説明

画像形成装置

【課題】記録材を搬送ベルトが搬送して、搬送ベルト上の記録材の表面に像担持体からトナー像を転写する構成において、搬送ベルトを過度に汚すことなく、記録材先端の裏面と搬送ベルトとの間で密着性が高くなるのを簡易な構成で抑制することができる画像形成装置の提供。
【解決手段】転写搬送ベルト91に転写された分離補助用のトナー像Tが転写搬送ベルト91上を一周移動する前に、記録材Pの先端の裏面が分離補助用のトナー像Tの上に重なるように記録材Pを転写搬送ベルト91に搬送するタイミングを制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式或いは静電記録方式を用いた複写機、プリンタ等の画像形成装置に関するものである。より詳しくは、転写搬送ベルトを具備し、薄い転写用紙を安定的に搬送し作像する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
多様な記録材、とりわけ薄紙に対応するために、記録材を搬送する搬送ベルトを設けた上で像担持体からトナー像を搬送ベルトに搬送される記録材に転写する構成がある。しかし像担持体から搬送ベルトへの転写は静電的に行われるので、転写後の記録材は搬送ベルトに静電的に張り付いたような状態になる。そこで転写後にトナー像を定着する定着手段へ向けて記録材を搬送するためには、転写後の記録材を搬送ベルトから分離する手段が必要になる。転写後の記録材を搬送ベルトから分離する従来手段として、特許文献1には搬送ベルトを張架して記録材を分離するための分離ローラを利用する構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−95368
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし記録材の裏面と搬送ベルトとの間に介在するものがなければ記録材の裏面と搬送ベルトとの間に空間が生じにくいので、記録材の裏面が搬送ベルトに強く密着しやすい。その結果転写後の記録材の先端が分離ローラの位置に到達しても搬送ベルトから分離しないといった事態が生じるおそれがある。一方で搬送ベルトにトナーが転写されれば記録材の先端の裏面と搬送ベルトとの間にトナーが介在することになり、記録材と搬送ベルトとの間の密着性が弱まる。しかし搬送ベルトの全面にトナーが転写されれば、記録材の裏面が搬送ベルトに密着するのが抑制されるが、搬送ベルトが過剰に汚れるという別の問題が生じる。すなわち、搬送ベルトを極端に汚すことなく、記録材の先端の裏面と搬送ベルトとの間に介在するものがないことに起因して、記録材の先端の裏面が搬送ベルトに密着しやすくなるのを簡易な構成で抑制する方法が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために本願発明は、像担持体と、前記像担持体にトナー像を形成する画像形成手段と、移動可能であって、記録材を搬送する搬送ベルトと、前記搬送ベルトに担持された記録材に前記像担持体からトナー像を転写する画像形成装置において、前記像担持体から、前記搬送ベルトの一周の長さより短い長さの分離補助用のトナー像の前記搬送ベルト上への転写を開始した後に、記録材の先端の裏面が前記分離補助用のトナー像の上に重なるように記録材を前記搬送ベルトに搬送するタイミングを制御する制御手段を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
記録材を搬送ベルトが搬送して、搬送ベルト上の記録材の表面に像担持体からトナー像を転写する構成において、搬送ベルトを過度に汚すことなく、記録材先端の裏面と搬送ベルトとの間で密着性が高くなるのを簡易な構成で抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の一実施形態に係る画像形成装置の概略断面構成図である。
【図2】制御部のブロック図を示す図である。
【図3】記録材の分離動作を示す概略図である。
【図4】記録材の分離動作を示す概略図である。
【図5】記録材の分離動作を示す概略図である。
【図6】記録材搬送方向における位置関係を示す図である。
【図7】記録材搬送方向における位置関係を示す図である。
【図8】記録材搬送方向における位置関係を示す図である。
【図9】記録材搬送方向における位置関係を示す図である。
【図10】本発明の他の実施形態に係る画像形成装置の概略断面構成図である。
【図11】本発明の他の実施形態に係る画像形成装置の概略断面構成図である。
【図12】本発明の他の実施形態に係る画像形成装置の概略断面構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明に係る画像形成装置を図面に則して更に詳しく説明する。
【0009】
<実施形態1>
(画像形成装置の全体構成及び動作)
先ず、本発明の一実施形態に係る画像形成装置の全体構成及び動作について説明する。図1は、本実施形態の画像形成装置100の概略断面構成を示す。
【0010】
Sa、Sb、Sc、Sdはトナー像を形成する画像形成部としてのプロセスユニットである。各画像形成部Sa、Sb、Sc、Sdはそれぞれ、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色のトナー像を形成する。画像形成部Sa、Sb,Sc,Sdの構成は、用いられるトナーの色が異なる以外は同様の構成であるので、代表して画像形成部Saを用いて説明する。
【0011】
画像形成部Saは、像担持体としての感光ドラム1aと、感光ドラム1a表面を帯電する帯電手段としての帯電ローラ2aと、帯電された感光体ドラム表面を露光する露光手段としてのレーザースキャナ3aとを備える。さらに画像形成部Saはトナー像を現像する現像手段としての現像装置4aと、感光ドラム1aからトナー像を中間転写ベルト41に転写する一次転写手段としての一次転写ローラ53aとを備える。感光ドラム1aが回転駆動して、感光体ドラム1aの表面が帯電ローラ2aにより帯電される。帯電された感光体ドラム1a表面はレーザースキャナ3aによって露光されて、感光体ドラム1a上に静電潜像が形成される。静電潜像は、レーザースキャナ3の出力が画像情報に基づいてOFF/ONされることによって画像情報に応じて形成される。現像装置4aはイエロートナーを内包する。現像装置4aには所定の電圧が印加されており、静電潜像は現像装置4aを通過するときに現像されて、感光ドラム1a表面上にトナー像が形成される。現像方式としては、静電潜像の露光部にトナーを付着させて現像する反転現像方式が用いられる。一次転写ローラ53aは中間転写ベルト51を介して感光体ドラム1aを圧するように配置されて、中間転写ベルト51にトナー像を転写する一次転写部N1aを形成する。感光ドラム1a上のトナー像は、一次転写電源54aにより一次転写ローラ53aに一次転写電圧が印加されることにより、中間転写ベルト51へ転写する。感光ドラム1aに残ったトナーはドラムクリーナ6aによってクリーニングされる。
