画像形成装置
【課題】実際のインク吐出量との誤差が少なく、環境条件を考慮したより正確なインク消費量を算出可能な画像形成装置を提供する。
【解決手段】記録ヘッドと、画像データ受付手段と、駆動信号生成手段と、駆動信号に基づいて前記記録ヘッドから吐出されるインクの量を検出する吐出滴量検出手段と、吐出滴量を積算してインク吐出量を検出するインク吐出量検出手段と、前記画像データに基づいて画像情報を生成する画像情報生成手段と、前記画像情報に基づいて画像形成に必要なインク使用量を算出するインク使用量計算手段とを備える画像形成装置であって、
前記記録ヘッドの周囲の環境条件を検知する環境条件検知手段を備え、前記インク使用量計算手段が、前記環境検知手段により検知した環境条件に応じてインク使用量を補正して算出し、算出されたインク使用量が、検出されたインク吐出量と近似した値となる画像形成装置である。
【解決手段】記録ヘッドと、画像データ受付手段と、駆動信号生成手段と、駆動信号に基づいて前記記録ヘッドから吐出されるインクの量を検出する吐出滴量検出手段と、吐出滴量を積算してインク吐出量を検出するインク吐出量検出手段と、前記画像データに基づいて画像情報を生成する画像情報生成手段と、前記画像情報に基づいて画像形成に必要なインク使用量を算出するインク使用量計算手段とを備える画像形成装置であって、
前記記録ヘッドの周囲の環境条件を検知する環境条件検知手段を備え、前記インク使用量計算手段が、前記環境検知手段により検知した環境条件に応じてインク使用量を補正して算出し、算出されたインク使用量が、検出されたインク吐出量と近似した値となる画像形成装置である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関し、詳しくはインクジェット方式によって画像を形成する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、ファクシミリ、複写装置、及びこれらの複合機等の画像形成装置として、例えば、記録液(液体)の液滴を吐出する液体吐出ヘッドで構成した記録ヘッドを含む液体吐出装置を用いて、媒体(以下「用紙」ともいうが材質を限定するものではなく、また、被記録媒体、記録媒体、転写材、記録紙なども同義で使用する。)を搬送しながら、液体としての記録液(以下、単に「インク」という。)を用紙に付着させて画像形成(記録、印刷、印写、印字も同義語で用いる。)を行なうものがある。
【0003】
画像形成装置とは、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、及びセラミックス等の媒体にインクを吐出して画像形成を行う装置を意味し、また、「画像形成」とは、文字や図形等の意味を持つ画像を媒体に対して付与することだけでなく、パターン等の意味を持たない画像を媒体に付与することをも意味する。また、インクとは、上記画像形成を行うことができる液体であれば特に限定されるものではない。
【0004】
このようなインク液滴を吐出して被記録媒体上に着弾させることにより画像を形成するインクジェット方式の画像形成装置(インクジェットプリンタ)において、用いられるインクは、インクカートリッジに収容されている。該インクカートリッジは、インクジェットヘッドに備えられた各色ごとのホルダに対応して装着され、インクカートリッジ内のインクが無くなった場合には、インクが充填された新たなインクカートリッジに交換することにより印刷を行うことができる。
【0005】
使用したインク量(インク消費量、インク使用量)を見積もることにより、例えば、インクカートリッジの交換タイミングが分かる。すなわち、未使用のインクカートリッジ容量が分かり、インク使用量が見積もれれば、インクカートリッジ内のインク残量を見積もることができ、無くなる前に、ユーザに交換が必要なタイミングを通知することもできる。
【0006】
一方、サブタンク(ヘッドタンク)方式の画像形成装置の場合、ヘッドに配置されているサブタンクのインクを使用して印刷等を行うので、定期的にインクカートリッジのインクをサブタンクに供給する必要がある。インク使用量を見積もることができれば、サブタンクへインク補充供給が必要なタイミングを正確に把握でき、タンクが空になる前にインクの補充供給を自動的に行うことができる。
【0007】
このように、インクカートリッジの残量を把握するためにインク消費量を見積もることが必要とされており、印刷データからインク消費量を算出する技術や、記録ヘッドを駆動させる制御波形からインク消費量を算出する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0008】
特許文献1には、インク消費量を正確に検出する目的で、記録ヘッドを駆動させる駆動信号に基づいて吐出滴量を検出し、これを積算してインク消費量を検出する手段と、画像情報に基づいて画像形成に必要なインク消費量を算出する手段とを備えた画像形成装置が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、画像情報に基づくインク使用量の算出は、画像処理段階における計算値であるため、実際にノズルから吐出されたインク量との間に誤差が発生する場合がある。例えば、温度や湿度等の環境条件によりインクの粘度等の物性変化が生じれば、これに伴う吐出特性の変化が生じ、インクの吐出量が変化する。
そこで、実際のインク消費量と誤差を少なくするために、環境条件を考慮して、より正確にインク消費量を算出し、インクカートリッジの正確なインク残量が把握することが求められる。
【0010】
よって、本発明は上記課題に鑑みてなされたものであって、実際のインク吐出量との誤差が少なく、環境条件を考慮したより正確なインク消費量を算出可能な画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明に係る画像形成装置は、
インクの液滴を吐出する記録ヘッドと、
画像データを受付ける画像データ受付手段と、
前記記録ヘッドを駆動する駆動信号を発生する駆動信号生成手段と、
前記駆動信号生成手段からの駆動信号に基づいて前記記録ヘッドから吐出されるインクの量を検出する吐出滴量検出手段と、
前記吐出滴量検出手段で検出された吐出滴量を積算してインク吐出量を検出するインク吐出量検出手段と、
前記画像データに基づいて画像情報を生成する画像情報生成手段と、
前記画像情報に基づいて画像形成に必要なインク使用量を算出するインク使用量計算手段とを備える画像形成装置であって、
前記記録ヘッドの周囲の環境条件を検知する環境条件検知手段を備え、
前記インク使用量計算手段が、前記環境検知手段により検知した環境条件に応じてインク使用量を補正して算出し、
前記インク使用量計算手段により算出されたインク使用量が、前記インク吐出量検出手段により検出されたインク吐出量と近似した値となることを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、実際のインク消費量との誤差が少なく、環境条件を考慮したより正確なインク消費量を算出可能な画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る画像形成装置の機構部の全体構成の一実施態様を説明する側面概略構成図である。
【図2】本発明に係る画像形成装置の機構部の一実施態様の要部平面説明図である。
【図3】インクカートリッジの一例を示す斜視説明図である。
【図4】インクカートリッジの一例を示す側面説明図である。
【図5】同装置の制御部を説明する概略ブロック説明図である。
【図6】プリンタドライバ又は画像形成装置の主制御部内に構成される制御機能の一例を説明するブロック図である。
【図7】図6の機能ブロック図における印写画像データ生成部の機能の一例を説明するブロック図である。
【図8】(A)は画像データの一例を、(B)は印写画像データの一例をそれぞれ模式的に示す説明図である。
【図9】インク使用量計算処理を説明するフロー図である。
【図10】第1の実施態様におけるインク使用量算出を説明するフロー図である。
【図11】第2の実施態様におけるインク使用量算出を説明するフロー図である。
【図12】第3の実施態様におけるインク使用量算出を説明するフロー図である。
【図13】第4の実施態様におけるインク使用量算出を説明するフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る画像形成装置について図面を参照して説明する。なお、本発明は以下に示す実施例の実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、修正、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【0015】
図1は本発明に係る画像形成装置の全体構成を説明する側面説明図であり、図2は要部平面説明図である。
この画像形成装置はシリアル型インクジェット記録装置であり、装置本体1の左右の側板21A、21Bに横架したガイド部材である主従のガイドロッド31、32でキャリッジ33を主走査方向に摺動自在に保持し、図示しない主走査モータによってタイミングベルトを介して図2で矢示で示すキャリッジ主走査方向に移動走査する。
【0016】
キャリッジ33には、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の各色のインク滴を吐出するための液体吐出ヘッドからなる記録ヘッド34a、34b(区別しないときは「記録ヘッド34」という。)を複数のノズルからなるノズル列を主走査方向と直交する副走査方向に配列し、インク滴吐出方向を下方に向けて装着している。
【0017】
記録ヘッド34は、それぞれ2つのノズル列を有し、記録ヘッド34aの一方のノズル列はブラック(K)の液滴を、他方のノズル列はシアン(C)の液滴を、記録ヘッド34bの一方のノズル列はマゼンタ(M)の液滴を、他方のノズル列はイエロー(Y)の液滴を、それぞれ吐出する。
