説明

画像形成装置

【課題】画像濃度ムラの発生を従来よりも抑える。
【解決手段】1次転写ローラ25Y,M,C,Kの電気抵抗を検知する抵抗検知手段、あるいはそれら電気抵抗とそれぞれ相関関係にある所定の電気的特性を検知する電気特性検知手段を設けるとともに、1次転写電源81Y,M,C,Kからの出力電流の適正値を、感光体2Y,M,C,K上の画像面積率に加えて、抵抗検知手段又は電気特性検知手段による検知結果にも基づいて求める処理を実施するように、制御部を構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潜像担持体に対して直接あるいはベルト部材を介して当接する当接部材に供給するための転写電流を出力する転写電流出力手段の出力目標値を潜像担持体上のトナー像の画像面積率に応じて更新する画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の画像形成装置としては、特許文献1に記載のものが知られている。この画像形成装置は、潜像担持体たる感光体と、これに当接して転写ニップを形成する転写ローラとを有している。そして、転写ローラに対してトナーの正規帯電極性とは逆極性の転写バイアスを印加しながら、転写ニップ内に送り込んだ記録シートに対して感光体上のトナー像を転写する。
【0003】
転写ローラに対して転写バイアスを出力する電源は、出力電圧を調整することで転写ローラに供給する転写電流を所定の出力目標値と同じ値にする定電流制御を実施するようになっている。そして、感光体上のトナー像を記録シートに良好に転写し得る転写電流の適正値が転写ニップにおける感光体上の画像面積率に応じて変化することから、電源は次のようにして転写電流の出力目標値を定期的に更新するようになっている。即ち、感光体の表面を転写ニップに対して所定の長さだけ送る毎に、その長さ範囲における感光体上の平均画像面積率を算出し、算出結果に基づいて、出力目標値を更新するのである。かかる構成では、画像面積率の違いによる画像濃度ムラの発生を抑えることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、この画像形成装置においても、画像濃度ムラを引き起こすことがあった。そこで、本発明者がその原因について研究を行ったところ、次のようなことが判明した。即ち、当接部材たる転写ローラとしては、感光体との密着性を高めるために、芯金上に導電性ゴムの被覆したものを用いるのが一般的である。このような転写ローラは、環境変動や劣化の進行などに伴って電気抵抗が変化する。転写ニップにおける感光体上の画像面積率に応じて転写電流の適正値が異なってくるのは既に述べた通りであるが、転写ローラの電気抵抗によっても、転写電流の適正値が異なってくることが本発明者の実験によって明らかになった。
【0005】
本発明は、以上の背景に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、画像濃度ムラの発生を従来よりも抑えることができる画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、潜像を担持する潜像担持体と、前記潜像担持体上の潜像をトナーによって現像してトナー像を得る現像手段と、前記潜像担持体に直接あるいはベルト部材を介して当接する当接部材と、前記潜像担持体と前記当接部材との当接、あるいは前記潜像担持体と前記ベルト部材との当接による転写ニップにて、前記潜像担持体上のトナー像を、前記転写ニップに挟み込まれた記録シート、あるいは前記ベルト部材の表面に転写するために前記当接部材に対して転写電流を出力し、且つ前記潜像担持体の表面を前記転写ニップに対して所定の長さだけ送る毎に前記転写電流の出力目標値をその所定の長さ範囲における画像面積率に基づいて求めた適正値と同じ値に更新する転写電流出力手段と、を備える画像形成装置において、前記当接部材の電気抵抗を検知する抵抗検知手段、あるいは前記電気抵抗と相関関係にある所定の電気的特性を検知する電気特性検知手段を設けるとともに、前記適正値を、前記画像面積率に加えて、前記抵抗検知手段又は前記電気特性検知手段による検知結果にも基づいて求める処理を実施するように、前記転写電流出力手段を構成したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明においては、転写ニップにおける潜像担持体上の画像面積率と、当接部材の電気抵抗との両方に基づいて転写電流の出力目標値を決定することで、画像面積率しか加味しないで出力目標値を決定していた従来に比べて、より適切な値の転写電流を供給した状態でトナー像を転写ニップで転写する。これにより、画像濃度ムラの発生を従来よりも抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施形態に係るプリンタを示す概略構成図。
【図2】同プリンタにおける電気回路の一部を示すブロック図。
【図3】シェブロンパッチを示す拡大模式図。
【図4】感光体上の10ライン区画を説明するための模式図。
【図5】記録紙とこれに形成された画像との一例を示す模式図。
【図6】図5とは異なる画像を示す部分拡大模式図。
【図7】新品のC1次転写ローラ(電気抵抗=1.4E7[Ω])を用いた場合におけるC転写率とM逆転写率と1次転写電流との関係を示すグラフ。
【図8】使い古したC1次転写ローラ(電気抵抗=5.6E7[Ω])を用いた場合におけるC転写率とM逆転写率と1次転写電流との関係を示すグラフ。
【図9】第1電流適正値Iと、平均画像面積率Xと、電気抵抗との関係を示すグラフ。
【図10】第2電流適正値Iと、平均画像面積率Xと、電気抵抗との関係を示すグラフ。
【図11】1次転写電圧と1次転写電流とテスト画像との関係を示すグラフ。
【図12】1次転写率と1次転写電圧とMトナー逆転写率とテスト画像との関係を示すグラフ。
【図13】1次転写率と1次転写電流とMトナー逆転写率とテスト画像との関係を示すグラフ。
【図14】電気抵抗Rが1.4E7[Ω]である1次転写ローラのI−V特性を示すグラフ。
【図15】電気抵抗Rが5.64E7[Ω]である1次転写ローラのI−V特性を示すグラフ。
【図16】第3変形例に係るプリンタを示す概略構成図。
【図17】第4変形例に係るプリンタを示す概略構成図。
【図18】第5変形例に係るプリンタを示す概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を画像形成装置としてのタンデム型の画像形成部によってカラー画像を形成するカラープリンタ(以下、単にプリンタという)に適用した実施形態について説明する。
まず、実施形態に係るプリンタの基本的な構成について説明する。図1は、実施形態に係るプリンタを示す概略構成図である。このプリンタは、図示しない光書込ユニット、タンデム画像形成部10、転写ユニット20、定着装置40、再送装置50などを備えている。タンデム画像形成部10は、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(黒)の各色トナー像を形成するための4つの画像形成ユニット1Y,M,C,Kを有している。
【0010】
転写ユニット20は、無端状の中間転写ベルト21、駆動ローラ22、従動ローラ23、2次転写対向ローラ24、4つの1次転写ローラ25Y,M,C,K、2次転写ローラ26などを有している。像担持体としての無端状の中間転写ベルト21は、側方からの眺めが逆三角形状の形状になる姿勢で、駆動ローラ22、従動ローラ23及び2次転写対向ローラ24に掛け回されている。そして、駆動ローラ22の回転駆動によって図中時計回り方向に無端移動せしめられる。中間転写ベルト20のループ内側には、駆動ローラ22、従動ローラ23、及び2次転写対向ローラ24の他に、4つの1次転写ローラ25Y,M,C,Kも配設されている。なお、1次転写ローラ25Y,M,C,Kや2次転写ローラ26の役割については後述する。
【0011】
タンデム画像形成部10は、4つの画像形成ユニット1Y,M,C,Kを中間転写ベルト21の上張架面に沿って水平方向に並べる姿勢で、転写ユニット20の上方に配設されている。画像形成ユニット1Y,M,C,Kは、図中反時計回り方向に回転駆動されるドラム状の感光体2Y,M,C,Kと、現像ユニット3Y,M,C,Kと、帯電手段4Y,M,C,Kとを有している。また、図示しないY,M,C,K用のドラムクリーニング装置も有している。感光体2Y,M,C,Kは、それぞれ中間転写ベルト21の上張架面に当接してY,M,C,K用の1次転写ニップを形成しながら、図示しない駆動手段によって図中反時計回り方向に回転駆動せしめられる。現像ユニット3Y,M,C,Kは、感光体2Y,M,C,Kに形成された静電潜像をY,M,C,Kトナーによって現像するものである。また、帯電手段4Y,M,C,Kは、感光体2Y,M,C,Kの表面をトナーの帯電極性と同じ極性に一様帯電せしめるものである。
【0012】
Y,M,C,K用の1次転写ニップの下方では、中間転写ベルト21のループ内で、1次転写ローラ25Y,M,C,Kが中間転写ベルト21を感光体2Y,M,C,Kに向けて押圧している。これら1次転写ローラ25Y,M,C,Kには、1次転写電源81Y,M,C,Kによって1次転写バイアスが印加される。
【0013】
タンデム画像形成部10の上方には、図示しない光書込ユニットが配設されている。この光書込ユニットは、帯電手段4Y,M,C,Kによって一様帯電せしめられた感光体2Y,M,C,Kの表面に対し、走査光Lによる光書込処理を施して静電潜像を形成するものである。
【0014】
感光体2Y,M,C,Kは、表面に有機感光層が被覆された直径60[mm]のドラム状の基体を有しており、その基体の静電容量が9.5E−7[F/m]に調整されている。そして、図示しない駆動手段によって図中反時計回り方向に回転駆動せしめられる。帯電手段4Y,M,C,Kによって一様に帯電せしめられた感光体2Y,M,C,Kの表面は、図示されない光書込ユニットから発せられるレーザー光によって露光走査されてY,M,C,K用の静電潜像を担持する。
【0015】
現像装置3Y,M,C,Kは、Y,M,C,Kトナーと磁性キャリアとを含有する図示しない現像剤を収容している。現像剤は、磁性キャリアとポリエステル系の材料からなる重合トナーとを含有している。現像装置3Y,M,C,Kのケーシングには開口が形成されており、この開口からは筒状の現像スリーブにおける周面の一部が露出して感光体2Y,M,C,Kの表面に対向している。Y,M,C,K用の現像スリーブは、自らと連れ回らないように内部に固定された図示しないマグネットローラの発する磁力により、ケーシング内の現像剤を担持する。そして、自らの回転駆動に伴って、現像剤を自らと感光体2Y,M,C,Kとが対向する現像領域に搬送する。
【0016】
現像領域では、Y,M,C,K用の現像スリーブに印加される現像バイアスと、感光体2Y,M,C,Kの静電潜像との間に、マイナス極性のY,M,C,Kトナーをスリーブ側から感光体側に移動させる現像ポテンシャルが作用する。また、Y,M,C,K用の現像スリーブと感光体2Y,M,C,Kの非画像部との間に、マイナス極性のY,M,C,Kトナーを感光体側からスリーブ側に移動させる非画像ポテンシャルが作用する。現像装置3Y,M,C,K内のY,M,C,Kトナーは、撹拌などによって約−25[μc/g]の帯電量で帯電しており、現像領域において、前述した現像ポテンシャルの作用によって感光体2Y,M,C,Kの静電潜像に転移する。これにより、感光体2Y,M,C,K上の静電潜像が現像されてY,M,C,Kトナー像になる。Y,M,C,Kトナー像の感光体2Y,M,C,K上における単位面積あたりのトナー付着量は約0.43[mg/cm]である。
【0017】
現像装置3Y,M,C,Kは、それぞれ内部の現像剤のトナー濃度を測定する図示しないトナー濃度センサを有している。このトナー濃度センサによる検知結果は、電圧信号として図示しない制御部に送られる。制御部はRAMを備えており、この中にトナー濃度センサからの出力電圧の出力目標値を記憶している。そして、トナー濃度センサからの出力電圧の値と前記出力目標値とを比較し、図示しないY用のトナー供給装置を比較結果に応じた時間だけ駆動させる。この駆動により、現像に伴うY,M,C,Kトナー消費によってY,M,C,Kトナー濃度を低下させた現像剤に対し、適量のY,M,C,Kトナーが供給される。このため、現像装置3Y,M,C,K内の現像剤のトナー濃度が所定の範囲内に維持される。
【0018】
タンデムトナー像形成部10の上方に配設された図示しない光書込ユニットは、帯電手段4Y,M,C,Kによって約−520[V]に一様帯電せしめられた感光体2Y,M,C,Kの表面に対し、走査光Lによる光書込処理を施して静電潜像を形成するものである。なお、ベタ画像を光書込したときにおける静電潜像の電位Vlは、約−40[V]である。感光体2Y,M,C,K上で現像されたY,M,C,Kトナー像は、上述したY,M,C,K用の1次転写ニップにて、中間転写ベルト21のおもて面に重ね合わせて1次転写される。これにより、中間転写ベルト21のおもて面には、4色重ね合わせトナー像が形成される。
【0019】
なお、本プリンタにおいては、帯電手段4Y,M,C,Kとして、帯電バイアス電源80Y,M,C,Kによって帯電バイアスが印加される帯電部材を感光体2Y,M,C,Kに当接又は近接せしめた状態で、帯電部材と感光体2Y,M,C,Kとの間に放電を生じせしめて感光体2Y,M,C,Kを一様帯電させるものを採用している。このような帯電手段4Y,M,C,Kに代えて、スコロトロン帯電器などを採用してもよい。