【0012】
1次転写ローラ53aは、外径8mmの芯金531と、厚さ4mmの導電性ウレタンスポンジ層532と、によって構成される。1次転写ローラ53の電気抵抗値は、約10Ω(23℃/50%RH)であった。尚、1次転写ローラ53の電気抵抗値は、500g重の荷重の下で接地された金属ローラに当接された1次転写ローラ53を50mm/secの周速で回転させ、芯金531に50Vの電圧を印加して測定された電流値から求められる。
【0013】
なお複数色のトナーを使用してフルカラー画像を形成する場合には、各色のトナー像がそれぞれの一次転写部で順次中間転写ベルト51に転写して重畳する。
【0014】
中間転写ベルト51は、感光体ドラム1a、1b、1c、1dから転写されたトナー像を担持して搬送する中間転写体として機能する。中間転写ベルト51は外周面が感光体ドラム1a、1b、1c、1d表面に当接するように配置されており、複数の支持部材としての52,55,56によって張架されて、移動可能なベルト部材である。中間転写ベルト51は、表面抵抗率1012Ω/□(JIS−K6911法準拠プローブを使用、印加電圧100V、印加時間60sec、23℃/50%RH)、厚み80μmのPI(ポリイミド)樹脂で形成される。もちろんこの構成に限定する意図ではない。中間転写ベルトは、PC(ポリカーボネート)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)のような誘電体樹脂で形成されてもよい。52は中間転写ベルト51の移動を駆動する駆動ローラとして機能する。詳細は後述するが、56はトナー像を記録材に転写するための二次転写内ローラ56として機能する。中間転写ベルト51は、ベルト駆動手段である中間転写ベルト駆動ローラ52による駆動力を受けて、図1中の矢印R3方向に周回移動する。中間転写ベルト51の移動に伴って、中間転写ベルト51上のトナー像は、トナー像を記録材に転写する二次転写部N2aまで搬送される。
【0015】
記録材を担持搬送する転写ベルト91は、複数の張架部材としての57、92によって張架されて、図示のR4向きに移動可能なベルト部材である。二次転写外ローラ57は、二次転写内ローラ56とともに二次転写部を形成する二次転写部材として機能する。二次転写外ローラ57は、二次転写内ローラ56に対向する位置に配置されて、中間転写ベルト51と転写搬送ベルト91とを介して二次転写内ローラ56を圧することで二次転写部を形成する。92は転写搬送ベルト91の移動を駆動する駆動ローラとして機能する。
【0016】
転写搬送ベルト91としては、表面抵抗率1014Ω/□(JIS−K6911法準拠プローブを使用、印加電圧1000V、印加時間60sec、23℃/50%RH)、厚み80μmの、カーボンが分散されたPI(ポリイミド)樹脂で形成されたものを用いた。もちろんこれらに限定する意図ではなく、PC(ポリカーボネート)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)のような誘電体樹脂を用いてもよい。
【0017】
なお2次転写内ローラ56は、外径18mmの芯金561と、厚さ2mmの導電性でソリッドのシリコーンゴム層562と、によって構成される。2次転写内ローラ56の電気抵抗値は、1次転写ローラ53と同様の測定方法において、約10Ωであった。更に2次転写外ローラ57は、外径8mmの芯金571と、厚さ4mmの導電性のEPDMゴムのスポンジ層572と、によって構成されている。2次転写外ローラ57の電気抵抗値は、1次転写ローラ53と同様の測定方法において、印加電圧が2000Vの場合に、約10Ωであった。
【0018】
記録材は記録材収容部としてのカセット81に収容されている。まずピックアップローラ82が記録材収容部としてのカセット81から記録材を取り出す。その後搬送ローラ83が記録材を転写搬送ベルト91へ向けて送り出す。搬送ローラ83が記録材を転写搬送ベルト91に送り出すタイミングは、記録材の表面に転写されるトナー像が記録材表面に二次転写部N2aで重なるように制御される。二次転写電圧電源58は、トナー像を記録材に転写する二次転写電圧を印加する二次転写電圧印加手段として機能する。記録材が二次転写部N2aを通過するときに、二次転写電源58が二次転写電圧を二次転写外ローラ57に印加する。このようにして、中間転写ベルト51からトナー像は転写搬送ベルト91に担持搬送された記録材へ二次転写部で静電的に転写される。転写後の記録材は搬送ガイド97を通過して、トナー像を記録材に定着する定着手段としての定着装置7へと搬送される。なお二次転写部で記録材に転写せず中間転写ベルト51に残留したトナー(二次転写残トナー)は、中間転写ベルトクリーナ59によって除去、回収される。
【0019】
定着装置7は、回転自在に配設された定着ローラ71と、定着ローラ71に押圧しながら回転する加圧ローラ72と、を有する。定着ローラ71の内部には、ハロゲンランプ等のヒータ73が配設されている。そして、このヒータ73へ供給する電圧等を制御することにより、定着ローラ71の表面の温度調節が行われている。定着装置7に記録材Pが搬送されてくると、一定速度で回転する定着ローラ71と加圧ローラ72との間を記録材Pが通過する際に、記録材Pは、その表裏両面からほぼ一定の圧力、温度で加圧、加熱される。これにより、記録材Pの表面上の未定着トナー像は、溶融して記録材Pに定着される。こうして、記録材P上への画像形成が完了する。
【0020】
(分離補助用のトナー像を形成するための制御部)
二次転写部N2でトナー像の転写は静電的に行われるので、転写後の記録材は転写搬送ベルト91に静電的に張り付きやすくなる。そこで転写後にさらに下流側に配置される定着装置7へ記録材を搬送するためには、記録材を転写搬送ベルト91から分離する必要がある。そこで本実施形態では、記録材搬送方向において二次転写部N2の下流側に配置される張架ローラ92が、記録材を分離する分離ローラとして機能する。しかし記録材の裏面と搬送ベルトとの間に介在するものがなければ記録材の裏面と転写搬送ベルト91との間に空間が生じにくいので、記録材の裏面が転写搬送ベルト91に強く密着しやすい。その結果転写後の記録材の先端が分離ローラの位置に到達しても搬送ベルトから分離しないといった事態が生じるおそれがある。すなわち記録材の先端の裏面と搬送ベルトとの間に介在するものがないことに起因して、記録材の先端の裏面が搬送ベルトに密着しやすくなるのを簡易な構成で抑制する方法が望まれている。