【0018】
また、キャリッジ33には、記録ヘッド34のノズル列に対応して各色のインクを供給するための第2インク供給部であるサブタンク35a、35b(区別しないときは「サブタンク35」という。)を搭載している。このサブタンク35には、カートリッジ装填部4に着脱自在に装着される各色の第1インク供給部であるインクカートリッジ10y、10m、10c、10kから、供給ポンプユニット5によって各色の供給チューブ36を介して、各色の記録液が補充供給される。
【0019】
また、キャリッジ33には、記録ヘッド34のノズル列に対応して各色のインクを供給するための第2インク供給部であるサブタンク35a、35b(区別しないときは「サブタンク35」という。)を搭載している。このサブタンク35には、カートリッジ装填部4に着脱自在に装着される各色の第1インク供給部であるインクカートリッジ10y、10m、10c、10kから、供給ポンプユニット5によって各色の供給チューブ36を介して、各色の記録液が補充供給される。
【0020】
一方、給紙トレイ2の用紙積載部(圧板)41上に積載した用紙42を給紙するための給紙部として、用紙積載部41から用紙42を1枚ずつ分離給送する半月コロ(給紙コロ)43及び給紙コロ43に対向し、摩擦係数の大きな材質からなる分離パッド44を備え、この分離パッド44は給紙コロ43側に付勢されている。
【0021】
そして、この給紙部から給紙された用紙42を記録ヘッド34の下方側に送り込むために、用紙42を案内するガイド部材45と、カウンタローラ46と、搬送ガイド部材47と、先端加圧コロ49を有する押さえ部材48とを備えるとともに、給送された用紙42を静電吸着して記録ヘッド34に対向する位置で搬送するための搬送手段である搬送ベルト51を備えている。
【0022】
この搬送ベルト51は、無端状ベルトであり、搬送ローラ52とテンションローラ53との間に掛け渡されて、ベルト搬送方向(副走査方向)に周回するように構成している。また、この搬送ベルト51の表面を帯電させるための帯電手段である帯電ローラ56を備えている。この帯電ローラ56は、搬送ベルト51の表層に接触し、搬送ベルト51の回動に従動して回転するように配置されている。この搬送ベルト51は、図示しない副走査モータによってタイミングを介して搬送ローラ52が回転駆動されることによって図2のベルト搬送方向に周回移動する。
【0023】
記録ヘッド34で記録された用紙42を排紙するための排紙部として、搬送ベルト51から用紙42を分離するための分離爪61と、排紙ローラ62及び排紙コロである拍車63とを備え、排紙ローラ62の下方に排紙トレイ3を備えている。
【0024】
また、装置本体1の背面部には両面ユニット71が着脱自在に装着されている。この両面ユニット71は搬送ベルト51の逆方向回転で戻される用紙42を取り込んで反転させて再度カウンタローラ46と搬送ベルト51との間に給紙する。また、この両面ユニット71の上面は手差しトレイ72としている。
【0025】
さらに、図2に示すように、キャリッジ33の走査方向一方側の非印字領域には、記録ヘッド34のノズルの状態を維持し、回復するための維持回復機構81を配置している。この維持回復機構81には、記録ヘッド34の各ノズル面をキャピングするための各キャップ部材(以下「キャップ」という。)82a、82b(区別しないときは「キャップ82」という。)と、ノズル面をワイピングするためのワイパ部材(ワイパブレード)83と、増粘した記録液を排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行うときの液滴を受ける空吐出受け84と、この空吐出受け84に一体形成され、ワイパブレード83に付着したインクを除去するための清掃部材であるワイパクリーナ部85と、ワイパブレード83のクリーニング時にワイパブレード83をワイパクリーナ85側に押し付けるワイパクリーナ86と、キャリッジ22をロックするキャリッジロック87などとを備えている。また、このヘッドの維持回復機構81の下方側には維持回復動作によって生じる廃液を収容するための廃液タンク100が装置本体に対して交換可能に装着される。
【0026】
図2に示すように、キャリッジ33の走査方向他方側の非印字領域には、記録中などに増粘した記録液を排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行うときの液滴を受ける空吐出受け88を配置し、この空吐出受け88には記録ヘッド34のノズル列方向に沿った開口部89などを備えている。
【0027】
このように構成したこの画像形成装置においては、給紙トレイ2から用紙42が1枚ずつ分離給紙され、略鉛直上方に給紙された用紙42はガイド45で案内され、搬送ベルト51とカウンタローラ46との間に挟まれて搬送され、更に先端を搬送ガイド37で案内されて先端加圧コロ49で搬送ベルト51に押し付けられ、略90°搬送方向を転換される。
【0028】
このとき、帯電ローラ56に対してプラス出力とマイナス出力とが交互に繰り返すように、つまり交番する電圧が印加され、搬送ベルト51が交番する帯電電圧パターン、すなわち、周回方向である副走査方向に、プラスとマイナスが所定の幅で帯状に交互に帯電されたものとなる。このプラス、マイナス交互に帯電した搬送ベルト51上に用紙42が給送されると、用紙42が搬送ベルト51に吸着され、搬送ベルト51の周回移動によって用紙42が副走査方向に搬送される。
【0029】
そこで、キャリッジ33を移動させながら画像信号に応じて記録ヘッド34を駆動することにより、停止している用紙42にインク滴を吐出して1行分を記録し、用紙42を所定量搬送後、次の行の記録を行う。記録終了信号又は用紙42の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了して、用紙42を排紙トレイ3に排紙する。
【0030】
そして、記録ヘッド34のノズルの維持回復を行うときには、キャリッジ33をホーム位置である維持回復機構81に対向する位置に移動して、キャップ部材82によるキャッピングを行ってノズルからの吸引を行うノズル吸引、画像形成に寄与しない液滴を吐出する空吐出などの維持回復動作を行うことにより、安定した液滴吐出による画像形成を行うことができる。
【0031】
次に、インクカートリッジ10の一例について図3及び図4を参照して説明する。
このインクカートリッジ10は、カートリッジケース(筺体)102内にインクを収容した記録液収容手段であるインク袋103を収納したものである。このカートリッジケース102は、分解及び組立て可能に2分割された第1ケース(ベース)121と第2ケース(ケース)122とで構成されている。
そして、カートリッジケース102には内部に収納したインク袋103のインク供給口部131に対応して開口部123を形成している。
【0032】
このインクカートリッジ10をカートリッジ装填部4に装着したときに、カートリッジ装着部4の奥側に設けた中空針がインク袋103の供給口部131内に刺通されて、インク袋103内部と供給ポンプユニット24とが連通状態となり、インク袋103内のインクを装置本体1側に供給可能になる。
【0033】
また、このインクカートリッジ10の前面側上部には、EEPROMなどからなる書替え可能な記憶素子(記憶手段)である不揮発性メモリ130を設けている。この不揮発性メモリ130には、インクカートリッジ10に関する情報、例えば、インク色、インク種、使用期限、ID番号、純正情報、再充填回数、インク残量などに関する固有の情報を記憶されるとともに、バージョン情報(Ver情報)や画像形成装置本体側の制御プログラムの更新プログラムなどが記憶される。
【0034】
そして、このインクカートリッジ10をカートリッジ装填部4に装着することで、装置本体側の電極と電気的に接続されて、不揮発性メモリ130に記憶されている情報が装置本体側に読み出し可能となり、また、装置本体側から不揮発性メモリ130に対する書き込みが可能となる。
【0035】
本発明の画像形成装置の制御部の概要について図5を参照して説明する。図5は、制御部の全体ブロック図の一例である。
本発明の画像形成装置は、制御部に、画像データを受付ける画像データ受付手段と、前記記録ヘッドを駆動する駆動信号を発生する駆動信号生成手段と、前記駆動信号生成手段からの駆動信号に基づいて前記記録ヘッドから吐出されるインクの量を検出する吐出滴量検出手段と、前記吐出滴量検出手段で検出された吐出滴量を積算してインク吐出量を検出するインク吐出量検出手段と、前記画像データに基づいて画像情報を生成する画像情報生成手段と、前記画像情報に基づいて画像形成に必要なインク使用量を算出するインク使用量計算手段と、さらに前記記録ヘッドの周囲の環境条件を検知する環境条件検知手段を備える。そして、制御をする手段などを兼ねたマイクロコンピュータなどで構成した主制御部301及び印刷制御を司るマイクロコンピュータで構成した印刷制御部302とを備えている。
【0036】
該制御部の前記画像受付手段は、情報処理装置400から通信回路300を介して画像データを受け取る。
情報処理装置400は、アプリケーション401を通してユーザより印刷命令があった場合、OS(例えばGDI:Graphic Device Interface)402が画像形成装置で出力する画像データをプリンタドライバ403に伝達する。
プリンタドライバ403は、アプリケーション401から伝達された画像データを、画像形成装置本体が処理できる形式の印写画像データに変換して、通信回路300を経由して画像形成装置に入力する。
【0037】
主制御部301は、通信回路300から入力される印写画像データに基づいて用紙42に画像を形成するために、前述したように、キャリッジ33を移動走査する主走査モータ331や搬送ローラ52を回転駆動する副走査モータ332を主走査モータ駆動回路303及び副走査モータ駆動回路304を介して駆動制御するとともに、印刷制御部302に対して印刷用データを送出するなどの制御を行う。
