画像形成装置
【課題】 ベルト部材が移動している時にベルト部材が複数の像担持体から離間した状態からベルト部材が複数の像担持体に当接した状態へ切り替えるのに伴って、部品精度誤差に起因してベルト部材にねじる負荷がかかる。
【解決手段】 複数の像担持体がベルト部材に当接した状態から、複数の像担持体がベルト部材から離間した状態へ切り替わる場合には、ベルト部材は幅方向において予め設定された一方の側で、それぞれの像担持体に対して先に接触する。
【解決手段】 複数の像担持体がベルト部材に当接した状態から、複数の像担持体がベルト部材から離間した状態へ切り替わる場合には、ベルト部材は幅方向において予め設定された一方の側で、それぞれの像担持体に対して先に接触する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成に関わる無端ベルトを備えた画像形成装置に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
トナー像を担持する像担持体が回転中のベルト部材に当接した状態で画像形成を行う画像形成装置がある。このような画像形成装置では回転中のベルト部材と像担持体との間の摩耗を抑制するために、像担持体がベルト部材から離間した状態も形成することができるように構成される。特許文献1には、感光ドラムからトナー像を中間転写ベルトに転写する構成が記載されている。特許文献1では、フルカラーモードでは一次転写ローラが対応する感光ドラムを中間転写ベルトを介して圧することによって、各色用の感光ドラムと中間転写ベルトとが当接する。一方でBk単色モードではカラー色用の一次転写ローラが中間転写ベルトから離間することによって、カラー用の感光ドラムと中間転写ベルトとが離間する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−107506
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし部品精度や組み立て精度には限りがあるので、ベルト部材のベルト面と像担持体との関係は完全な平行関係にはならない。そのため離間した状態から当接した状態へ切り換える場合に、ベルト部材が像担持体に接触するタイミングは、幅方向における手前側と奥側とでずれてしまう。すなわちベルトが移動している時に離間した状態が当接した状態へ切り替わる場合に、ベルトが第1の像担持体には手前側で先に接触して奥側で後に接触する一方で、第2の像担持体には奥側で先に接触して手前側で後に接触するといった事態が生じ得る。すると第1の像担持体の位置では手前側にブレーキがかかることで、ベルトを手前側に寄せる力が第1の像担持体の位置で生じるとともに、第2の像担持体の位置では奥側にブレーキがかかることで、ベルトを奥側に寄せる力が第2の像担持体の位置で生じる。これらの合力はベルト部材をねじる力として働く。ベルト部材をねじる力はベルト部材に負荷をかけるので好ましくない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための本発明は、トナー像を担持する第1の像担持体と、トナー像を担持する第2の像担持体と、複数の張架部材によって張架されて、前記第1の像担持体と前記第2の像担持体とから転写されたトナー像を搬送可能なベルト部材と、前記ベルト部材が前記第1の像担持体及び前記第2の像担持体に当接する第1の状態と、前記ベルト部材が前記第1の像担持体及び前記第2の像担持体から離間した第2の状態とを切り替え可能な切り替え手段と、を有する画像形成装置において、前記ベルト部材が移動しているときに、前記第2の状態が前記第1の状態に切り替わる場合に、前記切り替え手段は、前記ベルト部材がトナー像を搬送する搬送方向に垂直な幅方向において、前記ベルト部材を予め設定された一方の側で前記第1の像担持体と前記第2の像担持体とに当接させた後に他方の側で当接させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
ベルト部材が移動している時にベルト部材が複数の像担持体から離間した状態からベルト部材が複数の像担持体に当接した状態へ切り替えるのに伴って、部品精度誤差に起因してベルト部材にねじる負荷がかかるのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】中間転写方式の画像形成装置の断面図である。
【図2】本発明における中間転写ベルトユニットのブラック単色モードのときの断面図である。
【図3】本発明における中間転写ベルトユニットのカラーモードのときの断面図である。
【図4】本発明における切り替え手段を図示したブラック単色モードのときの斜視図である。
【図5】本発明におけるベルトユニットのブラック単色モードのときの断面図である。
【図6】本発明における中間転写ベルトユニットの切り替え手段を図示したカラーモードのときの斜視図である。
【図7】本発明における中間転写ベルトユニットのカラーモードのときの断面図である。
【図8】状態の切り替えによる外乱を予測したステアリング制御ブロック図である。
【図9】本発明における中間転写ベルトユニットの状態の切り替え途中のときの斜視図である。
【図10】本発明における中間転写ベルトユニットの状態の切り替え途中のときの断面図である。
【図11】カムの位相とカム回転軸−ホルダ接触面間距離の関係を示したグラフである。
【図12】本発明におけるベルト寄り制御フローチャートである。
【図13】直接転写方式の画像形成装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(実施形態1)
<画像形成装置について>
本発明に係る画像形成装置について説明する。まず、図1を用いて画像形成装置の動作について説明する。図1に示した画像形成装置60は電子写真方式を用いたカラーの画像形成装置である。画像形成装置60は、4色の画像形成部を中間転写ベルト上に並べて配置した、所謂中間転写タンデム方式の画像形成装置の断面図であり、厚紙対応力や生産性に優れる点から近年主流になっている。
【0009】
<記録材の搬送プロセス>
記録材Sは記録材収納庫61内のリフトアップ装置62上に積載される形で収納されており、給紙手段63により画像形成タイミングに合わせて給紙される。ここで、給紙手段63は給紙ローラ等による摩擦分離を利用する方式と、エアによる分離吸着を利用する方式が挙げられるが、図1ではこのうち後者を用いるものとする。前記給紙手段63により送り出された記録材Sは搬送ユニット64が有する搬送パス64aを通過し、レジストレーション装置65へと搬送される。該レジストレーション装置65において斜行補正やタイミング補正を行った後、記録材Sは二次転写部へと送られる。二次転写部は、対向する二次転写内ローラ603および二次転写外ローラ66により形成される記録材Sへのトナー像転写ニップ部であり、所定の加圧力と静電的負荷バイアスを与えることで記録材S上にトナー像を吸着させる。
【0010】
<画像の作像プロセス>
以上説明した二次転写部までの記録材Sの搬送プロセスに対して、同様のタイミングで二次転写部まで送られて来る画像の形成プロセスについて説明する。画像形成部613は、主に感光体608、露光装置611、現像装置610、一次転写装置607、および感光体クリーナ609等から構成される。予め帯電手段により表面を一様に帯電され、図中矢印mの方向に回転する前記感光体608に対し、送られてきた画像情報の信号に基づいて前記露光装置611が駆動され、回折手段612等を適宜経由して潜像が形成される。前記感光体608上に形成された静電潜像は、前記現像装置610によるトナー現像を経て、感光体上にトナー像として顕在化する。その後、前記一次転写装置607により所定の加圧力および静電的負荷バイアスが与えられ、中間転写ベルト606上にトナー像が転写される。その後、前記感光体608上に僅かに残った転写残トナーは前記感光体クリーナ609により回収され、再び次の画像形成に備える。以上説明した画像形成部613は図1の場合、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)およびブラック(Bk)の4セット存在する。勿論、色数は4色に限定されるものではなく、また色の並び順もこの限りではない。
【0011】
次に、中間転写ベルト606について説明する。中間転写ベルト606は、張架部材としての、駆動ローラ604、ステアリングローラ1、二次転写内ローラ603、上流張架ローラ617、下流張架ローラ618によって張架される無端ベルトである。さらに中間転写ベルト606は図中矢印Vの方向へとトナー像を搬送可能に構成される。また、中間転写ベルト606に所定の張力を付与するテンションローラの機能は前記ステアリングローラ1が兼ね備えているものとする。先述のY、M、CおよびBkの各画像形成部613により並列処理される各色の画像形成プロセスは、該中間転写ベルト606上に一次転写された上流色のトナー像上に重ね合わせるタイミングで行われる。その結果、最終的にはフルカラーのトナー像が中間転写ベルト606上に形成され、二次転写部へと搬送される。なお、中間転写ベルト606を張架するローラの本数は図1の構成に限定されるものではない。
【0012】
<二次転写以降のプロセス>
以上、それぞれ説明した記録材Sの搬送プロセスおよび画像形成プロセスを以って、前記二次転写部において記録材S上にフルカラーのトナー像が二次転写される。その後、記録材Sは定着前搬送部67により定着装置68へと搬送される。該定着装置68には様々な構成および方式があるが、図1では対向する定着ローラ615および定着ベルト614が形成する定着ニップ内で所定の加圧力と熱量を与えて記録材S上にトナー像を溶融固着させるものである。ここで、前記定着ローラは内部に熱源となるヒータを備え、前記定着ベルト614は複数の張架ローラとベルト内周面から付勢される加圧パッド616を備えている。このようにして得られた定着画像を有する記録材Sは分岐搬送装置69により、そのまま排紙トレイ600上に排出されるか、もしくは両面画像形成を要する場合には反転搬送装置601へと搬送されるかの経路選択が行われる。両面画像形成を要する場合、前記反転搬送装置601へと送られた記録材Sはスイッチバック動作を行うことで先後端を入れ替え、両面搬送装置602へと搬送される。その後、前記給紙装置61より搬送されてくる後続ジョブの記録材とのタイミングを合わせて、前記搬送ユニット64が有する再給紙パス64bから合流し、同様に二次転写部へと送られる。裏面(2面目)の画像形成プロセスに関しては、先述の表面(1面目)の場合と同様なので説明は省略する。
【0013】
<中間転写ベルトのステアリングローラ>
本実施形態では、移動中の中間転写ベルト606が移動方向に対して垂直な幅方向に寄るのを抑制するために中間転写ベルト606をステアリングするステアリング手段が設けられている。すなわちステアリング手段として、中間転写ベルト606を張架してステアリングするステアリングローラ1が設けられている。ステアリングローラ1は、中間転写ベルト606の移動方向においてブラックの画像形成部より下流側で二次転写部より上流側に配置される。ステアリングローラの幅方向における奥側の端部の位置は固定的に配置されて、手前側の端部は揺動可能に構成される。700はステアリングローラに駆動力を供給するステアリングモータである。ステアリングローラ1はステアリングモータ700により駆動されると幅方向における手前側が揺動する。その結果、ステアリングローラ1の軸線と、張架ローラ603、604、617、618の軸線との間での平行度が変化することにより、中間転写ベルト606が幅方向に移動する。
【0014】
<カラーモード、ブラック単色モード、待機モード>
本実施形態の画像形成装置は、ブラック単色用の感光体を用いて画像を形成するブラック単色モードと、各色用の感光体を用いて画像を形成するカラーモードとを実行することができるように構成される。ブラック単色モード、カラーモードは、制御部800を用いて実行される。
【0015】
