説明

画像形成装置

【課題】中間転写体のクリーニング能力を強化して,残留トナー量が多い動作状況や,速いプロセススピードの動作モードに対しても対応できるようにした画像形成装置を提供すること。
【解決手段】感光体ドラム21上に形成されたトナー像を中間転写ベルト101に転写するとともにそのトナー像を用紙にさらに転写する画像形成装置において,中間転写ベルト101における用紙への転写箇所115より下流の位置に,3つ以上の導電性のクリーニング部材41〜44を設ける。クリーニング部材41〜44は,中間転写ベルト101に接触して設けられている。さらに,高圧電源部61〜64を設け,これにより,クリーニング部材41〜44のうち隣り合って配置されているものに対して逆極性のバイアスを印加するとともに,同じバイアス極性のクリーニング部材(41と43,また42と44)に関して,上流側のもの(41,42)ほど,バイアスの出力を大きくする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,感光体からトナー像の1次転写を受けるとともにそのトナー像を媒体にさらに2次転写する中間転写体を有する画像形成装置に関する。さらに詳細には,中間転写体における2次転写位置より下流の位置に,中間転写体をクリーニングするクリーニング部材を備えた画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から,中間転写体を持つ画像形成装置では,中間転写体をクリーニングするクリーニング部材を備えるのが一般的である。2次転写後の中間転写体上に,ある程度のトナーが残留するからである。例えば特許文献1の画像形成装置では,クリーニング部材として,複数のファーブラシを備えている。そして,2次転写位置から見て最初の位置にある第1ファーブラシにプラスのバイアスを印加し,その下流側の第2ファーブラシにマイナスのバイアスを印加することとしている。これにより,残留トナーのうち元々の帯電極性のままであるマイナス帯電トナーを第1ファーブラシで回収し,極性が逆転したプラス帯電トナーを第2ファーブラシで回収しようとしている。また,特許文献2の画像形成装置では,クリーニング部材として,ファーブラシと発泡ローラーとを併用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−229344号公報
【特許文献2】特開2010−145519号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら,前記した従来の技術には,次に述べるような問題点があった。まず特許文献1の技術には,残留トナーのすり抜けという問題があった。その原因として,クリーニング部材がファーブラシである場合には,ローラーの場合と比較して,中間転写体に対する密着度が低いということがあると考えられる。特に,媒体として転写率の低い特殊紙(エンボス紙等)を用いる場合や,そもそも2次転写を行わない画像安定化パターンの形成を行う場合には,かなりの量のトナーがクリーニング部材のところに到達する。そのためすり抜けトナーも多い。このすり抜けトナーが周回を重ねることで中間転写体上にトナーのフィルミングが生じる。これによって中間転写体の表面性状(平滑性や導電性)が変化してしまい,画像品質が低下してしまう。
【0005】
特許文献2のように発泡ローラーをクリーニング部材として用いることで,トナーのすり抜けの問題はかなり軽減できる。しかし近年では,画像形成装置のプロセススピードの高速化により,クリーニング部材に到達するトナーの時間当たりの量が増加してきている傾向がある。これに対処するためには,クリーニング部材と中間転写体との間への印加バイアスを大エネルギー化する必要がある。しかしながら,従来の機械的構成のままで単純にクリーニング部材へのバイアス印加を強化する(高電圧化または大電流化)ことも問題であった。バイアスが強力すぎると,クリーニング部材の箇所でトナーの溶融によるフィルミングが発生してしまうからである。このように近年の画像形成装置では,中間転写体のクリーニング能力をよりいっそう強化することが求められていた。
【0006】
本発明は,前記した従来の技術が有する問題点を解決するためになされたものである。すなわちその課題とするところは,中間転写体のクリーニング部材のクリーニング能力を強化して,残留トナー量が多い動作状況や,速いプロセススピードの動作モードに対しても対応できるようにした画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題の解決を目的としてなされた本発明の画像形成装置は,感光体を有しその感光体上にトナー像を形成するトナー像形成部と,感光体からトナー像の転写を受けるとともにそのトナー像を媒体にさらに転写する中間転写体とを有するものであって,中間転写体におけるトナー像の媒体への転写箇所より下流の位置に接触して設けられ,中間転写体をクリーニングする,3つ以上の導電性のクリーニング部材と,各クリーニング部材にバイアスを印加するバイアス印加部とを有し,バイアス印加部は,各クリーニング部材のうち隣り合って配置されているものに対して逆極性のバイアスを印加するとともに,同じ極性のバイアスが印加されるクリーニング部材に関して,上流側に配置されているものほど,印加するバイアスの出力を大きくする。
