説明

画像形成装置

【課題】経時・環境変化に起因する像保持体の帯電特性変化の影響を踏まえ、像保持体に対する帯電電位を必要電位に保つように帯電装置へ印加する帯電電圧を容易に制御する。
【解決手段】帯電装置の帯電部材に印加する帯電電圧又は現像電圧のいずれか一方を固定設定すると共に、他方を順次可変設定する電圧設定部11と、現像像の現像剤による現像量に応じて変化する物理量を検出する検出部12と、検出部12による検出結果から、現像開始に相当する現像量の現像像である条件を判定するための閾値を設定する閾値設定部13と、電圧設定部11による電圧変化に応じて像保持体1上に現像像を順次形成し、検出部12の検出結果に基づいて、当該検出結果が前記閾値設定部13で設定された閾値に合致する電圧設定部11による設定電圧を割出し、この割り出した設定電圧に基づいて帯電装置2の帯電部材2aに印加する帯電電圧を決定する電圧決定部14と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来における画像形成装置としては、例えば特許文献1,2に記載されたものが既に提供されている。
特許文献1には、基準となる第1の帯電電圧から所定の電位差を持つ第2の帯電電圧を印加した時、像担持体から転写媒体の搬送部の表面に付着した現像剤に対し検出部で検出された現像剤の検出濃度に基づいて帯電器に供給する帯電電圧を決定する技術が開示されている。
特許文献2には、放電開始電圧以上の2つの電圧を帯電ローラに印加し、流れる電流を測定し、予め定めた一次方程式を用いて放電開始電圧を求め、更に、温度検知手段による検知温度に応じて予め実験的に求めた印加電圧に対する感光体表面電位の傾きを用いて、所要の感光体表面電位にするための帯電ローラ印加電圧を求め、これを帯電ローラに印加し、一定の感光体表面電位を得る技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−83461号公報(発明を実施するための最良の形態,図1)
【特許文献2】特開2000−305342号公報(発明の実施の形態及び実施例,図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、経時・環境変化に起因する像保持体の帯電特性変化の影響を踏まえ、像保持体に対する帯電電位を必要電位に保つように帯電装置へ印加する帯電電圧を容易に制御することが可能な画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に係る発明は、表面に帯電可能な被帯電層を有し、静電潜像及びこれの現像剤による可視像を保持する像保持体と、この像保持体に接触又は近接配置される帯電部材を有し、当該帯電部材に帯電電圧を印加することで前記像保持体表面を帯電する帯電装置と、この帯電装置にて予め帯電された像保持体に対し静電潜像を書き込む潜像書込装置と、前記像保持体に対向する現像部材を有し、この現像部材に予め決められた現像電圧を印加することで前記静電潜像の潜像電位と前記現像電圧との差分に応じて前記静電潜像に対する現像剤による現像量を可変調整する現像装置と、前記像保持体に対向して設けられ、前記現像装置にて像保持体上に形成された現像像を転写媒体に転写させる転写装置と、前記潜像書込装置による静電潜像を形成する前に前記像保持体を予め決められた初期帯電電位に帯電するように、前記帯電装置の帯電部材に印加する帯電電圧を制御する帯電制御装置と、を備え、前記帯電制御装置は、前記帯電装置の帯電部材に印加する帯電電圧又は前記現像装置の現像部材に印加する現像電圧のいずれか一方を固定設定すると共に、いずれか他方を順次可変設定する電圧設定部と、前記像保持体上に形成された現像像の現像剤による現像量に応じて変化する物理量を検出する検出部と、前記像保持体上に形成される現像像のうち、前記検出部による検出結果から、現像開始に相当する現像量の現像像である条件を判定するための閾値を設定する閾値設定部と、前記電圧設定部による電圧変化に応じて像保持体上に現像像を順次形成し、前記順次形成された現像像に対する前記検出部の検出結果に基づいて、当該検出結果が前記閾値設定部で設定された閾値に合致する電圧設定部による設定電圧を割出し、この割り出した設定電圧に基づいて前記帯電装置の帯電部材に印加する帯電電圧を決定する電圧決定部と、を有することを特徴とする画像形成装置である。
【0006】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る画像形成装置において、前記帯電装置は、前記帯電部材に直流電圧成分からなる帯電電圧を印加するものであることを特徴とする画像形成装置である。
請求項3に係る発明は、請求項1又は2に係る画像形成装置において、前記電圧設定部は、前記現像装置の現像部材に印加する現像電圧を作像処理時の値よりも絶対値が大きく且つ像保持体の初期表面電位よりも絶対値の小さい基準値に固定設定すると共に、前記像保持体の表面電位を、前記現像電圧の基準値よりも絶対値が大きい初期値から前記基準値を過ぎるように順次可変設定することを特徴とする画像形成装置である。
請求項4に係る発明は、請求項1ないし3いずれかに係る画像形成装置において、前記検出部は、前記像保持体に形成された現像像の現像剤による現像量に応じて変化する濃度情報を検出する濃度検出器であることを特徴とする画像形成装置である。
請求項5に係る発明は、請求項1ないし4いずれかに係る画像形成装置において、前記電圧決定部は、前記検出部の検出結果に基づいて、当該検出結果が前記閾値設定部で設定された閾値に合致する電圧設定部による設定電圧を割出し、この割り出した設定電圧に実際の現像開始条件と前記閾値条件との差に相当する補正量が付加された補正後設定電圧を算出すると共に、この補正後設定電圧に基づいて前記帯電装置の帯電部材に印加する帯電電圧を決定することを特徴とする画像形成装置である。
【0007】
請求項6に係る発明は、請求項1ないし5いずれかに係る画像形成装置において、前記電圧決定部は、前記検出部の検出結果に基づいて、当該検出結果が前記閾値設定部で設定された閾値に合致する電圧設定部による設定電圧を割出し、前記帯電装置の帯電部材に対する放電開始帯電電圧を予め決められた関係式に従って算出すると共に、算出された放電開始帯電電圧と目標とする像保持体の表面電位とに基づいて前記帯電装置の帯電部材に印加する帯電電圧を決定することを特徴とする画像形成装置である。