図2に示されるようにブラック単色モードにおいては、ブラック色用の感光体608Bkが中間転写ベルト606に当接する。またその他の色、すなわちイエロー、マゼンタ、シアンそれぞれの感光体608Y、608M、608Cは中間転写ベルトから離間した状態(第2の状態)となっている。さらにブラック色用の一次転写ローラ607Bkは中間転写ベルト606を介して感光体608Bkを圧して、一次転写部を形成する。一方でその他の色、すなわちイエロー、マゼンタ、シアンそれぞれの一次転写ローラ607Y、607M、607Cは中間転写ベルトから離間した位置に配置される。そのためブラック単色モードで使用されない一次転写ローラ607Y、607M、607Cが、移動中の中間転写ベルト606に接触することにより余計に摩耗するのが抑制される。さらにブラック単色モードではイエロー色用の一次転写部の形状をフラットにするために、中間転写ベルト606の移動方向においてイエロー用の一次転写ローラ607Yの上流側で隣り合う位置に中間転写ベルト606を張架ローラ619が配置される。
【0016】
さらに図4に示されるようにブラック単色モードでは、一次転写ローラ607Bkの軸を支持する転写ローラ軸受7Bkが、両端において圧縮バネによって感光体608Bkを加圧する方向に付勢される。すなわち幅方向において感光体の幅方向において均一に中間転写ベルトに当接するようになっている。
【0017】
一方で図3に示されるようにカラーモードにおいては、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックそれぞれの感光体608Y、608M、608C、608Bkが中間転写ベルトに当接した状態(第1の状態)となっている。さらにカラーモードにおいては、ブラック用の一次転写部の形状をフラットにするために、中間転写ベルト606の移動方向においてブラック用の一次転写ローラ607Bkの上流側で隣り合う位置に中間転写ベルト606を張架ローラ620が配置される。さらにイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックそれぞれの色用の一次転写ローラ607Y,607M,607C,607Bkは中間転写ベルト606を介して対応する感光体608Y,608M,608C,608Bkを圧して、それぞれの一次転写部を形成する。
【0018】
さらに図6に示されるようにカラーモードでは、一次転写ローラ607Bkが中間転写ベルトに当接するだけではない。一次転写ローラ607Y、607M、607Cの幅方向における両端も転写ローラ軸受7Y、7M、7Cによって軸受けされる。さらに転写ローラ軸受7Y、7M、7Cは、圧縮バネ9によって対応する感光体608を加圧する方向に付勢される。また、転写ローラ軸受7Y、7M、7Cは、圧縮バネ9によって押し上げられたときに手前側転写ホルダ3F、奥側転写ホルダ3Rの不図示のストッパー部で一定位置で止まるように取り付けられている。すなわち幅方向において感光体の幅方向において均一に中間転写ベルトに当接するようになっている。
【0019】
なお張架ローラ619はカラーモードでは中間転写ベルト606に当接してブラックモード単色モードでは中間転写ベルト606から離間する。また張架ローラ620はカラーモードでは中間転写ベルト606から離間してブラック単色モードでは中間転写ベルト606に当接するように構成される。
【0020】
なお、画像形成を行わず、画像形成信号が入力されるのを待機する待機モードは、ブラック単色モードと同じ状態、すなわち中間転写ベルト606が感光体608Y,608M,608Cから離間した状態となる。
【0021】
<離間状態、当接状態>
本実施形態では、ブラック単色モード及び待機モードでは、中間転写ベルト606が感光体608Y,608M,608Cから離間した状態(第2の状態)である。一方でカラーモードでは中間転写ベルト606は感光体608Y,608M,608Cに当接した状態(第1の状態)である。すなわち感光体に対する中間転写ベルトの相対的な位置が、モードによって変化する構成となっている。
【0022】
そこで本実施形態では、中間転写ベルト606が感光体608Y,608M,608Cから離間した状態と、中間転写ベルト606が感光体608Y,608M、608Cに当接した状態とを切り替えるために、状態切り替え装置501が設けられている。状態切り替え装置501は中間転写ベルト606を保持する中間転写ユニット500に設けられている。切り替え手段501の詳細な構成および動作について図4、図5、図6、図7を用いて説明する。
【0023】
3Fは、幅方向において手前側に設けられて、一次転写ローラ607Y、607M、607C、張架ローラ619、620を保持する手前側転写ホルダである。さらに3Rは、幅方向において奥側に設けられて、一次転写ローラ607Y、607M、607C、張架ローラ619、620を保持する奥側転写ホルダである。手前側転写ホルダ3F、奥側転写ホルダ3Rは、ホルダ用回動軸6を中心に一定の範囲内で回動可能に構成される。4Fは、手前側転写ホルダ3Fの当接部に当接して回転可能な手前側カムである。4Rは、奥側転写ホルダ3Rの当接部に当接して回転可能な奥側カムである。手前側カム4F,奥側カム4Rは、共通のカム軸5に固定される。手前側転写ホルダ3F、奥側転写ホルダ3Rはそれぞれホルダ引張りバネ8F,8Rによって図中S方向に付勢される。900は、カム軸5を駆動するための状態切り替えモータ900である。カム4F,4Rは状態切り替えモータ900によってカム軸5周りに回転する。その結果転写ホルダ3F,3Rが回動する。
【0024】
状態切り替えモータ900を用いて手前側カム4R,奥側カム4Fが所定量回転することによって、手前側転写ホルダ3R,奥側転写ホルダ3Fは移動することができる。その結果、感光体608Y,608M,608Cが中間転写ベルト606から離間した状態(図5)が、感光体608Y、608M,608Cが中間転写ベルト606に当接した状態(図7)に変わる。なおモータがさらに所定量回転することにより、手前側転写ホルダ3R,奥側転写ホルダ3Fがさらに移動する。その結果感光体608Y,608M,608Cが中間転写ベルト606に当接した状態(図7)が、感光体608Y,608M,608Cが中間転写ベルト606から離間した状態(図5)へ変化する。
【0025】
なお状態切り替えモータ900は制御部800に設けられた制御コントローラIによって制御される(図8)。状態切り替えモータ900の制御は、ユーザに指定された画像形成モード情報に基づく。
【0026】
状態切り替え装置501による状態の切り替えは、ブラック単色モードの後にカラーモードが連続する場合、カラーモードの後にブラック単色モードが連続する場合に行われる。当然、状態切り替え装置501を用いた状態の切り替えは、モードが変わらない場合には不要である。また待機モードにおける感光体に対する中間転写ベルトの相対的な位置は、ブラック単色モードの場合と同じである。そのため状態切り替え装置501を用いた状態切り替えは、待機モードからブラック単色を行う場合には不要であるが、待機モードからカラーモードを行う場合には必要になる。
【0027】
そこで本実施形態では次のパターンが予め記憶されている。
【0028】
・ブラック単色モードに続いてカラーモードが行われる場合には、切り替え手段501が状態を切り替える。ブラック単色モードに続いてブラック単色モードが行われる場合には、切り替え手段501は状態を切り替えない。
【0029】
・カラーモードに続いてブラック単色モードが行われる場合には、切り替え手段501は状態を切り替える。カラーモードに続いてカラーモードが行われる場合には、切り替え手段501は状態を切り替えない。
【0030】
・待機モードに続いてカラーモードが行われる場合には、切り替え手段501は状態を切り替える。待機モードに続いてブラック単色モードが行われる場合には、切り替え手段501は状態を切り替えない。
【0031】
<傾斜状態>
しかし部品精度や組み立て精度には限りがあるので、ベルト部材がトナー像を搬送する搬送方向に直交する幅方向において、ベルト部材のベルト面と像担持体の表面とは完全な平行関係にはならない。そのため離間した状態(図5)が当接した状態(図7)へ切り替わる場合に次のような事態が生じ得る。すなわちベルトがシアン色の感光体607C(第1の像担持体)には手前側で先に接触して奥側で後に接触する一方で、マゼンタ色の感光体607M(第2の像担持体)には奥側で先に接触して手前側で後に接触するといった事態である。するとシアン色の感光体607Cの位置では手前側にブレーキがかかることで、ベルトを手前側に寄せる力が感光体607Cの位置で生じる。一方でマゼンタ色の感光体607Mの位置では奥側にブレーキがかかることで、ベルトを奥側に寄せる力がマゼンタ色の感光体607Mの位置で生じる。これらの合力は中間転写ベルトをねじる力として働く。この様に中間転写ベルトをねじる力はベルト部材に負荷をかけるので、好ましくない。
【0032】
そこで中間転写ベルトが移動しているときに、状態切り替え装置501によって離間状態が当接状態に切り替わる場合には次のような当接動作を行う。すなわち中間転写ベルトがカラー色の感光体608C、608M,608Yに幅方向において予め設定された奥側で先に当接して手前側で後に当接する当接動作である。
【0033】
その結果、有色の感光体608Y,608M、608Cそれぞれの位置で、ベルトにかかる力は奥側に寄せる向きになる。すなわちベルトにかかる力の向きがそろうことによって、ベルトをねじる力が生じるのが抑制される。
【0034】
さらに中間転写ベルト606が幅方向における奥側で有色の感光体608Y,608M,608Cに当接するとともに、中間転写ベルト606が幅方向における手前側で有色の感光体608Y,608M,608Cから離間した傾斜状態が所定期間維持される。傾斜状態を所定期間継続することで幅方向において手前側から奥側を向く力が強化されるので、中間転写ベルトが幅方向に手前側から奥側に向けて寄りやすくなる。すなわち離間状態が当接状態に切り替わるのに伴って、中間転写ベルト606が幅方向に寄る向きを予測することも可能となる。
【0035】
図9、図10は、離間状態から当接状態へ切り換える際に形成される傾斜状態を示す。一方で当接状態から離間状態へ切り換える際に形成される傾斜状態は図9、10とは逆向きになる。つまり離間状態から当接状態へ切り換える際に形成される傾斜状態は、幅方向における奥側で中間転写ベルト606が感光体608Y,608M,608Cに当接し、手前側で中間転写ベルト606が感光体608Y,608M,608Cから離間した状態である。一方で当接状態から離間状態へ切り換える際に形成される傾斜状態は、幅方向における手前側で中間転写ベルト606が感光体608Y,608M,608Cに当接して、奥側で中間転写ベルト606が感光体608Y,608M,608Cから離間した状態である。
【0036】
傾斜状態を形成するための切り替え手段501の構成及び動作の詳細について図11を用いて説明する。本実施形態では傾斜状態を形成することができるように、手前側カム4F、奥側カム4Rそれぞれが対応する転写ホルダ3F,3Rの当接部に当接するためのカムプロファイルが構成される。
【0037】
図11は、手前側カム4Fと奥側カム4Rのカムプロファイルの関係を示す。dFは、手前側転写ホルダ3Fの当接部に当接する位置での、カム回転軸5を中心とする手前側カム4Fの半径である。dRは、奥側転写ホルダ3Rの当接部に当接する位置での、カム回転軸5を中心とする奥側カム4Rの半径である。図11では、dF,dRを縦軸にとり、カム回転軸5の位相を横軸にプロットしたグラフを示す。
【0038】
奥側カム4Rについては、カム回転軸5の位相が−180°以上―147.5°以下の範囲と97.5°以上180°以下の範囲とでdRは最小の6.5mmとなる。位相が―147.5°からー72.5°の範囲にかけて半径dRは単調増加する。位相が−72.5°以上22.5°以下の範囲で半径dRは最大値15mmになる。位相が22.5°から97.5°の範囲にかけてdRは単調減少する。
【0039】
