説明

画像形成装置

【課題】二次転写部T2でトナーの転写を行う中間転写ベルト24と二次転写ベルト60とが、別々に回転駆動される構造であっても、トナー像の倍率の変動や色ずれを低減できる構造を実現する。
【解決手段】二次転写ベルトユニット56の駆動力を検知し、この駆動力が所定の範囲となるように、ファーブラシ70の回転速度および回転方向を制御する。即ち、駆動力が所定の範囲未満の場合、ファーブラシ70により二次転写ベルトユニット56の駆動をアシストする。一方、駆動力が所定の範囲を超える場合、ファーブラシ70により二次転写ベルトユニット56にブレーキをかける。これにより、二次転写ベルトユニット56の駆動力を安定させ、トナー像の倍率の変動や色ずれを低減できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンタ、ファクシミリ、これらの複合機などの画像形成装置に関し、特に、像担持体に当接する記録材搬送手段或いは中間転写体を有する構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、複写機等の画像形成装置においては、出力画像の表裏ズレなどの画像位置精度が従来よりもさらに良いレベルを求められている。例えば、中間転写ベルトなどの像担持体から記録材搬送手段により搬送される記録材にトナー像を転写する構造では、転写部となる像担持体と記録材搬送手段との当接部での記録材の搬送性が、出力画像の倍率に影響を与える。このため、像担持体と記録材搬送手段との当接部での記録材の搬送性が、高精度かつ安定していることを求められる。
【0003】
しかしながら、像担持体と記録材搬送手段の両方に駆動部を持つ技術においては、記録材の厚み及び種類などによって、出力画像の倍率が不安定になるという現象が発生していた。これは当接部(転写部)で生じる像担持体と記録材搬送手段との速度差が原因であった。
【0004】
そこで、記録材搬送手段と像担持体との駆動部を独立に構成し、トルクリミッタを記録材搬送手段の駆動部に持たせることで、当接部での像担持体と記録材搬送手段との速度差を小さくする技術が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−52757号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述のようにトルクリミッタを設けても、例えば、記録材搬送手段としての記録材搬送ベルトを張架する張架ローラの軸受部や、このベルトを清掃するクリーニングブレードなどによる負荷が変化して、ベルトの駆動力が変化する場合がある。具体的には、機械の周辺環境や使用などにより、軸受部が劣化してローラの回転抵抗が増大したり、クリーニングブレードのブレード表面の潤滑材が少なくなって、接触部での摩擦が大きくなったりする。
【0007】
このように記録材搬送ベルトの負荷が変化すると、記録材搬送ベルトの駆動部が持つ駆動力と、記録材搬送ベルトの駆動に付随するクリーニングブレードなどの負荷とのバランスが崩れることがある。この結果、上述の例では、記録材搬送ベルトを駆動する負荷が大きくなり、記録材搬送ベルトによる記録材の搬送力(駆動力)は相対的に低下することになる。この結果、記録材搬送ベルトの駆動力が低下して、当接部で像担持体と記録材搬送ベルトとの速度差が生じ、転写されるトナー像の副走査方向の倍率が変動したり、色ずれが発生したりする可能性がある。
【0008】
一方、ブレードとベルトとの接触部に多量のトナーが供給されたりして、接触部での摩擦が低下した場合には、記録材搬送ベルトの駆動力が相対的に大きくなる場合がある。この場合、やはり、転写部で像担持体と記録搬送ベルトとの速度差が生じ、転写されるトナー像の倍率が変動したり、色ずれが発生したりする可能性がある。
【0009】
また、このようなトナー像の倍率の変動や色ずれは、像担持体から中間転写体に転写する構造でも生じ得る。要は、当接部でトナーの転写を行う2つの回転体が別々に回転駆動される構造であれば、速度差によるトナー像の倍率の変動や色ずれが生じ得る。