説明

画像形成装置

【課題】媒体上に形成される画像のシャープさを損なわないで、像担持体としての感光体ドラムの長寿命化を図る手段を提供する。
【解決手段】感光層を被覆した像担持体を有し、異なる明度の有色の現像剤を用いて現像剤画像を形成する画像形成ユニットを複数直列に配置した画像形成装置であって、前記複数の画像形成ユニットのうち、所定の明度より高い明度の現像剤を用いる画像形成ユニットの像担持体は、他の画像形成ユニットの像担持体より膜厚の厚い前記感光層を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、像担持体上に形成されたトナー画像を媒体に転写することにより媒体上に画像を形成する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の画像形成装置としての電子写真方式のカラープリンタは、電荷輸送層の膜厚を10μm〜20μmとした感光体ドラムを有する複数の画像形成ユニットを用紙の搬送方向に沿って直列に配置し、ブラック、イエロー、マゼンタ、シアンのトナーからなる各色の画像形成ユニットの感光体ドラム上に形成したトナー画像を用紙上に順次に重ね合せながら転写して用紙上にカラー画像を形成し、用紙上に転写されたカラー画像を定着器で定着して用紙にカラー画像を印刷している(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
このような各色に対応する感光体ドラムは、一般的には生産性を高めるために同一の感光体ドラムが用いられ、各色の感光体ドラムの感光層の膜厚は同じ厚さになっている。
また、感光体ドラム上のトナー画像を用紙上に転写する際、感光体ドラム表面の電荷輸送層膜厚が薄いほどトナー画像の輪郭部のトナー飛散が起こりにくく、シャープな画像形成が可能であることが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-219654号公報(段落0016、0026−0031、0043−0046、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、画像形成装置において、画像形成を繰返すうちに電荷輸送層が磨耗して膜厚が10μm以下になると、白抜けや地肌汚れ等の画像不良を発生するので、上述した従来の技術のように、各色の感光体ドラムの電荷輸送層膜厚を同じ厚さとし、その膜厚を10μm〜20μmとすると、各色の感光体ドラムの寿命が、全色とも短くなってしまうという問題がある。
【0006】
また、感光体ドラムを長寿命化させるために、電荷輸送層膜厚を厚くすると画像形成ユニットの使用初期においてシャープな画像形成を実現することができないため、長寿命化を犠牲にしなければならないという問題がある。
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたもので、媒体上に形成される画像のシャープさを損なわないで、像担持体としての感光体ドラムの長寿命化を図る手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するために、感光層を被覆した像担持体を有し、異なる明度の有色の現像剤を用いて現像剤画像を形成する画像形成ユニットを複数直列に配置した画像形成装置であって、前記複数の画像形成ユニットのうち、所定の明度より高い明度の現像剤を用いる画像形成ユニットの像担持体は、他の画像形成ユニットの像担持体より膜厚の厚い前記感光層を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
これにより、本発明は、画像のシャープさを損なうことなく明度の高い現像剤を用いる画像形成ユニットの像担持体の寿命を長くすることができ、より印刷コストの低い画像形成装置を提供することができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施例1のプリンタの構成を示す説明図