請求項7に係る発明は、請求項1ないし5いずれかに係る画像形成装置において、前記電圧決定部は、前記電圧設定部にて前記帯電装置の帯電部材に印加する帯電電圧又は前記現像装置の現像部材に印加する現像電圧のいずれか一方を複数段階で固定設定すると共に、夫々の固定設定値に対して前記電圧設定部による電圧変化に応じて像保持体上に現像像を順次形成し、前記順次形成された現像像に対する前記検出部の検出結果に基づいて、当該検出結果が前記閾値設定部で設定された閾値に合致する電圧設定部による設定電圧を夫々の固定設定値毎に割出し、割り出した複数の設定電圧に基づいて前記帯電装置の帯電部材に印加する帯電電圧を決定することを特徴とする画像形成装置である。
請求項8に係る発明は、請求項1ないし3いずれかに係る画像形成装置において、前記転写装置は、前記像保持体との間に転写媒体を挟んで前記像保持体に対向する転写部材を有し、この転写部材に転写電圧を印加することで前記像保持体上の現像像を転写媒体に転写するものであり、前記検出部は、前記像保持体に形成された現像像の現像剤による現像量に応じて変化する転写部材に対する転写電流又は転写電圧を検出する転写検出器であることを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に係る発明によれば、経時・環境変化に起因する像保持体の帯電特性変化の影響を踏まえ、像保持体に対する帯電電位を必要電位に保つように帯電装置へ印加する帯電電圧を容易に制御することができる。
請求項2に係る発明によれば、直流電圧成分からなる帯電電圧を印加する方式において、経時・環境変化に起因する像保持体の帯電特性変化の影響を踏まえ、像保持体に対する帯電電位を必要電位に保つように帯電装置へ印加する帯電電圧を容易に制御することができる。
請求項3に係る発明によれば、本構成を有さない態様に比べて、現像開始前の状態との対比の下で現像開始の状態を正確に検出することができ、その分、帯電制御装置による帯電制御処理を精度良く実現することができる。
請求項4に係る発明によれば、像保持体上での現像像に対する濃度情報が検出可能な濃度検出器を利用することで、像保持体に対する帯電電位を必要電位に保つように帯電装置へ印加する帯電電圧を制御することができる。
請求項5に係る発明によれば、本構成を有さない態様に比べて、実際の現像開始時における像保持体の帯電電圧を推測することで、帯電装置の帯電部材に印加する帯電電圧を正確に制御することができる。
請求項6に係る発明によれば、本構成を有さない態様に比べて、帯電装置の帯電部材に印加する帯電電圧を容易に選定することができる。
請求項7に係る発明によれば、本構成を有さない態様に比べて、像保持体の帯電電位と帯電装置の帯電部材に印加する帯電電圧との関係式を算出することで、帯電装置への帯電電圧を容易に選定することができる。
請求項8に係る発明によれば、転写装置の転写部材に対する転写電流又は転写電圧が検出可能な転写検出器を利用することで、像保持体に対する帯電電位を必要電位に保つように帯電装置へ印加する帯電電圧を制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明が適用された画像形成装置の実施の形態の概要を示す説明図である。
【図2】図1に示す画像形成装置による帯電装置へ印加する帯電電圧の制御過程を示す説明図である。
【図3】実施の形態1に係る画像形成装置の全体構成を示す説明図である。
【図4】実施の形態1に係る画像形成装置の要部を示す説明図である。
【図5】実施の形態1で用いられる作像制御処理内容を示すフローチャートである。
【図6】図5における帯電制御処理内容を示すフローチャートである。
【図7】図6に示すフローチャートによる帯電装置へ印加する帯電電圧の制御過程を示す説明図である。
【図8】図7に示す帯電装置へ印加する帯電電圧の制御過程を模式的に示す説明図である。
【図9】(a)は実施の形態1において帯電装置へ印加する帯電電圧の他の決定方法を示す説明図、(b)〜(d)は(a)の条件I〜条件IIIを示す説明図である。
【図10】実施の形態1における画像形成装置の変形形態の要部を示す説明図である。
【図11】実施の形態2に係る画像形成装置の要部を示す説明図である。
【図12】実施の形態2で用いられる帯電制御処理内容を示すフローチャートである。
【図13】図11に示すフローチャートによる帯電装置へ印加する帯電電圧の制御過程を示す説明図である。
【図14】(a)は現像トナー量が転写電流に影響することを模式的に示す説明図、(b)は現像トナー量と転写電流との影響内容を示す説明図である。
【図15】実施例において、複数の固定設定された現像電圧に対し、感光体電位−現像電圧(DeveBias)とトナー濃度反射率との関係を示す説明図である。
【図16】図15において、現像開始に対応するトナー濃度の閾値を示す説明図である。
【図17】(a)(b)は実施例1において、現像開始に対応するトナー濃度の実測値と実施例1にて推測した推測値との関係を示す説明図である。
【図18】(a)は実施例2において帯電装置へ印加する帯電電圧を決定する上で用いられる放電開始帯電電圧と感光体/帯電ロール間の間隙との関係の一例を示すグラフ図、(b)は感光体/帯電ロール間の間隙についての説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
◎実施の形態の概要
図1は本発明が適用された画像形成装置の実施の形態の概要を示す模式図である。
同図において、画像形成装置は、表面に帯電可能な被帯電層1aを有し、静電潜像及びこれの現像剤による可視像を保持する像保持体1と、この像保持体1に接触又は近接配置される帯電部材2aを有し、当該帯電部材2aに帯電電圧を印加することで前記像保持体1表面を帯電する帯電装置2と、この帯電装置2にて予め帯電された像保持体1に対し静電潜像を書き込む潜像書込装置3と、前記像保持体1に対向する現像部材4aを有し、この現像部材4aに予め決められた現像電圧を印加することで前記静電潜像の潜像電位と前記現像電圧との差分に応じて前記静電潜像に対する現像剤による現像量を可変調整する現像装置4と、前記像保持体1に対向して設けられ、前記現像装置4にて像保持体1上に形成された現像像を転写媒体6に転写させる転写装置5と、前記潜像書込装置3による静電潜像を形成する前に前記像保持体1を予め決められた初期帯電電位に帯電するように、前記帯電装置2の帯電部材2aに印加する帯電電圧を制御する帯電制御装置10と、を備え、前記帯電制御装置10は、前記帯電装置2の帯電部材2aに印加する帯電電圧又は前記現像装置4の現像部材4aに印加する現像電圧のいずれか一方を固定設定すると共に、いずれか他方を順次可変設定する電圧設定部11と、前記像保持体1上に形成された現像像の現像剤による現像量に応じて変化する物理量を検出する検出部12と、前記像保持体1上に形成される現像像のうち、前記検出部12による検出結果から、現像開始に相当する現像量の現像像である条件を判定するための閾値を設定する閾値設定部13と、前記電圧設定部11による電圧変化に応じて像保持体1上に現像像を順次形成し、前記順次形成された現像像に対する前記検出部12の検出結果に基づいて、当該検出結果が前記閾値設定部13で設定された閾値に合致する電圧設定部11による設定電圧を割出し、この割り出した設定電圧に基づいて前記帯電装置2の帯電部材2aに印加する帯電電圧を決定する電圧決定部14と、を有するものである。