手前側カム4Fについては、位相が―180°以上で―97.5°以下の範囲と、位相が147.5°以上で180°以下の範囲とで、半径dFは最小値6.5mmになる。位相が−97.5°からー22.5°の範囲にかけて半径dFは単調増加する。位相が−22.5°以上で72.5°以下の範囲で半径dFは最大値15mmになる。位相が72.5°から147.5°の範囲にかけて半径は単調減少する。
【0040】
すなわち、カム回転軸5の位相が147.5°以上で180°以下の範囲と、−180°以上で−147.5°以下の範囲とでは、幅方向における奥側と手前側の両側において、中間転写ベルト606は感光体608Y,608M,608Cから離れている。一方でカム軸5の位相がー22.5°以上で22.4°以下の範囲では、幅方向における奥側と手前側の両側において、中間転写ベルト606は感光体608Y,608M,608Cに当接している。
【0041】
本実施形態では切り替えモータ900によってカム回転軸5の位相が正の方向に進むので、位相がー147.5°から−22.5°にかけての範囲が、離間状態から当接状態への状態の切り替えに用いられる。
【0042】
カム回転軸5の位相がー147.5°になると、dRが増加し始める。すなわち奥側転写ホルダ3Rが感光体側に向けて動き始める。カム回転軸5の位相が―97.5°になると、dFが増加し始める。すなわち手前側転写ホルダ3Fが感光外側に向けて動き始める。位相がー72.5になると、奥側転写ホルダ3Rに当接する位置で、奥側カム4Rの半径dRが最大置に達する。位相がー22.5°になると、手前側転写ホルダ3Fに当接する位置で、手前側カム4Rの半径dFが最大値に達する。すなわち中間転写ベルト606は、感光体608Y,608M,608Cのそれぞれに対して、幅方向において奥側で先に当接して、幅方向における手前側で後に当接する。その結果中間転写ベルトに幅方向にかかる力は、有色の感光体608Y,608M、608Cそれぞれの位置で、手前側から奥側へ向く向きになる。すなわち中間転写ベルトにかかる力の向きが各有色の感光体608Y,608M,608Cの位置でそろうことによって、ベルトをねじる負荷が生じるのが抑制される。
【0043】
位相がー72.5°からー22.5°の範囲では、幅方向における奥側では、一次転写ローラ607Y,607M,607Cが中間転写ベルト606を介して対応する感光体608Y,608M,608Cを圧した状態になる。一方でこのとき幅方向における手前側では、中間転写ベルト606は感光体608Y,608M,608Cから離間した状態のままである。すなわち中間転写ベルト606が幅方向において奥側では感光体608Y,608M,608Cに当接して、手前側では感光体608Y,608M,608Cから離間した傾斜状態が形成される。
【0044】
この傾斜状態は、位相がー72.5°からー22.5°にかけての所定期間継続する。この理由について説明する。傾斜状態では幅方向における奥側で中間転写ベルトにブレーキが偏るので、中間転写ベルト606は幅方向において奥側向きの力がかかる。しかし傾斜状態を継続する期間が短ければ、中間転写ベルト606に幅方向にかかる力の大きさは小さい。離間状態が当接状態へ切り替わるのに伴って中間転写ベルトが幅方向に寄る向きを予測するためには、中間転写ベルトに幅方向にかかる力の大きさがある程度大きいのが望ましい。そこで本実施形態では、傾斜状態を所定期間継続することによって中間転写ベルトに幅方向にかかる力を強化する。その結果中間転写ベルト606は幅方向において奥側に寄りやすくなる。より具体的には本実施形態では位相がー72.5°からー22.5°にかけての移動を125msecかけて行う。その結果、状態の切り替え動作に伴って中間転写ベルトに幅方向にかかる力が十分大きくなるので、離間状態が当接状態へ切り替わるのに伴って中間転写ベルトが幅方向に寄る向きを予測することが可能になる。
【0045】
さらに本実施形態では位相が22.5°から147.5°にかけての範囲が当接状態から離間状態への切り替えに用いられる。
【0046】
カム回転軸5の位相が22.5°になるとdRが減少し始める。すなわち奥側転写ホルダ4Rが感光体から離間する側に移動し始める。その後位相が72.5°になると手前側転写ホルダ4Fが感光体から離間する側に移動し始める。すなわち、中間転写ベルトがカラー色の感光体608Y、608M,608Cから奥側で先に離間して手前側で後に離間する動作を行う。その結果当接状態が離間状態へ切り替わる際に、有色の感光体608Y,608M、608Cそれぞれの位置で、ベルトにかかる力は手前側に寄せる向きになる。すなわちベルトにかかる力の向きが各有色の感光体608Y,608M,608Cの位置でそろうことによって、ベルトをねじることによる負荷がかかるのが抑制される。
【0047】
なお位相が22.5°から72.5°の範囲では、幅方向における手前側では一次転写ローラ607Y,607M,607Cが中間転写ベルト606を介して対応する感光体608Y,608M,608Cを圧する。一方で幅方向における奥側では、中間転写ベルト606が感光体608Y,608M,608Cから離間している。カム回転軸5の位相が22.5°から72.5°の範囲にかけての移動は125msecかけて行われる。すなわち中間転写ベルト606が幅方向において感光体に対して傾斜した傾斜状態が所定期間維持される。その結果、中間転写ベルトが幅方向に手前側に寄りやすい構成となるので、中間転写ベルトが移動しているときに、当接状態が離間状態へ切り替わるのに伴って中間転写ベルト606が幅方向に寄る向きを予測することが可能になる。
【0048】
なお本実施形態では、離間状態が当接状態に切り替わる際にはモータを正回転させることで、中間転写ベルトが感光体608Y,608M,608cに奥側で先に当接して、手前側で後に当接する構成である。もちろんこの構成に限定する意図ではない。モータを逆回転することで、離間状態が当接状態に切り替わる際に、中間転写ベルトが感光体608Y,608M,608cに手前側で先に当接して、奥側で後に当接する構成でもよい。すなわちそれぞれの感光体が、幅方向において予め設定された一方の側で先に当接して、他方の側で後に当接する動作を行う構成であればよい。
【0049】
また本実施形態では、当接状態が離間状態に切り替わる際にモータを正回転させることで、中間転写ベルトが感光体608Y,608M,608cに奥側で先に離間して、手前側で後に離間する構成である。もちろんこの構成に限定する意図ではない。モータを逆回転することで、当接状態が離間状態に切り替わる際には、中間転写ベルトが感光体608Y,608M,608cに手前側で先に離間して、奥側で後に離間する構成でもよい。すなわちそれぞれの感光体が、幅方向において予め設定された一方の側で先に離間して、他方の側で後に離間する動作を行う構成であればよい。
【0050】
また本実施例ではdR、dFの最小値が6.5mmで、dR、dFの最大値が15mmになるように設定される。もちろんこの数値に限定する意図ではない。最小値は、中間転写ベルトが感光体608Y,608M,608Cから離間した状態が形成されるように設定されればよい。最大値は、一次転写部が形成されるように設定されればよい。
【0051】
<ステアリングローラの制御>
従来の構成では、中間転写ベルトが移動しているときに、状態の切り替えに伴って中間転写ベルト606にかかる力の幅方向における向きは、部品精度や組み立て精度に依存していた。そのため状態の切り替えに伴い中間転写ベルトにかかる力の向きを予測することができなかったので、状態切り替えによって中間転写ベルトに幅方向に大きな力がかかって、転写ベルトが大きく幅方向に寄るおそれがあった。
【0052】
しかし本実施形態では状態の切り替えに伴って中間転写ベルトに働く力の幅方向における向きは予測可能である。そこで本実施形態では、状態の切り替えに伴って中間転写ベルトにかかる力に対して、逆向きの力が働くようにステアリングローラを傾ける動作を実行する。その結果、状態の切り替えに伴って中間転写ベルトにかかる力が大きくなるのが抑制されて、中間転写ベルトが幅方向に大きく寄るのが抑制される。
【0053】
ステアリングローラの動作は制御部800に設けられてステアリングローラを制御する制御コントローラIIによって制御される。この制御の関係を示すのが図8である。ステアリングローラ1のステアリング動作は、中間転写ベルト606の幅方向におけるベルト位置情報に基づく。中間転写ベルト606の幅方向におけるベルト位置情報は、中間転写ベルト606の幅方向における端部の位置を検知する検知手段としてのベルトエッジ検知センサを用いて取得される。加えて、本実施形態ではステアリングローラ1のステアリング動作は、制御コントーラIから送られる予測情報にも基づく。
【0054】
本発明の構成を用いたベルト寄り制御のフローチャートを図12に示す。スタートして(S1)、中間転写ベルトの移動を開始すると(S2)、エッジ検知センサの位置情報に基づくステアリングローラの制御を開始する(S3)。S4で状態を切り替えるかどうかが判断される。なお本実施形態では画像形成装置が画像形成開始信号を待つ待機モードでは、中間転写ベルト606はブラック単色モードの場合と同じ状態に配置される。そのため画像形成装置が待機モードである場合にユーザに指定されるモードがブラック単色モードであれば、中間転写ベルトの状態の切り替えは不要である。また画像を形成するジョブが連続する場合に、直前のジョブがブラック単色モードで、かつ、ユーザに指定されたジョブがブラック単色モードであれば、中間転写ベルトの状態の切り替えは同様に不要である。また画像を形成するジョブが連続する場合に、直前のジョブがカラーモードで、かつ、ユーザに指定されたジョブがカラーモードであれば、中間転写ベルトの状態の切り替えは同様に不要である。このような場合にはS4で中間転写ベルトの状態の切り替えを行わないと判断される。S4で状態の切り替えを行わないと判断された場合には、指定された画像形成モードでトナー像を形成する画像形成工程を開始する(S7)。一方で画像形成装置が待機モードである場合にユーザに指定されるモードがカラーモードであれば、離間状態を当接状態へ切り替える必要がある。また画像を形成するジョブが連続する場合に、直前のジョブがブラック単色モードで、かつ、ユーザに指定されたジョブがカラーモードであれば、離間状態を当接状態へ切り替える必要がある。また画像を形成するジョブが連続する場合に、直前のジョブがカラーモードで、かつ、ユーザに指定されたジョブがブラック単色モードであれば、当接状態を離間状態へ切り替える必要がある。S4で状態を切り替えると判断されると、S5で状態の切り替えを行う。離間状態から当接状態への切り替えは、中間転写ベルトがシアン色の感光体608、マゼンタ色の感光体608M、イエロー色の感光体608Yに幅方において予め設定された奥側で先に当接して手前側で後に当接する当接動作によって行われる。当接状態から離間状態への切り替えは、中間転写ベルトがシアン色の感光体608C、マゼンタ色の感光体608M,イエロー色の感光体608Yに幅方において予め設定された奥側で先に離間して手前側で後に離間する離間動作によって行われる。S5で状態の切り替えを行うと、エッジ検知センサによる制御とは別に、中間転写ベルトが寄る予測情報に基づくステアリングローラの制御を実行する(S6)。その結果状態の切り替えに伴って中間転写ベルトに幅方向に働く力が大きくなるのを抑制することができる。本実施形態では、離間状態が当接状態に切り替わる動作によって中間転写ベルトに幅方向に働く力は手前側から奥側へ向く向きである。また当接状態が離間状態に切り替わる動作によって中間転写ベルトに幅方向に働く力の向きは、奥側から手前側へ向く向きである。そこでこれらの予測情報に基づいたステアリングローラの制御のパターンが制御部800に予め設定されている。すなわち離間状態が当接状態に切り替わる場合には、ステアリングローラは手前側でベルト面を押し上げて奥側でベルト面から退避する向きに直前の姿勢よりも所定角度傾斜するように制御される。その上で直前の姿勢より所定角度傾斜した姿勢になると、その姿勢を所定期間維持する。すなわちステアリングローラによって中間転写ベルトにかかる力は、幅方向において手前側から奥側に向かう向きに強まるか、幅方向において奥側から手前側に向かう向きに弱まる。その結果、ステアリングローラによって中間転写ベルトに働く力が、離間状態から当接状態へ切り替わる動作によって中間転写ベルトに働く力に対して逆向きにかかる。そのため離間状態から当接状態へ切り替える動作によって中間転写ベルトに幅方向に大きな力がかかるのが抑制される。一方で当接状態から離間状態へ切り替わる場合には、ステアリングローラは手前側でベルト面から退避して奥側でベルト面を押し上げる向きに直前の姿勢よりも所定角度傾斜するように制御される。その上で直前の姿勢より所定角度傾斜した状態になると、その姿勢を所定期間維持する。その結果、当接状態から離間状態へ切り替わる動作によって中間転写ベルトに働く力に対して、ステアリングローラによって中間転写ベルトに働く力が逆向きにかかる。そのため当接状態から当接状態への切り替え動作によって中間転写ベルトに幅方向に大きな力がかかるのが抑制される。その後S7で、指定された画像形成モードでトナー像を形成する画像形成工程を開始する。S8で画像形成工程が終了したかどうかが判断される(S8)。S8で画像形成工程が終了していないと判断されると、S4に戻る。画像形成工程が終了したと判断された場合には、エッジセンサに基づくステアリング制御を終了して(S9)、中間転写ベルトの回転を停止して(S10)、終了する(S11)。
