説明

画像形成装置

【課題】 支持部材としローラを使用しない場合であっても、簡易な構成で長期に渡り、中間転写ベルトの駆動トルクの上昇を抑制し、支持部材と中間転写ベルトの長時間の摺擦を起因とする画像不良の発生を抑制することが難しい。
【解決手段】 支持部材は、中間転写ベルトを介して二次転写部材に対向する位置で中間転写ベルトと摺擦しつつ中間転写ベルトの回転方向を規制するガイド部材であり、ガイド部材は、中間転写ベルトと接触し摺擦する摺擦部と、摺擦部を支持する基体部を備え、摺擦部を超高分子ポリエチレンで形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、レーザプリンタ等の画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式のカラー画像形成装置では、高速に印刷するために、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの画像を形成するための各色の画像形成部を独立して有し、各色の画像形成部から順次中間転写体に画像を転写し、更に中間転写体から転写材に一括して画像を転写する構成が知られている。
【0003】
特許文献1には、中間転写体として無端状の中間転写ベルトを使用する画像形成装置が開示されている。二次転写部材として二次転写ローラを使用し、中間転写ベルトの内周面を支持する支持ローラの一つを二次転写ローラの対向部材として使用している。二次転写ローラは、中間転写ベルトを介して対向部材(対向ローラ)に圧接させ、二次転写ローラと中間転写ベルトが接触する二次転写領域が形成される。
【0004】
二次転写領域に搬送される転写材に対して、電圧が印加された二次転写ローラと、接地された対向部材との間で電位差を発生させ、中間転写ベルト上のトナー像を静電的に転写している。
【0005】
特許文献2には、特許文献1の中間転写ベルトの回転に従動する対向ローラの代わりに、中間転写ベルトと摺擦する固定部材を、対向部材として採用する構成が開示されている。固定部材の下流側の曲率を大きくすることで転写材の中間転写ベルトからの分離性を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−29057号公報
【特許文献2】特開2008−46382号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献2の画像形成装置では以下の課題がある。特許文献2の画像形成装置の構成においては、中間転写ベルトと摺擦する固定部材が配置されているため、中間転写ベルトの駆動トルクが高くなる場合がある。具体的には、ガイド部材として、ウレタンゴムやエピクロヒドリンゴムのような材質を用いた場合、二次転写ローラの押圧力が大きい程、中間転写ベルトとガイド部材間のすべり摩擦力が大きくなり駆動トルクが高くなる。
【0008】
中間転写ベルトの駆動トルクが高くなると、駆動源として最大トルクが大きいものを使用する必要があり、画像形成装置のサイズアップ、コストアップを招く場合がある。また、長時間にわたり、固定部材が、二次転写ローラに押圧され続ける、あるいは、中間転写ベルトと摺擦し続けると、固定部材表面が削れる場合がある。固定部材から削れた削れ粉は、中間転写ベルト内部に滞留するため、削れ粉を起因として画像不良が発生する可能性がある。
【0009】
本発明は、転写対向部材として対向ローラを使用しない場合であっても、簡易な構成で長期に渡り、中間転写ベルトの駆動トルクの上昇を抑制し、転写対向部材と中間転写ベルトの長時間の摺擦を起因とする画像不良の発生を抑制することが可能な画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前述の課題を解決するために、本願発明は以下の構成を備える。
【0011】
