画像形成装置
【課題】記録ヘッドを副走査方向の位置をずらして配置した場合に維持回復機構の部品点数が増加し、装置サイズが増大する。
【解決手段】記録ヘッド4a〜4dを搭載し、主走査方向に移動されるキャリッジ3と、記録ヘッド4a〜4dの維持回復を行う維持回復機構20とを備え、記録ヘッド4aと記録ヘッド4b〜4cとは主走査方向と直交する副走査方向に位置をずらして配置され、維持回復機構20は、装置本体に保持された第1維持回復部21と、記録ヘッド4aに対向可能な第1位置と記録ヘッド4b〜4dに対向可能な第2位置との間で、副走査方向に往復移動可能な第2維持回復部22とを有している。
【解決手段】記録ヘッド4a〜4dを搭載し、主走査方向に移動されるキャリッジ3と、記録ヘッド4a〜4dの維持回復を行う維持回復機構20とを備え、記録ヘッド4aと記録ヘッド4b〜4cとは主走査方向と直交する副走査方向に位置をずらして配置され、維持回復機構20は、装置本体に保持された第1維持回復部21と、記録ヘッド4aに対向可能な第1位置と記録ヘッド4b〜4dに対向可能な第2位置との間で、副走査方向に往復移動可能な第2維持回復部22とを有している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像形成装置に関し、特に液滴を吐出する記録ヘッドを搭載したキャリッジを有する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、ファクシミリ、複写装置、プロッタ、これらの複合機等の画像形成装置として、例えばインク液滴を吐出する液体吐出ヘッド(液滴吐出ヘッド)からなる記録ヘッドを用いた液体吐出記録方式の画像形成装置として、例えばインクジェット記録装置などが知られている。
【0003】
このような液体吐出方式の画像形成装置にあっては、記録ヘッドのノズルの吐出安定性を維持回復するための維持回復機構を備えている。維持回復機構は、例えばノズル面をキャッピングしてノズルから液体を吸引排出させるための吸引キャップ、ノズル内のインク乾燥、ノズル内への埃混入防止のための保湿キャップ、記録ヘッドのノズル面を払拭して清浄化するワイパ部材(ワイパブレード、ワイピングブレード、ブレードなどとも称される。)などを含む維持回復機構を備え、例えばノズルから増粘インクを吸引キャップ内に排出した後、ノズル面をワイパ部材で払拭してノズルメニスカスを形成する回復動作などを行なう。
【0004】
従来の維持回復機構として、例えば、維持回復機構をキャリッジの記録ヘッドに対向して維持回復を行うメンテナンス位置と、記録ヘッドに対向しない退避位置との間で、主走査方向と直交する副走査方向に移動可能に配置したものが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3930587号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、画像形成装置における生産性を向上するため、同色の液滴を吐出する記録ヘッドを副走査方向に位置をずらして千鳥状に配置し、一回の主走査で印刷できる副走査方向の印字幅を拡大したものがある。このような画像形成装置における維持回復機構としては、副走査方向に位置がずれた各記録ヘッドが対向可能な位置にそれぞれ維持回復部を配置するようにしている。
【0007】
その結果、維持回復機構の構成部品が増えるとともに、維持回復機構の主走査方向のスペースが増大することになり装置本体の幅(主走査方向のサイズ)が増大するという課題がある。
【0008】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、記録ヘッドを副走査方向の位置をずらして配置した場合における維持回復機構の部品点数の削減を図り、スペースの削減による装置サイズの増大を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明に係る画像形成装置は、
液滴を吐出するノズルを有する少なくとも第1、第2の記録ヘッドを搭載し、主走査方向に移動されるキャリッジと、
前記記録ヘッドの維持回復を行う維持回復機構と、を備え、
前記第1記録ヘッドと第2記録ヘッドとは前記主走査方向と直交する副走査方向に位置をずらして配置され、
前記維持回復機構は、
装置本体に保持された第1維持回復部と、
前記第1記録ヘッドに対向可能な第1位置と前記第2記録ヘッドに対向可能な第2位置との間で、副走査方向に往復移動可能な第2維持回復部と、を有している
構成とした。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る画像形成装置によれば、第1記録ヘッドと第2記録ヘッドとは主走査方向と直交する副走査方向に位置をずらして配置され、維持回復機構は、装置本体に保持された第1維持回復部と、第1記録ヘッドに対向可能な第1位置と第2記録ヘッドに対向可能な第2位置との間で、副走査方向に往復移動可能な第2維持回復部とを有している構成としたので、記録ヘッドを副走査方向の位置をずらして配置した場合における維持回復機構の部品点数の削減を図り、スペースの削減による装置サイズの増大を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る画像形成装置の機構部の要部平面説明図である。
【図2】同機構部の要部正面説明図である。
【図3】本発明の第1実施形態における第2維持回復部が第2位置にあるときの平面説明図である。
【図4】同じく第2維持回復部が第1位置にあるときの平面説明図である。
【図5】同実施形態による記録ヘッドの維持回復(メンテナンス)動作の説明に供する側面説明図である。
【図6】同実施形態の模式的平面説明図である。
【図7】比較例1の模式的平面説明図である。
【図8】本発明の第2実施形態の説明に供する模式的平面説明図である。
【図9】比較例2の説明に供する模式的平面説明図である。
【図10】本発明の第3実施形態における保湿キャップ及び第2維持回復部の駆動機構部の側面説明図である。
【図11】同駆動機構部のうちのキャップの進退動機構部の側面説明図である。
【図12】同じく第2維持回復部の往復移動機構部の側面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。本発明を適用した画像形成装置の一例について図1及び図2を参照して説明する。なお、図1は同画像形成装置の機構部の要部平面説明図、図2は同機構部の要部側面説明図である。
