説明

画像形成装置

【課題】 中間転写ベルトからトナー像が、転写材の所定の位置と違ったところに二次転写領域近傍で発生する電界によって移動する飛び散り現象の発生を、簡易な構成で抑制することが難しかった。
【解決手段】 中間転写ベルト10を介して二次転写ローラ20に対向する位置で中間転写ベルト10と摺擦しつつ中間転写ベルト10の回転方向を規制するガイド部材13を有し、ガイド部材13は、中間転写ベルト10と摺擦する低抵抗摺擦部と、高抵抗摺擦部と、を備え、高抵抗摺擦部を、少なくとも、中間転写ベルト10の回転方向において低抵抗摺擦部よりも上流側に設けることによって、二次転写領域近傍の電界を規制し、飛び散りの発生を抑制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、レーザプリンタ等の画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式のカラー画像形成装置では、高速に印刷するために、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの画像を形成するための各色の画像形成部を独立して有し、各色の画像形成部から順次中間転写体に画像を転写し、更に中間転写体から転写材に一括して画像を転写する構成が知られている。
【0003】
特許文献1には、中間転写体として無端状の中間転写ベルトを使用する画像形成装置が開示されている。二次転写部材として二次転写ローラを使用し、中間転写ベルトの内周面を支持する支持ローラの一つを二次転写ローラの対向ローラとして使用している。二次転写ローラは、中間転写ベルトを介して対向ローラに圧接させ、二次転写ローラと中間転写ベルトが接触する二次転写領域が形成される。
【0004】
二次転写領域に搬送される転写材に対して、電圧が印加された二次転写ローラと、接地された対向ローラとの間で電位差を発生させ、中間転写ベルト上のトナー像を静電的に転写している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−29057号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、中間転写ベルト、二次転写ローラ、対向ローラで二次転写領域を形成する画像形成装置では以下の課題がある。
【0007】
二次転写ローラと対向ローラとの間に発生した電界の作用は、二次転写領域の領域だけに留まらず、その周囲にも及ぶ。二次転写領域の上流に位置するニップ入口領域においても、電界の作用が及ぶため、転写材が二次転写領域に突入するよりも先に、ニップ入口領域において中間転写ベルト上のトナー像が転写材に静電的に移動してしまう場合があった。この結果、トナー像は転写材の所定の位置(本来転写されるべき位置)と違ったところに転写され、乱れて飛び散った画像となり、画像品質を低下させてしまう課題があった。以下、この現象を飛び散りと称す。
【0008】
本発明は、飛び散りを比較的簡易な構成で抑制し、高品質な画像を形成することができる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述の課題を解決するために、本願発明は以下の構成を備える。
トナー像を担持する像担持体と、前記像担持体からトナー像が一次転写される無端状の中間転写ベルトと、前記中間転写ベルトの内周面を支持し前記中間転写ベルトを回転させる駆動部材と、前記中間転写ベルトの内周面を支持する支持部材と、前記中間転写ベルトの外面に接触し前記中間転写ベルトと二次転写領域を形成する二次転写部材と、を有し、前記二次転写領域に搬送される記録材に前記中間転写ベルトからトナー像を二次転写する画像形成装置において、前記支持部材は、前記中間転写ベルトを介して前記二次転写部材に対向する位置で前記中間転写ベルトと摺擦しつつ前記中間転写ベルトの回転方向を規制するガイド部材であり、前記ガイド部材は、前記中間転写ベルトと摺擦する第一の抵抗部と、前記第一の抵抗部より電気的な抵抗が高い第二の抵抗部と、を備え、前記第二の抵抗部は、少なくとも、前記中間転写ベルトの回転方向において前記第一の抵抗部よりも上流側に設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、二次転写領域の入口近傍における電界を規制することにより、飛び散りを比較的簡易な構成で抑制し、高品質な画像を形成することができる画像形成装置を提供することを目的とする。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】一実施例の画像形成装置の概略断面図