【0055】
<本発明における構成の条件補足>
中間転写ベルト606の材質はポリイミドに限定されるものではなく、同等の引張り弾性係数を有する伸びにくい材質を基層に有するベルトであれば、他の樹脂材料あるいは金属材料であってもかまわない。また、本実施例では手前側と奥側の一次転写部着脱用カムを回転させるための軸を共通軸として用いているが、独立の軸で固定されそれぞれ駆動源を有していてもかまわない。さらに、像担持体に対する中間転写ベルトの相対的な位置の切り替えをおこなうためにカム機構を用いているが、中間転写ベルトと感光体の着脱をおこなうことができれば、例えばリンク機構などの機構を用いてもかまわない。また、像担持体に対する中間転写ベルトの相対的な位置の切り替えをおこなうために、一次転写ローラを用いていたが、中間転写ベルトと感光体を着脱させることができればローラでなくとも、たとえばブレードなどを用いてもかまわない。
【0056】
なお本実施形態はベルトの幅方向の寄りを抑制するためにステアリングローラを備える構成であるが、ステアリングローラを持たない構成であっても適用可能である。
【0057】
(実施形態2)
さらに、画像形成に関わるその他の無端ベルトとして、図13に示す画像形成装置70が備える直接転写体ベルト71を例に挙げる。図13に示す画像形成装置70は、図1に示した画像形成装置60と基本的に同様の記録材給紙プロセスおよび記録材搬送プロセスを有するため、相違点である画像の作像プロセスについて説明する。
【0058】
画像形成部613は、主に感光体608、露光装置611、現像装置610、転写装置73、および感光体クリーナ609等から構成される。予め帯電手段(不図示)により表面を一様に帯電され、図中矢印mの方向に回転する前記感光体608に対し、送られてきた画像情報の信号に基づいて前記露光装置611が駆動され、回折手段612等を適宜経由して潜像が形成される。前記感光体608上に形成された静電潜像は、前記現像装置610によるトナー現像を経て、感光体上にトナー像として顕在化する。最上流に位置するイエロー(Y)の該作像プロセスに同期してレジストローラ32によって送り出された記録材Sは、静電吸着等を利用して直接転写ベルト71の作像張架面B上に保持される。このように前記直接転写ベルト71によって担持および搬送される記録材Sに対して、前記転写装置73が印加する加圧力および静電的な負荷バイアスにより記録材S上にトナー像が転写される。同様の作像および転写プロセスが下流のマゼンタ(M)、シアン(C)およびブラック(Bk)の画像形成部においても並列的に処理され、前記直接転写ベルト71により搬送される記録材S上に順次下流のトナー像が重ね合わされるタイミングで制御される。その結果、最終的には記録材S上にフルカラーのトナー像が形成され、駆動ローラ604部で曲率分離(必要に応じて除電分離も併用)された後、下流の定着前搬送部67および定着装置68へと搬送される。なお、前記感光体608上に僅かに残った転写残トナーは前記感光体クリーナ609により回収され、再び次の画像形成に備える。また、以上説明した画像形成部613は図13の場合、Y、M、CおよびBkの4セット存在するが、色数および並び順はこの限りではない。
【0059】
次に前記直接転写ベルト71の搬送ユニットである直接転写ベルトユニットの構成について説明する。前記直接転写ベルト71は駆動ローラ604、ステアリングローラ1、上流張架ローラ617および下流張架ローラ618によって張架され、図中矢印Vの方向へと搬送駆動される無端ベルトである。なお、張架ローラの本数は図13に示す構成に限定されるものではない。本実施形態は実施形態1で説明した構成要件に準ずるものであり、ここでは実施の形態1で述べていた一次転写ローラ607Y、607M、607C、607Bkが、転写装置73Y、73M、73C、73Bkに対応する形になっている。また、前記直接ベルト71は引張り弾性係数が比較的大きくて伸びにくい、ポリイミド等の樹脂ベルトで構成されている。なお、図13のような直接転写方式の画像形成装置70では、直接転写ベルト71の張架姿勢の変化がすなわち担持された記録材Sの姿勢変化になる。ステアリングローラ1の回動による影響が作像張架面に及びにくいように、下流張架ローラ618はステアリングローラ1と最上流の画像形成部(Y色の感光体608Yと転写装置73Yによるニップ部)の間に張り出す形で設けられている。
【符号の説明】
【0060】
1 ステアリングローラ
3F 手前側転写ホルダ
3R 奥側転写ホルダ
4 カム
5 カム軸
6 ホルダ用回動軸
7 転写ローラ軸受
8 ホルダ引張りバネ
9 圧縮バネ
30 ステアリングローラ軸
32 レジストローラ
60、70、80 画像形成装置
61 記録材収納庫
62 リフタ
63 給紙手段
64 搬送ユニット
64a 搬送パス
64b 再給紙パス
65 レジストレーション装置
66 二次転写外ローラ
67 定着前搬送部
68 定着装置
69 分岐搬送装置
71 直接転写ベルト
73 転写装置
81 感光体ベルト
82 転写内ローラ
83 転写外ローラ
84 帯電装置
85 ベルトクリーナ
500 中間転写ベルトユニット
600 排紙トレイ
601 反転搬送装置
602 両面搬送装置
603 二次転写内ローラ
604 (ベルト)駆動ローラ
606 中間転写ベルト
607 一次転写装置、一次転写ローラ
608 感光体
609 感光体クリーナ
610 現像装置
611 露光装置
612 回折手段
613 画像形成部
614 定着ベルト
615 定着ローラ
616 加圧パッド
617 上流張架ローラ
618 下流張架ローラ
619、620 張架ローラ
621、622 一次転写部
630 現像スリーブ
631 バックアップローラ
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成に関わる無端ベルトを備えた画像形成装置に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
トナー像を担持する像担持体が回転中のベルト部材に当接した状態で画像形成を行う画像形成装置がある。このような画像形成装置では回転中のベルト部材と像担持体との間の摩耗を抑制するために、像担持体がベルト部材から離間した状態も形成することができるように構成される。特許文献1には、感光ドラムからトナー像を中間転写ベルトに転写する構成が記載されている。特許文献1では、フルカラーモードでは一次転写ローラが対応する感光ドラムを中間転写ベルトを介して圧することによって、各色用の感光ドラムと中間転写ベルトとが当接する。一方でBk単色モードではカラー色用の一次転写ローラが中間転写ベルトから離間することによって、カラー用の感光ドラムと中間転写ベルトとが離間する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−107506
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし部品精度や組み立て精度には限りがあるので、ベルト部材のベルト面と像担持体との関係は完全な平行関係にはならない。そのため離間した状態から当接した状態へ切り換える場合に、ベルト部材が像担持体に接触するタイミングは、幅方向における手前側と奥側とでずれてしまう。すなわちベルトが移動している時に離間した状態が当接した状態へ切り替わる場合に、ベルトが第1の像担持体には手前側で先に接触して奥側で後に接触する一方で、第2の像担持体には奥側で先に接触して手前側で後に接触するといった事態が生じ得る。すると第1の像担持体の位置では手前側にブレーキがかかることで、ベルトを手前側に寄せる力が第1の像担持体の位置で生じるとともに、第2の像担持体の位置では奥側にブレーキがかかることで、ベルトを奥側に寄せる力が第2の像担持体の位置で生じる。これらの合力はベルト部材をねじる力として働く。ベルト部材をねじる力はベルト部材に負荷をかけるので好ましくない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための本発明は、トナー像を担持する第1の像担持体と、トナー像を担持する第2の像担持体と、複数の張架部材によって張架されて、前記第1の像担持体と前記第2の像担持体とから転写されたトナー像を搬送可能なベルト部材と、前記ベルト部材が前記第1の像担持体及び前記第2の像担持体に当接する第1の状態と、前記ベルト部材が前記第1の像担持体及び前記第2の像担持体から離間した第2の状態とを切り替え可能な切り替え手段と、を有する画像形成装置において、前記ベルト部材が移動しているときに、前記第2の状態が前記第1の状態に切り替わる場合に、前記切り替え手段は、前記ベルト部材がトナー像を搬送する搬送方向に垂直な幅方向において、前記ベルト部材を予め設定された一方の側で前記第1の像担持体と前記第2の像担持体とに当接させた後に他方の側で当接させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
ベルト部材が移動している時にベルト部材が複数の像担持体から離間した状態からベルト部材が複数の像担持体に当接した状態へ切り替えるのに伴って、部品精度誤差に起因してベルト部材にねじる負荷がかかるのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】中間転写方式の画像形成装置の断面図である。
【図2】本発明における中間転写ベルトユニットのブラック単色モードのときの断面図である。
【図3】本発明における中間転写ベルトユニットのカラーモードのときの断面図である。
【図4】本発明における切り替え手段を図示したブラック単色モードのときの斜視図である。
【図5】本発明におけるベルトユニットのブラック単色モードのときの断面図である。
【図6】本発明における中間転写ベルトユニットの切り替え手段を図示したカラーモードのときの斜視図である。
【図7】本発明における中間転写ベルトユニットのカラーモードのときの断面図である。
【図8】状態の切り替えによる外乱を予測したステアリング制御ブロック図である。
【図9】本発明における中間転写ベルトユニットの状態の切り替え途中のときの斜視図である。
【図10】本発明における中間転写ベルトユニットの状態の切り替え途中のときの断面図である。
【図11】カムの位相とカム回転軸−ホルダ接触面間距離の関係を示したグラフである。
【図12】本発明におけるベルト寄り制御フローチャートである。
【図13】直接転写方式の画像形成装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(実施形態1)