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑み、当接部でトナーの転写を行う2つの回転体が別々に回転駆動される構造であっても、トナー像の倍率の変動や色ずれを低減できる構造を実現すべく発明したものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、第1回転体と、前記第1回転体を回転駆動する第1駆動手段と、前記第1回転体と当接する第2回転体と、前記第2回転体を回転駆動する第2駆動手段と、前記第1回転体と前記第2回転体との当接部でトナー像の転写を行う転写手段と、を備えた画像形成装置において、前記第2回転体の駆動トルクに関する値を検知するトルク検知手段と、前記トルク検知手段により検知する値が所定の範囲となるように、前記第2回転体の駆動トルクを制御するトルク制御手段と、を有する、ことを特徴とする画像形成装置にある。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、トルク検知手段により検知する値が所定の範囲となるようにトルク制御手段により第2回転体の駆動トルクを制御しているため、第2回転体の駆動力を安定させて、当接部での第1回転体と第2回転体との速度差を低減できる。そして、トナー像の副走査方向の倍率の変動や色ずれを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係る画像形成装置の概略構成断面図。
【図2】中間転写ベルトと二次転写ベルトユニットとの当接部を拡大して示す図。
【図3】二次転写ベルトユニットの斜視図。
【図4】二次転写ベルトユニットの駆動力と、転写されたトナー像の副走査方向の全体倍率との関係を示す図。
【図5】本実施形態の全体倍率調整モードのフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態について、図1ないし図5を用いて説明する。まず、本実施形態の画像形成装置の概略構成について、図1を用いて説明する。
【0015】
[画像形成装置]
画像形成装置1は、4色の画像形成部2を中間転写ベルト24上に並べて配置した、所謂中間転写タンデム方式の画像形成装置である。中間転写タンデム方式は、高いプロダクティビティや様々なメディアの搬送に対応できる点から、近年主流となっている構成である。
【0016】
このような画像形成装置1の中間転写ベルト24の二次転写部T2まで送られて来る画像の形成プロセスについて説明する。なお、各画像形成部2は、それぞれ現像剤であるトナーの色が異なるだけで、基本的な構成は同様である。このため、同様の構成部分については総括的に説明する。
【0017】
画像形成部2は、像担持体である感光体20、帯電装置21、露光装置22、現像装置23、一次転写装置31、および感光体クリーナ26等から構成される。予め帯電装置21により表面を一様に帯電され、回転駆動される感光体20に対し、送られてきた画像情報の信号に基づいて露光装置22が駆動され、静電潜像が形成される。次に、感光体20上に形成された静電潜像は、現像装置23によるトナー現像を経て、トナー像として顕在化する。
【0018】
その後、一次転写装置31により所定の加圧力および静電的負荷バイアスが与えられ、中間転写ベルト24上にトナー像が転写される。感光体20上に僅かに残った転写残トナーは感光体クリーナ26により回収され、再び次の作像プロセスに備える。以上説明した画像形成部2は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)およびブラック(Bk)の4セット存在する。ただし、色数は4色に限定されるものではなく、また色の並び順もこの限りではない。
【0019】
次に、像担持体であり中間転写体である中間転写ベルト24について説明する。中間転写ベルト24は、無端状のベルトであり、矢印e方向に回転駆動される第1回転体である。このために、中間転写ベルト24は、図示しない中間転写ベルトフレームに設置された駆動ローラ29、テンションローラ27、一次転写上流ローラ100、一次転写下流ローラ101、二次転写上流ローラ102および二次転写内ローラ28によって張架されている。そして、第1駆動手段である中間転写ベルト駆動モータ29aにより駆動ローラ29を回転駆動して、中間転写ベルト24を矢印e方向に回転駆動するようにしている。
【0020】
また、各画像形成部2の感光体20に対向する、中間転写ベルト24の内側には、それぞれ一次転写装置31を構成する一次転写内ローラ25a、25b、25c、25dが配置されている。そして、各一次転写内ローラ25a、25b、25c、25dに転写バイアスを印加することにより、各感光体20上に形成されたトナー像をそれぞれ中間転写ベルト24上に転写するようにしている。Y、M、CおよびBkの画像形成部2により並列処理される各色の作像プロセスは、中間転写ベルト24上に一次転写された上流色のトナー像上に順次重ね合わせるタイミングで行われる。その結果、最終的にはフルカラーのトナー像が中間転写ベルト24上に形成される。
