説明

画像形成装置

【課題】カラー画像の形成が可能な画像形成装置であって,混色のほとんどない黒色トナーを確実に回収してリサイクルできる画像形成装置を提供すること。
【解決手段】画像形成装置1は,中間転写部材の循環経路の少なくとも一部を変位させることにより,中間転写部材が複数の感光体のすべてに接触するカラー配置と,中間転写部材が複数の感光体のうち第1色のものに接触しそれ以外のものに接触しないモノクロ配置とを切り替える配置切り替え部と,カラー配置での画像形成の際には回収部によるトナーの回収を行わず,モノクロ配置での画像形成の際には回収部によるトナーの回収を行う回収制御部とを有し,回収制御部は,モノクロ配置では,中間転写部材の配置がカラー配置からモノクロ配置へ切り替えられた直後のあらかじめ定めた不回収期間内には,回収部によるトナーの回収を行わず,不回収期間が経過してから回収部によるトナーの回収を行うものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,プリンター,FAX等の画像形成装置に関する。さらに詳細には,複数色のトナーを使用したカラー画像の形成と,黒色のトナーのみを使用したモノクロ画像の形成とをいずれも行うことのできる画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置では,像担持体上にトナー像を形成し,その形成したトナー像を印刷用紙等に転写することによって画像形成を行っている。印刷用紙等への転写後にも像担持体上にはある程度のトナーが残留するので,従来より,この残留トナーをクリーナー部材によってクリーニングすることが行われている。さらに,クリーナー部材によって回収された残留トナーを再び現像に供することにより,トナーのリサイクルを行う画像形成装置もある。
【0003】
しかし,複数色のトナーによるトナー像を像担持体上に重ねてカラー画像を形成するカラー画像形成装置において,その像担持体上に残留するトナーは,各色のトナーが混在したものである。このように混色したトナーは,回収しても,元通りの色のトナーとしてリサイクルすることができない。
【0004】
これに対し,カラー画像形成が可能な画像形成装置でも,カラー画像を形成する場合のカラーモードと,黒色トナーのみを使用してモノクロ画像を形成する場合のモノクロモードとで,処理方法を異なるものとすることが提案されている(例えば,特許文献1参照。)。本文献に記載の画像形成装置では,モノクロモードでの画像形成時には,黒色用以外のプロセスカートリッジを中間転写体から離すとされている。そして,カラーモードでの画像形成後の残留トナーは回収して,リサイクルせずに廃棄するとともに,モノクロモードでの画像形成後の残留トナーは別の回収装置によって回収して,黒色トナーとしてリサイクルするとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−330289号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら,前記した特許文献1に記載の画像形成装置によっても,リサイクルされた黒色トナーに僅かながら他色のトナーが混入することがある。黒トナーへの他色の混入はあまり目立たないとはいえ,特に高画質な画像を形成する場合にはやはり好ましくない。本発明者は,その混入の理由を考察したところ,カラーモードでの画像形成直後のモノクロモード時に混入が発生している可能性があることを見出した。
【0007】
本発明は,前記した従来の画像形成装置が有する問題点を解決するためになされたものである。すなわちその課題とするところは,カラー画像の形成が可能な画像形成装置であって,混色のほとんどない黒色トナーを確実に回収してリサイクルできる画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題の解決を目的としてなされた本発明の画像形成装置は,異なる色のトナーによる画像形成を行う複数の感光体と,循環経路に沿って移動しつつ複数の感光体からトナー像の転写を受けて媒体に再転写する中間転写部材と,中間転写部材上に再転写後に残留しているトナーを回収する回収部とを有する画像形成装置であって,中間転写部材の循環経路の少なくとも一部を変位させることにより,中間転写部材が複数の感光体のすべてに接触するカラー配置と,中間転写部材が複数の感光体のうち第1色のものに接触しそれ以外のものに接触しないモノクロ配置とを切り替える配置切り替え部と,カラー配置での画像形成の際には回収部によるトナーの回収を行わず,モノクロ配置での画像形成の際には回収部によるトナーの回収を行う回収制御部とを有し,回収制御部は,モノクロ配置では,中間転写部材の配置がカラー配置からモノクロ配置へ切り替えられた直後のあらかじめ定めた不回収期間内には,回収部によるトナーの回収を行わず,不回収期間が経過してから回収部によるトナーの回収を行うものである。
【0009】