【0020】
画像形成部の下方には、図示しない給紙カセットが配設されている。給紙カセット内には、記録シートが複数枚重ねられたシート束の状態で収容されており、給紙カセットに配設されている給紙ローラによって給紙路に向けて送り込まれる。なお、感光体2Y,M,C,や、中間転写ベルト21、搬送ローラなどの線速であるプロセス線速は、約350[mm/sec]に設定されている。
【0021】
給紙路の末端には、レジストローラ対32が配設されている。レジストローラ対32は、記録シートをローラ間に挟み込むとすぐに、両ローラの回転を一旦停止させる。そして、記録シートを適切なタイミングで後述の2次転写ニップに向けて送り出す。
【0022】
画像形成ユニット1Y,M,C,Kの下方に配設された転写ユニット20は、中間転写ベルト21の他に、ベルトループ内に配設された1次転写ローラ25Y,M,C,K、従動ローラ23、2次転写対向ローラ24などを有している。また、ベルトループ外に配設された2次転写ローラ26、ベルトクリーニング装置28なども有している。
【0023】
ベルトループ内の4つの1次転写ローラ25Y,M,C,Kは、無端移動する中間転写ベルト21を感光体2Y,M,C,Kに押し付けるようにして配置される。これにより、中間転写ベルト21と感光体2Y,M,C,Kとが当接するY,M,C,K用の1次転写ニップが形成されている。
【0024】
1次転写ローラ25Y,M,C,Kは、回転軸心を感光体2Y,M,C,Kの回転軸心の直下に位置させるように配設されており、それぞれ、芯金とこれの周面に被覆された導電性スポンジローラ部とを有している。その外形は16[mm]で、心金の径は10[mm]である。導電性スポンジローラ部の電気抵抗は、初期状態で概ね1.4E7[Ω]である。この電気抵抗は、接地された外径30[mm]の金属ローラを10[N]の力で導電性スポンジローラ部に押し当てた状態で、1次転写ローラ心金に1000[V]の電圧を印加したときに流れる電流Iから、オームの法則(R=V/I)に基づいて算出された値である。なお、数十万枚の記録シートに対して画像を形成した後、1次転写ローラの導電性スポンジローラ部の電気抵抗を測定したところ、約5.6E7[Ω]であった。このように、導電性スポンジローラ部は、使用に伴って電気抵抗を徐々に上昇させていく。また、環境変動によっても電気抵抗を変動させる。
【0025】
1次転写ローラ25Y,M,C,Kには、ローラの電気抵抗を測定するための抵抗測定ローラ27Y,M,C,Kが当接しており、1次転写ローラ25Y,M,C,Kの回転駆動に伴って従動回転する。直径8[mm]のステンレス(SUS304)製の抵抗測定ローラ27Y,M,C,Kには、リレースイッチ28Y,M,C,Kを介してアースが接続されている。通常の、画像形成動作時には、リレースイッチ28Y,M,C,Kのコイルが励磁されておらず、電気接点が切られているため、1次転写ローラ25Y,M,C,Kは電気的にフロート状態になっている。リレースイッチ28Y,M,C,Kのコイルが励磁されて電気接点がつながれると、1次転写ローラ25Y,M,C,Kに供給される1次転写電流がリレースイッチ28Y,M,C,Kを介してアースに流れる。
【0026】
1次転写電源81Y,M,C,Kは、Y,M,C,K用の1次転写ニップで感光体2Y,M,C,K上のトナー像を中間転写ベルト21上に1次転写する際には、1次転写電流を所定の出力目標値と同じ値だけ出力する定電流制御を実施する。これにより、1次転写ローラ25Y,M,C,Kに出力目標値と同じ値の1次転写電流が供給されて、感光体2Y,M,C,K上のY,M,C,Kトナー像が中間転写ベルト21上に1次転写される。また、1次転写電源81Y,M,C,Kは、自らから出力する電圧の値を測定する図示しない電圧計を有している。そして、後述する抵抗測定処理を実施するときには、5[μA]の1次転写電流を出力しながら、出力電圧値を測定する。そして、測定結果とオームの法則とに基づいて、1次転写ローラ25Y,M,C,Kの電気抵抗を算出する。
【0027】
ベルトループ内側に配設された2次転写対向ローラ24は、ベルトループ外側に配設された2次転写ローラ26との間に中間転写ベルト21を挟み込むように配設されている。これにより、中間転写ベルト21のおもて面と、ループ外側の2次転写ローラ26とが当接する2次転写ニップが形成されている。先に説明したレジストローラ対32は、ローラ間に挟み込んだ記録シートを、中間転写ベルト21上の4色トナー像に同期させ得るタイミングで、2次転写ニップに向けて送り出す。
【0028】
2次転写ローラ26には、トナーとは逆極性の2次転写バイアスが印加される。中間転写ベルト21上の4色トナー像は、2次転写バイアスやニップ圧の作用により、2次転写ニップ内で記録シートに一括して2次転写される。そして、記録紙Pの白色と相まって、フルカラートナー像となる。
【0029】
2次転写ニップを通過した後の中間転写ベルト21には、記録シートに転写されなかった転写残トナーが付着している。これは、図示しないベルトクリーニング装置によってクリーニングされる。
【0030】
2次転写ニップの図中左側方には、定着ユニット40が配設されている。この定着ユニット40は、ハロゲンランプ等の発熱源を内包する定着ローラ41と、これに向けて押圧される加圧ローラ42との当接によって定着ニップを形成している。2次転写ニップを通過した記録シートは、中間転写ベルト21から分離した後、定着ユニット40内に送られる。そして、定着ユニット40内の定着ニップに挟まれながら図中右側から左側に向けて搬送される過程で、定着ローラ41によって加熱されたり、押圧されたりして、フルカラートナー像が定着される。このようにしてトナー像が定着せしめられた記録シートは、図示しない排出ローラ対を経由して機外へと排出される。
【0031】
定着装置40から排出された記録シートについては、そのまま排紙ローラ対に送る場合と、排紙ローラ対に送らずに、再送装置50に送る場合とがある。具体的には、記録シートの第1面だけに画像を形成する片面モードのプリントジョブを実施する際には、定着装置40から排出された記録シートを例外なく排紙ローラ対に送る。これに対し、記録シートの両面に画像を形成する両面モードのプリントジョブを実施する際において、定着装置40から排出された記録シートが第1面だけにトナー像を担持するものである場合には、それを排紙ローラ対に送らずに、再送装置50に送る。但し、両面モードであっても、定着装置40から排出された記録シートが両面にトナー像を担持するものである場合には、それを排紙ローラ対に送る。定着装置40を通過した後の記録シートを排紙ローラ対に送るのか、再送装置50に送るのかの切り換えは、図示しない切り換え爪によるシート搬送先の切り換えによって行われる。
【0032】
再送装置50は、定着装置40から送られてくる記録シートをスイッチバック路51でスイッチバック搬送することで、その上下を反転させる。その後、記録シートをスイッチバック路52に送る。スイッチバック路52を通過した記録シートは、記録シートを図示しない給紙カセットから2次転写ニップに搬送するための給紙路の途中に送り込まれる。これにより、上下を反転させた状態で、2次転写ニップに再送される。
【0033】
なお、給紙路の後半領域では、記録シートは、後述する抵抗測定ローラ対31とレジストローラ対32とを順次通過する。再送装置50は、記録シートを給紙路における抵抗測定ローラ対31よりも上流側の位置に送り込む。よって、記録シートは、給紙カセットから送り出された直後のものであるか、再送値50によって再送されたものであるかにかかわらず、給紙路内において、抵抗測定ローラ対31とレジストローラ対32とを必ず経由することになる。
【0034】
レジストローラ対32は、2つのローラの回転を停止させた状態で、記録シートの先端が突き当てられることで、記録シートのスキューを矯正する。その後、2つのローラを回転させて記録シートの先端部をレジストニップ内にくわえ込むが、その後すぐにローラの回転を停止させる。そして、記録シートを2次転写ニップでベルト上のトナー像に同期させ得るタイミングで、ローラの回転を再開する。
【0035】
図2は、本プリンタにおける電気回路の一部を示すブロック図である。同図において、制御手段たる制御部200は,演算手段たるCPU200a(Central Processing Unit)、不揮発性メモリたるRAM200c(Random Access Memory)、一時記憶手段たるROM200b(Read Only Memory)等を有している。制御部200は,装置全体の制御を司るものであり、様々な機器やセンサが接続されているが、同図では、それら機器の一部だけを示している。制御部200は、RAM200cやROM200b内に記憶している制御プログラムに基づいて、各機器の駆動を制御する。また、外部のパーソナルコンピューター等から送られてくる画像データ(露光時の書き込み信号)に基づいて、Y,M,C,Kの1次転写電流値を決定し、決定した1次転写電流値となるように、Y,M,C,K用の1次転写電源81Y,M,C,Kを制御する。かかる制御部200は、1次転写電源81Y,M,C,Kとともに転写電流出力手段として機能している。なお、1次転写電源81Y,M,C,Kからの1次転写電流の出力の出力目標値は、制御部200からPWM信号として出力されて、1次転写電源81Y,M,C,Kに入力される。
【0036】
また、制御部200は、図示しないメイン電源スイッチがONされた直後や、所定枚数のプリントを実施する毎に、位置ズレ量補正処理を実施するようになっている。そして、この位置ズレ量補正処理において、中間転写ベルト21に、図3に示すようなシェブロンパッチPVと呼ばれる複数のトナー像からなる位置ズレ検知用画像を形成する。図2に示した光学センサユニット86は、その発光手段から発した光を集光レンズに通した後、中間転写ベルト21の表面で反射させ、その反射光を自らの受光手段で受光して受光量に応じた電圧を出力する。中間転写ベルト21に形成されたシェブロンパッチPV内のトナー像が光学センサユニット86の直下を通過する際には、光学センサユニット86の受光手段による受光量が大きく変化する。これにより、制御部200は,中間転写ベルト21に形成されたシェブロンパッチPV内における各トナー像を検知することができる。このように、光学センサユニット86は、制御部200との組合せによって像検知手段として機能している。なお、発光手段としては、トナー像を検出するために必要な反射光を作り得る光量をもつLED等が用いられている。また、受光手段としては,多数の受光素子が直線状に配列されたCCDなどが用いられている。
【0037】
制御部200は、中間転写ベルト21に形成したシェブロンパッチPV内の各トナー像を検知することで、各トナー像における副走査方向(ベルト移動方向)の位置を検出する。シェブロンパッチPVは、図3に示すように、Y,M,C,Kの各色のトナー像を主走査方向(レーザー光が感光体表面上で走査する方向)から約45[°]傾けた姿勢で、副走査方向であるベルト移動方向に所定ピッチで並べたラインパターン群である。このようなシェブロンパッチPV内のY,C,Mトナー像について,Kトナー像との検知時間差を読み取っていく。同図では、図紙面上下方向が主走査方向に相当し、左から順に、Y,M,C,Kトナー像が並んだ後、これらとは姿勢が90[°]異なっているK,C,M,Yトナー像が更に並んでいる。基準色となるKとの検出時間差tky,tkc,tkmについての実測値と理論値との差に基づいて、各色トナー像の副走査方向のズレ量、即ち位置ズレ量を求める。そして、その位置ズレ量に基づいて、不図示の光書込ユニットの感光体に対する光書込開始タイミングを補正して、感光体や中間転写ベルト21の速度変動に起因する各色トナー像の位置ズレを低減する。
【0038】
先に示した図1において、Y,M,C,K用の1次転写ニップのうち、ベルト移動方向の最上流側に位置するY用の1次転写ニップでは、トナー像を転写していない状態の中間転写ベルト21に対して感光体2Y上のYトナー像が転写される。つまり、Y用の1次転写ニップでは、重ね合わせ転写のない第1転写工程が実施される。これに対し、M,C,K用の1次転写ニップでは、既に中間転写ベルト21上に転写されているトナー像に対して、感光体上のトナー像を重ね合わせて転写する第2転写工程が実施される。
【0039】
中間転写ベルト21に対して、Y,M,C,K用の1次転写ローラ25Y,M,C,Kを介して転写バイアスを印加する1次転写電源81Y,M,C,Kは、それぞれ所定の出力目標値と同じ値の転写電流を出力する。1次転写電源81Y,M,C,Kはそれぞれ、転写ニップ出口及びその近傍における感光体上の主走査方向(感光体軸線方向)の画像面積率に基づいて、出力目標値を決定する。画像面積率は、制御部200から1次転写電源81Y,M,C,Kに送られる。なお、以下、転写ニップ出口における画像面積率に基づいて転写電流の出力目標値を更新する方式を、DTCC(Dynamic Transfer Current Control)方式という。
【0040】
