説明

画像形成装置

【課題】画像形成装置において、装置の大型化やコストアップを招来することなく、転写部材の位置規制部材へのトナー付着の蓄積を解消すること。
【解決手段】トナー像担持体21と、トナー像担持体21に所定の圧力で接触し、トナー像担持体21上に形成されたトナー像を被転写材へと転写させるための転写部材27と、トナー像担持体21に接触して転写部材27の食い込み圧接量を規制する位置規制部材30と、転写部材27及び位置規制部材30に所定電位のバイアス電圧を印加する手段40と、を備えた画像形成装置。位置規制部材30は、転写部材27の支軸27aに回転可能に設置されており、半導電材からなるとともにその抵抗値は転写部材27の抵抗値よりも大きく設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置、特に、画像データに基づいて形成されたトナー画像を被転写材上に転写する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、電子写真プロセスによる画像形成装置にあっては、複数の感光体上に形成されたトナー像を中間転写ベルト上に1次転写して合成し、該合成トナー画像を用紙上に2次転写している。中間転写ベルトに対しては2次転写ローラが所定の圧力で接触しており、該2次転写ローラの両端に装着された位置規制部材(ローラ)が中間転写ベルトに圧接することで、2次転写ローラの中間転写ベルトに対する食い込み圧接量を規制している。
【0003】
前記位置規制部材は中間転写ベルトの画像形成領域外に接触しているが、中間転写ベルトには画像形成領域外であってもかぶりトナーが付着するため、位置規制部材へのトナー付着が発生する。この状態で画像形成動作を続行させると、位置規制部材の表面にトナーが層状に固着し、食い込み圧接量の変動(減少)によるトナー画像の転写不良、中間転写ベルトの損傷などの不具合を生じる。また、通常より大きなサイズの用紙を通紙すると該用紙の裏側にトナーが付着する用紙の裏汚れが発生する。
【0004】
そこで、従来では、特許文献1に記載されているように、位置規制部材に付着したトナーを清掃するための部材を当接させ、位置規制部材からトナーを機械的に除去することが提案されている。しかし、機械的な清掃では清掃部材にトナーが蓄積されていくと清掃能力が低下するという問題点を有し、かつ、清掃部材のみならず清掃済みトナーの回収手段が必要となり、装置の大型化、コストアップにつながる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3944432号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、装置の大型化やコストアップを招来することなく、転写部材の位置規制部材へのトナー付着の蓄積を解消し、転写部材の食い込み圧接量の変動(減少)による転写不良やトナー像担持体の損傷を防止できる画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の目的を達成するため、本発明の一形態である画像形成装置は、
トナー像担持体と、
前記トナー像担持体に所定の圧力で接触し、該トナー像担持体上に形成されたトナー像を被転写材へと転写させるための転写部材と、
前記トナー像担持体に接触して前記転写部材の食い込み圧接量を規制する位置規制部材と、
前記転写部材及び前記位置規制部材に所定電位のバイアス電圧を印加する手段と、
を備え、
前記位置規制部材は、前記転写部材の支軸に回転可能に設置されており、半導電材からなるとともにその抵抗値は前記転写部材の抵抗値よりも大きいこと、
を特徴とする。
【0008】
前記画像形成装置においては、位置規制部材へもバイアス電圧を印加することにより、位置規制部材に付着したトナーがトナー像担持体へ再転写され、位置規制部材からトナーが静電的に除去される。それゆえ、位置規制部材にトナー付着が蓄積し、転写部材の食い込み圧接量が変動(減少)したり、トナー像担持体が損傷することが未然に防止される。しかも、位置規制部材はその抵抗値が転写部材の抵抗値よりも大きくされているので、転写電流以上の電流を被転写材へ供給することはなく、トナーの転写を阻害することはない。また、位置規制部材を機械的に清掃する方式ではないので、装置の大型化やコストアップを招来することもない。なお、位置規制部材から除去されてトナー像担持体へ再転写されたトナーは、通常トナー像担持体に設置されているトナー回収手段にて廃棄トナーとして回収される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、装置の大型化やコストアップを招来することなく、転写部材の位置規制部材へのトナー付着の蓄積を解消し、転写部材の食い込み圧接量の変動(減少)による転写不良やトナー像担持体の損傷を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】一実施例である画像形成装置を示す概略構成図である。
【図2】中間転写ベルトに対する2次転写ローラと位置規制部材の圧接状態を示す斜視図である。
【図3】2次転写ローラを示す斜視図である。
【図4】位置規制部材を示す斜視図である。
【図5】転写バイアス電圧を示すチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る画像形成装置の実施例について、添付図面を参照して説明する。
【0012】
一実施例である画像形成装置は、図1に示すように、タンデム方式の電子写真プリンタであり、概略、Y,M,C,Kの各色のトナー画像を形成するための作像ユニット10(10Y,10M,10C,10K)と、中間転写ユニット20と、定着ユニット29と、で構成されている。
