説明

画像形成装置

【課題】モータや電磁クラッチを設けずに、簡単な構成で搬送ベルトのテンションの緩和状態と緊張状態を、ユーザの手を煩わすことなく自動的に切り替えられるようにする。
【解決手段】搬送ベルト24の表面に吸着されて副走査方向(Y方向)へ搬送される記録用紙Pに、キャリッジ20によって主走査方向(X方向)に往復移動される記録ヘッド22からインク滴を吐出させて画像を形成するインクジェット方式の画像形成装置であり、そのキャリッジ20が主走査方向における搬送ベルト24の外部の右側維持回復機構50上の所定位置へ移動したときに、そのキャリッジ20の移動による力によって、テンションローラ26を搬送ベルト24のテンションを緩和させる方向に移動させるテンション緩和用伝動機構10を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は画像形成装置に関し、特にインクジェット方式の画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置には種々の方式のものがあるが、現在多用されている主な方式としては、電子写真方式とインクジェット方式がある。
インクジェット方式の画像形成装置(インクジェット記録装置又はインクジェットプリンタとも称される)は、記録ヘッドを搭載したキャリッジを往復移動させながら、記録ヘッドのノズルからインク滴を吐出させ、それを記録用紙などの被記録材に付着させて画像を形成する。その記録用紙は無端状の搬送ベルトによって所定速度で搬送される。
【0003】
その記録用紙を搬送する搬送ベルトは、一般に、無端状のベルトが複数のローラによってテンションをかけて張り渡されている。そのため、ベルトにテンションをかけた状態のまま長時間停止していると、張り渡されている搬送ベルトの両端部に曲がり癖がついてしまう。搬送ベルトに曲がり癖がついてしまうと、搬送ベルトが循環走行する際に平坦となるべき面の張り状態が変化してしまう。このような現象が搬送ベルトに生じると、記録用紙の搬送性能が悪化し、形成される画像の品質が劣化する恐れがあるという問題があった。
【0004】
また、電子写真方式の画像形成装置においても、感光体ドラムに形成したトナー画像を記録用紙に転写する前に一次転写するための中間転写ベルトや、感光体ドラムに形成したトナー画像を記録用紙に直接転写するために、記録用紙を静電吸着して搬送する転写搬送ベルトとして、テンションをかけて張り渡された無端状のベルトが使用されている。
このような画像形成装置でも、その搬送ベルトにテンションをかけた状態のまま長時間停止させると、張り渡されている搬送ベルトの両端部に曲がり癖がついてしまい、前述と同様な問題が生じる。
【0005】
そこで、電子写真方式の画像形成装置においては従来から、例えば特許文献1に記載されているように、中間転写ベルトに張力を付与するためのテンションローラに押し付け力を与える弾性体の機能を、無効な状態から有効な状態に手操作で切り替える機構を設けたものがある。
また、特許文献2に記載されているように、トナー画像を転写させるために用紙を吸着して搬送する転写搬送ベルトへの張力の付与と解除を、モータと電磁クラッチ等を用いた機構によって自動的に行えるようにしたものもある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された機構のように手操作でベルトの張力を切り替えるのでは、ユーザが通常の使用中に操作するのは無理であり、工場出荷時に中間転写ベルトの張力を緩めておき、使用開始時にテンションを付与するように切り替え操作する程度のことしかできなかった。
また、特許文献2に記載されているように、専用のモータと電磁クラッチ等を用いて転写搬送ベルトへの張力の付与と解除を行う機構を設けると、高価なモータや電磁クラッチを専用するため、画像形成装置のコストアップになる。
そのため、これらの技術をインクジェット方式の画像形成装置における搬送ベルトの張力切り替え機構に採用したとしても、上述した問題が生じる。
【0007】
この発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、インクジェット方式の画像形成装置において、コストアップの要因となる高価なモータや電磁クラッチを専用に設けずに、簡単な構成で搬送ベルトのテンションの緩和状態と緊張状態を、ユーザの手を煩わすことなく自動的に切り替えられるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は上記の目的を達成するため、記録ヘッドを搭載して主走査方向に往復移動するキャリッジと、複数のローラによって張り渡された無端状の搬送ベルトと、上記複数のローラのうち上記搬送ベルトにテンションを与えるテンションローラに、該テンションを与える方向に押圧力を加える弾性部材とを備え、上記搬送ベルトの表面に吸着されて主走査方向に直交する副走査方向へ搬送される記録用紙に、上記キャリッジによって主走査方向に往復移動される記録ヘッドからインク滴を吐出させて画像を形成するインクジェット方式の画像形成装置において、上記キャリッジが主走査方向における上記搬送ベルトの外部の所定位置へ移動したときに、そのキャリッジの移動による力によって、上記テンションローラを上記搬送ベルトのテンションを緩和させる方向に移動させるテンション緩和用伝動機構を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、高価なモータや電磁クラッチを専用に設けずに、記録ヘッドを主走査移動させるキャリッジの移動による力を利用した簡単な機構によって、用紙搬送ベルトへのテンションの緩和状態と緊張状態を、ユーザの手を煩わすことなく自動的に切り替えることができる。それによって、画像形成装置の停止中に用紙搬送ベルトに曲がり癖が付いてしまうことによる搬送性能の悪化や形成される画像の品質劣化を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】この発明による画像形成装置の一実施例を斜め前方から見た斜視図である。
