説明

画像形成装置

【課題】緊急停止時にインターロックがオフされた場合に、コンデンサに蓄積された電力を必要な回路にのみ供給できるようにして、現像バイアス電圧の出力保持時間を長くする。
【解決手段】画像形成装置は、高圧基板24、モータ23、及びDC電源21を備える。高圧基板24は、現像正バイアス回路24cと現像逆バイアス回路24dとが並列に接続され、現像正バイアス電圧と現像逆バイアス電圧とを合成して現像バイアス電圧を生成する。高圧基板24は、緊急停止時にインターロックスイッチ22がオフされた場合に、モータ23から現像逆バイアス回路24dへの逆電流を遮断するための遮断スイッチ24eを備え、遮断スイッチ24eによって逆電流が遮断された際に、コンデンサ24bに蓄積された電力を現像正バイアス回路24cに供給し、現像正バイアス電圧を現像バイアス電圧として現像ローラ2に一定時間印加する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関し、より詳細には、緊急停止時に作動するインターロック機構を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、画像形成装置には、例えば、DC5V及びDC24Vの2系統の直流を出力するDC電源が内蔵されている。通常、DC5Vは制御系のロジック部などに供給され、また、DC24Vはモータなどの駆動系の大電流消費部に供給される。このような画像形成装置の中には、例えば、紙詰まりなどの不具合に対処するために、ユーザが画像形成装置の外装カバーを開けたときに、ユーザに怪我をさせないように、モータや高圧回路などのDC24V電源を機械的に遮断する、所謂インターロック機構(インターロックスイッチ)を備えたものがある。これによれば、例えば外装カバーが開かれたときに、これと連動してインターロックスイッチがオープンになり、このインターロックスイッチの後段側に接続される負荷への電力供給が遮断される。
【0003】
図5は、従来のインターロック機構を備えた画像形成装置の要部を示す図である。図中、101はDC24V電源(単にDC電源という)、102はインターロックスイッチ、103はモータ、104は高圧基板、105は感光体ドラム、106は現像ローラ、107は帯電器を示す。また、高圧基板104は、ダイオード104a、コンデンサ104b、現像正バイアス回路104c、及び現像逆バイアス回路104dを備える。
【0004】
図6は、図5の画像形成装置における印刷開始時の現像バイアス電圧の状態を説明するための図である。高圧基板104は、上記したように、現像正バイアス回路104cと現像逆バイアス回路104dを並列に接続して構成される。現像正バイアス回路104cは、所定の現像正バイアス電圧を生成し、現像逆バイアス回路104dは、所定の現像逆バイアス電圧を生成する。そして、高圧基板104は、現像正バイアス電圧と現像逆バイアス電圧とを合成して現像バイアス電圧を生成し、生成した現像バイアス電圧を現像ローラ106に印加する。
【0005】
例えば、図6(A)に示すように、現像バイアス電圧として、「−450V」が必要な場合、高圧基板104では、現像正バイアス回路104cで「−550V」を発生させ、さらに、現像逆バイアス回路104dで「+100V」を発生させ、これらを合成して現像バイアス電圧として「−450V」を生成している。ここで、図6(B)において、停止時には、感光体ドラム105の表面は帯電しておらずその表面電位は「0V」となる。そして、印刷開始時に、感光体ドラム105、帯電器107、及び現像ローラ106に通電され、感光体ドラム105が矢印の方向に回転し出すと、帯電器107により感光体ドラム105のX点より左側の部分が「−640V」に帯電されていくが、X点〜Y点間は帯電されていないため、XY部分の表面電位は「0V」の状態のままである。従って、現像ローラ106を通過するXY部分には、−極性のトナーが強制的に付着してしまう。
【0006】
これに対して、図6(C)に示すように、印刷開始前に、前回転処理を行い、XY部分にトナーが付着することを防止している。すなわち、感光体ドラム105の回転開始から、感光体ドラム105のXY部分が現像ローラ106を通過する間、現像ローラ106に現像バイアス電圧(現像実高圧出力)として、現像逆バイアス電圧の「+100V」を印加するようにしている。これにより、−極性のトナーを現像ローラ106側に引き付け、感光体ドラム105のXY部分にトナーが付着することを防止している。これは、主に二成分現像剤(トナー及びキャリア)が用いられるカラー機では一般的に行われている技術である。