【0008】
この画像形成装置では,感光体上に形成されたトナー像は,中間転写体に転写され,さらに中間転写体から媒体に転写される。ここで中間転写体上には,媒体にトナー像を転写した後も,ある程度のトナーが残る。この,転写後も転写元に残っているトナーを転写残トナーという。転写残トナーについては,クリーニング部材によるクリーニングがなされる。クリーニング部材にはバイアス印加部によりバイアスが印加されており,これにより転写残トナーは中間転写体からクリーニング部材に回収される。クリーニング部材は複数あり,印加されるバイアスの極性は交互に逆向きとなっている。このため,転写残トナーのうち,本来の帯電極性のままでいるものも,帯電極性が逆転したものも,いずれも回収される。
【0009】
ここにおいてさらに,クリーニング部材のうち同じ極性のバイアスが印加されるもの同士で見ると,上流側に配置されているものほど,印加されるバイアスが強力である。このため,転写残トナーが多い上流側のクリーニング部材の段階では,強めのバイアスにより効率よく転写残トナーが回収される。その一方で転写残トナーが少なくなっている下流側のクリーニング部材の段階では,弱めのバイアスにより,中間転写体の損傷のおそれなくして転写残トナーが回収される。
【0010】
本発明の画像形成装置はさらに,各中間転写体との接触位置以外の位置に接触し,クリーニング部材からトナーを回収する回収部材が,各クリーニング部材に対して個別に設けられているとよりよい。この場合にはバイアス印加部は,各回収部材を介して各クリーニング部材にバイアスを印加することになる。このようにすれば,クリーニング部材におけるトナーの蓄積が起こりにくい。
【0011】
本発明の画像形成装置ではさらに,クリーニング部材が,導電性の発泡部材により形成された発泡ローラーであることが好ましい。さらに,発泡部材のセルの壁面の開口率が3%〜50%の範囲内にあるとよりよい。また,発泡部材の体積抵抗は,103〜107Ω・cmの範囲内であることが好ましい。
【0012】
本発明の画像形成装置におけるクリーニング部材は,発泡ローラーの替わりに,導電性のブラシ原糸を植毛してなるブラシローラーであってもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば,中間転写体のクリーニング部材のクリーニング能力が強化された,残留トナー量が多い動作状況や,速いプロセススピードの動作モードに対しても対応できる画像形成装置が提供されている。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施の形態に係る画像形成装置の全体構成図である。
【図2】画像形成装置における本発明としての要部の構成図である。
【図3】実施の形態に係るクリーニングローラーの断面図である。
【図4】画像形成装置における本発明としての要部の構成図(変形例)である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下,本発明を具体化した実施の形態について,添付図面を参照しつつ詳細に説明する。本形態は,図1に示す画像形成装置に本発明を適用したものである。図1の画像形成装置100は,中間転写ベルト101と,中間転写ベルト101に沿って配置された4つのトナー像形成部1Y,1M,1C,1Kと,中間転写ベルト101から印刷用紙へのトナー像の2次転写を行う2次転写ローラー115と,2次転写後の中間転写ベルト101の表面を清掃するクリーニング部118とを有している。画像形成装置100にはこれらに加えてさらに,給紙部112,用紙搬送部113,定着器130,排紙トレイ117等を有している。
【0016】
各トナー像形成部1Y,1M,1C,1Kはそれぞれ,感光体ドラム21と,帯電器20と,露光部30と,現像器10とを有している。本形態における現像器10は,負帯電型トナーを用いるものである。また,中間転写ベルト101を挟んで各感光体ドラム21に対向して,1次転写ローラー111が配置されている。また,中間転写ベルト101よりも上方には,補充用のトナー容器200と,廃トナーボックス201とが配置されている。これにより画像形成装置100は,感光体ドラム21上にトナー像を形成し,そのトナー像を中間転写ベルト101上に転写し,さらにそのトナー像を印刷用紙へ転写するようになっている。
【0017】
