤は、市販品を用いることができる。前記市販品としては、例えば、ニグロシン系染料のボントロン03、第四級アンモニウム塩のボントロンP−51、含金属アゾ染料のボントロンS−34、オキシナフトエ酸系金属錯体のE−82、サリチル酸系金属錯体のE−84、フェノール系縮合物のE−89(以上、オリエント化学工業社製);第四級アンモニウム塩モリブデン錯体のTP−302、TP−415(以上、保土谷化学工業社製);LRA−901、ホウ素錯体であるLR−147(日本カーリット社製);銅フタロシアニン、ペリレン、キナクリドン、アゾ系顔料、その他スルホン酸基、カルボキシル基、四級アンモニウム塩等の官能基を有する高分子系の化合物などが挙げられる。
【0132】
帯電制御剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記結着樹脂100質量部に対して、0.1質量部〜10質量部が好ましく、0.2質量部〜5質量部がより好ましい。前記含有量が、10質量部を超えると、トナーの帯電性が大きすぎ、主帯電制御剤の効果を減退させ、現像ローラとの静電的吸引力が増大し、現像剤の流動性低下や、画像濃度の低下を招くことがある。
【0133】
帯電制御剤は、マスターバッチ、結着樹脂とともに溶融混練した後溶解分散させることもできるし、勿論、有機溶剤に直接溶解又は分散する際に加えてもよい。また、トナー母体粒子調製後にその表面に固定化させてもよい。
【0134】
[外添剤]
外添剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シリカ微粒子、疎水化されたシリカ微粒子、脂肪酸金属塩(例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウムなど);金属酸化物(例えば、チタニア、アルミナ、酸化スズ、酸化アンチモンなど)又はこれらの疎水化物、フルオロポリマーなどが挙げられる。これらの中でも、疎水化されたシリカ微粒子、チタニア微粒子、疎水化されたチタニア微粒子が好ましい。
【0135】
シリカ微粒子としては、例えば、R972、R974、RX200、RY200、R202、R805、R812(いずれも日本アエロジル株式会社製)などが挙げられる。
【0136】
チタニア微粒子としては、例えば、P−25(日本アエロジル株式会社製);STT−30、STT−65C−S(いずれも、チタン工業株式会社製);TAF−140(富士チタン工業株式会社製);MT−150W、MT−500B、MT−600B、MT−150A(いずれも、テイカ株式会社製)などが挙げられる。
【0137】
疎水化されたチタニア微粒子としては、例えばT−805(日本アエロジル株式会社製);STT−30A、STT−65S−S(いずれも、チタン工業株式会社製);TAF−500T、TAF−1500T(いずれも、富士チタン工業株式会社製);MT−100S、MT−100T(いずれも、テイカ株式会社製);IT−S(石原産業株式会社製)などが挙げられる。
【0138】
疎水化されたシリカ微粒子、前記疎水化されたチタニア微粒子、疎水化されたアルミナ微粒子は、親水性の微粒子を疎水化処理剤で処理(疎水化処理)して得ることができる。
【0139】
疎水化処理剤としては、例えば、ジアルキルジハロゲン化シラン、トリアルキルハロゲン化シラン、アルキルトリハロゲン化シラン、ヘキサアルキルジシラザンなどのシランカップリング剤、シリル化剤、フッ化アルキル基を有するシランカップリング剤、有機チタネート系カップリング剤、アルミニウム系のカップリング剤、シリコーンオイル、シリコーンワニスなどが挙げられる。
【0140】
また、無機微粒子にシリコーンオイルを処理(必要に応じて熱を加えて処理)したシリコーンオイル処理無機微粒子も好ましい。
【0141】