トナー像を担持する像担持体と、前記像担持体からトナー像が一次転写される無端状の中間転写ベルトと、前記中間転写ベルトの内周面を支持し前記中間転写ベルトを回転させる駆動部材と、前記中間転写ベルトの内周面を支持する支持部材と、前記中間転写ベルトの外周面に接触し前記中間転写ベルトと二次転写領域を形成する二次転写部材と、を有し、前記二次転写領域に搬送される記録材に前記中間転写ベルトからトナー像を二次転写する画像形成装置において、前記支持部材は、前記中間転写ベルトを介して前記二次転写部材に対向する位置で前記中間転写ベルトと摺擦しつつ前記中間転写ベルトの回転方向を規制するガイド部材であり、前記ガイド部材は、前記中間転写ベルトと接触し摺擦する摺擦部と、前記摺擦部を支持する基体部を備え、前記摺擦部を超高分子ポリエチレンで形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、中間転写ベルトと摺擦し続けるガイド部材を転写対向部材として使用した場合であっても、簡易な構成で長期に渡り、中間転写ベルトの駆動トルクの上昇を抑制することが可能になる。さらに、ガイド部材と中間転写ベルトの長時間の摺擦を起因とする画像不良の発生を抑制することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】一実施例の画像形成装置の概略断面図
【図2】一実施例の画像形成装置の二次転写領域近傍を拡大した概略断面図
【図3】一実施例の画像形成装置のテンションガイドを拡大した概略断面図
【図4】一実施例の画像形成装置の二次転写領域近傍を拡大した概略断面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
(実施例1)
以下に、図面を参照して、この発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。ただし、この実施例に記載されている構成要素はあくまで例示であり、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0015】
図1は、インライン方式(4ドラム系)のカラー画像形成装置の構成図である。画像形成装置は、イエロー色の画像を形成する画像形成部aと、マゼンタ色の画像を形成する画像形成部bと、シアン色の画像を形成する画像形成部cと、ブラック色の画像を形成する画像形成部dの4つの画像形成部を備えている。これらの4つの画像形成部は一定の間隔をおいて一列に配置されている。
【0016】
各画像形成部の構成は、形成する画像の色以外については同様であるので、画像形成部aを用いて、画像形成部について説明する。画像形成部aは、ドラム状の電子写真感光体(以下、感光ドラムという)1aと、帯電部材1bと、現像ユニット4aと、クリーニングユニット5cと、を備える。本実施例の画像形成部aは、これらを一体化し装置本体に対して着脱可能なプロセスカートリッジである。
【0017】
電子写真感光体である感光ドラム1aは矢印方向R1に所定の周速度(プロセススピード)で回転駆動される。感光ドラム1aは,この回転過程で帯電部材である帯電ローラ2aにより所定の極性・電位に一様に帯電処理される。本実施例では、帯電ローラ2aにより、感光ドラム1aは負極性に帯電される。次に、露光ユニットである露光手段3aにより像露光を受ける。これにより、目的のカラー画像のイエロー色成分像に対応した静電潜像が形成される。
【0018】
次いで、その静電潜像は、現像位置において第1の現像ユニット(イエロー現像器)4aにより現像され、イエロートナー像として可視化される。イエロー現像器4aの中には、負極性に帯電されたイエロートナーが収容されており、イエロー現像器4aが備える現像ローラにより、感光ドラム1aに現像されている。感光ドラム1aは、トナー像を担持する像担持体である。
【0019】
感光ドラム1aのイエロートナー像は、対向する中間転写体に1次転写される。中間転写体である中間転写ベルト10は無端状のベルトであり、複数の支持部材によって支持され、感光ドラム1と当接した対向部で同方向に移動する向きとなる矢印方向R3に、感光ドラム1と略同一の周速度で回転駆動される。中間転写ベルト10を介して感光ドラム1aと対向する位置には、一次転部材が設けられている。感光ドラム1a上に形成されたイエロートナー像は、感光ドラム1aと中間転写ベルト10が当接する一次転写ニップを通過する過程で、中間転写ベルト10上に一次転写される。その際、一次転写ニップ部を形成する一次転写部材である一次転写ローラ14aには、一次転写電源15aより一次転写電圧が印加されている。