【図2】一実施例の画像形成装置の二次転写領域近傍を拡大した概略断面図
【図3】一実施例の画像形成装置の二次転写領域近傍を拡大した概略断面図
【図4】(a)対向部材に対向ローラを用いた場合の二次転写領域近傍の電界を説明する概略断面図(b)一実施例のガイド部材を用いた場合の二次転写領域近傍の電界を説明する概略断面図
【図5】一実施例の画像形成装置の二次転写領域近傍を拡大した概略断面図
【図6】一実施例の画像形成装置の二次転写領域近傍を拡大した概略断面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
(実施例1)
以下に、図面を参照して、この発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。ただし、この実施例に記載されている構成要素はあくまで例示であり、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0013】
図1は、インライン方式(4ドラム系)のカラー画像形成装置の構成図である。画像形成装置は、イエロー色の画像を形成する画像形成部aと、マゼンタ色の画像を形成する画像形成部bと、シアン色の画像を形成する画像形成部cと、ブラック色の画像を形成する画像形成部dの4つの画像形成部を備えている。これらの4つの画像形成部は一定の間隔をおいて一列に配置されている。
【0014】
各画像形成部の構成は、形成する画像の色以外については同様であるので、画像形成部aを用いて、画像形成部について説明する。
【0015】
画像形成部aは、ドラム状の電子写真感光体(以下、感光ドラムという)1aと、帯電部材1bと、現像ユニット4aと、クリーニングユニット5cと、を備える。本実施例の画像形成部aは、これらを一体化し装置本体に対して着脱可能なプロセスカートリッジである。
【0016】
電子写真感光体である感光ドラム1aは矢印方向R1に所定の周速度(プロセススピード)で回転駆動される。感光ドラム1aは,この回転過程で帯電部材である帯電ローラ2aにより所定の極性・電位に一様に帯電処理される。本実施例では、帯電ローラ2aにより、感光ドラム1aは負極性に帯電される。次に、露光ユニットである露光手段3aにより像露光を受ける。これにより、目的のカラー画像のイエロー色成分像に対応した静電潜像が形成される。
【0017】
次いで、その静電潜像は、現像位置において第1の現像ユニット(イエロー現像器)4aにより現像され、イエロートナー像として可視化される。イエロー現像器4aの中には、負極性に帯電されたイエロートナーが収容されており、イエロー現像器4aが備える現像ローラにより、感光ドラム1aに現像されている。感光ドラム1aは、トナー像を担持する像担持体である。
【0018】
感光ドラム1aのイエロートナー像は、対向する中間転写体に1次転写される。中間転写体である中間転写ベルト10は無端状のベルトであり、複数の支持部材によって支持され、感光ドラム1と当接した対向部で同方向に移動する向きとなる矢印方向R3に、感光ドラム1と略同一の周速度で回転駆動される。中間転写ベルト10を介して感光ドラム1aと対向する位置には、一次転部材が設けられている。感光ドラム1a上に形成されたイエロートナー像は、感光ドラム1aと中間転写ベルト10が当接する一次転写ニップを通過する過程で、中間転写ベルト10上に一次転写される。その際、一次転写ニップ部を形成する一次転写部材である一次転写ローラ14aには、一次転写電源15aより一次転写電圧が印加されている。
【0019】
感光ドラム1aの表面に残留した一次転写残トナーは、クリーニングユニット5aにより清掃および除去される。
【0020】
以下、同様に各画像形成部(b)〜(d)において、第2色のマゼンタトナー像、第3色のシアントナー像、第4色のブラックトナー像が形成され、中間転写ベルト10上に順次重ねて転写されて、目的のカラー画像に対応した合成カラー画像が得られる。各画像形成部b〜dには、それぞれ対応する露光ユニット3b〜3dと、一次転写ローラ14b〜dが設けられている。
【0021】