【0038】
主制御部301には、キャリッジ33の位置を検出するキャリッジ位置検出回路305からの検出信号が入力され、主制御部301はこの検出信号に基づいてキャリッジ33の移動位置及び移動速度を制御する。キャリッジ位置検出回路305は、例えば、キャリッジ33の走査方向に配置されたエンコーダシートのスリット数を、キャリッジ33に搭載されたフォトセンサで読み取って計数することで、キャリッジ33の位置を検出する。
主走査モータ駆動回路303は、主制御部301から入力されるキャリッジ移動量に応じて主走査モータ331を回転駆動させて、キャリッジ33を所定の位置に所定の速度で移動させる。
【0039】
主制御部301には搬送ベルト51の移動量を検出する搬送量検出回路306からの検出信号が入力され、主制御部301はこの検出信号に基づいて搬送ベルト51の移動量及び移動速度を制御する。搬送量検出回路306は、例えば、搬送ローラ52の回転軸に取り付けられた回転エンコーダシートのスリット数を、フォトセンサで読み取って計数することで搬送量を検出する。副走査モータ駆動回路304は、主制御部301から入力される搬送量に応じて副走査モータ332を回転駆動させて、搬送ローラ52を回転駆動して搬送ベルト51を所定の位置に所定の速度で移動させる。
【0040】
主制御部301は、給紙コロ駆動回路308に給紙コロ駆動指令を与えることによって給紙コロ43を一回転させる。主制御部301は、維持回復機構駆動用モータ駆動回路311を介してモータ231を回転駆動することにより、キャップ82の昇降、ワイパブレード83の昇降などを行なわせる。
【0041】
主制御部301は、インク供給モータ駆動回路312を介して供給ユニット24のポンプを駆動するためのインク供給モータ333を駆動制御し、カートリッジ装填部4に装填されたインクカートリッジ10からサブタンク35に対してインクを補充供給する。
【0042】
主制御部301には、サブタンク35が満タン状態にあることを検知するサブタンク満タンセンサ313からの検知信号、カートリッジ装填部4の前カバーの開閉を検知するカートリッジカバーセンサ314からの検知信号などが入力される。
【0043】
また、主制御部301は、カートリッジ通信回路を通じて、カートリッジ装填部4に装着された各インクカートリッジ10に設けられる記憶手段である不揮発性メモリ130に記憶されている情報を取り込んで、所要の処理を行なって、主制御部301内に有する本体記憶手段である不揮発性メモリ(例えば、EEPROM)に格納保持する。
【0044】
印刷制御部302は、主制御部301からの信号とキャリッジ位置検出回路305及び搬送量検出回路306などからのキャリッジ位置や搬送量に基づいて、記録ヘッド34の液滴を吐出させるための圧力発生手段を駆動するためのデータを生成して、ヘッド駆動回路310に与える。
【0045】
さらに、主制御部301は、環境条件検知手段により記録ヘッド34の周囲の環境条件を検知することができる。図5では、環境条件検知手段として温度センサ316及び湿度センサ317を備え、温度センサ316により画像形成装置内の温度を取得することができ、湿度センサ317により画像形成装置内の湿度を取得することができる。
【0046】
ヘッド駆動回路310は、印刷制御部302からの印刷データに基づいて記録ヘッド34の圧力発生手段(ピエゾ型ヘッドであれば圧電素子)を駆動して、所要のノズルから液滴を吐出させる。
【0047】
主制御部301は、指定用紙サイズ検出手段である紙サイズセンサ321から通紙中の用紙42の大きさを検出し、入力された画像データが当該用紙42上に配置可能かどうか、また用紙42外に画像データがある場合に、画像データをトリミングして描画するように印刷制御部302に設定することができる。
【0048】
図6に、ホストPC(情報処理装置400)内のプリンタドライバ403又は画像形成装置の主制御部301内に構成される制御機能を説明する機能ブロック図を示す。
ここでは、印写画像データ生成部501のみがプリンタドライバ403内で実現され、その他は画像形成装置本体内で実現されるものとする。
【0049】
アプリケーション401を通してユーザより印刷命令があった場合、OS(GDI)402は印刷対象となる画像データをプリンタドライバ403に伝達する。伝達された画像データはプリンタドライバ403内で処理されるが、このとき画像データは印写画像データ生成部501において、画像形成装置で処理可能な形成期のデータである印写画像データ(画像情報)に変換される。
【0050】
印写画像データは、前記通信回路300を経由して、主制御部301で受付けられ(主制御部301が画像情報受付手段を構成する。)、主制御部301で構成されるインク使用量検出手段であるインク使用量計算部512に入力され、インク使用量計算部512では印写画像データに含まれる画素数の情報や画素の大きさの情報を基にインク使用量を算出する。
【0051】
また、印写画像データは、記録ヘッド34の圧力発生手段を駆動するヘッド駆動信号を生成するヘッド駆動信号生成部502に入力され、印写画像データに含まれているヘッド駆動信号の生成回数及び生成される信号の個々の強さ(液滴の大きさ)に関する情報を画像信号として前記吐出滴量検出手段及びインク吐出量検出手段であるインク使用量計算部512に入力する。インク吐出量検出部511では、ヘッド駆動信号の生成回数及び強さを元に、記録ヘッド34から吐出されるインク滴の量を検出して、検出したインク量を積算することでインク吐出量を算出する。
【0052】
前記インク使用量計算手段であるによりインク使用量計算部512算出されたインク使用量が、前記インク吐出量検出手段であるインク吐出量検出部511により検出されたインク吐出量と近似した値、好ましくは同値となるように算出される。
【0053】
例えば、比較演算部513で、前記インク使用量と前記インク吐出量を比較することで、最終的に算出されるインク消費量を得ることができ、算出された前記インク消費量により、インクカートリッジ10内のインク残量を算出することができる。
本発明の画像形成装置においては、カートリッジ10内のインク残量を記憶する記憶手段と、インク消費量に基づいて前記カートリッジ内のインク残量を算出するインク残量算出手段(図示せず)とを備え、前記インク使用量計算手段により算出されたインク使用量を前記インク消費量として、カートリッジ10内のインク残量を算出することができる。
【0054】
ここで、印写画像データ生成部501はプリンタドライバ403内で実現されるように構成されているが、画像形成装置本体内で実現することも可能である。この場合、プリンタドライバ403は、アプリケーション401からの画像データを、直接通信回路300を経由して画像形成装置本体に入力することになる。そして、画像形成装置内の印写画像データ生成部501によって印写画像データを生成することになる。この場合、主制御部301で構成される印写画像データ生成部501が画像データを受付ける画像データ受付手段と、画像データに基づいて画像情報を生成する画像情報生成手段を構成することになる。
【0055】
次に、印写画像データ生成部501の詳細について図7を参照して説明する。なお、図7はホスト400内のプリンタドライバ403又は画像形成装置の主制御部301で構成される制御機能の機能ブロック図である。
ここでは印写画像データ生成部501はプリンタドライバ403内で実現されるものとする。アプリケーション401からOS(GDI)402を経由しプリンタドライバ403に画像データが入力されると、まず、画素分解部521によって画像形成装置で形成するドットの並び(画素)に画像データを分解する。これを、スキャンバンド分割部522によってキャリッジが1走査する(スキャンする)単位に更に分解し、更にそれをノズル列毎の画像データ作成部523によって記録ヘッド34のインク吐出ノズルの並びにあわせて画素データを作成する。このときに、画素数及び画素の大きさ集計部524によってスキャンバンド毎の画素数及び画素の大きさを集計する。印写画像データは、この画素データと画素数、画素の大きさの度数分布を合わせて1つのデータとして出力する。
【0056】
各信号について説明する。
先ず、「画像データ」とは、図8(A)に示すように、ホスト(情報処理装置)400のアプリケーション401等で作成されるもので、ホスト400のOS402等で処理可能なデータ形式をとる。描画オブジェクトの位置や形、色などの情報が含まれている。
「印写画像データ」とは、図8(B)に示すように、前記画像データをプリンタドライバ403で変換して、インクジェット記録装置で処理可能なデータ形式にしたものである。インクジェット記録装置の処理系に合わせたデータ形式となっており、前記画像データを、キャリッジ33が1走査するうちに描画可能な分だけ切り出し、さらに記録ヘッド34のノズルに対応した画素に分割したデータ形式をとる。
【0057】
前述したインク使用量計算部512は、この時点で画素の大きさからインク使用量を見積る処理を行う。画素の大きさに応じて、使用するインク量はおよそ定められるので、画素数分積算することで1走査分のインク使用量を計算することができる。
【0058】
インク使用量計算部512におけるインク使用量算出の処理について、図9に示すフロー図を参照して説明する。
インク使用量計算部512には、印写画像データが入力される。印写画像データは、すでにスキャンバンド毎に画素が分割されているので、そこから1スキャン分(キャリッジ33が1回走査するうちに描画可能な分)を取り出す。更に1画素ずつ取り出して、その画素が出力されるのか否か、出力される場合にはその大きさに関する情報が記録されている。画素の大きさに応じて、使用するインク量はおおよそ定められている。
【0059】