【0007】
ここで、二成分系の現像剤は、非磁性体のトナーと磁性体のキャリアからなる。このキャリアの主成分は鉄であり、マグネットローラである現像ローラ106の磁力によって現像ローラ106上に保持されており、電気的には、現像バイアス電圧とは逆極性(+)を有している。そのため、感光体ドラム105の表面の電位が−640Vで、現像バイアス電圧が−450Vである場合には問題ないが、この電位差が大きくなると、磁力よりも電気的な力が強くなり、感光体ドラム105上にキャリアが付着してしまうという問題がある。
【0008】
例えば、図6(B)において、印字中に緊急停止され、インターロックスイッチ102(図5)がオフされた場合を想定する。この際、感光体ドラム105のX点は帯電器107の位置にあり、Y点は現像ローラ106の位置にあるものとする。この場合、感光体ドラム105のXY部分は帯電器107によって「−640V」に帯電されている。そして、インターロックスイッチ102がオフされたことで、現像ローラ106は停止し、現像バイアス電圧は0Vとなる。一方、緊急停止後も感光体ドラム105は惰性で回転し、感光体ドラム105のXY部分が現像ローラ106を通過する。このとき、現像ローラ106の現像バイアス電圧は「0V」、感光体ドラム105のXY部分の表面電位は「−640V」である。このため電位差が大きくなり、磁力よりも電気的な力が強くなり、感光体ドラム105上にキャリアが付着してしまう。
【0009】
これに対して、例えば、特許文献1には、画像形成動作中での用紙のジャムや、ユーザによる扉の開放などによる緊急停止時に、現像スリーブから感光体側へのキャリアが移動するのを防止するために、現像バイアス電圧を段階的に変更する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2002−196549号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述の図5に示したように、高圧基板104内にコンデンサ104bを備え、緊急停止によりインターロックスイッチ102がオフされた後に、感光体ドラム105が惰性回転する一定時間、コンデンサ104bに蓄積された電力により、現像バイアス電圧として「−450V」を出力できるようにしている。これにより、現像ローラ106の現像バイアス電圧と感光体ドラム105のXY部分の表面電位との電位差を小さくし、ドラム惰性回転間にドラムにキャリアが付着することを防止している。
【0012】
しかしながら、図5において、DC電源101に高圧基板104やモータ103などの複数の負荷が接続されている場合に、緊急停止時におけるモータ103の惰性回転により逆起電流が発生し、これが高圧基板104の内部に回り込むことがあった。この場合、逆起電流により高圧基板104の不必要な回路部分である現像逆バイアス回路104dを駆動し続けることになり、コンデンサ104bのチャージ電圧は現像正バイアス回路104c及び現像逆バイアス回路104dの両方で消費されることになる。このため、現像バイアス電圧の出力保持時間(現像保持時間)を十分に確保することが難しく、現像保持時間を十分に確保するためには容量の大きなコンデンサが必要となる。
【0013】
上述の特許文献1に記載の画像形成装置は、現像ローラから感光体ドラム側へキャリアが移動するのを防止するために、現像バイアス電圧を段階的に変更しているが、現像正バイアス回路及び現像逆バイアス回路を開示するものではなく、上記のような問題を解決することを意図したものではない。
【0014】
