画像形成装置
【課題】帯電工程前の感光体ドラムの電位を除電し、印刷品質を向上させる。
【解決手段】像を担持する感光体と、前記感光体の表面を負帯電させる帯電手段と、前記帯電手段によって帯電された前記感光体に静電潜像を形成する露光手段と、前記露光手段によって形成された静電潜像上に現像剤像を形成する現像手段と、前記現像手段によって形成された現像剤像を被転写体に転写する転写手段と、前記転写手段による転写後、前記帯電手段による帯電前に、前記感光体に除電光を照射する除電手段を有する画像形成装置において、前記感光体は、前記帯電手段により帯電直後の表面電位をV0[V]、前記帯電直後から暗部に5秒間放置した後の表面電位をV5[V]とし、暗減衰率を、(|V0|−|V5|)/|V0|×100(%)で表したとき、正帯電させたときの前記暗減衰率が、負帯電させたときの前記暗減衰率より大きい。
【解決手段】像を担持する感光体と、前記感光体の表面を負帯電させる帯電手段と、前記帯電手段によって帯電された前記感光体に静電潜像を形成する露光手段と、前記露光手段によって形成された静電潜像上に現像剤像を形成する現像手段と、前記現像手段によって形成された現像剤像を被転写体に転写する転写手段と、前記転写手段による転写後、前記帯電手段による帯電前に、前記感光体に除電光を照射する除電手段を有する画像形成装置において、前記感光体は、前記帯電手段により帯電直後の表面電位をV0[V]、前記帯電直後から暗部に5秒間放置した後の表面電位をV5[V]とし、暗減衰率を、(|V0|−|V5|)/|V0|×100(%)で表したとき、正帯電させたときの前記暗減衰率が、負帯電させたときの前記暗減衰率より大きい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真プロセスを用いた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の印刷装置、複写機、ファクシミリ装置等の電子写真プロセスを使用して画像を形成する画像形成装置は、さらなる小型化、高速化が要求されるようになってきており、感光体ドラムを備え、画像形成プロセスとして感光体ドラム表面を帯電装置によって、一様に帯電する帯電工程、帯電された感光体ドラム表面を露光装置によって露光して静電潜像を形成する露光工程、形成された静電潜像を現像装置で現像してトナー像を形成する現像工程、現像されたトナー像を転写装置によって用紙などの被転写材に転写工程を繰り返すことで印刷を行うようにしている。
【0003】
このような画像形成プロセスには、感光体ドラム表面上の露光部と非露光部との電位差によるゴーストと称する残像による画像欠陥を防止するため、転写装置と帯電装置との間にLED(Light Emitting Diode)等の光源を有する除電光装置を配し、帯電工程の前に除電光を照射することで感光体ドラム上の電位を除電する除電工程を備えているものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−208223号公報(段落「0013」〜段落「0029」、図1、図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来の技術においては、画像形成装置の小型化、高速化の要求に応じて感光体ドラムの回転速度を高速にする必要があり、感光体ドラムを高速回転させた場合、除電光の光量を大きくしても帯電工程前に感光体ドラムの電位が十分に除電されずゴーストが消えないという問題がある。
本発明は、このような問題を解決することを課題とし、帯電工程前の感光体ドラムの電位を十分に除電し、印刷品質を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そのため、本発明は、像を担持する感光体と、前記感光体の表面を負帯電させる帯電手段と、前記帯電手段によって帯電された前記感光体に静電潜像を形成する露光手段と、前記露光手段によって形成された静電潜像上に現像剤像を形成する現像手段と、前記現像手段によって形成された現像剤像を被転写体に転写する転写手段と、前記転写手段による転写後、前記帯電手段による帯電前に、前記感光体に除電光を照射する除電手段を有する画像形成装置において、前記感光体は、前記帯電手段により帯電直後の表面電位をV0[V]、前記帯電直後から暗部に5秒間放置した後の表面電位をV5[V]とし、暗減衰率を、(|V0|−|V5|)/|V0|×100(%)で表したとき、正帯電させたときの前記暗減衰率が、負帯電させたときの前記暗減衰率より大きいことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
このようにした本発明は、帯電工程前の感光体ドラムの電位を十分に除電し、印刷品質を向上させることができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】第1の実施例における感光体ドラムの構成を示す説明図
【図2】第1の実施例における画像形成装置の構成を示す概略側断面図
【図3】第1の実施例における画像形成ユニットの構成を示す概略断面図
【図4】第1の実施例における感光体ドラムの製造工程を示す説明図
【図5】第1の実施例における暗減衰率の測定方法を示す説明図
【図6】第1の実施例における暗減衰率の測定方法を示す説明図
【図7】第1の実施例における印刷パターンの説明図
【図8】第1の実施例におけるゴーストの説明図
【図9】第1の実施例における感光体ドラムの評価結果を示す説明図
【図10】第2の実施例における初期印刷での感光体ドラムの評価結果を示す説明図
【図11】第2の実施例における20K枚印刷後での感光体ドラムの評価結果を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明による画像形成装置の実施例を説明する。
【実施例1】
【0010】
図2は第1の実施例における画像形成装置の構成を示す概略側断面図である。
図2において、100は印刷装置、複写機、ファクシミリ装置等の電子写真プロセスを使用して画像を形成する画像形成装置である。なお、本実施例では、画像形成装置100を印刷装置(プリンタ)として説明する。
【0011】
画像形成装置100の給紙カセット13には印刷媒体20が収容されており、給紙ローラ14から搬送ローラ15、画像形成ユニット9の感光体ドラム1と転写ベルト11との間を経て、搬送ローラ16、搬送ローラ17、排出ローラ18、そして排出部19へと概ねS字状の印刷媒体20の搬送路が配設されており、搬送ローラ16と搬送ローラ17との間に、用紙搬送経路の上流から4色の現像剤(トナー)画像を形成する画像形成ユニット9がブラック色(K)、イエロー色(Y)、マゼンタ色(M)、シアン色(C)の順で配置されている。
【0012】
印刷媒体20には、各画像形成ユニット9の感光体ドラム1と転写ベルト11との間を通過するときに、転写ベルト11を挟んで感光体ドラム1と対向配置されている転写ローラ10との接触部において、各感光体ドラム1上に形成されたトナー像が画像形成ユニット9毎に転写される。
トナー像が転写された印刷媒体20は、定着装置12へ搬送され、その定着装置12において転写されたトナー像が熱と圧力により定着される。トナー像が定着された印刷媒体20は、搬送ローラ17および排出ローラ18により装置外へ排出され、排出部19へ収容される。
【0013】
図3は第1の実施例における画像形成ユニットの構成を示す概略断面図である。
図3において、画像形成ユニット9は、トナーカートリッジ7と、ドラムカートリッジ8とからなり、ドラムカートリッジ8は、像を担持する感光体としての感光体ドラム1と、感光体ドラム1の表面を負帯電させる帯電手段としての帯電ローラ2と、帯電ローラ2で帯電された感光体ドラム1に露光手段としての露光LEDヘッド3で形成された静電潜像上に現像剤像としてのトナー像を形成する現像手段としての現像ローラ4と、現像剤としてのトナー29を現像ローラ4上に均一なトナー層として形成する現像ブレード28と、トナー29を攪拌帯電させるためのスポンジローラ5と、転写後の感光体ドラム1の表面に残留した残留トナーをクリーニングするためのクリーニングブレード6と、感光体ドラム1の表面に除電光を照射して感光体ドラム1の表面の電位を除電する除電手段としての除電光装置30とから構成されている。
【0014】
除電光装置30は、転写手段としての転写ローラ10による転写後、帯電手段としての帯電ローラ2による帯電前(本実施例では、クリーニングブレード6と帯電ローラ2との間)で感光体ドラム1の表面に除電光を照射する位置に配設されている。
また、感光体ドラム1上に静電潜像を形成するための露光LEDヘッド3は、画像形成装置100の本体に配設されており、ドラムカートリッジ8の所定の位置から感光体ドラム1へ露光できるように配設されている。
【0015】
転写ベルト11によって搬送された被転写体としての印刷媒体20には、転写ベルト11を挟んで感光体ドラム1と反対側に配置されている転写手段としての転写ローラ10との接触部において、感光体ドラム1上の静電潜像に現像されたトナー像が転写される。
なお、感光体ドラム1、帯電ローラ2、現像ローラ4、スポンジローラ5および転写ローラ10は、図中矢印が示す方向に回転して印刷媒体20に画像を形成する画像形成プロセスを行う。
【0016】