中間転写ベルト10上の4色のトナー像は、中間転写ベルト10と二次転写部材である二次転写ローラ20が形成する二次転写領域を通過する過程で、給紙手段50から搬送された転写材Pの表面に二次転写される。その際、二次転写ローラ20には、二次転写電源21から二次転写電圧が印加されている。二次転写部材である二次転写ローラ20は、外径8mmのニッケルメッキ鋼棒に、抵抗値10Ω・cm、厚み5mmに調整したNBR(ニトリルゴム)の発泡スポンジ体で覆った外径18mmのローラを用いている。また二次転写ローラ20は、中間転写ベルト10の外周面に対して、50Nの加圧力で当接させており、中間転写ベルト10に対して従動回転する。
【0022】
その後、4色のトナー像を担持した転写材Pは定着器30に導入され、そこで加熱および加圧されることにより4色のトナーが溶融混色して転写材Pに固定される。そして、転写材Pは機外へ排出される。
【0023】
以上の動作により、転写材P上にフルカラーのプリント画像が形成される。また、中間転写ベルト10の表面に残留した二次転写残トナーは、中間転写ベルトクリーニングユニット16により清掃・除去される。
【0024】
次に、中間転写ベルト10と中間転写ベルト10の内周面を支持する複数の支持部材11、12、13について説明する。中間転写ベルト10及び支持部材11、12、13は、中間転写ユニットとして一体化されており、装置本体に対して着脱可能である。中間転写ベルト10は、転写後の電荷残留が少なく除電機構が不要とすることが望ましい。本実施例では、転写後の電荷残留が少なく除電機構を不要とする可能になるという理由から、体積抵抗率が10〜1011Ω・cm程度の材料で構成されるのが好ましい。本実施例の中間転写ベルト10は、厚さ100μm、体積抵抗率10Ω・cmのポリフッ化ビニリデン(PVdF)を主成分とする材料で構成されている。なお、中間転写ベルト10としては、この他に、ポリアミド(PI),ポリエーテル・エーテル・ケトン(PEEK),などの材料を用いても良い。
【0025】
支持部材11は、中間転写ベルト10を駆動させつつ支持する駆動部材である駆動ローラであり、矢印方向R2へ回転し、中間転写ベルト10を矢印方向R3に回転移動させる。本実施例では、支持部材11として、外径20mmのアルミ軸に厚さ0.5mmの弾性ゴム(エチレンプロピレンゴム)を被覆したローラを用いている。
【0026】
支持部材12は、中間転写ベルト10内周面に、内周面側から外周面側に向ってテンションを付与するテンションローラである。本実施例では、支持部材12として、外径20mmの中空のアルミ軸を用いている。支持部材12は、バネ12hによって総圧39.2Nで中間転写ベルト10を押圧し、中間転写ベルト10に張力を付与している。
【0027】
支持部材13は、中間転写ベルト10を介して二次転写ローラ20と対向するガイド部材である。ガイド部材13は、中間転写ベルト10を介して二次転写ローラ20に対向する位置で中間転写ベルト10と摺擦しつつ中間転写ベルト10の回転方向を規制する。ガイド部材13は、他の支持部材のように中間転写ベルト10と共に回転する構成ではなく、中間転写ユニットに固定されている構成である。ガイド部材13に関する構成については、後で説明する。
【0028】
中間転写ベルト10、各支持部材11、12、13、各一次転写ローラ14a〜14dは、中間転写ユニットとして一体化されている。ローラである駆動ローラ11、テンションローラ12、一次転写ローラ14a〜14dは、各軸受けによって支持されて回転可能である。一方、ガイド部材13は、中間転写ユニットを構成する枠体に固定されている。
【0029】
以下に、ガイド部材13の構成について説明する。本実施例のガイド部材13は、中間転写ベルト10と摺擦するガイド部材であり、ガイド部材13の中間転写ベルト10との摺擦面において、中間転写ベルト10移動方向に電気抵抗の異なる部を有することを特徴としている。
【0030】
図2は、本実施例の画像形成装置の二次転写領域近傍を拡大した横断面模式図である。
ガイド部材13の中間転写ベルト10との摺擦面は、中間転写ベルト10の回転方向において、二次転写領域Nと、それよりも上流のニップ入口領域I、下流のニップ出口領域Eの3つの領域に分けられる。
【0031】
ガイド部材13は、ガイド支持部材13eと、第一の抵抗部である低抵抗摺擦部13gと、第二の抵抗部である高抵抗摺擦部13fと、を備える。中間転写ベルト10とガイド部材13が摺擦する摺擦面に、高抵抗摺擦部13fと低抵抗摺擦部13gは、設けられている。さらに、高抵抗摺擦部13fと低抵抗摺擦部13gは、ガイド支持部材13eに支持されている。高抵抗摺擦部13fは、低抵抗摺擦部13gよりも電気的な抵抗が高い。本実施例において、ガイド支持部材13eの中間転写ベルト10と接触する側の面は、曲率半径12mmの曲面となるよう構成されている。