【0011】
このような技術的手段において、像保持体1としては、感光層や誘電層などの被帯電層1aを表面に有するものを広く含む。
また、帯電装置2としては、像保持体1に接触又は近接する帯電部材2a(ロール、板材、線材など問わない)があればよく、帯電部材2aに印加する帯電電圧としては少なくとも直流電圧成分を含んでいればよい。
更に、潜像書込装置3としては、帯電された像保持体1に対して静電潜像を書き込むものであれば、光、イオン等適宜選定して差し支えない。
また、現像装置4としては、像保持体1に対向する現像部材4aを有し、この現像部材4aに現像電圧を印加することで静電潜像電圧と現像電圧との差分により現像剤による現像動作を行うものを広く含む。ここで、現像部材4aは像保持体1に対して接触・非接触を問わず、また、現像剤は非磁性、磁性を問わず一成分現像剤でもよいし、二成分現像剤でもよい。更には、現像容器内に二成分現像剤を収容して現像部材4a上では一成分現像剤だけ保持する態様でもよい。
更にまた、転写装置5としては、転写媒体5a(記録材、中間転写体)に像保持体1上の現像像を転写するものであれば、静電転写方式に限られず、圧力転写方式でもよい。
【0012】
また、帯電制御装置10としては、経時・環境変化に起因する影響を踏まえ、帯電部材2aに印加する帯電電圧を制御する機能部を備えていればよい。ここで、機能部としては、電圧設定部11、検出部12、閾値設定部13及び電圧決定部14が挙げられる。
電圧設定部11は、像保持体1の表面電位又は現像部材4aに印加する現像電圧の一方を固定設定し、他方を可変設定するものであればよい。
検出部12は、像保持体1上に形成された現像像の現像剤による現像量に応じて変化する物理量(濃度情報や転写パラメータ情報など)を検出するものであればよく、検出部12の設置箇所については物理量を検出可能であれば必ずしも像保持体1の周辺である必要はなく、例えば中間転写体や記録材上に転写された現像像を検出対象としてもよい。
閾値設定部13としては、検出部12による検出出力に関し、現像開始に相当する現像量の現像像である条件を判定するための閾値を予め設定しておければよい。この閾値は検出部12の検出感度に依存するが、実際の現像開始レベルと検出部12による現像開始に関して検出可能なレベルとの間に予め定めた差をもって設定するようにすればよく、両者の差が小さい閾値であれば当該閾値に対応した箇所が現像開始箇所であると判定して差し支えないし、両者の差が大きい閾値であれば、閾値にその差に対応した補正量を加味して現像開始箇所であると判定するようにすればよい。
電圧決定部14は、予め設定された閾値に合致する電圧設定部11による設定電圧を割り出すことで、この設定電圧を利用して帯電部材2aへの帯電電圧を算出するようにすればよい。
【0013】
次に、図1に示す画像形成装置において帯電装置2へ印加する帯電電圧の制御過程を図2に模式的に示す。
図1及び図2において、帯電制御装置10は、作像処理を実施する前の予め定められた条件に従って、帯電装置2へ印加する帯電電圧を制御するために、電圧設定部11による電圧設定処理、検出部12による検出処理、閾値設定部13による閾値設定処理、電圧決定部14による電圧決定処理を実行する。
尚、本例では、像保持体1の帯電極性が負極性であり、像保持体1の帯電電位、帯電装置2への帯電電圧、現像装置4への現像電圧はいずれも負極性の値を示す。
本例では、電圧設定部11は、例えば現像装置4の現像部材4aに印加する現像電圧Vdを予め定めたレベル(例えば目標とする像保持体1の表面電位)に固定設定する。更に、電圧設定部11は、帯電装置2の帯電部材2aに印加する帯電電圧を例えば絶対値が次第に減少するように可変設定することで、像保持体1の表面電位Vpを予め定めた初期電位(Lp:|Lp|>|Ld|)から固定設定された現像電圧Vdを過ぎるように例えば絶対値が次第に減少するように可変設定する。
また、閾値設定部13は検出部12による検出出力Sに関し、現像開始に相当する現像量の現像像である条件を判定するための閾値Saを予め設定しておく。
【0014】
更に、電圧決定部14は、電圧設定部11により固定設定した現像電圧Vdに対し電圧設定部11により像保持体1の表面電位を可変設定させ、これらの電圧変化に応じて像保持体1上に電位差の異なる静電潜像を順次形成した後、現像装置4にて像保持体1上に形成された静電潜像を現像することで像保持体1上に濃度の異なる現像像を順次形成する。
そして、順次形成された現像像は転写装置5により転写媒体6に転写され、検出部12は転写媒体6に転写された現像像の現像剤による現像量に応じて変化する物理量(現像濃度や転写電流など)を検出する。
この後、電圧決定部14は、順次形成された現像像に対する検出部12の検出結果に基づいて、当該検出結果が閾値設定部13で設定された閾値Saに合致する位置(図2中経過時間taに相当する位置)を判定する。
そして、電圧決定部14は、閾値Saに対応する位置taにおける電圧設定部11による設定電圧である像保持体1の表面電位Vp(図2中Paに相当)を割り出す。
このとき、図2中Paにおける像保持体1の表面電位Vpは閾値Saに対応する現像開始に相当する現像量を有する現像像に対する電位であり、この閾値Saの判定精度を考慮することで、固定設定された現像電圧Vdに対応する位置tcにおける像保持体1の表面電位Vp(図2中Pcで示す)を割り出すことは可能である。
ここでいう閾値Saの判定精度とは、例えば像保持体1の表面電位Vpと現像電圧Vdとの電位差ΔEがどの程度で現像開始レベルを判定可能に至るかを示す指標に関し、電位差ΔEが小さい程判定精度が高いことを意味する。
そして、電圧決定部14は、このようにして割り出した像保持体1の表面電位Vp(Pa又はPc)に基づいて、当該表面電位Vpに相当する帯電装置2の帯電部材2aに印加する帯電電圧を算出し、この算出結果を利用することで目標とする像保持体1の表面電位に設定するための帯電装置2の帯電部材2aに印加する帯電電圧を決定する。