本発明の画像形成装置によれば,中間転写部材は,配置切り替え部によって,複数の感光体のすべてに接触するカラー配置と,第1色の感光体のみに接触するモノクロ配置との間で配置が切り替えられる。そして,モノクロ配置の場合のみ回収部による回収が行われる。さらに,カラー配置からモノクロ配置へと切り替えられた直後の予め決めた不回収期間には,残留トナーの回収を行わない。従って,カラー画像の形成が可能な画像形成装置であって,混色のほとんどない黒色トナーを確実に回収してリサイクルできる画像形成装置となっている。
【0010】
さらに本発明では,不回収期間は,カラー配置からモノクロ配置への切り替え時から,中間転写部材における,カラー配置からモノクロ配置への切り替え直前に第1色以外の複数の感光体のうち中間転写部材の移動方向に最も上流のものと接触していた位置が,中間転写部材の移動により,回収部による回収位置を通過するときまでの期間であることが望ましい。
このようになっていれば,前回の画像形成によって他色のトナーが付着しているかもしれない範囲に限って,残留トナーの回収を行わない。従って,回収後のトナーに混色はなく,さらに適切にリサイクルできる。
【0011】
さらに本発明では,第1色の感光体は,複数の感光体のうち,中間転写部材の移動方向に最も下流のものであり,画質優先で画像形成を行う画質優先モードと,生産性優先で画像形成を行う生産性優先モードとのいずれか一方を選択するモード選択部と,中間転写部材がカラー配置からモノクロ配置へ切り替えられた後の最初のモノクロ画像の形成開始タイミングをコントロールするモノクロ開始タイミング制御部とを有し,モノクロ開始タイミング制御部は,画質優先モードが選択されていれば,中間転写部材における,複数の感光体のうち中間転写部材の移動方向に最も上流のものと切り替え時に接触していた位置が,中間転写部材に移動により,第1色の感光体と接触する位置を通過してから,第1色の感光体から中間転写部材への転写が行われるタイミングで当該モノクロ画像の形成を開始させ,生産性優先モードが選択されていれば,直ちに当該モノクロ画像の形成を開始させることが望ましい。
このようなものであれば,中間転写部材がカラー配置からモノクロ配置へ切り替えられた後の最初のモノクロ画像の形成を開始するタイミングが,画像形成のモードに応じて変更される。つまり,画質が優先される場合には,中間転写部材のうち,他色の感光体と接触していた箇所を通過させてから,感光体から中間転写部材への転写が行われる。このようにすることにより,他色のトナーが付着しているかもしれない範囲を用いないで画像形成を行うので,混色のない高画質なモノクロ画像を形成することができる。
【0012】
さらに本発明では,配置切り替え部は,カラー画像の形成の場合にはモードの選択にかかわらずカラー配置とし,モノクロ画像の形成の場合には,画質優先モードが選択されていればモノクロ配置とし,生産性優先モードが選択されていればその時点での配置のまま変更しないことが望ましい。
このようなものであれば,画質優先モードが選択されている場合に限り,カラー配置からモノクロ配置への配置の変更を行う。これは,配置の切り替えにはある程度の時間がかかるため,配置の切り替えの実行により生産性が多少低下するからである。生産性を多少犠牲にしても良い場合に限ることにより,待ち時間の発生が抑制されている。
【0013】
さらに本発明では,配置切り替え部は,モノクロ画像の形成を,カラー画像の形成後引き続いてではなく単独で行う場合には,生産性優先モードが選択されていてもモノクロ配置とすることが望ましい。あるいは,配置切り替え部は,モノクロ画像の形成を,カラー画像の形成に先だってではなく単独で行う場合には,生産性優先モードが選択されていてもモノクロ配置とすることが望ましい。
このようにすれば,高画質なモノクロ画像を形成できるとともに,生産性優先モードが選択されていても,ある程度はトナーの回収が可能である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の画像形成装置によれば,カラー画像の形成が可能な画像形成装置であって,混色のほとんどない黒色トナーを確実に回収してリサイクルできる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本形態に係る画像形成装置を示す概略構成図である。
【図2】画像形成装置の制御系の概略を示すブロック図である。
【図3】カラー配置での中間転写ベルトの配置を示す説明図である。
【図4】モノクロ配置での中間転写ベルトの配置を示す説明図である。
【図5】カラー配置からモノクロ配置への移行時の様子を示す説明図である。
【図6】残留トナーの回収処理を示すフローチャート図である。
【図7】図6の変形を示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下,本発明を具体化した最良の形態について,添付図面を参照しつつ詳細に説明する。本形態は,中間転写ベルトを有し,カラー画像形成が可能な画像形成装置に本発明を適用したものである。