【0020】
感光ドラム1aの表面に残留した一次転写残トナーは、クリーニングユニット5aにより清掃および除去される。
【0021】
以下、同様に各画像形成部(b)〜(d)において、第2色のマゼンタトナー像、第3色のシアントナー像、第4色のブラックトナー像が形成され、中間転写ベルト10上に順次重ねて転写されて、目的のカラー画像に対応した合成カラー画像が得られる。各画像形成部b〜dには、それぞれ対応する露光ユニット3b〜3dと、一次転写ローラ14b〜dが設けられている。
【0022】
中間転写ベルト10上の4色のトナー像は、中間転写ベルト10と二次転写部材である二次転写ローラ20が形成する二次転写領域を通過する過程で、給紙手段50から給紙された転写材Pの表面に二次転写される。その際、二次転写ローラ20には、二次転写電源21から二次転写電圧が印加されている。二次転写部材である二次転写ローラ20は、外径8mmのニッケルメッキ鋼棒に、抵抗値10Ω・cm、厚み5mmに調整したNBR(ニトリルゴム)の発泡スポンジ体で覆った外径18mmのローラを用いている。また二次転写ローラ20は、中間転写ベルト10の外周面に対して、50Nの加圧力で当接させており、中間転写ベルト10に対して従動回転する。
【0023】
その後、4色のトナー像を担持した転写材Pは定着器30に導入され、そこで加熱および加圧されることにより4色のトナーが溶融混色して転写材Pに固定される。そして、転写材Pは機外へ排出される。
【0024】
以上の動作により、転写材P上にフルカラーのプリント画像が形成される。また、中間転写ベルト10の表面に残留した二次転写残トナーは、中間転写ベルトクリーニングユニット16により清掃・除去される。
【0025】
次に、中間転写ベルト10と中間転写ベルト10の内周面を支持する複数の支持部材11、12、13について説明する。中間転写ベルト10及び支持部材11、12、13は、中間転写ユニットとして一体化されており、装置本体に対して着脱可能である。
【0026】
中間転写ベルト10は、転写後の電荷残留が少なく除電機構が不要とすることが望ましい。本実施例では、転写後の電荷残留が少なく除電機構を不要とする可能になるという理由から、体積抵抗率が10〜1011Ω・cm程度の材料で構成されるのが好ましい。本実施例の中間転写ベルト10は、厚さ100μm、体積抵抗率10Ω・cmのポリフッ化ビニリデン(PVdF)を主成分とする材料で構成されている。なお、中間転写ベルト10としては、この他に、ポリアミド(PI),ポリエーテル・エーテル・ケトン(PEEK),などの材料を用いても良い。
【0027】
支持部材11は、中間転写ベルト10を駆動させつつ支持する駆動部材である駆動ローラであり、矢印方向R2へ回転し、中間転写ベルト10を矢印方向R3に回転移動させる。本実施例では、支持部材11として、外径20mmのアルミ軸に厚さ0.5mmの弾性ゴム(エチレンプロピレンゴム)を被覆したローラを用いている。
【0028】
支持部材12は、中間転写ベルト10内周面に、内周面側から外周面側に向ってテンションを付与するテンションローラである。本実施例では、支持部材12として、外径20mmの中空のアルミ軸を用いている。支持部材12は、バネ12hによって総圧39.2Nで中間転写ベルト10を押圧し、中間転写ベルト10に張力を付与している。
【0029】
支持部材13は、中間転写ベルト10を介して二次転写ローラ20と対向するガイド部材である。ガイド部材13は、中間転写ベルト10を介して二次転写ローラ20に対向する位置で中間転写ベルト10と摺擦しつつ中間転写ベルト10の回転方向を規制する。ガイド部材13は、他の支持部材のように中間転写ベルト10と共に回転する構成ではなく、中間転写ユニットに固定されている構成である。ガイド部材13に関する構成については、後で説明する。
【0030】
中間転写ベルト10、各支持部材11、12、13、各一次転写ローラ14a〜14dは、中間転写ユニットとして一体化されている。ローラである駆動ローラ11、テンションローラ12、一次転写ローラ14a〜14dは、各軸受けによって支持されて回転可能である。一方、ガイド部材13は、中間転写ユニットを構成する枠体に固定されている。