本発明は、上述のような実情に鑑みてなされたもので、緊急停止時にインターロックがオフされた場合に、コンデンサに蓄積された電力を必要な回路にのみ供給できるようにして、現像バイアス電圧の出力保持時間(現像保持時間)を長くすることができる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために、本発明の第1の技術手段は、静電潜像が形成された感光体ドラムにトナーを付与して該静電潜像を顕像化する現像手段と、該現像手段に現像バイアス電圧を印加する高圧基板と、該高圧基板と並列に接続された駆動系負荷と、前記高圧基板及び前記駆動系負荷とインターロック手段を介して接続され前記高圧基板及び前記駆動系負荷に電力を供給する駆動系電源とを備え、前記高圧基板は、現像正バイアス電圧を生成する現像正バイアス回路と、現像逆バイアス電圧を生成する現像逆バイアス回路と、前記現像正バイアス回路の前段に設けられたコンデンサとを備え、前記現像正バイアス回路と前記現像逆バイアス回路とが並列に接続され、前記現像正バイアス電圧と前記現像逆バイアス電圧とを合成して前記現像バイアス電圧を生成する画像形成装置であって、前記高圧基板は、緊急停止時に前記インターロック手段がオフされた場合に、前記駆動系負荷から前記現像逆バイアス回路への逆電流を遮断するための遮断手段を備え、該遮断手段によって前記逆電流が遮断された際に、前記コンデンサに蓄積された電力を前記現像正バイアス回路に供給し、該現像正バイアス回路で生成された現像正バイアス電圧を前記現像バイアス電圧として前記現像手段に一定時間印加することを特徴としたものである。
【0016】
第2の技術手段は、第1の技術手段において、前記駆動系負荷は、モータであり、前記逆電流は、緊急停止時に前記インターロック手段がオフされた場合に前記モータの惰性回転により発生することを特徴としたものである。
【0017】
第3の技術手段は、第1又は第2の技術手段において、前記遮断手段は、前記現像逆バイアス回路の前段に設けられたスイッチであり、該スイッチは、前記駆動系電源と前記現像逆バイアス回路との接続のオン/オフを切り替え可能としたことを特徴としたものである。
【0018】
第4の技術手段は、第3の技術手段において、緊急停止時に前記インターロック手段がオフされた場合、前記スイッチをオフに切り替える制御手段を備えたことを特徴としたものである。
【0019】
第5の技術手段は、第3の技術手段において、緊急停止時に前記インターロック手段がオフされた場合、前記高圧基板は、前記スイッチをオフに切り替えることを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、緊急停止時にインターロックがオフされた場合に、モータ等の惰性回転で発生する逆起電流が現像逆バイアス回路に流入することを遮断できるようにしたため、コンデンサに蓄積された電力を高圧基板内の必要な回路(現像正バイアス回路)にのみ供給でき、現像バイアス電圧の出力保持時間(現像保持時間)を長くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る画像形成装置の構成例を示す図である。
【図2】本発明による画像形成装置の要部構成例について説明するための図である。
【図3】図2の要部構成例を電気回路で示した図である。
【図4】本発明の画像形成装置による緊急停止時のタイミングチャートの一例を示す図である。
【図5】従来のインターロック機構を備えた画像形成装置の要部を示す図である。
【図6】図5の画像形成装置における印刷開始時の現像バイアス電圧の状態を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の画像形成装置に係る好適な実施の形態について説明する。
【0023】
図1は、本発明に係る画像形成装置の構成例を示す図である。画像形成装置100は、外部から伝達された画像データに応じて、所定のシート(記録用紙)に対して多色及び単色の画像を形成するもので、装置本体110と、自動原稿処理装置120とにより構成されている。装置本体110は、露光ユニット1、現像器(現像ローラ)2、感光体ドラム3、クリーナユニット4、帯電器5、中間転写ベルトユニット6、定着ユニット7、給紙カセット81、排紙トレイ91を有して構成されている。
【0024】
装置本体110の上部には、原稿が載置される透明ガラスからなる原稿載置台92が設けられ、原稿載置台92の上側には自動原稿処理装置120が取り付けられている。自動原稿処理装置120は、原稿載置台92の上に自動で原稿を搬送する。また、自動原稿処理装置120は矢印M方向に回動自在に構成され、原稿載置台92の上面を開放することにより原稿を手置きで置くことができるようになっている。
【0025】
