画像形成装置
【課題】紙間パッチによる用紙の裏汚れ顕在化を抑制しつつ、生産性・濃度安定性に優れた画像形成装置を提供する。
【解決手段】濃度検出される被濃度検出領域と、前記被濃度検出領域の外周領域に前記被濃度検出領域よりも低い濃度で形成されるパッチ周縁部を有するトナーパッチを形成する。
【解決手段】濃度検出される被濃度検出領域と、前記被濃度検出領域の外周領域に前記被濃度検出領域よりも低い濃度で形成されるパッチ周縁部を有するトナーパッチを形成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式或いは静電記録方式を利用した複写機、プリンタ、ファクシミリ装置等の画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を用いた画像形成装置では、装置の画質安定性向上を目的に、所定のタイミングで、形成された濃度調整用トナーパッチ画像(以下、単に「パッチ」という。)の濃度を読み取って、画像形成条件を調整することが行われている。
【0003】
この濃度調整について、特許文献2では、生産性低下防止を目的に、プリントジョブ中に、紙接触領域間(以下、単に「紙間」という。)に形成されたトナーパッチ画像の濃度を読み取り、プリント中の濃度変動を逐次調整する紙接触領域間濃度調整(以下、単に「紙間濃度調整」という。)が採られている。なお、以下においては、紙間に形成されるトナーパッチのことを単に「紙間パッチ」という。ここで、紙接触領域とは、二次転写が行われるときに転写材(用紙)と接触する中間転写体上の領域である。また、紙接触領域間とは、中間転写体上における紙接触領域と紙接触領域との間を指す。
【0004】
ところで、紙間濃度調整においては、中間転写体上へ転写された紙間パッチが二次転写部を通過する際、トナーの一部が二次転写ローラ表面に転移し、二次転写ローラ表面を汚してしまうことが懸念される。二次転写ローラ表面がトナーで汚れると、直後のプリント動作時に、二次転写部に搬送された記録材の非印字面側(裏面側)にこのトナーが再転移し、記録材の裏汚れを生じさせる。また、二次転写ローラ表面のトナーは抵抗成分となり、直後のプリント動作の二次転写時にページ全面で均一に転写できない点からも望ましくない。このような問題に対し、特許文献2ではパッチ部のトナーが二次転写部を通過する際に、通常のプリント動作中とは逆極性の転写電界を二次転写部に形成して、二次転写ローラへのトナー付着を防止することが図られている。また、トナーが通過した後には交番電界を二次転写部に形成して、二次転写ローラに付着したトナーを中間転写体に再転写させることで二次転写ローラの汚染防止が図られている。またあるいは、パッチが二次転写部に到達する前に紙間で二次転写ローラを離間させた後にパッチ通過させ、その後に再度当接させることで二次転写ローラをそもそも汚さないといった動作が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平06−030271号公報
【特許文献2】特開2001−109219号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、近年上市される画像形成装置は、画像形成動作やモータ等の駆動部品の小型化や耐久性に対する負荷増大を抑えつつ、高生産性を得るために、紙間領域を従来よりも少なくし、単位時間当たりのプリント枚数を増やすものが多くなっている。そのような画像形成装置では、紙間領域は記録材の搬送方向に対して数十mm程度である。この範囲内では、交番電界を二次転写部に形成する、或いは二次転写ローラを離間、当接させるといったことは、紙間領域の移動時間が短く、画像形成速度(以下、「プロセス速度」という。)を遅くしない限り難しい。また、紙間パッチは一般に5〜10mm四方の大きさであり、プリントに使用する用紙の幅に対して十分小さい。そのため、パッチ部のトナーにより裏汚れが生じた場合、用紙の地色との色の違いによって、用紙幅全面に同じだけ裏汚れした場合と比較して、汚れがより目立ちやすくなる場合がある。
【0007】
従って、本発明の目的は、紙間パッチによる用紙の裏汚れ顕在化を抑制しつつ、生産性、濃度安定性に優れた画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的は本発明に係る画像形成装置にて達成される。要約すれば、本発明は、画像形成手段が形成した画像を担持する中間転写体と、前記中間転写体上の画像を記録材に転写する二次転写手段と、を有する画像形成装置であって、連続して搬送される前記記録材への画像形成動作間である前記中間転写体上における紙間領域に、前記画像形成手段を制御して紙間濃度調整用トナーパッチを形成するトナーパッチ形成手段と、前記トナーパッチの濃度情報を検出する濃度検出手段と、前記濃度検出手段の検出結果を基に、前記画像形成手段が形成する画像の濃度−階調特性を逐次調整する紙間濃度調整手段と、を有した画像形成装置において、前記トナーパッチは、濃度検出される被濃度検出領域と、前記被濃度検出領域の外周領域に前記被濃度検出領域よりも低い濃度で形成されるパッチ周縁部を有することを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、紙間トナーパッチによる用紙の裏汚れ顕在化を抑制しつつ、生産性、濃度安定性に優れた画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る実施例の画像形成装置の全体構成を示す断面図である。
【図2】実施例の画像形成装置のシステム構成を説明するための機能ブロック図である。
【図3】実施例の自動濃度調整手段としての濃度センサの構成図である。
【図4】実施例の紙間濃度調整に用いるトナーパッチの配置図である。
【図5】実施例における中間転写体上の紙間パッチの構成図である。
【図6】実施例の画像形成装置で、紙間パッチの構成違いで裏汚れレベルを比較するための実験に用いた実際のパッチ画像の一例である。
【図7】実施例の画像形成装置で、紙間パッチの構成違いで裏汚れレベルを比較した実験結果である。
【図8】実施例の紙間濃度調整のフロー図である。
【図9】実施例の画像形成装置で、紙間パッチの構成違いで裏汚れレベルを比較した各色の実験結果である。
【図10】実施例の紙間濃度調整のフロー図である。
【図11】実施例のメディアセンサの検出結果と記録材の明度との相関関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る画像形成装置を図面に則して更に詳しく説明する。
【0012】
尚、この実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状それらの相対配置などは、本発明が適用される装置の構成や各種条件により適宜変更されるべきものであり、本発明の範囲を以下の実施の形態に限定する趣旨のものではない。
【0013】
実施例1
<画像形成装置の構成説明>
先ず、本発明に係る画像形成装置の全体的な構成及び動作について説明する。
【0014】
図1は、本実施例の電子写真方式の画像形成装置である、中間転写体を採用したタンデム方式のカラー画像形成装置100の概略構成図である。
【0015】
本実施例にて、画像形成装置100は、給紙部30、現像色分配置した複数の、本実施例では4つの、即ち、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の画像形成部307(307Y、307M、307C、307K)を備えている。各画像形成部307は、像担持体としてのドラム状の電子写真感光体(以下、「感光ドラム」という。)50(50Y、50M、50C、50K)、レーザ露光装置51Y、51M、51C、51K、を備えている。各感光ドラム50の周りには、一次帯電手段を構成する帯電ローラ52Y、52M、52C、52K、現像手段を構成する現像ローラ53Y、53M、53C、53Kなどを備えている。
【0016】
又、画像形成装置100は、中間転写体40、一次転写手段としての転写ローラ54Y、54M、54C、54K、二次転写部60を備えている。二次転写部60は二次転写手段としての二次転写ローラ60aを備え、中間転写体40との間に二次転写部T2を形成している。中間転写体40は無端ベルト状であり、駆動ローラ41、テンションローラ42、及び従動ローラ43により張架され、矢印の方向に移動可能な構成となっている。又、中間転写体40には転写残トナーを除去するクリーニング手段44が設けられている。
【0017】
画像信号は、本実施例の画像形成装置に直接、あるいはネットワーク接続されたホストコンピュータ、又はオペレーションパネル上から、プリンタコントローラを介して、画像形成手段としての画像形成部307に送信される。各画像形成部307は、帯電ローラ52Y、52M、52C、52Kに帯電バイアスとしての直流バイアスを印加し、感光ドラム50Y、50M、50C、50K表面を一様に帯電する。そして、画像信号に基づいて、各感光ドラム50Y、50M、50C、50Kの表面にレーザ露光装置51Y,51M,51C,51Kでレーザ露光し、静電潜像を形成する。静電潜像は、現像ローラ53Y、53M、53C、53Kに直流バイアスを印加することによって現像され、各感光ドラム50Y、50M、50C、50K表面にトナー画像として顕在化する。
【0018】
転写ローラ54Y、54M、54C、54Kを介して、一次転写バイアスとしての直流バイアスが印加され、各感光ドラム50Y、50M、50C、50K上に形成された各色のトナー画像が中間転写体40に一次転写される。なお、本実施例では、プロセス速度、すなわち、中間転写体の移動速度は240mm/secである。本画像形成装置のトナーは、電気的に負極性であり、一次転写バイアスは、正の直流バイアスが用いられている。
【0019】
記録材Pは給紙ローラ31により給紙され、フィード・リタードローラ対32、搬送ローラ対33により搬送され、駆動停止しているレジストローラ対34に搬送される。記録材Pは、レジストローラ対34により斜行が補正された後、所定のタイミングで二次転写部60へ搬送されて、中間転写体40上のトナー画像が記録材Pに転写される。なお、記録材Pへの二次転写時には、二次転写ローラ60aには、画像形成装置の使用環境および各印字モードに応じて所定の転写電流となる正の直流バイアスが選択され、印加される。また、連続プリントジョブ中の紙間およびジョブ終了後には、二次転写ローラ60aには、負の直流バイアスが印加される。中間転写体40が、二次転写部T2にて記録材Pを介さずに直接二次転写ローラ60aに当接する場合に、中間転写体40上のトナーが二次転写ローラ60aに転移するのを、電気的に押し戻すことで緩和している。二次転写後、中間転写体40上に残ったトナーは、クリーニング手段44により除去される。
【0020】
記録材Pは、二次転写部60の二次転写ローラ60aと中間転写体40により、定着器61に搬送される。定着器61では、定着ローラ62、加圧ローラ63に狭持されてトナー画像の定着が行なわれる。そして定着器61を通過した記録材Pは、定着排紙ローラ対64、排紙ローラ対65に搬送され排紙トレー66上に排出積載される。また、記録材Pは、プリンタコントローラから両面印字命令があった場合に、排紙ローラ対65で搬送方向が逆転され、図1における図面右端の両面印字用の紙搬送路を経由して、再び駆動停止しているレジストローラ対34に搬送される。
【0021】
