説明

画像形成装置

【課題】濃度ムラの増大を抑えて復元画像を形成する。
【解決手段】原稿を読み取り、原稿画像データを作成する読取手段2と、原稿画像データから画像濃度低下情報を示すコードを検出するコード検出手段6と、画像濃度低下情報に応じた濃度入出力特性を用いて、原稿画像データから出力画像データを作成する復元処理手段7と、画像濃度低下情報に応じた度合いを用いて、出力画像データに対してアンシャープネス処理を行うフィルタリング手段8と、アンシャープネス処理された出力画像データに基づく画像を形成する画像形成手段13と、を有する画像形成装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、復元処理手段を備える画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
トナー方式による画像形成装置では、低ランニングコスト実現のために、画像形成におけるトナー消費量の削減が求められている。そのために特許文献1は、電子写真方式による画像形成装置において低トナー消費モードを用いる方法を開示している。特許文献1に開示されている低トナー消費モードを用いることによって、画像形成におけるトナー消費量の削減を実現することができる。
【0003】
低トナー消費モードで形成された画像では、濃度が薄くなる。通常の濃度の画像が形成された記録媒体を所望する際に、通常の濃度の画像データを有していない場合は、一旦低トナー消費モードで形成された画像を原稿から読み込んで画像データを作成し、その画像データを、濃度を濃くして記録媒体に出力する事が考えられる。しかしながらこの方法では、作成された画像データに対して、どの程度濃度を濃くすればよいのかユーザーはわからないため、一回の処理で所望の通常の濃度で画像を出力することは通常困難であり、その場合は何度も出力を繰り返すことが必要となる。
【0004】
また、原稿から画像をスキャナで読み込み、読み込まれた画像データを、濃度を調整して新たな記録媒体に出力した場合、一般的に画質は低下してしまう。そもそも、原稿をスキャナで読み込むことによって作成された画像データのS/N比は原稿上の画像のS/N比に比べて劣化する。ここで代表的なノイズとしては、原稿の紙の平滑性が低いことによる転写性のムラで発生するミクロな濃度ムラが挙げられる。加えて、画像の濃度を濃くする時には、濃度ムラも大きくなり、結果として、さらに濃度ムラが目立ってしまうことになる。
ここで、紙の平滑性に起因する画像の濃度ムラは、濃度ムラ指数によって示すことができる。ここで、濃度ムラ指数は、青色の画像が形成された用紙をスキャナで走査し、坪量に対する反射濃度の2乗の標準偏差をとったものと定義する。Drを反射濃度、Bを坪量(g/m)とすると、濃度ムラ指数Mは(Drの標準偏差)/Bの関数となる。また、後述するように濃度ムラ指数Mは地合指数によっても変わる。原稿の画像の濃度及び濃度ムラ指数をそれぞれd、M、新たな記録媒体に形成された画像の濃度及び濃度ムラ指数をそれぞれd、Mとする。記録媒体に形成された画像の濃度ムラ指数Mは、原稿の画像の濃度dに対する記録媒体の画像の濃度dの濃度比a=d/dを用いて、M=M×aと表される。すなわち、濃度がa倍されると、濃度ムラ指数もa倍される。図12は、濃度比aに対する濃度ムラ指数Mを示している。図12に示すように、濃度比aが増大するほど、濃度ムラ指数Mは増大する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−44178号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のように、低トナー消費モードで画像が形成された原稿から画像を読み込んで画像データを作成し、その画像データを用いて一回の処理で所望の濃度を有する画像を記録媒体に形成することは困難である。また、画像データの濃度を濃くする際に、濃度ムラが増大する。
そこで、本発明は、濃度ムラの増大を抑えて復元画像を形成することができる画像形成装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による画像形成装置は、原稿を読み取り、原稿画像データを作成する読取手段と、前記原稿画像データから画像濃度低下情報を示すコードを検出するコード検出手段と、前記画像濃度低下情報に応じた濃度入出力特性を用いて、前記原稿画像データから出力画像データを作成する復元処理手段と、前記画像濃度低下情報に応じた度合いを用いて、前記出力画像データに対してアンシャープネス処理を行うフィルタリング手段と、前記アンシャープネス処理された出力画像データに基づく画像を形成する画像形成手段と、を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、原稿画像データから検出した画像濃度低下情報に応じた度合いを用いてアンシャープネス処理された出力画像データに基づいて画像を形成することにより、濃度ムラの増大を抑えて復元画像を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】第1実施形態に係る画像形成装置100の構成を示すブロック図。
