説明

画像形成装置

【課題】 無端ベルトを張架する張架手段の数を最小限に抑えつつ、該無端ベルトの弛みと寄り、トナー画像の飛び散りを抑制する。
【解決手段】 二次転写ローラ15と中間転写ベルト10との間に形成される二次転写ニップ部7よりも該中間転写ベルト10の回転方向上流側に配置され、該中間転写ベルト10の内周面を張架する従動ローラ13と、該従動ローラ13の近傍で且つ二次転写ニップ部7よりも中間転写ベルト10の回転方向上流側において該中間転写ベルト10に向けて記録材6を案内する下搬送ガイド31及び上搬送ガイド32と、従動ローラ13の位置に応じて、二次転写ニップ部7へ中間転写ベルト10が進入する角度が変化するように従動ローラ13を移動可能に支持すると共に、該従動ローラ13の移動に連動して下搬送ガイド31及び上搬送ガイド32を移動可能に支持するガイド支持部材30とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式或いは静電記録方式で像担持体上に形成したトナー画像を無端ベルトからなる中間転写体に転写した後に記録材に転写する中間転写方式を採用した複写機、プリンタなどの画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、複写機やレーザープリンタなどの画像形成装置として、無端ベルトからなる中間転写体を有する構成が知られている。
【0003】
このような画像形成装置は、像担持体上に形成したトナー画像を一次転写工程と二次転写工程とにより、記録材上にカラー画像(多重画像)を形成するものである。
【0004】
特許文献1に記載された画像形成装置は、二次転写部近傍の構成として、中間転写ベルトを張架するローラを、二次転写対向部材である駆動ローラと、従動ローラとで構成している。この従動ローラは、省スペースに配慮した小径ローラで構成されるとともに、記録材が中間転写ベルトに沿って二次転写接触部(以下、「二次転写ニップ部」という)に進入するように中間転写ベルトの回転軌跡を規制する機能を持つ。これにより、二次転写ニップ部よりも中間転写ベルト回転方向上流側の転写電界が中間転写ベルト上のトナー画像に作用してトナー画像の一部が中間転写ベルトから飛散する現象(所謂、飛び散り)を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−69466号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1においては、中間転写ベルトを回転させる駆動ローラが、感光体ドラムと一次転写ローラとが対向される一次転写部よりも中間転写ベルト回転方向上流側に配置されている。一次転写部は、中間転写ベルトを回転させる際に発生する摺動抵抗が最も高くなる。このため、付勢手段により中間転写ベルトに付与する張力が十分でないと、駆動ローラによって中間転写ベルトを一次転写部に送り込むことができず、駆動ローラと一次転写部との間で中間転写ベルトにたるみが発生する。中間転写ベルトがたるむと、一次転写部での画像転写位置ずれによる画像不良や、周囲の部品と接触することによる中間転写ベルトの破損といった問題が生じる。
【0007】
一方、中間転写ベルトの駆動ローラを一次転写部よりも中間転写ベルト回転方向下流側に配置することにより、一次転写部の中間転写ベルトの摺動抵抗増加による中間転写ベルトのたるみを防止することができる。ただし、特許文献1の駆動ローラは中間転写ベルト上に形成したトナー画像をシートに転写する二次転写部材を兼ねている。二次転写部材は位置を固定する必要があるため、テンションローラを特許文献1における駆動ローラの位置に配置することができない。従って、ローラ等の中間転写ベルトの張架部材を追加することなく、該中間転写ベルトに張力を付与するには、二次転写部の近傍に配置した従動ローラを移動可能なテンションローラとし、付勢手段により付勢する必要がある。
【0008】
しかしながら、このような従動ローラをテンションローラとすると、次のような問題が生じる。
【0009】
