説明

画像形成装置

【課題】印刷物の機密性を保持しつつ、装置の消費電力を低減する。
【解決手段】印刷時刻が指定された複数の印刷ジョブを記憶するジョブ記憶61と、印刷ジョブに基づいて画像形成を行う画像形成部100と、ジョブ記憶61に記憶された複数の印刷ジョブの指定された印刷時刻に基づいて、画像形成部100によりジョブ記憶61に記憶される印刷ジョブを実行する出力制御部62と、を有する画像形成装置において、複数の印刷ジョブが、第1の印刷時刻に印刷を行うように指定された第1の印刷ジョブと、第1の印刷時刻よりも後の第2の印刷時刻までに印刷を行うように指定された第2の印刷ジョブとから構成されている場合、出力制御部62は、第2の印刷ジョブを、第1の前記第1の印刷ジョブの印刷時刻に合わせて実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力節約機能を有する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の画像形成装置は、画像形成動作時以外の動作時の消費電力を減らす省電力モードを有している。しかし、画像形成装置が省電力モードへの移行と省電力モードからの復帰を頻繁に繰り返すと、復帰の度に定着器を立ち上げるための多量の電力が必要になり、十分な省電力の効果を得ることができない。そこで、省電力を達成しつつ、省電力モードへの移行と省電力モードからの復帰の繰り返しを減らす技術が開発されている。
【0003】
例えば特許文献1では、印刷要求に優先度を設け、省電力の観点から印刷時刻を制御する画像形成装置が開示されている。この画像形成装置では、印刷(以下、出力という)をある決められた時刻にまとめて行い、または出力を電力消費の少ない夜間に行うよう制御する。また、例えば特許文献2では、複数の印刷ジョブをまとめて実行することで待機状態を長く継続して立ち上げ回数を減らし、省電力を実現する画像形成装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−272203号公報
【特許文献2】特開2003−308182号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された画像形成装置では、印刷ジョブの蓄積はまばらであり、いつまでたっても出力されない場合には、省電力モードを解除して強制的に出力を行うことになり、効率の良い省電力が実現されているとは言えない。また、そもそも深夜電力の利用は経済的ではあるが、消費するエネルギー量が減るわけではなく、省電力が実現されているとは言えない。
【0006】
また、特許文献2に開示された画像形成装置では、印刷ジョブをまとめて出力すると、所定の時刻に出力したいのにも拘わらず、所定の時刻とは異なる時間に出力されてしまう場合があるため、機密性の高い文書の出力には適さない。
【0007】
本発明は、このような状況のもとでなされたものであり、印刷物の機密性を保持しつつ、装置の消費電力を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の課題を解決するため、本発明は以下の(1)、(2)の構成を有する。
【0009】
(1)印刷時刻が指定された複数の印刷ジョブを記憶する記憶手段と、印刷ジョブに基づいて画像形成を行う画像形成手段と、前記記憶手段に記憶された複数の印刷ジョブの指定された前記印刷時刻に基づいて、前記画像形成手段により前記記憶手段に記憶される印刷ジョブを実行する出力制御手段と、を有する画像形成装置において、前記複数の印刷ジョブが、第1の印刷時刻に印刷を行うように指定された第1の印刷ジョブと、前記第1の印刷時刻よりも後の第2の印刷時刻までに印刷を行うように指定された第2の印刷ジョブとから構成されている場合、前記出力制御手段は、前記第2の印刷ジョブを、前記第1の前記第1の印刷ジョブの印刷時刻に合わせて実行することを特徴とする画像形成装置。
【0010】