【図2】実施例1の画像形成ユニットの構成を示す説明図
【図3】実施例1の感光体ドラムを示す説明図
【図4】実施例1のプリンタの制御回路を示す説明図
【図5】実施例1の感光体ドラムの電荷輸送層の膜厚を示す説明図
【図6】実施例1のシャープネスの評価パターンを示す説明図
【図7】実施例1のシャープネスのレベルを示す説明図
【図8】実施例1のシャープネスの評価結果を示す説明図
【図9】実施例2の帯電電圧供給部の構成を示す説明図
【図10】実施例2の電荷輸送層膜厚換算テーブルを示す説明図
【図11】実施例2の帯電電圧算出テーブルを示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、図面を参照して本発明による画像形成装置の実施例について説明する。
【実施例1】
【0011】
図1において、1は画像形成装置としてのプリンタである。本実施例のプリンタ1は、カラー画像を印刷する電子写真方式のカラープリンタである。
このプリンタ1には、図1に示すように、その装置筐体内下部に、印刷用の媒体としての用紙を収容する用紙カセット2が着脱自在に装着され、その外部の上面に、画像が印刷された用紙を集積するスタッカ3が配置され、これらの間は、図1に破線で示す、概ねS字状に形成された用紙搬送路4で接続されている。
【0012】
用紙搬送路4と用紙カセット2との接続部には、用紙カセット2から用紙を用紙搬送路4へ1枚毎に分離して繰出すホッピングローラ6が設けられ、ホッピングローラ6の用紙の搬送方向(図1に矢印Aで示す方向、用紙搬送方向という。)の下流側には、ホッピングローラ6から用紙搬送路4により搬送された用紙がレジストローラ7とこれを押圧するピンチローラ8により形成されたニップ部に到達したことを検知するレジストセンサ9が配置されている。
【0013】
レジストローラ7の用紙搬送方向の下流側には、レジストローラ7とピンチローラ8に挟持されて搬送された用紙を搬送する、駆動ローラ10aとテンションローラ10bの間に掛渡された搬送ベルト10が配置され、その搬送ベルト10の平行部の上面部には、搬送ベルト10に沿って複数の画像形成ユニット11が直列に配置されている。
【0014】
これら各画像形成ユニット11には、露光手段としてのLED(Light Emitting Diode)ヘッド12が配置され、搬送ベルト10を挟んだ各画像形成ユニット11の反対側には、画像形成ユニット11で形成された現像剤画像としてのトナー画像を用紙上に転写する転写手段としての転写ローラ13が配置されている。
【0015】
また、搬送ベルト10の用紙搬送方向の下流側には、用紙に転写されたトナー画像を、加熱ヒータとしてのハロゲンヒータ14aを内蔵する定着ローラ14による加熱および定着ローラ14を押圧して定着ニップ部を形成する加圧ローラ15による加圧により溶融させて用紙上に定着させる定着器16が配置され、その用紙搬送方向の下流側には、定着器16から排出された用紙をスタッカ3へ搬送する用紙搬送路4が配置されている。
【0016】
本実施例のプリンタ1には、それぞれに設定された設定色、つまりブラック(K)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の有色の現像剤としてのトナーを収容した4つの独立した画像形成ユニット11k、11y、11m、11cが用紙搬送方向に沿ってトナー画像を形成する順に配置され、これら4つの画像形成ユニット11はそれぞれ同一の構造であるため、以下にブラックの画像形成ユニット11kについて説明する。
【0017】
画像形成ユニット11kは、図2に示すように、LEDヘッド12kによる露光により表面に静電潜像が形成される像担持体としての感光体ドラム20k、感光体ドラム20kを一様に帯電させる帯電手段としての帯電ローラ21k、その感光体ドラム20kの表面の静電潜像にトナーを付着させて現像する現像剤担持体としての現像ローラ23k、現像ローラ23kの表面にトナーを供給する現像剤供給手段としての供給ローラ24k、現像ローラ23kの表面に供給されたトナーを均一な薄層にする現像剤層規制部材としての現像ブレード25k、供給ローラ24kにトナーを供給する現像剤収容器としてのトナータンク26k、感光体ドラム20kの表面に残留したトナーを掻き取って除去するクリーニング部材としてのクリーニングブレード27k等で構成され、トナータンク26kには、設定色であるブラックトナーが収容されている。