画像形成装置100において扱われる画像データは、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の各色を用いたカラー画像に応じたものである。従って、現像器2、感光体ドラム3、帯電器5、クリーナユニット4は、各色に応じた4種類の潜像を形成するようにそれぞれ4個ずつ設けられ、それぞれブラック、シアン、マゼンタ、イエローに設定され、これらによって4つの画像ステーションが構成されている。
【0026】
帯電器5は、感光体ドラム3の表面を所定の電位に均一に帯電させるための帯電手段であり、図1に示すようなチャージャ型の他、接触型のローラ型やブラシ型の帯電器が用いられることもある。
【0027】
露光ユニット1は、レーザ出射部及び反射ミラー等を備えたレーザスキャニングユニット(LSU)として構成される。露光ユニット1は、レーザビームを走査するポリゴンミラーと、ポリゴンミラーによって反射されたレーザ光を感光体ドラム3に導くためのレンズやミラー等の光学要素が配置されている。露光ユニット1としては、この他発光素子をアレイ状に並べた例えばELやLED書込みヘッドを用いる手法も採用できる。
【0028】
露光ユニット1は、帯電された感光体ドラム3を入力された画像データに応じて露光することにより、その表面に、画像データに応じた静電潜像を形成する機能を有する。現像器2はそれぞれの感光体ドラム3上に形成された静電潜像を4色(YMCK)のトナーにより顕像化するものである。またクリーナユニット4は、現像・画像転写後における感光体ドラム3上の表面に残留したトナーを、除去・回収する。
【0029】
感光体ドラム3の上方に配置されている中間転写ベルトユニット6は、中間転写ベルト61、中間転写ベルト駆動ローラ62、中間転写ベルト従動ローラ63、中間転写ローラ64、及び中間転写ベルトクリーニングユニット65を備えている。上記中間転写ローラ64は、YMCK用の各色に対応して4本設けられている。中間転写ベルト駆動ローラ62、中間転写ベルト従動ローラ63、及び中間転写ローラ64は、中間転写ベルト61を張架して回転駆動させる。また各中間転写ローラ64は、感光体ドラム3のトナー像を、中間転写ベルト61上に転写するための転写バイアスを与える。
【0030】
中間転写ベルト61は、各感光体ドラム3に接触するように設けられている、そして、感光体ドラム3に形成された各色のトナー像を中間転写ベルト61に順次的に重ねて転写することによって、中間転写ベルト61上にカラーのトナー像(多色トナー像)を形成する機能を有している。中間転写ベルト61は、例えば厚さ100μm〜150μm程度のフィルムを用いて無端状に形成されている。
【0031】
感光体ドラム3から中間転写ベルト61へのトナー像の転写は、中間転写ベルト61の裏側に接触している中間転写ローラ64によって行われる。中間転写ローラ64には、トナー像を転写するために高電圧の転写バイアス(トナーの帯電極性(−)とは逆極性(+)の高電圧)が印加されている。中間転写ローラ64は、直径8〜10mmの金属(例えばステンレス)軸をベースとし、その表面が導電性の弾性材(例えばEPDM,発泡ウレタン等)により覆われているローラである。この導電性の弾性材により、中間転写ベルト61に対して均一に高電圧を印加することができる。本実施形態では転写電極としてローラ形状を使用しているが、それ以外にブラシなども用いることが可能である。
【0032】
上述のように各感光体ドラム3上で各色相に応じて顕像化された静電像は中間転写ベルト61で積層される。このように、積層された画像情報は中間転写ベルト61の回転によって、用紙と中間転写ベルト61の接触位置に配置される転写ローラ10によって用紙上に転写される。
【0033】
このとき、中間転写ベルト61と転写ローラ10は所定ニップで圧接されると共に、転写ローラ10にはトナーを用紙に転写させるための電圧が印加される(トナーの帯電極性(−)とは逆極性(+)の高電圧)。さらに、転写ローラ10は上記ニップを定常的に得るために、転写ローラ10もしくは中間転写ベルト駆動ローラ62の何れか一方を硬質材料(金属等)とし、他方を弾性ローラ等の軟質材料(弾性ゴムローラ、または発泡性樹脂ローラ等々)が用いられる。
【0034】