画像形成装置100における本発明としての要部である中間転写ベルト101の周辺を図2に示す。図2に示されるように中間転写ベルト101は,ローラー102,103に架け渡されている。このうち,2次転写ローラー115に対向するローラー103が,駆動ローラーである。これにより中間転写ベルト101は,そのうち図2中で上側の部分が右から左へ移動し,下側の部分が左から右へ移動するようになっている。1次転写ローラー111は,中間転写ベルト101の内側に位置している。図2では,帯電器20や露光部30は省略されている。現像器10は簡略化して示されている。
【0018】
クリーニング部118は,中間転写ベルト101における図2中で上側の部分に配置されている。この箇所はむろん,中間転写ベルト101において2次転写が行われる箇所,すなわち2次転写ローラー115と対向する箇所よりも,中間転写ベルト101の移動方向の下流に位置する箇所である。クリーニング部118には,4つのクリーニングローラー41〜44が,中間転写ベルト101の外面に接して配置されている。4つのクリーニングローラー41〜44は,中間転写ベルト101の移動方向に沿って並べられている。
【0019】
図2中のクリーニングローラー41〜44はいずれも,発泡性樹脂部材で形成された発泡ローラーである。クリーニングローラー41〜44に用いられている発泡性樹脂部材は,金属粉末の配合等の公知の手段により,導電性が付与されているものである。このうちのクリーニングローラー41を例として,クリーニング部118の構成をさらに詳細に説明する。
【0020】
クリーニングローラー41にはさらに,回収ローラー51が設けられている。回収ローラー51は,金属製であり,高圧電源部61に接続されている。また,回収ローラー51にはスクレーパー71が設けられている。回収ローラー51の回転方向は,クリーニングローラー41の回転に対してウィズ回転でもカウンター回転でもどちらでもよい。一方,中間転写ベルト101を挟んでクリーニングローラー41の反対側には,対向ローラー81が配置されている。対向ローラー81は接地されている。これにより,電気的バイアスの掛かったクリーニングローラー41により,中間転写ベルト101上の残留トナーが回収されるようになっている。クリーニングローラー41に回収された残留トナーはさらに,回収ローラー51に回収され,回収ローラー51上でスクレーパー71に掻き取られる。掻き取られた残留トナーは,廃トナーとして,廃トナーボックス201に収容されるようになっている。
【0021】
同様に,クリーニングローラー42〜44についてもそれぞれ,回収ローラー52〜54,高圧電源部62〜64,対向ローラー82〜84,スクレーパー72〜74が設けられている。それぞれ,クリーニングローラー41の場合と同様の構成となっている。なお,なお,高圧電源部61〜64の機能を1つの電源装置にまとめてもよい。また,対向ローラーの本数については,必ずしもクリーニングローラーの本数と同数でなくてもよい。2本のクリーニングローラーで1本の対向ローラーを兼用する等の構成であってもよい。
【0022】
ここで,クリーニングローラー41〜44について詳細に説明する。クリーニングローラー41〜44は,いずれも同じものであるので,代表してクリーニングローラー41により説明する。クリーニングローラー41は図3に示すように,芯金41Sとその周囲を覆うポリウレタンフォーム層41Fとで構成されている発泡ローラーである。
【0023】
ポリウレタンフォーム層41Fを構成するポリウレタンフォームは,多数のセル(気泡)を有する発泡部材である。このポリウレタンフォームは,各セルが分離して存在するのではなく,セル同士が開口を介して連なって存在する連続気泡構造のものである。各セルについてみると,セルの壁面全体の面積で開口面積を割って100倍した値である開口率が,3%〜50%の範囲内であることが望ましい。ポリウレタンフォームにおけるこの範囲内の開口率は,独立気泡構造として一般的な値(1%程度)よりはもちろん高い。ただし,一般的な連続気泡構造のポリウレタンフォームの開口率は60%程度であるからそれに比べれば低めである。
【0024】
このような開口率のポリウレタンフォームを用いていることにより,次の効果がある。まず,独立気泡構造のものより開口率が高いことによる効果として,ポリウレタンフォーム層41Fの柔軟性が高く変形しやすいことが挙げられる。このため,独立気泡構造のものと比較して,中間転写ベルト101への密着性が高く,残留トナーを掻き取る能力が高いのである。また,中間転写ベルト101への攻撃性は低い。すなわち,クリーニングローラー41〜44が中間転写ベルト101の表面を損傷(傷つけ,摩耗)するおそれは少ない。
【0025】
一方,一般的な連続気泡構造のものより開口率が低いことによる効果としては,ポリウレタンフォーム層41F内に回収したトナーの,セルからセルへの移動の容易性が低いことが挙げられる。そのため,回収したトナーが,ポリウレタンフォーム層41Fにおける深い部分にまで浸透しにくい。これにより,ポリウレタンフォームの詰まりが発生しにくく,長期にわたって柔軟性を維持できるクリーニングローラー41となっている。