各ローラを支持する部材の寸法精度のばらつき等により、駆動ローラと二次転写部の従動ローラとは回転軸同士が平行でない状態となり得る。駆動ローラと従動ローラが平行でなくなると、中間転写ベルトを幅方向(中間転写ベルト回転方向と直交する方向)における一端側に、中間転写ベルトに寄らせようとする力が発生する。このため、中間転写ベルトが寄ってしまうと、周囲の部材に突き当たって中間転写ベルトが破損する。
【0010】
また、製造時の精度のばらつき、製造後の経時変化、或いは環境温度変化により中間転写ベルトに周長変化が発生した場合、二次転写ニップ部に進入する記録材と中間転写ベルトとの間に隙間が生じる。これにより、従動ローラによりトナー画像の飛び散りを抑制する効果が得られなくなる。
【0011】
本発明の目的は、無端ベルトを張架する張架手段の数を最小限に抑えつつ、該無端ベルトの弛みと寄り、トナー画像の飛び散りを抑制する画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するための本発明に係る画像形成装置の代表的な構成は、トナー画像を担持して回転される無端ベルトと、前記無端ベルトの外周面に対向し、前記無端ベルト上のトナー画像を記録材に転写する転写手段と、前記転写手段と前記無端ベルトとの間に形成される転写部よりも前記無端ベルトの回転方向上流側に配置され、該無端ベルトの内周面を張架する張架手段と、前記張架手段の近傍で且つ前記転写部よりも前記無端ベルトの回転方向上流側において該無端ベルトに向けて記録材を案内する搬送ガイドと、前記張架手段の位置に応じて、前記転写部へ前記無端ベルトが進入する角度が変化するように前記張架手段を移動可能に支持すると共に、前記張架手段の移動に連動して前記搬送ガイドを移動可能に支持する支持手段とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、無端ベルトを張架して駆動する駆動ローラと、従動ローラとが平行でない状態となっても、張架手段の位置の変化を利用することにより、無端ベルトを幅方向の一端側に寄らせようとする力を抑制することができる。これにより、無端ベルトの寄りや破損を抑制することができる。
【0014】
また、転写部よりも無端ベルトの回転方向上流側に張架手段を配置した場合であっても、該無端ベルトの周長変化による張架手段の位置の変化に追従させて搬送ガイドを移動させる。これにより、無端ベルトの周長変化が生じても、転写部に進入する記録材を常に無端ベルトに沿わせることができる。これにより、無端ベルトと記録材との間に隙間が生じることがなく、無端ベルトに形成されたトナー画像の飛び散りを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る画像形成装置の第1実施形態の構成を説明する断面説明図である。
【図2】第1実施形態における二次転写部の構成を説明する斜視説明図である。
【図3】(a),(b)は駆動ローラの傾きによる無端ベルトの寄りを説明する斜視説明図及び平面説明図である。
【図4】(a),(b)は張架手段の移動による無端ベルトの寄り抑制を説明する斜視説明図及び平面説明図である。
【図5】(a)〜(b)は無端ベルトの周長変化に応じて張架手段が移動する様子を説明する断面説明図である。
【図6】本発明に係る画像形成装置の第2実施形態における二次転写部の構成を説明する断面説明図である。
【図7】本発明に係る画像形成装置の第3実施形態における二次転写部の構成を説明する断面説明図である。
【図8】本発明に係る画像形成装置の第4実施形態における二次転写部の構成を説明する断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図により本発明に係る画像形成装置の一実施形態を具体的に説明する。
【実施例1】
【0017】
先ず、図1〜図5を用いて本発明に係る画像形成装置の第1実施形態の構成について説明する。図1において、本実施形態の画像形成装置は、第1〜第4の画像形成ステーションPY,PM,PC,PKを有して構成される。第1の画像形成ステーションPYはイエローYの画像を形成する。第2の画像形成ステーションPMはマゼンタMの画像を形成する。第3の画像形成ステーションPCはシアンCの画像を形成する。第4の画像形成ステーションPKはブラックKの画像を形成する。各色の画像形成動作は同様であるので以下では第1の画像形成ステーションPYを用いて説明する。
