説明

画像形成装置

【課題】ストッパ手段に必要となるスペースを最小化し、従来機能を満足しつつ画像形成装置の小型化を達成する。
【解決手段】給紙カセット2、排紙トレイ3、排紙トレイロック機構およびストッパ機構230Aを備え、ストッパ機構230Aは、給紙カセット2の内側に設けられ、排紙トレイ3の開閉に応じて上下動可能であって、排紙トレイ3の開放時に給紙カセット2から排紙トレイ3に向かって上昇可能な被ストッパ部材231Aと、装置本体1に設けられ、給紙カセット2の内側で被ストッパ部材231Aと係合可能なストッパ部241Aとを有し、被ストッパ部材231Aには、被ストッパ部材231Aが上昇状態にあるときにストッパ部241Aと突き当たる当接面239と、ストッパ部241Aとの係合により被ストッパ部材231Aを上下動させるガイド面238とが隣接して設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関し、詳しくは、プリンタ、複写装置、ファクシミリ、プロッタ等の画像形成装置、あるいはこれら2つ以上の機能を備えた複合機等の画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、複写装置、ファクシミリ、プロッタ等の画像形成装置、あるいはこれら2つ以上の機能を備えた複合機等の画像形成装置として、例えばインク液滴を吐出する記録ヘッドを用いた液体吐出記録方式の画像形成装置としてインクジェット記録装置や、電子写真方式で画像形成を行う画像形成装置などが知られている。
【0003】
液体吐出記録方式の画像形成装置は、記録ヘッドから液滴としてのインク滴を、搬送されるシート状記録媒体(以下、「シート」という))に対して吐出して、画像形成を行うものである。この画像形成装置には、記録ヘッドが主走査方向に移動しながらインク滴を吐出して画像を形成するシリアル型画像形成装置と、記録ヘッドが移動しない状態でインク滴を吐出して画像を形成するライン型ヘッドを用いるライン型画像形成装置がある。以下、シートの一例として「用紙」を代表して説明する。
【0004】
このような画像形成装置においては、用紙を装置本体に給紙するために、装置本体に装着した給紙トレイや装置本体に着脱自在に装着する給紙カセットが備えられる。なお、本明細書において、「給紙トレイ」は装置本体に着脱可能または取り付けられていて、用紙を補給するために装置本体からの取り外しを要しないものを、「給紙カセット」は装置本体に着脱可能に装着され、用紙を補給するために装置本体からの引出しあるいは取り外しを要するものを意味するものとして用いる。
【0005】
画像形成装置の用紙(シート)積載部としての給紙カセットは、通常、装置本体の下部近傍に配置されていることが一般的である。さらに小型の画像形成装置においては、使用者が用紙の補給などを目的として、給紙カセットを引き出しするために把持する部分とは逆の位置に用紙の給紙、分離機構を有する構成がある。
【0006】
また、用紙積載部に隣接した上方に排紙積載部としての排紙トレイを設けることにより、装置の小型化を達成する方法が広く用いられている。上述の構成においては、用紙詰まりの処理や、用紙補給時の用紙落下に応じて使用者が用紙を取り除く必要があり、給紙カセット(用紙積載部)の上方に存在する排紙トレイを開閉自在に構成する方法も知られている。その場合、給紙カセットに容易にアクセスすることができることから、使用者が用紙を継ぎ足し補給することができ、これによって本来の給紙に問題が発生する可能性がある。
【0007】
そこで、給紙カセットを装置本体に装着したまま引き出し、給紙カセットのカバーとなる排紙トレイを開いて用紙補給を行う場合に、給紙カセットが用紙補給位置まで引き出されない限り用紙補給を行えないように構成して、給紙の信頼性を向上することを目的とした技術が既に知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1には、用紙の継ぎ足し補給による不具合発生を回避する目的で、給紙カセットが装置本体内に挿入・セットされた状態では排紙トレイを開閉できないようにするストッパ手段を備えた構成が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1のような構成では、ストッパ手段が必要とするスペース、特には給紙カセットの引出し方向と直交する幅方向のスペースが大きくなってしまい、装置を小型化することができないという問題があった。
【0009】
本発明は、上述した事情・課題に鑑みてなされたものであり、ストッパ手段に必要となるスペースを最小化し、従来機能を満足しつつ画像形成装置の小型化を達成することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決するとともに上述した目的を達成するために、本発明では、以下のような特徴ある手段・発明特定事項(以下、「構成」という)を採っている。
本発明は、シートを載置し、装置本体側に設けられた給送手段にシートを接触させる給送位置と該給送位置から下降した下降位置との間で揺動可能な載置部材を有し、前記装置本体に装着したまま所定のシート補給位置まで引出し可能であって、前記装置本体から所定量引き出されたときに前記載置部材が前記下降位置を占めるシート収容手段と、前記シート収容手段の蓋部材を兼ね、前記装置本体に揺動可能に装着されて前記シート収容手段の上方を開閉可能な、排出されるシートを積載するシート積載手段と、前記載置部材が前記下降位置にあるときに、前記シート積載手段を開放可能とし、前記載置部材が前記給送位置にあるときに、前記シート積載手段の開放を規制する開放規制手段と、前記シート積載手段が開放状態にあるときに、前記シート収容手段の前記装置本体内への挿入を規制するストッパ手段とを備え、前記ストッパ手段は、前記シート収容手段に設けられ、前記シート積載手段の開閉に応じて上下動可能であって、前記シート積載手段の開放時に前記シート収容手段から前記シート積載手段に向かって上昇可能な被ストッパ部材と、前記装置本体に設けられ、前記シート収容手段の引出し方向と直交する幅方向における前記シート収容手段の内側で前記被ストッパ部材と接触可能なストッパ部材とを有し、前記被ストッパ部材には、前記被ストッパ部材が上昇状態にあるときに前記ストッパ部材と突き当たる被ストッパ面と、前記ストッパ部材との接触により前記被ストッパ部材を上下動させる上下動切り替え面とが隣接して設けられていることを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、前記課題を解決して前記目的を達成できる新規な画像形成装置を実現し提供することができる。
すなわち、本発明によれば、前記構成により、ストッパ手段に必要となるスペースを最小化し、従来機能を満足しつつ画像形成装置の小型化を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1の実施形態を示す画像形成装置の外観斜視図である。
【図2】図1の画像形成装置の機構部の概要を示す模式的側面図である。
【図3】図1の画像形成装置の機構部の要部の平面図である。
【図4】給紙カセットを底板が下降位置になる状態まで引き出したときの外観斜視図である。
【図5】給紙カセットをシート補給位置まで引き出した状態の外観斜視図である。
【図6】給紙カセットを装置本体にセットした状態の簡略的な側面図である。
【図7】給紙カセットを装置本体から所定量引き出した状態の簡略的な側面図である。
【図8】(a)、(b)は従来例のストッパ機構を示す模式的(片側)断面図、(c)、(d)は第1の実施形態例のストッパ機構を示す図6のA−Aの模式的(片側)断面図である。
【図9】(a)、(b)、(c)は、第1の実施形態の給紙カセットおよび排紙トレイのストッパ機構、排紙トレイロック機構の動作推移状態を説明するための一部を破断して示す模式的断面図である。
【図10】第1の実施形態の給紙カセットおよび排紙トレイのストッパ機構、排紙トレイロック機構を説明するための一部を破断して示す要部の斜視図である。
【図11】(a)、(b)は、変形例1のロック部を示す模式的(片側)断面図である。
【図12】(a)、(c)は、変形例1におけるロック部のロック爪の構成を示す斜視図、(b)は(a)に対応して、(d)は(c)に対応して、変形例1のロック部のロック爪の構成を示す要部の断面図である。
【図13】変形例1における排紙トレイロック部の要部の斜視図である。
【図14】変形例2における給紙カセットの被ストッパ部材を示す要部の斜視図である。
【図15】(a)、(b)は、本発明の第2の実施形態における広角挿入手段の構成および給紙カセットの挿入動作を説明する要部の一部断面側面図である。