【0013】
この画像形成装置は、シリアル型画像形成装置であり、左右の側板11L,11R間に架け渡した主ガイド部材1及び図示しない従ガイド部材でキャリッジ3を移動可能に保持し、図示しない主走査モータによって、駆動プーリと従動プーリ間に架け渡したタイミングベルトを介してキャリッジ3を主走査方向に移動走査する。
【0014】
キャリッジ3には、液滴を吐出する4個の液体吐出ヘッドからなる記録ヘッド4a、4b、4c、4d(区別しないときは「記録ヘッド4」という。)を複数のノズルからなるノズル列を主走査方向と直交する副走査方向に配列し、滴吐出方向を下方に向けて装着している。
【0015】
ここで、記録ヘッド4aと記録ヘッド4b〜4cは主走査方向と直交する方向である副走査方向に1ヘッド分(1ノズル列分)位置をずらして配置されている。また、記録ヘッド4a〜4dはいずれも2列のノズル列を有している。そして、記録ヘッド4aと4bはいずれも同色である黒色の液滴を吐出し、記録ヘッド4cと4dの各ノズル列でマゼンタ(M),シアン(C),イエロー(y)の液滴を吐出する。
【0016】
これにより、モノクロ画像については記録ヘッド4a、4bを使用して1スキャン(主走査)で2ヘッド分の幅で画像を形成でき、カラー画像については例えば記録ヘッド4b〜4dを使用して形成する。
【0017】
また、記録ヘッド4a〜4dには、各ヘッド4に液体を供給するヘッドタンク5がそれぞれ設けられている。ヘッドタンク5には、装置本体に交換可能に装着されるメインタンクであるインクカートリッジ10k、10c、10m、10yから供給チューブ6を介して各色のインクが供給される。
【0018】
一方、用紙を搬送するために、用紙を静電吸着して記録ヘッド4に対向する位置で搬送するための搬送手段である搬送ベルト12を備えている。この搬送ベルト12は、無端状ベルトであり、搬送ローラ13とテンションローラ14との間に掛け渡されて、ベルト搬送方向(副走査方向)に周回するように構成し、周回移動しながら帯電ローラ15によって帯電(電荷付与)される。
【0019】
また、搬送ベルト12は、図示しない副走査モータによってタイミングベルト及びタイミングプーリを介して搬送ローラ13が回転駆動されることによって、副走査方向に周回移動する。
【0020】
さらに、キャリッジ3の主走査方向の一方側には搬送ベルト12の側方に記録ヘッド4の維持回復を行う維持回復機構20が配置され、他方側には搬送ベルト12の側方に記録ヘッド4から画像形成に寄与しない液滴を吐出する空吐出を行う空吐出受け24がそれぞれ配置されている。
【0021】
維持回復機構20は、後述するように、装置本体に保持された第1維持回復部21と、装置本体に副走査方向に往復移動可能に保持された第2維持回復部22とを有している。この維持回復機構20は、例えば記録ヘッド4のノズル面(ノズルが形成された面)をキャッピングする保湿キャップを兼ねた吸引キャップ31及び保湿キャップ32と、ノズル面を払拭するワイパ部材33、画像形成に寄与しない液滴(空吐出滴)を受ける空吐出受け34などを備えている。
【0022】
このように構成したこの画像形成装置においては、図示しない給紙トレイから用紙Pが帯電された搬送ベルト12上に給紙されて吸着され、搬送ベルト12の周回移動によって用紙Pが副走査方向に搬送される。そこで、キャリッジ3を主走査方向に移動させながら画像信号に応じて記録ヘッド4を駆動することにより、停止している用紙Pに液滴を吐出して1行分を記録し、用紙Pを所定量搬送後、次の行の記録を行う。記録終了信号又は用紙Pの後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了して、用紙Pを図示しない排紙トレイに排紙する。
【0023】
次に、本発明の第1実施形態における維持回復機構20の詳細について図3及び図4を参照して説明する。なお、図3は同維持回復機構の第2維持回復部(吸引キャップ)が第2位置にあるときの平面説明図、図4は同じく第2維持回復部(吸引キャップ)が第1位置にあるときの平面説明図である。
【0024】
本実施形態では、前述したように、キャリッジ3には記録ヘッド4a〜4dが副走査方向位置を1ノズル列の副走査方向幅分ずらして配置されている(これを、以下「千鳥配列」ともいう。)。ここで、キャリッジ3に搭載された記録ヘッド4a〜4dのうち、副走査方向(用紙搬送方向)上流側に配置された記録ヘッド4b、4c、4dを第1記録ヘッドとし、副走査方向(用紙搬送方向)下流側に配置された記録ヘッド4aを第2記録ヘッドとする。
【0025】
一方、維持回復機構20は、装置本体に保持された第1維持回復部21と、副走査方向に往復移動可能な第2維持回復部22とを有している。
【0026】
第1維持回復部21は、第1記録ヘッドである記録ヘッド4b〜4dをキャッピング可能な位置に、各ヘッドに対応して3個の保湿キャップ32を有している。
【0027】
第2維持回復部22は、吸引キャップ31、ワイパ部材33、ワイパクリーナ36を含む空吐出受け34、ワイパクリーナ35とを有している。そして、第2維持回復部22は、図3に示すように、第2記録ヘッドである記録ヘッド4aに対して維持回復動作を行う第2位置と、図4に示すように、第1記録ヘッドである記録ヘッド4b〜4dに対して維持回復動作を行う第1位置との間で往復移動可能である。
【0028】
具体的には、装置本体には維持回復機構20全体の維持フレーム201が取り付けられている。この維持フレーム201上に第1維持回復部121が設けられている。また、維持フレーム201上には、第1維持回復部21の保湿キャップ32を記録ヘッド4b〜4cに対して進退(この例では「昇降」)させる進退機構及び第2維持回復部22を往復移動させる往復移動機構を含む駆動機構25が備えられている。
【0029】
また、維持フレーム201上に、スライド部材であるスライドフレーム202が副走査方向に往復移動可能に設けられている。スライドフレーム202は、維持フレーム201上に副走査方向に配設されたガイドレール203に沿って移動可能とされている。このスライドフレーム202上に第2維持回復部22が設けられている。
【0030】
これにより、第2維持回復部22は、吸引キャップ31などが記録ヘッド4b〜4dに対向可能な第1位置と、吸引キャップ31などが記録ヘッド4aに対向可能な第2位置との間で往復移動可能となる。
