説明

画像形成装置

【課題】製造コストを低減すると共にランニングコストを低減することが可能なベルト寄り補正構造を提供する。
【解決手段】その移動方向とは直交する方向の端部に寄りガイド34aを有する無端状ベルト34と、無端状ベルト34の寄りを抑制すると共に補正する寄り補正装置33を備えた画像形成装置1において、寄り補正装置33はその端部に軸方向へ移動可能な寄り補正部材91を有し、無端状ベルト34に寄りが生じている場合には、寄り補正動作時において無端状ベルト34の張力を低減させ、寄り補正部材91を寄り補正装置33の中央方向に移動させ、無端状ベルト34の中心位置と寄り補正装置33の中心位置とを合致させる構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベルトの寄りを防止するベルト寄り補正構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、感光体上に形成されたトナー像を転写する手段として、コロナ方式やローラ方式、及びベルト方式等が多く用いられている。ベルト転写装置は、モノクロ機のように感光体から転写材へ転写する直接転写ベルト装置や、カラー機のように複数色の感光体のトナー像を一度ベルト上に転写させてから再度転写材へ転写する中間転写装置等として用いられている。直接転写ベルト装置では、転写材の種類や状態に関わらず感光体からの転写材の安定した分離が期待でき、複数回の転写を容易に行うことができる。また、中間転写装置を使用したフルカラー画像形成装置は、1次転写工程を色毎に繰り返す際に転写材の種類に影響を受けずに多色画像の安定した形成が可能であり、また転写材を感光体に巻き付ける必要がないため転写材の搬送経路を直線状に構成でき、多種の転写材を使用することが可能である。
【0003】
上述したこの種のベルトは、少なくとも2本のローラに張架された状態で一定方向に走行するように構成されているが、ベルトが走行する際に蛇行や寄りがあるとベルトが破損したり画像の位置ずれが発生することで画像の色ずれ等の異常画像が発生したりする懸念があるため、ベルトの寄りを補正する必要がある。ベルトの寄りを補正する構成としては、ベルト裏面の端部にゴム等のガイドリブを設けてベルト端面を直接規制するものが既に知られており、例えば「特許文献1」には、経時的変化のない良好な寄り規制を行う目的で、ベルト状部材と接触する回転体側にベルト状部材の寄り止め部を形成する技術が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし上述の構成では、ベルトの寄り量のばらつきによりベルト端部が乗り上げたりガイドリブの剥がれやベルト端部の破損が発生したりしてしまうという問題点がある。従って、ベルトや寄り補正構造の耐久性が画像形成装置の耐久性を決定する一因ともなってしまうため、寄り補正構造ではベルトの寄りを極力抑えるために高い部品精度が必要となり、また機械的に耐久性の高いベルト材料を使用しなくてはならない制約から装置がコストアップしてしまうという問題点がある。
【0005】
本発明は上述の問題点を解決し、製造コストを低減すると共にランニングコストを低減することが可能なベルト寄り補正構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、複数のローラに張架されて走行駆動されその移動方向とは直交する方向の端部に寄りガイドを有する無端状ベルトと、前記無端状ベルトの寄りを抑制すると共に補正する寄り補正装置を備えた画像形成装置において、前記複数のローラのうちの少なくとも1つが前記寄り補正装置であると共に前記寄り補正装置はその端部に軸方向へ移動可能な寄り補正部材を有し、前記無端状ベルトに寄りが生じている場合には、寄り補正動作時において前記無端状ベルトの張力を低減させ、前記寄り補正部材を前記寄り補正装置の中央方向に移動させ、前記無端状ベルトの中心位置と前記寄り補正装置の中心位置とを合致させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、装置の小型化が実現でき低コストで高耐久性を有する画像形成装置を提供することができると共に、ガイドリブにかかる負荷を軽減でき、より高い耐久性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施形態を適用可能な画像形成装置の概略図である。
【図2】本発明の一実施形態に用いられる寄り補正装置を説明する概略図である。