【0018】
また、感光体ドラム20kは、その外周面が搬送ベルト10に接触し、搬送ベルト10を挟んで感光体ドラム20kと対向する位置には、感光体ドラム20kを押圧する転写ローラ13kが配置され、感光体ドラム20kとの間で転写ニップ部を形成している。更に、感光体ドラム20kの上方には、LEDヘッド12kが対向配置されている。
画像形成ユニット11y、11m、11cは画像形成ユニット11kと同様の構成であるが、トナータンク26y、26m、26cに収容されているトナーが、それぞれイエロートナー、マゼンタトナー、シアントナーである点で異なる。
【0019】
本実施例の感光体ドラム20kは、図3に示すように、導電性支持体としての円筒形のアルミ素管30kの外周面を、電荷発生層31kおよび電荷輸送層32からなる感光層33kで被覆して構成されている。
電荷輸送層32kの表面は、帯電ローラ21kによって帯電された後に、LEDヘッド12kによって露光されると、露光された部分のみ除電される性質をもっている。この除電された部分が静電潜像部であり、静電潜像部は現像ローラ23k上に現像ブレード25kにより薄層化されたトナーによって現像される。
【0020】
感光体ドラム20y、20m、20cも感光体ドラム20kと同様の構造であるが、本実施例では、図5に示すように、感光体ドラム20yのみ感光層33yの電荷輸送層32yの膜厚が30μmであり、他の感光体ドラム20k、20m、20cの電荷輸送層32k、32m、32cの膜厚が同じ18μmである点で異なる。
なお、各感光体ドラム20のアルミ素管30の肉厚は、それぞれ1.0mmであり、感光層33の電荷発生層31の膜厚は、それぞれ1μm以下、例えば0.3〜0.5μmである。
【0021】
本実施例の制御系は、図4に示すように、画像処理部41、機構制御部42、高圧制御部43等で構成される。
画像処理部41は、パーソナルコンピュータ等の上位装置から受信したコマンドおよび画像データを処理する部位であり、プリンタ1全体を制御している。また、画像データの解釈とピットマップヘの展開を行って、LEDヘッド12k、12y、12m、12cへ送信する。
【0022】
機構制御部42は、画像処理部41からの指令に従い、レジストセンサ9の出力の監視、ハロゲンヒータ14aへ供給する電力の制御、高圧制御部43への各高圧出力の指示を行う。また、機構制御部42にはフラッシュメモリ、EEPROM等で構成される記憶部44が接続されており、そのフラッシュメモリには制御プログラムが格納されている。
【0023】
高圧制御部43は、帯電電圧供給部45、現像電圧供給部46、供給電圧供給部47、転写電圧供給部48の制御を行う。また、帯電電圧供給部45は帯電電圧を各画像形成ユニット11の帯電ローラ21k、21y、21m、21cに、現像電圧供給部46は現像電圧を現像ローラ23k、23y、23m、23cに、供給電圧供給部47は供給電圧を供給ローラ24k、24y、24m、24cにそれぞれ供給し、転写電圧供給部48は転写電圧を転写ローラ13k、13y、13m、13cに供給している。
【0024】
以下に、本実施例のプリンタ1の画像形成時の印刷動作について説明する。
プリンタ1の画像形成部41は、上位装置から印刷用の画像データを受信すると、機構制御部42へ動作指示を送信して印刷動作を開始する。
機構制御部42は、受信した動作指示を基に、ハロゲンヒータ14aを制御して定着器16の温度を、トナー画像を用紙に定着可能な定着温度範囲になるように制御する。
【0025】