【0021】
中間転写ベルト24上に形成されたトナー像は、当接部である二次転写部T2で中間転写ベルト24と当接する記録材搬送手段である二次転写ベルトユニット56により搬送される記録材Pに転写される。二次転写ベルトユニット56は、第2回転体であり、無端状の二次転写ベルト60を有する。二次転写ベルト60は、二次転写ベルトフレーム300に設置された駆動ローラ61、テンションローラ63、二次転写外ローラ45、分離ローラ62によって張架される。そして、第2駆動手段である二次転写ベルト駆動モータ80により駆動ローラ61を回転駆動して、二次転写ベルト60を図2の矢印f方向に回転駆動するようにしている。
【0022】
また、二次転写外ローラ45が二次転写内ローラ28の中心方向に加圧されることにより、中間転写ベルト24と二次転写ベルト60とが当接してニップ部を形成する。このニップ部が二次転写部T2を構成する。中間転写ベルト24上に形成されたトナー像は二次転写部T2へと搬送され、二次転写部T2に電源45aから転写バイアスが印加されることにより、二次転写ベルト60により搬送される記録材Pに転写される。本実施形態では、二次転写外ローラ45と二次転写内ローラ28と、これらの間に転写バイアスを印加する電源45aとで転写手段である二次転写装置55を構成する。二次転写部T2を通過した後に中間転写ベルト24上に残ったトナーは、転写クリーナ装置30によって回収される。
【0023】
次に、二次転写部T2に記録材Pを搬送する用紙搬送部4の構成について説明する。用紙カセット40に納められた記録材Pは、給紙ローラ41および分離ローラ対42によって1枚ずつ分離され、複数の搬送ローラ43によってレジストローラ対44へと搬送される。レジストローラ対44の所まできた記録材Pは、中間転写ベルト24上のトナー像の位置とタイミングを合わせて二次転写部T2へと搬送され、二次転写装置55によってトナー像が記録材Pに転写される。
【0024】
その後、記録材Pは、二次転写ベルト60に静電吸着力で張り付きながら搬送され、上述のように二次転写部でトナー像が転写される。静電吸着力で張り付いた記録材Pは分離部64で分離ローラ62の曲率によって分離され、下流にある搬送ベルト46を介して、トナー像を記録材Pに定着させる定着装置47へと送られる。その後トナー像が定着した記録材Pは、装置本体の外へ排出する排紙ローラ48a、48b、48cによって、排紙トレー49に排出され、積載収容される。上述の各部の制御は、制御手段であるCPU3により行われる。
【0025】
[二次転写ベルトユニット]
次に、二次転写ベルトユニット56について、図2及び図3を用いてより詳細に説明する。本実施形態の場合、二次転写ベルト60には、ベルト表面を清掃するクリーニング機構が付随している。クリーニング機構は、クリーニングブレード72と、ファーブラシ70とを有する。クリーニングブレード72は、二次転写ベルト60に当接して二次転写ベルト60に付着したトナーを除去する。このようなクリーニングブレード72は、二次転写ベルト60を挟んで駆動ローラ61と対向する位置に配置され、二次転写ベルト60に向かって一定の圧力で付勢されている。
【0026】
ファーブラシ70は、二次転写ベルト60に当接する接触体であり、第3回転体でもあり、二次転写ベルト60の回転駆動方向に沿う方向に回転可能である。また、ファーブラシ70は、第3駆動手段であるファーブラシ駆動モータ90により回転駆動される。本実施形態では、ファーブラシ駆動モータ90は、ファーブラシ70の回転方向及び回転速度を可変に回転駆動可能である。
【0027】
このようなファーブラシ70は、クリーニングブレード72の二次転写ベルト60の回転方向上流に配置され、通常、二次転写ベルト60の回転方向と逆方向に回転して、二次転写ベルト60に付着したトナーを均す。また、ファーブラシ70は、二次転写ベルト60を挟んで駆動ローラ61と対向する位置に配置され、例えば、二次転写ベルト60に対して約1mm侵入させている。ファーブラシ70の外径は、例えば16mmである。また、ファーブラシ70の外周には、フリッカー71が、例えば約1.5mm侵入させて配置してある。
【0028】