【0031】
また、スライドフレーム202上には、第2維持回復部22の吸引キャップ31に接続された吸引手段であるチュービングポンプからなる吸引ポンプ37と、吸引ポンプ37の可撓性チューブからなる排出チューブ38を第2維持回復部22の往復移動に応じて巻取る巻取り機構230なども備えられている。なお、排出チューブ38は、装置本体側の後述する図5に示す廃液タンク250に接続されている。
【0032】
なお、吸引キャップ31はキャップホルダに保持されて進退機構によって進退(この例では「昇降」)され、ワイパ部材33はワイパホルダに保持されて進退機構によって進退(この例では「昇降」)される。
【0033】
駆動機構25によるスライドフレーム202の移動(第2維持回復部22の往復移動)及び保湿キャップ32の記録ヘッド4に対する進退動(昇降動作)は、モータ210の正逆転及び二つの一方向クラッチを用いた駆動の切替で行うようにしている。ここでは、スライドフレーム202の移動及び保湿キャップ32の昇降動作は、それぞれ偏芯カム211a、211bと、アーム212a、212bを用いて、回転運動を水平運動に変換している。
【0034】
また、吸引キャップ31の記録ヘッド4に対する進退動作と吸引ポンプ37の駆動も、第2維持回復部22に備えられたモータ220の正逆転及び一方向クラッチを用いた駆動の切替で行うようにしている。
【0035】
このように構成した維持回復機構による記録ヘッドの維持回復(メンテナンス)動作について図5も参照して説明する。なお、図5(a)は第2記録ヘッドに対する維持回復動作時の説明に供する側面説明図、(b)は第1記録ヘッドに対する維持回復動作時の説明に供する側面説明図である。
【0036】
まず、第2記録ヘッドである記録ヘッド4aの維持回復動作を行うときには、第2維持回復部22を図4及び図5(a)に示す第2位置にして、キャリッジ3を移動させて記録ヘッド4aを第2維持回復部22に対向する位置にする。そして、吸引キャップ31を上昇させて記録ヘッド4aのノズル面をキャッピングし、記録ヘッド4aのノズルから増粘した液体を吸引排出し、デキャップ後空吐出受け34に空吐出滴を吐出させ、ワイパ部材33を上昇させてノズル面を払拭するなどの維持回復動作を行う。
【0037】
また、第1記録ヘッドである記録ヘッド4bの維持回復動作を行うときには、第2維持回復部22を図3及び図5(b)に示す第1位置にして、キャリッジ3を移動させて記録ヘッド4bを第2維持回復部22に対向する位置にする。そして、吸引キャップ31を上昇させて記録ヘッド4bのノズル面をキャッピングし、記録ヘッド4bのノズルから増粘した液体を吸引排出し、デキャップ後空吐出受け34に空吐出滴を吐出させ、ワイパ部材33を上昇させてノズル面を払拭するなどの維持回復動作を行う。なお、記録ヘッド4c、4dに対する維持回復動作を行うときも同様である。
【0038】
この第1実施形態の作用効果について図6及び図7を参照して説明する。なお、図6は第1実施形態の模式的平面説明図、図6は比較例1の模式的平面説明図である。また、いずれの図でも(a)はキャリッジの模式的平面図を、(b)は維持回復機構の模式的平面図を示している。
【0039】
まず、比較例1において、図7(a)に示すように、記録ヘッド4aと記録ヘッド4b〜4dとはキャリッジ3に千鳥配列で搭載されている。
【0040】
そのため、図7(b)に示すように、維持回復機構20は、記録ヘッド4b〜4cの維持回復動作を行うために、記録ヘッド4b、4c、4dからの吸引及び記録ヘッド4bを保湿するための吸引キャップ31bと、記録ヘッド4c、4dをそれぞれ保湿するための保湿キャップ32と、記録ヘッド4b、4c、4dを払拭するワイパ部材33b、空吐出受け34b、ワイパ部材33bを清掃するワイパクリーナ35bとを備えている。
【0041】
また、記録ヘッド4aの維持回復動作を行うために、記録ヘッド4aの吸引及び保湿するための吸引キャップ31aと、記録ヘッド4aを払拭するワイパ部材33a、空吐出受け34a、ワイパ部材33aを清掃するワイパクリーナ35aとを備えている。
【0042】
この場合、維持回復機構20のワイパ部材33b、空吐出受け34b、ワイパクリーナ35bと、記録ヘッド4aとの干渉を避けるために、キャリッジ3上で、記録ヘッド4aは記録ヘッド4bとの間にワイパ部材33b、空吐出受け34b、ワイパクリーナ35bの主走査方向の幅S分だけ離間させて配置される。
【0043】
これに対し、本実施形態では、図6に示すように、記録ヘッド4a〜4dの維持回復動作を行うために、記録ヘッド4a〜4dの吸引及び記録ヘッド4aの保湿をするための吸引キャップ31と、記録ヘッド4a〜4dを払拭するワイパ部材33、空吐出受け34、ワイパ部材33を清掃するワイパクリーナ35と、記録ヘッド4b〜4dの保湿をするための保湿キャップ32を備えている。なお、前述したとおり、吸引キャップ31、ワイパ部材33、空吐出受け34、ワイパクリーナ35を有する第2維持回復部22は白抜き矢印の方向に往復移動可能である。
【0044】
すなわち、本実施形態の構成では、比較例1の構成における、記録ヘッド4b、4c、4dを払拭するワイパ部材33b、空吐出受け34b、ワイパクリーナ35bが不要になる。
【0045】
したがって、本実施形態では、比較例1に比べて、キャリッジ3及び維持回復機構20の主走査方向長さを、比較例1のワイパ部材33b、空吐出受け34b、ワイパクリーナ35bを設けるために必要な主走査方向の幅S分だけ小さくすることができる。
【0046】
これによって、記録ヘッドを副走査方向の位置をずらして配置した場合における維持回復機構の部品点数の削減を図り、スペースの削減による装置サイズの増大を抑制することができる。
【0047】
なお、第2維持回復部は、吸引キャップ、ワイパ部材及び空吐出受けの少なくともいずれかを有していれば、上記本発明の作用効果を得ることができる。
【0048】
次に、本発明の第2実施形態について図8及び図9を参照して説明する。なお、図8は第2実施形態の模式的平面説明図、図9は比較例2の模式的平面説明図である。
【0049】
本実施形態及び比較例2は、前記第1実施形態及び比較例1における記録ヘッド4bを記録ヘッド4a側に配置した例である。つまり、ここでは、記録ヘッド4c、4dが第1記録ヘッド、記録ヘッド4a、4bが第2記録ヘッドとなる。
【0050】