【図2】第1実施形態に係る画像形成装置100の低トナー消費モードにおける画像形成処理を示すフローチャート。
【図3】画像形成装置100において用いられる画像濃度入出力カーブを示した図。
【図4】原稿及び記録媒体を示す図。
【図5】第1実施形態に係る画像形成装置100における濃度復元モードでの画像形成処理を表すフローチャート。
【図6】アンシャープネス処理による画像濃度の変化の例を示した図。
【図7】画像形成装置100における濃度復元モードによる画像形成に用いられる画像データの濃度増幅度に対する濃度ムラ指数を示した図。
【図8】第2実施形態に係る画像形成装置100における濃度復元モードでの画像形成処理を表すフローチャート。
【図9】地合の度合いに対する地合指数の関係を示した図。
【図10】地合指数と濃度ムラ指数の関係を示した図。
【図11】濃度復元モードにおいて読み取られる原稿の一例を示した図。
【図12】濃度比に対する濃度ムラ指数を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明にかかる実施形態を説明する。なお、以下に示す実施形態は本発明における最良の実施形態の一例ではあるが、本発明は以下に示す実施形態に限定されるものではないことに注意すべきである。
【0011】
図1は、第1実施形態に係る画像形成装置100の構成を示すブロック図である。
【0012】
CPU1は、ROM10に格納されているプログラム、およびユーザーが入力操作を行う操作部11からのモード指示に従って、画像形成装置100の動作を制御する。CPU1は、バス16に接続されている。バス16には、読取手段であるスキャナ部2、低トナー消費モード処理手段である低トナー消費モード処理部3、コード化手段であるコード化部4、画像合成手段である画像合成部5、コード検出手段であるコード検出部6が接続されている。また、バス16には、復元処理手段である復元処理部7、フィルタリング手段であるフィルタ部8、RAM9、記憶手段であるROM10、調整手段である操作部11、表示手段である表示部12、画像形成手段であるプリンタ部13が接続されている。プリンタ部13は、給紙手段として手差し給紙部14及びカセット給紙部15を備えている。
【0013】
図2は、第1実施形態に係る画像形成装置100の低トナー消費モードにおける画像形成処理を示すフローチャートである。
【0014】
まず、CPU1は、ユーザーによって操作部11上のプリントキーが押下されたか否かを判断する(S1)。押下されたと判断された場合は(S1のYes)、スキャナ部2が原稿Q1の画像117(図4(a))を読み取る(S2)。押下されていないと判断された場合は(S1のNo)、ステップS1に戻る。
画像117を読み取った後、CPU1は、操作部11によってユーザーが低トナー消費モードを選択したか否かを判断する(S3)。低トナー消費モードが選択されなかった場合(S3のNo)、すなわち通常モードが選択された場合、CPU1は、プリンタ部13によって記録媒体に通常モードにおける画像形成を行う(S108)。ここで、通常モードにおける画像形成とは、読み取った画像117の濃度が100%の部分は、100%の濃度で画像形成されることを意味し、すなわち、この場合の画像濃度入出力カーブは図3(a)のCAのようになる。
低トナー消費モードが選択された場合は(S3のYes)、S4へ進む。S4において、低トナー消費モード処理部3は、画像濃度入出力カーブを通常モードにおける入出力カーブから低トナー消費モードにおける入出力カーブへ変更し、画像データ(低トナー出力画像データ)を作成する(S4)。
【0015】
第1実施形態における、通常モードでの画像濃度入出力カーブCAおよび低トナー消費モードでの画像濃度入出力カーブCBが図3(a)に示されている。通常モードでは、上述のように読み取った画像の濃度が100%の部分は、100%の濃度で画像データが作成される。しかしながら、本実施形態における低トナー消費モードでは、読み取った画像の第3の濃度である濃度が100%の部分は、第1の濃度である40%の濃度で画像データ(低トナー出力画像データ)が作成されることになる。なお、本実施形態では40%としたが、これに限定されるものではない。
【0016】
