画像形成装置
【課題】不必要な機器を停止して不必要な電圧印加を省略して省電力を図り、感光ドラム1の劣化を招くことなく、抵抗調整モードを加速的に実行して短時間で終了させることができる画像形成装置を提供する。
【解決手段】制御部12は、5000枚の画像形成ごとに帯電ローラ2の抵抗値を測定して抵抗調整モードを実行する。抵抗調整モードは、離間機構8が感光ドラム1から離間させた帯電ローラ2に、転写電源S1が金属ローラ7を通じて画像形成時とは逆方向の電流を流す。金属ローラ7は、導電材料のローラ部材で構成され、抵抗調整モードでは、金属ローラ7が駆動装置9により駆動されて帯電ローラ2を回転駆動する。
【解決手段】制御部12は、5000枚の画像形成ごとに帯電ローラ2の抵抗値を測定して抵抗調整モードを実行する。抵抗調整モードは、離間機構8が感光ドラム1から離間させた帯電ローラ2に、転写電源S1が金属ローラ7を通じて画像形成時とは逆方向の電流を流す。金属ローラ7は、導電材料のローラ部材で構成され、抵抗調整モードでは、金属ローラ7が駆動装置9により駆動されて帯電ローラ2を回転駆動する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯電ローラを用いて像担持体を帯電させる画像形成装置に関し、詳しくは、非画像形成時の帯電ローラに画像形成時とは逆方向の電流を流して、画像形成の累積に伴って上昇した抵抗値を回復させる抵抗調整モードの制御構成に関する。
【背景技術】
【0002】
像担持体の表面を一様に帯電させて静電像を書き込み、静電像にトナーを供給してトナー像に現像し、トナー像を直接又は中間転写体を経て記録材に転写し、加熱加圧によりトナー像を融解して記録材に画像を定着させる画像形成装置が広く用いられている。
【0003】
像担持体の表面を一様に帯電させる方法として、帯電ローラを使用する方法が広く用いられている。帯電ローラを像担持体に当接して回転させ、直流電圧に交流電圧を重畳した振動電圧を帯電ローラに印加して、帯電ローラと像担持体との間で交流放電を伴って像担持体を帯電させている。
【0004】
帯電ローラは、像担持体との当接状態を安定させて放電状態の変動を回避するために表面に抵抗性の弾性層が形成されている。帯電ローラの弾性層は、場所による放電電流のばらつきを少なくして帯電電位の一様性、再現性を高めるために、フッ化炭素を含有する導電性重合体組成物で形成して抵抗上昇を抑制している(特許文献1)。
【0005】
画像形成の累積に伴って、帯電ローラは、トナーとの接触、像担持体に付着した放電生成物との接触、放電による微小な組織の変化、放電による表面の汚染等を通じて弾性層の抵抗値が次第に増加する。帯電ローラの抵抗値の上昇を放置すると、次第に放電電流が目減りして帯電ローラの帯電性能が低下する。抵抗値の上昇に伴って電圧を上昇させると、電力消費が増大し、帯電ムラが発生し易くなり、放電生成物が発生し易くなる等の弊害がある。抵抗値が上昇して電源の能力では足りなくなると、帯電ローラが交換寿命として交換され、画像形成装置のダウンタイムが発生する。
【0006】
そこで、特許文献1では、画像形成ジョブの待機時に、画像形成時とは逆方向の電流を帯電ローラに流して、画像形成の累積に伴って増加した帯電ローラの抵抗値を回復させている。
【0007】
ところで、転写ローラに好適な抵抗範囲の弾性層として、スポンジ材料にイオン導電剤を分散させて弾性層を形成することが提案されている。イオン導電剤を分散させて弾性層の抵抗値を調整した転写ローラでは、画像形成の累積に伴って、イオン導電材の分極が進行して、抵抗値が増大する(特許文献2)。
【0008】
そこで、特許文献2では、転写ローラに関して、非画像形成時に、画像形成時とは逆方向の電流を流す抵抗調整モードをユーザーが選択実行して、画像形成の累積に伴って上昇した転写ローラの抵抗値を回復させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平09−325571号公報
【特許文献2】特開2007−156196号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献2に示される抵抗調整モードの場合、画像形成時に印加する電圧と抵抗調整モードで印加する逆方向の電圧を等しくすると、画像形成に費やした時間と同程度に長い抵抗調整モードを実行しないと元の抵抗値に復帰しない。このため、抵抗調整モードを実行すると画像形成にダウンタイムが発生する。ここで、逆方向の電圧を高めて加速的に回復させるとダウンタイムは解消できるが、像担持体の半導体層を電気的に劣化させる可能性がある。
【0011】
また、像担持体と帯電ローラとを当接させた状態で抵抗調整モードを実行する場合、像担持体を回転させる必要がある。現像装置、転写ローラ、中間転写ベルト等も画像形成時とほぼ同様に回転させて電圧を印加する必要がある。このため、これらの部材の摩耗、劣化、トナー汚染、無駄な電力消費といった懸念がある。
【0012】
本発明は、不必要な機器を停止して、不必要な電圧印加も省略して、像担持体の劣化を招くことなく、抵抗調整モードを加速的に実行して短時間で終了させることができる画像形成装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の画像形成装置は、回転する像担持体と、抵抗性の弾性層を有して前記像担持体に当接して回転する帯電部材とを備え、前記帯電部材に所定の電圧を印加して前記像担持体を帯電させるものである。そして、前記帯電部材を前記像担持体から離間させる機構と、前記像担持体から離間した前記帯電部材に当接する電極と、前記電極と前記帯電部材の間に電圧を印加する電源と、前記機構と前記電源を制御して、前記像担持体から離間させた前記帯電部材に、前記電極を通じて前記像担持体を帯電させる際とは逆方向の電流を流して、画像形成の累積に伴って増加した前記帯電部材の抵抗値を低下させる抵抗調整モードを実行可能な制御手段とを備える。
【発明の効果】
【0014】
本発明の画像形成装置では、帯電部材を像担持体から離間した状態で抵抗調整モードを実行するから、像担持体に電気的な負担がかからず、像担持体を回転させる必要もない。帯電部材と電極との関係で高速回転させて高い電圧を印加して、抵抗調整モードを加速的に実施できる。また、電極部材に、像担持体には付与できない研磨面を設けるなど、抵抗調整モードの最適化をはかることも可能である。
【0015】
したがって、不必要な機器を停止して省電力を図り、不必要な電圧印加も省略して像担持体の劣化を招くことなく、抵抗調整モードを加速的に実行して短時間で終了させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】画像形成装置の構成の説明図である。
【図2】帯電ローラの構成の説明図である。
【図3】帯電ローラの抵抗測定の説明図である。
【図4】実施例1の画像形成装置の動作の説明図である。
【図5】実施例1の画像形成装置のブロック図である。
【図6】実施例1の抵抗調整モードの制御のフローチャートである。
【図7】抵抗調整モードの効果の説明図である。
【図8】実施例2の画像形成装置の動作の説明図である。
【図9】実施例2の画像形成装置のブロック図である。
【図10】実施例2の抵抗調整モードの制御のフローチャートである。
【図11】実施例3の画像形成装置の動作の説明図である。
【図12】実施例3の画像形成装置のブロック図である。
【図13】実施例3の抵抗調整モードの制御のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。本発明は、帯電ローラを像担持体から離間して電極を接触させた状態で抵抗調整モードを実行する限りにおいて、実施形態の構成の一部または全部を、その代替的な構成で置き換えた別の実施形態でも実施できる。
【0018】
したがって、帯電ローラを用いて像担持体を帯電させる画像形成装置であれば、タンデム型/1ドラム型、中間転写型/記録材搬送型/直接転写型の区別なく実施できる。二成分現像剤/一成分現像剤、磁気ブラシ現像/ジャンピング現像、静電像の書き込み方式、転写方式の区別無く実施できる。
【0019】
本実施形態では、トナー像の形成/転写に係る主要部のみを説明するが、本発明は、必要な機器、装備、筐体構造を加えて、プリンタ、各種印刷機、複写機、FAX、複合機等、種々の用途で実施できる。
【0020】
<画像形成装置>
図1は画像形成装置の構成の説明図である。図1に示すように、画像形成装置100は、電子写真プロセス利用、接触帯電方式、反転現像方式、最大通紙サイズがA3サイズ、プロセススピード143mm/sec、のレーザビームプリンタである。画像形成装置100は、感光ドラム1の周囲に、帯電ローラ2、露光装置3、現像装置4、転写ローラ5、ドラムクリーニング装置6を配置している。
【0021】
感光ドラム1は、導電性の素管(ここでは、厚さ2mmのアルミニウムの円筒管)の表面に帯電特性が負極性の有機光導電体(OPC)の感光層を形成しており、図示しない駆動モータに駆動されて矢印R1方向(時計方向)に回転する。感光層は、光の干渉を抑えて上層の接着性を向上させる下引き層と、光電荷発生層と、電荷輸送層の3層を下から順に塗布して構成されている。
【0022】
露光装置3は、帯電ローラ2によって一様な負極性の電位に帯電処理された感光ドラム1の表面を、画像の分解色画像を展開した走査線画像データをON−OFF変調したレーザービームを回転ミラーで走査して、画像の静電像を書き込む。露光装置3は、公知の技術を利用することができ、感光ドラム1の周面に静電像を形成するものであれば良い。
【0023】
現像装置4は、感光ドラム1の静電像をトナー像に現像する。現像装置4は、二成分現像剤を用いた磁気ブラシ現像方式であり、感光ドラム1の表面の露光部分(明部)にトナーが付着して、静電像が反転現像される。現像スリーブ4sには、電源S4から直流電圧(Vdc)と交流電圧(Vac)とを重畳した振動電圧が印加される。現像装置4もまた、公知の技術を利用することができ、静電像を現像剤によって現像できればよい。
【0024】
転写ローラ5は、感光ドラム1に当接して感光ドラム1と転写ローラ5の間にトナー像の転写部T1を形成する。記録材Pは、記録材カセット15から引き出されて分離ローラ16で1枚ずつに分離され、レジストローラ17で待機する。レジストローラ17は、感光ドラム1のトナー像にタイミングを合わせて記録材Pを転写部T1へ給送する。
【0025】
転写電源S2は、トナーの帯電極性とは逆極性である正極性の直流電圧を転写ローラ5に印加して、感光ドラム1のトナー像と重ね合わせて転写部T1を挟持搬送される記録材Pへ、感光ドラム1のトナー像を静電転写させる。転写部T1にも、公知の技術を利用することができ、普通紙、樹脂フィルムなどの記録材Pに感光ドラム1のトナー像を転写することができればよい。
【0026】
ドラムクリーニング装置6は、感光ドラム1にクリーニングブレードを摺擦させて、転写部T1で転写を逃れて感光ドラム1に残った転写残トナーを回収する。ドラムクリーニング装置6は、クリーニングブレードを用いるものに限らず、感光ドラム1の表面を清浄面化するものであれば公知の技術が利用できる。
【0027】