又、画像形成装置100には、さまざまな使用環境下でも安定したプリントをするために、各種センサが設置されている。代表的なものとして、メディアセンサ88、温湿度センサ89、濃度兼色ズレセンサ90(90a、90b)(以下、「濃度センサ」という。)がある。メディアセンサ88はレジストローラ対34の上流部に配置され、レジストローラ対34でいったん静止した記録材Pの記録材明度情報や記録材表面粗さ情報を検出する。そして、記録材Pの平滑度合いを求め、その結果を画像形成装置制御部(以下、「CPU」という。)へ返す。それにより、CPUは記録材Pの種類を判別し、最適な印刷モードを選択する。温湿度センサ89は、本体前面から向かって左側外装のすぐ内側に配置され、画像形成装置内や装置周囲の雰囲気温度および湿度をモニターする。一般に電子写真方式の画像形成装置は、温度および湿度に敏感であるため、これらの情報を基に、帯電バイアスや転写バイアスなどの画像形成条件を、その都度最適な値に変更している。濃度センサ90は、各色間の色ズレおよび画像濃度を計測するための光学センサであり、中間転写体40の搬送方向と直交する長手方向2か所に配置されている。
【0022】
<画像形成装置の機能ブロック図>
次に、本発明の画像形成装置のシステム構成を説明する。
【0023】
図2は、画像形成装置のシステム構成を説明するための機能ブロック図である。プリンタコントローラ302は、ホストコンピュータ301又はオペレーションパネル303と、エンジン制御部304と相互に通信が可能となっている。プリンタコントローラ302は、ホストコンピュータ301又はオペレーションパネル303から通常プリントの画像情報と命令を受け取る。そして、受け取った画像情報を解析してビットデータに変換し、ビデオインターフェイス部305を介して、記録材毎に印字予約コマンド、印字開始コマンド、およびビデオ信号を、エンジン制御部304に送出する。
【0024】
先ず、プリンタコントローラ302は、エンジン制御部304へ、ホストコンピュータ301からの印字命令に従って印字予約コマンドを送信する。次に、印字可能な状態となったタイミングで、エンジン制御部304へ印字開始コマンドを送信する。エンジン制御部304は、プリンタコントローラ302からの印字開始コマンドを受信後、印字動作を開始する。具体的には、CPU306が、プリンタコントローラ302からビデオインターフェイス部305を介して受信した情報に基づき、画像形成部307を制御し、記録材への指定されたプリント動作を完了させる。また、CPU306は、前述の各種センサを制御する役割も担っている。CPU306は、たとえば、画像形成部307及び濃度制御部308を制御し、濃度センサ90で検出するための紙間濃度調整用トナーパッチ(紙間パッチ)を形成するトナーパッチ形成手段としての役割も果たしている。尚、ここでの紙間という用語は、最初に説明したように、二次転写時に紙が接触する中間転写体40(ベルトの領域間である、紙接触領域間の略語を指している。
【0025】
また、CPU306は、上記の印字動作時又は濃度調整時に、RAM309を参照及び更新、又は、ROM310を参照及び更新する。RAM309には、例えば、濃度センサ90の検出結果が格納され、ROM310には、印字モード毎の画像形成部307の設定値が格納されている。
【0026】
<紙間パッチ画像濃度検出手段としての濃度センサの構成>
次に、本実施例の連続通紙時における紙間濃度調整で、紙間に設けたトナーパッチ画像、即ち、紙間パッチの濃度を検出する濃度検出手段としての濃度センサ90の構成について図3を用いて詳細に説明する。
【0027】
濃度センサ90は、中間転写体40および紙間パッチ94に正対する位置に配置されている。本実施例に用いる発光素子91としての照射用LEDには、赤外光を照射するローム株式会社製 SIR−34ST3Fを使用している。受光素子92aおよび92bとしてのフォトトランジスタには、同じく赤外光に受光感度を有するローム株式会社製 RPT−37PB3Fを備えている。発光素子91は、中間転写体40の表面に、中間転写体40の鉛直方向から45°の角度で赤外光を照射する。そして、受光素子92aおよび92bは、中間転写体40の鉛直方向からそれぞれ0°、−45°の角度に配置されている。それぞれ中間転写体40表面、または中間転写体40上の紙間パッチ94からの乱反射光および正反射光を受光する。このように、乱反射光強度と正反射光強度の両方を検知することにより、高濃度から低濃度までのトナーパッチの濃度を検知することができる。
【0028】
<紙間パッチの配置について>
図4は、N枚目と、(N−1)枚目の紙間に、紙間パッチ94が配置されている様子を示している。図4のように、先に説明したトナーパッチ形成手段により中間転写体40上に紙間パッチ94が形成される。即ち、トナーパッチ形成手段は、CPU306にて、各画像形成部307に含まれる感光ドラム50に対して各トナーパッチの濃度情報に基づいて紙間パッチ94を形成する。連続プリントジョブ中のN−1枚目とN枚目の紙領域間の、即ち、連続して搬送される記録材Pへの画像形成動作間である、いわゆる紙間領域(PD)に紙間パッチ94が形成される。搬送方向と直交する長手方向2か所に設置された、濃度センサ90の検出スポットがパッチ中央部と重なるように紙間パッチが配置される。それぞれのトナー各1色ずつ、濃度センサ90aの検出スポットにはイエロー(T−Y)、マゼンタ(T−M)、濃度センサ90bの検出スポットにはシアン(T−C)、ブラック(T−K)の紙間パッチ94が形成される。そして、搬送方向の紙間パッチ94の配置については、次のように配置されている。
【0029】
つまり、前後の紙間長さPDにおいて、N−1枚目画像と上流側紙間パッチ94(T−Y、T−C)との間隔A、上流側紙間パッチ94(T−Y、T−C)と下流側紙間パッチ94(T−M、T−K)の間隔Bである。そして、下流側紙間パッチ94(T−M、T−K)とN枚目画像先端との間隔Cであり、間隔A、B、Cは、均等(A=B=C)となるように配置されている。搬送方向と直交する方向については、4つの紙間パッチ94はいずれも、通紙可能な最大記録材幅PWの内側に配置されている。これは、濃度センサ90(90a、90b)が、色ズレ補正用のセンサを兼ねていて、通紙可能な最大記録材幅PWに対しても色ずれ補正の性能を確保するために配置上の制約があるからである。
【0030】
<紙間パッチトナーによる紙裏汚れについて>
本実施例の画像形成装置において、紙間領域の長さPDは55mmであり、二次転写ローラ60aの周長75.4mmよりも短い。そのため、紙間パッチ94によって二次転写ローラ60aが汚れた場合、直後にプリントされるN枚目の紙裏が汚れてしまう懸念がある。本実施例の画像形成装置では、紙間領域PDにおいて、マイナス50Vの負の直流バイアス(通常時とは逆極性のバイアス)が印加される。これにより、中間転写体40が、記録材Pを介さずに直接二次転写ローラ60aに当接する場合に、中間転写体40上のトナーが二次転写ローラ60aに転移するのを、電気的に押し戻すことで緩和している。しかし、物理的に二次転写ローラ60aに転移するパッチトナーを完全に排除することができない。そのため、本実施例の画像形成装置では、後述する紙裏汚れが目立たない構成で紙間パッチを形成する。
【0031】
更に、プリントジョブ終了後の後回転時において、清掃工程を設けることで二次転写ローラ60aに付着したトナーを中間転写体40に再転写させて除去する方法を採用している。即ち、後回転時の清掃工程は、トナーの帯電特性によらず、極性が反転したトナーも二次転写ローラ60aから中間転写体40に再転移させられるように行う。具体的には、負極性と正極性の直流バイアスを二次転写ローラ60aの1周分ずつ交互、かつ、絶対値を小さくしながら各3周ずつ、合計6周印加している。常温常湿環境下では、−3200V、+1200V、―2100V、+800V、−330V、+300Vの順で、直流バイアスを印加している。
【0032】
<紙間パッチの構成>
次に、本発明の特徴部としての紙間パッチ94の構成について説明する。
【0033】
図5は、本実施例の画像形成装置に用いた中間転写体40上の紙間パッチ94の構成図である。Y方向位置と示した方向が、記録材Pの搬送方向と一致している。濃度センサ90で紙間パッチ画像濃度を精度よく検出するために必要な領域が被濃度検出領域TIであり、該領域TIは、本実施例の画像形成装置では10mm×10mmの矩形領域である。濃度センサ90は、この被濃度検出領域TIの領域でパッチからの複数回の出力を得て、それらを平均化する。これにより、パッチ内の濃度ムラおよび濃度センサ90自体のランダムノイズをキャンセルし、検出精度を向上させている。また、被濃度検出領域TIの外周領域には、被濃度検出領域TIのエッジ部から距離Wだけ拡大した、長方形部TO1と隅部TO2からなるパッチ周縁部TOを設けている。なお、被濃度検出領域TIの各頂点Vの外側にある隅部TO2は、頂点Vを中心とした半径Wの扇形領域となっている。これらの領域、即ち、パッチ周縁部TOでは、被濃度検出領域TIの反射濃度O.D.(以下、「O.D.TI」という。)から段階的に濃度を低くし、最も外側ではトナーがのらないように傾斜濃度領域をもつパッチとした。具体的には、被濃度検出領域TIのエッジから外側への距離Wに応じて、被濃度検出領域TIの反射濃度O.D.であるO.D.TIからゼロまで線形に濃度を低くしている。このような紙間パッチ94の構成としたのは、人間の目は、周囲部との明度差が緩やかに変化するほど濃度差を認識しにくいからである。また、電子写真方式の画像形成装置では、感光ドラム50上の静電潜像を現像部のトナーで顕在化させる時に、少なからず現像下流部のトナーの回り込みが発生する。このトナーの回り込みによって、画像下流端部での濃度上昇による二次転写ローラ60aの汚染が発生する。この汚染を防止するという観点からも、パッチ周縁部TOの濃度を段階的に減少させることは、裏汚れの顕在化を低減することに対して有効だと考えられる。
【0034】
これらを検証するために行った実験結果を、図6、図7を用いて説明する。ブラック単色トナーについて、中間転写体40上におけるO.D.TIを変えつつ、パッチ周縁部TOの傾斜濃度領域の幅Wを変化させて実験を行った。この実験において、二次転写ローラ60aの表面が中間転写体40を通過した後の1周後における裏汚れレベルを比較した実験結果が図7である。また、図6は、その比較実験に用いた実際のパッチ画像の一例である。画像からわかる通り、傾斜濃度領域TOの幅Wを大きくするほど、周囲の記録材下地部との濃度コントラストが滑らかになるのがわかる。なお、図中に示したO.D.TIの値は、これらのパッチを紙上に通常転写させた時のパッチ中央部TIの濃度値であり、次ページの裏汚れ箇所での濃度ではない。記録材としてキヤノン製 コピー/レーザービームプリンター用紙 CS814 A4サイズを用い、濃度測定器としてX−Rite製RD−918を用いた。また、図7における縦軸の目視ランクは、レベル3を裏汚れレベルの許容限界として設定し、まったく裏汚れが確認できないレベルをゼロとした。
【0035】
パッチ画像濃度が同じであれば、傾斜濃度領域幅Wが大きいほど裏汚れのレベルは良化する。また、傾斜濃度領域幅Wが同じであれば、パッチ画像濃度が低いほど、裏汚れのレベルは良化するのがわかる。別の見方をすれば、従来の単なる矩形パッチ(W=0)では、紙間パッチ94として被濃度検出領域TIの反射濃度がO.D.TI=0.3を超えると許容限界を超えてしまう。それに対して、W=5とすれば、O.D.TI=0.7のパッチまでを許容範囲内に収めることができ、O.D.TI=0.3では裏汚れが確認できないレベルにまで改善する、といえる。つまり、紙間パッチ94として選択できる濃度範囲が広がり、紙間濃度調整の制御自由度が向上する。またさらに、異なる紙間領域に、異なる濃度階調パッチを形成すれば、複数階調で調整することが可能となり、濃度−階調特性全体の安定性を向上させることも可能となる。なお、本実施例の画像形成装置では、ブラック、イエロー、マゼンタ、シアンの各色の紙間パッチ94として、O.D.TI=0.5、W=5のパッチを用いている。