【0032】
この曲率半径は8mmから15mmの範囲で設定するのが好ましい。曲率半径が8mmより小さいと曲率が大きすぎ、高温状態で放置された場合に中間転写ベルト10にガイド部材13に支持された跡、いわゆる巻き癖が発生する懸念がある。巻き癖が発生した中間転写ベルト10トナー像を転写すると、画像不良が発生する。一方、曲率半径が15mmより大きいと曲率が小さすぎ、曲率分離を利用した転写材Pの分離性能が低下し、薄紙などのコシのない転写材が中間転写ベルト10に巻き付いて分離不良になる場合がある。また、中間転写ユニット全体のサイズが大きくなりすぎてしまう。
【0033】
ガイド支持部材13eは、体積抵抗率が1012Ω・cm以上の絶縁性の材料で構成するのが好ましい。ガイド支持部材13eは、中間転写ベルト10との摺擦面に露出しないので、十分な剛性を得られれば、どのような絶縁性の部材でも良い。本実施例のガイド支持部材13eは、一例として絶縁性のABS樹脂で構成されている。またガイド支部材13eの剛性を上げるために、金属材料などからなる補強部材を追加しても良い。
【0034】
高抵抗摺擦部13fは、中間転写ベルト10の回転方向において、低抵抗摺擦部13gよりも上流側に配置される。高抵抗摺擦部13fは、少なくとも、二次転写ローラ20が中間転写ベルト10の外面に接触する二次転写領域Nの回転方向最上流端の位置(図2のN1)から上流側に設けられている。図2では、N1から上流側の領域であるニップ部入口領域Iに高抵抗摺擦部13fは設けられている。高抵抗摺擦部は、体積抵抗率1012Ω・cm以上の絶縁性の材料を採用することが望ましい。本実施例では、厚さ0.2mmの絶縁性の超高分子ポリエチレンシート部材を用いている。超高分子ポリエチレンは、分子量を500万前後に高めたポリエチレンであり、一般に滑り性や耐摩耗性に優れる材料として知られている。
【0035】
超高分子ポリエチレン以外でも、中間転写ベルト10の回転を妨げず、良好な滑り性を有する材料であれば、高抵抗摺擦部13fとして採用できる。一例としてフッ素樹脂、ポリアセタール樹脂などが挙げられる。
【0036】
一方、低抵抗摺擦部13gは、少なくとも、二次転写領域Nの回転方向最上流の位置N1から二次転写領域Nの回転方向最下流の位置N2の間に配設される。図2では、N1より下流側で中間転写ベルト10と摺擦する面は、すべて低抵抗摺擦部13gである。(図2のN2より下流側の領域であるEは、以下ニップ出口領域Eとする。)低抵抗摺擦部13gも、高抵抗摺擦部13fと同様に中間転写ベルト10の回転を妨げず、良好な滑り性を有する材料が採用できる。また、低抵抗摺擦部13gは、二次転写領域Nにて対向電極として機能する必要があるため、電気抵抗の低い材料が良い。具体的には、体積抵抗率が10Ω・cm以下の材料で構成されるのが好ましい。なお、低抵抗摺擦部13gは、不図示の導体により電気的に接地される。
【0037】
本実施例では、低抵抗摺擦部13gとして、導電剤としてカーボンを分散させた厚さ0.2mmの導電性超高分子ポリエチレンシート部材を用いている。この導電性の超高分子ポリエチレンシートの電気抵抗は、体積抵抗率10Ω・cm以下である。
【0038】
本実施例において、高抵抗摺擦部13f及び低抵抗摺擦部13gの摺擦面(一面)の対向面である他面は、ガイド支持部材13eの表面に絶縁性の両面テープで接着し固定されている。
【0039】
図3は、図2のガイド支持部材13eと高抵抗摺擦部13fを一体にした高抵抗支持部13hを説明する概略図である。ガイド部材13のニップ入口領域Iでは、高抵抗支持部13hが中間転写ベルト10に接触し、二次転写領域Nおよびニップ出口領域Eでは低抵抗摺擦部13gが接触する構成となっている。また二次転写領域Nおよびニップ出口領域Eの摺擦面が、ニップ入口領域Iの摺擦面と同じ高さとなるように、低抵抗摺擦部13gを配設する高抵抗支持部13hの面を厚みに応じて低くし、段差が生じないようにしている。図3の高抵抗支持部13hは、中間転写ベルト10と摺擦するので、中間転写ベルト10に対し良好な滑り性を有する材料で構成するのが好ましい。例えば、絶縁性のポリアセタール樹脂で構成してもよい。図3に示す高抵抗支持部13hは、部品点数を減らすことが可能になり、低コスト且つ、簡易な構成で飛び散りを抑制可能となる。