【0015】
次に、本実施の形態で用いられる構成要素の代表的態様又は好ましい態様について説明する。
先ず、帯電装置2の代表的態様としては、帯電部材2aに直流電圧成分(DC成分)からなる帯電電圧を印加するものが挙げられる。本態様では、直流電圧成分(DC成分)に交流電圧成分(AC成分)が重畳された帯電電圧を印加するAC重畳帯電方式に比べて、経時・環境変化に対して像保持体1の表面電位のばらつきが大きいため、本実施の形態による帯電制御装置10による制御方式がより効果的である。
また、帯電制御装置10の電圧設定部11の代表的態様としては、現像装置4の現像部材4aに印加する現像電圧Vdを作像処理時の値よりも絶対値が大きく且つ像保持体1の初期表面電位よりも絶対値の小さい基準値に固定設定すると共に、像保持体1の表面電位を、現像電圧Vdの基準値Ldよりも絶対値が大きい初期値から基準値を過ぎるように順次可変設定するものが挙げられる。
本態様のように、現像電圧Vdを予め定めた基準値に固定設定し、像保持体1の表面電位を、基準値より絶対値の大きい初期値から現像電圧Vdの基準値を過ぎるように可変設定する方式を採用すれば、像保持体1の表面電位が基準値を過ぎった後に現像開始に相当する閾値条件に到達する。このため、検出部12の検出出力としては、現像開始前の状態との対比で現像開始の状態を検出することが可能である。例えば濃度情報であれば0レベルに対する変化として検出すればよい。
【0016】
更に、検出部12の代表的態様としては、像保持体1に形成された現像像の現像剤による現像量に応じて変化する濃度情報を検出する濃度検出器が挙げられる。濃度検出器は画像濃度を検出し、画像濃度が低下してきたような場合に現像剤を補給することで画像品質を維持する方式において広く用いられている。本態様は、帯電装置2による帯電制御にあたり、画像品質維持で既に用いられる濃度検出器を利用したものである。
また、検出部12の他の代表的態様としては、例えば転写装置5が、像保持体1との間に転写媒体6を挟んで像保持体1に対向する転写部材5aを有し、この転写部材5aに転写電圧を印加することで像保持体1上の現像像を転写媒体6に転写する態様であることを前提とし、像保持体1に形成された現像像の現像剤による現像量に応じて変化する転写部材5aに対する転写電流又は転写電圧を検出する転写検出器が挙げられる。
本態様では、像保持体1上の予め定めた閾値に対応する現像像の現像剤による現像量が元のレベルより増加する(現像濃度が高くなることに相当)と、その分、現像剤による抵抗が高くなることから、転写電流は減少する。一方、現像剤による現像量が元のレベルより減少する(現像濃度が低くなることに相当)と、その分、現像剤による抵抗が低くなることから、転写電流は増加する。このような転写電流の変化により、現像像の現像剤による現像量の変化を検出することが可能である。尚、転写電流の検出方式に代えて、定転写電流を流すことで転写電圧を検出するようにしてもよい。
【0017】
更に、電圧決定部14の代表的態様としては、検出部12の検出結果に基づいて、当該検出結果が閾値設定部13で設定された閾値Saに合致する電圧設定部11による設定電圧(図2中taにおける帯電装置2の帯電部材2aに印加する帯電電圧に相当)を割出し、この割り出した設定電圧に実際の現像開始条件と閾値条件との差に相当する補正量が付加された補正後設定電圧(図2中tcにおける帯電装置2の帯電部材2aに印加する帯電電圧に相当)を算出すると共に、この補正後設定電圧に基づいて帯電装置2の帯電部材2aに印加する帯電電圧を決定する態様が挙げられる。
本態様において、実際の現像開始条件と閾値条件との差に相当する補正量については、事前の実験にてΔE(20〜30V)のように求めておけば、閾値条件での設定電圧Eに対しE+ΔEが実際の現像開始時点の設定電圧と推測することが可能である。
また、電圧決定部14の他の代表的態様としては、検出部12の検出結果に基づいて、当該検出結果が閾値設定部13で設定された閾値Saに合致する電圧設定部11による設定電圧(図2中taにおける帯電装置2の帯電部材2aに印加する帯電電圧に相当)を割出し、帯電装置2の帯電部材2aに対する放電開始帯電電圧を予め決められた関係式に従って算出すると共に、算出された放電開始帯電電圧と目標とする像保持体1の表面電圧とに基づいて帯電装置2の帯電部材2aに印加する帯電電圧を決定する態様が挙げられる。
また、電圧決定部14の別の代表的態様としては、電圧設定部11にて帯電装置2の帯電部材2aに印加する帯電電圧又は現像装置4の現像部材4aに印加する現像電圧のいずれか一方を複数段階で固定設定すると共に、夫々の固定設定値に対して電圧設定部11による電圧変化に応じて像保持体1上に現像像を順次形成し、順次形成された現像像に対する検出部12の検出結果に基づいて、当該検出結果が閾値設定部13で設定された閾値に合致する電圧設定部11による設定電圧を夫々の固定設定値毎に割出し、割り出した複数の設定電圧に基づいて帯電装置2の帯電部材2aに印加する帯電電圧を決定する態様が挙げられる。
本態様では、像保持体1の表面電位又は現像装置4の現像電圧のいずれか一方を複数段階で固定設定すると共に、他方については可変設定することで像保持体上に現像像を順次形成し、夫々の固定設定値に対応する他方の設定電圧を割り出す。割り出した複数の設定電圧によって、像保持体1の帯電電位と帯電装置2の帯電部材2aに印加する帯電電圧との関係式を算出し、目標とする像保持体1の帯電電位を得るための帯電装置2への帯電電圧を決定する態様が挙げられる。
【0018】
以下、添付図面に示す実施の形態に基づいて本発明をより詳細に説明する。
◎実施の形態1
<画像形成装置の全体構成>
図3は本発明が適用された実施の形態1に係る画像形成装置の全体構成を示す。
同図において、画像形成装置20は、図示外の装置筐体内に四つの色(本実施の形態ではブラック、イエロ、マゼンタ、シアン)の作像ユニット22(具体的には22a〜22d)を横方向に配列し、その上方には各作像ユニット22の配列方向に沿って循環搬送される例えばベルト状の中間転写体230が含まれる転写ユニット23を配設する一方、装置本体の下方には記録用紙(図示せず)が収容される一若しくは複数の用紙供給装置(図示せず)を配設すると共に、この用紙供給装置からの用紙搬送路25を略鉛直方向に配置したものである。
【0019】
−作像ユニット−
