説明

画像形成装置

【課題】大型化を抑えて維持回復機能を適正に発揮させることができる構成を備えた画像形成装置を提供する。
【解決手段】記録ヘッドユニット101のノズル面の機能を維持回復するノズル機能維持回復装置200を前記ノズル面に対向させる位置に移動させる進退駆動機構302を備え、進退駆動機構302は、湾曲断面を有して巻き取り習性を付与されたコンベックステープ301と、コンベックステープ301に形成された係合部に係合可能な駆動輪302aを備えた駆動手段302bとから構成され、コンベックステープの巻き取り位置からノズル機能維持回復装置200の進退方向に繰り出される途中に設けられた周回部に前記進退駆動機構302を設けて該コンベックステープ301をノズル機能維持回復装置200が記録ヘッドユニット101に対向する位置に向けて繰り出されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関し、さらに詳しくは、液滴吐出部を対象としたメンテナンス構造に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、プリンタ、ファクシミリ装置や複写装置あるいはプロッタさらにはこれら機能を併せ持つ複合機などの画像形成装置の一つに、インク液滴を吐出する記録ヘッドを用いた液体吐出記録方式によるインクジェット記録装置がある。
【0003】
この液体吐出記録方式のインクジェット記録装置は、記録ヘッドからインク滴を、搬送される用紙などが用いられる記録媒体(以下、記録媒体を記録用紙と表現する場合もある)に対して吐出して、画像形成(記録、印字、印写、印刷も同義語で使用する)を行なうことができる。そして、型式として、記録ヘッドが主走査方向に移動しながら液滴を吐出して画像を形成するシリアル型と、記録ヘッドが移動しない状態で液滴を吐出して画像を形成するライン型ヘッドを用いるライン型がある。
【0004】
なお、本発明における液体吐出記録方式の画像形成装置としては、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス等の媒体を対象として、インクを着弾させて画像形成を行う装置を意味している。
また、画像形成とは、文字や図形等の意味を持つ画像を媒体に対して付与することだけでなく、パターン等の意味を持たない画像を媒体に付与すること(単に液滴を媒体に着弾させること)をも意味する。
【0005】
さらに、本発明の説明に用いるインクとは、インクと称されるものに限らず、記録液、定着処理液、樹脂、薬品、液体などと称されるものなど、画像形成を行うことができるすべての液体の総称として用いられているものが含まれる。
【0006】
また、本発明で挙げる用紙とは、材質を紙に限定するものではなく、上述したOHPシート、布なども含み、インク滴が付着されるものの意味であり、被記録媒体、記録媒体、記録紙、記録用紙などと称されるものを含むものの総称として用いる。
【0007】
この液体吐出方式には、次の方式が知られている。
すなわち、インクを充填した液室の壁の一部を圧電アクチュエータ等により振動および変位させ、液室内の圧力を高めたうえでインクを吐出する方式である。
これ以外の方式としては、液室内に通電によって発熱する発熱体を設け、発熱体の発熱により生じる気泡によって液室内の圧力を高め、インクを吐出する方式が知られている。
【0008】
この種のインクジェット記録装置は、高速かつ低騒音であり、記録用紙を含む記録媒体の種類に制約が少なく、カラー化も容易であるなどの利点があることから、現在広く普及している。
【0009】
ここで前述したシリアル型およびライン型を今少し詳しく説明すると次の通りである。
シリアル型は、液滴吐出ヘッドを搭載したキャリッジを用い、このキャリッジを記録用紙の搬送方向と直角な方向にシリアルスキャンさせるとともに記録用紙を記録幅に応じて間欠的に搬送することで搬送と記録(すなわち液滴吐出)とを交互に繰り返すことができる。
ライン型は、記録用紙の1辺の全域に対応して液滴吐出ノズルが配列されているラインヘッドを用いることができ、シリアル方式のような液滴吐出ヘッドを移動させることなく記録用紙のみを搬送するだけで済むのでシリアル方式に比べて高速化できる。
【0010】
一方、上述した液滴吐出ヘッドとして用いられる記録ヘッドユニットからのインク吐出動作を安定化させるために、記録ヘッドユニットの性能を維持回復させることが重要とされている。つまり、記録ヘッドユニットの液体吐出面、いわゆる、ノズル面に乾燥固化や粘着度合いによる残留インクが付着していない状態を維持して液体の吐出が妨げられないようにすることが望まれている。
【0011】