感光体の表面は、制御部200により、副走査方向(感光体表面移動方向)において、ページの先頭を基準にして、図4に示されるように、10画素分ずつの領域毎に理論上の区分けがなされる。そして、区分けによる各区画(以下、「10ライン区画」という)には、それぞれ主走査方向に一直線上に並ぶ画素の集合からなる画素ラインが10ラインずつ含まれている。それぞれの画素ラインについては、全画素数に対する潜像部の画素数の割合が画像面積率として求められる。そして、10個の画素ラインの画像面積率の平均値が、「10ライン区画」における平均画像面積率として求められる。制御部200は、Y,M,C,Kのそれぞれについて、このようにして求めた平均画像面積率の情報を、1次転写電源81Y,M,C,Kにそれぞれ出力する。
【0041】
1次転写電源81Y,M,C,Kは、1次転写電流の出力目標値を、複数の「10ライン区画」のうち、転写ニップ出口を通過中の「10ライン区画」の平均画像面積率に応じたものに決定する。そして、その「10ライン区画」が1次転写ニップ出口を通過している最中には、その出力目標値と同じ値の転写電流を出力するように、出力電圧を調整する。その「10ライン区画」における最下流側の画素ラインが転写ニップ出口を通過すると、1次転写電源からの転写電流の出力目標値が、次の「10ライン区画」の平均画像面積率に応じたものに変更する。この変更のタイミングについては、制御部200から送られてくるタイミング信号に基づいて決定する。
【0042】
1次転写ニップ出口の付近における平均画像面積率に基づいて1次転写電流の出力目標値を決定するのは、次に説明する理由からである。即ち、感光体においては、静電潜像よりも地肌部の電位が高い状態にある。1次転写ニップ出口においては、感光体の地肌部と中間転写ベルト21との間で剥離放電が発生する。1次転写電流の殆どが、その剥離放電によるものである場合には、1次転写ニップの出口における中間転写ベルトの電位がそれほど高くならないことから、静電潜像と中間転写ベルトとの電位差が不足して、転写不良が発生してしまう。そこで、中間転写ベルト21の電位を適切な値まで上昇させ得る出力電圧にするように、例えば1次転写ニップ出口における感光体上の平均画像面積率が50[%]程度であることを想定して、1次転写電流の出力目標値を設定したとする。すると、ニップ出口の平均画像面積率が50[%]よりも低くなってニップ出口における感光体地肌部の面積がより大きくなると、剥離放電によって消費される電流量が増加して中間転写ベルト21の電位を下げることから、転写不良を引き起こしてしまう。また、平均画像面積率が50[%]よりも高くなってニップ出口における感光体地肌部の面積がより小さくなると、剥離放電によって消費される電流量が減少して中間転写ベルト21の電位を上昇させることから、ベルトと静電潜像との間で放電を発生させる。この放電により、トナーを逆帯電させることから、転写不良を引き起こしてしまう。1次転写ニップ出口の付近における平均画像面積率に応じた転写電流を流すことで、感光体の静電潜像に適量の電流を流すとともに、感光体の静電潜像とベルトとの電位差を放電開始電圧よりも小さくすることが可能になる。
【0043】
図5は、記録シートとこれに形成された画像との一例を示す模式図である。図示の記録シートは、A3サイズの普通紙であり、プリンタ内において図中矢印A方向に搬送される。1次転写ニップ内では、この矢印A方向が副走査方向と同じ方向になる。記録紙には、副走査方向に延在する帯状の画像が形成されており、この画像の主走査方向(図中左右方向)における長さは29.7[mm]である。A3サイズの記録シートの幅は297[mm]である。画像は記録シートにおける副走査方向の全域に渡って延在しているので、副走査方向の位置にかかわらず、画像面積率は10[%]のまま一定である。つまり、図示の画像を出力する際には、1次転写ニップ出口に進入している「10ライン区画」における平均画像面積率が何れも10[%]となる。よって、この画像を出力する際には、図4の電流波形とは異なり、一定の1次転写電流が画像先端から後端まで出力され続ける。
【0044】
図6は、図5とは異なる画像を示す部分拡大模式図である。この画像は、主走査方向の長さが一定ではなく、その長さは副走査方向の位置によって様々である。図示している画像領域では、10個の画素ラインのうち、副走査方向の先頭から5個分の画素ラインでは画像面積率がそれぞれ100[%]になっている。これに対し、後端側の5個分の画素ラインでは画像面積率がそれぞれ50[%]になっている。このような「10ライン区画」においては、平均画像面積率が75[%]になるので、75[%]に応じた値に1次転写電流の出力目標値が決定される。実施形態では、平均画像面積率の算出は、光書込ユニットにおけるレーザー書き込み信号に基づいてなされている。
【0045】
次に、本発明者が行った実験について説明する。
本発明者は、図1に示した実施形態に係るプリンタと同様の構成のプリンタ試験機を用意した。そして、C用の1次転写ローラ25Cとしては、新品のものと、使い古したものとを用意した。新品の1次転写ローラ25Cの電気抵抗を測定したところ、1.4E7[Ω]であった。また、使い古した1次転写ローラ25Cの電気抵抗を測定したところ、5.6E7[Ω]であった。実験については、新品の1次転写ローラ25Cをセットした状態と、新品の代わりに、使い古した1次転写ローラ25Cをセットした状態とでそれぞれ行った。
【0046】
プリンタ試験機により、2つのテスト画像をプリントした。第1テスト画像は、副走査方向の寸法が6[mm]、且つ主走査方向の寸法が14.85[mm]であるマゼンタ画像部と、副走査方向の寸法が6[mm]、且つ主走査方向の寸法が282.15[mm]のシアン画像部とを具備している。これらマゼンタ画像部とシアン画像部とを主走査方向に並べた2色横並び部を、副走査方向に6[mm]のスペースを空ける条件で複数並べたパターンが、第1テスト画像である。第1テスト画像において、2色横並び部におけるマゼンタ画像部の画像面積率は5[%]である。また、2色横並び部におけるシアン画像部の画像面積率は95[%]である。これら2つの画像部が互いに重ならないように主走査方向に並んでいる。以下、この2色横並び部を、M5%C95%画像部とも言う。
【0047】
第2テスト画像は、副走査方向の寸法が6[mm]、且つ主走査方向の寸法が14.85[mm]であるマゼンタ画像部と、副走査方向の寸法が6[mm]、且つ主走査方向の寸法が14.85[mm]のシアン画像部とを具備している。これらマゼンタ画像部とシアン画像部とを主走査方向に並べた2色横並び部を、副走査方向に6[mm]のスペースを空ける条件で複数並べたパターンが、第2テスト画像である。第2テスト画像において、2色横並び部におけるマゼンタ画像部の画像面積率や、シアン画像部の画像面積率は、ともに5[%]である。これら2つの画像部が互いに重ならないように主走査方向に並んでいる。以下、この2色横並び部を、M5%C5%画像部とも言う。
【0048】
第1テスト画像や第2テスト画像をそれぞれ個別にプリントする際、Y,K用の1次転写電源81Y,Kからは、1次転写電流を出力せず、Y,K用の感光体2Y,Kを中間転写ベルト21から離間させた。
【0049】
C用の1次転写電源81Cからの出力電流値を測定しながら、出力電流値を徐々に大きくしていき、それぞれの出力電流値の条件で、テスト画像をプリントした。また、各プリントでは、C用の感光体2C上において、1次転写ニップに進入する前におけるシアン画像部の単位面積あたりのトナー付着量と、1次転写ニップ通過後の感光体上に残った未転写のシアン画像部における単位面積あたりのトナー付着量とを測定した。そして、前者のトナー付着量から後者のトナー付着量を差し引いた値の前者に対する割合を1次転写率として求めた。
【0050】
また、C用の1次転写ニップに進入する前の中間転写ベルト21上におけるマゼンタ画像部の単位面積あたりのトナー付着量と、C用の感光体2Cにおける1次転写ニップ通過後の非画像部に逆転移したMトナーの単位面積あたりの付着量とを測定した。そして、前者に対する後者の割合をMトナー逆転写率として求めた。なお、1次転写ニップ通過後の感光体上に残ったトナーや逆転写したトナーの付着量については、反射分光濃度計X−Rite938による分光測定結果に基づいて測定した。また、中間転写ベルト21上のトナー付着量や、1次転写ニップ進入前の感光体上のトナー付着量については、Trek社の吸引式小型帯電量測定装置Model210−HSによってベルトや感光体から吸引したトナーの単位面積当たりの質量から算出した。
【0051】
図7は、新品の1次転写ローラ25C(電気抵抗=1.4E7[Ω])を用いた場合におけるC転写率とM逆転写率と1次転写電流との関係を示すグラフである。また、図8は、使い古した1次転写ローラ25C(電気抵抗=5.6E7[Ω])を用いた場合におけるC転写率とM逆転写率と1次転写電流との関係を示すグラフである。なお、図7に示される関係と、図8に示される関係との差は、1次転写ローラ25Cの電気抵抗の差だけに起因することを、他の実験やシミュレーションで確認している。
【0052】
図7に示されるように、新品の1次転写ローラ25C(電気抵抗=1.4E7[Ω])を用いた場合には、1次転写電流を徐々に大きくしていく過程で、約15[μA]まで大きくした時点で、M逆転写率が急に増加し始めることがわかる。この時点におけるM5%C95[%]画像部のC転写率は約93[%]である。その後、更に1次転写電流を大きくしていくと、約22[μA]まで大きくした時点で、M5%C95[%]画像のM逆転写率が約5[%]まで増加する。また、この電流条件におけるM5%C5[%]画像部のC転写率は、約91[%]である。また、M5%C5%画像部のC転写率を最大にする1次転写電流値は58[μA]である。また、M5%C95%画像部のC転写率を最大にする1次転写電流値は34[μA]である。
【0053】
一方、図8に示されるように、使い古した1次転写ローラ25C(電気抵抗=5.6E7[Ω])を用いた場合には、1次転写電流を徐々に大きくしていく過程で、18[μA]付近まで大きくした時点で、M逆転写率が急に増加し始めることがわかる。この時点におけるC転写率は約95[%]である。その後、更に1次転写電流を大きくしていくと、約28[μA]まで大きくした時点で、M5%C95[%]画像のM逆転写率が約5[%]まで増加する。また、この電流条件におけるM5%C5%画像部のC転写率は、約94[%]である。また、M5%C5%画像部のC転写率を最大にする1次転写電流値は42[μA]である。また、M5%C95%画像部のC転写率を最大にする1次転写電流値は30[μA]である。
【0054】
このように、C転写率を最大にするC用の1次転写ニップにおける1次転写電流値は、1次転写ニップ出口における平均画像面積率の他、1次転写ローラ25Mの電気抵抗によっても異なるのである。また、M,C,K用の1次転写ニップについては、M,C,K画像部の転写率だけでなく、Y,M,C画像部の逆転写率も考慮して、1次転写電流の出力目標値を設定する必要があるが、逆転写率を一定の値に留め得る1次転写電流値も、1次転写ニップ出口における平均画像面積率の他、1次転写ローラの電気抵抗によっても異なってくる。つまり、1次転写電流の適正値は、1次転写ニップ出口における感光体上の平均画像面積率だけではく、1次転写ローラの電気抵抗によっても異なってくるのである。なお、本明細書では、C用の1次転写ニップにおけるC転写率とM逆転写率とを測定した実験結果だけを示したが、M用の1次転写ニップにおけるM転写率やY逆転写率も同様の結果になった。また、K用の1次転写ニップにおけるK転写率やC逆転写率も同様の結果になった。
【0055】
以上の実験は、温度23[℃]、湿度50[%]にコントロールされた実験室環境で行ったものである。この場合、1次転写ローラの電気抵抗の変動は、経時使用に伴う劣化のみによって起こる。しかしながら、ユーザーのもとでは、室内環境が大きく変動する。温湿度が変動すると、それに伴って1次転写ローラの電気抵抗も変動する。このため、ユーザーのもとにおいては、それほど劣化していない1次転写ローラを用いる場合であっても環境によって1次転写ローラの電気抵抗が変動し、それに伴って1次転写電流の適正値も変動する。
【0056】
次に、本発明者は、最上流に配設されるY用の1次転写ローラ25Yに供給する1次転写電流の適正値について検討した。Y用の1次転写ニップに対しては、それよりも上流側で中間転写ベルト21上に1次転写された他色のトナー像が進入するということが起こらないため、Y用の感光体2Yに対して他色のトナー像が逆転写することはない。よって、逆転写率を考慮せずに、単にY転写率だけを考慮して1次転写電流の適正値を決定することができる。
【0057】
Y用の1次転写ニップにおいても、C用の1次転写ニップとほぼ同様の結果が得られることから、1次転写ローラの電気抵抗が1.4E7[Ω]である場合であって、且つYトナー像の画像面積率が5[%]であるときには、図7に示されるように、最大の転写率が得られる58[μA]を出力目標値とすればよい。また、1次転写ローラの電気抵抗が1.4E7[Ω]である場合であって、且つYトナー像の画像面積率が95[%]であるときには、図7に示されるように、最大の転写率が得られる34[μA]を出力目標値とすればよい。また、1次転写ローラの電気抵抗が5.6E7[Ω]である場合であって、且つYトナー像の画像面積率が5[%]であるときには、図8に示されるように、最大の転写率が得られる42[μA]を出力目標値とすればよい。また、1次転写ローラの電気抵抗が5.6E7[Ω]である場合であって、且つYトナー像の画像面積率が95[%]であるときには、図8に示されるように、最大の転写率が得られる30[μA]を出力目標値とすればよい。