【0031】
以下に、ガイド部材13の構成について説明する。本実施例のガイド部材13は、回転する中間転写ベルト10と摺擦し続ける固定部材であり、対向ローラのように中間転写ベルト10の回転に従動するものではない。
【0032】
図2は、本実施例の画像形成装置の二次転写部近傍を拡大した横断面模式図である。ガイド部材は、中間転写ベルト10の回転方向と直交する方向である長手幅が250mm、曲率半径10mmの略半円形状である。また、ガイド部材13は、中間転写ベルト10に対して非接触領域となる基体部である基体13aと、中間転写ベルト10に対して接触領域となる摺動部13bから構成され、基体13a上に摺動部13bを貼り付けている。材質としては、基体13aがABS樹脂であり、摺動部13bとして超高分子量ポリエチレンシートを用いていることを特徴としている。
【0033】
摺動部13bに用いられる超高分子ポリエチレンシートは、表面抵抗率が10Ω/□、摩擦係数0.13である導電性を有する分子量が500万程度の超高分子量ポリエチレンシートである。図2に示すように、超高分子ポリエチレンシートは、電気的に接地されている。超高分子量ポリエチレンシートの表面粗さは、Ra=1.0程度である。また、シートの厚みは0.2mmであり、摺動部13bは、基体13aに導電性の両面テープにて貼り付けている。尚、導電性の超高分子量ポリエチレンシートの導電剤は、カーボンブラックを用いている。
【0034】
次に本実施例の作用について説明をする。中間転写ベルト10の駆動トルクは、ガイド部材の摺動部13bと中間転写ベルト10のすべり摩擦力により上昇する。すべり摩擦力Fは、摩擦係数μと、摺動部13bと中間転写ベルトにかかる垂直抗力Nの積算で表わすことができる。
F=μ×N
垂直抗力Nは、2次転写ローラ20の加圧力で決定されるため、すべり摩擦力を低減するには、摩擦係数μを低減させる必要がある。また、中間転写ベルト10が摺動部13bと摺擦することにより削れないよう、摺動部13bが優れた耐磨耗性能を有する必要がある。
【0035】
本実施例で用いたような、超高分子量ポリエチレンシートは、優れた自己潤滑性を有しており、低い摩擦係数となっている。また、その分子量は100万〜700万程度であり、通常のポリエチレン樹脂の分子量2万〜30万と比べて大きいため、優れた耐磨耗性を有している。
【0036】
表1に本実施例で用いている超高分子量ポリエチレンと比較例であるその他の樹脂材料の静止摩擦係数と磨耗損量を示す。比較例の樹脂としては、フッ素樹脂(PTFE)、高密度ポリエチレン(HDPE、分子量=6万)を挙げ、本実施例の摺動部13bの超高分子量ポリエチレンと同様にシートの厚みを0.2mmとし、導電剤としてカーボンブラックを用いることにより、表面抵抗率を10Ω/□程度に調整している。なお、比較例で用いたシートの表面粗さは実施例の表面粗さと同一の状態とし、Ra=1.0となるように調整を行った。
【0037】
【表1】

【0038】
なお、静止摩擦係数μsの測定は、新東科学株式会社製HEIDONトライボギアType94−iを用いて行った。また、耐摩耗性に関しては、砂磨耗試験を実施することにより求めた。具体的には容器に砂と水を混合投入し、その容器中でシャフトに固定した試験片を攪拌回転させた後の試験片の磨耗量を測定した。なお、表中の対磨耗量の値は、上記試験を行った場合における磨耗損量を示しており、値が低いほど耐磨耗性に優れていることを示している。
【0039】
表1で示すように、超高分子量ポリエチレン、フッ素樹脂、ほぼ同様の摩擦係数を有しているが、磨耗損量においては、超高分子量ポリエチレンが一番少ない。また、高密度ポリエチレンに関しては、磨耗損量はフッ素樹脂と超高分子量ポリエチレンの中間程度の値であるが、摩擦係数に関しては、その他の樹脂と比較して高くなっている。
【0040】