定着器16の温度が定着温度範囲になると、機構制御部42は、搬送ベルト10の駆動ローラ10aおよび各画像形成ユニット11の駆動を開始し、これと同時に高圧制御部43に電圧供給指令を送信して、帯電電圧供給部45、現像電圧供給部46および供給電圧供給部47をオンし、画像形成ユニット11k、11y、11m、11cの各ローラに所定の高電圧を供給する。
【0026】
このときの感光体ドラム20上へのトナー画像の形成動作について、画像形成ユニット11kを例に説明する。
帯電ローラ21kには−1000Vの帯電電圧が供給されて、感光体ドラム20kの表面を−600Vに帯電させる。また、現像ローラ23kには−200Vの現像電圧が、供給ローラ24kには−250Vの供給電圧が供給される。
【0027】
また、トナータンク26kから供給されたトナーは、供給ローラ24kと現像ローラ23kに強く擦られてマイナス極性に摩擦帯電する。マイナス極性に摩擦帯電したトナーは、供給電圧と現像電圧との電位差によって現像ローラ23kに付着する。現像ローラ23kに付着したトナーは、現像ブレード25kによって均一な厚さに薄層化されて、現像ローラ23kの外周面にトナー層が形成される。現像ローラ23k上に形成されたトナー層は、現像ローラ23kの回転によって感光体ドラム20kとのニップ部に運ばれる。
【0028】
一方、画像処理部41は、受信した画像データを基にLEDヘッド12kを駆動して感光体ドラム20kの表面を露光し、露光された部分を−50Vに除電して静電潜像を形成する。この静電潜像は、感光体ドラム20kの回転に伴って現像ローラ23kと感光体ドラム20kのニップ部に運ばれる。
このとき、現像ローラ23kには−200Vの現像電圧が印加されているので、マイナス極性に帯電しているトナーは静電潜像との電位差によって感光体ドラム20kの静電潜像部にのみ付着し、ブラックのトナー画像が現像される。
【0029】
画像形成ユニット11y、11m、11cにおいても、画像形成ユニット11kと同様のトナー画像の形成動作によって、感光体ドラム20y、20m、20c上にそれぞれの設定色のトナー画像が現像される。この場合に、画像形成ユニット11yは、その感光体ドラム20yの感光層33yの電荷輸送層32yの膜厚が30μmと、他色の感光体ドラム20k、20m、20cの電荷輸送層32k、32m、32cの膜厚よりも厚いため、帯電ローラ21yには−1150Vの帯電電圧を供給して感光体ドラム20yの表面を−600Vに帯電させている。
【0030】
機構制御部42は、感光体ドラム20k、20y、20m、20c上へのトナー画像の形成開始のタイミングに合わせて、ホッピングローラ6を駆動して用紙カセット2から用紙を繰出し、レジストローラ7とピンチローラ8のニップ部に用紙を搬送し、感光体ドラム20k上に形成されたトナー画像が感光体ドラム20kと転写ローラ13kとの転写ニップ部に到達するタイミングに合わせて、レジストローラ7を駆動して用紙を転写ニップ部へ搬送する。
【0031】
用紙が搬送ベルト10と感光体ドラム20kのニップ部に到達すると、高圧制御部43は転写電圧供給部48をオンして転写ローラ13kに転写電圧を供給し、感光体ドラム20k上に形成されたブラックのトナー画像を用紙に転写する。感光体ドラム20y、20m、20cの転写ニップ部においても同様に用紙が各色の転写ニップ部に到達するタイミングに合わせて転写電圧を供給し、それぞれ転写ニップ部においてイエローのトナー画像、マゼンタのトナー画像、シアンのトナー画像が順次に重ね合せながら転写される。
【0032】
転写工程が終了した用紙は、引続き搬送ベルト10により定着器16へ搬送され、用紙が定着器16に到達すると、既に定着温度範囲に到達している加熱ローラ14と、これを押圧する加圧ローラ15との定着ニップ部に挟持されて搬送され、トナー画像が用紙に定着される。定着工程が終了した用紙は、用紙搬送路4により搬送されてスタッカ3上へ排出され印刷動作が完了する。
以上のようにして、本実施例の用紙カセット2から繰出された用紙へのカラー画像の印刷動作が実行される。
【0033】
次に、本実施例における印刷動作、特に静電潜像の現像動作と用紙へのトナー画像の転写の詳細について説明する。