【0017】
本形態の画像形成装置1は,図1に示すように,各色の画像形成部10Y,10M,10C,10Kが,中間転写ベルト20に沿って並べられた,いわゆるタンデムタイプの画像形成装置である。各画像形成部は,それぞれ,感光体11,帯電部12,露光部13,現像部14,1次転写部15,クリーナー部16を有するものである。これらの各部は,電子写真方式の画像形成装置に適切に使用されるものであればどのようなものであっても良く,ここでは詳細な説明は省略する。なお,図では,イエローの画像形成部10Yについてのみ各部の符号を付しているが,他の色の画像形成部もいずれも同様の構成であり,これらの間の差異はトナーの色のみである。ただし,全く同じものに限らず,例えば大きさが異なるものであっても良い。
【0018】
また,本形態の画像形成装置1はさらに,図1に示すように,2次転写部22,定着部23,回収部24,ベルトクリーナー部25を有している。2次転写部22と定着部23とは,既知の構成のものでよい。回収部24は,中間転写ベルト20上の残留トナーを一旦回収して保管するためのものである。本形態の回収部24は,電気的にトナーを回収するものが好ましい。例えば,バイアス電圧を印加されたブラシなどが,好適に用いられる。
【0019】
本形態の画像形成装置1では,この回収部24によって回収されるのは黒色トナーのみである。回収された黒色トナーは,画像形成部10Kにおいて再び現像に供される。また,ベルトクリーナー部25は,ブレードあるいはブラシ等を有し,中間転写ベルト20上の残留トナーや紙粉等の異物を回収する。ベルトクリーナー部25で回収された異物はすべて廃棄される。
【0020】
中間転写ベルト20は,多数のローラーによって支持された無端ベルトである。画像形成時には,各ローラーの協働によって決定される循環経路に沿って図1中に矢印で示す向きに回転移動される。すなわち,本形態の画像形成装置1の中間転写ベルト20は,その上の1箇所についてみると,イエローの画像形成部10Y,マゼンタの画像形成部10M,シアンの画像形成部10C,ブラックの画像形成部10Kの順に対向し,2次転写部22を通ってから,回収部24とベルトクリーナー部25とにこの順に対向し,その後,再び各色の画像形成部に対向する。
【0021】
本形態の画像形成装置1はさらに,図1に示すように,原稿読取部31,コントロールパネル32,制御部33,手差しトレイ34,給紙カセット35,排紙トレイ36を有している。また,画像形成装置1の内部には,手差しトレイ34または給紙カセット35から給紙した用紙を,2次転写部22および定着部23を介して,排紙トレイ36に導く用紙搬送路37が形成されている。
【0022】
本形態の画像形成装置1の制御系のブロック構成を図2に示す。画像形成装置1は,CPU41を中心にして,情報制御回路42,画像処理回路43,駆動制御回路44,電源回路45等を有している。また,情報制御回路42には,I/F47が設けられ,外部情報機器と接続できるようになっている。さらに,情報制御回路42には,コントロールパネル32,センサー48,記憶部49が接続されている。また,駆動制御回路44には,原稿読取部31,各色の画像形成部10,2次転写部22,定着部23,給排紙部34〜37が接続されている。CPU41は,これら各部の制御を行う。なお,図1に示す制御部33は,CPU41および情報制御回路42,画像処理回路43,駆動制御回路44,電源回路45等をすべて含み,画像形成装置1の全体を制御するものである。
【0023】
本形態の画像形成装置1の中間転写ベルト20は,その循環経路が異なる2種類の配置をとることができる。カラー画像形成用のカラー配置と,モノクロ画像形成用のモノクロ配置である。つまり本形態の画像形成装置1の制御部33は,中間転写ベルト20の経路を決定している各ローラーのうち少なくとも一部のものを変位させることができる。その結果,中間転写ベルト20は,カラー配置での画像形成時には図3に示すように,モノクロ配置での画像形成時には図4に示すように,その通過する経路が変更される。このときには,制御部33が配置切り替え部として機能する。
【0024】
カラー配置は,図3に示すように,中間転写ベルト20が各色の画像形成部10Y,10M,10C,10Kのすべての感光体11に接触している配置である。モノクロ配置は,図4に示すように,中間転写ベルト20が黒色の画像形成部10Kの感光体11のみに接触して,他色の感光体11には接触しない配置である。ただし,これらの図ではわかりやすさのために大きく動かしているが,各色の画像形成部10の感光体11と中間転写ベルト20との接触または非接触が実現できる程度に変位させればよい。また,必ずしも中間転写ベルト20の全体を移動させることが必要ではなく,部分的にやや経路を変更することによりこれらの配置を実現しても良い。
【0025】
