説明

画像形成装置

【課題】両面印刷を行う場合、用紙の第2面目に定着されたトナー像において光沢ムラの発生を防止することが可能な画像形成装置を提供する。
【解決手段】用紙Sを加熱するサーマルヘッド70と、用紙Sの第1面目にトナー像の定着処理が行われた後、第2面目にトナー像の定着処理が行われる前に、第1面目に定着されたトナー像の領域以外の領域を部分的に予め加熱するようにサーマルヘッド70を制御する制御部80とを備えることにより、第2面目にトナー像が定着される前に、第1面目においてトナー像が定着された領域と定着されていない領域との間における用紙温度の差(つまり、光沢度の差)がなくなるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真プロセスにより形成された画像における光沢ムラの発生を防止する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、電子写真プロセスにより画像を形成する画像形成装置では、像担持体(感光ドラム等)の表面が所定の電位に帯電され、これに画像露光が施されて静電潜像が形成される。この静電潜像が現像手段により現像剤(トナー)を用いて現像され、トナー像として可視化される。得られたトナー像は感光ドラムに搬送された用紙に転写される。トナー像は、定着装置により加熱定着され、用紙上に画像が形成される。画像形成装置の一機能として、用紙の表裏両面に画像を形成する両面印刷機能がある。
【0003】
一方、トナー像転写直後の用紙の定着処理に先だって、予め所定の温度にまで加熱する(いわゆる予備加熱する)ことにより、熱容量の比較的小さな熱ローラによってもトナー像を定着できるようにした画像形成装置が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。この特許文献1に記載の技術では、転写材の種類・サイズまたは光沢画像の要否等に応じて、予備加熱の条件を自由に選択できるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−160408号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、両面印刷を行う場合、図1(a)に示すように、用紙の第1面目(いずれか一方の面)にトナー像を定着した後の用紙温度は、トナー像が形成されている画像領域2で高く(例えば、70℃)、トナー像が形成されていない非画像領域1で低い(例えば、50℃)。その理由は、画像領域2では、画像形成の際に供給される熱量が非画像領域1よりも大きいためである。このように画像領域2と非画像領域1との間において用紙温度の差がある状態で第2面目(いずれか他方の面)にトナー像を定着すると、図1(b)に示すように、第1面目の画像領域2に対応する領域4の光沢が、第1面目の非画像領域1に対応する領域3に比べて用紙温度が高い分だけ高くなる。
【0006】
ここで、光沢度とは、物の表面に当たった光(JIS規格では入射角度75度)が正反射した結果、人が目で物を見る際そのモノの明るさの程度を表す量(単位:°)である。図2は、第2面目にトナー像が定着される前の用紙温度と光沢度との関係を示す図である。図1の例を当てはめると、非画像領域1の用紙温度が50℃である場合、光沢度は73°になる。また、画像領域2の用紙温度が70℃である場合、光沢度は78°になる。一般的に、用紙の同一面内において、光沢度に概ね5°以上の差(光沢差)があると目視で光沢の差を認識することができる。図1の例では、光沢度に5°の差があるため、この状態で第2面目にトナー像を定着すると、光沢ムラ(光沢段差、以下同じ)が発生する。
【0007】
以上のように、第1面目において画像領域2と非画像領域1との間に用紙温度の差がある状態で第2面目にトナー像を定着する場合、第2面目に定着されたトナー像において光沢ムラが発生する問題があった。
【0008】
光沢ムラが発生する問題を改善する対策として、第1面目に画像形成した後、第2面目に画像を形成する前に用紙を冷却することが可能な用紙冷却機構を新たに設置することが考えられる。しかし、この対策では、設備コストが向上し、用紙全体で冷却効果を均一に得るために機構が大型化・複雑化するといった別の問題が生じる。
【0009】
また、別の対策として、第1面目に画像形成した後、第2面目に画像を形成する前に充分な冷却時間を設けることが考えられる。しかし、この対策では、両面印刷が終了するまでに長い時間がかかってしまう(つまり、印刷速度の低下が発生する)といった別の問題が生じるおそれがある。この問題は、特に、印刷の高速性が要求されるプロダクションプリント(軽印刷)市場においては避けなければならない。