【図16】(c)、(d)は、図15の続きの給紙カセットの装着・セット時の動作を説明する要部の一部断面側面図である。
【図17】(a)、(b)は、広角挿入手段を利用して給紙カセットおよび排紙トレイを一緒に持ち上げて給紙カセットの装着・セット時の動作を説明する要部の一部断面側面図である。
【図18】(a)は、本発明の実施例を示すストッパ機構の外観斜視図、(b)は、同ストッパ機構の縦断面図である。
【図19】(a)は、図18の実施例における排紙トレイ開放時のストッパ機構の動作を示す要部の側面図、(b)は、同実施例における排紙トレイ閉鎖時のストッパ機構の動作を示す要部の側面図である。
【図20】(a)は、図18の実施例における給紙カセット装着セット時のストッパ機構の動作を示す要部の側面図、(b)は、同ストッパ機構の拡大平断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図を参照して本発明の実施の形態(以下、「実施形態」という)を詳細に説明する。各実施形態および従来技術例等に亘り、同一の機能および形状等を有する構成要素(部材や構成部品等)については、混同の虞がない限り一度説明した後では同一符号を付すことによりその説明を省略する。公開特許公報等の構成要素を引用して説明する場合は、その符号に括弧を付して示し、各実施形態等のそれと区別するものとする。
【0014】
以下、画像形成装置として、液体吐出記録方式の画像形成装置の一例であるインクジェット方式の画像形成装置を用いた例で説明する。
液体吐出記録方式の一例としてのインクジェット方式の画像形成装置は、記録ヘッドからインク滴を、搬送されるシート状記録媒体(用紙に限定するものではなく、OHPシートなどを含み、インク滴などが付着可能なものの意味であり、被記録媒体あるいは記録媒体、記録紙、記録用紙などと称されるものなども含まれる)に対して吐出して、画像形成(記録、印字、印写、印刷も同義語で使用する)を行うものである。このインクジェット方式の画像形成装置には、記録ヘッドが主走査方向に移動しながらインク滴を吐出して画像を形成するシリアル型画像形成装置と、記録ヘッドが移動しない状態でインク滴を吐出して画像を形成するライン型ヘッドを用いるライン型画像形成装置がある。
【0015】
なお、本願発明において、「画像形成装置」は、広義には紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス等の媒体にインクを着弾させて画像形成を行う装置を意味し、また、「画像形成」とは、文字や図形等の意味を持つ画像を媒体に対して付与することだけでなく、パターン等の意味を持たない画像を媒体に付与すること(単にインク滴を媒体に着弾させること)をも意味する。
【0016】
(第1の実施形態)
図1を参照して、本発明の第1の実施形態に係る画像形成装置の一例を説明する。図1は、本発明の第1の実施形態を示す画像形成装置の外観斜視図である。
この画像形成装置は、シリアル型インクジェット記録装置であり、装置本体1と、装置本体1に装着したまま所定のシート補給位置(後述の図5の位置)まで引出し可能なシート収容手段の一例としての給紙カセット2と、給紙カセット2の蓋部材を兼ね、装置本体1に揺動可能に装着されて給紙カセット2の上方を開閉可能なシート積載手段の一例としての排紙トレイ3とを備えている。
【0017】
給紙カセット2には、装置本体1内に給送・給紙する用紙が載置・収容される。排紙トレイ3には、画像が記録(形成)された用紙が積載・ストックされる。さらに、装置本体1の前面の一端部側には、インクカートリッジを装填するためのカートリッジ装填部4を有する。このカートリッジ装填部4の上面は、操作ボタンや表示器などを設ける操作部5としている。
【0018】
図2および図3を参照して、図1の画像形成装置の機構部について説明する。図2は、同機構部の概要を示す模式的側面図、図3は、同じく要部の平面図である。
画像形成装置の主な機構部としては、図2および図3に示すように、キャリッジ33等を備えた画像形成部6、給紙カセット2および給送手段等を備えたシート給送部としての給紙部7、搬送ベルト51および各種搬送部材等を備えた搬送部8、排出手段としての排紙ローラ62および排紙トレイ3等を備えたシート排出部としての排紙部9がある。
【0019】
図3に示すように、装置本体1の左右には、側板37A、37Bが固着・配置されている。側板37A、37Bには、主従のガイドロッド31、32が横たわるように架け渡されている。これらガイドロッド31、32によりキャリッジ33を主走査方向に摺動(接触して摺り動くことを意味する)自在に保持し、キャリッジ33は、図示しない主走査モータによってキャリッジ33を固定したタイミングベルト(図示せず)を介して矢印方向(キャリッジ主走査方向)に移動走査される。
【0020】
キャリッジ33には、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の各色のインク滴を吐出するための液体吐出ヘッドからなる、画像形成手段としての記録ヘッド34a、34b(区別しないときは「記録ヘッド34」という)を搭載している。記録ヘッド34には、複数のノズルからなるノズル列が主走査方向と直交する副走査方向に配列されており、キャリッジ33は、ノズルからのインク滴吐出方向が下方になるように記録ヘッド34を装着している。
【0021】
記録ヘッド34は、それぞれ2つのノズル列を有し、記録ヘッド34aの一方のノズル列はブラック(K)の液滴を、他方のノズル列はシアン(C)の液滴を、記録ヘッド34bの一方のノズル列はマゼンタ(M)の液滴を、他方のノズル列はイエロー(Y)の液滴を、それぞれ吐出する。
【0022】
また、キャリッジ33には、記録ヘッド34のノズル列に対応して各色のインクを供給するためのサブタンク35a、35b(区別しないときは「サブタンク35」という)を搭載している。このサブタンク35には、カートリッジ装填部4に着脱自在に装着される各色のインクカートリッジ10y、10m、10c、10kから、供給ポンプユニット38によって各色の供給チューブ36を介して、各色のインクが補充供給される。
【0023】
一方、給紙カセット2は、用紙42を載置し、装置本体1側に設けられた給送手段の一例としての給紙ローラ43に用紙42を接触させる給送位置(図2に示す位置状態)と該給送位置から下降した下降位置との間で揺動可能な載置部材の一例としての底板41を有している。給紙カセット2の底板41上に積載した用紙42を給紙するための給送手段として、底板41上の用紙42を1枚ずつ分離給送する給紙ローラ43および給紙ローラ43に対向し、用紙42に対する摩擦係数の大きな材質からなる分離手段としての分離パッド(フリクションパッド)44を備えている。この分離パッド44は、図示しないばね等の付勢手段によって給紙ローラ43側に付勢(勢いが付されることを意味する)されている。
【0024】
そして、給紙カセット2から給紙された用紙42を記録ヘッド34の下方側に送り込むために、搬送部8が配置されている。搬送部8は、用紙42を案内するガイド部材45と、カウンタローラ46と、搬送ガイド部材47と、先端加圧コロ49を有する押さえ部材48とを備えるとともに、給送された用紙42を静電吸着して記録ヘッド34に対向する位置で搬送するための搬送手段である搬送ベルト51を備えている。
【0025】
この搬送ベルト51は、無端状ベルトであり、搬送ローラ52とテンションローラ53との間に掛け渡されて、ベルト搬送方向(副走査方向)に周回するように構成している。この搬送ベルト51の表面を帯電させるための帯電手段である帯電ローラ56を備えている。この帯電ローラ56は、搬送ベルト51の表層に接触し、搬送ベルト51の回動(正逆方向に円運動することを意味する)に従動して回転するように配置されている。搬送ベルト51は、図示しない副走査モータにより、タイミングベルト(図示せず)を介して搬送ローラ52が回転駆動されることによってベルト搬送方向に周回移動する。
【0026】
記録ヘッド34で記録された用紙42を排紙するための排紙部9として、搬送ベルト51から用紙42を分離するための分離爪61と、排紙ローラ62および排紙コロである拍車63と、排紙ローラ62の下方に配置された排紙トレイ3とを備えている。
【0027】
装置本体1の背面部には、両面ユニット71が着脱自在に装着されている。この両面ユニット71は、搬送ベルト51の逆方向回転で戻される用紙42を取り込んで反転させて再度カウンタローラ46と搬送ベルト51との間に給紙する。また、この両面ユニット71の上面は手差しトレイ72としている。
【0028】