カラー配置とモノクロ配置との差異は,中間転写ベルト20の経路にある。カラー配置であっても,画像データがブラックのみであれば,他の色のトナー像は形成されないので,実質的にモノクロ画像が形成される。そして本形態の画像形成装置1は,後述するように,モノクロ画像の印刷であってもカラー配置で実行することもある。一方,モノクロ配置では,画像形成装置1はモノクロ画像しか形成できない。なお,モノクロ配置では,ブラック以外の画像形成部への電力の供給を停止するようにしても良い。
【0026】
そして,回収部24は,カラー配置では残留トナーの回収を行わず,モノクロ配置の場合に限って残留トナーの回収を行う。例えば,図3と図4に示すように,回収部24は,カラー配置では中間転写ベルト20からやや離れ,モノクロ配置では中間転写ベルト20に接触しているようにしてもよい。さらに,本形態の画像形成装置1の制御部33は,回収部24に印加するバイアス電圧の制御によって,モノクロ配置であっても回収の実施・非実施を制御することができる。このときには,制御部33が,回収制御部として機能する。
【0027】
一方,ベルトクリーナー部25は,カラー配置でもモノクロ配置でもいずれも異物の回収を行う。例えば,ベルトクリーナー部25は,中間転写ベルト20の経路の変位に連動して,図3と図4に示すように,移動するものとしても良い。従って,図3に示すカラー配置では,中間転写ベルト20は,回収部24による回収は受けず,ベルトクリーナー部25によるクリーニングは受ける。一方,図4に示すモノクロ配置では,中間転写ベルト20は,回収部24に回収を受けるとともに,その後,ベルトクリーナー部25によるクリーニングも受ける。
【0028】
本形態の画像形成装置1は,カラー画像の形成時には,図3に示したカラー配置をとる。そして,各色の画像形成部10Y,10M,10C,10Kはいずれも駆動される。従って,各色のトナー像がその感光体11上に形成され(図1参照),中間転写ベルト20上に重ねて転写される。このカラー配置では,各色の感光体11はいずれも中間転写ベルト20に接触しているので,形成された各色のトナー像を,各色の感光体11から中間転写ベルト20へ転写することができる。
【0029】
このとき,各色の画像形成部において,感光体11は帯電部12によって一様に帯電される。次に,露光部13によって感光体11の表面に静電潜像が形成される。次に,現像部14によって静電潜像に現像剤が供給され,トナー像が形成される。さらに,各色のトナー像は,1次転写部15によって中間転写ベルト20に転写され,重ね合わされる。この重ねられたトナー像は,手差しトレイ34または給紙カセット35から給紙された記録用紙に2次転写部22によって転写される。さらに転写されたトナー像は,定着部23によって記録用紙に定着され,画像が形成される。
【0030】
感光体11のうち1次転写部15を通過した箇所は,クリーナー部16によって順次クリーニングされる。ただし,クリーナー部16によってクリーニングされた後も,感光体11の表面上には僅かにトナーが残留することを防止できない。なお,このクリーナー部16は,残留トナーを回収して廃棄するものに限らず,一旦回収したものを現像部14にて再使用するリサイクルを行うものであっても良い。
【0031】
カラー配置では,2次転写部22を通過した中間転写ベルト20の箇所は,図3に示したように,回収部24から離れた位置を通り,ベルトクリーナー部25に対向する。従って,中間転写ベルト20上の残留トナーは,回収部24による回収を受けない。そして,中間転写ベルト20は,順次,ベルトクリーナー部25によってクリーニングされ,次回の画像形成に備えられる。このベルトクリーナー部25で回収された残留トナー等は,リサイクルされることはなく,すべて廃棄される。
【0032】
また,本形態の画像形成装置1の図4に示したモノクロ配置では,ブラック以外の画像形成部の感光体11は中間転写ベルト20に接触していないので,黒色トナーによるトナー像のみが中間転写ベルト20に転写される。従って,モノクロ画像の形成のみが可能である。この場合の画像形成の手順は,上記のカラー画像の場合に準ずるものである。ただし,イエローとマゼンタとシアンの画像形成部10Y,10M,10Cではトナー像は形成されない。
【0033】
本形態の画像形成装置1は,カラー画像の形成はカラー配置で行うが,モノクロ画像の形成は,カラー配置で実施する場合とモノクロ配置で実施する場合とがある。そして,画像形成装置1は,モノクロ配置での画像形成時には基本的に,回収部24による回収も行う。これにより,回収部24ではブラックトナーのみが回収され,他の色のトナーは回収されない。モノクロ配置では,ブラック以外の感光体11は中間転写ベルト20に接触していないので,ブラック以外の色のトナーが中間転写ベルト20に付着するおそれはないからである。そして,回収部24に回収されたトナーは,ブラックの現像部14へのリサイクルに供される。
【0034】