このような構成を有するクリーニング機構は、次のように二次転写ベルト60に付着したトナーを清掃する。即ち、画像形成装置の動作中には、中間転写ベルト24の表面に付着したパッチトナーやかぶりトナーが二次転写部T2において、中間転写ベルト24から二次転写ベルト60に転写される。二次転写ベルト60に転写されたトナーは、ファーブラシ70で均されてから、クリーニングブレード72でかきとられ、清掃される。ファーブラシ70に付着したトナーはフリッカー71にかき落とされて、回収トナー容器に溜まる。
【0029】
次に、図3を用いて二次転写ベルトユニット56の駆動系について説明する。二次転写ベルト駆動モータ80は、二次転写ベルトユニット56の前側に配置される。ここで、前側とは、画像形成装置1を設置した状態でユーザが操作する正面側であり、後側は、この反対側となる。二次転写ベルトユニット56の後側には、ファーブラシ70を回転駆動する第3駆動手段であるファーブラシ駆動モータ90を配置している。
【0030】
二次転写ベルト駆動モータ80は、二次転写ベルトモータギア81と、トルクリミッタギア82と、トルクリミット機構であるトルクリミッタ83とを介して、駆動ローラ61に駆動を伝達する。このような二次転写ベルト駆動モータ80は、二次転写ベルト60の二次転写部T2での周速が中間転写ベルト24よりも1%〜3%速くなるように設定してある。
【0031】
また、トルクリミッタ83は、クリーニングブレード72やファーブラシ70、二次転写ベルト60を張架するローラの軸受部などの、二次転写ベルト60にかかる負荷分だけを駆動することを目的に設定している。本実施形態では、このような負荷トルクに対して駆動ローラ61の軸上で200gf〜300gf(1.96N〜2.94N)だけ大きくなるように初期設定されている。このようにトルクリミッタ83を設定することにより、二次転写ベルト60と中間転写ベルト24との当接部で発生する周速差を、トルクリミッタ83における滑りで吸収するようにしている。なお、上述の初期設定の範囲で、200gf以上としたのは、トルクリミッタ83のばらつきを考慮したものである。一方、300gf以下としたのは、300gfよりも大きくすると、二次転写ベルトユニット56の駆動が中間転写ベルト24の駆動に与える影響が大きくなるためである。
【0032】
ファーブラシ駆動モータ90は、ファーブラシ駆動モータギア91と、ファーブラシギア92とを介してファーブラシ70に駆動を伝達するようにしている。本実施形態では、駆動ローラ61は回転方向fに二次転写ベルト60を、例えば321mm/sで回転させ、ファーブラシ70は初期設定では回転方向fとは反対に、例えば250mm/sで回転する。
【0033】
次に画像形成装置の出力画像の画像位置精度について説明する。画像位置精度は、レジストローラ対44、二次転写部T2、定着装置47、画像形成部2など様々な要因が関係して決まる。しかし、記録材の副走査方向の全体倍率については、検討を行った結果、二次転写ベルトユニット56の持つ駆動力に大きな感度を持つことが分かっている。ここで言う駆動力とは次の式で示される。即ち、(二次転写ベルトユニット56の駆動力)=(二次転写ベルト駆動のトルクリミッタ83の設定値)−(クリーニング機構や軸受部などの二次転写ベルト60に作用する負荷値)。
【0034】
図4に、二次転写ベルトユニット56の駆動力と記録材の副走査方向の全体倍率の関係を示す。図4から明らかなように、二次転写ベルトユニット56の駆動力が変動すれば、記録材の副走査方向の全体倍率が変化する。このため、安定した画像を得るためには、二次転写ベルトユニット56の駆動力を安定させることが重要となる。
【0035】
一方、クリーニング機構、特にクリーニングブレード72は、画像形成装置1の設置される環境や使用状況によって経時的に負荷値の変動が起こることが分かっている。このため、クリーニングブレード72の負荷値の変動によって、二次転写ベルトユニット56の駆動力は変化し、出力画像の副走査方向の全体倍率が変化してしまう。
【0036】
[調整モード]
そこで、本実施形態では、経時的な全体倍率の変動を抑えるために、ある一定間隔で副走査方向の全体倍率の調整モードを設けている。また、このような調整モードを実施すべく、本実施形態では、トルク検知手段と、トルク制御手段とを有する。トルク検知手段は、二次転写ベルトユニット56の駆動トルクに関する値を検知する。トルク制御手段は、トルク検知手段により検知する値が所定の範囲となるように、二次転写ベルトユニット56の駆動トルクを制御する。以下、図2を用いて詳細に説明する。
【0037】