このような構成であっても、本実施形態の構成では、比較例2の構成における、記録ヘッド4c、4dを払拭するワイパ部材33b、空吐出受け34b、ワイパクリーナ35bが不要になる。
【0051】
したがって、本実施形態でも、比較例2に比べて、キャリッジ3及び維持回復機構20の主走査方向長さを、比較例2のワイパ部材33b、空吐出受け34b、ワイパクリーナ35bを設けるために必要な主走査方向の幅S分だけ小さくすることができる。
【0052】
これによって、記録ヘッドを副走査方向の位置をずらして配置した場合における維持回復機構の部品点数の削減を図り、スペースの削減による装置サイズの増大を抑制することができる。
【0053】
次に、本発明の第3実施形態について図10ないし図12を参照して説明する。なお、図10は同実施形態における保湿キャップ及び第2維持回復部の駆動機構部の側面説明図、図11は同駆動機構部のうちのキャップの進退動機構部の側面説明図、図12は同じく第2維持回復部の往復移動機構部の側面説明図である。
【0054】
キャップ32は、キャップホルダ301に保持され、キャップホルダ301はスライダ302に保持されている。スライダ302は、維持回復機構20の維持フレームに移動可能(この例では昇降可能)に保持されている。
【0055】
そして、この駆動機構部26は、DCモータ700を正方向に回転させたときに、DCモータ700の出力軸に固定されているウォームギヤ700aからギヤ701a、ギヤ701b、ギヤ701c、ギヤ701eを経由して、スライドカム703を回転させることでスライド部材705が往復移動する。これにより、スライド部材705に搭載されている第2維持回復部22が副走査方向(図10ないし図12では左右方向)に往復移動される。
【0056】
これに対し、DCモータ700を逆方向に回転させると、ギヤ701a、ギヤ701b、ギヤ701c、701dが回転して、キャップカム222が回転する。キャップカム322が回転することで、キャップレバー704を介して第1維持回復部21の保湿キャップ32が進退動(昇降)する。
【0057】
なお、スライドカム703とキャップカム322の軸上に図示しないワンウェイクラッチを設け、回転伝達を一方向にしている。
【0058】
具体的には、図11に示すように、キャップカム322の溝部(カム溝)にキャップレバー704の一端部のボス部704aが移動可能に嵌め込まれ、キャップレバー704は支軸704bを支点として揺れ動くことができ、キャップレバー704の他端部のボス部704cがスライダ302に回転自在に嵌め込まれており、キャップレバー704が揺れ動くことで保湿キャップ32が昇降する。
【0059】
また、図12に示すように、スライド部材705にはスライドレバー702の一端部が回転可能に取付けられ、スライドレバー702の他端部は回転可能の支持されて、スライドレバー702は揺れ動くことが可能になっている。そして、一方のスライドレバー702の一部がスライドカム703のカム溝に移動可能に嵌め込まれており、スライドカム703が回転することによりスライドレバー702、702を介して、スライド部材705を副走査方向(図12では左右方向)に往復移動される。
【0060】
このように、1つの駆動源で保湿キャップの移動と第2維持回復部の移動を行うことにより、構成が簡単になる。
【0061】
なお、本願において、「用紙」とは材質を紙に限定するものではなく、OHP、布、ガラス、基板などを含み、インク滴、その他の液体などが付着可能なものの意味であり、被記録媒体、記録媒体、記録紙、記録用紙などと称されるものを含む。また、画像形成、記録、印字、印写、印刷はいずれも同義語とする。
【0062】
また、「画像形成装置」は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス等の媒体に液体を吐出して画像形成を行う装置を意味し、また、「画像形成」とは、文字や図形等の意味を持つ画像を媒体に対して付与することだけでなく、パターン等の意味を持たない画像を媒体に付与すること(単に液滴を媒体に着弾させること)をも意味する。
【0063】
また、「インク」とは、特に限定しない限り、インクと称されるものに限らず、記録液、定着処理液、液体などと称されるものなど、画像形成を行うことができるすべての液体の総称として用い、例えば、DNA試料、レジスト、パターン材料、樹脂なども含まれる。
【0064】
また、「画像」とは平面的なものに限らず、立体的に形成されたものに付与された画像、また立体自体を三次元的に造形して形成された像も含まれる。
【0065】
また、記録ヘッドが鉛直方向下方向に向けて液滴を吐出する垂直打ち方式の画像形成装置だけでなく、記録ヘッドが鉛直方向と直交する方向ないし交差する方向に向けて液滴を吐出する水平打ち方式の画像形成装置にも適用することができる。
【符号の説明】
【0066】
1 ガイドロッド
3 キャリッジ
4、4a、4b、4c、4d 記録ヘッド
20 維持回復機構
21 第1維持回復部
22 第2維持回復部
31 吸引キャップ
32 保湿キャップ
33 ワイパ部材
34 空吐出受け
37 吸引ポンプ
38 排出チューブ
201 維持フレーム
202 スライドフレーム
203 ガイドレール
【技術分野】
【0001】
本発明は画像形成装置に関し、特に液滴を吐出する記録ヘッドを搭載したキャリッジを有する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、ファクシミリ、複写装置、プロッタ、これらの複合機等の画像形成装置として、例えばインク液滴を吐出する液体吐出ヘッド(液滴吐出ヘッド)からなる記録ヘッドを用いた液体吐出記録方式の画像形成装置として、例えばインクジェット記録装置などが知られている。
【0003】
このような液体吐出方式の画像形成装置にあっては、記録ヘッドのノズルの吐出安定性を維持回復するための維持回復機構を備えている。維持回復機構は、例えばノズル面をキャッピングしてノズルから液体を吸引排出させるための吸引キャップ、ノズル内のインク乾燥、ノズル内への埃混入防止のための保湿キャップ、記録ヘッドのノズル面を払拭して清浄化するワイパ部材(ワイパブレード、ワイピングブレード、ブレードなどとも称される。)などを含む維持回復機構を備え、例えばノズルから増粘インクを吸引キャップ内に排出した後、ノズル面をワイパ部材で払拭してノズルメニスカスを形成する回復動作などを行なう。
【0004】