【0036】
なお、ここでの反射濃度は、反射面に入射する光量をI0、反射面から反射される光量をIとしたとき、下記式で表されるDrの値である。
Dr=Log10(I0/I)
【0037】
通常、反射面の法線に対して45°の方向から光を当て反射面の垂直方向に反射される光を測定することで求められる。各実施例において、具体的には、反射濃度測定器としてX−Rite製RD−918を用いて測定した値である。特に、各実施例においてパッチ、一面目についての画像の反射濃度は、紙に転写して、定着する前に上記反射濃度測定器で測定した値である。以下の説明においては、CPU306が反射濃度を判定するよう説明を行っていくが、上記反射濃度Drと反射光量Iとの間には一定の関係があり、反射光量Iを直接判断するようしても良い。また、この反射濃度を示す情報が、パッチの濃度情報に相当する。
【0038】
<紙間濃度調整手段について>
次に、複数枚からなる連続プリントジョブ動作がなされた場合に、紙間領域に形成されたパッチ画像濃度を検出し、前述のCPU306が、紙間濃度調整手段として濃度を逐次調整する方法について図8のフローチャートを用いて説明する。
【0039】
Step1−1において、プリントジョブが開始された直後、CPU306は、プリントジョブの残プリント枚数が4枚以上かどうかを判断する。これは、本実施例の画像形成装置が、部品配置構成上の制約から、残プリント枚数が一定枚数以上の時のみ、紙間濃度調整を実行するからである。具体例を示すと、本実施例においては、A4サイズ紙を横通紙するプリントジョブの場合、4枚以上のプリントジョブに対して実行している。これは1枚目と2枚目の紙間パッチ画像濃度を濃度センサ90で検出した時点では、最上流のイエローの感光ドラム50Yには、3枚目の画像がすでに現像され始めており、濃度調整情報を反映できるのは4枚目以後となるからである。ただし、このような場合に2枚目、3枚目の画像については、温湿度センサ89の検出結果、および、RAM309に記憶された各感光ドラム50Y、50M、50C、50Kの寿命記録情報を基に、色ずれ、濃度制御部308が濃度変動を予測し、画像形成装置の安定化を図っている。
【0040】
次に、残プリント枚数が4枚以上の場合について説明する。CPU306は、Step1−2において、トナーパッチ形成手段により紙間パッチ94を形成する。より具体的には、図5、図6に示されたパッチに対応する画像データがROM310に予め記憶されている。そして、CPU306は、Step1−2において、ROM310からパッチに対応する画像データを読み込み、予め決められたタイミングにて順次画像形成部307に画像データに基づく画像形成を行わせる。
【0041】
Step1−3において、濃度センサ90で各色のパッチ画像濃度O.D.を検出する。そして、Step1−4において、あらかじめ決められた紙間パッチ画像データに応じた理想濃度との差分が計算される。そして、Step1−5において、4ページ後に補正すべき画像形成条件の補正量が決定される。なお、本実施例の画像形成装置では、Step1−4で計算された理想濃度との差分全部を一度に戻そうとする、いわゆる比例制御ではない。突発的な変動の影響を受けにくく、目標に漸近する比例・積分制御を用いて、画像形成条件の補正量を決定している。補正される具体的な画像形成条件としては、各色についてRAM309で記憶されている画像データに対するレーザ/スキャナ発光量テーブルである。ただし、帯電バイアスや現像バイアスやその他の画像形成条件であってもよい。なお、ここでのレーザ/スキャナ発光量テーブルとは、画像データに対してどれくらいの強度及び又は時間のレーザ発光を行わせるかを定義する為のテーブルを指す。所謂、画像−濃度変換テーブルや、γテーブルと呼ばれることもある。そして最終的に、Step1−6において、決定された画像形成条件に応じて画像形成が行われる。そして、Step1−1に戻り、残プリント枚数が4枚以上かどうかの判断が再びなされ、4枚未満となるまで同様の動作が繰り返される。
【0042】
残プリント枚数が4枚未満となった場合は、Step1−7において、プリントジョブ中かどうかの判断がなされ、プリント中の場合は、Step1−1へ戻り、プリントジョブ中でない場合は、終了となる。
【0043】
以上、紙間パッチ94の濃度検出による紙間濃度調整において、紙間パッチ94のパッチ周縁部TOの濃度を段階的に減少させることにより、用紙裏汚れの顕在化を抑制しつつ、生産性、濃度安定性に優れた画像形成装置を提供することが可能となる。
【0044】
なお、本実施例では、濃度調整情報を反映できる最短の枚数は4枚であったが、これは最上流のイエロー作像部から濃度センサ90までの距離や各工程の切り替え時間などの、画像形成装置の構成やプリントする記録材の大きさに依存する値である。したがって、本発明はこの数値に限定されるものではない。
【0045】
また、本実施例では、連続プリント中の紙間領域PDにおいて紙間濃度調整を行うこととした。しかし、本発明はそれだけに限らず、プリントジョブの出力枚数にかかわらず本発明の特徴の紙間パッチ94を形成して行っても良い。
【0046】
また、プリントジョブ間の時間が短ければ、直前プリントジョブの紙間パッチ検出結果を用いて、濃度調整を行ってもよい。
【0047】
また、本実施例では、パッチ周縁部TOの濃度の下げ方として線形的な方法を用いたが、三角関数や多次曲線などの方法であってもよい。
【0048】
また、図5に示した隅部TO2は、扇形に限ったものでなく、たとえば三角形などでもよい。
【0049】
また、本実施例では図4に示したとおり、1紙間PDに各色1パッチ94(T−Y、T−M、T−C、T−K)ずつの配置で、各色固定階調パッチとしているが、本発明はこれに限定されない。即ち、画像形成装置の濃度変動の傾向が比較的早く、調整のリアルタイム性が必要な場合は、本実施例のように、固定階調のパッチで調整頻度を上げることが望ましい。一方、画像形成装置の濃度変動の傾向が緩やかで、濃度−階調特性全体の安定性をさらに向上させたい場合には、以下の様に調整するとよい。
【0050】
つまり、異なる紙間領域に、異なる階調パッチを形成し、複数階調で調整するとよい。また、長期的な濃度変動が発生する状況で、その中で短期的な濃度変動が周期的に発生するような場合もある。その場合には、複数の紙間領域における、同一階調パッチの検出結果の平均値を1つの濃度検出結果として扱い、短期的な周期成分を無視できる状態としてから調整するとよい。
【0051】
また、さらにプリント中のトナー消費低減の観点を加味すると、図7の結果から、使用する紙間パッチ94の濃度に応じて、パッチ周縁部TOの幅Wを変えることも有効である。具体的には、本実施例では、使用する紙間パッチ画像濃度がO.D.TI=0.5であるとき、W=5のパッチを用いたのに対して、使用する紙間パッチ94の濃度が小さいときには周縁部TOの幅Wを小さくしても良い。たとえばO.D.TI=0.3であれば、パッチ周縁部TOの濃度も同時に0.3以下に下がるので、裏汚れ許容レベル1となるパッチ周縁部TO幅W=3(mm)のパッチにしてもよい。また、連続プリント中、直前の紙間における紙間パッチ94が記録材Pと重ならない場合についても、周縁部TOを設ける必要はない。これにより、トナー消費を抑制しつつ、生産性・濃度安定性に優れた画像形成装置を提供することが可能となる。
【0052】
実施例2
次に、本発明に係る画像形成装置の第二の実施例について、図9を用いて説明する。本実施例の画像形成装置は、実施例1をさらに改良したものであり、パッチ周縁部TOの形成によるトナー消費を抑制しつつ、生産性、濃度安定性に優れた画像形成装置について説明する。なお、本実施例の大部分のハードウェア構成は、実施例1と同じであるので説明は割愛する。つまり、実施例1と同様に図8で説明したフローチャートが実行される。但し、ROM310に記憶されているパッチに対応する画像データが、実施例1と実施例2とでは異なる。以下、実施例2で記憶されるパッチ画像データに対応するパッチについて実施例1と異なる点について詳述する。本実施例の画像形成装置は、記録材Pの地色とパッチ94との色差が小さいほど、裏汚れに対するマージンが多いという事実から、色毎にパッチ周縁部TOの構成を変更し、さらに紙間濃度調整の制御自由度を向上させている。
【0053】
<本実施例の紙間パッチの構成について>
図9は、被濃度検出領域TI部パッチ画像濃度O.D.TI=0.5固定で、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)の各色について、傾斜濃度領域幅Wを変えた紙間パッチ94の、裏汚れ目視ランクを示した図である。なお、裏汚れ目視は、二次転写ローラ60aの1周後位置で行った。図9のグラフの説明については、実施例1で説明した図7と同様なので、説明は省略する。グラフから明らかなように、紙間パッチ94の色によって、裏汚れの目視ランクが異なる。トナー色がシアン(C)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の順番で、裏汚れ度合いが高くなっていく。一方、実験に用いた用紙(キヤノン製 コピー/レーザービームプリンター用紙 CS814)と、各色のパッチ中央部の色差ΔE94(CIE1994色差式 引用元:CIE(1995):Industrial Colour-Difference Evaluation, CIE Technical Report, 116.)は表1の通りであり、裏汚れ度合いの色順との相関がある。
【0054】
【表1】
【0055】
つまり、記録材Pとの色差が小さい色ほど、裏汚れに対するマージンが多いといえる。
【0056】
本画像形成装置は、上記の特性を活用した紙間パッチ94を採用しており、図9で裏汚れ目視ランク2以下を満足する構成となる、表2のような紙間パッチを採用している。なお、表2に示した被濃度検出領域TI部のパッチ画像濃度O.D.TIとWは、それぞれ前述の実施例1での説明および図5に示した量である。そして、ROM310には、予め表2で規定したサイズの各色のパッチの画像データが記憶されており、CPU306は、ROM310に記憶された画像データに基づき、実施例1と同様にして、画像形成部307を制御し、パッチ画像を形成する。
【0057】
また、ページ数の多いプリントジョブでは、二次転写ローラ60aに、複数の紙間パッチ94のパッチ跡が重なってしまう場合が懸念される。このような場合を想定して、図4で示したように、記録材Pとの色差が最小となる色差の組合せ、つまりイエローとマゼンタ、シアンとブラックが搬送方向に並ぶように、紙間パッチ94が形成されるようにしている。つまり、図8のStep1―2で説明した画像形成部307によるパッチ形成順序が、イエローとマゼンタ、シアンとブラックが搬送方向に並ぶように予め設定されており、CPU306は設定に従いパッチを形成する。なお、各色の紙間パッチ画像濃度が異なる場合は、濃度の違いによる色度の違いを考慮したうえで、記録材Pとの色差が最小となる色差の組合せを選択している。
【0058】
【表2】
【0059】