また、上記のように、感光体ドラム3に接触することにより中間転写ベルト61に付着したトナー、もしくは、転写ローラ10によって用紙上に転写が行われず中間転写ベルト61上に残存したトナーは、次工程でトナーの混色を発生させる原因となるために、中間転写ベルトクリーニングユニット65によって除去・回収されるように設定されている。中間転写ベルトクリーニングユニット65には、中間転写ベルト61に接触する例えばクリーニング部材としてクリーニングブレードが備えられており、クリーニングブレードが接触する中間転写ベルト61は、裏側から中間転写ベルト従動ローラ63で支持されている。
【0035】
給紙カセット81は、画像形成に使用するシート(記録用紙)を蓄積しておくためのトレイであり、装置本体110の露光ユニット1の下側に設けられている。また、手差し給紙カセット82にも画像形成に使用するシートを置くことができる。また、装置本体110の上方に設けられている排紙トレイ91は、印刷済みのシートをフェイスダウンで集積するためのトレイである。
【0036】
また、装置本体110には、給紙カセット81及び手差し給紙カセット82のシートを転写ローラ10や定着ユニット7を経由させて排紙トレイ91に送るための、略垂直形状の用紙搬送路Sが設けられている。給紙カセット81ないし手差し給紙カセット82から排紙トレイ91までの用紙搬送路Sの近傍には、ピックアップローラ11a,11b、複数の搬送ローラ12a〜12d,レジストローラ13、転写ローラ10、定着ユニット7等が配されている。
【0037】
搬送ローラ12a〜12dは、シートの搬送を促進・補助するための小型のローラであり、用紙搬送路Sに沿って複数設けられている。またピックアップローラ11aは、給紙カセット81の端部近傍に備えられ、給紙カセット81からシートを1枚ずつピックアップして用紙搬送路Sに供給する。同様にまた、ピックアップローラ11bは、手差し給紙カセット82の端部近傍に備えられ、手差し給紙カセット82からシートを1枚ずつピックアップして用紙搬送路Sに供給する。
【0038】
また、レジストローラ13は、用紙搬送路Sを搬送されているシートを一旦保持するものである。そして、感光体ドラム3上のトナー像の先端とシートの先端を合わせるタイミングでシートを転写ローラ10に搬送する機能を有している。
【0039】
定着ユニット7は、ヒートローラ71及び加圧ローラ72を備えており、ヒートローラ71及び加圧ローラ72は、シートを挟んで回転するようになっている。またヒートローラ71は、図示しない温度検出器からの信号に基づいて制御部によって所定の定着温度となるように設定されており、加圧ローラ72とともにトナーをシートに熱圧着することにより、シートに転写された多色トナー像を溶融・混合・圧接し、シートに対して熱定着させる機能を有している。またヒートローラ71を外部から加熱するための外部加熱ベルト73が設けられている。
【0040】
本発明の主たる目的は、緊急停止時にインターロックがオフされた場合に、コンデンサに蓄積された電力を必要な回路にのみ供給できるようにして、現像バイアス電圧の出力保持時間(現像保持時間)を長くすることにある。このための画像形成装置の要部構成例について、図2を参照しながら説明する。
【0041】
図2において、画像形成装置は、静電潜像が形成された感光体ドラム3にトナーを付与して静電潜像を顕像化する現像手段に相当する現像ローラ2と、現像ローラ2に現像バイアス電圧を印加する高圧基板24と、高圧基板24と並列に接続された駆動系負荷の一例であるモータ23と、高圧基板24及びモータ23とインターロックスイッチ22(インターロック手段に相当)を介して接続され高圧基板24及びモータ23に電力を供給する駆動系電源に相当するDC電源21とを備える。なお、本例の場合、駆動系負荷として、モータ23を例示するものとする。
【0042】
高圧基板24は、ダイオード24aと、現像正バイアス電圧を生成する現像正バイアス回路24cと、現像逆バイアス電圧を生成する現像逆バイアス回路24dと、現像正バイアス回路24cの前段に設けられたコンデンサ24bとを備え、現像正バイアス回路24cと現像逆バイアス回路24dとが並列に接続され、現像正バイアス電圧と現像逆バイアス電圧とを合成して現像バイアス電圧を生成する。また、高圧基板24は、緊急停止時にインターロックスイッチ22がオフされた場合に、モータ23から現像逆バイアス回路24dへの逆電流を遮断する遮断手段の一例である遮断スイッチ24eを備え、遮断スイッチ24eによって逆電流が遮断された際に、コンデンサ24bに蓄積された電力を現像正バイアス回路24cに供給し、現像正バイアス回路24cで生成された現像正バイアス電圧を現像バイアス電圧として現像ローラ2に一定時間印加する。