転写部T1の下流側に定着装置18が設置されている。定着装置18は、回転可能な定着ローラ18aに回転可能な加圧ローラ18bを圧接して記録材Pの加熱ニップNを形成しており、加熱ニップNにて記録材Pを挟持搬送しながら、記録材Pの表面に転写されたトナー像を加熱加圧して熱定着する。定着装置18は、記録材Pの表面に転写されたトナーを定着するものであれば公知の技術を利用できる。
【0028】
<帯電ローラ>
図2は帯電ローラの構成の説明図である。図3は帯電ローラの抵抗測定の説明図である。
【0029】
図2に示すように、帯電ローラ2は、芯金(支持軸部材)2aの外周に、下層2bと中間層2cと表層2dを下から順次に積層した三層構成である。下層2bは、発泡スポンジ層で構成される弾性層であって、自在に変形して帯電ローラ2を感光ドラム1の周面に密着させる。中間層2cは、表面弾性を調整する弾性層である。表層2dは、感光ドラム1上にピンホール等の欠陥があってもリークが発生するのを防止するために設けている保護層である。
【0030】
帯電ローラ2の詳細な仕様は以下の通りである。帯電ローラ2は、回転軸線方向に沿った長さが320mm、総抵抗は1×106Ωである。である。芯金2aは、直径8mmのステンレス丸棒である。
【0031】
下層2bは、イオン導電剤分散の発泡EPDM(エチレン−プロピレン−ジエン)ゴム材料である。発泡EPDM材料の比重0.5g/cm3、体積抵抗値1×105Ωcm、層厚3.0mmである。中間層2cは、イオン導電剤分散のNBR系ゴム材料である。NBR系ゴム材料の体積抵抗値1×103Ωcm、層厚700μmである。
【0032】
表層2dは、フッ素化合物のトレジン樹脂に酸化錫とカーボンを分散したトナーの付着しにくい離型層である。表層2dの体積抵抗値1×108Ωcm、表面粗さ(JIS規格10点平均表面粗さRa)1.5μm、層厚10μmである。
【0033】
図3に示すように、帯電ローラ2の総抵抗は、感光ドラム(1)と同一外観形状に形成した金属ローラMを用いて測定した。電流計21と電圧可変の電源22を用いた。金属ローラMに、帯電ローラ2を片側500N、総圧1000Nの荷重で押し付けた状態で、金属ローラMを15rpmで回転し、直流電流50μAを印加した時の電圧値をモニターして総抵抗の抵抗値を求めた。測定環境は気温23℃、相対湿度50%である。
【0034】
帯電電源S1は、直流電圧(Vdc)に交流電圧(Vac)を重畳した振動電圧を発生して帯電ローラ2の芯金2aに印加する。これにより、感光ドラム1の周面が所定の極性、一様な電位に接触帯電処理される。
【0035】
図1に示すように、帯電電源S1は、画像形成時には、帯電ローラ2の芯金に、直流電圧(−500V)に交流電圧(周波数2kHz、ピーク間電圧1600Vpp)を重畳した振動電圧を出力する。これにより、感光ドラム1の周面は、一様な−500Vの暗部電位VDに帯電される。
【0036】
帯電ローラ2は、従来から使用されている電子導電性ローラ又はイオン導電性ローラを採用することができる。電子導電性ローラは、EPDM、ウレタンゴム、シリコーンゴム、ポリオレフィンゴム等の一般エラストマーに、カーボンブラック等の導電性粉末や導電性金属酸化物などの電子電導性系導電剤を分散させたものである。電子電導性系導電剤としては、カーボンブラック、グラファイト、アルミニュウム、銅合金などの金属または合金が用いられる。あるいは、酸化錫、酸化亜鉛、チタン酸カリム、酸化錫−酸化インジウムまたは酸化錫−酸化アンチモン複合酸化物などの金属酸化物などの1種または2種以上の微粉末が用いられる。中でも、コストの点でカーボンブラックが好適である。
【0037】
イオン導電性ロールは、EPDM、ウレタンゴム、シリコーンゴム、ポリオレフィンゴム等の一般エラストマーにイオン電導性導電剤を分散させて導電性を持たせたものである。発泡性のゴム材料の場合、イオン導電剤が0.001〜10%、好ましくは0.003〜2%添加されることにより、体積抵抗値を1×106〜1×1012Ωcmに調整可能である。体積抵抗値を1×103〜1×106Ωcmに下げるには、さらに抵抗制御剤を添加してもよい。
【0038】
イオン電導性導電剤としては、スルホン酸塩やアンモニア塩など、また、カチオン系、アニオン系、ノニオン系などの各種の界面活性剤を挙げることができる。好ましいイオン導電剤としては金属塩及び4級アンモニウム塩が挙げられる。金属塩としてはI族、II族の金属塩が挙げられ、Li、Na、Kの塩が好ましい。金属塩を構成するアニオンとしてはハロゲン(F、Cl、Br、I)、チオシアン酸イオン、過塩素酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン及びフルオロホウ酸イオン、リン酸イオン等である。4級アンモニウム塩としては、カルボン酸(アジピン酸、フタル酸、アゼライン酸等)、リン酸、ホウ酸、スルホン酸(アリールスルホン酸等)、ホウフッ化水素酸、過塩素酸等のアンモニウム塩が挙げられる。
【0039】
帯電ローラ2の弾性層としての発泡層の厚みは0.5mm〜100mmとすることができる。発泡層にポリウレタン注入を行う場合は発泡層の厚みは5〜10mmにすることが好ましい。
【0040】
ところで、帯電ローラ2の表層2dは、高電界が印加されるだけでなく、感光ドラム1との間の放電に伴って発生する電離気体やオゾン及び電子などに曝される。このような厳しい環境下では、通常、表層2dの劣化が起き、電気抵抗値が次第に上昇するという現象が見られる。
【0041】
また、イオン電導性導電剤を添加した帯電ローラ2では、通電することによって、帯電ローラ2の直径方向にイオン導電物質の偏りが生じてしまうため、帯電ローラ2の総抵抗(図3)が次第に上昇する現象が顕著である。画像形成装置100において、帯電ローラ2に流れる電流の方向が一方向であると、帯電ローラ2の総抵抗が増える速度が高くなる。帯電ローラ2の総抵抗があるレベルに達すると、交流電界による正常な放電が阻害されて帯電ムラが発生し、出力画像の濃度むらや、白地かぶり画像等の不具合が発生し易くなるため、帯電ローラ2が新品交換される。
【0042】
しかし、画像形成装置100において、帯電ローラ2に流れる電流の方向が両方向であると、帯電ローラ2の総抵抗が増える速度が遅くなる。画像形成時に印加する直流電圧と逆方向の直流電圧を印加していると、帯電ローラ2の総抵抗は低下して回復する傾向となる。
【0043】
そこで、以下の実施例では、帯電ローラ2を感光ドラム1から離間させる離間機構8と、帯電ローラ2が感光ドラム1から離間した時に接触する金属ローラ7とを付設した。離間機構8によって帯電ローラ2を感光ドラム1から離間して回転させた状態で、帯電ローラ2と金属ローラ7との間に電圧を印加して、画像形成中とは逆方向の電流を帯電ローラ2に流している。これにより、帯電ローラ2の長期抵抗上昇を抑制して帯電性能を安定化させ、出力画像の品質を長期間に渡って高く保つことができる。電流の流れる方向が両方向であると帯電ローラ2の総抵抗の変動が小さくなるため、帯電ローラ2の交換寿命も伸びている。
【0044】
<実施例1>
図4は実施例1の画像形成装置の動作の説明図である。図5は実施例1の画像形成装置のブロック図である。図6は実施例1の抵抗調整モードの制御のフローチャートである。図7は抵抗調整モードの効果の説明図である。
【0045】
図4の(a)に示すように、帯電部材の一例である帯電ローラ2は、抵抗性の弾性層を有して像担持体の一例である感光ドラム1に当接して回転する。帯電ローラ2の弾性層は、イオン系導電剤を含むゴム材料から形成されている。帯電ローラ2は、感光ドラム1を帯電させる際とは逆方向の平均電流を流すことにより、画像形成の累積に伴って増加した抵抗値を低下させることが可能である。
【0046】
機構の一例である離間機構8は、帯電ローラ2を感光ドラム1から離間させる。離間機構8は、感光ドラム1と帯電ローラ2とを離間させる。
【0047】
電極の一例である金属ローラ7は、感光ドラム1から離間した帯電ローラ2に当接する。金属ローラ7は、離間機構8によって帯電ローラ2が感光ドラム1から離間した時に帯電ローラ2に接触する。
【0048】
電源の一例である転写電源S1は、金属ローラ7と帯電ローラ2の間に電圧を印加する。帯電電源S1は、感光ドラム1を帯電させる際には直流電圧に交流電圧を重畳した振動電圧を出力するが、抵抗調整モードでは、直流電圧のみ出力する。
【0049】
電源基板10は、帯電電源S1とスイッチ回路SW1、SW2とを同一基板上に配置する。帯電電源S1は、帯電ローラ2に所定の電圧を印加して感光ドラム1を帯電させる。スイッチ回路SW1、SW2は、帯電電源S1の出力を金属ローラ7と帯電ローラ2と感光ドラム1との間で切り替えて画像形成時とは逆方向の電流を帯電ローラ2に流す。
【0050】
制御手段の一例である制御部12は、抵抗調整モードを実行可能である。抵抗調整モードは、離間機構8と帯電電源S1を制御して、感光ドラム1から離間させた帯電ローラ2に金属ローラ7を通じて画像形成時とは逆方向の電流を流す。抵抗調整モードは、画像形成ジョブの終了後、あるいは、画像形成を中断して、感光ドラム1、現像装置4、定着装置18等を停止して最小限の構成に電力供給して実行される。
【0051】
離間機構8は、感光ドラム1と帯電ローラ2を離間させるバネ8Bを有する。離間機構8は、帯電ローラ2の端部をそれぞれ昇降させるねじ機構を含み、モータ8Mを順作動させると、ねじの突き出しが短くなってバネ8Bが圧縮されて感光ドラム1に帯電ローラ2が接触する。また、モータ8Mを逆作動させると、ねじの突き出しが長くなってバネ8Bが伸張し、感光ドラム1から帯電ローラ2が離間する。
【0052】
金属ローラ7は、帯電ローラ2が感光ドラム1と離間した時に、帯電ローラ2と接触するように配置された直径6mmの回転自由なアルミ丸棒である。金属ローラ7は、導電性の部材であればよく、形状は回転自由な円筒状であるのが望ましい。
【0053】
駆動装置9は、帯電ローラ2が感光ドラム1と離間した時に、帯電ローラ2を回転させるモータであって、画像形成時に帯電ローラ2の回転の負荷にならないように、ワンウエイクラッチを介して帯電ローラ2に歯付きベルトで連結されている。駆動装置9は、このような構成に限らず、感光ドラム1から離間した帯電ローラ2を回転駆動できればよい。
【0054】
帯電電源S1は、高圧電源であり、電源基板10の上に設けたスイッチ回路SW1、SW2を介して帯電ローラ2と金属ローラ7に電気的に接続されている。電源基板10には、帯電電源S1、転写電源S2、現像電源(S4:図1)が搭載され、帯電ローラ2と金属ローラ7の間に流れる電流を検知する検知回路11を内蔵している。
【0055】
制御部12は、スイッチ回路SW1、SW2を切り替えて、任意の方向の電圧を、帯電ローラ2または金属ローラ7のどちらかに印加することができる。制御部12は、検知回路11の出力に基づいて、任意の電流を帯電ローラ2に流すことができる。
【0056】
図5に示すように、制御部12は、記憶媒体12bの各種プログラムに従って画像形成装置100を制御する。記憶媒体12bは、画像形成装置100を動作させるための制御プログラム、エラー処理プログラム、各種データ等を格納している。実施例1の抵抗調整モードは、すべてこのプログラムによる動作である。
【0057】
図5を参照して図6に示すように、制御部12は、5千枚プリントするごとに帯電ローラ2の抵抗を検知して、検知回路11で検知された帯電ローラ2に流れる電流を記憶媒体12bに記録し、適切なタイミングで抵抗調整モードに移行する。