【0010】
本発明は、両面印刷を行う場合、用紙の第2面目(いずれか他方の面)に定着されたトナー像において光沢ムラの発生を防止することが可能な画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る画像形成装置は、用紙の両面に画像形成可能な画像形成装置であって、
前記用紙を加熱する加熱部と、
前記用紙のいずれか一方の面にトナー像の定着処理が行われた後、他方の面にトナー像の定着処理が行われる前に、前記一方の面に定着されたトナー像の領域以外の領域を予め加熱するように前記加熱部を制御する制御部とを備えている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、両面印刷を行う場合、用紙の第2面目に定着されたトナー画像において光沢ムラが発生してしまう可能性を減らすことが可能な画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】従来の両面印刷時における問題点を説明する図である。
【図2】用紙温度と光沢度との関係を示す図である。
【図3】本発明に係る実施の形態を示す画像形成装置の縦断面図である。
【図4】本発明に係る実施の形態を示す画像形成装置の制御ブロック図である。
【図5】用紙の種類に応じて必要な供給熱量の例を示す図である。
【図6】本発明に係る実施の形態を示す画像形成装置の動作例を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図3に示す画像形成装置5は、電子写真プロセス技術を利用した中間転写方式のカラー画像形成装置である。すなわち、画像形成装置5は、感光体上に形成されたC(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、K(ブラック)の各色トナー像を中間転写体に転写(一次転写)し、中間転写体上で4色のトナー像を重ね合わせた後、用紙に転写(二次転写)することにより、画像を形成する。
【0015】
また、画像形成装置5には、CMYKの4色に対応する感光体を中間転写体の走行方向に直列配置し、中間転写体に一回の手順で各色トナー像を順次転写させるタンデム方式が採用されている。
【0016】
図3に示すように、画像形成装置5は、画像読取部10、操作表示部20、画像処理部30、画像形成部40、搬送部50、定着装置60、加熱部として機能するサーマルヘッド70、および制御部(図示せず)を備えている。
【0017】
制御部は、CPU(Central Processing Unit)等の演算装置を有しており、CPUで所定の制御プログラムを実行することにより、画像形成装置5の制御を行う。制御部は、操作表示部20により入力されたジョブ情報に従って画像形成装置5の画像形成動作を制御する。
【0018】
画像読取部10は、ADF(Auto Document Feeder)と称される自動原稿給紙装置11および原稿画像走査装置(スキャナー)12等を備えて構成される。自動原稿給紙装置11は、原稿トレイに載置された原稿Dを搬送機構により搬送して原稿画像走査装置12へ送り出す。自動原稿給紙装置11は、原稿トレイに載置された多数枚の原稿Dの画像(両面を含む)を連続して一挙に読み取ることができる。
【0019】
原稿画像走査装置12は、自動原稿給紙装置11からコンタクトガラス上に搬送された原稿又はコンタクトガラス上に載置された原稿を光学的に走査し、原稿からの反射光をCCD(Charge Coupled Device)センサー12aの受光面上に結像させ、原稿画像を読み取る。画像読取部10は、原稿画像走査装置12による読取結果に基づいて入力画像データを生成する。この入力画像データには、画像処理部30において所定の画像処理が施される。
【0020】
操作表示部20は、例えばタッチパネル付の液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)で構成され、表示部21および操作部22として機能する。表示部21は、制御部から入力される表示制御信号に従って、各種操作画面、画像の状態表示、各機能の動作状況等の表示を行う。操作部22に対しては、各種の指示および設定のための入力操作を行うことができる。これら指示・設定の情報は、ジョブ情報として制御部により扱われる。ジョブ情報としては、用紙サイズ、プリント枚数、両面印刷の指示等がある。
【0021】