本実施例では、図5に示したように感光層33yの電荷輸送層32yのみ膜厚が30μmであり、他の電荷輸送層32k、32m、32cの膜厚は18μmであるので、感光体ドラム20k、20y、20m、20c上のトナー画像を用紙に転写するときに、画像輪郭部のシャープネスが劣化することが懸念される。このためシャープネスの劣化具合と電荷輸送層膜厚との関係を、以下のようにして評価した。
【0034】
シャープネスの評価は、図6に示す1/600インチ×1/600インチのドットを、1/300インチピッチで1/600インチ間隔の格子状に配置した評価パターンを用いておこなった。また、感光体ドラム20は、電荷輸送層膜厚が12μm、18μm、24μm、30μmの4水準のものを用い、トナーはブラック、イエロー、マゼンタ、シアンの4色を用いた。
【0035】
印刷後の評価パターンのシャープネスの評価は、そのドットを顕微鏡を用いて拡大観察することにより行い、図7に示すように、転写前のドットのシャープネス状態をレベル10、個々のドットが完全判別不能なほど画像輪郭部のシャープネスが失われている状態をレベル1として、この間を8つに区分したレベル10〜1によって行った。
【0036】
電荷輸送層膜厚が12μm、18μm、24μm、30μmの感光体ドラム20について、シャープネスレベルを評価した結果は、図8に示すように、トナー色に関わらず、電荷輸送層膜厚が厚いほどシャープネスが劣化することが分かった。また、本実施例の電荷輸送層膜厚12μmの感光体ドラム20k、20m、20cのシャープネスはレベル8であるが、電荷輸送層膜厚30μmの感光体ドラム20yのシャープネスはレベル5である。すなわち、イエローのトナー画像のみ画像輪郭部のシャープネスの劣化が大きいことが分かった。
【0037】
なお、感光体ドラム20上の転写前のトナー画像のシャープネスは、電荷輸送層膜厚による差は見られなかった。
ところで、上記のような拡大観察による画像輪郭部のシャープネスの劣化は、必ずしも官能評価による画質レベルとは一致しない。
【0038】
すなわち、ブラック、マゼンタ、シアンのトナー画像においては、拡大観察による画像輪郭部のシャープネスの劣化に伴って、目視による画像のシャープネスの印象も悪化する。しかしながら、イエローのトナー画像においては、シャープネスのレベルに関わらず、目視による画像のシャープネスの印象は変化しない。これは、イエローは明度が用紙の明度と近いために輸郭がはっきりしないことによる。
【0039】
例えば、L*a*b*表色系(JIS−Z−8729)で測定した明度L*が92の白色紙上でのイエローの明度L*は、ベタ塗りの場合85〜95程度であって白色紙との明度L*の差は10以下であるのに対して、マゼンタ、シアンの明度L*を同じ白色紙上で測定した場合は40〜55程度であって明度L*の差は30以上ある。また、ブラックの明度L*は同様の測定条件下で25以下であって明度L*の差は60以上である。このため、マゼンタ、シアン、ブラックに関しては、白色紙との明度差が充分にあるため輪郭がはっきりと見えるが、明度L*が白色紙に非常に近いイエローに関しては画像輪郭部のシャープネスが低下しても、人間の眼には感じられない。従って、明度L*の閾値を80とし、この所定の明度以上のイエローに関しては電荷輸送層膜厚が12μmであっても30μmであっても、人間の眼には画像のシャープネスの差は感じられない。
【0040】
また、感光体ドラム20は、印刷動作を繰返すうちに電荷輸送層32が磨耗して薄くなっていく。本実施例の電荷輸送層32の場合はA4横送りの連続印刷換算で10000枚の印刷で2μm磨耗する。電荷輸送層膜厚が10μm以下となると白点等の画像不良が発生するため、マージンを考えて12μmを印刷可能な電荷輸送層膜厚の下限とすれば、感光体ドラム20k、20m、20cはA4横送りの連続印刷換算で30000枚の印刷が限界である。
【0041】