(2)印刷時刻が指定された複数の印刷ジョブを記憶する記憶手段と、印刷ジョブに基づいて画像形成を行う画像形成手段と、前記記憶手段に記憶された複数の印刷ジョブの指定された前記印刷時刻に基づいて、前記画像形成手段により前記記憶手段に記憶される印刷ジョブを実行する出力制御手段と、を有する画像形成装置において、前記複数の印刷ジョブが、所定の印刷時刻に印刷を行うように指定された第1のタイプの印刷ジョブと、所定の印刷時刻までに印刷を行うように指定された第2のタイプの印刷ジョブとから構成され、前記出力制御手段は、前記第2のタイプの印刷ジョブで指定されている印刷時刻が前記第1のタイプの印刷ジョブで指定されている印刷時刻より後である場合には、前記第2のタイプの印刷ジョブを、前記第1のタイプの印刷ジョブの印刷時刻に合わせて実行することを特徴とする画像形成装置。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、印刷物の機密性を保持しつつ、装置の消費電力を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1の実施の形態のネットワーク全体の構成を示す図、制御のブロック図、ジョブ送信時の設定画面を示す図
【図2】第1の実施の形態の画像形成部の概略構成を示す図
【図3】第1の実施の形態の印刷ジョブ実行の全体のフローチャート
【図4】第1の実施の形態のジョブリスト作成処理のフローチャートA
【図5】第1の実施の形態のコピー、ファックスのジョブ受け付け時の処理のフローチャートB
【図6】第1の実施の形態の従来例と実施の形態における出力タイミングの比較を示す図
【図7】第2の実施の形態のジョブタイムスケジュールの例を示す図
【図8】第2の実施の形態の印刷ジョブ実行のフローチャート
【図9】第2の実施の形態のジョブ送信時の設定画面を示す図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
【0014】
(第1の実施の形態)
[ネットワークの構成]
本実施形態における画像形成装置と情報端末を配置したネットワーク全体の構成を図1(a)に示す。情報端末B1〜B3は、画像形成装置Aに対し画像出力命令Pを送信することが可能であり、この画像出力命令Pには、出力する時間を指定するための出力時刻設定が付与された印刷ジョブが含まれる。本実施形態においては情報端末B、画像形成装置Aともに台数については問わず、例えば図1(a)では画像形成装置Aが1台、情報端末Bが3台配置されている場合を示している。ただし、以下では、1台の画像形成装置Aと1台の情報端末Bが接続された場合の制御について述べる。
【0015】
[印刷ジョブの受付とその出力]
図1(b)は画像形成装置の制御のブロック図である。情報端末Bと接続された画像形成装置Aにおいて、画像形成装置Aには情報端末Bから画像出力命令Pが送信され、この画像出力命令Pの印刷ジョブは画像形成装置Aのジョブ記憶部61に記憶される。ジョブ記憶部61には複数の印刷ジョブが記憶されており、これらの印刷ジョブには、出力時刻(印刷時刻)設定が付与されている。ただし、この出力時刻設定には、「直ちに」つまり現在時刻を出力時刻として指定する設定も含まれるものとする。なお、これらの印刷ジョブには当然、時刻以外の情報、例えば印刷モード(モノクロかフルカラーか)、用紙サイズ、部数といった情報なども含まれている。設定の画面は、一般的な設定に加えて、出力時刻を選択できるようになっており、情報端末Bの設定画面の例を図1(c)に示す。この印刷ジョブには、「○時に」といったある時刻(第1の印刷時刻)に出力する設定の印刷ジョブ(以下、「タイプ1のジョブ」(第1の印刷ジョブ)という)がある。また、「○時までに」といったある時刻(第2の印刷時刻)までであればどの時間に出力してもよい設定の印刷ジョブ(以下、「タイプ2のジョブ」(第2の印刷ジョブ)という)がある。なお、タイプ1のジョブを第1のタイプの印刷ジョブ、タイプ2のジョブを第2のタイプの印刷ジョブとする。本実施形態では、両印刷ジョブを実行する画像形成装置Aについて述べる。これにより、ユーザは例えば機密性の高い文書等については指定時刻通りに出力を行うようタイプ1のジョブの設定をし、ある時刻までに出力が完了していればよい文書等に関しては、ある時刻までに出力するようタイプ2のジョブの設定をする。
【0016】