画像処理部30は、入力画像データに対して、初期設定又はユーザー設定に応じたデジタル画像処理を行う回路等を備えている。例えば、画像処理部30は、制御部の制御下で、階調補正データ(階調補正テーブル)に基づいて階調補正を行う。また、画像処理部30は、入力画像データに対して、階調補正の他、色補正、シェーディング補正等の各種補正処理や、圧縮処理等を施す。これらの処理が施された画像データに基づいて、画像形成部40が制御される。
【0022】
画像形成部40は、入力画像データに基づいて、Y成分、M成分、C成分、K成分の各有色トナーによる画像を形成するための画像形成ユニット41Y、41M、41C、41K、および中間転写ユニット42等を備えている。
【0023】
Y成分、M成分、C成分、K成分用の画像形成ユニット41Y、41M、41C、41Kは、同様の構成を有する。図示および説明の便宜上、共通する構成要素は同一の符号で示し、それぞれを区別する場合には符号にY、M、C、又はKを添えて示すこととする。図3では、Y成分用の画像形成ユニット41Yの構成要素についてのみ符号が付され、その他の画像形成ユニット41M、41C、41Kの構成要素については符号が省略されている。
【0024】
画像形成ユニット41は、露光装置411、現像装置412、感光体ドラム413、帯電装置414およびドラムクリーニング装置415等を備えている。
【0025】
感光体ドラム413は、例えばアルミニウム製の導電性円筒体(アルミ素管)の周面に、アンダーコート層(UCL:Under Coat Layer)、電荷発生層(CGL:Charge Generation Layer)、電荷輸送層(CTL:Charge Transport Layer)を順次積層した負帯電型の有機感光体(OPC:Organic Photo-conductor)である。
【0026】
帯電装置414は、光導電性を有する感光体ドラム413の表面を一様に負極性に帯電させる。露光装置411は、例えば半導体レーザーで構成され、感光体ドラム413に対して各色成分の画像に対応するレーザー光を照射する。感光体ドラム413の電荷発生層で正電荷が発生し、電荷輸送層の表面まで輸送されることにより、感光体ドラム413の表面電荷(負電荷)が中和される。感光体ドラム413の表面には、周囲との電位差により各色成分の静電潜像が形成されることとなる。
【0027】
現像装置412は、各色成分の現像剤(例えば、小粒径のトナーと磁性体とからなる二成分現像剤)を収容しており、感光体ドラム413の表面に各色成分のトナーを付着させることにより静電潜像を可視化してトナー像を形成する。ドラムクリーニング装置415は、感光体ドラム413の表面に摺接されるドラムクリーニングブレードを有する。一次転写後に感光体ドラム413の表面に残存する転写残トナーは、ドラムクリーニングブレードによって掻き取られ、除去される。
【0028】
中間転写ユニット42は、中間転写体となる中間転写ベルト421、一次転写ローラー422、二次転写ローラー423、駆動ローラー424、従動ローラー425およびベルトクリーニング装置426等を備えている。
【0029】
中間転写ベルト421は無端状ベルトで構成され、駆動ローラー424および従動ローラー425に張架される。中間転写ベルト421は、駆動ローラー424の回転により矢印A方向に一定速度で走行する。一次転写ローラー422によって、中間転写ベルト421が感光体ドラム413に圧接されると、中間転写ベルト421に各色トナー像が順次重ねて一次転写される。そして、中間転写ベルト421が二次転写ローラー423によって用紙Sに圧接されると、中間転写ベルト421に一次転写されたトナー像が用紙Sに二次転写される。
【0030】
ベルトクリーニング装置426は、中間転写ベルト421の表面に摺接されるベルトクリーニングブレードを有する。二次転写後に中間転写ベルト421の表面に残存する転写残トナーは、ベルトクリーニングブレードによって掻き取られ、除去される。
【0031】
定着装置60は、搬送されてきた用紙Sをニップ部で加熱、加圧することにより、用紙Sにトナー像を定着させる。定着装置60は、定着ユニット61とエア分離ユニット62とを備えて構成されるエア分離式の定着装置である。
【0032】
搬送部50は、給紙部51、搬送機構52および排紙部53等を備えている。給紙部51を構成する3つの給紙トレイユニット51a〜51cには、用紙の坪量やサイズ等に基づいて識別された用紙(規格用紙、特殊用紙)Sが予め設定された種類ごとに収容される。
【0033】