【0018】
<画像形成装置>
画像形成装置100は、像担持体としてドラム状の電子写真感光体からなる感光ドラム1を備え、この感光ドラム1は図1の矢印方向に所定の周速度(プロセススピード)で回転駆動される。
【0019】
感光ドラム1は、この回転過程で、帯電手段となる帯電ローラ2により所定の極性・電位に一様に帯電処理され、次いで、像露光手段となる露光装置5により像露光を受ける。これにより、目的のカラー画像のイエロー色成分画像に対応した静電潜像が形成される。
【0020】
次いで、その静電潜像は現像位置において現像手段となる第1の現像器(イエロー現像器)3の現像ローラ3aにより現像され、第1色のイエロートナー画像として可視化される。
【0021】
トナー画像を担持して回転される無端ベルトからなる中間転写ベルト10は、駆動ローラ11、二次転写対向ローラ12及び従動ローラ13により張架される。そして、感光ドラム1と当接した対向部で同方向に移動する向きに、該感光ドラム1と略同一の周速度で回転駆動される。
【0022】
感光ドラム1上に形成されたイエロートナー画像は、感光ドラム1と中間転写ベルト10との当接部(以下、「一次転写ニップ部」という)を通過する過程で、一次転写ローラ14に印加した一次転写電圧によって、中間転写ベルト10の外周面上に一次転写される。感光ドラム1の表面に残留した一次転写残トナーは、クリーニング装置4により清掃、除去される。
【0023】
以下、同様にして、各色の感光ドラム1上に第2色のマゼンタトナー画像、第3色のシアントナー画像、第4色のブラックトナー画像がそれぞれ形成され、中間転写ベルト10上に順次重ねて転写されて、目的のカラー画像に対応した合成カラー画像が得られる。
【0024】
二次転写対向ローラ12に対向する位置には、中間転写ベルト10の外周面に対向して該中間転写ベルト10上(無端ベルト上)のトナー画像を記録材6に転写する転写手段となる二次転写ローラ15が設けられている。
【0025】
中間転写ベルト10上の4色のトナー画像が、該中間転写ベルト10と二次転写ローラ15との間に形成される転写部となる二次転写ニップ部7に到達するタイミングに合せて給送ローラ22によって記録材6を送り出す。給送手段となる給送装置20の給送カセット21に載置された最上位の記録材6が給送ローラ22によって送り出される。給送ローラ22によって送り出された記録材6は、従動ローラ13の下部に設けられた下搬送ガイド31と上搬送ガイド32とによって、二次転写ニップ部7へとガイドされる。
【0026】
張架手段となる従動ローラ13は、二次転写ローラ15と、中間転写ベルト10との間に形成される転写部となる二次転写ニップ部7よりも該中間転写ベルト10の回転方向上流側に配置される。そして、該中間転写ベルト10の内周面を張架して該中間転写ベルト10に従動しつつ張力を与える。
【0027】
二次転写ニップ部7において、中間転写ベルト10と対向する位置には、二次転写対向ローラ12が配置されている。二次転写対向ローラ12は、中間転写ベルト10の内周面を支えている。
【0028】
下搬送ガイド31と上搬送ガイド32は、張架手段となる従動ローラ13の近傍で且つ転写部となる二次転写ニップ部7よりも該中間転写ベルト10の回転方向上流側において該中間転写ベルト10に向けて記録材6を案内する。
【0029】
記録材6が二次転写ニップ部7を通過する過程で、二次転写ローラ15に印加した二次転写電圧によって、中間転写ベルト10上のトナー画像が記録材6の表面に一括転写される(二次転写)。その後、4色のトナー画像を担持した記録材6は定着手段となる定着装置40に導入され、そこで加熱及び加圧されることにより4色のトナーが溶融混色して記録材6に固定される。以上の動作により、フルカラーのプリント画像が形成される。
【0030】
<中間転写ベルト及び張架手段>
本実施形態の中間転写ベルト及び張架手段について説明する。
【0031】
中間転写ベルト10は、厚さ100μm、体積抵抗が1010Ω・cm、表面抵抗が1010Ω/□のポリフッ化ビニリデン(PVdF;PolyVinylidene DiFluoride)を主成分とするものを用いている。
【0032】