【0058】
図9は、Y用の1次転写電流の適正値である第1電流適正値Iと、平均画像面積率Xと、電気抵抗との関係を示すグラフである。電気抵抗Rの違いによるグラフの傾きの変化に基づいて、第1電流適正値Iを求める公式を導いたところ、次のようになった。
「I=(3.17E−13R−3.11E−5)X+(−3.97E−13R+6.49E−5)」
以下、この式を第1式という。
【0059】
次に、本発明者は、Yよりも下流側に配設されるM,C,K用の1次転写ローラ25M,C,Kに供給する1次転写電流の適正値について検討した。M,C,K用の1次転写ニップに対しては、M,C,Kのトナー像の他、上流側の1次転写工程で得られたY,M,Cトナー像が進入する。このため、M,C,K用の1次転写ニップにおける1次転写電流の適正値である第2電流適正値Iについては、M,C,K転写率の他、Y,M,C逆転写率も考慮して決定する必要がある。
【0060】
図10は、M,C,KY用の1次転写電流の適正値である第2電流適正値Iと、平均画像面積率Xと、電気抵抗との関係を示すグラフである。図7や図8に示されるグラフから、画像面積率が5〜95[%]の範囲であって、且つ1次転写ローラの電気抵抗が1.4E7[Ω]である場合において、高い転写率と低い逆転写率とを両立させ得る1次転写電流値は、15〜22[μA]程度である。また、画像面積率が5〜95[%]の範囲であって、且つ1次転写ローラの電気抵抗が5.6E7である場合において、高い転写率と低い逆転写率とを両立させ得る1次転写電流値は、15〜28[μA]程度である。これを基本に、第2電流適正値Iを求める公式を導いたところ、次のようになった。
【0061】
「I=(−2.86E−12R−1.20E−4)X+1.4E−5」
但し、これは、「0≦X<0.05」の場合に適用される式である。以下、この式を第2式という。
【0062】
「0.05≦X≦0.95」という条件においては、第2電流適正値Iを求める公式が次のようになった。
「I=(−7.94E−13R−6.67E−6)X+(1.47E−13R+2.03E−5)」
以下、この式を第3式という。
【0063】
「0.95<X≦1」という条件においては、第2電流適正値Iを求める公式が次のようになった。
「I=(−1.43E−12R+1.20E−4)X+(1.43E−12R−1.00e−4)」
以下、この式を第4式という。
【0064】
第1式からわかるように、最上流のYについては、1次転写ローラの電気抵抗の上昇に伴って第1電流適正値Iを低下させることで、Y転写率を高めるようにしている。なお、1次転写ローラの電気抵抗が低いにもかかわらず、1次転写電流値を小さくすると、ニップ出口において画像部に有効な転写電流が流れなくなることから、転写不良を引き起こす。よって、1次転写ローラの電気抵抗の上昇に伴って第1電流適正値Iを低下させる必要がある。
【0065】
従来の一般的な画像形成装置のように、1次転写電流を常に一定に出力目標値で定電流制御する構成において、実験に使用した1次転写ローラを用いる場合には、図7に示される結果から、出力目標値を44[μA]程度にするのが一般的である。この場合でも、1次転写ローラの電気抵抗や画像面積率が変動したとしても、約95[%]程度の転写率は得られる。しかし、第1式で求めた第1電流適正値Iと同じ値に出力目標値を更新させるようにすれば、97[%]以上の転写率を常に維持することができる。また、1次転写ローラの電気抵抗を加味しないで単に平均画像面積率Xだけに基づいて出力目標値を更新する構成では、第1式を採用する場合よりも転写率が1[%]以上は低くなる。画像濃度がそれだけ良好に再現されないことに加えて、廃トナー量もそれだけ多くなるので、環境負荷に与える影響は少なくない。
【0066】
そこで、実施形態に係るプリンタにおいては、Y用の1次転写ニップ出口を通過する10ライン区画について、その平均画像面積率Xと第1式とを用いて算出した第1電流適正値Iと同じ値に1次転写電流の出力目標値を更新する処理を実施するように、制御部200及び1次転写電源81を構成している。なお、1次転写ローラ25Yの電気抵抗の測定法については、後に詳述する。
【0067】
第2式〜第4式からわかるように、M,C,Kについては、逆転写率をある程度の値に留める狙いから、第1式とは逆に、1次転写ローラの電気抵抗の上昇に伴って第1電流適正値Iを増加させている。なお、第2式〜第4式において、平均画像面積率Xが5[%]よりも低い場合に第2電流適正値Iを平均画像面積率Xの低下に伴って急激に低下させていくのは、逆転写の発生を最小限に留める狙いからである。通常は、1次転写電流を下げると、それに伴って転写率が低下するが、平均画像面積率Xが5[%]よりも低い場合には、ベタ画像ではなくて、文字画像など、ある程度ドットを散乱させる画像であることが殆どであり、この場合、ベタ画像に比べて少ない電流量で転写が可能になる。更には、平均画像面積率Xが低いと、転写率がある程度低くなっても、画像濃度不足が視認され難くなる。このため、転写率向上よりも逆転写率抑制を重視して、平均画像面積率Xの低下に伴って第2電流適正値Iを急激に低下させていくのである。
【0068】
また、平均画像面積率Xが95[%]を超える場合に、平均画像面積率Xの上昇に伴って第2電流適正値Iを急激に増加させるのは、次に説明する理由による。即ち、平均画像面積率Xが95[%]を超えると、1次転写ニップに進入している感光体の殆どの領域がトナー像を担持しており、非画像部が殆ど存在しないため、非画像部へのトナーの逆転写が殆ど起こらなくなる。このため、逆転写率抑制よりも、転写率向上を重視して、平均画像面積率Xの上昇に伴って第2電流適正値Iを急激に増加させるのである。全ベタに近い画像では、高い画像濃度が要求されることも、理由の1つである。
【0069】
そこで、本プリンタにおいては、M,C,K用の1次転写ニップについては、Y用の1次転写ニップとは異なる式により、1次転写電流の目標値を求めるようになっている。具体的には、本プリンタでは、大面積地肌領域とそれ以外の領域との区分けとなるa[%]という平均画像面積率として、5[%]を採用している(a=5%)。つまり、平均画像面積率が5[%]未満となる感光体領域(10ライン区画)を、特に逆転写の発生し易い大面積地肌領域として取り扱っている。また、極大画像領域とそれ以外の領域との区分けとなるb[%]という平均画像面積率として、95[%]を採用している(b=95%)。つまり、平均画像面積率が95[%]を超える感光体領域を、全面ベタ部に近い極大画像領域として取り扱っている。そして、平均画像面積率xが5[%]未満であるとき(a%未満)、即ち、1次転写ニップの出口に感光体の大面積地肌領域が位置したときには、上記第2式に基づいて1次転写電流の目標値を求める。即ち、画像面積率が5[%]未満(a[%]未満)であるときには、平均画像面積率xが一般的な範囲内にあるときよりも1次転写電流の出力目標値を小さな値にする。また、平均画像面積率xが5[%]〜95[%]の一般的な範囲内にあるときには、上記第3式に基づいて1次転写電流の目標値を求める。つまり、一般的な範囲内にあるときには(a[%]〜b[%](但し、0<a<b)、平均画像面積率xの増加に伴って1次転写電流の出力目標値を減少させる。また、平均画像面積率xが95[%]を超えるとき、即ち、1次転写ニップの出口に感光体の極大画像領域が位置したときには、上記第4式に基づいて1次転写電流の目標値を求める。つまり、平均画像面積率xが95[%]を超えるときには(b[%](但し、b<100)を超えるときには)、平均画像面積率xが一般的な範囲内にあるときよりも1次転写電流の出力目標値を大きな値にする。
【0070】
従来の一般的な画像形成装置のように、1次転写電流を常に一定に出力目標値で定電流制御する構成において、実験に使用した1次転写ローラを用いる場合には、図7に示される結果から、出力目標値を22[μA]程度にするのが一般的である。かかる構成では、平均面積率画像Xが比較的高いと、著しい転写率が起こってしまう。また、平均画像面積率Xが比較的低いと、転写率が著しく低下してしまう。よって、良好な画質が得られない。例えば、出力目標値=22[μA]、1次転写ローラの電気抵抗=1.4E7、平均画像面積率X=95[%]の場合、逆転写率は5[%]まで悪化してしまう。また、出力目標値=22[μA]、1次転写ローラの電気抵抗=1.4E7、平均画像面積率X=5[%]の場合、転写率は91[%]まで低下してしまう。また、出力目標値=22[μA]、1次転写ローラの電気抵抗=5.6E7、平均画像面積率X=5[%]の場合、逆転写率は約3[%]まで上昇し、且つ転写率が約92[%]まで低下する。
【0071】
これに対し、実施形態に係るプリンタでは、平均画像面積率Xや電気抵抗Rにかかわらず、逆転写率を約2[%]以下に抑えつつ、転写率を91[%]〜96[%]の範囲に維持することができる。
【0072】
本発明者らは、実際に、1次転写電源81M,C,Kの出力目標値を第2式〜第4式の条件で求めた第2電流適正値Iと同じ値にするように、制御部200及び1次転写電源81M,C,Kを構成したところ、電気抵抗Rにかかわらず、特に、グリーンやレッドを多く含む高面積率の画像において、低逆転写率及び高転写率の優れた画質を実現することができた。さらに、全ベタのグリーンやレッドでは転写率を優先して大きな1次転写電流を供給するようになることから、画像濃度をかなり濃くすることができた。
【0073】
実施形態のプリンタにおいては、制御部200と、1次転写電源81Y,M,C,Kとの組み合わせが、それぞれ転写電流出力手段として機能している。そして、制御部200は、感光体2Y表面における各10ライン区画の平均画像面積率Xを算出する。また、各10ライン区画について、平均画像面積率Xと、予め測定されている1次転写ローラ25Yの電気抵抗Rと、第1式とに基づいて、第1電流適正値Iを算出する。そして、10ライン区画の先端がY用の1次転写ニップ出口に進入するタイミングで、その10ライン区画についての第1電流適正値Iの算出結果を、1次転写電源81Yに出力する。1次転写電源81Yは、出力目標値を、制御部200から送られてくる第1電流適正値Iと同じ値に更新して定電流制御を実施する。
【0074】
また、制御部200は、感光体2M,C,Kについてそれぞれ、感光体表面における各10ライン区画の平均画像面積率Xを算出する。また、各10ライン区画について、平均画像面積率Xと、予め測定されている1次転写ローラ25M,C,Kの電気抵抗Rと、第2式〜第4式とに基づいて、第2電流適正値Iを算出する。そして、10ライン区画の先端がM,C,K用の1次転写ニップ出口に進入するタイミングで、その10ライン区画についての第2電流適正値Iの算出結果を、1次転写電源81M,C,Kに出力する。1次転写電源81M,C,Kは、出力目標値を、制御部200から送られてくる第2電流適正値Iと同じ値に更新して定電流制御を実施する。
【0075】
また、実施形態に係るプリンタにおいては、制御部200と、1次転写電源81Y,M,C,Kと、抵抗測定ローラ27Y,M,C,Kと、リレースイッチ28Y,M,C,Kとの組み合わせが、抵抗検知手段として機能している。抵抗検知手段は、直径8[mm]のステンレス(SUS304)製の抵抗測定ローラ27Y,M,C,Kを、リレースイッチ28Y,M,C,Kの励磁によって接地した状態で、1次転写電源81Y,M,C,Kから1次転写ローラ25Y,M,C,Kに対してそれぞれ一定の電流を出力する。そして、そのときの1次転写電源81Y,M,C,Kからの出力電圧値と、出力電流値と、オームの法則とに基づいて、1次転写ローラ25Y,M,C,Kの電気抵抗を算出する。
【0076】
1次転写ローラ25Y,M,C,Kの電気抵抗Rを算出するタイミングは、プリントジョブ開始時である。ユーザーからのプリント命令を受信した際に、各色の感光体に対する光書込を開始する前に、各感光体や中間転写ベルトを駆動した状態で、1次転写ローラ25Y,M,C,Kの電気抵抗Rを測定する。また、連続プリント動作中には、所定枚数のプリントを行う毎に、プリントジョブを一時中断して、1次転写ローラ25Y,M,C,Kの電気抵抗Rを測定する。これにより、1次転写ローラ25Y,M,C,Kの経時劣化に起因する電気抵抗Rの変動のみならず、環境変動に伴う1次転写ローラ25Y,M,C,Kの電気抵抗Rの変動にも対応することができる。
【0077】
かかる構成の本プリンタにおいては、1次転写ニップ出口における感光体上の10ライン区画の平均画像面積率Xと、1次転写ローラの電気抵抗Rとの両方に基づいて1次転写電流の適正値を求めることで、平均画像面積率Xしか加味しないで適正値を求めていた従来に比べて、より適切な値の転写電流を供給した状態でトナー像を1次転写ニップで転写する。これにより、画像濃度ムラの発生を従来よりも抑えることができる。
【0078】
なお、電気抵抗の測定のために1次転写ローラ25Y,M,C,Kに当接させる金属部材は、ローラ形状のものに限られない。ブラシ形状やブレード形状の金属を1次転写ローラ25Y,M,C,Kに当接させて、電流をアースに導くようにしてもよい。また、部材の材質についても、良好な導電性があれば金属に限定されない。但し、1次転写ローラより低い電気抵抗であることが求められる。樹脂層などの材料を採用する場合には、樹脂層の厚さと体積抵抗率の積を、1E2[Ωm]以下にすることが望ましい。
【0079】