磨耗損量が大きくなるほど、中間転写ベルト10と摺擦部13bの摺擦に伴って発生する摺擦部13bの削れ粉の量が多くなる。この削れ粉は、中間転写ベルト10を支持する他の支持部材(駆動ローラ11、テンションローラ12)に接触する可能性がある。例えば、削れ粉が駆動ローラ11に付着すると、駆動ローラ11による搬送力が局所的に低下する。搬送力が低下するとスティックスリップが発生し易くなり、その時点にて1次転写を行っている場合は、中間転写ベルト10の搬送速度は感光ドラム1a〜dの回転速度より遅くなるため、横すじ状に濃度が濃くなる画像不良が発生する。
【0041】
表2に、比較例と本実施例の画像形成装置を製品寿命までプリントした場合における、評価試験結果を示す。評価は、各シートを用いた場合における駆動トルクと、横すじ状の画像不良の発生有無に着目して行った。
【0042】
また、中間転写ベルト10の材質に関しては、本実施例の画像形成装置で用いているPVdFに加え、より硬いポリイミド樹脂(PI)を用いた場合の試験結果を合わせて示す。ポリイミド樹脂の硬度は、ロックウェル硬度で130程度であり、PVdF樹脂のロックウェル硬度110と比較して約20%程度硬い樹脂となっている。なお、駆動トルクに関しては、上記シートを用いた場合において、レターサイズの普通紙を連続で100枚プリントした場合の最大トルクを算出した。なお、本実施の画像形成装置は、50mm/secの速度で駆動され、製品寿命は30000ページである。
【0043】
【表2】

【0044】
中間転写ベルト10材質としてPVdF、摺動部13bの材質としてフッ素樹脂を用いた場合、駆動トルク3kgf・cmと低い値を示していたが、プリント枚数が増加するにつれ摺擦部13が削れ、5000ページ以降で削れ粉が起因の横すじ状の画像不良が悪いレベルで発生した。
【0045】
摺動部13bの材質として、高密度ポリエチレンを用いた場合、摩擦係数が高いため、駆動トルクは5kgf・cmとなり、他の材料と比較して2kgf・cm程度駆動トルクが高くなった。また、磨耗損量の値も高いため、プリント枚数が増加するにつれ摺擦部13によって中間転写ベルト10が削れ、10000ページ以降で、横すじ状の画像不良が軽微なレベルで発生した。
【0046】
本実施例で用いている超高分子量ポリエチレンシートを用いた場合は、摩擦係数が低く、耐摩耗性も優れているため、駆動トルクは3kgf・cmと低く、また製品寿命である30000ページまでプリントした時点においても、横すじ状の画像不良は発生しなかった。
【0047】
また、中間転写ベルト10の材質としてPIを用いた場合についても説明する。尚、PIは、PVdFと比較して硬い材質であるため、摺動部13bがより削れ易くなる傾向がある。
【0048】
摺動部13bの材質としてフッ素樹脂を用いた場合、駆動トルクは中間転写ベルト10の材質にPVdFを用いた場合と同様に3kgf・cmであったが、プリント枚数が増加するにつれ摺擦部13bの削れが発生し、2000ページ以降で横すじ状の画像不良が発生した。また、摺擦部13bから削れ粉による横すじ状の画像不良は、中間転写ベルト10の材質がPVdFである場合と比較して、より発生し易い傾向にある。
【0049】
摺動部13bの材質として、高密度ポリエチレンを用いた場合、駆動トルクは中間転写ベルト10の材質にPVdFを用いた場合と同様に5kgf・cmとなり、超高分子量ポリエチレン、フッ素樹脂と比較して2kgf・cm程度駆動トルクが高くなった。また、横すじ状の画像不良は、中間転写ベルト10の材質がPVdFである場合と比較して発生し易くなり、5000ページ以降で悪いレベルで発生した。一方、本実施例で用いている超高分子量ポリエチレンシートを用いた場合は、中間転写ベルト10の材質にPIを用いた場合においても、駆動トルクは3kgf・cmと低く、また製品寿命である30000ページまでプリントした時点においても横すじ状の画像不良は発生しなかった。
【0050】
また、支持部材であるテンションローラ12を、摺擦部13bを有するガイド部材で構成してもよい。図3は、支持部材12にガイド部材を用いた場合の画像形成装置の一部の拡大図である。支持部材12は、導電性を付与する必要がないので、より摩擦係数を低く抑えるために導電性のない(導電剤を付与しない)超高分子量ポリエチレンシートを用いることが可能である。
【0051】