ただし,カラー配置からモノクロ配置へと切り替えられた直後には,モノクロ配置であっても,中間転写ベルト20に部分的に黒色以外の色のトナーが付着しているおそれがある。前述のように,中間転写ベルト20の各箇所は,Y→M→C→Kの順に各色の画像形成部に対向する。そのため,中間転写ベルト20の進行方向について,ある時点にて画像形成部10Kに対向している箇所の上流側には,ベルトクリーナー部25によるクリーニング後に既に,他の画像形成部10Y〜10Cに対向した範囲がある。そして,カラー配置では,画像形成部に対向した箇所では,中間転写ベルト20はその画像形成部の感光体11に接触する。
【0035】
つまり,カラー配置からモノクロ配置へ移行した直後の中間転写ベルト20では,図5に示す箇所aと箇所bとの間の範囲dは,ベルトクリーナー部25によるクリーニング後に他色の感光体11に既に接触した範囲である。これらの感光体11にトナーが残留していた場合には,そのトナーが接触によって中間転写ベルト20に付着したおそれがある。なお,箇所aは,モノクロ配置への移行が終了したときにブラックの感光体11に接触している箇所である。箇所bは,カラー配置からモノクロ配置への移行前の最後にイエローの感光体11,つまり最も上流の感光体が接触していた箇所である。
【0036】
そこで本形態の画像形成装置1は,図5に示した範囲dを回収部24による回収対象の範囲から除外する。そのために,本形態の画像形成装置1は,カラー配置からモノクロ配置への切り替えが完了した直後においては,直ちに回収部24に回収用のバイアス電圧を印加するのではなく,箇所bが回収部24を通過してから回収部24に回収用のバイアス電圧を印加する。つまり,箇所bが回収部24を通過するまでの期間が,不回収期間に相当する。画像形成装置1は,中間転写ベルト20に沿っての箇所bと回収部24との間の距離と,システム速度(中間転写ベルト20の走行速度)とから,不回収期間に相当する時間を得ることができる。従って,その得られた時間が経過するまで待ってから回収部24による回収を開始する。
【0037】
このようにすれば,他色のトナーが混入している可能性が多少ともある範囲である範囲dの残留トナーは回収部24に回収されない。これにより,回収部24で回収したトナーをブラックの画像形成部10Kの現像部14で再使用しても,他色のトナーが混入していることはまずないので,混色がおきるおそれはない。なお,箇所bは,中間転写ベルト20の進行方向に最も上流の感光体11が配置切り替え時の最後に接触した箇所である。最も上流の感光体11は,イエローの感光体11に限るものではない。
【0038】
さらに本形態の画像形成装置1では,カラー配置からモノクロ配置への切り替えが完了した直後の中間転写ベルト20のうち,図5に示した範囲dをモノクロ画像の形成に使用するか否かをユーザーが選択することができる。これは,範囲dが,上記のように他色のトナーが接触によって付着したおそれがある範囲であるため,中間転写ベルト20のこの部分に重ねてモノクロ画像のトナー像を転写すると,僅かながら画像に色汚れ等が発生するかもしれないからである。
【0039】
ユーザーは,たとえ僅かでも画像に色汚れが発生することは好ましくない場合には,画質優先モードを選択する。そうでない場合にはユーザーは,生産性優先モードを選択する。このモードの選択は,通常,ユーザーによるシステム設定の中で行われる。あるいは,ユーザーの指示がなければ,生産性優先モードに設定することとしてもよい。ユーザーは,例えばコントロールパネル32等を用いて,ジョブ入力時等に,ジョブごとに個別に生産性優先モードと画質優先モードとのいずれかの選択を指示することができる。画像形成装置1の制御部33は,ユーザーの指示に基づいて,実行するモードを選択する。このとき,制御部33は,モード選択部として機能する。
【0040】
画像形成装置1は,選択されているモードに基づいて,中間転写ベルト20への転写開始のタイミングを決定する。このときには,制御部33が,モノクロ開始タイミング制御部として機能する。
【0041】
ユーザーによって画質優先モードが選択されている場合には,画像形成装置1は,中間転写ベルト20のうち図5に示した範囲dを画像形成に使用しない。つまり,中間転写ベルト20の箇所bがブラックの画像形成部10Kを通過してからトナー像の転写が開始されるタイミングで,画像形成を開始する。画像形成装置1の構成から範囲dの大きさは予め分かっているので,この範囲が通過するために要する時間は,中間転写ベルト20の進行速度から容易に求められる。
【0042】
一方,少しでも速く画像形成を行いたいユーザーは,生産性優先モードを選択する。この範囲dに多少のトナーの付着があるとしても,その量はごく僅かであり,目視で顕著に分かるほど画質を低下させるものではないとユーザーが考えた場合である。範囲dは,積極的に画像を形成した範囲ではなく,単に感光体11に残留していたトナーが接触により付着したにすぎないからである。そこで,生産性優先モードでは,画像形成装置1は,この範囲dも利用して直ちにモノクロ画像の形成を行う。なお,直ちにとは言っても,当然ながら,前回の画像形成による画像の終端から適切な隙間を開けて今回の画像の転写を始める。