そこで、インク吐出機能を正常な状態に維持回復するためのノズル機能維持回復装置が提案されている。
ノズル機能維持回復装置に設定されている機能としては、インクの蒸発を抑えるために、ノズル面を高い密閉性を持たせる保湿用キャップで覆うキャップ機能や、ノズル孔内に発生した気泡などによる吐出不良を記録液の充填圧送により排出する排出回復機能と、ノズル面に付着して液滴の飛翔状態を変化させる原因となる残留インクを払拭するワイピング機能などがある。
【0012】
図7は、従来のインクジェット記録装置(便宜上、後述する実施例に用いる符号100で示す)を示す図であり、同図においてノズル機能維持回復装置(図中、符号200で示す)のノズル面に対向させるための構成として、ノズル機能維持回復装置を搭載したシャーシーを記録ヘッドユニット(図中、符号101で示す)の位置に向けて直線的に移動させる構成(例えば、特許文献1)、あるいは、記録ヘッドユニット101を、予め所定位置に配置されているノズル機能維持回復装置の位置に向けて直線的に移動させる構成(例えば、特許文献2)を備えている。
【0013】
図7において記録ヘッドユニットの機能維持回復時には、記録ヘッドユニット101が記録用紙から離れた際(図中、二点鎖線で示す位置に移動した状態)の記録用紙S、換言すれば、記録用紙Sの搬送ベルト(図中、符号102で示す)と記録ヘッドユニット101との間の空間内にノズル機能維持回復装置200が配置され(図2中、二点鎖線で示す状態)、記録ヘッドユニット101のノズル面にノズル機能維持回復装置200のワイピング装置や液滴吸引部さらにはキャップなどが対向するようになっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
ノズル機能維持回復装置200と記録ヘッドユニット101のいずれかを移動させて両者を対向させた位置でノズル面での維持回復を行う構成には、図7に示すように、部材を直線的に移動させることが可能なラック&ピニオン401,402などの進退機構400に用いられるラック401のような長手状部材が用いられる。
【0015】
ラック401の長手方向に沿ってノズル機能維持回復装置200あるいは記録ヘッドユニット101が移動することにより両者を対向させる位置に向けあるいは対向する位置から対向しない位置に向けて直線的に移動させることができる。
【0016】
しかし、長手状部材(ラック401)を用いた場合には次の理由により装置の大型化や移動精度の確保が困難となる虞がある。
つまり、シリアル型を用いる記録ヘッドユニット101は比較的小型であることにより、記録ヘッドユニット101を移動させて維持回復装置と対向させることが可能となる。しかし、記録ヘッドユニット101が大型となるライン型を用いる場合には、記録ヘッドユニット101を移動させるのでなく、駆動機構の大型化などを避ける意味でノズル機能維持回復装置200の方を移動させることになる。
【0017】
このため、図7に示すように、ノズル機能維持回復装置(図中、符号200で示す)が記録用紙(図中、符号Sで示す)と、これから離れた位置にある記録ヘッドユニット101として用いられる記録ヘッドユニット(図中、符号101で示す)との間の空間内でノズル機能維持回復装置200を正確に位置決めできる長さが長手状部材(図中、符号400で示す部材)に必要となる。この結果、長手状部材の長手方向に沿った敷設スペースを要する分、画像形成装置の内部空間が大型化してしまう。
【0018】
そこで、長手状部材の長さを上述した両者間の空間を除くように分割することも考えられる。しかし、この構成では、対向空間での維持回復装置の位置決めが正確に行えなくなり、記録ヘッドユニット101の維持回復機能が低下することになる。
【0019】
本発明の目的は、上記従来の画像形成装置、特に液滴吐出ヘッドを用いる画像形成装置における問題に鑑み、大型化を抑えて維持回復機能を適正に発揮させることができる構成を備えた画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記課題を解決するため、本発明は、記録用紙等の被記録媒体での1辺の全域に対応して液滴吐出ノズルが配列されたラインヘッド型の記録ヘッドユニットと、
前記記録ヘッドユニットの前記液滴吐出ノズルが設けられたノズル面と、前記被記録媒体との間の相対距離を、第1距離及び前記第1距離より大きい第2距離に変更可能な移動機構と、
前記記録ヘッドユニットの液滴吐出ノズル面に対向する位置に向けて前記被記録媒体の搬送方向に平行して移動可能なノズル機能維持回復装置と
を備え、
前記記録ヘッドユニットは、前記ノズル面と前記被記録媒体との間の相対距離が前記第1距離に配置された状態で、前記被記録媒体を搬送方向に移動させながら前記液滴吐出ノズルから液滴を前記被記録媒体に向けて吐出して前記被記録媒体に印字し、