【図2】図1に示した画像形成装置の内部構成の要部を示す概略側面図である。
【図3】図2におけるこの発明に係わる部分の画像形成中の状態を示す平面図である。
【図4】同じくその画像形成後の搬送ベルトのテンション緩和状態を示す平面図である。
【図5】この発明による画像形成装置におけるコントローラ及びその制御系の構成例を示すブロック図である。
【図6】図5に示したコントローラによるこの発明に関する制御処理の一例を示すフロー図である。
【図7】同じくコントローラによるこの発明に関する制御処理の他の例を示すフロー図である。
【図8】同じくコントローラによるこの発明に関する制御処理のさらに他の例を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、この発明の実施の形態を詳細に説明する。
〔画像形成装置の全体説明〕
まず、この発明による画像形成装置の一実施例の全体構成とその動作を、図1から図3を参照して説明する。図1はその画像形成装置を斜め前方から見た斜視図であり、図2はその内部構成の要部を示す概略側面図である。図3はその画像形成装置におけるこの発明に係わる部分の画像形成中の状態を示す平面図である。
【0012】
この画像形成装置は、インクジェット方式の画像形成装置(インクジェット記録装置又はインクジェットプリンタとも称される)であり、この実施例ではさらに、インクジェット方式のフルカラーの画像形成装置である。

図1に示す画像形成装置本体1には、記録用紙を給紙する給紙トレイ2が装着されている。記録用紙は、インクジェット方式による画像形成(記録又は印刷)が可能な記録材であればよい。
【0013】
その給紙トレイ2の上方には、画像形成された記録用紙を排紙してストックする排紙トレイ3が画像形成装置本体1に着脱自在に装着されている。また、画像形成装置本体1の上側には上面カバー4が開閉可能に設けられている。
画像形成装置本体1の前部の右側には、インクカートリッジ装填部5が前方に突き出して設けられており、その上面は画像形成装置本体1の上面より低い位置にある。
【0014】
このインクカートリッジ装填部5には、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの各色のインクをそれぞれ収容した4個のインクカートリッジ6がそれぞれ横方向に並べて着脱自在に装填されている。また、インクカートリッジ装填部5の前側には、インクカートリッジ6を着脱するときに開くカートリッジカバー7が開閉可能に設けられている。
このインクカートリッジ装填部5の上面には操作表示部8が設けられている。その操作表示部8には、装置の状態等を表示する表示器と動作指示やデータ等を入力するための複数のキーなど設けられている。
【0015】
この画像形成装置の内部構成は図2に示すように、画像形成装置本体1の上面カバー4の下方には、図示していない左右の側板間に横架されたガイドロッド21を貫通させて、キャリッジ20が設けられている。そのキャリッジ20は、ガイドロッド21と図示していない上部のステイとによって、主走査方向(図3に示す矢示X方向)に摺動自在に保持され、図示していない主走査モータとタイミングベルト機構等の駆動機構によって、主走査方向に往復移動される。
【0016】
キャリッジ20の下部には、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの各色のインク滴を吐出する4個のインクジェットヘッドである記録ヘッド22が設けられている。各記録ヘッド22の各色のインク吐出口は、キャリッジの主走査方向に沿って一列に配列されている。
【0017】
記録ヘッド22を構成するインクジェットヘッドとしては、圧電素子などの圧電アクチュエータ、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いて液体の膜沸騰による相変化を利用するサーマルアクチュエータ、温度変化による金属相変化を用いる形状記憶合金アクチュエータ、静電力を用いる静電アクチュエータなどをインクを吐出するためのエネルギー発生手段として備えたものなどを使用できるが、ここでは、圧電アクチュエータ(圧電素子)をエネルギー発生手段に用いた記録ヘッドを使用している。
【0018】
キャリッジ20には、各記録ヘッド22に各色のインクを供給するための各色の液体容器であるサブタンク23を搭載している。その各サブタンク23には、図1に示した各色のインクカートリッジ(メインタンク)からインク供給チューブを介してインクが補充供給される。
【0019】
キャリッジ20の下方には無端状ベルトである搬送ベルト24が、駆動ローラである搬送ローラ25と従動ローラであるテンションローラ26とによって、前述した主走査方向に直交する副走査方向(矢示Y方向)に沿って張り渡されている。その搬送ベルト24の上側部の上面とキャリッジ20に搭載された各記録ヘッド22の下面とは、僅かな間隔で平行に対向している。
【0020】
搬送ローラ25は駆動軸27に固着されており、図示していない副走査モータによって矢示方向に回転され、搬送ベルト24を副走査方向(矢示Y方向)に周回移動(以下「回動」という)させる。テンションローラ26は回転しない支持軸28に回転自在に支持されており、搬送ベルト24の回動に伴って矢示方向に回転する。
そのテンションローラ26は、図3にも示すように、支持軸28の両端部と画像形成装置本体1内に設けた1対の固定のばね受け部材31との間にそれぞれ介装した弾性部材である圧縮スプリング32によって、搬送ベルト24にテンションを与える方向に押圧力が加えられている。
【0021】