【0058】
制御部12は、5千枚プリントするごとに抵抗検知タイミングであると判断する(ST101のYes)。そして、図4の(b)に示すように離間機構8を作動させて帯電ローラ2を感光ドラム1から離間させ、スイッチ回路SW1、SW2を切り替える(ST102)。
【0059】
制御部12は、5千枚プリントするごとに、検知回路11の出力に基づいて帯電ローラ2の抵抗値を算出する(ST103)。抵抗値の測定時、金属ローラ7に帯電ローラ2を総圧1000Nの荷重で押し付けて金属ローラ7を15rpmで回転させる。帯電ローラ2を40rpmの回転速度で回転させ、帯電電源S1から直流電圧のみ出力させる。制御部12は、検知回路11の出力が直流電流50μAとなるように、帯電電源S1が出力する直流電圧値を調整する。制御部12は、検知回路11によって直流電流50μAが検出される時の帯電電源S1の出力電圧値(直流電圧)をサンプリングして帯電ローラ2の抵抗値(総抵抗)を求める。
【0060】
制御部12は、記録媒体12bから帯電ローラ2の初期抵抗値を読み込み、検知された帯電ローラ2の抵抗値から、抵抗変動率ΔRを計算する(ST104)。帯電ローラ2の現在の抵抗値を初期抵抗値で割り算した数値(現在の抵抗値/初期抵抗値)を抵抗変動率ΔRとして定義する。測定した現在の抵抗値の初期抵抗値に対する変動率(n枚プリント後の抵抗値/初期抵抗値)を抵抗変動率ΔRとしている。
【0061】
ΔRが5より小さければ(ST104のYes)、帯電ローラ2の抵抗は、それほど上昇しておらず、帯電電源S1の適正使用範囲で、感光ドラム1の表面を帯電するために必要な電圧を確保できるから、帯電ローラ2の抵抗調整は行わない。したがって、離間機構8を逆作動させて帯電ローラ2を感光ドラム1に接触させ(ST107)、画像形成を再開する(ST108)。
【0062】
しかし、抵抗変動率ΔRが5以上の場合(ST104のNo)、帯電ローラ2の抵抗調整モードを行う(ST105)。帯電ローラ2の抵抗が上昇して抵抗変動率ΔRが5を超えると、帯電電源S1の適正使用範囲で感光ドラム1の表面を帯電するために必要な電圧が確保できなくなり、帯電不良による濃度ムラなどが発生するからである。
【0063】
抵抗調整モード(ST105)は、金属ローラ7に、帯電ローラ2を総圧1000Nの荷重で押し付けた状態で、40rpmで回転させながら、金属ローラ7に直流電流50μAを1分間印加する。帯電ローラ2に、画像形成中に流れる電流(芯金から表面)を反転して逆方向(表面から芯金)の電流を流すことで、帯電ローラ2の弾性層の組織内で偏ったイオン導電物質を分散して均一化する。
【0064】
制御部12は、その後、再び帯電ローラ2の抵抗値を算出する(ST103)。制御部12は、再び抵抗変動率ΔRを計算して(ST104)、算出した値によって抵抗調整モードを継続するか(ST105)、画像形成に復帰するか(ST107)を決定する。
【0065】
図7は、実施例1の抵抗調整モードを行った場合と、抵抗調整モードを行わない比較例1とで帯電ローラ2の抵抗変動率ΔRを比較している。
【0066】
比較例1では、2万枚のプリントで帯電ローラ2の抵抗値が1×106Ωから1×107Ωに変動しているので、2万枚時点の抵抗変動率は(1×106)/(1×107)=10である。測定環境は23℃、50%とする。レーザービームで露光し、トナーで現像する環境も温度23℃、相対湿度50%とする。
【0067】
抵抗調整モードを行わない比較例1では、1万5千枚をプリントした頃から抵抗変動率ΔRが5を超えて、帯電不良による出力画像の濃度ムラなどが発生した。これに対して、抵抗調整モードを行った実施例1では、帯電ローラ2の抵抗値は、ほとんど上昇せず、帯電不良による出力画像の濃度ムラは発生しなかった。
【0068】
実施例1によれば、抵抗調整モードを行うことで、帯電ローラ2の抵抗変動に伴う濃度ムラなどの画像不良のない良質な画像を最後まで出力できた。実施例1によれば、帯電ローラ2に抵抗変動が発生した場合に、抵抗調整モードを実行して抵抗変動を解消することができる。これにより、出力画像の濃度ムラや、白地かぶり画像等を発生させることなく、長期間に渡って良質な画像を出力することができる。
【0069】
なお、実施例1では、検知回路11を用いて帯電ローラ2の抵抗値の増加量を検出可能であって、帯電ローラ2の抵抗値の増加量が大きいほど、抵抗調整モードの実行回数、実行時間を増した。しかし、抵抗調整モードは、前回の抵抗調整モード終了時に比較した現在までの抵抗値の増加量が大きいほど転写電源S1から帯電ローラ2に印加する電流を大きくしてもよい。電流を大きくすることで加速的に抵抗調整モードを実行できるからである。
【0070】
<実施例2>
図8は実施例2の画像形成装置の動作の説明図である。図9は実施例2の画像形成装置のブロック図である。図10は実施例2の抵抗調整モードの制御のフローチャートである。
【0071】
図8の(a)に示すように、実施例2は、スイッチ回路SW3の配置と切り替え操作以外は実施例1と同一に構成され、実質的に同一に制御される。したがって、実施例1との相違点のみを説明して、重複する説明を省略する。
【0072】
図8の(b)に示すように、駆動装置9は、帯電ローラ2が感光ドラム1と離間した時に、金属ローラ7を回転させる。駆動装置9は、金属ローラ7と歯付きベルトによって連結されている。
【0073】
金属ローラ7は、導電材料のローラ部材で構成され、抵抗調整モードでは、金属ローラ7がモータの一例である駆動装置9により駆動されて帯電ローラ2を回転駆動する。金属ローラ7は、電源S1と電気的に接続されており、電源S1は、画像形成時も、金属ローラ7に電圧を印加することで、帯電ローラ2に電流を流すことができる。実施例2では、電源S1は、金属ローラ7に負極性の直流電圧1500Vを印加する。
【0074】
帯電ローラ2は、スイッチ回路SW3を介して接地電位に接続可能である。帯電ローラ2が感光ドラム1と離間した時、制御部12は、帯電ローラ2を電気的に接地するようにスイッチ回路SW3を作動させる。
【0075】
図9を参照して図10に示すように、制御部12は、5千枚プリントするごとに抵抗検知タイミングと判断する(ST201のYes)。制御部12は、離間機構8を作動させて帯電ローラ2を感光ドラム1から離間させる(ST202)。
【0076】
制御部12は、実施例1と同じやり方で帯電ローラ2に印加する電圧を測定して、帯電ローラ2の抵抗値を算出する(ST203)。制御部12は、実施例1と同じやり方で記録媒体12Bから帯電ローラ2の初期抵抗値を読み込んで抵抗変動率ΔRを算出して5と比較する(ST204)。
【0077】
制御部12は、抵抗変動率ΔRが5以上の場合(ST204のNo)、抵抗調整モードを行う(ST208)。上述したように、帯電ローラ2の抵抗値が上昇して抵抗変動率ΔRが5を超えると、帯電電源S1では、感光ドラム1の表面を帯電するために必要な電圧を確保できなくなり、帯電不良による出力画像の濃度ムラなどが発生するからである。
【0078】
抵抗調整モードでは、駆動装置9によって15rpmで回転する金属ローラ7に帯電ローラ2を総圧1000Nの荷重で押し付けた状態で、金属ローラ7に直流電流50μAを1分間印加する。これにより、帯電ローラ2には、画像形成中に流れる電流(芯金から表面)の逆方向の電流(表面から芯金)が流れて、帯電ローラ2の弾性層の組織内で偏ったイオン導電物質を拡散して均一化することができる。
【0079】
制御部12は、その後、再び帯電ローラ2の抵抗値を算出して(ST203)、抵抗変動率ΔRが5未満になるまで(ST204のNo)、抵抗調整モードの処理を繰り返す(ST203、204、208)。
【0080】
制御部12は、抵抗変動率ΔRが5未満になると、抵抗調整モードを終了して画像形成に復帰する。抵抗変動率ΔRが5より小さくなると(ST204のYes)、帯電ローラ2を感光ドラム1に接触させて(ST209)、画像形成を実行する(ST210)。
【0081】
実施例2の抵抗調整モードでは、帯電ローラ2の弾性層に流す電流の方向を、芯金から表面方向、または表面から芯金方向のどちらでも選択できるため、イオン導電物質などの偏りによる抵抗変動を低減することができる。さらに、帯電ローラ2の抵抗変動が大きくなった時にも、抵抗変動を補正することができる。よって、帯電ローラの抵抗変動に伴う画像不良のない良質な画像を形成できた。
【0082】
<実施例3>
図11は実施例3の画像形成装置の動作の説明図である。図12は実施例3の画像形成装置のブロック図である。図13は実施例3の抵抗調整モードの制御のフローチャートである。
【0083】
図11の(a)に示すように、実施例3は、トナー像の転写に用いる転写電源S2を用いて帯電ローラ2の抵抗調整モードを実行する以外は、実施例1と同一に構成され、実質的に同一に制御される。したがって、実施例1との相違点のみを説明して、重複する説明を省略する。
【0084】
実施例3では、金属ローラ7は、導電材料のローラ部材で構成され、抵抗調整モードでは、金属ローラ7がモータの一例である駆動装置9により駆動されて帯電ローラ2を回転駆動する。
【0085】
実施例3では、電源基板10は、帯電電源S1と転写電源S2とスイッチ回路SW4、SW5とを同一基板上に配置する。帯電電源S1は、帯電ローラ2に所定の電圧を印加して感光ドラム1を帯電させる。転写電源S2は、感光ドラム1に形成されたトナー像の転写部T1に配置された転写部材の一例である転写ローラ5に直流電圧を印加する。スイッチ回路SW4、SW5は、転写電源S2の出力を帯電ローラ2と転写ローラ5との間で切り替えて画像形成時とは逆方向の電流を帯電ローラ2に流す。
【0086】
抵抗調整モードは、画像形成ジョブの終了後、あるいは、画像形成を中断して、感光ドラム1、現像装置4、定着装置18等を停止して最小限の構成に電力供給して実行される。
【0087】
図11の(b)に示すように、帯電ローラ2は、離間機構8によって感光ドラム1から離間することができる。駆動装置9は、帯電ローラ2が感光ドラム1から離間した時に金属ローラ7を回転させるモータであって、金属ローラ7と歯付きベルトによって連結されている。
【0088】
帯電ローラ2は、スイッチ回路SW4、SW5を切り替えて、帯電電源S1または転写電源S2と電気的に接続される。転写電源S2は、スイッチ回路SW4、SW5を切り替えて、帯電ローラ2または帯電ローラ2と電気的に接続できるように構成されている。
【0089】
画像形成時には、転写電源S2は、スイッチ回路SW5を通じて転写ローラ5と電気的に接続され、転写ローラ5に正極性の電圧を印加する。
【0090】
抵抗調整モード時には、転写電源S2は、スイッチ回路SW4、SW5を通じて帯電ローラ2と電気的に接続され、帯電ローラ2に正極性の電圧を印加する。
【0091】
図12を参照して図13に示すように、制御部12は、5千枚プリントするごとに抵抗検知タイミングと判断する(ST301のYes)。制御部12は、離間機構8を作動させて帯電ローラ2を感光ドラム1から離間させる(ST302)。
【0092】
制御部12は、実施例1と同じやり方で帯電ローラ2に印加する電圧を測定して、帯電ローラ2の抵抗値を算出する(ST303)。制御部12は、実施例1と同じやり方で記録媒体12Bから帯電ローラ2の初期抵抗値を読み込んで抵抗変動率ΔRを算出して5と比較する(ST304)。