ジョブ記憶部61に保存された印刷ジョブは、出力制御部62によって出力のタイミングが制御される。出力制御部62における制御についてはフローチャートを用いて後述する。なお、この制御において、ユーザが指定した出力時刻を認識する必要があるため時計63が出力制御部62に接続されている。出力制御部62により出力のタイミングが決定された印刷ジョブにつき、印刷制御部64が画像形成部100を制御することによって画像出力がなされる。以下ではまず画像形成部100の構成について述べる。
【0017】
[画像形成部の構成]
電子写真方式を採用した画像形成部100の概略構成について図2(a)を用いて説明する。図2(a)の画像形成部100は、像担持体としてのドラム型の感光ドラム1を4つ備えたタンデム式のフルカラーの画像形成部である。この画像形成部100には、4つの画像形成ユニットPa、Pb、Pc、Pdが設けられており、各画像形成ユニットPa、Pb、Pc、Pdは、それぞれ、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色のトナー像を形成する。ここで、a,b,c,dは、それぞれイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックであることを示しており、以下省略する場合がある。各画像形成ユニットPa〜Pdは、ほぼ同様の構成であり、以下では画像形成ユニットPaを例に詳細に説明し、他の画像形成ユニットの詳細な説明を省略する。
【0018】
また、感光ドラム1aは、モータの駆動力を得て図の矢印方向に所定の周速で回転する。感光ドラム1aには、帯電回転体としての帯電ローラ2aが接触配置されている。この帯電ローラ2aは感光ドラム1aに接触して感光ドラム1aの表面を所定の電位に一様に帯電処理する。帯電ローラ2aは、軸部となる導電性の芯金21が基体として使用され、その上に弾性層が設けられた構造を有している(図2(b))。その芯金21に帯電バイアスを印加する電源D3が接続されている。この電源D3は、直流電圧と交流電圧を重畳した振動電圧を印加する構成となっている。本実施形態の帯電バイアスは、−600Vの直流電圧とピーク間電圧が1700Vの交流電圧が重畳されたものである。また、本実施形態において帯電ローラ2aは、芯金21の両端部を軸受け部材によって回転可能に支持されながら、感光ドラム1aに向けて所定の当接圧となるよう加圧されている。つまり、帯電ローラ2aが感光ドラム1aの回転に伴い従動回転する方式を採用している。なお、駆動方式としては他にモータやギア駆動などを利用してもよい。感光ドラム1aの周囲には、更に、画像露光ユニット3a、現像ユニット4a、一次転写ローラ5a、クリーニングユニット6a、光除電装置7aが設置されている。また、感光ドラム1aと一次転写ローラ5aとで挟み込まれて中間転写体10が設置されている。なお、感光ドラム1aと中間転写体10の間にニップ部T1が形成されている。
【0019】
[画像形成のプロセス]
次に画像形成のプロセスについて説明する。モータにより回転する感光ドラム1aは、帯電ローラ2aに印加された帯電バイアスによりその表面が所定の電位にほぼ一様に帯電される。そして、帯電ローラ2aにより帯電処理を受けた感光ドラム1aは、画像露光ユニット3aによって画像情報に基づく画像露光Lを受け、静電潜像が形成される。その後、感光ドラム1aに形成された静電潜像は、現像ユニット4aにより現像剤としてのイエロートナーTNで可視像化される。次に、このイエロートナー像は、一次転写ローラ5aにより中間転写体10に転写される(以下、一次転写という)。このような画像形成プロセスが、画像形成部Pb〜Pdにおいても同様に行われ、最終的に、中間転写体10上にイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのトナー像が重畳転写される。その後、中間転写体10上のフルカラートナー像は、二次転写ローラ14と二次転写対向ローラ13の間のニップ部T2で記録材であるシートPに一括して転写される(以下、二次転写という)。
【0020】