搬送ローラ25の下側には搬送ベルト24を挟むように、その表面を帯電させるための帯電ローラ33が設けられている。また、テンションローラ26の図2で左方には、記録用紙を排紙するための排紙ローラ34と排紙コロ35が設けられている。
搬送ベルト24の上側部の裏面側に接するように、記録ヘッド22による画像形成領域に対応してガイド部材36を配置している。このガイド部材36は、記録ヘッド22による画像形成領域では、搬送ベルト24の平坦性を高精度に維持するために設けられている。
【0022】
一方、給紙トレイ2には記録用紙Pを積載する用紙積載板29が設けられている。その用紙積載板29上に積載された記録用紙Pを、上から順に引き出す半月形の引出ローラ40と、引き出された記録用紙Pを一枚ずつ分離する分離パッド41とが、用紙積載板29の図2で右端部に近接して設けられている。この分離パッド41は、用紙ガイド部材42の下端部に取り付けられている。
さらに、搬送ローラ25に近接してカウンタローラ43と搬送ガイド44が設けられている。
【0023】
また、この画像形成装置本体1の背面側(図2における右側)には、用紙反転ユニット45が着脱可能に装着されている。この用紙反転ユニット45は、記録用紙Pの両面に画像形成する場合に、搬送ベルト24の逆方向に回動させて戻される一方の面に画像形成が形成された記録用紙Pを取り込んで反転させて、再度カウンタローラ43と搬送ベルト24との間に給紙する。また、この用紙反転ユニット45の上側に手差し給紙部46が設けられている。搬送ローラ25の上側には、搬送ベルト24に沿って押さえ部材47が揺動可能に支持されている。
【0024】
このように構成された画像形成装置によって、記録用紙に画像を形成する動作手順の概略を図2及び図3によって説明する。
この画像形成装置は、図示しないパーソナルコンピュータ等のホスト装置から通信ケーブルを介して画像情報である印刷データ(画像形成ジョブデータ)を受信して、画像形成(プリント)を次のように実行する。
【0025】
まず、引出ローラ40が矢示方向に回転して、給紙トレイ2の用紙積載板29上に積載された記録用紙Pを引き出し、分離パッド41によって最上位の1枚を分離して給紙する。その記録用紙Pは、用紙ガイド部材42に案内されて、搬送ベルト24とカウンタローラ43の間に搬送される。
そこで、記録用紙Pは帯電ローラ33により帯電されている搬送ベルト24の表面に静電的に吸着され、搬送ベルト24の回動によって、押さえ部材47に押さえられながら搬送される。
【0026】
その記録用紙Pの画像形成領域の先端が記録ヘッド22と対向する位置に達したら、搬送ベルト24を停止させて記録用紙の移動を停止する。そして、キャリッジ20を、図3に矢示Xで示す主走査方向における画像形成領域の一端側から他端側へ、ガイドロッド21に沿って移動させながら、印刷データに応じて各記録ヘッド22からの各色のインク液の吐出を制御して、1ライン分の画像を記録用紙Pに記録する。
【0027】
その、搬送ベルト24を僅かな一定時間だけ駆動して、記録用紙Pを矢示Yで示す副走査方向へ1ライン分だけ移動させて停止する。そして、キャリッジ20を主走査方向に反転移動させながら印刷データに応じて各記録ヘッド22からの各色のインク液の吐出を制御して、次の1ライン分の画像を記録する。
このように、記録用紙Pを副走査方向へ間欠移動させ、キャリッジ20を主走査方向へ往復移動させることを繰り返し行って、記録用紙Pの画像形成領域に印刷データに応じた画像を形成する。画像が形成された記録用紙は、排紙ローラ34及び排紙コロ35によって搬送され、排紙トレイ3に排出される。
【0028】
また、図3に示すように、キャリッジ20のガイドロッド21に沿った主走査方向の移動範囲において、一方(図で右側)の非画像形成領域の第1のホームポジションには、各記録ヘッド22の噴射ノズルの状態を維持し回復するための信頼性維持手段である記録ヘッド維持回復機構(「右側維持回復機構」と云う)50を配置し、他方(図で左側)の非画像形成領域の第2のホームポジションにも、同様な記録ヘッド維持回復機構(「左側維持回復機構」と云う)60を配置している。
【0029】
右側維持回復機構50には、各色用の記録ヘッド22のノズル面をキャッピングするためのキャッピング手段であるイエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの各色に応じた4個のキャップ51と、空吐出受け部材52を備えている。さらに、図示を省略しているがノズル面をワイピングするためのワイピング手段であるワイパブレードなども備えるとよい。
左側維持回復機構60には、各色用の記録ヘッド22の空吐出を受ける空吐出受け部材61を備えている。さらに、図示を省略しているがノズル面をワイピングするためのワイパブレードなどを備えるとよい。
【0030】
〔テンション緩和用伝動機構の説明〕
次に、この画像形成装置におけるこの発明を実施するためのテンション緩和用伝動機構について、図2から図4によって説明する。
この実施例の画像形成装置には、図2から図4に示すようにテンション緩和用伝動機構10を設けている。
【0031】
そのテンション緩和用伝動機構10は、キャリッジ20が図3に示す主走査方向(矢示X方向)における搬送ベルト24の外部の所定位置へ移動したときに、そのキャリッジ20の移動による力によって、テンションローラ26を搬送ベルト24のテンションを緩和させる方向に移動させる機構である。この実施例では、図3に示す右側維持回復機構50上の第1のホームポジションを所定位置とする。
【0032】
この実施例の画像形成装置に設けたテンション緩和用伝動機構10は、キャリッジ20に一体に主走査方向(矢示X方向)に沿って設けた第1のラック11と、キャリッジ20が上記所定位置へ移動したときに第1のラック11と噛み合う位置に設けたピニオン12とを備えている。さらに、そのピニオンに常時噛み合う第2のラック13を形成し、一端部がテンションローラ26の支持軸28に連結され、副走査方向(矢示Y方向)に沿って移動可能な移動部材14を備えている。