画像濃度の入出力カーブが変更されて画像データが作成された後、画像濃度が低下したことを示す情報(画像濃度低下情報)をバーコードとしてコード化することを操作部11によってユーザーが選択したか否かをCPU1が判断する(S5)。このバーコードは後に詳述する濃度復元モードにおいて使用される。なお、画像濃度低下情報を示すコードはバーコードに限定されず、QRコード等、他のコードでも構わない。コード化が選択されなかった場合(S5のNo)、CPU1は、プリンタ部13によって記録媒体に低トナー消費モードで画像形成を行う(S118)。
画像濃度低下情報のコード化が選択された場合は(S5のYes)、画像濃度低下情報を示すバーコードがコード化部4において作成される(S6)。各濃度低下度に対応した各バーコード画像データはROM10に記憶されており、バーコードを作成する際には、ROM10から対応するバーコード画像データが読み込まれる。
画像合成部5は、画像データ(低トナー出力画像データ)にバーコード画像データを合成する(S7)。プリンタ部13は、画像合成部5によって合成された画像データに基づき、低トナー消費モードにより、記録媒体P1(図4(b))に画像17にバーコード画像18を重ね合わせた画像を形成する(S8)。なお、画像形成された記録媒体P1は、後述する画像復元モードでは原稿Q2として利用される。
【0017】
図4(a)は、画像117が形成されている原稿Q1を示している。図4(b)は、原稿Q1の画像117に対応する低トナー消費モードの画像17とバーコード画像18が形成された記録媒体P1を示している。ここで、記録媒体P1は、例えば紙、OHPシート、布等である。
【0018】
なお、ステップS3およびS5における選択は、プリントキーを押下する前にユーザーに操作部11によってあらかじめ選択されたモードに基づき行われる。別の方法として、プリントキー押下後、その都度、例えばステップS3の選択についてはステップS2の処理後、表示部12においてユーザーに操作部11によって選択するように促してもかまわない。
また、画像形成を行う際に、記録媒体P1は手差し給紙部14あるいはカセット給紙部15から給送される。
【0019】
次に、低トナー消費モードで形成された画像の濃度を復元する濃度復元モードについて説明する。
【0020】
図5は、第1実施形態に係る画像形成装置100における濃度復元モードでの画像形成処理を表すフローチャートを示している。
【0021】
本実施形態の濃度復元モードでは、後に詳述するように、低トナー消費モードにおいて画像形成した記録媒体P1を原稿Q2として用い、原稿Q2の画像に濃度復元モードで作成した画像データを重ねる。
【0022】
まず、ユーザーによって操作部11上のプリントキーが押下されたか否かをCPU1が判断する(S9)。押下されたと判断された場合は(S9のYes)、スキャナ部2が原稿Q2を走査し、画像を読み取り、原稿Q2の画像データを出力する(S10)。押下されていないと判断された場合は(S9のNo)、ステップS9に戻る。ここで、原稿Q2は、低トナー消費モードで画像が形成された記録媒体(S118)又は低トナー消費モードでバーコード画像18を重ね合わせた画像17が形成された記録媒体P1(S8)である。
画像を読み取った後、操作部11によってユーザーが濃度復元モードを選択したか否かをCPU1が判断する(S11)。濃度復元モードが選択されなかった場合、すなわち通常モードが選択された場合は(S11のNo)、プリンタ部13によって通常モードで画像が記録媒体P2(図4(c))に形成される(S119)。図4(c)に、通常モードで画像が形成された記録媒体P2を示す。この場合、読み取った画像の濃度が40%の部分は、40%の濃度で画像形成される。ここで、原稿Q2は低トナー消費モードで形成された画像であるので、最大濃度が40%になっている。すなわち、画像濃度入出力カーブ(画像濃度入出力特性)は図3(b)のCCのようになる。ここで、記録媒体P2は、例えば紙、OHPシート、布等であり、手差し給紙部14あるいはカセット給紙部15から給送される新たな記録媒体である。
濃度復元モードが選択された場合は(S11のYes)、原稿Q2の画像データから画像濃度低下情報を示すバーコード画像18をコード検出部6が検出したか否かをCPU1が判断する(S12)。バーコード画像18が検出されなかった場合は(S12のNo)、「バーコードがない画像では濃度復元モードを実行することはできません」等のエラーメッセージを表示部12に表示させ(S13)、処理を終了する。
【0023】
バーコード画像18を検出した場合は(S12のYes)、復元処理部7がバーコード画像18から画像濃度低下情報を読み取る。そして、低下した濃度に対応した画像濃度入出力カーブを用いて、原稿Q2の画像データから出力画像データを作成する(S14)。第1実施形態では、低トナー消費モードで画像形成した場合、濃度が100%の部分は、40%の濃度で画像形成されているので、本実施形態の第2の濃度である低下した濃度は60%である。すなわち、S14で用いる画像濃度入出力カーブは図3(b)のCDになる。