<画像形成装置について>
本発明に係る画像形成装置について説明する。まず、図1を用いて画像形成装置の動作について説明する。図1に示した画像形成装置60は電子写真方式を用いたカラーの画像形成装置である。画像形成装置60は、4色の画像形成部を中間転写ベルト上に並べて配置した、所謂中間転写タンデム方式の画像形成装置の断面図であり、厚紙対応力や生産性に優れる点から近年主流になっている。
【0009】
<記録材の搬送プロセス>
記録材Sは記録材収納庫61内のリフトアップ装置62上に積載される形で収納されており、給紙手段63により画像形成タイミングに合わせて給紙される。ここで、給紙手段63は給紙ローラ等による摩擦分離を利用する方式と、エアによる分離吸着を利用する方式が挙げられるが、図1ではこのうち後者を用いるものとする。前記給紙手段63により送り出された記録材Sは搬送ユニット64が有する搬送パス64aを通過し、レジストレーション装置65へと搬送される。該レジストレーション装置65において斜行補正やタイミング補正を行った後、記録材Sは二次転写部へと送られる。二次転写部は、対向する二次転写内ローラ603および二次転写外ローラ66により形成される記録材Sへのトナー像転写ニップ部であり、所定の加圧力と静電的負荷バイアスを与えることで記録材S上にトナー像を吸着させる。
【0010】
<画像の作像プロセス>
以上説明した二次転写部までの記録材Sの搬送プロセスに対して、同様のタイミングで二次転写部まで送られて来る画像の形成プロセスについて説明する。画像形成部613は、主に感光体608、露光装置611、現像装置610、一次転写装置607、および感光体クリーナ609等から構成される。予め帯電手段により表面を一様に帯電され、図中矢印mの方向に回転する前記感光体608に対し、送られてきた画像情報の信号に基づいて前記露光装置611が駆動され、回折手段612等を適宜経由して潜像が形成される。前記感光体608上に形成された静電潜像は、前記現像装置610によるトナー現像を経て、感光体上にトナー像として顕在化する。その後、前記一次転写装置607により所定の加圧力および静電的負荷バイアスが与えられ、中間転写ベルト606上にトナー像が転写される。その後、前記感光体608上に僅かに残った転写残トナーは前記感光体クリーナ609により回収され、再び次の画像形成に備える。以上説明した画像形成部613は図1の場合、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)およびブラック(Bk)の4セット存在する。勿論、色数は4色に限定されるものではなく、また色の並び順もこの限りではない。
【0011】
次に、中間転写ベルト606について説明する。中間転写ベルト606は、張架部材としての、駆動ローラ604、ステアリングローラ1、二次転写内ローラ603、上流張架ローラ617、下流張架ローラ618によって張架される無端ベルトである。さらに中間転写ベルト606は図中矢印Vの方向へとトナー像を搬送可能に構成される。また、中間転写ベルト606に所定の張力を付与するテンションローラの機能は前記ステアリングローラ1が兼ね備えているものとする。先述のY、M、CおよびBkの各画像形成部613により並列処理される各色の画像形成プロセスは、該中間転写ベルト606上に一次転写された上流色のトナー像上に重ね合わせるタイミングで行われる。その結果、最終的にはフルカラーのトナー像が中間転写ベルト606上に形成され、二次転写部へと搬送される。なお、中間転写ベルト606を張架するローラの本数は図1の構成に限定されるものではない。
【0012】
<二次転写以降のプロセス>
以上、それぞれ説明した記録材Sの搬送プロセスおよび画像形成プロセスを以って、前記二次転写部において記録材S上にフルカラーのトナー像が二次転写される。その後、記録材Sは定着前搬送部67により定着装置68へと搬送される。該定着装置68には様々な構成および方式があるが、図1では対向する定着ローラ615および定着ベルト614が形成する定着ニップ内で所定の加圧力と熱量を与えて記録材S上にトナー像を溶融固着させるものである。ここで、前記定着ローラは内部に熱源となるヒータを備え、前記定着ベルト614は複数の張架ローラとベルト内周面から付勢される加圧パッド616を備えている。このようにして得られた定着画像を有する記録材Sは分岐搬送装置69により、そのまま排紙トレイ600上に排出されるか、もしくは両面画像形成を要する場合には反転搬送装置601へと搬送されるかの経路選択が行われる。両面画像形成を要する場合、前記反転搬送装置601へと送られた記録材Sはスイッチバック動作を行うことで先後端を入れ替え、両面搬送装置602へと搬送される。その後、前記給紙装置61より搬送されてくる後続ジョブの記録材とのタイミングを合わせて、前記搬送ユニット64が有する再給紙パス64bから合流し、同様に二次転写部へと送られる。裏面(2面目)の画像形成プロセスに関しては、先述の表面(1面目)の場合と同様なので説明は省略する。
【0013】
<中間転写ベルトのステアリングローラ>
本実施形態では、移動中の中間転写ベルト606が移動方向に対して垂直な幅方向に寄るのを抑制するために中間転写ベルト606をステアリングするステアリング手段が設けられている。すなわちステアリング手段として、中間転写ベルト606を張架してステアリングするステアリングローラ1が設けられている。ステアリングローラ1は、中間転写ベルト606の移動方向においてブラックの画像形成部より下流側で二次転写部より上流側に配置される。ステアリングローラの幅方向における奥側の端部の位置は固定的に配置されて、手前側の端部は揺動可能に構成される。700はステアリングローラに駆動力を供給するステアリングモータである。ステアリングローラ1はステアリングモータ700により駆動されると幅方向における手前側が揺動する。その結果、ステアリングローラ1の軸線と、張架ローラ603、604、617、618の軸線との間での平行度が変化することにより、中間転写ベルト606が幅方向に移動する。
【0014】
<カラーモード、ブラック単色モード、待機モード>
本実施形態の画像形成装置は、ブラック単色用の感光体を用いて画像を形成するブラック単色モードと、各色用の感光体を用いて画像を形成するカラーモードとを実行することができるように構成される。ブラック単色モード、カラーモードは、制御部800を用いて実行される。
【0015】
図2に示されるようにブラック単色モードにおいては、ブラック色用の感光体608Bkが中間転写ベルト606に当接する。またその他の色、すなわちイエロー、マゼンタ、シアンそれぞれの感光体608Y、608M、608Cは中間転写ベルトから離間した状態(第2の状態)となっている。さらにブラック色用の一次転写ローラ607Bkは中間転写ベルト606を介して感光体608Bkを圧して、一次転写部を形成する。一方でその他の色、すなわちイエロー、マゼンタ、シアンそれぞれの一次転写ローラ607Y、607M、607Cは中間転写ベルトから離間した位置に配置される。そのためブラック単色モードで使用されない一次転写ローラ607Y、607M、607Cが、移動中の中間転写ベルト606に接触することにより余計に摩耗するのが抑制される。さらにブラック単色モードではイエロー色用の一次転写部の形状をフラットにするために、中間転写ベルト606の移動方向においてイエロー用の一次転写ローラ607Yの上流側で隣り合う位置に中間転写ベルト606を張架ローラ619が配置される。
【0016】
さらに図4に示されるようにブラック単色モードでは、一次転写ローラ607Bkの軸を支持する転写ローラ軸受7Bkが、両端において圧縮バネによって感光体608Bkを加圧する方向に付勢される。すなわち幅方向において感光体の幅方向において均一に中間転写ベルトに当接するようになっている。
【0017】
一方で図3に示されるようにカラーモードにおいては、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックそれぞれの感光体608Y、608M、608C、608Bkが中間転写ベルトに当接した状態(第1の状態)となっている。さらにカラーモードにおいては、ブラック用の一次転写部の形状をフラットにするために、中間転写ベルト606の移動方向においてブラック用の一次転写ローラ607Bkの上流側で隣り合う位置に中間転写ベルト606を張架ローラ620が配置される。さらにイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックそれぞれの色用の一次転写ローラ607Y,607M,607C,607Bkは中間転写ベルト606を介して対応する感光体608Y,608M,608C,608Bkを圧して、それぞれの一次転写部を形成する。
【0018】
さらに図6に示されるようにカラーモードでは、一次転写ローラ607Bkが中間転写ベルトに当接するだけではない。一次転写ローラ607Y、607M、607Cの幅方向における両端も転写ローラ軸受7Y、7M、7Cによって軸受けされる。さらに転写ローラ軸受7Y、7M、7Cは、圧縮バネ9によって対応する感光体608を加圧する方向に付勢される。また、転写ローラ軸受7Y、7M、7Cは、圧縮バネ9によって押し上げられたときに手前側転写ホルダ3F、奥側転写ホルダ3Rの不図示のストッパー部で一定位置で止まるように取り付けられている。すなわち幅方向において感光体の幅方向において均一に中間転写ベルトに当接するようになっている。
【0019】
なお張架ローラ619はカラーモードでは中間転写ベルト606に当接してブラックモード単色モードでは中間転写ベルト606から離間する。また張架ローラ620はカラーモードでは中間転写ベルト606から離間してブラック単色モードでは中間転写ベルト606に当接するように構成される。
【0020】
なお、画像形成を行わず、画像形成信号が入力されるのを待機する待機モードは、ブラック単色モードと同じ状態、すなわち中間転写ベルト606が感光体608Y,608M,608Cから離間した状態となる。
【0021】
<離間状態、当接状態>
本実施形態では、ブラック単色モード及び待機モードでは、中間転写ベルト606が感光体608Y,608M,608Cから離間した状態(第2の状態)である。一方でカラーモードでは中間転写ベルト606は感光体608Y,608M,608Cに当接した状態(第1の状態)である。すなわち感光体に対する中間転写ベルトの相対的な位置が、モードによって変化する構成となっている。
【0022】
そこで本実施形態では、中間転写ベルト606が感光体608Y,608M,608Cから離間した状態と、中間転写ベルト606が感光体608Y,608M、608Cに当接した状態とを切り替えるために、状態切り替え装置501が設けられている。状態切り替え装置501は中間転写ベルト606を保持する中間転写ユニット500に設けられている。切り替え手段501の詳細な構成および動作について図4、図5、図6、図7を用いて説明する。
【0023】
3Fは、幅方向において手前側に設けられて、一次転写ローラ607Y、607M、607C、張架ローラ619、620を保持する手前側転写ホルダである。さらに3Rは、幅方向において奥側に設けられて、一次転写ローラ607Y、607M、607C、張架ローラ619、620を保持する奥側転写ホルダである。手前側転写ホルダ3F、奥側転写ホルダ3Rは、ホルダ用回動軸6を中心に一定の範囲内で回動可能に構成される。4Fは、手前側転写ホルダ3Fの当接部に当接して回転可能な手前側カムである。4Rは、奥側転写ホルダ3Rの当接部に当接して回転可能な奥側カムである。手前側カム4F,奥側カム4Rは、共通のカム軸5に固定される。手前側転写ホルダ3F、奥側転写ホルダ3Rはそれぞれホルダ引張りバネ8F,8Rによって図中S方向に付勢される。900は、カム軸5を駆動するための状態切り替えモータ900である。カム4F,4Rは状態切り替えモータ900によってカム軸5周りに回転する。その結果転写ホルダ3F,3Rが回動する。
【0024】