【図3】本発明の一実施形態に用いられる寄り補正装置を説明する概略図である。
【図4】本発明の一実施形態におけるユニット当接時及び離間時でのベルトの状態を説明する概略図である。
【図5】本発明の一実施形態におけるユニット当接時及び離間時での寄り補正装置の状態を説明する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、本発明の一実施形態を適用可能な画像形成装置を示している。同図において画像形成装置1は、ブラックトナーを有する黒色現像ユニット501、シアントナーを有する青色現像ユニット502、マゼンタトナーを有する赤色現像ユニット503、イエロトナーを有する黄色現像ユニット504を有しており、各現像ユニット501,502,503,504はそれぞれトナーを貯容するトナーホッパ53、トナー層を形成し感光体ドラム54にトナーを供給する現像ローラ52、感光体ドラム54上をクリーニングするドラムクリーナ57、感光体ドラム54を帯電させる帯電器55、感光体ドラム54上に静電潜像を書き込む露光器56等を有している。
【0010】
装置本体のほぼ中央に設けられた用紙搬送経路8は、装置本体の下部に配設された用紙を堆積する用紙堆積手段4からピックローラ9、分離ローラ11を経て、転写ローラ30と中間転写ベルト20との間を通過して搬送ベルト81から定着器60へと至る。定着器60は、バックアップローラ64、弾性ローラ63、加熱ローラ62、定着ベルト61等を有している。定着ベルト61は弾性ローラ63と加熱ローラ62とに掛け渡され、加熱ローラ62あるいは他のローラの回転により走行駆動され、用紙はバックアップローラ64により弾性ローラ63に押し付けられる。加熱ローラ62は金属の中空シャフト内にハロゲンヒータ等の加熱手段を有し定着ベルト61を加熱する。弾性ローラ63の表面はシリコンゴム等の弾性材で形成され、バックアップローラ64の押し付けによりニップ部を弾性ローラ63側に凸とし、用紙が定着ベルト61に巻き付くことを防止する。
【0011】
画像を形成する場合、感光体ドラム54上を帯電器55で帯電させ、露光器56で画像に応じた光を当てて感光体ドラム54上の電位を落とす。露光器56としては例えばレーザ光源、カップリングレンズ、光偏光器(回転多面鏡等)、走査結像レンズやミラー等の光学系等から構成されるレーザ走査方式のもの、あるいは発光ダイオード(LED)アレイと結像光学系とを組み合わせたLED書き込み方式のもの等が用いられ、画像情報に基づいて書き込み光を照射し、その部位が感光体ドラム54の回転により現像ローラ52に達し、トナー層と接すると帯電しているトナーが画像位置に付着する。各現像ユニット501,502,503,504は、本実施形態では磁性キャリアと非磁性トナーとからなる2成分現像剤を使用しているが、トナーのみからなる1成分現像剤を使用してもよい。
【0012】
各現像ユニット501,502,503,504の下方には、各感光体ドラム54上のトナー画像が重ね合わせて転写される中間転写体としての中間転写ベルト20が配設されている。無端ベルト状の中間転写ベルト20は、ベース層、弾性層、及びコート層の3層構造を呈している。
【0013】
ベース層は、例えば伸びの少ないポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、フッ素系樹脂等により構成され伸びを防止されるか、伸びの大きなゴム材料を帆布等の伸びにくい材料に組み合わせて伸びないように構成されている。弾性層は、例えばフッ素系ゴムやアクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム等で構成され、ベース層の上に形成される。コート層は、弾性層の表面に例えばフッ素系樹脂がコーティングされることにより構成される。
【0014】
1次転写部には、中間転写ベルト20を介して感光体ドラム54に押圧すべく1次転写ローラ58を配置している。1次転写ローラ58は金属製ローラあるいは芯金に例えばEPDMやNBR、ヒドリン、ウレタンゴム等の導電性のゴム層やスポンジ層等が被覆されたローラであり、図示しない電源からトナーと同極性(例えばプラス極性)のバイアスが印加される。1次転写部はローラ形状のものの他に、導電性ブラシ形状のものや非接触のコロナチャージャ等を採用してもよい。
【0015】