本実施の形態において、各作像ユニット22(22a〜22d)は、図3及び図4に示すように、中間転写体230の循環方向上流側から順に、例えばブラック用、イエロ用、マゼンタ用、シアン用(配列は必ずしもこの順番とは限らない)のトナー像を形成するものであり、例えばドラム状の感光体31と、この感光体31を予め帯電する帯電装置32と、この帯電装置32にて帯電された感光体31上に静電潜像を書き込む潜像書込装置33と、この潜像書込装置33にて書き込まれた各色成分潜像を対応する各色成分トナーにて現像する現像装置34と、感光体31上のトナー等の残留物を清掃する清掃装置35と、を備えている。
本例においては、感光体31は表面に例えば負極性に帯電可能な感光層310を有している。
また、帯電装置32は、帯電容器321に例えば帯電部材としての帯電ロール320を支持し、感光体31の表面に帯電ロール320を接触配置したものである。そして、この帯電ロール320には帯電電圧電源322が接続され、直流電圧成分からなる帯電電圧Vcが印加されている。本例では、帯電電圧Vcは感光体31の極性に合わせて負極性で可変設定可能になっている。
更に、潜像書込装置33は帯電装置32にて初期帯電された感光体31に対し例えばLEDなどの光で静電潜像を書き込むものである。
更にまた、現像装置34は、例えば負極性トナー及びキャリアを含む二成分現像剤が収容され且つ感光体31に対向して開口する現像容器341を有し、この現像容器341の開口に面して現像部材としての現像ロール340を配設すると共に、現像容器341内には複数の撹拌搬送部材342,343を配設し、この撹拌搬送部材342,343によって現像剤を撹拌しながら循環搬送すると共に十分に摩擦帯電された現像剤を現像ロール340に供給するようになっている。そして、現像ロール340には現像電圧電源345が接続され、例えば直流電圧成分からなる現像電圧Vdが印加されている。本例では、現像電圧Vdは感光体31の極性に合わせて負極性で可変設定可能になっている。
また、清掃装置35は、感光体31上のトナー等の残留物が収容され且つ感光体31に対向して開口する清掃容器351を有し、この清掃容器351の開口に面して板状清掃部材352やブラシ状の回転清掃部材353を配設すると共に、清掃容器351内には搬送部材354を配設し、これらの清掃部材352,353によって感光体31上の残留物を掻き取って清掃容器351内に収容し、更に、搬送部材354によって清掃容器351内の残留物を図示外の回収部に搬送するようになっている。
【0020】
−転写ユニット−
また、本実施の形態において、転写ユニット23は、例えば複数の張架ロール231〜235に中間転写体230を掛け渡したものであり、各感光体31に対応した中間転写体230の裏面には一次転写装置51が配設されている。この一次転写装置51は転写容器511に転写部材としての一次転写ロール510を支持し、この一次転写ロール510と感光体31との間に中間転写体230を挟持して搬送すると共に、この一次転写ロール510には一次転写電源512を接続し、トナーの帯電極性と逆極性の直流電圧成分からなる転写電圧Vtを印加することで、感光体31上のトナー像を中間転写体230側に静電的に転写するようになっている。尚、張架ロール231〜235の一つ(例えば231)が駆動ロールとして働き、張架ロール234は中間転写体230に張力を付与する張力付与部材として機能し、更に、張架ロール232,235は中間転写体230の表面位置を規制する位置規制部材として機能する。
更に、中間転写体230の最下流作像ユニット22dの下流側の張架ロール232に対応した部位には二次転写装置52が配設されており、中間転写体230上の一次転写像を記録用紙に二次転写(一括転写)するようになっている。
本実施の形態では、二次転写装置52は、中間転写体230のトナー像が保持される表面側に圧接配置される二次転写ロール521と、中間転写体230の裏面側に配置されて二次転写ロール521の対向電極をなすバックアップロール522(本例では張架ロール233を兼用)と、二次転写ロール521を清掃する転写清掃装置523とを備えている。そして、例えばバックアップロール522(張架ロール233)が接地されており、二次転写ロール521には図示外の二次転写電源が接続され、トナーの帯電極性と同極性の二次転写電圧が印加されている。
−濃度センサ−
また、本実施の形態では、中間転写体230の最下流作像ユニット22dの下流側で二次転写部位の手前には、中間転写体230の表面に対向して濃度センサ53が配設されており、この濃度センサ53は中間転写体230に一次転写されたトナー像の濃度を検出するようになっている。
−用紙搬送系・定着装置−
更にまた、中間転写体230の最上流作像ユニット22aの上流側には中間転写体清掃装置54が配設されており、中間転写体230上のトナー等の残留物を除去するようになっている。
また、本実施の形態では、二次転写部位の直前に位置する用紙搬送路25には記録用紙を所定のタイミングで二次転写部位へ供給する位置合せロール63が配設されている。
一方、二次転写部位の下流側に位置する用紙搬送路25には定着装置66が設けられ、この定着装置66の下流側には図示外の用紙排出装置が設けられており、例えば装置筐体の上部に形成された排出収容受けに排出された記録用紙が収容されるようになっている。
また、本実施の形態において、定着装置66は、図示外の加熱ヒータが内蔵された加熱定着ロール66aと、これに圧接配置されて追従回転する加圧定着ロール66bとを備えている。
【0021】
<制御系>
本例では、制御装置100は例えばマイクロコンピュータにて構成され、画像形成装置の図示外の操作スイッチや、濃度センサ53を始めとする各種センサ類からの信号を入力信号として取り込み、例えば図5に示す作像制御処理プログラムを実行し、作像ユニット22、転写ユニット23の各要素、記録用紙を搬送する用紙搬送系、定着装置66などに対し夫々制御信号を送出するようになっている。
−作像制御処理の概要−
図5において、制御装置100による作像制御処理は、感光体31に対する初期帯電電位を設定するための帯電制御処理の実行タイミングか否かを判定し、実行タイミングであると判定した場合には帯電制御処理を実行し、そうでない場合には帯電制御処理を経ないで、感光体31の初期帯電電位を始めとする作像条件を設定し、作像開始信号等の作像指示を待って、一連の作像シーケンスを実行するものである。
一般に、温湿度や気圧等の環境変化や、帯電装置32の帯電ロール320の抵抗や感光体31の膜厚の経時変化によって、帯電装置32の放電開始電圧、帯電ロール320に印加する帯電電圧Vcと感光体31の帯電電位との関係は一律にはならず、ばらつくものである。特に、直流電圧成分(DC成分)からなる帯電電圧を用いるDC帯電方式では影響が大きく、環境・経時変化に応じて帯電ロール320に印加する帯電電圧Vcを適切な値に設定し直す必要がある。