【0024】
次に、作成された画像データに対して、フィルタ部8において、S14で使用した画像濃度入出力カーブに応じた度合いのアンシャープネス処理を行う(S15)。ここで、アンシャープネス処理とは、主走査方向及び副走査方向において目標画素及びその前後にある隣接画素の濃度レベルに対して平均化処理をすることにより画素毎の濃度変化を緩和する処理のことをいう。
図6は、アンシャープネス処理による画像濃度の変化の例を示している。例えば、図6(a)に示されるような主走査方向における画像濃度の分布を有する画像データに対してアンシャープネス処理を実行すると、図6(b)に示されるような濃度ムラが滑らかになる、すなわち濃度レベルが平均化された画像データが得られる。また、アンシャープネス処理の度合いを強くすると、図6(c)に示されるような濃度ムラがさらに滑らかになった画像データが得られる。
【0025】
図7は、画像形成装置100における濃度復元モードによる画像形成に用いられる画像データの濃度増幅度に対する濃度ムラ指数Mを示している。
【0026】
図7(a)は、第1実施形態において低下した濃度に対応した画像濃度入出力カーブによって作成された出力画像データの濃度増幅度aに対する濃度ムラ指数Mを示している。ここで、濃度増幅度aは、低トナー消費モードにおいて形成された画像の濃度をdとすると、それに対する低下した分の濃度との割合、すなわち(100−d)/dによって定義される。すなわち、例えば、濃度増幅度a=60/40は、オリジナル画像の濃度100%の部分が低トナー消費モードにおいて濃度40%で画像形成され、それに対し濃度復元モードにおいて、低下した分である濃度60%で画像データが作成されることを意味している。
例えば、S14においてコードから読み取られた濃度低下情報が画像濃度入出力カーブCBを示す場合、すなわち、S14において画像濃度入出力カーブCDを使用して画像データを作成する場合は、濃度増幅度aは60/40となる。
【0027】
図7(a)の実線は、アンシャープネス処理を行わない場合の代表的な濃度増幅度a(10/90、20/80、30/70、40/60、50/50、60/40、70/30、80/20、90/10)に対する濃度ムラ指数M(黒ダイアモンド)を示す。図7(a)の実線は、図12に示す濃度比aに対する濃度ムラ指数Mの関係(M=M×a)に対応している。
図7に示す領域RA乃至REは、それぞれアンシャープネス処理を行う際の度合い、具体的には目標画素及びその前後にある隣接画素の濃度レベルに対して平均化処理を行う際の隣接画素の数N(所定の個数)によって区分されている。
領域RAは、濃度増幅度aが0以上1未満の領域に対応している。領域RAは、例えば、10/90、20/80、30/70、40/60の濃度増幅度aを含む。この領域RAにおける画像データでは、低下した分の濃度が50%未満なので、低下した濃度に対応した画像濃度入出力カーブによって作成された画像データの画質劣化は小さい。また、原稿Q2の画像に画像を重ね合わせて濃度復元画像を形成する場合に、濃度復元画像に対する原稿Q2の画像の割合も大きいので、アンシャープネス処理を行う必要はないと本実施形態では判断した。従って、領域RAにおける隣接画素の数Nは0であり、平均化処理、すなわちアンシャープネス処理は行わない。
一方、濃度増幅度aが1以上、すなわち低下した分の濃度が50%以上になるにつれて画質劣化は大きくなる。また、原稿Q2の画像に画像を重ね合わせて濃度復元画像を形成する場合に、濃度復元画像に対する原稿Q2の画像の割合も小さいので、濃度増幅度aが1以上では、アンシャープネス処理を行う際の度合いを強くする。
本実施形態では、領域RB(aが1以上2未満)ではN=2、すなわち目標画素及び前後2画素ずつの濃度レベルに対して主走査方向、副走査方向それぞれにおいて平均化処理を行うこととした。同様に、領域RC(aが2以上3.5未満)ではN=3、領域RD(aが3.5以上6未満)ではN=4、領域RE(aが6以上)ではN=5とした。
アンシャープネス処理を行った結果、1以上の濃度増幅度aにおける濃度ムラ指数Mは、それぞれ図7(a)中の白四角で示すように低下する。濃度増幅度aが大きくなるほど、平均化処理に用いる目標画素の前後にある隣接画素の数Nを大きくしているので、図7(a)に示すように、濃度ムラ指数Mは大きく低下する。図7(a)の点線は、アンシャープネス処理を行った後の各濃度増幅度aに対する濃度ムラ指数Mをつなげたものである。
【0028】
アンシャープネス処理を行う際の度合いを強くする(隣接画素の数Nを大きくする)ことによって、濃度ムラ指数Mを低く抑えることができる。しかし、アンシャープネス処理は画像をぼかす処理なので、アンシャープネス処理によって画像がどの程度ぼかされるかも考慮する必要がある。