【0021】
そこで本実施形態では、転写搬送ベルト91の長さより短い長さで分離補助用のトナー像が形成されて、中間転写ベルト51から分離補助用のトナー像が転写搬送ベルト91上に転写される。さらに記録材の先端の裏面が分離補助用のトナー像の上に重なるように、記録材を転写搬送ベルト91に搬送するタイミングが制御される。すなわち記録材のサイズと転写搬送ベルト91の長さに応じて、記録材と記録材との間隔、分離補助用のトナー像を形成する位置を調整する。
【0022】
その結果分離補助用のトナー層が転写搬送ベルトと記録材先端の裏面との間に介在することにより、記録材が転写搬送ベルトに強く密着しにくくなる。記録材が転写搬送ベルトから分離しないといった事態が生じるのが抑制される。
【0023】
次に分離補助用のトナー像を形成するための制御部について説明する。本実施形態では図2に示されるように分離補助用のトナー像を形成する動作は制御部110によって制御される。制御部110は、ユーザー操作部111で入力される記録材の搬送方向におけるサイズ情報についてのサイズ情報信号を受け取る。制御部110はRAM,ROM,CPUにより構成される。ROMには中間転写ベルトの移動方向における周長Cについての情報が記録されている。制御部110は、記録材のサイズ情報や中間転写ベルトのサイズ情報に基づいて各画像形成部Sa、Sb,Sc,Sdにおいて画像形成を開始するタイミングを制御する。さらに制御部110は、搬送ローラ83が記録材を搬送ベルトに送り出すタイミングも制御する。
【0024】
制御部110のROMには以下のパターンが記録されている。
・一枚ジョブを行う場合には、画像形成部Saにおいて形成された分離補助用のトナー像を中間転写ベルトから転写搬送ベルト上に転写する。さらに分離補助用のトナー像が転写搬送ベルト上を一周移動し終える前に、記録材先端の裏面が分離補助用のトナー像に重なり、記録材の表面に記録材に形成するためのトナー像が転写される。画像形成動作がこのように行われるように、各画像形成部Sa、Sb,Sc,Sdで記録材の表面に形成するための画像を形成するタイミングと、画像形成部Saで分離補助用のトナー像を形成するタイミングと、搬送ローラ83により記録材を搬送するタイミングとを、制御部110は制御する。
【0025】
さらに制御部110のROMには以下のパターンが記録されている。ただし、bは転写搬送ベルトが移動する方向における分離補助用のトナー像の長さである。cは記録材搬送方向における転写搬送ベルトの周長である。eは転写搬送ベルトが移動する方向における分離補助用のトナー像の後端から分離補助用のトナー像に続く記録材の先端までの距離である。さらにfは転写搬送ベルトが移動する方向における記録材の先端から次の記録材の先端までの距離であって、Nは任意の正の整数、またはゼロであるとする。
【0026】
・連続して複数の記録材に画像を形成する場合には、c<Nf+b+e、Nf+e<c、さらにNf+b<cの関係を満たす。すなわちこれらの関係を満たすように、各画像形成部Sa、Sb,Sc,Sdで記録材の表面に形成するための画像を形成するタイミングと、画像形成部Saで分離補助用のトナー像を形成するタイミングと、搬送ローラ83により記録材を搬送するタイミングとを、制御部110は制御する。
【0027】
(分離補助用のトナー像を利用するプロセス)
次に図3から図5を用いて分離補助用のトナー像を形成することによって記録材の分離がどのように補助されるかについて詳細に説明する。
【0028】
まず感光ドラム1a、1b、1c、1dに記録材の表面に形成するためのトナー像Tsを形成するのに先立って、分離を補助するための分離補助用のトナー像の形成を行う。分離補助用のトナー像Tとして、感光ドラム1a上に薄層のイエローのトナー像が形成される。分離補助用のトナー像Tの長さについては、搬送ベルトが移動する方向において分離補助用のトナー像Tの長さが、搬送ベルトの長さより短くなるように設定される。すなわち分離補助用のトナー像Tが搬送ベルトの全面に形成されないので、搬送ベルトが過度に汚れるのが抑制される。イエロートナーは、本実施形態の画像形成装置で用いられるトナーの中で最も明度が高い。そのため仮にイエロートナーが記録材の裏面に付着した場合でも、汚れとして目立ちにくい。ゆえに分離補助用のトナー像としてはイエロートナーを用いることが好ましい。また分離補助用のトナー像のトナー量については、記録材の分離を確保しつつ記録材の裏面に付着しても目立たないために、転写搬送ベルト上での単位面積当たりのトナーの載り量が0.01mg/cm2以上で0.04mg/cm2以下程度となるのが好ましい。転写搬送ベルトが移動する方向に対して直交する幅方向において、分離補助用のトナー像Tの幅は、画像が形成される幅の最大値と同じになるように設定される。
【0029】
感光ドラム1a上に形成された分離補助用のトナー像Tは、1次転写部N1aにおいて中間転写ベルト51上へ転写される。1次転写ローラ53aに印加する電圧の絶対値は、記録材の表面に形成するためのトナー像を1次転写部N1aで転写する場合の転写電圧の絶対値(第1の絶対値)よりも低い絶対値(第2の絶対値)になるように設定される。この理由について説明する。分離補助用のトナー像Tのトナー量は、記録材の表面に形成するためのトナー像のトナー量よりも少ない。そのため一次転写ローラ53aに印加する電圧の絶対値が大きければ、放電が発生することによりトナー像の極性が反転するおそれがある。その結果分離補助用のトナー像を転写する効率が低下するおそれがある。そこで分離補助用のトナー像Tsを中間転写ベルト上に転写する効率が低下するのを抑制するために、一次転写ローラ53aに印加する電圧は通常作像時よりも低くなるように設定される。なお通常作像時とは、記録材の表面に形成するためのトナー像を感光ドラム1aから中間転写ベルトに転写する時のことをいう。中間転写ベルト51上で分離補助用のトナー像Tが下流側のマゼンタ色、シアン色、黒色についての一次転写ニップN1b、N1c、N1dを通過する際には、通常作像時よりも低い絶対値の電圧が対応する1次転写ローラ53b、53c、53dに印加される。その結果放電によって分離補助用のトナー像が感光ドラム1b、1c、1dへ再転写するのが抑制される。なお分離補助用のトナー像が一次転写ニップN1b、N1c、N1dを通過する際に、対応する一次転写ローラ53b、53c、53dに電圧が印加されないように設定してもよい。