本実施の形態では、このような要請から、作像シーケンスを実行する前に、「帯電制御処理」を実行すべきか否かの判定を行う。
ここで、「帯電制御処理の実行タイミング」については、環境・経時変化による影響を抑えるという観点から適宜選定することが可能であり、例えば以下のものが挙げられる。
・画像形成装置が起動するタイミング
・画像形成装置内の環境センサ(温度センサ・湿度センサ等)の検出出力が予め設定した複数の環境区分の中で元の環境区分から他の環境区分に変化するタイミング
【0022】
−帯電制御処理−
本例における制御装置100による帯電制御処理の流れを図6に示す。
また、帯電制御処理過程を図7にまとめて示すと共に、図8には帯電制御処理過程を模式的に示す。
(1)現像電圧の固定設定
先ず、現像装置34の現像ロール340に印加する現像電圧Vd(図7ではDeveBiasと表記)を目標とする感光体31の表面電位Vpに相当する基準値m(本例では例えば−400V)に設定する。
(2)濃度センサ出力の閾値設定
濃度センサ53の出力の閾値Saとしては、現像が開始されたことが判定可能な濃度レベルに相当するものが選定される。つまり、感光体31の表面電位Vpと現像電圧Vdとの電位差ΔEに基づいてトナー現像量が変化することから、現像開始に相当すると判定できる程度のトナー現像量が得られるように選定すればよく、本例では例えば電位差ΔE=20〜30Vに基づくトナー現像量に相当する濃度レベルが選定される。
(3)感光体の表面電位の可変設定
感光体31の表面電位Vpについては、基準値mに固定設定された現像電圧Vdよりも絶対値の大きい値(本例では−500V)付近になるように、帯電ロール320に印加する帯電電圧Vcを初期設定した後、この帯電電圧Vcを段階的又は連続的に絶対値が低くなるように順次変化させ、固定設定された現像電圧Vdを過ぎるようにする。尚、帯電電圧Vcの初期設定に当たり、初期帯電電圧の決定手順の一例については後述する実施例中で詳述する。
(4)感光体上に形成された静電潜像の現像
(3)による感光体31の表面電位Vpを可変設定すると、感光体31上には電位変化する静電潜像が形成され、現像装置34の現像ロール340に固定設定された現像電圧Vdを印加した状態で現像動作を行うと、感光体31上の静電潜像電位と現像電圧Vdとの電位差に依存してトナー現像量が異なるトナー像がある時点から形成され始める。
このように感光体31上に形成されたトナー像は一次転写装置51によって中間転写体230に一次転写される。
【0023】
(5)濃度センサ出力の検出
(4)による現像動作を経て中間転写体230上に一次転写されたトナー像は濃度センサ53に対向する部位を通過し、制御装置100は濃度センサ53により中間転写体230上のトナー像の濃度を検出する。
今、(3)で述べたように、感光体31の表面電位Vpを段階的又は連続的に変化させていくと、図7及び図8に示すように、ある時刻tにおいて、感光体31の表面電位Vpと現像電圧Vdとが一致し、更に、時刻tにおいて感光体31上の静電潜像に対して現像が開始され、時刻tにおいて濃度センサ53がトナー像に対するトナー濃度の変化を検出する。このときの時刻t〜tにおける濃度センサ53の検出出力SをS〜Sとすると、S≒S≒0、S≠0である。
ここで、時刻tよりも前の任意の時刻tにおいては、図7及び図8に示すように、感光体31の表面電位Vpと現像電圧Vdとは|Vp|>|Vd|の関係にあることから、現像は開始されておらず、S=0である。また、時刻tよりも後の時刻tにおいては、図7及び図8に示すように、|Vp|<|Vd|で且つ|ΔE|が時刻tに比べてより大きくなることから、時刻tにおける濃度センサ53の検出出力SをSとすれば、トナー像のトナー濃度はより高いものになる(S>S)。
(6)濃度センサの閾値判定
制御装置100は、濃度センサ53の出力を適宜の検出タイミング毎に検出し、時刻tにおいて濃度センサ53の検出出力Sが閾値Saに合致したものと判定する。
(7)閾値に対応する感光体の表面電位の割出し
(6)の検出結果に基づいて、閾値Saに対応する感光体31の表面電位VpがPであることを割り出す。
(8)帯電装置に対する初期帯電電圧の変更
時刻tにおける現像電圧Vdは実際の感光体31の表面電位Vp(P)より|ΔE|(本例では20〜30V)だけ絶対値が小さいことは事前の実験などを経て経験的に確認されている。これを補正量として捉え、帯電装置32の帯電ロール320に印加する帯電電圧Vcは時刻tにおける印加電圧よりも20〜30V絶対値で大きい値にすれば、目標の感光体31の表面電位Vp(時刻tにおけるPに相当)を決定することが可能である。
【0024】
−帯電電圧の他の決定手順−
帯電電圧の決定手順については、上述したような手順に限られるものではなく、例えば目標とする感光体の表面電位とは異なる複数の感光体の表面電位(感光体電位)に対応して複数の異なる値からなる現像電圧Vdを固定設定し、夫々の現像電圧Vdに対して本実施の形態に係る帯電制御処理を行うようにしてもよい。
今、感光体の表面電位(感光体電位)として、条件I〜条件IIIが選定されたと仮定する。
ここで、条件I〜条件IIIについては、図9(b)〜(d)に示すように、固定設定する現像電圧Vdを夫々異なる値Vd、Vd、Vdとし、これに対して感光体の表面電位Vpを可変設定することで得られる静電潜像を現像し、予め定めた閾値Saに対応する感光体の表面電位Vpを割出し、このときの帯電装置に印加する帯電電圧Vcを求め、感光体の表面電位Vpと帯電装置に印加する帯電電圧Vcとの関係をプロットすると、図9(a)に示すように、線形な関係の結果が得られる。
このようにして得られた測定値から、帯電電圧計算式を算出し、目標とする感光体の表面電位を得るために必要な帯電装置に対する帯電電圧を決定するようにすればよい。
このとき、前記した補正量を帯電電圧算出後に付加するようにしてもよいことは勿論である。
【0025】
◎変形の形態
本実施の形態では、帯電制御処理に当たり、現像電圧(DeveBias)を固定設定すると共に、感光体31の表面電位(感光体電位)を可変設定することで、濃度センサ53の検出出力Sが閾値Saに合致する部位を判定するようにしているが、これに限られるものではなく、例えば図10に示すように、感光体31の表面電位を固定設定すると共に、現像電圧(DeveBias)を可変設定することで、濃度センサ53の検出出力Sが閾値Saに合致する部位を判定するようにしてもよいことは勿論である。