尚、本実施形態において、中間転写ベルト10はPVdFを用いている。しかし、特に限定されるものではない。中間転写ベルト10は、ポリイミド(PI;Polyimide)、ポリカーボネート(PC;Polycarbonate)などを主成分とするものでも良い。或いは、ポリブチレンテレフタレート(PBT;Polybutylene terephthalate)、ポリエチレンテレフタレート(PET;Polyethylene Terephthalate)などを主成分とするものでも良い。
【0033】
駆動ローラ11は、外径20mmのアルミニウム製の軸に厚さ0.5mmのEPDM(Ethylene Propylene Diene Monomer;エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体)を被覆したものである。
【0034】
従動ローラ13は、中間転写ベルト10にテンションをかけるテンションローラであり、外径10mmのステンレス(SUS)製の中空の軸である。テンションは片側で19.6N、総圧で39.2Nとしている。
【0035】
二次転写ローラ15は外径8mmのニッケルメッキ鋼棒に、体積抵抗が10Ω・cm、厚み5mmに調整したニトリルブタジエンゴム(NBR;Nitril Butadiene Rubber)の発泡スポンジ体で覆った外径18mmのものを用いている。また、二次転写ローラ15は、中間転写ベルト10に対して、50Nの加圧力で当接させ、中間転写ベルト10に対して従動回転する。
【0036】
<本実施形態の特徴>
以下、本実施形態の要部の構成を詳細に説明する。
【0037】
図2は、図1に示した画像形成装置100の二次転写ニップ部7周辺の外観斜視図である。下搬送ガイド31及び上搬送ガイド32の両端部は、支持手段となる左右のガイド支持部材30に位置決め固定されている。ガイド支持部材30は、ボス30aを中心として回転可能となるように、図示しない本体フレームにより支持されている。
【0038】
また、ガイド支持部材30には軸受部30bが設けられており、該軸受部30bには従動ローラ13の回転軸13aが回転自在に軸支されている。下搬送ガイド31、上搬送ガイド32及び従動ローラ13の相対的な位置関係は、左右のガイド支持部材30によって決められており、ガイド支持部材30のボス30aを中心として一体的に回転可能となるように図示しない本体フレームによって支持されている。
【0039】
これにより、支持手段となる左右のガイド支持部材30は従動ローラ13の位置に応じて、転写部となる二次転写ニップ部7へ中間転写ベルト10が進入する角度が変化するように該従動ローラ13をボス30aを中心に移動可能に支持する。そして、該従動ローラ13の移動に連動して下搬送ガイド31及び上搬送ガイド32をボス30aを中心に移動可能に支持する。
【0040】
左右のガイド支持部材30は、それぞれ付勢手段となるコイルバネ33の弾性力によって、ボス30aを中心に図5の反時計回り方向に回転するよう付勢されており、この付勢力により従動ローラ13を介して中間転写ベルト10に張力が付与される。従動ローラ13は、二次転写対向ローラ12と従動ローラ13との間で張架される中間転写ベルト10に対し、略垂直方向に移動するように構成されている。
【0041】
付勢手段となるコイルバネ33は、転写部となる二次転写ニップ部7と従動ローラ13によって張架されている位置の間の該中間転写ベルト10のベルト面に対して交差する方向に該従動ローラ13を付勢する。
【0042】
そして、支持手段となる左右のガイド支持部材30は、従動ローラ13の両端を回転自在に支持すると共に、下搬送ガイド31及び上搬送ガイド32の両端を支持する。左右のガイド支持部材30は、ボス30aを回転中心として、転写部となる二次転写ニップ部7との相対位置が変化するように回転可能(移動可能)に支持され、コイルバネ33によりガイド支持部材30の回転方向に付勢される。
【0043】
尚、本実施形態では下搬送ガイド31、上搬送ガイド32及び左右のガイド支持部材30をそれぞれ別部材としているが、一体的に形成した1つの部材としても良い。また、左右のガイド支持部材30にそれぞれ設けられる軸受部30bのみを別部材として、従動ローラ13を組込めるように構成しても良い。