ところで、DTCC方式では、感光体上の転写ニップ出口における平均画像面積率に応じて1次転写電流の出力目標値を決定する際に、転写ニップ出口における中間転写ベルト21上のトナー像の平均画像面積率は考慮していない。これは次に説明する理由による。即ち、中間転写ベルト21上にトナー像が存在する場合には、中間転写ベルト21上のトナー像の平均画像面積率を考慮しなくても、トナーの逆転写があまり発生しない適度な範囲で、1次転写電圧が自動的に上昇するからである。
【0080】
特許文献2に記載の画像形成装置においては、中間転写ベルト上の転写済みトナー像と、転写前トナー像との重なりの割合と画像の比率(転写済みトナー像と転写前トナー像との和から重なり部分を差し引いた値)に基づいて、1次転写電流の出力目標値を決定している。かかる構成では、トナーが重なっていないところで高い転写電流が付与され、その結果、逆転写率が大きくなり、著しい画像濃度低下が発生する。また、重ね転写時に1次転写電流を高くするようになっているが、転写効率の転写電流依存性のカーブの傾向は単色と重ねで同等であり、重ね転写時に電流を高くする必要はない。さらに、重なりを判定するために、メモリなどの記憶媒体に色毎の印字位置情報を記憶し、画像毎に重なり率を演算する必要があるために、高性能なCPUや容量の大きなメモリが必要となる。これに対し、本プリンタでは、単純に転写されるトナー像の画像面積率に応じて転写電流を制御するだけであるため、安価なシステムで高画質な画像が実現できる。
【0081】
また、従来、1次転写バイアスの制御方式としては、一般的な定電流方式、一般的な定電圧方式などの他に、ATVC(Active Transfer Voltage Control)方式や、PTVC(Programable Transfer Voltage Control)方式が知られている。ATVC方式を採用した画像形成装置としては、特開平2−123385号公報に記載のものが知られている。また、PTVC方式を採用した画像形成装置としては、特開平5−181373号公報に記載のものが知られている。
【0082】
従来のATVC方式やPTVC方式は何れも、基本的には、出力電圧を所定の出力目標値にするように出力電流を制御する定電圧制御である。1次転写ローラの抵抗(電気抵抗値)が環境変動によって変化すると、それに伴って出力電圧の望ましい値が変化することから、1次転写ローラの抵抗値を所定のタイミング毎に測定した結果に応じて、出力電圧の出力目標値を変化させる点が、一般的な定電圧制御と異なっている。1次転写ローラの抵抗を測定するときに、ATVC方式では電流を定電流制御するのに対し、PTVCでは定電圧制御する。何れの方式においても、従来では、1色目と2色目以降とで出力電圧の出力目標値として同じ値を採用しているので、2色目以降の1次転写ニップでベルト上のトナーを感光体の地肌部に逆転写してしまう。また、1次転写ローラの抵抗値の測定値に基づく出力電圧の出力目標値の補正については、所定のタイミング毎に実施するが、急激な環境変動によって抵抗値が急激に変化してしまう場合には、補正した値が実情にそぐわなくなってしまう。
【0083】
これに対し、DTCC方式は、電流値を一定にする制御であるため、元々、多少1次転写ローラの抵抗が変化しても安定した出力画像を提供できる。さらに、本発明の1次転写ローラや転写ニップの抵抗を考慮したDTCC方式では、著しく安定した最終画像の提供が可能となる。
【0084】
なお、上述したように、M、C、K用の1次転写ニップにおける1次転写電流をDTCC方式で制御する場合には、1次転写ローラの抵抗が下がるのに伴って、逆転写の発生を抑えるために、1次転写電流を全体的に下げるアルゴリズムを用いているが、1次転写ローラの抵抗が著しく下がり、ベタ画像の低画像面積率画像の濃度低下が無視できないような場合は、1次転写ローラ抵抗の低下に連動して、現像電圧を上げるのが有効である。このように制御すれば、画像濃度の無いに等しい。
【0085】
次に、本発明者は、以下の実験を行った。
プリンタ試験機によって3種類のテスト画像を出力した。3種類のテスト画像における他の1つとして、A4サイズ紙に対して全面ベタ状に付着するK100[%]テスト画像(画像面積率100[%])をプリントした。また、もう1つとして、A4サイズ紙に対して全面ベタ状に付着するM100[%]テスト画像の上に、K5[%]テスト画像を重ねたM100[%]+K5[%]テスト画像をプリンタした。これらのテスト画像についても、K5[%]テスト画像と同様に、1000[V]から2300[V]まで、100[V]毎に徐々に上げていき、それぞれの条件で1次転写電流値と1次転写率とを測定した。また、M100[%]+K5[%]テスト画像については、K用の1次転写ニップを通過した後における感光体2Kの地肌部に逆転移したMトナーの付着量を測定して、測定結果のニップ進入時の量に対する割合をMトナー逆転写率として求めた。なおトナー付着量については、反射分光濃度計X−Rite938による分光測定結果に基づいて測定した。
【0086】
図11は、この実験における1次転写電圧と1次転写電流とテスト画像との関係を示すグラフである。また、図12は、この実験における1次転写率と1次転写電圧とMトナー逆転写率とテスト画像との関係を示すグラフである。また、図13は、この実験における1次転写率と1次転写電流とMトナー逆転写率とテスト画像との関係を示すグラフである。
【0087】
図12に示されるように、テスト画像としてKだけからなる単色のトナー像を形成した場合には(K5[%]、K100[%])、画像面積率にかかわらず、1次転写電圧がある所定の値を超えると、1次転写率が急激に低下し始める。より詳しくは、1次転写電圧が2000[V]を超えると、1次転写率が急激に低下し始める。この2000[V]という条件においては、図11に示されるように、1次転写ニップに流れる電流が画像面積率に応じて異なってくる。具体的には、K5[%]テスト画像の場合には1次転写電圧=2000[V]の条件で30[μA]の1次転写電流が1次転写電源81Kから出力されるのに対し、K100[%]テスト画像の場合には1次転写電圧=2000[V]の条件で21[μA]の1次転写電流が1次転写電源81Kから出力される。このように、1次転写バイアスを定電圧制御する場合においては、感光体上の画像面積率が低くなるほど、多くの1次転写電流が流れる。
【0088】
その理由は、1次転写電圧を一定に制御する定電圧制御の条件下では、画像面積率が低くなるほど、感光体の電荷量が多くなってより多くの電流がベルトと感光体との間に流れるからである。例えば、プリンタ試験機においては、帯電装置によってK用の感光体2Kを約−500[V]に一様に帯電させている。また、潜像部(静電潜像)については、レーザー光Lの照射により、−500[V]であった電位を約−30[V]まで減衰させている。感光体2Kとして、静電容量が9.5E−7[F/m]であるものを用いているので、感光体2Kの地肌部の面積電荷密度は、約−475[μC/m]程度である。一方、感光体2Kの潜像部の面積電荷密度は、トナーの電荷量0.45E−3[g/cm]×−20[μC/g]=−0.009[μC/cm]=−90[μC/m]と、感光体の残留電位(約−30[V])の電荷量(−29μC/m)との和であるから、約−119[μC/m]である。感光体2Kにおいては、地肌部の電荷量が潜像部よりも約4倍多いのである。このため、1次転写ニップにおいては、感光体2Kの潜像部と中間転写ベルト21との間に形成される電界よりも、感光体2Kの地肌部と中間転写ベルト21との間に形成される電界の方が強くなる。すると、感光体2Kの画像面積率が小さくなるほど、ベルトと感光体との間に電流が流れ易くなるため、1次転写電源81Kからの電圧出力値を所定の値にするために出力電流量が多くなるのである。
【0089】
このように、定電圧制御においては、画像面積率が小さくなるほど、電源からの出力電流値が多くなるが、同じ画像面積率であっても、環境によってその出力電流値が大きく異なってくる。これは、環境が変動すると、それに伴って中間転写ベルト21や1次転写ローラ25Kの抵抗値が変動するからである。このため、定電圧制御の条件では、たとえ画像面積率に応じて出力電圧の出力目標値を変化させたとしても、環境によっては1次転写電流が過剰になったり、不足したりして、転写不良を引き起こすことがある。このため、1次転写バイアスについては、定電圧制御ではなく、定電流制御した方が有利である。しかも、単純な定電流制御ではなく、出力電流の出力目標値を画像面積率に応じて変化させるようにすることが望ましい。
【0090】
Y用の1次転写ニップにおいては、次に説明する理由により、1次転写電流の出力目標値として、できる限り高い転写効率が得られる値を採用することが望ましい。即ち、Yトナー像は、M,C,K用の全ての1次転写ニップを順次通過することになり、その度に、僅かながらではあるが、トナーを感光体に付着させて失っていくため、他色のトナー像に比べて薄くなりがちだからである。そこで、Y用の1次転写電源81Yからの出力電流の出力目標値については、出力電圧を最大の転写効率が得られる値まで大きくすることが望ましい。この実験においては、25[℃]の環境下で行っており、1次転写電圧を2000[V]にした条件で最大の転写効率が得られている。この条件では、K5[%]テスト画像では図11に示したように30[μA]の1次転写電流が流れるのに対し、K100[%]テスト画像では21[μA]の1次転写電流が流れる。単純な定電圧制御では、室温が25[℃]から変化して、ベルトやローラの抵抗が変化すると、1次転写電圧を2000[V]に維持していたとしても、1次転写電流が過剰になったり、不足したりする。2000[V]という値は、25[℃]の環境下で最大の転写効率が得られる電圧条件であり、室温が25[℃]から変化すると、最大の転写効率を実現する電圧条件も変化してしまうからである。これに対し、最大の転写効率が得られる電流条件は、環境にかかわらず一定となる。具体的には、画像面積率が5[%]であるときには、環境にかかわらず、1次転写電流の値を30[μA]に一定に維持することで、最大の転写効率を実現することができる。また、画像面積率が100[%]であるときには、環境にかかわらず、1次転写電流の値を100=21[μA]に一定に維持することで、最大の転写効率を実現することができる。
【0091】
このように、Y用の1次転写電源81Yについては、画像面積率に応じて出力電流の出力目標値を変化させることで、最大の転写効率を維持することができる。ところが、M,C,K用の1次転写電源81M,C,Kでも同様の定電流制御を実施すると、M,C,K用の1次転写ニップにおいて、ベルト上のYトナーを感光体2M,C,Kの地肌部に逆転写させ易くなることがわかった。
【0092】
例えば、図12に示されるように、K用の1次転写ニップにおいては、1次転写電圧の値によっては、ベルト上のM100[%]トナー像の感光体2K地肌部への逆転写率(Mトナー逆転写率)が非常に高くなってしまう。具体的には、1次転写電圧を1000〜1500[V]に設定した条件ではMトナー逆転写率は0.01[%]未満に留まっているが、1次転写電圧を1600[V]よりも大きくすると、Mトナー逆転写率が急激に上昇し始めることがわかる。
【0093】
一方、1次転写電圧が2000[V]を超えると、転写効率が急激に低下し始める原因は、次のように考えられる。即ち、1次転写電圧が2000[V]を超えると、感光体における−30[V]の潜像部と、中間転写ベルト21との電位差が放電開始電圧を超える。すると、1次転写ニップ内において感光体の潜像部(−30V)と中間転写ベルト21との間で放電が盛んに発生するようになり、潜像部上のトナーがその放電によって逆帯電してしまう。この逆帯電により、潜像部上のトナーが中間転写ベルト21上に静電移動せずに潜像部上に留まってしまうことが、転写効率を低下させている原因であると考えられる。
【0094】
このような転写効率の低下が起こっているときには、1次転写ニップ内において、感光体の−30[V]の潜像部とベルトとの間のみならず、感光体の−500[V]の地肌部とベルトとの間でも、放電が発生している。ところが、単色画像をプリントする際には、1次転写ニップ内において、トナー像が全く存在していない中間転写ベルト21に対して感光体上のトナー像を転写するので、感光体の地肌部とベルトとの間にはトナーを介在させていない。このため、地肌部とベルトとの間の放電が表立った現象として現れることはない。転写効率の低下という表立った現象が現れる感光体の潜像部(−30V)に着目すると、1次転写電源からの出力電圧を2000[V]よりも大きくすると、感光体の潜像部とベルトとの間の電位差を放電開始電圧よりも大きくすることになる。ベルトの表面電位を把握することが困難であるため、便宜上、1次転写電源からの出力電圧で考えると、この実験では、出力電圧と感光体との電位差を2030[V]よりも大きくすると、感光体とベルトとの電位差を放電開始電圧よりも大きくしていることになる。
【0095】