【0043】
前述したように本形態の画像形成装置1は,図5に示した範囲dの残留トナーは回収部24に回収しない。従って,生産性優先モードが選択されている場合は,範囲dに転写された分の転写残トナーは回収されず,廃棄される。つまり,このジョブの1枚目による残留トナーのうち,範囲dに残った部分は回収されない。また,画質優先モードが選択されている場合には,カラー配置からモノクロ配置への切り替えが完了した後の1枚目のモノクロ画像の先頭から,転写残トナーをすべて回収しリサイクルする。つまり,いずれのモードにおいても,中間転写ベルト20における回収部24での回収を開始する箇所は同じ箇所である。
【0044】
続いて,本形態の画像形成装置1におけるカラー配置とモノクロ配置との間の切り替えのタイミングについて説明する。配置の設定は,ジョブ単位で行われる。また,ジョブの種類には,カラー画像を含むカラージョブとモノクロ画像のみを含むモノクロジョブとがある。ジョブ中に1枚でもカラー画像が含まれていれば,そのジョブはカラージョブである。
【0045】
モノクロ配置とカラー配置との切り替えは,部材の移動を含むため,ある程度の時間がかかるものである。従って,ジョブの印刷中には配置の変更は行われない。画像形成装置1は,基本的に,カラージョブの全ページの画像形成をカラー配置で行い,モノクロジョブの全ページの画像形成をモノクロ配置で行う。
【0046】
カラージョブの実行は必ずカラー配置としてから行う。また,カラージョブに挟まれたモノクロジョブにおける配置の選択は,前述のモードの設定に基づいて行うものとしても良い。例えば,モノクロジョブの実行を開始するときにカラー配置であった場合には,生産性優先モードが選択されている場合には配置の切り替えを行わない。画質を優先する画質優先モードが選択されている場合には,モノクロ配置に配置の切り替えを行ってからモノクロジョブを実行する。
【0047】
つまり,生産性優先モードが選択されている場合には,モノクロ画像の形成をその時点での配置のままで行うとしてもよい。ただし,生産性優先モードが選択されていても,モノクロ画像の形成を,カラー画像の形成後引き続いてではなく単独で行う場合,または,カラー画像の形成に先だってではなく単独で行う場合には,モノクロ配置とすることが好ましい。
【0048】
次に,本発明の残留トナー回収処理の主要部分について,図6のフローチャートを参照して説明する。画像形成装置1はまず,受け付けたジョブが,モノクロジョブであるか否かを判断する(S101)。モノクロジョブではなく(S101:No),カラージョブである場合には,中間転写ベルト20をカラー配置に設定し(S102),画像形成を開始する(S103)。この場合は,回収部24による回収は行わずにそのジョブの印刷を行う。この場合は,この処理はここで終了である。
【0049】
受けたジョブがモノクロジョブであれば(S101:Yes),現在の中間転写ベルト20の配置がカラー配置であるか否かを判断する(S104)。現在,既にモノクロ配置であれば(S104:No),前回もモノクロジョブであったことを意味し,中間転写ベルト20に黒色以外のトナーが残留するおそれはほとんどない。この場合には,直ちに画像形成を開始する(S105)。さらに,回収部24に回収用のバイアス電圧を印加し,回収を行いつつ(S106),そのジョブの印刷を行う。この場合は,この処理はここで終了である。
【0050】
一方,受けたジョブがモノクロジョブであり,現在の中間転写ベルト20の配置がカラー配置であった場合には(S104:Yes),モノクロ配置に変更する場合と,カラー配置のまま印刷する場合とがある(S107)。モノクロ配置に変更せず,カラー配置のまま印刷する場合(S107:No)には,直ちに画像形成を開始する(S103)。この場合は,回収部24による回収は行わずにそのジョブの印刷を行う。この場合の処理はここで終了である。
【0051】
あるいは,S107でモノクロ配置に変更すると判断された場合(S107:Yes)は,ローラー等を移動させて中間転写ベルト20をモノクロ配置に設定する(S108)。この場合,このジョブの1枚目が,カラー配置からモノクロ配置への変更直後の最初の1枚である。この場合には,印刷のモードとして画質優先モードが選択されているか,あるいは,生産性優先モードが選択されているかによって,以後の処理が異なる(S109)。
【0052】
生産性優先モードが選択されている場合には(S109:No),すぐに画像形成を開始する(S110)。この場合は,他色の感光体11がモノクロ配置に設定される前に最後に接触していた範囲d(図5参照)も画像形成に使用する。一方,画質優先モードが選択されている場合には(S109:Yes),前述の範囲dが画像形成部10Kに対向する箇所を通過してから,画像形成部10Kの感光体11からの転写を開始するタイミングに合わせて,画像形成を開始する(S111)。つまりこの場合は,1枚目の印刷に限り,範囲dを画像形成に使用しない。