前記ノズル機能維持回復装置は、前記ノズル面と前記被記録媒体との間の相対距離が前記第2距離に配置された状態で前記ノズル面と前記被記録媒体との間に形成される空間に対して進退可能に移動させる進退駆動機構を有し、
前記進退駆動機構は、長手方向に展張された際の曲げ剛性を強化される湾曲断面を有すると共に繰り出し方向一端が前記ノズル機能維持回復装置に連結されて巻き取り習性を付与されているコンベックステープと、該コンベックステープを前記ノズル面と前記被記録媒体との間の前記空間に向けて繰り出す駆動手段と
を備えたことを特徴とする画像形成装置にある。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、被記録媒体の搬送方向に平行して移動可能なノズル機能維持回復装置が、進退駆動機構の駆動手段により繰り出し可能に設けられているコンベックステープにより記録ヘッドユニットのノズル面と被記録媒体との間に形成される空間に対して進退する。これにより、ラックなどの長手状部材を上記空間内に敷設する必要がなくなり、長手状部材の敷設に必要とされていたスペースをなくして内部空間の大型化を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】一実施形態にかかる画像形成装置の構成を説明するための模式図である。
【図2】図1に示した画像形成装置に用いられるノズル機能維持回復装置の進退駆動機構の一例を説明するための図である。
【図3】図2に示した進退駆動機構に用いられるコンベックステープのガイド部材の構成を説明するための図である。
【図4】図1に示した画像形成装置に用いられるノズル機能維持回復装置の進退駆動機構の他の例を説明するための図である。
【図5】図2に示した進退駆動機構が非動作時でのノズル維持回復装置と記録ヘッドユニットとの位置関係を示す図である。
【図6】図2に示した進退駆動機構が動作時でのノズル維持回復装置と記録ヘッドユニットとの位置関係を示す図である。
【図7】記録ヘッドユニットを用いる画像形成装置の従来例を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図に示す実施例により本発明を実施するための形態について説明する。
図1は、本発明の実施の形態にかかる画像形成装置の一つである、液滴吐出記録装置、いわゆる、記録媒体の一つである用紙Sに対して液滴を着弾させて印字を行うインクジェット記録装置を示している。
【0024】
同図においてインクジェット記録装置100は、次の装置を備えている。
つまり、画像形成手段としての記録ヘッドユニット101と、用紙Sを搬送する搬送ベルト102と、用紙Sを収容する給紙トレイ103と、画像が形成された用紙Sが排紙される排紙トレイ104と、ノズル機能維持回復装置200とを備えている。
【0025】
記録ヘッドユニット101は、液滴を吐出する複数のノズルを用紙幅相当分の長さに配列したノズル列を有するライン型液体吐出ヘッドから構成され、それぞれイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色のインク滴を記録ヘッド101y、101m、101c、101kを備えている。なお、シリアル型画像形成装置として記録ヘッドをキャリッジに搭載する構成とすることもできる。
【0026】
記録ヘッドユニット101は、被記録媒体の一つである用紙Sに対向して液滴を吐出できる第1の距離を持たせた印字位置と、第1の距離よりも大きくなる位置に離れた非印字位置とに図示しない移動機構によって変位することができる(図1中、矢印で示す状態)。
記録ヘッドユニット101は、上述した第2の距離を持たせた非印字位置に移動した際に、搬送ベルト102との間に後述するノズル機能維持回復装置220をノズル面と対向するように配置できる空間を形成できる位置に移動する。
【0027】
搬送ベルト102は、無端状ベルトであり、搬送ローラー121とテンションローラー122との間に掛け渡されて周回するように構成している。この搬送ベルト102に対する用紙Sの保持は、例えば静電吸着、空気の吸引による吸着などを行う構成とすることや、その他の公知の搬送手段を用いることができる。
【0028】
給紙トレイ103に収容された用紙Sは、ピックアップローラー131で1枚ずつ分離されて搬送ローラー132によって給紙されて搬送ローラー対133、134によって搬送路135を介して搬送され、塗布装置200によって塗布が行われた後、搬送ベルト102上に送り込まれて保持される。
そして、搬送ベルト102で搬送されながら記録ヘッドユニット101から各色の液滴が吐出されて、塗布された用紙S上に画像が形成され、その後、用紙Sは排紙トレイ104に排出される。