従来の維持回復機構として、例えば、維持回復機構をキャリッジの記録ヘッドに対向して維持回復を行うメンテナンス位置と、記録ヘッドに対向しない退避位置との間で、主走査方向と直交する副走査方向に移動可能に配置したものが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3930587号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、画像形成装置における生産性を向上するため、同色の液滴を吐出する記録ヘッドを副走査方向に位置をずらして千鳥状に配置し、一回の主走査で印刷できる副走査方向の印字幅を拡大したものがある。このような画像形成装置における維持回復機構としては、副走査方向に位置がずれた各記録ヘッドが対向可能な位置にそれぞれ維持回復部を配置するようにしている。
【0007】
その結果、維持回復機構の構成部品が増えるとともに、維持回復機構の主走査方向のスペースが増大することになり装置本体の幅(主走査方向のサイズ)が増大するという課題がある。
【0008】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、記録ヘッドを副走査方向の位置をずらして配置した場合における維持回復機構の部品点数の削減を図り、スペースの削減による装置サイズの増大を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明に係る画像形成装置は、
液滴を吐出するノズルを有する少なくとも第1、第2の記録ヘッドを搭載し、主走査方向に移動されるキャリッジと、
前記記録ヘッドの維持回復を行う維持回復機構と、を備え、
前記第1記録ヘッドと第2記録ヘッドとは前記主走査方向と直交する副走査方向に位置をずらして配置され、
前記維持回復機構は、
装置本体に保持された第1維持回復部と、
前記第1記録ヘッドに対向可能な第1位置と前記第2記録ヘッドに対向可能な第2位置との間で、副走査方向に往復移動可能な第2維持回復部と、を有している
構成とした。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る画像形成装置によれば、第1記録ヘッドと第2記録ヘッドとは主走査方向と直交する副走査方向に位置をずらして配置され、維持回復機構は、装置本体に保持された第1維持回復部と、第1記録ヘッドに対向可能な第1位置と第2記録ヘッドに対向可能な第2位置との間で、副走査方向に往復移動可能な第2維持回復部とを有している構成としたので、記録ヘッドを副走査方向の位置をずらして配置した場合における維持回復機構の部品点数の削減を図り、スペースの削減による装置サイズの増大を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る画像形成装置の機構部の要部平面説明図である。
【図2】同機構部の要部正面説明図である。
【図3】本発明の第1実施形態における第2維持回復部が第2位置にあるときの平面説明図である。
【図4】同じく第2維持回復部が第1位置にあるときの平面説明図である。
【図5】同実施形態による記録ヘッドの維持回復(メンテナンス)動作の説明に供する側面説明図である。
【図6】同実施形態の模式的平面説明図である。
【図7】比較例1の模式的平面説明図である。
【図8】本発明の第2実施形態の説明に供する模式的平面説明図である。
【図9】比較例2の説明に供する模式的平面説明図である。
【図10】本発明の第3実施形態における保湿キャップ及び第2維持回復部の駆動機構部の側面説明図である。
【図11】同駆動機構部のうちのキャップの進退動機構部の側面説明図である。
【図12】同じく第2維持回復部の往復移動機構部の側面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。本発明を適用した画像形成装置の一例について図1及び図2を参照して説明する。なお、図1は同画像形成装置の機構部の要部平面説明図、図2は同機構部の要部側面説明図である。
【0013】
この画像形成装置は、シリアル型画像形成装置であり、左右の側板11L,11R間に架け渡した主ガイド部材1及び図示しない従ガイド部材でキャリッジ3を移動可能に保持し、図示しない主走査モータによって、駆動プーリと従動プーリ間に架け渡したタイミングベルトを介してキャリッジ3を主走査方向に移動走査する。
【0014】
キャリッジ3には、液滴を吐出する4個の液体吐出ヘッドからなる記録ヘッド4a、4b、4c、4d(区別しないときは「記録ヘッド4」という。)を複数のノズルからなるノズル列を主走査方向と直交する副走査方向に配列し、滴吐出方向を下方に向けて装着している。
【0015】
ここで、記録ヘッド4aと記録ヘッド4b〜4cは主走査方向と直交する方向である副走査方向に1ヘッド分(1ノズル列分)位置をずらして配置されている。また、記録ヘッド4a〜4dはいずれも2列のノズル列を有している。そして、記録ヘッド4aと4bはいずれも同色である黒色の液滴を吐出し、記録ヘッド4cと4dの各ノズル列でマゼンタ(M),シアン(C),イエロー(y)の液滴を吐出する。
【0016】
これにより、モノクロ画像については記録ヘッド4a、4bを使用して1スキャン(主走査)で2ヘッド分の幅で画像を形成でき、カラー画像については例えば記録ヘッド4b〜4dを使用して形成する。
【0017】
また、記録ヘッド4a〜4dには、各ヘッド4に液体を供給するヘッドタンク5がそれぞれ設けられている。ヘッドタンク5には、装置本体に交換可能に装着されるメインタンクであるインクカートリッジ10k、10c、10m、10yから供給チューブ6を介して各色のインクが供給される。
【0018】
一方、用紙を搬送するために、用紙を静電吸着して記録ヘッド4に対向する位置で搬送するための搬送手段である搬送ベルト12を備えている。この搬送ベルト12は、無端状ベルトであり、搬送ローラ13とテンションローラ14との間に掛け渡されて、ベルト搬送方向(副走査方向)に周回するように構成し、周回移動しながら帯電ローラ15によって帯電(電荷付与)される。
【0019】
また、搬送ベルト12は、図示しない副走査モータによってタイミングベルト及びタイミングプーリを介して搬送ローラ13が回転駆動されることによって、副走査方向に周回移動する。
【0020】