【0033】
第1のラック11は、図3に示すようにキャリッジ20の前端部に右側面から主走査方向の右方に突出して設けられ、その後面側にラック歯が主走査方向に一定のピッチで形成されている。ここでは、記録用紙Pの搬送方向である副走査方向の下流側を「前」とし、上流側を「後ろ」とする。
ピニオン12は、図2に示すように鉛直方向に長く、その下端部から下方に延びる中心軸12aが、画像形成装置本体1内の固定のフレームあるいはそれに固設された支持板17を貫通し、軸受部材18によって回転自在に抜け止め支持され、主走査方向と副走査方向の両方に直交するように直立して設けられている。
【0034】
移動部材14は、細長い厚板状の部材であり、その前端部に二股に分岐した連結部14aが一体に形成されている。その連結部14aによってテンションローラ26の支持軸28を上下から挟むようにくわえ込んで、連結部14aの上下部分と支持軸28とを連結ピン15によって上下方向に貫通させて、移動部材14と支持軸28とを連結している。
その連結部14aの上下部分に形成した連結ピン15を貫通させるための孔は、連結ピン15の外径よりも僅かに大きい短径を有し、支持軸28の軸線方向(主走査方向と同じ)に僅かに長い長孔になっている。そのため、移動部材14と支持軸28とは連結ピン15の回りに相対回転可能であり、その連結位置も若干変動可能である。
【0035】
そして、この移動部材14は図3に示すように、その幅方向の両側に沿って設けられた複数のガイド板16(図2では図示を省略)にガイドされて、副走査方向にのみ移動できるようになっている。その移動部材14のピニオン12と対向する側の側面に、長手方向(副走査方向)に沿って第2のラック13が形成されており、常時ピニオン12と噛み合っている。当然ながら、ピニオン12と第2のラック13の歯のピッチは、第1のラック11の歯のピッチと同じである。
【0036】
このテンション緩和用伝動機構10は、画像形成終了後、キャリッジ20が図4に示すように所定位置である右側維持回復機構50が設けられた第1のホームポジションへ移動したときに、その停止位置の少し前から第1のラック11がピニオン12と噛み合う。そして、キャリッジ20の矢示A方向(主走査方向の右方向)への移動による力によって、第1のラック11がピニオン12を矢示B方向に回転させる。その回転によって、ピニオン12と噛み合っている第2のラック13が移動部材14と共に矢示C方向(副走査方向の後方)へ移動する。
【0037】
その移動部材14の矢示C方向への移動によって、テンションローラ26の支持軸28の図4で右側に延びた部分が引っ張られて、圧縮スプリング32の押圧力に抗して矢示D方向へ移動する。それによって、その支持軸28と共にテンションローラ26が搬送ローラ25に幾分近付くように傾斜し、搬送ベルト24のテンションを緩和させる方向に移動することになる。このときの移動部材14の移動量、すなわちテンションローラ26の移動量は数mm程度でよい。キャリッジ20が第1のホームポジションに停止している間は、移動部材14は移動せず、搬送ベルト24のテンションを緩和させた図4に示す状態を維持する。
【0038】
このテンション緩和用伝動機構10によれば、高価なモータや電磁クラッチを使用しない簡単な構成で、画像形成終了後に、キャリッジ20が所定位置へ移動する際の移動力を利用して、自動的に搬送ベルト24のテンションを緩和状態にすることができる。
そして、画像形成を開始する際には、キャリッジ20が図4に示した第1のホームポジションから左方に移動を開始すると、その初期の移動に伴う第1のラック11の左行により、ピニオン12が矢示Bと反対方向に回転する。その回転によって、ピニオン12と噛み合っている第2のラック13が移動部材14と共に矢示Cと反対方向に移動し、テンションローラ26の支持軸28を矢示Dと反対方向へ戻す。
【0039】
その後、キャリッジ20の左方への移動によって、第1のラック11がピニオン12から外れると、ピニオン12が自由回転可能になり、移動部材14も副走査方向へ移動自在になる。しかし、圧縮スプリング32の押圧力によって、支持軸28及びテンションローラ26は図3に示した状態に戻り、搬送ベルト24にテンションを与えた緊張状態に保つ。
【0040】
ところで、この発明におけるテンション緩和用伝動機構は、前述したように、キャリッジ20が主走査方向における搬送ベルト24の外部の所定位置へ移動したときに、そのキャリッジ20の移動による力によって、テンションローラ26を搬送ベルト24のテンションを緩和させる方向に移動させる伝動機構であればよい。
したがって、上述した2個のラックと1個のピニオンの組合せを用いた伝動機構に限るものではなく、簡単なカム機構や、カムとレバーの組合せ機構などによってもテンション緩和用伝動機構を構成することができる。
【0041】
〔コントローラ及びその制御系の説明〕
次に、この画像形成装置におけるコントローラ及びその制御系の構成例を図5によって説明する。
コントローラ100は、上述した画像形成装置全体の制御を司る制御手段であり、中央処理装置であるCPU101、プログラム及び固定データを格納するメモリであるROM102、画像データ等のデータメモリであるRAM103、不揮発性メモリであるNVRAM104、ホストインタフェース(ホストI/F)105、入出力部(I/O)106等からなるマイクロコンピュータを備えている。このCPU101を主とするマイクロコンピュータは、後述するこの発明に関する判断処理等も行う。
【0042】
さらに、画像データに対する各種信号処理、並び替え等を行う画像処理やその他装置全体を制御するための入出力信号を処理するASIC107と、現在の時刻を計時する時計手段である時計回路108を備えている。この時計回路108は、経過時間を計測するためのクロック信号も出力する。