給紙トレイユニット51a〜51cに収容されている用紙Sは、最上部から一枚ずつ送出され、レジストローラー52a等の複数の搬送ローラーを備えた搬送機構52により画像形成部40に搬送される。このとき、レジストローラー52aが配設されたレジスト部により、給紙された用紙Sの傾きが補正されるとともに搬送タイミングが調整される。そして、画像形成部40において、中間転写ベルト421のトナー像が用紙Sの一方の面に一括して二次転写され、定着装置60において定着工程が施される。画像形成された用紙Sは、排紙ローラー53aを備えた排紙部53により機外に排紙される。
【0034】
搬送部50には、用紙Sを画像形成部40および定着装置60を通過させ、画像形成装置5の排紙トレイ(図示せず)に排出する通常搬送路50aと、定着装置60を通った用紙Sの表裏を反転させた後、画像形成部40の上流で再び通常搬送路50aに合流させる反転搬送路50bとが備えられている。
【0035】
両面印刷時には、最初に通常搬送路50aを通る際に用紙Sの表面(第1面目)にトナー像が形成され、反転搬送路50bを通過した後、再び通常搬送路50aを通る際に用紙Sの裏面(第2面目)にトナー像が形成されるようになっている。
【0036】
サーマルヘッド70は、反転搬送路50b上に配置され、用紙Sの幅方向(用紙Sの搬送方向と直交する方向)に直線状に配置された複数の発熱体を有する。複数の発熱体は、例えば300[dpi(dot per inch)]の密度で配置される。サーマルヘッド70は、制御部の制御を受けて、定着装置60によりトナー像が第1面目に加熱定着された用紙Sを加熱する。
【0037】
サーマルヘッド70に対向する位置には、サーマルヘッド70と圧接した状態で加圧ローラが配置されている。サーマルヘッド70と加圧ローラとの圧接部にはニップ部が形成されている。このニップ部に導入された用紙S上のトナー像は、サーマルヘッド70および加圧ローラにより熱および圧力が加えられる。
【0038】
制御部は、用紙Sを加熱するようにサーマルヘッド70を制御する。なお、制御部による具体的な制御動作については、図4を用いて後述する。
【0039】
次に、図4を参照して、画像形成装置5の制御ブロック図について説明する。図4に示すように、画像形成装置5は、操作表示部20、画像処理部30、サーマルヘッド70および制御部80を備えて構成されている。
【0040】
画像処理部30は、操作表示部20を介して両面印刷の指示が行われた場合、第1面目にトナー像を形成するための第1のディジタル画像データと、第2面目にトナー像を形成するための第2のディジタル画像データとを制御部80に出力する。
【0041】
操作表示部20は、タッチパネル式の画面を介して両面印刷の指示が行われた場合、当該両面印刷の指示を含むジョブ情報を制御部80に出力する。
【0042】
制御部80は、CPU90、ROM(Read Only Memory)91、RAM(Random Access Memory)92およびサーマル駆動部93を備えて構成されている。
【0043】
ROM91は、CPU90により実行される各種プログラムを記憶する。RAM92は、揮発性のメモリであって、CPU90により実行される各種プログラムやこれら各種プログラムに係るデータ等を格納するワークエリアを有し、その情報を一時的に記憶する。
【0044】
本実施の形態では、RAM92は、画像処理部30から出力された第1のディジタル画像データおよび第2のディジタル画像データを記憶する。また、RAM92は、操作表示部20から出力されたジョブ情報を記憶する。
【0045】
CPU90は、ROM91に格納されているシステムプログラムおよび各種アプリケーションプログラムの中から指定されたプログラムを読み出してRAM92に展開し、RAM92に展開されたプログラムとの協働で、各種処理を実行し、画像形成装置5の各部を制御する。
【0046】
本実施の形態では、CPU90は、RAM92に記憶されている第1のディジタル画像データに基づいて、用紙Sの第1面目においてトナー像が形成される領域(以下、「第1のトナー領域」と称する)を特定する。また、CPU90は、RAM92に記憶されている第2のディジタル画像データに基づいて、用紙Sの第2面目においてトナー像が形成される領域(以下、「第2のトナー領域」と称する)を特定する。そして、CPU90は、用紙Sの第2面目において第2のトナー領域のうち、第1のトナー領域以外の領域を加熱するための制御信号を生成してサーマル駆動部93に出力する。この場合、CPU90は、RAM92に記憶されているジョブ情報に含まれる用紙Sの種類に基づいて、用紙Sを加熱する際の供給熱量を決定し、当該決定した供給熱量を当該制御信号に含める。
【0047】