また、本実施の形態では、濃度センサ53は中間転写体230上のトナー像を検出する方式であるが、必ずしもこれに限定されるものではなく、例えば感光体31に対向して濃度センサ53を配設し、感光体31上のトナー像の濃度を検出するようにしても差し支えない。
【0026】
◎実施の形態2
図11は実施の形態2に係る画像形成装置の要部を示す説明図である。
同図において、画像形成装置の基本的構成は、実施の形態1と略同様であるが、制御装置による帯電制御処理の内容が実施の形態2と異なるものになっている。尚、実施の形態1と同様な構成要素については実施の形態1と同様な符号を付してここではその詳細な説明を省略する。
本実施の形態では、一次転写装置51の一次転写ロール510には一次転写電源512が接続されており、この一次転写ロール510と一次転写電源512とに対して転写検出器としての電流センサ55が直列接続されている。
そして、制御装置100は、例えばマイクロコンピュータにて構成され、画像形成装置の図示外の操作スイッチや、電流センサ55を始めとする各種センサ類からの信号を入力信号として取り込み、実施の形態1と略同様な作像制御処理プログラムを実行すると共に、この作像制御処理の一環として図12に示す帯電制御処理を実行し、作像ユニット22、転写ユニット23の各要素、記録用紙を搬送する用紙搬送系、定着装置66などに対し夫々制御信号を送出するようになっている。
ここで、制御装置100による帯電制御処理は、図12に示すように、実施の形態1で用いていた濃度センサ53に代えて電流センサ55を用いたものである。
【0027】
つまり、本実施の形態では、以下のような処理工程が行われる。
(1)現像電圧の固定設定
(2)電流センサ出力の閾値設定
電流センサ55の出力の閾値Saとしては、現像が開始されたことが判定可能な濃度レベルに相当するトナー像を一次転写装置51にて一次転写するときに検出されるものが選定される。
(3)感光体の表面電位の可変設定
(4)感光体上に形成された静電潜像の現像
(5)電流センサ出力の検出
(4)による現像動作を経て中間転写体230上にトナー像を一次転写するときに、電流センサ55に流れる転写電流を検出する。
今、(3)に示すように、感光体31の表面電位Vpを段階的又は連続的に変化させていくと、図13に示すように、ある時刻tにおいて、感光体31の表面電位Vpと現像電圧Vdとが一致し、更に、時刻tにおいて感光体31上の静電潜像に対して現像が開始され、時刻tにおいてトナー像に対するトナー濃度の変化が起こり、電流センサ55による転写電流の変化を検出する。
これは、図14(a)に示すように、時刻tにおいてトナー像が一次転写装置51によって転写されるときには、中間転写体230と感光体31との間にトナー像Tが介在することから、一次転写ロール510と感光体31との間の通電抵抗としては、トナー像Tが介在していない場合に比べて、トナー像Tの抵抗(Rt)分だけ増加することになる。
このため、図14(b)に示すように、トナー像Tにおける現像トナー量Dが増加すると、その抵抗(Rt)分が増加する分、転写電流ItがΔItだけ減少する。
このように、中間転写体230に一次転写されるトナー像Tの濃度が増加すると、その分、現像トナー量Dが増加することから、現像トナー量Dに応じて転写電流Itは減少することになる。
よって、実施の形態1では、トナー像Tの濃度変化によって現像開始に相当するトナー像Tであるか否かを判定していたが、本例では、トナー像Tの濃度変化に依存する転写電流Itの変化によって現像開始に相当するトナー像Tであるか否かを判定するようにしたものである。
(6)電流センサの閾値判定
制御装置100は、電流センサ55の出力を適宜の検出タイミング毎に検出し、時刻tにおいて電流センサ55の検出出力Sが閾値Saに合致したものと判定する。
(7)閾値に対応する感光体の表面電位の割出し
(6)の検出結果に基づいて、閾値Saに対応する感光体31の表面電位VpがPであることを割り出す。
(8)帯電装置に対する初期帯電電圧の変更
尚、実施の形態1と略同様な処理については説明を省略する。また、本実施の形態では、実施の形態1で用いた濃度センサ53を帯電制御処理には使用していないが、本実施の形態において、例えば画質濃度を制御する現像剤補給制御について濃度センサ53を使用して差し支えないことは勿論である。
【実施例】
【0028】
◎実施例1
実施の形態1に係る画像形成装置を実施例1とし、現像電圧(DeveBias)を予め決めた値(Vh)に固定設定すると共に、感光体の表面電位(感光体電位)を可変設定し、感光体の表面電位(感光体電位)と現像電圧(DeveBias)との差分に対するトナー濃度を測定した結果を図15に示す。
図16は図15の感光体の表面電位(感光体電位)と現像電圧(DeveBias)との差分が0付近の拡大図であり、同図において、感光体の表面電位(感光体電位)と現像電圧(DeveBias)との差分が0を境として、現像領域とかぶり/汚れ領域(非現像領域)とに分かれるが、現像開始に至るトナー濃度は、固定設定した現像電圧Vhのいずれの条件についても略同じレベル(本例では0.105)であった。
そこで、現像開始に相当するトナー濃度として0.105を閾値とし、2つのケースに対して現像電圧Vhを364V,353V,370V又は364V,313V,369Vに固定設定すると共に、感光体電位を可変設定し、実施例1による手法で閾値に対応する感光体電位の推測値を算出したところ、図17(a)(b)に示すように、いずれのケースについても、実測値(図中●で表記)に近い範囲に推測値(図中▲で表記)を得ることが確認された。
【0029】
◎実施例2
実施の形態1に係る画像形成装置を実施例2とし、この実施例2で用いられる初期帯電電圧の決定手順の一例を説明する。
−初期帯電電圧の決定手順−
・手順1:
以下の式1により放電開始帯電電圧Vgap(V)が最小になる間隙g(μm)を求め、それを放電開始帯電電圧とする。
gap=(6×g+312)×(1+感光体膜厚/g×1/感光体誘電率)…式1
但し、式1において、
目的とする感光体の表面電位:−400V
感光体膜厚:22μ
感光体誘電率:3
間隙g:感光体と帯電ロールとの間で放電が生じている間隙(図18(b)参照)であり、また、係数である‘6’‘312’は夫々パッシェン則の大気中における放電開始電位と電極間間隙の関係を一次式で線形近似した際に算出された係数である。尚、パッシェン則の近似式をより精度の高い式に置き換えてもよいことは勿論である。
手順1に従って感光体/帯電ロール間の間隙と放電開始帯電電圧との関係を調べたところ、図18(a)に示す結果が得られた。
同図によれば、間隙g=20μ、放電開始帯電電圧Vgapは−590Vであることが理解される。