【0029】
表1は、濃度増幅度a=90/10=9における画像データに対して、それぞれN=5、6、7及び8のアンシャープネス処理を行った時の、画像データに対する目視による官能評価結果を示している。
【0030】
【表1】

【0031】
第1実施形態におけるa=9が含まれる領域REでの設定値N=5の場合は、写真画像において、ぼけによる違和感はなく、鮮明であった。文字に関しては、判読できるが、文字の周囲がぼやけていている印象が残ったので、やや鮮明とした。N=6では、写真画像においては色味がやや周囲と混ざる印象がある以外は問題がなく、やや鮮明とした。文字に関しては、ぼけて判読することはできるが、かなり読みづらくなったので、やや不鮮明とした。N=7では、写真画像においては人物の集合写真では、各人の判別がしづらくなったが、全体的にはぼけた印象は少ないので、やや不鮮明とした。文字に関しては、ぼけて判読不能であったので、不鮮明とした。N=8では、写真画像においては、全体的にぼけた感じとなり、不鮮明とした。文字についても同様に不鮮明とした。
以上のことから、領域REにおけるアンシャープネス処理を行う際の度合い、すなわちNは6が限界であり、7以上は好ましくないと考えられる。
このように、本実施形態では、S14においてコードから読み取られた濃度低下情報またはS14において使用した画像濃度入出力カーブから求められる濃度増幅度aに応じてアンシャープネス処理の度合いを調整する。
【0032】
図5に示すように、出力画像データに対してアンシャープネス処理を行った後、表示部12においてスキャナ部2で走査した原稿Q2を給紙手段へセットするようにメッセージを表示する(S16)。給紙手段としては手差し給紙部14、カセット給紙部15があり、どちらを用いても構わないが、本実施形態では手差し給紙部14を用いる。手差し給紙部14への原稿Q2のセット方向をユーザーが間違わないように、表示部12にはセット方向を示す画像が表示される。
【0033】
次に、手差し給紙部14に原稿Q2がセットされたことを検出したか否かをCPU1が判断する(S17)。手差し給紙部14には用紙の有無を検知するセンサがあり、センサの出力により記録媒体がセットされたか否かをCPU1が判断することができる。手差し給紙部14に原稿Q2がセットされていないと判断された場合は(S17のNo)、ステップS16に戻る。
【0034】
手差し給紙部14に原稿Q2がセットされたと判断された場合は(S17のYes)、表示部12において、ユーザーに操作部11上の復元スタートキーを押下するようにメッセージを表示し、復元スタートキーが押下されたか否かをCPU1が判断する(S18)。復元スタートキーが押下されていないと判断された場合は(S18のNo)、ステップS18へ戻る。
【0035】
復元スタートキーが押下されたと判断された場合は(S18のYes)、手差し給紙部14からセットされた原稿Q2が給紙される。CPU1は、プリンタ部13により、ステップS15でアンシャープネス処理された画像データに従って画像127を原稿Q2の画像17の上に重なるように形成する(S19、図4(d))。図4(d)に、第1実施形態による濃度復元モードで画像が形成された原稿Q2を示す。
これにより、原稿Q2上の画像の濃度を、低トナー消費モードにおいて読み取られた原稿Q1上の画像の濃度と同一の濃度に復元することができる。また、図7(a)の点線のように、作成された画像データではアンシャープネス処理により濃度ムラ指数Mも抑えられているので、アンシャープネス処理しない場合の画像に比べて濃度ムラが抑えられた画像を得ることができる。
【0036】
次に第2実施形態について説明する。第1実施形態では低トナー消費モードにおいて画像形成した記録媒体P1を濃度復元モードにおける原稿Q2として用い、原稿Q2の画像に濃度復元モードで作成した画像データを重ねるように出力した。第2実施形態では、濃度復元モードで作成した画像データを、原稿Q2に重ねるようにではなく、新しい記録媒体P3に出力する。
【0037】
図8は第2実施形態に係る画像形成装置100における濃度復元モードでの画像形成処理を表すフローチャートを示している。なお、第2実施形態に係る画像形成装置100は、第1実施形態に係る画像形成装置100と同様のものを用いている。
【0038】
まず、ユーザーによって操作部11上のプリントキーが押下されたか否かをCPU1が判断する(S20)。押下されたと判断された場合は(S20のYes)、スキャナ部2が原稿Q2を走査し、画像を読み取る(S21)。なお、ここで原稿Q2としては、第1実施形態と同様に、低トナー消費モードで画像が形成された記録媒体(図2のS118)又は低トナー消費モードでバーコード画像18を重ね合わせた画像17が形成された記録媒体P1(図2のS8)を用いる。プリントキーが押下されていないと判断された場合は(S20のNo)、ステップS20に戻る。