シートPに転写されたフルカラートナー像は定着装置15において加熱、加圧されることでシートPに定着される。印刷ジョブを実行していない場合に低温である定着装置15の定着部材は、印刷ジョブ実行時、すなわち定着時に急速な高温への立ち上がりが求められ、この際に瞬間的に最大の電力が消費される。例えば本実施形態における画像形成装置Aの定着における消費電力は、印刷ジョブ実行のために装置が立ち上がる瞬間(定着器を温める時間)に平均して1100W程度の電力を消費し、印刷ジョブ実行中は800W程度となる。一方で印刷ジョブ実行時以外の消費電力は100Wにも満たない。そのため、定着装置15における電力消費を削減するため、定着温度の低温化、あるいは省電力化が求められている。シートPはトナーを定着された後、機外へと搬送、排出されて一連の画像形成プロセスが終了する。一次転写後、感光ドラム1a上に残留する転写残トナーは、図2(b)に示すクリーニングユニット6aのクリーニングブレード6eにより除去され、回収トナー容器6fに回収される。その後、感光ドラム1aは、光除電装置7aにより除電処理されることで、次の画像形成に供される。
【0021】
[全体のフローチャート]
次に出力制御部62の制御による、ジョブ記憶部61に蓄積された印刷ジョブの実行の基本的な流れについて、図3の全体のフローチャートを用いて説明する。なお、もともと画像形成装置Aは画像出力命令Pを受信している間、または出力指定時刻になるまでの間は待機状態を維持しているものとする。画像形成装置Aの出力制御部62は、ステップ(以下、Sとする)1で、出力条件が決められた印刷ジョブを含む画像出力命令Pを情報端末Bから受信し、受信された印刷ジョブはジョブ記憶部61に記憶される。その際、印刷ジョブはタイプ1のジョブとタイプ2のジョブに分けられてジョブ記憶部61に記憶されている。S2で、出力制御部62は、S1で受信しジョブ記憶部61に記憶された印刷ジョブの出力条件に基づいてジョブリストを作成する。なお、ここでいう「ジョブリスト」とは、出力制御部62により出力時刻が変更された印刷ジョブ、及び出力時刻が変更されなかった印刷ジョブを出力時刻順に並べたリストをいう。このときのジョブリスト作成の詳細フローについては図4のフローチャートAで後述する。印刷制御部64は、S3でそれぞれの印刷ジョブを、ジョブリストに基づいて出力し終了する。
【0022】
[フローチャートA]
次にフローチャートAにより、出力制御部62が画像出力命令Pの印刷ジョブを出力条件に基づいてジョブリストを作成する流れについて説明する。出力制御部62は、ジョブリスト作成において、タイプ1のジョブは指定した時刻に出力するよう決定し、タイプ2のジョブは、時刻指定されたタイプ1のジョブの中で最も早く出力する印刷ジョブに付随して出力するよう出力のタイミングを逐一変更する。以下ではその詳細について述べる。なお、タイプ1のジョブに付随するとは、タイプ1の印刷出力が終了した直後に印刷ジョブの印刷を開始することをいう。
【0023】
上述したように、情報端末Bから送信された画像出力命令Pの印刷ジョブがタイプ1のジョブかタイプ2のジョブに分類されてジョブ記憶部61に記憶されている。出力制御部62は、S101で、図3のS1で受信した画像出力命令Pの印刷ジョブがタイプ1のジョブかタイプ2のジョブかを判断する。出力制御部62は、S101で、印刷ジョブが指定した時刻に出力を行うタイプ1のジョブであると判断した場合には、S102でその時刻を出力時刻と決定したタイプ1のジョブとしてジョブ記憶部61に再度記憶させる。そして、出力制御部62は、S103で、S102で決定したその出力時刻後にタイプ2のジョブが存在するか否かを判断する。出力制御部62は、S103でタイプ2のジョブが存在しないと判断した場合には終了する。出力制御部62は、S103でタイプ2のジョブが存在すると判断した場合には、S104で、そのタイプ2のジョブの出力期限を、図3のS1で受信した(今回受信した)タイプ1のジョブに付随した時刻に変更しジョブ記憶部61に再度記憶する。
【0024】