【0029】
ノズル機能維持回復装置200は、前述したように、第2の距離の位置を持たせて第1の距離に相当する印字位置から離れた際に形成される空間内に移動してノズル面に対向可能な位置に配置される場合と上記空間から移動して(図中、矢印で示す方向)ノズル面に対向しない位置に配置される場合とを選択できる装置であり、ノズル面と対向する位置に配置された場合ノズル面の乾燥固化や粘着度合いによる残留インクが付着していない状態を維持回復する。
【0030】
ノズル機能維持回復装置200は、記録ヘッドユニット101が第2の距離を持たせた非印字位置に移動した際に、搬送ベルト102とノズル維持回復装置200との間の空間に対して進退できる装置であり、このための構成として進退駆動機構300が用いられる。
【0031】
進退駆動機構300は、次の部材を備えている。
つまり、長手方向一端がノズル維持回復装置200に連結され、長手方向他端が巻き取り装置(図示されず)に取り付けられているコンベックステープ301と、巻き取り状態にあるコンベックステープ301の長手方向一端を繰り出してノズル面と記録媒体として用いられる記録用紙との間の空間に位置させる駆動手段302とを備えている。コンベックステープ301は、例えば、特開2007−33407号公報(参考文献1)、特開2007−57339号公報(参考文献2)に示されているように、長手方向に展張された際の曲げ剛性を強化されるために長手方向と直角な幅方向の断面形状が湾曲形状とされている。
【0032】
コンベックステープ301は、巻き取り位置からノズル機能維持回復装置200に至る繰り出し部の途中が周回されて方向転換されており、上述した参考文献に開示されているコンベックステープと違って、巻き取り位置から繰り出すための駆動手段302が上述した周回部に設けられている。
つまり、駆動手段302は、図2に示すように、コンベックステープ301の幅方向中央において長手方向に沿って形成されている複数の係合穴301aに係脱可能な突起からなる係合部302a1を周方向に複数備えた駆動輪302aと駆動輪302aの駆動モータ302bとを備えている。
【0033】
駆動モータ302bは、正逆回転可能あるいは、給電によりコンベックステープ301の繰り出し方向への回転が可能かつ非給電時に巻き取り装置の巻き取り習性に従って逆転することができる。このため、正転時あるいは給電時にはコンベックステープ301を繰り出し、逆転時あるいは非給電時にはコンベックステープ301を巻き取ることができる。給電状態の違いによりコンベックステープ301を繰り出しおよび巻き取るための構成としては、駆動モータ302bの駆動軸にクラッチを設け、駆動軸への駆動力伝達接続を結合/分離するようにした構成を採用することができる。
【0034】
巻き取り位置から繰り出されて周回部を通過したコンベックステープ301の移動部には、コンベックステープ301をノズル機能維持回復装置200の移動方向に平行して繰り出すためのガイド部303が設けられている。なお、図2において符号303bは、コンベックステープ301とノズル機能維持回復装置200との連結部材を示している。
【0035】
ガイド部材303は、図2に示すように、周回部を経由して繰り出し部分が対応する面303aを一様な湾曲率としてガイドできる構成とするだけでなく、図3に示すように、ガイド面の湾曲率を変化させる構成とすることも可能である。
【0036】
図3において、ガイド部材303のガイド面は、周回部、つまり、駆動手段302が配置されている位置からノズル機能維持回復装置200側に向けてコンベックステープ301が繰り出されるに従って湾曲断面の湾曲率を大きくすることができる断面形状とされている。
つまり、図3においてガイド部材303のガイド面303a’は、駆動手段302側での曲率半径R1に対してノズル機能維持回復装置200側での曲率半径R2が小さく(曲率が大きく)されている。
【0037】
これにより、コンベックステープ301は、周回部を通過すると展張された部分の曲げ剛性が高められてノズル機能維持回復装置200を押し動かす際の展張方向での剛性が高められることになる。この結果、コンベックステープ301によるノズル機能維持回復装置200の押し動かしが良好に行えることになる。
【0038】
以上のような構成において、図4および5を用いて進退駆動機構300の動作を説明すると次の通りである。
非印字位置に記録ヘッドユニット101が移動しているときには、図4(B)に示すように、ラインヘッド101と搬送ベルト102との間に形成されている空間から退避していたノズル機能維持回復装置200が、空間に向けて移動できる状態とされる。今、便宜上、ノズル機能維持回復装置200が退避している状態を初期状態とする。