前記無機微粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、二酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化鉄、酸化銅、酸化亜鉛、酸化スズ、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、酸化クロム、酸化セリウム、ペンガラ、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸パリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素などが挙げられる。これらの中でも、シリカ、二酸化チタンが特に好ましい。
【0142】
前記シリコーンオイルとしては、例えば、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、クロルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、アルコール変性シリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、エポキシ・ポリエーテル変性シリコーンオイル、フェノール変性シリコーンオイル、カルボキシル変性シリコーンオイル、メルカプト変性シリコーンオイル、アクリル又はメタクリル変性シリコーンオイル、α−メチルスチレン変性シリコーンオイルなどが挙げられる。
【0143】
前記無機微粒子の一次粒子の平均粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1[nm]〜100[nm]が好ましく、3[nm]〜70[nm]がより好ましい。前記平均粒径が、1[nm]未満であると、無機微粒子がトナー中に埋没し、その機能が有効に発揮されにくいことがあり、100[nm]を超えると、静電潜像担持体表面を不均一に傷つけてしまうことがある。
【0144】
前記外添剤として樹脂微粒子を用いることもできる。前記樹脂微粒子としては、例えば、ソープフリー乳化重合、懸濁重合、分散重合によって得られるポリスチレン;メタクリル酸エステル、アクリル酸エステルの共重合体;シリコーン、ベンゾグアナミン、ナイロン等の縮重合系;熱硬化性樹脂による重合体粒子などが挙げられる。このような樹脂微粒子を機微粒子と併用することによってトナーの帯電性が強化でき、逆帯電のトナーを減少させ、地肌汚れを低減することができる。
【0145】
前記樹脂微粒子の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.01[質量%]〜5[質量%]が好ましく、0.1[質量%]〜2[質量%]がより好ましい。
【0146】
前記外添剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.1[質量%]〜5[質量%]が好ましく、0.3[質量%]〜3[質量%]がより好ましい。
【0147】
[流動性向上剤]
流動性向上剤は、表面処理を行って、疎水性を上げ、高湿度下においても流動特性や帯電特性の悪化を防止することが可能なものであり、例えば、シランカップリング剤、シリル化剤、フッ化アルキル基を有するシランカップリング剤、有機チタネート系カップリング剤、アルミニウム系のカップリング剤、シリコーンオイル、変性シリコーンオイルなどが挙げられる。
【0148】
[クリーニング性向上剤]
クリーニング性向上剤は、感光体ドラム10及び中間転写ベルト50に残存する転写後の現像剤を除去するために前記トナーに添加される。
【0149】
クリーニング性向上剤としては、例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸等の脂肪酸金属塩;ポリメチルメタクリレート微粒子、ポリスチレン微粒子等のソープフリー乳化重合により製造されたポリマー微粒子などが挙げられる。前記ポリマー微粒子としては、比較的粒度分布が狭いものが好ましく、体積平均粒径が0.01[μm]〜1[μm]のものがより好ましい。
【0150】
次に、本実施形態で用いる、カプセルを含有したトナーの一例について説明する。図6は、カプセルを含有したトナーの概略断面図である。トナー201は、熱可塑性エラストマーを含む結着樹脂202と、着色剤203と、可塑剤207を内包するカプセル204と、帯電制御剤205と、外添剤206とを有している。