【0053】
さらに,S111とS112とのいずれの場合でも,位置bが回収部24を通過するまでの間は(S112:No),回収部24での回収を行わない(S113)。位置bが回収部24を通過するのを待って(S112:Yes),回収部24にバイアス電圧を印加する(S107)。この後は,このジョブの終了まで続けて回収部24での回収を行う。このようにすれば,回収部24に黒色以外のトナーが混入するおそれはほとんどなく,回収したトナーをリサイクルしても,混色等の画質低下がおきるおそれはない。これで,本処理の説明を終了する。
【0054】
なお,この図6のフローチャートに基づいて処理を行うことにより,カラー画像の形成の場合には,モードの選択にかかわらず,S101:NoによりS102にてカラー配置とされる。
【0055】
一方,モノクロ画像の形成の場合には,画質優先モードが選択されていて,モノクロ配置となっていた場合は,S104でNoであり,S105へ進んでそのまま画像形成される。モノクロ画像の形成で,画質優先モードが選択されていて,カラー配置となっていた場合は,S107でYesと判断されて,モノクロ配置に変更される。つまり,モノクロ画像の形成であり,画質優先モードが選択されていれば,それまでの配置にかかわらずモノクロ配置とされる。
【0056】
また,モノクロ画像の形成で,生産性優先モードが選択されていた場合は,その時点でモノクロ配置となっていれば,S104でNoであり,S105へ進んでそのまま画像形成される。その時点でカラー配置となっていれば,S104でYesであり,さらにS107でNoとなり,そのまま画像形成される。つまり,モノクロ画像の形成であり,生産性優先モードが選択されていれば,原則として配置の変更は行わず,その時点での配置のままとされる。
【0057】
ただし,モノクロ画像の形成で,生産性優先モードが選択されていた場合でも,カラー画像の形成後引き続いてではなく単独で行う場合には,S107においてYesと判断される。あるいは,カラー画像の形成に先だってではなく単独で行う場合にも,S107においてYesと判断される。これらの場合は,生産性優先モードが選択されていても,配置の変更が行われる。なお,引き続いてあるいは先立ってとは,画像形成部の駆動状態を維持したまま次のジョブの実行を開始することを意味する。つまり,前のジョブの処理が終了する前に次のジョブを受けた場合のことである。例えば,待機状態でモノクロジョブのみを単独で受けた場合には,配置の変更が行われる。
【0058】
なお,このように配置の切り替えを行うか否かをモードの設定に基づいて行う場合には,図6のS107〜S109を図7に示すように変更してもよい。すなわち,S104:Yesの後,先にモードの設定を判断するのである。つまり,画質優先モードに設定されているか否かを判断する(S201)。画質優先モードに設定されている場合は,モノクロ配置に設定し(S203),図6のS111へ進む。
【0059】
画質優先モードではなく,生産性優先モードに設定されている場合は(S201:No),モノクロ配置に変更するか否かを判断する。この判断は,前述のように,前後に受けたジョブの種類に基づいて行われる。モノクロ配置に変更しない場合は(S202:No),図6のS103へ進む。モノクロ配置に変更する場合は(S202:Yes),図6のS110へ進む。以後の処理は,前述した図6のフローチャートに基づいて行えばよい。
【0060】
以上詳細に説明したように,本形態の画像形成装置1によれば,モノクロ印刷であってもカラー配置での印刷時には,残留トナーを回収部24に回収しない。また,カラー印刷の直後のモノクロ配置での印刷においては,中間転写ベルト20のうち黒色以外の感光体11に接触していた範囲dがすべて通過してから,回収部24は残留トナーの回収を開始する。このようになっているので,カラー画像の形成が可能な画像形成装置であっても,混色のほとんどない黒色トナーを確実に回収してリサイクルできる。
【0061】
なお,本形態は単なる例示にすぎず,本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に,その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良,変形が可能である。
例えば,上記の形態では画像形成装置1は,カラー配置とモノクロ配置との切り替えの判断をジョブごとに行うとしたが,印刷用紙の1ページ単位で行うものとしてもよい。また,カラージョブを受けた時にモノクロ配置となっており,カラージョブの1枚目がモノクロ画像である場合には,カラー画像の形成を開始するまでモノクロ配置のままとしても良い。また,カラー配置からモノクロ配置へと切り替えられた際に,カラー配置における最終の印刷ページがモノクロ印刷であった場合には,画質優先モードであっても直ちに画像形成を開始するものとしても良い。また,上記の形態では不回収期間として,中間転写ベルト20のうちイエローの感光体11が接触していた箇所が回収部24を通過するまでの期間としているが,これに限るものではない。例えば,中間転写ベルト20が1周するのにかかる時間等の予め決めた時間としたり,配置切り替え直後の1ページ分あるいは1ジョブ分等の画像形成が終わってからとしてもよい。