ホストI/F105は、印刷データ(画像形成ジョブデータ)を送信するパーソナルコンピュータ等のホスト装置とのデータ信号の送受を行う。
【0043】
これらの各部は、CPUバス110によって相互にデータや信号の遣り取りが可能に接続されている。
また、図1に示した操作表示部8もCPUバス110に接続されており、画像形成装置本体1の内部の搬送ベルト24に近い適宜の位置に設置した温湿度検知手段としての温湿度センサ9が、I/O106に接続されている。なお、温湿度センサ9は半導体集積技術により温度と湿度を一緒に計測できる市販のセンサであるが、温湿度検知手段として温度センサと湿度センサとを別に設けてもよい。
【0044】
さらに、CPUバス110に接続された制御用バス120に、駆動波形生成部121と、ヘッドドライバ122と、主走査モータ駆動部123と、副走査モータ駆動部124と、ACバイアス供給部125と、維持回復機構駆動部126とが接続されている。これらの各部は、いずれもCPU101によって制御されて動作する。
また、搬送ベルト24の移動量及び移動速度に応じた検知信号を出力するエンコーダ75からの検知信号がI/O106に入力される。
【0045】
このコントローラ100は、ホスト装置からの印刷データ等を通信ケーブルあるいはネットワークを介してホストI/F105によって受信する。
すると、CPU101は、ホストI/F105に含まれる受信バッファ内の印刷データを読み出して解析し、ASIC107によって必要な画像処理及びデータの並び替え処理等を行い、記録ヘッド22の1行分に相当する画像データ(ドットパターンデータ)を、クロック信号に同期して、ヘッドドライバ122にシリアルデータでする。
【0046】
駆動波形生成部121は、駆動波形のパターンデータをD/A変換するD/A変換器等で構成され、1つ又は複数の駆動パルス(駆動信号)で構成される駆動波形をヘッドドライバ122に対して出力する。
ヘッドドライバ122は、シリアルに入力される記録ヘッド22の1行分に相当する画像データ(ドットパターンデータ)に基づいて駆動波形生成部121から与えられる駆動波形を構成する駆動パルスを選択的に各記録ヘッド22の圧力発生部に印加して記録ヘッド22を駆動し、所要のインク滴を吐出させる。
【0047】
主走査モータ駆動部123は、主走査モータ71を駆動してキャリッジ20を主走査方向へ往復移動させる。
副走査モータ駆動部124は、副走査モータ72を駆動して、図2及び図3に示した駆動軸27と共に搬送ローラ25を回転させ、搬送ベルト24を前述したように記録用紙を副走査方向へ間欠的に搬送し得るように回動させる。
ACバイアス供給部125は、帯電ローラ33に対して供給するACバイアスのON/OFF制御を行うことによって、搬送ベルト24上の帯電パターンを制御し、搬送ベルト24を帯電させて記録用紙を静電吸着可能にする。
【0048】
維持回復機構制御部126は、画像形成終了後、キャリッジ20が図4に示した第1のホームポジションへ移動したときに、記録ヘッド維持回復機構(右側維持回復機構)50を駆動して、各キャップ51で各記録ヘッド22をキャッピングし、各ノズルを湿潤状態に保つことによりインクの乾燥による吐出不良を防止する。
また、キャップ51で記録ヘッド22をキャッピングした状態で、図示しない吸引ポンプによって各ノズルから記録液を吸引し、増粘した記録液や気泡を排出する回復動作を行う。さらに、画像形成開始前や形成途中などに、記録と関係しないインクを空吐出受け部材52に吐出させる。これらによって、各記録ヘッド22の安定した吐出性能を維持する。
【0049】
〔発明に関する制御処理例〕
ここで、図5に示したコントローラ100によるこの発明に関する制御処理の異なる例を、図6から図8のフロー図と図3及び図4を参照して説明する。
(1)基本的な制御処理
基本的な制御処理についてはフロー図を示していないが、コントローラ100は一連のジョブの印刷データの画像形成が終了すると、直ちにキャリッジ20を図3の右側の第1のホームポジションへである所定位置へ移動させ、右側維持回復機構50によって記録ヘッド22のキャッピング等の記録ヘッド22の回復動作を行わせる(図4に示す状態)。
【0050】
このキャリッジ20の第1のホームポジションへの移動に連動して、前述したようにテンション緩和用伝動機構10の各部が図4に矢示A〜Cに示すように作動し、それによってテンションローラ26が矢示D方向に僅かに傾き、搬送ベルト24のテンション緩和が実施される。
コントローラ100が新たなジョブの印刷データを受信して、その画像形成を開始するときには、キャリッジ20を左方へ移動させて搬送ベルト24上に移行させる。そのキャリッジ20移動に連動して、前述したようにテンション緩和処理が解除される。
【0051】
上述した基本的な制御処理では、画像形成処理を行わない状態では常に搬送ベルトのテンション緩和処理を行うことになる。そのため、画像形成を開始する際には、常に搬送ベルト24のテンションが正常な状態に戻るまで、搬送ベルト24による記録用紙の搬送開始を遅らせる必要があり、生産性(単位時間当たりの画像形成枚数)が低下する。
そこで、この生産性を改善するために、次の(2)〜(4)に説明するような制御処理を実施するとよい。
【0052】
(2)経過時間による制御処理(図6)
このような搬送ベルト24は一般に、搬送ローラ25とテンションローラ26を回転させずに、同じ位置に長時間放置されると癖が発生し易い。そこで、画像形成が終了後、搬送ベルト24が停止したままテンションが付与されている経過時間に着目した制御処理を、図6のフロー図によって説明する。
【0053】
コントローラ10は、画像形成が終了する(このとき副走査モータ駆動部124による副走査モータ72の駆動を停止する)と、図6に示す処理を開始する。なお、画像形成が終了しても、コントローラ10には待機電源が供給されていて、以後の処理が可能な状態になっている。これは他の制御処理例においても同様である。