・手順2:
初期帯電電位は以下の式2で求める。
初期帯電電圧=放電開始帯電電圧+現像電位+マージン…式2
但し、マージンは感光体へのキャリアの転写を避けるため、本例では例えば−100Vが選定される。
つまり、本例の場合には、放電開始帯電電圧:−590V,現像電位:−400V,マージン:−100Vであるから、初期帯電電圧=−1090Vとして決定される。
【符号の説明】
【0030】
1…像保持体,1a…被帯電層,2…帯電装置,2a…帯電部材,3…潜像書込装置,4…現像装置,4a…現像部材,5…転写装置,5a…転写部材,6…転写媒体,10…帯電制御装置,11…電圧設定部,12…検出部,13…閾値設定部,14…電圧決定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に帯電可能な被帯電層を有し、静電潜像及びこれの現像剤による可視像を保持する像保持体と、
この像保持体に接触又は近接配置される帯電部材を有し、当該帯電部材に帯電電圧を印加することで前記像保持体表面を帯電する帯電装置と、
この帯電装置にて予め帯電された像保持体に対し静電潜像を書き込む潜像書込装置と、
前記像保持体に対向する現像部材を有し、この現像部材に予め決められた現像電圧を印加することで前記静電潜像の潜像電位と前記現像電圧との差分に応じて前記静電潜像に対する現像剤による現像量を可変調整する現像装置と、
前記像保持体に対向して設けられ、前記現像装置にて像保持体上に形成された現像像を転写媒体に転写させる転写装置と、
前記潜像書込装置による静電潜像を形成する前に前記像保持体を予め決められた初期帯電電位に帯電するように、前記帯電装置の帯電部材に印加する帯電電圧を制御する帯電制御装置と、を備え、
前記帯電制御装置は、
前記帯電装置の帯電部材に印加する帯電電圧又は前記現像装置の現像部材に印加する現像電圧のいずれか一方を固定設定すると共に、いずれか他方を順次可変設定する電圧設定部と、
前記像保持体上に形成された現像像の現像剤による現像量に応じて変化する物理量を検出する検出部と、
前記像保持体上に形成される現像像のうち、前記検出部による検出結果から、現像開始に相当する現像量の現像像である条件を判定するための閾値を設定する閾値設定部と、
前記電圧設定部による電圧変化に応じて像保持体上に現像像を順次形成し、前記順次形成された現像像に対する前記検出部の検出結果に基づいて、当該検出結果が前記閾値設定部で設定された閾値に合致する電圧設定部による設定電圧を割出し、この割り出した設定電圧に基づいて前記帯電装置の帯電部材に印加する帯電電圧を決定する電圧決定部と、を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1記載の画像形成装置において、
前記帯電装置は、前記帯電部材に直流電圧成分からなる帯電電圧を印加するものであることを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の画像形成装置において、
前記電圧設定部は、前記現像装置の現像部材に印加する現像電圧を作像処理時の値よりも絶対値が大きく且つ像保持体の初期表面電位よりも絶対値の小さい基準値に固定設定すると共に、前記像保持体の表面電位を、前記現像電圧の基準値よりも絶対値が大きい初期値から前記基準値を過ぎるように順次可変設定することを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項1ないし3いずれかに記載の画像形成装置において、
前記検出部は、前記像保持体に形成された現像像の現像剤による現像量に応じて変化する濃度情報を検出する濃度検出器であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項1ないし4いずれかに記載の画像形成装置において、
前記電圧決定部は、前記検出部の検出結果に基づいて、当該検出結果が前記閾値設定部で設定された閾値に合致する電圧設定部による設定電圧を割出し、この割り出した設定電圧に実際の現像開始条件と前記閾値条件との差に相当する補正量が付加された補正後設定電圧を算出すると共に、この補正後設定電圧に基づいて前記帯電装置の帯電部材に印加する帯電電圧を決定することを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項1ないし5いずれかに記載の画像形成装置において、
前記電圧決定部は、前記検出部の検出結果に基づいて、当該検出結果が前記閾値設定部で設定された閾値に合致する電圧設定部による設定電圧を割出し、前記帯電装置の帯電部材に対する放電開始帯電電圧を予め決められた関係式に従って算出すると共に、算出された放電開始帯電電圧と目標とする像保持体の表面電圧とに基づいて前記帯電装置の帯電部材に印加する帯電電圧を決定することを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
請求項1ないし5いずれかに記載の画像形成装置において、
前記電圧決定部は、前記電圧設定部にて前記帯電装置の帯電部材に印加する帯電電圧又は前記現像装置の現像部材に印加する現像電圧のいずれか一方を複数段階で固定設定すると共に、夫々の固定設定値に対して前記電圧設定部による電圧変化に応じて像保持体上に現像像を順次形成し、前記順次形成された現像像に対する前記検出部の検出結果に基づいて、当該検出結果が前記閾値設定部で設定された閾値に合致する電圧設定部による設定電圧を夫々の固定設定値毎に割出し、割り出した複数の設定電圧に基づいて前記帯電装置の帯電部材に印加する帯電電圧を決定することを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
請求項1ないし3いずれかに記載の画像形成装置において、
前記転写装置は、前記像保持体との間に転写媒体を挟んで前記像保持体に対向する転写部材を有し、この転写部材に転写電圧を印加することで前記像保持体上の現像像を転写媒体に転写するものであり、
前記検出部は、前記像保持体に形成された現像像の現像剤による現像量に応じて変化する転写部材に対する転写電流又は転写電圧を検出する転写検出器であることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2013−73052(P2013−73052A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−212367(P2011−212367)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】