【0026】
ポリウレタンフォームのセル径と清掃性能との関係について,一般論としては次のようなことが言える。すなわち,セル径が,回収しようとする異物のサイズに対して小さいと,その異物を取り込むことができない。このため清掃性能が低い。一方,セル径が大きすぎると,清掃対象箇所に実際に接触する接触面の面積や接触頻度が小さいこととなる。よってこれも清掃性能が低い。つまり,セル径は小さすぎても大きすぎてもよくないのである。本形態では清掃対象箇所が中間転写ベルト101である。このため清掃対象物は残留トナーまたはその集合塊であり,50〜1000μmの範囲内のセル径が好ましい。
【0027】
また,ポリウレタンフォーム層41Fを構成するポリウレタンフォームは,前述のように導電性が付与されているものである。高圧電源部61によりバイアスを印加されて中間転写ベルト101との間に所定の電界を形成するためである。ポリウレタンフォーム層41Fの好ましい導電性は,体積抵抗にして,103〜107Ω・cmの範囲内である。ポリウレタンフォーム層41Fの抵抗が低すぎると,ポリウレタンフォーム層41Fあるいは中間転写ベルト101に損傷が発生するおそれがある。ポリウレタンフォーム層41Fと中間転写ベルト101との間のギャップの小さい箇所で,過大な電界が掛かってリークが生じるからである。一方,ポリウレタンフォーム層41Fの抵抗が高すぎる場合には,高圧電源部61の電圧を高く設定する必要がある。このため,高圧電源部61の大型化やコスト増の問題がある。
【0028】
クリーニングローラー41の中間転写ベルト101への圧接力の好ましい範囲は,クリーニングローラー41への中間転写ベルト101の食い込み量が,ポリウレタンフォーム層41Fの厚さに対して5%〜20%となる範囲内である。圧接力が足りないと,清掃能力が不足する。圧接力が過剰だと,クリーニングローラー41や中間転写ベルト101の回転負荷が過大となる。
【0029】
クリーニングローラー41は,中間転写ベルト101の動きに対してカウンター回転するものである。クリーニングローラー41の好ましい回転速度は,中間転写ベルト101の走行速度に対して所定の範囲内である。つまり,クリーニングローラー41の周速は,中間転写ベルト101の走行速度の0.5倍〜2倍(絶対値にて)の範囲内であることが好ましい。0.5倍未満,つまりクリーニングローラー41の回転が遅すぎると,清掃能力が不足する。逆にクリーニングローラー41の回転が速すぎると,クリーニングローラー41や中間転写ベルト101の回転負荷が過大となる。ここで,クリーニングローラー41の周速とは,クリーニングローラー41の回転によりその表面上の1点が移動する速さのことである。中間転写ベルト101の走行速度とは,画像形成時に中間転写ベルト101の外周面上の1点が,中間転写ベルト101の直線区間内にて移動する速さのことである。
【0030】
なお,クリーニングローラー41〜44の一部のローラーまたは全部のローラーとして,上述の発泡ローラーに替えてブラシローラーを用いてもよい。ブラシローラーとは,上述の発泡ローラーにおけるポリウレタンフォーム層41Fに替えてブラシ層を設けたものである。すなわち,ブラシ原糸を多数植え込んだ基布を,芯金41Sに対し,ブラシ原糸が外側を向くように巻き付けたものである。基布としては,全体が導電性原糸で織られたもの,あるいは,導電性原糸を織り込んだもの等を用いる。芯金41Sと基布との接着には,導電性接着剤を用いることが望ましい。
【0031】
ブラシ原糸としては,ナイロン系,ポリエステル系,アクリル系,レーヨン系等の種々の素材に導電材を配合して糸状にしたものを用いることができる。導電材としては例えば,導電性カーボンブラックや,各種のイオン導電材が挙げられる。ブラシ原糸の好ましい導電性は,体積抵抗にして,105〜1013Ω・cmの範囲内である。ブラシ原糸の導電性が高すぎたりあるいは低すぎたりすると,発泡ローラーの場合のポリウレタンフォーム層41Fの導電性が高すぎたりあるいは低すぎたりした場合と同様の弊害がある。
【0032】
ブラシ原糸の好ましい太さは,0.1〜1テックスの範囲内である。基布に対するブラシ原糸の植毛密度の好ましい範囲は,5万〜30万本/インチ2である。ブラシ原糸が細すぎたり植毛密度が低すぎたりすると,中間転写ベルト101上の異物を掻き取る能力が不足する。逆にブラシ原糸が太すぎたり植毛密度が高すぎたりすると,中間転写ベルト101への攻撃性が強く,中間転写ベルト101の表面の損傷のおそれがある。植毛密度が高すぎたりする場合の不具合としてはこの他に,一旦取り込んだ異物の排出性が悪いことが挙げられる。このため,清掃性能を長期間維持することができない。
【0033】