さらに、キャリッジ33の走査方向一方側の非印字領域には、記録ヘッド34のノズルの状態を維持し、回復するための維持回復機構81を配置している。この維持回復機構81は、記録ヘッド34の各ノズル面をキャッピングするための各キャップ部材(以下、「キャップ」という)82a、82b(区別しないときは「キャップ82」という)と、ノズル面をワイピングするためのワイパ部材(ワイパブレード)83と、増粘した記録液を排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行うときの液滴を受ける空吐出受け84と、キャリッジ33をロックするキャリッジロック87などとを備えている。
【0029】
維持回復機構81の下方側には、維持回復動作のうちの空吐出受け84に対する空吐出およびワイパ部材83の清掃によって空吐出受け84から生じる廃液を収容するための交換されない第1廃液タンク85を、維持回復機構81の側方側には、カートリッジ装填部4の下側に装置本体の前面側から交換可能な第2廃液タンク86を、それぞれ備えている。インクカートリッジ10および第2廃液タンク86は、装置本体の前面の共通のカバーを開くことで、装置本体前面側から交換することができるため、低コスト化を図れる。
【0030】
また、キャリッジ33の走査方向他方側の非印字領域には、記録中などに増粘した記録液を排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行うときの液滴を受ける空吐出受け88を配置している。この空吐出受け88には、記録ヘッド34のノズル列方向に沿った開口部89などを備えている。
【0031】
上述したように構成したこの画像形成装置においては、給紙カセット2から用紙42が1枚ずつ分離給紙され、略鉛直上方に給紙された用紙42はガイド45で案内され、搬送ベルト51とカウンタローラ46との間に挟まれて搬送され、さらに先端を搬送ガイド47で案内されて先端加圧コロ49で搬送ベルト51に押し付けられ、略90°搬送方向を転換される。
【0032】
このとき、帯電ローラ56に対してプラス出力とマイナス出力とが交互に繰り返すように、つまり交番する電圧が印加され、搬送ベルト51が交番する帯電電圧パターン、すなわち、周回方向である副走査方向に、プラスとマイナスが所定の幅で帯状に交互に帯電されたものとなる。このプラス、マイナス交互に帯電した搬送ベルト51上に用紙42が給送されると、用紙42が搬送ベルト51に静電的に吸着され、搬送ベルト51の周回移動によって用紙42が副走査方向に搬送される。
【0033】
そこで、キャリッジ33を移動させながら画像信号に応じて記録ヘッド34を駆動することにより、停止している用紙42にインク滴を吐出して1行分を記録し、用紙42を所定量搬送後、次の行の記録を行う。記録終了信号または用紙42の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了して、用紙42を排紙トレイ3に排紙する。
【0034】
そして、記録ヘッド34のノズルの維持回復を行うときには、キャリッジ33をホーム位置である維持回復機構81に対向する位置に移動して、キャップ部材82によるキャッピングを行ってノズルからの吸引を行うノズル吸引、画像形成に寄与しない液滴を吐出する空吐出などの維持回復動作を行うことにより、安定した液滴吐出による画像形成を行うことができる。
【0035】
次に、この画像形成装置における給紙および排紙に関する構成について、先ず図4および図5を参照して説明する。図4は、給紙カセットを底板が下降位置になる状態まで引き出したときの外観斜視図、図5は、給紙カセットをシート補給位置まで引き出した状態の外観斜視図である。なお、図4および図5では、図の簡明化のため、後述する図6および図7に示す底板やリンク部材等の図示を省略している。
この画像形成装置では、図4に示すように、装置本体1の前面から給紙カセット2を所定量L1引き出したときに底板41が下降位置になり、底板41が下降位置になることで排紙トレイ3を開くことができる状態になる(図7参照)。また、図4に示すように、排紙トレイ3が閉まった状態(下降した状態)であるときに、給紙カセット2を装置本体1内に押し込む(以下、「挿入する」ともいう)ことができる。
【0036】
そして、給紙カセット2に用紙の補給を行うときには、図5に示すように、給紙カセット2を装置本体1から完全に引き出した(取り外したという意味ではない)状態にし、排紙トレイ3を持ち上げて(開いて)給紙カセット2の上方を開放する。なお、図5において、207は底板41上に載置された用紙の幅方向を揃え・整合するサイドフェンスを示す。
【0037】
その後、排紙トレイ3を閉じて、給紙カセット2を装置本体1内に押し込み・装着(セット)する。ただし、図5に示すように、排紙トレイ3が開いた状態では、給紙カセット2は装置本体1内に押し込み・装着(セット)することができない。つまり、給紙カセット2を装置本体1内にセットする場合には排紙トレイ3を閉じる必要がある。
【0038】
上述したように、図1〜図5に示す画像形成装置は、用紙の装填が容易で、かつ、画像形成装置の両側に大きなスペースを必要としないという利点を有するため、給紙カセット2を画像形成装置の装置本体1から手前側に引き出して用紙を装填し、給紙カセット2を手前側から奥側に押し込んで所定の位置に装着して用紙を給紙する前側給紙方式(フロントローディング)の画像形成装置である。
【0039】
次に、図6および図7を参照して、給紙トレイの底板の状態(位置)によって排紙トレイの開閉を規制する開放規制機構(開放規制手段)について説明する。図6は、給紙カセットを装置本体にセットした状態の簡略的な側面図、図7は、給紙カセットを装置本体から所定量引き出した状態の簡略的な側面図である。
なお、図4を含め上記各図に適宜示すXaは、給紙カセットの装置本体への挿入方向を、Xbは、給紙カセットの装置本体からの引出し方向を、Yは、挿入方向Xaおよび引出し方向Xb(シート排出方向)と直交する幅方向(シート幅方向、主走査方向でもある)を、Zは、上下(鉛直)方向を、それぞれ表している。
【0040】
図6に示すように、給紙カセット2の底板41の先端部(同図の右端部を指し、自由端部でもある)は、給紙カセット2内の両側部に取り付けられた支軸202を中心として揺動可能に支持・装着されている。また、底板41の先端部は、スプリング204(引張りばね)を介して、カセット本体201(図5、図6参照)に取り付けられた支軸205を中心として揺動可能に取り付けられたリンク部材203の一端部(後端部)203aに支持・取り付けられている。
【0041】
図6に示すように、給紙カセット2を装置本体1内にセットした状態では、リンク部材203の他端部(先端部)203bが装置本体1内に設けられた当接部(壁面)11に当接(突き当てた状態に接することを意味する)して、矢印B方向に揺動され、これによりリンク部材203の一端部203a側が上昇し、スプリング204の付勢力によって給紙ローラ43に接するまで底板41の先端部側を上昇させる状態になる。ただし、図6に示す状態では用紙が載置されていない状態である。
【0042】
一方、図7に示すように、給紙カセット2を装置本体1から所定量L1以上引引出し方向Xbに引き出した状態では、リンク部材203の先端部203bが装置本体1の当接部(壁面)11から離間して、スプリング204の付勢力および図示しない用紙を含む底板41の自重によって矢印C方向に揺動され、リンク部材203の一端部203a側が下降して底板41は下降位置(下降状態)になる。
【0043】
給紙カセット2のカセット本体201の先端部側底面には、底板41が下降位置に達したときに当接する突起部206が設けられている。底板41が下降すると突起部206に当接して衝撃音が発せられ、これによってユーザは給紙カセット2の底板41が下りたことを認識することができる。
【0044】
排紙トレイ3は、給紙カセット2の上方開口を覆う蓋部材(カバー)を兼ねており、装置本体1に取り付けられた支軸301を中心として揺動可能に支持され、給紙カセット2の上方を開閉することが可能に構成されている。
【0045】
給紙カセット2は、装置本体1の下部に固着されたベース部100上を、自重(用紙載置状態では用紙の重量を含む荷重である)により、挿入方向Xaおよび引出し方向Xbの双方向に摺動することができる。上下方向Zの給紙カセット2の位置決めは、図7に示されている給紙カセット2の左端部を手で持ち上げれば傾斜して持ち上がる程度であり、本実施形態においては一般的な安価な位置決め構造となっている。
【0046】