状態切り替えモータ900を用いて手前側カム4R,奥側カム4Fが所定量回転することによって、手前側転写ホルダ3R,奥側転写ホルダ3Fは移動することができる。その結果、感光体608Y,608M,608Cが中間転写ベルト606から離間した状態(図5)が、感光体608Y、608M,608Cが中間転写ベルト606に当接した状態(図7)に変わる。なおモータがさらに所定量回転することにより、手前側転写ホルダ3R,奥側転写ホルダ3Fがさらに移動する。その結果感光体608Y,608M,608Cが中間転写ベルト606に当接した状態(図7)が、感光体608Y,608M,608Cが中間転写ベルト606から離間した状態(図5)へ変化する。
【0025】
なお状態切り替えモータ900は制御部800に設けられた制御コントローラIによって制御される(図8)。状態切り替えモータ900の制御は、ユーザに指定された画像形成モード情報に基づく。
【0026】
状態切り替え装置501による状態の切り替えは、ブラック単色モードの後にカラーモードが連続する場合、カラーモードの後にブラック単色モードが連続する場合に行われる。当然、状態切り替え装置501を用いた状態の切り替えは、モードが変わらない場合には不要である。また待機モードにおける感光体に対する中間転写ベルトの相対的な位置は、ブラック単色モードの場合と同じである。そのため状態切り替え装置501を用いた状態切り替えは、待機モードからブラック単色を行う場合には不要であるが、待機モードからカラーモードを行う場合には必要になる。
【0027】
そこで本実施形態では次のパターンが予め記憶されている。
【0028】
・ブラック単色モードに続いてカラーモードが行われる場合には、切り替え手段501が状態を切り替える。ブラック単色モードに続いてブラック単色モードが行われる場合には、切り替え手段501は状態を切り替えない。
【0029】
・カラーモードに続いてブラック単色モードが行われる場合には、切り替え手段501は状態を切り替える。カラーモードに続いてカラーモードが行われる場合には、切り替え手段501は状態を切り替えない。
【0030】
・待機モードに続いてカラーモードが行われる場合には、切り替え手段501は状態を切り替える。待機モードに続いてブラック単色モードが行われる場合には、切り替え手段501は状態を切り替えない。
【0031】
<傾斜状態>
しかし部品精度や組み立て精度には限りがあるので、ベルト部材がトナー像を搬送する搬送方向に直交する幅方向において、ベルト部材のベルト面と像担持体の表面とは完全な平行関係にはならない。そのため離間した状態(図5)が当接した状態(図7)へ切り替わる場合に次のような事態が生じ得る。すなわちベルトがシアン色の感光体607C(第1の像担持体)には手前側で先に接触して奥側で後に接触する一方で、マゼンタ色の感光体607M(第2の像担持体)には奥側で先に接触して手前側で後に接触するといった事態である。するとシアン色の感光体607Cの位置では手前側にブレーキがかかることで、ベルトを手前側に寄せる力が感光体607Cの位置で生じる。一方でマゼンタ色の感光体607Mの位置では奥側にブレーキがかかることで、ベルトを奥側に寄せる力がマゼンタ色の感光体607Mの位置で生じる。これらの合力は中間転写ベルトをねじる力として働く。この様に中間転写ベルトをねじる力はベルト部材に負荷をかけるので、好ましくない。
【0032】
そこで中間転写ベルトが移動しているときに、状態切り替え装置501によって離間状態が当接状態に切り替わる場合には次のような当接動作を行う。すなわち中間転写ベルトがカラー色の感光体608C、608M,608Yに幅方向において予め設定された奥側で先に当接して手前側で後に当接する当接動作である。
【0033】
その結果、有色の感光体608Y,608M、608Cそれぞれの位置で、ベルトにかかる力は奥側に寄せる向きになる。すなわちベルトにかかる力の向きがそろうことによって、ベルトをねじる力が生じるのが抑制される。
【0034】
さらに中間転写ベルト606が幅方向における奥側で有色の感光体608Y,608M,608Cに当接するとともに、中間転写ベルト606が幅方向における手前側で有色の感光体608Y,608M,608Cから離間した傾斜状態が所定期間維持される。傾斜状態を所定期間継続することで幅方向において手前側から奥側を向く力が強化されるので、中間転写ベルトが幅方向に手前側から奥側に向けて寄りやすくなる。すなわち離間状態が当接状態に切り替わるのに伴って、中間転写ベルト606が幅方向に寄る向きを予測することも可能となる。
【0035】
図9、図10は、離間状態から当接状態へ切り換える際に形成される傾斜状態を示す。一方で当接状態から離間状態へ切り換える際に形成される傾斜状態は図9、10とは逆向きになる。つまり離間状態から当接状態へ切り換える際に形成される傾斜状態は、幅方向における奥側で中間転写ベルト606が感光体608Y,608M,608Cに当接し、手前側で中間転写ベルト606が感光体608Y,608M,608Cから離間した状態である。一方で当接状態から離間状態へ切り換える際に形成される傾斜状態は、幅方向における手前側で中間転写ベルト606が感光体608Y,608M,608Cに当接して、奥側で中間転写ベルト606が感光体608Y,608M,608Cから離間した状態である。
【0036】
傾斜状態を形成するための切り替え手段501の構成及び動作の詳細について図11を用いて説明する。本実施形態では傾斜状態を形成することができるように、手前側カム4F、奥側カム4Rそれぞれが対応する転写ホルダ3F,3Rの当接部に当接するためのカムプロファイルが構成される。
【0037】
図11は、手前側カム4Fと奥側カム4Rのカムプロファイルの関係を示す。dFは、手前側転写ホルダ3Fの当接部に当接する位置での、カム回転軸5を中心とする手前側カム4Fの半径である。dRは、奥側転写ホルダ3Rの当接部に当接する位置での、カム回転軸5を中心とする奥側カム4Rの半径である。図11では、dF,dRを縦軸にとり、カム回転軸5の位相を横軸にプロットしたグラフを示す。
【0038】
奥側カム4Rについては、カム回転軸5の位相が−180°以上―147.5°以下の範囲と97.5°以上180°以下の範囲とでdRは最小の6.5mmとなる。位相が―147.5°からー72.5°の範囲にかけて半径dRは単調増加する。位相が−72.5°以上22.5°以下の範囲で半径dRは最大値15mmになる。位相が22.5°から97.5°の範囲にかけてdRは単調減少する。
【0039】
手前側カム4Fについては、位相が―180°以上で―97.5°以下の範囲と、位相が147.5°以上で180°以下の範囲とで、半径dFは最小値6.5mmになる。位相が−97.5°からー22.5°の範囲にかけて半径dFは単調増加する。位相が−22.5°以上で72.5°以下の範囲で半径dFは最大値15mmになる。位相が72.5°から147.5°の範囲にかけて半径は単調減少する。
【0040】
すなわち、カム回転軸5の位相が147.5°以上で180°以下の範囲と、−180°以上で−147.5°以下の範囲とでは、幅方向における奥側と手前側の両側において、中間転写ベルト606は感光体608Y,608M,608Cから離れている。一方でカム軸5の位相がー22.5°以上で22.4°以下の範囲では、幅方向における奥側と手前側の両側において、中間転写ベルト606は感光体608Y,608M,608Cに当接している。
【0041】
本実施形態では切り替えモータ900によってカム回転軸5の位相が正の方向に進むので、位相がー147.5°から−22.5°にかけての範囲が、離間状態から当接状態への状態の切り替えに用いられる。
【0042】
カム回転軸5の位相がー147.5°になると、dRが増加し始める。すなわち奥側転写ホルダ3Rが感光体側に向けて動き始める。カム回転軸5の位相が―97.5°になると、dFが増加し始める。すなわち手前側転写ホルダ3Fが感光外側に向けて動き始める。位相がー72.5になると、奥側転写ホルダ3Rに当接する位置で、奥側カム4Rの半径dRが最大置に達する。位相がー22.5°になると、手前側転写ホルダ3Fに当接する位置で、手前側カム4Rの半径dFが最大値に達する。すなわち中間転写ベルト606は、感光体608Y,608M,608Cのそれぞれに対して、幅方向において奥側で先に当接して、幅方向における手前側で後に当接する。その結果中間転写ベルトに幅方向にかかる力は、有色の感光体608Y,608M、608Cそれぞれの位置で、手前側から奥側へ向く向きになる。すなわち中間転写ベルトにかかる力の向きが各有色の感光体608Y,608M,608Cの位置でそろうことによって、ベルトをねじる負荷が生じるのが抑制される。
【0043】
位相がー72.5°からー22.5°の範囲では、幅方向における奥側では、一次転写ローラ607Y,607M,607Cが中間転写ベルト606を介して対応する感光体608Y,608M,608Cを圧した状態になる。一方でこのとき幅方向における手前側では、中間転写ベルト606は感光体608Y,608M,608Cから離間した状態のままである。すなわち中間転写ベルト606が幅方向において奥側では感光体608Y,608M,608Cに当接して、手前側では感光体608Y,608M,608Cから離間した傾斜状態が形成される。
【0044】
この傾斜状態は、位相がー72.5°からー22.5°にかけての所定期間継続する。この理由について説明する。傾斜状態では幅方向における奥側で中間転写ベルトにブレーキが偏るので、中間転写ベルト606は幅方向において奥側向きの力がかかる。しかし傾斜状態を継続する期間が短ければ、中間転写ベルト606に幅方向にかかる力の大きさは小さい。離間状態が当接状態へ切り替わるのに伴って中間転写ベルトが幅方向に寄る向きを予測するためには、中間転写ベルトに幅方向にかかる力の大きさがある程度大きいのが望ましい。そこで本実施形態では、傾斜状態を所定期間継続することによって中間転写ベルトに幅方向にかかる力を強化する。その結果中間転写ベルト606は幅方向において奥側に寄りやすくなる。より具体的には本実施形態では位相がー72.5°からー22.5°にかけての移動を125msecかけて行う。その結果、状態の切り替え動作に伴って中間転写ベルトに幅方向にかかる力が十分大きくなるので、離間状態が当接状態へ切り替わるのに伴って中間転写ベルトが幅方向に寄る向きを予測することが可能になる。
【0045】
さらに本実施形態では位相が22.5°から147.5°にかけての範囲が当接状態から離間状態への切り替えに用いられる。
【0046】
カム回転軸5の位相が22.5°になるとdRが減少し始める。すなわち奥側転写ホルダ4Rが感光体から離間する側に移動し始める。その後位相が72.5°になると手前側転写ホルダ4Fが感光体から離間する側に移動し始める。すなわち、中間転写ベルトがカラー色の感光体608Y、608M,608Cから奥側で先に離間して手前側で後に離間する動作を行う。その結果当接状態が離間状態へ切り替わる際に、有色の感光体608Y,608M、608Cそれぞれの位置で、ベルトにかかる力は手前側に寄せる向きになる。すなわちベルトにかかる力の向きが各有色の感光体608Y,608M,608Cの位置でそろうことによって、ベルトをねじることによる負荷がかかるのが抑制される。
【0047】
なお位相が22.5°から72.5°の範囲では、幅方向における手前側では一次転写ローラ607Y,607M,607Cが中間転写ベルト606を介して対応する感光体608Y,608M,608Cを圧する。一方で幅方向における奥側では、中間転写ベルト606が感光体608Y,608M,608Cから離間している。カム回転軸5の位相が22.5°から72.5°の範囲にかけての移動は125msecかけて行われる。すなわち中間転写ベルト606が幅方向において感光体に対して傾斜した傾斜状態が所定期間維持される。その結果、中間転写ベルトが幅方向に手前側に寄りやすい構成となるので、中間転写ベルトが移動しているときに、当接状態が離間状態へ切り替わるのに伴って中間転写ベルト606が幅方向に寄る向きを予測することが可能になる。
【0048】