画像を読み取った後、操作部11によってユーザーが濃度復元モードを選択したか否かをCPU1が判断する(S22)。濃度復元モードが選択されなかった場合、すなわち通常モードが選択された場合は(S22のNo)、プリンタ部13によって通常モードにおける画像形成が記録媒体P2(図4(c))に行われる(S127)。この場合は、読み取った画像の濃度が40%の部分は、40%の濃度で画像形成されることを意味し、すなわち、画像濃度入出力カーブは図3(b)のCCのようになる。ここで、記録媒体P2は、例えば紙、OHPシート、布等であり、手差し給紙部14あるいはカセット給紙部15から給送される。
濃度復元モードが選択された場合は(S22のYes)、原稿Q2から読み取られた画像において画像濃度低下情報を示すバーコード画像18をコード検出部6が検出したか否かをCPU1が判断する(S23)。バーコード画像18が検出されなかった場合は(S23のNo)、「バーコードがない画像では濃度復元モードを実行することはできません」等のエラーメッセージを表示部12に表示させ(S24)、処理を終了する。
【0039】
バーコード画像18を検出した場合は(S23のYes)、復元処理部7がバーコード画像18から画像濃度低下情報を読み取る。そして、図3(b)に示される画像濃度入出力カーブCEによって本実施形態の第1の画像データである画像データを作成する(S25)。すなわち、読み込まれた原稿Q2における画像の濃度が40%の部分が、作成された画像データにおいては本実施形態の第2の濃度である濃度が100%になっている。
【0040】
次に、フィルタ部8が、画像濃度低下情報に応じた濃度増幅度に応じた強度を用いて、作成された画像データに対してアンシャープネス処理を行う(S26)。
【0041】
図7(b)は、第2実施形態において作成された画像データの濃度増幅度aに対する濃度ムラ指数Mを示している。ここで、濃度増幅度aは、低トナー消費モードにおいて形成された画像の濃度をdとすると、それに対する濃度100%との割合、すなわち100/dによって定義される。すなわち、例えばa=100/40とは、低トナー消費モードにおいて読み取られた画像の濃度100%の部分が濃度40%で画像形成され、濃度復元モードにおいて、その部分の濃度が100%になるように画像データが作成されたことを意味している。
第2実施形態では、低トナー消費モードにおいて記録媒体P1に作成された画像の100%以下の濃度が、画像復元モードにおいて100%になるため、濃度増幅度aは必ず1以上、すなわち濃度は必ず増幅され、従って画像劣化は第1実施形態に比べて大きくなる。
【0042】
図7(b)の実線は、アンシャープネス処理を行わない場合の代表的な濃度増幅度a(100/90、100/80、100/70、……、100/30、100/20、100/10)に対する濃度ムラ指数M(黒ダイアモンド)を示す。図7(b)の実線は、図12に示す濃度比aに対する濃度ムラ指数Mの関係(M=M×a)に対応している。
各濃度増幅度aにおいてアンシャープネス処理を行う際の度合いは、第1実施形態と同様に領域RA乃至REによって区分されている。すなわち、目標画素及びその前後にある隣接画素の濃度レベルに対して平均化処理を行う際の隣接画素の数をNとすると、領域RA(aが0以上1未満)では、N=0である。同様に、領域RB(aが1以上2未満)では、N=2、領域RC(aが2以上3.5未満)では、N=3、領域RD(aが3.5以上6未満)では、N=4、領域RE(aが6以上)では、N=5である。なお、第2実施形態では、上述のように濃度増幅度aは必ず1以上になるため、アンシャープネス処理は必ず行われる。
アンシャープネス処理を行った結果、濃度ムラ指数Mは、それぞれ図7(b)中の白四角で示すように低下する。濃度増幅度aが大きくなるほど、平均化処理に用いる目標画素の前後にある隣接画素の数Nも大きくなるので、図7(b)に示すように、濃度ムラ指数Mは大きく低下する。図7(b)の点線は、アンシャープネス処理を行った後の各濃度増幅度aに対する濃度ムラ指数Mをつなげたものである。
【0043】
図8に示すように、作成された画像データに対してアンシャープネス処理を行った後、記録媒体P3が給紙される。なお、給紙手段としては手差し給紙部14、カセット給紙部15があり、どちらを用いても構わない。CPU1は、プリンタ部13により、ステップS26でアンシャープネス処理された画像データに従って画像137を本実施形態の第2の記録媒体である記録媒体P3に形成する(S27)。図4(e)に、第2実施形態による濃度復元モードで画像が形成された記録媒体P3を示す。