以上、紙間パッチの濃度検出による紙間濃度調整において、紙間パッチ94のパッチ周縁部TOの幅Wが、色毎に変更されることで、パッチ周縁部TOの形成によるトナー消費を抑制しつつ、さらに生産性、濃度安定性に優れた画像形成装置を提供することが可能となる。
【0060】
実施例3
次に、本発明に係る画像形成装置の第三の実施例について、図10及び図11を用いて説明する。本実施例の画像形成装置は、実施例2をさらに改良したものであり、プリントする記録材Pの種類が変わっても、トナー消費を抑制しつつ生産性、濃度安定性に優れた画像形成装置について説明する。なお、本実施例の画像形成装置の構成は、実施例1と同じであるので説明は割愛する。実施例1及び実施例2との違いは、図2に示したCPU306が、メディアセンサ88の検出結果を使って、各色の記録材Pと紙間パッチ94との色差を予測し、記録材毎に紙間パッチ94の構成を変更することが可能な点である。
【0061】
<紙間濃度調整手段について>
本実施例で実施される、紙間領域PDにおける紙間濃度調整動作について、図10のフローチャートを用いて説明する。Step3−1において、プリントジョブが開始された直後に色差導出手段としてのメディアセンサ88は、レジストローラ対34でいったん静止した記録材Pの転写前の明度情報を検出する。なお、ここでの明度情報とは、転写材の明るさ(反射のし易さ)を示す情報であり、それに類似するパラメータであれば代用できることはいうまでもない。そして、Step3−2において、CPU306はメディアセンサ88の検出結果を基に、記録材Pとその後の紙間領域PDに形成される紙間パッチ94の色差を予測演算し、紙間パッチ94の周縁部TOの隅部構成を決定する。
【0062】
図11は、メディアセンサ88が検出した明度に対する、記録材Pと紙間パッチ94との色差の関係図で、メディアセンサ88が検出した明度情報と、記録材Pと紙間パッチ94との色差に相関がある。そこで、本実施例の画像形成装置では、標準記録材のメディアセンサ88の検出値(以下、「基準値」という。)をセンサROM310に記憶し、プリントジョブ毎に、通紙する記録材Pのメディアセンサ検出値と基準値を比較している。具体的には、標準記録材で裏汚れの目視ランクが1ランク変化する色差となる時の、メディア検出値の出力幅を記憶しており、基準値を中心とした図11の斜線部範囲と、メディアセンサ検出値を比較している。
【0063】
そして、実施例2では、図9の目視ランクでランク2となる紙間パッチ94を採用したのに対して、本実施例では、色差が大きくなり裏汚れが悪くなる記録材の場合には、図9の目視ランクを1ランク上げたランク1となる紙間パッチ94に変更している。また、色差が小さくなり裏汚れが低減する記録材の場合には、目視ランクを1ランク下げたランク3となる紙間パッチ94に変更している。具体的には、表3のようになる。
【0064】
【表3】
【0065】
以降のステップについては、実施例1で説明した、図8のStep1−1からStep1−7と同様であり、説明は省略する。
【0066】
以上、紙間パッチ94の濃度検出による紙間濃度調整において、紙間パッチ94の被濃度検出領域TIおよびパッチ周縁部TOの濃度と、パッチ周縁部TOの大きさを、記録材Pの種類に応じて変更することにより、トナー消費を抑制しつつ、さらに生産性、濃度安定性に優れた画像形成装置を提供することが可能となる。
【0067】
なお本発明は上記構成に限られたものではなく、たとえば、色差導出手段として定着後の記録材上のカラーパッチ画像濃度あるいは色度を検出可能な、いわゆるカラーセンサを用いてもよい。そして、実際の記録材Pとパッチ94の色度をそれぞれ検出し、予測ではなく実際に色差を測定し、記録材毎に紙間パッチ94の構成を変更してもよい。
【0068】
実施例4
次に、本発明に係る画像形成装置の第四の実施例について説明する。本実施例の画像形成装置は、実施例3をさらに改良したものである。本実施例の画像形成装置の構成は、実施例1、実施例2および実施例3と同様であり、また、紙間濃度調整のフローについても実施例3と同様なので説明は割愛する。実施例3との違いは、図2に示したCPU306が、メディアセンサ88だけでなく、温湿度センサ89やRAM309に記憶された各感光ドラム50Y、50M、50C、50Kの寿命記録情報を基にしている点である。即ち、本実施例では、更に感光ドラムの寿命記録情報をも考慮して、色および記録材毎に紙間パッチの構成を変更することが可能な点である。実施例2および実施例3の画像形成装置は、パッチ部と記録材との色差に着目していたのに対し、本実施例では、紙間パッチの二次転写ローラ60aへの転写効率、あるいは二次転写ローラ60aを汚してしまったトナーの、N枚目紙裏への再転写効率に着目している。具体的には、中間転写体40上の紙間パッチ94が二次転写部60に到達した時は、二次転写ニップ部T2の電界によるトナーの移動が支配的となる。一方、二次転写ローラ60aが一周し、N枚目紙裏に到達する時は、通常の記録材Pへの二次転写と同じなので、記録材Pが二次転写ニップ部T2に介在している。従って、電界だけでなく二次転写ローラ60aと記録材Pとの物理的な接触によるトナーの移動を考慮する必要がある。
【0069】
電子写真方式の画像形成装置では、通常、装置の耐久状況(稼働量/劣化状況/寿命に対する稼働率又は使用率)とともに、現像装置内のトナーの帯電特性が劣化する。これは、機内昇温によるダメージで凝集塊ができることや、必要以上のトナー同士の摩擦により、トナーに帯電性を付与している外添粒子が、トナーに埋め込まれてしまうためだと考えられている。そのため、二次転写部60の転写制御方法にもよるが、装置の耐久状況に応じて、二次転写ローラ60aへの紙間パッチ94の転写効率および二次転写ローラ上に強制転写されたトナーのN枚目紙裏への再転写効率が変わる場合がある。
【0070】
これらを考慮すると、温湿度センサ89やRAM309に記憶された各感光ドラム50Y、50M、50C、50Kの寿命記録情報を基に、色および記録材毎に紙間パッチ94の被濃度検出領域とその周縁部の濃度および周縁部の幅を変更してもよい。具体的には、高温高湿環境下では、吸湿によりトナーの帯電特性は弱くなる。そのため、通常環境下よりも同じ転写電界でも、トナーの転移は生じやすくなり、用紙裏汚れの懸念が高まる。そこで、このような場合は、紙間パッチ94の被濃度検出領域TIとその周縁部TOのトナー濃度を低下させる。あるいは、周縁部TOの幅Wを大きくするなどである。
【0071】
また、記録材Pとの物理的な接触によるトナーの移動については、記録材Pの表面粗さとの相関が強い。これを利用して、メディアセンサ88のもう一つの検出値である表面粗さ情報を用いて、記録材毎に紙間パッチ94の被濃度検出領域TIの濃度O.D.TIとその周縁部TOの濃度O.D.TOおよび周縁部TOの幅Wを変更してもよい。具体的には、ラフ紙のような表面性が粗い記録材に対しては、紙間パッチ94の被濃度検出領域TIの濃度O.D.TIとその周縁部TOの濃度O.D.Toを低下させる。あるいは、周縁部TOの幅Wを大きくするなどである。
【0072】
すなわち、装置の耐久状況や使用環境、そしてプリントジョブに使用される記録材情報を基に、紙間パッチ94の転写効率および再転写効率を予測し、紙間パッチ94の被濃度検出領域TIの濃度O.D.TIとその周縁部TOの濃度O.D.Toおよび周縁部TOの幅Wを変更してもよい。これにより、より広範囲な使用状況下においても、トナー消費を抑制しつつ、さらに生産性・濃度安定性に優れた画像形成装置を提供することが可能となる。
【0073】
以上、実施例1から実施例4において、タンデム方式の画像形成装置を用いて説明したが、中間転写体を用いたものであれば4パス方式等の異なる方式の画像形成装置であってもよい。また、中間転写体として無端ベルト形状の例を用いて説明したが、ドラム形状であってもよい。
【符号の説明】
【0074】
40 中間転写体
60a 二次転写ローラ(二次転写手段)
88 メディアセンサ
89 温湿度センサ
90 濃度センサ(濃度検出手段)
94 紙間パッチ
306 CPU(画像形成装置制御部)
307(307Y、307M、307C、307K) 画像形成部
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式或いは静電記録方式を利用した複写機、プリンタ、ファクシミリ装置等の画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を用いた画像形成装置では、装置の画質安定性向上を目的に、所定のタイミングで、形成された濃度調整用トナーパッチ画像(以下、単に「パッチ」という。)の濃度を読み取って、画像形成条件を調整することが行われている。
【0003】
この濃度調整について、特許文献2では、生産性低下防止を目的に、プリントジョブ中に、紙接触領域間(以下、単に「紙間」という。)に形成されたトナーパッチ画像の濃度を読み取り、プリント中の濃度変動を逐次調整する紙接触領域間濃度調整(以下、単に「紙間濃度調整」という。)が採られている。なお、以下においては、紙間に形成されるトナーパッチのことを単に「紙間パッチ」という。ここで、紙接触領域とは、二次転写が行われるときに転写材(用紙)と接触する中間転写体上の領域である。また、紙接触領域間とは、中間転写体上における紙接触領域と紙接触領域との間を指す。
【0004】
ところで、紙間濃度調整においては、中間転写体上へ転写された紙間パッチが二次転写部を通過する際、トナーの一部が二次転写ローラ表面に転移し、二次転写ローラ表面を汚してしまうことが懸念される。二次転写ローラ表面がトナーで汚れると、直後のプリント動作時に、二次転写部に搬送された記録材の非印字面側(裏面側)にこのトナーが再転移し、記録材の裏汚れを生じさせる。また、二次転写ローラ表面のトナーは抵抗成分となり、直後のプリント動作の二次転写時にページ全面で均一に転写できない点からも望ましくない。このような問題に対し、特許文献2ではパッチ部のトナーが二次転写部を通過する際に、通常のプリント動作中とは逆極性の転写電界を二次転写部に形成して、二次転写ローラへのトナー付着を防止することが図られている。また、トナーが通過した後には交番電界を二次転写部に形成して、二次転写ローラに付着したトナーを中間転写体に再転写させることで二次転写ローラの汚染防止が図られている。またあるいは、パッチが二次転写部に到達する前に紙間で二次転写ローラを離間させた後にパッチ通過させ、その後に再度当接させることで二次転写ローラをそもそも汚さないといった動作が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平06−030271号公報
【特許文献2】特開2001−109219号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、近年上市される画像形成装置は、画像形成動作やモータ等の駆動部品の小型化や耐久性に対する負荷増大を抑えつつ、高生産性を得るために、紙間領域を従来よりも少なくし、単位時間当たりのプリント枚数を増やすものが多くなっている。そのような画像形成装置では、紙間領域は記録材の搬送方向に対して数十mm程度である。この範囲内では、交番電界を二次転写部に形成する、或いは二次転写ローラを離間、当接させるといったことは、紙間領域の移動時間が短く、画像形成速度(以下、「プロセス速度」という。)を遅くしない限り難しい。また、紙間パッチは一般に5〜10mm四方の大きさであり、プリントに使用する用紙の幅に対して十分小さい。そのため、パッチ部のトナーにより裏汚れが生じた場合、用紙の地色との色の違いによって、用紙幅全面に同じだけ裏汚れした場合と比較して、汚れがより目立ちやすくなる場合がある。