各感光体ドラム54上のトナー像は1次転写ローラ58によって中間転写ベルト20上に転写され、中間転写ベルト20上にはカラートナー画像が形成される。中間転写ベルト20上にカラートナー画像は、中間転写ベルト20の走行移動により転写ローラ30の部位において搬送されてきた用紙上に2次転写される。中間転写ベルト20を介して転写ローラ30に当接するバックアップローラ31は、芯金に例えばEPDMやNBR、ヒドリン、ウレタンゴム等の導電性のゴム層やスポンジ層等が被覆されたローラであり、図示しない電源からトナーとは反対の極性(例えばマイナス極性)のバイアスが印加される。転写ローラ30は、金属ローラあるいは芯金に例えばEPDMやNBR、ヒドリン、ウレタンゴム等の導電性のゴム層やスポンジ層等が被覆されたローラであり、接地されている。カラートナー画像が転写された用紙は、搬送ベルト81によって定着器60へと送られ、熱と圧力とによってトナーが溶融定着されてフルカラー画像が形成される。
【0016】
中間転写ベルト20の下方であって用紙搬送経路8の分離ローラ11と搬送ベルト81との間に配設された2次転写ユニット部は、フロント側の側板とリア側の側板とを繋ぐフレームによって構成され、両側板に転写ローラ30、出口ローラ32、テンションローラ33がそれぞれ取り付けられ、各ローラには転写ベルト34が掛け渡されていると共に、テンションローラ33にはクリーニングユニット35が取り付けられている。2次転写ユニット部は、画像形成装置1が待機状態のときには出口ローラ32を支点として転写ローラ30とバックアップローラ31とが図示しない離間機構によって離間され、両者は画像形成動作の直前に中間転写ベルト20を介して当接して画像形成が行われる。
【0017】
トナー像転写後に転写ベルト34上に付着した転写残トナーは、クリーニングユニット35によって除去される。本実施形態で示すクリーニングユニット35は、清掃部材としてウレタン等で構成されたクリーニングブレード36を用いており、転写ベルト34の走行方向に対してカウンタ方向となるように当接させている。なお、クリーニングブレード36に代えて、清掃部材として導電性ブラシやローラを用いて静電的に回収及び除去する構成としてもよい。クリーニングユニット35は、テンションローラ33との位置精度を確保するためにテンションローラ33と一体で組み付けられている。テンションローラ33は転写ベルト34に張力を付与しているが、一体で組み付けることでクリーニングブレード36の位置精度が常に確保される。本実施形態で示すように、クリーニングブレード36により転写ベルト34をクリーニングする場合には、クリーニングブレード36の密着性が弱いとすり抜けて汚れが飛散する虞があるため、クリーニングブレード36と転写ベルト34との密着性を確保するため、クリーニングブレード36は転写ベルト34がテンションローラ33に巻き付いている箇所と対向している範囲全てに設置することが望ましい。
【0018】
次に、画像形成装置1の内部構成について説明する。画像形成装置1は、図示しない中央処理装置(CPU)、メモリ(ROM、RAM)、各種制御回路等で構成されたメイン制御部を有している。CPUはROMに格納されたプログラムに従ってRAMをワークエリアとして使用し処理を実行する。ROMにはCPUが実行するためのプログラムとCPUが使用するスタティックな情報とが格納され、RAMは上述のようにCPUのワークエリアとして機能すると共に、CPUが処理を実行するために使用されるダイナミックな情報が格納される。またメイン制御部は、画像形成装置1全体の制御を行う制御手段に対応する。
【0019】
次に、転写ベルト34について説明する。転写ベルト34は、従来からフッ素系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリイミド樹脂等が使用されてきたが、近年ではベルトの全層やベルトの一部を弾性部材とした弾性ベルトが使用されてきている。ここで、樹脂ベルトを用いたカラー画像転写には以下の課題がある。カラー画像は通常4色のトナーで形成され、1つのカラー画像には1〜4層までのトナー層が形成されている。トナー層は1次転写(感光体ドラムから中間転写ベルトへの転写)や2次転写(中間転写ベルトから転写材への転写)を通過することで圧力を受けてトナー同士の凝集力が高くなり、これにより文字の中抜けやベタ画像のエッジ抜けといった不具合現象が発生し易くなる。そして樹脂ベルトは、硬度が高くトナー層に応じて変形しないため、トナー層を圧縮させ易く文字の中抜けが発生し易くなる。また、最近はフルカラー画像を様々な用紙に形成したいという要求が高まっているが、平滑性の悪い用紙は転写時にトナーと空隙が発生し易く、転写抜けが発生し易くなる。また密着性を高めるために2次転写部の転写圧力を高めると、トナー層の凝集力を高めることとなって上述したような文字の中抜けを発生させることとなる。そこで弾性ベルトを使用し、トナー層に対しても平滑性の悪い用紙に対してもベルトを変形させ、すなわち局部的な凹凸に追従して弾性ベルトを変形させ、過度にトナー層に対して転写圧力を高めることなく、良好な密着性が得られ文字の中抜けを防止でき、平滑性や平面性の悪い用紙に対しても均一性の優れた転写画像を得ることができる。