一方、出力制御部62は、S101で図3のS1で受信した画像出力命令Pの印刷ジョブをタイプ2のジョブと判断した場合には、S105でそのタイプ2のジョブの出力期限よりも前に出力することが決定しているタイプ1のジョブが存在するか否かを判断する。出力制御部62は、S105でそのタイプ2のジョブの出力期限よりも前に出力時刻(第1の印刷時刻、第3の印刷時刻)が決定されたタイプ1のジョブ(第1の印刷ジョブ、第3の印刷ジョブ)が存在すると判断した場合は、S106で次の制御を行う。すなわち、出力制御部62は、タイプ2のジョブの出力期限を、ジョブ記憶部61に記憶されたタイプ1の印刷ジョブの中で最も早く出力するタイプ1のジョブに付随した時刻に変更し、ジョブ記憶部61に再度記憶する。一方、出力制御部62は、S105でタイプ2のジョブの出力期限より前にタイプ1のジョブが存在しないと判断した場合には、S107でユーザが指定した希望時刻に出力する予定のままのタイプ2のジョブとしてジョブ記憶部61に記憶し終了する。これらタイプ2のジョブは、新しいタイプ1のジョブの画像出力命令Pを受信するたびその出力時刻の見直しが行われる。すなわち、出力制御部62は新たに決定したタイプ1のジョブより後にタイプ2のジョブが存在すると判断した場合には、より早い時刻のタイプ1のジョブに付随するよう、タイプ2のジョブ出力期限を変更する。
【0025】
以上により、印刷ジョブは適正化された状態でジョブ記憶部61に記録され、図3のフローチャートにあったように出力時刻を迎えると自動的に出力を行う。なお、タイプ2のジョブはタイプ1のジョブの中の一番出力時刻の早いものに付随させなくても、タイプ2のジョブに指定されている時刻よりも早い出力時刻のタイプ1のジョブに付随させればよい。この場合、出力完了予定時刻がタイプ2のジョブに指定されている時刻よりも前になるようなタイプ1のジョブに付随させればよい。なお、タイプ1のジョブの出力完了予定時刻は、そのジョブの内容(枚数やモード)に基づいて算出される。
【0026】
[フローチャートB]
一方、コピーやファックスといった即時出力されるジョブ(第4の印刷ジョブ、第3のタイプの印刷ジョブ)を画像形成装置Aが受け付けた場合について、図5のフローチャートBを用いて述べる。なお、図3と図5のフローチャートの制御はそれぞれ印刷ジョブの受け付け、コピーやファックスのジョブの受け付けを機に開始されるものであり、画像形成装置本体はこれらの受け付けを常に行っているものとする。
【0027】
出力制御部62は、S201で、待機状態においてコピーやファックスのジョブを受け付けた場合には、受け付けたジョブを実行する。次に、出力制御部62は、S202でジョブ記憶部61に記憶された待機ジョブの中にタイプ2のジョブが存在するかどうかを判断する。出力制御部62は、S202でタイプ2のジョブが存在しないと判断した場合には、S204で装置の立ち下げ動作を行い終了する。出力制御部62は、S202でタイプ2のジョブが存在すると判断した場合には、S203でそれらタイプ2のジョブをすべて出力し、S204で装置の立ち下げ動作を行い終了する。以上のフローチャートによって、タイプ1のジョブは必ず指定した時刻に出力し、タイプ2のジョブは、コピー、ファックスの使用によって装置が動作している場合にそのすぐあとに続けて出力し、S204で装置の立ち下げ動作を行い終了する。これにより、時刻指定を破ることなく、かつ電力消費を節減した制御を実現することができる。
【0028】
一方で、本実施形態の画像形成装置は、一度指定した印刷ジョブの設定時刻を見直す、あるいは強制的に印字するモードを有している。これはジョブリストを、画像形成装置本体の表示部(不図示)上、あるいは情報端末からアクセスして見ることによって、ある印刷ジョブの設定を変更する機能である。具体的にはジョブリストの中から自分の印刷ジョブを選択し、出力時刻の設定を変更することで直ちに、あるいは変更した時刻に出力物を得ることができる。この変更がなされた場合、改めてジョブリストの適正化と印刷出力を行う。これにより、出力物の出力時刻の変更にも対応することが可能となる。
【0029】
[電力削減の効果]
次に、電力節減の効果について述べる。以下では標準的な画像形成装置Aとして、出力速度は1分間に30枚、待機時から起動までに10秒を要し、起動時の平均消費電力を1100W、画像出力時の平均消費電力を800Wという画像形成装置を想定する。また印刷ジョブについてもオフィス環境などで発生しうる標準的な印刷ジョブとして、A4の記録紙を10枚という印刷ジョブを繰り返し3回出力する場合を想定する。
【0030】