ブラシローラーの中間転写ベルト101への食い込み量の好ましい範囲は,ブラシ原糸のパイル長(ブラシ原糸のうち基布から突出している部分の長さ)に対して10%〜40%である。食い込み量が足りないと,清掃能力が不足する。食い込み量が過剰だと,ブラシローラーや中間転写ベルト101の回転負荷が過大となる。回転速度に関しては,ブラシローラーの場合でも前述の発泡ローラーの場合と同様である。
【0034】
続いて,高圧電源部61による回収ローラー51〜54への印加バイアスについて説明する。回収ローラー51〜54に対しては,高圧電源部61により,次の2つの条件を満たすようにバイアスが印加される。
(条件1)隣り合うもの同士でバイアスの極性が逆になる。つまり,最も上流の回収ローラー51と3番目の回収ローラー53とが同じ極性で,2番目の回収ローラー52と最も下流の回収ローラー54とが,それらとは逆の極性となる。ここでの極性は,対向ローラー81の接地電位を基準としての極性である。
(条件2)同じ極性の回収ローラー同士で比較すると,上流側のものほどバイアスが高出力である。ここで,バイアスの出力が高いとは,電圧制御の場合,対向ローラー81の接地電位を基準としたときのバイアス電圧の絶対値が大きいことをいう。電流制御の場合にはむろん,バイアス電流の絶対値が大きいことを言う。
【0035】
このような設定とする理由は,次の通りである。まず,条件1の理由は,2番目以降のクリーニングローラー42〜44にて,転写残トナーのうち,前のクリーニングローラーで回収されなかった極性のものを効率的に回収するためである。ここで,前のクリーニングローラーで回収されなかった極性の転写残トナーには,前のクリーニングローラーを通過するときに極性が逆転したものも含まれる。
【0036】
条件2の理由は,次の2点である。まず上流の回収ローラーを高バイアスとしている理由は,中間転写ベルト101上の転写残トナーが多い段階にて効率よく転写残トナーを回収するためである。また,転写残トナーが多い段階では,高バイアスを印加しても中間転写ベルト101の表面の損傷があまり問題とならないからである。一方,下流の回収ローラーを低バイアスとしている理由は,転写残トナーが少なくなってきている段階では,高バイアスを印加する必要性が薄いからである。この段階ではむしろ,高バイアスの印加による中間転写ベルト101の表面の損傷のおそれの方が大きいのである。
【0037】
なお,クリーニングローラー41〜44に対しては,高圧電源部61による積極的なバイアス印加を行わない。それでもクリーニングローラー41〜44は,対応する回収ローラー51〜54の電圧と対向ローラー81の接地電位との間の電圧レベルになる。これにより間接的にクリーニングローラー41〜44にバイアスが印加されている状態となる。クリーニングローラー41〜44や回収ローラー51〜54などがいずれも導電性だからである。これにより,中間転写ベルト101からクリーニングローラー41〜44への転写残トナーの回収と,クリーニングローラー41〜44から回収ローラー51〜54への転写残トナーの回収とがともに良好に行われる。
【0038】
ただし,クリーニングローラー41〜44に対して高圧電源部61により直接的にバイアス印加を行うようにしてもよい。その場合でもむろん,クリーニングローラー41〜44への印加バイアスは,クリーニングローラー41〜44の電圧レベルが,対応する回収ローラー51〜54の電圧レベルと接地電位との中間のレベルとなるようなものとする。あるいは,回収ローラー51〜54を廃して,クリーニングローラー41〜44に直接にスクレーパー71〜74を当てる構成とすることも考えられる。
【0039】
なお本形態では前述のように,高圧電源部61を回収ローラー51〜54に接続し,対向ローラー81〜84を接地している。しかし逆に,高圧電源部61を対向ローラー81〜84に接続し,回収ローラー51〜54を接地することも可能である。ただしその場合にはバイアスの極性も逆になる。また,バイアス制御の方法は,電流制御でも電圧制御でもかまわない。ただし,電流制御の方が,トナーの回収がより確実である。
【0040】
以下,本発明の実施例および比較例を説明する。以下に説明する実施例および比較例では,試験機としてコニカミノルタ製bizhub Pro C5501を用い,そのベルトクリーニング部分に改造を施して試験に供した。改造の内容は,試験機のクリーニングローラーを,前述の発泡ローラーまたはブラシローラーで置き換えることである。ここで,図2に示した,クリーニングローラーが4本である構成と,図4に示すようにクリーニングローラーが3本である構成との2通りの改造機を作成した。また,クリーニングローラーの食い込み量や,印加バイアスその他の各種条件を,試験目的に合わせて調整した。
【0041】
本実施例および比較例で用いた発泡ローラーは,5種類である。これらを,発泡A,発泡B,発泡C,発泡D,発泡Eと称する。これらにおけるポリウレタンフォーム層41Fの内容を,表1に示す。表1中の各原料の数値はいずれも,重量部を示す。また,表1中の原料のうち水以外のものとしてはそれぞれ,次のものを用いた。