【0007】
従って、本発明の目的は、紙間パッチによる用紙の裏汚れ顕在化を抑制しつつ、生産性、濃度安定性に優れた画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的は本発明に係る画像形成装置にて達成される。要約すれば、本発明は、画像形成手段が形成した画像を担持する中間転写体と、前記中間転写体上の画像を記録材に転写する二次転写手段と、を有する画像形成装置であって、連続して搬送される前記記録材への画像形成動作間である前記中間転写体上における紙間領域に、前記画像形成手段を制御して紙間濃度調整用トナーパッチを形成するトナーパッチ形成手段と、前記トナーパッチの濃度情報を検出する濃度検出手段と、前記濃度検出手段の検出結果を基に、前記画像形成手段が形成する画像の濃度−階調特性を逐次調整する紙間濃度調整手段と、を有した画像形成装置において、前記トナーパッチは、濃度検出される被濃度検出領域と、前記被濃度検出領域の外周領域に前記被濃度検出領域よりも低い濃度で形成されるパッチ周縁部を有することを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、紙間トナーパッチによる用紙の裏汚れ顕在化を抑制しつつ、生産性、濃度安定性に優れた画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る実施例の画像形成装置の全体構成を示す断面図である。
【図2】実施例の画像形成装置のシステム構成を説明するための機能ブロック図である。
【図3】実施例の自動濃度調整手段としての濃度センサの構成図である。
【図4】実施例の紙間濃度調整に用いるトナーパッチの配置図である。
【図5】実施例における中間転写体上の紙間パッチの構成図である。
【図6】実施例の画像形成装置で、紙間パッチの構成違いで裏汚れレベルを比較するための実験に用いた実際のパッチ画像の一例である。
【図7】実施例の画像形成装置で、紙間パッチの構成違いで裏汚れレベルを比較した実験結果である。
【図8】実施例の紙間濃度調整のフロー図である。
【図9】実施例の画像形成装置で、紙間パッチの構成違いで裏汚れレベルを比較した各色の実験結果である。
【図10】実施例の紙間濃度調整のフロー図である。
【図11】実施例のメディアセンサの検出結果と記録材の明度との相関関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る画像形成装置を図面に則して更に詳しく説明する。
【0012】
尚、この実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状それらの相対配置などは、本発明が適用される装置の構成や各種条件により適宜変更されるべきものであり、本発明の範囲を以下の実施の形態に限定する趣旨のものではない。
【0013】
実施例1
<画像形成装置の構成説明>
先ず、本発明に係る画像形成装置の全体的な構成及び動作について説明する。
【0014】
図1は、本実施例の電子写真方式の画像形成装置である、中間転写体を採用したタンデム方式のカラー画像形成装置100の概略構成図である。
【0015】
本実施例にて、画像形成装置100は、給紙部30、現像色分配置した複数の、本実施例では4つの、即ち、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の画像形成部307(307Y、307M、307C、307K)を備えている。各画像形成部307は、像担持体としてのドラム状の電子写真感光体(以下、「感光ドラム」という。)50(50Y、50M、50C、50K)、レーザ露光装置51Y、51M、51C、51K、を備えている。各感光ドラム50の周りには、一次帯電手段を構成する帯電ローラ52Y、52M、52C、52K、現像手段を構成する現像ローラ53Y、53M、53C、53Kなどを備えている。
【0016】
又、画像形成装置100は、中間転写体40、一次転写手段としての転写ローラ54Y、54M、54C、54K、二次転写部60を備えている。二次転写部60は二次転写手段としての二次転写ローラ60aを備え、中間転写体40との間に二次転写部T2を形成している。中間転写体40は無端ベルト状であり、駆動ローラ41、テンションローラ42、及び従動ローラ43により張架され、矢印の方向に移動可能な構成となっている。又、中間転写体40には転写残トナーを除去するクリーニング手段44が設けられている。
【0017】
画像信号は、本実施例の画像形成装置に直接、あるいはネットワーク接続されたホストコンピュータ、又はオペレーションパネル上から、プリンタコントローラを介して、画像形成手段としての画像形成部307に送信される。各画像形成部307は、帯電ローラ52Y、52M、52C、52Kに帯電バイアスとしての直流バイアスを印加し、感光ドラム50Y、50M、50C、50K表面を一様に帯電する。そして、画像信号に基づいて、各感光ドラム50Y、50M、50C、50Kの表面にレーザ露光装置51Y,51M,51C,51Kでレーザ露光し、静電潜像を形成する。静電潜像は、現像ローラ53Y、53M、53C、53Kに直流バイアスを印加することによって現像され、各感光ドラム50Y、50M、50C、50K表面にトナー画像として顕在化する。
【0018】
転写ローラ54Y、54M、54C、54Kを介して、一次転写バイアスとしての直流バイアスが印加され、各感光ドラム50Y、50M、50C、50K上に形成された各色のトナー画像が中間転写体40に一次転写される。なお、本実施例では、プロセス速度、すなわち、中間転写体の移動速度は240mm/secである。本画像形成装置のトナーは、電気的に負極性であり、一次転写バイアスは、正の直流バイアスが用いられている。
【0019】
記録材Pは給紙ローラ31により給紙され、フィード・リタードローラ対32、搬送ローラ対33により搬送され、駆動停止しているレジストローラ対34に搬送される。記録材Pは、レジストローラ対34により斜行が補正された後、所定のタイミングで二次転写部60へ搬送されて、中間転写体40上のトナー画像が記録材Pに転写される。なお、記録材Pへの二次転写時には、二次転写ローラ60aには、画像形成装置の使用環境および各印字モードに応じて所定の転写電流となる正の直流バイアスが選択され、印加される。また、連続プリントジョブ中の紙間およびジョブ終了後には、二次転写ローラ60aには、負の直流バイアスが印加される。中間転写体40が、二次転写部T2にて記録材Pを介さずに直接二次転写ローラ60aに当接する場合に、中間転写体40上のトナーが二次転写ローラ60aに転移するのを、電気的に押し戻すことで緩和している。二次転写後、中間転写体40上に残ったトナーは、クリーニング手段44により除去される。
【0020】
記録材Pは、二次転写部60の二次転写ローラ60aと中間転写体40により、定着器61に搬送される。定着器61では、定着ローラ62、加圧ローラ63に狭持されてトナー画像の定着が行なわれる。そして定着器61を通過した記録材Pは、定着排紙ローラ対64、排紙ローラ対65に搬送され排紙トレー66上に排出積載される。また、記録材Pは、プリンタコントローラから両面印字命令があった場合に、排紙ローラ対65で搬送方向が逆転され、図1における図面右端の両面印字用の紙搬送路を経由して、再び駆動停止しているレジストローラ対34に搬送される。
【0021】
又、画像形成装置100には、さまざまな使用環境下でも安定したプリントをするために、各種センサが設置されている。代表的なものとして、メディアセンサ88、温湿度センサ89、濃度兼色ズレセンサ90(90a、90b)(以下、「濃度センサ」という。)がある。メディアセンサ88はレジストローラ対34の上流部に配置され、レジストローラ対34でいったん静止した記録材Pの記録材明度情報や記録材表面粗さ情報を検出する。そして、記録材Pの平滑度合いを求め、その結果を画像形成装置制御部(以下、「CPU」という。)へ返す。それにより、CPUは記録材Pの種類を判別し、最適な印刷モードを選択する。温湿度センサ89は、本体前面から向かって左側外装のすぐ内側に配置され、画像形成装置内や装置周囲の雰囲気温度および湿度をモニターする。一般に電子写真方式の画像形成装置は、温度および湿度に敏感であるため、これらの情報を基に、帯電バイアスや転写バイアスなどの画像形成条件を、その都度最適な値に変更している。濃度センサ90は、各色間の色ズレおよび画像濃度を計測するための光学センサであり、中間転写体40の搬送方向と直交する長手方向2か所に配置されている。
【0022】
<画像形成装置の機能ブロック図>
次に、本発明の画像形成装置のシステム構成を説明する。
【0023】
図2は、画像形成装置のシステム構成を説明するための機能ブロック図である。プリンタコントローラ302は、ホストコンピュータ301又はオペレーションパネル303と、エンジン制御部304と相互に通信が可能となっている。プリンタコントローラ302は、ホストコンピュータ301又はオペレーションパネル303から通常プリントの画像情報と命令を受け取る。そして、受け取った画像情報を解析してビットデータに変換し、ビデオインターフェイス部305を介して、記録材毎に印字予約コマンド、印字開始コマンド、およびビデオ信号を、エンジン制御部304に送出する。
【0024】
先ず、プリンタコントローラ302は、エンジン制御部304へ、ホストコンピュータ301からの印字命令に従って印字予約コマンドを送信する。次に、印字可能な状態となったタイミングで、エンジン制御部304へ印字開始コマンドを送信する。エンジン制御部304は、プリンタコントローラ302からの印字開始コマンドを受信後、印字動作を開始する。具体的には、CPU306が、プリンタコントローラ302からビデオインターフェイス部305を介して受信した情報に基づき、画像形成部307を制御し、記録材への指定されたプリント動作を完了させる。また、CPU306は、前述の各種センサを制御する役割も担っている。CPU306は、たとえば、画像形成部307及び濃度制御部308を制御し、濃度センサ90で検出するための紙間濃度調整用トナーパッチ(紙間パッチ)を形成するトナーパッチ形成手段としての役割も果たしている。尚、ここでの紙間という用語は、最初に説明したように、二次転写時に紙が接触する中間転写体40(ベルトの領域間である、紙接触領域間の略語を指している。
【0025】
また、CPU306は、上記の印字動作時又は濃度調整時に、RAM309を参照及び更新、又は、ROM310を参照及び更新する。RAM309には、例えば、濃度センサ90の検出結果が格納され、ROM310には、印字モード毎の画像形成部307の設定値が格納されている。
【0026】
<紙間パッチ画像濃度検出手段としての濃度センサの構成>
次に、本実施例の連続通紙時における紙間濃度調整で、紙間に設けたトナーパッチ画像、即ち、紙間パッチの濃度を検出する濃度検出手段としての濃度センサ90の構成について図3を用いて詳細に説明する。
【0027】
濃度センサ90は、中間転写体40および紙間パッチ94に正対する位置に配置されている。本実施例に用いる発光素子91としての照射用LEDには、赤外光を照射するローム株式会社製 SIR−34ST3Fを使用している。受光素子92aおよび92bとしてのフォトトランジスタには、同じく赤外光に受光感度を有するローム株式会社製 RPT−37PB3Fを備えている。発光素子91は、中間転写体40の表面に、中間転写体40の鉛直方向から45°の角度で赤外光を照射する。そして、受光素子92aおよび92bは、中間転写体40の鉛直方向からそれぞれ0°、−45°の角度に配置されている。それぞれ中間転写体40表面、または中間転写体40上の紙間パッチ94からの乱反射光および正反射光を受光する。このように、乱反射光強度と正反射光強度の両方を検知することにより、高濃度から低濃度までのトナーパッチの濃度を検知することができる。