【0093】
制御部12は、ΔRが5以上であれば(ST304のNo)、帯電ローラ2の抵抗調整モードを実行する(ST308)。帯電ローラ2の抵抗値が上昇して抵抗変動率ΔRが5以上になると、上述したように出力画像の濃度ムラ等の不都合が発生し易くなるからである。
【0094】
抵抗調整モードでは、駆動装置9によって15rpmで回転する金属ローラ7に帯電ローラ2を総圧1000Nの荷重で押し付けた状態で、金属ローラ7に直流電流50μAを1分間印加する。これにより、帯電ローラ2には、画像形成中に流れる電流(芯金から表面)の逆方向の電流(表面から芯金)が流れて、帯電ローラ2の弾性層の組織内で偏ったイオン導電物質を拡散して均一化することができる。
【0095】
制御部12は、その後、再び帯電ローラ2の抵抗値を算出して(ST303)、抵抗変動率ΔRが5未満になるまで(ST304のNo)、抵抗調整モードの処理を繰り返す(ST303、304、308)。
【0096】
制御部12は、抵抗変動率ΔRが5未満になると、抵抗調整モードを終了して画像形成に復帰する。抵抗変動率ΔRが5より小さく(ST304のYes)、0.5より大きければ(ST305のYes)、帯電ローラ2を感光ドラム1に接触させて(ST309)、画像形成を実行する(ST310)。
【0097】
一方、制御部12は、抵抗変動率ΔRが0.5以下であれば(ST305のNo)、帯電ローラ2の抵抗値を大きくする方向に抵抗調整モードを実行する(ST307)。帯電ローラ2の抵抗が低過ぎると、感光ドラム1との接触点に電流が集中して、感光ドラム1に対して過剰に放電したり、感光ドラム1の半導体の性質が部分的に失われて電流リークのスポットが発生したりする。
【0098】
帯電ローラ2の抵抗値を大きくする抵抗調整モード(ST307)は、回転する金属ローラ7に帯電ローラ2を総圧1000Nの荷重で押し付けた状態で、帯電ローラ2に画像形成時と同じ方向の直流電流100μAを1分間印加する。
【0099】
このとき、スイッチ回路SW4、SW5を切り替えて転写電源S1が帯電ローラ2に接続され、帯電電源S1は、画像形成時と同じく負極性の直流電圧を出力する。画像形成中に帯電ローラ2に流れる電流より大きな電流を同じ方向に流すことで、弾性層の組織内で意図的にイオン導電物質を偏らせて抵抗値を高める。
【0100】
制御部12は、抵抗変動率ΔRが0.5より大きくなるまで帯電ローラ2の抵抗値を大きくする抵抗調整モード(ST307)を繰り返す(ST303、304、305、307)。
【0101】
実施例3の抵抗調整モードでは、帯電ローラ2の弾性層に流す電流の方向を、芯金から表面方向、または表面から芯金方向のどちらでも選択できるため、イオン導電物質などの偏りによる抵抗変動を低減することができる。さらに、帯電ローラ2の抵抗変動が大きくなった時にも、抵抗変動を補正することができる。よって、帯電ローラの抵抗変動に伴う画像不良のない良質な画像を形成できた。
【0102】
<実施例4、5>
実施例1、2、3では、帯電ローラの抵抗調整モードについて説明した。しかし、特許文献2に示されるように、イオン導電物質を分散させたゴム材料で弾性層を構成した転写ローラにおいても、画像形成の累積に伴う抵抗値の上昇は発生する。
【0103】
そして、転写ローラの抵抗値が高くなり過ぎると、転写電源の上限電圧に達して十分な転写電流を確保できなくなり、転写不良が発生し易くなる。そこで、実施例4では、転写ローラの抵抗調整モードを実行する。
【0104】
実施例4の画像形成装置は、回転する像担持体と、イオン系導電剤を含むゴム材料の弾性層を有して像担持体に担持されたトナー像を転写させる転写ローラとを備え、所定の直流電圧を転写ローラに印加してトナー像を記録材又は中間転写体に転写させる。
【0105】
そして、画像形成時とは逆方向の電流を転写ローラに流して、画像形成の累積に伴って増加した転写ローラの抵抗値を低下させるために以下の構成を備えている。
(1)転写ローラを像担持体から離間する方向へ移動させる機構と、像担持体から離間する方向に移動した転写ローラに当接して転写ローラを回転駆動する電極と、電極と転写ローラの間に電圧を印加する電源とを備える。
(2)機構と電源を制御して、像担持体から離間する方向に移動して回転する転写ローラに電極を通じて逆方向の電流を流す抵抗調整モードを実行可能な制御手段を備える。
【0106】
実施例5の画像形成装置は、回転する中間転写体と、イオン系導電剤を含むゴム材料の弾性層を有して中間転写体に担持されたトナー像を記録材に転写させる転写ローラとを備え、所定の直流電圧を転写ローラに印加してトナー像を転写させる。
【0107】
そして、画像形成時とは逆方向の電流を転写ローラに流して、画像形成の累積に伴って増加した転写ローラの抵抗値を低下させるために以下の構成を備えている。
(1)転写ローラを中間転写体から離間させる機構と、中間転写体から離間した転写ローラに当接して転写ローラを回転駆動する電極と、電極と転写ローラの間に電圧を印加する電源とを備える。
(2)機構と電源を制御して、中間転写体から離間して回転する転写ローラに電極を通じて逆方向の電流を流す抵抗調整モードを実行可能な制御手段を備える。
【0108】
実施例4、5において、機構、電極、電源、制御手段は、実施例1と同一のものを用いて実施する。中間転写体は、中間転写ベルト又は中間転写ドラムである。転写ローラは、感光ドラムのトナー像を記録材又は中間転写体に転写させるもの(実施例4)と、中間転写体に担持されたトナー像を記録材に転写させるもの(実施例5)とである。
【0109】
<従来技術との比較>
特開平09−325571号公報には、弾性層の上に表面層を有する帯電部材において、該表面層を、フッ化炭素を含有する導電性重合体組成物で形成すること抵抗上昇を抑制する技術が開示されている。
【0110】
また、帯電を安定化させるために、米国特許USP7298993号には、帯電ローラに接触する給電ローラを設け、異なる電圧を印加し、電流の流れの偏りを低減することで通電劣化を抑制する技術が開示されている。
【0111】
しかしながら、特許文献1に記載の技術を用いても、同一方向に電流を流しつづける場合、帯電ローラの長期的な抵抗変動は抑制しきれていない。また、特許文献2に記載の帯電ローラに接触する給電ローラから電流を流す場合、帯電ローラの回転に伴って電流が流れる方向が反転するため、抵抗変動は小さくなるが、十分ではない。
【符号の説明】
【0112】
1 感光ドラム、2 帯電ローラ、3 露光装置、4 現像装置
5 転写ローラ、7 金属ローラ、8 離間機構、9 駆動装置
10 電源基板、11 検知回路、12 制御部、
S1 帯電電源、S2 転写電源
SW1、SW2、SW3、SW4、SW5 スイッチ回路
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯電ローラを用いて像担持体を帯電させる画像形成装置に関し、詳しくは、非画像形成時の帯電ローラに画像形成時とは逆方向の電流を流して、画像形成の累積に伴って上昇した抵抗値を回復させる抵抗調整モードの制御構成に関する。
【背景技術】
【0002】
像担持体の表面を一様に帯電させて静電像を書き込み、静電像にトナーを供給してトナー像に現像し、トナー像を直接又は中間転写体を経て記録材に転写し、加熱加圧によりトナー像を融解して記録材に画像を定着させる画像形成装置が広く用いられている。
【0003】
像担持体の表面を一様に帯電させる方法として、帯電ローラを使用する方法が広く用いられている。帯電ローラを像担持体に当接して回転させ、直流電圧に交流電圧を重畳した振動電圧を帯電ローラに印加して、帯電ローラと像担持体との間で交流放電を伴って像担持体を帯電させている。
【0004】
帯電ローラは、像担持体との当接状態を安定させて放電状態の変動を回避するために表面に抵抗性の弾性層が形成されている。帯電ローラの弾性層は、場所による放電電流のばらつきを少なくして帯電電位の一様性、再現性を高めるために、フッ化炭素を含有する導電性重合体組成物で形成して抵抗上昇を抑制している(特許文献1)。
【0005】
画像形成の累積に伴って、帯電ローラは、トナーとの接触、像担持体に付着した放電生成物との接触、放電による微小な組織の変化、放電による表面の汚染等を通じて弾性層の抵抗値が次第に増加する。帯電ローラの抵抗値の上昇を放置すると、次第に放電電流が目減りして帯電ローラの帯電性能が低下する。抵抗値の上昇に伴って電圧を上昇させると、電力消費が増大し、帯電ムラが発生し易くなり、放電生成物が発生し易くなる等の弊害がある。抵抗値が上昇して電源の能力では足りなくなると、帯電ローラが交換寿命として交換され、画像形成装置のダウンタイムが発生する。
【0006】
そこで、特許文献1では、画像形成ジョブの待機時に、画像形成時とは逆方向の電流を帯電ローラに流して、画像形成の累積に伴って増加した帯電ローラの抵抗値を回復させている。
【0007】
ところで、転写ローラに好適な抵抗範囲の弾性層として、スポンジ材料にイオン導電剤を分散させて弾性層を形成することが提案されている。イオン導電剤を分散させて弾性層の抵抗値を調整した転写ローラでは、画像形成の累積に伴って、イオン導電材の分極が進行して、抵抗値が増大する(特許文献2)。
【0008】
そこで、特許文献2では、転写ローラに関して、非画像形成時に、画像形成時とは逆方向の電流を流す抵抗調整モードをユーザーが選択実行して、画像形成の累積に伴って上昇した転写ローラの抵抗値を回復させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平09−325571号公報
【特許文献2】特開2007−156196号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献2に示される抵抗調整モードの場合、画像形成時に印加する電圧と抵抗調整モードで印加する逆方向の電圧を等しくすると、画像形成に費やした時間と同程度に長い抵抗調整モードを実行しないと元の抵抗値に復帰しない。このため、抵抗調整モードを実行すると画像形成にダウンタイムが発生する。ここで、逆方向の電圧を高めて加速的に回復させるとダウンタイムは解消できるが、像担持体の半導体層を電気的に劣化させる可能性がある。
【0011】
また、像担持体と帯電ローラとを当接させた状態で抵抗調整モードを実行する場合、像担持体を回転させる必要がある。現像装置、転写ローラ、中間転写ベルト等も画像形成時とほぼ同様に回転させて電圧を印加する必要がある。このため、これらの部材の摩耗、劣化、トナー汚染、無駄な電力消費といった懸念がある。
【0012】
本発明は、不必要な機器を停止して、不必要な電圧印加も省略して、像担持体の劣化を招くことなく、抵抗調整モードを加速的に実行して短時間で終了させることができる画像形成装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の画像形成装置は、回転する像担持体と、抵抗性の弾性層を有して前記像担持体に当接して回転する帯電部材とを備え、前記帯電部材に所定の電圧を印加して前記像担持体を帯電させるものである。そして、前記帯電部材を前記像担持体から離間させる機構と、前記像担持体から離間した前記帯電部材に当接する電極と、前記電極と前記帯電部材の間に電圧を印加する電源と、前記機構と前記電源を制御して、前記像担持体から離間させた前記帯電部材に、前記電極を通じて前記像担持体を帯電させる際とは逆方向の電流を流して、画像形成の累積に伴って増加した前記帯電部材の抵抗値を低下させる抵抗調整モードを実行可能な制御手段とを備える。