先に述べたように、この実験において、K用の1次転写電源81Kからの出力電圧を1600[V]よりも大きくすると、Mトナー逆転写率が急激に上昇し始めている。このような急激な上昇が認められる原因は次のように考えられる。即ち、単色画像ではなく、2色以上の重ね合わせによる多色画像をプリントする場合には、2色目以降の1次転写ニップにおいて、既にベルト上に転写しているトナー像を、後段の感光体の地肌部とベルトとの間に介在させる。このとき、感光体の地肌部(−500V)と、1次転写電源からの出力電圧との電位差が2030[V]よりも大きいと、地肌部と中間転写ベルト21との間で放電が発生する。そして、既に中間転写ベルト21上に転写されていたトナー像中のトナーがその放電によって逆帯電して、感光体の地肌部に逆転写してしまう。感光体の地肌部の電位は約−500[V]であるため、1次転写電源からの出力電圧を1530[V]よりも大きくすると、かかる逆転写を引き起こすことになる。この実験では、出力電圧を100[V]単位で上昇させているので、1530[V]は1600[V]の条件に相当している。このため、先に図11に示したグラフにおいて、1次転写電圧が1600[V]を超えると、Mトナー逆転写率が急激に上昇し始めていると考えられる。
【0096】
室温25[℃]の条件では、既に述べたように、5[%]画像では1次転写電流=30[μA]、100[%]画像では1次転写電流=21[μA]の条件の場合に、それぞれ1次転写電圧が最大の転写効率を実現し得る約2000[V]になる。このような1次転写電流の制御をY用の1次転写電源81Yだけでなく、M,C,K用の1次転写電源81M,C,Kでも採用したとする。すると、M,C,K用の1次転写ニップ内にてそれぞれ、感光体の地肌部と中間転写ベルトとの電位差を放電開始電圧よりも大きくしてしまうため、ベルト上のトナーを感光体の地肌部に逆転写してしまうことになる。
【0097】
M,C,K用の1次転写ニップでは、ニップ出口において、感光体の地肌部と中間転写ベルト21との間で放電が発生すると、ベルト上のトナーが正規とは逆のプラス極性に逆帯電して、感光体の地肌部に逆転写してしまう。感光体の転写ニップ出口付近における平均画像面積率が所定のa[%]を下回るとき、即ち、感光体の大面積地肌領域が転写ニップ出口に進入するときに、(1)式に基づいて出力目標値を決定すると、1次転写電源81M,C,Kからの1次転写バイアスの出力値を非常に大きくすることになる。すると、転写ニップ出口における感光体の地肌部とベルトとの電位差を放電開始電圧よりも大きくして、両者間で放電を発生させ易くなる(図12参照)。
【0098】
そこで、本プリンタにおいては、M,C,K用の1次転写ニップについては、次のようにして1次転写電流の出力目標値を求めるようになっている。大面積地肌領域とそれ以外の領域との区分けとなるa[%]という平均画像面積率として、5[%]を採用している(a=5[%])。つまり、平均画像面積率が5[%]未満となる感光体領域(10ライン区画)を、特に逆転写の発生し易い大面積地肌領域として取り扱っている。また、極大画像領域とそれ以外の領域との区分けとなるb[%]という平均画像面積率として、95[%]を採用している(b=95[%])。つまり、平均画像面積率が95[%]を超える感光体領域を、全面ベタ部に近い極大画像領域として取り扱っている。そして、M,C,K用の1次転写電源81M,C,Kについては、既に述べたように、第2式〜第4式に基づいて、第2電流適正値Iを求めるように、制御部200を構成している。
【0099】
先に示した図10において、Y用の1次転写電流の出力目標値と、M用の1次転写電流の出力目標値とに着目すると、95[%]以下の面積率範囲では、平均画像面積率が同じであれば後者の出力目標値は前者の出力目標値よりも小さくなる。これは次に説明する理由による。即ち、Y用の1次転写ニップは、常に第1転写工程になり、それ以前にベルト上に転写されたトナー像が存在しないため、転写ニップ出口でベルトから感光体2Yの地肌部へのトナーの逆転写を発生させることがない。このため、優れた転写効率を得ることだけに着目して、グラフの傾きや切片を設定している。これに対し、M,C,K用の1次転写ニップでは、逆転写を発生させる可能性がある。そこで、M,C,K用の1次転写ニップでは、優れた転写効率を得ることだけに着目するのではなく、トナーの逆転写を抑えることにも着目して、グラフの傾きや切片を設定している。このため、5〜95[%]の範囲において、平均画像面積率が同じであれば、第2電流適正値Iの方が、第1電流適正値Iよりも小さくなるのである。
【0100】
M、C,Kに着目すると、平均画像面積率が5〜95[%]の範囲内であるときには、1次関数のグラフが負の傾きになっている。これに対し、平均画像面積率が5[%]未満であるときには、1次関数のグラフが正の傾きになっている。これは以下に説明する理由による。
【0101】
即ち、感光体の転写ニップ出口付近における平均画像面積率が5[%]未満と極めて低い場合には、転写ニップ出口において感光体上にトナーが殆どない状態になっている。特に平均画像面積率0[%]であるときには、転写ニップ出口において感光体上にはトナーが全くない状態になっている。このような状態では、感光体からベルトへのトナーの転写処理を行う必要は全くない。よって、基本的には、1次転写バイアスの印加を中断しても画質に影響を及ぼさない。また、0[%]以上であっても、5[%]未満という非常に低い平均画像面積率の条件では、転写ニップ出口に極小面積の画像が位置することになる。この極小面積の画像の色調がハーフトーンでない場合には、それは文字画像や線画像である場合が殆どでる。文字画像や線画像であれば、多少のトナー逆転写が発生しても、それによる画像濃度ムラは殆ど視認されない。また、極小面積の画像の色調がハーフトーンである場合、感光体表面では周囲を地肌部で囲まれる孤立ドット状のドット潜像が所定の間隔をあけて並んでいる状態となっている。この状態では、極小のドット潜像が地肌部に囲まれており、ドット潜像のプラスの電荷や、周囲の地肌部の電位の影響で、地肌部の1次転写電流が潜像部に流れ込み易くなる。しかも、ドット潜像に付着しているトナー量がごく僅かであるため、それほど1次転写電圧を高くしなくても、ドット潜像上のトナーを中間転写ベルト21に転写することができる。更に、Y,M,C,Kの全色の廃トナー量に着目すれば、1次転写電流を多くすることによる転写効率の増加よりも、1次転写電流を小さくすることによる逆転写トナー量の減少を優先した方が有利である。1次転写電流を小さくすることによる逆転写トナー量の減少を優先する方が、廃トナーを減少させて、トナーの有効利用率を高めることができるからである。当然のことながら、Yトナーの画像面積率がより大きくなれば、M用の1次転写電源81Mからの1次転写電圧の出力値が上昇し、Yトナーの逆転写率が増加することになる。このため、本プリンタのように、感光体上の転写ニップ出口における平均画像面積率が著しく低い場合は、電流を下げた方が廃トナー量を低減する上で有利であることがわかる。
【0102】
そこで、M,C,K用の1次転写ニップにおいて、感光体のニップ出口付近における平均画像面積率が5[%]未満であるときには、1次転写電流の出力目標値を十分に小さくして、逆転写の発生を効果的に抑制する。逆転写の発生を回避するという観点からすれば、出力目標値を10[μA]付近まで下げることが望ましい。しかし、そのようにすると、転写ニップ出口に10[%]程度の平均画像面積率の感光体領域が進入したときに、1次転写電流を急激に高めなければならないにもかかわらず、電源の出力応答性の限界から十分に高めることができず、転写不良を引き起こすおそれがでてくる。そこで、10[μA]までは下げずに、15[μA]以上を維持するようになっている。電源の応答性によっては、10[μA]程度まで下げてもよい。また、平均画像面積率が5[%]未満である範囲で、グラフを正の傾きとしているのは、平均画像面積率が0[%]から5[%]に近づくに従って、次の瞬間の平均画像面積率が5[%]よりやや大きくなって、1次転写電流を26[μm]程度まで急激に高めなければならなくなる可能性が高くなるからである。
【0103】
M,C,K用の1次転写ニップ出口において、感光体上の10ライン区画の平均画像面積率が100[%]である場合には、感光体の画像形成可能領域の全てにトナーが付着しており、転写ニップ出口に感光体地肌部が全く存在しない状態になる。転写ニップ出口において、ベルト上のトナーは感光体地肌部に逆転写するため、感光体地肌部のない状態では逆転写が起こらない。このため、1次転写電流を非常に大きくしても、逆転写を発生させることがない。しかも、転写ニップ出口に全面ベタ画像を位置させる状態であり、全面ベタ画像はハーフトーン画像とは異なり、転写電流不足に起因する転写画像のムラや濃度不足が目立ち易い。特に、1次転写ニップでの圧力ムラが装置のリアとフロント(出力画像上の左右)とで大きい場合には左右濃度偏差として視認され易くなる。よって、平均画像面積率が100[%]である場合には、1次転写電流の出力目標値を通常よりも高めに設定して良好な転写効率を優先することが望ましい。
【0104】
平均画像面積率が100[%]ではないものの、95[%]を超えている場合には、1次転写電流の出力目標値を通常よりも高めに設定して良好な転写効率を優先することが望ましい。そこで、第4式を採用するのである。図10に示されるように、5〜95[%]の範囲では負の傾きになっていたグラフが、95[%]を超えた範囲では正の傾きに転じる。そして、平均画像面積率が高くなるにつれて、1次転写電流の出力目標値も増加する。これにより、1次転写電流を通常よりも高めにして、画像濃度不足の顕在化を抑えることができる。
【0105】
先に図10に示したように、M,C,Kのそれぞれにおいて、平均画像面積率が0[%]であるときに決定される1次転写電流の出力目標値は、平均画像面積率が100[%]であるときに決定される出力目標値よりも小さく設定されている。これにより、0[%]であるときには逆転写の抑制を優先する一方で、100[%]であるときには転写効率の向上を優先することができる。
【0106】
次に、実施形態に係るプリンタの各変形例について説明する。なお、以下に特筆しない限り、各変形例に係るプリンタの構成は、実施形態と同様である。
[第1変形例]
第1変形例に係るプリンタにおいては、抵抗検知手段の代わりに、1次転写ローラ25Y,M,C,Kの電気抵抗と相関関係にある電気的特性を検知する電気特性検知手段を設けている。電気特性検知手段は、1次転写ローラ25Y,M,C,Kや感光体2Y,M,C,Kを回転させ、且つ中間転写ベルト21を無端移動させた状態で、1次転写電源81Y,M,C,Kから1次転写ローラ25Y,M,C,Kに対して一定の電流を供給する。このときの1次転写電源81Y,M,C,Kからの出力電流値と出力電圧との関係であるI−V特性を、電気的特性として求める。
【0107】
図14は、電気抵抗Rが1.4E7[Ω]である1次転写ローラのI−V特性を示すグラフである。また、図15は、電気抵抗Rが5.64E7[Ω]である1次転写ローラのI−V特性を示すグラフである。本発明者の行った実験では、これらのI−V特性から、1次転写ニップの電気抵抗であるニップ抵抗Rnipを次のようにして求めることができた。即ち、感光体を−520[V]で一様帯電させ、感光体全面を非画像部(地肌部)にした状態で1次転写ニップに進入させ、且つ1次転写ローラに30[μA]の電流を供給した際の1次転写電源81Y,M,C,Kからの出力電圧Vout[V]とニップ抵抗Rnipとの関係は、「Rnip=4.94E4V−1.32E7」という式になった。以下、この式を第5式という。なお、ニップ抵抗Rnipは、1次転写ローラと中間転写ベルトとの合成抵抗である。
【0108】
このニップ抵抗Rnipは、オームの法則に基づいて測定される1次転写ローラ25Y,M,C,Kの電気抵抗Rに近い値になることが、本発明者の実験によって確認された。上述した第1式〜第4式のように、ニップ抵抗Rnipと平均画像面積率Xとに基づいて第1電流適正値Iや第2電流適正値Iを求める式を実験に基づいて構築すれば、電気抵抗Rを測定する場合と同様に、第1電流適正値Iや第2電流適正値Iとしてそれぞれ適切な値を求めることが可能である。
【0109】
なお、中間転写ベルト21の電気抵抗が1次転写ローラ25Y,M,C,Kの電気抵抗よりも十分に低い場合には、第5式によって求めたニップ抵抗Rnipを、そのまま1次転写ローラ25Y,M,C,Kの電気抵抗Rとして第1式〜第4式に代入して第1電流適正値Iや第2電流適正値Iを求めても良い。例えば、実験に使用したプリンタ試験機では、1次転写ローラ25Y,M,C,Kとして電気抵抗R=1.4E7[Ω]のものを用いた場合、中間転写ベルト21として体積抵抗率がx[Ω・cm]であるものを用いても、体積抵抗率が2x[Ω・cm]であるものを用いても、I−V特性は殆ど変化しなかった。プリンタ試験機では、転写ニップの抵抗Rnipのうち、中間転写ベルト21の電気抵抗が占める割合は1/10以下とであると考えられるため、ニップ抵抗Rnipをほぼ電気抵抗Rであるとみなしても差し支えない。
【0110】
第1変形例に係るプリンタにおいては、Y,M,C,K用の1次転写ニップにおけるニップ抵抗Rnipを、次のようにして測定する。即ち、中間転写ベルト21の表面は、周方向において、2次転写ニップで記録シートに重ね合わせられるシート対応領域と、記録シートに重ね合わされないシート非対応領域とに大別される。更に、シート非対応領域は、プリントジョブ開始直後や終了直前におけるシート搬送不実施時におけるものと、連続画像形成動作中における互いに隣り合う2つのシート対応領域の間に位置するシート間対応領域とに分類される。電気特性検知手段は、シート非対応領域がY,M,C,K用の1次転写ニップに進入していないときに、Y,M,C,K用の1次転写ニップのニップ抵抗Rnipを測定する。連続プリント動作中の場合には、シート間対応領域がY,M,C,K用の1次転写ニップに進入する毎に、Y,M,C,K用の1次転写ニップのニップ抵抗Rnipを測定する。これにより、連続プリント動作中に機内の温湿度が変動しても、その変動に起因する1次転写ローラの電気抵抗Rの変動に対応することができる。