【0030】
中間転写ベルト上の分離補助用のトナー像Tが二次転写ニップN2に到達すると、2次転写外ローラ57に電圧が印加されることによって、分離補助用のトナー像は転写搬送ベルト91上に転写される。このときにも、2次転写外ローラ57に印加する電圧の絶対値は、通常作像時よりも低くなるように設定される。これにより、転写搬送ベルト91上に転写されたトナー層は反転トナーが少ない状態となる。なおここでいう通常作像時とは、記録材の表面に形成するためのトナー像を中間転写ベルトから記録材に転写する時のことをいう。
【0031】
図3で示されるように、転写搬送ベルト91上に転写された分離補助用のトナー像は、転写搬送ベルト91の移動方向R4に従って転写搬送ベルト91上を移動する。一方で記録材を転写搬送ベルトに向けて搬送する搬送手段としての搬送ローラ83が、記録材Pを転写搬送ベルト91の近傍まで搬送する。さらに図4に示されるように、記録材Pの裏面の先端が転写搬送ベルト91上の分離補助用のトナー像に重なるように、搬送ローラ83が記録材Pを搬送する。その後記録材に形成するためのトナー像が、2次転写外ローラ57に2次転写電圧が印加されることにより中間転写ベルト51から記録材Pに転写される。なお、分離補助用のトナー像は正規極性のトナーで構成されるので、2次転写電圧によって転写搬送ベルト91側へ引き寄せられる。その結果分離補助用のトナー像が記録材Pの裏面に付着するのが抑制される。
【0032】
記録材Pは2次転写ニップN2を抜けた後に転写搬送ベルト91によってさらに下流側へ向けて移動する。図5に示されるように記録材Pの先端が張架ローラ92の位置に差し掛かると、転写搬送ベルト駆動ローラ92の曲率を利用して、記録材Pは転写搬送ベルトから分離する。なお分離補助用のトナー像が記録材Pの先端の裏面と転写搬送ベルトとの間に介在するので、記録材Pが転写搬送ベルト91に吸着するのが抑制されている。そのため記録材Pが剛度の弱い薄紙であっても、記録材Pが転写搬送ベルト91側へ巻きついて分離不良が生じるのが抑制される。
【0033】
転写搬送ベルト91上に形成されている分離補助用のトナー像は、その後非画像形成時に、2次転写外ローラ57に通常の作像時とは逆極性のバイアスを印加することにより、中間転写ベルト51へ再度転写される。その後、中間転写ベルトクリーナ59(像担持体クリーニング部材)が分離補助用のトナー像を回収する。
【0034】
(記録材搬送方向における分離補助用のトナー像の位置関係)
次に、記録材搬送方向における分離補助用のトナー像と記録材との位置関係について図6から図8を用いて説明する。
【0035】
まずはユーザーによって指定される枚数が1枚のジョブである場合について図6を用いて説明する。図6の横軸は記録材搬送方向における位置関係を示しており、右側が上流側を示し、左側が下流側を示す。x0は分離補助用のトナー像Tsの先端が転写搬送ベルトに最初に転写される位置を示す。x1は分離補助用のトナー像Tsの後端が転写搬送ベルトに転写される位置を示す。x2は分離補助用のトナー像Tsが転写搬送ベルトを一周して戻ってきたときの先端の位置を示す。x3は、記録材Psの先端の位置を示す。x4は、分離補助用のトナー像Tsが転写搬送ベルトを一周して戻ってきたときの後端の位置を示す。
【0036】
本実施形態では、x2<x3(数式1)の関係を満たす。すなわち転写搬送ベルトを一周して戻ってきた分離補助用のトナー像Tsの先端が記録材Psの先端よりも下流側にくる。さらにx3<x4(数式2)の関係を満たす。すなわち転写搬送ベルトを一周して戻ってきた分離補助用のトナー像Tsの後端が記録材Psの先端よりも上流側にくる。このようにx2<x3<x4の関係を満たすことで、記録材Psの裏面の先端が転写搬送ベルトを一周して戻ってきた分離補助用のトナー像Tsに重なる。
【0037】
ここでbは記録材搬送方向における分離補助用のトナー像Tsの長さ、cは記録材搬送方向における転写搬送ベルトの周長である。eは記録材搬送方向における分離補助用のトナー像Tsが二次転写ニップN2で転写されたときの後端の位置から記録材の先端までの間隔とする。分離補助用のトナー像Tsが転写搬送ベルトを一周して戻ってくる時の位置(x2、x4)は、記録材搬送方向において、最初に転写搬送ベルト上に転写された位置(x0、x1)よりも上流側にc離れた位置になる。すなわちb=x1−x0、x2−x0=x4−x1=c、x3−c1=eである。このとき数式1は下記のように表わされる。
【0038】
x2<x3
x2−x0<x3−x0
c<b+e (数式3)
また数式2は下記のように表わされる。
【0039】
x4>x3
x4−x1>x3−x1
c>e (数式4)
さらに本実施形態では、分離補助用のトナー像Tsの後端が、分離補助用のトナー像Tsが転写搬送ベルトを一周して戻ってきたときに重ならないように、x1<x2の関係を満足する。この関係はbとcを用いて下記のように表わされる。
【0040】
x1<x2
x1−x0<x2−x0
b<c (数式5)
すなわち数式3と数式4との関係だけでなく数式5の関係も満たすように、記録材搬送方向における分離補助用のトナー像Tsの長さb、記録材搬送方向における分離補助用のトナー像Tsと記録材Psとの位置関係とが制御部110によって制御される。
【0041】
以上、本実施形態において一枚ジョブの場合に薄紙等の記録材を安定して転写搬送ベルトより分離する構成および動作を説明した。次に、複数の記録材へ連続作像する際の動作について説明する。連続して記録材が供給される場合に、常にその裏面の少なくとも先端に分離補助用のトナー像が存在するようにするためには次のような動作が必要になる。すなわち、中間転写ベルト51上に連続的に形成される画像と画像の間に分離補助用のトナー像を形成した上で、分離補助用のトナー像を転写搬送ベルト91上へ転写する。その上で転写搬送ベルトが1周し終える前で分離補助用のトナー像が2次転写部に到達するときに、次の記録材を供給する。ユーザーによって指定されるジョブが連続して複数の記録材に画像を形成する連続画像形成ジョブである場合の動作の転写搬送ベルトの移動方向における位置関係について図7、図8、図9を用いて説明する。
【0042】