ポリオール :ポリエーテルポリオール(三井武田化学製「アクトコールED−37B 」(数平均分子量3000))
イソシアネート:メチレンジフェルニンジイソシアネート(MDI)(日本ポリウレタン 製「ミリオネートMTL−S」)
アミン系触媒 :花王製「カオーライザー」No.23NP
整泡剤 :直鎖ジメチルポリシロキサン(GESilicones製「Niaxs ilicone」L5614)
【0042】
【表1】

【0043】
本実施例および比較例でこれらの発泡ローラーを用いる場合の発泡ローラーの食い込み量は,次の通りとした。
・中間転写ベルト101に対する発泡ローラーの食い込み量 →0.6mm
・発泡ローラーに対する回収ローラー51〜54の食い込み量→0.6mm
【0044】
一方,本実施例および比較例で用いたブラシローラーは,2種類である。これらを,ブラシA,ブラシBと称する。これらについての詳細を表2に示す。
【0045】
本実施例および比較例でこれらのブラシローラーを用いる場合の発泡ローラーの食い込み量は,次の通りとした。
・中間転写ベルト101に対するブラシローラーの食い込み量 →1.3mm
・ブラシローラーに対する回収ローラー51〜54の食い込み量→1.3mm
【0046】
【表2】

【0047】
また,発泡ローラー,ブラシローラーのいずれの場合でも,本実施例および比較例では,クリーニングローラー41〜44および回収ローラー51〜54の回転に関して,次のようにした。まずクリーニングローラー41〜44の回転速度であるが,クリーニングローラー41〜44の周速と中間転写ベルト101の走行速度とが1対1になるようにした。クリーニングローラー41〜44の回転方向はむろん,中間転写ベルト101の移動方向に対してカウンター回転である。
【0048】
回収ローラー51〜54の回転については次のようにした。回転方向については,クリーニングローラー41〜44の回転に対してウィズ回転とした。回転速度は,回収ローラー51〜54とクリーニングローラー41〜44とで周速比が1対1になるようにした。つまり,クリーニングローラー41〜44の回転に対して完全ウィズ回転とした。
【0049】
なお,クリーニングローラー41〜44や回収ローラー51〜54の食い込み量や回転に関して,上記の設定は一例であり,これに限定されるものではない。[0020],[0028],[0029],[0033]で説明した範囲内で変更しても同様の効果が得られる。
【0050】
続いて,本実施例および比較例の個別の詳細構成を表3に示す。表3中の「41,51」の欄は,クリーニングローラー41の種類と回収ローラー51の印加バイアスを示している。印加バイアスは電流制御であり,表3中には単位[μA]での数値を示している。電流値の数字ではあるが,絶対値が大きいほど電圧の絶対値も大きいことはいうまでもない。同様に「42,52」の欄は,クリーニングローラー42の種類と回収ローラー52の印加バイアスを示している。「43,53」,「44,54」の各欄も同様である。
【0051】
表3中の実施例および比較例のうち,実施例1〜6,10〜15,19〜21,比較例1,2,4〜8は,図2に示した4本構成のものである。一方,実施例7〜9,16〜18,比較例3は,図4に示した3本構成のものである。また,実施例1〜9,比較例1〜5は,クリーニングローラー41〜44としてブラシローラーを用いた例である。一方,実施例10〜21,比較例6〜8は,クリーニングローラー41〜44として発泡ローラーを用いた例である。このうち実施例6は,4本のブラシローラーのうち上流側の2本に「ブラシB」を用い,下流側の2本に「ブラシA」を用いた例である。同様に実施例15では,「発泡B」と「発泡C」とを混載している。このように異なる種類のクリーニングローラーを混載してもよい。さらに,表3中に具体例はないが,ブラシローラーと発泡ローラーとを混載してもかまわない。
【0052】
【表3】

【0053】
次に印加バイアスについて述べる。表3では,実施例1〜21,比較例1〜8のすべてにおいて,回収ローラー51,53の印加バイアスが同じ極性となっている。そして回収ローラー52,54(3本構成のものについては回収ローラー54を除く)の印加バイアスは,回収ローラー51,53とは逆極性となっている。このように隣り合うもの同士では印加バイアスが逆極性となっている。そして,実施例5,6,14,15の4例のみ,奇数番目の回収ローラー51,53の印加バイアスをマイナス,つまりトナーの帯電極性と同じ極性としている。それ以外の例ではすべて奇数番目の回収ローラー51,53の印加バイアスをプラス,つまりトナーの帯電極性と同じ極性としている。
【0054】
そして,実施例1〜21のいずれにおいても,回収ローラー51,53の印加バイアスを絶対値で比較すると,上流側の回収ローラー51の方が大きい値となっている。さらに,回収ローラー52,54の印加バイアスについても同様のことがいえる(3本構成のものを除く)。
【0055】