これにより、低トナー消費モードで作成された記録媒体P1、すなわち原稿Q2上の画像から、低トナー消費モードにおいて読み取られた原稿Q1上の画像の濃度と同一の濃度に復元された画像137を記録媒体P3に作成することができる。また、図7(b)の点線のように、作成された画像データではアンシャープネス処理により濃度ムラ指数Mも抑えられているので、アンシャープネス処理しない場合の画像に比べて濃度ムラが抑えられた画像を得ることができる。
【0044】
上記第1及び第2実施形態では、使用する原稿の種類については言及しなかったが、原稿が紙の場合、濃度ムラ指数は紙の種類による地合ムラに影響を受ける。
図9は、地合の度合いに対する地合指数Cの関係を示している。このように、地合が劣るほど地合指数Cは大きくなることが分かる。
ここで、地合指数Cについては、白紙を透過原稿読み取り装置を装着したスキャナで走査したときの、坪量に対する透過濃度の2乗の標準偏差をとったものと定義する。すなわち、Dtを透過濃度、Bを坪量(g/m)とすると、C=(Dtの標準偏差)/Bと表すことができる。
図10は、地合指数Cと濃度ムラ指数Mの関係を示している。このように、濃度ムラ指数Mは地合指数Cが増加するにつれて増加する。従って、原稿が上質紙、すなわち地合指数Cが小さくなると、図7(a)及び(b)の実線の傾きは小さくなり、一方原稿が粗末な紙、すなわち地合指数Cが大きくなると、図7(a)及び(b)の実線の傾きは大きくなることを意味する。
図7(a)及び(b)において、原稿が上質紙であるために実線の傾きが小さくなった際には、アンシャープネス処理を行う際の度合いを小さくしてもよい。例えば、図7(a)において、濃度増幅率aが80/20=4(領域RD)の場合は、N=4に設定しているが、それをN=3に下げてもよい。
逆に、図7(a)及び(b)において、原稿が粗末な紙であるために実線の傾きが大きくなった際には、アンシャープネス処理を行う際の度合いを大きくする必要がある。例えば、図7(a)において、濃度増幅率aが80/20=4(領域RD)の場合は、N=4に設定しているが、それをN=5にあげることが好ましい。
原稿の紙の種類については、ユーザーが操作部11で指定できるようにしてもよい。または、原稿の紙を実際に透過原稿読み取り装置を装着したスキャナ部2で走査し、得られた地合指数Cの情報に基づいてアンシャープネス処理を行う際の度合いを調整するようにしてもよい。
【0045】
第1及び第2実施形態では、濃度に関する調整、アンシャープネス処理を行う際の度合いに関する調整等は、あらかじめ設定されている内容に基づいてCPU1が行っている。しかしながら、表示部12においてユーザーに濃度やアンシャープネス処理を行う際の度合いの最適値を表示し、ユーザーは表示部12に表示された最適値に基づいて、任意の値に設定するようにしてもよい。この場合、ユーザーは、例えば濃度の最適値に比べて濃度をやや濃くする等、所望に応じて調整を行うことができる。
【0046】
アンシャープネス処理を行った場合、写真やハーフトーン画像においては劣化が改善されるが、一方で文字はぼやけてしまう。従って、原稿の画像をスキャナ部2で読み込んだ際に、文字領域と写真領域とを識別、区分し、文字領域についてはアンシャープネス処理を行わないようにしてもよい。すなわち、アンシャープネス処理は、文字領域を除く他の領域(例えば、写真領域)のみに実行してもよい。
図11は、濃度復元モードにおいて読み取られる原稿Q3の例を示している。原稿Q3は写真で構成された写真領域19、文字で構成された文字領域20及び画像濃度低下情報を示すバーコード画像21を含んでいる。この場合、アンシャープネス処理は写真領域19についてのみバーコード画像21に含まれる画像濃度低下情報に基づいて行い、文字領域20についてはバーコード画像21に含まれる画像濃度低下情報によらず行わない。このように文字領域20ではアンシャープネス処理を行わないことにより、文字がぼやけてしまうことを防止することができる。なお、写真領域19は、例えば、文字以外のイラスト等で構成されていても構わない。
【0047】
第1及び第2実施形態においては、原稿は一枚であったが、本発明はこれに限定されない。原稿は複数枚であってもよく、原稿自動送り装置がスキャナ部2にセットされていれば、複数枚の原稿を読み込むことができ、また読み込み後の複数枚の原稿を手差し給紙部14にセットすれば、複数枚における濃度復元を一度にすることができる。
【0048】
上記実施形態では、トナー方式の画像形成装置を用いて説明したが、インクジェット方式等、他の様々な方式を採用したカラー画像又はモノクロ画像を形成する装置にも適用することができる。また画像形成装置は、スキャナ部とプリンタ部を一体に有する複合機である必要はなく、スキャナ装置とプリンタ装置が別体で設けられ、それらが有線又は無線で接続されている形態でも構わない。
【0049】