まずは記録材搬送方向における記録材の長さaが転写搬送ベルトの周長cよりも若干長い場合(a>c)について図7を用いて説明する。記録材のサイズが大きい場合には、分離補助用のトナー像Tsが分離を補助する記録材Psは、分離補助用のトナー像Tsに続いて搬送される記録材Psとなる。
【0043】
分離補助用のトナー像Tsは、記録材搬送方向において、記録材P0の後端と、記録材P0の次の記録材Psの先端との間で中間転写ベルト51から転写搬送ベルト91に転写される。
【0044】
x0は分離補助用のトナー像Tsが中間転写ベルトから転写されたときの分離補助用のトナー像Tsの先端の位置を示す。x1は、分離補助用のトナー像Tsが中間転写ベルトから転写されたときの分離補助用のトナー像Tsの後端の位置を示す。x2は、分離補助用のトナー像Tsが転写搬送ベルト91上を一周して戻ってきたときの分離補助用のトナー像Tsの先端の位置を示す。x3は記録材Psの先端の位置を示す。x4は分離補助用のトナー像Tsが転写搬送ベルト91を一周して戻ってきたときの分離補助用のトナー像Tsの後端の位置を示す。
【0045】
連続画像形成ジョブにおいて記録材Psの先端の裏面が分離補助用のトナー像Tsに重なるための条件は、一枚モードの場合の条件と同じである。すなわちx2<x3<x4の関係を満たすことである。すなわち数式3,4の関係を満たすことである。その結果薄紙等の剛度の弱い記録材の場合であっても、記録材の分離不良が生じることが抑制される。
【0046】
なお記録材Psの次の記録材のための分離補助用のトナー像は、記録材Psと記録材Psの次の記録材との間で転写搬送ベルトに転写される。一方で記録材Psのための分離補助用のトナー像Tsは、記録材Psの前の記録材Poと記録材Psとの間で転写搬送ベルトに転写される。ゆえに記録材Psのための分離補助用のトナー像Tsは、記録材Psの次の記録材のための分離補助用のトナー像と重ならない。一方で分離補助用のトナー像Tsの先端が転写搬送ベルト上を一周して戻ってきたときに、分離補助用のトナー像Ts自身の後端と重ならないようにする必要がある。そのための条件は一枚ジョブの場合の条件と同じである。すなわちx1<x2の関係を満足することである。すなわち数式5の関係を満足することである。
【0047】
次に記録材搬送方向における記録材の長さaが転写搬送ベルトの周長cよりも短い場合(a<c)について図8、図9を用いて説明する。
【0048】
図8は、記録材P0、P1、Psの順で記録材が搬送される場合である。分離補助用のトナー像Tsは、記録材搬送方向において記録材P0の後端と記録材P1の先端との間で中間転写ベルト51から転写搬送ベルト91に転写される。さらにPsの次の記録材(不図示)のための分離補助用のトナー像T1は記録材P1の後端と記録材Psの先端との間で転写搬送ベルト91に転写される。すなわち分離補助用のトナー像Tsが分離を補助する記録材Psと、分離補助用のトナー像Tsとの間に、記録材P1と分離補助用のトナー像T1とを挟むことになる。
【0049】
この場合にも記録材Psの先端の裏面が分離補助用のトナー像Tsに重なるための条件は、x2<x3<x4の関係を満たすことである。fは前の記録材の先端から次の記録材の先端までの間隔とする。図8に示されるように、x2=x0+c、x3=x0+b+e+f、x4=x0+b+cとなる。すなわちこれらの関係を用いて
x2<x3
x0+c<x0+b+e+f
c<b+e+f (数式6)
が得られる。また
x3<x4
x0+b+e+f<x0+b+c
c>e+f (数式7)
が得られる。
【0050】
ここでx5は、記録材搬送方向において、分離補助用のトナー像T1の後端が記録材P1の後端と記録材Psの先端との間で中間転写ベルトから転写搬送ベルトに転写される位置とする。本実施形態では次の分離補助用のトナー像T1が前の分離補助用のトナー像にTsに重ならないように、分離補助用のトナー像Tsが転写搬送ベルト91を一周して戻ってきたときの分離補助用のトナー像Tsの先端の位置が、記録材搬送方向において、次の分離補助用のトナー像T1の後端の位置よりも上流側にくる。すなわちx5<x2の関係を満足する。この理由について説明する。次の分離補助用のトナー像T1が分離補助用のトナー像Tsに重なると、次の分離補助用のトナー像T1のトナー量が実質的に多くなり、次の分離補助用のトナー像T1が補助する記録材の裏面を汚すおそれがあるからである。そこで本実施形態では、次の分離補助用のトナー像T1は、分離補助用のトナー像Tsに重ならないように中間転写ベルトから転写搬送ベルト91上に転写される。ここで図8に示されるように、x5=x0+b+fである。この関係を用いて、
x5<x2
x0+b+f<x0+c
c>b+f (数式8)
が得られる。
【0051】
以上をまとめると次のようになる。すなわち記録材搬送方向における記録材の長さaが転写搬送ベルトの周長cよりも若干短い場合には、数式6、7、8の関係を満たすように、記録材搬送方向における分離補助用のトナー像の長さb、記録材搬送方向における分離補助用のトナー像と記録材との位置関係とを、制御部110が制御する。
【0052】
記録材のサイズが更に小さくなった場合について図9を用いて説明する。図9は、記録材がP0、P1、P2、…PN、Psの順に搬送される場合を示す。さらに分離補助用のトナー像Tsは記録材P0の後端と記録材P1の先端との間で中間転写ベルトから転写搬送ベルト上に転写される。分離補助用のトナー像Tsの次の分離補助用のトナー像T1は、記録材搬送方向において記録材P1の後端と記録材P2の先端との間で転写搬送ベルト91に転写される。T1に続いて分離補助用のトナー像T2からTNまでが対応する記録材の後端と記録材の先端との間で転写搬送ベルトに同様に転写される。分離補助用のトナー像Tsが分離を補助するのは、記録材Psである。すなわち分離補助用のトナー像Tsと、分離補助用のトナー像が分離を補助する記録材Psとの間に、P1からPNまでN枚の記録材とT1からTNまでN枚の分離補助用のトナー像を挟む構成である。この場合にも記録材Psの裏面の先端が分離補助用のトナー像Tsに重なるための条件は、x2<x3<x4である。ここで図9に示されるように、記録材Psの先端の位置はx3=x0+b+e+Nfである。このx3の関係を用いて
x2<x3
x0+c<x0+b+e+Nf
c<b+e+Nf (数式9)
が得られる。さらにx3の関係を用いて
x3<x4
x0+b+e+Nf<x0+b+c
c>e+Nf (数式10)
が得られる。
【0053】