まず、トルク制御手段は、トルクリミット機構であるトルクリミッタ83と、接触体であるファーブラシ70と、コントローラCとを有する。トルクリミッタ83は、上述のように初期設定され、トルク検知手段により検知する値が所定の範囲となるように、二次転写ベルト駆動モータ80による駆動力を制限している。
【0038】
ファーブラシ70は、上述のように二次転写ベルト60に当接して、二次転写ベルト60上のトナーを均す。但し、それ以外に、回転速度を変えたり回転方向を変えて、中間転写ベルト24及び二次転写ベルト駆動モータ80とは別に、二次転写ベルトユニット56との間でトルクの授受を行う。そして、トルク検知手段により検知する値が使用により所定の範囲から外れた場合に、二次転写ベルトユニット56に当接して、トルク検知手段により検知する値が所定の範囲となるようにしている。
【0039】
コントローラCは、次述するトルク検知手段を構成する変位検知手段である変位センサ63aにより検知した値に基づいて、ファーブラシ駆動モータ90を制御する。例えば、変位センサ63aにより検知した値から、二次転写ベルトユニット56の駆動トルクが所定の範囲よりも大きくなる場合には、次のように制御する。即ち、ファーブラシ70の回転方向が二次転写ベルト60の回転方向に沿う方向で、且つ、二次転写ベルト60よりの周速よりもファーブラシ70の周速が速くなるように、ファーブラシ駆動モータ90を制御する。回転速度は、検知した駆動トルクと所定の範囲との差が大きいほど大きくすることが好ましい。これにより、二次転写ベルトユニット56の駆動がファーブラシ70の駆動により補助され、駆動トルクを所定の範囲内に収めることができる。
【0040】
一方、変位センサ63aにより検知した値から、二次転写ベルトユニット56の駆動トルクが所定の範囲よりも小さくなる場合には、次のように制御する。即ち、ファーブラシ70の回転方向が二次転写ベルト60の回転方向に沿う方向と逆方向となるように、ファーブラシ駆動モータ90を制御する。回転速度は、検知した駆動トルクと所定の範囲との差が大きいほど大きくすることが好ましい。これにより、ファーブラシ70の駆動が二次転写ベルトユニット56の駆動にブレーキをかける状態となり、駆動トルクを所定の範囲内に収めることができる。
【0041】
次に、トルク検知手段について説明する。本実施形態では、二次転写ベルトユニット56を中間転写ベルト24に当接した状態と、離間した状態とでそれぞれ検知した二次転写ベルトユニット56の駆動トルクの差分を、駆動トルクに関する値として検知している。このために、二次転写ベルトユニット56を中間転写ベルト24に接離させる接離機構200を有する。
【0042】
接離機構200は、カム201と、このカム201を回転駆動する駆動モータ202とを有する。カム201は、駆動ローラ61、テンションローラ63、二次転写外ローラ45、分離ローラ62をそれぞれ支持する二次転写ベルトフレーム300に当接するように配置されている。二次転写ベルトフレーム300は、装置の固定部分に回転自在に支持され、カム201の回転により中間転写ベルト24に遠近動する。したがって、駆動モータ202を駆動してカム201を回転させることにより、二次転写ベルトユニット56を中間転写ベルト24に接離させることができる。
【0043】
また、二次転写ベルトユニット56は、無端状の二次転写ベルト60をゴムベルトとしている。そして、二次転写ベルト60に張力を付与するテンションローラ63を設け、テンションローラ63は、テンションバネ63bにより付勢されている。また、テンションローラ63の近傍には、このテンションローラ63の変位量を検知する変位センサ63aを配置している。変位センサ63aは、テンションローラ63の変位量を検知できれば、接触、非接触の何れの構造でも良いが、より精密に検査するためには、ラインセンサなどの光学センサを使用して、非接触で検知することが好ましい。
【0044】
トルク検知手段は、二次転写ベルト60が中間転写ベルト24に接触した状態と、二次転写ベルト60が中間転写ベルト24から離間した状態との、テンションローラ63の変位量から、二次転写ベルトユニット56の駆動トルクの差分を求める。具体的には、二次転写ベルト60と中間転写ベルト24との接触した状態と離間状態でのそれぞれで検知した変位センサ63aの信号をコントローラCに送り、コントローラCで二次転写ベルトユニット56の駆動トルクの差分を演算する。
【0045】