そこで、インク使用量計算部512においては、インク使用量を「0」に設定し(S001)、その後、印写画像データから画素データを取得し(1画素ずつ取り出し)て(S002)、その画素の大きさを判別し(S003)、インク使用量としてそれまでのスキャン分積算されたインク使用量と、画素のインク量(吐出量)の演算を行う。つまり、画素に対応するインク量を1スキャン分積算する(S004)。
この演算を全画素に対して計数することにより(S005)、インク使用量を算出することができる。
【0060】
〔第1の実施態様〕
前記環境条件検知手段として温度センサ316が、記録ヘッド34の周囲の温度を検知し、インク使用量計算手段512が、温度条件に応じてインク使用量を補正して算出する態様について、図10により説明する。
図10は、雰囲気温度を考慮したインク使用量算出1について説明するフローチャートである。
まず、まずインク使用量を0に設定した後(S101)、雰囲気温度を計測し、その結果から環境係数Tを取得する(S102)。なお、環境係数Tとは、予め設定された、雰囲気温度によって一意に定められる値である。
その後、1スキャン分の印写画像データから画素データを取得して(1画素ずつ取り出し)(S103)、その画素の大きさを判別して(S104)、インク使用量=〔積算インク使用量+(画素のインク量×T)〕の演算を行い1スキャン分積算し(S105)、これを全画素分の計数を行うまで繰り返し(S106)、インク使用量を算出する。
【0061】
〔第2の実施態様〕
前記環境条件検知手段として湿度センサ317が、記録ヘッド34の周囲の湿度を検知し、インク使用量計算手段512が、湿度条件に応じてインク使用量を補正して算出する態様について、図11により説明する。
図11は、雰囲気湿度を考慮したインク使用量算出2について説明するフローチャートである。
まず、まずインク使用量を0に設定した後(S201)、雰囲気湿度を計測し、その結果から環境係数Hを取得する(S202)。なお、環境係数Hとは、予め設定された、雰囲気湿度によって一意に定められる値である。
その後、1スキャン分の印写画像データから画素データを取得して(1画素ずつ取り出し)(S203)、その画素の大きさを判別して(S204)、インク使用量=〔積算インク使用量+(画素のインク量×T)〕の演算を行い1スキャン分積算し(S205)、これを全画素分の計数を行うまで繰り返し(S206)、インク使用量を算出する。
【0062】
〔第3の実施態様〕
前記環境条件検知手段として、湿度センサ316が記録ヘッド34の周囲の温度を検知し、湿度センサ317が記録ヘッド34の周囲の湿度を検知し、インク使用量計算手段512が、温度条件又は湿度条件に応じて補正されたインク使用量のうち大きな値を採用して積算し、インク使用量を算出する態様について、図12により説明する。
より大きな値を採用してインク使用量を算出し、インク使用量を多めに見積もることにより、後述のカートリッジのインク残量を算出する場合等において、記録ヘッドの性能劣化に対して安全率を確保することができるため好ましい。
【0063】
図12は、雰囲気温度及び雰囲気湿度を考慮したインク使用量算出3について説明するフローチャートである。
まずインク使用量を0に設定した後(S301)、雰囲気温度を計測してその結果から環境係数Tを取得し(S302)、及び雰囲気湿度を計測してその結果から環境係数H(S303)を取得する。S302とS303の順は逆であってもよい。
なお、環境係数は予め設定された雰囲気条件によって一意に定められる値である。
その後、1スキャン分の印写画像データから画素データを取得して(1画素ずつ取り出し)(S304)、その画素の大きさを判別して(S305)する。次いで、環境係数Tに基づく画素のインク量tを(画素のインク量×T)として演算(S306)し、環境係数Hに基づく画素のインク量hを(画素のインク量×H)として演算(S307)する。S306とS307の順は逆であってもよい。
【0064】
画素のインク量tと画素のインク量hの値を比較し(S308)、大きい値を選択する。例えば、画素のインク量t≦画素のインク量hであるかを判断し(S309)、画素のインク量t≦画素のインク量hである場合には、インク使用量=〔積算インク使用量+(画素のインク量×H)〕の演算を行い1スキャン分の画素のインク量hを積算する(S310)。
一方、画素のインク量t>画素のインク量hである場合には、インク使用量=〔積算インク使用量+(画素のインク量×T)〕の演算を行い1スキャン分の画素のインク量tを積算する(S311)。
これを全画素について計数するまで繰り返し(S312)、インク使用量を算出する。
【0065】
〔第4の実施態様〕
前記環境条件検知手段として、温度センサ316が記録ヘッド34の周囲の温度を検知し、湿度センサ317が記録ヘッド34の周囲の湿度を検知し、インク使用量計算手段512が、温度条件及び湿度条件に応じてインク使用量を補正して算出する態様について、図13により説明する。
図13は、雰囲気温度及び雰囲気湿度を考慮したインク使用量算出4について説明するフローチャートである。
まず、まずインク使用量を0に設定した後(S401)、雰囲気温度及び雰囲気湿度を計測し、その結果から環境係数THを取得する(S402)。なお、環境係数THとは、予め設定された、雰囲気温度及び雰囲気湿度の組合せによって一意に定められる値である。
その後、1スキャン分の印写画像データから画素データを取得して(1画素ずつ取り出し)(S403)、その画素の大きさを判別して(S404)、インク使用量=〔積算インク使用量+(画素のインク量×TH)〕の演算を行い1スキャン分積算し(S405)、これを全画素分の計数を行うまで繰り返し(S406)、インク使用量を算出する。
【0066】
〔第5の実施態様:カートリッジのインク残量〕
インク使用量計算部512により得られたインク使用量の値は、インク消費量の用途としてカートリッジ10内のインク残量の算出を行うことができる。
本発明の画像形成装置は、カートリッジ10内のインク残量を記憶する記憶手段と、インク消費量に基づいてカートリッジ10内のインク残量を算出するインク残量算出手段とを備え、インク使用量計算手段であるインク使用量計算部512により算出されたインク使用量を、前記インク消費量として、カートリッジ10内のインク残量を算出する。
【0067】
カートリッジのインク残量の計算を行う場合、実際のカートリッジ容量を使いきらないように配慮する必要がある。カートリッジ容量以上にインクを使用してしまうと、記録ヘッド内のインク液室に空気を混入させることとなり、記録ヘッドの吐出性能を著しく低下させてしまう。これを防ぐために、カートリッジのインク残量を算出するときには、インク使用量を多めに見積もる方が、記録ヘッドの性能劣化に対して安全率を確保することができる。
本発明の画像形成装置では、前記インク使用量計算手段であるによりインク使用量計算部512算出されたインク使用量は、前記インク吐出量検出手段であるインク吐出量検出部511により検出されたインク吐出量と近似した値、好ましくは同値となるように算出されるが、インク吐出量の方が大きい値である場合には、該インク吐出量をインク消費量として採用することが好ましい。
【0068】
温度や湿度といった環境条件からインクの状態は変化し、実際に記録ヘッドから吐出される量と想定した吐出量との間に誤差が生じるが、本発明の画像形成装置によれば、その誤差を環境条件から予測して補正するので、環境条件を考慮してインク消費量を算出することで、実際に吐出されたインク量との差をできるだけ小さくし、正確なインクカートリッジ残量を把握することができる。
【符号の説明】
【0069】
10 インクカートリッジ
33 キャリッジ
34 記録ヘッド
35 サブタンク
301 主制御部
501 印写画像データ生成部
512 インク使用量計算部(インク使用量計算手段)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0070】
【特許文献1】特開2009−29015号公報
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関し、詳しくはインクジェット方式によって画像を形成する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、ファクシミリ、複写装置、及びこれらの複合機等の画像形成装置として、例えば、記録液(液体)の液滴を吐出する液体吐出ヘッドで構成した記録ヘッドを含む液体吐出装置を用いて、媒体(以下「用紙」ともいうが材質を限定するものではなく、また、被記録媒体、記録媒体、転写材、記録紙なども同義で使用する。)を搬送しながら、液体としての記録液(以下、単に「インク」という。)を用紙に付着させて画像形成(記録、印刷、印写、印字も同義語で用いる。)を行なうものがある。
【0003】
画像形成装置とは、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、及びセラミックス等の媒体にインクを吐出して画像形成を行う装置を意味し、また、「画像形成」とは、文字や図形等の意味を持つ画像を媒体に対して付与することだけでなく、パターン等の意味を持たない画像を媒体に付与することをも意味する。また、インクとは、上記画像形成を行うことができる液体であれば特に限定されるものではない。
【0004】
このようなインク液滴を吐出して被記録媒体上に着弾させることにより画像を形成するインクジェット方式の画像形成装置(インクジェットプリンタ)において、用いられるインクは、インクカートリッジに収容されている。該インクカートリッジは、インクジェットヘッドに備えられた各色ごとのホルダに対応して装着され、インクカートリッジ内のインクが無くなった場合には、インクが充填された新たなインクカートリッジに交換することにより印刷を行うことができる。
【0005】
使用したインク量(インク消費量、インク使用量)を見積もることにより、例えば、インクカートリッジの交換タイミングが分かる。すなわち、未使用のインクカートリッジ容量が分かり、インク使用量が見積もれれば、インクカートリッジ内のインク残量を見積もることができ、無くなる前に、ユーザに交換が必要なタイミングを通知することもできる。