図5は、用紙の種類に応じて、加熱の際に必要な供給熱量の例を示す図である。図5では、用紙の種類が、普通紙70[g/m]、普通紙100[g/m]、コート紙70[g/m]、コート紙100[g/m]の熱容量および供給熱量を、普通紙70[g/m]を1としたときの熱容量および供給熱量の比で表している。
【0048】
図5に示すように、用紙の種類(例えば、紙の厚さまたは斤量など)によって熱容量が異なるため、同じ供給熱量で加熱した場合、用紙の種類に応じて加えられる光沢度に差が生じてしまう。そこで、本実施の形態では、用紙の種類に関係なく加えられる光沢度に差が生じないようにするため、用紙の種類(すなわち、熱容量)に応じて加熱の際に必要な供給熱量を決定している。
【0049】
サーマル駆動部93は、CPU90から制御信号が出力された場合、当該制御信号の内容に従って用紙Sの第2面目を加熱するようにサーマルヘッド70を制御する。
【0050】
次に、本実施の形態における画像形成装置5の動作について説明する。図6は、本実施の形態における画像形成装置5の動作例を示すフローチャートである。
【0051】
まず、制御部80のCPU90は、RAM92に記憶されているジョブ情報を参照して、操作表示部20を介して両面印刷の指示が行われたか否かについて判定する(ステップS100)。もし、両面印刷の指示が行われていないとCPU90にて判定した場合(ステップS100にてNO)、画像形成装置5は図6における処理を終了する。
【0052】
一方、両面印刷の指示が行われたとCPU90にて判定した場合(ステップS100にてYES)、CPU90は、RAM92に記憶されている第1のディジタル画像データに基づいて、用紙Sの第1面目においてトナー像が形成される第1のトナー領域を特定する(ステップS120)。次に、CPU90は、RAM92に記憶されている第2のディジタル画像データに基づいて、用紙Sの第2面目においてトナー像が形成される第2のトナー領域を特定する(ステップS140)。
【0053】
次に、CPU90は、RAM92に記憶されているジョブ情報に含まれる用紙Sの種類(熱容量)に基づいて、用紙Sを加熱する際の供給熱量を決定する(ステップS160)。次に、CPU90は、反転搬送路50b上に配置されたサーマルヘッド70を通過するタイミングになったか否かについて判定する(ステップS180)。もし、サーマルヘッド70を通過するタイミングになっていないとCPU90にて判定した場合(ステップS180にてNO)、処理はステップS180に遷移する。
【0054】
一方、サーマルヘッド70を通過するタイミングになったとCPU90にて判定した場合(ステップS180にてYES)、CPU90は、用紙Sの第2面目において第2のトナー領域のうち、第1のトナー領域以外の領域をステップS160で決定した供給熱量で加熱するための制御信号を生成してサーマル駆動部93に出力する(ステップS200)。
【0055】
最後に、サーマル駆動部93は、CPU90から出力された制御信号を受けて、当該制御信号の内容に従って用紙Sの第2面目を加熱するようにサーマルヘッド70を制御する(ステップS220)。ステップS220の処理が完了することによって、画像形成装置5は図6における処理を終了する。
【0056】
以上詳しく説明したように、本実施の形態に係る画像形成装置5は、用紙Sを加熱するサーマルヘッド70と、用紙Sの第1面目にトナー像の定着処理が行われた後、第2面目にトナー像の定着処理が行われる前に、第1面目に定着されたトナー像の領域以外の領域を部分的に予め加熱するようにサーマルヘッド70を制御する制御部80とを備えている。このように構成した本実施の形態によれば、両面印刷の指示が行われた場合、第2面目にトナー像が定着される前に、第1面目においてトナー像が定着された領域と定着されていない領域との間における用紙温度の差(つまり、光沢度の差)がなくなり、用紙Sの第2面目に定着されたトナー像において光沢ムラが発生しまう可能性を減らすことができる。
【0057】
また、本実施の形態では、用紙Sを加熱する手段として、短い時間で加熱温度に達し、供給熱量の制御が高精度で行えるサーマルヘッド70を採用している。これにより、所望の位置に必要な分だけ選択的に加熱する処理を高精度で行うことができる。
【0058】
また、本実施の形態では、用紙Sの熱容量に基づいて、用紙Sを加熱する際の供給熱量を決定している。これにより、両面印刷の対象である用紙Sの種類(熱容量)が異なっても、第1面目においてトナー像が定着された領域と定着されていない領域との間における光沢度の差を確実になくすことができる。
【0059】