【0044】
また、本実施形態ではガイド支持部材30がボス30aを有し、該ボス30aを中心としてガイド支持部材30が回転する構成としている。しかし、図示しない本体フレームにスライドレールを設け、ガイド支持部材30を該スライドレールに沿って中間転写ベルト10に向かって直線移動可能となるように支持する。そして、付勢手段となるコイルバネ33等によりガイド支持部材30の直線移動方向に付勢して該中間転写ベルト10のベルト面に対して交差する方向に該従動ローラ13を付勢する構成としても良い。
【0045】
図1に示すように、感光ドラム1と一次転写ローラ14とが対向する一次転写ニップ部よりも中間転写ベルト10の回転方向下流側に該中間転写ベルト10の駆動ローラ11を配置する。それにより、一次転写ニップ部の中間転写ベルト10の摺動負荷による該中間転写ベルト10の弛みを抑制することができる。
【0046】
このため、中間転写ベルト10を張架する部材の数を最小限に抑えつつ、該中間転写ベルト10の弛み及び寄りを防止すると共に、該中間転写ベルト10の外周面上に担持したトナー画像のトナーの飛び散りによる画像の劣化を防止することができる。
【0047】
<本実施形態の作用>
次に本実施形態の作用について説明する。
【0048】
図3(a)に示すように、駆動ローラ11及び二次転写対向ローラ12を支持している部品の寸法精度のばらつきにより、二次転写対向ローラ12に対して駆動ローラ11が平行でない状態となる場合がある。図3(b)は、図3(a)の状態の中間転写ベルト10、駆動ローラ11、二次転写対向ローラ12及び従動ローラ13を画像形成装置100の上側から見た状態を示している。
【0049】
図3(b)に示すように、駆動ローラ11が二次転写対向ローラ12に対して傾いた状態で中間転写ベルト10を回転させる。そうすると、駆動ローラ11は中間転写ベルト10を図3(b)の実線矢印で示すように、中間転写ベルト10が本来回転する方向(図3(b)の上下方向)に対して所定角度傾いた方向に中間転写ベルト10を回転させる。
【0050】
これにより、図3(b)の破線矢印で示すように、中間転写ベルト10は、該中間転写ベルト10の回転方向と直交する方向(中間転写ベルト10の幅方向)である二次転写対向ローラ12の一端側に徐々に移動する、いわゆる「寄り」という現象が発生する。
【0051】
図4(a)は、図3(a)のように駆動ローラ11に傾きが発生した場合に、従動ローラ13が移動した様子を示している。従動ローラ13は、前述したようにコイルバネ33により付勢されており、ボス30aを中心にガイド支持部材30と一体的に回動して移動可能となるように支持されている。このため、駆動ローラ11の位置が移動すると、中間転写ベルト10の張力を保持するように、図4(a)の実線で示したように従動ローラ13の位置が移動する。
【0052】
従動ローラ13は、二次転写対向ローラ12と従動ローラ13との間で張架される中間転写ベルト10に対し、略垂直方向に移動する。このため、図4(a)に示すように、従動ローラ13が移動すると、二次転写対向ローラ12に対して中間転写ベルト10が進入する角度が変化する。
【0053】
二次転写対向ローラ12に対する中間転写ベルト10の進入角度が変化すると、図4(b)に示すように、二次転写対向ローラ12が見かけ上、傾いた状態となる。このため、従動ローラ13が図4(a)に示すの位置に変化すると、図4(b)の破線矢印で示すように、二次転写対向ローラ12により駆動ローラ11と逆方向に中間転写ベルト10を寄らせようとする力が発生する。
【0054】
このように、従動ローラ13を、二次転写対向ローラ12と従動ローラ13との間で張架される中間転写ベルト10に対して略垂直方向に移動する構成とする。これにより、駆動ローラ11及び二次転写対向ローラ12が平行でない状態であっても、それぞれのローラで発生する中間転写ベルト10を寄らせようとする力を打ち消すことができる。
【0055】
これによりローラの位置ずれが発生しても、中間転写ベルト10に作用する寄り方向の力を最小限に抑えることができる。同様に、駆動ローラ11に対して二次転写対向ローラ12の位置が傾いた場合にも、従動ローラ13の移動が中間転写ベルト10の寄り方向の力を抑制する効果を持つ。