図1は第1の実施例における感光体ドラムの構成を示す説明図である。図1(a)は感光体ドラムの斜視図であり、図1(b)は感光体ドラムの導電性支持体および感光層部の断面図である。
図1において、感光体ドラム1は、ドラムギア21と、ドラムフランジ22と、円筒型に加工された導電性支持体24上に感光層を塗布した感光層部23とからなり、感光層部23は、導電性支持体24の表面から順に、導電性支持体24からの電荷の流入を防止するブロッキング層25、露光感度を有する電荷発生層26、電荷発生層26で発生した電荷を表面まで移動させる電荷輸送層27が積層された構成となっている。
【0017】
次に、感光体ドラムの製造工程を図4の第1の実施例における感光体ドラムの製造工程を示す説明図の図中Step1〜Step8に従って図1を参照しながら説明する。
Step1:まず、導電性支持体の原材料であるアルミニウム合金、本実施例では、アルミニウムに珪素等を混合した合金であるJIS−A3000系のアルミニウム合金ピレットをポートホール法にて押出し管に加工する。(アルミニウム素管押出成型)
【0018】
Step2:Step1で加工した押出し管を切削加工により、所定の肉厚、外径寸法(本実施例では、押出し円筒管を外径30mm、長さ246mm、肉厚0.75mm)の円筒形状とした導電性支持体24(以下、「アルミ素管24」ともいう。)を作製し、その表面を研磨する。(アルミニウム素管表面研磨)
Step3:Step2で作製したアルミ素管24を洗浄層に運搬し、表面洗浄処理を行い、表面に付着した油分や各種塵埃等を十分に落とす。(洗浄)
【0019】
Step4:十分に洗浄されたアルミ素管24の表面にブロッキング層25を形成する。本実施例では、ブロッキング層25として陽極酸化処理を行い、その後酢酸ニッケルを主成分とする封孔処理を行うことにより、約6μmの厚さの陽極酸化皮膜でブロッキング層25(以下、「アルマイト層25」ともいう。)を形成する。(ブロッキング層形成(アルマイト処理))
【0020】
Step5:Step4で形成したアルマイト層25上に電荷発生層26を形成するが、この電荷発生層26の形成方法は、予め調合された電荷発生層用塗布液で満たされた液槽に、アルマイト層25を形成したアルミ素管24を浸して塗布する浸漬塗布方法にて行う。本実施例では、浸漬塗布方法により、約0.3μmの厚さの電荷発生層26になるように塗布を行う。(電荷発生層浸漬塗布)
【0021】
本実施例で用いた電荷発生層用塗布液は、オキソチタニウムフタロシアン10重量部を、1,2−ジメトキシエタン150重量部に加え、サンドグラインドミルにて粉砕分散処理を行って作製した顔料分散液160重量部に、ポリビニルブチラール5重量部を1,2−ジメトキシエタン95重量部に溶解した固形分濃度5%のバインダー溶液100重量部を混ぜ合わせ、最終的に固形分濃度4%で、1,2−ジメトキシエタンと4−メトキシ−4−メチルペンタノン−2との重量比が9:1となるように調整され、調合された液体とした。
【0022】
Step6:Step5でアルマイト層25上に電荷発生層26が塗布されたアルミ素管24を乾燥することで、電荷発生層26内の余分な溶媒を除去し、アルマイト層25上に電荷発生層26を定着させる。(乾燥)
【0023】
Step7:次に、電荷発生層26上に、最表面層としてバインダー樹脂を含む電荷輸送層27を形成するが、電荷輸送層27の形成方法は、予め調合された電荷輸送層用塗布液で満たされた液槽に、Step6において電荷発生層26が形成されたアルミ素管24を浸して塗布する浸漬塗布方法にて行う。本実施例では、浸漬塗布方法により、約18μmの厚さの電荷輸送層27になるように塗布を行う。(電荷輸送層浸漬塗布)
電荷輸送用塗布液は、主にバインダー樹脂と電荷輸送物質とを溶媒に溶解させた液体であり、本実施例においては、後述する電荷輸送用塗布液で感光体ドラムのサンプルを作製した。
【0024】
Step8:Step7で電荷発生層26上に浸漬塗布された電荷輸送層27を乾燥し、電荷輸送層27内の余分な溶媒を除去し、電荷発生層26上に電荷輸送層27を定着させる。(乾燥)
このようにStep1〜8の工程を経て感光体ドラムを作製する。
【0025】
次に、本実施例で作製した感光体ドラムのサンプル1〜10について説明する。
<サンプル1>
バインダー樹脂として下記の化学式1で示されるポリカーボネート樹脂100重量部と、電荷輸送物質として下記の化学式5で示される電荷輸送物質70重量部とを、テトラヒドロフラン:トルエン=80:20(重量比)の混合溶媒に溶解させた液体を電荷輸送層用塗布液とし、前述した図4に示す製造工程にしたがって感光体ドラムのサンプル1を作製した。
【0026】
【化1】
【0027】
【化5】
【0028】
<サンプル2>
バインダー樹脂として上記の化学式1で示されるポリカーボネート樹脂100重量部と、電荷輸送物質として上記の化学式5で示される電荷輸送物質70重量部と、添加剤として下記の化学式9で示される添加剤1重量部とを、テトラヒドロフラン:トルエン=80:20(重量比)の混合溶媒に溶解させた液体を電荷輸送層用塗布液とし、前述した図4に示す製造工程にしたがって感光体ドラムのサンプル2を作製した。
【0029】
【化9】
【0030】
<サンプル3>
バインダー樹脂として下記の化学式2で示されるポリカーボネート樹脂100重量部と、電荷輸送物質として下記の化学式6で示される電荷輸送物質40重量部と、下記の化学式7で示される電荷輸送物質30重量部とを、テトラヒドロフラン:トルエン=80:20(重量比)の混合溶媒に溶解させた液体を電荷輸送層用塗布液とし、前述した図4に示す製造工程にしたがって感光体ドラムのサンプル3を作製した。
【0031】
【化2】
【0032】
【化6】
【0033】
【化7】
【0034】
<サンプル4>
バインダー樹脂として上記の化学式2で示されるポリカーボネート樹脂100重量部と、電荷輸送物質として上記の化学式6で示される電荷輸送物質40重量部と、上記の化学式7で示される電荷輸送物質30重量部と、添加剤として上記の化学式9で示される添加剤1重量部とを、テトラヒドロフラン:トルエン=80:20(重量比)の混合溶媒に溶解させた液体を電荷輸送層用塗布液とし、前述した図4に示す製造工程にしたがって感光体ドラムのサンプル4を作製した。
【0035】
<サンプル5>
バインダー樹脂として下記の化学式3で示されるポリアリレート樹脂100重量部と、電荷輸送物質として下記の化学式8で示される電荷輸送物質50重量部とを、テトラヒドロフラン:トルエン=80:20(重量比)の混合溶媒に溶解させた液体を電荷輸送層用塗布液とし、前述した図4に示す製造工程にしたがって感光体ドラムのサンプル5を作製した。
【0036】
【化3】
【0037】
【化8】
【0038】
<サンプル6>
バインダー樹脂として上記の化学式3で示されるポリアリレート樹脂100重量部と、電荷輸送物質として上記の化学式8で示される電荷輸送物質50重量部と、添加剤として上記の化学式9で示される添加剤1重量部とを、テトラヒドロフラン:トルエン=80:20(重量比)の混合溶媒に溶解させた液体を電荷輸送層用塗布液とし、前述した図4に示す製造工程にしたがって感光体ドラムのサンプル6を作製した。
【0039】
<サンプル7>
バインダー樹脂として上記の化学式1で示されるポリカーボネート樹脂30重量部と、下記の化学式4で示されるポリエステル樹脂70重量部と、電荷輸送物質として上記の化学式5で示される電荷輸送物質50重量部とを、テトラヒドロフラン:トルエン=80:20(重量比)の混合溶媒に溶解させた液体を電荷輸送層用塗布液とし、前述した図4に示す製造工程にしたがって感光体ドラムのサンプル7を作製した。
【0040】
【化4】
【0041】
<サンプル8>
バインダー樹脂として上記の化学式1で示されるポリカーボネート樹脂30重量部と、上記の化学式4で示されるポリエステル樹脂70重量部と、電荷輸送物質として上記の化学式5で示される電荷輸送物質50重量部と、添加剤として上記の化学式9で示される添加剤1重量部とを、テトラヒドロフラン:トルエン=80:20(重量比)の混合溶媒に溶解させた液体を電荷輸送層用塗布液とし、前述した図4に示す製造工程にしたがって感光体ドラムのサンプル8を作製した。
【0042】
<サンプル9>
バインダー樹脂として上記の化学式2で示されるポリカーボネート樹脂30重量部と、上記の化学式4で示されるポリエステル樹脂70重量部と、電荷輸送物質として上記の化学式6で示される電荷輸送物質30重量部と、上記の化学式7で示される電荷輸送物質20重量部とを、テトラヒドロフラン:トルエン=80:20(重量比)の混合溶媒に溶解させた液体を電荷輸送層用塗布液とし、前述した図4に示す製造工程にしたがって感光体ドラムのサンプル9を作製した。
【0043】
<サンプル10>
バインダー樹脂として上記の化学式2で示されるポリカーボネート樹脂30重量部と、上記の化学式4で示されるポリエステル樹脂70重量部と、電荷輸送物質として上記の化学式6で示される電荷輸送物質30重量部と、上記の化学式7で示される電荷輸送物質20重量部と、添加剤として上記の化学式9で示される添加剤1重量部とを、テトラヒドロフラン:トルエン=80:20(重量比)の混合溶媒に溶解させた液体を電荷輸送層用塗布液とし、前述した図4に示す製造工程にしたがって感光体ドラムのサンプル10を作製した。
【0044】