【0006】
一方、サブタンク(ヘッドタンク)方式の画像形成装置の場合、ヘッドに配置されているサブタンクのインクを使用して印刷等を行うので、定期的にインクカートリッジのインクをサブタンクに供給する必要がある。インク使用量を見積もることができれば、サブタンクへインク補充供給が必要なタイミングを正確に把握でき、タンクが空になる前にインクの補充供給を自動的に行うことができる。
【0007】
このように、インクカートリッジの残量を把握するためにインク消費量を見積もることが必要とされており、印刷データからインク消費量を算出する技術や、記録ヘッドを駆動させる制御波形からインク消費量を算出する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0008】
特許文献1には、インク消費量を正確に検出する目的で、記録ヘッドを駆動させる駆動信号に基づいて吐出滴量を検出し、これを積算してインク消費量を検出する手段と、画像情報に基づいて画像形成に必要なインク消費量を算出する手段とを備えた画像形成装置が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、画像情報に基づくインク使用量の算出は、画像処理段階における計算値であるため、実際にノズルから吐出されたインク量との間に誤差が発生する場合がある。例えば、温度や湿度等の環境条件によりインクの粘度等の物性変化が生じれば、これに伴う吐出特性の変化が生じ、インクの吐出量が変化する。
そこで、実際のインク消費量と誤差を少なくするために、環境条件を考慮して、より正確にインク消費量を算出し、インクカートリッジの正確なインク残量が把握することが求められる。
【0010】
よって、本発明は上記課題に鑑みてなされたものであって、実際のインク吐出量との誤差が少なく、環境条件を考慮したより正確なインク消費量を算出可能な画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明に係る画像形成装置は、
インクの液滴を吐出する記録ヘッドと、
画像データを受付ける画像データ受付手段と、
前記記録ヘッドを駆動する駆動信号を発生する駆動信号生成手段と、
前記駆動信号生成手段からの駆動信号に基づいて前記記録ヘッドから吐出されるインクの量を検出する吐出滴量検出手段と、
前記吐出滴量検出手段で検出された吐出滴量を積算してインク吐出量を検出するインク吐出量検出手段と、
前記画像データに基づいて画像情報を生成する画像情報生成手段と、
前記画像情報に基づいて画像形成に必要なインク使用量を算出するインク使用量計算手段とを備える画像形成装置であって、
前記記録ヘッドの周囲の環境条件を検知する環境条件検知手段を備え、
前記インク使用量計算手段が、前記環境検知手段により検知した環境条件に応じてインク使用量を補正して算出し、
前記インク使用量計算手段により算出されたインク使用量が、前記インク吐出量検出手段により検出されたインク吐出量と近似した値となることを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、実際のインク消費量との誤差が少なく、環境条件を考慮したより正確なインク消費量を算出可能な画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る画像形成装置の機構部の全体構成の一実施態様を説明する側面概略構成図である。
【図2】本発明に係る画像形成装置の機構部の一実施態様の要部平面説明図である。
【図3】インクカートリッジの一例を示す斜視説明図である。
【図4】インクカートリッジの一例を示す側面説明図である。
【図5】同装置の制御部を説明する概略ブロック説明図である。
【図6】プリンタドライバ又は画像形成装置の主制御部内に構成される制御機能の一例を説明するブロック図である。
【図7】図6の機能ブロック図における印写画像データ生成部の機能の一例を説明するブロック図である。
【図8】(A)は画像データの一例を、(B)は印写画像データの一例をそれぞれ模式的に示す説明図である。
【図9】インク使用量計算処理を説明するフロー図である。
【図10】第1の実施態様におけるインク使用量算出を説明するフロー図である。
【図11】第2の実施態様におけるインク使用量算出を説明するフロー図である。
【図12】第3の実施態様におけるインク使用量算出を説明するフロー図である。
【図13】第4の実施態様におけるインク使用量算出を説明するフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る画像形成装置について図面を参照して説明する。なお、本発明は以下に示す実施例の実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、修正、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【0015】
図1は本発明に係る画像形成装置の全体構成を説明する側面説明図であり、図2は要部平面説明図である。
この画像形成装置はシリアル型インクジェット記録装置であり、装置本体1の左右の側板21A、21Bに横架したガイド部材である主従のガイドロッド31、32でキャリッジ33を主走査方向に摺動自在に保持し、図示しない主走査モータによってタイミングベルトを介して図2で矢示で示すキャリッジ主走査方向に移動走査する。
【0016】
キャリッジ33には、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の各色のインク滴を吐出するための液体吐出ヘッドからなる記録ヘッド34a、34b(区別しないときは「記録ヘッド34」という。)を複数のノズルからなるノズル列を主走査方向と直交する副走査方向に配列し、インク滴吐出方向を下方に向けて装着している。
【0017】
記録ヘッド34は、それぞれ2つのノズル列を有し、記録ヘッド34aの一方のノズル列はブラック(K)の液滴を、他方のノズル列はシアン(C)の液滴を、記録ヘッド34bの一方のノズル列はマゼンタ(M)の液滴を、他方のノズル列はイエロー(Y)の液滴を、それぞれ吐出する。
【0018】
また、キャリッジ33には、記録ヘッド34のノズル列に対応して各色のインクを供給するための第2インク供給部であるサブタンク35a、35b(区別しないときは「サブタンク35」という。)を搭載している。このサブタンク35には、カートリッジ装填部4に着脱自在に装着される各色の第1インク供給部であるインクカートリッジ10y、10m、10c、10kから、供給ポンプユニット5によって各色の供給チューブ36を介して、各色の記録液が補充供給される。
【0019】
また、キャリッジ33には、記録ヘッド34のノズル列に対応して各色のインクを供給するための第2インク供給部であるサブタンク35a、35b(区別しないときは「サブタンク35」という。)を搭載している。このサブタンク35には、カートリッジ装填部4に着脱自在に装着される各色の第1インク供給部であるインクカートリッジ10y、10m、10c、10kから、供給ポンプユニット5によって各色の供給チューブ36を介して、各色の記録液が補充供給される。
【0020】
一方、給紙トレイ2の用紙積載部(圧板)41上に積載した用紙42を給紙するための給紙部として、用紙積載部41から用紙42を1枚ずつ分離給送する半月コロ(給紙コロ)43及び給紙コロ43に対向し、摩擦係数の大きな材質からなる分離パッド44を備え、この分離パッド44は給紙コロ43側に付勢されている。
【0021】
そして、この給紙部から給紙された用紙42を記録ヘッド34の下方側に送り込むために、用紙42を案内するガイド部材45と、カウンタローラ46と、搬送ガイド部材47と、先端加圧コロ49を有する押さえ部材48とを備えるとともに、給送された用紙42を静電吸着して記録ヘッド34に対向する位置で搬送するための搬送手段である搬送ベルト51を備えている。
【0022】
この搬送ベルト51は、無端状ベルトであり、搬送ローラ52とテンションローラ53との間に掛け渡されて、ベルト搬送方向(副走査方向)に周回するように構成している。また、この搬送ベルト51の表面を帯電させるための帯電手段である帯電ローラ56を備えている。この帯電ローラ56は、搬送ベルト51の表層に接触し、搬送ベルト51の回動に従動して回転するように配置されている。この搬送ベルト51は、図示しない副走査モータによってタイミングを介して搬送ローラ52が回転駆動されることによって図2のベルト搬送方向に周回移動する。
【0023】
記録ヘッド34で記録された用紙42を排紙するための排紙部として、搬送ベルト51から用紙42を分離するための分離爪61と、排紙ローラ62及び排紙コロである拍車63とを備え、排紙ローラ62の下方に排紙トレイ3を備えている。
【0024】
また、装置本体1の背面部には両面ユニット71が着脱自在に装着されている。この両面ユニット71は搬送ベルト51の逆方向回転で戻される用紙42を取り込んで反転させて再度カウンタローラ46と搬送ベルト51との間に給紙する。また、この両面ユニット71の上面は手差しトレイ72としている。
【0025】
さらに、図2に示すように、キャリッジ33の走査方向一方側の非印字領域には、記録ヘッド34のノズルの状態を維持し、回復するための維持回復機構81を配置している。この維持回復機構81には、記録ヘッド34の各ノズル面をキャピングするための各キャップ部材(以下「キャップ」という。)82a、82b(区別しないときは「キャップ82」という。)と、ノズル面をワイピングするためのワイパ部材(ワイパブレード)83と、増粘した記録液を排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行うときの液滴を受ける空吐出受け84と、この空吐出受け84に一体形成され、ワイパブレード83に付着したインクを除去するための清掃部材であるワイパクリーナ部85と、ワイパブレード83のクリーニング時にワイパブレード83をワイパクリーナ85側に押し付けるワイパクリーナ86と、キャリッジ22をロックするキャリッジロック87などとを備えている。また、このヘッドの維持回復機構81の下方側には維持回復動作によって生じる廃液を収容するための廃液タンク100が装置本体に対して交換可能に装着される。