【0028】
<紙間パッチの配置について>
図4は、N枚目と、(N−1)枚目の紙間に、紙間パッチ94が配置されている様子を示している。図4のように、先に説明したトナーパッチ形成手段により中間転写体40上に紙間パッチ94が形成される。即ち、トナーパッチ形成手段は、CPU306にて、各画像形成部307に含まれる感光ドラム50に対して各トナーパッチの濃度情報に基づいて紙間パッチ94を形成する。連続プリントジョブ中のN−1枚目とN枚目の紙領域間の、即ち、連続して搬送される記録材Pへの画像形成動作間である、いわゆる紙間領域(PD)に紙間パッチ94が形成される。搬送方向と直交する長手方向2か所に設置された、濃度センサ90の検出スポットがパッチ中央部と重なるように紙間パッチが配置される。それぞれのトナー各1色ずつ、濃度センサ90aの検出スポットにはイエロー(T−Y)、マゼンタ(T−M)、濃度センサ90bの検出スポットにはシアン(T−C)、ブラック(T−K)の紙間パッチ94が形成される。そして、搬送方向の紙間パッチ94の配置については、次のように配置されている。
【0029】
つまり、前後の紙間長さPDにおいて、N−1枚目画像と上流側紙間パッチ94(T−Y、T−C)との間隔A、上流側紙間パッチ94(T−Y、T−C)と下流側紙間パッチ94(T−M、T−K)の間隔Bである。そして、下流側紙間パッチ94(T−M、T−K)とN枚目画像先端との間隔Cであり、間隔A、B、Cは、均等(A=B=C)となるように配置されている。搬送方向と直交する方向については、4つの紙間パッチ94はいずれも、通紙可能な最大記録材幅PWの内側に配置されている。これは、濃度センサ90(90a、90b)が、色ズレ補正用のセンサを兼ねていて、通紙可能な最大記録材幅PWに対しても色ずれ補正の性能を確保するために配置上の制約があるからである。
【0030】
<紙間パッチトナーによる紙裏汚れについて>
本実施例の画像形成装置において、紙間領域の長さPDは55mmであり、二次転写ローラ60aの周長75.4mmよりも短い。そのため、紙間パッチ94によって二次転写ローラ60aが汚れた場合、直後にプリントされるN枚目の紙裏が汚れてしまう懸念がある。本実施例の画像形成装置では、紙間領域PDにおいて、マイナス50Vの負の直流バイアス(通常時とは逆極性のバイアス)が印加される。これにより、中間転写体40が、記録材Pを介さずに直接二次転写ローラ60aに当接する場合に、中間転写体40上のトナーが二次転写ローラ60aに転移するのを、電気的に押し戻すことで緩和している。しかし、物理的に二次転写ローラ60aに転移するパッチトナーを完全に排除することができない。そのため、本実施例の画像形成装置では、後述する紙裏汚れが目立たない構成で紙間パッチを形成する。
【0031】
更に、プリントジョブ終了後の後回転時において、清掃工程を設けることで二次転写ローラ60aに付着したトナーを中間転写体40に再転写させて除去する方法を採用している。即ち、後回転時の清掃工程は、トナーの帯電特性によらず、極性が反転したトナーも二次転写ローラ60aから中間転写体40に再転移させられるように行う。具体的には、負極性と正極性の直流バイアスを二次転写ローラ60aの1周分ずつ交互、かつ、絶対値を小さくしながら各3周ずつ、合計6周印加している。常温常湿環境下では、−3200V、+1200V、―2100V、+800V、−330V、+300Vの順で、直流バイアスを印加している。
【0032】
<紙間パッチの構成>
次に、本発明の特徴部としての紙間パッチ94の構成について説明する。
【0033】
図5は、本実施例の画像形成装置に用いた中間転写体40上の紙間パッチ94の構成図である。Y方向位置と示した方向が、記録材Pの搬送方向と一致している。濃度センサ90で紙間パッチ画像濃度を精度よく検出するために必要な領域が被濃度検出領域TIであり、該領域TIは、本実施例の画像形成装置では10mm×10mmの矩形領域である。濃度センサ90は、この被濃度検出領域TIの領域でパッチからの複数回の出力を得て、それらを平均化する。これにより、パッチ内の濃度ムラおよび濃度センサ90自体のランダムノイズをキャンセルし、検出精度を向上させている。また、被濃度検出領域TIの外周領域には、被濃度検出領域TIのエッジ部から距離Wだけ拡大した、長方形部TO1と隅部TO2からなるパッチ周縁部TOを設けている。なお、被濃度検出領域TIの各頂点Vの外側にある隅部TO2は、頂点Vを中心とした半径Wの扇形領域となっている。これらの領域、即ち、パッチ周縁部TOでは、被濃度検出領域TIの反射濃度O.D.(以下、「O.D.TI」という。)から段階的に濃度を低くし、最も外側ではトナーがのらないように傾斜濃度領域をもつパッチとした。具体的には、被濃度検出領域TIのエッジから外側への距離Wに応じて、被濃度検出領域TIの反射濃度O.D.であるO.D.TIからゼロまで線形に濃度を低くしている。このような紙間パッチ94の構成としたのは、人間の目は、周囲部との明度差が緩やかに変化するほど濃度差を認識しにくいからである。また、電子写真方式の画像形成装置では、感光ドラム50上の静電潜像を現像部のトナーで顕在化させる時に、少なからず現像下流部のトナーの回り込みが発生する。このトナーの回り込みによって、画像下流端部での濃度上昇による二次転写ローラ60aの汚染が発生する。この汚染を防止するという観点からも、パッチ周縁部TOの濃度を段階的に減少させることは、裏汚れの顕在化を低減することに対して有効だと考えられる。
【0034】
これらを検証するために行った実験結果を、図6、図7を用いて説明する。ブラック単色トナーについて、中間転写体40上におけるO.D.TIを変えつつ、パッチ周縁部TOの傾斜濃度領域の幅Wを変化させて実験を行った。この実験において、二次転写ローラ60aの表面が中間転写体40を通過した後の1周後における裏汚れレベルを比較した実験結果が図7である。また、図6は、その比較実験に用いた実際のパッチ画像の一例である。画像からわかる通り、傾斜濃度領域TOの幅Wを大きくするほど、周囲の記録材下地部との濃度コントラストが滑らかになるのがわかる。なお、図中に示したO.D.TIの値は、これらのパッチを紙上に通常転写させた時のパッチ中央部TIの濃度値であり、次ページの裏汚れ箇所での濃度ではない。記録材としてキヤノン製 コピー/レーザービームプリンター用紙 CS814 A4サイズを用い、濃度測定器としてX−Rite製RD−918を用いた。また、図7における縦軸の目視ランクは、レベル3を裏汚れレベルの許容限界として設定し、まったく裏汚れが確認できないレベルをゼロとした。
【0035】
パッチ画像濃度が同じであれば、傾斜濃度領域幅Wが大きいほど裏汚れのレベルは良化する。また、傾斜濃度領域幅Wが同じであれば、パッチ画像濃度が低いほど、裏汚れのレベルは良化するのがわかる。別の見方をすれば、従来の単なる矩形パッチ(W=0)では、紙間パッチ94として被濃度検出領域TIの反射濃度がO.D.TI=0.3を超えると許容限界を超えてしまう。それに対して、W=5とすれば、O.D.TI=0.7のパッチまでを許容範囲内に収めることができ、O.D.TI=0.3では裏汚れが確認できないレベルにまで改善する、といえる。つまり、紙間パッチ94として選択できる濃度範囲が広がり、紙間濃度調整の制御自由度が向上する。またさらに、異なる紙間領域に、異なる濃度階調パッチを形成すれば、複数階調で調整することが可能となり、濃度−階調特性全体の安定性を向上させることも可能となる。なお、本実施例の画像形成装置では、ブラック、イエロー、マゼンタ、シアンの各色の紙間パッチ94として、O.D.TI=0.5、W=5のパッチを用いている。
【0036】
なお、ここでの反射濃度は、反射面に入射する光量をI0、反射面から反射される光量をIとしたとき、下記式で表されるDrの値である。
Dr=Log10(I0/I)
【0037】
通常、反射面の法線に対して45°の方向から光を当て反射面の垂直方向に反射される光を測定することで求められる。各実施例において、具体的には、反射濃度測定器としてX−Rite製RD−918を用いて測定した値である。特に、各実施例においてパッチ、一面目についての画像の反射濃度は、紙に転写して、定着する前に上記反射濃度測定器で測定した値である。以下の説明においては、CPU306が反射濃度を判定するよう説明を行っていくが、上記反射濃度Drと反射光量Iとの間には一定の関係があり、反射光量Iを直接判断するようしても良い。また、この反射濃度を示す情報が、パッチの濃度情報に相当する。
【0038】
<紙間濃度調整手段について>
次に、複数枚からなる連続プリントジョブ動作がなされた場合に、紙間領域に形成されたパッチ画像濃度を検出し、前述のCPU306が、紙間濃度調整手段として濃度を逐次調整する方法について図8のフローチャートを用いて説明する。
【0039】
Step1−1において、プリントジョブが開始された直後、CPU306は、プリントジョブの残プリント枚数が4枚以上かどうかを判断する。これは、本実施例の画像形成装置が、部品配置構成上の制約から、残プリント枚数が一定枚数以上の時のみ、紙間濃度調整を実行するからである。具体例を示すと、本実施例においては、A4サイズ紙を横通紙するプリントジョブの場合、4枚以上のプリントジョブに対して実行している。これは1枚目と2枚目の紙間パッチ画像濃度を濃度センサ90で検出した時点では、最上流のイエローの感光ドラム50Yには、3枚目の画像がすでに現像され始めており、濃度調整情報を反映できるのは4枚目以後となるからである。ただし、このような場合に2枚目、3枚目の画像については、温湿度センサ89の検出結果、および、RAM309に記憶された各感光ドラム50Y、50M、50C、50Kの寿命記録情報を基に、色ずれ、濃度制御部308が濃度変動を予測し、画像形成装置の安定化を図っている。
【0040】
次に、残プリント枚数が4枚以上の場合について説明する。CPU306は、Step1−2において、トナーパッチ形成手段により紙間パッチ94を形成する。より具体的には、図5、図6に示されたパッチに対応する画像データがROM310に予め記憶されている。そして、CPU306は、Step1−2において、ROM310からパッチに対応する画像データを読み込み、予め決められたタイミングにて順次画像形成部307に画像データに基づく画像形成を行わせる。
【0041】
Step1−3において、濃度センサ90で各色のパッチ画像濃度O.D.を検出する。そして、Step1−4において、あらかじめ決められた紙間パッチ画像データに応じた理想濃度との差分が計算される。そして、Step1−5において、4ページ後に補正すべき画像形成条件の補正量が決定される。なお、本実施例の画像形成装置では、Step1−4で計算された理想濃度との差分全部を一度に戻そうとする、いわゆる比例制御ではない。突発的な変動の影響を受けにくく、目標に漸近する比例・積分制御を用いて、画像形成条件の補正量を決定している。補正される具体的な画像形成条件としては、各色についてRAM309で記憶されている画像データに対するレーザ/スキャナ発光量テーブルである。ただし、帯電バイアスや現像バイアスやその他の画像形成条件であってもよい。なお、ここでのレーザ/スキャナ発光量テーブルとは、画像データに対してどれくらいの強度及び又は時間のレーザ発光を行わせるかを定義する為のテーブルを指す。所謂、画像−濃度変換テーブルや、γテーブルと呼ばれることもある。そして最終的に、Step1−6において、決定された画像形成条件に応じて画像形成が行われる。そして、Step1−1に戻り、残プリント枚数が4枚以上かどうかの判断が再びなされ、4枚未満となるまで同様の動作が繰り返される。