ところが、感光体ドラム20yの電荷輸送層膜厚は30μmであるので、12μmまで磨耗するのにA4横送りの連続印刷換算で90000枚の印刷が可能である。すなわち、感光体ドラム20yは感光体ドラム20k、20m、20cの3倍の寿命を有することになる。従って、イエローの電荷輸送層膜厚のみを他色よりも厚くすることによって、画像のシャープさを損なうことなく感光体ドラム20yの寿命を延ばすことができる。
【0042】
なお、本実施例でいう、イエローとは、可視光領域においてトナーが波長400nm〜500nmの範囲に吸収ピークをもつ色のことをいい、マゼンダとは、可視光領域においてトナーが波長500nm〜600nmの範囲に吸収ピークをもつ色のことをいい、シアンとは、可視光領域においてトナーが波長600nm〜700nmの範囲に吸収ピークをもつ色のことをいう。
【0043】
以上説明したように、本実施例では、イエローの電荷輸送層の膜厚を30μm、他色の電荷輸送層の膜厚を18μmとしたので、全色とも電荷輸送層の膜厚が18μの画像形成装置に比べて、画像のシャープさを損なうことなくイエローの画像形成ユニットの感光体ドラムの寿命を長くすることができ、より印刷コストの低い画像形成装置を提供することができる。
【0044】
なお、本実施例においては、イエローの電荷輸送層膜厚を30μm、ブラック、マゼンタ、シアンの電荷輸送層膜厚を18μmとして説明したが、電荷輸送層膜厚はこれに限るものではない。要は、イエローの電荷輸送層膜厚をブラック、マゼンタ、シアンより厚くして長寿命化を図るものであれば、他の電荷輸送層膜厚の組合せでもよい。
【実施例2】
【0045】
以下に、図9ないし図11を用いて本実施例の画像形成装置について説明する。なお、上記実施例1と同様の部分は、同一の符号を付してその説明を省略する。
実施例1では、イエローの電荷輸送層膜厚のみ他色の電荷輸送層膜厚より厚くすることで、画像のシャープさを損なうことなく長寿命化を図ることができることについて説明した。
【0046】
しかしながら、電荷輸送層膜厚が30μmの感光体ドラム20yを用いて寿命近くまで印刷動作を続けた場合、実施例1でも説明したように電荷輸送層膜厚は12μm程度まで薄くなる。このため、帯電ローラ21yによって感光体ドラム20yの表面を帯電させたときの帯電電位が、寿命付近で非常に高くなってしまうという現象が生ずる。この感光体ドラム20yの帯電電位が高くなりすぎると、余白部への逆帯電トナーの付着による地肌汚れ、いわゆるカブリが増加して画像品位が劣化するという問題が発生する。
【0047】
このカブリによる画像品位の劣化の原因は、感光体ドラム20yの帯電電位が高いために現像ローラ23yとの間に形成される、逆帯電トナーを感光体ドラム20yの表面側に移動させる電界がより強まることにある。
本実施例ではこのような課題を解決するために、実施例1の構成に加えて以下の構成を有する。
【0048】
本実施例の帯電電圧供給部45は、図9に示すように、ブラック、イエロー、マゼンタ、シアンそれぞれの画像形成ユニット11k、11y、11m、11cの帯電ローラ21k、21y、21m、21cにそれぞれの高電圧を出力する高圧生成部51k、51y、51m、51cと、高圧生成部51yの出力側に接続された、帯電ローラ21yに供給される帯電電流値を検出する帯電電流検出手段52y等から構成されている。
【0049】
また、本実施例の機構制御部42の記憶部44には、図10に示す、イエローの帯電ローラ21yに−1000Vの帯電電圧を印加したときの帯電電流値からイエローの電荷輸送層膜厚を算出する電荷輸送層膜厚換算テーブル、および図11に示す、算出された電荷輸送層32yの膜厚から印刷動作時の帯電電圧値を算出する帯電電圧算出テーブルが格納されている。
なお、電荷輸送層膜厚換算テーブルおよび帯電電圧算出テーブルはいずれも実験的に求められた値である。また、帯電電圧算出テーブルを用いて算出される帯電電圧は、感光体ドラム20yの表面を−600Vに帯電するのに必要な印加電圧値である。
【0050】
以下に、本実施例のプリンタ1の画像形成時の印刷動作について説明する。