【0020】
弾性ベルトのベース層及び弾性層に用いられる樹脂は、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリカーボネート、フッ素系樹脂(ETFE,PVDF)、ポリスチレン、クロロポリスチレン、ポリ−α−メチルスチレン、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−塩化ビニル共重合体、スチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体(スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−アクリル酸オクチル共重合体及びスチレン−アクリル酸フェニル共重合体)、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体(スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタクリル酸フェニル共重合体)、スチレン−α−クロルアクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル−アクリル酸エステル共重合体等のスチレン系樹脂(スチレンまたはスチレン置換体を含む単重合体または共重合体)、メタクリル酸メチル樹脂、メタクリル酸ブチル樹脂、アクリル酸エチル樹脂、アクリル酸ブチル樹脂、変性アクリル樹脂(シリコーン変性アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂変性アクリル樹脂、アクリル・ウレタン樹脂等)、塩化ビニル樹脂、スチレン−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ロジン変性マレイン酸樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエステルポリウレタン樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、ポリ塩化ビニリデン、アイオノマー樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ケトン樹脂、エチレン−エチルアクリレート共重合体、キシレン樹脂及びポリビニルブチラール樹脂、ポリアミド樹脂、変性ポリフェニレンオキサイド樹脂等からなる群より選ばれる1種類あるいは2種類以上を使用することができる。ただしこれ等の材料には限定されない。
【0021】
弾性層を構成する材質である弾性材ゴム、エラストマとしては、ブチルゴム、フッ素系ゴム、アクリルゴム、EPDM、NBR、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンゴム、天然ゴム、イソプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−プロピレンタポリマ、クロロプレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、ウレタンゴム、シンジオタクチック1、2−ポリブタジエン、エピクロロヒドリン系ゴム、リコーンゴム、フッ素ゴム、多硫化ゴム、ポリノルボルネンゴム、水素化ニトリルゴム、熱可塑性エラストマ(例えばポリスチレン系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリウレタン系、ポリアミド系、ポリウレア、ポリエステル系、フッ素樹脂系)等からなる群より選ばれる1種類あるいは2種類以上を使用することができる。ただしこれ等の材料には限定されない。
【0022】