一般的な時間指定がなされず上述の印刷ジョブを3つバラバラに出力した場合や、時間指定制御はあるが、必ず指定した時刻に出力を行う3つの印刷ジョブを実行した場合、消費電力は、
(1.1kW×10s+0.8kW×20s)×3=81kW・s
となる。これは図6の「従来例」で示すように、それぞれの印刷ジョブが独立して行われるために、印刷ジョブの度に装置の待機状態から出力可能状態への立ち上げ動作が必要となるためである。なお、図6の「従来例」の3つの印刷ジョブは、「ジョブ1(J1):9時までに出力」、「ジョブ2(J2):10時までに出力」、「ジョブ3(J3):直ちに出力」であり、これらの印刷ジョブを従来の印刷出力で行った場合を示している。図6の「実施形態」の3つの印刷ジョブは、同じくJ1〜J3の印刷ジョブであるが、本実施形態を適用して印刷出力を行った場合を示している。この場合、J1、J2の印刷ジョブは、J3の印刷ジョブを出力したのちに続けて出力されるため、装置の起動は1回となる。その結果、消費電力は、
1.1kW×10s+0.8kW×60s=59kW・s
となり、「従来例」に比べて、約30%の電力節減を実現していることが分かる。この電力節減効果は前もって出力する印刷ジョブが増えるほど高まる。
【0031】
なお本実施形態では、画像形成装置本体の表示部上に、過去1週間分の出力につき上述した電力節減をどれぐらい達成できたのかという表示を行うものとする。この期間は1週間でなくともよく、また過去の出力1000枚分などの区切りでもよい。なぜなら、画像形成装置としては電力消費を最大限節減するようなタイミングで出力しているものの、ユーザ側は時刻指定の設定をするだけで、結果的にどれほど電力節減を達成したのかを認識しにくいためである。また、このような表示無しにはこの時刻設定機能を積極的に活用しようと考えることは困難であるからである。
【0032】
以上、本実施形態によれば、印刷物の機密性を保持しつつ、装置の消費電力を低減することができる。
【0033】
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態では、更に利便性を向上するため、第1の実施の形態の印刷ジョブの実行の制御をもとに電力節減効果を得やすい時刻設定を画像形成装置側からユーザに提案し、ユーザが電力節減効果のある印刷ジョブの設定を行いやすくする。
【0034】
[最適時刻提案の構成]
以下では、電力節減効果を最適にする時刻をユーザに提案するための構成について述べる。ユーザがある印刷ジョブをある時刻までに出力したい場合、第1の実施の形態では目的の時刻までに出力するような設定がなされた印刷ジョブの画像出力命令Pを情報端末Bが画像形成装置Aに送信する。一方でこのとき画像形成装置Aは、時刻指定情報が設定された待機中の印刷ジョブのジョブリストを既に有しているものとする。なお、既に有しているジョブリスト中の印刷ジョブを予約ジョブという。すると、その時点での画像形成装置A内での出力予定は、既に作成されたジョブリストにより決定しており、今からユーザが実行しようとする印刷ジョブを、どのタイミングで出力すれば最も省電力効果を得られるかは、画像形成装置A自身が算出可能である。例えば、ある画像形成装置Aの印刷ジョブについて、図7に示すように印刷ジョブJ1〜J4がスケジューリングされている場合を考える。なお、図7において現在時刻は8時55分であるとする。この場合、これから送信するジョブ(図内で「My JOB」と示した)を10時までに出力したいとすると、装置起動時に必要な電力を節減できるよう、既に決定している印刷ジョブの前後に接続させて出力を行う。すなわち、図7の斜線で示した箇所で印刷ジョブを出力することが望ましい。特に、第1の実施の形態では最短で印刷ジョブの出力を行うような制御になっていることから、最も早い時間である9時20分に印刷ジョブが終了するように制御されることになる。
【0035】