プリンタ1は印刷用の画像データを受信すると、上記実施例1と同様の印刷動作を開始するが、本実施例では、印刷動作の開始時に感光体ドラム20yの電荷輸送層膜厚検出動作が行われる。
【0051】
すなわち、機構制御部42は、定着器16の温度が定着温度範囲になると、搬送ベルト10の駆動ローラ10aおよび各画像形成ユニット11の駆動を開始する。画像形成ユニット11yが駆動され始めると、機構制御部42は直ちに電荷輸送層32yの膜厚検出動作を開始し、帯電電圧供給部45に膜厚検出指令を送信し、高圧生成部51yによって画像形成ユニット11yの帯電ローラ21yに−1000Vの電圧を印加する。
このとき、機構制御部42は、帯電電流検出手段52yからの出力を読取って帯電電流値を検出し、記憶部44の電荷輸送層膜厚換算テーブルを参照して、感光体ドラム20yの電荷輸送層膜厚を算出する。
【0052】
この電荷輸送層膜厚の算出は、検出した帯電電流値が電荷輸送層膜厚換算テーブルに記載されている各電流値の間に位置する場合は線形補間によって行う。例えば、検出された帯電電流値が60μAの場合は、その電流値は56μAと68μAの間であり、膜厚は24μmと21μmの間であるので(図10参照)、
電荷輸送層膜厚={(21−24)/(68−56)}(60−56)+24
=23[μm] ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(1)
と求められる。
【0053】
この膜厚検出動作の各処理動作によって、本実施例のプリンタ1の電荷輸送層膜厚検出の機能手段が形成される。なお、電荷輸送層膜厚の算出は、必ずしも線形補問で行う必要はなく、他の方法、例えば検出された帯電電流値に最も近い電流値の膜厚を用いるようにしてもよい。
そして、電荷輸送層膜厚を算出した機構制御部42は、記憶部44の帯電電圧算出テーブルを参照して、上記で算出した電荷輸送層膜厚に応じた帯電電圧を算出する。
【0054】
この帯電電圧の算出は、上記で算出した電荷輸送層膜厚が帯電電圧算出テーブルに記載された膜厚の間に位置する場合は上記と同様に線形補間によって行う。例えば、算出された電荷輸送層膜厚が23μmの場合は、その電荷輸送層膜厚は21μmと24μmの間であり、帯電電圧は−1050Vと−1090Vの間であるので(図11参照)、
帯電電圧値={(−l090+1050)/(24−21)}(24−23)
−1050=−1063[V] ・・・・・・・・・(2)
と求められる。
【0055】
なお、帯電電圧の算出は、必ずしも線形補問で行う必要はなく、他の方法、例えば算出された電荷輸送層膜厚に最も近い膜厚の帯電電圧を用いるようにしてもよい。
【0056】
機構制御部42は、上記各処理動作によって感光体ドラム20yの電荷輸送層32yの膜厚検出による帯電電圧値の算出を完了すると、高圧制御部43に電圧供給指令を送信して、帯電電圧供給部45、現像電圧供給部46および供給電圧供給部47をオンし、画像形成ユニット11k、11y、11m、11cの各ローラに所定の高電圧を供給し、感光体ドラム20上へのトナー画像の形成動作を開始する。この場合に、帯電電圧供給部45からイエローの画像形成ユニット11yの帯電ローラ21yに供給される高電圧は、上記で算出した帯電電圧が供給され、感光体ドラム20yの表面を−600Vに帯電させる。
【0057】
その後の処理動作は、上記実施例1と同様であるので、その説明を省略する。
このようにして、検出した感光体ドラム20yの電荷輸送層膜厚に応じて画像形成ユニット11yの帯電ローラ21yへの印加電圧を制御しながら、本実施例の用紙カセット2から繰出された用紙へのカラー画像の印刷動作が実行される。
【0058】
上記のように、本実施例では、帯電電圧供給部45の高圧生成部51yに帯電電流検出手段52yを設けたことで、感光体ドラム20yの電荷輸送層膜厚の検出が可能となり、検出した電荷輸送層膜厚を基に帯電電圧算出テーブルを参照して帯電ローラ21yへ印加する帯電電圧を算出することができ、電荷輸送層膜厚が磨耗で薄くなった場合であっても、常に感光体ドラム20yの表面を−600Vに近い電位に帯電させることができる。従って、感光体ドラム20yの帯電電位が高くなりすぎてカブリが悪化する画質不良を抑制することができる。