給紙カセット2と排紙トレイ3には、排紙トレイ3をロックする排紙トレイロック機構13を設けている。排紙トレイロック機構13は、排紙トレイ3側に設けられた被ロック部材の一例としてのトレイロック部311と、給紙カセット2側に設けられ、トレイロック部311に係合(接触することを含み係わり合うことを意味する上位概念用語である)して嵌合するロック部材の一例としてのカセットフック部211とで構成される(図9および図10も参照)。排紙トレイロック機構13は、給紙カセット2の幅方向Yの両側に設けられる。
なお、トレイロック部311は、排紙トレイ3本体に一体的に形成された被ロック部でもよいし、排紙トレイ3本体とは別体で形成された被ロック部材が取り付け・固定されたものでもよい。これは、カセットフック部211も含め、後述の実施形態や変形例でも同様である。
【0047】
排紙トレイロック機構13は、上記した特許文献1の排紙トレイロック機構(13)と比較して、本実施形態では給紙カセット2における幅方向Yの内側に配置されている点および多少の形状の違いがあるものの、機能上は基本的に同じものである。すなわち、図7に示すように、トレイロック部311は略水平方向に延びていて、略水平方向で係合・嵌合する位置・形状を備えている。ここで、「略水平方向」とは、水平方向を含み、水平方向に関して設計公差内にあることを意味する。
【0048】
これらのトレイロック部311とカセットフック部211との給紙カセット2の出し入れ方向における関係は、給紙カセット2が装置本体1内にセットされた状態から所定量L1未満引き出されるまで状態の間では、図6に示すように、カセットフック部211がトレイロック部311に係合・嵌合し、給紙カセット2が装置本体1内から所定量L1以上引き出された状態では、図7に示すように、カセットフック部211がトレイロック部311から外れる位置関係としている。
【0049】
したがって、図7に示すように、給紙カセット2の底板41が下降位置にあるときに排紙トレイ3が開放可能となり、底板41が下降位置より上昇した給送位置にあるときには排紙トレイ3の開放が規制される、つまり、給紙カセット2が装置本体1から多少引き出された場合であっても、底板41が下降状態になるまで排紙トレイ3を開く(開放する)ことができない構成となっている。
【0050】
つまり、上記した特許文献1の図12に示されているように、給紙カセット(2)を覆う排紙トレイ(3)を給紙カセット(2)が所定位置まで引き出されないまま開けるようにした場合、ユーザによっては、給紙カセット(2)を少し引き出して排紙トレイ(3)との間に生じた隙間から用紙(42)を差し込んで補給することがあり、このような補給が行われると、底板(41)が下がっていないため、用紙(42)の先端部が給紙ローラ(43)と分離パッド(44)とのニップ部(N)を越えて差し込まれ、その結果用紙の重送が生じ易くなる。
【0051】
これに対し、この画像形成装置では、上記した特許文献1と同様機能の排紙トレイロック機構13を設けていることにより、給紙カセット2の底板41が下降する所定位置まで引き出されない限り、排紙トレイ3を開くことができないので、給紙カセット2が装置本体1内にセットされたままの状態で排紙トレイ3が開かれて(給紙カセット2と排紙トレイ3との間が開かれて)用紙42が補給され、用紙42の先端部が給紙ローラ43と分離パッド44とのニップ部N(図2参照)まで差し込まれ、用紙の重送が生じることが防止される。
【0052】
このように、給紙カセットの底板が下降位置にあるときに排紙トレイを開放可能とし、底板が下降位置より上昇した給送位置にあるときに排紙トレイの開放を規制する開放規制手段を備えて、装置本体に給紙カセットが装着された状態で排紙トレイを開放して給紙するときに底板が下降状態になるまで排紙トレイを開放することができない構成であるので、底板が上昇して給送位置を占めている状態で排紙トレイが開けられて用紙が給送手段のニップ部まで差し込まれることが防止され、給紙の信頼性が向上する。
【0053】
次に、排紙トレイ3が開いた状態での給紙カセット2の装置本体1内への挿入・セットを規制するストッパ機構(ストッパ手段)について図8〜図10をも参照して説明する。
図8(a)、図8(b)は従来例のストッパ機構を示す模式的(片側)断面図、図8(c)、図8(d)は本実施形態のストッパ機構を図6のA−Aの模式的(片側)断面図、図9(a)、図9(b)、図9(c)は、本実施形態における給紙カセットを装置本体に挿入・セットする際の給紙カセットおよび排紙トレイのストッパ機構、排紙トレイロック機構の動作推移状態を説明するための一部を破断して示す模式的断面図、図10は、本実施形態における給紙カセットを装置本体から引き出した際の給紙カセットおよび排紙トレイのストッパ機構、排紙トレイロック機構を説明するための一部を破断して示す要部の斜視図である。
なお、図8および図9においては、従来例と本実施形態例との相違点を明確にするため、構成を原理的かつ模式的に示し、排紙トレイ3等の構成要素の多少の形状の差異があっても同一の機能を有するものについては同一符号を付している。
【0054】
(従来例のストッパ機構)
まず、図8(a)、図8(b)を参照して、従来例のストッパ機構230を説明する。従来例のストッパ機構230は、例えば、上記した特許文献1の図6、図7、図9〜図11に示されているストッパ機構(230)と原理的に同様であり、これを模式的に表している。
【0055】
ストッパ機構230は、給紙カセット2に上下動可能に装着された被ストッパ部材231を有している。被ストッパ部材231は、本体231aの上方に配置されている排紙トレイ3で押される傾斜部232と、本体231aに一体形成され給紙カセット2の挿入を規制する突起部233とを有する。加えて、被ストッパ部材231は、本体231aの中空部内に設けられたスプリング(図示せず)で上方に付勢され、下端部に設けられた係止部(図示せず)が図示しない係合部に係合することで上方への突出量が規制される構成である。「係止」とは、係わり合って止めることを意味する。
この被ストッパ部材231の突起部233は、被ストッパ部材231が上昇した位置にあるときに、装置本体1側に固設(固定した状態に設置されることを意味する)されているストッパ部材241に突き当たる。なお、ストッパ機構230は、給紙カセット2の幅方向Yの両側に設けられる。
【0056】
従来例のストッパ機構230では、上記構成により、図8(a)に示すように、排紙トレイ3が上昇して開放状態にあるとき、給紙カセット2の被ストッパ部材231が上記スプリングの付勢力によって上昇して、給紙カセット2に取り付けられている被ストッパ部材231の突起部233が装置本体1側に固定されたストッパ部材241へ突き当たり、給紙カセット2を装置本体1へ装着することができなくなる。
【0057】
そこで、図8(b)に示すように、排紙トレイ3が閉じられると、排紙トレイ3の底壁面3aが給紙カセット2側の被ストッパ部材231の傾斜部232を押し下げ、排紙トレイ3の荷重(用紙積載状態では用紙の重量を含む自重を意味する)によって被ストッパ部材231が上記スプリングの付勢力に抗して下方向に移動し、突起部233が装置本体1側のストッパ部材241から離れるので、給紙カセット2を装置本体1に押し込み・挿入することができる。
このように、従来例によれば、排紙トレイが開放位置にあるときに給紙カセットの装置本体内への挿入を規制するストッパ手段を備えていることで、排紙トレイを閉じないままで給紙カセットが装置本体内に挿入される誤操作を防止できるという効果を奏するものであった。
【0058】
上述したとおり、従来例のストッパ機構230では、被ストッパ部材である突起部233形状が、給紙カセット2の幅方向Yにおける給紙カセット2の内側から外側に向かって突出した構成となっている。相対する装置本体側のストッパ部241も給紙カセット2側に向かって突出した凸形状となっている。このように双方を凸形状としない場合には、給紙カセット2の着脱軌跡に各々の形状に凹形状を設ける必要があるため、干渉させる部位を積極的に凸にする必要があるからである。そのため、突起部233形状の剛性も加味すると、給紙カセット2の幅方向Yにおける左右にそれぞれ5〜10mmの空間を確保する必要がある。つまり、画像形成装置としては、幅が10mm〜20mm拡大することになる。これにより、給紙カセット2と装置本体側構造体との隙間ΔTは、5〜10mmの空間が必要となる。
【0059】
ここで、図1〜図5に示した本実施形態例のような構成を採用する画像形成装置は、使用者の近傍に設置する小型機に多い。つまり、数mmレベルでの装置サイズが設置可否につながることが多く、前述の理由によるサイズアップは避けたい構成である。
【0060】
しかしながら、用紙の継ぎ足しを防止することは装置の安定稼動に欠かせない機能であることから、本発明では装置のサイズアップ無しに上記機能を実現する構成を提案する。