なお本実施形態では、離間状態が当接状態に切り替わる際にはモータを正回転させることで、中間転写ベルトが感光体608Y,608M,608cに奥側で先に当接して、手前側で後に当接する構成である。もちろんこの構成に限定する意図ではない。モータを逆回転することで、離間状態が当接状態に切り替わる際に、中間転写ベルトが感光体608Y,608M,608cに手前側で先に当接して、奥側で後に当接する構成でもよい。すなわちそれぞれの感光体が、幅方向において予め設定された一方の側で先に当接して、他方の側で後に当接する動作を行う構成であればよい。
【0049】
また本実施形態では、当接状態が離間状態に切り替わる際にモータを正回転させることで、中間転写ベルトが感光体608Y,608M,608cに奥側で先に離間して、手前側で後に離間する構成である。もちろんこの構成に限定する意図ではない。モータを逆回転することで、当接状態が離間状態に切り替わる際には、中間転写ベルトが感光体608Y,608M,608cに手前側で先に離間して、奥側で後に離間する構成でもよい。すなわちそれぞれの感光体が、幅方向において予め設定された一方の側で先に離間して、他方の側で後に離間する動作を行う構成であればよい。
【0050】
また本実施例ではdR、dFの最小値が6.5mmで、dR、dFの最大値が15mmになるように設定される。もちろんこの数値に限定する意図ではない。最小値は、中間転写ベルトが感光体608Y,608M,608Cから離間した状態が形成されるように設定されればよい。最大値は、一次転写部が形成されるように設定されればよい。
【0051】
<ステアリングローラの制御>
従来の構成では、中間転写ベルトが移動しているときに、状態の切り替えに伴って中間転写ベルト606にかかる力の幅方向における向きは、部品精度や組み立て精度に依存していた。そのため状態の切り替えに伴い中間転写ベルトにかかる力の向きを予測することができなかったので、状態切り替えによって中間転写ベルトに幅方向に大きな力がかかって、転写ベルトが大きく幅方向に寄るおそれがあった。
【0052】
しかし本実施形態では状態の切り替えに伴って中間転写ベルトに働く力の幅方向における向きは予測可能である。そこで本実施形態では、状態の切り替えに伴って中間転写ベルトにかかる力に対して、逆向きの力が働くようにステアリングローラを傾ける動作を実行する。その結果、状態の切り替えに伴って中間転写ベルトにかかる力が大きくなるのが抑制されて、中間転写ベルトが幅方向に大きく寄るのが抑制される。
【0053】
ステアリングローラの動作は制御部800に設けられてステアリングローラを制御する制御コントローラIIによって制御される。この制御の関係を示すのが図8である。ステアリングローラ1のステアリング動作は、中間転写ベルト606の幅方向におけるベルト位置情報に基づく。中間転写ベルト606の幅方向におけるベルト位置情報は、中間転写ベルト606の幅方向における端部の位置を検知する検知手段としてのベルトエッジ検知センサを用いて取得される。加えて、本実施形態ではステアリングローラ1のステアリング動作は、制御コントーラIから送られる予測情報にも基づく。
【0054】
本発明の構成を用いたベルト寄り制御のフローチャートを図12に示す。スタートして(S1)、中間転写ベルトの移動を開始すると(S2)、エッジ検知センサの位置情報に基づくステアリングローラの制御を開始する(S3)。S4で状態を切り替えるかどうかが判断される。なお本実施形態では画像形成装置が画像形成開始信号を待つ待機モードでは、中間転写ベルト606はブラック単色モードの場合と同じ状態に配置される。そのため画像形成装置が待機モードである場合にユーザに指定されるモードがブラック単色モードであれば、中間転写ベルトの状態の切り替えは不要である。また画像を形成するジョブが連続する場合に、直前のジョブがブラック単色モードで、かつ、ユーザに指定されたジョブがブラック単色モードであれば、中間転写ベルトの状態の切り替えは同様に不要である。また画像を形成するジョブが連続する場合に、直前のジョブがカラーモードで、かつ、ユーザに指定されたジョブがカラーモードであれば、中間転写ベルトの状態の切り替えは同様に不要である。このような場合にはS4で中間転写ベルトの状態の切り替えを行わないと判断される。S4で状態の切り替えを行わないと判断された場合には、指定された画像形成モードでトナー像を形成する画像形成工程を開始する(S7)。一方で画像形成装置が待機モードである場合にユーザに指定されるモードがカラーモードであれば、離間状態を当接状態へ切り替える必要がある。また画像を形成するジョブが連続する場合に、直前のジョブがブラック単色モードで、かつ、ユーザに指定されたジョブがカラーモードであれば、離間状態を当接状態へ切り替える必要がある。また画像を形成するジョブが連続する場合に、直前のジョブがカラーモードで、かつ、ユーザに指定されたジョブがブラック単色モードであれば、当接状態を離間状態へ切り替える必要がある。S4で状態を切り替えると判断されると、S5で状態の切り替えを行う。離間状態から当接状態への切り替えは、中間転写ベルトがシアン色の感光体608、マゼンタ色の感光体608M、イエロー色の感光体608Yに幅方において予め設定された奥側で先に当接して手前側で後に当接する当接動作によって行われる。当接状態から離間状態への切り替えは、中間転写ベルトがシアン色の感光体608C、マゼンタ色の感光体608M,イエロー色の感光体608Yに幅方において予め設定された奥側で先に離間して手前側で後に離間する離間動作によって行われる。S5で状態の切り替えを行うと、エッジ検知センサによる制御とは別に、中間転写ベルトが寄る予測情報に基づくステアリングローラの制御を実行する(S6)。その結果状態の切り替えに伴って中間転写ベルトに幅方向に働く力が大きくなるのを抑制することができる。本実施形態では、離間状態が当接状態に切り替わる動作によって中間転写ベルトに幅方向に働く力は手前側から奥側へ向く向きである。また当接状態が離間状態に切り替わる動作によって中間転写ベルトに幅方向に働く力の向きは、奥側から手前側へ向く向きである。そこでこれらの予測情報に基づいたステアリングローラの制御のパターンが制御部800に予め設定されている。すなわち離間状態が当接状態に切り替わる場合には、ステアリングローラは手前側でベルト面を押し上げて奥側でベルト面から退避する向きに直前の姿勢よりも所定角度傾斜するように制御される。その上で直前の姿勢より所定角度傾斜した姿勢になると、その姿勢を所定期間維持する。すなわちステアリングローラによって中間転写ベルトにかかる力は、幅方向において手前側から奥側に向かう向きに強まるか、幅方向において奥側から手前側に向かう向きに弱まる。その結果、ステアリングローラによって中間転写ベルトに働く力が、離間状態から当接状態へ切り替わる動作によって中間転写ベルトに働く力に対して逆向きにかかる。そのため離間状態から当接状態へ切り替える動作によって中間転写ベルトに幅方向に大きな力がかかるのが抑制される。一方で当接状態から離間状態へ切り替わる場合には、ステアリングローラは手前側でベルト面から退避して奥側でベルト面を押し上げる向きに直前の姿勢よりも所定角度傾斜するように制御される。その上で直前の姿勢より所定角度傾斜した状態になると、その姿勢を所定期間維持する。その結果、当接状態から離間状態へ切り替わる動作によって中間転写ベルトに働く力に対して、ステアリングローラによって中間転写ベルトに働く力が逆向きにかかる。そのため当接状態から当接状態への切り替え動作によって中間転写ベルトに幅方向に大きな力がかかるのが抑制される。その後S7で、指定された画像形成モードでトナー像を形成する画像形成工程を開始する。S8で画像形成工程が終了したかどうかが判断される(S8)。S8で画像形成工程が終了していないと判断されると、S4に戻る。画像形成工程が終了したと判断された場合には、エッジセンサに基づくステアリング制御を終了して(S9)、中間転写ベルトの回転を停止して(S10)、終了する(S11)。
【0055】
<本発明における構成の条件補足>
中間転写ベルト606の材質はポリイミドに限定されるものではなく、同等の引張り弾性係数を有する伸びにくい材質を基層に有するベルトであれば、他の樹脂材料あるいは金属材料であってもかまわない。また、本実施例では手前側と奥側の一次転写部着脱用カムを回転させるための軸を共通軸として用いているが、独立の軸で固定されそれぞれ駆動源を有していてもかまわない。さらに、像担持体に対する中間転写ベルトの相対的な位置の切り替えをおこなうためにカム機構を用いているが、中間転写ベルトと感光体の着脱をおこなうことができれば、例えばリンク機構などの機構を用いてもかまわない。また、像担持体に対する中間転写ベルトの相対的な位置の切り替えをおこなうために、一次転写ローラを用いていたが、中間転写ベルトと感光体を着脱させることができればローラでなくとも、たとえばブレードなどを用いてもかまわない。
【0056】
なお本実施形態はベルトの幅方向の寄りを抑制するためにステアリングローラを備える構成であるが、ステアリングローラを持たない構成であっても適用可能である。
【0057】
(実施形態2)
さらに、画像形成に関わるその他の無端ベルトとして、図13に示す画像形成装置70が備える直接転写体ベルト71を例に挙げる。図13に示す画像形成装置70は、図1に示した画像形成装置60と基本的に同様の記録材給紙プロセスおよび記録材搬送プロセスを有するため、相違点である画像の作像プロセスについて説明する。
【0058】
画像形成部613は、主に感光体608、露光装置611、現像装置610、転写装置73、および感光体クリーナ609等から構成される。予め帯電手段(不図示)により表面を一様に帯電され、図中矢印mの方向に回転する前記感光体608に対し、送られてきた画像情報の信号に基づいて前記露光装置611が駆動され、回折手段612等を適宜経由して潜像が形成される。前記感光体608上に形成された静電潜像は、前記現像装置610によるトナー現像を経て、感光体上にトナー像として顕在化する。最上流に位置するイエロー(Y)の該作像プロセスに同期してレジストローラ32によって送り出された記録材Sは、静電吸着等を利用して直接転写ベルト71の作像張架面B上に保持される。このように前記直接転写ベルト71によって担持および搬送される記録材Sに対して、前記転写装置73が印加する加圧力および静電的な負荷バイアスにより記録材S上にトナー像が転写される。同様の作像および転写プロセスが下流のマゼンタ(M)、シアン(C)およびブラック(Bk)の画像形成部においても並列的に処理され、前記直接転写ベルト71により搬送される記録材S上に順次下流のトナー像が重ね合わされるタイミングで制御される。その結果、最終的には記録材S上にフルカラーのトナー像が形成され、駆動ローラ604部で曲率分離(必要に応じて除電分離も併用)された後、下流の定着前搬送部67および定着装置68へと搬送される。なお、前記感光体608上に僅かに残った転写残トナーは前記感光体クリーナ609により回収され、再び次の画像形成に備える。また、以上説明した画像形成部613は図13の場合、Y、M、CおよびBkの4セット存在するが、色数および並び順はこの限りではない。
【0059】
次に前記直接転写ベルト71の搬送ユニットである直接転写ベルトユニットの構成について説明する。前記直接転写ベルト71は駆動ローラ604、ステアリングローラ1、上流張架ローラ617および下流張架ローラ618によって張架され、図中矢印Vの方向へと搬送駆動される無端ベルトである。なお、張架ローラの本数は図13に示す構成に限定されるものではない。本実施形態は実施形態1で説明した構成要件に準ずるものであり、ここでは実施の形態1で述べていた一次転写ローラ607Y、607M、607C、607Bkが、転写装置73Y、73M、73C、73Bkに対応する形になっている。また、前記直接ベルト71は引張り弾性係数が比較的大きくて伸びにくい、ポリイミド等の樹脂ベルトで構成されている。なお、図13のような直接転写方式の画像形成装置70では、直接転写ベルト71の張架姿勢の変化がすなわち担持された記録材Sの姿勢変化になる。ステアリングローラ1の回動による影響が作像張架面に及びにくいように、下流張架ローラ618はステアリングローラ1と最上流の画像形成部(Y色の感光体608Yと転写装置73Yによるニップ部)の間に張り出す形で設けられている。