【符号の説明】
【0062】
1 画像形成装置
11 感光体
20 中間転写ベルト
24 回収部
32 コントロールパネル
33 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる色のトナーによる画像形成を行う複数の感光体と,循環経路に沿って移動しつつ前記複数の感光体からトナー像の転写を受けて媒体に再転写する中間転写部材と,前記中間転写部材上に再転写後に残留しているトナーを回収する回収部とを有する画像形成装置において,
前記中間転写部材の前記循環経路の少なくとも一部を変位させることにより,
前記中間転写部材が前記複数の感光体のすべてに接触するカラー配置と,
前記中間転写部材が前記複数の感光体のうち第1色のものに接触しそれ以外のものに接触しないモノクロ配置とを切り替える配置切り替え部と,
前記カラー配置での画像形成の際には前記回収部によるトナーの回収を行わず,前記モノクロ配置での画像形成の際には前記回収部によるトナーの回収を行う回収制御部とを有し,
前記回収制御部は,モノクロ配置では,前記中間転写部材の配置がカラー配置からモノクロ配置へ切り替えられた直後のあらかじめ定めた不回収期間内には,前記回収部によるトナーの回収を行わず,前記不回収期間が経過してから前記回収部によるトナーの回収を行うものであることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像形成装置において,
前記不回収期間は,
カラー配置からモノクロ配置への切り替え時から,
前記中間転写部材における,カラー配置からモノクロ配置への切り替え直前に前記第1色以外の前記複数の感光体のうち前記中間転写部材の移動方向に最も上流のものと接触していた位置が,前記中間転写部材の移動により,前記回収部による回収位置を通過するときまでの期間であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の画像形成装置において,
前記第1色の感光体は,前記複数の感光体のうち,前記中間転写部材の移動方向に最も下流のものであり,
画質優先で画像形成を行う画質優先モードと,生産性優先で画像形成を行う生産性優先モードとのいずれか一方を選択するモード選択部と,
前記中間転写部材がカラー配置からモノクロ配置へ切り替えられた後の最初のモノクロ画像の形成開始タイミングをコントロールするモノクロ開始タイミング制御部とを有し,
前記モノクロ開始タイミング制御部は,
画質優先モードが選択されていれば,前記中間転写部材における,前記複数の感光体のうち前記中間転写部材の移動方向に最も上流のものと切り替え時に接触していた位置が,前記中間転写部材の移動により,前記第1色の感光体と接触する位置を通過してから,前記第1色の感光体から前記中間転写部材への転写が行われるタイミングで当該モノクロ画像の形成を開始させ,
生産性優先モードが選択されていれば,直ちに当該モノクロ画像の形成を開始させることを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項3に記載の画像形成装置において,
前記配置切り替え部は,
カラー画像の形成の場合にはモードの選択にかかわらずカラー配置とし,
モノクロ画像の形成の場合には,
画質優先モードが選択されていればモノクロ配置とし,
生産性優先モードが選択されていればその時点での配置のまま変更しないことを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項4に記載の画像形成装置において,前記配置切り替え部は,
モノクロ画像の形成を,カラー画像の形成後引き続いてではなく単独で行う場合には,生産性優先モードが選択されていてもモノクロ配置とすることを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項4または請求項5に記載の画像形成装置において,前記配置切り替え部は,
モノクロ画像の形成を,カラー画像の形成に先だってではなく単独で行う場合には,生産性優先モードが選択されていてもモノクロ配置とすることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−92644(P2013−92644A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−234621(P2011−234621)
【出願日】平成23年10月26日(2011.10.26)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】