【0013】
作像ユニット10は、それぞれ、感光体ドラム11を中心として図示しない帯電チャージャ、現像器などを配置したもので、残留トナーを除去するためのクリーニングブレード12が設置されている。また、各感光体ドラム11を露光して静電潜像を形成するためのレーザ走査装置(図示せず)が配置されている。レーザ走査装置から照射されるレーザビームによってそれぞれの感光体ドラム11上に描画される静電潜像を現像器で現像して各色のトナー画像を形成する。画像データは、図示しないスキャナからあるいはコンピュータから本プリンタに転送されてくる。
【0014】
中間転写ユニット20は、矢印Z方向に回転駆動される中間転写ベルト21を備え、各感光体ドラム11と対向する1次転写チャージャ25から付与される電界にて、各感光体ドラム11上に形成されたトナー画像を中間転写ベルト21上に1次転写して合成する。中間転写ベルト21は支持ローラ22,23に無端状に張り渡されており、バネ24によって一定のテンションを付与されている。さらに、残留トナーを除去するためのクリーニングブレード26が支持ローラ23と対向する位置に設置され、2次転写ローラ27が支持ローラ22と対向する位置に設置されている。
【0015】
被転写材である用紙Sは下方から1枚ずつ給紙され、中間転写ベルト21と2次転写ローラ27とのニップ部に搬送され、ここでトナー画像(合成カラー画像)が2次転写される。その後、用紙Sは定着ユニット29に搬送されてトナーの加熱定着を施され、プリンタ本体の上面に配置されたトレイ部に排出される。
【0016】
現像剤として使用されるトナーは、粒径7μm以下、好ましくは、4.5〜6.5μmの重合トナーが用いられる。現像方式はトナーのみを用いる1成分現像方式、トナーとキャリアとの混合物を用いる2成分現像方式のいずれであってもよい。
【0017】
中間転写ベルト21は、ポリフェニレンサルファイド樹脂にカーボンを分散させ、単位面積当たりの表面抵抗率を1×107〜1×1012Ω、体積抵抗率を1×106〜1×1012Ω・cmに調整したものを用いることが好ましい。中間転写ベルト21としては、それ以外に、ポリカーボネート樹脂、ポリイミド樹脂、ウレタン系樹脂、フッ素系樹脂などにカーボンなどの導電性フィラーやイオン性の導電材料を分散含有させて抵抗値を調整したものを用いることができる。中間転写ベルト21は、前記材料を所望の周長に射出成形もしくは遠心成形した円筒状基材を所望の幅でカットし、端部補強のための端部加工したものが用いられる。
【0018】
2次転写ローラ27は、図3に示すように、芯金28に発泡体29を被覆したものであり、芯金28は支軸27aに回転自在に装着されている。発泡体29としてはイオン導電性のNBRとヒドリンゴムの発砲スポンジで抵抗値が1×106〜1×108Ωに調整されたものが用いられる。さらに、発泡体29はトナーとの離型性を上げるために表層改質したスキン層を有していてもよい。
【0019】
2次転写ローラ27は図示しないコイルばねによって中間転写ベルト21に所定の圧力で接触しており、中間転写ベルト21との間で所定のニップ幅を形成するために、中間転写ベルト21に対して食い込み圧接量が0.20mmになるように、ローラ27の両端側に位置規制ローラ30が支軸27aに回転自在に装着されている(図2参照)。位置規制ローラ30は中間転写ベルト21の両端部分(非画像領域)に当接している。また、位置規制ローラ30とともに2次転写ローラ27を中間転写ベルト21に対して弾性的に付勢するコイルばね(図示せず)は支軸27aの両端部に配置され、そのばね力は片側ずつでそれぞれ25Nとされている。
【0020】
さらに、2次転写ローラ27は支軸27aを介して高圧電源40に接続されており、転写動作時には高圧電源40からトナーの帯電極性とは逆極性の転写バイアス電圧が印加される。このバイアス電圧にて形成される電界にてトナーが中間転写ベルト21から用紙S上に転写される。また、2次転写ローラ27には中間転写ベルト21に付着したかぶりトナーが付着するため、高圧電源40から正負のバイアス電圧を印加し、付着したかぶりトナーを中間転写ベルト21に再転写させる。この処理は2次転写ローラ27の清掃工程として非プリント時に実行され、中間転写ベルト21に再転写されたかぶりトナーはクリーニングブレード26で掻き取られ、廃棄トナーとして回収される。
【0021】
一方、中間転写ベルト21に付着したかぶりトナーは位置規制ローラ30にも付着し、2次転写ローラ27の食い込み量の減少などの不具合が発生する。それゆえ、本実施例では、位置規制ローラ30を半導電材にて形成するとともに、高圧電源40から支軸27aを介してバイアス電圧を印加することにより、位置規制ローラ30に付着したかぶりトナーを静電的に清掃する(中間転写ベルト21に再転写させる)こととしている。中間転写ベルト21に再付着したトナーも前述のごとくクリーニングブレード26で掻き取られる。
【0022】
位置規制ローラ30は、図4(A)に示すように、支軸27aに半導電性樹脂層31を回転自在に取り付けたもので、半導電性樹脂層31は抵抗値を1×108〜1×1010Ωに調整したものが用いられる。半導電性樹脂層31としては、ポリアセタール樹脂以外に、ポリイミド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリカーボネート樹脂などにカーボンを分散させた材料で構成してもよい。また、図4(B)に示すように、支軸27aに回転自在に取り付けた金属製芯金32に半導電性を有する硬質ゴム層33を被覆したものであってもよい。さらに、図4(C)に示すように、半導電性を有する硬質ゴム層34の表面を金属層35で被覆したものであってもよい。ここで、硬質ゴムとは、例えばEPDMにカーボンを分散させて抵抗値を調整したものである。