このことは、図7に示すようなスケジューリングを知っていれば容易に推測が可能であるが、ユーザは10時までのどの時間に印刷ジョブが出力されるかを知ることはできないため、10時以降にはじめて確実に出力物を得ることになる。つまり、繰り返しになるが、省電力を優先しようとしたユーザは、不必要に遅い時刻を指定して、その時刻まで我慢する(運がよければ早く出力される)といった事態に陥りかねない。一方で、このことを予めユーザが認識できる状態にあれば、ユーザは自分にとって最も都合の良いタイミングで電力節減も考慮した出力を実現することが可能となる。ユーザビリティを考えるとスケジューリングをそのまま伝えるのではなく、出力したいジョブの規模に応じて最適な時刻を画像形成装置から提案する形態が望ましいと考えられる。そこで、以下に示すようなフローチャートによって画像形成装置からの最適時刻提案を行う。
【0036】
[最適時刻提案のフローチャート]
次に最適時刻提案のフローチャートについて、図8を用いて述べる。出力制御部62は、S301でユーザが情報端末Bから送信したタイプ2のジョブを受け付ける。次に、出力制御部62は、S302で、既にジョブ記憶部61に予約ジョブが存在するかどうかを判断する。予約ジョブがない場合には、他の印刷ジョブとの兼ね合いを考える必要がないため、装置側から最適時刻を提案することはしない。そのため、出力制御部62は、S302で予約ジョブが存在しないと判断した場合には、S307でユーザの指定の出力期限でジョブ記憶部61にユーザが送信したタイプ2のジョブを記憶する。出力制御部62は、S302で予約ジョブがジョブ記憶部61に存在すると判断した場合には、S303で第1の実施の形態で説明した図4のフローチャートAによって今回S301で受信したタイプ2のジョブの出力予定時刻を算出する。
【0037】
この結果の使い方は様々である。例えば算出された出力予定時刻がジョブ送信時の指定時刻よりも早くなっている場合には、最適な時刻として算出された時刻に設定変更することを提案し、ユーザにその時刻を再度指定してもらうことが可能である。あるいは、そもそも時刻指定を装置任せにしてしまい、電力節減が実現できる時間を装置が選んで出力するような選択の仕方も考えられる。これは情報端末B上でジョブ決定ボタンを押す前でもリアルタイムにユーザの設定しているジョブの情報から算出可能である。また、これらの制御の組み合わせで第2候補、第3候補などを提案することも可能である。ここでは、出力制御部62は、S304で単純にその予定時刻をユーザに提示したのち、S305でユーザからの希望出力時刻を受信し、S306でその時刻に出力するようにジョブ記憶部61にタイプ2のジョブを記憶して(予約して)終了する。
【0038】
図9には情報端末Bにおけるジョブ設定の画面の一例を示す。設定画面には用紙選択や部数といったジョブに関する情報指定とあわせて出力時刻の選択箇所がある。ユーザが設定しようとしているジョブ情報から、リアルタイムに最適な時間の出力(図中のエコ出力)と時間優先出力を画面上に表示し、ユーザ側がいずれかを選択できるようになっている。また、「エコ出力」では、例えば11:15に出力可能である旨が表示されている。上述の制御では、画像形成装置から、省電力を実現しかつユーザ負荷を最小限に抑えた提案をユーザに行うことで、ユーザは考えることなく都合がつけられる範囲内で省電力出力を行うことができ、時間対効果が最大限の省電力モードを実現することができる。
【0039】
以上、本実施形態によれば、印刷物の機密性を保持しつつ、装置の消費電力を低減することができる。
【符号の説明】
【0040】
61 ジョブ記憶部
62 出力制御部
63 時計
64 印刷制御部
100 画像形成部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷時刻が指定された複数の印刷ジョブを記憶する記憶手段と、
印刷ジョブに基づいて画像形成を行う画像形成手段と、
前記記憶手段に記憶された複数の印刷ジョブの指定された前記印刷時刻に基づいて、前記画像形成手段により前記記憶手段に記憶される印刷ジョブを実行する出力制御手段と、を有する画像形成装置において、