【0151】
<トナーの製造方法>
トナーの製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、粉砕法、重合法、溶解懸濁法、噴霧造粒法などが挙げられる。これらの中でも、溶解懸濁法が好ましい。
【0152】
[粉砕法]
粉砕法は、例えば、トナー材料を溶融し、混練した後、粉砕し、分級等することにより、トナー粒子を得る方法である。
【0153】
トナー材料の溶融、混練では、トナー材料を混合し、混合物を溶融混練機に仕込んで溶融混練する。溶融混練機としては、例えば、一軸の連続混練機、二軸の連続混練機、ロールミルによるバッチ式混練機などが挙げられる。例えば、株式会社神戸製鋼所製KTK型二軸押出機、東芝機械株式会社製TEM型押出機、有限会社ケイシーケイ製二軸押出機、株式会社池貝鉄工所製PCM型二軸押出機、ブス社製コニーダー等が好適に用いられる。
【0154】
この溶融混練は、カプセルを破壊しない条件で行うことが好ましい。カプセルを破壊しない条件としては、例えば、トナー材料に、結着樹脂を溶解する溶剤を含有する方法が挙げられる。そうすることで、トナー材料を柔らかい状態にすることができる。
【0155】
粉砕では、混練で得られた混練物を粉砕する。この粉砕においては、まず、混練物を粗粉砕し、次いで微粉砕することが好ましい。この際ジェット気流中で衝突板に衝突させて粉砕したり、ジェット気流中で粒子同士を衝突させて粉砕したり、機械的に回転するローターとステーターとの狭いギャップで粉砕する方式が好ましく用いられる。
【0156】
トナーは、熱可塑性エラストマーを含有しているため、通常の粉砕条件では砕けない場合がある。その場合には、冷凍粉砕することが好ましい。前記冷凍粉砕としては、例えば、低温環境(例えば、0[℃]以下)で粉砕する方法が挙げられる。
【0157】
分級は、前記粉砕で得られた粉砕物を分級して所定粒径の粒子に調整する。前記分級は、例えば、サイクロン、デカンター、遠心分離等により、微粒子部分を取り除くことにより行うことができる。
【0158】
前記粉砕及び分級が終了した後に、粉砕物を遠心力などで気流中に分級し、所定の粒径のトナーを製造する。前記粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、5[μm]〜20[μm]が挙げられる。
【0159】
粉砕法の場合、トナーの平均円形度を高くする目的で、得られたトナー母体粒子に対し、機械的衝撃力を与えて形状を制御してもよい。この場合、前記機械的衝撃力は、例えば、ハイブリタイザー、メカノフュージョンなどの装置を用いてトナー母体粒子に付与することができる。
【0160】
[溶解懸濁法]
溶解懸濁法としては、例えば、前記結着樹脂を溶媒中に溶解させた溶液(油相)を水系媒体(水相)中に添加することにより懸濁液を調製する工程と、懸濁液から溶媒を除去する工程を有する方法などが挙げられる。このとき、結着樹脂と共に、添加剤を溶媒中に溶解乃至分散させることができる。
【0161】
溶解懸濁法においては、前記結着樹脂を溶解しつつ、前記カプセルの前記シェルを溶解しない溶媒を用いることが好ましい。前記溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0162】
図7は定着から排紙に至るトナーの状態変化のグラフである。横軸には定着開始から経過時間を、縦軸にはトナーの軟化の度合いを示す貯蔵弾性率をそれぞれ表している。図7において、軟化領域と記載している範囲であればトナーは定着させるために十分な軟化状態であり、一方硬化領域と記載している範囲であればトナーは十分に硬化しており他の部材等に接触しても剥離しない状態である。
【0163】
なお、この間のトナー中の熱可塑性エラストマーと可塑剤の状態は、図5(a)、図5(b)、図5(c)を用いて前述した通りである。
【0164】