このような構成で求めた二次転写ベルトユニット56の駆動トルクの差分は、上述した二次転写ベルトユニット56の駆動力に相当する。ここで、二次転写ベルト60が中間転写ベルト24に接触した状態(着時)のトルクは、「二次転写ベルト駆動のトルクリミッタ83の設定値」となる。即ち、着時では、中間転写ベルト24からの負荷が支配的となるため、クリーニング機構などの負荷は無視でき、この時のトルクは、トルクリミッタ83の設定の範囲となる。これに対して、二次転写ベルト60が中間転写ベルト24に離間した状態(脱時)のトルクは、中間転写ベルト24からの負荷がなくなるため、「クリーニング機構やその他の負荷値」となる。
【0046】
したがって、上述した着時と脱時との二次転写ベルトユニット56の駆動トルクの差分を算出することにより、上述の式の二次転写ベルトユニット56の駆動力が求められる。要は、二次転写ベルトユニット56の空回転時(脱時)の駆動トルクが大きければ、二次転写ベルトユニット56の駆動力、即ち、記録材を搬送する力が低下すると判断できる。
【0047】
また、本実施形態の場合、二次転写ベルト60をゴムベルトとしているため、ベルトに作用する負荷が変動するとベルトのテンションも変化する。例えば、負荷が大きくなれば、ベルトにテンションを付与しているテンションバネ63bが縮む。この結果、ベルトにテンションを付与しているテンションローラ63の位置が変わるため、このテンションローラ63の変位量を検知することにより、ベルトに作用する負荷変動、即ち、駆動トルクの差分を求めることができる。
【0048】
なお、二次転写ベルト60として樹脂製のベルトを使用する場合には、例えば、二次転写ベルト駆動モータ80の電流値を測定することにより、トルク変動を求めることができる。このようなモータの電流値によるトルク変動の算出は、本実施形態のゴムベルトにも適用可能である。
【0049】
何れにしても、上述のように二次転写ベルトユニット56の駆動トルクの差分から、二次転写ベルトユニット56の駆動力を求め、この駆動力が所定の範囲から外れる場合に、上述のようにファーブラシ70の駆動を制御する。この駆動力が所定の範囲から外れるとは、二次転写ベルトユニット56に作用する負荷などにより、二次転写ベルトユニット56の駆動トルクが、記録材に転写されたトナー像の副走査方向の色ずれや全体倍率の変動が許容される範囲から外れることである。言い換えれば、この所定の範囲内であれば、色ずれや全体倍率の変動が許容される範囲であると言える。
【0050】
例えば、トルクリミッタ83の初期設定値を、上述のように負荷トルクに対して駆動ローラ61の軸上で200gf〜300gfとした場合、所定の範囲を駆動ローラ61の軸上で100gf〜500gf(0.98N〜4.90N)とする。前述の図4から明らかなように、駆動力の変動は、全体倍率に影響を与えるため、駆動力の変動の範囲を所定の範囲に収める必要がある。本実施形態では、100gf〜500gfとすれば、全体倍率への影響及び色ずれの影響を許容できる。
【0051】
[調整モードのフロー]
次に、図5を用いて、本実施形態における全体倍率の調整モードのフローの一例について説明する。ジョブがスタートすると、画像形成装置のコピーイメージ数200枚ごとに、全体倍率の調整モードを開始する(S1)。このモードでは、まず、二次転写ベルトユニット56の駆動力の測定を行う(S2)。この測定は、上述のように着時と脱時とでの駆動トルクの差分を検知して行う。次に、S2の測定結果から二次転写ベルトユニット56の駆動力が適正であるかどうかの判断を行う。具体的には、二次転写ベルトユニット56の駆動力が駆動ローラ61の軸上で換算して、100gf以上500gf以下の所定の範囲であるか否かを判断する(S3)。所定の範囲であれば(S3のYes)、全体倍率はOKであると判断し、調整モードを終了する(S4)。そして、ジョブを再開し(S5)、ジョブが終了すれば(S6)、エンドとなる。
【0052】
一方、測定した駆動力が所定の範囲から外れる場合(S3のNo)、アシスト駆動の設定を行う(S7)。例えば、駆動力が100gf未満の場合には、ファーブラシ駆動モータ90の回転方向を逆にする。即ち、中間転写ベルト24の回転方向と同方向となるようにする。回転速度は変更しない。この動作によって、二次転写ベルト60はファーブラシ70によってアシストされるため、二次転写ベルトユニット56の駆動力は相対的に大きくなり、所定の範囲に収められる。
【0053】