さらに、キャリッジ3の主走査方向の一方側には搬送ベルト12の側方に記録ヘッド4の維持回復を行う維持回復機構20が配置され、他方側には搬送ベルト12の側方に記録ヘッド4から画像形成に寄与しない液滴を吐出する空吐出を行う空吐出受け24がそれぞれ配置されている。
【0021】
維持回復機構20は、後述するように、装置本体に保持された第1維持回復部21と、装置本体に副走査方向に往復移動可能に保持された第2維持回復部22とを有している。この維持回復機構20は、例えば記録ヘッド4のノズル面(ノズルが形成された面)をキャッピングする保湿キャップを兼ねた吸引キャップ31及び保湿キャップ32と、ノズル面を払拭するワイパ部材33、画像形成に寄与しない液滴(空吐出滴)を受ける空吐出受け34などを備えている。
【0022】
このように構成したこの画像形成装置においては、図示しない給紙トレイから用紙Pが帯電された搬送ベルト12上に給紙されて吸着され、搬送ベルト12の周回移動によって用紙Pが副走査方向に搬送される。そこで、キャリッジ3を主走査方向に移動させながら画像信号に応じて記録ヘッド4を駆動することにより、停止している用紙Pに液滴を吐出して1行分を記録し、用紙Pを所定量搬送後、次の行の記録を行う。記録終了信号又は用紙Pの後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了して、用紙Pを図示しない排紙トレイに排紙する。
【0023】
次に、本発明の第1実施形態における維持回復機構20の詳細について図3及び図4を参照して説明する。なお、図3は同維持回復機構の第2維持回復部(吸引キャップ)が第2位置にあるときの平面説明図、図4は同じく第2維持回復部(吸引キャップ)が第1位置にあるときの平面説明図である。
【0024】
本実施形態では、前述したように、キャリッジ3には記録ヘッド4a〜4dが副走査方向位置を1ノズル列の副走査方向幅分ずらして配置されている(これを、以下「千鳥配列」ともいう。)。ここで、キャリッジ3に搭載された記録ヘッド4a〜4dのうち、副走査方向(用紙搬送方向)上流側に配置された記録ヘッド4b、4c、4dを第1記録ヘッドとし、副走査方向(用紙搬送方向)下流側に配置された記録ヘッド4aを第2記録ヘッドとする。
【0025】
一方、維持回復機構20は、装置本体に保持された第1維持回復部21と、副走査方向に往復移動可能な第2維持回復部22とを有している。
【0026】
第1維持回復部21は、第1記録ヘッドである記録ヘッド4b〜4dをキャッピング可能な位置に、各ヘッドに対応して3個の保湿キャップ32を有している。
【0027】
第2維持回復部22は、吸引キャップ31、ワイパ部材33、ワイパクリーナ36を含む空吐出受け34、ワイパクリーナ35とを有している。そして、第2維持回復部22は、図3に示すように、第2記録ヘッドである記録ヘッド4aに対して維持回復動作を行う第2位置と、図4に示すように、第1記録ヘッドである記録ヘッド4b〜4dに対して維持回復動作を行う第1位置との間で往復移動可能である。
【0028】
具体的には、装置本体には維持回復機構20全体の維持フレーム201が取り付けられている。この維持フレーム201上に第1維持回復部121が設けられている。また、維持フレーム201上には、第1維持回復部21の保湿キャップ32を記録ヘッド4b〜4cに対して進退(この例では「昇降」)させる進退機構及び第2維持回復部22を往復移動させる往復移動機構を含む駆動機構25が備えられている。
【0029】
また、維持フレーム201上に、スライド部材であるスライドフレーム202が副走査方向に往復移動可能に設けられている。スライドフレーム202は、維持フレーム201上に副走査方向に配設されたガイドレール203に沿って移動可能とされている。このスライドフレーム202上に第2維持回復部22が設けられている。
【0030】
これにより、第2維持回復部22は、吸引キャップ31などが記録ヘッド4b〜4dに対向可能な第1位置と、吸引キャップ31などが記録ヘッド4aに対向可能な第2位置との間で往復移動可能となる。
【0031】
また、スライドフレーム202上には、第2維持回復部22の吸引キャップ31に接続された吸引手段であるチュービングポンプからなる吸引ポンプ37と、吸引ポンプ37の可撓性チューブからなる排出チューブ38を第2維持回復部22の往復移動に応じて巻取る巻取り機構230なども備えられている。なお、排出チューブ38は、装置本体側の後述する図5に示す廃液タンク250に接続されている。
【0032】
なお、吸引キャップ31はキャップホルダに保持されて進退機構によって進退(この例では「昇降」)され、ワイパ部材33はワイパホルダに保持されて進退機構によって進退(この例では「昇降」)される。
【0033】
駆動機構25によるスライドフレーム202の移動(第2維持回復部22の往復移動)及び保湿キャップ32の記録ヘッド4に対する進退動(昇降動作)は、モータ210の正逆転及び二つの一方向クラッチを用いた駆動の切替で行うようにしている。ここでは、スライドフレーム202の移動及び保湿キャップ32の昇降動作は、それぞれ偏芯カム211a、211bと、アーム212a、212bを用いて、回転運動を水平運動に変換している。
【0034】
また、吸引キャップ31の記録ヘッド4に対する進退動作と吸引ポンプ37の駆動も、第2維持回復部22に備えられたモータ220の正逆転及び一方向クラッチを用いた駆動の切替で行うようにしている。
【0035】
このように構成した維持回復機構による記録ヘッドの維持回復(メンテナンス)動作について図5も参照して説明する。なお、図5(a)は第2記録ヘッドに対する維持回復動作時の説明に供する側面説明図、(b)は第1記録ヘッドに対する維持回復動作時の説明に供する側面説明図である。
【0036】
まず、第2記録ヘッドである記録ヘッド4aの維持回復動作を行うときには、第2維持回復部22を図4及び図5(a)に示す第2位置にして、キャリッジ3を移動させて記録ヘッド4aを第2維持回復部22に対向する位置にする。そして、吸引キャップ31を上昇させて記録ヘッド4aのノズル面をキャッピングし、記録ヘッド4aのノズルから増粘した液体を吸引排出し、デキャップ後空吐出受け34に空吐出滴を吐出させ、ワイパ部材33を上昇させてノズル面を払拭するなどの維持回復動作を行う。
【0037】