また分離補助用のトナー像のトナー量が過剰になるのを抑制するために、記録材Psの直前に転写搬送ベルトに転写される分離補助用のトナー像TNが、分離補助用のトナー像Tsに重ならないのが望ましい。そこで本実施形態では、記録材搬送方向において分離補助用のトナー像TNの後端が分離補助用のトナー像Tsの先端よりも下流側になる。すなわちx5<x2の関係を満足する。図9に示されるように、分離補助用のトナー像の後端の位置x5は、x5=x0+b+Nfによって表わされる。このx5についての関係を用いて、
x5<x2
x0+b+Nf<x0+c
c>b+Nf (数式11)
が得られる。
【0054】
以上をまとめると次のようになる。すなわち記録材のサイズが更に小さくなった場合には、数式9,10,11の関係を満足するように、記録材搬送方向における分離補助用のトナー像の長さb、記録材搬送方向における分離補助用のトナー像と記録材との位置関係とを、制御部110が制御する。
【0055】
ここまで数式についての説明は、一枚ジョブの場合と、連続画像形成ジョブにおいて記録材のサイズが転写搬送ベルトの周長より長い場合と、連続画像形成ジョブにおいて記録材のサイズが転写搬送ベルトの周長より短い場合とに場合分けして行ってきた。その上で一枚ジョブの場合と連続画像形成ジョブにおいて記録材のサイズが転写搬送ベルトの周長より長い場合には、数式3,4,5が得られた。また連続画像形成ジョブにおいて記録材のサイズが転写搬送ベルトの周長より若干短い場合には、数式6,7,8が得られた。また連続画像形成ジョブにおいて記録材のサイズがさらに短い場合には、数式9、10、11が得られた。
【0056】
しかしここで数式3〜5、6〜8、9〜11の相互の関係に注目する。すると数式3、4、5は各々数式9、10、11にN=0を代入することにより得られる。さらに数式6、7、8は各々数式9、10、11にN=1を代入することにより得られる。
【0057】
すなわち一枚ジョブの場合と、連続画像形成ジョブにおいて記録材のサイズが転写搬送ベルトの周長より長い場合と、連続画像形成ジョブにおいて記録材のサイズが転写搬送ベルトの周長より短い場合について、数式9、10、11の数式が一般解となる。
【0058】
ここでNは0又は正の整数とする。Nは、分離補助用のトナー像Tsと分離補助用のトナー像Tsが分離を補助する記録材Tsとの間に挟む記録材及び分離補助用のトナー像各々の数を意味する。
【0059】
なおここで、Δtは中間転写ベルト上の分離補助用のトナー像Tsの先端が二次転写ニップN2に到達してから、分離補助用のトナー像Tsが分離を補助する記録材Psの先端が二次転写ニップN2に到達するまでの時間間隔とする。またvは転写搬送ベルトの移動速度とする。Δtは図9に示されるように、Δt=(b+e+Nf)/vで表わされる。Δtとvを用いて数式9は、
c<b+e+Nf
c/v<(b+e+Nf)/v=Δt
Δt>c/v (数式12)
によって表わされる。さらに数式10はΔtとvを用いて
c>e+Nf
c/v>(e/v)+(Nf/v)
c/v>Δt−(b/v)
Δt<(b/v)+(c/v) (数式13)
によって表わされる。さらに数式11はΔtとvを用いて
c>b+Nf
c/v>(b/v)+(Nf/v)
c/v>Δt−(e/v)
Δt<(c/v)+(e/v) (数式14)
によって表わされる。すなわち数式12,13、14の関係を満足するように、画像形成部Saで分離補助用のトナー像Tを形成するタイミングと、搬送ローラ83によって記録材を転写搬送ベルト91に搬送するタイミングとを制御部110が制御する。その結果連続して複数の記録材に画像を形成する場合であっても、各記録材の先端の裏面が分離補助用のトナー像に重なるように記録材が搬送される。その結果薄紙等の剛度の弱い記録材の場合であっても、記録材の分離不良が生じることが抑制される。
【0060】
以上説明したように、本実施形態によれば、転写搬送ベルトから特に薄くて分離しづらい記録材を、安定的に分離することのできる画像形成装置を得ることが出来る。さらには、上記の関係を満たす画像形成装置を用いることにより、連続作像時においても、記録材を、安定的に分離することのできる画像形成装置を得ることが出来る。
【0061】
また、薄紙などの特定の種類の記録材に画像を形成する場合(薄紙モード)に、前記の転写搬送ベルト上に分離補助用のトナー像を形成して、厚紙などの記録材に画像を形成する場合(厚紙モード)には、分離補助用のトナー像を形成しないように設定してもよい。このように動作を行うことで、分離補助用のトナー像を形成するためのトナー消費を抑制することが可能になる。
【0062】
また本実施形態では分離補助用のトナー像をイエロー色のトナーを用いて形成する。もちろんこの構成に限定する意図ではない。画像形成の生産性を優先して分離補助用のトナー像を形成するタイミングを早めるために、分離補助用のトナー像を最下流側の画像形成部で形成する構成にしてもよい。
【0063】
<実施形態2>
次に、本発明に係る他の実施形態について図10を用いて説明する。本実施形態の画像形成装置は、転写搬送ベルトの構成が一部実施形態1とは異なるが、その他はほとんど同じ構成であるため、詳細な説明は省略し、異なる構成についてのみ説明する。
【0064】
本実施形態では、転写搬送ベルト91をクリーニングするクリーニング部材として、転写搬送ベルトクリーナ99を備える。転写搬送ベルトクリーナ99は、転写搬送ベルト駆動ローラ92に対向する位置に配置されて、転写搬送ベルト91に付着したかぶりトナーや紙粉等を除去する。転写搬送ベルトクリーナ99は、ウレタン等のゴムブレードを転写搬送ベルト91にカウンターでクリーニング部で当接する構成をとっている。
【0065】
以下に、本実施形態における動作を、図10を用いて詳細に説明する。
【0066】
図10において、感光ドラム1に画像を形成するのに先立ち、分離を補助する分離補助用のトナー像の形成を行う。本実施形態では、分離補助用のトナー像として、感光ドラム1a上に薄層のイエローのトナーを形成する。
【0067】
感光ドラム1a上に形成された分離補助用のトナー像は、1次転写部N1aにおいて中間転写ベルト51上へ転写される。中間転写ベルト51上の分離補助用のトナー像が2次転写ニップN2に到達した際に、2次転写外ローラ57に2次転写バイアスを印加することにより、分離補助用のトナー像は転写搬送ベルト91上に転写される。
【0068】