【0054】
そして、ステップS11で、キャリッジ20を第2のホームポジション(HP)へ移動させて待機させる。すなわち、キャリッジ20を図3の左側維持回復機構60上の第2のホームポジション(HP)へ移動して停止させる。その待機中に、各記録ヘッド22内の記録と関係しないインクを、左側維持回復機構60の空吐出受け部材61に吐出させる等の回復処理を行うことができる。このときには、搬送ベルト24のテンション緩和処理は実施されない。
【0055】
一方、画像形成終了後の経過時間を、時間計測手段であるタイマで計測している。そのタイマは例えば、図5に示したコントローラ10内の時計回路108から出力される計時用のクロック信号を、CPU101が内部カウンタによってカウントして経過時間を計測するものとする。
ステップS12では、そのタイマによる経過時間を監視し、ステップS13で経過時間が所定時間を超えたか否かをCPU101が判断する。
【0056】
その判断の結果、経過時間が所定時間を超えていなければ、ステップS12へ戻って経過時間を監視し、ステップS13の判断処理を繰り返す。そして、ステップS13で経過時間が所定時間を超えたと判断すると、ステップS14へ進んでテンション緩和処理を実施する。すなわち、キャリッジ20を図3の右側維持回復機構50上の第1のホームポジション(HP)である所定位置へ移動して停止させ、各記録ヘッド22のノズルを右側維持回復機構50の各キャップ51によりキャッピングする等の回復処理を行なう。
同時に、キャリッジ20の第1のホームポジション(HP)への移動に連動して、前述したようにテンション緩和用伝動機構10が作動して、搬送ベルト24のテンション緩和処理が実施される。
【0057】
その後、図6の処理を終了して待機状態になるが、コントローラ10が新たなジョブの印刷データを受信して、その画像形成を開始するときには、キャリッジ20を第1のホームポジション(HP)から左方へ移動させるので、それに連動して前述したようにテンション緩和処理が解除される。
【0058】
この例における画像形成終了後の経過時間が、テンション緩和処理を実施する長さになったか否かを判断するための所定時間は、搬送ベルト24の材質や厚さなど形状、搬送ローラ25及びテンションローラ26の径や配置数、環境条件など種々の条件によって異なる。この所定時間を例えば1時間として、図5に示したROM102又はNVRAM104に予め記憶させておくことができる。あるいは、ユーザが画質を重視するか生産性を重視するかによって、この所定時間を図1及び図5に示した操作表示部8から任意に設定して、NVRAM104に記憶させるようにしてもよい。
【0059】
この制御処理によれば、搬送ベルト24のテンション緩和処理を実施する頻度が少なくなり、画像形成終了後の経過時間は所定時間以内で再開する場合はすぐに画像形成処理を開始できる。したがって、(1)の基本的な制御処理の場合に比べて画像形成の生産性が向上する。
企業などで使用する画像形成装置の場合には、業務時間中には長時間に亘って画像形成処理を行なわないことは少ないので、業務時間外や休業日などに、テンション緩和処理が実施されることが多くなるであろう。
【0060】
(3)スケジュール情報による制御処理(図7)
搬送ベルト24に多少の癖が発生しても、業務時間中などのある時間帯では生産性を優先させることを希望するユーザに対応できるようにした制御処理を図7のフロー図によって説明する。
ユーザは、予め搬送ベルト24のテンションを緩和させる処理を禁止するテンション緩和禁止時間帯のスケジュール情報を、図1及び図5に示した操作表示部8から入力してNVRAM104に記憶させて、それをCPU101を有するコントローラ100に管理させる。これがスケジュール管理手段に相当する。
【0061】
コントローラ100は、画像形成が終了すると図6に示す処理を開始する。そして、まずステップS21でキャリッジ20を図3で左側の第2のホームポジション(HP)へ移動させて待機させる。このときは搬送ベルト24のテンション緩和処理は実行されない。
その後、ステップS22で、CPU101がNVRAM104のスケジュール情報から緩和禁止時間帯の情報を取得し、ステップS23で時計回路108から現在の時刻情報を取得する。
【0062】
そして、ステップS24で現在の時刻はテンション緩和禁止時間帯内か否かを判断する。その結果、テンション緩和禁止時間帯内であれば、ステップS23に戻って時計回路108から現在の時刻情報を取得し、ステップS24での判断を繰り返す。その判断で、現在の時刻がテンション緩和禁止時間帯内ではなくなると、ステップS25へ進んで、テンション緩和処理を実施する。
【0063】
すなわち、キャリッジ20を図3の右側維持回復機構50上の第1のホームポジション(HP)である所定位置(図4に示す位置)へ移動して停止させ、各記録ヘッド22のノズルを右側維持回復機構50の各キャップ51によりキャッピングする等の回復処理を行なう。
同時に、キャリッジ20の第1のホームポジション(HP)への移動に連動して、前述したようにテンション緩和用伝動機構10が作動して、搬送ベルト24のテンション緩和処理が実施される。
【0064】
その後、ステップS26で再び時計回路108から現在の時刻情報を取得し、ステップS27で現在の時刻はテンション緩和禁止時間帯内か否かを判断する。その判断結果がテンション緩和禁止時間帯内でない間は、ステップS26の現在の時刻情報の取得とステップS27の判断を繰り返している。
そして、ステップS27で現在の時刻はテンション緩和禁止時間帯内であると判断すると、ステップS28へ進んで、テンション緩和処理を解除する。すなわち、キャリッジ20を図3で左側の第2のホームポジション(HP)へ移動させて待機させる。それに連動して、テンション緩和処理が解除される。
【0065】