また、第1記録ヘッドである記録ヘッド4bの維持回復動作を行うときには、第2維持回復部22を図3及び図5(b)に示す第1位置にして、キャリッジ3を移動させて記録ヘッド4bを第2維持回復部22に対向する位置にする。そして、吸引キャップ31を上昇させて記録ヘッド4bのノズル面をキャッピングし、記録ヘッド4bのノズルから増粘した液体を吸引排出し、デキャップ後空吐出受け34に空吐出滴を吐出させ、ワイパ部材33を上昇させてノズル面を払拭するなどの維持回復動作を行う。なお、記録ヘッド4c、4dに対する維持回復動作を行うときも同様である。
【0038】
この第1実施形態の作用効果について図6及び図7を参照して説明する。なお、図6は第1実施形態の模式的平面説明図、図6は比較例1の模式的平面説明図である。また、いずれの図でも(a)はキャリッジの模式的平面図を、(b)は維持回復機構の模式的平面図を示している。
【0039】
まず、比較例1において、図7(a)に示すように、記録ヘッド4aと記録ヘッド4b〜4dとはキャリッジ3に千鳥配列で搭載されている。
【0040】
そのため、図7(b)に示すように、維持回復機構20は、記録ヘッド4b〜4cの維持回復動作を行うために、記録ヘッド4b、4c、4dからの吸引及び記録ヘッド4bを保湿するための吸引キャップ31bと、記録ヘッド4c、4dをそれぞれ保湿するための保湿キャップ32と、記録ヘッド4b、4c、4dを払拭するワイパ部材33b、空吐出受け34b、ワイパ部材33bを清掃するワイパクリーナ35bとを備えている。
【0041】
また、記録ヘッド4aの維持回復動作を行うために、記録ヘッド4aの吸引及び保湿するための吸引キャップ31aと、記録ヘッド4aを払拭するワイパ部材33a、空吐出受け34a、ワイパ部材33aを清掃するワイパクリーナ35aとを備えている。
【0042】
この場合、維持回復機構20のワイパ部材33b、空吐出受け34b、ワイパクリーナ35bと、記録ヘッド4aとの干渉を避けるために、キャリッジ3上で、記録ヘッド4aは記録ヘッド4bとの間にワイパ部材33b、空吐出受け34b、ワイパクリーナ35bの主走査方向の幅S分だけ離間させて配置される。
【0043】
これに対し、本実施形態では、図6に示すように、記録ヘッド4a〜4dの維持回復動作を行うために、記録ヘッド4a〜4dの吸引及び記録ヘッド4aの保湿をするための吸引キャップ31と、記録ヘッド4a〜4dを払拭するワイパ部材33、空吐出受け34、ワイパ部材33を清掃するワイパクリーナ35と、記録ヘッド4b〜4dの保湿をするための保湿キャップ32を備えている。なお、前述したとおり、吸引キャップ31、ワイパ部材33、空吐出受け34、ワイパクリーナ35を有する第2維持回復部22は白抜き矢印の方向に往復移動可能である。
【0044】
すなわち、本実施形態の構成では、比較例1の構成における、記録ヘッド4b、4c、4dを払拭するワイパ部材33b、空吐出受け34b、ワイパクリーナ35bが不要になる。
【0045】
したがって、本実施形態では、比較例1に比べて、キャリッジ3及び維持回復機構20の主走査方向長さを、比較例1のワイパ部材33b、空吐出受け34b、ワイパクリーナ35bを設けるために必要な主走査方向の幅S分だけ小さくすることができる。
【0046】
これによって、記録ヘッドを副走査方向の位置をずらして配置した場合における維持回復機構の部品点数の削減を図り、スペースの削減による装置サイズの増大を抑制することができる。
【0047】
なお、第2維持回復部は、吸引キャップ、ワイパ部材及び空吐出受けの少なくともいずれかを有していれば、上記本発明の作用効果を得ることができる。
【0048】
次に、本発明の第2実施形態について図8及び図9を参照して説明する。なお、図8は第2実施形態の模式的平面説明図、図9は比較例2の模式的平面説明図である。
【0049】
本実施形態及び比較例2は、前記第1実施形態及び比較例1における記録ヘッド4bを記録ヘッド4a側に配置した例である。つまり、ここでは、記録ヘッド4c、4dが第1記録ヘッド、記録ヘッド4a、4bが第2記録ヘッドとなる。
【0050】
このような構成であっても、本実施形態の構成では、比較例2の構成における、記録ヘッド4c、4dを払拭するワイパ部材33b、空吐出受け34b、ワイパクリーナ35bが不要になる。
【0051】
したがって、本実施形態でも、比較例2に比べて、キャリッジ3及び維持回復機構20の主走査方向長さを、比較例2のワイパ部材33b、空吐出受け34b、ワイパクリーナ35bを設けるために必要な主走査方向の幅S分だけ小さくすることができる。
【0052】
これによって、記録ヘッドを副走査方向の位置をずらして配置した場合における維持回復機構の部品点数の削減を図り、スペースの削減による装置サイズの増大を抑制することができる。
【0053】
次に、本発明の第3実施形態について図10ないし図12を参照して説明する。なお、図10は同実施形態における保湿キャップ及び第2維持回復部の駆動機構部の側面説明図、図11は同駆動機構部のうちのキャップの進退動機構部の側面説明図、図12は同じく第2維持回復部の往復移動機構部の側面説明図である。
【0054】
キャップ32は、キャップホルダ301に保持され、キャップホルダ301はスライダ302に保持されている。スライダ302は、維持回復機構20の維持フレームに移動可能(この例では昇降可能)に保持されている。
【0055】
そして、この駆動機構部26は、DCモータ700を正方向に回転させたときに、DCモータ700の出力軸に固定されているウォームギヤ700aからギヤ701a、ギヤ701b、ギヤ701c、ギヤ701eを経由して、スライドカム703を回転させることでスライド部材705が往復移動する。これにより、スライド部材705に搭載されている第2維持回復部22が副走査方向(図10ないし図12では左右方向)に往復移動される。
【0056】
これに対し、DCモータ700を逆方向に回転させると、ギヤ701a、ギヤ701b、ギヤ701c、701dが回転して、キャップカム222が回転する。キャップカム322が回転することで、キャップレバー704を介して第1維持回復部21の保湿キャップ32が進退動(昇降)する。
【0057】
なお、スライドカム703とキャップカム322の軸上に図示しないワンウェイクラッチを設け、回転伝達を一方向にしている。
【0058】
具体的には、図11に示すように、キャップカム322の溝部(カム溝)にキャップレバー704の一端部のボス部704aが移動可能に嵌め込まれ、キャップレバー704は支軸704bを支点として揺れ動くことができ、キャップレバー704の他端部のボス部704cがスライダ302に回転自在に嵌め込まれており、キャップレバー704が揺れ動くことで保湿キャップ32が昇降する。