【0042】
残プリント枚数が4枚未満となった場合は、Step1−7において、プリントジョブ中かどうかの判断がなされ、プリント中の場合は、Step1−1へ戻り、プリントジョブ中でない場合は、終了となる。
【0043】
以上、紙間パッチ94の濃度検出による紙間濃度調整において、紙間パッチ94のパッチ周縁部TOの濃度を段階的に減少させることにより、用紙裏汚れの顕在化を抑制しつつ、生産性、濃度安定性に優れた画像形成装置を提供することが可能となる。
【0044】
なお、本実施例では、濃度調整情報を反映できる最短の枚数は4枚であったが、これは最上流のイエロー作像部から濃度センサ90までの距離や各工程の切り替え時間などの、画像形成装置の構成やプリントする記録材の大きさに依存する値である。したがって、本発明はこの数値に限定されるものではない。
【0045】
また、本実施例では、連続プリント中の紙間領域PDにおいて紙間濃度調整を行うこととした。しかし、本発明はそれだけに限らず、プリントジョブの出力枚数にかかわらず本発明の特徴の紙間パッチ94を形成して行っても良い。
【0046】
また、プリントジョブ間の時間が短ければ、直前プリントジョブの紙間パッチ検出結果を用いて、濃度調整を行ってもよい。
【0047】
また、本実施例では、パッチ周縁部TOの濃度の下げ方として線形的な方法を用いたが、三角関数や多次曲線などの方法であってもよい。
【0048】
また、図5に示した隅部TO2は、扇形に限ったものでなく、たとえば三角形などでもよい。
【0049】
また、本実施例では図4に示したとおり、1紙間PDに各色1パッチ94(T−Y、T−M、T−C、T−K)ずつの配置で、各色固定階調パッチとしているが、本発明はこれに限定されない。即ち、画像形成装置の濃度変動の傾向が比較的早く、調整のリアルタイム性が必要な場合は、本実施例のように、固定階調のパッチで調整頻度を上げることが望ましい。一方、画像形成装置の濃度変動の傾向が緩やかで、濃度−階調特性全体の安定性をさらに向上させたい場合には、以下の様に調整するとよい。
【0050】
つまり、異なる紙間領域に、異なる階調パッチを形成し、複数階調で調整するとよい。また、長期的な濃度変動が発生する状況で、その中で短期的な濃度変動が周期的に発生するような場合もある。その場合には、複数の紙間領域における、同一階調パッチの検出結果の平均値を1つの濃度検出結果として扱い、短期的な周期成分を無視できる状態としてから調整するとよい。
【0051】
また、さらにプリント中のトナー消費低減の観点を加味すると、図7の結果から、使用する紙間パッチ94の濃度に応じて、パッチ周縁部TOの幅Wを変えることも有効である。具体的には、本実施例では、使用する紙間パッチ画像濃度がO.D.TI=0.5であるとき、W=5のパッチを用いたのに対して、使用する紙間パッチ94の濃度が小さいときには周縁部TOの幅Wを小さくしても良い。たとえばO.D.TI=0.3であれば、パッチ周縁部TOの濃度も同時に0.3以下に下がるので、裏汚れ許容レベル1となるパッチ周縁部TO幅W=3(mm)のパッチにしてもよい。また、連続プリント中、直前の紙間における紙間パッチ94が記録材Pと重ならない場合についても、周縁部TOを設ける必要はない。これにより、トナー消費を抑制しつつ、生産性・濃度安定性に優れた画像形成装置を提供することが可能となる。
【0052】
実施例2
次に、本発明に係る画像形成装置の第二の実施例について、図9を用いて説明する。本実施例の画像形成装置は、実施例1をさらに改良したものであり、パッチ周縁部TOの形成によるトナー消費を抑制しつつ、生産性、濃度安定性に優れた画像形成装置について説明する。なお、本実施例の大部分のハードウェア構成は、実施例1と同じであるので説明は割愛する。つまり、実施例1と同様に図8で説明したフローチャートが実行される。但し、ROM310に記憶されているパッチに対応する画像データが、実施例1と実施例2とでは異なる。以下、実施例2で記憶されるパッチ画像データに対応するパッチについて実施例1と異なる点について詳述する。本実施例の画像形成装置は、記録材Pの地色とパッチ94との色差が小さいほど、裏汚れに対するマージンが多いという事実から、色毎にパッチ周縁部TOの構成を変更し、さらに紙間濃度調整の制御自由度を向上させている。
【0053】
<本実施例の紙間パッチの構成について>
図9は、被濃度検出領域TI部パッチ画像濃度O.D.TI=0.5固定で、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)の各色について、傾斜濃度領域幅Wを変えた紙間パッチ94の、裏汚れ目視ランクを示した図である。なお、裏汚れ目視は、二次転写ローラ60aの1周後位置で行った。図9のグラフの説明については、実施例1で説明した図7と同様なので、説明は省略する。グラフから明らかなように、紙間パッチ94の色によって、裏汚れの目視ランクが異なる。トナー色がシアン(C)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の順番で、裏汚れ度合いが高くなっていく。一方、実験に用いた用紙(キヤノン製 コピー/レーザービームプリンター用紙 CS814)と、各色のパッチ中央部の色差ΔE94(CIE1994色差式 引用元:CIE(1995):Industrial Colour-Difference Evaluation, CIE Technical Report, 116.)は表1の通りであり、裏汚れ度合いの色順との相関がある。
【0054】
【表1】
【0055】
つまり、記録材Pとの色差が小さい色ほど、裏汚れに対するマージンが多いといえる。
【0056】
本画像形成装置は、上記の特性を活用した紙間パッチ94を採用しており、図9で裏汚れ目視ランク2以下を満足する構成となる、表2のような紙間パッチを採用している。なお、表2に示した被濃度検出領域TI部のパッチ画像濃度O.D.TIとWは、それぞれ前述の実施例1での説明および図5に示した量である。そして、ROM310には、予め表2で規定したサイズの各色のパッチの画像データが記憶されており、CPU306は、ROM310に記憶された画像データに基づき、実施例1と同様にして、画像形成部307を制御し、パッチ画像を形成する。
【0057】
また、ページ数の多いプリントジョブでは、二次転写ローラ60aに、複数の紙間パッチ94のパッチ跡が重なってしまう場合が懸念される。このような場合を想定して、図4で示したように、記録材Pとの色差が最小となる色差の組合せ、つまりイエローとマゼンタ、シアンとブラックが搬送方向に並ぶように、紙間パッチ94が形成されるようにしている。つまり、図8のStep1―2で説明した画像形成部307によるパッチ形成順序が、イエローとマゼンタ、シアンとブラックが搬送方向に並ぶように予め設定されており、CPU306は設定に従いパッチを形成する。なお、各色の紙間パッチ画像濃度が異なる場合は、濃度の違いによる色度の違いを考慮したうえで、記録材Pとの色差が最小となる色差の組合せを選択している。
【0058】
【表2】
【0059】
以上、紙間パッチの濃度検出による紙間濃度調整において、紙間パッチ94のパッチ周縁部TOの幅Wが、色毎に変更されることで、パッチ周縁部TOの形成によるトナー消費を抑制しつつ、さらに生産性、濃度安定性に優れた画像形成装置を提供することが可能となる。
【0060】
実施例3
次に、本発明に係る画像形成装置の第三の実施例について、図10及び図11を用いて説明する。本実施例の画像形成装置は、実施例2をさらに改良したものであり、プリントする記録材Pの種類が変わっても、トナー消費を抑制しつつ生産性、濃度安定性に優れた画像形成装置について説明する。なお、本実施例の画像形成装置の構成は、実施例1と同じであるので説明は割愛する。実施例1及び実施例2との違いは、図2に示したCPU306が、メディアセンサ88の検出結果を使って、各色の記録材Pと紙間パッチ94との色差を予測し、記録材毎に紙間パッチ94の構成を変更することが可能な点である。
【0061】
<紙間濃度調整手段について>
本実施例で実施される、紙間領域PDにおける紙間濃度調整動作について、図10のフローチャートを用いて説明する。Step3−1において、プリントジョブが開始された直後に色差導出手段としてのメディアセンサ88は、レジストローラ対34でいったん静止した記録材Pの転写前の明度情報を検出する。なお、ここでの明度情報とは、転写材の明るさ(反射のし易さ)を示す情報であり、それに類似するパラメータであれば代用できることはいうまでもない。そして、Step3−2において、CPU306はメディアセンサ88の検出結果を基に、記録材Pとその後の紙間領域PDに形成される紙間パッチ94の色差を予測演算し、紙間パッチ94の周縁部TOの隅部構成を決定する。
【0062】
図11は、メディアセンサ88が検出した明度に対する、記録材Pと紙間パッチ94との色差の関係図で、メディアセンサ88が検出した明度情報と、記録材Pと紙間パッチ94との色差に相関がある。そこで、本実施例の画像形成装置では、標準記録材のメディアセンサ88の検出値(以下、「基準値」という。)をセンサROM310に記憶し、プリントジョブ毎に、通紙する記録材Pのメディアセンサ検出値と基準値を比較している。具体的には、標準記録材で裏汚れの目視ランクが1ランク変化する色差となる時の、メディア検出値の出力幅を記憶しており、基準値を中心とした図11の斜線部範囲と、メディアセンサ検出値を比較している。
【0063】
そして、実施例2では、図9の目視ランクでランク2となる紙間パッチ94を採用したのに対して、本実施例では、色差が大きくなり裏汚れが悪くなる記録材の場合には、図9の目視ランクを1ランク上げたランク1となる紙間パッチ94に変更している。また、色差が小さくなり裏汚れが低減する記録材の場合には、目視ランクを1ランク下げたランク3となる紙間パッチ94に変更している。具体的には、表3のようになる。
【0064】
【表3】
【0065】
以降のステップについては、実施例1で説明した、図8のStep1−1からStep1−7と同様であり、説明は省略する。
【0066】
以上、紙間パッチ94の濃度検出による紙間濃度調整において、紙間パッチ94の被濃度検出領域TIおよびパッチ周縁部TOの濃度と、パッチ周縁部TOの大きさを、記録材Pの種類に応じて変更することにより、トナー消費を抑制しつつ、さらに生産性、濃度安定性に優れた画像形成装置を提供することが可能となる。
【0067】
なお本発明は上記構成に限られたものではなく、たとえば、色差導出手段として定着後の記録材上のカラーパッチ画像濃度あるいは色度を検出可能な、いわゆるカラーセンサを用いてもよい。そして、実際の記録材Pとパッチ94の色度をそれぞれ検出し、予測ではなく実際に色差を測定し、記録材毎に紙間パッチ94の構成を変更してもよい。
【0068】
実施例4