【0040】
以下に、本実施例の作用について説明する。図4(a)は、従来の転写対向ローラ17を用いた画像形成装置の二次転写領域近傍の概略図、図4(b)は、本実施例のガイド部材13を用いた画像形成装置の二次転写領域近傍の概略図である。二次転写領域Nの周辺に図示されている矢印Fは、二次転写ローラ20に正極性の二次転写電圧を印加した時に発生する電界に対応した電気力線を模式的に示したものである。
【0041】
図4(a)の構成は、転写対向ローラ17として、アルミニウム製の芯金に、導電剤としてのカーボンを分散させた弾性ゴムを被覆した、体積抵抗率10Ω・cm以下の外径24mmのゴムローラを用いている。
【0042】
図4(a)に示すように、ニップ入口領域Iにおける二次転写ローラ20と中間転写ベルト10の空間には、二次転写ローラ20から対向電極となる転写対向ローラ17に向かう電気力線Fが存在する。そのため、中間転写ベルト10上のトナー像は、二次転写領域Nに入る前に中間転写ベルト10から二次転写ローラ20に向って移動する可能性がある。よって、図4(a)の構成では、中間転写ベルト10上のトナー像が二次転写領域Nに入る前に移動する飛び散り現象が発生する可能性がある。
【0043】
一方、図4(b)に示すように、電圧が印加された二次転写ローラ20からの電気力線は、対向電極となる二次転写領域Nの低抵抗摺擦部13gに向かう。このため、ニップ入口領域Iにおいて、対向電極となる低抵抗摺擦部13gが存在しない分、電界は弱まり、電気力線Fは図3(a)に示した従来例の構成よりも相対的に少なくなる。よって、ニップ入口領域Iにおいて、中間転写ベルト10上のトナー像は記録材Pに移動し難くなり、飛び散り現象が改善される。
【0044】
本実施例では、中間転写ベルト10の移動方向(矢印方向R3)に高抵抗摺擦部13fから低抵抗摺擦部13gに切り替わる抵抗変化点Xが、二次転写領域Nの上流端(図2のN1)に位置するようにしている。抵抗変化点Xの位置は、二次転写領域Nの上流端に対し、僅かにその上下流側にずれてもよいが、飛び散りの発生を抑制する為に、可能なかぎり抵抗変化点Xが二次転写領域Nの上流端と同じ位置か、下流側に位置するほうがよい。
【0045】
このように、中間転写ベルト10と摺擦するガイド部材で構成することにより、対向電極の配置や抵抗値を局所的に変えることが可能となる。これにより、二次転写領域N近傍の電界を場所に応じて規制することができる。
【0046】
以上の理由により、トナー像の記録材Pへの飛び散り現象の発生を抑制し、高品質な画像を提供することが可能となる。
【0047】
(実施例2)
次に、本発明の他の実施例について説明する。本実施例の画像形成装置の基本的な構成は実施例1のものと同じである。従って、実施例1のものと同一又はそれに対応する機能、構成を有する要素には同一符号を付して詳しい説明を省略する。
【0048】
本実施例の特徴は、実施例1の構成に対して、高抵抗摺擦部13fが、二次転写領域Nの上流端N1よりも下流側の領域(二次転写領域N内)にも、配設されていることである。
【0049】
図5は、本実施例のガイド部材13を説明する為の二次転写領域近傍を拡大した図である。図5で示すように、高抵抗摺擦部13fは、ニップ入口領域Iから二次転写領域N内の上流側まで延ばして配設されている。よって、二次転写領域Nは、対向電極が無い上流ニップ部NUと、対向電極が有る下流ニップ部NLとに分けられる。すなわち中間転写ベルト10の移動方向(矢印方向R3)に高抵抗摺擦部13fから低抵抗摺擦部13gに切り替わる抵抗変化点Xが、二次転写領域N内に位置することになる。中間転写ベルト10上のトナー像は、対向電極となる低抵抗摺擦部材13gが存在する下流ニップ部NLにおいて、実質的に転写される。
【0050】
以上述べたように、本実施例の構成では、ニップ入口領域Iにおける電界をさらに弱められ、なおかつトナー像の転写が行われる前に中間転写ベルト10上のトナー像と記録材を接触させることができるので、トナーの記録材Pへの飛翔はさらに効果的に抑制される。よって、実施例1よりもさらに飛び散りの少ない高品質な画像を提供することが可能となる。
【0051】
(実施例3)
次に、本発明の他の実施例について説明する。本実施例の画像形成装置の基本的な構成は実施例1のものと同じである。従って、実施例1のものと同一又はそれに対応する機能、構成を有する要素には同一符号を付して詳しい説明を省略する。