【0059】
以上説明したように、本実施例では、上記実施例1と同様の効果に加えて、イエローの感光体ドラムの電荷輸送層膜厚の検出値に基づいて算出した帯電電圧をイエローの画像形成ユニットの帯電ローラへ印加するので、電荷輸送層膜厚が磨耗によって薄くなったとしても、イエローの帯電ローラへ最適な帯電電圧を供給してイエローの感光体ドラムの表面電位を常に最適に帯電させることができ、カブリの増加を抑制して良好な画像品位を得ることができる。
【符号の説明】
【0060】
1 プリンタ
2 用紙カセット
3 スタッカ
4 用紙搬送路
6 ホッピングローラ
7 レジストローラ
8 ピンチローラ
9 レジストセンサ
10 搬送ベルト
10a 駆動ローラ
10b テンションローラ
11、11k、11y、11m、11c 画像形成ユニット
12、12k、12y、12m、12c LEDヘッド
13、13k、13y、13m、13c 転写ローラ
14 定着ローラ
14a ハロゲンランプ
15 加圧ローラ
16 定着器
20、20k、20y、20m、20c 感光体ドラム
21k、21y、21m、21c 帯電ローラ
23k、23y、23m、23c 現像ローラ
24k、24y、24m、24c 供給ローラ
25k、25y、25m、25c 現像ブレード
26k、26y、26m、26c トナータンク
30、30k、30y、30m、30c アルミ素管
31、31k、31y、31m、31c 電荷発生層
32、32k、32y、32m、32c 電荷輸送層
33、33k、33y、33m、33c 感光層
41 画像形成部
42 機構制御部
43 高圧制御部
44 記憶部
45 帯電電圧供給部
46 現像電圧供給部
47 供給電圧供給部
48 転写電圧供給部
51k、51y、51m、51c 高圧生成部
52y 帯電電流検出手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
感光層を被覆した像担持体を有し、異なる明度の有色の現像剤を用いて現像剤画像を形成する画像形成ユニットを複数直列に配置した画像形成装置であって、
前記複数の画像形成ユニットのうち、所定の明度より高い明度の現像剤を用いる画像形成ユニットの像担持体は、他の画像形成ユニットの像担持体より膜厚の厚い前記感光層を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像形成装置において、
前記所定の明度より高い明度の現像剤は、イエローの現像剤であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の画像形成装置において、
前記感光層は電荷輸送層を有し、
前記電荷輸送層の膜厚を、前記他の画像形成ユニットの像担持体より厚くしたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項3に記載の画像形成装置において、
前記電荷輸送層の膜厚を厚くした画像形成ユニットの像担持体の前記膜厚を検出する電荷輸送層膜厚検出手段を設けたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項4に記載の画像形成装置において、
前記画像形成ユニットは帯電手段を有し、
前記電荷輸送層膜厚検出手段によって検出された前記電荷輸送層の膜厚に基づいて、前記帯電手段へ印加する電圧を制御することを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−50560(P2013−50560A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−188007(P2011−188007)
【出願日】平成23年8月30日(2011.8.30)
【出願人】(591044164)株式会社沖データ (2,444)
【Fターム(参考)】