【0023】
位置規制ローラ30としては前記各種のものを使用できるが、その抵抗値は2次転写ローラ27の抵抗値よりも大きいことが必要である。というのは、2次転写動作時においては、2次転写ローラ27から用紙Sを介して中間転写ベルト21に転写電流が供給され、本実施例では同時に位置規制ローラ30からも漏れ電流が発生する。この漏れ電流を少なくするために、位置規制ローラ30の抵抗値を2次転写ローラ27の抵抗値よりも大きく設定している。位置規制ローラ30の抵抗値は、トナーを除去するために、2次転写ローラ27の抵抗値の10〜100倍程度が好ましい。例えば、2次転写ローラ27の抵抗値を1×107Ωとした場合、位置規制ローラ30の抵抗値は1×108〜1×109Ωに設定する。
【0024】
位置規制ローラ30の抵抗値Rは、支軸27aに電圧Vを印加したときに流れる電流値Iに基づいて、R=V/Iによって求められる。2次転写ローラ27の抵抗値も同様にして求められる。
【0025】
ところで、2次転写ローラ27及び位置規制ローラ30の清掃工程(非プリント時に実行)は、支軸27aに高圧電源40から所定値のバイアス電圧を出力することにより行われる。本実施例において、トナーは負極性に帯電されているため、該トナーをローラ27,30から除去するにはローラ27,30に負極性のバイアス電圧を印加すればよい。しかし、かぶりトナーには正極性に不正に帯電したトナーも含まれているため、清掃工程で印加するバイアス電圧としては正負の電圧を交互に印加することが好ましい。具体的には、図5に示すように、+500Vと−500Vの電圧を周期Aで交互に印加する。周期Aは2次転写ローラ27の1回転(位置規制ローラ30の1回転でもある)に相当する。
【0026】
前記実施例の装置を用いて、2次転写ローラ27及び位置規制ローラ30の抵抗値をそれぞれ所定の値で組み合わせた実験を行い、評価した。なお、位置規制ローラ30としては図4(A)に示したものを用いた。以下の表1に示すように、2次転写ローラ27の抵抗値は1×106〜1×108Ωの範囲で可変し、位置規制ローラ30の抵抗値は1×106〜1×1010Ωの範囲で可変した。表1から明らかなように、位置規制ローラ30の抵抗値が2次転写ローラ27の抵抗値よりも大きいほうが好ましい評価であり、特に、位置規制ローラ30の抵抗値が1×10〜1×1010Ωの範囲で、2次転写不良やトナー除去不良を生じることはなかった。
【0027】
【表1】

【0028】
なお、本発明に係る画像形成装置は前記実施例に限定するものではなく、その要旨の範囲内で種々に変更することができる。
【0029】
特に、画像形成装置の基本的な態様(モノクロ機、カラー機、複写機、プリンタ、複合機)は任意である。また、前記実施例において位置規制部材は中間転写ベルトに圧接する2次転写ローラのための位置規制部材として示したが、これに限定することなく、感光体ドラムに圧接する1次転写ローラのための位置規制部材であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0030】
以上のように、本発明は、画像形成装置に有用であり、特に、位置規制部材へのトナー付着の蓄積を解消できる点で優れている。
【符号の説明】
【0031】
10…作像ユニット
11…感光体ドラム
21…中間転写ベルト
27…2次転写ローラ
27a…支軸
30…位置規制ローラ
40…高圧電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー像担持体と、
前記トナー像担持体に所定の圧力で接触し、該トナー像担持体上に形成されたトナー像を被転写材へと転写させるための転写部材と、
前記トナー像担持体に接触して前記転写部材の食い込み圧接量を規制する位置規制部材と、
前記転写部材及び前記位置規制部材に所定電位のバイアス電圧を印加する手段と、
を備え、
前記位置規制部材は、前記転写部材の支軸に回転可能に設置されており、半導電材からなるとともにその抵抗値は前記転写部材の抵抗値よりも大きいこと、
を特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記位置規制部材の抵抗値は1×107〜1×1010Ωであること、を特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記バイアス電圧印加手段は、前記転写部材の支軸に正負のバイアス電圧を印加すること、を特徴とする請求項1又は請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記正負のバイアス電圧の周期は前記転写部材の1回転に相当すること、を特徴とする請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記トナー像担持体とは、感光体上に形成されたトナー像が1次転写され、かつ、該トナー像を用紙上に2次転写する中間転写ベルトであり、
前記転写部材とは2次転写ローラであること、
を特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−105072(P2013−105072A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−249543(P2011−249543)
【出願日】平成23年11月15日(2011.11.15)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】