【0052】
本実施例の特徴は、図2に示す実施例1のガイド部材13の構成に対し、ガイド部材13の中間転写ベルト10と接触する接触面が、平面や曲率の異なる曲面などが複合された面で構成されている点にある。
【0053】
図6は、本実施例の画像形成装置の二次転写領域近傍を拡大した横断面模式図である。
【0054】
ガイド部材13の中間転写ベルト10との摺擦面は、ニップ入口上流領域IU、ニップ入口下流領域IL,二次転写領域N、ニップ出口上流領域EU、ニップ出口下流領域ELの領域に分けられる。
【0055】
ガイド部材13の全ての領域の摺擦面は、中間転写ベルト10の巻き癖による画像不良防止の観点から、曲率半径が8mm以上の曲面もしくは略平面で構成されることが望ましい。
【0056】
ニップ入口上流領域IU(第一の屈曲部)において、ガイド部材13は中間転写ベルト10の進行角度を変える機能を要する。本実施例では、ニップ入口上流領域IUのガイド部材13の摺擦面は、曲率半径10mmの曲面で構成されている。このように、ガイド部材13は、中間転写ベルト10の曲率を決定するニップ入口上流領域IUも一体的に構成することが可能である。ローラ形状と異なり、ガイド部材13は固定部材であるので、その形状も自由に選択することが可能である。
【0057】
ガイド部材13は、ニップ入口上流領域IUの曲率半径を大きい曲面とすることで、中間転写ベルト10に巻き癖が発生することを抑制する。例えば、図4(a)の構成で、中間転写ベルト10の曲率半径を大きくすると、二次転写対向ローラ自体の径を大きくする必要があり装置が大型化する。本実施例の構成では、二次転写ベルト10が曲がるとこ(ニップ入口上流領域IU)を大きい曲面とすればよいので、装置を大型化することを抑制する効果がある。
【0058】
ニップ入口下流領域ILにおいて、ガイド部材13は中間転写ベルト10を記録材Pに近接させて二次転写領域Nへ進入させる機能を要する。中間転写ベルト10と記録材Pを近接させることにより、中間転者ベルト10上のトナーが記録材Pへ二次転写領域Nの上流で移動した場合の移動距離を短く出来るので、所定位置からのズレが少なくなり、飛び散りを抑制することができる。
【0059】
記録材ニップ入口下流領域ILのガイド部材13の摺擦面は、略平面もしくは曲率半径が非常に大きい曲面で構成するのが好ましい。この場合、二次転写領域Nから離れた位置から中間転写ベルト10と記録材Pを近接させることができ、飛び散り抑制に有利となる。本実施例では、ニップ入口下流領域ILは、略平面で構成されている。
【0060】
以上に述べたニップ入口上流領域IUおよびニップ入口下流領域ILでは、飛び散りを抑制する為に、高抵抗摺擦部13fが配設されている。
【0061】
二次転写領域Nにおいて、ガイド部材13は二次転写ローラ20の対向部材および対向電極としての機能を要する。トナー像の実質的な記録材Pへの転写は、二次転写領域Nで行われる。よって、ガイド部材13の二次転写領域には、対向電極として機能する低抵抗摺擦部13gが配設される。
【0062】
二次転写領域Nのガイド部材13の摺擦面は、中間転写ベルト10の巻き癖による画像不良が発生しない範囲であれば、どの形状でも良い。本実施例では、二次転写領域Nのガイド部材13の摺擦面を曲率半径15mmの曲面で構成している。
【0063】
ニップ出口上流領域EU(第二の屈曲部)において、ガイド部材13は、中間転写ベルト10と記録材Pを分離させる機能と、中間転写ベルト10の進行角度を変える機能を要する。記録材Pの分離性を高める観点および装置の小型化の観点から、中間転写ベルト10の巻き癖による画像不良が発生しない範囲で曲率半径は小さい方が好ましい。本実施例では、ニップ出口上流領域EUのガイド部材13の摺擦面を曲率半径10mmの曲面で構成している。二次転写ベルト10を屈曲させるニップ入口上流領域IUと、ニップ出口上流領域EUの曲率を比較すると、ニップ入口上流領域IUの曲率の方がニップ出口上流領域EUの曲率よりも大きい。
【0064】
ニップ出口下流領域ELにおいて、ガイド部材13は転写ベルトクリーニング部材16を配設するための領域を確保する機能を有する。一方、ベルトクリーニング部材16を配設するための領域を確保する観点からは、平面もしくは曲率半径は大きい方が好ましい。
【0065】