以上説明したように、中間転写ベルト10と摺擦する摺動部13bを超高分子量ポリエチレンシートで構成することにより、中間転写ベルト10との間に発生する滑り摩擦力を低減することが可能となる。さらに、中間転写ベルトのトルクアップを抑制し、小型の画像形成装置の提供が可能となる。また、耐磨耗性が優れていることから、長期稼動による削り粉の発生を抑制することが可能となる。
【0052】
(実施例2)
次に、本発明の他の実施例について説明する。本実施例の画像形成装置の基本的な構成は実施例1のものと同じである。従って、実施例1のものと同一又はそれに対応する機能、構成を有する要素には同一符号を付して詳しい説明を省略する。
【0053】
本実施例の特徴は、図2に示す実施例1のガイド部材13の構成に対し、ガイド部材13の中間転写ベルト10と接触する接触面が、平面や曲率の異なる曲面などが複合された面で構成されている点にある。
【0054】
図4は、本実施例の画像形成装置の二次転写部近傍を拡大した横断面模式図である。
【0055】
ガイド部材13の中間転写ベルト10との摺擦面は、二次転写領域の上流側のニップ入口上流領域IUとニップ入口下流領域IL,二次転写領域N、二次転写領域の下流側のニップ出口上流領域EUとニップ出口下流領域ELの領域に分けられる。
【0056】
ガイド部材13の全ての領域の摺擦面は、中間転写ベルト10の巻き癖による画像不良防止の観点から、曲率半径が8mm以上の曲面もしくは略平面で構成されることが望ましい。ニップ入口上流領域IUにおいて、ガイド部材13は中間転写ベルト10の進行角度を変える機能を要する。本実施例では、ニップ入口上流領域IUのガイド部材13の摺擦面は、曲率半径10mmの曲面で構成されている。このように、ガイド部材13は、中間転写ベルト10の曲率を決定するニップ入口上流領域IUも一体的に構成することが可能である。ローラ形状と異なり、ガイド部材13は固定部材であるので、その形状も自由に選択することが可能である。
【0057】
ガイド部材13は、ニップ入口上流領域IUの曲率半径を大きい曲面(屈曲部)とすることで、中間転写ベルト10に巻き癖が発生することを抑制する。例えば、対向部材として回転する対向ローラを採用した場合、中間転写ベルト10の曲率半径を大きくすると、二次転写対向ローラ自体の径を大きくする必要があり装置が大型化する。本実施例の構成では、二次転写ベルト10が曲がるとこ(ニップ入口上流領域IU)のみを大きい曲面とすればよいので、装置を大型化することを抑制する効果がある。
【0058】
ニップ入口下流領域ILにおいて、ガイド部材13は中間転写ベルト10を記録材Pに近接させて二次転写領域Nへ進入させる機能を要する。中間転写ベルト10と記録材Pを近接させることにより、中間転者ベルト10上のトナーが記録材Pへ二次転写領域Nの上流で移動した場合の移動距離を短く出来るので、所定位置からのズレが少なくなり、飛び散りを抑制することができる。
【0059】
記録材ニップ入口下流領域ILのガイド部材13の摺擦面は、略平面もしくは曲率半径が非常に大きい曲面で構成するのが好ましい。この場合、二次転写領域Nから離れた位置から中間転写ベルト10と記録材Pを近接させることができ、飛び散り抑制に有利となる。本実施例では、ニップ入口下流領域ILは、略平面で構成されている。
【0060】
二次転写領域Nの張架部材13の摺擦面は、中間転写ベルト10の巻き癖による画像不良が発生しない範囲であれば、どの形状でも良い。本実施例では、二次転写領域Nのガイド部材13の摺擦面を曲率半径15mmの曲面で構成している。
【0061】
ニップ出口上流領域EUにおいて、ガイド部材13は、中間転写ベルト10と記録材Pを分離させる機能と、中間転写ベルト10の進行角度を変える機能を要する。ニップ出口上流領域EUは、中間転写ベルト10を屈曲させる屈曲部である。記録材Pの分離性を高める観点および装置の小型化の観点から、中間転写ベルト10の巻き癖による画像不良が発生しない範囲で曲率半径は小さい方が好ましい。本実施例では、ニップ出口上流領域EUの張架部材13の摺擦面を曲率半径10mmの曲面で構成している。
【0062】