前記複数の印刷ジョブが、第1の印刷時刻に印刷を行うように指定された第1の印刷ジョブと、前記第1の印刷時刻よりも後の第2の印刷時刻までに印刷を行うように指定された第2の印刷ジョブとから構成されている場合、前記出力制御手段は、前記第2の印刷ジョブを、前記第1の印刷ジョブの印刷時刻に合わせて実行することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記複数の印刷ジョブが、更に、前記第2の印刷時刻より前の第3の印刷時刻に印刷を行うように指定された第3の印刷ジョブを含んでいる場合、前記出力制御手段は、前記第2の印刷ジョブを、前記第1の印刷ジョブと前記第3の印刷ジョブのうち指定された印刷時刻が早いほうの印刷ジョブの印刷時刻に合わせて実行することを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記記憶手段に、前記第2の印刷時刻より前の印刷時刻に印刷を行うように指定された印刷ジョブ及び前記第2の印刷時刻より前の印刷時刻までに印刷を行うように指定された印刷ジョブが記憶されていない場合、前記出力制御手段は、前記第2の印刷ジョブの印刷時刻を変更しないことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記画像形成装置が、直ちに印刷を行う第4の印刷ジョブを受け付けた場合には、
前記出力制御手段は、前記第4の印刷ジョブの印刷に引き続き、前記第2の印刷ジョブを実行することを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項5】
印刷時刻が指定された複数の印刷ジョブを記憶する記憶手段と、
印刷ジョブに基づいて画像形成を行う画像形成手段と、
前記記憶手段に記憶された複数の印刷ジョブの指定された前記印刷時刻に基づいて、前記画像形成手段により前記記憶手段に記憶される印刷ジョブを実行する出力制御手段と、を有する画像形成装置において、
前記複数の印刷ジョブが、所定の印刷時刻に印刷を行うように指定された第1のタイプの印刷ジョブと、所定の印刷時刻までに印刷を行うように指定された第2のタイプの印刷ジョブとから構成され、
前記出力制御手段は、前記第2のタイプの印刷ジョブで指定されている印刷時刻が前記第1のタイプの印刷ジョブで指定されている印刷時刻より後である場合には、前記第2のタイプの印刷ジョブを、前記第1のタイプの印刷ジョブの印刷時刻に合わせて実行することを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
前記出力制御手段は、前記第2のタイプの印刷ジョブの印刷時刻を、前記第1のタイプの印刷ジョブのうち最も早く出力されるように指定された第1のタイプの印刷ジョブの印刷時刻に合わせて実行することを特徴とする請求項5記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記記憶手段に記憶された印刷ジョブが、前記第2のタイプの印刷ジョブのみである場合には、
前記出力制御手段は、前記第2のタイプの印刷ジョブの印刷時刻を変更しないことを特徴とする請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記画像形成装置が、直ちに印刷を行う第3のタイプの印刷ジョブを受け付けた場合には、
前記出力制御手段は、前記第3のタイプの印刷ジョブの印刷に引き続き、前記記憶手段に記憶された前記第2のタイプの印刷ジョブの印刷を実行することを特徴とする請求項5記載の画像形成装置。
【請求項9】
ユーザに所定の情報を提示するための提示手段を更に有し、
前記記憶手段に少なくとも前記第1のタイプの印刷ジョブが記憶されている状態において、新たな第2のタイプの印刷ジョブが受け付けられる場合には、
前記出力制御手段は、前記新たな第2のタイプの印刷ジョブで指定されている印刷時刻が前記第1のタイプの印刷ジョブで指定されている印刷時刻より後である場合には、前記新たな第2のタイプの印刷ジョブの印刷を、前記第1のタイプの印刷ジョブの印刷時刻に合わせて実行するものとして、前記新たな第2のタイプの印刷ジョブの印刷時刻を前記提示手段に提示することを特徴とする請求項5記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−49223(P2013−49223A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−189302(P2011−189302)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】