【発明の効果】
【0014】
本発明の画像形成装置では、帯電部材を像担持体から離間した状態で抵抗調整モードを実行するから、像担持体に電気的な負担がかからず、像担持体を回転させる必要もない。帯電部材と電極との関係で高速回転させて高い電圧を印加して、抵抗調整モードを加速的に実施できる。また、電極部材に、像担持体には付与できない研磨面を設けるなど、抵抗調整モードの最適化をはかることも可能である。
【0015】
したがって、不必要な機器を停止して省電力を図り、不必要な電圧印加も省略して像担持体の劣化を招くことなく、抵抗調整モードを加速的に実行して短時間で終了させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】画像形成装置の構成の説明図である。
【図2】帯電ローラの構成の説明図である。
【図3】帯電ローラの抵抗測定の説明図である。
【図4】実施例1の画像形成装置の動作の説明図である。
【図5】実施例1の画像形成装置のブロック図である。
【図6】実施例1の抵抗調整モードの制御のフローチャートである。
【図7】抵抗調整モードの効果の説明図である。
【図8】実施例2の画像形成装置の動作の説明図である。
【図9】実施例2の画像形成装置のブロック図である。
【図10】実施例2の抵抗調整モードの制御のフローチャートである。
【図11】実施例3の画像形成装置の動作の説明図である。
【図12】実施例3の画像形成装置のブロック図である。
【図13】実施例3の抵抗調整モードの制御のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。本発明は、帯電ローラを像担持体から離間して電極を接触させた状態で抵抗調整モードを実行する限りにおいて、実施形態の構成の一部または全部を、その代替的な構成で置き換えた別の実施形態でも実施できる。
【0018】
したがって、帯電ローラを用いて像担持体を帯電させる画像形成装置であれば、タンデム型/1ドラム型、中間転写型/記録材搬送型/直接転写型の区別なく実施できる。二成分現像剤/一成分現像剤、磁気ブラシ現像/ジャンピング現像、静電像の書き込み方式、転写方式の区別無く実施できる。
【0019】
本実施形態では、トナー像の形成/転写に係る主要部のみを説明するが、本発明は、必要な機器、装備、筐体構造を加えて、プリンタ、各種印刷機、複写機、FAX、複合機等、種々の用途で実施できる。
【0020】
<画像形成装置>
図1は画像形成装置の構成の説明図である。図1に示すように、画像形成装置100は、電子写真プロセス利用、接触帯電方式、反転現像方式、最大通紙サイズがA3サイズ、プロセススピード143mm/sec、のレーザビームプリンタである。画像形成装置100は、感光ドラム1の周囲に、帯電ローラ2、露光装置3、現像装置4、転写ローラ5、ドラムクリーニング装置6を配置している。
【0021】
感光ドラム1は、導電性の素管(ここでは、厚さ2mmのアルミニウムの円筒管)の表面に帯電特性が負極性の有機光導電体(OPC)の感光層を形成しており、図示しない駆動モータに駆動されて矢印R1方向(時計方向)に回転する。感光層は、光の干渉を抑えて上層の接着性を向上させる下引き層と、光電荷発生層と、電荷輸送層の3層を下から順に塗布して構成されている。
【0022】
露光装置3は、帯電ローラ2によって一様な負極性の電位に帯電処理された感光ドラム1の表面を、画像の分解色画像を展開した走査線画像データをON−OFF変調したレーザービームを回転ミラーで走査して、画像の静電像を書き込む。露光装置3は、公知の技術を利用することができ、感光ドラム1の周面に静電像を形成するものであれば良い。
【0023】
現像装置4は、感光ドラム1の静電像をトナー像に現像する。現像装置4は、二成分現像剤を用いた磁気ブラシ現像方式であり、感光ドラム1の表面の露光部分(明部)にトナーが付着して、静電像が反転現像される。現像スリーブ4sには、電源S4から直流電圧(Vdc)と交流電圧(Vac)とを重畳した振動電圧が印加される。現像装置4もまた、公知の技術を利用することができ、静電像を現像剤によって現像できればよい。
【0024】
転写ローラ5は、感光ドラム1に当接して感光ドラム1と転写ローラ5の間にトナー像の転写部T1を形成する。記録材Pは、記録材カセット15から引き出されて分離ローラ16で1枚ずつに分離され、レジストローラ17で待機する。レジストローラ17は、感光ドラム1のトナー像にタイミングを合わせて記録材Pを転写部T1へ給送する。
【0025】
転写電源S2は、トナーの帯電極性とは逆極性である正極性の直流電圧を転写ローラ5に印加して、感光ドラム1のトナー像と重ね合わせて転写部T1を挟持搬送される記録材Pへ、感光ドラム1のトナー像を静電転写させる。転写部T1にも、公知の技術を利用することができ、普通紙、樹脂フィルムなどの記録材Pに感光ドラム1のトナー像を転写することができればよい。
【0026】
ドラムクリーニング装置6は、感光ドラム1にクリーニングブレードを摺擦させて、転写部T1で転写を逃れて感光ドラム1に残った転写残トナーを回収する。ドラムクリーニング装置6は、クリーニングブレードを用いるものに限らず、感光ドラム1の表面を清浄面化するものであれば公知の技術が利用できる。
【0027】
転写部T1の下流側に定着装置18が設置されている。定着装置18は、回転可能な定着ローラ18aに回転可能な加圧ローラ18bを圧接して記録材Pの加熱ニップNを形成しており、加熱ニップNにて記録材Pを挟持搬送しながら、記録材Pの表面に転写されたトナー像を加熱加圧して熱定着する。定着装置18は、記録材Pの表面に転写されたトナーを定着するものであれば公知の技術を利用できる。
【0028】
<帯電ローラ>
図2は帯電ローラの構成の説明図である。図3は帯電ローラの抵抗測定の説明図である。
【0029】
図2に示すように、帯電ローラ2は、芯金(支持軸部材)2aの外周に、下層2bと中間層2cと表層2dを下から順次に積層した三層構成である。下層2bは、発泡スポンジ層で構成される弾性層であって、自在に変形して帯電ローラ2を感光ドラム1の周面に密着させる。中間層2cは、表面弾性を調整する弾性層である。表層2dは、感光ドラム1上にピンホール等の欠陥があってもリークが発生するのを防止するために設けている保護層である。
【0030】
帯電ローラ2の詳細な仕様は以下の通りである。帯電ローラ2は、回転軸線方向に沿った長さが320mm、総抵抗は1×106Ωである。である。芯金2aは、直径8mmのステンレス丸棒である。
【0031】
下層2bは、イオン導電剤分散の発泡EPDM(エチレン−プロピレン−ジエン)ゴム材料である。発泡EPDM材料の比重0.5g/cm3、体積抵抗値1×105Ωcm、層厚3.0mmである。中間層2cは、イオン導電剤分散のNBR系ゴム材料である。NBR系ゴム材料の体積抵抗値1×103Ωcm、層厚700μmである。
【0032】
表層2dは、フッ素化合物のトレジン樹脂に酸化錫とカーボンを分散したトナーの付着しにくい離型層である。表層2dの体積抵抗値1×108Ωcm、表面粗さ(JIS規格10点平均表面粗さRa)1.5μm、層厚10μmである。
【0033】
図3に示すように、帯電ローラ2の総抵抗は、感光ドラム(1)と同一外観形状に形成した金属ローラMを用いて測定した。電流計21と電圧可変の電源22を用いた。金属ローラMに、帯電ローラ2を片側500N、総圧1000Nの荷重で押し付けた状態で、金属ローラMを15rpmで回転し、直流電流50μAを印加した時の電圧値をモニターして総抵抗の抵抗値を求めた。測定環境は気温23℃、相対湿度50%である。
【0034】
帯電電源S1は、直流電圧(Vdc)に交流電圧(Vac)を重畳した振動電圧を発生して帯電ローラ2の芯金2aに印加する。これにより、感光ドラム1の周面が所定の極性、一様な電位に接触帯電処理される。
【0035】
図1に示すように、帯電電源S1は、画像形成時には、帯電ローラ2の芯金に、直流電圧(−500V)に交流電圧(周波数2kHz、ピーク間電圧1600Vpp)を重畳した振動電圧を出力する。これにより、感光ドラム1の周面は、一様な−500Vの暗部電位VDに帯電される。
【0036】
帯電ローラ2は、従来から使用されている電子導電性ローラ又はイオン導電性ローラを採用することができる。電子導電性ローラは、EPDM、ウレタンゴム、シリコーンゴム、ポリオレフィンゴム等の一般エラストマーに、カーボンブラック等の導電性粉末や導電性金属酸化物などの電子電導性系導電剤を分散させたものである。電子電導性系導電剤としては、カーボンブラック、グラファイト、アルミニュウム、銅合金などの金属または合金が用いられる。あるいは、酸化錫、酸化亜鉛、チタン酸カリム、酸化錫−酸化インジウムまたは酸化錫−酸化アンチモン複合酸化物などの金属酸化物などの1種または2種以上の微粉末が用いられる。中でも、コストの点でカーボンブラックが好適である。
【0037】
イオン導電性ロールは、EPDM、ウレタンゴム、シリコーンゴム、ポリオレフィンゴム等の一般エラストマーにイオン電導性導電剤を分散させて導電性を持たせたものである。発泡性のゴム材料の場合、イオン導電剤が0.001〜10%、好ましくは0.003〜2%添加されることにより、体積抵抗値を1×106〜1×1012Ωcmに調整可能である。体積抵抗値を1×103〜1×106Ωcmに下げるには、さらに抵抗制御剤を添加してもよい。
【0038】
イオン電導性導電剤としては、スルホン酸塩やアンモニア塩など、また、カチオン系、アニオン系、ノニオン系などの各種の界面活性剤を挙げることができる。好ましいイオン導電剤としては金属塩及び4級アンモニウム塩が挙げられる。金属塩としてはI族、II族の金属塩が挙げられ、Li、Na、Kの塩が好ましい。金属塩を構成するアニオンとしてはハロゲン(F、Cl、Br、I)、チオシアン酸イオン、過塩素酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン及びフルオロホウ酸イオン、リン酸イオン等である。4級アンモニウム塩としては、カルボン酸(アジピン酸、フタル酸、アゼライン酸等)、リン酸、ホウ酸、スルホン酸(アリールスルホン酸等)、ホウフッ化水素酸、過塩素酸等のアンモニウム塩が挙げられる。
【0039】
帯電ローラ2の弾性層としての発泡層の厚みは0.5mm〜100mmとすることができる。発泡層にポリウレタン注入を行う場合は発泡層の厚みは5〜10mmにすることが好ましい。
【0040】
ところで、帯電ローラ2の表層2dは、高電界が印加されるだけでなく、感光ドラム1との間の放電に伴って発生する電離気体やオゾン及び電子などに曝される。このような厳しい環境下では、通常、表層2dの劣化が起き、電気抵抗値が次第に上昇するという現象が見られる。
【0041】