次に、作製した感光体ドラムのサンプル1〜10のそれぞれについて正帯電した場合と負帯電した場合の暗減衰率の測定方法について図5および図6の第1の実施例における暗減衰率の測定方法を示す説明図に基づいて説明する。
図5において、暗減衰率測定装置50は、感光体ドラムの暗減衰率を測定する装置であり、被測定物としての感光体ドラム1と、感光体ドラム1を帯電させる帯電ローラ2と、帯電ローラ2に電圧を印加する電源53と、感光体ドラム1の表面電位を測定する表面電位計54とから構成されている。
【0045】
感光体ドラム1は、図示しない駆動手段により図中矢印が示す方向へ回転自在に配設された感光体ドラムのサンプルであり、帯電ローラ2が感光体ドラム1に連れまわるように接触して配置されている。電源53から帯電ローラ2に電圧が印加されることにより回転する感光体ドラム1を帯電する。そして、感光体ドラム1の回転方向における帯電ローラ2の下流に配置され、感光体ドラム1に対して非接触の表面電位計54(トレックジャパン社製 モデル344)によって感光体ドラム1の表面電位を測定する。
【0046】
このように構成された暗減衰率測定装置50を暗部環境におき、図5に示すように、感光体ドラム1を図中矢印が示す方向に回転速度100rpmで回転させながら、感光体ドラム1の表面電位が、正帯電の場合はV0=+700V、負帯電の場合はV0=−700Vになるように電源53から帯電ローラ2への印加電圧を調整する。
【0047】
感光体ドラム1の表面が正負の絶対値|V0|=700Vで一様に帯電された直後、感光体ドラム1の回転を停止し、回転を停止した時点をt0とし、その時点t0から5秒間経過後の時点t5の感光体ドラム1の表面電位の絶対値|V5|を測定し、すなわち帯電ローラ2により帯電直後の感光体ドラム1の表面電位をV0[V]、前記帯電直後から暗部に5秒間放置した後の感光体ドラム1の表面電位をV5[V]とし、感光体ドラム1の暗減衰率を以下の式で算出する。
【0048】
暗減衰率(%)=((|V0|−|V5|)/|V0|)×100(%)・・・(式)
このように感光体ドラム1の暗減衰率を算出することにより、感光体ドラム1の表面が、正帯電した場合は正電荷の、負帯電した場合は負電荷の、感光体ドラム1の図1に示す電荷輸送層27中における電荷保持特性を比較することができ、この暗減衰率が大きい場合、電荷輸送層27中の電荷が拡散、消失、移動し易い傾向であるあることを示し、一方暗減衰率が小さい場合、電荷輸送層27中の電荷が滞留し易い傾向であるあることを示す。
【0049】
上述した構成の作用について説明する。
上記製造工程にしたがって作製した感光体ドラムのサンプル1〜10の10種類について、図2に示す画像形成装置100を使用し、一般的に、印刷時にゴーストの発生の有無を評価するゴースト評価としては最も厳しい環境である低温低湿環境(温度10℃、湿度20%)において、図7に示す印刷パターンを印刷することでゴースト評価を行った。
【0050】
図7に示す印刷パターンは、通常のオフィス用A4サイズのPPC用紙を縦方向に印刷し、用紙の印刷領域の上端から約50mmの幅の領域には白地にボールド文字列のパターンとし、用紙の印刷領域の上端から約50mmより下端側の領域にはハーフトーン(本実施例では、印刷密度が30%)のパターンとなっている。
【0051】
また、ゴースト評価における画像形成プロセスの条件は、除電光装置による除電光の照射光量は2.4μJ/cm2で固定し、図3に示す感光体ドラムの表面上における除電光照射位置と、帯電ローラとの接触位置との距離L[mm]、印刷動作時における該感光体ドラムの表面上の速度をv[mm/s]としたとき、L/vが、0.06[s]、0.04[s]、0.03[s]の3水準となるように距離L[mm]を調整する。その他の画像形成プロセスの条件については同一の条件として印刷結果を比較した。
【0052】
印刷結果におけるゴーストの発生の有無については、図8に示すように、感光体ドラムの回転周期Sで感光体ドラムの2周目のハーフトーンの印刷パターンにおいて、感光体ドラムの1周目のボールド文字列パターンに対応する露光部と白地部分の対応する未露光部での感光体ドラムの表面上の電位差が印刷結果として現れるか否かで判定することができ、その判定基準としては、図8に示すようなゴースト81の印刷が目視で認識できないものを「○」、ゴースト81の印刷が目視で認識できるものを「×」とした。なお、印刷結果におけるゴーストの発生の有無をゴーストレベルと呼ぶこととする。
【0053】
図9は第1の実施例における感光体ドラムの評価結果を示す説明図であり、感光体ドラムのサンプル1〜10のそれぞれについて、正帯電の暗減衰率(%)、負帯電の暗減衰率(%)、L/v=0.03[s]のゴーストレベル、L/v=0.04[s]のゴーストレベル、L/v=0.06[s]のゴーストレベルを示している。
【0054】
正帯電の暗減衰率(%)および負帯電の暗減衰率(%)は、図5および図6で説明した暗減衰率の測定方法で測定し、算出した暗減衰率(%)であり、L/v=0.03[s]のゴーストレベル、L/v=0.04[s]のゴーストレベル、L/v=0.06[s]のゴーストレベルは、上述した印刷結果におけるゴーストの発生の有無の評価による結果である。
【0055】
図9に示すように、ゴーストレベルは、L/v=0.06[s]の場合においては感光体ドラムのサンプル1〜10の各サンプルも良好な印刷結果を得ることができたが、L/v=0.04[s]以下においては、正帯電の暗減衰率をA(%)、負帯電の暗減衰率をB(%)とした場合、A>Bの条件を満たす感光体ドラムのサンプルのみ良好な印刷結果を得ることができた。
【0056】
これは除電工程から帯電工程までの感光体ドラムの表面上の移動時間が0.06[s]の場合は、上述のA>Bの条件を満たしていない感光体ドラムにおいても、転写工程で感光体ドラム表面付近や感光層(図1に示す電荷発生層26および電荷輸送層27)内に注入された正電荷および除電光照射により図1に示す電荷発生層26で発生した正電荷が、電荷輸送層27中で拡散や消失などで感光体ドラムの表面電位を除電するために十分な移動時間が確保されており、感光体ドラムの2周目の画像形成時において1周目の露光部と未露光部との電位差が小さくなり、ゴーストの印刷として現れなかった。
【0057】
これに対して、除電工程から帯電工程までの感光体ドラムの表面上の移動時間が0.04[s]以下の場合は、除電工程から帯電工程までの感光体ドラムの表面上の移動時間が短いため、上述のA>Bの条件を満たしていない感光体ドラムでは、感光体ドラムの2周目の画像形成時において1周目の露光部と未露光部との電位差が大きくなり、ゴーストの印刷として現れ、上述のA>Bの条件を満たしている感光体ドラムでは、感光体ドラムの2周目の画像形成時において1周目の露光部と未露光部との電位差が小さくなり、ゴーストの印刷として現れず良好な印刷結果が得られる結果となったと考えられる。
【0058】
また、感光体ドラムの10種類のサンプルの中で、バインダー樹脂として上述した化学式1のポリカーボネート樹脂が含まれているサンプル1、2、7、8はすべてゴースト印刷が未発生であり、バインダー樹脂として上述した化学式2のポリカーボネート樹脂が含まれているサンプル3、4、7、9、10はすべてゴースト印刷が発生しているのは、バインダー樹脂として使用するポリカーボネート樹脂において原子量表(日本化学会、2011年)に基づいて計算した上記化学式で示される構造単位の分子量が大きいほど上述のA>Bの条件を満たす傾向があることを示していると推定される。
【0059】
一般的に、ビスフェノールAとホスゲンから生成される基本的なポリカーボネート樹脂(上述した化学式10で示されるポリカーボネート樹脂)の構造単位の分子量は約254であるのに対し、上述した化学式1で示されるポリカーボネート樹脂の構造単位の分子量は約598程度であり、また上述した化学式2で示されるポリカーボネート樹脂の構造単位の分子量は約273程度である。
【0060】
したがって、一般的に、ビスフェノールAとホスゲンから生成される基本的なポリカーボネート樹脂の構造単位の原子量表に基づいて計算した分子量(約254)に比べ、2倍以上の約508以上の分子量である構造単位を有するポリカーボネート樹脂をバインダー樹脂として使用することが有効であると推定できる。
以上により、小型で画像形成プロセススピードの速い画像形成装置において、ゴーストのない良好な印刷結果を得るには、感光体ドラムの正帯電の暗減衰率をA(%)、負帯電の暗減衰率をB(%)とした場合、A>Bの条件を満たす感光体ドラムが最適である。
【0061】
このように、正帯電の暗減衰率をA(%)、負帯電の暗減衰率をB(%)とした場合、A>Bの条件を満たす感光体ドラム、すなわち正帯電させたときの暗減衰率が、負帯電させたときの暗減衰率より大きい感光体ドラムを用いることにより、ゴーストのない良好な印刷結果を得ることができる。
【0062】
以上説明したように、第1の実施例では、感光体ドラムの正帯電の暗減衰率をA(%)、負帯電の暗減衰率をB(%)とした場合、A>Bの条件を満たす感光体ドラムを画像形成装置に用いることにより、小型で画像形成プロセススピードの速い画像形成装置においてゴーストのない良好な印刷結果を得ることができるという効果が得られる。
【実施例2】
【0063】