その実現手段として、従来技術例で設けていた突起部233の機能を被ストッパ部材231の別の部位に移動することを考えた。この着想により創作した本発明の以下の実施形態では、給紙カセット2と装置本体側構造体との隙間ΔT’=0.5〜1mm<ΔT=5〜10mmへと最小化することが可能となった。
【0061】
図8(c)、図8(d)、図9、図10を参照して、本実施形態のストッパ機構230Aについて、図8(a)、図8(b)に示した従来例のストッパ機構230と対比しながら詳細に説明する。
本発明のストッパ手段の一例としてのストッパ機構230Aは、図8(a)、図8(b)のストッパ機構230と比較して、図8(c)、図8(d)、図9、図10に示すように、被ストッパ部材231に代えて、給紙カセット2における幅方向Yの内側に設けられ、ガイド面238と当接面239とを隣接して備えた被ストッパ部材231Aを用いる点、ストッパ部材241に代えて、装置本体1側に設けられ、給紙カセット2における幅方向Yの内側で被ストッパ部材231Aと係合可能なストッパ部材としてのストッパ部241Aを用いる点が主に相違する。
【0062】
ストッパ機構230Aは、給紙カセット2に上下動可能に装着され、排紙トレイ3の開放時に給紙カセット2から排紙トレイ3に向かって上昇可能な被ストッパ部材231Aを有している。被ストッパ部材231Aは、本体231Aaの上方に配置されている排紙トレイ3の底壁面3aで押される傾斜部232と、被ストッパ部材231Aが上昇状態にあるときにストッパ部241Aと突き当たる被ストッパ面の一例としての当接面239と、この当接面239と挿入方向Xaに沿って隣接して設けられ、ストッパ部241Aとの係合によって被ストッパ部材231Aを上下動させる上下動切り替え面の一例としてのガイド面238と、スプリング234装着用の中空部とを有する。
ガイド面238は、給紙カセット2の挿入方向Xaにおける上流側から下流側に向けて斜め下方に傾斜した傾斜面となっている。
【0063】
被ストッパ部材231Aは、本実施形態では傾斜部232、当接面239、ガイド面238および上記中空部が、適宜の樹脂で一体的に形成されている。被ストッパ部材231Aは、給紙カセット2側に固設されたスプリング支持部材237にスプリング234(圧縮ばね)を介して支持されている。これにより、被ストッパ部材231Aは本体231Aaの中空部内に装着されたスプリング234によって上方に付勢され、下端部に設けられた係止部235が給紙カセット2側に固設された係合部236に係合することで上方への突出量が規制される構成である。ストッパ機構230Aは、給紙カセット2の幅方向Yの両側に設けられる。
排紙トレイ3における幅方向Yの両外側壁下部には、装置本体1側に固定されているストッパ部241Aを逃げるための逃げ凹部302が形成されている。逃げ凹部302は、排紙トレイ3における幅方向Yの内側に凹んで形成されている。
【0064】
本実施形態のストッパ機構230Aでは、上記構成により、図9(a)に示すように、排紙トレイ3が上昇して開放状態にあるとき、給紙カセット2の被ストッパ部材231Aがスプリング234の付勢力によって上昇して、当接面239が装置本体1側のストッパ部241A(の鉛直面)へ突き当たり干渉し、給紙カセット2を挿入方向Xaに挿入して装置本体1へ装着することができなくなる。
【0065】
一方、図9(b)に示すように、排紙トレイ3が閉じられると、排紙トレイ3の底壁面3aが給紙カセット2側の被ストッパ部材231Aの傾斜部232を押し下げ、排紙トレイ3の荷重(使用者の操作力も含まれる)によって被ストッパ部材231Aがスプリング234の付勢力に抗して下方向に移動する。この状態で、給紙カセット2を挿入方向Xaに押し込み移動させると、被ストッパ部材231Aと装置本体1側のストッパ部241Aとの係合が、当接面239からガイド面238へと切り替わり、ストッパ部241A(の下側角部)とガイド面238とが接触することとなる。
【0066】
この際、給紙カセット2の挿入方向Xaへの挿入(押し込み)力が、ストッパ部241Aと接触・係合しているガイド面238の斜面によって、被ストッパ部材231Aをスプリング234の付勢力に抗してさらに下方向に移動させる分力に分解され、被ストッパ部材231Aが下降する。これにより、ストッパ部241Aによる干渉を回避して、給紙カセット2を装置本体1に押し込み・挿入することができる(図9(c)参照)。
【0067】
同時に、図9(b)から図9(c)に示すように、カセットフック部211がトレイロック部311に係合することで、排紙トレイ3を閉じた状態で給紙カセット2側にロック保持することができる。
なお、装置本体1内から給紙カセット2を引出し方向Xbに引き出す際のストッパ機構230Aの動作は、上述した動作説明の逆の動作、すなわち図9(c)→図9(b)→図9(a)となることにより、当業者であれば容易に理解して実施できるのでこれ以上の詳しい説明を省略する(後述の実施例の動作でも同様である)。
【0068】
上述した構成および動作のとおり、本実施形態によれば、従来技術例のストッパ機構230のように被ストッパ部材231の突起部233を給紙カセット2の幅方向Yにおける内側から外側に突出させる構成でない、上記特有の構成を備えたストッパ機構230Aを採用しているので、ストッパ手段としてのストッパ機構に必要となるスペース、特には装置本体1の幅方向Yのスペースを最小化し、従来機能を満足しつつ画像形成装置の小型化を達成することができるという効果を奏する。
【0069】
第1の実施形態では、給紙カセット2の幅方向Yにおける両側にストッパ手段としてのストッパ機構230Aを配置したが、これに限らず、給紙カセット2の幅方向Yにおける片側のみに配置してもよい(請求項2)。このように構成した場合、画像形成装置のさらなる小型化を達成することができ、かつ、部品点数が減ると共に、これに伴いコストも低減するという効果を奏する。
【0070】
なお、排紙トレイ3とストッパ機構230Aとの配置・形状は、これに限らず、後述する第2の実施形態の図19(b)に示すと同様に、排紙トレイ3の閉鎖時に、排紙トレイ3の底壁面3aが被ストッパ部材231Aの傾斜部232と接触するようにしてもよい。
【0071】
(変形例1)
上述した第1の実施形態の画像形成装置では、図8(a)および図8(b)に示した従来技術例よりもマシンサイズを低減することが可能であるが、図10等に示したように、排紙トレイ3のトレイロック部311と給紙カセット2のカセットフック部211との嵌合幅を確保する必要があるので、これがサイズ低減の制約となってくる。そこで、排紙トレイ3のロック部形状を省スペース化できる構成に係る変形例1について説明する(請求項3)。
【0072】
排紙トレイ3のトレイロック部311の嵌合幅を大きくとる必要があるのは、排紙トレイ3、給紙カセット2の双方が装置本体に対して固定されておらず、また厳密な位置決め構成を有していないためにガタを考慮する必要があることと、ハズレ防止形状を設けると給紙カセット2のセット性が劣るためである(給紙カセット2の装置本体への挿入時に干渉して入りにくくなる)。
そこで、本変形例1においては、装置本体側のストッパ部に、給紙カセット2の引出し・挿入(「挿脱」ないし「着脱」)に応じて可動・開閉するロック爪を設ける構成を提案する。
【0073】
図11〜図13を参照して、第1の実施形態の変形例1について説明する。図11(a)、図11(b)は、同変形例のロック部を示す模式的(片側)断面図、図12(a)、図12(c)は、同ロック部のロック爪の構成を示す斜視図、図12(b)は図12(a)に対応して、図12(d)は図12(c)に対応して、同ロック部のロック爪の構成を示す要部の断面図、図13は、同変形例における排紙トレイのトレイロック部を示す要部の斜視図である。
【0074】
変形例1は、第1の実施形態と比較して、給紙カセット2に設けられたカセットフック部211(図10等参照)を除去した点、装置本体1側に設けられたストッパ部241Aに代えて、ストッパ部241Bを用いた排紙トレイロック機構である点が主に相違する。これら相違点以外の変形例1の構成は、第1の実施形態の画像形成装置と同様である。
ストッパ部241Bには、排紙トレイ3をロックするための、被ストッパ部材231Aとの係合により可動・開閉可能なロック部材の一例としてのロック爪2412が装置本体1側のストッパ形成部2411に設けられている。
【0075】
ロック爪2412は、図12に示すように、略90°に複数回折り曲げられた形状をなし、基端部(図において下端部)に円柱状部2412aを一体的に備えている。ロック爪2412は、円柱状部2412aを支点として、揺動可能にストッパ形成部2411の軸受部2411aに支持されている。
ストッパ形成部2411には、ロック爪2412が図において時計回りに揺動したとき、ロック爪2412を受け入れる開口溝2411bが形成されている。