本実施例では、ニップ出口下流領域ELのガイド部材13の摺擦面を平面で構成している。ニップ出口上流領域EUとニップ出口下流領域ELは、中間転写ベルト10がガイド部材13から分離する際の放電などを防止するために、二次転写領域Nと同一の低抵抗摺擦部13gを配設している。
【0066】
以上述べたように、転写対向部材を、従来の画像形成装置のような転写対向ローラ17などの回転体ではなく、中間転写ベルト10と摺擦するガイド部材で構成することにより、対向電極の配置や抵抗値だけでなく、ガイド部材の摺擦面の形状も局所的に変えることが可能となる。
【0067】
これにより、二次転写領域N近傍の電界を場所に応じて規制し、かつ二次転写ベルト10に巻き癖が発生するのを抑制し、かつ二次転写領域Nの手前で中間転写ベルト10を記録材Pに近接させて移動させることができる。さらに、二次転写領域Nを通過した記録材を中間転写ベルト10から分離し易くすることが可能になる。以上の理由により、さらに飛び散りの少ない高品質な画像を提供することが可能となる。
【符号の説明】
【0068】
10 中間転写体
11、12 支持部材
13 ガイド部材
13e ガイド支持部材
13f 高抵抗摺擦部
13g 低抵抗摺擦部
20 二次転写部材
P 記録材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー像を担持する像担持体と、前記像担持体からトナー像が一次転写される無端状の中間転写ベルトと、前記中間転写ベルトの内周面を支持し前記中間転写ベルトを回転させる駆動部材と、前記中間転写ベルトの内周面を支持する支持部材と、前記中間転写ベルトの外面に接触し前記中間転写ベルトと二次転写領域を形成する二次転写部材と、を有し、前記二次転写領域に搬送される記録材に前記中間転写ベルトからトナー像を二次転写する画像形成装置において、
前記支持部材は、前記中間転写ベルトを介して前記二次転写部材に対向する位置で前記中間転写ベルトと摺擦しつつ前記中間転写ベルトの回転方向を規制するガイド部材であり、前記ガイド部材は、前記中間転写ベルトと摺擦する第一の抵抗部と、前記第一の抵抗部より電気的な抵抗が高い第二の抵抗部と、を備え、前記第二の抵抗部は、少なくとも、前記中間転写ベルトの回転方向において前記第一の抵抗部よりも上流側に設けられていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記ガイド部材は、前記第一の抵抗部と、前記第二の抵抗部を支持するガイド支持部材を備えることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記第一の抵抗部と前記第二の抵抗部は、一面が前記中間転写ベルトと摺擦する摺擦面であり、他面が前記ガイド支持部材に接着されていることを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記第二の抵抗部は、前記第一の抵抗部を支持する支持部を兼ねることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記中間転写ベルトの回転方向において、前記第一の抵抗部の最上流端は、少なくとも前記二次転写領域の最上流端と同じ位置、または、下流側の位置に位置することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記第一の抵抗部は、導電性を付与した超高分子ポリエチレンであることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記第二の抵抗部は、導電性を付与しない超高分子ポリエチレンであることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記ガイド部材は、前記中間転写ベルトの回転方向において、前記二次転写領域の上流側に前記中間転写ベルトを曲げる第一の屈曲部と、前記二次転写領域の下流側に前記中間転写ベルトを曲げる第二の屈曲部と、を備えることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−113854(P2013−113854A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−256705(P2011−256705)
【出願日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】