これに対して、駆動力が500gfよりも大きい場合には、ファーブラシ駆動モータ90の回転方向はそのままに、回転速度を2倍にする。ここでの回転方向は中間転写ベルト24の回転方向と逆方向になる。この動作によって、二次転写ベルト60はファーブラシ70によってブレーキをかけられるため、二次転写ベルトユニット56の駆動力は相対的に小さくな、所定の範囲に収められる。
【0054】
次いで、再度、二次転写ベルトユニット56の駆動力の測定を行う(S8)。そして、二次転写ベルトユニット56の駆動力が適正化されたかどうかの判断を行う。即ち、S3と同様に、二次転写ベルトユニット56の駆動力が駆動ローラ61の軸上で換算して、100gf以上500gf以下の所定の範囲であるか否かを判断する(S9)。所定の範囲であれば(S9のYes)、S4に進む。一方、測定した駆動力が所定の範囲から外れる場合(S9のNo)、例えばクリーニングブレード72の交換、軸受部やローラの交換などが必要である判断し、全体倍率はNGであるとして、調整モードを終了し(S10)、ジョブを中止する(S11)。そして、画像形成装置のインターフェースに、例えば、クリーニングブレード交換などのエラー表示を行う(S12)。
【0055】
本実施形態の場合、上述のように、トルク検知手段により検知する値が所定の範囲となるようにトルク制御手段により二次転写ベルトユニット56の駆動トルクを制御している。即ち、所定の範囲から外れる場合には、ファーブラシ70の回転方向及び回転速度を制御して、二次転写ベルト60の駆動をアシストしたり、駆動にブレーキをかけたりして、所定の範囲に収めるようにしている。このため、二次転写ベルトユニット56の駆動力を安定させて、二次転写部T2(当接部)での中間転写ベルト24と二次転写ベルト60との速度差を低減できる。そして、トナー像の副走査方向の倍率の変動や色ずれを低減できる。この結果、画像品位の向上を図れる。
【0056】
<他の実施形態>
上述の実施形態では、第2回転体の駆動トルクの制御を、トルクリミッタ83とファーブラシ70で行っているが、その他のトルク制御手段により行っても良い。例えば、二次転写ベルト駆動モータ80を精密に制御できれば、トルクリミッタを省略し、トルク検知手段による検知結果から駆動トルクを制御するようにしても良い。
【0057】
また、上述の実施形態では、第2回転体との間でトルクの授受を行う接触体として、ファーブラシを用いた例について説明した。但し、このような接触体は、ファーブラシに限らず、ローラなどの回転体、更には、ブレードなどであっても良い。ローラなどの回転体の場合、上述のファーブラシと同様に、回転方向と回転速度を制御する。一方、ブレードを用いた場合、ブレードを第2回転体に対して接触或いは離間させたり、更には、接触圧を制御する。
【0058】
また、上述の実施形態では、第1回転体が中間転写ベルト24、第2回転体が二次転写ベルトユニット56の場合について説明した。但し、第1回転体が像担持体である感光体20、第2回転体が中間転写体である中間転写ベルト24であっても、本発明を適用可能である。この場合、転写手段は、一次転写装置31となり、感光体20と中間転写ベルト24との当接部(1次転写部)で感光体20上(像担持体上)のトナー像を中間転写ベルト24に転写する。また、第2回転体はベルトに限らずローラであっても良い。
【0059】
また、本発明は、中間転写方式に限らず、感光体から記録材搬送手段により搬送される記録材に直接トナー像を転写する直接転写構造にも適用可能である。この場合、第1回転体が感光体、第2回転体が記録材搬送手段となる。
【0060】
更に、本発明は、タンデム型の構造に限らず、例えば1ドラム型の構成にも適用でき、更に、フルカラー構造に限らず、モノクロの構造にも適用できる。
【符号の説明】
【0061】
1・・・画像形成装置、2・・・画像形成部、20・・・感光体、24・・・中間転写ベルト(像担持体、第1回転体)、29a・・・中間転写ベルト駆動モータ(第1駆動手段)、31・・・一次転写装置、55・・・二次転写装置(転写手段)、56・・・二次転写ベルトユニット(第2回転体)、63・・・テンションローラ、63a・・・変位センサ(変位検知手段、トルク検知手段)70・・・ファーブラシ(接触体、第3回転体、トルク制御手段)、72・・・クリーニングブレード、80・・・二次転写ベルト駆動モータ(第2駆動手段)、83・・・トルクリミッタ(トルクリミット機構、トルク制御手段)、90・・・ファーブラシ駆動モータ(第3駆動手段)、200・・・接離機構、C・・・コントローラ(トルク制御手段)、T2・・・二次転写部(当接部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1回転体と、