上記実施形態によれば、一回の画像形成処理で、低トナー消費モードで形成された低濃度の画像から、低トナー消費モードで読み込まれた原稿上の画像の濃度と同一の高濃度でありながら、濃度ムラが抑えられた画像を形成することができる。
【符号の説明】
【0050】
2 スキャナ部(読取手段)
6 コード検出部(コード検出手段)
7 復元処理部(復元処理手段)
8 フィルタ部(フィルタリング手段)
13 プリンタ部(画像形成手段)
100 画像形成装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿を読み取り、原稿画像データを作成する読取手段と、
前記原稿画像データから画像濃度低下情報を示すコードを検出するコード検出手段と、
前記画像濃度低下情報に応じた濃度入出力特性を用いて、前記原稿画像データから出力画像データを作成する復元処理手段と、
前記画像濃度低下情報に応じた度合いを用いて、前記出力画像データに対してアンシャープネス処理を行うフィルタリング手段と、
前記アンシャープネス処理された出力画像データに基づく画像を形成する画像形成手段と、
を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記原稿を前記画像形成手段へ給送する給紙手段を有し、
前記画像形成手段は、前記アンシャープネス処理された前記出力画像データに基づく前記画像を前記給紙手段から給送された前記原稿に形成することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
記録媒体を前記画像形成手段へ給送する給紙手段を有し、
前記画像形成手段は、前記アンシャープネス処理された前記出力画像データに基づく前記画像を前記給紙手段から給送された前記記録媒体に形成することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記フィルタリング手段は、前記原稿の地合に応じた度合いを用いて、前記出力画像データに対して前記アンシャープネス処理を行うことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記原稿は、文字領域と、前記文字領域を除く他の領域とを有し、
前記フィルタリング手段は、前記他の領域のみに対して前記アンシャープネス処理を行うことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記アンシャープネス処理は、目標画素及び前記目標画素に隣接する所定の個数の画素の濃度レベルに対して平均化を行う処理であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記フィルタリング手段は、前記画像濃度低下情報に応じた前記度合いを用いて、前記目標画素に隣接する画素の前記所定の個数を変化させることを特徴とする請求項6に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記原稿は、紙であり、
前記フィルタリング手段は、前記紙の地合指数の大きさを用いて、前記目標画素に隣接する画素の前記所定の個数を変化させることを特徴とする請求項6又は7に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記画像濃度低下情報および前記目標画素に隣接する画素の前記所定の個数を表示する表示手段と、
前記画像濃度低下情報および前記目標画素に隣接する画素の前記所定の個数を調整する調整手段と、
をさらに備えることを特徴とする請求項6乃至8のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記読取手段により作成された前記原稿画像データから低トナー出力画像データを作成する低トナー消費モード処理手段と、
前記原稿画像データから前記低トナー出力画像データへの前記画像濃度低下情報を示す前記コードを、前記低トナー消費モード処理手段によって作成された前記低トナー出力画像データに合成する画像合成手段と、
をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一項に記載の画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2013−51498(P2013−51498A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−187544(P2011−187544)
【出願日】平成23年8月30日(2011.8.30)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.QRコード
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】