【0039】
初期状態では、進退駆動機構300のコンベックステープ301が巻き取られていることによりノズル機能維持回復装置200が上述した空間から退避することができる。
【0040】
一方、上述した空間に向けてノズル機能維持回復装置200を進入させる場合には、進退駆動機構300に装備されている駆動モータ302がコンベックステープ301を繰り出せる方向に回転する。
駆動モータ302の回転量は、コンベックステープ301の長手方向一端に連結されているノズル機能維持回復装置200が初期状態時の位置、つまり退避位置から記録ヘッドユニット101と搬送ベルト102との間の空間内に位置して記録ヘッドユニット101のノズル面に対向できる位置まで移動させることができる回転量とされている。
【0041】
進退駆動機構300の駆動モータ302が回転を開始すると、図5に示すように、駆動輪302aの係合部302a1に係合する係合穴301aを有したコンベックステープ310が繰り出されることになる。
退避位置から繰り出されるコンベックステープ301は、ガイド部材303に沿って用紙Sの搬送方向と平行に移動する。
【0042】
図2に示した構成のガイド部材303を用いる場合には、ガイド面の湾曲率がコンベックステープ301の繰り出し部分に沿って一様であるので、摺動抵抗が少ない状態で繰り出すことができる。
また、図3に示したガイド部材を用いる場合には、ガイド面の湾曲率がノズル機能維持回復装置200を記録ヘッドユニット101と搬送ベルト102との間の空間に近づけるに従って、大きくなることにより、繰り出されたコンベックステープ301の展張面での曲げ剛性、いわゆる座屈剛性が強められることになる。
【0043】
図3に示した構成のガイド部材303を用いた場合には、ノズル維持回復装置200が上述した空間に対向する際に生じるコンベックステープ301の撓みが抑えられるので、繰り出し量が多くなる位置であるノズル機能維持回復装置200と記録ヘッドユニット101との対向位置までの押し動かしが正確に行われる。これにより、ノズル機能維持回復装置200と記録ヘッドユニット101のノズル面との位置決めが正確かつ良好に行われることになる。
【0044】
以上の構成においては、従来の装置におけるラック&ピニオン機構のような長手状部材を必要としない。これにより、長手状部材が占有するスペースを省くことで装置の大型化を防止することができる。
【0045】
しかも、コンベックステープ301は巻き取り位置から周回部を経由して搬送ベルト102、換言すれば用紙Sの搬送方向と平行する方向に繰り出されるようになっているので、ラックなどの長手状部材がノズル機構維持回復装置の移動ストロークに対応する繰り出し方向でのスペースを必要とするのに対して、周回部を設けることで繰り出し方向でのスペースを低減することによっても装置の大型化を防止することが可能となる。
特に周回部を境にしてコンベックステープ301の巻き取り位置側の展張部の長さをノズル機能維持回復装置の進退ストローク内に納めるようにすれば、接離方向での余分なスペースを設ける必要がなく、これによっても、装置が大型化するのを抑制することができる。
【0046】
次に、図1に示した進退駆動機構に関する変形例について説明する。
図6は、コンベックステープ(便宜上、符号301’で示す)と駆動手段(便宜上、符号302’で示す)との配置関係を説明するための図2相当の図である。
図6において、コンベックステープ301’の繰り出し方向と直角な方向に相当する幅方向一方端には、コンベックステープ301’の展張方向に沿って複数の歯部(便宜上、符号301a’で示す)が形成されている。
歯部301a’には、これの近傍に配置されている駆動輪(便宜上、符号302a’で示す)に設けられて歯部301a’に噛み合い可能な駆動歯(便宜上、符号302a1’で示す)を備えた駆動モータ302bが設けられている。
【0047】
以上のような構成においては、図2に示した構成と同様に、コンベックステープ301’を進退駆動することによりノズル機能維持回復装置200の移動を行う。
コンベックステープ301’は、巻き取り習性に抗して繰り出される際、繰り出し側における幅方向一端に形成された歯部301a’に駆動輪302’側の駆動歯302a’が噛み合うことで繰り出し方向に沿って押し動かされる。
【0048】
これにより、ノズル機能維持回復装置200の近傍でコンベックステープ301の進退駆動が行えるので、コンベックステープ301の駆動位置がノズル機能維持回復装置200から遠い位置に設定された場合に生じやすい座屈変形を駆動輪302aにより抑えることができる。この結果、座屈変形が生じた場合の不安定な繰り出し移動が防止されてノズル機能維持回復装置200の進出位置決め精度を低下させることがない。また、コンベックステープ301’の湾曲断面の形状は、幅方向一方側に位置する駆動歯302’と幅方向他方端が対向するガイド303のガイド面303aとの挟み込みにより維持されて座屈剛性の低下が抑えられる。