また、イオン電導性導電剤を添加した帯電ローラ2では、通電することによって、帯電ローラ2の直径方向にイオン導電物質の偏りが生じてしまうため、帯電ローラ2の総抵抗(図3)が次第に上昇する現象が顕著である。画像形成装置100において、帯電ローラ2に流れる電流の方向が一方向であると、帯電ローラ2の総抵抗が増える速度が高くなる。帯電ローラ2の総抵抗があるレベルに達すると、交流電界による正常な放電が阻害されて帯電ムラが発生し、出力画像の濃度むらや、白地かぶり画像等の不具合が発生し易くなるため、帯電ローラ2が新品交換される。
【0042】
しかし、画像形成装置100において、帯電ローラ2に流れる電流の方向が両方向であると、帯電ローラ2の総抵抗が増える速度が遅くなる。画像形成時に印加する直流電圧と逆方向の直流電圧を印加していると、帯電ローラ2の総抵抗は低下して回復する傾向となる。
【0043】
そこで、以下の実施例では、帯電ローラ2を感光ドラム1から離間させる離間機構8と、帯電ローラ2が感光ドラム1から離間した時に接触する金属ローラ7とを付設した。離間機構8によって帯電ローラ2を感光ドラム1から離間して回転させた状態で、帯電ローラ2と金属ローラ7との間に電圧を印加して、画像形成中とは逆方向の電流を帯電ローラ2に流している。これにより、帯電ローラ2の長期抵抗上昇を抑制して帯電性能を安定化させ、出力画像の品質を長期間に渡って高く保つことができる。電流の流れる方向が両方向であると帯電ローラ2の総抵抗の変動が小さくなるため、帯電ローラ2の交換寿命も伸びている。
【0044】
<実施例1>
図4は実施例1の画像形成装置の動作の説明図である。図5は実施例1の画像形成装置のブロック図である。図6は実施例1の抵抗調整モードの制御のフローチャートである。図7は抵抗調整モードの効果の説明図である。
【0045】
図4の(a)に示すように、帯電部材の一例である帯電ローラ2は、抵抗性の弾性層を有して像担持体の一例である感光ドラム1に当接して回転する。帯電ローラ2の弾性層は、イオン系導電剤を含むゴム材料から形成されている。帯電ローラ2は、感光ドラム1を帯電させる際とは逆方向の平均電流を流すことにより、画像形成の累積に伴って増加した抵抗値を低下させることが可能である。
【0046】
機構の一例である離間機構8は、帯電ローラ2を感光ドラム1から離間させる。離間機構8は、感光ドラム1と帯電ローラ2とを離間させる。
【0047】
電極の一例である金属ローラ7は、感光ドラム1から離間した帯電ローラ2に当接する。金属ローラ7は、離間機構8によって帯電ローラ2が感光ドラム1から離間した時に帯電ローラ2に接触する。
【0048】
電源の一例である転写電源S1は、金属ローラ7と帯電ローラ2の間に電圧を印加する。帯電電源S1は、感光ドラム1を帯電させる際には直流電圧に交流電圧を重畳した振動電圧を出力するが、抵抗調整モードでは、直流電圧のみ出力する。
【0049】
電源基板10は、帯電電源S1とスイッチ回路SW1、SW2とを同一基板上に配置する。帯電電源S1は、帯電ローラ2に所定の電圧を印加して感光ドラム1を帯電させる。スイッチ回路SW1、SW2は、帯電電源S1の出力を金属ローラ7と帯電ローラ2と感光ドラム1との間で切り替えて画像形成時とは逆方向の電流を帯電ローラ2に流す。
【0050】
制御手段の一例である制御部12は、抵抗調整モードを実行可能である。抵抗調整モードは、離間機構8と帯電電源S1を制御して、感光ドラム1から離間させた帯電ローラ2に金属ローラ7を通じて画像形成時とは逆方向の電流を流す。抵抗調整モードは、画像形成ジョブの終了後、あるいは、画像形成を中断して、感光ドラム1、現像装置4、定着装置18等を停止して最小限の構成に電力供給して実行される。
【0051】
離間機構8は、感光ドラム1と帯電ローラ2を離間させるバネ8Bを有する。離間機構8は、帯電ローラ2の端部をそれぞれ昇降させるねじ機構を含み、モータ8Mを順作動させると、ねじの突き出しが短くなってバネ8Bが圧縮されて感光ドラム1に帯電ローラ2が接触する。また、モータ8Mを逆作動させると、ねじの突き出しが長くなってバネ8Bが伸張し、感光ドラム1から帯電ローラ2が離間する。
【0052】
金属ローラ7は、帯電ローラ2が感光ドラム1と離間した時に、帯電ローラ2と接触するように配置された直径6mmの回転自由なアルミ丸棒である。金属ローラ7は、導電性の部材であればよく、形状は回転自由な円筒状であるのが望ましい。
【0053】
駆動装置9は、帯電ローラ2が感光ドラム1と離間した時に、帯電ローラ2を回転させるモータであって、画像形成時に帯電ローラ2の回転の負荷にならないように、ワンウエイクラッチを介して帯電ローラ2に歯付きベルトで連結されている。駆動装置9は、このような構成に限らず、感光ドラム1から離間した帯電ローラ2を回転駆動できればよい。
【0054】
帯電電源S1は、高圧電源であり、電源基板10の上に設けたスイッチ回路SW1、SW2を介して帯電ローラ2と金属ローラ7に電気的に接続されている。電源基板10には、帯電電源S1、転写電源S2、現像電源(S4:図1)が搭載され、帯電ローラ2と金属ローラ7の間に流れる電流を検知する検知回路11を内蔵している。
【0055】
制御部12は、スイッチ回路SW1、SW2を切り替えて、任意の方向の電圧を、帯電ローラ2または金属ローラ7のどちらかに印加することができる。制御部12は、検知回路11の出力に基づいて、任意の電流を帯電ローラ2に流すことができる。
【0056】
図5に示すように、制御部12は、記憶媒体12bの各種プログラムに従って画像形成装置100を制御する。記憶媒体12bは、画像形成装置100を動作させるための制御プログラム、エラー処理プログラム、各種データ等を格納している。実施例1の抵抗調整モードは、すべてこのプログラムによる動作である。
【0057】
図5を参照して図6に示すように、制御部12は、5千枚プリントするごとに帯電ローラ2の抵抗を検知して、検知回路11で検知された帯電ローラ2に流れる電流を記憶媒体12bに記録し、適切なタイミングで抵抗調整モードに移行する。
【0058】
制御部12は、5千枚プリントするごとに抵抗検知タイミングであると判断する(ST101のYes)。そして、図4の(b)に示すように離間機構8を作動させて帯電ローラ2を感光ドラム1から離間させ、スイッチ回路SW1、SW2を切り替える(ST102)。
【0059】
制御部12は、5千枚プリントするごとに、検知回路11の出力に基づいて帯電ローラ2の抵抗値を算出する(ST103)。抵抗値の測定時、金属ローラ7に帯電ローラ2を総圧1000Nの荷重で押し付けて金属ローラ7を15rpmで回転させる。帯電ローラ2を40rpmの回転速度で回転させ、帯電電源S1から直流電圧のみ出力させる。制御部12は、検知回路11の出力が直流電流50μAとなるように、帯電電源S1が出力する直流電圧値を調整する。制御部12は、検知回路11によって直流電流50μAが検出される時の帯電電源S1の出力電圧値(直流電圧)をサンプリングして帯電ローラ2の抵抗値(総抵抗)を求める。
【0060】
制御部12は、記録媒体12bから帯電ローラ2の初期抵抗値を読み込み、検知された帯電ローラ2の抵抗値から、抵抗変動率ΔRを計算する(ST104)。帯電ローラ2の現在の抵抗値を初期抵抗値で割り算した数値(現在の抵抗値/初期抵抗値)を抵抗変動率ΔRとして定義する。測定した現在の抵抗値の初期抵抗値に対する変動率(n枚プリント後の抵抗値/初期抵抗値)を抵抗変動率ΔRとしている。
【0061】
ΔRが5より小さければ(ST104のYes)、帯電ローラ2の抵抗は、それほど上昇しておらず、帯電電源S1の適正使用範囲で、感光ドラム1の表面を帯電するために必要な電圧を確保できるから、帯電ローラ2の抵抗調整は行わない。したがって、離間機構8を逆作動させて帯電ローラ2を感光ドラム1に接触させ(ST107)、画像形成を再開する(ST108)。
【0062】
しかし、抵抗変動率ΔRが5以上の場合(ST104のNo)、帯電ローラ2の抵抗調整モードを行う(ST105)。帯電ローラ2の抵抗が上昇して抵抗変動率ΔRが5を超えると、帯電電源S1の適正使用範囲で感光ドラム1の表面を帯電するために必要な電圧が確保できなくなり、帯電不良による濃度ムラなどが発生するからである。
【0063】
抵抗調整モード(ST105)は、金属ローラ7に、帯電ローラ2を総圧1000Nの荷重で押し付けた状態で、40rpmで回転させながら、金属ローラ7に直流電流50μAを1分間印加する。帯電ローラ2に、画像形成中に流れる電流(芯金から表面)を反転して逆方向(表面から芯金)の電流を流すことで、帯電ローラ2の弾性層の組織内で偏ったイオン導電物質を分散して均一化する。
【0064】
制御部12は、その後、再び帯電ローラ2の抵抗値を算出する(ST103)。制御部12は、再び抵抗変動率ΔRを計算して(ST104)、算出した値によって抵抗調整モードを継続するか(ST105)、画像形成に復帰するか(ST107)を決定する。
【0065】
図7は、実施例1の抵抗調整モードを行った場合と、抵抗調整モードを行わない比較例1とで帯電ローラ2の抵抗変動率ΔRを比較している。
【0066】
比較例1では、2万枚のプリントで帯電ローラ2の抵抗値が1×106Ωから1×107Ωに変動しているので、2万枚時点の抵抗変動率は(1×106)/(1×107)=10である。測定環境は23℃、50%とする。レーザービームで露光し、トナーで現像する環境も温度23℃、相対湿度50%とする。
【0067】
抵抗調整モードを行わない比較例1では、1万5千枚をプリントした頃から抵抗変動率ΔRが5を超えて、帯電不良による出力画像の濃度ムラなどが発生した。これに対して、抵抗調整モードを行った実施例1では、帯電ローラ2の抵抗値は、ほとんど上昇せず、帯電不良による出力画像の濃度ムラは発生しなかった。
【0068】
実施例1によれば、抵抗調整モードを行うことで、帯電ローラ2の抵抗変動に伴う濃度ムラなどの画像不良のない良質な画像を最後まで出力できた。実施例1によれば、帯電ローラ2に抵抗変動が発生した場合に、抵抗調整モードを実行して抵抗変動を解消することができる。これにより、出力画像の濃度ムラや、白地かぶり画像等を発生させることなく、長期間に渡って良質な画像を出力することができる。
【0069】
なお、実施例1では、検知回路11を用いて帯電ローラ2の抵抗値の増加量を検出可能であって、帯電ローラ2の抵抗値の増加量が大きいほど、抵抗調整モードの実行回数、実行時間を増した。しかし、抵抗調整モードは、前回の抵抗調整モード終了時に比較した現在までの抵抗値の増加量が大きいほど転写電源S1から帯電ローラ2に印加する電流を大きくしてもよい。電流を大きくすることで加速的に抵抗調整モードを実行できるからである。
【0070】
<実施例2>
図8は実施例2の画像形成装置の動作の説明図である。図9は実施例2の画像形成装置のブロック図である。図10は実施例2の抵抗調整モードの制御のフローチャートである。
【0071】
図8の(a)に示すように、実施例2は、スイッチ回路SW3の配置と切り替え操作以外は実施例1と同一に構成され、実質的に同一に制御される。したがって、実施例1との相違点のみを説明して、重複する説明を省略する。
【0072】
図8の(b)に示すように、駆動装置9は、帯電ローラ2が感光ドラム1と離間した時に、金属ローラ7を回転させる。駆動装置9は、金属ローラ7と歯付きベルトによって連結されている。
【0073】