第2の実施例は、第1の実施例で説明した製造工程にしたがって作製した感光体ドラムのサンプル1〜10の10種類について、図2に示す画像形成装置100を使用し、一般的に、印刷時にゴーストの発生の有無を評価するゴースト評価としては最も厳しい環境である低温低湿環境(温度10℃、湿度20%)において、図7に示す印刷パターンを印刷するゴースト評価の画像形成プロセスでの図3に示す除電光装置30による最適な除電光の照射光量を規定するものである。
なお、第2の実施例の構成は、第1の実施例の構成と同様なので同一の符号を付してその説明を省略する。
【0064】
第2の実施例の作用について説明する。
図7に示す印刷パターンは、通常のオフィス用A4サイズのPPC用紙を縦方向に印刷し、用紙の印刷領域の上端から約50mmの幅の領域には白地にボールド文字列のパターンとし、用紙の印刷領域の上端から約50mmより下端側の領域にはハーフトーン(本実施例では、印刷密度が30%)のパターンとなっている。
【0065】
一般的に、除電光の光量が大きすぎると耐刷により感光体ドラムの特性が光疲労劣化して経時において印刷濃度の低下や十分のコントラストが得られないといった印刷不良が発生することが知られている。
本実施例では、除電光の光量を0.6μJ/cm2、1.2μJ/cm2、2.4μJ/cm2、4.8μJ/cm2、7.2μJ/cm2の5水準とし、感光体ドラムの表面上における除電光照射位置と、帯電ローラとの接触位置との距離L[mm]、印刷動作時における該感光体ドラムの表面上の速度をv[mm/s]としたとき、L/vが、0.04[s]となるように固定した条件の下で20K枚(20000枚)の耐刷評価を実施し、初期および20K枚印刷後のゴースト評価およびその他(ゴースト印刷以外の印刷濃度の低下やコントラストの不良など)の印刷品質の確認を行った。
【0066】
印刷結果におけるゴーストの発生の有無については、第1の実施例と同様に、図8に示す感光体ドラムの回転周期Sで感光体ドラムの2周目のハーフトーンの印刷パターンにおいて、感光体ドラムの1周目のボールド文字列パターンに対応する露光部と白地部分の対応する未露光部での感光体ドラムの表面上の電位差が印刷結果として現れるか否かで判定し、その判定基準としては、図8に示すようなゴースト81の印刷が目視で認識できないものを「○」、ゴースト81の印刷が目視で認識できるものを「×」とした。
【0067】
また、ゴーストの印刷以外の印刷品質の確認については、印刷濃度の低下やコントラストの不良などについて目視で印刷不良が認識できないレベルを「○」、印刷不良は認識できるが実使用上問題ないレベルを「△」、明らかに印刷不良が顕著なレベルを「×」とした。
【0068】
図10は第2の実施例における初期印刷での感光体ドラムの評価結果を示す説明図、図11は第2の実施例における20K枚印刷後での感光体ドラムの評価結果を示す説明図であり、感光体ドラムのサンプル1〜10のそれぞれについて、正帯電の暗減衰率(%)、負帯電の暗減衰率(%)、除電光の光量が0.6μJ/cm2、1.2μJ/cm2、2.4μJ/cm2、4.8μJ/cm2、および7.2μJ/cm2のときのゴーストレベル、ならびにゴースト以外の印刷品質レベルを示している。
【0069】
正帯電の暗減衰率(%)および負帯電の暗減衰率(%)は、第1の実施例において図5および図6で説明した暗減衰率の測定方法で測定し、算出した暗減衰率(%)であり、除電光の光量が0.6μJ/cm2、1.2μJ/cm2、2.4μJ/cm2、4.8μJ/cm2、および7.2μJ/cm2のときのゴーストレベルは、上述した印刷結果におけるゴーストの発生の有無の評価による結果、除電光の光量が0.6μJ/cm2、1.2μJ/cm2、2.4μJ/cm2、4.8μJ/cm2、および7.2μJ/cm2のときのゴースト以外の印刷品質レベルは、上述した印刷結果における印刷品質の評価による結果である。
【0070】
図10(a)に示すように、初期印刷でのゴースト評価では、除電光の光量が0.6μJ/cm2のとき、サンプル1〜10の10種類すべての感光体ドラムでゴーストが発生し、良好な印刷結果を得ることができなかったが、除電光の光量が1.2μJ/cm2以上のとき、正帯電の暗減衰率をA(%)、負帯電の暗減衰率をB(%)とした場合、A>Bの条件を満たす感光体ドラムのサンプルについてはゴーストが発生せず、良好な印刷結果を得ることができた。
したがって、少なくとも除電光の光量は、1.2μJ/cm2以上が最適である。また、図10(b)に示すように、初期印刷では、ゴースト以外の印刷濃度の低下やコントラストの不良などの印刷不良は発生しなかった。
【0071】
また、図11(a)に示すように、耐刷20K枚印刷後でのゴースト評価では、除電光の光量が0.6μJ/cm2のとき、サンプル1〜10の10種類すべての感光体ドラムでゴーストが発生し、良好な印刷結果を得ることができなかったが、除電光の光量が1.2μJ/cm2以上のとき、正帯電の暗減衰率をA(%)、負帯電の暗減衰率をB(%)とした場合、A>Bの条件を満たす感光体ドラムのサンプルについてはゴーストが発生せず、良好な印刷結果を得ることができた。
したがって、耐刷での経時においても少なくとも除電光の光量は、1.2μJ/cm2以上が最適である。
【0072】
また、図11(b)に示すように、耐刷20K枚印刷後でのゴースト以外の印刷濃度の低下やコントラストの不良などの印刷品質については、除電光の光量が7.2μJ/cm2のとき、10種類すべての感光体ドラムのサンプルにおいて光疲労劣化による印刷濃度の低下やコントラストの不良等の印刷不良が認識され、除電光の光量が4.8μJ/cm2のとき、正帯電の暗減衰率をA(%)、負帯電の暗減衰率をB(%)とした場合、A>Bの条件を満たさない感光体ドラムのサンプルについては軽微な印刷不良が認識されたが、実使用上問題のないレベルであり、除電光の光量が2.4μJ/cm2以下のとき、10種類すべての感光体ドラムのサンプルにおいて光疲労劣化による印刷濃度の低下やコントラストの不良等の印刷不良は認識されなかった。
したがって、少なくとも除電光の光量は、耐刷での経時で良好な印刷品質を維持するためには4.8μJ/cm2以下が最適である。
【0073】
以上により、小型で画像形成プロセススピードの速い画像形成装置において、耐刷での経時でもゴーストのない良好な印刷結果および感光体ドラムの光疲労劣化による印刷濃度の低下やコントラストの不良等のない良好な印刷結果を得るには、感光体ドラムの正帯電の暗減衰率をA(%)、負帯電の暗減衰率をB(%)とした場合、A>Bの条件を満たす感光体ドラムを備え、少なくとも除電光の光量が1.2μJ/cm2以上、かつ4.8μJ/cm2以下の画像形成装置が最適である。
【0074】
以上説明したように、第2の実施例では、感光体ドラムの正帯電の暗減衰率をA(%)、負帯電の暗減衰率をB(%)とした場合、A>Bの条件を満たす感光体ドラムを備え、少なくとも除電光の光量が1.2μJ/cm2以上、かつ4.8μJ/cm2以下の除電光装置を画像形成装置に用いることにより、小型で画像形成プロセススピードの速い画像形成装置において耐刷での経時でもゴーストのない良好な印刷結果および感光体ドラムの光疲労劣化による印刷濃度の低下やコントラストの不良等のない良好な印刷結果を得ることができるという効果が得られる。
なお、第1の実施例および第2の実施例では、画像形成装置を印刷装置として説明したが、それに限られることなく、電子写真方式を用いた複写機、ファクシミリ装置、複合機(MFP)としても良い。
【符号の説明】
【0075】
1 感光体ドラム
2 帯電ローラ
3 露光LEDヘッド
4 現像ローラ
5 スポンジローラ
6 クリーニングブレード
7 トナーカートリッジ
8 ドラムカートリッジ
9 画像形成ユニット
11 転写ベルト
13 給紙カセット
14 給紙ローラ
15、16、17 搬送ローラ
18 排出ローラ
19 排出部
30 除電光装置
100 画像形成装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真プロセスを用いた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の印刷装置、複写機、ファクシミリ装置等の電子写真プロセスを使用して画像を形成する画像形成装置は、さらなる小型化、高速化が要求されるようになってきており、感光体ドラムを備え、画像形成プロセスとして感光体ドラム表面を帯電装置によって、一様に帯電する帯電工程、帯電された感光体ドラム表面を露光装置によって露光して静電潜像を形成する露光工程、形成された静電潜像を現像装置で現像してトナー像を形成する現像工程、現像されたトナー像を転写装置によって用紙などの被転写材に転写工程を繰り返すことで印刷を行うようにしている。
【0003】
このような画像形成プロセスには、感光体ドラム表面上の露光部と非露光部との電位差によるゴーストと称する残像による画像欠陥を防止するため、転写装置と帯電装置との間にLED(Light Emitting Diode)等の光源を有する除電光装置を配し、帯電工程の前に除電光を照射することで感光体ドラム上の電位を除電する除電工程を備えているものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−208223号公報(段落「0013」〜段落「0029」、図1、図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来の技術においては、画像形成装置の小型化、高速化の要求に応じて感光体ドラムの回転速度を高速にする必要があり、感光体ドラムを高速回転させた場合、除電光の光量を大きくしても帯電工程前に感光体ドラムの電位が十分に除電されずゴーストが消えないという問題がある。