しかしながら比較例1〜8のものでは,このことが成り立たない。比較例1〜4,6〜8で回収ローラー51,53の印加バイアスの絶対値を比較すると,同じ値となっている。そのうち特に比較例4,6,7のものでは,いずれの印加バイアスの絶対値も小さい値となっている。比較例5では,下流側の回収ローラー53の方がむしろ大きい値となっている。そして,これと同様のことが,回収ローラー52,54の印加バイアスについてもいえる(3本構成の比較例3を除く)。
【0056】
実施例1〜21および比較例1〜8についての試験結果を表4に示す。この試験では,クリーニング性と,耐フィルミング性との2つの項目について評価した。それぞれの評価は具体的には,次のようにして行った。
【0057】
・クリーニング性の評価
各実施例および比較例の構成において,クリーニング部118を通過した後の中間転写ベルト101上におけるトナーの量を評価した。これが少ないほどクリーニング性がよいことになる。具体的には,クリーニング部118を通過した後の中間転写ベルト101の表面に粘着テープを貼り付けてそれを剥がし,そのテープをコニカミノルタ製CFペーパーに貼り付けた。そして,テープを貼り付けた箇所と地のペーパーとの色差ΔEを測定した。色差ΔEの測定は,コニカミノルタ製分光測色計「CM−2002」を用いて行った。この評価に当たって,クリーニング部118へ進入する前の中間転写ベルト101上におけるトナーの量を10g/m2 とした。評価基準は,次の通りとした。
評価◎ : ΔE < 0.5
評価○ : 0.5 ≦ ΔE ≦ 2.0
評価× : 2.0 < ΔE
【0058】
・耐フィルミング性の評価
1層ベタの帯状チャートを連続的に作成する耐久印刷を行い,その後に全面ハーフ画像を作成して,その全面ハーフ画像により,フィルミング状態を評価した。耐久印刷における帯状チャートでは,帯部分の濃度は100%とした。耐久印刷の耐久量は,A3サイズ10万枚とした。全面ハーフ画像における評価基準は,次の通りとした。
評価◎ : 帯部と非帯部とで有意な濃度差がない
評価○ : 帯部と非帯部とで,かすかに濃度差が認識される
評価× : 帯部と非帯部とで,はっきりと濃度差が認識される
【0059】
・総合評価
上記2項目の評価による総合評価を,次の基準により行った。
総合評価◎ : 2項目とも評価が◎
総合評価○ : 1項目が評価◎でもう1項目が評価○
総合評価× : 上記以外
【0060】
【表4】


【0061】
表4によれば,実施例1〜21はいずれも,総合評価が◎もしくは○となっている。特に,クリーニングローラー41〜44として発泡ローラーを用いる実施例10〜21について見れば,その12種類中10種類までが総合評価◎となっている。
【0062】
これに対し,比較例1〜8はいずれも,総合評価×であった。比較例1〜8が総合評価×となった理由は,次のように解される。すなわち,比較例1〜8のものでは前述のように,同一極性の回収ローラー同士において,上流側のものほど印加バイアスの絶対値が大きい,が成り立っていない。
【0063】
特に比較例1〜3,5,8のものでは,下流側の回収ローラー53,54に比較的大きなバイアスが掛かっている。このため,上流側のクリーニングローラー41,42で残留トナーがある程度回収されて少なくなった後に,強いバイアスが掛かる状態なのである。このことから比較例1〜8では,下流側のクリーニングローラー43,44において,むしろ中間転写ベルト101の表面の損傷が生じる状態となっていると考えられる。このことにより中間転写ベルト101の表面状態が劣化し,よくない評価結果に至ったものと考えられる。比較例4,6,7に関しては,すべてのローラーのバイアスが低いことから,そもそもクリーニング性が不良となっているものと考えられる。
【0064】
一方,実施例1〜21で評価結果がよかった理由は,同一極性の回収ローラー同士において,上流側のものほど印加バイアスの絶対値が大きい,が成り立っていることである。このために前述のように,残留トナーが多い上流側のクリーニングローラー41,42の段階でまず,残留トナーの大部分が回収される。そして,残留トナーが少なくなった下流側のクリーニングローラー43,44の段階では,弱めの印加バイアスにより,中間転写ベルト101を損傷することなく,わずかに残っている残留トナーを確実に回収できるのである。これにより,よい評価結果を得ている。よって,これら実施例1〜21のものは,残留トナー量が多い動作状況や,速いプロセススピードの動作モードに対しても対応できるものである。
【0065】
なお実施例1〜21のうち,クリーニングローラー41〜44として発泡ローラーを用いる実施例10〜21の方が,ブラシローラーを用いた実施例1〜9よりも全体としてよい傾向がある。これは,ブラシローラーよりも発泡ローラーの方が中間転写ベルト101への接触面積が広いためと考えられる。
【0066】