【0111】
[第2変形例]
第2変形例に係るプリンタは、以下に特筆する点の他が、実施形態に係るプリンタと同様の構成になっている。
図9に示されるように、平均画像面積率xが100[%](1.0)であるYベタ画像を1次転写する場合には、1次転写電流の電気抵抗にかかわらず、第1電流適正値Iがほぼ一定の値になる(約3.0E−0.5A)。この一定の値の1次転写電流を予め実験によって測定しておく(以下、測定値を全ベタ転写時適正電流値という)。Y用の1次転写電源81Yからの出力電流値の目標値をこの全ベタ転写時適正電流値と同じ値にした定電流制御の条件下で、平均画像面積率xが100[%]であるYテストベタ画像をY用の感光体2Yから中間転写ベルト21に1次転写している最中の1次転写電源81Yからの出力電圧値(以下、全ベタ転写時出力電圧値という)を測定する。その測定値は、そのときの1次転写ローラ25Yの電気抵抗の条件で、1次転写ローラ25Yと感光体2Yとの間に適切な強度の1次転写電界を形成するのに必要な1次転写ローラ25Yの芯金の電位である。1次転写ローラ25Yの電気抵抗が変化しなければ、どのような平均画像面積率xのYトナー像を1次転写する場合であっても、1次転写ローラ25Yの芯金の電位を全ベタ転写時出力電圧値と同じ値にすれば、1次転写ローラ25Yと感光体2Yとの間で適切な強度の1次転写電界を形成することができる。
【0112】
そこで、1次転写電源81Yからの出力を、全ベタ転写時出力電圧値を目標値とする定電圧制御する条件下で、感光体2Yにおける全面地肌部の箇所をY用の1次転写ニップに進入させているときにおける1次転写電源81Yからの出力電流値を測定する(以下、この測定値を全面地肌部進入時出力電流値という)。そして、全面地肌部進入時出力電流値を平均画像面積率x=0[%]のときの第1電流適正値Iとし、且つ全ベタ転写時適正電流値を平均画像面積率x=100[%]のときの第1電流適正値Iとする直線式の一次関数を求める。そして、プリントジョブ中には、Yの10ライン区画の平均画像面積率xに対応する第1電流適正値Iを算出し、定電流制御における1次転写電源81Yから出力目標値を算出結果と同じ値に更新する。
【0113】
このように、最上流のYについては、1次転写ローラ25Yの電気抵抗と相関関係にある電気的特性として、全ベタ転写時出力電圧値と、全面地肌部進入時出力電流値とを測定し、測定結果に基づいて構築した一次関数に基づいて、第1電流適正値Iを求める。
【0114】
図10に示されるように、平均画像面積率xが100[%](1.0)であるM,C,Kベタ画像を1次転写する場合には、1次転写電流の電気抵抗にかかわらず、第2電流適正値Iがほぼ一定の値になる(約2.0E−0.5A)。この値を予めの実験によって測定してM,C,K全ベタ転写時適正電流値として制御部に記憶させておく。M,C,K用の1次転写電源81M,C,Kからの出力電流値の目標値をM,C,K全ベタ転写時適正電流値と同じ値にした定電流制御の条件下で、平均画像面積率xが100[%]であるM,C,Kテストベタ画像をM,C,K用の感光体2M,C,Kから中間転写ベルト21に1次転写している最中の1次転写電源81M,C,Kからの出力電圧値(以下、M,C,K全ベタ転写時出力電圧値という)を測定する。それぞれの測定値は、そのときの1次転写ローラ25M,C,Kの電気抵抗の条件で、1次転写ローラ25M,C,Kと感光体2M,C,Kとの間に適切な強度の1次転写電界を形成するのに必要な1次転写ローラ25M,C,Kの芯金の電位である。1次転写ローラ25M,C,Kの電気抵抗が変化しなければ、どのような平均画像面積率xのM,C,Kトナー像を1次転写する場合であっても、1次転写ローラ25M,C,Kの芯金の電位をM,C,K全ベタ転写時出力電圧値と同じ値にすれば、1次転写ローラ25M,C,Kと感光体2M,C,Kとの間で適切な強度の1次転写電界を形成することができる。
【0115】
そこで、1次転写電源81M,C,Kからの出力を、M,C,K全ベタ転写時出力電圧値を目標値とする定電圧制御する条件下で、感光体2M,C,Kにおける全面地肌部の箇所をM,C,K用の1次転写ニップに進入させているときにおける1次転写電源81M,C,Kからの出力電流値を測定する(以下、この測定値をM,C,K全面地肌部進入時出力電流値という)。
【0116】
また、1次転写電源81M,C,Kからの出力を、M,C,K全ベタ転写時出力電圧値を目標値とする定電圧制御する条件下で、感光体2M,C,Kにおける平均画像面積率xが95[%]である箇所をM,C,K用の1次転写ニップに進入させているときにおける1次転写電源81M,C,Kからの出力電流値を測定する(以下、この測定値をM,C,K95%画像部進入時出力電流値という)。
【0117】
また、1次転写電源81M,C,Kからの出力を、M,C,K全ベタ転写時出力電圧値を目標値とする定電圧制御する条件下で、感光体2M,C,Kにおける平均画像面積率xが5[%]である箇所をM,C,K用の1次転写ニップに進入させているときにおける1次転写電源81M,C,Kからの出力電流値を測定する(以下、この測定値をM,C,K5%画像部進入時出力電流値という)。
【0118】
そして、M,C,Kについてそれぞれ、5%画像部進入時出力電流値と、95%画像部進入時出力電流値とに基づいて、平均画像面積率xが5〜95%という一般的な範囲である場合における1次直線を求める。具体的には、5%画像部進入時出力電流値を平均画像面積率x=5[%]のときの第2電流適正値Iとし、且つ95%画像部進入時出力電流値を平均画像面積率x=95[%]のときの第2電流適正値Iとする直線式の一次関数を求める。
【0119】
次に、5%画像部進入時出力電流値と、95%画像部進入時出力電流値とに基づいて、平均画像面積率xが5〜95%という一般的な範囲である場合における1次直線を求める。具体的には、5%画像部進入時出力電流値を平均画像面積率x=5[%]のときの第2電流適正値Iとし、且つ95%画像部進入時出力電流値を平均画像面積率x=95[%]のときの第2電流適正値Iとする直線式の一次関数を求める。プリントジョブ中において、10ライン区画の平均画像面積率xが一般的な範囲である場合には、この1次関数に基づいて1次転写電流の出力目標値を更新する。
【0120】
また、95%画像部進入時出力電流値を平均画像面積率x=95[%]のときの第2電流適正値Iとし、且つK全ベタ転写時適正電流値を平均画像面積率x=100[%]のときの第2電流適正値Iとする直線式の一次関数を求める。プリントジョブ中において、10ライン区画の平均画像面積率xが95[%]を超えるには、この1次関数に基づいて1次転写電流の出力目標値を更新する。
【0121】
また、全面地肌部進入時出力電流値を平均画像面積率x=0[%]のときの第2電流適正値Iとし、且つ5%画像部進入時出力電流値を平均画像面積率x=5[%]のときの第2電流適正値Iとする直線式の一次関数を求める。プリントジョブ中において、10ライン区画の平均画像面積率xが5[%]未満である場合には、この1次関数に基づいて1次転写電流の出力目標値を更新する。
【0122】
このように、M,C,Kについては、1次転写ローラ25Yの電気抵抗と相関関係にある電気的特性として、全ベタ転写時出力電圧値と、全面地肌部進入時出力電流値と、5%画像部進入時出力電流値と、95%画像部進入時出力電流値とを測定し、測定結果に基づいて構築した一次関数に基づいて、第2電流適正値Iを求める。
【0123】
かかる構成では、1次転写ローラ25Y,M,C,Kについてそれぞれ、電気抵抗Rやニップ抵抗Rnipを求めることなく、第1電流適正値Iや第2電流適正値Iを求めることができる。
【0124】
[第3変形例]
図16は、第3変形例に係るプリンタを示す概略構成図である。このプリンタは、再送装置を有しておらず、機内における記録シートの搬送方向が鉛直方向下側から上側に向かう方向であり、且つ各色の画像形成ユニットが中間転写ベルト21の下方に配設されている点が、実施形態に係るプリンタと異なっている。再送装置を備えないことで、両面プリントを実施することができないが、その分、装置の小型化を図っている。
【0125】
[第4変形例]
図17は、第4変形例に係るプリンタを示す概略構成図である。このプリンタは、ベルト部材として、中間転写ベルトの代わりに、無端状の紙搬送ベルト121を各色の感光体2Y,M,C,Kに当接させている点が、実施形態に係るプリンタと異なっている。紙搬送ベルト121は、その表面に保持した記録紙を、自らの無端移動に伴ってY,M,C,K用の1次転写ニップに順次通していく。この過程で、感光体2Y,M,C,K上のY,M,C,Kトナー像が、記録紙の表面に重ね合わせて転写されていく。
【0126】
[第5変形例]
図18は、第5変形例に係るプリンタを示す概略構成図である。このプリンタは、1つの感光体2の周囲に、Y,M,C,K用の現像装置3Y,M,C,Kを有している。画像形成を行う場合、まず、感光体2の表面を帯電手段4によって一様に帯電させた後、感光体2の表面に対してY用の画像データに基づいて変調されたレーザー光ーLを照射して,感光体2の表面にY用の静電潜像を形成する。そして、このY用の静電潜像を現像装置3Yによって現像してYトナー像を得た後、これを中間転写ベルト21上に1次転写する。その後、感光体2の表面上の転写残トナーをドラムクリーニング装置5によって除去した後、感光体2の表面を帯電手段4によって再び一様に帯電させる。次に、感光体2の表面に対して、M用の画像データに基づいて変調されたレーザー光Lを照射して、感光体2の表面にM用の静電潜像を形成した後、これを現像装置3Mによって現像してMトナー像を得る。そして、このMトナー像を中間転写べルト21上のYトナー像に重ね合わせて1次転写する。以降、同様にして、感光体2上でCトナー像、Kトナー像を順次現像して、ベルト上のYMトナー像上に順次重ね合わせて1次転写していく。これにより、中間転写ベルト21上に4色トナー像を形成する。
【0127】
その後、中間転写ベルト21上の4色トナー像を、2次転写ニップで記録紙の表面に一括2次転写して、記録紙上にフルカラー画像を形成する。そして、定着装置40によって記録紙にフルカラー画像を定着せしめた後、記録紙を機外に排出する。
【0128】
このような、周回方式による重ね合わせ転写を行う構成において、1色目(1周目)の転写工程では、実施形態におけるY用と同様のアルゴリズムを用いる。これに対し、2色目以降(2〜4周目)の転写工程では、実施形態におけるM用と同様のアルゴリズムを用いる。
【0129】
以上に説明したものは一例であり、本発明は、次の態様毎に特有の効果を奏する。
[態様A]
態様Aは、潜像を担持する潜像担持体(例えば感光体2Y,M,C,K)と、潜像担持体上の潜像をトナーによって現像してトナー像を得る現像手段(例えば現像装置3Y,M,C,K)と、潜像担持体に直接あるいはベルト部材(例えば中間転写ベルト21)を介して当接する当接部材(例えば1次転写ローラ25Y,M,C,K)と、潜像担持体と当接部材との当接、あるいは潜像担持体とベルト部材との当接による転写ニップにて、潜像担持体上のトナー像を、転写ニップに挟み込まれた記録シート、あるいは前記ベルト部材の表面、に転写するために当接部材に対して転写電流を出力し、且つ潜像担持体の表面を転写ニップに対して所定の長さだけ送る毎に転写電流の出力目標値をその所定の長さ範囲における画像面積率に基づいて求めた適正値と同じ値に更新する転写電流出力手段(例えば制御部200、及び1次転写電源81Y,M,C,K)と、を備える画像形成装置において、当接部材の電気抵抗を検知する抵抗検知手段、あるいは前記電気抵抗と相関関係にある所定の電気的特性を検知する電気特性検知手段を設けるとともに、前記適正値を、前記画像面積率に加えて、抵抗検知手段又は前記電気特性検知手段による検知結果にも基づいて求める処理を実施するように、転写電流出力手段を構成したことを特徴とするものである。
【0130】
[態様B]
態様Bは、態様Aにおいて、潜像担持体及び現像手段の組み合わせを複数設けるとともに、それら潜像担持体に対してそれぞれベルト部材を介して当接するように当接部材を複数設け、且つ、移動する前記ベルト部材を複数の潜像担持体による複数の転写ニップに順次通していく過程で、それぞれの転写ニップで潜像担持体上のトナー像を前記ベルト部材、あるいは前記ベルト部材の表面に保持される記録シートに重ね合わせて転写するようにしたことを特徴とするものである。かかる構成においては、複数の潜像担持体に対してほぼ並行して形成したトナー像を重ね合わせることで、複数のトナー像を個別のタイミングで形成してから重ね合わせる場合に比べて、重ね合わせトナー像を短時間で形成することができる。
【0131】
[態様C]
態様Cは、態様Aにおいて、ベルト部材として、無端状のものを用い、ベルト部材を周回移動させて転写ニップに繰り返し通していく過程で、潜像担持体上のトナー像を前記ベルト部材の表面に重ね合わせて転写するようにしたことを特徴とするものである。かかる構成では、潜像担持体を1つだけしか設けていなくても、重ね合わせトナー像を形成することができる。
【0132】
[態様D]