【0043】
図2の例では、遮断スイッチ24eは、現像逆バイアス回路24dの前段に設けられており、DC電源21と現像逆バイアス回路24dとの接続のオン/オフを切り替え可能なスイッチである。そして、この遮断スイッチ24eのオン/オフは、制御部(本発明の制御手段に相当)25あるいは高圧基板24により切り替えられる。
【0044】
上記の逆電流は、緊急停止時にインターロックスイッチ22がオフされた場合にモータ23の惰性回転により発生するが、本発明による回路構成では、このモータ23からの逆電流を遮断スイッチ24eで遮断することができるため、この逆電流により現像逆バイアス回路24dを駆動させることはない。このため、コンデンサ24bに蓄積された電力は現像正バイアス回路24cにのみ供給され、現像正バイアス回路24cで生成された現像正バイアス電圧(−550V)を現像バイアス電圧として現像ローラ2に一定時間印加することができる。
【0045】
すなわち、緊急停止によりインターロックスイッチ22がオフされた後に、感光体ドラム3が惰性回転する一定時間、コンデンサ24bに蓄積された電力により、現像バイアス電圧として「−550V」を出力することができる。これにより、現像ローラ2の現像バイアス電圧と感光体ドラム3の表面電位との電位差を小さくし、ドラム惰性回転間にドラムにキャリアが付着することを防止することができる。そして、モータ23の惰性回転で発生する逆起電流が現像逆バイアス回路24dに流入することを遮断することができるため、コンデンサ24bに蓄積された電力を高圧基板24内の現像正バイアス回路24cにのみ供給でき、現像バイアス電圧の出力保持時間(現像保持時間)を長くすることができる。また、従来と現像保持時間を同じにした場合(後述の図4の例において現像保持時間T1とT2が同じ場合)には、従来と比べコンデンサの容量を削減することができるため、コストの低減を図ることが可能となる。
【0046】
ここで、画像形成装置は、緊急停止時にインターロックスイッチ22がオフされた場合、遮断スイッチ24eをオフに切り替える制御部25を備える。制御部25は、画像形成動作中に装置のフロントカバーが開かれたことをセンサ等を介して検知すると、インターロックスイッチ22をオフ(オープン)に制御して、DC電源21からモータ23及び高圧基板24への電力供給を停止させる。そして、制御部25は、インターロックスイッチ22のオフを検知すると、遮断スイッチ24eをオフ(オープン)するように制御する。これにより、モータ23の惰性回転による逆電流が現像逆バイアス回路24dに流れ込むことを遮断する。
【0047】
なお、遮断スイッチ24eのオン/オフの制御は、高圧基板24内で行うようにしてもよい。この場合、高圧基板24の内部に制御用マイコンを備えるようにし、この制御用マイコンが緊急停止時にインターロックスイッチ22がオフされたことを検知したときに、遮断スイッチ24eをオフに制御する。
【0048】
図3は、図2の要部構成を電気回路として示した図である。現像正バイアス回路24cは、現像正バイアストランスT1を有し、制御部25からの正バイ用出力命令26に応じて、トランス駆動回路27が駆動され、現像正バイアストランスT1で現像正バイアス電圧(+550V)を発生させる。同様に、現像逆バイアス回路24dは、現像逆バイアストランスT2を有し、制御部25からの逆バイ用出力命令28に応じて、トランス駆動回路29が駆動され、現像逆バイアストランスT2で現像逆バイアス電圧(−100V)を発生させる。
【0049】
通常時は、現像出力として、Vcに「−450V」を発生させるために、現像逆バイアストランスT2を駆動させて、Vaに「+100V」を発生させる。そして、Vc=−450V(一定)に保つために、現像正バイアストランスT1を駆動させて、Vbに「−550V」を発生させる。高圧回路としては、Vc電圧が「−450V」となるように制御されている。これに対して、緊急停止時は、インターロックスイッチ22がオフとなるため、両方のトランスT1、T2への24V電源供給は、現像保持用コンデンサ24bにチャージされた電圧のみとなる。この時、遮断スイッチ24eにより、現像逆バイアストランスT2を駆動させないようにすることで、現像保持用コンデンサ24bにチャージされた電圧は、そのまま全て現像正バイアストランスT1で消費されることになる。また、現像逆バイアストランスT2が駆動していないため、Vaは0Vとなるので、Vc=−450V(一定)とするためには、Vbに「−450V」を発生させるだけでよくなる。つまり、Vbが「−550V」から「−450V」になることで、現像正バイアストランスT1での消費電力が小さくなる。このため、その分、現像保持用コンデンサ24bにチャージされた電圧が消費される時間が長くなり、結果、現像保持時間が長くなる。