【0076】
ロック爪2412は、図11(a)、図12(c)、図12(d)に示すように、給紙カセット2側の被ストッパ部材231Aと係合していない状態であると、自重で開いた位置にある。このとき、被ストッパ部材231Aと当接する面に一部形状が突出する形状としている。
【0077】
変形例1の動作を説明する。図11(b)、図12(a)、図12(b)に示すように、排紙トレイ3が押し下げ・閉じられた状態で給紙カセット2を装置本体1内へ挿入すると、被ストッパ部材231Aがストッパ形成部2411との干渉を回避して下方向へ移動される。この際、被ストッパ部材231Aがロック爪2412の自重に抗して、ロック爪2412の下部2412bを押し上げることで、ロック爪2412が排紙トレイ3のトレイロック部311と嵌合し、排紙トレイ3が給紙カセット2に対して閉じられた状態でロックされることとなる(図13参照)。
【0078】
上述した構成および動作のとおり、本変形例1によれば、第1の実施形態と同様の効果を奏することに加え、上記した排紙トレイロック機構を用いることにより、第1の実施形態でマシンサイズ低減の制約となっていた排紙トレイ3のトレイロック部311と給紙カセット2のカセットフック部211との嵌合幅を確保する必要がないので、排紙トレイ3のロック部形状を省スペース化できるという効果を奏する。
【0079】
(変形例2)
図14を参照して、変形例1の変形例2について説明する。図14は、変形例2における給紙カセットの被ストッパ部材を示す要部の斜視図である。
【0080】
変形例2は、変形例1と比較して、給紙カセット2に上下動可能に装着された被ストッパ部材231Aに代えて、金属で構成された被ストッパ部材231Bを用いたストッパ機構230Bである点が主に相違する。この相違点以外の変形例2の構成は、変形例1と同様である。
被ストッパ部材231Bは、材料が金属であることが好ましく、例えば薄板の鋼板で図示形状に成形されている。
【0081】
被ストッパ部材231Bの図において右側の基端部は、支軸250を介して、給紙カセット2の外側壁に揺動可能に支持されている。これにより、被ストッパ部材231Bの自由端部(図において左側上部を指す)は、上下方向Zに揺動・変位可能、すなわち上下動可能になっている。被ストッパ部材231Bの自由端部には、当接面239とガイド面238と傾斜部232とが隣接した状態で給紙カセット2の幅方向Yの内側で装置本体1側のストッパ部241Bと係合するように形成されている。被ストッパ部材231Bの自由端部は、支軸250に装着された図示しない捩りコイルスプリングにより、上方に付勢されている。
【0082】
なお、図14では被ストッパ部材231Bが金属製の薄板部材である点から、被ストッパ部材231Bとストッパ部241Bの各係合部間の隙間を最小に確保できることを説明するために、被ストッパ部材231Bが給紙カセット2の外側壁に支持されていることで上下動可能な構成としたが、給紙カセット2の幅方向Yの内側に上下動可能に配置することが好ましい。
【0083】
上記構成により、被ストッパ部材231Bは、第1の実施形態や変形例1で用いた被ストッパ部材231Aと同様の機能を発揮することができる。
上述した構成のとおり、本変形例2によれば、給紙カセット2側に設ける被ストッパ部材231B用のスペースを最小化することができる。変形例1の排紙トレイロック機構と併用することで、従来技術と同じ効果を得つつマシンサイズを最小化することが可能となる。
【0084】
(第2の実施形態)
図1〜図5に示した第1の実施形態の画像形成装置を始めとして、前側給紙方式(フロントローディング)の画像形成装置では、マシンサイズを小型化するために、用紙を画像形成装置の装置本体後方に搬送して用紙を反転させ、記録ヘッドにて用紙に画像印字後に、給紙カセットの上に配置され給紙カセットの上方を開閉可能な排紙トレイに用紙を排紙する構成が一般的に採用されている。また、上記背景技術で説明したように特許文献1等の技術も既に知られている。
【0085】
しかしながら、特許文献1等を含む従来装置では、給紙カセットを装置本体へ装着・セットさせる際に略水平に挿入しないと排紙トレイと接触し、スムーズに給紙カセットを装着できないという問題があった。
【0086】
具体的に説明すると、従来装置を始めとして第1の実施形態でも採用している構成、すなわち、給紙カセットを装置本体から手前側に引き出して用紙を補給・装填する構成の場合、給紙カセットを引き出さないと排紙トレイが開放できないように、給紙カセット側に排紙トレイの開放を規制するロック部等の開閉規制手段を追加し、排紙トレイの可動範囲を規制しなければならない。
【0087】
さらに具体的に説明すると、第1の実施形態の図9および図10等に示したとおり、給紙カセット2と排紙トレイ3には、開放規制手段としての機能を有する、排紙トレイ3をロックする排紙トレイロック機構13を設けている。排紙トレイロック機構13は、排紙トレイ3側に設けられたトレイロック部311と、給紙カセット2側に設けられ、トレイロック部311に係合して嵌合するカセットフック部211とで構成される。また、図7に示したように、トレイロック部311は略水平方向に延びていて、略水平方向で係合・嵌合する位置・形状を備えている。
【0088】
これらのトレイロック部311とカセットフック部211との給紙カセット2の出し入れ方向における関係は、給紙カセット2が装置本体1内にセットされた状態から所定量L1未満引き出されるまで状態の間では、図6に示したように、カセットフック部211がトレイロック部311に係合・嵌合し、給紙カセット2が装置本体1内から所定量L1以上引き出された状態では、図7に示したように、カセットフック部211がトレイロック部311から外れる位置関係となっている。
【0089】
上記したような給紙カセット2と排紙トレイ3を嵌合・ロックする排紙トレイロック機構13を設けると、給紙カセット2を装着する際に略水平のまま挿入しないと、カセットフック部211と排紙トレイ3前面とが接触し、スムーズに装着できない。ロック部および被ロック部同士の接触部に傾斜を設けてもある程度改善されるが、根本的な解決にはならない。これを解決するために給紙カセット2のロック部と排紙トレイ前面のクリアランスを大きく設けると、画像形成装置のサイズが大きくなってしまう懸念がある。
【0090】
図15〜図17を参照して、第2の実施形態における、給紙カセット装着時に排紙トレイと給紙カセットとを共に一度持ち上げて、給紙カセットと排紙トレイを嵌合・結合させてから装着する構成・動作を説明する(請求項5〜7)。
図15(a)、図15(b)は、本発明の第2の実施形態における広角挿入手段の構成および給紙カセットの挿入動作を説明する一部断面側面図、図16(c)、図16(d)は、図15の続きの給紙カセットの装着・セット時の動作を説明する一部断面側面図、図17(a)、図17(b)は、広角挿入手段を利用して給紙カセットおよび排紙トレイを一緒に持ち上げて給紙カセットの装着・セット時の動作を説明する一部断面側面図である。
【0091】
第2の実施形態は、第1の実施形態と比較して、図15〜図17に示すように、排紙トレイロック機構13に代えて、開放規制手段の一例としての排紙トレイロック機構103を用いる点、給紙カセット2の装置本体1内への挿入時に、排紙トレイロック機構103によって給紙カセット2と排紙トレイ3とが上下方向Zで実質一体となる結合体として構成され、前記結合体における挿入方向Xaの上流側(図において左端部)を持ち上げた状態で装置本体1内への挿入を可能とする広角挿入手段を用いる点、位置決め用の凹部の一例としての凹部114aを備えた受け側レール部114が装置本体1の下部に新たに設けられる点、受け側レール部114と係合する被位置決め用の第2の凸部の一例としての基準部252が給紙カセット2の下部に新たに設けられる点が主に相違する。これら相違点以外の第2の実施形態の構成は、第1の実施形態の画像形成装置と同様である。
【0092】
排紙トレイロック機構103は、排紙トレイ3側に設けられた被ロック部材の一例としてのロック受容部111と、給紙カセット2側に設けられ、ロック受容部111に係合して嵌合するロック部材の一例としてのロック部110とで構成される。ロック部110は、給紙カセット2挿入方向Xaの下流から上流に向けて上方から下方に傾斜した面形状をもって形成されている。
排紙トレイロック機構103は、給紙カセット2の幅方向Yの両側に設けられている。
【0093】
給紙カセット2は、装置本体1の下部に設けられたベース部100に対して摺動可能な底壁部201aを有している。底壁部201aの中央部には、挿入方向Xaに沿って下向きに開口した広い底壁凹部201bが形成されている。