本発明は、このような問題を解決することを課題とし、帯電工程前の感光体ドラムの電位を十分に除電し、印刷品質を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そのため、本発明は、像を担持する感光体と、前記感光体の表面を負帯電させる帯電手段と、前記帯電手段によって帯電された前記感光体に静電潜像を形成する露光手段と、前記露光手段によって形成された静電潜像上に現像剤像を形成する現像手段と、前記現像手段によって形成された現像剤像を被転写体に転写する転写手段と、前記転写手段による転写後、前記帯電手段による帯電前に、前記感光体に除電光を照射する除電手段を有する画像形成装置において、前記感光体は、前記帯電手段により帯電直後の表面電位をV0[V]、前記帯電直後から暗部に5秒間放置した後の表面電位をV5[V]とし、暗減衰率を、(|V0|−|V5|)/|V0|×100(%)で表したとき、正帯電させたときの前記暗減衰率が、負帯電させたときの前記暗減衰率より大きいことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
このようにした本発明は、帯電工程前の感光体ドラムの電位を十分に除電し、印刷品質を向上させることができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】第1の実施例における感光体ドラムの構成を示す説明図
【図2】第1の実施例における画像形成装置の構成を示す概略側断面図
【図3】第1の実施例における画像形成ユニットの構成を示す概略断面図
【図4】第1の実施例における感光体ドラムの製造工程を示す説明図
【図5】第1の実施例における暗減衰率の測定方法を示す説明図
【図6】第1の実施例における暗減衰率の測定方法を示す説明図
【図7】第1の実施例における印刷パターンの説明図
【図8】第1の実施例におけるゴーストの説明図
【図9】第1の実施例における感光体ドラムの評価結果を示す説明図
【図10】第2の実施例における初期印刷での感光体ドラムの評価結果を示す説明図
【図11】第2の実施例における20K枚印刷後での感光体ドラムの評価結果を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明による画像形成装置の実施例を説明する。
【実施例1】
【0010】
図2は第1の実施例における画像形成装置の構成を示す概略側断面図である。
図2において、100は印刷装置、複写機、ファクシミリ装置等の電子写真プロセスを使用して画像を形成する画像形成装置である。なお、本実施例では、画像形成装置100を印刷装置(プリンタ)として説明する。
【0011】
画像形成装置100の給紙カセット13には印刷媒体20が収容されており、給紙ローラ14から搬送ローラ15、画像形成ユニット9の感光体ドラム1と転写ベルト11との間を経て、搬送ローラ16、搬送ローラ17、排出ローラ18、そして排出部19へと概ねS字状の印刷媒体20の搬送路が配設されており、搬送ローラ16と搬送ローラ17との間に、用紙搬送経路の上流から4色の現像剤(トナー)画像を形成する画像形成ユニット9がブラック色(K)、イエロー色(Y)、マゼンタ色(M)、シアン色(C)の順で配置されている。
【0012】
印刷媒体20には、各画像形成ユニット9の感光体ドラム1と転写ベルト11との間を通過するときに、転写ベルト11を挟んで感光体ドラム1と対向配置されている転写ローラ10との接触部において、各感光体ドラム1上に形成されたトナー像が画像形成ユニット9毎に転写される。
トナー像が転写された印刷媒体20は、定着装置12へ搬送され、その定着装置12において転写されたトナー像が熱と圧力により定着される。トナー像が定着された印刷媒体20は、搬送ローラ17および排出ローラ18により装置外へ排出され、排出部19へ収容される。
【0013】
図3は第1の実施例における画像形成ユニットの構成を示す概略断面図である。
図3において、画像形成ユニット9は、トナーカートリッジ7と、ドラムカートリッジ8とからなり、ドラムカートリッジ8は、像を担持する感光体としての感光体ドラム1と、感光体ドラム1の表面を負帯電させる帯電手段としての帯電ローラ2と、帯電ローラ2で帯電された感光体ドラム1に露光手段としての露光LEDヘッド3で形成された静電潜像上に現像剤像としてのトナー像を形成する現像手段としての現像ローラ4と、現像剤としてのトナー29を現像ローラ4上に均一なトナー層として形成する現像ブレード28と、トナー29を攪拌帯電させるためのスポンジローラ5と、転写後の感光体ドラム1の表面に残留した残留トナーをクリーニングするためのクリーニングブレード6と、感光体ドラム1の表面に除電光を照射して感光体ドラム1の表面の電位を除電する除電手段としての除電光装置30とから構成されている。
【0014】
除電光装置30は、転写手段としての転写ローラ10による転写後、帯電手段としての帯電ローラ2による帯電前(本実施例では、クリーニングブレード6と帯電ローラ2との間)で感光体ドラム1の表面に除電光を照射する位置に配設されている。
また、感光体ドラム1上に静電潜像を形成するための露光LEDヘッド3は、画像形成装置100の本体に配設されており、ドラムカートリッジ8の所定の位置から感光体ドラム1へ露光できるように配設されている。
【0015】
転写ベルト11によって搬送された被転写体としての印刷媒体20には、転写ベルト11を挟んで感光体ドラム1と反対側に配置されている転写手段としての転写ローラ10との接触部において、感光体ドラム1上の静電潜像に現像されたトナー像が転写される。
なお、感光体ドラム1、帯電ローラ2、現像ローラ4、スポンジローラ5および転写ローラ10は、図中矢印が示す方向に回転して印刷媒体20に画像を形成する画像形成プロセスを行う。
【0016】
図1は第1の実施例における感光体ドラムの構成を示す説明図である。図1(a)は感光体ドラムの斜視図であり、図1(b)は感光体ドラムの導電性支持体および感光層部の断面図である。
図1において、感光体ドラム1は、ドラムギア21と、ドラムフランジ22と、円筒型に加工された導電性支持体24上に感光層を塗布した感光層部23とからなり、感光層部23は、導電性支持体24の表面から順に、導電性支持体24からの電荷の流入を防止するブロッキング層25、露光感度を有する電荷発生層26、電荷発生層26で発生した電荷を表面まで移動させる電荷輸送層27が積層された構成となっている。
【0017】
次に、感光体ドラムの製造工程を図4の第1の実施例における感光体ドラムの製造工程を示す説明図の図中Step1〜Step8に従って図1を参照しながら説明する。
Step1:まず、導電性支持体の原材料であるアルミニウム合金、本実施例では、アルミニウムに珪素等を混合した合金であるJIS−A3000系のアルミニウム合金ピレットをポートホール法にて押出し管に加工する。(アルミニウム素管押出成型)
【0018】
Step2:Step1で加工した押出し管を切削加工により、所定の肉厚、外径寸法(本実施例では、押出し円筒管を外径30mm、長さ246mm、肉厚0.75mm)の円筒形状とした導電性支持体24(以下、「アルミ素管24」ともいう。)を作製し、その表面を研磨する。(アルミニウム素管表面研磨)
Step3:Step2で作製したアルミ素管24を洗浄層に運搬し、表面洗浄処理を行い、表面に付着した油分や各種塵埃等を十分に落とす。(洗浄)
【0019】
Step4:十分に洗浄されたアルミ素管24の表面にブロッキング層25を形成する。本実施例では、ブロッキング層25として陽極酸化処理を行い、その後酢酸ニッケルを主成分とする封孔処理を行うことにより、約6μmの厚さの陽極酸化皮膜でブロッキング層25(以下、「アルマイト層25」ともいう。)を形成する。(ブロッキング層形成(アルマイト処理))
【0020】
Step5:Step4で形成したアルマイト層25上に電荷発生層26を形成するが、この電荷発生層26の形成方法は、予め調合された電荷発生層用塗布液で満たされた液槽に、アルマイト層25を形成したアルミ素管24を浸して塗布する浸漬塗布方法にて行う。本実施例では、浸漬塗布方法により、約0.3μmの厚さの電荷発生層26になるように塗布を行う。(電荷発生層浸漬塗布)
【0021】
本実施例で用いた電荷発生層用塗布液は、オキソチタニウムフタロシアン10重量部を、1,2−ジメトキシエタン150重量部に加え、サンドグラインドミルにて粉砕分散処理を行って作製した顔料分散液160重量部に、ポリビニルブチラール5重量部を1,2−ジメトキシエタン95重量部に溶解した固形分濃度5%のバインダー溶液100重量部を混ぜ合わせ、最終的に固形分濃度4%で、1,2−ジメトキシエタンと4−メトキシ−4−メチルペンタノン−2との重量比が9:1となるように調整され、調合された液体とした。
【0022】
Step6:Step5でアルマイト層25上に電荷発生層26が塗布されたアルミ素管24を乾燥することで、電荷発生層26内の余分な溶媒を除去し、アルマイト層25上に電荷発生層26を定着させる。(乾燥)
【0023】