次に、本発明に係る画像形成装置の第四の実施例について説明する。本実施例の画像形成装置は、実施例3をさらに改良したものである。本実施例の画像形成装置の構成は、実施例1、実施例2および実施例3と同様であり、また、紙間濃度調整のフローについても実施例3と同様なので説明は割愛する。実施例3との違いは、図2に示したCPU306が、メディアセンサ88だけでなく、温湿度センサ89やRAM309に記憶された各感光ドラム50Y、50M、50C、50Kの寿命記録情報を基にしている点である。即ち、本実施例では、更に感光ドラムの寿命記録情報をも考慮して、色および記録材毎に紙間パッチの構成を変更することが可能な点である。実施例2および実施例3の画像形成装置は、パッチ部と記録材との色差に着目していたのに対し、本実施例では、紙間パッチの二次転写ローラ60aへの転写効率、あるいは二次転写ローラ60aを汚してしまったトナーの、N枚目紙裏への再転写効率に着目している。具体的には、中間転写体40上の紙間パッチ94が二次転写部60に到達した時は、二次転写ニップ部T2の電界によるトナーの移動が支配的となる。一方、二次転写ローラ60aが一周し、N枚目紙裏に到達する時は、通常の記録材Pへの二次転写と同じなので、記録材Pが二次転写ニップ部T2に介在している。従って、電界だけでなく二次転写ローラ60aと記録材Pとの物理的な接触によるトナーの移動を考慮する必要がある。
【0069】
電子写真方式の画像形成装置では、通常、装置の耐久状況(稼働量/劣化状況/寿命に対する稼働率又は使用率)とともに、現像装置内のトナーの帯電特性が劣化する。これは、機内昇温によるダメージで凝集塊ができることや、必要以上のトナー同士の摩擦により、トナーに帯電性を付与している外添粒子が、トナーに埋め込まれてしまうためだと考えられている。そのため、二次転写部60の転写制御方法にもよるが、装置の耐久状況に応じて、二次転写ローラ60aへの紙間パッチ94の転写効率および二次転写ローラ上に強制転写されたトナーのN枚目紙裏への再転写効率が変わる場合がある。
【0070】
これらを考慮すると、温湿度センサ89やRAM309に記憶された各感光ドラム50Y、50M、50C、50Kの寿命記録情報を基に、色および記録材毎に紙間パッチ94の被濃度検出領域とその周縁部の濃度および周縁部の幅を変更してもよい。具体的には、高温高湿環境下では、吸湿によりトナーの帯電特性は弱くなる。そのため、通常環境下よりも同じ転写電界でも、トナーの転移は生じやすくなり、用紙裏汚れの懸念が高まる。そこで、このような場合は、紙間パッチ94の被濃度検出領域TIとその周縁部TOのトナー濃度を低下させる。あるいは、周縁部TOの幅Wを大きくするなどである。
【0071】
また、記録材Pとの物理的な接触によるトナーの移動については、記録材Pの表面粗さとの相関が強い。これを利用して、メディアセンサ88のもう一つの検出値である表面粗さ情報を用いて、記録材毎に紙間パッチ94の被濃度検出領域TIの濃度O.D.TIとその周縁部TOの濃度O.D.TOおよび周縁部TOの幅Wを変更してもよい。具体的には、ラフ紙のような表面性が粗い記録材に対しては、紙間パッチ94の被濃度検出領域TIの濃度O.D.TIとその周縁部TOの濃度O.D.Toを低下させる。あるいは、周縁部TOの幅Wを大きくするなどである。
【0072】
すなわち、装置の耐久状況や使用環境、そしてプリントジョブに使用される記録材情報を基に、紙間パッチ94の転写効率および再転写効率を予測し、紙間パッチ94の被濃度検出領域TIの濃度O.D.TIとその周縁部TOの濃度O.D.Toおよび周縁部TOの幅Wを変更してもよい。これにより、より広範囲な使用状況下においても、トナー消費を抑制しつつ、さらに生産性・濃度安定性に優れた画像形成装置を提供することが可能となる。
【0073】
以上、実施例1から実施例4において、タンデム方式の画像形成装置を用いて説明したが、中間転写体を用いたものであれば4パス方式等の異なる方式の画像形成装置であってもよい。また、中間転写体として無端ベルト形状の例を用いて説明したが、ドラム形状であってもよい。
【符号の説明】
【0074】
40 中間転写体
60a 二次転写ローラ(二次転写手段)
88 メディアセンサ
89 温湿度センサ
90 濃度センサ(濃度検出手段)
94 紙間パッチ
306 CPU(画像形成装置制御部)
307(307Y、307M、307C、307K) 画像形成部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成手段が形成した画像を担持する中間転写体と、前記中間転写体上の画像を記録材に転写する二次転写手段と、を有する画像形成装置であって、
連続して搬送される前記記録材への画像形成動作間である前記中間転写体上における紙間領域に、前記画像形成手段を制御して紙間濃度調整用トナーパッチを形成するトナーパッチ形成手段と、
前記トナーパッチの濃度情報を検出する濃度検出手段と、
前記濃度検出手段の検出結果を基に、前記画像形成手段が形成する画像の濃度−階調特性を逐次調整する紙間濃度調整手段と、を有した画像形成装置において、
前記トナーパッチは、濃度検出される被濃度検出領域と、前記被濃度検出領域の外周領域に前記被濃度検出領域よりも低い濃度で形成されるパッチ周縁部を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記パッチ周縁部の濃度は、前記被濃度検出領域の端部からの距離に応じて前記被濃度検出領域の濃度から段階的に低くなることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記トナーパッチ形成手段は、前記被濃度検出領域のパッチ画像濃度に応じて、前記パッチ周縁部の大きさを変更することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記トナーパッチ形成手段は、前記紙間濃度調整に使用するパッチの色に応じて、前記被濃度検出領域のパッチ画像濃度、前記パッチ周縁部の大きさ又は前記パッチ周縁部の濃度の少なくともいずれか一つを変更することを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれかの項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記記録材と前記トナーパッチの被濃度検出領域との色差を予測あるいは測定する色差導出手段を有し、該色差導出手段が導出した色差に応じて、前記被濃度検出領域のパッチ画像濃度、前記パッチ周縁部の大きさ又は前記パッチ周縁部の濃度の少なくともいずれか一つを変更することを特徴とする請求項1から4までのいずれかの項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記色差導出手段は、転写前に前記記録材の種類を判別するメディアセンサであることを特徴とする請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記色差導出手段は、定着後の前記記録材および前記記録材上の画像の色度を検出可能なカラーセンサであることを特徴とする請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記画像形成装置内若しくは該装置周囲の温湿度を検出する温湿度センサ、前記画像形成装置の構成部品に関する使用状況を記憶した記憶装置又は前記記録材の表面粗さを検出する記録材表面粗さセンサのいずれか少なくとも一つを有し、該温湿度センサの検出結果、該記憶装置の情報又は該記録材表面粗さ検出結果の少なくともいずれか一つを基に、前記被濃度検出領域のパッチ画像濃度、又は前記パッチ周縁部の大きさ若しくは濃度の少なくともいずれか一つを変更することを特徴とする請求項1から7までのいずれかの項に記載の画像形成装置。
【請求項1】
画像形成手段が形成した画像を担持する中間転写体と、前記中間転写体上の画像を記録材に転写する二次転写手段と、を有する画像形成装置であって、
連続して搬送される前記記録材への画像形成動作間である前記中間転写体上における紙間領域に、前記画像形成手段を制御して紙間濃度調整用トナーパッチを形成するトナーパッチ形成手段と、
前記トナーパッチの濃度情報を検出する濃度検出手段と、
前記濃度検出手段の検出結果を基に、前記画像形成手段が形成する画像の濃度−階調特性を逐次調整する紙間濃度調整手段と、を有した画像形成装置において、
前記トナーパッチは、濃度検出される被濃度検出領域と、前記被濃度検出領域の外周領域に前記被濃度検出領域よりも低い濃度で形成されるパッチ周縁部を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記パッチ周縁部の濃度は、前記被濃度検出領域の端部からの距離に応じて前記被濃度検出領域の濃度から段階的に低くなることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記トナーパッチ形成手段は、前記被濃度検出領域のパッチ画像濃度に応じて、前記パッチ周縁部の大きさを変更することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記トナーパッチ形成手段は、前記紙間濃度調整に使用するパッチの色に応じて、前記被濃度検出領域のパッチ画像濃度、前記パッチ周縁部の大きさ又は前記パッチ周縁部の濃度の少なくともいずれか一つを変更することを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれかの項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記記録材と前記トナーパッチの被濃度検出領域との色差を予測あるいは測定する色差導出手段を有し、該色差導出手段が導出した色差に応じて、前記被濃度検出領域のパッチ画像濃度、前記パッチ周縁部の大きさ又は前記パッチ周縁部の濃度の少なくともいずれか一つを変更することを特徴とする請求項1から4までのいずれかの項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記色差導出手段は、転写前に前記記録材の種類を判別するメディアセンサであることを特徴とする請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記色差導出手段は、定着後の前記記録材および前記記録材上の画像の色度を検出可能なカラーセンサであることを特徴とする請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記画像形成装置内若しくは該装置周囲の温湿度を検出する温湿度センサ、前記画像形成装置の構成部品に関する使用状況を記憶した記憶装置又は前記記録材の表面粗さを検出する記録材表面粗さセンサのいずれか少なくとも一つを有し、該温湿度センサの検出結果、該記憶装置の情報又は該記録材表面粗さ検出結果の少なくともいずれか一つを基に、前記被濃度検出領域のパッチ画像濃度、又は前記パッチ周縁部の大きさ若しくは濃度の少なくともいずれか一つを変更することを特徴とする請求項1から7までのいずれかの項に記載の画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図6】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図6】
【公開番号】特開2013−114093(P2013−114093A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−261017(P2011−261017)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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