ベース層及びコート層に用いられる抵抗値調節用導電剤に特に制限はないが、例えばカーボンブラック、グラファイト、アルミニウムやニッケル等の金属粉末、酸化スズ、酸化チタン、酸化アンチモン、酸化インジウム、チタン酸カリウム、酸化アンチモン−酸化スズ複合酸化物(ATO)、酸化インジウム−酸化スズ複合酸化物(ITO)等の導電性金属酸化物等が挙げられる。導電性金属酸化物は硫酸バリウム、ケイ酸マグネシウム、炭酸カルシウム等の絶縁性微粒子を被覆したものでもよく、上記導電剤には限定されない。コート層は、弾性材料による感光体への汚染防止と、転写ベルト表面への表面摩擦抵抗を低減させてトナーの付着力を小さくしてクリーニング性及び2次転写性を高めるものが要求され、例えばポリウレタン、ポリエステル、エポキシ樹脂等の1種類あるいは2種類以上を使用し、表面エネルギを小さくして潤滑性を高める材料、例えばフッ素樹脂、フッ素化合物、フッ化炭素、二酸化チタン、シリコンカーバイト等の粉体、粒子を1種類あるいは2種類以上または粒径を異ならせたものを分散させて使用することができる。また、フッ素系ゴム材料のように熱処理を行うことで表面にフッ素リッチな層を形成させ、表面エネルギを小さくさせたものを使用することもできる。
【0023】
ベルトの製造方法は、回転する円筒形の型に材料を流し込みベルトを形成する遠心成型法、液体塗料を噴霧し膜を形成させるスプレイ塗工法、円筒形の型を材料の溶液の中に浸漬して引き上げるディッピング法、内型や外型の中に注入する注型法、円筒形の型にコンパウンドを巻き付けて加硫研磨を行う方法等があるが、これ等に限定されるものではなく、特に積層ベルト成型は複数の製法を組み合わせてベルトを製造することが一般的である。弾性ベルトの伸びを防止する方法として、ベース層に伸びの少ない芯体樹脂を用いた上でゴム層を形成する方法、ベース層に伸びを防止する材料を入れる方法等があるが、特に製法に関わるものではない。伸びを防止するベース層を構成する材料は、例えば綿、絹等の天然繊維、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維、ポリオレフィン繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリ塩化ビニル繊維、ポリ塩化ビニリデン繊維、ポリウレタン繊維、ポリアセタール繊維、ポリフロロエチレン繊維、フェノール繊維等の合成繊維、炭素繊維、ガラス繊維、ボロン繊維等の無機繊維、鉄繊維、銅繊維等の金属繊維からなる群より選ばれる1種類あるいは2種類以上を用い、織布状あるいは糸状のものが挙げられ、もちろんこれ等の材料には限定されない。糸は1本または複数のフィラメントを撚ったもの、片撚糸、諸撚糸、双糸等、どのような撚り方であってもよい。また、例えば上記材料群から選択された材質の繊維を混紡してもよく、もちろん糸に適当な導電処理を施して使用してもよい。一方織布は、メリヤス織り等、どのような織り方の織布でも使用可能であり、もちろん交織した織布も使用可能であり当然導電処理を施すこともできる。
【0024】
ベース層を設ける製造方法は、特に限定されるものではなく例えば筒状に織った織布を金型等に被せてその上に被覆層を設ける方法、筒状に織った織布を液状ゴム等に浸漬してベース層の片面あるいは両面に被覆層を設ける方法、糸を金型等に任意のピッチで螺旋状に巻き付け、その上に被覆層を設ける方法等が挙げられる。弾性層の厚さは、弾性層の硬度にもよるが厚すぎると表面の伸縮が大きくなり表面に亀裂が発生し易くなる。また、伸縮量が大きくなることから画像に生じる伸び縮みが大きくなり、その厚みが厚すぎることは好ましくない(およそ1mm以上)。
【0025】
弾性層の硬度の適正範囲は、10°≦HS≦65°(JIS−A)であり、ベルトの層厚によって最適硬度の調整は必要となる。硬度10°(JIS−A)未満のものは寸法精度がよく成形することが非常に困難である。これは、成形時に収縮・膨張を受け易いことに起因する。また、軟らかくする場合には基材へオイル成分を含有させることが一般的な方法であるが、加圧状態で連続作動させるとオイル成分が滲み出してくるという問題点がある。これにより中間転写体表面に接触する感光体を汚染し、横帯状ムラを発生させることが判明した。一般的に離型性向上のためにコート層を設けているが、完全に染み出し防止効果を与えるためには、コート層は耐久品質等の要求品質の高いものとなり、材料の選定や特性等の確保が困難となる。これに対して硬度65°(JIS−A)を超えるものは硬度が向上した分精度よく成形できることと、オイルの含有量を含まないあるいは少なく抑えることが可能となるため、感光体に対する汚染性は低減できるが、文字の中抜け等の転写性改善効果が得られなくなり、ローラへの張架も困難となる。