【0050】
図4は、本発明の画像形成装置による緊急停止時のタイミングチャートの一例を示す図である。図4(A)は従来の画像形成装置によるタイミングチャートで、図4(B)は本発明の画像形成装置によるタイミングチャートを示す。なお、図中、24V電源(現像正バイアス用)は高圧基板の現像正バイアス回路への24Vライン信号電圧(−)を示し(S1,S1′)、24V電源(現像逆バイアス用)は高圧基板の現像逆バイアス回路への24Vライン信号電圧(+)を示す(S2,S2′)。また、グリッド実高圧出力は高圧基板からのグリッド実高圧出力(本例では−640V)を示し(S3,S3′)、現像実高圧出力は高圧基板からの現像実高圧出力(本例では−450V)を示す(S4,S4′)。また、現像逆バイアス(+電圧)は高圧基板内の現像逆バイアス回路の現像逆バイアス出力(本例では+100V)を示し(S5,S5′)、現像正バイアス(−電圧)は高圧基板内の現像正バイアス回路の現像正バイアス出力(本例では−550V)を示す(S6,S6′)。なお、S4の現像実高圧出力は、S5の現像正バイアス出力と、S6の現像逆バイアス出力とを合成したものである。同様に、S4′の現像実高圧出力は、S5′の現像正バイアス出力と、S6′の現像逆バイアス出力とを合成したものである。
【0051】
上記において、グリッド実高圧出力とは、感光体ドラムの表面が帯電器によって帯電されたときの電圧であり、現像実高圧出力とは、現像ローラに印加される現像バイアス電圧のことをいう。
【0052】
まず、従来構成について、図4(A)及び図5を参照しながら説明する。緊急停止(インターロックスイッチ102がオフ)のときに、S1、S2では共に24Vから0Vになるが、S2の24Vライン信号電圧(+)はモータ103の惰性回転による逆起電圧のために、即断せず、傾きが緩やかになる。そして、S2の24Vライン信号電圧(+)がある電圧(例えば13V)以上である場合に、S6の現像正バイアス回路104cだけでなく、S5の現像逆バイアス回路104dも駆動し続けるため、その合成出力であるS4の現像実高圧出力の現像保持時間はT1となる。図4(A)の場合、S5の現像逆バイアス回路104dが動作するために、コンデンサ104bに蓄積された電力は現像正バイアス回路104c及び現像逆バイアス回路104dの両方で消費されてしまう。このため、現像保持時間T1は図4(B)における現像保持時間T2と比べると短くなる。
【0053】
本発明の構成について、図4(B)及び図2を参照しながら説明する。緊急停止(インターロックスイッチ22がオフ)のときに、S1′の24Vライン信号電圧(−)はS1と同様に傾きが緩やかになるが、S2′の24Vライン信号電圧(+)は遮断スイッチ24eにより24Vから0Vに即断されるため、S2と比べ傾きが急峻になる。そして、S2′で24Vが即断されるため、S6′の現像正バイアス回路24cは「−450V」で駆動し続けるが、S5′の現像逆バイアス回路24dは即断される。このため、その合成出力であるS4′の現像実高圧出力の現像保持時間T2は、S4の現像実高圧出力の現像保持時間T1よりも長くなる。図4(B)の場合、S5′の現像逆バイアス回路24dは動作しないために、コンデンサ24bに蓄積された電力は全てS6′の現像正バイアス回路24cで消費される。このため、現像保持時間T2は図4(A)における現像保持時間T1と比べると長くなる。
【0054】
上記の理由は、前述の図3で説明した通りであるが、現像正バイアス回路24cの現像正バイアス電圧Vbが「−550V」から「−450V」になることで、現像正バイアストランスT1での消費電力が小さくなる。このため、その分、現像保持用コンデンサ24bにチャージされた電圧が消費される時間が長くなり、結果、現像保持時間T2が長くなる。
【0055】