【0056】
図5は、二次転写ニップ部7において、記録材6が搬送される様子を示した図である。図5(a)は中間転写ベルト10の周長が変化していない状態(設計周長)を示している。図5(a)に示すように、給送装置20によって送り出された記録材6は、下搬送ガイド31及び上搬送ガイド32の間を通過し、二次転写ニップ部7に進入する。下搬送ガイド31及び上搬送ガイド32のガイド面は、記録材6が従動ローラ13の近傍で且つ該従動ローラ13よりも記録材搬送方向下流側で中間転写ベルト10と接するように構成される。
【0057】
これにより、二次転写ニップ部7に進入する記録材6は中間転写ベルト10に密着した状態となり、二次転写ニップ部7の中間転写ベルト10の回転方向上流側の転写電界により中間転写ベルト10上のトナー画像に作用する飛び散りの発生は防止される。
【0058】
図5(b)は中間転写ベルト10の周長が環境温度の低下により収縮した場合、或いは、製造時の精度のばらつきにより設計値よりも短い中間転写ベルト10が組込まれた場合を示している。中間転写ベルト10の周長が短い場合、従動ローラ13は、図5(a)の状態と比較してガイド支持部材30と一体的にボス30aを中心として図5(b)の時計回り方向に一定角度回転した位置に移動する。このとき、ガイド支持部材30と一体的に設けられた下搬送ガイド31及び上搬送ガイド32も従動ローラ13と共にボス30aを中心として図5(b)の時計回り方向に移動する。
【0059】
下搬送ガイド31と上搬送ガイド32との間を通過する記録材6は、下搬送ガイド31によって図5(a)の状態と比較して、より大きく湾曲される。そして、記録材6の腰の強さにより中間転写ベルト10に対して押し付けられるため、従動ローラ13の近傍から中間転写ベルト10に密着した状態で二次転写ニップ部7に向かって搬送される。
【0060】
図5(c)は中間転写ベルト10の周長が環境温度の上昇や製造後の経時変化により膨張した場合、或いは、製造時の精度のばらつきにより設計値よりも長い中間転写ベルト10が組込まれた場合を示している。中間転写ベルト10の周長が長い場合、従動ローラ13は、図5(a)の状態と比較してガイド支持部材30と一体的にボス30aを中心として図5(c)の反時計回り方向に一定角度回転した位置に移動する。このとき、ガイド支持部材30と一体的に設けられた下搬送ガイド31及び上搬送ガイド32も従動ローラ13と共にボス30aを中心として図5(c)の反時計回り方向に移動する。
【0061】
この状態では、下搬送ガイド31と上搬送ガイド32との間を通過する記録材6は、上搬送ガイド32及び中間転写ベルト10に沿ってほぼ直線的に二次転写ニップ部7まで搬送される。
【0062】
図5(c)に示す状態から、更に中間転写ベルト10の周長が増える。そうすると、下搬送ガイド31と上搬送ガイド32との間を通過する記録材6は、中間転写ベルト10から離れる方向にガイドされ、記録材6が中間転写ベルト10と密着せずに二次転写ニップ部7に進入する。
【0063】
記録材6と中間転写ベルト10との間に隙間ができた状態で記録材6が二次転写ローラ15の近傍に搬送される。そうすると、二次転写ニップ部7の中間転写ベルト10の回転方向上流側の転写電界により中間転写ベルト10上のトナー画像に作用する飛び散りにより中間転写ベルト10上のトナー画像が乱れる。
【0064】
従って、製造上の精度のばらつきや製造後の経時変化及び環境温度変化の影響を考慮する。そして、中間転写ベルト10の周長が最大になった場合を考慮する。その場合であっても二次転写ニップ部7、従動ローラ13、下搬送ガイド31及び上搬送ガイド32の位置関係が図5(c)に示すように直線状となるように、下搬送ガイド31及び上搬送ガイド32の形状や位置を設定する。
【0065】
本実施形態によれば、部品寸法精度のばらつき等により駆動ローラ11と二次転写対向ローラ12とが平行でない状態となっても、従動ローラ13の位置の変化を利用して中間転写ベルト10を幅方向に寄らせようとする力を抑制することができる。
【0066】
また、中間転写ベルト10の周長が変化し、該中間転写ベルト10にテンションを作用させる従動ローラ13の位置が変化しても、それに合せて記録材6の搬送経路を変えるように下搬送ガイド31及び上搬送ガイド32を移動させることができる。