前記広角挿入手段は、ベース部100に設けられ、給紙カセット2の装置本体1内への挿入方向Xaの上流から下流に沿って下方から上方に向けて傾斜した案内傾斜面および段差形状107aを備えた案内傾斜部の一例としてのベース板107と、給紙カセット2の底壁部201aに設けられ、ベース板107と係合する第1の凸部の一例としての下向きに突出した凸状(正確には角のない等脚台形状)をなす凸部251とを具備する。
【0094】
ベース部100には上向きに開口した凹部114aを備えた受け側レール部114が、給紙カセット2の底壁凹部201bには、受け側レール部114と係合する下向きに突出した凸状(正確には角のない等脚台形状)をなす基準部252が、それぞれ設けられている。
【0095】
次に、動作を説明する。図15(a)〜図16(c)に示すように、給紙カセット2を挿入方向Xaに沿って装置本体1内へ挿入する際、給紙カセット2の凸部251が装置本体1のベース100に設けられたベース板107の案内傾斜面をなだらかに乗り越えていくことによって、給紙カセット2の前面側(図において左端部)が持ち上がる(図15(b)の太矢印Xc参照)。このとき、上記のように傾斜面を設けたロック部110と排紙トレイ3の前面下部3bとが接触し、図16(c)に示すように給紙カセット2の前面下部が持ち上げられることによって、排紙トレイ3の前面側(図において左端部)もスムーズに連動して上がる。そして、図16(d)に示すように、凸部251がベース板107の段差形状107aを乗り越え終えたときには、ロック部110と排紙トレイ3のロック受容部111は係合・嵌合しており、これにより、排紙トレイ3は給紙カセット2の上方を閉じた状態で給紙カセット2と実質一体的に上下方向Zに結合され、さらに結合された排紙トレイ3と共に給紙カセット2を挿入方向Xaに押し込むことにより、装置本体1内に装着・セットされる。
【0096】
また、図17(a)に示すように、給紙カセット2を装置本体1に装着・セットした際に位置を決める基準部252が受け側レール部114の図において左端部と接触する前に、太矢印Xd方向に給紙カセット2の前面側を持ち上げることによって、基準部252と受け側レール部114の図において左端部が衝突することが回避できるので、スムーズに給紙カセット2を装着・セットでき、かつ、繰り返し給紙カセット2を挿入・装着する操作を行っても位置決め基準部252を磨耗させることなく挿入・装着できる。
【0097】
上記した配置構成であれば、図17(a)、図17(b)に示すように、給紙カセット2を略水平のまま装着せずに挿入・装着途中に傾けても、給紙カセット2の傾きに連動して排紙トレイ3の前面側が開口しながらロック部110とロック受容部111とが係合するので、給紙カセット2を装置本体1にスムーズに装着でき、かつ、コンパクトな構成で排紙トレイ3を開放させないことができる。
【0098】
上述した構成および動作のとおり、本実施形態によれば、第1に、給紙カセット2の装着時に排紙トレイ3と共に一度持ち上げて、給紙カセット2と排紙トレイ3を係合・結合させてからその結合体を装置本体1内へ挿入可能とする広角挿入手段を有しているので、広い範囲の角度で給紙カセット2がスムーズに装着できて、コンパクトな構成で用紙継ぎ足しを防止できるという効果を奏する。
【0099】
第2に、ベース部100には上向きに凹部114aを備えた受け側レール部114が、給紙カセット2の底壁部201aには、受け側レール部114と係合する下向きに突出した凸状をなす基準部252が、それぞれ設けられていることにより、基準部252が受け側レール部114の図において左端部と接触する前に、太矢印Xd方向に給紙カセット2の前面側を持ち上げることによって、基準部252と受け側レール部114の図において左端部とが衝突することを回避して、スムーズに給紙カセット2を装着・セットできるとともに、位置決め用の基準部252を磨耗させることなく繰り返し給紙カセット2を装着できることにより、給紙カセット2の耐久寿命が延びる。
【0100】
(実施例)
図18〜図20を参照して、第2の実施形態の画像形成装置に搭載されている実施例に係るストッパ機構230Cについて説明する。
図18(a)は、本発明の実施例を示すストッパ機構の外観斜視図、図18(b)は、同ストッパ機構の縦断面図、図19(a)は、図18の実施例における排紙トレイ開放時のストッパ機構の動作を示す側面図、図19(b)は、同実施例における排紙トレイ閉鎖時のストッパ機構の動作を示す側面図、図20(a)は、図18の実施例における給紙カセット装着セット時のストッパ機構の動作を示す側面図、図20(b)は、同ストッパ機構のD−D拡大平断面図である。
【0101】
本実施例のストッパ手段としてのストッパ機構230Cは、図8(c)、図8(d)、図9、図10に示した第1の実施形態のストッパ機構230Aを実際に実施する程に実用的に構成したものであり、ストッパ機構230Aと実質的に同じ機能・効果を発揮するものである。
【0102】
ストッパ機構230Cは、図8(c)、図8(d)、図9、図10に示した第1の実施形態のストッパ機構230Aと比較して、図18〜図20に示すように、被ストッパ部材231Aに代えて、被ストッパ部材231Cを用いる点、ストッパ部241Aに代えて、被ストッパ部材231Cと係合可能なストッパ部材241Cを用いる点が主に相違する。これら相違点以外の本実施例の構成は、第1の実施形態の画像形成装置と同様である。
【0103】
ストッパ機構230Cは、図18に示すように、給紙カセット2に上下動可能に装着され、排紙トレイ3の開放時に給紙カセット2から排紙トレイ3に向かって上昇可能な被ストッパ部材231Cを有している。被ストッパ部材231Cは、本体231Caの上方に配置されている排紙トレイ3の底壁面3aで押される傾斜部232と、被ストッパ部材231Cが上昇状態にあるときにストッパ部材241Cと突き当たる被ストッパ面の一例としての当接面239と、この当接面239と挿入方向Xaに沿って隣接して設けられ、ストッパ部材241Cとの係合によって被ストッパ部材231Cを上下動させる上下動切り替え面の一例としてのガイド面238と、スプリング234装着用の中空部とを有する。
ガイド面238は、給紙カセット2の挿入方向Xaにおける上流側から下流側に向けて斜め下方に傾斜した傾斜面となっている。
【0104】
被ストッパ部材231Cは、本実施例では傾斜部232、当接面239、ガイド面238および上記中空部が、適宜の樹脂で一体的に形成されている。被ストッパ部材231Cは、給紙カセット2側に固設されたスプリング支持部材237にスプリング234を介して支持されている。これにより、被ストッパ部材231Cは本体231Aaの中空部内に装着されたスプリング234によって上方に付勢され、下端部に一体に設けられた係止部235が給紙カセット2側に固設された係合部236に係合することで上方への突出量が規制される構成である。ストッパ機構230Cは、給紙カセット2の幅方向Yの両側に設けられている。
【0105】
図20(a)、図20(b)に示すように、給紙カセット2の装置本体1への装着(セット)完了時の状態では、給紙カセット2の幅方向Yの内側に、被ストッパ部材231Cが上下動可能に装着されていることが分かる。図20(a)に示すように、被ストッパ部材231Cの傾斜部232が排紙トレイ3の底壁面3aによって押し付けられることにより、ストッパ部材241Cと接触・干渉しない位置まで下降する状態になる。つまり、本実施例では上記状態になるように、排紙トレイ3の底壁面3a、被ストッパ部材231C、ストッパ部材241Cが配置されている。
また、図20(b)に示すように、排紙トレイ3における幅方向Yの両外側壁下部(図20(b)では紙面手前側)には、装置本体1側に固定されているストッパ部材241Cを逃げるための逃げ凹部302が排紙トレイ3における幅方向Yの内側に凹んで形成されている。
【0106】
次に、ストッパ機構230Cの動作を説明する。図19(a)に示すように、排紙トレイ3が上昇して開放状態にあるとき、給紙カセット2の被ストッパ部材231Cがスプリング234の付勢力によって上昇して、当接面239が装置本体1側のストッパ部材241C(の鉛直面)へ突き当たり干渉し、給紙カセット2を挿入方向Xaに挿入して装置本体1へ装着することができなくなる。
【0107】
次いで、図19(b)に示すように、排紙トレイ3が閉じられると、排紙トレイ3の底壁面3aが給紙カセット2側の被ストッパ部材231Cの傾斜部232を押し下げ、排紙トレイ3の荷重によって被ストッパ部材231Cがスプリング234の付勢力に抗して下方向に移動する。