図7を用い硬化の過程の時間との関係を説明すると定着終了から時間T1を経過することによりトナーは硬化領域に達し十分な硬化状態に達する。記録媒体5の動きは定着終了から時間T2経過後に排出手段と接触しその後、機外へと排紙される。
【0165】
これらから、時間T1<時間T2を満足すれば画像剥がれの無い状態が得られるが、T1>T2ではトナー硬化が不十分であり排出ローラ対56にトナーが付着し画像剥がれが生じることとなる。
【0166】
本実施形態の画像形成装置においては、定着装置25と排出ローラ対56との距離が一定であるので、印刷速度を上げようとすると時間T2は短くなる。そのため、ある印刷速度以上で時間T1<時間T2の関係が満たせなくなり、自然冷却だけでは記録媒体5上のトナーを可塑剤の凝固点以下まで冷やすことができず、トナー硬化が不十分で排出ローラ対56にトナーが付着して画像剥がれが生じるようになる。
【0167】
よって、高い印刷速度を実現しようとすると短時間でトナーを硬化させる、すなわち、短時間でトナーを凝固点以下まで冷やしトナーに内包される可塑剤を固化させることが必要である。そのため、本実施形態の画像形成装置では、定着装置25と排出ローラ対56との間に記録媒体5上のトナーを可塑剤の凝固点以下に冷却する冷却手段である冷却装置6を設けている。
【0168】
図8は、参考構成例として画像形成装置における定着装置25から排出ローラ対56までの要部の概要を表したものである。
【0169】
定着装置25に搬送された記録媒体5上の未定着のトナー像は、加熱ローラ26と加圧ローラ27とで形成されるニップ部を通過したときに加熱されつつ加圧される。このとき、トナー像中のカプセルに内包した可塑剤は融点温度まで加熱され溶解し、加圧されることにより破壊されたカプセルから溶解した可塑剤がカプセル近傍の樹脂に浸透拡散していき、軟化したトナーが圧力で記録媒体5にアンカリングして定着される。その後、定着装置25から排出ローラ対56に記録媒体5が搬送される途中で、送風用のファンが設けられた冷却装置6により強制的に記録媒体5上のトナーが冷却されることによって、トナーの温度が可塑剤の凝固点以下(固化温度以下)まで冷やされる。そして、その後、搬送ローラ56aと搬送ローラ56bとを有する排出ローラ対56により記録媒体5が挟み込まれて搬送され排紙トレイ57上に排出される。
【0170】
しかしながら、機内にファンを回転させると転写紙の紙粉や未定着トナーが舞い漂うことになり、場合によっては光学系のミラーなどに付着することで地肌汚れや、白抜け、黒スジなどの異常画像の原因となる。
【0171】
図9は、本実施形態の画像形成装置における定着装置25から排出ローラ対56までの要部の他例を模式的に表したものである。図9においては、定着装置25と排出ローラ対56との間に設けた冷却装置6がヒートパイプ8aであること以外、図8と同様である。このヒートパイプ8aは、記録媒体5と接触し記録媒体5やトナーなどから熱を吸熱する吸熱部81と、吸熱部81で吸熱された熱を排熱する排熱部82とを有している。
【0172】
加熱ローラ26と加圧ローラ27とを有する定着装置25に未定着トナー像が形成された記録媒体5が搬送され、加熱と加圧とによりトナー像が記録媒体5に定着される。その後、記録媒体5上のトナーが定着装置25から排出ローラ対56に到達する前に、冷却装置6のヒートパイプ8aの吸熱部81に記録媒体5を接触させて、ヒートパイプ8aが設けられた冷却装置6により強制的に記録媒体5上のトナーが冷却されることによって、トナーの温度が可塑剤の凝固点以下(固化温度以下)まで冷やされる。そして、その後、搬送ローラ56aと搬送ローラ56bとを有する排出ローラ対56により記録媒体5が挟み込まれて搬送され排紙トレイ57上に排出される。これにより、ヒートパイプ8aによって記録媒体5上のトナーを可塑剤の凝固点以下に冷却することで記録媒体5に対するトナー像の固定がなされ、画像剥がれが発生するのを抑制できる。
【0173】