その後、ステップS23へ戻って、それ以降の処理を繰り返す。この図7のフロー図にはエンドがないが、ステップS23〜S28の処理を繰り返している間に、コントローラ100が新たなジョブの印刷データを受信して、その画像形成を開始するときには、この図7に示す処理を修了して、キャリッジ20を第1又は第2のホームポジション(HP)から搬送ベルト24上の位置へ移動させる。
したがって、キャリッジ20が第1のホームポジション(HP)にあって、テンション緩和処理を実施していた場合には、キャリッジ20の左方への移動によって、そのテンション緩和状態が解除される
【0066】
この制御処理によれば、画像形成を行わない状態において、搬送ベルト24のテンション緩和処理を実施する時間帯と実施しない時間帯を任意にスケジューリングできるので、使用者の使用環境でに最適化を図ることができ、利便性が高まる。
例えば、平日の業務時間が9時から17時である場合、その時間帯をテンション緩和禁止時間帯として設定すれば、業務時間内にはテンション緩和処理が実施されないため、画像形成の生産性を低下させずに済む。
【0067】
(4)温度と湿度による制御処理(図8)
搬送ベルト24の癖は、そのベルトを構成する素材が持つ温湿度の特性によって、発生し易さが変わる。
そこで、画像形成装置内の温度と湿度の情報に基いて、搬送ベルト24の癖が発生し易い状況の場合にのみ、テンション緩和処理を実施するようにし、それ以外の状況ではテンション緩和処理を行わずに、生産性を優先させるようにした制御処理を、図8のフロー図によって説明する。
【0068】
テンション緩和処理を実施する必要がある温度と湿度の組み合わせ条件は、予め実験結果などに基いてテーブルデータを作成して、図5に示したコントローラ100内のROM102又はNVRAM104に格納させておくとよい。
コントローラ100は、画像形成が終了すると図8に示す処理を開始する。そして、まずステップS31、S32で図5に示した温湿度検知手段である温湿度センサ9によって検知される温度情報と湿度情報を取得する。
【0069】
そして、ステップS34で温度と湿度が所定条件か否かを判断する。その結果所定の条件でなければ、キャリッジ20を図3で左側の第2のホームポジション(HP)へ移動させて待機させる。したがって、搬送ベルト24のテンション緩和処理は実施しない。
ステップS34で温度と湿度が所定条件であると、ステップS35へ進んでテンション緩和処理を実施する。すなわち、キャリッジ20を図3で右側の第1のホームポジション(HP)である所定位置へ移動させて、キャッシングを行う。このときのキャリッジ20の第1のホームポジション(HP)への移動に連動して、前述のようにテンション緩和用伝動機構10が作動して、搬送ベルト24のテンション緩和処理が実施される。
【0070】
その後、ステップS37、S38で再び温度情報と湿度情報を取得し、ステップS39で温度と湿度が所定条件か否かを判断する。その結果、所定条件である間は、ステップS37〜S39の処理を繰り返しており、ステップS39で温度と湿度が所定条件ではないと判断すると、ステップS40へ進んで、テンション緩和処理を解除する。
すなわち、キャリッジ20を図3で左側の第2のホームポジション(HP)へ移動させて待機させる。
【0071】
このステップS40の後、および前述したステップS36の後でも、ステップS41、S42で再び温度情報と湿度情報を取得し、ステップS43で温度と湿度が所定条件か否かを判断する。その結果、所定条件でない間は、ステップS41〜S43の処理を繰り返しており、ステップS43で温度と湿度が所定条件であると判断すると、ステップS35へ進んで、テンション緩和処理を実施する。
【0072】
この図8のフロー図にもエンドがないが、ステップS35〜S43の処理を繰り返している間に、コントローラ100が新たなジョブの印刷データを受信して、その画像形成を開始するときには、この図8に示す処理を修了して、キャリッジ20を第1又は第2のホームポジション(HP)から搬送ベルト24上の位置へ移動させる。
したがって、キャリッジ20が第1のホームポジション(HP)にあって、テンション緩和処理を実施していた場合には、キャリッジ20の左方への移動によって、そのテンション緩和状態が解除される。
【0073】
テンション緩和処理を実施する必要がある温度と湿度の組み合わせ条件を簡便に設定する例として、例えば、温度を℃で、湿度を%で取得した場合、「温度(℃)+湿度(%)>100」を所定条件とすることができる。この場合、湿度が70%で温度が30℃を超えたり、湿度が60%で温度が40℃を超えたりする条件では、テンション緩和処理を実施することになる。
この制御処理によれば、搬送ベルトの癖発生に大きく寄与する温湿度に基いてテンション緩和処理を実施するか否かを判断するので、本当に必要な場合にだけテンション緩和処理を実施することができ、画像形成の生産性を低下を最小限にすることができる。
【0074】
〔補足説明〕
この発明は、インクジェット方式のフルカラーの画像形成装置に限らず、記録ヘッドを搭載したキャリッジが主走査方向に往復移動するインクジェット方式の画像形成装置であれば、モノクロあるいは2色又は3色等各種の画像形成装置(プリンタやファクシミリ装置等)に適用できる。
【0075】
また、実施例に記載した構成は特許請求の範囲の各請求項ごとに規定した範囲を逸脱しない限り、種々の変更や追加が可能である。例えば、前述したように、テンション緩和用伝動機構は2個のラックと1個のピニオンの組合せを用いた伝動機構に限るものではない。このテンション緩和用伝動機構を、例えばカム機構やカムとレバーの組合せ機構などに変更することもできる。
さらに、図6から図8によって説明した各制御処理は、矛盾しない範囲で適宜組み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0076】
1:画像形成装置本体 2:給紙トレイ 3:排紙トレイ