【0026】
図2に示すように、キャリッジ33の走査方向他方側の非印字領域には、記録中などに増粘した記録液を排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行うときの液滴を受ける空吐出受け88を配置し、この空吐出受け88には記録ヘッド34のノズル列方向に沿った開口部89などを備えている。
【0027】
このように構成したこの画像形成装置においては、給紙トレイ2から用紙42が1枚ずつ分離給紙され、略鉛直上方に給紙された用紙42はガイド45で案内され、搬送ベルト51とカウンタローラ46との間に挟まれて搬送され、更に先端を搬送ガイド37で案内されて先端加圧コロ49で搬送ベルト51に押し付けられ、略90°搬送方向を転換される。
【0028】
このとき、帯電ローラ56に対してプラス出力とマイナス出力とが交互に繰り返すように、つまり交番する電圧が印加され、搬送ベルト51が交番する帯電電圧パターン、すなわち、周回方向である副走査方向に、プラスとマイナスが所定の幅で帯状に交互に帯電されたものとなる。このプラス、マイナス交互に帯電した搬送ベルト51上に用紙42が給送されると、用紙42が搬送ベルト51に吸着され、搬送ベルト51の周回移動によって用紙42が副走査方向に搬送される。
【0029】
そこで、キャリッジ33を移動させながら画像信号に応じて記録ヘッド34を駆動することにより、停止している用紙42にインク滴を吐出して1行分を記録し、用紙42を所定量搬送後、次の行の記録を行う。記録終了信号又は用紙42の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了して、用紙42を排紙トレイ3に排紙する。
【0030】
そして、記録ヘッド34のノズルの維持回復を行うときには、キャリッジ33をホーム位置である維持回復機構81に対向する位置に移動して、キャップ部材82によるキャッピングを行ってノズルからの吸引を行うノズル吸引、画像形成に寄与しない液滴を吐出する空吐出などの維持回復動作を行うことにより、安定した液滴吐出による画像形成を行うことができる。
【0031】
次に、インクカートリッジ10の一例について図3及び図4を参照して説明する。
このインクカートリッジ10は、カートリッジケース(筺体)102内にインクを収容した記録液収容手段であるインク袋103を収納したものである。このカートリッジケース102は、分解及び組立て可能に2分割された第1ケース(ベース)121と第2ケース(ケース)122とで構成されている。
そして、カートリッジケース102には内部に収納したインク袋103のインク供給口部131に対応して開口部123を形成している。
【0032】
このインクカートリッジ10をカートリッジ装填部4に装着したときに、カートリッジ装着部4の奥側に設けた中空針がインク袋103の供給口部131内に刺通されて、インク袋103内部と供給ポンプユニット24とが連通状態となり、インク袋103内のインクを装置本体1側に供給可能になる。
【0033】
また、このインクカートリッジ10の前面側上部には、EEPROMなどからなる書替え可能な記憶素子(記憶手段)である不揮発性メモリ130を設けている。この不揮発性メモリ130には、インクカートリッジ10に関する情報、例えば、インク色、インク種、使用期限、ID番号、純正情報、再充填回数、インク残量などに関する固有の情報を記憶されるとともに、バージョン情報(Ver情報)や画像形成装置本体側の制御プログラムの更新プログラムなどが記憶される。
【0034】
そして、このインクカートリッジ10をカートリッジ装填部4に装着することで、装置本体側の電極と電気的に接続されて、不揮発性メモリ130に記憶されている情報が装置本体側に読み出し可能となり、また、装置本体側から不揮発性メモリ130に対する書き込みが可能となる。
【0035】
本発明の画像形成装置の制御部の概要について図5を参照して説明する。図5は、制御部の全体ブロック図の一例である。
本発明の画像形成装置は、制御部に、画像データを受付ける画像データ受付手段と、前記記録ヘッドを駆動する駆動信号を発生する駆動信号生成手段と、前記駆動信号生成手段からの駆動信号に基づいて前記記録ヘッドから吐出されるインクの量を検出する吐出滴量検出手段と、前記吐出滴量検出手段で検出された吐出滴量を積算してインク吐出量を検出するインク吐出量検出手段と、前記画像データに基づいて画像情報を生成する画像情報生成手段と、前記画像情報に基づいて画像形成に必要なインク使用量を算出するインク使用量計算手段と、さらに前記記録ヘッドの周囲の環境条件を検知する環境条件検知手段を備える。そして、制御をする手段などを兼ねたマイクロコンピュータなどで構成した主制御部301及び印刷制御を司るマイクロコンピュータで構成した印刷制御部302とを備えている。
【0036】
該制御部の前記画像受付手段は、情報処理装置400から通信回路300を介して画像データを受け取る。
情報処理装置400は、アプリケーション401を通してユーザより印刷命令があった場合、OS(例えばGDI:Graphic Device Interface)402が画像形成装置で出力する画像データをプリンタドライバ403に伝達する。
プリンタドライバ403は、アプリケーション401から伝達された画像データを、画像形成装置本体が処理できる形式の印写画像データに変換して、通信回路300を経由して画像形成装置に入力する。
【0037】
主制御部301は、通信回路300から入力される印写画像データに基づいて用紙42に画像を形成するために、前述したように、キャリッジ33を移動走査する主走査モータ331や搬送ローラ52を回転駆動する副走査モータ332を主走査モータ駆動回路303及び副走査モータ駆動回路304を介して駆動制御するとともに、印刷制御部302に対して印刷用データを送出するなどの制御を行う。
【0038】
主制御部301には、キャリッジ33の位置を検出するキャリッジ位置検出回路305からの検出信号が入力され、主制御部301はこの検出信号に基づいてキャリッジ33の移動位置及び移動速度を制御する。キャリッジ位置検出回路305は、例えば、キャリッジ33の走査方向に配置されたエンコーダシートのスリット数を、キャリッジ33に搭載されたフォトセンサで読み取って計数することで、キャリッジ33の位置を検出する。
主走査モータ駆動回路303は、主制御部301から入力されるキャリッジ移動量に応じて主走査モータ331を回転駆動させて、キャリッジ33を所定の位置に所定の速度で移動させる。
【0039】
主制御部301には搬送ベルト51の移動量を検出する搬送量検出回路306からの検出信号が入力され、主制御部301はこの検出信号に基づいて搬送ベルト51の移動量及び移動速度を制御する。搬送量検出回路306は、例えば、搬送ローラ52の回転軸に取り付けられた回転エンコーダシートのスリット数を、フォトセンサで読み取って計数することで搬送量を検出する。副走査モータ駆動回路304は、主制御部301から入力される搬送量に応じて副走査モータ332を回転駆動させて、搬送ローラ52を回転駆動して搬送ベルト51を所定の位置に所定の速度で移動させる。
【0040】
主制御部301は、給紙コロ駆動回路308に給紙コロ駆動指令を与えることによって給紙コロ43を一回転させる。主制御部301は、維持回復機構駆動用モータ駆動回路311を介してモータ231を回転駆動することにより、キャップ82の昇降、ワイパブレード83の昇降などを行なわせる。
【0041】
主制御部301は、インク供給モータ駆動回路312を介して供給ユニット24のポンプを駆動するためのインク供給モータ333を駆動制御し、カートリッジ装填部4に装填されたインクカートリッジ10からサブタンク35に対してインクを補充供給する。
【0042】
主制御部301には、サブタンク35が満タン状態にあることを検知するサブタンク満タンセンサ313からの検知信号、カートリッジ装填部4の前カバーの開閉を検知するカートリッジカバーセンサ314からの検知信号などが入力される。
【0043】
また、主制御部301は、カートリッジ通信回路を通じて、カートリッジ装填部4に装着された各インクカートリッジ10に設けられる記憶手段である不揮発性メモリ130に記憶されている情報を取り込んで、所要の処理を行なって、主制御部301内に有する本体記憶手段である不揮発性メモリ(例えば、EEPROM)に格納保持する。
【0044】
印刷制御部302は、主制御部301からの信号とキャリッジ位置検出回路305及び搬送量検出回路306などからのキャリッジ位置や搬送量に基づいて、記録ヘッド34の液滴を吐出させるための圧力発生手段を駆動するためのデータを生成して、ヘッド駆動回路310に与える。
【0045】
さらに、主制御部301は、環境条件検知手段により記録ヘッド34の周囲の環境条件を検知することができる。図5では、環境条件検知手段として温度センサ316及び湿度センサ317を備え、温度センサ316により画像形成装置内の温度を取得することができ、湿度センサ317により画像形成装置内の湿度を取得することができる。
【0046】
ヘッド駆動回路310は、印刷制御部302からの印刷データに基づいて記録ヘッド34の圧力発生手段(ピエゾ型ヘッドであれば圧電素子)を駆動して、所要のノズルから液滴を吐出させる。
【0047】
主制御部301は、指定用紙サイズ検出手段である紙サイズセンサ321から通紙中の用紙42の大きさを検出し、入力された画像データが当該用紙42上に配置可能かどうか、また用紙42外に画像データがある場合に、画像データをトリミングして描画するように印刷制御部302に設定することができる。