ここで、冷却装置6について詳しく説明すると、ヒートパイプとしては、薄型で平板状のものが望ましく、例えば、アクトロニクス株式会社のヒートレーンを用いることができる。これは、薄型のアルミ押し出し成型による多孔扁平管をヒートパイプ化したもので記録媒体幅以上の冷却面を容易に得ることが可能である。また、熱伝達能力も非常に高い(高熱伝導率)という特徴も有する。また、ヒートパイプを用いた冷却装置6の他の例としては、古河電工株式会社のマイクロヒートパイプ(μHP)を記録媒体搬送方向に複数並列で配置して用いることも可能である。
【0174】
また、図1に示すように本実施形態においては、ヒートパイプ8aの排熱部82にペルチェモジュール(ペルチェ素子)7の上面である冷却部71が付設されている。また、ペルチェモジュール7の冷却プレート側とは反対側の下面である発熱部72には、ヒートパイプ8aとほぼ同様な構成のヒートパイプ8bが付設されている。ペルチェモジュール7は、周知の技術により、ヒートパイプ8aとの接触面すなわち上面で冷却するとともに、ヒートパイプ8bとの接触面すなわち下面で放熱する仕組みになっている。
【0175】
また、従来はヒートパイプ8aの排熱部82を冷却ファンによって強制的に冷却することによって効率良く排熱を行い、ヒートパイプ8aを狙いの冷却温度まで到達させ、ヒートパイプ8aの冷却効率を向上させていた。ところが、冷却ファンによって装置内の空気をヒートパイプ8aの排熱部82に当てても、装置内の空気は熱源を有する定着装置25などによって温められているため、狙いの冷却温度に達するには時間がかかってしまう。そのため、生産性の向上を図るために高速で連続プリントが行われると、冷却ファンによって前記排熱部82を空冷しても、前記吸熱部81での吸熱に対して前記排熱部82からの排熱が間に合わず、ヒートパイプ8aの冷却効率が低下してしまう。
【0176】
一方、本実施形態のようにヒートパイプ8aの排熱部82をペルチェモジュールで冷却することで、ペルチェモジュール7では数秒で狙いの温度に到達させることが可能であり、冷却ファンによって前記排熱部82を空冷する場合よりも前記排熱部82から効率良く排熱させることができる。これにより、ヒートパイプ8aの排熱部82を冷却ファンによって空冷する場合よりも、ヒートパイプ8aの冷却効率が低下する抑制することができる。よって、生産性の向上を図るために高速で連続プリントが行われた場合でも、ヒートパイプ8aによる記録媒体5上のトナーの冷却効率が低下するのを抑えて、記録媒体5に対するトナー像の固定が不十分で排出ローラ対56にトナーが付着してしまい、画像剥がれが発生するのを抑制することができる。
【0177】
また、ペルチェモジュール7の発熱部72に設けられたヒートパイプ8bの排熱部84は、加圧ローラ27に当接されており、ペルチェモジュール7の発熱部72からヒートパイプ8bの吸熱部で吸熱した熱を、ヒートパイプ8bの排熱部84から加圧ローラ27に伝達される。これにより、昇温している加熱ローラ26から加圧ローラ27に伝わる熱を低減させることができ、定着温度上昇の立ち上がりに寄与することができる。
【0178】
また、図示していないが、加圧ローラ27の温度(70[℃]±3[℃])を検知して50[℃]を超える温度域に達した場合は、図10に示すように、ヒートパイプ8bの排熱部84を加圧ローラ27からソレノイドユニット9により離間させる。これにより、加圧ローラ27の温度が上昇し過ぎるのを抑制することができる。また、画像形成装置内外を仕切る仕切り板90よりも画像形成装置外側にヒートパイプ8bの排熱部85が延在してもうけられている。そして、ヒートパイプ8bの排熱部84を加圧ローラ27から離間するのと同時に、排熱部85に対向させて画像形成装置に設けた冷却ファン80を作動させて、排熱部85に空気を当てて冷却することにより、ヒートパイプ8bの冷却効率を維持することができる。
【0179】
なお、ヒートパイプ8aの温度も図示されていないが温度センサによって温度が検知されており、その温度センサの検知結果に基づいてペルチェモジュール7の電流値を制御するなどして、ヒートパイプ8aの少なくとも吸熱部81の温度を記録媒体5上のトナーの凝固点以下になる様な温度に設定しつつ、ヒートパイプ8aが過度に冷却して結露が生じない、ヒートパイプ8aの温度コントロールがなされている。これにより、ヒートパイプ8aに結露が生じるのを抑えつつ、効率良くヒートパイプ8aによって記録媒体5上のトナーの冷却を行うことができる。