転写搬送ベルト91上に転写された分離補助用のトナー像は、転写搬送ベルト91の回転方向R4に従ってベルト上を搬送される。このとき分離補助用のトナー像が除去されてしまうことがないよう、転写搬送ベルトクリーナ99は離間する構成となっている。一方で記録材供給手段としての搬送ローラ83によって、記録材Pが転写搬送ベルト91の近傍まで搬送される。その後、記録材Pは転写搬送ベルト91表面の薄層トナーの上に記録材の先端が重なるように同期されて案内される。その後、中間転写ベルト51上に形成されたトナー像が、2次転写外ローラ57に2次転写バイアスが印加されることにより記録材P上に転写される。このとき、転写搬送ベルト上の分離補助用のトナー像は正規極性のトナーで構成されるので、2次転写電圧により転写搬送ベルト91側へ引き寄せられる。そのため分離補助用のトナー像が記録材Pの裏面に付着して汚すのが抑制される。
【0069】
記録材Pは2次転写ニップN2を抜けた後に転写搬送ベルト91に吸着されたまま搬送される。転写搬送ベルト91に吸着搬送される記録材Pは駆動ローラ92の位置に差し掛かる。このとき分離補助用のトナー像が記録材Pの先端の裏面に存在することにより、記録材Pの先端と転写搬送ベルト91と間の密着性は低い。そのため記録材Pの腰が弱い薄紙などで曲率分離が安定しない場合においても、記録材Pが転写搬送ベルト91側へ巻きついて駆動ローラの位置で分離不良が生じるのが抑制される。
【0070】
その後転写搬送ベルト91上に形成されている分離補助用のトナー像は、中間転写ベルトクリーナ59が転写搬送ベルト91に当接することによって回収される。なお、本回収行程は、連続作像時においては、定期枚数ごとに行うことにより、記録材の裏面に分離補助用のトナー像が付着することによる裏汚れを発生しないようにすることが出来る。
【0071】
以上説明したように、本実施形態によれば、転写搬送ベルト91に転写搬送ベルトクリーナ99を搭載することにより、薄い記録材の分離性確保に加え、裏汚れの無い画像形成装置を得ることが出来る。
【0072】
以上、本発明を具体的な実施形態に則して説明した。しかし本発明はこの実施形態に限定する意図ではない。図11に示されるように、転写搬送ベルトクリーナ99として、転写搬送ベルトに当接するファーブラシと、にファーブラシに電圧を印加するクリーニング電圧印加手段とを備える画像形成装置であってもよい。すなわちクリーニング電圧印加手段がトナーに対して逆極性の電圧をファーブラシに印加することによって、転写搬送ベルト上のトナーを回収する。このような構成では、分離補助用のトナー像が転写搬送ベルトクリーナ99を通過する際に、ファーブラシに印加するバイアスをオフするか、ファーブラシがフロートになるように設定される。その結果、分離補助用のトナー像がファーブラシによって回収されず、ファーブラシを通過させることができる。
【0073】
<実施形態3>
本発明の第3の実施形態は、直接多重転写方式を用いた画像形成装置において、実施形態1と同様な制御を、転写搬送ベルトを用いて行う場合である。
【0074】
図12に、本実施形態に係る画像形成装置の像担持体近傍の概略を示す。
本画像形成装置は、図12に示すように、潜像担持体たる感光ドラムの周囲に、帯電手段、露光手段、現像装置、クリーナー等を有して構成される画像形成手段たるプロセスユニットが4個設けられる。各プロセスユニットにて形成された感光ドラム上の画像は、感光ドラムに隣接して移動通過する搬送手段上の紙等の記録材へ、順次多重転写される。このようにしてフルカラー画像が形成される。
【0075】
以下、本実施形態に係る画像形成装置についての詳細を説明する。
イエロー,マゼンタ,シアン,ブラックの各色の画像を形成する各プロセスユニットPa,Pb,Pc,Pdには、それぞれ感光ドラム1a,1b,1c,1dが配置されており、各感光ドラムは矢印方向に回転自在となっている。各感光ドラム1a,1b,1c,1dの周囲には、帯電手段2a,2b,2c,2d、露光手段3a,3b,3c,3d、現像装置4a,4b,4c,4d、そして、クリーナー6a,6b,6c,6dが上記感光ドラムの回転方向に沿って順次配設されている。
【0076】
プロセスユニットの構成は、実施形態1の構成に準ずるため、ここでの詳細な説明は省略する。
【0077】
図12に示す記録材供給手段たる給紙カセット81から供給された記録材Pは、ピックアップローラ82を経て搬送ローラ83に供給され、吸着手段52によって転写搬送ベルト51上に静電吸着されて各プロセスユニット下部へ搬送される。感光ドラム1a,1b,1c,1d上に形成された各色のトナー像は、記録材Pと転写搬送ベルト51を挟んで対向する転写ローラ53から転写バイアスを受けて、順次転写される。この転写工程が終了すると、上記記録材Pは転写搬送ベルト51から分離されて定着装置7へ搬送される。なお、転写搬送ベルト51上のトナー等は、転写搬送ベルトクリーナ55によって除去、回収される。
【0078】
定着装置7は、回転自在に配設された定着ローラ71と、定着ローラ71に圧接しながら回転する加圧ローラ72からなる。そして、定着ローラ71の内部には、ハロゲンランプ等のヒータ73が配設されており、ヒータ73へ供給される電圧等を制御することにより定着ローラ71の表面の温度調節を行っている。この状態において、記録材が搬送されてくると、定着ローラ71と加圧ローラ72は一定速度で回転する。記録材Pが定着ローラ71と加圧ローラ72の間を通過する際に、定着ローラ71と加圧ローラ72とが、表裏両面からほぼ一定の圧力、温度で記録材を加圧、加熱する。その結果記録材表面上の未定着トナー像が溶融して記録材に定着する。このようにして記録材Pにフルカラー画像が形成される。
【0079】
なお、転写搬送ベルト51は、PC、PET、PVDFのような誘電体樹脂によって構成される。本実施形態では、体積抵抗率1014Ω・cm(JIS−K6911法準拠プローブを使用、印加電圧1000V、印加時間60sec、23℃50%RH)、厚みt=80μmの、カーボンが分散されたPI樹脂を用いる。
【0080】
また、転写ローラ53は、φ8mmの芯金と、厚さ4mmの導電性ウレタンスポンジ層からなる。転写ローラ53の抵抗値は、500g重の荷重の下で接地に対して該転写ローラ53を50mm/secの周速で回転させ、芯金に500Vの電圧を印加して測定された電流の関係から求められる。転写ローラ53の抵抗値は約106.5Ω(23℃50%RH)であった。
【0081】
上記の構成においても、分離補助用のトナー像が転写搬送ベルト51上に形成された上で、記録材Pの先端の裏面が分離補助用のトナー像に重なるように制御される。分離補助用のトナー像が記録材Pの先端の裏面に存在することにより、記録材Pの先端と転写搬送ベルト51と間の密着性は低い。そのため記録材Pの腰が弱い薄紙などで曲率分離が安定しない場合においても、記録材Pが転写搬送ベルト51側へ巻きついて駆動ローラの位置で分離不良が生じるのが抑制される。