この被ストッパ部材231Cの下降動作(排紙トレイ3が完全に閉じられていない状態)中に、給紙カセット2を挿入方向Xaに押し込み移動させると、被ストッパ部材231Cと装置本体1側のストッパ部材241Cとの係合が、当接面239からガイド面238へと切り替わり、ストッパ部材241Cとガイド面238とが接触することとなる(図19(a)から図19(b)へと切り替わる途中の動作であり、図に表れていない。例えば図9(b)参照)。
この際、給紙カセット2の挿入方向Xaへの挿入(押し込み)力が、ストッパ部材241Cと接触・係合しているガイド面238の斜面によって、被ストッパ部材231Cをスプリング234の付勢力に抗してさらに下方向に移動させる分力に分解されるので、ストッパ部材241Cによる干渉を回避して、給紙カセット2を装置本体1に押し込み・挿入することができる。
【0108】
図19(b)において、排紙トレイ3が完全に閉じられた後に、給紙カセット2を挿入方向Xaに押し込み移動させる動作は、以下のようになる。排紙トレイ3の底壁面3aが給紙カセット2側の被ストッパ部材231Cの傾斜部232を押し下げることにより、被ストッパ部材231Cが下方向に移動する。この被ストッパ部材231Cの下降動作中に、被ストッパ部材231Cと装置本体1側のストッパ部材241Cとの係合状態が排紙トレイ3の底壁面3aと被ストッパ部材231Cとの係合状態に完全に切り替わる。これにより、被ストッパ部材231Cが装置本体1側のストッパ部材241Cと接触・係合しなくなり、図19(b)に示すとおりの位置状態になる。
【0109】
給紙カセット2の装置本体1への装着(セット)完了時には、図20に示した状態になることにより、給紙カセット2が上述したように装置本体1の所定位置に押し込まれることで、底板41が給送位置を占め、これにより給紙カセット2から給紙可能な状態にすることができる。
【0110】
上述した構成および動作のとおり、本実施例によれば、従来技術例のストッパ機構230のように被ストッパ部材231の突起部233を給紙カセット2の幅方向Yにおける内側から外側に突出させる構成でない、特有の構成を備えたストッパ機構230Cを採用しているので、ストッパ手段としてのストッパ機構に必要となるスペース、特には装置本体1の幅方向Yのスペースを最小化し、従来機能を満足しつつ画像形成装置の小型化を達成することができるという効果を奏する。
【0111】
上記実施例では、給紙カセット2の幅方向Yにおける両側にストッパ手段としてのストッパ機構230Cを配置したが、これに限らず、給紙カセット2の幅方向Yにおける片側のみに配置してもよい(請求項2)。このように構成した場合、画像形成装置のさらなる小型化を達成することができ、かつ、部品点数が減ると共に、これに伴いコストも低減するという効果を奏する。
【0112】
本発明に係る画像形成装置は、上記したインクジェット方式の画像形成装置に限らず、上述したシート収容手段および積載手段を適用・搭載できる画像形成装置であればよく、例えば、電子写真方式で画像形成を行う画像形成装置として、複写機、プリンタ、ファクシミリ、プロッタ等の画像形成装置、またはこれら2つ以上の機能を備えた複合機等の画像形成装置においても適用可能である。
【符号の説明】
【0113】
1 装置本体
2 給紙カセット(シート収容手段)
3 排紙トレイ(シート積載手段)
6 画像形成部
7 給紙部(シート給送部)
8 搬送部
9 排紙部(シート排出部)
13、103 排紙トレイロック機構(開閉規制手段)
33 キャリッジ
34 記録ヘッド(画像形成手段)
41 底板(積載部材)
43 給紙ローラ(給送手段)
107 ベース板(案内傾斜部、広角挿入手段)
110 ロック部(ロック部材)
111 ロック受容部(被ロック部材)
114 受け側レール部(位置決め用の凹部)
114a 受け側レール部の凹部
211 給紙カセットフック部(開閉規制手段)
230A、230B、230C ストッパ機構(ストッパ手段)
231A、231B、231C 被ストッパ部材
232 傾斜部
234 スプリング(付勢手段)
238 ガイド面(上下動切り替え面)
239 当接面(被ストッパ面)
241A、241B ストッパ部(ストッパ部材)
241C ストッパ部材
251 凸部(第1の凸部、広角挿入手段)
252 基準部(被位置決め用の第2の凸部)
311 排紙トレイロック部(開閉規制手段)
2411 ストッパ形成部
2412 ロック爪(ロック部材)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0114】
【特許文献1】特開2010−058864号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートを載置し、装置本体側に設けられた給送手段にシートを接触させる給送位置と該給送位置から下降した下降位置との間で揺動可能な載置部材を有し、前記装置本体に装着したまま所定のシート補給位置まで引出し可能であって、前記装置本体から所定量引き出されたときに前記載置部材が前記下降位置を占めるシート収容手段と、
前記シート収容手段の蓋部材を兼ね、前記装置本体に揺動可能に装着されて前記シート収容手段の上方を開閉可能な、排出されるシートを積載するシート積載手段と、
前記載置部材が前記下降位置にあるときに、前記シート積載手段を開放可能とし、前記載置部材が前記給送位置にあるときに、前記シート積載手段の開放を規制する開放規制手段と、
前記シート積載手段が開放状態にあるときに、前記シート収容手段の前記装置本体内への挿入を規制するストッパ手段と、
を備え、
前記ストッパ手段は、
前記シート収容手段に設けられ、前記シート積載手段の開閉に応じて上下動可能であって、前記シート積載手段の開放時に前記シート収容手段から前記シート積載手段に向かって上昇可能な被ストッパ部材と、
前記装置本体に設けられ、前記シート収容手段の引出し方向と直交する幅方向における前記シート収容手段の内側で前記被ストッパ部材と接触可能なストッパ部材とを有し、
前記被ストッパ部材には、前記被ストッパ部材が上昇状態にあるときに前記ストッパ部材と突き当たる被ストッパ面と、前記ストッパ部材との接触により前記被ストッパ部材を上下動させる上下動切り替え面とが隣接して設けられていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1記載の画像形成装置において、
前記ストッパ手段が、前記シート収容手段の前記幅方向の片側にのみ配置されていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の画像形成装置において、
前記シート積載手段をロックするための、前記被ストッパ部材との接触により開閉可能なロック部材を前記ストッパ部材に設けたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項1ないし3の何れか一つに記載の画像形成装置において、
前記被ストッパ部材が、金属で構成されていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項1ないし4の何れか一つに記載の画像形成装置において、
前記シート収容手段の前記装置本体内への挿入時に、前記開放規制手段によって前記シート収容手段と前記シート積載手段とが実質一体となる結合体として構成され、
前記結合体における前記挿入方向の上流側を持ち上げた状態で前記装置本体内への挿入を可能とする広角挿入手段を備えていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項5記載の画像形成装置において、
前記シート収容手段は、前記装置本体に設けられたベース部に対して摺動可能な底壁部を有し、
前記広角挿入手段は、
前記ベース部に設けられ、前記シート収容手段の前記装置本体内への挿入方向に沿って下方から上方に向けて傾斜した案内傾斜部と、
前記底壁部に設けられ、前記案内傾斜部と接触する下向きに突出した第1の凸部とを具備することを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
請求項6記載の画像形成装置において、
前記ベース部には前記シート収容手段の位置決め用の凹部が、前記底壁部には前記凹部と接触する被位置決め用の第2の凸部が、それぞれ設けられていることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2013−112508(P2013−112508A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−262785(P2011−262785)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】