【0180】
また、これらヒートパイプ8a,8bは、記録媒体5やトナーなどから熱を吸熱する吸熱部81,83での熱を、排熱部82,84,85を積極的に冷却することにより、効率よく排熱することが可能である。したがって、ヒートパイプ8a,8bの長手方向の幅を記録媒体幅以上にし、記録媒体幅よりはみ出した部分に冷却ファンなどのヒートパイプ冷却装置を別途でさらに設けることもできる。
【0181】
図11は、定着装置25を離れた後の経過時間とトナーの貯蔵弾性率との関係を示したグラフである。横軸は定着装置25を離れた後の時間経過を示しており、縦軸はトナーの貯蔵弾性率を示している。図11からわかるように、画像剥がれが生じない硬化領域に達するまでに要する時間は、定着装置25と排出ローラ対56との間に冷却装置6がある場合の経過時間Taのほうが、定着装置25と排出ローラ対56との間に冷却装置6が無い場合の経過時間Tbよりも短時間となる。
【0182】
[実験]
以下、本実施形態の画像形成装置を用いて、定着装置25と排出ローラ対56との間の冷却装置の有無による画像出力速度と定着性との関係を評価した。使用したトナー及び装置構成は以下に示すとおりである。なお、冷却装置以外の装置構成や使用したトナーは実施例及び各比較例で共通である。
【0183】
<定着性確認装置構成>
・定着装置25
加圧ローラ27と加熱ローラ26との間の圧力:1[MPa]
加熱ローラ設定温度:80[℃]
・定着装置25と排出ローラ対56との間の距離:200[mm]
・冷却装置
・100枚通紙した時点のトナー剥がれを評価した。
【0184】
[実施例1]
定着装置25と排出ローラ対56との間に冷却装置のヒートパイプとして、アクトロニクス社ヒートレーン60[mm]幅を、ペルチェモジュール(FPH1−12707AC)の冷却部側のプレートに2個設けた。同じくペルチェモジュールの発熱部側のプレートにアクトロニクス社ヒートレーン60[mm]幅を3個設けた。また、発熱部側のヒートレーンの一端を金属製の加圧ローラ27に当接させ、他端を機外にまで延ばして冷却ファンにより空冷する。
【0185】
[比較例1]
定着装置25と排出ローラ対56との間に冷却装置として、直径120[mm]のDCファンを2個、紙搬送方向に垂直に配置した。
【0186】
[比較例2]
定着装置25と排出ローラ対56との間に冷却装置のヒートパイプとして、アクトロニクス社ヒートレーン60[mm]幅を2個、紙搬送方向に平行に配置した。
【0187】
[比較例3]
定着装置25と排出ローラ対56との間に冷却装置を設けない。
【0188】
<定着性確認条件>
画像出力(紙搬送)速度:100[mm/s]、150[mm/s]、200[mm/s]、300[mm/s]
【0189】
<使用トナー>
・可塑剤カプセル
シェル材:ポリビニルアルコール
可塑剤:ラウリン酸
平均粒径:30[nm]
・熱可塑性エラストマー
スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体
・着色剤
カーボンブラック
・その他
ポリスチレン(結着樹脂の一部)
疎水性シリカ微粒子(トナー外添剤)
【0190】
<定着性評価画像>
記録媒体としてA4サイズの紙(Mypaper、株式会社リコー社製)上にカスケード現像法(紙の表面にトナーをふりかけて画像を形成する方法)により形成された約5[cm]角の1層のトナー層。
【0191】
定着後の画像の画像剥がれの程度を目視観察により評価した結果を表1に示す。
【0192】
【表1】

【0193】
なお、評価としては、画像のトナー剥がれが100枚連続出力しても認められない場合を「○」、画像のトナー剥がれが初期20枚では問題ないが50枚〜100枚では一部分剥がれが認められた場合を「△」、画像のトナー剥がれが初期20枚ではやや剥がれがあるが50枚以降は剥がれがある場合を「×」とした。