ニップ出口下流領域ELにおいて、ガイド部材13は転写ベルトクリーニング部材16を配設するための領域を確保する機能を有する。一方、ベルトクリーニング部材16を配設するための領域を確保する観点からは、平面もしくは曲率半径は大きい方が好ましい。本実施例では、ニップ出口下流領域ELのガイド部材13の摺擦面を平面で構成している。
【0063】
本実施例は、このような形状のガイド部材13を、基体13aと、摺擦部13bで構成している。摺擦13bは、実施例と同じ理由で、導電性を付与した超高分子ポリエチレンシートで構成している。図4のガイド部材13の形状は、実施例1のガイド部材13の形状に対して、中間転写ベルト10との接触面積が大きく、駆動トルクが上昇し易い形状である。また接触面積が大きいので、摺擦部13が中間転写ベルト10との摺擦によって削られ削り粉が発生する可能性が高い。
【0064】
そこで、優れた自己潤滑性を有しており、低い摩擦係数、且つ、優れた耐磨耗性を備える超高分子量ポリエチレンシートで摺動部13bを構成することで、駆動トルクの上昇を抑制しつつ、削り粉の発生を抑制することが可能である。
【0065】
以上述べたように、転写対向部材を、中間転写ベルト10と摺擦するガイド部材で構成することにより、ガイド部材の摺擦面の形状も局所的に変えることが可能となる。その際、ガイド部材と中間転写ベルト10との接触面積が増加することにより、駆動トルクの上昇と、削り粉の量が増加することは、摺擦部13bを超高分子ポリエチレンで構成することにより、抑制する効果がある。
【0066】
よって、本実施例の構成により、駆動トルクの上昇と、削り粉の量が増加を抑制しつつ、二次転写ベルト10に巻き癖が発生するのを抑制し、かつ二次転写領域Nの手前で中間転写ベルト10を記録材Pに近接させて移動させることができる。さらに、二次転写領域Nを通過した記録材を中間転写ベルト10から分離し易くすることが可能になる。
【符号の説明】
【0067】
10 中間転写体
11、12 支持部材
13 ガイド部材
13a 摺擦部
13b 基体部
20 二次転写部材
P 記録材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー像を担持する像担持体と、前記像担持体からトナー像が一次転写される無端状の中間転写ベルトと、前記中間転写ベルトの内周面を支持し前記中間転写ベルトを回転させる駆動部材と、前記中間転写ベルトの内周面を支持する支持部材と、前記中間転写ベルトの外周面に接触し前記中間転写ベルトと二次転写領域を形成する二次転写部材と、を有し、前記二次転写領域に搬送される記録材に前記中間転写ベルトからトナー像を二次転写する画像形成装置において、
前記支持部材は、前記中間転写ベルトを介して前記二次転写部材に対向する位置で前記中間転写ベルトと摺擦しつつ前記中間転写ベルトの回転方向を規制するガイド部材であり、前記ガイド部材は、前記中間転写ベルトと接触し摺擦する摺擦部と、前記摺擦部を支持する基体部を備え、前記摺擦部を超高分子ポリエチレンで形成することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記摺擦部の前記超高分子ポリエチレンは導電性が付与されており、電気的に接地されていることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記二次転写部材には、転写電源から電圧が印加されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記ガイド部材は、前記中間転写ベルトの回転方向において、前記二次転写領域の上流側に前記中間転写ベルトを曲げる第一の屈曲部と、前記二次転写領域の下流側に前記中間転写ベルトを曲げる第二の屈曲部と、を備えることを特徴する請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−113856(P2013−113856A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−256707(P2011−256707)
【出願日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】