また,前述のように,実施例5,6,14,15は他の実施例と異なり,1番目の回収ローラー51への印加バイアスがトナーの帯電極性と同じ極性となっている。しかしこれらの実施例であっても,他の実施例と同等の評価結果が得られている。
【0067】
以上詳細に説明したように本実施の形態では,中間転写ベルト101における2次転写位置より下流側にクリーニング部118を設けて,中間転写ベルト101のクリーニングを行うようにしている。そしてクリーニング部118には,3本以上のクリーニングローラー41〜44(43)を設け,各クリーニングローラーにバイアスを印加することとしている。ここで,各クリーニングローラーへのバイアス印加について,極性が交互になることと,同極性のもの同士では下流側のものほど低出力になることとの2つの条件が満たされるようにしている。これにより,中間転写ベルト101の表面の損傷のおそれなくして,中間転写ベルト101上の転写残トナーを確実に回収するようにしている。こうしてクリーニング部118のクリーニング能力が従来のものより強化されており,残留トナー量が多い動作状況や,速いプロセススピードの動作モードに対しても対応できる画像形成装置が実現されている。
【0068】
なお,本実施の形態は単なる例示にすぎず,本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に,その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良,変形が可能である。例えば,画像形成装置100は,コピー機でもプリンターでもよいし,外部回線との送受信機能を有していてもよい。また,カラー機には限られない。使用するトナーは,負帯電型に限らず正帯電型でもよいし,一成分型か二成分型かについてはどちらでもよい。
【符号の説明】
【0069】
101 中間転写ベルト
115 2次転写ローラー
1Y〜1K トナー像形成部
21 感光体ドラム
41〜44 クリーニングローラー
41F ポリウレタンフォーム層(発泡部材)
51〜54 回収ローラー
61〜64 高圧電源部(バイアス印加部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
感光体を有しその感光体上にトナー像を形成するトナー像形成部と,前記感光体からトナー像の転写を受けるとともにそのトナー像を媒体にさらに転写する中間転写体とを有する画像形成装置において,
前記中間転写体におけるトナー像の媒体への転写箇所より下流の位置に接触して設けられ,前記中間転写体をクリーニングする,導電性の3つ以上のクリーニング部材と,
前記各クリーニング部材にバイアスを印加するバイアス印加部とを有し,
前記バイアス印加部は,
前記各クリーニング部材のうち隣り合って配置されているものに対して逆極性のバイアスを印加するとともに,
同じ極性のバイアスが印加されるクリーニング部材に関して,上流側に配置されているものほど,印加するバイアスの出力を大きくするものであることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像形成装置において,
前記各クリーニング部材における前記中間転写体との接触位置以外の位置に接触し,前記クリーニング部材からトナーを回収する回収部材が,前記各クリーニング部材に対して個別に設けられており,
前記バイアス印加部は,前記各回収部材を介して前記各クリーニング部材にバイアスを印加するものであることを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の画像形成装置において,
前記クリーニング部材が,導電性の発泡部材により形成された発泡ローラーであることを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項3に記載の画像形成装置において,
前記発泡部材のセルの壁面の開口率が3%〜50%の範囲内にあることを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項3または請求項4に記載の画像形成装置において,
前記発泡部材の体積抵抗が,103〜107Ω・cmの範囲内であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項1または請求項2に記載の画像形成装置において,
前記クリーニング部材が,導電性のブラシ原糸を植毛してなるブラシローラーであることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−61517(P2013−61517A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−200312(P2011−200312)
【出願日】平成23年9月14日(2011.9.14)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】