【0048】
図6に、ホストPC(情報処理装置400)内のプリンタドライバ403又は画像形成装置の主制御部301内に構成される制御機能を説明する機能ブロック図を示す。
ここでは、印写画像データ生成部501のみがプリンタドライバ403内で実現され、その他は画像形成装置本体内で実現されるものとする。
【0049】
アプリケーション401を通してユーザより印刷命令があった場合、OS(GDI)402は印刷対象となる画像データをプリンタドライバ403に伝達する。伝達された画像データはプリンタドライバ403内で処理されるが、このとき画像データは印写画像データ生成部501において、画像形成装置で処理可能な形成期のデータである印写画像データ(画像情報)に変換される。
【0050】
印写画像データは、前記通信回路300を経由して、主制御部301で受付けられ(主制御部301が画像情報受付手段を構成する。)、主制御部301で構成されるインク使用量検出手段であるインク使用量計算部512に入力され、インク使用量計算部512では印写画像データに含まれる画素数の情報や画素の大きさの情報を基にインク使用量を算出する。
【0051】
また、印写画像データは、記録ヘッド34の圧力発生手段を駆動するヘッド駆動信号を生成するヘッド駆動信号生成部502に入力され、印写画像データに含まれているヘッド駆動信号の生成回数及び生成される信号の個々の強さ(液滴の大きさ)に関する情報を画像信号として前記吐出滴量検出手段及びインク吐出量検出手段であるインク使用量計算部512に入力する。インク吐出量検出部511では、ヘッド駆動信号の生成回数及び強さを元に、記録ヘッド34から吐出されるインク滴の量を検出して、検出したインク量を積算することでインク吐出量を算出する。
【0052】
前記インク使用量計算手段であるによりインク使用量計算部512算出されたインク使用量が、前記インク吐出量検出手段であるインク吐出量検出部511により検出されたインク吐出量と近似した値、好ましくは同値となるように算出される。
【0053】
例えば、比較演算部513で、前記インク使用量と前記インク吐出量を比較することで、最終的に算出されるインク消費量を得ることができ、算出された前記インク消費量により、インクカートリッジ10内のインク残量を算出することができる。
本発明の画像形成装置においては、カートリッジ10内のインク残量を記憶する記憶手段と、インク消費量に基づいて前記カートリッジ内のインク残量を算出するインク残量算出手段(図示せず)とを備え、前記インク使用量計算手段により算出されたインク使用量を前記インク消費量として、カートリッジ10内のインク残量を算出することができる。
【0054】
ここで、印写画像データ生成部501はプリンタドライバ403内で実現されるように構成されているが、画像形成装置本体内で実現することも可能である。この場合、プリンタドライバ403は、アプリケーション401からの画像データを、直接通信回路300を経由して画像形成装置本体に入力することになる。そして、画像形成装置内の印写画像データ生成部501によって印写画像データを生成することになる。この場合、主制御部301で構成される印写画像データ生成部501が画像データを受付ける画像データ受付手段と、画像データに基づいて画像情報を生成する画像情報生成手段を構成することになる。
【0055】
次に、印写画像データ生成部501の詳細について図7を参照して説明する。なお、図7はホスト400内のプリンタドライバ403又は画像形成装置の主制御部301で構成される制御機能の機能ブロック図である。
ここでは印写画像データ生成部501はプリンタドライバ403内で実現されるものとする。アプリケーション401からOS(GDI)402を経由しプリンタドライバ403に画像データが入力されると、まず、画素分解部521によって画像形成装置で形成するドットの並び(画素)に画像データを分解する。これを、スキャンバンド分割部522によってキャリッジが1走査する(スキャンする)単位に更に分解し、更にそれをノズル列毎の画像データ作成部523によって記録ヘッド34のインク吐出ノズルの並びにあわせて画素データを作成する。このときに、画素数及び画素の大きさ集計部524によってスキャンバンド毎の画素数及び画素の大きさを集計する。印写画像データは、この画素データと画素数、画素の大きさの度数分布を合わせて1つのデータとして出力する。
【0056】
各信号について説明する。
先ず、「画像データ」とは、図8(A)に示すように、ホスト(情報処理装置)400のアプリケーション401等で作成されるもので、ホスト400のOS402等で処理可能なデータ形式をとる。描画オブジェクトの位置や形、色などの情報が含まれている。
「印写画像データ」とは、図8(B)に示すように、前記画像データをプリンタドライバ403で変換して、インクジェット記録装置で処理可能なデータ形式にしたものである。インクジェット記録装置の処理系に合わせたデータ形式となっており、前記画像データを、キャリッジ33が1走査するうちに描画可能な分だけ切り出し、さらに記録ヘッド34のノズルに対応した画素に分割したデータ形式をとる。
【0057】
前述したインク使用量計算部512は、この時点で画素の大きさからインク使用量を見積る処理を行う。画素の大きさに応じて、使用するインク量はおよそ定められるので、画素数分積算することで1走査分のインク使用量を計算することができる。
【0058】
インク使用量計算部512におけるインク使用量算出の処理について、図9に示すフロー図を参照して説明する。
インク使用量計算部512には、印写画像データが入力される。印写画像データは、すでにスキャンバンド毎に画素が分割されているので、そこから1スキャン分(キャリッジ33が1回走査するうちに描画可能な分)を取り出す。更に1画素ずつ取り出して、その画素が出力されるのか否か、出力される場合にはその大きさに関する情報が記録されている。画素の大きさに応じて、使用するインク量はおおよそ定められている。
【0059】
そこで、インク使用量計算部512においては、インク使用量を「0」に設定し(S001)、その後、印写画像データから画素データを取得し(1画素ずつ取り出し)て(S002)、その画素の大きさを判別し(S003)、インク使用量としてそれまでのスキャン分積算されたインク使用量と、画素のインク量(吐出量)の演算を行う。つまり、画素に対応するインク量を1スキャン分積算する(S004)。
この演算を全画素に対して計数することにより(S005)、インク使用量を算出することができる。
【0060】
〔第1の実施態様〕
前記環境条件検知手段として温度センサ316が、記録ヘッド34の周囲の温度を検知し、インク使用量計算手段512が、温度条件に応じてインク使用量を補正して算出する態様について、図10により説明する。
図10は、雰囲気温度を考慮したインク使用量算出1について説明するフローチャートである。
まず、まずインク使用量を0に設定した後(S101)、雰囲気温度を計測し、その結果から環境係数Tを取得する(S102)。なお、環境係数Tとは、予め設定された、雰囲気温度によって一意に定められる値である。
その後、1スキャン分の印写画像データから画素データを取得して(1画素ずつ取り出し)(S103)、その画素の大きさを判別して(S104)、インク使用量=〔積算インク使用量+(画素のインク量×T)〕の演算を行い1スキャン分積算し(S105)、これを全画素分の計数を行うまで繰り返し(S106)、インク使用量を算出する。
【0061】
〔第2の実施態様〕
前記環境条件検知手段として湿度センサ317が、記録ヘッド34の周囲の湿度を検知し、インク使用量計算手段512が、湿度条件に応じてインク使用量を補正して算出する態様について、図11により説明する。
図11は、雰囲気湿度を考慮したインク使用量算出2について説明するフローチャートである。
まず、まずインク使用量を0に設定した後(S201)、雰囲気湿度を計測し、その結果から環境係数Hを取得する(S202)。なお、環境係数Hとは、予め設定された、雰囲気湿度によって一意に定められる値である。
その後、1スキャン分の印写画像データから画素データを取得して(1画素ずつ取り出し)(S203)、その画素の大きさを判別して(S204)、インク使用量=〔積算インク使用量+(画素のインク量×T)〕の演算を行い1スキャン分積算し(S205)、これを全画素分の計数を行うまで繰り返し(S206)、インク使用量を算出する。
【0062】
〔第3の実施態様〕
前記環境条件検知手段として、湿度センサ316が記録ヘッド34の周囲の温度を検知し、湿度センサ317が記録ヘッド34の周囲の湿度を検知し、インク使用量計算手段512が、温度条件又は湿度条件に応じて補正されたインク使用量のうち大きな値を採用して積算し、インク使用量を算出する態様について、図12により説明する。
より大きな値を採用してインク使用量を算出し、インク使用量を多めに見積もることにより、後述のカートリッジのインク残量を算出する場合等において、記録ヘッドの性能劣化に対して安全率を確保することができるため好ましい。
【0063】
図12は、雰囲気温度及び雰囲気湿度を考慮したインク使用量算出3について説明するフローチャートである。
まずインク使用量を0に設定した後(S301)、雰囲気温度を計測してその結果から環境係数Tを取得し(S302)、及び雰囲気湿度を計測してその結果から環境係数H(S303)を取得する。S302とS303の順は逆であってもよい。
なお、環境係数は予め設定された雰囲気条件によって一意に定められる値である。
その後、1スキャン分の印写画像データから画素データを取得して(1画素ずつ取り出し)(S304)、その画素の大きさを判別して(S305)する。次いで、環境係数Tに基づく画素のインク量tを(画素のインク量×T)として演算(S306)し、環境係数Hに基づく画素のインク量hを(画素のインク量×H)として演算(S307)する。S306とS307の順は逆であってもよい。
【0064】