金属ローラ7は、導電材料のローラ部材で構成され、抵抗調整モードでは、金属ローラ7がモータの一例である駆動装置9により駆動されて帯電ローラ2を回転駆動する。金属ローラ7は、電源S1と電気的に接続されており、電源S1は、画像形成時も、金属ローラ7に電圧を印加することで、帯電ローラ2に電流を流すことができる。実施例2では、電源S1は、金属ローラ7に負極性の直流電圧1500Vを印加する。
【0074】
帯電ローラ2は、スイッチ回路SW3を介して接地電位に接続可能である。帯電ローラ2が感光ドラム1と離間した時、制御部12は、帯電ローラ2を電気的に接地するようにスイッチ回路SW3を作動させる。
【0075】
図9を参照して図10に示すように、制御部12は、5千枚プリントするごとに抵抗検知タイミングと判断する(ST201のYes)。制御部12は、離間機構8を作動させて帯電ローラ2を感光ドラム1から離間させる(ST202)。
【0076】
制御部12は、実施例1と同じやり方で帯電ローラ2に印加する電圧を測定して、帯電ローラ2の抵抗値を算出する(ST203)。制御部12は、実施例1と同じやり方で記録媒体12Bから帯電ローラ2の初期抵抗値を読み込んで抵抗変動率ΔRを算出して5と比較する(ST204)。
【0077】
制御部12は、抵抗変動率ΔRが5以上の場合(ST204のNo)、抵抗調整モードを行う(ST208)。上述したように、帯電ローラ2の抵抗値が上昇して抵抗変動率ΔRが5を超えると、帯電電源S1では、感光ドラム1の表面を帯電するために必要な電圧を確保できなくなり、帯電不良による出力画像の濃度ムラなどが発生するからである。
【0078】
抵抗調整モードでは、駆動装置9によって15rpmで回転する金属ローラ7に帯電ローラ2を総圧1000Nの荷重で押し付けた状態で、金属ローラ7に直流電流50μAを1分間印加する。これにより、帯電ローラ2には、画像形成中に流れる電流(芯金から表面)の逆方向の電流(表面から芯金)が流れて、帯電ローラ2の弾性層の組織内で偏ったイオン導電物質を拡散して均一化することができる。
【0079】
制御部12は、その後、再び帯電ローラ2の抵抗値を算出して(ST203)、抵抗変動率ΔRが5未満になるまで(ST204のNo)、抵抗調整モードの処理を繰り返す(ST203、204、208)。
【0080】
制御部12は、抵抗変動率ΔRが5未満になると、抵抗調整モードを終了して画像形成に復帰する。抵抗変動率ΔRが5より小さくなると(ST204のYes)、帯電ローラ2を感光ドラム1に接触させて(ST209)、画像形成を実行する(ST210)。
【0081】
実施例2の抵抗調整モードでは、帯電ローラ2の弾性層に流す電流の方向を、芯金から表面方向、または表面から芯金方向のどちらでも選択できるため、イオン導電物質などの偏りによる抵抗変動を低減することができる。さらに、帯電ローラ2の抵抗変動が大きくなった時にも、抵抗変動を補正することができる。よって、帯電ローラの抵抗変動に伴う画像不良のない良質な画像を形成できた。
【0082】
<実施例3>
図11は実施例3の画像形成装置の動作の説明図である。図12は実施例3の画像形成装置のブロック図である。図13は実施例3の抵抗調整モードの制御のフローチャートである。
【0083】
図11の(a)に示すように、実施例3は、トナー像の転写に用いる転写電源S2を用いて帯電ローラ2の抵抗調整モードを実行する以外は、実施例1と同一に構成され、実質的に同一に制御される。したがって、実施例1との相違点のみを説明して、重複する説明を省略する。
【0084】
実施例3では、金属ローラ7は、導電材料のローラ部材で構成され、抵抗調整モードでは、金属ローラ7がモータの一例である駆動装置9により駆動されて帯電ローラ2を回転駆動する。
【0085】
実施例3では、電源基板10は、帯電電源S1と転写電源S2とスイッチ回路SW4、SW5とを同一基板上に配置する。帯電電源S1は、帯電ローラ2に所定の電圧を印加して感光ドラム1を帯電させる。転写電源S2は、感光ドラム1に形成されたトナー像の転写部T1に配置された転写部材の一例である転写ローラ5に直流電圧を印加する。スイッチ回路SW4、SW5は、転写電源S2の出力を帯電ローラ2と転写ローラ5との間で切り替えて画像形成時とは逆方向の電流を帯電ローラ2に流す。
【0086】
抵抗調整モードは、画像形成ジョブの終了後、あるいは、画像形成を中断して、感光ドラム1、現像装置4、定着装置18等を停止して最小限の構成に電力供給して実行される。
【0087】
図11の(b)に示すように、帯電ローラ2は、離間機構8によって感光ドラム1から離間することができる。駆動装置9は、帯電ローラ2が感光ドラム1から離間した時に金属ローラ7を回転させるモータであって、金属ローラ7と歯付きベルトによって連結されている。
【0088】
帯電ローラ2は、スイッチ回路SW4、SW5を切り替えて、帯電電源S1または転写電源S2と電気的に接続される。転写電源S2は、スイッチ回路SW4、SW5を切り替えて、帯電ローラ2または帯電ローラ2と電気的に接続できるように構成されている。
【0089】
画像形成時には、転写電源S2は、スイッチ回路SW5を通じて転写ローラ5と電気的に接続され、転写ローラ5に正極性の電圧を印加する。
【0090】
抵抗調整モード時には、転写電源S2は、スイッチ回路SW4、SW5を通じて帯電ローラ2と電気的に接続され、帯電ローラ2に正極性の電圧を印加する。
【0091】
図12を参照して図13に示すように、制御部12は、5千枚プリントするごとに抵抗検知タイミングと判断する(ST301のYes)。制御部12は、離間機構8を作動させて帯電ローラ2を感光ドラム1から離間させる(ST302)。
【0092】
制御部12は、実施例1と同じやり方で帯電ローラ2に印加する電圧を測定して、帯電ローラ2の抵抗値を算出する(ST303)。制御部12は、実施例1と同じやり方で記録媒体12Bから帯電ローラ2の初期抵抗値を読み込んで抵抗変動率ΔRを算出して5と比較する(ST304)。
【0093】
制御部12は、ΔRが5以上であれば(ST304のNo)、帯電ローラ2の抵抗調整モードを実行する(ST308)。帯電ローラ2の抵抗値が上昇して抵抗変動率ΔRが5以上になると、上述したように出力画像の濃度ムラ等の不都合が発生し易くなるからである。
【0094】
抵抗調整モードでは、駆動装置9によって15rpmで回転する金属ローラ7に帯電ローラ2を総圧1000Nの荷重で押し付けた状態で、金属ローラ7に直流電流50μAを1分間印加する。これにより、帯電ローラ2には、画像形成中に流れる電流(芯金から表面)の逆方向の電流(表面から芯金)が流れて、帯電ローラ2の弾性層の組織内で偏ったイオン導電物質を拡散して均一化することができる。
【0095】
制御部12は、その後、再び帯電ローラ2の抵抗値を算出して(ST303)、抵抗変動率ΔRが5未満になるまで(ST304のNo)、抵抗調整モードの処理を繰り返す(ST303、304、308)。
【0096】
制御部12は、抵抗変動率ΔRが5未満になると、抵抗調整モードを終了して画像形成に復帰する。抵抗変動率ΔRが5より小さく(ST304のYes)、0.5より大きければ(ST305のYes)、帯電ローラ2を感光ドラム1に接触させて(ST309)、画像形成を実行する(ST310)。
【0097】
一方、制御部12は、抵抗変動率ΔRが0.5以下であれば(ST305のNo)、帯電ローラ2の抵抗値を大きくする方向に抵抗調整モードを実行する(ST307)。帯電ローラ2の抵抗が低過ぎると、感光ドラム1との接触点に電流が集中して、感光ドラム1に対して過剰に放電したり、感光ドラム1の半導体の性質が部分的に失われて電流リークのスポットが発生したりする。
【0098】
帯電ローラ2の抵抗値を大きくする抵抗調整モード(ST307)は、回転する金属ローラ7に帯電ローラ2を総圧1000Nの荷重で押し付けた状態で、帯電ローラ2に画像形成時と同じ方向の直流電流100μAを1分間印加する。
【0099】
このとき、スイッチ回路SW4、SW5を切り替えて転写電源S1が帯電ローラ2に接続され、帯電電源S1は、画像形成時と同じく負極性の直流電圧を出力する。画像形成中に帯電ローラ2に流れる電流より大きな電流を同じ方向に流すことで、弾性層の組織内で意図的にイオン導電物質を偏らせて抵抗値を高める。
【0100】
制御部12は、抵抗変動率ΔRが0.5より大きくなるまで帯電ローラ2の抵抗値を大きくする抵抗調整モード(ST307)を繰り返す(ST303、304、305、307)。
【0101】
実施例3の抵抗調整モードでは、帯電ローラ2の弾性層に流す電流の方向を、芯金から表面方向、または表面から芯金方向のどちらでも選択できるため、イオン導電物質などの偏りによる抵抗変動を低減することができる。さらに、帯電ローラ2の抵抗変動が大きくなった時にも、抵抗変動を補正することができる。よって、帯電ローラの抵抗変動に伴う画像不良のない良質な画像を形成できた。
【0102】
<実施例4、5>
実施例1、2、3では、帯電ローラの抵抗調整モードについて説明した。しかし、特許文献2に示されるように、イオン導電物質を分散させたゴム材料で弾性層を構成した転写ローラにおいても、画像形成の累積に伴う抵抗値の上昇は発生する。
【0103】
そして、転写ローラの抵抗値が高くなり過ぎると、転写電源の上限電圧に達して十分な転写電流を確保できなくなり、転写不良が発生し易くなる。そこで、実施例4では、転写ローラの抵抗調整モードを実行する。
【0104】
実施例4の画像形成装置は、回転する像担持体と、イオン系導電剤を含むゴム材料の弾性層を有して像担持体に担持されたトナー像を転写させる転写ローラとを備え、所定の直流電圧を転写ローラに印加してトナー像を記録材又は中間転写体に転写させる。
【0105】
そして、画像形成時とは逆方向の電流を転写ローラに流して、画像形成の累積に伴って増加した転写ローラの抵抗値を低下させるために以下の構成を備えている。
(1)転写ローラを像担持体から離間する方向へ移動させる機構と、像担持体から離間する方向に移動した転写ローラに当接して転写ローラを回転駆動する電極と、電極と転写ローラの間に電圧を印加する電源とを備える。
(2)機構と電源を制御して、像担持体から離間する方向に移動して回転する転写ローラに電極を通じて逆方向の電流を流す抵抗調整モードを実行可能な制御手段を備える。
【0106】
実施例5の画像形成装置は、回転する中間転写体と、イオン系導電剤を含むゴム材料の弾性層を有して中間転写体に担持されたトナー像を記録材に転写させる転写ローラとを備え、所定の直流電圧を転写ローラに印加してトナー像を転写させる。
【0107】
そして、画像形成時とは逆方向の電流を転写ローラに流して、画像形成の累積に伴って増加した転写ローラの抵抗値を低下させるために以下の構成を備えている。
(1)転写ローラを中間転写体から離間させる機構と、中間転写体から離間した転写ローラに当接して転写ローラを回転駆動する電極と、電極と転写ローラの間に電圧を印加する電源とを備える。
(2)機構と電源を制御して、中間転写体から離間して回転する転写ローラに電極を通じて逆方向の電流を流す抵抗調整モードを実行可能な制御手段を備える。
【0108】
実施例4、5において、機構、電極、電源、制御手段は、実施例1と同一のものを用いて実施する。中間転写体は、中間転写ベルト又は中間転写ドラムである。転写ローラは、感光ドラムのトナー像を記録材又は中間転写体に転写させるもの(実施例4)と、中間転写体に担持されたトナー像を記録材に転写させるもの(実施例5)とである。
【0109】