また、本実施の形態では、用紙Sの第2面目を加熱するように制御している。これからトナー像が定着される第2面目においては、第1面目の影響を完全には受けないため、第1面目より用紙温度の差が生じていない。つまり、用紙Sの第1面目を加熱する場合に比べて、少ない供給熱量で第2面目における用紙温度の差(つまり、光沢度の差)を予めなくすことができる。
【0060】
また、本実施の形態では、用紙Sの第2面目にトナー像が形成される前に、用紙Sを加熱するように制御している。これにより、用紙Sの第2面目にトナー像が形成された後に用紙Sを加熱する場合と比べて、未定着のトナー像が用紙Sに形成された状態で加熱することにより当該未定着のトナー像が乱れるという問題が発生しない分だけ、第2面目に定着されたトナー像の画像品質を良好にすることができる。
【0061】
また、本実施の形態では、用紙Sにおいて第1面目に定着されたトナー像の領域(第1のトナー領域)以外の領域のうち第2面目にトナー像を定着される領域(第2のトナー領域)のみを加熱するように制御している。これにより、用紙Sの第2面目において光沢ムラが発生し得ない領域(トナー像を定着されない領域)に対してまで不要に加熱することを防止することができ、サーマルヘッド70の駆動電力を減らすことができる。
【0062】
なお、上記実施の形態では、用紙S上に定着されたトナー像を加熱する手段としてサーマルヘッド70を用いる例について説明したが、本発明はこれに限定されない。要は、用紙Sの任意の領域を加熱するように制御可能な複数の発熱体を有するものであれば何でも良い。
【0063】
また、上記実施の形態において、画像形成装置5は、自動原稿給紙装置11からコンタクトガラス上に搬送された原稿又はコンタクトガラス上に載置された原稿に対応する入力画像データに基づいて用紙Sに画像を形成する例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、画像形成装置5は、図示しない通信部を介して、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)等の通信ネットワークに接続された外部の装置(例えばパーソナルコンピュータ)から送信された入力画像データを受信し、当該受信したデジタル画像データに基づいて用紙Sに画像を形成しても良い。
【0064】
その他、上記実施の形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0065】
5 画像形成装置
70 サーマルヘッド
80 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
用紙の両面に画像形成可能な画像形成装置であって、
前記用紙を加熱する加熱部と、
前記用紙のいずれか一方の面にトナー像の定着処理が行われた後、他方の面にトナー像の定着処理が行われる前に、前記一方の面に定着されたトナー像の領域以外の領域を予め加熱するように前記加熱部を制御する制御部と、
を備えた画像形成装置。
【請求項2】
前記加熱部は、前記用紙の幅方向に配列された複数の発熱体を有するサーマルヘッドである請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記用紙の熱容量に基づいて、前記用紙を加熱する際の供給熱量を決定する請求項1または2の何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記他方の面を加熱するように前記加熱部を制御する請求項1〜3の何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記他方の面にトナー像が形成される前に加熱するように前記加熱部を制御する請求項1〜4の何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記一方の面に定着されたトナー像の領域以外の領域のうち、前記他方の面にトナー像が定着される領域のみを加熱するように前記加熱部を制御する請求項1〜5の何れか1項に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−92553(P2013−92553A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−232725(P2011−232725)
【出願日】平成23年10月24日(2011.10.24)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】