態様Dは、態様B又はCにおいて、前記適正値を求めるためのアルゴリズムとして、重ね合わせの転写のための複数の転写工程のうち、最上流側の転写工程については、前記検知結果が高抵抗側の値にシフトにつれて、前記出力目標値を小さくする一方で、残りの転写工程のうち、少なくとも1つについては、前記検知結果が高抵抗側の値にシフトにつれて、前記出力目標値を大きくするもの、を用いるように、転写電流出力手段を構成したことを特徴とするものである。かかる構成では、既に説明したように、逆転写を発生させることのない最上流側の転写工程では、転写率の向上を最優先にした電流条件でトナー像を転写する一方で、逆転写を発生させる可能性のある転写工程では、転写率の向上と逆転写率の抑制との兼ね合いを考慮した電流条件でトナー像を転写することができる。
【0133】
[態様E]
態様Eは、態様Dにおいて、当接部材に一定の転写電流を出力したときの電流値と出力電圧値との関係を前記電気的特性として検知するように構成した転写電流出力手段を、電気特性検知手段として機能させたことを特徴とするものである。かかる構成では、当接部材に当接させる金属部材や、金属部材とアースとの間を入切するリレースイッチを設けることなく、転写電流の電気抵抗を把握することができる。
【0134】
[態様F]
態様Fは、態様Eにおいて、前記関係に基づいて前記当接部材と前記ベルト部材との合成抵抗を算出し、算出結果に基づいて前記適正値を求める処理を実施するように構成した前記転写電流出力手段を、前記抵抗検知手段として機能させたことを特徴とするものである。かかる構成では、当接部材に当接させる金属部材や、金属部材とアースとの間を入切するリレースイッチを設けることなく、転写電流の電気抵抗を把握することができる。
【0135】
[態様G]
態様Gは、態様E又はFにおいて、画像形成動作中であって、且つ前記潜像担持体の全域のうち、前記転写ニップに進入している領域が全て非画像部になるタイミングで、前記関係を測定する処理を実施するように、転写電流検知手段を構成したことを特徴とするものである。かかる構成では、既に説明したように、連続画像形成動作中に環境変動があったとしても、転写電流の目標値を適切な値に更新することができる。
【0136】
[態様H]
態様Hは、態様Fにおいて、非画像形成動作中に、前記潜像担持体及び前記ベルト部材を表面移動させながら、所定の第1転写電流を出力したときと、所定の第2転写電流を出力したときとでそれぞれ前記関係を測定し、それらの測定結果に基づいて前記適正値を求める処理を実施するように、前記転写電流検知手段を構成したことを特徴とするものである。かかる構成では、転写電流の値を1つだけに固定する場合よりも、当接部材の電気抵抗をより正確に把握することができる。
【0137】
[態様I]
態様Iは、態様Fにおいて、ユーザーによる画像形成動作命令を受け付けていない状態で、前記潜像担持体及び前記ベルト部材を表面移動させ、且つ所定の転写電流を出力しながら、所定のテストトナー像を前記潜像担持体に形成し、前記テストトナー像の第1の画像面積率の箇所が前記転写ニップに進入しているときの前記関係と、前記テストトナー像の第2の画像面積率の箇所が前記転写ニップに進入しているときの前記とに基づいて前記合成抵抗を算出する処理を実施するように、前記転写電流検知手段を構成したことを特徴とするものである。かかる構成では、電圧測定時の画像面積率の値を1つだけに固定する場合よりも、当接部材の電気抵抗をより正確に把握することができる。
【0138】
[態様J]
態様Jは、態様B〜Iの何れかにおいて、前記適正値を求めるためのアルゴリズムとして、重ね合わせの転写のための複数の転写工程のうち、最上流側の転写工程を除く残りの転写工程については、画像面積率がa[%]からb[%]まで(但し、0<a<b)の一般的な範囲内であるときには、画像面積率の増加に伴って前記出力目標値を減少させる一方で、画像面積率がa[%]未満であるときには、画像面積率が一般的な範囲内にあるときよりも出力目標値を小さな値にするもの、を用いるように、転写電流出力手段を構成したことを特徴とするものである。かかる構成では、転写ニップ出口における潜像担持体へのトナーの逆転写の発生を抑えることができる。具体的には、残りの転写工程では、潜像担持体の大面積地肌領域を転写ニップ出口に位置させたときに、トナーの逆転写を特に発生させ易くなる。大面積地肌領域は、潜像担持体の全領域のうち、転写ニップ出口における画像面積率が0[%]以上、a[%]未満(例えば5%未満)という非常に小さな値になる領域である。画像面積率=0[%]である場合には、そもそも転写処理を実行する必要はない。また、画像面積率=0[%]でなくても、a[%]未満という極めて低い画像面積率である場合には、潜像担持体から記録シート又はベルト部材に転写するトナー量が極めて少量であったり、潜像担持体の極小面積の潜像部に対して周囲の極大面積の地肌部から電流が流れ込んだりするため、それほど大きな転写電流を出力しなくても、潜像担持体の極小面積の潜像部に対して必要量の電流を流すことができる。そこで、画像面積率がa[%]未満になったとき、即ち、逆転写を特に発生させ易い状態になったときには、画像面積率=a[%]のときよりも転写電流の目標値を小さくする。これにより、画像面積率=a[%]未満という極小の潜像部に対して必要量の転写電流を流してトナーを転写するとともに、転写ニップ出口における潜像担持体の地肌部とニップ形成部材との電位差を小さくして、トナーの逆転写の発生を抑えることができる。
【0139】
[態様K]
態様Kは、態様Jにおいて、アルゴリズムとして、重ね合わせの転写のための複数の転写工程のうち、最上流側の転写工程を除く残りの転写工程において前記画像面積率がb[%]を超えるときには(但し、b<100)、画像面積率が一般的な範囲内にあるときよりも出力目標値を大きな値にするもの、を用いるように、転写電流出力手段を構成したことを特徴とするものである。かかる構成では、既に説明したように、全面ベタ画像、あるいはこれに近いほど高画像面積率の画像を転写する際には、1次転写電流を非常に大きくしても、ベルトから感光体へのトナーの逆転写が殆ど起こらないことから、1次転写電流を非常に大きくして画像濃度不足を効果的に抑えることができる。
【符号の説明】
【0140】
2Y,M,C,K:感光体(潜像担持体)
3Y,M,C,K:現像装置(現像手段)
21:中間転写ベルト(ベルト部材)
25Y,M,C,K:1次転写ローラ(当接部材)
81Y,M,C,K:1次転写電源(転写電流出力手段や抵抗検知手段の一部)
200:制御部(転写電流出力手段や抵抗検知手段の一部)
P:記録紙(記録部材)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0141】
【特許文献1】特開平8−83006号公報
【特許文献2】特開2003−186284号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
潜像を担持する潜像担持体と、前記潜像担持体上の潜像をトナーによって現像してトナー像を得る現像手段と、前記潜像担持体に直接あるいはベルト部材を介して当接する当接部材と、前記潜像担持体と前記当接部材との当接、あるいは前記潜像担持体と前記ベルト部材との当接による転写ニップにて、前記潜像担持体上のトナー像を、前記転写ニップに挟み込まれた記録シート、あるいは前記ベルト部材の表面、に転写するために前記当接部材に対して転写電流を出力し、且つ前記潜像担持体の表面を前記転写ニップに対して所定の長さだけ送る毎に前記転写電流の出力目標値をその所定の長さ範囲における画像面積率に基づいて求めた適正値と同じ値に更新する転写電流出力手段と、を備える画像形成装置において、
前記当接部材の電気抵抗を検知する抵抗検知手段、あるいは前記電気抵抗と相関関係にある所定の電気的特性を検知する電気特性検知手段を設けるとともに、
前記適正値を、前記画像面積率に加えて、前記抵抗検知手段又は前記電気特性検知手段による検知結果にも基づいて求める処理を実施するように、前記転写電流出力手段を構成したことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1の画像形成装置において、
前記潜像担持体及び前記現像手段の組み合わせを複数設けるとともに、
それら潜像担持体に対してそれぞれ前記ベルト部材を介して当接するように前記当接部材を複数設け、
且つ、
移動する前記ベルト部材を複数の潜像担持体による複数の転写ニップに順次通していく過程で、それぞれの転写ニップで潜像担持体上のトナー像を前記ベルト部材、あるいは前記ベルト部材の表面に保持される記録シートに重ね合わせて転写するようにしたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項1の画像形成装置において、
前記ベルト部材として、無端状のものを用い、
前記ベルト部材を周回移動させて前記転写ニップに繰り返し通していく過程で、前記潜像担持体上のトナー像を前記ベルト部材の表面に重ね合わせて転写するようにしたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項2又は3の画像形成装置において、
前記適正値を求めるためのアルゴリズムとして、重ね合わせの転写のための複数の転写工程のうち、最上流側の転写工程については、前記検知結果が高抵抗側の値にシフトにつれて、前記出力目標値を小さくする一方で、残りの転写工程のうち、少なくとも1つについては、前記検知結果が高抵抗側の値にシフトにつれて、前記出力目標値を大きくするもの、を用いるように、前記転写電流出力手段を構成したことを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項4の画像形成装置において、
前記当接部材に一定の転写電流を出力したときの電流値と出力電圧値との関係を前記電気的特性として検知するように構成した前記転写電流出力手段を、前記電気特性検知手段として機能させたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項5の画像形成装置において、
前記関係に基づいて前記当接部材と前記ベルト部材との合成抵抗を算出し、算出結果に基づいて前記適正値を求める処理を実施するように構成した前記転写電流出力手段を、前記抵抗検知手段として機能させたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
請求項5又は6の画像形成装置において、
画像形成動作中であって、且つ前記潜像担持体の全域のうち、前記転写ニップに進入している領域が全て非画像部になるタイミングで、前記関係を測定する処理を実施するように、前記転写電流検知手段を構成したことを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
請求項6の画像形成装置において、
非画像形成動作中に、前記潜像担持体及び前記ベルト部材を表面移動させながら、所定の第1転写電流を出力したときと、所定の第2転写電流を出力したときとでそれぞれ前記関係を測定し、それらの測定結果に基づいて前記適正値を求める処理を実施するように、前記転写電流検知手段を構成したことを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
請求項6の画像形成装置において、
ユーザーによる画像形成動作命令を受け付けていない状態で、前記潜像担持体及び前記ベルト部材を表面移動させ、且つ所定の転写電流を出力しながら、所定のテストトナー像を前記潜像担持体に形成し、前記テストトナー像の第1の画像面積率の箇所が前記転写ニップに進入しているときの前記関係と、前記テストトナー像の第2の画像面積率の箇所が前記転写ニップに進入しているときの前記とに基づいて前記合成抵抗を算出する処理を実施するように、前記転写電流検知手段を構成したことを特徴とする画像形成装置。
【請求項10】
請求項2乃至9の何れかの画像形成装置において、
前記適正値を求めるためのアルゴリズムとして、重ね合わせの転写のための複数の転写工程のうち、最上流側の転写工程を除く残りの転写工程については、画像面積率がa[%]からb[%]まで(但し、0<a<b)の一般的な範囲内であるときには、画像面積率の増加に伴って前記出力目標値を減少させる一方で、画像面積率がa[%]未満であるときには、画像面積率が一般的な範囲内にあるときよりも出力目標値を小さな値にするもの、を用いるように、前記転写電流出力手段を構成したことを特徴とする画像形成装置。
【請求項11】
請求項10の画像形成装置において、
前記アルゴリズムとして、重ね合わせの転写のための複数の転写工程のうち、最上流側の転写工程を除く残りの転写工程において前記画像面積率がb[%]を超えるときには(但し、b<100)、画像面積率が一般的な範囲内にあるときよりも出力目標値を大きな値にするもの、を用いるように、前記転写電流出力手段を構成したことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2013−109070(P2013−109070A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−252568(P2011−252568)
【出願日】平成23年11月18日(2011.11.18)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】