Step7:次に、電荷発生層26上に、最表面層としてバインダー樹脂を含む電荷輸送層27を形成するが、電荷輸送層27の形成方法は、予め調合された電荷輸送層用塗布液で満たされた液槽に、Step6において電荷発生層26が形成されたアルミ素管24を浸して塗布する浸漬塗布方法にて行う。本実施例では、浸漬塗布方法により、約18μmの厚さの電荷輸送層27になるように塗布を行う。(電荷輸送層浸漬塗布)
電荷輸送用塗布液は、主にバインダー樹脂と電荷輸送物質とを溶媒に溶解させた液体であり、本実施例においては、後述する電荷輸送用塗布液で感光体ドラムのサンプルを作製した。
【0024】
Step8:Step7で電荷発生層26上に浸漬塗布された電荷輸送層27を乾燥し、電荷輸送層27内の余分な溶媒を除去し、電荷発生層26上に電荷輸送層27を定着させる。(乾燥)
このようにStep1〜8の工程を経て感光体ドラムを作製する。
【0025】
次に、本実施例で作製した感光体ドラムのサンプル1〜10について説明する。
<サンプル1>
バインダー樹脂として下記の化学式1で示されるポリカーボネート樹脂100重量部と、電荷輸送物質として下記の化学式5で示される電荷輸送物質70重量部とを、テトラヒドロフラン:トルエン=80:20(重量比)の混合溶媒に溶解させた液体を電荷輸送層用塗布液とし、前述した図4に示す製造工程にしたがって感光体ドラムのサンプル1を作製した。
【0026】
【化1】
【0027】
【化5】
【0028】
<サンプル2>
バインダー樹脂として上記の化学式1で示されるポリカーボネート樹脂100重量部と、電荷輸送物質として上記の化学式5で示される電荷輸送物質70重量部と、添加剤として下記の化学式9で示される添加剤1重量部とを、テトラヒドロフラン:トルエン=80:20(重量比)の混合溶媒に溶解させた液体を電荷輸送層用塗布液とし、前述した図4に示す製造工程にしたがって感光体ドラムのサンプル2を作製した。
【0029】
【化9】
【0030】
<サンプル3>
バインダー樹脂として下記の化学式2で示されるポリカーボネート樹脂100重量部と、電荷輸送物質として下記の化学式6で示される電荷輸送物質40重量部と、下記の化学式7で示される電荷輸送物質30重量部とを、テトラヒドロフラン:トルエン=80:20(重量比)の混合溶媒に溶解させた液体を電荷輸送層用塗布液とし、前述した図4に示す製造工程にしたがって感光体ドラムのサンプル3を作製した。
【0031】
【化2】
【0032】
【化6】
【0033】
【化7】
【0034】
<サンプル4>
バインダー樹脂として上記の化学式2で示されるポリカーボネート樹脂100重量部と、電荷輸送物質として上記の化学式6で示される電荷輸送物質40重量部と、上記の化学式7で示される電荷輸送物質30重量部と、添加剤として上記の化学式9で示される添加剤1重量部とを、テトラヒドロフラン:トルエン=80:20(重量比)の混合溶媒に溶解させた液体を電荷輸送層用塗布液とし、前述した図4に示す製造工程にしたがって感光体ドラムのサンプル4を作製した。
【0035】
<サンプル5>
バインダー樹脂として下記の化学式3で示されるポリアリレート樹脂100重量部と、電荷輸送物質として下記の化学式8で示される電荷輸送物質50重量部とを、テトラヒドロフラン:トルエン=80:20(重量比)の混合溶媒に溶解させた液体を電荷輸送層用塗布液とし、前述した図4に示す製造工程にしたがって感光体ドラムのサンプル5を作製した。
【0036】
【化3】
【0037】
【化8】
【0038】
<サンプル6>
バインダー樹脂として上記の化学式3で示されるポリアリレート樹脂100重量部と、電荷輸送物質として上記の化学式8で示される電荷輸送物質50重量部と、添加剤として上記の化学式9で示される添加剤1重量部とを、テトラヒドロフラン:トルエン=80:20(重量比)の混合溶媒に溶解させた液体を電荷輸送層用塗布液とし、前述した図4に示す製造工程にしたがって感光体ドラムのサンプル6を作製した。
【0039】
<サンプル7>
バインダー樹脂として上記の化学式1で示されるポリカーボネート樹脂30重量部と、下記の化学式4で示されるポリエステル樹脂70重量部と、電荷輸送物質として上記の化学式5で示される電荷輸送物質50重量部とを、テトラヒドロフラン:トルエン=80:20(重量比)の混合溶媒に溶解させた液体を電荷輸送層用塗布液とし、前述した図4に示す製造工程にしたがって感光体ドラムのサンプル7を作製した。
【0040】
【化4】
【0041】
<サンプル8>
バインダー樹脂として上記の化学式1で示されるポリカーボネート樹脂30重量部と、上記の化学式4で示されるポリエステル樹脂70重量部と、電荷輸送物質として上記の化学式5で示される電荷輸送物質50重量部と、添加剤として上記の化学式9で示される添加剤1重量部とを、テトラヒドロフラン:トルエン=80:20(重量比)の混合溶媒に溶解させた液体を電荷輸送層用塗布液とし、前述した図4に示す製造工程にしたがって感光体ドラムのサンプル8を作製した。
【0042】
<サンプル9>
バインダー樹脂として上記の化学式2で示されるポリカーボネート樹脂30重量部と、上記の化学式4で示されるポリエステル樹脂70重量部と、電荷輸送物質として上記の化学式6で示される電荷輸送物質30重量部と、上記の化学式7で示される電荷輸送物質20重量部とを、テトラヒドロフラン:トルエン=80:20(重量比)の混合溶媒に溶解させた液体を電荷輸送層用塗布液とし、前述した図4に示す製造工程にしたがって感光体ドラムのサンプル9を作製した。
【0043】
<サンプル10>
バインダー樹脂として上記の化学式2で示されるポリカーボネート樹脂30重量部と、上記の化学式4で示されるポリエステル樹脂70重量部と、電荷輸送物質として上記の化学式6で示される電荷輸送物質30重量部と、上記の化学式7で示される電荷輸送物質20重量部と、添加剤として上記の化学式9で示される添加剤1重量部とを、テトラヒドロフラン:トルエン=80:20(重量比)の混合溶媒に溶解させた液体を電荷輸送層用塗布液とし、前述した図4に示す製造工程にしたがって感光体ドラムのサンプル10を作製した。
【0044】
次に、作製した感光体ドラムのサンプル1〜10のそれぞれについて正帯電した場合と負帯電した場合の暗減衰率の測定方法について図5および図6の第1の実施例における暗減衰率の測定方法を示す説明図に基づいて説明する。
図5において、暗減衰率測定装置50は、感光体ドラムの暗減衰率を測定する装置であり、被測定物としての感光体ドラム1と、感光体ドラム1を帯電させる帯電ローラ2と、帯電ローラ2に電圧を印加する電源53と、感光体ドラム1の表面電位を測定する表面電位計54とから構成されている。
【0045】
感光体ドラム1は、図示しない駆動手段により図中矢印が示す方向へ回転自在に配設された感光体ドラムのサンプルであり、帯電ローラ2が感光体ドラム1に連れまわるように接触して配置されている。電源53から帯電ローラ2に電圧が印加されることにより回転する感光体ドラム1を帯電する。そして、感光体ドラム1の回転方向における帯電ローラ2の下流に配置され、感光体ドラム1に対して非接触の表面電位計54(トレックジャパン社製 モデル344)によって感光体ドラム1の表面電位を測定する。
【0046】
このように構成された暗減衰率測定装置50を暗部環境におき、図5に示すように、感光体ドラム1を図中矢印が示す方向に回転速度100rpmで回転させながら、感光体ドラム1の表面電位が、正帯電の場合はV0=+700V、負帯電の場合はV0=−700Vになるように電源53から帯電ローラ2への印加電圧を調整する。
【0047】
感光体ドラム1の表面が正負の絶対値|V0|=700Vで一様に帯電された直後、感光体ドラム1の回転を停止し、回転を停止した時点をt0とし、その時点t0から5秒間経過後の時点t5の感光体ドラム1の表面電位の絶対値|V5|を測定し、すなわち帯電ローラ2により帯電直後の感光体ドラム1の表面電位をV0[V]、前記帯電直後から暗部に5秒間放置した後の感光体ドラム1の表面電位をV5[V]とし、感光体ドラム1の暗減衰率を以下の式で算出する。
【0048】
暗減衰率(%)=((|V0|−|V5|)/|V0|)×100(%)・・・(式)
このように感光体ドラム1の暗減衰率を算出することにより、感光体ドラム1の表面が、正帯電した場合は正電荷の、負帯電した場合は負電荷の、感光体ドラム1の図1に示す電荷輸送層27中における電荷保持特性を比較することができ、この暗減衰率が大きい場合、電荷輸送層27中の電荷が拡散、消失、移動し易い傾向であるあることを示し、一方暗減衰率が小さい場合、電荷輸送層27中の電荷が滞留し易い傾向であるあることを示す。
【0049】
上述した構成の作用について説明する。
上記製造工程にしたがって作製した感光体ドラムのサンプル1〜10の10種類について、図2に示す画像形成装置100を使用し、一般的に、印刷時にゴーストの発生の有無を評価するゴースト評価としては最も厳しい環境である低温低湿環境(温度10℃、湿度20%)において、図7に示す印刷パターンを印刷することでゴースト評価を行った。
【0050】
図7に示す印刷パターンは、通常のオフィス用A4サイズのPPC用紙を縦方向に印刷し、用紙の印刷領域の上端から約50mmの幅の領域には白地にボールド文字列のパターンとし、用紙の印刷領域の上端から約50mmより下端側の領域にはハーフトーン(本実施例では、印刷密度が30%)のパターンとなっている。