【0194】
表1からわかるように、比較例1、比較例2及び比較例3に比べて、実施例1は画像出力(紙搬送)速度が300[mm/s]であっても良好な画像形成が可能であった。
【0195】
以上に説明したものは一例であり、本発明は、次の態様毎に特有の効果を奏する。
(態様A)
像担持体と、感光体ドラム10などの像担持体上に潜像を形成する露光装置21などの潜像形成手段と、熱可塑性エラストマーを含有する樹脂、及び、前記該樹脂を軟化させる常温で固体状の可塑剤を内包したカプセルを少なくとも含有したトナーを用いて前記潜像を現像しトナー像を形成する現像装置61などの現像手段と、トナー像を像担持体上から記録媒体上に転写する転写帯電器62や二次転写装置22などの転写手段と、記録媒体上に転写されたトナー像を記録媒体に定着させる定着装置25などの定着手段と、定着手段でトナー像が定着された記録媒体を排出部に排出する排出ローラ対56などの排出手段と、定着手段と排出手段との間に設けられ、記録媒体と接触し記録媒体やトナーなどから熱を吸熱する吸熱部81などの吸熱部と、吸熱部で吸熱された熱を排熱する排熱部82などの排熱部とを有し、記録媒体上のトナーを可塑剤の凝固点以下に冷却するヒートパイプ8aなどのヒートパイプとを備えた画像形成装置において、ヒートパイプの排熱部を冷却するペルチェモジュール7などのペルチェ素子を設けた。これによれば、上記実施形態について説明したように、記録媒体に対するトナー像の固定が不十分で画像剥がれが発生するのを抑制できる。
(態様B)
(態様A)において、上記ペルチェ素子の電流値を制御する。これによれば、上記実施形態について説明したように、温度コントロールすることで効率良く冷却を行うことができる。
(態様C)
(態様B)において、上記定着手段は加熱ローラ26などの加熱ローラと加圧ローラ27などの加圧ローラとを有し、上記ペルチェ素子は冷却部71である冷却面と発熱部72である放熱面とを備えており、前記ペルチェ素子の前記冷却面に上記ヒートパイプの上記排熱部を接触させ、前記ペルチェ素子の前記放熱面にヒートパイプ8bなどの放熱面側ヒートパイプを接触させて設けており、前記放熱側ヒートパイプの一部を前記加圧ローラに接触させる。これによれば、上記実施形態について説明したように、定着温度上昇の立ち上がりに寄与することができる。
(態様D)
(態様C)において、上記放熱側ヒートパイプは上記定着手段の温度制御により上記加圧ローラに対して接離する。これによれば、上記実施形態について説明したように、加圧ローラの温度が上昇し過ぎるのを抑制することができる。
(態様E)
(態様D)において、上記放熱側ヒートパイプを冷却する放熱側ヒートパイプ冷却手段を備えており、上記加圧ローラに対して前記放熱側ヒートパイプを離間させた場合には、前記放熱側ヒートパイプパイプ冷却手段により該放熱側ヒートパイプを冷却する。これによれば、上記実施形態について説明したように、冷却効率を維持することができる。
(態様F)
(態様E)において、上記放熱側ヒートパイプの一部は装置本体外側に位置しており、上記放熱側ヒートパイプ冷却手段は装置本体外側で前記発熱側ヒートパイプと対向させて設けられ冷却ファンである。これによれば、上記実施形態について説明したように、冷却効率を維持することができる。
【符号の説明】
【0196】
5 記録媒体
6 冷却装置
7 ペルチェモジュール
8a ヒートパイプ
8b ヒートパイプ
9 ソレノイドユニット
10 感光体ドラム
14 支持ローラ
15 支持ローラ
16 支持ローラ
17 中間転写ベルトクリーニング装置
18 画像形成ユニット
20 抗磁力
21 露光装置
22 二次転写装置
23 ローラ
24 二次転写ベルト
25 定着装置
26 加熱ローラ
27 加圧ローラ
28 反転装置
32 コンタクトガラス
33 第一走行体
34 第二走行体
35 結像レンズ
36 読み取りセンサ
49 レジストローラ
50 中間転写ベルト
52 分離ローラ
53 給紙路