4:上面カバー 5:インクカートリッジ装填部 6:インクカートリッジ
7:カートリッジカバー 8:操作表示部 9:温湿度センサ
10:テンション緩和用伝動機構 11:第1のラック 12:ピニオン
12a:ピニオンの中心軸 13:第2のラック 14:移動部材
14a:移動部材の連結部 15:連結ピン 16:ガイド板
17:支持板 18:軸受部材
【0077】
20:キャリッジ 21:ガイドロッド 22:記録ヘッド
23:サブタンク 24:搬送ベルト 25:搬送ローラ
26:テンションローラ 27:駆動軸 28:支持軸 29:用紙積載板
31:ばね受け部材 32:圧縮スプリング 33:帯電ローラ
34:排紙ローラ 35:排紙コロ 36:ガイド部材
40:引出ローラ 41:分離パッド 42:用紙ガイド部材
43:カウンタローラ 44:搬送ガイド 45:用紙反転ユニット
46:手差し給紙部 47:押さえ部材
【0078】
50:記録ヘッド維持回復機構(右側維持回復機構) 51:キャップ
52:空吐出受け部材 60:記録ヘッド維持回復機構(左側維持回復機構)
61:空吐出受け部材 71:主走査モータ 72:副走査モータ
75:エンコーダ
100:コントローラ(制御手段) 101:CPU 102:ROM
103:RAM 104:NVRAM
105:ホストインタフェース(ホストI/F) 106:入出力部(I/O)
107:ASIC 108:時計回路 110:CPUバス
120:制御用バス 121:駆動波形生成部 122:ヘッドドライバ
123:主走査モータ駆動部 124:副走査モータ駆動部
125:ACバイアス供給部 126:維持回復機構駆動部
P:記録用紙
【先行技術文献】
【特許文献】
【0079】
【特許文献1】特開2006−17921号公報
【特許文献2】特開平10−181927号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録ヘッドを搭載して主走査方向に往復移動するキャリッジと、複数のローラによって張り渡された無端状の搬送ベルトと、前記複数のローラのうち前記搬送ベルトにテンションを与えるテンションローラに、該テンションを与える方向に押圧力を加える弾性部材とを備え、前記搬送ベルトの表面に吸着されて前記主走査方向に直交する副走査方向へ搬送される記録用紙に、前記キャリッジによって主走査方向に往復移動される記録ヘッドからインク滴を吐出させて画像を形成するインクジェット方式の画像形成装置において、
前記キャリッジが前記主走査方向における前記搬送ベルトの外部の所定位置へ移動したときに、該キャリッジの移動による力によって、前記テンションローラを前記搬送ベルトのテンションを緩和させる方向に移動させるテンション緩和用伝動機構を設けたことを特徴とするインクジェット方式の画像形成装置。
【請求項2】
前記テンション緩和用伝動機構は、前記キャリッジに一体に前記主走査方向に沿って設けた第1のラックと、前記キャリッジが前記所定位置へ移動したときに前記第1のラックと噛み合う位置に設けたピニオンと、該ピニオンに常時噛み合う第2のラックを形成し、一端部が前記テンションローラの軸に連結され、前記副走査方向に沿って移動可能な移動部材とを備え、
前記キャリッジが前記所定位置へ移動したときに、前記第1のラックが前記ピニオンと噛み合って該ピニオンを回転させ、該ピニオンと噛み合っている前記第2のラックと共に前記移動部材が移動し、該移動部材が前記テンションローラの軸と共に前記テンションローラを前記搬送ベルトのテンションを緩和させる方向に移動させる機構であることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット方式の画像形成装置。
【請求項3】
前記所定位置が、記録ヘッド維持回復機構が設けられたホームポジションであることを特徴とする請求項1又は2に記載のインクジェット方式の画像形成装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載のインクジェット方式の画像形成装置において、
画像形成処理を終了した後の経過時間を計測する時間計測手段と、
該時間計測手段によって計測される経過時間に基いて、前記キャリッジを前記所定位置へ移動させるか否かを判断する手段とを設けたことを特徴とするインクジェット方式の画像形成装置。
【請求項5】
請求項1から3のいずれか一項に記載のインクジェット方式の画像形成装置において、
前記搬送ベルトのテンションを緩和させることを禁止するテンション緩和禁止時間帯のスケジュール情報を有するスケジュール管理手段と、
現在の時刻を計時する時計手段と、
画像形成を行なわない状態において、該時計手段から取得する現在の時刻の情報と前記スケジュール管理手段から取得する前記テンション緩和禁止時間帯の情報とに基いて、前記キャリッジを前記所定位置へ移動させるか否かを判断する手段とを設けたことを特徴とするインクジェット方式の画像形成装置。
【請求項6】
請求項1から3のいずれか一項に記載のインクジェット方式の画像形成装置において、
該画像形成装置内の温度と湿度を検知する温湿度検知手段と、
画像形成を行なわない状態において、前記温湿度検知手段によって検知される温度と湿度の情報に基いて、前記キャリッジを前記所定位置へ移動させるか否かを判断する手段とを設けたことを特徴とするインクジェット方式の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−86343(P2013−86343A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−228497(P2011−228497)
【出願日】平成23年10月18日(2011.10.18)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】