【0026】
次に、走行時における寄りを防止するためのガイドリブを設けたベルトにおいては複数の構成が用いられる。ベルトとガイドリブとが同一素材の場合には、型からの離型性を考慮して一方のみを一体で作製し、他方は同一素材で別体製作して貼り付ける構成や、ガイドリブとベルトとを全く別体で作製して後で取り付ける構成もある。ベルトとガイドリブとが異なる材質である場合には、それぞれの製作後に組み付けて一体化する。別体の利点は、ガイドリブとしてベルト寄り力に対して耐久性のある材質を選択することが可能となる。また、高温に達する部位では、より耐熱性の高い材質を選択することが可能である。
【0027】
図1に示す画像形成装置1において、転写ベルト34の長手方向への寄りを補正しようとする場合には、出口ローラ32とテンションローラ33との間に補正ローラを別途設けることが最も容易にベルトの寄りを補正する方法であるが、ベルトの寄りを効率よく補正する場合には、ローラに対してある程度のベルト巻き付け量が必要となるため、補正ローラを各ローラ32,33間に設ける場合には、ローラよりも上方あるいは下方に補正ローラを設け、ベルトを補正ローラに押し付ける構成とする必要がある。ベルト巻き付け量が小さいローラに対して補正構造を設けると、補正部材に対してベルトの剛性がないためにベルトが変形するだけとなってしまう。そこで、装置の小型化のため、転写ベルト34の表面側に補正ローラを当接させて各ローラ32,33を結んだ線よりも下方に補正ローラを設ける構成とすると補正ローラに残トナーが付着してトナー汚れが発生してしまうために現実的ではない。従って本発明では、補正ローラを設けることなく、従来から使用されている従動ローラの1つを補正ローラとして構成する。
【0028】
次に、図2を用いて本発明の主要構成である寄り補正装置の具体例を説明する。図2に示す構成では、寄り補正装置であるテンションローラ33に転写ベルト34が張架されており、テンションローラ33には転写ベルト34に設けられたガイドリブ34aを受けるスリーブ部材90が設けられている。図2では、転写ベルト34が右方から左方に向かって寄りながら走行駆動され、ガイドリブ34aがスリーブ部材90に当接しながら走行している。テンションローラ33の軸方向両端部には寄り補正部材である補正変位部材91が取り付けられている。補正変位部材91は圧縮ばねからなる弾性体92を介して配置されており、画像形成動作中等のベルト走行時には転写ベルト34の端部から一定の距離をおいて離間されている。弾性体92は、本実施形態では圧縮ばねを用いたが、その他の様々な公知の弾性体を使用することが可能である。
【0029】
次に、本発明の寄り補正装置の動作について説明する。先ず、転写ベルト34が走行していない状態では、補正変位部材91は図3に示すように転写ベルト34の端部を押し付けながらテンションローラ33の位置を揃える状態で保持されている。次に転写ベルト34が走行を開始するタイミングと同期して、転写ベルト34に対して補正変位部材91を押し付ける力を解放すると、弾性体92の力で補正変位部材91が転写ベルト34の端部から離れて位置が保持される。転写ベルト34は走行を続けると左右どちらか一方に寄り始め、ガイドリブ34aとスリーブ部材90とで寄りを補正する。
【0030】
次に、上記実施形態における2次転写ベルトユニットの構成について説明する。図4はベルトユニットの当接時及び離間時の状態を示しており、印刷時には転写ローラ30がバックアップローラ31に当接して上流側の転写ベルト34上のトナー像を転写材に転写させる。トナーが転写された転写材は転写ベルト34によって搬送され、出口ローラ32の下流側に設けられた定着部に送られる。テンションローラ33はスプリングによって加圧方向に押し出されることで転写ベルト34に張力を付与している。
【0031】
次に、2次転写ベルトユニットのベルトテンション低減動作について説明する。ベルトテンション低減動作はユニットの離間時に行われ、離間時には出口ローラ32を支点にユニット全体が回転して転写ローラ30がバックアップローラ31から離間する。このとき、テンションローラ33が装置本体に設けられた突き当て部材93に接触し、さらに離間量が大きくなるに連れてテンションローラ33がベルトテンション加圧方向とは逆方向に押し付けられてベルトテンションが低減される。