54 手差しトレイ
55 切換爪
56 排出ローラ対
56a 搬送ローラ
56b 搬送ローラ
57 排紙トレイ
61 現像装置
62 転写帯電器
63 クリーニング装置
64 除電装置
80 冷却ファン
90 仕切り板
120 タンデム型画像形成部
130 原稿台
142 給紙ローラ
143 ペーパーバンク
144 給紙カセット
145 分離ローラ
146 給紙路
147 搬送ローラ
148 給紙路
150 複写機本体
160 帯電装置
200 給紙テーブル
201 トナー
202 結着樹脂
203 着色剤
204 カプセル
205 帯電制御剤
206 外添剤
207 可塑剤
300 スキャナ
400 原稿自動搬送装置
【先行技術文献】
【特許文献】
【0197】
【特許文献1】特開平8−006426号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
像担持体と、
像担持体上に潜像を形成する潜像形成手段と、
熱可塑性エラストマーを含有する樹脂、及び、該樹脂を軟化させる常温で固体状の可塑剤を内包したカプセルを少なくとも含有したトナーを用いて前記潜像を現像しトナー像を形成する現像手段と、
前記トナー像を前記像担持体上から記録媒体上に転写する転写手段と、
前記記録媒体上に転写されたトナー像を該記録媒体に定着させる定着手段と、
前記定着手段でトナー像が定着された前記記録媒体を排出部に排出する排出手段と、
前記定着手段と前記排出手段との間に設けられ、前記記録媒体と接触し該記録媒体や前記トナーなどから熱を吸熱する吸熱部と、該吸熱部で吸熱された熱を排熱する排熱部とを有し、記録媒体上の前記トナーを前記可塑剤の凝固点以下に冷却するヒートパイプとを備えた画像形成装置において、
前記ヒートパイプの前記排熱部を冷却するペルチェ素子を設けたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1の画像形成装置において、
上記ペルチェ素子の電流値を制御することを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項2の画像形成装置において、
上記定着手段は加熱ローラと加圧ローラとを有し、
上記ペルチェ素子は冷却面と放熱面とを備えており、
前記ペルチェ素子の前記冷却面に上記ヒートパイプの上記排熱部を接触させ、前記ペルチェ素子の前記放熱面に放熱面側ヒートパイプを接触させて設けており、
前記放熱側ヒートパイプの一部を前記加圧ローラに接触させることを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項3の画像形成装置において、
上記放熱側ヒートパイプは上記定着手段の温度制御により上記加圧ローラに対して接離することを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項4の画像形成装置において、
上記放熱側ヒートパイプを冷却する放熱側ヒートパイプ冷却手段を備えており、
上記加圧ローラに対して前記放熱側ヒートパイプを離間させた場合には、前記放熱側ヒートパイプパイプ冷却手段により該放熱側ヒートパイプを冷却することを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項5の画像形成装置において、
上記放熱側ヒートパイプの一部は装置本体外側に位置しており、
上記放熱側ヒートパイプ冷却手段は装置本体外側で前記発熱側ヒートパイプと対向させて設けられ冷却ファンであることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−105051(P2013−105051A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−249309(P2011−249309)
【出願日】平成23年11月15日(2011.11.15)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】