【0067】
従って、中間転写ベルト10の周長によらず、記録材6を中間転写ベルト10に対して密着した状態で二次転写ニップ部7に搬送させることができる。このため、二次転写ニップ部7の中間転写ベルト10の回転方向上流側の転写電界により中間転写ベルト10上のトナー画像に作用する飛び散りを抑制することができる。
【実施例2】
【0068】
次に図6を用いて本発明に係る画像形成装置の第2実施形態の構成について説明する。尚、前記第1実施形態と同様に構成したものは同一の符号を付して説明を省略する。
【0069】
本実施形態では、図6に示すように、下搬送ガイド31及び上搬送ガイド32の記録材6を案内するガイド出口部を弾性体シート部材35,36により構成したものである。弾性体シート部材35,36としてはマイラー(デュポン社製商品名)等を採用することが出来る。弾性体シート部材35,36により下搬送ガイド31及び上搬送ガイド32と、搬送される記録材6との間の摺動抵抗が軽減され、耐久性の向上や、記録材6の搬送速度の安定性向上を図ることができる。他の構成は、前記第1実施形態と同様に構成され、同様の効果を得ることが出来る。
【実施例3】
【0070】
次に図7を用いて本発明に係る画像形成装置の第3実施形態の構成について説明する。尚、前記第1実施形態と同様に構成したものは同一の符号を付して説明を省略する。本実施形態では、図7に示すように、下搬送ガイド31の記録材6を案内するガイド出口部を該下搬送ガイド31に対して回転自在に軸支された樹脂製の従動ローラ37により構成したものである。樹脂製の従動ローラ37により下搬送ガイド31及び上搬送ガイド32と、搬送される記録材6との間の摺動抵抗が軽減され、耐久性の向上や、記録材6の搬送速度の安定性向上を図ることができる。他の構成は、前記第1実施形態と同様に構成され、同様の効果を得ることが出来る。
【実施例4】
【0071】
次に図8を用いて本発明に係る画像形成装置の第4実施形態の構成について説明する。尚、前記第1実施形態と同様に構成したものは同一の符号を付して説明を省略する。前記第1実施形態では、中間転写ベルト10を押圧し、張力を付与する張架手段として従動ローラ13を用いた構成について説明した。本実施形態は、中間転写ベルト10を押圧し、張力を付与する張架手段として非回転体である摺動部材34を用いて構成したものである。
【0072】
図8に示すように、本実施形態では、張架手段となる摺動部材34は、支持手段となるガイド支持部材30により両端が固定して支持され、無端ベルトとなる中間転写ベルト10の内周面に対して湾曲面からなる摺動面34aが当接して摺動する。摺動部材34の少なくとも摺動面34a(表面)は摺動性樹脂で構成されている。ボス30aを中心に回転するガイド支持部材30と一体的に摺動部材34が移動し、該摺動部材34の摺動面34aにより中間転写ベルト10の内周面を押圧する。
【0073】
摺動部材34は、所定の曲率を持った摺動面34aで中間転写ベルト10の内周面と接触する。摺動部材34の材質としては、ポリオキシメチレン(POM;Polyoxymethylene)等の摺動性の良い樹脂を用いることができる。
【0074】
また、摺動部材34は、ポリカーボネート(PC;Polycarbonate)、ABS(Acrylonitrile Butadiene Styrene copolymer)等の非摺動性樹脂や金属で中間転写ベルト10をガイドする形状を作成する。そして、該中間転写ベルト10の内周面との摺動部分にポリテトラフルオロエチレン(PTFE;Polytetrafluoroethylene)等の摺動性樹脂シート部材を摺動面34aに貼り付けても良い。
【0075】
張架手段を摺動部材34とすることにより、従動ローラ13の場合に比べてコストを低減することができる。また、中間転写ベルト10に巻き癖跡がつかないようにするために中間転写ベルト10に接触する面の曲率半径を大きくしようとする場合がある。この場合、従動ローラ13では全体の外径を大きくする必要があり、その分、スペースが必要となる。しかし、摺動部材34とした場合には、スペースを変えず、摺動面34aの曲率のみ大きくすることができる。