<従来技術との比較>
特開平09−325571号公報には、弾性層の上に表面層を有する帯電部材において、該表面層を、フッ化炭素を含有する導電性重合体組成物で形成すること抵抗上昇を抑制する技術が開示されている。
【0110】
また、帯電を安定化させるために、米国特許USP7298993号には、帯電ローラに接触する給電ローラを設け、異なる電圧を印加し、電流の流れの偏りを低減することで通電劣化を抑制する技術が開示されている。
【0111】
しかしながら、特許文献1に記載の技術を用いても、同一方向に電流を流しつづける場合、帯電ローラの長期的な抵抗変動は抑制しきれていない。また、特許文献2に記載の帯電ローラに接触する給電ローラから電流を流す場合、帯電ローラの回転に伴って電流が流れる方向が反転するため、抵抗変動は小さくなるが、十分ではない。
【符号の説明】
【0112】
1 感光ドラム、2 帯電ローラ、3 露光装置、4 現像装置
5 転写ローラ、7 金属ローラ、8 離間機構、9 駆動装置
10 電源基板、11 検知回路、12 制御部、
S1 帯電電源、S2 転写電源
SW1、SW2、SW3、SW4、SW5 スイッチ回路
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転する像担持体と、抵抗性の弾性層を有して前記像担持体に当接して回転する帯電部材とを備え、前記帯電部材に所定の電圧を印加して前記像担持体を帯電させる画像形成装置において、
前記帯電部材を前記像担持体から離間させる機構と、
前記像担持体から離間した前記帯電部材に当接する電極と、
前記電極と前記帯電部材の間に電圧を印加する電源と、
前記機構と前記電源を制御して、前記像担持体から離間させた前記帯電部材に、前記電極を通じて前記像担持体を帯電させる際とは逆方向の電流を流して、画像形成の累積に伴って増加した前記帯電部材の抵抗値を低下させる抵抗調整モードを実行可能な制御手段と、を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記電源は、前記帯電部材に所定の電圧を印加して前記像担持体を帯電させる帯電電源と、前記帯電電源の出力を前記電極と前記帯電部材と前記像担持体との間で切り替えて前記逆方向の電流を前記帯電部材に流すスイッチ回路とが同一基板上に配置され、
前記帯電電源は、前記像担持体を帯電させる際には直流電圧に交流電圧を重畳した振動電圧を出力するが、前記抵抗調整モードでは、直流電圧のみ出力することを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記電源は、前記像担持体に形成されたトナー像の転写部に配置された転写部材に直流電圧を印加する転写電源と、前記転写電源の出力を前記電極と前記帯電部材と前記転写部材との間で切り替えて前記逆方向の電流を前記帯電部材に流すスイッチ回路と、前記帯電部材に所定の電圧を印加して前記像担持体を帯電させる帯電電源とが同一基板上に配置されることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記電極は、導電材料のローラ部材で構成され、前記抵抗調整モードでは、前記電極がモータにより駆動されて前記帯電部材を回転駆動することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記弾性層は、イオン系導電剤を含むゴム材料から形成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記抵抗調整モードは、画像形成ジョブの終了後、像担持体を停止して実行されることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記帯電部材の抵抗値の増加量を検出可能な検知回路を備え、
前記抵抗調整モードは、前回の抵抗調整モード終了時に比較した現在までの抵抗値の増加量が大きいほど前記帯電部材に電流を流す時間を長くするか、又は前記電源から前記帯電部材に印加する電流を大きくすることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
回転する像担持体と、イオン系導電剤を含むゴム材料の弾性層を有して前記像担持体に担持されたトナー像を転写させる転写ローラと、を備え、
所定の直流電圧を前記転写ローラに印加してトナー像を転写させる際とは逆方向の電流を前記転写ローラに流して、画像形成の累積に伴って増加した前記転写ローラの抵抗値を低下させることが可能な画像形成装置において、
前記転写ローラを、前記像担持体から離間する方向へ移動させる機構と、
前記像担持体から離間する方向に移動した前記転写ローラに当接する電極と、
前記電極と前記転写ローラの間に電圧を印加する電源と、
前記機構と前記電源を制御して、前記像担持体から離間する方向に移動して回転する前記転写ローラに前記電極を通じて前記逆方向の電流を流す抵抗調整モードを実行可能な制御手段と、を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
回転する中間転写体と、イオン系導電剤を含むゴム材料の弾性層を有して前記中間転写体に担持されたトナー像を記録材に転写させる転写ローラと、を備え、
所定の直流電圧を前記転写ローラに印加してトナー像を転写させる際とは逆方向の電流を前記転写ローラに流して、画像形成の累積に伴って増加した前記転写ローラの抵抗値を低下させることが可能な画像形成装置において、
前記転写ローラを、前記中間転写体から離間させる機構と、
前記中間転写体から離間した前記転写ローラに当接する電極と、
前記電極と前記転写ローラの間に電圧を印加する電源と、
前記機構と前記電源を制御して、前記中間転写体から離間して回転する前記転写ローラに前記電極を通じて前記逆方向の電流を流す抵抗調整モードを実行可能な制御手段と、を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項1】
回転する像担持体と、抵抗性の弾性層を有して前記像担持体に当接して回転する帯電部材とを備え、前記帯電部材に所定の電圧を印加して前記像担持体を帯電させる画像形成装置において、
前記帯電部材を前記像担持体から離間させる機構と、
前記像担持体から離間した前記帯電部材に当接する電極と、
前記電極と前記帯電部材の間に電圧を印加する電源と、
前記機構と前記電源を制御して、前記像担持体から離間させた前記帯電部材に、前記電極を通じて前記像担持体を帯電させる際とは逆方向の電流を流して、画像形成の累積に伴って増加した前記帯電部材の抵抗値を低下させる抵抗調整モードを実行可能な制御手段と、を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記電源は、前記帯電部材に所定の電圧を印加して前記像担持体を帯電させる帯電電源と、前記帯電電源の出力を前記電極と前記帯電部材と前記像担持体との間で切り替えて前記逆方向の電流を前記帯電部材に流すスイッチ回路とが同一基板上に配置され、
前記帯電電源は、前記像担持体を帯電させる際には直流電圧に交流電圧を重畳した振動電圧を出力するが、前記抵抗調整モードでは、直流電圧のみ出力することを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記電源は、前記像担持体に形成されたトナー像の転写部に配置された転写部材に直流電圧を印加する転写電源と、前記転写電源の出力を前記電極と前記帯電部材と前記転写部材との間で切り替えて前記逆方向の電流を前記帯電部材に流すスイッチ回路と、前記帯電部材に所定の電圧を印加して前記像担持体を帯電させる帯電電源とが同一基板上に配置されることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記電極は、導電材料のローラ部材で構成され、前記抵抗調整モードでは、前記電極がモータにより駆動されて前記帯電部材を回転駆動することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記弾性層は、イオン系導電剤を含むゴム材料から形成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記抵抗調整モードは、画像形成ジョブの終了後、像担持体を停止して実行されることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記帯電部材の抵抗値の増加量を検出可能な検知回路を備え、
前記抵抗調整モードは、前回の抵抗調整モード終了時に比較した現在までの抵抗値の増加量が大きいほど前記帯電部材に電流を流す時間を長くするか、又は前記電源から前記帯電部材に印加する電流を大きくすることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
回転する像担持体と、イオン系導電剤を含むゴム材料の弾性層を有して前記像担持体に担持されたトナー像を転写させる転写ローラと、を備え、
所定の直流電圧を前記転写ローラに印加してトナー像を転写させる際とは逆方向の電流を前記転写ローラに流して、画像形成の累積に伴って増加した前記転写ローラの抵抗値を低下させることが可能な画像形成装置において、
前記転写ローラを、前記像担持体から離間する方向へ移動させる機構と、
前記像担持体から離間する方向に移動した前記転写ローラに当接する電極と、
前記電極と前記転写ローラの間に電圧を印加する電源と、
前記機構と前記電源を制御して、前記像担持体から離間する方向に移動して回転する前記転写ローラに前記電極を通じて前記逆方向の電流を流す抵抗調整モードを実行可能な制御手段と、を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
回転する中間転写体と、イオン系導電剤を含むゴム材料の弾性層を有して前記中間転写体に担持されたトナー像を記録材に転写させる転写ローラと、を備え、
所定の直流電圧を前記転写ローラに印加してトナー像を転写させる際とは逆方向の電流を前記転写ローラに流して、画像形成の累積に伴って増加した前記転写ローラの抵抗値を低下させることが可能な画像形成装置において、
前記転写ローラを、前記中間転写体から離間させる機構と、
前記中間転写体から離間した前記転写ローラに当接する電極と、
前記電極と前記転写ローラの間に電圧を印加する電源と、
前記機構と前記電源を制御して、前記中間転写体から離間して回転する前記転写ローラに前記電極を通じて前記逆方向の電流を流す抵抗調整モードを実行可能な制御手段と、を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2013−61504(P2013−61504A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−200176(P2011−200176)
【出願日】平成23年9月14日(2011.9.14)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月14日(2011.9.14)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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