【符号の説明】
【0060】
1 ステアリングローラ
3F 手前側転写ホルダ
3R 奥側転写ホルダ
4 カム
5 カム軸
6 ホルダ用回動軸
7 転写ローラ軸受
8 ホルダ引張りバネ
9 圧縮バネ
30 ステアリングローラ軸
32 レジストローラ
60、70、80 画像形成装置
61 記録材収納庫
62 リフタ
63 給紙手段
64 搬送ユニット
64a 搬送パス
64b 再給紙パス
65 レジストレーション装置
66 二次転写外ローラ
67 定着前搬送部
68 定着装置
69 分岐搬送装置
71 直接転写ベルト
73 転写装置
81 感光体ベルト
82 転写内ローラ
83 転写外ローラ
84 帯電装置
85 ベルトクリーナ
500 中間転写ベルトユニット
600 排紙トレイ
601 反転搬送装置
602 両面搬送装置
603 二次転写内ローラ
604 (ベルト)駆動ローラ
606 中間転写ベルト
607 一次転写装置、一次転写ローラ
608 感光体
609 感光体クリーナ
610 現像装置
611 露光装置
612 回折手段
613 画像形成部
614 定着ベルト
615 定着ローラ
616 加圧パッド
617 上流張架ローラ
618 下流張架ローラ
619、620 張架ローラ
621、622 一次転写部
630 現像スリーブ
631 バックアップローラ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー像を担持する第1の像担持体と、
トナー像を担持する第2の像担持体と、
複数の張架部材によって張架されて、前記第1の像担持体と前記第2の像担持体とから転写されたトナー像を搬送可能なベルト部材と、
前記ベルト部材が前記第1の像担持体及び前記第2の像担持体に当接する第1の状態と、前記ベルト部材が前記第1の像担持体及び前記第2の像担持体から離間した第2の状態とを切り替え可能な切り替え手段と、
を有する画像形成装置において、
前記ベルト部材が移動しているときに、前記第2の状態が前記第1の状態に切り替わる場合に、前記切り替え手段は、前記ベルト部材がトナー像を搬送する搬送方向に垂直な幅方向において、前記ベルト部材を予め設定された一方の側で前記第1の像担持体と前記第2の像担持体とに当接させた後に他方の側で当接させることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
トナー像を担持する第1の像担持体と、
トナー像を担持する第2の像担持体と、
複数の張架部材によって張架されて、前記第1の像担持体と前記第2の像担持体とから転写されたトナー像を搬送可能なベルト部材と、
前記ベルト部材が前記第1の像担持体及び前記第2の像担持体に当接する第1の状態と、前記ベルト部材が前記第1の像担持体及び前記第2の像担持体から離間した第2の状態とを切り替え可能な切り替え手段と、
を有する画像形成装置において、
前記ベルト部材が移動しているときに、前記第1の状態が前記第2の状態に切り替わる場合に、前記切り替え手段は、前記ベルト部材がトナー像を搬送する搬送方向に垂直な幅方向において、前記ベルト部材を予め設定された一方の側で前記第1の像担持体と前記第2の像担持体とから離間させる前に他方の側で離間させることを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
トナー像を担持する第1の像担持体と、
トナー像を担持する第2の像担持体と、
複数の張架部材によって張架されて、記録材を搬送して、前記第1の像担持体と前記第2の像担持体とからトナー像が記録材上に転写されるベルト部材と、
前記ベルト部材が前記第1の像担持体及び前記第2の像担持体に当接する第1の状態と、前記ベルト部材が前記第1の像担持体及び前記第2の像担持体から離間した第2の状態とを切り替え可能な切り替え手段と、
を有する画像形成装置において、
前記ベルト部材が移動しているときに、前記第2の状態が前記第1の状態に切り替わる場合に、前記切り替え手段は、前記ベルト部材が記録材を搬送する搬送方向に垂直な幅方向において、前記ベルト部材を予め設定された一方の側で前記第1の像担持体と前記第2の像担持体とに当接させた後に他方の側で当接させることを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
トナー像を担持する第1の像担持体と、
トナー像を担持する第2の像担持体と、
複数の張架部材によって張架されて、記録材を搬送して、前記第1の像担持体と前記第2の像担持体とからトナー像が記録材上に転写されるベルト部材と、
前記ベルト部材が前記第1の像担持体及び前記第2の像担持体に当接する第1の状態と、前記ベルト部材が前記第1の像担持体及び前記第2の像担持体から離間した第2の状態とを切り替え可能な切り替え手段と、
を有する画像形成装置において、
前記ベルト部材が移動しているときに、前記第1の状態が前記第2の状態に切り替わる場合に、前記切り替え手段は、前記ベルト部材が記録材を搬送する搬送方向に垂直な幅方向において、前記ベルト部材を予め設定された一方の側で前記第1の像担持体と前記第2の像担持体とから離間させる前に他方の側で離間させることを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
前記切り替え手段は、前記第1の状態と前記第2の状態とのうち一方の状態を他方の状態へ切り替える場合に、前記ベルト部材が前記一方の側で前記第1の像担持体と前記第2の像担持体とに当接するとともに、前記他方の側で前記第1の像担持体と前記第2の像担持体とから離間する状態を所定期間維持することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載された画像形成装置。
【請求項6】
前記ベルト部材を張架して前記ベルト部材をステアリングするステアリングローラを備えて、
前記第1の状態と前記第2の状態とのうち一方の状態を他方の状態へ切り替える場合に、前記ステアリングローラは、前記一方の側で前記ベルト部材から退避して前記他方の側で前記ベルト部材を押し上げる方向に直前の姿勢よりも所定角度傾斜する状態を形成するように制御されることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載された画像形成装置。
【請求項1】
トナー像を担持する第1の像担持体と、
トナー像を担持する第2の像担持体と、
複数の張架部材によって張架されて、前記第1の像担持体と前記第2の像担持体とから転写されたトナー像を搬送可能なベルト部材と、
前記ベルト部材が前記第1の像担持体及び前記第2の像担持体に当接する第1の状態と、前記ベルト部材が前記第1の像担持体及び前記第2の像担持体から離間した第2の状態とを切り替え可能な切り替え手段と、
を有する画像形成装置において、
前記ベルト部材が移動しているときに、前記第2の状態が前記第1の状態に切り替わる場合に、前記切り替え手段は、前記ベルト部材がトナー像を搬送する搬送方向に垂直な幅方向において、前記ベルト部材を予め設定された一方の側で前記第1の像担持体と前記第2の像担持体とに当接させた後に他方の側で当接させることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
トナー像を担持する第1の像担持体と、
トナー像を担持する第2の像担持体と、
複数の張架部材によって張架されて、前記第1の像担持体と前記第2の像担持体とから転写されたトナー像を搬送可能なベルト部材と、
前記ベルト部材が前記第1の像担持体及び前記第2の像担持体に当接する第1の状態と、前記ベルト部材が前記第1の像担持体及び前記第2の像担持体から離間した第2の状態とを切り替え可能な切り替え手段と、
を有する画像形成装置において、
前記ベルト部材が移動しているときに、前記第1の状態が前記第2の状態に切り替わる場合に、前記切り替え手段は、前記ベルト部材がトナー像を搬送する搬送方向に垂直な幅方向において、前記ベルト部材を予め設定された一方の側で前記第1の像担持体と前記第2の像担持体とから離間させる前に他方の側で離間させることを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
トナー像を担持する第1の像担持体と、
トナー像を担持する第2の像担持体と、
複数の張架部材によって張架されて、記録材を搬送して、前記第1の像担持体と前記第2の像担持体とからトナー像が記録材上に転写されるベルト部材と、
前記ベルト部材が前記第1の像担持体及び前記第2の像担持体に当接する第1の状態と、前記ベルト部材が前記第1の像担持体及び前記第2の像担持体から離間した第2の状態とを切り替え可能な切り替え手段と、
を有する画像形成装置において、
前記ベルト部材が移動しているときに、前記第2の状態が前記第1の状態に切り替わる場合に、前記切り替え手段は、前記ベルト部材が記録材を搬送する搬送方向に垂直な幅方向において、前記ベルト部材を予め設定された一方の側で前記第1の像担持体と前記第2の像担持体とに当接させた後に他方の側で当接させることを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
トナー像を担持する第1の像担持体と、
トナー像を担持する第2の像担持体と、
複数の張架部材によって張架されて、記録材を搬送して、前記第1の像担持体と前記第2の像担持体とからトナー像が記録材上に転写されるベルト部材と、
前記ベルト部材が前記第1の像担持体及び前記第2の像担持体に当接する第1の状態と、前記ベルト部材が前記第1の像担持体及び前記第2の像担持体から離間した第2の状態とを切り替え可能な切り替え手段と、
を有する画像形成装置において、
前記ベルト部材が移動しているときに、前記第1の状態が前記第2の状態に切り替わる場合に、前記切り替え手段は、前記ベルト部材が記録材を搬送する搬送方向に垂直な幅方向において、前記ベルト部材を予め設定された一方の側で前記第1の像担持体と前記第2の像担持体とから離間させる前に他方の側で離間させることを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
前記切り替え手段は、前記第1の状態と前記第2の状態とのうち一方の状態を他方の状態へ切り替える場合に、前記ベルト部材が前記一方の側で前記第1の像担持体と前記第2の像担持体とに当接するとともに、前記他方の側で前記第1の像担持体と前記第2の像担持体とから離間する状態を所定期間維持することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載された画像形成装置。
【請求項6】
前記ベルト部材を張架して前記ベルト部材をステアリングするステアリングローラを備えて、
前記第1の状態と前記第2の状態とのうち一方の状態を他方の状態へ切り替える場合に、前記ステアリングローラは、前記一方の側で前記ベルト部材から退避して前記他方の側で前記ベルト部材を押し上げる方向に直前の姿勢よりも所定角度傾斜する状態を形成するように制御されることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載された画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2013−20178(P2013−20178A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−154959(P2011−154959)
【出願日】平成23年7月13日(2011.7.13)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月13日(2011.7.13)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]