【0059】
また、図12に示すように、スライド部材705にはスライドレバー702の一端部が回転可能に取付けられ、スライドレバー702の他端部は回転可能の支持されて、スライドレバー702は揺れ動くことが可能になっている。そして、一方のスライドレバー702の一部がスライドカム703のカム溝に移動可能に嵌め込まれており、スライドカム703が回転することによりスライドレバー702、702を介して、スライド部材705を副走査方向(図12では左右方向)に往復移動される。
【0060】
このように、1つの駆動源で保湿キャップの移動と第2維持回復部の移動を行うことにより、構成が簡単になる。
【0061】
なお、本願において、「用紙」とは材質を紙に限定するものではなく、OHP、布、ガラス、基板などを含み、インク滴、その他の液体などが付着可能なものの意味であり、被記録媒体、記録媒体、記録紙、記録用紙などと称されるものを含む。また、画像形成、記録、印字、印写、印刷はいずれも同義語とする。
【0062】
また、「画像形成装置」は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス等の媒体に液体を吐出して画像形成を行う装置を意味し、また、「画像形成」とは、文字や図形等の意味を持つ画像を媒体に対して付与することだけでなく、パターン等の意味を持たない画像を媒体に付与すること(単に液滴を媒体に着弾させること)をも意味する。
【0063】
また、「インク」とは、特に限定しない限り、インクと称されるものに限らず、記録液、定着処理液、液体などと称されるものなど、画像形成を行うことができるすべての液体の総称として用い、例えば、DNA試料、レジスト、パターン材料、樹脂なども含まれる。
【0064】
また、「画像」とは平面的なものに限らず、立体的に形成されたものに付与された画像、また立体自体を三次元的に造形して形成された像も含まれる。
【0065】
また、記録ヘッドが鉛直方向下方向に向けて液滴を吐出する垂直打ち方式の画像形成装置だけでなく、記録ヘッドが鉛直方向と直交する方向ないし交差する方向に向けて液滴を吐出する水平打ち方式の画像形成装置にも適用することができる。
【符号の説明】
【0066】
1 ガイドロッド
3 キャリッジ
4、4a、4b、4c、4d 記録ヘッド
20 維持回復機構
21 第1維持回復部
22 第2維持回復部
31 吸引キャップ
32 保湿キャップ
33 ワイパ部材
34 空吐出受け
37 吸引ポンプ
38 排出チューブ
201 維持フレーム
202 スライドフレーム
203 ガイドレール
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液滴を吐出するノズルを有する少なくとも第1、第2の記録ヘッドを搭載し、主走査方向に移動されるキャリッジと、
前記記録ヘッドの維持回復を行う維持回復機構と、を備え、
前記第1記録ヘッドと第2記録ヘッドとは前記主走査方向と直交する副走査方向に位置をずらして配置され、
前記維持回復機構は、
装置本体に保持された第1維持回復部と、
前記第1記録ヘッドに対向可能な第1位置と前記第2記録ヘッドに対向可能な第2位置との間で、副走査方向に往復移動可能な第2維持回復部と、を有している
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記第2維持回復部は、前記記録ヘッドのノズル面を払拭するワイパ部材、前記記録ヘッドのノズル面を封止し、吸引手段が接続された吸引キャップ、画像形成に寄与しない液滴を受ける空吐出受けの少なくともいずれかを備えていることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記第1維持回復部は、少なくとも前記第1記録ヘッドのノズル面を封止する保湿キャップを有し、
前記保湿キャップは前記第1記録ヘッドに対して進退可能に設けられ、
前記保湿キャップの進退を行う進退機構と、前記第2維持回復部を往復移動させる往復移動機構とは、同じ駆動源で駆動される
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項1】
液滴を吐出するノズルを有する少なくとも第1、第2の記録ヘッドを搭載し、主走査方向に移動されるキャリッジと、
前記記録ヘッドの維持回復を行う維持回復機構と、を備え、
前記第1記録ヘッドと第2記録ヘッドとは前記主走査方向と直交する副走査方向に位置をずらして配置され、
前記維持回復機構は、
装置本体に保持された第1維持回復部と、
前記第1記録ヘッドに対向可能な第1位置と前記第2記録ヘッドに対向可能な第2位置との間で、副走査方向に往復移動可能な第2維持回復部と、を有している
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記第2維持回復部は、前記記録ヘッドのノズル面を払拭するワイパ部材、前記記録ヘッドのノズル面を封止し、吸引手段が接続された吸引キャップ、画像形成に寄与しない液滴を受ける空吐出受けの少なくともいずれかを備えていることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記第1維持回復部は、少なくとも前記第1記録ヘッドのノズル面を封止する保湿キャップを有し、
前記保湿キャップは前記第1記録ヘッドに対して進退可能に設けられ、
前記保湿キャップの進退を行う進退機構と、前記第2維持回復部を往復移動させる往復移動機構とは、同じ駆動源で駆動される
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−39723(P2013−39723A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−177912(P2011−177912)
【出願日】平成23年8月16日(2011.8.16)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月16日(2011.8.16)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
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