画素のインク量tと画素のインク量hの値を比較し(S308)、大きい値を選択する。例えば、画素のインク量t≦画素のインク量hであるかを判断し(S309)、画素のインク量t≦画素のインク量hである場合には、インク使用量=〔積算インク使用量+(画素のインク量×H)〕の演算を行い1スキャン分の画素のインク量hを積算する(S310)。
一方、画素のインク量t>画素のインク量hである場合には、インク使用量=〔積算インク使用量+(画素のインク量×T)〕の演算を行い1スキャン分の画素のインク量tを積算する(S311)。
これを全画素について計数するまで繰り返し(S312)、インク使用量を算出する。
【0065】
〔第4の実施態様〕
前記環境条件検知手段として、温度センサ316が記録ヘッド34の周囲の温度を検知し、湿度センサ317が記録ヘッド34の周囲の湿度を検知し、インク使用量計算手段512が、温度条件及び湿度条件に応じてインク使用量を補正して算出する態様について、図13により説明する。
図13は、雰囲気温度及び雰囲気湿度を考慮したインク使用量算出4について説明するフローチャートである。
まず、まずインク使用量を0に設定した後(S401)、雰囲気温度及び雰囲気湿度を計測し、その結果から環境係数THを取得する(S402)。なお、環境係数THとは、予め設定された、雰囲気温度及び雰囲気湿度の組合せによって一意に定められる値である。
その後、1スキャン分の印写画像データから画素データを取得して(1画素ずつ取り出し)(S403)、その画素の大きさを判別して(S404)、インク使用量=〔積算インク使用量+(画素のインク量×TH)〕の演算を行い1スキャン分積算し(S405)、これを全画素分の計数を行うまで繰り返し(S406)、インク使用量を算出する。
【0066】
〔第5の実施態様:カートリッジのインク残量〕
インク使用量計算部512により得られたインク使用量の値は、インク消費量の用途としてカートリッジ10内のインク残量の算出を行うことができる。
本発明の画像形成装置は、カートリッジ10内のインク残量を記憶する記憶手段と、インク消費量に基づいてカートリッジ10内のインク残量を算出するインク残量算出手段とを備え、インク使用量計算手段であるインク使用量計算部512により算出されたインク使用量を、前記インク消費量として、カートリッジ10内のインク残量を算出する。
【0067】
カートリッジのインク残量の計算を行う場合、実際のカートリッジ容量を使いきらないように配慮する必要がある。カートリッジ容量以上にインクを使用してしまうと、記録ヘッド内のインク液室に空気を混入させることとなり、記録ヘッドの吐出性能を著しく低下させてしまう。これを防ぐために、カートリッジのインク残量を算出するときには、インク使用量を多めに見積もる方が、記録ヘッドの性能劣化に対して安全率を確保することができる。
本発明の画像形成装置では、前記インク使用量計算手段であるによりインク使用量計算部512算出されたインク使用量は、前記インク吐出量検出手段であるインク吐出量検出部511により検出されたインク吐出量と近似した値、好ましくは同値となるように算出されるが、インク吐出量の方が大きい値である場合には、該インク吐出量をインク消費量として採用することが好ましい。
【0068】
温度や湿度といった環境条件からインクの状態は変化し、実際に記録ヘッドから吐出される量と想定した吐出量との間に誤差が生じるが、本発明の画像形成装置によれば、その誤差を環境条件から予測して補正するので、環境条件を考慮してインク消費量を算出することで、実際に吐出されたインク量との差をできるだけ小さくし、正確なインクカートリッジ残量を把握することができる。
【符号の説明】
【0069】
10 インクカートリッジ
33 キャリッジ
34 記録ヘッド
35 サブタンク
301 主制御部
501 印写画像データ生成部
512 インク使用量計算部(インク使用量計算手段)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0070】
【特許文献1】特開2009−29015号公報
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクの液滴を吐出する記録ヘッドと、
画像データを受付ける画像データ受付手段と、
前記記録ヘッドを駆動する駆動信号を発生する駆動信号生成手段と、
前記駆動信号生成手段からの駆動信号に基づいて前記記録ヘッドから吐出されるインクの量を検出する吐出滴量検出手段と、
前記吐出滴量検出手段で検出された吐出滴量を積算してインク吐出量を検出するインク吐出量検出手段と、
前記画像データに基づいて画像情報を生成する画像情報生成手段と、
前記画像情報に基づいて画像形成に必要なインク使用量を算出するインク使用量計算手段とを備える画像形成装置であって、
前記記録ヘッドの周囲の環境条件を検知する環境条件検知手段を備え、
前記インク使用量計算手段が、前記環境検知手段により検知した環境条件に応じてインク使用量を補正して算出し、
前記インク使用量計算手段により算出されたインク使用量が、前記インク吐出量検出手段により検出されたインク吐出量と近似した値となることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記環境条件検知手段が、前記記録ヘッドの周囲の温度又は湿度を検知し、
前記インク使用量計算手段が、温度条件又は湿度条件に応じてインク使用量を補正して算出することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記環境条件検知手段が、前記記録ヘッドの周囲の温度及び湿度を検知し、
前記インク使用量計算手段が、温度条件に応じて補正したインク使用量と湿度条件に応じて補正したインク使用量とを比較し、より大きい値を積算してインク使用量を算出することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記環境条件検知手段が、前記記録ヘッドの周囲の温度及び湿度を検知し、
前記インク使用量計算手段が、温度条件と湿度条件との組合せに応じてインク使用量を補正して算出することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記記録ヘッドに供給するインクを保持するカートリッジと、
前記カートリッジ内のインク残量を記憶する記憶手段と、
インク消費量に基づいて前記カートリッジ内のインク残量を算出するインク残量算出手段とを備え、
前記インク使用量計算手段により算出されたインク使用量を前記インク消費量として、前記カートリッジ内のインク残量を算出することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項1】
インクの液滴を吐出する記録ヘッドと、
画像データを受付ける画像データ受付手段と、
前記記録ヘッドを駆動する駆動信号を発生する駆動信号生成手段と、
前記駆動信号生成手段からの駆動信号に基づいて前記記録ヘッドから吐出されるインクの量を検出する吐出滴量検出手段と、
前記吐出滴量検出手段で検出された吐出滴量を積算してインク吐出量を検出するインク吐出量検出手段と、
前記画像データに基づいて画像情報を生成する画像情報生成手段と、
前記画像情報に基づいて画像形成に必要なインク使用量を算出するインク使用量計算手段とを備える画像形成装置であって、
前記記録ヘッドの周囲の環境条件を検知する環境条件検知手段を備え、
前記インク使用量計算手段が、前記環境検知手段により検知した環境条件に応じてインク使用量を補正して算出し、
前記インク使用量計算手段により算出されたインク使用量が、前記インク吐出量検出手段により検出されたインク吐出量と近似した値となることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記環境条件検知手段が、前記記録ヘッドの周囲の温度又は湿度を検知し、
前記インク使用量計算手段が、温度条件又は湿度条件に応じてインク使用量を補正して算出することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記環境条件検知手段が、前記記録ヘッドの周囲の温度及び湿度を検知し、
前記インク使用量計算手段が、温度条件に応じて補正したインク使用量と湿度条件に応じて補正したインク使用量とを比較し、より大きい値を積算してインク使用量を算出することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記環境条件検知手段が、前記記録ヘッドの周囲の温度及び湿度を検知し、
前記インク使用量計算手段が、温度条件と湿度条件との組合せに応じてインク使用量を補正して算出することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記記録ヘッドに供給するインクを保持するカートリッジと、
前記カートリッジ内のインク残量を記憶する記憶手段と、
インク消費量に基づいて前記カートリッジ内のインク残量を算出するインク残量算出手段とを備え、
前記インク使用量計算手段により算出されたインク使用量を前記インク消費量として、前記カートリッジ内のインク残量を算出することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2013−95086(P2013−95086A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−241026(P2011−241026)
【出願日】平成23年11月2日(2011.11.2)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月2日(2011.11.2)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
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