【符号の説明】
【0049】
100 インクジェット記録装置
101 記録ヘッドユニット
102 搬送ベルト
200 ノズル機能維持回復装置
300 進退駆動機構
301 コンベックステープ
301a 係合穴
301a’歯部
302b 駆動輪
302b1 係合部
302b1’駆動歯
303 ガイド部材
303a ガイド面
S 用紙
R1,R2 曲率半径
【先行技術文献】
【特許文献】
【0050】
【特許文献1】特開2004−195937号公報
【特許文献2】特開2011−51177号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録用紙等の被記録媒体での1辺の全域に対応して液滴吐出ノズルが配列されたラインヘッド型の記録ヘッドユニットと、
前記記録ヘッドユニットの前記液滴吐出ノズルが設けられたノズル面と、前記被記録媒体との間の相対距離を、第1距離及び前記第1距離より大きい第2距離に変更可能な移動機構と、
前記記録ヘッドユニットの液滴吐出ノズル面に対向する位置に向けて前記被記録媒体の搬送方向に平行して移動可能なノズル機能維持回復装置と
を備え、
前記記録ヘッドユニットは、前記ノズル面と前記被記録媒体との間の相対距離が前記第1距離に配置された状態で、前記被記録媒体を搬送方向に移動させながら前記液滴吐出ノズルから液滴を前記被記録媒体に向けて吐出して前記被記録媒体に印字し、
前記ノズル機能維持回復装置は、前記ノズル面と前記被記録媒体との間の相対距離が前記第2距離に配置された状態で前記ノズル面と前記被記録媒体との間に形成される空間に対して進退可能に移動させる進退駆動機構を有し、
前記進退駆動機構は、長手方向に展張された際の曲げ剛性を強化される湾曲断面を有すると共に繰り出し方向一端が前記ノズル機能維持回復装置に連結されて巻き取り習性を付与されているコンベックステープと、該コンベックステープを前記ノズル面と前記被記録媒体との間の前記空間に向けて繰り出す駆動手段と
を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記駆動手段は、該コンベックステープの一部に係脱可能に設けられた駆動伝達部を係合させて前記ノズル維持回復装置が前記空間に向け移動する方向に前記コンベックステープを繰り出すことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記駆動手段は、該コンベックステープの習性により、前記ノズル維持回復装置を前記ノズル面と前記被記録媒体との間の前記空間から退避させることを特徴とする請求項2記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記駆動手段の駆動伝達部は、前記コンベックステープの面で繰り出し方向に沿って形成された複数の係合穴と、前記コンベックステープの巻き取り位置から前記ノズル機能維持回復装置に至る繰り出し部の途中に設けられている周回部において前記係合穴に係脱可能な係合部を周方向に複数備えた回転可能な駆動輪とで構成されていることを特徴とする請求項2記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記駆動手段の駆動伝達部は、前記コンベックステープの繰り出し方向と直角な方向に相当する幅方向一方端に形成された歯部と、前記コンベックステープの展張部において前記歯部に対向して配置され、該歯部に係脱可能な複数の駆動歯を周方向に有する回転可能な駆動部材とで構成されていることを特徴とする請求項2記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記コンベックステープは、周回部から繰り出された展張部が前記ノズル機能維持回復装置の移動方向に平行して展張され、該展張部での湾曲率が大きくなる習性を有していることを特徴とする請求項1乃至5のうちの一つに記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−56427(P2013−56427A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−194677(P2011−194677)
【出願日】平成23年9月7日(2011.9.7)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】