前記第1回転体を回転駆動する第1駆動手段と、
前記第1回転体と当接する第2回転体と、
前記第2回転体を回転駆動する第2駆動手段と、
前記第1回転体と前記第2回転体との当接部でトナー像の転写を行う転写手段と、を備えた画像形成装置において、
前記第2回転体の駆動トルクに関する値を検知するトルク検知手段と、
前記トルク検知手段により検知する値が所定の範囲となるように、前記第2回転体の駆動トルクを制御するトルク制御手段と、を有する、
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記トルク制御手段は、
前記トルク検知手段により検知する値が前記所定の範囲となるように初期設定された、前記第2駆動手段による駆動力を制限するトルクリミット機構と、
前記トルク検知手段により検知する値が使用により前記所定の範囲から外れた場合に、前記第1回転体及び前記第2駆動手段とは別に、前記第2回転体に当接して、前記トルク検知手段により検知する値が前記所定の範囲となるように前記第2回転体との間でトルクの授受を行う接触体と、を有する、
ことを特徴とする、請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記接触体は、前記第2回転体の回転駆動方向に沿う方向に回転可能な第3回転体であり、
前記第3回転体を、回転方向及び回転速度を可変に回転駆動可能な第3駆動手段を有し、
前記トルク制御手段は、前記トルク検知手段により検知した値に基づいて、前記第3駆動手段を制御する、
ことを特徴とする、請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記第2回転体に当接して前記第2回転体に付着したトナーを除去するクリーニングブレードと、
前記クリーニングブレードの前記第2回転体の回転方向上流に配置され、前記第2回転体に付着したトナーを均すファーブラシと、を有し、
前記第3回転体が前記ファーブラシである、
ことを特徴とする、請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記第2回転体を前記第1回転体に接離させる接離機構を有し、
前記トルク検知手段は、前記第2回転体が前記第1回転体に接触した状態と、前記第2回転体が前記第1回転体から離間した状態との、前記第2回転体の駆動トルクの差分を、前記駆動トルクに関する値として検知する、
ことを特徴とする、請求項1ないし4のうちの何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記第2回転体は、無端状のベルトと、前記ベルトに張力を付与するテンションローラと、を有し、
前記トルク検知手段は、前記テンションローラの変位量を検知する変位検知手段を有し、前記ベルトが前記第1回転体に接触した状態と、前記ベルトが前記第1回転体から離間した状態との、前記テンションローラの変位量から、前記第2回転体の駆動トルクの差分を求める、
ことを特徴とする、請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記第1回転体は、トナー像を担持する像担持体であり、
前記第2回転体は、前記像担持体と当接してニップ部を形成し、前記ニップ部を通過するように記録材を搬送する記録材搬送手段であり、
前記転写手段は、前記ニップ部で前記像担持体上のトナー像を記録材に転写する、
ことを特徴とする、請求項1ないし6のうちの何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記第1回転体は、トナー像を担持する像担持体であり、
前記第2回転体は、前記像担持体と当接して、前記像担持体から転写されたトナー像を担持する中間転写体であり、
前記転写手段は、前記像担持体と前記中間転写体との当接部で前記像担持体上のトナー像を前記中間転写体に転写する、
ことを特徴とする、請求項1ないし6のうちの何れか1項に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−83800(P2013−83800A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−223767(P2011−223767)
【出願日】平成23年10月11日(2011.10.11)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】