【0032】
次に、本実施形態のベルト寄り補正について説明する。図5に示すように、ベルトユニット当接時には転写ベルト34はスリーブ部材90に突き当たり寄りが補正された状態で走行している。ベルト走行停止前には2次転写ユニットが離間され、その際にテンションローラ33は突き当て部材93により押し戻され、ベルトテンションが低減される。同時に補正変位部材91は突き当て部材93に当接して移動し、転写ベルト34の端部を押圧して初期位置へと戻す方向に作用する。走行開始前には、走行停止前の動作の逆手順で転写ベルト34の寄りを補正しながら当接動作を行う。
【0033】
上述の構成によれば、ベルト裏面の端部にガイドリブを設けてベルト端面を直接規制しているので、寄り補正用のステアリングローラ、これを駆動させる駆動系、ステアリング量を制御するセンサ類、ベルト位置を把握する検出センサ類等が不要となり、装置の小型化が実現でき低コストで高耐久性を有する画像形成装置を提供することができる。また、ガイドリブを設けてベルトを直接規制する方式ではガイドリブに加わる負荷が耐久性の課題となるが、上記構成によりガイドリブにかかる負荷を軽減でき、より高い耐久性を確保することができる。
【0034】
上記実施形態では、本発明の寄り補正装置を転写ベルト34に適用した例を示したが、本発明の寄り補正装置が適用可能な部材は転写ベルト34には限られず、中間転写ベルト20や定着ベルト61に本発明の寄り補正装置を適用しても同様の作用効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0035】
1 画像形成装置
20 中間転写ベルト
33 寄り補正装置(テンションローラ)
34 無端状ベルト(転写ベルト)
34a 寄りガイド(ガイドリブ)
61 定着ベルト
91 寄り補正部材(補正変位部材)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0036】
【特許文献1】特開2001−183911号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のローラに張架されて走行駆動されその移動方向とは直交する方向の端部に寄りガイドを有する無端状ベルトと、前記無端状ベルトの寄りを抑制すると共に補正する寄り補正装置を備えた画像形成装置において、
前記複数のローラのうちの少なくとも1つが前記寄り補正装置であると共に前記寄り補正装置はその端部に軸方向へ移動可能な寄り補正部材を有し、前記無端状ベルトに寄りが生じている場合には、寄り補正動作時において前記無端状ベルトの張力を低減させ、前記寄り補正部材を前記寄り補正装置の中央方向に移動させ、前記無端状ベルトの中心位置と前記寄り補正装置の中心位置とを合致させることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1記載の画像形成装置において、
前記寄り補正装置は駆動ローラを除く前記複数のローラのうち最も前記無端状ベルトの巻き付け長さが大きなローラであることを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の画像形成装置において、
前記寄り補正動作は前記無端状ベルトの走行停止前または走行開始直後に行うことを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項1ないし3の何れか1つに記載の画像形成装置において、
前記無端状ベルトが中間転写ベルトであることを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項1ないし4の何れか1つに記載の画像形成装置において、
前記無端状ベルトが2次転写ベルトであることを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項1ないし5の何れか1つに記載の画像形成装置において、
前記無端状ベルトが定着ベルトであることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−92738(P2013−92738A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−236223(P2011−236223)
【出願日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】