【符号の説明】
【0082】
1 感光ドラム(像担持体)
51 中間転写ベルト
91 転写搬送ベルト
99 転写搬送ベルトクリーナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
像担持体と、
前記像担持体にトナー像を形成する画像形成手段と、
移動可能であって、記録材を搬送する搬送ベルトと、
前記搬送ベルトに担持された記録材に前記像担持体からトナー像を転写する画像形成装置において、
前記像担持体から、前記搬送ベルトの一周の長さより短い長さの分離補助用のトナー像の前記搬送ベルト上への転写を開始した後に、記録材の先端の裏面が前記分離補助用のトナー像の上に重なるように記録材を前記搬送ベルトに搬送するタイミングを制御する制御手段を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
連続して複数の画像を形成するモードにおいて、bは前記搬送ベルトが移動する方向における前記分離補助用のトナー像の長さであって、cは前記搬送ベルトが移動する方向における前記搬送ベルトの長さであって、eは前記搬送ベルトが移動する方向における記録材と重なっていない状態の前記分離補助用のトナー像の後端から、前記分離補助用のトナー像に続く記録材の先端までの距離であって、fは前記搬送ベルトが移動する方向における記録材の先端から次の記録材の先端までの距離であって、Nは正の整数または零であるとしたとき、以下の関係
c<Nf+b+e
Nf+e<c
を満たすことを特徴とする請求項1に記載された画像形成装置。
【請求項3】
請求項2に記載された画像形成装置において、
Nf+b<c
を満たすことを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
前記画像形成手段は複数色のトナーを用いてトナー像を形成することが可能であって、前記分離補助用のトナー像を最も明度の高い色のトナーを用いて形成することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載された画像形成装置。
【請求項5】
前記搬送ベルト上で前記分離補助用のトナー像の単位面積当たりのトナー載り量は0.01mg/cm2以上で0.04mg/cm2以下であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載された画像形成装置。
【請求項6】
前記像担持体からトナー像を前記搬送ベルトに搬送される記録材に転写する転写部材と、
前記転写部材に電圧を印加する転写電圧印加手段とを備えて、
前記転写電圧印加手段は、前記像担持体からトナー像を前記搬送ベルトに搬送される記録材に転写するときに第1の絶対値の電圧を印加して、前記像担持体から前記分離補助用のトナー像を前記搬送ベルトに転写するときに前記第1の絶対値より小さい第2の絶対値の電圧を印加することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載された画像形成装置。
【請求項7】
前記搬送ベルトに当接してクリーニング部でクリーニングするクリーニング部材を備えて、
前記クリーニング部材は、前記分離補助用のトナー像が前記クリーニング部を通過する間、前記搬送ベルトから離間するように制御されることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載された画像形成装置。
【請求項8】
前記搬送ベルトに当接してクリーニング部で静電的にクリーニングするクリーニング部材と、
前記クリーニング部材に所定の極性の電圧を印加することで前記搬送ベルトをクリーニングするクリーニング電圧印加手段とを備えて、
前記クリーニング電圧印加手段は、前記分離補助用のトナー像が前記クリーニング部を通過する間、前記所定の極性と逆極性の電圧を印加することを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載された画像形成装置。
【請求項9】
前記搬送ベルトに当接してクリーニング部で静電的にクリーニングするクリーニング部材と、
前記クリーニング部材に所定の極性の電圧を印加することで前記搬送ベルトをクリーニングするクリーニング電圧印加手段とを備えて、
前記クリーニング電圧印加手段は、前記分離補助用のトナー像が前記クリーニング部を通過する間、前記クリーニング部材に印加する電圧をオフすることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載された画像形成装置。
【請求項10】
請求項6に記載された画像形成装置において、
前記像担持体に当接する像担持体クリーニング部材を備えて、前記像担持体からトナー像を前記搬送ベルトに搬送される記録材へ転写する電圧の極性に対して逆極性の電圧を前記転写部材に非画像形成時に印加するように前記電圧印加手段を制御することを特徴とする画像形成装置。
【請求項11】
前記搬送ベルトに転写された前記分離補助用のトナー像が前記搬送ベルト上を一周移動する前に、前記分離補助用のトナー像の上に記録材の裏面が重ねられることを特徴とする請求項1乃至10のいずれかに記載された画像形成装置。
【請求項12】
前記画像形成手段は、前記像担持体にトナー像を転写する転写部を複数備えて、
前記分離補助用のトナー像は前記像担持体が移動する方向において最下流側の前記転写部で前記像担持体に転写されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載された画像形成装置。
【請求項13】
薄い記録材が搬送される場合に前記分離補助用のトナー像が形成されて、厚い記録材が搬送される場合には前記分離補助用のトナー像は形成されないことを特徴とする請求項1乃至12のいずれかに記載された画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−83889(P2013−83889A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−225102(P2011−225102)
【出願日】平成23年10月12日(2011.10.12)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】