【0051】
また、ゴースト評価における画像形成プロセスの条件は、除電光装置による除電光の照射光量は2.4μJ/cm2で固定し、図3に示す感光体ドラムの表面上における除電光照射位置と、帯電ローラとの接触位置との距離L[mm]、印刷動作時における該感光体ドラムの表面上の速度をv[mm/s]としたとき、L/vが、0.06[s]、0.04[s]、0.03[s]の3水準となるように距離L[mm]を調整する。その他の画像形成プロセスの条件については同一の条件として印刷結果を比較した。
【0052】
印刷結果におけるゴーストの発生の有無については、図8に示すように、感光体ドラムの回転周期Sで感光体ドラムの2周目のハーフトーンの印刷パターンにおいて、感光体ドラムの1周目のボールド文字列パターンに対応する露光部と白地部分の対応する未露光部での感光体ドラムの表面上の電位差が印刷結果として現れるか否かで判定することができ、その判定基準としては、図8に示すようなゴースト81の印刷が目視で認識できないものを「○」、ゴースト81の印刷が目視で認識できるものを「×」とした。なお、印刷結果におけるゴーストの発生の有無をゴーストレベルと呼ぶこととする。
【0053】
図9は第1の実施例における感光体ドラムの評価結果を示す説明図であり、感光体ドラムのサンプル1〜10のそれぞれについて、正帯電の暗減衰率(%)、負帯電の暗減衰率(%)、L/v=0.03[s]のゴーストレベル、L/v=0.04[s]のゴーストレベル、L/v=0.06[s]のゴーストレベルを示している。
【0054】
正帯電の暗減衰率(%)および負帯電の暗減衰率(%)は、図5および図6で説明した暗減衰率の測定方法で測定し、算出した暗減衰率(%)であり、L/v=0.03[s]のゴーストレベル、L/v=0.04[s]のゴーストレベル、L/v=0.06[s]のゴーストレベルは、上述した印刷結果におけるゴーストの発生の有無の評価による結果である。
【0055】
図9に示すように、ゴーストレベルは、L/v=0.06[s]の場合においては感光体ドラムのサンプル1〜10の各サンプルも良好な印刷結果を得ることができたが、L/v=0.04[s]以下においては、正帯電の暗減衰率をA(%)、負帯電の暗減衰率をB(%)とした場合、A>Bの条件を満たす感光体ドラムのサンプルのみ良好な印刷結果を得ることができた。
【0056】
これは除電工程から帯電工程までの感光体ドラムの表面上の移動時間が0.06[s]の場合は、上述のA>Bの条件を満たしていない感光体ドラムにおいても、転写工程で感光体ドラム表面付近や感光層(図1に示す電荷発生層26および電荷輸送層27)内に注入された正電荷および除電光照射により図1に示す電荷発生層26で発生した正電荷が、電荷輸送層27中で拡散や消失などで感光体ドラムの表面電位を除電するために十分な移動時間が確保されており、感光体ドラムの2周目の画像形成時において1周目の露光部と未露光部との電位差が小さくなり、ゴーストの印刷として現れなかった。
【0057】
これに対して、除電工程から帯電工程までの感光体ドラムの表面上の移動時間が0.04[s]以下の場合は、除電工程から帯電工程までの感光体ドラムの表面上の移動時間が短いため、上述のA>Bの条件を満たしていない感光体ドラムでは、感光体ドラムの2周目の画像形成時において1周目の露光部と未露光部との電位差が大きくなり、ゴーストの印刷として現れ、上述のA>Bの条件を満たしている感光体ドラムでは、感光体ドラムの2周目の画像形成時において1周目の露光部と未露光部との電位差が小さくなり、ゴーストの印刷として現れず良好な印刷結果が得られる結果となったと考えられる。
【0058】
また、感光体ドラムの10種類のサンプルの中で、バインダー樹脂として上述した化学式1のポリカーボネート樹脂が含まれているサンプル1、2、7、8はすべてゴースト印刷が未発生であり、バインダー樹脂として上述した化学式2のポリカーボネート樹脂が含まれているサンプル3、4、7、9、10はすべてゴースト印刷が発生しているのは、バインダー樹脂として使用するポリカーボネート樹脂において原子量表(日本化学会、2011年)に基づいて計算した上記化学式で示される構造単位の分子量が大きいほど上述のA>Bの条件を満たす傾向があることを示していると推定される。
【0059】
一般的に、ビスフェノールAとホスゲンから生成される基本的なポリカーボネート樹脂(上述した化学式10で示されるポリカーボネート樹脂)の構造単位の分子量は約254であるのに対し、上述した化学式1で示されるポリカーボネート樹脂の構造単位の分子量は約598程度であり、また上述した化学式2で示されるポリカーボネート樹脂の構造単位の分子量は約273程度である。
【0060】
したがって、一般的に、ビスフェノールAとホスゲンから生成される基本的なポリカーボネート樹脂の構造単位の原子量表に基づいて計算した分子量(約254)に比べ、2倍以上の約508以上の分子量である構造単位を有するポリカーボネート樹脂をバインダー樹脂として使用することが有効であると推定できる。
以上により、小型で画像形成プロセススピードの速い画像形成装置において、ゴーストのない良好な印刷結果を得るには、感光体ドラムの正帯電の暗減衰率をA(%)、負帯電の暗減衰率をB(%)とした場合、A>Bの条件を満たす感光体ドラムが最適である。
【0061】
このように、正帯電の暗減衰率をA(%)、負帯電の暗減衰率をB(%)とした場合、A>Bの条件を満たす感光体ドラム、すなわち正帯電させたときの暗減衰率が、負帯電させたときの暗減衰率より大きい感光体ドラムを用いることにより、ゴーストのない良好な印刷結果を得ることができる。
【0062】
以上説明したように、第1の実施例では、感光体ドラムの正帯電の暗減衰率をA(%)、負帯電の暗減衰率をB(%)とした場合、A>Bの条件を満たす感光体ドラムを画像形成装置に用いることにより、小型で画像形成プロセススピードの速い画像形成装置においてゴーストのない良好な印刷結果を得ることができるという効果が得られる。
【実施例2】
【0063】
第2の実施例は、第1の実施例で説明した製造工程にしたがって作製した感光体ドラムのサンプル1〜10の10種類について、図2に示す画像形成装置100を使用し、一般的に、印刷時にゴーストの発生の有無を評価するゴースト評価としては最も厳しい環境である低温低湿環境(温度10℃、湿度20%)において、図7に示す印刷パターンを印刷するゴースト評価の画像形成プロセスでの図3に示す除電光装置30による最適な除電光の照射光量を規定するものである。
なお、第2の実施例の構成は、第1の実施例の構成と同様なので同一の符号を付してその説明を省略する。
【0064】
第2の実施例の作用について説明する。
図7に示す印刷パターンは、通常のオフィス用A4サイズのPPC用紙を縦方向に印刷し、用紙の印刷領域の上端から約50mmの幅の領域には白地にボールド文字列のパターンとし、用紙の印刷領域の上端から約50mmより下端側の領域にはハーフトーン(本実施例では、印刷密度が30%)のパターンとなっている。
【0065】
一般的に、除電光の光量が大きすぎると耐刷により感光体ドラムの特性が光疲労劣化して経時において印刷濃度の低下や十分のコントラストが得られないといった印刷不良が発生することが知られている。
本実施例では、除電光の光量を0.6μJ/cm2、1.2μJ/cm2、2.4μJ/cm2、4.8μJ/cm2、7.2μJ/cm2の5水準とし、感光体ドラムの表面上における除電光照射位置と、帯電ローラとの接触位置との距離L[mm]、印刷動作時における該感光体ドラムの表面上の速度をv[mm/s]としたとき、L/vが、0.04[s]となるように固定した条件の下で20K枚(20000枚)の耐刷評価を実施し、初期および20K枚印刷後のゴースト評価およびその他(ゴースト印刷以外の印刷濃度の低下やコントラストの不良など)の印刷品質の確認を行った。
【0066】
印刷結果におけるゴーストの発生の有無については、第1の実施例と同様に、図8に示す感光体ドラムの回転周期Sで感光体ドラムの2周目のハーフトーンの印刷パターンにおいて、感光体ドラムの1周目のボールド文字列パターンに対応する露光部と白地部分の対応する未露光部での感光体ドラムの表面上の電位差が印刷結果として現れるか否かで判定し、その判定基準としては、図8に示すようなゴースト81の印刷が目視で認識できないものを「○」、ゴースト81の印刷が目視で認識できるものを「×」とした。
【0067】
また、ゴーストの印刷以外の印刷品質の確認については、印刷濃度の低下やコントラストの不良などについて目視で印刷不良が認識できないレベルを「○」、印刷不良は認識できるが実使用上問題ないレベルを「△」、明らかに印刷不良が顕著なレベルを「×」とした。
【0068】
図10は第2の実施例における初期印刷での感光体ドラムの評価結果を示す説明図、図11は第2の実施例における20K枚印刷後での感光体ドラムの評価結果を示す説明図であり、感光体ドラムのサンプル1〜10のそれぞれについて、正帯電の暗減衰率(%)、負帯電の暗減衰率(%)、除電光の光量が0.6μJ/cm2、1.2μJ/cm2、2.4μJ/cm2、4.8μJ/cm2、および7.2μJ/cm2のときのゴーストレベル、ならびにゴースト以外の印刷品質レベルを示している。
【0069】