このように本発明によれば、緊急停止時にインターロックがオフされた場合に、モータ等の惰性回転で発生する逆起電流が現像逆バイアス回路に流入することを遮断できるようにしたため、コンデンサに蓄積された電力を高圧基板内の必要な回路(現像正バイアス回路)にのみ供給でき、現像バイアス電圧の出力保持時間(現像保持時間)を長くすることができる。また、従来と現像保持時間を同じにした場合(図4の例で現像保持時間T1=T2とした場合)には、従来と比べコンデンサの容量を削減することができるため、コストの低減を図ることが可能となる。
【符号の説明】
【0056】
1…露光ユニット、2,106…現像ローラ、3,105…感光体ドラム、4…クリーナユニット、5…帯電器、6…中間転写ベルトユニット、7…定着ユニット、10…転写ローラ、11a,11b…ピックアップローラ、12a〜12d…搬送ローラ、13…レジストローラ、21,101…DC電源、22,102…インターロックスイッチ、23,103…モータ、24,104…高圧基板、24a,104a…ダイオード、24b,104b…コンデンサ、24c,104c…現像正バイアス回路、24d,104d…現像逆バイアス回路、24e…遮断スイッチ、25…制御部、81…給紙カセット、82…手差し給紙カセット、91…排紙トレイ、92…原稿載置台、100…画像形成装置、110…装置本体、120…自動原稿処理装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電潜像が形成された感光体ドラムにトナーを付与して該静電潜像を顕像化する現像手段と、該現像手段に現像バイアス電圧を印加する高圧基板と、該高圧基板と並列に接続された駆動系負荷と、前記高圧基板及び前記駆動系負荷とインターロック手段を介して接続され前記高圧基板及び前記駆動系負荷に電力を供給する駆動系電源とを備え、
前記高圧基板は、現像正バイアス電圧を生成する現像正バイアス回路と、現像逆バイアス電圧を生成する現像逆バイアス回路と、前記現像正バイアス回路の前段に設けられたコンデンサとを備え、前記現像正バイアス回路と前記現像逆バイアス回路とが並列に接続され、前記現像正バイアス電圧と前記現像逆バイアス電圧とを合成して前記現像バイアス電圧を生成する画像形成装置であって、
前記高圧基板は、緊急停止時に前記インターロック手段がオフされた場合に、前記駆動系負荷から前記現像逆バイアス回路への逆電流を遮断するための遮断手段を備え、該遮断手段によって前記逆電流が遮断された際に、前記コンデンサに蓄積された電力を前記現像正バイアス回路に供給し、該現像正バイアス回路で生成された現像正バイアス電圧を前記現像バイアス電圧として前記現像手段に一定時間印加することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像形成装置において、前記駆動系負荷は、モータであり、前記逆電流は、緊急停止時に前記インターロック手段がオフされた場合に前記モータの惰性回転により発生することを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の画像形成装置において、前記遮断手段は、前記現像逆バイアス回路の前段に設けられたスイッチであり、該スイッチは、前記駆動系電源と前記現像逆バイアス回路との接続のオン/オフを切り替え可能としたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項3に記載の画像形成装置において、緊急停止時に前記インターロック手段がオフされた場合、前記スイッチをオフに切り替える制御手段を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項3に記載の画像形成装置において、緊急停止時に前記インターロック手段がオフされた場合、前記高圧基板は、前記スイッチをオフに切り替えることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2013−109115(P2013−109115A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−253409(P2011−253409)
【出願日】平成23年11月21日(2011.11.21)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】