【0076】
摺動面34aの曲率を大きくすると、画像形成装置100を停止したまま長時間放置した際に中間転写ベルト10に発生する摺動面34aに対する巻付き跡(巻き癖)を低減し、スジ状の画像不良が発生するのを防止することができる。尚、本実施形態ではガイド支持部材30と摺動部材34とを別部材として構成しているが、1つの部材として一体的に構成しても良い。
【符号の説明】
【0077】
6 …記録材
7 …二次転写ニップ部(転写部)
10 …中間転写ベルト(無端ベルト)
13 …従動ローラ(張架手段)
15 …二次転写ローラ(転写手段)
30 …ガイド支持部材(支持手段)
31 …下搬送ガイド(搬送ガイド)
32 …上搬送ガイド(搬送ガイド)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー画像を担持して回転される無端ベルトと、
前記無端ベルトの外周面に対向し、前記無端ベルト上のトナー画像を記録材に転写する転写手段と、
前記転写手段と前記無端ベルトとの間に形成される転写部よりも前記無端ベルトの回転方向上流側に配置され、該無端ベルトの内周面を張架する張架手段と、
前記張架手段の近傍で且つ前記転写部よりも前記無端ベルトの回転方向上流側において該無端ベルトに向けて記録材を案内する搬送ガイドと、
前記張架手段の位置に応じて、前記転写部へ前記無端ベルトが進入する角度が変化するように前記張架手段を移動可能に支持すると共に、前記張架手段の移動に連動して前記搬送ガイドを移動可能に支持する支持手段と、
を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記転写部と前記張架手段によって張架されている位置の間の前記無端ベルトの面に対して交差する方向に前記張架手段を付勢する付勢手段を有することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記支持手段は、前記張架手段の両端を支持すると共に、前記搬送ガイドの両端を支持する支持部材を有し、
前記支持部材は前記転写部との相対位置が変化するように移動可能に支持され、前記付勢手段により付勢されることを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記支持部材は、回転可能となるように支持され、前記付勢手段により前記支持部材の回転方向に付勢されることを特徴とする請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記張架手段は、前記無端ベルトに従動する従動ローラにより構成されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記張架手段は、前記支持手段により両端が固定して支持されると共に、前記無端ベルトの内周面に対して摺動する摺動部材により構成されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記摺動部材は、少なくとも表面が摺動性樹脂で構成されていることを特徴とする請求項6に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記摺動部材は、前記無端ベルトとの摺動部分に摺動性樹脂シート部材を貼り付けたことを特徴とする請求項6に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記搬送ガイドは、記録材を案内するガイド出口部が弾性体シート部材によって構成されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記搬送ガイドは、記録材を案内するガイド出口部が従動ローラによって構成されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−114209(P2013−114209A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−262592(P2011−262592)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】