正帯電の暗減衰率(%)および負帯電の暗減衰率(%)は、第1の実施例において図5および図6で説明した暗減衰率の測定方法で測定し、算出した暗減衰率(%)であり、除電光の光量が0.6μJ/cm2、1.2μJ/cm2、2.4μJ/cm2、4.8μJ/cm2、および7.2μJ/cm2のときのゴーストレベルは、上述した印刷結果におけるゴーストの発生の有無の評価による結果、除電光の光量が0.6μJ/cm2、1.2μJ/cm2、2.4μJ/cm2、4.8μJ/cm2、および7.2μJ/cm2のときのゴースト以外の印刷品質レベルは、上述した印刷結果における印刷品質の評価による結果である。
【0070】
図10(a)に示すように、初期印刷でのゴースト評価では、除電光の光量が0.6μJ/cm2のとき、サンプル1〜10の10種類すべての感光体ドラムでゴーストが発生し、良好な印刷結果を得ることができなかったが、除電光の光量が1.2μJ/cm2以上のとき、正帯電の暗減衰率をA(%)、負帯電の暗減衰率をB(%)とした場合、A>Bの条件を満たす感光体ドラムのサンプルについてはゴーストが発生せず、良好な印刷結果を得ることができた。
したがって、少なくとも除電光の光量は、1.2μJ/cm2以上が最適である。また、図10(b)に示すように、初期印刷では、ゴースト以外の印刷濃度の低下やコントラストの不良などの印刷不良は発生しなかった。
【0071】
また、図11(a)に示すように、耐刷20K枚印刷後でのゴースト評価では、除電光の光量が0.6μJ/cm2のとき、サンプル1〜10の10種類すべての感光体ドラムでゴーストが発生し、良好な印刷結果を得ることができなかったが、除電光の光量が1.2μJ/cm2以上のとき、正帯電の暗減衰率をA(%)、負帯電の暗減衰率をB(%)とした場合、A>Bの条件を満たす感光体ドラムのサンプルについてはゴーストが発生せず、良好な印刷結果を得ることができた。
したがって、耐刷での経時においても少なくとも除電光の光量は、1.2μJ/cm2以上が最適である。
【0072】
また、図11(b)に示すように、耐刷20K枚印刷後でのゴースト以外の印刷濃度の低下やコントラストの不良などの印刷品質については、除電光の光量が7.2μJ/cm2のとき、10種類すべての感光体ドラムのサンプルにおいて光疲労劣化による印刷濃度の低下やコントラストの不良等の印刷不良が認識され、除電光の光量が4.8μJ/cm2のとき、正帯電の暗減衰率をA(%)、負帯電の暗減衰率をB(%)とした場合、A>Bの条件を満たさない感光体ドラムのサンプルについては軽微な印刷不良が認識されたが、実使用上問題のないレベルであり、除電光の光量が2.4μJ/cm2以下のとき、10種類すべての感光体ドラムのサンプルにおいて光疲労劣化による印刷濃度の低下やコントラストの不良等の印刷不良は認識されなかった。
したがって、少なくとも除電光の光量は、耐刷での経時で良好な印刷品質を維持するためには4.8μJ/cm2以下が最適である。
【0073】
以上により、小型で画像形成プロセススピードの速い画像形成装置において、耐刷での経時でもゴーストのない良好な印刷結果および感光体ドラムの光疲労劣化による印刷濃度の低下やコントラストの不良等のない良好な印刷結果を得るには、感光体ドラムの正帯電の暗減衰率をA(%)、負帯電の暗減衰率をB(%)とした場合、A>Bの条件を満たす感光体ドラムを備え、少なくとも除電光の光量が1.2μJ/cm2以上、かつ4.8μJ/cm2以下の画像形成装置が最適である。
【0074】
以上説明したように、第2の実施例では、感光体ドラムの正帯電の暗減衰率をA(%)、負帯電の暗減衰率をB(%)とした場合、A>Bの条件を満たす感光体ドラムを備え、少なくとも除電光の光量が1.2μJ/cm2以上、かつ4.8μJ/cm2以下の除電光装置を画像形成装置に用いることにより、小型で画像形成プロセススピードの速い画像形成装置において耐刷での経時でもゴーストのない良好な印刷結果および感光体ドラムの光疲労劣化による印刷濃度の低下やコントラストの不良等のない良好な印刷結果を得ることができるという効果が得られる。
なお、第1の実施例および第2の実施例では、画像形成装置を印刷装置として説明したが、それに限られることなく、電子写真方式を用いた複写機、ファクシミリ装置、複合機(MFP)としても良い。
【符号の説明】
【0075】
1 感光体ドラム
2 帯電ローラ
3 露光LEDヘッド
4 現像ローラ
5 スポンジローラ
6 クリーニングブレード
7 トナーカートリッジ
8 ドラムカートリッジ
9 画像形成ユニット
11 転写ベルト
13 給紙カセット
14 給紙ローラ
15、16、17 搬送ローラ
18 排出ローラ
19 排出部
30 除電光装置
100 画像形成装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
像を担持する感光体と、前記感光体の表面を負帯電させる帯電手段と、前記帯電手段によって帯電された前記感光体に静電潜像を形成する露光手段と、前記露光手段によって形成された静電潜像上に現像剤像を形成する現像手段と、前記現像手段によって形成された現像剤像を被転写体に転写する転写手段と、前記転写手段による転写後、前記帯電手段による帯電前に、前記感光体に除電光を照射する除電手段を有する画像形成装置において、
前記感光体は、
前記帯電手段により帯電直後の表面電位をV0[V]、前記帯電直後から暗部に5秒間放置した後の表面電位をV5[V]とし、暗減衰率を、
(|V0|−|V5|)/|V0|×100(%)
で表したとき、
正帯電させたときの前記暗減衰率が、負帯電させたときの前記暗減衰率より大きいことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像形成装置において、
前記感光体の表面上における、前記除電光が照射される位置と、前記帯電手段により帯電される位置との距離をL[mm]、前記除電光が照射される位置が前記帯電手段により帯電される位置まで移動する該感光体の表面上の速度をv[mm/s]としたとき、
L/v≦0.04秒
であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の画像形成装置において、
前記感光体は、最表面層にバインダー樹脂を含み、
前記バインダー樹脂は、原子量表に基づいて計算した構造単位の分子量が約508以上のポリカーボネート樹脂を含むことを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項1、請求項2または請求項3に記載の画像形成装置において、
前記除電光の光量は、1.2μJ/cm2以上かつ4.8μJ/cm2以下であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項1】
像を担持する感光体と、前記感光体の表面を負帯電させる帯電手段と、前記帯電手段によって帯電された前記感光体に静電潜像を形成する露光手段と、前記露光手段によって形成された静電潜像上に現像剤像を形成する現像手段と、前記現像手段によって形成された現像剤像を被転写体に転写する転写手段と、前記転写手段による転写後、前記帯電手段による帯電前に、前記感光体に除電光を照射する除電手段を有する画像形成装置において、
前記感光体は、
前記帯電手段により帯電直後の表面電位をV0[V]、前記帯電直後から暗部に5秒間放置した後の表面電位をV5[V]とし、暗減衰率を、
(|V0|−|V5|)/|V0|×100(%)
で表したとき、
正帯電させたときの前記暗減衰率が、負帯電させたときの前記暗減衰率より大きいことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像形成装置において、
前記感光体の表面上における、前記除電光が照射される位置と、前記帯電手段により帯電される位置との距離をL[mm]、前記除電光が照射される位置が前記帯電手段により帯電される位置まで移動する該感光体の表面上の速度をv[mm/s]としたとき、
L/v≦0.04秒
であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の画像形成装置において、
前記感光体は、最表面層にバインダー樹脂を含み、
前記バインダー樹脂は、原子量表に基づいて計算した構造単位の分子量が約508以上のポリカーボネート樹脂を含むことを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項1、請求項2または請求項3に記載の画像形成装置において、
前記除電光の光量は、1.2μJ/cm2以上かつ4.8μJ/cm2以下であることを特徴とする画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−88761(P2013−88761A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−231692(P2011−231692)
【出願日】平成23年10月21日(2011.10.21)
【出願人】(591044164)株式会社沖データ (2,444)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月21日(2011.10.21)
【出願人】(591044164)株式会社沖データ (2,444)
【Fターム(参考)】
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